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特開2022-184720導電パターンを有する基板の製造方法、電子デバイスの製造方法、導電パターンを有する基板、及び、金属ナノ体用保護膜
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  • 特開-導電パターンを有する基板の製造方法、電子デバイスの製造方法、導電パターンを有する基板、及び、金属ナノ体用保護膜 図1
  • 特開-導電パターンを有する基板の製造方法、電子デバイスの製造方法、導電パターンを有する基板、及び、金属ナノ体用保護膜 図2
  • 特開-導電パターンを有する基板の製造方法、電子デバイスの製造方法、導電パターンを有する基板、及び、金属ナノ体用保護膜 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184720
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】導電パターンを有する基板の製造方法、電子デバイスの製造方法、導電パターンを有する基板、及び、金属ナノ体用保護膜
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20221206BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20221206BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20221206BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20221206BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20221206BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20221206BHJP
   B32B 38/18 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G06F3/041 660
G03F7/40 521
G03F7/40
G03F7/11 503
G03F7/11 502
G03F7/027
H01B13/00 503D
G06F3/044 122
G06F3/041 495
G06F3/041 640
B32B38/18 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】32
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039586
(22)【出願日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2021091063
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 晃男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 守正
【テーマコード(参考)】
2H196
2H225
4F100
5G323
【Fターム(参考)】
2H196BA05
2H196BA10
2H196BA11
2H196HA11
2H196HA40
2H225AC32
2H225AC34
2H225AC63
2H225AD14
2H225AD24
2H225AF82N
2H225AM13P
2H225AM22N
2H225AM23P
2H225AM32N
2H225AM32P
2H225AM53N
2H225AM58N
2H225AN12N
2H225AN12P
2H225AN39N
2H225AN39P
2H225AN47N
2H225AN47P
2H225AN60N
2H225AN66N
2H225AN82P
2H225AN88P
2H225AP01N
2H225BA01N
2H225BA02P
2H225BA09P
2H225BA18N
2H225BA32N
2H225BA32P
2H225CA14
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
4F100AB00B
4F100AB24B
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK23
4F100AK25
4F100AK33
4F100AK41
4F100AK42A
4F100AR00E
4F100AT00A
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100EJ15
4F100EJ42
4F100GB43
4F100JA05
4F100JG01B
4F100JG01E
4F100JN01B
4F100JN17D
4F100YY00B
5G323CA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】通電後の導電パターンの寸法安定性に優れる導電パターンを有する基板の製造方法、電子デバイスの製造方法、導電パターンを有する基板又は金属ナノ体用保護膜を提供する。
【解決手段】導電パターンを有する基板の製造方法は、基板上に、金属ナノ体及び第1の樹脂1を含む導電層を形成する工程、導電層上に、第2の樹脂を含む樹脂層を形成する工程、樹脂層上に、感光性樹脂層17を形成する工程、感光性樹脂層に対し、露光及び現像処理により感光性樹脂層の樹脂パターンを得る工程、エッチングにより導電層中の金属ナノ体を除去し、導電パターンを形成する工程及び第1の樹脂及び第2の樹脂の少なくとも一方を軟化又は膨潤させる工程を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、金属ナノ体及び樹脂1を含む導電層aを形成する工程1a、
前記導電層a上に、樹脂2を含む樹脂層bを形成する工程1b、
前記樹脂層b上に、感光性樹脂層cを形成する工程2a、
前記感光性樹脂層cに対し、露光及び現像処理により前記感光性樹脂層の樹脂パターンc’を得る工程3、
エッチングにより前記導電層a中の金属ナノ体を除去し、導電パターンdを形成する工程4、及び、
前記樹脂1及び前記樹脂2の少なくとも一方を軟化又は膨潤させる工程5aを含む
導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項2】
基板上に、金属ナノ体及び樹脂1を含む導電層aを形成する工程1a、
前記導電層a上に、感光性樹脂層cを形成する工程2b、
前記感光性樹脂層cに対し、露光及び現像処理により前記感光性樹脂層の樹脂パターンc’を得る工程3、
エッチングにより前記導電層a中の金属ナノ体を除去し、導電パターンdを形成する工程4、及び、
前記樹脂1を軟化又は膨潤させる工程5bを含む
導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項3】
得られた導電パターンを有する基板の少なくとも一方の面が、前記導電パターンdが形成された第1の区画と、前記導電パターンdが形成されていない第2の区画とを有し、
前記第2の区画を前記基板の厚さ方向から走査型電子顕微鏡により観察した場合における空隙が観察される面積が、前記第2の区画の全面積に対し、10%以下である請求項1又は請求項2に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項4】
前記第2の区画を前記基板の厚さ方向から走査型電子顕微鏡により観察した場合における空隙が観察される面積が、前記第2の区画の全面積に対し、8%以下である請求項3に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項5】
前記第2の区画を前記基板の厚さ方向から走査型電子顕微鏡により観察した場合における空隙が観察される面積が、前記第2の区画の全面積に対し、5%以下である請求項4に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項6】
前記導電層aの波長380nm~780nmの光に対する透過率が、70%以上である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項7】
前記金属ナノ体が、金属ナノワイヤである請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項8】
前記金属ナノ体が、アスペクト比1:1~1:10、かつ球相当径1nm~200nmのナノ粒子である請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項9】
前記金属ナノ体が、銀又は銀化合物のナノ体である請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項10】
導電パターンd’を、前記基板における前記導電層aが設けられた面とは反対側の面に更に形成する請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂層bが、前記金属ナノ体に含まれる金属と結合又は配位可能な化合物eを有する請求項1に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項12】
前記化合物eが、非共有電子対を有する化合物である請求項11に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項13】
前記化合物eが、非共有電子対を有する含窒素化合物及び非共有電子対を有する含硫黄化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項12に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項14】
前記感光性樹脂層cが、アルカリ可溶性樹脂と、重合性化合物と、光重合開始剤とを含む請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項15】
前記感光性樹脂層cが、酸の作用により極性が変化する樹脂と、光酸発生剤とを含む請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項16】
前記感光性樹脂層cが、フェノール性水酸基を有する構成単位を有する樹脂と、キノンジアジド化合物とを含む請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項17】
前記感光性樹脂層cが、感光性転写材料により形成される請求項1~請求項16のいずれか1項に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項18】
前記感光性樹脂層c上に、中間層を更に有する請求項1~請求項17のいずれか1項に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項19】
工程5aが、加熱処理により前記樹脂1及び前記樹脂2の少なくとも一方を軟化させ、前記エッチングにより前記金属ナノ体が除去されて生じた空隙を充填する工程である請求項1に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項20】
前記工程5aにおける前記加熱処理が、Tgp<Th<Tgbを満たす加熱温度である請求項19に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
なお、Thは工程5aにおける加熱処理時の最高温度(℃)を表し、Tgpは樹脂1のガラス転移温度及び樹脂2のガラス転移温度のうちの低いほうの温度(℃)を表し、Tgbは基板のガラス転移温度(℃)を表す。
【請求項21】
工程5bが、加熱処理により前記樹脂1を軟化させ、前記エッチングにより前記金属ナノ体が除去されて生じた空隙を充填する工程である請求項2に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項22】
工程5aが、前記工程4中又は前記工程4後において、前記樹脂1及び前記樹脂2の少なくとも一方を膨潤させ、前記エッチングにより前記金属ナノ体が除去されて生じた空隙を充填する工程である請求項1に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項23】
工程5bが、前記工程4中又は前記工程4後において、前記樹脂1を膨潤させ、前記エッチングにより前記金属ナノ体が除去されて生じた空隙を充填する工程である請求項2に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
【請求項24】
請求項1~請求項23のいずれか1項に記載の導電パターンを有する基板の製造方法により得られた導電パターンを有する基板を備える電子デバイスの製造方法。
【請求項25】
基板と、
前記基板の少なくとも一方の面に、金属ナノ体及び樹脂1を含む導電パターンdが形成された第1の区画と、前記導電パターンdが形成されていない第2の区画とを有し、
前記第2の区画を前記基板の厚さ方向から走査型電子顕微鏡により観察した場合における空隙が観察される面積が、前記第2の区画の全面積に対し、10%以下である
導電パターンを有する基板。
【請求項26】
前記第2の区画に、前記樹脂1が存在する請求項25に記載の導電パターンを有する基板。
【請求項27】
前記第1の区画の前記基板表面からの層厚さをH1、前記第2の区画の前記基板表面からの層厚さをH2としたときに、0.90≦H1/H2≦1.11を満たす請求項26に記載の導電パターンを有する基板。
【請求項28】
前記第2の区画に存在する深さ10nm以上の凹部の個数が、10個/100μm以下である請求項26又は請求項27に記載の導電パターンを有する基板。
【請求項29】
ガラス転移温度が150℃以下である樹脂を含む樹脂層を有する
金属ナノ体用保護膜。
【請求項30】
前記ガラス転移温度が150℃以下である樹脂が、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及び、フェノール樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含む請求項29に記載の金属ナノ体用保護膜。
【請求項31】
前記樹脂層が、オキシムエステル系光重合開始剤、ビイミダゾール系光重合開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、及び、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種の重合開始剤を更に含む請求項29又は請求項30に記載の金属ナノ体用保護膜。
【請求項32】
前記樹脂層が、2官能以上の重合性化合物を更に含む請求項29~請求項31のいずれか1項に記載の金属ナノ体用保護膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電パターンを有する基板の製造方法、電子デバイスの製造方法、導電パターンを有する基板、及び、金属ナノ体用保護膜に関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量型入力装置などのタッチパネルを備えた表示装置(有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置及び液晶表示装置など)では、視認部のセンサーに相当する電極パターン、周辺配線部分及び取り出し配線部分の配線などの導電パターンがタッチパネル内部に設けられている。
一般的にパターン化した層の形成には、必要とするパターン形状を得るための工程数が少ないといったことから、感光性転写材料を用いて任意の基板上に設けた感光性樹脂組成物の層に対して、所望のパターンを有するマスクを介して露光した後に現像する方法が広く使用されている。
【0003】
また、従来、印刷による導電パターンが、圧力センサーやバイオセンサー等の各種センサー、プリント基板、太陽電池、コンデンサー、電磁波シールド、タッチパネル、アンテナ等として、種々の分野において広く使用されてきた。
【0004】
また、従来の導電パターンの形成方法としては、特許文献1又は2に記載されたものが知られている。
特許文献1には、第1面と、上記第1面の反対側の第2面とを有するフィルム状の透明基材と、金属ナノワイヤと、撥水添加剤を含有した透明バインダーとを含み、上記透明基材の上記第1面と上記第2面の少なくとも一方に形成された透明導電膜と、を備え、上記透明導電膜の表面には、上記金属ナノワイヤの一部が露出し、上記透明導電膜の表面の接触角は、80度以上、125度以下である、透明導電膜付フィルムが記載されている。
また、特許文献2には、金属ナノワイヤ層をエッチングし導電パターンを形成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/051695号
【特許文献2】台湾特許出願公開第2016-29992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、通電後の導電パターンの寸法安定性に優れる導電パターンを有する基板の製造方法を提供することである。
本発明の他の一実施形態が解決しようとする課題は、上記導電パターンを有する基板の製造方法により得られる導電パターンを有する基板を備えた電子デバイスの製造方法を提供することである。
本発明の更に他の実施形態が解決しようとする課題は、通電後の導電パターンの寸法安定性に優れる導電パターンを有する基板又は金属ナノ体用保護膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 基板上に、金属ナノ体及び樹脂1を含む導電層aを形成する工程1a、上記導電層a上に、樹脂2を含む樹脂層bを形成する工程1b、上記樹脂層b上に、感光性樹脂層cを形成する工程2a、上記感光性樹脂層cに対し、露光及び現像処理により上記感光性樹脂層の樹脂パターンc’を得る工程3、エッチングにより上記導電層a中の金属ナノ体を除去し、導電パターンdを形成する工程4、及び、上記樹脂1及び上記樹脂2の少なくとも一方を軟化又は膨潤させる工程5aを含む導電パターンを有する基板の製造方法。
<2> 基板上に、金属ナノ体及び樹脂1を含む導電層aを形成する工程1a、上記導電層a上に、感光性樹脂層cを形成する工程2b、上記感光性樹脂層cに対し、露光及び現像処理により上記感光性樹脂層の樹脂パターンc’を得る工程3、エッチングにより上記導電層a中の金属ナノ体を除去し、導電パターンdを形成する工程4、及び、上記樹脂1を軟化又は膨潤させる工程5bを含む導電パターンを有する基板の製造方法。
<3> 得られた導電パターンを有する基板の少なくとも一方の面が、上記導電パターンdが形成された第1の区画と、上記導電パターンdが形成されていない第2の区画とを有し、上記第2の区画を上記基板の厚さ方向から走査型電子顕微鏡により観察した場合における空隙が観察される面積が、上記第2の区画の全面積に対し、10%以下である<1>又は<2>に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
<4> 上記第2の区画を上記基板の厚さ方向から走査型電子顕微鏡により観察した場合における空隙が観察される面積が、上記第2の区画の全面積に対し、8%以下である<3>に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
<5> 上記第2の区画を上記基板の厚さ方向から走査型電子顕微鏡により観察した場合における空隙が観察される面積が、上記第2の区画の全面積に対し、5%以下である<4>に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
<6> 上記導電層aの波長380nm~780nmの光に対する透過率が、70%以上である<1>~<5>のいずれか1つに記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
<7> 上記金属ナノ体が、金属ナノワイヤである<1>~<6>のいずれか1つに記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
<8> 上記金属ナノ体が、アスペクト比1:1~1:10、かつ球相当径1nm~200nmのナノ粒子である<1>~<7>のいずれか1つに記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
<9> 上記金属ナノ体が、銀又は銀化合物のナノ体である<1>~<8>のいずれか1つに記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
<10> 導電パターンd’を、上記基板における上記導電層aが設けられた面とは反対側の面に更に形成する<1>~<9>のいずれか1つに記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
<11> 上記樹脂層bが、上記金属ナノ体に含まれる金属と結合又は配位可能な化合物eを有する<1>に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
<12> 上記化合物eが、非共有電子対を有する化合物である<11>に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
<13> 上記化合物eが、非共有電子対を有する含窒素化合物及び非共有電子対を有する含硫黄化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である<12>に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
<14> 上記感光性樹脂層cが、アルカリ可溶性樹脂と、重合性化合物と、光重合開始剤とを含む<1>~<13>のいずれか1つに記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
<15> 上記感光性樹脂層cが、酸の作用により極性が変化する樹脂と、光酸発生剤とを含む<1>~<13>のいずれか1つに記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
<16> 上記感光性樹脂層cが、フェノール性水酸基を有する構成単位を有する樹脂と、キノンジアジド化合物とを含む<1>~<13>のいずれか1つに記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
<17> 上記感光性樹脂層cが、感光性転写材料により形成される<1>~<16>のいずれか1つに記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
<18> 上記感光性樹脂層c上に、中間層を更に有する<1>~<17>のいずれか1つに記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
<19> 工程5aが、加熱処理により上記樹脂1及び上記樹脂2の少なくとも一方を軟化させ、上記エッチングにより上記金属ナノ体が除去されて生じた空隙を充填する工程である<1>に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
<20> 上記工程5aにおける上記加熱処理が、Tgp<Th<Tgbを満たす加熱温度である<19>に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
なお、Thは工程5aにおける加熱処理時の最高温度(℃)を表し、Tgpは樹脂1のガラス転移温度及び樹脂2のガラス転移温度のうちの低いほうの温度(℃)を表し、Tgbは基板のガラス転移温度(℃)を表す。
<21> 工程5bが、加熱処理により上記樹脂1を軟化させ、上記エッチングにより上記金属ナノ体が除去されて生じた空隙を充填する工程である<2>に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
<22> 工程5aが、上記工程4中又は上記工程4後において、上記樹脂1及び上記樹脂2の少なくとも一方を膨潤させ、上記エッチングにより上記金属ナノ体が除去されて生じた空隙を充填する工程である<1>に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
<23> 工程5bが、上記工程4中又は上記工程4後において、上記樹脂1を膨潤させ、上記エッチングにより上記金属ナノ体が除去されて生じた空隙を充填する工程である<2>に記載の導電パターンを有する基板の製造方法。
<24> <1>~<23>のいずれか1つに記載の導電パターンを有する基板の製造方法により得られた導電パターンを有する基板を備える電子デバイスの製造方法。
【0008】
<25> 基板と、上記基板の少なくとも一方の面に、金属ナノ体及び樹脂1を含む導電パターンdが形成された第1の区画と、上記導電パターンdが形成されていない第2の区画とを有し、上記第2の区画を上記基板の厚さ方向から走査型電子顕微鏡により観察した場合における空隙が観察される面積が、上記第2の区画の全面積に対し、10%以下である導電パターンを有する基板。
<26> 上記第2の区画に、上記樹脂1が存在する<25>に記載の導電パターンを有する基板。
<27> 上記第1の区画の上記基板表面からの層厚さをH1、上記第2の区画の上記基板表面からの層厚さをH2としたときに、0.90≦H1/H2≦1.11を満たす<26>に記載の導電パターンを有する基板。
<28> 上記第2の区画に存在する深さ10nm以上の凹部の個数が、10個/100μm以下である<26>又は<27>に記載の導電パターンを有する基板。
【0009】
<29> ガラス転移温度が150℃以下である樹脂を含む樹脂層を有する金属ナノ体用保護膜。
<30> 上記ガラス転移温度が150℃以下である樹脂が、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及び、フェノール樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含む<29>に記載の金属ナノ体用保護膜。
<31> 上記樹脂層が、オキシムエステル系光重合開始剤、ビイミダゾール系光重合開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、及び、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種の重合開始剤を更に含む<29>又は<30>に記載の金属ナノ体用保護膜。
<32> 上記樹脂層が、2官能以上の重合性化合物を更に含む<29>~<31>のいずれか1つに記載の金属ナノ体用保護膜。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、通電後の導電パターンの寸法安定性に優れる導電パターンを有する基板の製造方法を提供することができる。
本発明の他の一実施形態によれば、上記導電パターンを有する基板の製造方法により得られる導電パターンを有する基板を備えた電子デバイスの製造方法を提供することができる。
本発明の更に他の実施形態によれば、通電後の導電パターンの寸法安定性に優れる導電パターンを有する基板又は金属ナノ体用保護膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】感光性転写材料の構成の一例を示す概略図である。
図2】パターンAを示す概略平面図である。
図3】パターンBを示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の内容について説明する。なお、添付の図面を参照しながら説明するが、符号は省略する場合がある。
また、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの双方、又は、いずれかを表し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの双方、又は、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル及びメタクリロイルの双方、又は、いずれかを表す。
更に、本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も含む。また、露光に用いられる光としては、一般的に、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線(活性エネルギー線)が挙げられる。
また、本明細書における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、「透明」とは、波長400nm~700nmの可視光の平均透過率が、80%以上であることを意味し、90%以上であることが好ましい。
本明細書において、可視光の平均透過率は、分光光度計を用いて測定される値であり、例えば、(株)日立製作所製の分光光度計U-3310を用いて測定できる。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶剤THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本明細書において「全固形分」とは、組成物の全組成から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また、「固形分」とは、上述のように、溶剤を除いた成分であり、例えば、25℃において固体であっても、液体であってもよい。
【0013】
(導電パターンを有する基板の製造方法)
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法の第一の実施態様は、基板上に、金属ナノ体及び樹脂1を含む導電層aを形成する工程1a、上記導電層a上に、樹脂2を含む樹脂層bを形成する工程1b、上記樹脂層b上に、感光性樹脂層cを形成する工程2a、上記感光性樹脂層cに対し、露光及び現像処理により上記感光性樹脂層の樹脂パターンc’を得る工程3、エッチングにより上記導電層a中の金属ナノ体を除去し、導電パターンdを形成する工程4、及び、上記樹脂1及び上記樹脂2の少なくとも一方を軟化又は膨潤させる工程5aを含む。
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法の第二の実施態様は、基板上に、金属ナノ体及び樹脂1を含む導電層aを形成する工程1a、上記導電層a上に、感光性樹脂層cを形成する工程2b、上記感光性樹脂層cに対し、露光及び現像処理により上記感光性樹脂層の樹脂パターンc’を得る工程3、エッチングにより上記導電層a中の金属ナノ体を除去し、導電パターンdを形成する工程4、及び、上記樹脂1を軟化又は膨潤させる工程5bを含む。
【0014】
なお、本明細書において、特に断りなく、単に「本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法」という場合は、上記第一の実施態様及び上記第二の実施態様の全てについて述べるものとする。また、特に断りなく、単に「工程1a」等という場合は、上記第一の実施態様及び上記第二の実施態様の全ての工程1a等について述べるものとする。
【0015】
従来、タッチパネル基板の視認部に用いられてきた金属酸化物による透明配線(インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム酸化亜鉛(IZO)等)は、柔軟性に劣るため、例えば折り曲げ可能なタッチパネルデバイス用配線基板とするには課題がある。また、低消費電力の観点から、これら金属酸化物配線の置き換えが望まれている。
こうした柔軟性の課題を解決する一つの手段として、金属ナノ体、特に金属ナノワイヤを樹脂中に分散した構造体を導電層として用い、配線形成する技術が近年開発されている。このような構造体では、樹脂中に分散された金属ナノ体が相互に多数の接点を持つことで導通性を発現するため、変形を受けた際に金属ナノ体自体が破断することも、金属ナノ体相互の多数の接点全てが同時に破断することも起こりにくいため、抵抗変化が極めて小さい。特に金属ナノ体として金属ナノワイヤを用いることで、非常に低い抵抗値と変形耐性を得ることができ、配線材料として適した性質を持つ。
しかしながら、従来、金属ナノ体及び樹脂を含む導電層により導電パターンを形成する場合、金属ナノ体は樹脂等に分散した状態であるため、エッチング時に金属ナノ体のみが溶解し、樹脂部分はそのまま残存する場合が多くみられる。これは、金属ナノ体の分散に用いられる樹脂は、分散安定性、金属ナノ体の酸化防止等の観点からしばしば疎水的であるため、エッチングに用いられる水溶液とは相溶しないためである。
この場合、エッチングされた部分は金属ナノ体の溶解した部分が空隙として残り、実質的にナノ体が存在しない絶縁部となる。
【0016】
本開示における空隙は、金属ナノ体が除去された跡である。このため、空隙の凹みの深さは、導電層a又は樹脂層bの金属ナノ体が存在しない部分に存在する凹みの深さよりも、大きくなる場合が多い。
具体的には、導電層a又は樹脂層bの金属ナノ体が存在しない部分の最大谷深さRv1と、導電層aのエッチング後に残された樹脂部分の最大谷深さRv2とを原子間力顕微鏡(AFM)を用いて計測し、Rv2>Rv1である場合が多い。空隙としては、導電層aのエッチング後に残された樹脂部分の厚みの一部が凹んだ状態、及び、基材まで貫通した状態等があり得る。例えば、導電層aの平均厚みが10nmで、Rv1が1nmであった場合、空隙の深さは1nmより大きく、10nm以下となる場合が多い。
なお、本開示における空隙は導電層中に分散して存在する金属ナノ体が除去された跡であるため、導電層自体をパターニングすることによって生じた凹み(例えば、導電層にスルーホールを形成した場合)は、空隙ではない。
また、空隙は金属ナノ体の形状によってさまざまな形態をとりえる。球状のナノ粒子に起因する空隙は円形であり、棒状又は糸状のナノワイヤに起因する空隙は溝状である。
【0017】
こうした空隙部が残った状態の導電パターンを有する基板に通電した場合、空隙部への水分混入、エッチング残渣などが原因となり、導電パターン中における金属ナノ体が酸化され、イオン化した金属が空隙内を拡散する現象が起こることがある。拡散した金属は回路の別部分で還元され、金属として析出する。この金属マイグレーション現象により、回路幅減少、及び、金属の析出といった不具合が生じ、通電後の導電パターンの寸法安定性に問題が生じることを本発明者らは見出した。
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法は、金属ナノ体及び樹脂を含む導電層を用い、導電層上に樹脂パターンを形成し、上記樹脂パターンが形成されていない部分における上記導電層をエッチングにより除去した場合であっても、通電後の導電パターンの寸法安定性に優れる。
【0018】
以下、本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法について、詳細に説明する。
【0019】
<空隙>
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法は、得られた導電パターンを有する基板の少なくとも一方の面が、上記導電パターンdが形成された第1の区画と、上記導電パターンdが形成されていない第2の区画とを有することが好ましく、通電後の導電パターンの寸法安定性の観点から、上記第2の区画を上記基板の厚さ方向から走査型電子顕微鏡により観察した場合における空隙が観察される面積が、上記第2の区画の全面積に対し、10%以下であることがより好ましく、上記空隙が観察される面積が、上記第2の区画の全面積に対し、8%以下であることが更に好ましく、上記空隙が観察される面積が、上記第2の区画の全面積に対し、5%以下であることが特に好ましく、上記空隙が観察される面積が、上記第2の区画の全面積に対し、0%以上3%以下であることが最も好ましい。
【0020】
導電パターンを有する基板の上記第2の区画における空隙が観察される面積の測定方法は、以下の通りである。
導電パターンを有する基板における、導電パターンが存在しない部分(第2の区画)について、基板の面方向に垂直な方向から走査型電子顕微鏡で100μm四方に存在する空隙を観察する。観察した画像の空隙部分を二値化して観察視野に占めるピクセル数の割合を空隙率(空隙が観察される面積の割合)とする。サンプル上の異なる場所、3か所での観察を行い、平均値をそのサンプルの空隙率とする。
【0021】
<工程1a>
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法は、基板上に、金属ナノ体及び樹脂1を含む導電層aを形成する工程1aを含む。
上記導電層aに含まれる金属ナノ体の材質としては、銅、銀、亜鉛、鉄、クロム、モリブデン、ニッケル、アルミニウム、金、白金、パラジウム、これらの2種以上の合金、並びに、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、導電性シリカ等を用いることができるが、抵抗値、コスト、焼結温度等の点から、銅、銀、ニッケル、アルミニウム、金、白金、パラジウム又はこれらの合金が好ましく、銀、銅又はこれらの合金がより好ましく、特に焼結温度及び酸化抑制の点から、銀又は銀の合金が更に好ましく、銀が特に好ましい。すなわち、金属ナノ体は、銀又は銀化合物のナノ体であることが特に好ましい。
金属ナノ体の形状は、特に制限はなく、公知の形状であればよいが、金属ナノ体としては、金属ナノ粒子、又は、金属ナノワイヤであることが好ましく、金属ナノワイヤであることがより好ましい。
【0022】
金属ナノワイヤの形状としては、円柱状、直方体状、断面が多角形となる柱状等が挙げられる。金属ナノワイヤは、高い透明性が必要とされる用途では、円柱状、及び、断面が多角形となる柱状の少なくとも一方の形状を有することが好ましい。
金属ナノワイヤの断面形状は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することができる。
【0023】
金属ナノワイヤの直径(いわゆる、短軸長)は、特に制限されないが、例えば、透明性の観点から、50nm以下であることが好ましく、35nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることが更に好ましい。
金属ナノワイヤの直径の下限は、例えば、耐酸化性及び耐久性の観点から、5nm以上であることが好ましい。
【0024】
金属ナノワイヤの長さ(いわゆる、長軸長)は、特に制限されないが、例えば、導電性の観点から、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることが更に好ましい。
金属ナノワイヤの長さの上限は、例えば、製造過程における凝集物の生成抑制の観点から、1mm以下であることが好ましい。
【0025】
金属ナノワイヤの直径及び長さは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)又は光学顕微鏡を用いて、測定することができる。
具体的には、透過型電子顕微鏡(TEM)又は光学顕微鏡を用いて拡大観察される金属ナノワイヤから、無作為に選択した300個の金属ナノワイヤの直径と長さを測定する。測定された値を算術平均し、得られた値を金属ナノワイヤの直径及び長さとする。
【0026】
金属ナノ粒子としては、球状粒子であっても、平板状粒子であっても、不定形状粒子であってもよい。
上記金属ナノ粒子の平均一次粒径は、安定性及び融着温度の点から、0.1nm~500nmが好ましく、1nm~200nmがより好ましく、1nm~100nmが特に好ましい。
本開示における金属ナノ粒子の平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(例えば、S-3700N、(株)日立ハイテクノロジーズ製)により粒子100個の走査型電子顕微鏡写真(SEM像)撮影を行い、画像処理測定装置(ルーゼックス AP;(株)ニレコ製)を用いて、その粒径を測定し算術平均値を求めることによって得ることができる。すなわち、本開示でいう粒径は、粒子の投影形状が円形である場合にはその直径で表し、球形以外の不定形であれば、その投影面積と同じ面積の円とした際の直径で表す。
【0027】
上記金属ナノ粒子は、導電性の観点から、銀よりも貴な金属を含有することも好ましく、この場合、少なくとも一部が金により被覆された扁平状粒子を含有することがより好ましい。ここで、「銀よりも貴な金属」であるとは、「銀の標準電極電位よりも高い標準電極電位を有する金属」を意味する。
上記金属ナノ粒子における、銀より貴な金属の銀に対する比率は、0.01原子%~5原子%であることが好ましく、0.1原子%~2原子%であることがより好ましく、0.2原子%~0.5原子%であることが更に好ましい。
なお、銀より貴な金属の含有量は、例えば、試料を酸などにより溶解後、高周波誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光分析により測定することができる。
【0028】
また、上記金属ナノ体は、分散性、及び、導通性の観点から、アスペクト比1:1~1:10、かつ球相当径1nm~200nmのナノ粒子であることが好ましい。
【0029】
上記導電層aにおける金属ナノ体は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
金属ナノ体の含有量は、導通性、及び、分散安定性の点から、上記導電層aの全質量に対し、1質量%~99質量%であることが好ましく、1質量%~95質量%であることがより好ましく、1質量%~90質量%であることが更に好ましい。
【0030】
上記導電層aに含まれる樹脂1としては、耐久性の観点から、バインダーポリマーであることが好ましい。
樹脂1としては、例えば、アクリル樹脂〔例えば、ポリ(メタクリル酸メチル)〕、ポリエステル樹脂〔例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)〕、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)、ポリノルボルネン、セルロース樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
セルロース樹脂としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、セルロース等が挙げられる。
また、樹脂1は、導電性の高分子材料であってもよい。
導電性の高分子材料としては、ポリアニリン、ポリチオフェン等が挙げられる。
中でも、樹脂1は、金属ナノ体の分散性、及び、通電後の導電パターンの寸法安定性の観点から、セルロース樹脂、ポリビニルアルコール、及び、ポリビニルピロリドンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂であることが好ましく、セルロース樹脂であることがより好ましい。
【0031】
樹脂1のガラス転移温度(Tg)は、通電後の導電パターンの寸法安定性の観点から、180℃以下であることが好ましく、40℃~160℃であることがより好ましく、60℃~150℃であることが特に好ましい。
【0032】
本開示において、樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定することができる。
具体的な測定方法は、JIS K 7121(1987年)又はJIS K 6240(2011年)に記載の方法に順じて行なう。本明細書におけるガラス転移温度は、補外ガラス転移開始温度(以下、Tigと称することがある)を用いている。
ガラス転移温度の測定方法をより具体的に説明する。
ガラス転移温度を求める場合、予想される樹脂のTgより約50℃低い温度にて装置が安定するまで保持した後、加熱速度:20℃/分で、ガラス転移が終了した温度よりも約30℃高い温度まで加熱し,示差熱分析(DTA)曲線又はDSC曲線を作成する。
補外ガラス転移開始温度(Tig)、すなわち、本明細書におけるガラス転移温度Tgは、DTA曲線又はDSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度として求める。
【0033】
上記導電層aにおける樹脂1は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
樹脂1の含有量は、焼結時の金属被膜形成性、及び、導電性の点から、上記導電層aの全質量に対し、1質量%~90質量%であることが好ましく、10質量%~80質量%であることがより好ましく、20質量%~70質量%であることが特に好ましい。
【0034】
上記導電層aは、他の添加剤を更に含んでいてもよい。
他の添加剤としては、界面活性剤等の公知の添加剤が挙げられる。
界面活性剤としては、ラピゾールA-90(日油(株)製、固形分濃度1%)、ナロアクティーCL-95(三洋化成工業(株)製、固形分濃度1%)、などが挙げられる。
また、上記導電層aは、無機粒子を含んでいてもよい。
無機粒子としては、シリカ、ムライト、アルミナ等が挙げられる。
【0035】
上記導電層aは、透明性が高いことが好ましく、また、波長380nm~780nmの光に対する透過率が、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
【0036】
上記導電層aの厚さは制限されない。導電層aの平均厚さは、導電性、及び、製膜性の観点から、0.001μm~1,000μmであることが好ましく、0.005μm~15μmであることがより好ましく、0.01μm~10μmであることが特に好ましい。
本開示における各層及び基板の平均厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、面内方向に対して垂直方向の断面を観察することによって測定される、10箇所の厚さの平均値とする。
【0037】
上記導電層aの形成方法としては、特に制限はないが、上記金属ナノ体を含む導電性素材を液中に分散した材料、すなわち、導電性インクを塗布することにより形成することが好ましい。
また、導電性インクの塗布方法としては、特に制限はないが、インクジェット法、スプレー法、ロールコート法、バーコート法、カーテンコート法、及び、ダイコート法(すなわち、スリットコート法)等が挙げられる。
本開示に用いられる導電性インクは、硬化型のもの、例えば、熱硬化型、光硬化型、又は、熱及び光硬化型のものであってもよい。
上記導電性インクは、金属ナノ材料、及び、樹脂を含み、溶剤及び上記他の添加剤の少なくともいずれかを更に含んでいてもよい。
上記導電性インクに含まれる溶剤としては、水、及び、有機溶剤を使用することができる。
有機溶剤としては、トルエン、ドデカン、テトラデカン、シクロドデセン、n-ヘプタン、n-ウンデカン等の炭化水素類、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が好ましい。
上記導電層aの形成方法としては、塗布後、必要に応じ、乾燥、焼成等の工程を含んでいてもよい。
【0038】
また、上記導電層aは、所望の導電パターンの形状よりも大きい形状で形成されることが好ましい。
【0039】
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法に用いられる基板としては、公知の基板を用いればよく、必要に応じて導電層以外の任意の層を有してもよい。
基板としては、例えば、樹脂基板、ガラス基板、及び、半導体基板が挙げられる。
基板の好ましい態様としては、例えば、国際公開第2018/155193号の段落0140に記載されたものが挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0040】
基板を構成する基材としては、例えば、ガラス、シリコン及びフィルムが挙げられる。
基板を構成する基材は、透明であることが好ましい。
透明なガラス基板としては、コーニング社のゴリラガラスに代表される強化ガラスが挙げられる。また、透明なガラス基板としては、特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報及び特開2010-257492号公報に用いられている材料を用いることができる。
【0041】
基板としてフィルム基板を用いる場合は、光学的に歪みが小さく、かつ/又は、透明度が高いフィルム基板を用いることが好ましい。そのようなフィルム基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリイミド及びシクロオレフィンポリマーが挙げられる。
【0042】
基板としては、ロールツーロール方式で製造する場合、フィルム基板が好ましい。また、ロールツーロール方式によりタッチパネル用の回路配線を製造する場合、基板がシート状樹脂組成物であることが好ましい。
【0043】
上記基板は、上記導電層aを1層単独で有してよく、2層以上有してもよい。2層以上の導電層aを有する場合は、異なる材質の導電層を有することが好ましい。
また、上記基板は、上記導電層aを一方の面のみに有していても、両面にそれぞれ有していてもよい。
【0044】
また、基板としては、引き回し配線を更に有する基板であってもよい。上記のような基板は、タッチパネル用基板として好適に使用できる。
引き回し配線の材質としては、金属が好ましい。
引き回し配線の材質である金属としては、金、銀、銅、モリブデン、アルミニウム、チタン、クロム、亜鉛、及び、マンガン、並びに、これらの金属元素の2種以上からなる合金が挙げられる。引き回し配線の材質としては、銅、モリブデン、アルミニウム、又は、チタンが好ましく、銅が特に好ましい。
【0045】
<工程1b>
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法の第一の実施態様は、上記導電層a上に、樹脂2を含む樹脂層b(「保護層」ともいう。)を形成する工程1bを含む。
【0046】
樹脂2としては、アクリル樹脂(例えば、三菱ケミカル(株)製ダイヤナールシリーズ、(株)日本触媒製アクリセットシリーズ等)、ポリエステル樹脂(例えば、ユニチカ(株)製エリーテルシリーズ、三菱ケミカル(株)製ニチゴーポリエスターシリーズ等)、ポリビニルアルコール樹脂(例えば、(株)クラレ製ポバールシリーズ等)、ポリビニルアセタール樹脂(例えば、積水化学工業(株)製エスレックシリーズ等)、フェノール樹脂(例えば、DIC(株)製フェノライトシリーズ等)、が好ましく挙げられる。
中でも、樹脂2は、通電後の導電パターンの寸法安定性の観点から、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及び、フェノール樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましく、ベンジル(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する重合体、及び、ポリエステル樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含むことがより好ましい。
【0047】
樹脂2のガラス転移温度(Tg)は、通電後の導電パターンの寸法安定性の観点から、150℃以下であることが好ましく、30℃~140℃であることがより好ましく、40℃~130℃であることが更に好ましく、40℃~120℃であることが特に好ましい。
【0048】
樹脂2の酸価は、耐エッチング性、及び、通電後の導電パターンの寸法安定性の観点から、0mgKOH/g~60mgKOH/gであることが好ましく、0mgKOH/g~50mgKOH/gであることがより好ましく、0mgKOH/g~40mgKOH/gであることが特に好ましい。
樹脂2の酸価は、後述の測定方法により測定することができる。
【0049】
上記樹脂層bにおける樹脂2は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
樹脂2の含有量は、焼結時の金属被膜形成性、及び、導電性の点から、上記樹脂層bの全質量に対し、40質量%~100質量%であることが好ましく、50質量%~95質量%であることがより好ましく、55質量%~90質量%であることが特に好ましい。
【0050】
上記樹脂層bは、重合性化合物を含んでいてもよい。
上記樹脂層bが重合性化合物を含む場合、上記樹脂層bは、重合性化合物、及び、重合開始剤を含むことが好ましい。
重合性化合物としては、硬化性の観点から、エチレン性不飽和化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。
また、重合性化合物としては、硬化性、及び、樹脂層bの強度の観点から、2官能以上の重合性化合物を含むことが好ましく、3官能~10官能の重合性化合物を含むことがより好ましく、4官能~8官能の重合性化合物を含むことが特に好ましい。
更に、重合性化合物は、硬化性、及び、樹脂層bの強度の観点から、2官能以上エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、2官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含むことがより好ましい。
また、重合性化合物としては、後述する感光性樹脂層に用いられる重合性化合物も好適に用いることができる。
【0051】
上記樹脂層bにおける重合性化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
重合性化合物の含有量は、樹脂層bの強度の観点から、上記樹脂層bの全質量に対し、5質量%~55質量%であることが好ましく、10質量%~50質量%であることがより好ましく、20質量%~45質量%であることが特に好ましい。
【0052】
重合開始剤としては、光重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては特に制限はなく、公知の光重合開始剤を使用できる。
光重合開始剤としては、オキシムエステル構造を有する光重合開始剤(以下、「オキシム系光重合開始剤」ともいう。)、α-アミノアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤(以下、「α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤」ともいう。)、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤(以下、「α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤」ともいう。)、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する光重合開始剤(以下、「アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤」ともいう。)、及び、N-フェニルグリシン構造を有する光重合開始剤(以下、「N-フェニルグリシン系光重合開始剤」ともいう。)等が挙げられる。
中でも、上記樹脂層bは、硬化性の観点から、オキシムエステル系光重合開始剤、ビイミダゾール系光重合開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、及び、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種の重合開始剤を含むことが好ましく、オキシムエステル系光重合開始剤を含むことがより好ましい。
【0053】
上記樹脂層bにおける重合開始剤は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の含有量は、樹脂層bの強度の観点から、上記樹脂層bの全質量に対し、0.1質量%~20質量%であることが好ましく、0.2質量%~10質量%であることがより好ましく、0.5質量%~5質量%であることが特に好ましい。
【0054】
上記樹脂層bは、導電層aとの密着性、及び、通電後の導電パターンの寸法安定性の観点から、上記金属ナノ体に含まれる金属と結合又は配位可能な化合物eを有することが好ましい。
上記化合物eは、配位性、及び、通電後の導電パターンの寸法安定性の観点から、非共有電子対を有する化合物であることが好ましく、非共有電子対を有する含窒素化合物及び非共有電子対を有する含硫黄化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることがより好ましく、非共有電子対を有する含窒素化合物であることが特に好ましい。
また、上記化合物eは、配位性、及び、通電後の導電パターンの寸法安定性の観点から、複素環式化合物であることが好ましく、含窒素複素環式化合物、含硫黄複素環式化合物、又は、含窒素かつ含硫黄複素環式化合物であることがより好ましく、含窒素複素環式化合物であることが特に好ましい。
更に、含窒素複素環式化合物は、配位性、及び、通電後の導電パターンの寸法安定性の観点から、2つ以上の窒素原子を有する複素環を有することが好ましく、3つ以上の窒素原子を有する複素環を有することがより好ましく、3つ又は4つの窒素原子を有する複素環を有することが特に好ましい。
【0055】
複素環式化合物が有する複素環は、単環及び多環のいずれの複素環でもよい。
複素環式化合物が有するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子が挙げられる。複素環式化合物は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の原子を有することが好ましく、窒素原子を有することがより好ましい。
【0056】
複素環式化合物としては、例えば、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、トリアジン化合物、ローダニン化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、又は、ピリミジン化合物が好ましく挙げられる。上記の中でも、複素環式化合物は、導電層aとの密着性の観点から、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、トリアジン化合物、ローダニン化合物、チアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、及び、ベンゾオキサゾール化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましく、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、及び、ベンゾオキサゾール化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることがより好ましく、トリアゾール化合物、及び、テトラゾール化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが更に好ましく、トリアゾール化合物が特に好ましい。
【0057】
複素環式化合物の好ましい具体例を以下に示す。トリアゾール化合物、及びベンゾトリアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0058】
【化1】
【0059】
【化2】
【0060】
テトラゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0061】
【化3】
【0062】
【化4】
【0063】
チアジアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0064】
【化5】
【0065】
トリアジン化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0066】
【化6】
【0067】
ローダニン化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0068】
【化7】
【0069】
チアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0070】
【化8】
【0071】
ベンゾチアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0072】
【化9】
【0073】
ベンゾイミダゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0074】
【化10】
【0075】
【化11】
【0076】
ベンゾオキサゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0077】
【化12】
【0078】
含硫黄化合物としては、チオール化合物、及び、ジスルフィド化合物が好ましく挙げられる。
チオール化合物としては、脂肪族チオール化合物が好ましく挙げられる。
脂肪族チオール化合物としては、単官能の脂肪族チオール化合物、又は多官能の脂肪族チオール化合物(すなわち、2官能以上の脂肪族チオール化合物)が好適に用いられる。
多官能の脂肪族チオール化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビスチオプロピオネート、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,6-ヘキサメチレンジチオール、2,2’-(エチレンジチオ)ジエタンチオール、meso-2,3-ジメルカプトコハク酸、及びジ(メルカプトエチル)エーテルが挙げられる。
単官能の脂肪族チオール化合物としては、例えば、1-オクタンチオール、1-ドデカンチオール、β-メルカプトプロピオン酸、メチル-3-メルカプトプロピオネート、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、メトキシブチル-3-メルカプトプロピオネート、及びステアリル-3-メルカプトプロピオネートが挙げられる。
【0079】
ジスルフィド化合物としては、2-(4’-モルフォリノジチオ)ベンズチアゾール、2,2’-ベンズチアゾイルジスルフィド、ビス(2-ベンズアミドフェニル)ジスルフィド、1,1-チオビス(2-ナフトール)、ビス(2,4,5-トリクロロフェニル)ジスルフィド、4,4’-ジチオモルフォリン、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ビス(2,4-ジニトロフェニル)ジスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルジスルフィド、ジアリルジスルフィド、ジ-tert-ブチルジスルフィド、ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)ジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、o-イソブチロイルチアミンジスルフィド、ジフェニルジスルフィドが挙げられる。
【0080】
また、上記化合物eの分子量は、導電層aとの密着性の観点から、1,000未満であることが好ましく、50~500であることがより好ましく、50~200であることが更に好ましく、50~150であることが特に好ましい。
【0081】
上記樹脂層bにおける上記化合物eは、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
上記化合物eの含有量は、導電層aとの密着性の観点から、上記樹脂層bの全質量に対し、0.01質量%~20質量%であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましく、0.3質量%~8質量%であることが更に好ましく、0.5質量%~5質量%であることが特に好ましい。
【0082】
また、樹脂層bは、その他、公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0083】
上記樹脂層bの平均厚さは、特に制限されないが、通電後の導電パターンの寸法安定性の観点から、1nm~200nmであることが好ましく、5nm~100nmであることがより好ましく、15nm~50nmであることが特に好ましい。
【0084】
導電層a上に樹脂層bを形成した後の層aと層bとを合わせた層の合計厚みとしては、15nm~100nmが好ましく、15nm~90nmがより好ましく、15nm~60nmが特に好ましい。この際、層aと層bとを合わせた層の合計厚みは、それぞれの層を単独で形成した場合の層厚みを合算したものと等しくてもよく、等しくなくてもよい。例えば、層a及び層bに含まれる樹脂同士の相溶性が高い場合、層a及び層bの素材が一部混合した層が形成されるため、この場合は、層aと層bとを合わせた層の合計厚みは、それぞれの層を単独で形成した場合の層厚みを合算したものと等しくなくなる。
【0085】
<工程2a、及び、工程2b>
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法の第一の実施態様は、上記樹脂層b上に、感光性樹脂層cを形成する工程2aを含む。
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法の第二の実施態様は、上記導電層a上に、感光性樹脂層cを形成する工程2bを含む。
感光性樹脂層cを上記導電層a又は上記樹脂層b上に形成する方法としては、特に制限はなく、公知のレジスト形成方法を用いることができる。中でも、工程2a及び工程2bは、感光性転写材料を上記導電層a又は上記樹脂層b上に接触させ転写することにより上記感光性樹脂層cを形成する工程であることが好ましい。
また、工程2a及び工程2bは、感光性樹脂層c及び中間層をこの順に、上記導電層a又は上記樹脂層b上に形成する工程であることが好ましく、上記中間層は、水溶性樹脂層、及び、熱可塑性樹脂層であることがより好ましい。
感光性転写材料を用いて感光性樹脂層cを上記導電層a又は上記樹脂層b上に転写する方法としては、感光性転写材料における感光性樹脂層cに上記導電層a又は上記樹脂層bを接触させ、感光性転写材料と上記導電層a又は上記樹脂層bとを圧着させることが好ましい。上記態様であると、感光性転写材料における感光性樹脂層cと上記導電層a又は上記樹脂層bとの密着性が向上するため、露光及び現像後のパターン形成された感光性樹脂層cは、導電層をエッチングする際のエッチングレジストとして好適に用いることができる。
なお、本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法に用いられる感光性転写材料の好ましい態様は、まとめて後述する。
【0086】
上記感光性樹脂層cは、ポジ型の感光性樹脂層であっても、ネガ型の感光性樹脂層であってもよい。
上記感光性樹脂層cは、以下のいずれの態様も好ましく挙げられる。
上記感光性樹脂層cが、アルカリ可溶性樹脂と、重合性化合物と、光重合開始剤とを含む態様
上記感光性樹脂層cが、酸の作用により極性が変化する樹脂(好ましくは、酸分解性樹脂、すなわち、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体)と、光酸発生剤とを含む態様
上記感光性樹脂層cが、フェノール性水酸基を有する構成単位を有する樹脂と、キノンジアジド化合物とを含む態様
【0087】
上記導電層a又は上記樹脂層bと感光性転写材料とを圧着する方法としては、特に制限されず、公知の転写方法、及び、ラミネート方法を用いることができる。
感光性転写材料の上記導電層a又は上記樹脂層bへの貼り合わせは、感光性転写材料における仮支持体に対して感光性樹脂層cを有する側の最外層と上記導電層a又は上記樹脂層bとを重ね、ロール等の手段を用いて加圧及び加熱を施すことにより、行われることが好ましい。貼り合わせには、ラミネーター、真空ラミネーター、及び、より生産性を高めることができるオートカットラミネーター等の公知のラミネーターが使用できる。
ラミネート温度としては、特に制限されないが、例えば、70℃~130℃であることが好ましい。
【0088】
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法は、ロールツーロール方式により行われることが好ましい。
以下、ロールツーロール方式について説明する。
ロールツーロール方式とは、基板として、巻き取り及び巻き出しが可能な基板を用い、本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法に含まれるいずれかの工程の前に、上記基板又は上記導電層等を有する基板を巻き出す工程(「巻き出し工程」ともいう。)と、いずれかの工程の後に、上記導電層等を有する基板を巻き取る工程(「巻き取り工程」ともいう。)と、を含み、少なくともいずれかの工程(好ましくは、全ての工程、又は加熱工程以外の全ての工程)を、上記基板又は上記導電層等を有する基板を搬送しながら行う方式をいう。
巻き出し工程における巻き出し方法、及び巻き取り工程における巻取り方法としては、特に制限されず、ロールツーロール方式を適用する製造方法において、公知の方法を用いればよい。
【0089】
また、感光性転写材料が保護フィルムを有する場合、本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法は、工程2a又は工程2bの前に、保護フィルムを剥離する保護フィルム剥離工程を含むことが好ましい。
保護フィルムを剥離する方法は、制限されず、公知の方法を適用することができる。
【0090】
また、上記感光性転写材料を用いた場合、本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法は、工程2a又は工程2bと工程3との間、又は、工程3における露光と現像処理との間に、仮支持体を剥離する仮支持体剥離工程を含むことが好ましい。
仮支持体の剥離方法は特に制限されず、特開2010-072589号公報の段落0161~0162に記載されたカバーフィルム剥離機構と同様の機構を使用できる。
【0091】
<工程3>
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法は、基板上に、上記感光性樹脂層cに対し、露光及び現像処理により上記感光性樹脂層の樹脂パターンc’を得る工程3を含む。
工程3における露光は、パターン状の露光処理(「パターン露光」ともいう。)、すなわち、露光部と非露光部とが存在する形態の露光処理である。
パターン露光における露光領域と未露光領域との位置関係は特に制限されず、適宜調整される。
【0092】
パターン露光におけるパターンの詳細な配置及び具体的サイズは特に制限されない。例えば、エッチング方法により製造される回路配線を有する入力装置を備えた表示装置(例えばタッチパネル)の表示品質を高め、また、取り出し配線の占める面積が小さくなるように、パターンの少なくとも一部(好ましくはタッチパネルの電極パターン及び/又は取り出し配線の部分)は幅が20μm以下である細線を含むことが好ましく、幅が10μm以下の細線を含むことがより好ましい。
また、得られる樹脂パターンは、本開示における効果をより発揮する観点から、線幅が20μm以下である樹脂パターンを有することが好ましく、線幅が10μm以下である樹脂パターンを有することがより好ましく、線幅が8μm以下である樹脂パターンを有することが更に好ましく、線幅が5μm以下である樹脂パターンを有することが特に好ましい。
【0093】
露光に使用する光源は、感光性樹脂層cを露光可能な波長の光(例えば、365nm又は405nmまたは436nm)を照射する光源であれば、適宜選定して用いることができる。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ及びLED(Light Emitting Diode)が挙げられる。
露光量としては、5mJ/cm~200mJ/cmが好ましく、10mJ/cm~100mJ/cmがより好ましい。
露光に使用する光源、露光量及び露光方法の好ましい態様としては、例えば、国際公開第2018/155193号の段落0146~0147に記載が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0094】
感光性転写材料を用いた場合、工程3においては、転写層(感光性樹脂層c及び中間層)から仮支持体を剥離した後にパターン露光してもよく、仮支持体を剥離する前に、仮支持体を介してパターン露光し、その後、仮支持体を剥離してもよい。マスクは、露光前に仮支持体を剥離した場合には、転写層と接触させて露光してもよいし、接触せずに近接させて露光してもよい。仮支持体を剥離せずに露光する場合には、マスクは、仮支持体と接触させて露光してもよいし、接触せずに近接させて露光してもよい。転写層とマスクとの接触によるマスク汚染の防止、及びマスクに付着した異物による露光への影響を避けるためには、仮支持体を剥離せずにパターン露光することが好ましい。なお、露光方式は、接触露光の場合は、コンタクト露光方式、非接触露光方式の場合は、プロキシミティ露光方式、レンズ系又はミラー系のプロジェクション露光(投影露光)方式、露光レーザー等を用いたダイレクト露光(直接描画露光)方式を適宜選択して用いることができる。レンズ系又はミラー系のプロジェクション露光の場合、必要な解像力、焦点深度に応じて、適当なレンズの開口数(NA)を有する露光機を用いることができる。ダイレクト露光方式の場合は、直接感光性樹脂層cに描画を行ってもよいし、レンズを介して感光性樹脂層cに縮小投影露光をしてもよい。また、露光は大気下で行うだけでなく、減圧下又は真空下で行ってもよく、また、光源と転写層の間に水等の液体を介在させて露光してもよい。
工程3における露光は、解像性の観点からは、上記転写層とマスクとを接触させ接触露光により行われることが好ましい。
また、工程3における露光は、マスク及び感光性樹脂層への影響を小さくできる観点からは、直接描画露光、又は、投影露光により行われることが好ましい。
【0095】
工程3における現像処理は、現像液により行われることが好ましい。
現像液としては、感光性樹脂層cの非画像部(不要部分)を除去することができれば特に制限されず、例えば、特開平5-72724号公報に記載の現像液等の公知の現像液が使用できる。
現像液としては、pKa=7~13の化合物を0.05mol/L~5mol/L(リットル)の濃度で含むアルカリ水溶液系の現像液が好ましい。現像液は、水溶性の有機溶剤及び/又は界面活性剤を含有してもよい。
アルカリ性水溶液に含まれ得るアルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、及び、コリン(2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド)が挙げられる。
現像液としては、国際公開第2015/093271号の段落0194に記載の現像液も好ましく挙げられる。好適に用いられる現像方式としては、例えば、国際公開第2015/093271号の段落0195に記載の現像方式が挙げられる。
【0096】
現像方式としては、特に制限されず、パドル現像、シャワー現像、シャワー及びスピン現像、並びに、ディップ現像のいずれであってもよい。シャワー現像とは、露光後の感光性樹脂層に現像液をシャワーにより吹き付けることにより、非画像部を除去する現像処理である。
現像工程の後に、洗浄剤をシャワーにより吹き付け、現像残渣を除去することが好ましい。
現像液の液温は特に制限されないが、20℃~40℃が好ましい。
【0097】
<工程4>
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法は、エッチングにより上記導電層a中の金属ナノ体を除去し、導電パターンdを形成する工程4を含む。
工程4では、感光性樹脂層cから形成された樹脂パターンc’を、エッチングレジストとして使用し、導電層aのエッチング処理を行う。
エッチング処理の方法としては、公知の方法を適用でき、例えば、特開2017-120435号公報の段落0209~段落0210に記載の方法、特開2010-152155号公報の段落0048~段落0054に記載の方法、エッチング液に浸漬するウェットエッチング法、及び、プラズマエッチング等のドライエッチングによる方法が挙げられる。
また、工程4における上記導電層aの除去は、本開示における効果をより発揮する観点からは、ウェットエッチングにより行われることが好ましい。
【0098】
ウェットエッチングに用いられるエッチング液は、エッチングの対象に合わせて酸性又はアルカリ性のエッチング液を適宜選択すればよい。
酸性のエッチング液としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、フッ酸、シュウ酸及びリン酸から選択される酸性成分単独の水溶液、並びに、酸性成分と、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、フッ化アンモニウム及び過マンガン酸カリウムから選択される塩との混合水溶液が挙げられる。酸性成分は、複数の酸性成分を組み合わせた成分であってもよい。
アルカリ性のエッチング液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミン、及び、有機アミンの塩(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等)から選択されるアルカリ成分単独の水溶液、並びに、アルカリ成分と塩(過マンガン酸カリウム等)との混合水溶液が挙げられる。アルカリ成分は、複数のアルカリ成分を組み合わせた成分であってもよい。
中でも、エッチング液は、硝酸鉄、及び、硫酸鉄よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、エッチング速度や被エッチング材料の形状を制御するため、他の酸、有機溶剤、界面活性剤、アミン、無機塩剤などを組み合わせることも、好ましく用いられる。
【0099】
<工程5a、及び、工程5b>
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法の第一の実施態様は、上記樹脂1及び上記樹脂2の少なくとも一方を軟化又は膨潤させる工程5aを含む。
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法の第二の実施態様は、上記樹脂1を軟化又は膨潤させる工程5bを含む。
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法は、工程5a又は工程5bを含むことにより、工程4により金属ナノ体が除去されて生じた空隙を、上記樹脂1及び上記樹脂2の少なくとも一方を軟化又は膨潤させることにより、埋めて無くす又は小さくすることで、上述した金属マイグレーション現象等を抑制し、通電後の導電パターンの寸法安定性に優れると推定している。
【0100】
工程5aは、通電後の導電パターンの寸法安定性の観点から、上記樹脂1及び上記樹脂2の少なくとも一方を軟化させる工程であることが好ましく、加熱処理により上記樹脂1及び上記樹脂2の少なくとも一方を軟化させる工程であることがより好ましく、加熱処理により上記樹脂1及び上記樹脂2の少なくとも一方を軟化させ、上記エッチングにより上記金属ナノ体が除去されて生じた空隙を充填する工程であることが特に好ましい。
また、通電後の導電パターンの寸法安定性の観点から、工程5aにおいて、上記樹脂2を少なくとも軟化又は膨潤させることが好ましい。
【0101】
工程5bが、通電後の導電パターンの寸法安定性の観点から、上記樹脂1を軟化させる工程であることが好ましく、加熱処理により上記樹脂1を軟化させる工程であることがより好ましく、加熱処理により上記樹脂1を軟化させ、上記エッチングにより上記金属ナノ体が除去されて生じた空隙を充填する工程であることが特に好ましい。
【0102】
工程5a又は工程5bが、樹脂を軟化させる工程である場合、工程5a又は工程5bは、工程4の後に行っても、工程4と同時、すなわち、工程4中に行ってもよいが、工程4の後に行うことが好ましい。
【0103】
工程5a又は工程5bが加熱処理を行う場合、加熱温度は、上記樹脂1及び上記樹脂2の少なくとも一方を軟化させる温度であればよいが、40℃~200℃であることが好ましく、60℃~180℃であることがより好ましく、100℃~160℃であることが特に好ましい。
また、加熱時間は、特に制限はないが、1分~24時間であることが好ましく、5分~6時間であることがより好ましく、10分~60分であることが特に好ましい。
また、上記加熱温度は、通電後の導電パターンの寸法安定性の観点から、樹脂1のガラス転移温度及び樹脂2のガラス転移温度のうちの低いほうの温度より高いことが好ましい。
更に、工程5aにおける上記加熱処理は、通電後の導電パターンの寸法安定性の観点から、Tgp<Th<Tgbを満たす加熱温度であることが特に好ましい。
なお、Thは工程5aにおける加熱処理時の最高温度(℃)を表し、Tgpは樹脂1のガラス転移温度及び樹脂2のガラス転移温度のうちの低いほうの温度(℃)を表し、Tgbは基板のガラス転移温度(℃)を表す。
【0104】
工程5a又は工程5bにおける加熱処理に用いられる加熱手段としては、特に制限はなく、公知の加熱手段を用いることができ、例えば、例えば、ヒーター、ホットプレート、コンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、及び、高周波加熱機等が挙げられる。
【0105】
また、工程5aは、工程4中又は工程4後において、上記樹脂1及び上記樹脂2の少なくとも一方を膨潤させる工程であることが好ましく、工程4中又は工程4後において、上記樹脂1及び上記樹脂2の少なくとも一方を膨潤させ、上記エッチングにより上記金属ナノ体が除去されて生じた空隙を充填する工程であることがより好ましい。
工程5bは、上記工程4中又は上記工程4後において、上記樹脂1を膨潤させる工程であることが好ましく、上記工程4中又は上記工程4後において、上記樹脂1を膨潤させ、上記エッチングにより上記金属ナノ体が除去されて生じた空隙を充填する工程であることがより好ましい。
上記膨潤は、水、有機溶媒等、公知の溶媒を上記樹脂1又は上記樹脂2に接触させることにより好適に行うことができる。
中でも、上記膨潤は、工程4中において、エッチング液により行うことが好ましい。
膨潤時の温度及び溶媒との接触時間は、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0106】
<樹脂パターン除去工程>
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法は、残存する樹脂パターンc’を除去する工程(樹脂パターン除去工程)を行うことが好ましい。樹脂パターン除去は、工程5a又は工程5bの前に行ってもよく、後に行ってもよいが、工程5a又は工程5bの前に行うことが好ましい。
残存する樹脂パターンc’を除去する方法としては特に制限されないが、薬品処理により除去する方法が挙げられ、除去液を用いて除去する方法が好ましい。
樹脂パターンc’の除去方法としては、液温が好ましくは30℃~80℃、より好ましくは40℃~80℃である撹拌中の除去液に、残存する樹脂パターンc’を有する基板を、1分間~30分間浸漬する方法が挙げられる。
【0107】
除去液としては、例えば、無機アルカリ成分又は有機アルカリ成分を、水、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン又はこれらの混合溶液に溶解させた除去液が挙げられる。無機アルカリ成分としては、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが挙げられる。有機アルカリ成分としては、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物、第三級アミン化合物及び第四級アンモニウム塩化合物が挙げられる。
また、除去液を使用し、スプレー法、シャワー法及びパドル法等の公知の方法により除去してもよい。
【0108】
<その他の工程>
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法は、上述した工程以外の任意の工程(その他の工程)を含んでもよい。例えば、以下の工程が挙げられるが、これらの工程に制限されない。
また、本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法に適用可能な露光工程、現像工程、及びその他の工程としては、特開2006-23696号公報の段落0035~0051に記載の工程が挙げられる。
更に、その他の工程としては、例えば、国際公開第2019/022089号の段落0172に記載の可視光線反射率を低下させる工程、国際公開第2019/022089号の段落0172に記載の絶縁膜上に新たな導電層を形成する工程等が挙げられるが、これらの工程に制限されない。
【0109】
-可視光線反射率を低下させる工程-
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法は、上記導電層の一部又は全ての可視光線反射率を低下させる処理を行う工程を含んでいてもよい。
可視光線反射率を低下させる処理としては、酸化処理が挙げられる。銅を含有する導電層を有する場合、銅を酸化処理して酸化銅とし、導電層を黒化することにより、導電層の可視光線反射率を低下させることができる。
可視光線反射率を低下させる処理については、特開2014-150118号公報の段落0017~0025、並びに、特開2013-206315号公報の段落0041、段落0042、段落0048及び段落0058に記載されており、これらの公報に記載の内容は本明細書に組み込まれる。
【0110】
-絶縁膜を形成する工程、絶縁膜の表面に新たな導電層を形成する工程-
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法は、導電パターンの表面に絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜の表面に新たな導電層を形成する工程と、を含むことも好ましい。
上記の工程により、第一の電極パターンと絶縁した第二の電極パターンを形成することができる。
絶縁膜を形成する工程としては、特に制限されず、公知の永久膜を形成する方法が挙げられる。また、絶縁性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの絶縁膜を形成してもよい。
絶縁膜上に新たな導電層を形成する工程は、特に制限されず、例えば、導電性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの新たな導電層を形成してもよい。
【0111】
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法は、基板の両方の表面にそれぞれ複数の導電層を有する基板を用い、基板の両方の表面に形成された導電層に対して逐次又は同時に導電パターン形成することも好ましい。このような構成により、基板の一方の表面に第一の導電パターン、もう一方の表面に第二の導電パターンを形成したタッチパネル用回路配線を形成できる。また、このような構成のタッチパネル用回路配線を、ロールツーロールで支持体の両面から形成することも好ましい。
すなわち、本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法は、導電パターンd’を、上記基板における上記導電層aが設けられた面とは反対側の面に更に形成することが好ましい。
【0112】
<用途>
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法により製造される導電パターンを有する基板は、種々の装置に適用することができる。上記導電パターンを有する基板を備えた装置としては、例えば、入力装置等が挙げられ、タッチパネルであることが好ましく、静電容量型タッチパネルであることがより好ましい。また、上記入力装置は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、液晶表示装置等の表示装置に適用することができる。
また、本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法により製造される導電パターンを有する基板は、フレキシブル表示装置、特にフレキシブルタッチパネルに好適に適用することができる。
【0113】
<感光性転写材料>
本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法に用いられる感光性転写材料は、仮支持体と、感光性樹脂層(上記感光性樹脂層cを形成する。)を含む転写層とを有することが好ましく、仮支持体と、感光性樹脂層を含む転写層と、保護フィルムとをこの順に有することがより好ましい。
また、本開示に用いられる感光性転写材料は、仮支持体と感光性樹脂層との間、感光性樹脂層と保護フィルムとの間等に他の層を有していてもよい。
更に、本開示に用いられる感光性転写材料は、仮支持体と感光性樹脂層との間に、熱可塑性樹脂層、及び、水溶性樹脂層を更に有することが好ましい。
更に、上記転写層は、熱可塑性樹脂層、及び、水溶性樹脂層を更に含むことが好ましい。
本開示に用いられる感光性転写材料は、本開示における効果をより発揮する観点から、ロール状の感光性転写材料であることが好ましい。
【0114】
本開示に用いられる感光性転写材料の態様の一例を以下に示すが、これに制限されない。
(1)「仮支持体/感光性樹脂層/屈折率調整層/保護フィルム」
(2)「仮支持体/感光性樹脂層/保護フィルム」
(3)「仮支持体/水溶性樹脂層/感光性樹脂層/保護フィルム」
(4)「仮支持体/熱可塑性樹脂層/水溶性樹脂層/感光性樹脂層/保護フィルム」
なお、上記各構成において、感光性樹脂層は、ポジ型感光性樹脂層であっても、ネガ型感光性樹脂層であってもよく、ネガ型感光性樹脂層であることが好ましい。また、感光性樹脂層が着色樹脂層であることも好ましい。
中でも、感光性転写材料の構成としては、例えば、上述した(2)~(4)の構成であることが好ましい。
【0115】
感光性転写材料において、感光性樹脂層の仮支持体側とは反対側にその他の層を更に有する構成の場合、感光性樹脂層の仮支持体側とは反対側に配置されるその他の層の合計厚みは、感光性樹脂層の層厚に対して、0.1%~30%であることが好ましく、0.1%~20%であることがより好ましい。
【0116】
以下において、具体的な実施形態の一例を挙げて、本開示に用いられる感光性転写材料について説明する。
【0117】
以下において、感光性転写材料について、一例を挙げて説明する。
図1に示す感光性転写材料20は、仮支持体11と、熱可塑性樹脂層13、水溶性樹脂層15、及び、感光性樹脂層17を含む転写層12と、保護フィルム19とを、この順に有する。
また、図1で示す感光性転写材料20は熱可塑性樹脂層13及び水溶性樹脂層15を配置した形態であるが、熱可塑性樹脂層13及び水溶性樹脂層15は、配置されなくてもよい。
以下において、感光性転写材料を構成する各要素について説明する。
【0118】
〔仮支持体〕
本開示に用いられる感光性転写材料は、仮支持体を有することが好ましい。
仮支持体は、感光性樹脂層又は感光性樹脂層を含む積層体を支持し、且つ、剥離可能な支持体である。
【0119】
仮支持体は、感光性樹脂層をパターン露光する際に、仮支持体を介した感光性樹脂層の露光が可能になる観点から、光透過性を有することが好ましい。なお、本明細書において「光透過性を有する」とは、パターン露光に使用する波長の光の透過率が50%以上であることを意味する。
仮支持体は、感光性樹脂層の露光感度向上の観点から、パターン露光に使用する波長(より好ましくは波長365nm)の光の透過率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
なお、感光性転写材料が備える層の透過率とは、層の主面に垂直な方向(厚さ方向)に光を入射させたときの、入射光の強度に対する層を通過して出射した出射光の強度の比率であり、大塚電子(株)製MCPD Seriesを用いて測定される。
【0120】
仮支持体を構成する材料としては、例えば、ガラス基板、樹脂フィルム及び紙が挙げられ、強度、可撓性及び光透過性の観点から、樹脂フィルムが好ましい。
樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET:polyethylene terephthalate)フィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。中でも、PETフィルムが好ましく、2軸延伸PETフィルムがより好ましい。
【0121】
仮支持体の厚さ(層厚)は、特に制限されず、支持体としての強度、基板との貼り合わせに求められる可撓性、及び、工程3で要求される光透過性の観点から、材質に応じて選択すればよい。
仮支持体の厚さは、5μm~100μmの範囲が好ましく、取扱い易さ及び汎用性の点から、10μm~50μmの範囲がより好ましく、10μm~20μmの範囲が更に好ましく、10μm~16μmの範囲が特に好ましい。
また、仮支持体の厚さは、樹脂パターンの欠陥抑制性、解像性及び直線性の観点から、50μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましく、16μm以下であることが特に好ましい。
【0122】
また、仮支持体として使用するフィルムには、シワ等の変形、傷、欠陥などがないことが好ましい。
仮支持体を介するパターン露光時のパターン形成性、及び、仮支持体の透明性の観点から、仮支持体に含まれる微粒子、異物、欠陥、析出物などの数は少ない方が好ましい。直径1μm以上の微粒子や異物や欠陥の数は、50個/10mm以下であることが好ましく、10個/10mm以下であることがより好ましく、3個/10mm以下であることが更に好ましく、0個/10mmであることが特に好ましい。
【0123】
樹脂パターンの欠陥抑制性、解像性、及び、仮支持体の透明性の観点から、仮支持体のヘイズは小さい方が好ましい。具体的には、仮支持体のヘイズ値が、2%以下が好ましく、1.5%以下がより好ましく、1.0%未満が更に好ましく、0.5%以下が特に好ましい。
本開示におけるヘイズ値は、ヘイズメーター(NDH-2000、日本電色工業(株)製)を用いて、JIS K 7105:1981年に準ずる方法により測定する。
【0124】
仮支持体の表面に、ハンドリング性を付与する観点で、微小な粒子を含有する層(滑剤層)を設けてもよい。滑剤層は、仮支持体の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。滑剤層に含まれる粒子の直径は、例えば、0.05μm~0.8μmとすることができる。また、滑剤層の層厚は、例えば、0.05μm~1.0μmとすることができる。
【0125】
仮支持体における上記感光性樹脂層側とは反対側の面の算術平均粗さRaは、搬送性、樹脂パターンの欠陥抑制性、及び、解像性の観点から、仮支持体における上記感光性樹脂層側の面の算術平均粗さRa以上であることが好ましい。
仮支持体における上記感光性樹脂層側とは反対側の面の算術平均粗さRaは、搬送性、樹脂パターンの欠陥抑制性、及び、解像性の観点から、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることが更に好ましく、10nm以下であることが特に好ましい。
仮支持体における上記感光性樹脂層側の面の算術平均粗さRaは、仮支持体の剥離性、樹脂パターンの欠陥抑制性、及び、解像性の観点から、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることが更に好ましく、10nm以下であることが特に好ましい。
また、仮支持体における上記感光性樹脂層側とは反対側の面の算術平均粗さRa-仮支持体における上記感光性樹脂層側の面の算術平均粗さRaの値は、搬送性、樹脂パターンの欠陥抑制性、及び、解像性の観点から、0nm~10nmであることが好ましく、0nm~5nmであることがより好ましい。
【0126】
本開示における仮支持体又は保護フィルムの表面の算術平均粗さRaは、以下の方法により測定するものとする。
3次元光学プロファイラー(New View7300、Zygo社製)を用いて、以下の条件にて仮支持体又は保護フィルムの表面を測定し、フィルムの表面プロファイルを得る。
測定・解析ソフトとしては、MetroPro ver8.3.2のMicroscope Applicationを用いる。次に、上記解析ソフトにてSurface Map画面を表示し、Surface Map画面中でヒストグラムデータを得る。得られたヒストグラムデータから、算術平均粗さを算出し、仮支持体又は保護フィルムの表面のRa値を得る。
仮支持体又は保護フィルムが感光性樹脂層等に貼り合わされている場合は、感光性樹脂層から仮支持体又は保護フィルムを剥離して、剥離した側の表面のRa値を測定すればよい。
【0127】
仮支持体の剥離力、具体的には、仮支持体と感光性樹脂層又は熱可塑性樹脂層との間の剥離力は、巻き取られた積層体をロールツーロール方式によって再び搬送する際に、上下に積み重なった積層体と積層体との接着に起因する仮支持体の剥離抑制性の観点から、0.5mN/mm以上であることが好ましく、0.5mN/mm~2.0mN/mmであることがより好ましい。
【0128】
本開示における仮支持体の剥離力は、以下のように測定するものとする。
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、スパッタ法にて厚さ200nmの銅層を作製し、銅層付きPET基板を作製する。
作製した感光性転写材料から保護フィルムを剥離し、ラミネートロール温度100℃、線圧0.6MPa、線速度(ラミネート速度)1.0m/minのラミネート条件で上記銅層付きPET基板にラミネートする。次に、仮支持体の表面にテープ(日東電工(株)製PRINTACK)を貼りつけた後に、銅層付きPET基板上に少なくとも仮支持体及び感光性樹脂層を有する積層体を、70mm×10mmにカットしてサンプルを作製する。上記サンプルのPET基板側を試料台の上に固定する。
引張圧縮試験機((株)今田製作所製、SV-55)を用いて、180度の方向に、5.5mm/秒でテープを引っ張って、感光性樹脂層又は熱可塑性樹脂層と仮支持体との間で剥離して、剥離に必要な力(剥離力)密着力を測定する。
【0129】
仮支持体の好ましい態様としては、例えば、特開2014-85643号公報の段落0017~段落0018、特開2016-27363号公報の段落0019~0026、国際公開第2012/081680号の段落0041~0057、国際公開第2018/179370号の段落0029~0040、特開2019-101405号公報の段落0012~段落0032に記載があり、これらの公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0130】
〔感光性樹脂層〕
本開示に用いられる感光性転写材料は、感光性樹脂層を有する。
感光性樹脂層は、ポジ型感光性樹脂層であっても、ネガ型感光性樹脂層であってもよく、ネガ型感光性樹脂層であることが好ましい。
ネガ型感光性樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂、重合性化合物、及び、光重合開始剤を含むことが好ましく、上記感光性樹脂層の全質量基準で、アルカリ可溶性樹脂:10質量%~90質量%;エチレン性不飽和化合物:5質量%~70質量%;及び光重合開始剤:0.01質量%~20質量%を含むことがより好ましい。
ポジ型感光性樹脂層としては、制限されず、公知のポジ型感光性樹脂層を利用できる。ポジ型感光性樹脂層は、酸分解性樹脂、すなわち、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体と、光酸発生剤と、を含むことが好ましい。また、ポジ型感光性樹脂層は、フェノール性水酸基を有する構成単位を有する樹脂、及び、キノンジアジド化合物を含むことが好ましい。
また、ポジ型感光性樹脂層は、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体、及び、光酸発生剤を含む化学増幅ポジ型感光性樹脂層であることがより好ましい。
以下、各成分を順に説明する。なお、単に「感光性樹脂層」という場合は、ポジ型感光性樹脂層及びネガ型感光性樹脂層の両方をいうものとする。
【0131】
<<重合性化合物>>
ネガ型感光性樹脂層は、重合性化合物を含むことが好ましい。なお、本明細書において「重合性化合物」とは、後述する光重合開始剤の作用を受けて重合する化合物であって、後述するアルカリ可溶性樹脂とは異なる化合物を意味する。
【0132】
重合性化合物が有する重合性基としては、重合反応に関与する基であれば特に制限されず、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基及びマレイミド基等のエチレン性不飽和基を有する基;並びに、エポキシ基及びオキセタン基等のカチオン性重合性基を有する基が挙げられる。
重合性基としては、エチレン性不飽和基を有する基が好ましく、アクリロイル基又はメタクリロイル基がより好ましい。
また、重合性化合物としては、エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリレート化合物を含むことがより好ましい。
【0133】
ネガ型感光性樹脂層は、解像性、及び、パターン形成性の観点から、2官能以上の重合性化合物(多官能重合性化合物)を含むことが好ましく、3官能以上の重合性化合物を含むことがより好ましい。
ここで、2官能以上の重合性化合物とは、一分子中に重合性基を2つ以上有する化合物を意味する。
また、解像性及び剥離性に優れる点で、重合性化合物が一分子中に有する重合性基の数は、6つ以下が好ましい。
【0134】
ネガ型感光性樹脂層は、感光性樹脂層の感光性と解像性及び剥離性とのバランスがより優れる点で、2官能又は3官能エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、2官能エチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましい。
ネガ型感光性樹脂層における、エチレン性不飽和化合物の総含有量に対する2官能又は3官能エチレン性不飽和化合物の含有量は、剥離性に優れる点から、60質量%以上が好ましく、70質量%超がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されず、100質量%であってもよい。即ち、ネガ型感光性樹脂層に含まれるエチレン性不飽和化合物が全て2官能エチレン性不飽和化合物であってもよい。
【0135】
ネガ型感光性樹脂層は、解像性、及び、パターン形成性の観点から、ポリアルキレンオキサイド構造を有する重合性化合物を含むことが好ましく、ポリエチレンオキサイド構造を有する重合性化合物を含むことがより好ましい。
ポリアルキレンオキサイド構造を有する重合性化合物としては、後述するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等が好ましく挙げられる。
【0136】
-エチレン性不飽和化合物B1-
ネガ型感光性樹脂層は、芳香環及び2つのエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和化合物B1を含有することが好ましい。エチレン性不飽和化合物B1は、上述したエチレン性不飽和化合物のうち、一分子中に1つ以上の芳香環を有する2官能エチレン性不飽和化合物である。
【0137】
ネガ型感光性樹脂層中、エチレン性不飽和化合物の含有量に対するエチレン性不飽和化合物B1の含有量の質量比は、解像性がより優れる点から、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、剥離性の点から、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下が更に好ましく、85質量%以下が特に好ましい。
【0138】
エチレン性不飽和化合物B1が有する芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環等の芳香族炭化水素環、チオフェン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環及びピリジン環等の芳香族複素環、並びに、それらの縮合環が挙げられ、芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。なお、上記芳香環は、置換基を有してもよい。
エチレン性不飽和化合物B1は、芳香環を1つのみ有してもよく、2つ以上の芳香環を有してもよい。
【0139】
エチレン性不飽和化合物B1は、現像液によるネガ型感光性樹脂層の膨潤を抑制することにより、解像性が向上する点から、ビスフェノール構造を有することが好ましい。
ビスフェノール構造としては、例えば、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)に由来するビスフェノールA構造、ビスフェノールF(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)に由来するビスフェノールF構造、及び、ビスフェノールB(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン)に由来するビスフェノールB構造が挙げられ、ビスフェノールA構造が好ましい。
【0140】
ビスフェノール構造を有するエチレン性不飽和化合物B1としては、例えば、ビスフェノール構造と、そのビスフェノール構造の両端に結合した2つのエチレン性不飽和基(好ましくは(メタ)アクリロイル基)とを有する化合物が挙げられる。
ビスフェノール構造の両端と2つのエチレン性不飽和基とは、直接結合してもよく、1つ以上のアルキレンオキシ基を介して結合してもよい。ビスフェノール構造の両端に付加するアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基が好ましく、エチレンオキシ基がより好ましい。ビスフェノール構造に付加するアルキレンオキシ基の付加数は特に制限されないが、1分子あたり4~16個が好ましく、6~14個がより好ましい。
ビスフェノール構造を有するエチレン性不飽和化合物B1については、特開2016-224162号公報の段落0072~0080に記載されており、この公報に記載の内容は本明細書に組み込まれる。
【0141】
エチレン性不飽和化合物B1としては、ビスフェノールA構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物が好ましく、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンがより好ましい。
2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(FA-324M、日立化成(株)製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシエトキシプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-500、新中村化学工業(株)製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシドデカエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン(FA-3200MY、日立化成(株)製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-1300、新中村化学工業(株)製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-200、新中村化学工業(株)製)、及び、エトキシ化(10)ビスフェノールAジアクリレート(NKエステルA-BPE-10、新中村化学工業(株)製)が挙げられる。
【0142】
エチレン性不飽和化合物B1としては、下記式(Bis)で表される化合物を使用することができる。
【0143】
【化13】
【0144】
式(Bis)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、AはCであり、BはCであり、n及びnはそれぞれ独立に、1~39の整数であり、かつn+nは2~40の整数であり、n及びnはそれぞれ独立に、0~29の整数であり、かつn+nは0~30の整数であり、-(A-O)-及び-(B-O)-の繰り返し単位の配列は、ランダムであってもブロックであってもよい。そして、ブロックの場合、-(A-O)-と-(B-O)-とのいずれがビスフェノール構造側でもよい。
一態様において、n+n+n+nは、2~20の整数が好ましく、2~16の整数がより好ましく、4~12の整数が更に好ましい。また、n+nは、0~10の整数が好ましく、0~4の整数がより好ましく、0~2の整数が更に好ましく、0が特に好ましい。
【0145】
エチレン性不飽和化合物B1は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
ネガ型感光性樹脂層における、エチレン性不飽和化合物B1の含有量は、解像性がより優れる点から、ネガ型感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、転写性及びエッジフュージョン(感光性転写材料の端部からネガ型感光性樹脂層中の成分が滲み出す現象)の点から、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
【0146】
ネガ型感光性樹脂層は、上述したエチレン性不飽和化合物B1以外のエチレン性不飽和化合物を含有してもよい。
エチレン性不飽和化合物B1以外のエチレン性不飽和化合物は、特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択できる。例えば、一分子中に1つのエチレン性不飽和基を有する化合物(単官能エチレン性不飽和化合物)、芳香環を有さない2官能エチレン性不飽和化合物、及び、3官能以上のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
【0147】
単官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及び、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0148】
芳香環を有さない2官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、及び、トリメチロールプロパンジアクリレートが挙げられる。
アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(A-DCP、新中村化学工業(株)製)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(DCP、新中村化学工業(株)製)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(A-NOD-N、新中村化学工業(株)製)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(A-HD-N、新中村化学工業(株)製)、エチレングリコールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、及び、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、及び、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、プロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、並びに、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。の市販品としては、例えば、8UX-015A(大成ファインケミカル(株)製)、UA-32P(新中村化学工業(株)製)、及び、UA-1100H(新中村化学工業(株)製)が挙げられる。
【0149】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、並びに、これらのアルキレンオキサイド変性物が挙げられる。
ここで、「(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、及びヘキサ(メタ)アクリレートを包含する概念であり、「(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレートを包含する概念である。一態様において、ネガ型感光性樹脂層は、上述したエチレン性不飽和化合物B1及び3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、上述したエチレン性不飽和化合物B1及び2種以上の3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましい。この場合、エチレン性不飽和化合物B1と3官能以上のエチレン性不飽和化合物の質量比は、(エチレン性不飽和化合物B1の合計質量):(3官能以上のエチレン性不飽和化合物の合計質量)=1:1~5:1が好ましく、1.2:1~4:1がより好ましく、1.5:1~3:1が更に好ましい。
また、一態様において、ネガ型感光性樹脂層は、上述したエチレン性不飽和化合物B1及び2種以上の3官能のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
【0150】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物のアルキレンオキサイド変性物としては、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート化合物(日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標)DPCA-20、新中村化学工業(株)製A-9300-1CL等)、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物(日本化薬(株)製KAYARAD RP-1040、新中村化学工業(株)製ATM-35E及びA-9300、ダイセル・オルネクス社製EBECRYL(登録商標) 135等)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業(株)製A-GLY-9E等)、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成(株)製)、アロニックスM-520(東亞合成(株)製)、並びに、アロニックスM-510(東亞合成(株)製)が挙げられる。
【0151】
また、エチレン性不飽和化合物B1以外のエチレン性不飽和化合物としては、特開2004-239942号公報の段落0025~0030に記載の酸基を有するエチレン性不飽和化合物を用いてもよい。
【0152】
ネガ型感光性樹脂層におけるエチレン性不飽和化合物の含有量Mmとアルカリ可溶性樹脂の含有量Mbとの比Mm/Mbの値は、解像性及び直線性の観点から、1.0以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.5以上0.9以下であることが特に好ましい。
また、ネガ型感光性樹脂層におけるエチレン性不飽和化合物は、硬化性、及び、解像性の観点から、(メタ)アクリル化合物を含むことが好ましい。
更に、ネガ型感光性樹脂層におけるエチレン性不飽和化合物は、硬化性、解像性及び直線性の観点から、(メタ)アクリル化合物を含み、かつネガ型感光性樹脂層に含まれる上記(メタ)アクリル化合物の全質量に対するアクリル化合物の含有量が、60質量%以下であることがより好ましい。
【0153】
エチレン性不飽和化合物B1を含むエチレン性不飽和化合物の分子量(分布を有する場合は、重量平均分子量(Mw))としては、200~3,000が好ましく、280~2,200がより好ましく、300~2,200が更に好ましい。
【0154】
エチレン性不飽和化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
ネガ型感光性樹脂層におけるエチレン性不飽和化合物の含有量は、ネガ型感光性樹脂層の全質量に対し、10質量%~70質量%が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましく、20質量%~50質量%が更に好ましい。
【0155】
<<光重合開始剤>>
ネガ型感光性樹脂層は、光重合開始剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤は、紫外線、可視光線及びX線等の活性光線を受けて、エチレン性不飽和化合物の重合を開始する化合物である。光重合開始剤としては、特に制限されず、公知の光重合開始剤を用いることができる。
光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤が挙げられる。
中でも、感光性樹脂層は、解像性、及び、パターン形成性の観点から、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0156】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル構造を有する光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する光重合開始剤、N-フェニルグリシン構造を有する光重合開始剤、及び、ビイミダゾール化合物が挙げられる。
【0157】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、特開2011-95716号公報の段落0031~0042、特開2015-14783号公報の段落0064~0081に記載された重合開始剤を用いてもよい。
【0158】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジメチルアミノ安息香酸エチル(DBE、CAS No.10287-53-3)、ベンゾインメチルエーテル、アニシル(p,p’-ジメトキシベンジル)、TAZ-110(商品名:みどり化学(株)製)、ベンゾフェノン、TAZ-111(商品名:みどり化学(株)製)、IrgacureOXE01、OXE02、OXE03、OXE04(BASF社製)、Omnirad651及び369(商品名:IGM Resins B.V.社製)、及び、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール(東京化成工業(株)製)が挙げられる。
【0159】
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:IRGACURE(登録商標) OXE01、BASF社製)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)(商品名:IRGACURE OXE02、BASF社製)、IRGACURE OXE03(BASF社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン(商品名:Omnirad 379EG、IGM Resins B.V.製)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 907、IGM Resins B.V.製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 127、IGM Resins B.V.製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1(商品名:Omnirad 369、IGM Resins B.V.製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 1173、IGM Resins B.V.製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:Omnirad 184、IGM Resins B.V.製)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名:Omnirad 651、IGM Resins B.V.製)、2,4,6-トリメチルベンゾリル-ジフェニルフォスフィンオキサイド(商品名:Omnirad TPO H、IGM Resins B.V.製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾリル)フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:Omnirad 819、IGM Resins B.V.製)、オキシムエステル系の光重合開始剤(商品名:Lunar 6、DKSHジャパン(株)製)、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビスイミダゾール(2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体)(商品名:B-CIM、Hampford社製)、及び、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体(商品名:BCTB、東京化成工業(株)製)が挙げられる。
【0160】
光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)は、活性光線を受けて酸を発生する化合物である。光カチオン重合開始剤としては、波長300nm以上、好ましくは波長300~450nmの活性光線に感応し、酸を発生する化合物が好ましいが、その化学構造は制限されない。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光カチオン重合開始剤についても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応し、酸を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。
光カチオン重合開始剤としては、pKaが4以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤が好ましく、pKaが3以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤がより好ましく、pKaが2以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤が特に好ましい。pKaの下限値は特に定めないが、例えば、-10.0以上が好ましい。
【0161】
光カチオン重合開始剤としては、イオン性光カチオン重合開始剤及び非イオン性光カチオン重合開始剤が挙げられる。
イオン性光カチオン重合開始剤として、例えば、ジアリールヨードニウム塩類及びトリアリールスルホニウム塩類等のオニウム塩化合物、並びに、第4級アンモニウム塩類が挙げられる。
イオン性光カチオン重合開始剤としては、特開2014-85643号公報の段落0114~0133に記載のイオン性光カチオン重合開始剤を用いてもよい。
【0162】
非イオン性光カチオン重合開始剤としては、例えば、トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及び、オキシムスルホネート化合物が挙げられる。トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアゾメタン化合物及びイミドスルホネート化合物としては、特開2011-221494号公報の段落0083~0088に記載の化合物を用いてもよい。また、オキシムスルホネート化合物としては、国際公開第2018/179640号の段落0084~0088に記載された化合物を用いてもよい。
【0163】
ネガ型感光性樹脂層は、光重合開始剤を、1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
ネガ型感光性樹脂層における光重合開始剤の含有量は、特に制限されないが、感光性樹脂層の全質量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、感光性樹脂層の全質量に対し、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0164】
<<アルカリ可溶性樹脂>>
ネガ型感光性樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましい。
なお、本明細書において、「アルカリ可溶性」とは、液温22℃において炭酸ナトリウムの1質量%水溶液100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。
アルカリ可溶性樹脂としては、特に制限はなく、例えば、エッチングレジストに用いられる公知のアルカリ可溶性樹脂が好適に挙げられる。
また、アルカリ可溶性樹脂は、バインダーポリマーであることが好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、酸基を有するアルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
中でも、アルカリ可溶性樹脂としては、後述する重合体Aが好ましい。
【0165】
-重合体A-
アルカリ可溶性樹脂としては、重合体Aを含むことが好ましい。
重合体Aの酸価は、現像液による感光性樹脂層の膨潤を抑制することにより、解像性がより優れる点から、220mgKOH/g以下が好ましく、200mgKOH/g未満がより好ましく、190mgKOH/g未満が更に好ましい。
重合体Aの酸価の下限は特に制限されないが、現像性がより優れる点から、60mgKOH/g以上が好ましく、120mgKOH/g以上がより好ましく、150mgKOH/g以上が更に好ましく、170mgKOH/g以上が特に好ましい。
【0166】
なお、酸価は、試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの質量[mg]であり、
本明細書においては、単位をmgKOH/gと記載する。酸価は、例えば、化合物中における酸基の平均含有量から算出できる。
重合体Aの酸価は、重合体Aを構成する構成単位の種類及び酸基を含有する構成単位の含有量により調整すればよい。
【0167】
重合体Aの重量平均分子量は、5,000~500,000であることが好ましい。重量平均分子量を500,000以下にすることは、解像性及び現像性を向上させる観点から好ましい。重量平均分子量を100,000以下にすることがより好ましく、60,000以下にすることが更に好ましく、50,000以下にすることが特に好ましい。一方で、重量平均分子量を5,000以上にすることは、現像凝集物の性状、並びに、エッジフューズ性及びカットチップ性等の未露光膜の性状を制御する観点から好ましい。重量平均分子量を10,000以上にすることがより好ましく、20,000以上にすることが更に好ましく、30,000以上にすることが特に好ましい。エッジフューズ性とは、感光性転写材料をロール状に巻き取った場合に、ロールの端面からの、感光性樹脂層のはみ出し易さの程度をいう。カットチップ性とは、未露光膜をカッターで切断した場合に、チップの飛び易さの程度をいう。このチップが感光性樹脂層の上面等に付着すると、後の露光工程等でマスクに転写して、不良品の原因となる。重合体Aの分散度は、1.0~6.0であることが好ましく、1.0~5.0であることがより好ましく、1.0~4.0であることが更に好ましく、1.0~3.0であることが更に好ましい。本開示で、分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定される値である。また分散度は、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)である。
【0168】
ネガ型感光性樹脂層は、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太りや解像度の悪化を抑制する観点から、重合体Aとして、芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含むものであることが好ましい。なお、このような芳香族炭化水素基としては、例えば、置換又は非置換のフェニル基や、置換又は非置換のアラルキル基が挙げられる。重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する単量体成分の含有割合は、全単量体成分の合計質量を基準として、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、45質量%以上であることが特に好ましく、50質量%以上であることが最も好ましい。上限としては特に限定されないが、好ましくは95質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。なお、重合体Aを複数種類含有する場合における、芳香族炭化水素基を有する単量体成分の含有割合は、重量平均値として求めた。
【0169】
上記芳香族炭化水素基を有する単量体としては、例えば、アラルキル基を有するモノマー、スチレン、及び重合可能なスチレン誘導体(例えば、メチルスチレン、ビニルトルエン、tert-ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、4-ビニル安息香酸、スチレンダイマー、スチレントリマー等)が挙げられる。中でも、アラルキル基を有するモノマー、又はスチレンが好ましい。一態様において、重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する単量体成分がスチレンである場合、スチレン単量体成分の含有割合は、全単量体成分の合計質量を基準として、20質量%~50質量%であることが好ましく、25質量%~45質量%であることがより好ましく、30質量%~40質量%であることが更に好ましく、30質量%~35質量%であることが特に好ましい。
【0170】
アラルキル基としては、置換又は非置換のフェニルアルキル基(ベンジル基を除く)や、置換又は非置換のベンジル基等が挙げられ、置換又は非置換のベンジル基が好ましい。
【0171】
フェニルアルキル基を有する単量体としては、フェニルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0172】
ベンジル基を有する単量体としては、ベンジル基を有する(メタ)アクリレート、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート等;ベンジル基を有するビニルモノマー、例えば、ビニルベンジルクロライド、ビニルベンジルアルコール等が挙げられる。中でもベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。一態様において、重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する単量体成分がベンジル(メタ)アクリレートである場合、ベンジル(メタ)アクリレート単量体成分の含有割合は、全単量体成分の合計質量を基準として、50質量%~95質量%であることが好ましく、60質量%~90質量%であることがより好ましく、70質量%~90質量%であることが更に好ましく、75質量%~90質量%であることが特に好ましい。
【0173】
芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含有する重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体と、後述する第一の単量体の少なくとも1種及び/又は後述する第二の単量体の少なくとも1種とを重合することにより得られることが好ましい。
【0174】
芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含有しない重合体Aは、後述する第一の単量体の少なくとも1種を重合することにより得られることが好ましく、第一の単量体の少なくとも1種と後述する第二の単量体の少なくとも1種とを共重合することにより得られることがより好ましい。
【0175】
第一の単量体は、分子中にカルボキシ基を有する単量体である。第一の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、4-ビニル安息香酸、マレイン酸無水物、マレイン酸半エステル等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。
重合体Aにおける第一の単量体の含有割合は、全単量体成分の合計質量を基準として、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることがより好ましく、15質量%~30質量%であることが更に好ましい。
【0176】
第一の単量体の共重合割合は、全単量体成分の合計質量を基準として、10質量%~50質量%であることが好ましい。上記共重合割合を10質量%以上にすることは、良好な現像性を発現させる観点、エッジフューズ性を制御するなどの観点から好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。上記共重合割合を50質量%以下にすることは、レジストパターンの高解像性及びスソ形状の観点から、更にはレジストパターンの耐薬品性の観点から好ましく、これらの観点においては、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましく、27質量%以下が特に好ましい。
【0177】
第二の単量体は、非酸性であり、かつ分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有する単量体である。第二の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類;並びに(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。中でも、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びn-ブチル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
重合体Aにおける第二の単量体の含有割合は、全単量体成分の合計質量を基準として、5質量%~60質量%であることが好ましく、15質量%~50質量%であることがより好ましく、20質量%~45質量%であることが更に好ましい。
【0178】
アラルキル基を有する単量体、及び/又はスチレンを単量体として含有することが、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太りや解像度の悪化を抑制する観点から好ましい。例えば、メタクリル酸とベンジルメタクリレートとスチレンを含む共重合体、メタクリル酸とメチルメタクリレートとベンジルメタクリレートとスチレンを含む共重合体等が好ましい。
一態様において、重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体成分を25質量%~40質量%、第一の単量体成分を20質量%~35質量%、第二の単量体成分を30質量%~45質量%含む重合体であることが好ましい。また、別の態様において、芳香族炭化水素基を有する単量体成分を70質量%~90質量%、第一の単量体成分を10質量%~25質量%含む重合体であることが好ましい。
【0179】
重合体Aは、側鎖に直鎖構造、分岐構造、及び、脂環構造のいずれかを有してもよい。側鎖に分岐構造を有する基を含有するモノマー、又は側鎖に脂環構造を有する基を含有するモノマーを使用することによって、重合体Aの側鎖に分岐構造や脂環構造を導入することができる。脂環構造を有する基は単環又は多環であってもよい。
側鎖に分岐構造を有する基を含有するモノマーの具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸i-アミル、(メタ)アクリル酸t-アミル、(メタ)アクリル酸iso-アミル、(メタ)アクリル酸2-オクチル、(メタ)アクリル酸3-オクチル、(メタ)アクリル酸t-オクチル等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、又は、メタクリル酸t-ブチルが好ましく、メタクリル酸i-プロピル、又は、メタクリル酸t-ブチルがより好ましい。
側鎖に脂環構造を有する基を含有するモノマーとしては、単環の脂肪族炭化水素基を有するモノマー、多環の脂肪族炭化水素基を有するモノマーが挙げられ、炭素数(炭素原子数)5~20個の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。より具体的な例としては、例えば(メタ)アクリル酸(ビシクロ[2.2.1]ヘプチル-2)、(メタ)アクリル酸-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5-ジメチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-5-エチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5,8-トリエチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5-ジメチル-8-エチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-メチル-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-エチル-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシ-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ-4,7-メンタノインデン-5-イル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ-4,7-メンタノインデン-1-イルメチル、(メタ)アクリル酸-1-メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸-3-ヒドロキシ-2,6,6-トリメチル-ビシクロ[3.1.1]ヘプチル、(メタ)アクリル酸-3,7,7-トリメチル-4-ヒドロキシビシクロ[4.1.0]ヘプチル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェンチル、(メタ)アクリル酸-2,2,5-トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステルの中でも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸フェンチル、(メタ)アクリル酸1-メンチル、又は、(メタ)アクリル酸トリシクロデカンが好ましく、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル、又は、(メタ)アクリル酸トリシクロデカンが特に好ましい。
【0180】
重合体Aは、1種単独で使用することができ、或いは2種以上を混合して使用してもよい。2種以上を混合して使用する場合には、芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含む重合体Aを2種類混合使用すること、又は芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含む重合体Aと、芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含まない重合体Aと、を混合使用することが好ましい。後者の場合、芳香族炭化水素基を有する単量体成分を含む重合体Aの使用割合は、重合体Aの全部に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0181】
重合体Aの合成は、上記で説明された単数又は複数の単量体を、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロパノール等の溶剤で希釈した溶液に、過酸化ベンゾイル、アゾイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を適量添加し、加熱撹拌することにより行われることが好ましい。混合物の一部を反応液に滴下しながら合成を行う場合もある。反応終了後、さらに溶剤を加えて、所望の濃度に調整する場合もある。合成手段としては、溶液重合以外に、塊状重合、懸濁重合、又は乳化重合を用いてもよい。
【0182】
重合体Aのガラス転移温度Tgは、30℃以上135℃以下であることが好ましい。感光性樹脂層において、135℃以下のTgを有する重合体Aを使用することによって、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太りや解像度の悪化を抑制することができる。この観点から、重合体AのTgは、130℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが更に好ましく、110℃以下であることが特に好ましい。また、30℃以上のTgを有する重合体Aを使用することは、耐エッジフューズ性を向上させる観点から好ましい。この観点から、重合体AのTgは、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましく、60℃以上であることが特に好ましく、70℃以上であることが最も好ましい。
【0183】
ネガ型感光性樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂以外の樹脂を含有してもよい。
アルカリ可溶性樹脂以外の樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン-アクリル共重合体(但し、スチレン含有率が40質量%以下であるもの)、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、及び、ポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0184】
アルカリ可溶性樹脂は、1種単独で使用することができ、或いは2種以上を混合して使用してもよい。
アルカリ可溶性樹脂の、ネガ型感光性樹脂層の全質量に対する割合は、好ましくは10質量%~90質量%の範囲であり、より好ましくは30質量%~70質量%であり、更に好ましくは40質量%~60質量%である。ネガ型感光性樹脂層に対するアルカリ可溶性樹脂の割合を90質量%以下にすることは、現像時間を制御する観点から好ましい。一方で、ネガ型感光性樹脂層に対するアルカリ可溶性樹脂の割合を10質量%以上にすることは、耐エッジフューズ性を向上させる観点から好ましい。
【0185】
<<非共有電子対を有する化合物>>
上記感光性樹脂層は、導電層との密着性の観点から、非共有電子対を有する化合物を含むことが好ましい。
非共有電子対を有する化合物としては、導電層との密着性の観点から、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を少なくとも有する化合物であることが好ましく、複素環式化合物、チオール化合物、又は、ジスルフィド化合物であることがより好ましく、複素環式化合物であることが更に好ましく、含窒素複素環式化合物であることが特に好ましい。
非共有電子対を有する化合物としては、上述した化合物eに例示した化合物が好ましく挙げられる。
【0186】
感光性樹脂層は、非共有電子対を有する化合物を、1種単独で含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
非共有電子対を有する化合物の含有量は、導電層との密着性の観点から、感光性樹脂層の全質量に対し、0.01質量%~20質量%であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましく、0.3質量%~8質量%であることが更に好ましく、0.5質量%~5質量%であることが特に好ましい。
【0187】
<<色素>>
感光性樹脂層は、露光部及び非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び、解像性の観点から、色素を含有することが好ましく、発色時の波長範囲400nm~780nmにおける最大吸収波長が450nm以上であり、かつ、酸、塩基、又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素(単に「色素N」ともいう。)を含有することがより好ましい。色素Nを含有すると、詳細なメカニズムは不明であるが、隣接する層(例えば仮支持体及び基板)との密着性が向上し、解像性により優れる。
【0188】
本明細書において、色素が「酸、塩基又はラジカルにより最大吸収波長が変化する」とは、発色状態にある色素が酸、塩基又はラジカルにより消色する態様、消色状態にある色素が酸、塩基又はラジカルにより発色する態様、及び、発色状態にある色素が他の色相の発色状態に変化する態様のいずれの態様を意味してもよい。
具体的には、色素Nは、露光により消色状態から変化して発色する化合物であってもよいし、露光により発色状態から変化して消色する化合物であってもよい。この場合、露光により酸、塩基又はラジカルが感光性樹脂層内において発生し作用することにより、発色又は消色の状態が変化する色素でもよく、酸、塩基又はラジカルにより感光性樹脂層内の状態(例えばpH)が変化することで発色又は消色の状態が変化する色素でもよい。また、露光を介さずに、酸、塩基又はラジカルを刺激として直接受けて発色又は消色の状態が変化する色素でもよい。
【0189】
中でも、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、色素Nは、酸又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素が好ましく、ラジカルにより最大吸収波長が変化する色素がより好ましい。
感光性樹脂層は、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、色素Nとしてラジカルにより最大吸収波長が変化する色素、及び、光ラジカル重合開始剤の両者を含有することが好ましい。
また、露光部及び非露光部の視認性の観点から、色素Nは、酸、塩基、又はラジカルにより発色する色素であることが好ましい。
【0190】
本開示における色素Nの発色機構の例としては、感光性樹脂層に光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)又は光塩基発生剤を添加して、露光後に光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤又は光塩基発生剤から発生するラジカル、酸又は塩基によって、ラジカル反応性色素、酸反応性色素又は塩基反応性色素(例えばロイコ色素)が発色する態様が挙げられる。
【0191】
色素Nは、露光部及び非露光部の視認性の観点から、発色時の波長範囲400nm~780nmにおける最大吸収波長が、550nm以上であることが好ましく、550nm~700nmであることがより好ましく、550nm~650nmであることが更に好ましい。
【0192】
色素Nの最大吸収波長は、大気雰囲気下で、分光光度計:UV3100((株)島津製作所製)を用いて、400nm~780nmの範囲で色素Nを含有する溶液(液温25℃)の透過スペクトルを測定し、上記波長範囲において光の強度が最小となる波長(最大吸収波長)を検出することにより、得られる。
【0193】
露光により発色又は消色する色素としては、例えば、ロイコ化合物が挙げられる。
露光により消色する色素としては、例えば、ロイコ化合物、ジアリールメタン系色素、オキザジン系色素、キサンテン系色素、イミノナフトキノン系色素、アゾメチン系色素及びアントラキノン系色素が挙げられる。
色素Nとしては、露光部及び非露光部の視認性の観点から、ロイコ化合物が好ましい。
【0194】
ロイコ化合物としては、例えば、トリアリールメタン骨格を有するロイコ化合物(トリアリールメタン系色素)、スピロピラン骨格を有するロイコ化合物(スピロピラン系色素)、フルオラン骨格を有するロイコ化合物(フルオラン系色素)、ジアリールメタン骨格を有するロイコ化合物(ジアリールメタン系色素)、ローダミンラクタム骨格を有するロイコ化合物(ローダミンラクタム系色素)、インドリルフタリド骨格を有するロイコ化合物(インドリルフタリド系色素)、及び、ロイコオーラミン骨格を有するロイコ化合物(ロイコオーラミン系色素)が挙げられる。
中でも、トリアリールメタン系色素又はフルオラン系色素が好ましく、トリフェニルメタン骨格を有するロイコ化合物(トリフェニルメタン系色素)又はフルオラン系色素がより好ましい。
【0195】
ロイコ化合物としては、露光部及び非露光部の視認性の観点から、ラクトン環、スルチン環又はスルトン環を有することが好ましい。これにより、ロイコ化合物が有するラクトン環、スルチン環又はスルトン環を、光ラジカル重合開始剤から発生するラジカル又は光カチオン重合開始剤から発生する酸と反応させて、ロイコ化合物を閉環状態に変化させて消色させるか、又は、ロイコ化合物を開環状態に変化させて発色させることができる。ロイコ化合物としては、ラクトン環、スルチン環又はスルトン環を有し、ラジカル又は酸によりラクトン環、スルチン環又はスルトン環が開環して発色する化合物が好ましく、ラクトン環を有し、ラジカル又は酸によりラクトン環が開環して発色する化合物がより好ましい。
【0196】
色素Nとしては、例えば、以下の染料及びロイコ化合物が挙げられる。
色素Nのうち染料の具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α-ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルー-ナフタレンスルホン酸塩、ビクトリアピュアブルーBOH(保土谷化学工業(株)製)、オイルブルー#603(オリヱント化学工業(株)製)、オイルピンク#312(オリヱント化学工業(株)製)、オイルレッド5B(オリヱント化学工業(株)製)、オイルスカーレット#308(オリヱント化学工業(株)製)、オイルレッドOG(オリヱント化学工業(株)製)、オイルレッドRR(オリヱント化学工業(株)製)、オイルグリーン#502(オリヱント化学工業(株)製)、スピロンレッドBEHスペシャル(保土谷化学工業(株)製)、m-クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4-p-ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2-カルボキシアニリノ-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2-カルボキシステアリルアミノ-4-p-N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ-フェニルイミノナフトキノン、1-フェニル-3-メチル-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノ-5-ピラゾロン、及び、1-β-ナフチル-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノ-5-ピラゾロンが挙げられる。
【0197】
色素Nのうちロイコ化合物の具体例としては、p,p’,p”-ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2-(N-フェニル-N-メチルアミノ)-6-(N-p-トリル-N-エチル)アミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-p-トルイジノ)フルオラン、3,6-ジメトキシフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-5-メチル-7-(N,N-ジベンジルアミノ)フルオラン、3-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メトキシ-7-アミノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-(4-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-クロロフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-ベンジルアミノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7,8-ベンゾフロオラン、3-(N,N-ジブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジブチルアミノ)-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3,3-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、及び、3’,6’-ビス(ジフェニルアミノ)スピロイソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン-3-オンが挙げられる。
【0198】
色素Nは、露光部及び非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び、解像性の観点から、ラジカルにより最大吸収波長が変化する色素であることが好ましく、ラジカルにより発色する色素であることがより好ましい。
色素Nとしては、ロイコクリスタルバイオレット、クリスタルバイオレットラクトン、ブリリアントグリーン、又は、ビクトリアピュアブルー-ナフタレンスルホン酸塩が好ましい。
【0199】
色素は、1種単独で使用しても、2種以上を使用してもよい。
色素の含有量は、露光部及び非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び、解像性の観点から、感光性樹脂層の全質量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.1質量%~10質量%がより好ましく、0.1質量%~5質量%が更に好ましく、0.1質量%~1質量%が特に好ましい。
また、色素Nの含有量は、露光部及び非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び、解像性の観点から、感光性樹脂層の全質量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.1質量%~10質量%がより好ましく、0.1質量%~5質量%が更に好ましく、0.1質量%~1質量%が特に好ましい。
【0200】
色素Nの含有量は、感光性樹脂層に含まれる色素Nの全てを発色状態にした場合の色素の含有量を意味する。以下に、ラジカルにより発色する色素を例に、色素Nの含有量の定量方法を説明する。
メチルエチルケトン100mLに、色素0.001g又は0.01gを溶かした2種類の溶液を調製する。得られた各溶液に、光ラジカル重合開始剤Irgacure OXE01(商品名、BASFジャパン株式会社)を加え、365nmの光を照射することによりラジカルを発生させ、全ての色素を発色状態にする。その後、大気雰囲気下で、分光光度計(UV3100、(株)島津製作所製)を用いて、液温が25℃である各溶液の吸光度を測定し、検量線を作成する。
次に、色素に代えて感光性樹脂層3gをメチルエチルケトンに溶かすこと以外は上記と同様の方法で、色素を全て発色させた溶液の吸光度を測定する。得られた感光性樹脂層を含有する溶液の吸光度から、検量線に基づいて感光性樹脂層に含まれる色素の含有量を算出する。
【0201】
<<熱架橋性化合物>>
感光性樹脂層は、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、熱架橋性化合物を含むことが好ましい。なお、本明細書においては、後述するエチレン性不飽和基を有する熱架橋性化合物は、重合性化合物としては扱わず、熱架橋性化合物として扱うものとする。
熱架橋性化合物としては、メチロール化合物、及びブロックイソシアネート化合物が挙げられる。中でも、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、ブロックイソシアネート化合物が好ましい。
ブロックイソシアネート化合物は、ヒドロキシ基及びカルボキシ基と反応するため、例えば、樹脂及び/又は重合性化合物等が、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する場合には、形成される膜の親水性が下がり、感光性樹脂層を硬化した膜を保護膜として使用する場合の機能が強化される傾向がある。
なお、ブロックイソシアネート化合物とは、「イソシアネートのイソシアネート基をブロック剤で保護(いわゆる、マスク)した構造を有する化合物」を指す。
【0202】
ブロックイソシアネート化合物の解離温度は、特に制限されないが、100℃~160℃が好ましく、130℃~150℃がより好ましい。
ブロックイソシアネートの解離温度とは、「示差走査熱量計を用いて、DSC(Differential scanning calorimetry)分析にて測定した場合における、ブロックイソシアネートの脱保護反応に伴う吸熱ピークの温度」を意味する。
示差走査熱量計としては、例えば、セイコーインスツルメンツ(株)製の示差走査熱量計(型式:DSC6200)を好適に使用できる。但し、示差走査熱量計は、これに限定されない。
【0203】
解離温度が100℃~160℃であるブロック剤としては、活性メチレン化合物〔マロン酸ジエステル(マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル等)〕、オキシム化合物(ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、及びシクロヘキサノンオキシム等の分子内に-C(=N-OH)-で表される構造を有する化合物)が挙げられる。
これらの中でも、解離温度が100℃~160℃であるブロック剤としては、例えば、保存安定性の観点から、オキシム化合物を含むことが好ましい。
【0204】
ブロックイソシアネート化合物は、例えば、膜の脆性改良、被転写体との密着力向上等の観点から、イソシアヌレート構造を有することが好ましい。
イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートをイソシアヌレート化して保護することにより得られる。
イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物の中でも、オキシム化合物をブロック剤として用いたオキシム構造を有する化合物が、オキシム構造を有さない化合物よりも解離温度を好ましい範囲にしやすく、且つ、現像残渣を少なくしやすいという観点から好ましい。
【0205】
ブロックイソシアネート化合物は、重合性基を有していてもよい。
重合性基としては、特に制限はなく、公知の重合性基を用いることができ、ラジカル重合性基が好ましい。
重合性基としては、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基及びスチリル基等のエチレン性不飽和基、並びに、グリシジル基等のエポキシ基を有する基が挙げられる。
中でも、重合性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましく、アクリロキシ基が更に好ましい。
【0206】
ブロックイソシアネート化合物としては、市販品を使用できる。
ブロックイソシアネート化合物の市販品の例としては、カレンズ(登録商標) AOI-BM、カレンズ(登録商標) MOI-BM、カレンズ(登録商標) MOI-BP等(以上、昭和電工(株)製)、ブロック型のデュラネートシリーズ(例えば、デュラネート(登録商標) TPA-B80E、デュラネート(登録商標) WT32-B75P等、旭化成ケミカルズ(株)製)が挙げられる。
また、ブロックイソシアネート化合物として、下記の構造の化合物を用いることもできる。
【0207】
【化14】
【0208】
熱架橋性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
感光性樹脂層が熱架橋性化合物を含む場合、熱架橋性化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、1質量%~50質量%が好ましく、5質量%~30質量%がより好ましい。
【0209】
<<酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体>>
ポジ型感光性樹脂層は、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位(以下、「構成単位A」という場合がある。)を有する重合体(以下、「重合体X」という場合がある。)を含むことが好ましい。ポジ型感光性樹脂層は、1種単独の重合体Xを含んでいてもよく、2種以上の重合体Xを含んでいてもよい。
【0210】
重合体Xにおいて、酸分解性基で保護された酸基は、露光により生じる触媒量の酸性物質(例えば、酸)の作用により、脱保護反応を経て酸基に変換される。重合体Xにおいて酸基が生じることで、現像液に対するポジ型感光性樹脂層の溶解性が増大する。
【0211】
重合体Xは、付加重合型の重合体であることが好ましく、(メタ)アクリル酸又はそのエステルに由来する構成単位を有する重合体であることがより好ましい。
【0212】
-酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位-
重合体Xは、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位(構成単位A)を有することが好ましい。重合体Xが構成単位Aを有することにより、ポジ型感光性樹脂層の感度を向上できる。
【0213】
酸基としては、制限されず、公知の酸基を利用できる。酸基は、カルボキシ基、又はフェノール性水酸基であることが好ましい。
【0214】
酸分解性基としては、例えば、酸により比較的分解し易い基、及び酸により比較的分解し難い基が挙げられる。酸により比較的分解し易い基としては、例えば、アセタール型保護基(例えば、1-アルコキシアルキル基、テトラヒドロピラニル基、及びテトラヒドロフラニル基)が挙げられる。酸により比較的分解し難い基としては、例えば、第三級アルキル基(例えば、tert-ブチル基)、及び第三級アルキルオキシカルボニル基(例えば、tert-ブチルオキシカルボニル基)が挙げられる。上記の中でも、酸分解性基は、アセタール型保護基であることが好ましい。
【0215】
酸分解性基の分子量は、樹脂パターンの線幅のバラツキを抑制する観点から、300以下であることが好ましい。
【0216】
構成単位Aは、感度、及び解像度の観点から、以下の式A1により表される構成単位、式A2により表される構成単位、又は式A3により表される構成単位であることが好ましく、式A3により表される構成単位であることがより好ましい。式A3で表される構成単位は、アセタール型の酸分解性基で保護されたカルボキシ基を有する構成単位である。
【0217】
【化15】
【0218】
式A1中、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、R11及びR12の少なくとも一方は、アルキル基、又はアリール基であり、R13は、アルキル基、又はアリール基を表し、R11又はR12と、R13とは連結して環状エーテルを形成してもよく、R14は、水素原子、又はメチル基を表し、Xは、単結合、又は二価の連結基を表し、R15は、置換基を表し、nは、0~4の整数を表す。
【0219】
式A2中、R21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、R21及びR22の少なくとも一方は、アルキル基、又はアリール基であり、R23は、アルキル基、又はアリール基を表し、R21又はR22と、R23とは連結して環状エーテルを形成してもよく、R24は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシアルキル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を表し、mは、0~3の整数を表す。
【0220】
式A3中、R31及びR32は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、R31及びR32の少なくとも一方はアルキル基又はアリール基であり、R33は、アルキル基、又はアリール基を表し、R31又はR32と、R33とは連結して環状エーテルを形成してもよく、R34は、水素原子、又はメチル基を表し、Xは、単結合、又はアリーレン基を表す。
【0221】
式A3中、R31又はR32がアルキル基の場合、炭素数は1~10のアルキル基が好ましい。
式A3中、R31又はR32がアリール基の場合、フェニル基が好ましい。
式A3中、R31及びR32は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基であることが好ましい。
式A3中、R33は、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキル基であることがより好ましい。
式A3中、R31~R33で表されるアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。
式A3中、R31又はR32と、R33とは連結して環状エーテルを形成することが好ましい。上記環状エーテルの環員数は、5又は6であることが好ましく、5であることがより好ましい。
式A3中、Xは、単結合であることが好ましい。アリーレン基は、置換基を有していてもよい。
式A3中、R34は、重合体Xのガラス転移温度(Tg)をより低くし得るという観点から、水素原子であることが好ましい。
【0222】
式A3におけるR34が水素原子である構成単位の含有量は、重合体Xに含まれる構成単位Aの全質量に対して、20質量%以上であることが好ましい。構成単位A中の、式A3におけるR34が水素原子である構成単位の含有量は、13C-核磁気共鳴スペクトル(NMR)測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
【0223】
式A1~式A3の好ましい態様としては、国際公開第2018/179640号の段落0044~段落0058を参照することができる。
【0224】
式A1~式A3において、酸分解性基は、感度の観点から、環状構造を有する基であることが好ましく、テトラヒドロフラン環構造又はテトラヒドロピラン環構造を有する基であるがより好ましく、テトラヒドロフラン環構造を有する基であることがさらに好ましく、テトラヒドロフラニル基であることが特に好ましい。
【0225】
重合体Xは、1種単独の構成単位Aを有していてもよく、2種以上の構成単位Aを有していてもよい。
【0226】
構成単位Aの含有量は、重合体Xの全質量に対して、10質量%~70質量%であることが好ましく、15質量%~50質量%であることがより好ましく、20質量%~40質量%であることが特に好ましい。構成単位Aの含有量が上記範囲内であることで、解像度がより向上する。重合体Xが2種以上の構成単位Aを含む場合、上記構成単位Aの含有量は、2種以上の構成単位Aの総含有量を表すものとする。構成単位Aの含有量は、13C-NMR測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
【0227】
-酸基を有する構成単位-
重合体Xは、酸基を有する構成単位(以下、「構成単位B」という場合がある。)を有していてもよい。
【0228】
構成単位Bは、酸分解性基で保護されていない酸基、すなわち、保護基を有しない酸基を有する構成単位である。重合体Xが構成単位Bを有することで、パターン形成時の感度が良好となる。また、露光後の現像工程においてアルカリ性の現像液に溶けやすくなるため、現像時間の短縮化を図ることができる。
【0229】
構成単位Bにおける酸基とは、pKaが12以下のプロトン解離性基を意味する。酸基のpKaは、感度向上の観点から、10以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましい。また、酸基のpKaは、-5以上であることが好ましい。
【0230】
酸基としては、例えば、カルボキシ基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、スルホ基、フェノール性水酸基、及びスルホニルイミド基が挙げられる。酸基は、カルボキシ基、又はフェノール性水酸基であることが好ましく、カルボキシ基であることがより好ましい。
【0231】
重合体Xは、1種単独の構成単位Bを有していてもよく、2種以上の構成単位Bを有していてもよい。
【0232】
構成単位Bの含有量は、重合体Xの全質量に対して、0.01質量%~20質量%であることが好ましく、0.01質量%~10質量%であることがより好ましく、0.1質量%~5質量%であることが特に好ましい。構成単位Bの含有量が上記範囲内であることで、解像性がより良好となる。重合体Xが2種以上の構成単位Bを有する場合、上記構成単位Bの含有量は、2種以上の構成単位Bの総含有量を表すものとする。構成単位Bの含有量は、13C-NMR測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
【0233】
-他の構成単位-
重合体Xは、既述の構成単位A及び構成単位B以外の、他の構成単位(以下、「構成単位C」という場合がある。)を有することが好ましい。構成単位Cの種類及び含有量の少なくとも一方を調製することで、重合体Xの諸特性を調整することができる。重合体Xが構成単位Cを有することで、重合体Xのガラス転移温度、酸価、及び親疎水性を容易に調整することができる。
【0234】
構成単位Cを形成するモノマーとしては、例えば、スチレン類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、不飽和ジカルボン酸ジエステル、ビシクロ不飽和化合物、マレイミド化合物、不飽和芳香族化合物、共役ジエン系化合物、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、及び不飽和ジカルボン酸無水物が挙げられる。
【0235】
構成単位Cを形成するモノマーは、基板との密着性の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、炭素数4~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることがより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、及び(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが挙げられる。
【0236】
構成単位Cとしては、スチレン、α-メチルスチレン、アセトキシスチレン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、クロロスチレン、ビニル安息香酸メチル、ビニル安息香酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、アクリロニトリル、又はエチレングリコールモノアセトアセテートモノ(メタ)アクリレートに由来の構成単位が挙げられる。構成単位Cとしては、特開2004-264623号公報の段落0021~段落0024に記載された化合物に由来の構成単位も挙げられる。
【0237】
構成単位Cは、解像性の観点から、塩基性基を有する構成単位を含むことが好ましい。塩基性基としては、例えば、窒素原子を有する基が挙げられる。窒素原子を有する基としては、例えば、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、及び含窒素複素芳香環基が挙げられる。塩基性基は、脂肪族アミノ基であることが好ましい。
【0238】
脂肪族アミノ基としては、第一級アミノ基、第二級アミノ基、及び第三級アミノ基のいずれであってもよいが、解像性の観点から、第二級アミノ基、又は第三級アミノ基であることが好ましい。
【0239】
塩基性基を有する構成単位を形成するモノマーとしては、例えば、メタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル、メタクリル酸2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル、アクリル酸2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル、メタクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸N-(3-ジメチルアミノ)プロピル、アクリル酸N-(3-ジメチルアミノ)プロピル、メタクリル酸N-(3-ジエチルアミノ)プロピル、アクリル酸N-(3-ジエチルアミノ)プロピル、メタクリル酸2-(ジイソプロピルアミノ)エチル、メタクリル酸2-モルホリノエチル、アクリル酸2-モルホリノエチル、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、4-アミノスチレン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、1-ビニルイミダゾール、2-メチル-1-ビニルイミダゾール、1-アリルイミダゾール、及び1-ビニル-1,2,4-トリアゾールが挙げられる。上記の中でも、メタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルが好ましい。
【0240】
また、構成単位Cとしては、電気特性を向上させる観点から、芳香環を有する構成単位、又は脂肪族環式骨格を有する構成単位が好ましい。これらの構成単位を形成するモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、及びベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。上記の中でも、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0241】
重合体Xは、1種単独の構成単位Cを有していてもよく、2種以上の構成単位Cを有していてもよい。
【0242】
構成単位Cの含有量は、重合体Xの全質量に対し、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが特に好ましい。構成単位Cの含有量は、重合体Xの全質量に対し、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。構成単位Cの含有量が上記範囲内であることで、解像度及び基板との密着性がより向上する。重合体Xが2種以上の構成単位Cを有する場合、上記構成単位Cの含有量は、2種以上の構成単位Cの総含有量を表すものとする。構成単位Cの含有量は、13C-NMR測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
【0243】
重合体Xの好ましい例を以下に示す。ただし、重合体Xは、以下の例示に制限されない。なお、下記に示す重合体Xにおける各構成単位の比率、及び重量平均分子量は、それぞれ、好ましい物性を得るために適宜選択される。
【0244】
【化16】
【0245】
-ガラス転移温度-
重合体Xのガラス転移温度(Tg)は、90℃以下であることが好ましく、20℃~60℃であることがより好ましく、30℃~50℃であることが特に好ましい。ポジ型感光性樹脂層が後述する転写材料を用いて形成される場合、重合体Xのガラス転移温度が上記範囲内であることで、ポジ型感光性樹脂層の転写性を向上できる。
【0246】
重合体XのTgを上記範囲内に調整する方法としては、例えば、FOX式を用いる方法が挙げられる。FOX式によれば、例えば、目的とする重合体Xにおける各構成単位の単独重合体のTg、及び各構成単位の質量分率に基づいて、目的とする重合体XのTgを調整できる。
【0247】
以下、FOX式について、第一の構成単位、及び第二の構成単位を有する共重合体を例に用いて説明する。
第一の構成単位の単独重合体のガラス転移温度をTg1、共重合体における第一の構成単位の質量分率をW1、第二の構成単位の単独重合体のガラス転移温度をTg2、共重合体における第二の構成単位の質量分率をW2とした場合、第一の構成単位、及び第二の構成単位を有する共重合体のガラス転移温度Tg0(単位:K)は、以下の式にしたがって推定することができる。
FOX式:1/Tg0=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)
【0248】
また、重合体の重量平均分子量を調整することにより、重合体のTgを調整することもできる。
【0249】
-酸価-
重合体Xの酸価は、解像性の観点から、0mgKOH/g~50mgKOH/gであることが好ましく、0mgKOH/g~20mgKOH/gであることがより好ましく、0mgKOH/g~10mgKOH/gであることが特に好ましい。
【0250】
重合体の酸価は、重合体1gあたりの酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムの質量を表したものである。具体的な測定方法を以下に説明する。まず、測定試料を、テトラヒドロフラン及び水を含む混合溶媒(体積比:テトラヒドロフラン/水=9/1)に溶解する。電位差滴定装置(例えば、商品名:AT-510、京都電子工業株式会社製)を用いて、得られた溶液を25℃において、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定する。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点として、次式により酸価を算出する。
A=56.11×Vs×0.1×f/w
A:酸価(mgKOH/g)
Vs:滴定に要した0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の使用量(mL)
f:0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の力価
w:測定試料の質量(g)(固形分換算)
【0251】
-重量平均分子量-
重合体Xの重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、60,000以下であることが好ましい。ポジ型感光性樹脂層が後述する転写材料を用いて形成される場合、重合体Xの重量平均分子量が60,000以下であることで、低温(例えば130℃以下)でポジ型感光性樹脂層を転写できる。
【0252】
重合体Xの重量平均分子量は、2,000~60,000であることが好ましく、3,000~50,000であることがより好ましい。
【0253】
重合体Xの数平均分子量と重量平均分子量との比(分散度)は、1.0~5.0が好ましく、1.05~3.5がより好ましい。
【0254】
重合体Xの重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定する。測定装置としては、様々な市販の装置を用いることができる。以下、GPCによる重合体Xの重量平均分子量の測定方法について具体的に説明する。
測定装置として、HLC(登録商標)-8220GPC(東ソー(株)製)を用いる。
カラムとして、TSKgel(登録商標)Super HZM-M(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)、Super HZ4000(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)、Super HZ3000(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)、及びSuper HZ2000(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)をそれぞれ1本ずつ直列に連結したものを用いる。
溶離液として、THF(テトラヒドロフラン)を用いる。
測定条件は、試料濃度を0.2質量%、流速を0.35mL/min、サンプル注入量を10μL、及び測定温度を40℃とする。
検出器として、示差屈折率(RI)検出器を用いる。
検量線は、東ソー株式会社製の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F-40」、「F-20」、「F-4」、「F-1」、「A-5000」、「A-2500」、及び「A-1000」の7サンプルのいずれかを用いて作成する。
【0255】
-含有量-
重合体Xの含有量は、高解像性の観点から、ポジ型感光性樹脂層の全質量に対して、50質量%~99.9質量%であることが好ましく、70質量%~98質量%であることがより好ましい。
【0256】
-製造方法-
重合体Xの製造方法としては、制限されず、公知の方法を利用できる。例えば、有機溶剤中、重合開始剤を用いて、構成単位Aを形成するためのモノマー、さらに必要に応じて、構成単位Bを形成するためのモノマー及び構成単位Cを形成するためのモノマーを重合することにより重合体Xを製造できる。また、重合体Xは、いわゆる高分子反応で製造することもできる。
【0257】
<<他の重合体>>
ポジ型感光性樹脂層は、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体を含む場合、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体に加えて、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を有しない重合体(以下、「他の重合体」という場合がある。)を含んでいてもよい。
【0258】
他の重合体としては、例えば、ポリヒドロキシスチレンが挙げられる。ポリヒドロキシスチレンの市販品としては、サートマー社製のSMA 1000P、SMA 2000P、SMA 3000P、SMA 1440F、SMA 17352P、SMA 2625P、及びSMA 3840F、東亞合成株式会社製のARUFON UC-3000、ARUFON UC-3510、ARUFON UC-3900、ARUFON UC-3910、ARUFON UC-3920、及びARUFON UC-3080、並びにBASF社製のJoncryl 690、Joncryl 678、Joncryl 67、及びJoncryl 586が挙げられる。
【0259】
ポジ型感光性樹脂層は、1種単独の他の重合体を含んでいてもよく、2種以上の他の重合体を含んでいてもよい。
【0260】
ポジ型感光性樹脂層が他の重合体を含む場合、他の重合体の含有量は、重合体成分の全質量に対して、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。
【0261】
本開示において、「重合体成分」とは、ポジ型感光性樹脂層に含まれる全ての重合体の総称である。例えば、ポジ型感光性樹脂層が重合体Xと他の重合体とを含む場合、重合体X、及び他の重合体を合わせて「重合体成分」という。なお、後述する架橋剤、分散剤、及び界面活性剤に該当する化合物は、高分子化合物であっても重合体成分に含まないものとする。
【0262】
重合体成分の含有量は、ポジ型感光性樹脂層の全質量に対して、50質量%~99.9質量%であることが好ましく、70質量%~98質量%であることがより好ましい。
【0263】
<<アルカリ可溶性樹脂(ポジ型)>>
ポジ型感光性樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましく、アルカリ可溶性樹脂及びキノンジアジド化合物を含むことがより好ましく、フェノール性水酸基を有する構成単位を有する樹脂及びキノンジアジド化合物を含むことが特に好ましい。
【0264】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、水酸基、カルボキシ基又はスルホ基を主鎖又は側鎖に有する樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリヒドロキシスチレンの誘導体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリビニルヒドロキシベンゾエート、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系樹脂及びノボラック樹脂が挙げられる。好ましいアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、m-/p-混合クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体及びフェノールとクレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体が挙げられる。
【0265】
アルカリ可溶性樹脂は、フェノール性水酸基(-Ar-OH)、カルボキシ基(-COH)、スルホ基(-SOH)、リン酸基(-OPOH)、スルホンアミド基(-SONH-R)又は置換スルホンアミド系酸基(例えば、活性イミド基、-SONHCOR、-SONHSOR及び-CONHSOR)を有してもよい。ここで、Arは置換基を有してもよい2価のアリール基を表し、Rは置換基を有してもよい炭化水素基を表す。
【0266】
ノボラック樹脂は、例えば、フェノール系化合物とアルデヒド化合物とを、酸触媒の存在下で縮合させることにより得られる。フェノール系化合物としては、例えば、o-、m-又はp-クレゾール、2,5-、3,5-又は3,4-キシレノール、2,3,5-トリメチルフェノール、2-t-ブチル-5-メチルフェノール及びt-ブチルハイドロキノンが挙げられる。アルデヒド化合物としては、例えば、脂肪族アルデヒド類(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びグリオキサール)及び芳香族アルデヒド類(例えば、ベンズアルデヒド及びサリチルアルデヒド)が挙げられる。酸触媒としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、硫酸及びリン酸)、有機酸(例えば、シュウ酸、酢酸及びp-トルエンスルホン酸)及び二価金属塩(例えば、酢酸亜鉛)が挙げられる。縮合反応は常法に従って行うことができる。縮合反応は、例えば、60℃~120℃の範囲の温度で2時間~30時間の条件で行われる。縮合反応は、適当な溶媒中で行ってもよい。
【0267】
中でも、アルカリ可溶性樹脂としては、ノボラック樹脂等のフェノール性水酸基を有する構成単位を有する樹脂が好ましい。
【0268】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、パターン形成性の観点から、5.0×10~2.0×10であることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂の数平均分子量は、パターン形成性の観点から、2.0×10~1.0×10であることが好ましい。
【0269】
例えば、米国特許第4123279号明細書に記載されている、t-ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体及びオクチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体のような、炭素数が3~8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体を併用してもよい。米国特許第4123279号明細書に記載されている、t-ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂及びオクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数が3~8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮合物を併用してもよい。
【0270】
ポジ型感光性樹脂層は、1種単独又は2種以上のアルカリ可溶性樹脂を含んでもよい。
アルカリ可溶性樹脂の含有量は、ポジ型感光性樹脂層の全質量に対して、30質量%~99.9質量%であることが好ましく、40質量%~99.5質量%であることがより好ましく、70質量%~99質量%であることが特に好ましい。
【0271】
<<光酸発生剤>>
ポジ型感光性樹脂層は、感光性化合物として、光酸発生剤を含むことが好ましい。光酸発生剤は、活性光線(例えば、紫外線、遠紫外線、X線、及び電子線)の照射により酸を発生することができる化合物である。
【0272】
光酸発生剤としては、波長300nm以上、好ましくは波長300nm~450nmの活性光線に感応することにより酸を発生する化合物が好ましい。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光酸発生剤についても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応することにより酸を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。
【0273】
光酸発生剤は、pKaが4以下の酸を発生する光酸発生剤であることが好ましく、pKaが3以下の酸を発生する光酸発生剤であることがより好ましく、pKaが2以下の酸を発生する光酸発生剤であることが特に好ましい。光酸発生剤に由来の酸のpKaの下限は、制限されない。光酸発生剤に由来の酸のpKaは、例えば、-10.0以上であることが好ましい。
【0274】
光酸発生剤としては、例えば、イオン性光酸発生剤、及び非イオン性光酸発生剤が挙げられる。
【0275】
イオン性光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物が挙げられる。オニウム塩化合物としては、例えば、ジアリールヨードニウム塩化合物、トリアリールスルホニウム塩化合物、及び第四級アンモニウム塩化合物が挙げられる。イオン性光酸発生剤は、オニウム塩化合物であることが好ましく、トリアリールスルホニウム塩化合物、及びジアリールヨードニウム塩化合物の少なくとも一方であることが特に好ましい。
【0276】
イオン性光酸発生剤としては、特開2014-85643号公報の段落0114~段落0133に記載されたイオン性光酸発生剤も好ましく用いることができる。
【0277】
非イオン性光酸発生剤としては、例えば、トリクロロメチル-s-トリアジン化合物、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及びオキシムスルホネート化合物が挙げられる。非イオン性光酸発生剤は、感度、解像度、及び基板との密着性の観点から、オキシムスルホネート化合物であることが好ましい。
【0278】
トリクロロメチル-s-トリアジン化合物、ジアゾメタン化合物、及びイミドスルホネート化合物の具体例としては、特開2011-221494号公報の段落0083~段落0088に記載された化合物が挙げられる。
【0279】
オキシムスルホネート化合物としては、国際公開第2018/179640号の段落0084~段落0088に記載されたものを好適に用いることができる。
【0280】
光酸発生剤は、感度、及び解像度の観点から、オニウム塩化合物、及びオキシムスルホネート化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましく、オキシムスルホネート化合物であることがより好ましい。
【0281】
光酸発生剤の好ましい例として、以下の構造を有する光酸発生剤が挙げられる。
【0282】
【化17】
【0283】
波長405nmに吸収を有する光酸発生剤としては、例えば、アデカアークルズ(登録商標)SP-601(株式会社ADEKA製)が挙げられる。
【0284】
ポジ型感光性樹脂層は、耐熱性及び寸法安定性の観点から、酸発生剤(好ましくは光酸発生剤)として、キノンジアジド化合物を含むことが好ましい。
キノンジアジド化合物は、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物とキノンジアジドスルホン酸ハライドとを、脱ハロゲン化水素剤の存在下で縮合反応させることにより合成することができる。
【0285】
キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2-ベンゾキノンジアジド-4-スルホン酸エステル、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル、1,2-ナフトキノンジアジド-6-スルホン酸エステル、2,1-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル、2,1-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル、2,1-ナフトキノンジアジド-6-スルホン酸エステル、その他のキノンジアジド誘導体のスルホン酸エステル、1,2-ベンゾキノンジアジド-4-スルホン酸クロライド、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸クロライド、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロライド、1,2-ナフトキノンジアジド-6-スルホン酸クロライド、2,1-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸クロライド、2,1-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロライド及び2,1-ナフトキノンジアジド-6-スルホン酸クロライドが挙げられる。
【0286】
ポジ型感光性樹脂層は、1種単独の光酸発生剤を含んでいてもよく、2種以上の光酸発生剤を含んでいてもよい。
光酸発生剤の含有量は、感度、及び解像度の観点から、ポジ型感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0287】
<<その他の成分>>
感光性樹脂層は、上述した以外の成分を含有してもよい。
【0288】
-界面活性剤-
感光性樹脂層は、厚さ均一性の観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。
界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性(非イオン性)界面活性剤、及び、両性界面活性剤が挙げられ、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
界面活性剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0017、及び、特開2009-237362号公報の段落0060~0071に記載の界面活性剤が挙げられる。
【0289】
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤が好ましい。
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファック(商品名)F-171、F-172、F-173、F-176、F-177、F-141、F-142、F-143、F-144、F-437、F-444、F-475、F-477、F-479、F-482、F-551-A、F-552、F-554、F-555-A、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-565、F-563、F-568、F-575、F-780、EXP、MFS-330、MFS-578、MFS-579、MFS-586、MFS-587、R-41、R-41-LM、R-01、R-40、R-40-LM、RS-43、TF-1956、RS-90、R-94、RS-72-K、DS-21(以上、DIC(株)製)、フロラード(商品名)FC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロン(商品名)S-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、AGC(株)製)、PolyFox(商品名)PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)、フタージェント 710FL、710FM、610FM、601AD、601ADH2、602A、215M、245F、251、212M、250、209F、222F、208G、710LA、710FS、730LM、650AC、681、683(以上、(株)NEOS製)等が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造を有し、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファック(商品名)DSシリーズ(化学工業日報(2016年2月22日)、日経産業新聞(2016年2月23日))、例えばメガファック(商品名)DS-21が挙げられる。
【0290】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素化アルキル基又はフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いることも好ましい。
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることもできる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。
フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。メガファック(商品名)RS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K(以上、DIC(株)製)等が挙げられる。
【0291】
ノニオン性界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニック(商品名)L10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(以上、BASF社製)、テトロニック(商品名)304、701、704、901、904、150R1(以上、BASF社製)、ソルスパース(商品名)20000(以上、日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(以上、富士フイルム和光純薬(株)製)、パイオニン(商品名)D-6112、D-6112-W、D-6315(以上、竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(以上、日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
また、近年、炭素数が7以上の直鎖状パーフルオロアルキル基を有する化合物は、環境適性が懸念されるため、パーフルオロオクタン酸(PFOA)、及び、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の代替材料を使用した界面活性剤を用いることが好ましい。
【0292】
シリコーン系界面活性剤としては、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマー、及び、側鎖や末端に有機基を導入した変性シロキサンポリマーが挙げられる。
シリコーン系界面活性剤の具体例としては、DOWSIL(商品名)8032 ADDITIVE、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)並びに、X-22-4952、X-22-4272、X-22-6266、KF-351A、K354L、KF-355A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、X-22-6191、X-22-4515、KF-6004、KP-341、KF-6001、KF-6002(以上、信越化学工業(株)製)、F-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0293】
感光性樹脂層は、界面活性剤を、1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
界面活性剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対し、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.01質量%~3質量%がより好ましい。
【0294】
-添加剤-
感光性樹脂層は、上記成分以外に、必要に応じて公知の添加剤を含有してもよい。
添加剤としては、例えば、重合禁止剤、増感剤、可塑剤、アルコキシシラン化合物、及び、溶剤が挙げられる。感光性樹脂層は、各添加剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
また、添加剤としては、金属酸化物粒子、酸化防止剤、分散剤、酸増殖剤、現像促進剤、導電性繊維、熱ラジカル重合開始剤、熱酸発生剤、紫外線吸収剤、増粘剤、及び、有機又は無機の沈殿防止剤が挙げられる。これら添加剤の好ましい態様については、特開2014-85643号公報の段落0165~段落0184にそれぞれ記載があり、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0295】
感光性樹脂層は、重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤としては、ラジカル重合禁止剤が好ましい。
重合禁止剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0018に記載された熱重合防止剤が挙げられる。中でも、フェノチアジン、フェノキサジン又は4-メトキシフェノールが好ましい。その他の重合禁止剤としては、ナフチルアミン、塩化第一銅、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、ジフェニルニトロソアミン等が挙げられる。感光性樹脂組成物の感度を損なわないために、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩を重合禁止剤として使用することが好ましい。
【0296】
重合禁止剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対し、0.01質量%~3質量%であることが好ましく、0.05質量%~1質量%であることがより好ましい。上記含有量を0.01質量%以上にすることは、感光性樹脂組成物に保存安定性を付与するという観点から好ましい。一方で、上記含有量を3質量%以下にすることは、感度を維持する観点から好ましい。
【0297】
感光性樹脂層は、増感剤を含有してもよい。
増感剤は、特に制限されず、公知の増感剤、染料及び顔料を用いることができる。増感剤としては、例えば、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物、クマリン化合物、キサントン化合物、チオキサントン化合物、アクリドン化合物、オキサゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、トリアゾール化合物(例えば、1,2,4-トリアゾール)、スチルベン化合物、トリアジン化合物、チオフェン化合物、ナフタルイミド化合物、トリアリールアミン化合物、及び、アミノアクリジン化合物が挙げられる。
【0298】
感光性樹脂層は、増感剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
感光性樹脂層が増感剤を含有する場合、増感剤の含有量は、目的により適宜選択できるが、光源に対する感度の向上、及び、重合速度と連鎖移動のバランスによる硬化速度の向上の観点から、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~5質量%が好ましく、0.05質量%~1質量%がより好ましい。
【0299】
感光性樹脂層は、可塑剤及びヘテロ環状化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含有してもよい。
可塑剤及びヘテロ環状化合物としては、国際公開第2018/179640号の段落0097~0103及び0111~0118に記載された化合物が挙げられる。
【0300】
感光性樹脂層、好ましくはポジ型感光性樹脂層は、アルコキシシラン化合物を含んでいてもよい。
アルコキシシラン化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリアコキシシラン、γ-グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ-クロロプロピルトリアルコキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、及びビニルトリアルコキシシランが挙げられる。
【0301】
上記の中でも、アルコキシシラン化合物は、トリアルコキシシラン化合物であることが好ましく、γ-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、又はγ-メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランであることがより好ましく、γ-グリシドキシプロピルトリアルコキシシランであることが更に好ましく、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランであることが特に好ましい。
【0302】
感光性樹脂層は、1種単独のアルコキシシラン化合物を含んでいてもよく、2種以上のアルコキシシラン化合物を含んでいてもよい。
アルコキシシラン化合物の含有量は、基板との密着性、及びエッチング耐性の観点から、感光性樹脂層の全質量に対し、0.1質量%~50質量%であることが好ましく、0.5質量%~40質量%であることがより好ましく、1.0質量%~30質量%であることが特に好ましい。
【0303】
感光性樹脂層は、溶剤を含有してもよい。溶剤を含む感光性樹脂組成物により感光性樹脂層を形成した場合、感光性樹脂層に溶剤が残留することがある。
【0304】
<<不純物等>>
感光性樹脂層は、所定量の不純物を含んでいてもよい。
不純物の具体例としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、銅、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、ハロゲン及びこれらのイオンが挙げられる。中でも、ハロゲン化物イオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンは不純物として混入し易いため、下記の含有量にすることが好ましい。
【0305】
感光性樹脂層における不純物の含有量は、質量基準で、80ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、2ppm以下が更に好ましい。不純物の含有量は、質量基準で、1ppb以上とすることができ、0.1ppm以上としてもよい。
【0306】
不純物を上記範囲にする方法としては、組成物の原料として不純物の含有量が少ないものを選択すること、感光性樹脂層の作製時に不純物の混入を防ぐこと、及び洗浄して除去することが挙げられる。このような方法により、不純物量を上記範囲内とすることができる。
【0307】
不純物は、例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法、原子吸光分光法、及びイオンクロマトグラフィー法等の公知の方法で定量できる。
【0308】
感光性樹脂層における、ベンゼン、ホルムアルデヒド、トリクロロエチレン、1,3-ブタジエン、四塩化炭素、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びヘキサン等の化合物の含有量は、少ないことが好ましい。これら化合物の感光性樹脂層の全質量に対する含有量としては、質量基準で、100ppm以下が好ましく、20ppm以下がより好ましく、4ppm以下が更に好ましい。
下限は、質量基準で、感光性樹脂層の全質量に対して、10ppb以上とすることができ、100ppb以上とすることができる。これら化合物は、上記の金属の不純物と同様の方法で含有量を抑制できる。また、公知の測定法により定量できる。
【0309】
感光性樹脂層における水の含有量は、信頼性及びラミネート性を向上させる観点から、0.01質量%~1.0質量%が好ましく、0.05質量%~0.5質量%がより好ましい。
【0310】
<<残存モノマー>>
感光性樹脂層は、上述したアルカリ可溶性樹脂の各構成単位に対応する残存モノマーを含む場合がある。
残存モノマーの含有量は、パターニング性、及び、信頼性の点から、アルカリ可溶性樹脂全質量に対して、5,000質量ppm以下が好ましく、2,000質量ppm以下がより好ましく、500質量ppm以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、1質量ppm以上が好ましく、10質量ppm以上がより好ましい。
アルカリ可溶性樹脂の各構成単位の残存モノマーは、パターニング性、及び、信頼性の点から、感光性樹脂層の全質量に対して、3,000質量ppm以下が好ましく、600質量ppm以下がより好ましく、100質量ppm以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、0.1質量ppm以上が好ましく、1質量ppm以上がより好ましい。
【0311】
高分子反応でアルカリ可溶性樹脂を合成する際のモノマーの残存モノマー量も、上記範囲とすることが好ましい。例えば、カルボン酸側鎖にアクリル酸グリシジルを反応させてアルカリ可溶性樹脂を合成する場合には、アクリル酸グリシジルの含有量を上記範囲にすることが好ましい。
残存モノマーの量は、液体クロマトグラフィー、及び、ガスクロマトグラフィー等の公知の方法で測定できる。
【0312】
<<物性等>>
感光性樹脂層の層厚は、0.1μm~300μmが好ましく、0.2μm~100μmがより好ましく、0.5μm~50μmが更に好ましく、0.5μm~15μmがより更に好ましく、0.5μm~10μmが特に好ましく、0.5μm~8μmが最も好ましい。これにより、感光性樹脂層の現像性が向上し、解像性を向上させることができる。
また、感光性樹脂層の層厚(厚さ)は、解像性、及び、本開示における効果をより発揮する観点から、10μm以下であることが好ましく、5.0μm以下であることがより好ましく、0.5μm~4.0μmであることが更に好ましく、0.5μm~3.0μmが特に好ましい。
感光性転写材料が備える各層の層厚は、感光性転写材料の主面に対し垂直な方向の断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により観察し、得られた観察画像に基づいて各層の厚さを10点以上計測し、その平均値を算出することにより、測定される。
【0313】
また、密着性により優れる点から、感光性樹脂層の波長365nmの光の透過率は、10%以上が好ましく、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、99.9%以下が好ましい。
【0314】
<<形成方法>>
感光性樹脂層の形成方法は、上記の成分を含有する層を形成可能な方法であれば特に制限されない。
感光性樹脂層の形成方法としては、例えば、ネガ型感光性樹脂層である場合、アルカリ可溶性樹脂、重合性化合物、光重合開始剤及び溶剤等を含有する感光性樹脂組成物を調製し、仮支持体等の表面に感光性樹脂組成物を塗布し、感光性樹脂組成物の塗膜を乾燥することにより形成する方法が挙げられる。
【0315】
感光性樹脂層の形成に使用される感光性樹脂組成物としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂、重合性化合物、光重合開始剤、上記の任意成分及び溶剤を含有する組成物が挙げられる。
感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物の粘度を調節し、感光性樹脂層の形成を容易にするため、溶剤を含有することが好ましい。
【0316】
-溶剤-
感光性樹脂組成物に含有される溶剤としては、アルカリ可溶性樹脂、重合性化合物、光重合開始剤及び上記の任意成分を溶解又は分散可能であれば特に制限されず、公知の溶剤を使用できる。
溶剤としては、例えば、アルキレングリコールエーテル溶剤、アルキレングリコールエーテルアセテート溶剤、アルコール溶剤(メタノール及びエタノール等)、ケトン溶剤(アセトン及びメチルエチルケトン等)、芳香族炭化水素溶剤(トルエン等)、非プロトン性極性溶剤(N,N-ジメチルホルムアミド等)、環状エーテル溶剤(テトラヒドロフラン等)、エステル溶剤、アミド溶剤、ラクトン溶剤、並びにこれらの2種以上を含む混合溶剤が挙げられる。
仮支持体、熱可塑性樹脂層、水溶性樹脂層、感光性樹脂層及び保護フィルムを備える感光性転写材料を作製する場合、感光性樹脂組成物は、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。中でも、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種と、ケトン溶剤及び環状エーテル溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種とを含む混合溶剤がより好ましく、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種、ケトン溶剤、並びに環状エーテル溶剤の3種を少なくとも含む混合溶剤が更に好ましい。
【0317】
アルキレングリコールエーテル溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル及びジプロピレングリコールジアルキルエーテルが挙げられる。
アルキレングリコールエーテルアセテート溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート及びジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートが挙げられる。
溶剤としては、国際公開第2018/179640号の段落0092~0094に記載された溶剤、及び、特開2018-177889公報の段落0014に記載された溶剤を用いてもよく、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0318】
感光性樹脂組成物は、溶剤を1種単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
感光性樹脂組成物を塗布する際における溶剤の含有量は、感光性樹脂組成物中の全固形分100質量部に対し、50質量部~1,900質量部が好ましく、100質量部~900質量部がより好ましい。
【0319】
感光性樹脂組成物の調製方法は特に制限されず、例えば、各成分を上記溶剤に溶解させた溶液を予め調製し、得られた溶液を所定の割合で混合することにより、感光性樹脂組成物を調製する方法が挙げられる。
粒子の除去性の観点から、感光性樹脂組成物は、感光性樹脂層を形成する前に、フィルターを用いてろ過することが好ましく、孔径0.2μm~10μmのフィルターを用いてろ過することがより好ましく、孔径0.2μm~7μmのフィルターを用いてろ過することが更に好ましく、孔径0.2μm~5μmのフィルターを用いてろ過することが特に好ましい。
フィルターの材質及び形状については、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
また、上記ろ過は、1回以上行うことが好ましく、また、複数回行うことも好ましい。
【0320】
感光性樹脂組成物の塗布方法は特に制限されず、公知の方法で塗布すればよい。塗布方法としては、例えば、スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布及びインクジェット塗布が挙げられる。
また、感光性樹脂層は、感光性樹脂組成物を後述する保護フィルム上に塗布し、乾燥することにより形成してもよい。
【0321】
また、本開示における感光性転写材料は、解像性、及び、仮支持体の剥離性の観点から、上記仮支持体と上記感光性樹脂層との間に、他の層を有することが好ましい。
他の層としては、水溶性樹脂層、熱可塑性樹脂層、保護フィルム等が好ましく挙げられる。
中でも、上記転写層として、水溶性樹脂層を有することが好ましく、熱可塑性樹脂層、及び、水溶性樹脂層を有することがより好ましい。
【0322】
〔水溶性樹脂層〕
感光性転写材料は、仮支持体と感光性樹脂層との間、後述する熱可塑性樹脂層を有する場合は、熱可塑性樹脂層と感光性樹脂層との間に、水溶性樹脂層を有することが好ましい。水溶性樹脂層によれば、複数の層を形成する際、及び保存の際における成分の混合を抑制できる。
【0323】
水溶性樹脂層は、現像性、並びに、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制する観点から、水溶性の層であることが好ましい。本開示において、「水溶性」とは、液温が22℃であるpH7.0の水100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。
【0324】
水溶性樹脂層としては、例えば、特開平5-72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断層が挙げられる。水溶性樹脂層が酸素遮断層であることで、露光時の感度が向上し、露光機の時間負荷が低減する結果、生産性が向上する。水溶性樹脂層として用いられる酸素遮断層は、公知の層から適宜選択すればよい。水溶性樹脂層として用いられる酸素遮断層は、低い酸素透過性を示し、水、若しくはアルカリ水溶液(22℃の炭酸ナトリウムの1質量%水溶液)に分散、又は溶解する酸素遮断層であることが好ましい。
また、水溶性樹脂層は、酸素遮断性、解像性、及び、パターン形成性の観点から、無機層状化合物を含むことが好ましい。
無機層状化合物としては、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、天然雲母、合成雲母等の雲母化合物、式:3MgO・4SiO・HOで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウム等が挙げられる。
雲母化合物としては、例えば、式:A(B,C)2-510(OH,F,O)〔ただし、Aは、K、Na、Caのいずれか、B及びCは、Fe(II)、Fe(III)、Mn、Al、Mg、Vのいずれかであり、Dは、Si又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群が挙げられる。
【0325】
雲母群においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。合成雲母としてはフッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si10)F等の非膨潤性雲母、及び、NaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、Na又はLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si10)F等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に合成スメクタイトも有用である。
【0326】
無機層状化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きい程よい。従って、アスペクト比は、好ましくは20以上であり、より好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。アスペクト比は粒子の厚さに対する長径の比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
【0327】
無機層状化合物の粒子径は、その平均長径が、好ましくは0.3μm~20μm、より好ましくは0.5μm~10μm、特に好ましくは1μm~5μmである。粒子の平均の厚さは、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.01μm以下である。具体的には、例えば、代表的化合物である膨潤性合成雲母の場合、好ましい態様としては、厚さが1nm~50nm程度、面サイズ(長径)が1μm~20μm程度である。
【0328】
無機層状化合物の含有量は、酸素遮断性、解像性、及び、パターン形成性の観点から、水溶性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%~50質量%が好ましく、1質量%~20質量%がより好ましい。
【0329】
水溶性樹脂層は、樹脂を含むことが好ましい。水溶性樹脂層に含まれる樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ゼラチン、ビニルエーテル系樹脂、ポリアミド樹脂、及びこれらの共重合体が挙げられる。水溶性樹脂層に含まれる樹脂は、水溶性樹脂であることが好ましい。
【0330】
水溶性樹脂層に含まれる樹脂は、複数の層間の成分の混合を抑制する観点から、ネガ型感光性樹脂層に含まれる重合体A、及び熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂(アルカリ可溶性樹脂)のいずれとも異なる樹脂であることが好ましい。
【0331】
また、水溶性樹脂層は、酸素遮断性、現像性、解像性、及び、パターン形成性の観点から、水溶性化合物を含むことが好ましく、水溶性樹脂を含むことがより好ましい。
水溶性化合物としては、特に制限はないが、酸素遮断性、現像性、解像性、及び、パターン形成性の観点から、水溶性セルロース誘導体、多価アルコール類、多価アルコール類のオキサイド付加物、ポリエーテル類、フェノール誘導体、及び、アミド化合物よりなる群から選ばれる1種以上の化合物であることが好ましく、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースよりなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性樹脂であることがより好ましい。
水溶性樹脂としては、例えば、水溶性セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、ゼラチン、ビニルエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、及びこれらの共重合体などの樹脂が挙げられる。
中でも、水溶性化合物は、酸素遮断性、現像性、解像性、及び、パターン形成性の観点から、ポリビニルアルコールを含むことが好ましく、ポリビニルアルコールであることがより好ましい。
ポリビニルアルコールの加水分解度は、特に制限はないが、酸素遮断性、現像性、解像性、及び、パターン形成性の観点から、73mol%~99mol%であることが好ましい。
また、ポリビニルアルコールは、酸素遮断性、現像性、解像性、及び、パターン形成性の観点から、エチレンをモノマーユニットとして含むことが好ましい。
【0332】
水溶性樹脂層は、酸素遮断性、並びに、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制する観点から、ポリビニルアルコールを含むことが好ましく、ポリビニルアルコール、及びポリビニルピロリドンを含むことがより好ましい。
【0333】
水溶性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の樹脂を含んでもよい。
【0334】
水溶性樹脂層における水溶性化合物の含有割合は、酸素遮断性、並びに、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制する観点から、水溶性樹脂層の全質量に対して、50質量%~100質量%であることが好ましく、70質量%~100質量%であることがより好ましく、80質量%~100質量%であることが更に好ましく、90質量%~100質量%であることが特に好ましい。
【0335】
また、水溶性樹脂層は、必要に応じて添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、界面活性剤が挙げられる。
【0336】
水溶性樹脂層の厚さは、制限されない。水溶性樹脂層の平均厚さは、0.1μm~5μmであることが好ましく、0.5μm~3μmであることがより好ましい。水溶性樹脂層の厚さが上記範囲であることで、酸素遮断性を低下させることがなく、複数の層を形成する際、及び保存の際における成分の混合を抑制でき、また、現像時の水溶性樹脂層の除去時間の増大を抑制できる。
【0337】
水溶性樹脂層の形成方法は、上記の成分を含む層を形成可能な方法であれば制限されない。水溶性樹脂層の形成方法としては、例えば、熱可塑性樹脂層、又は感光性樹脂層の表面に、水溶性樹脂層組成物を塗布した後、水溶性樹脂層組成物の塗膜を乾燥する方法が挙げられる。
【0338】
水溶性樹脂層組成物としては、例えば、樹脂、及び任意の添加剤を含む組成物が挙げられる。水溶性樹脂層組成物は、水溶性樹脂層組成物の粘度を調節し、水溶性樹脂層の形成を容易にするため、溶剤を含むことが好ましい。溶剤としては、樹脂を溶解、又は分散可能な溶剤であれば制限されない。溶剤は、水、及び水混和性の有機溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、水、又は水と水混和性の有機溶剤との混合溶剤であることがより好ましい。
【0339】
水混和性の有機溶剤としては、例えば、炭素数が1~3であるアルコール、アセトン、エチレングリコール、及びグリセリンが挙げられる。水混和性の有機溶剤は、炭素数が1~3であるアルコールであることが好ましく、メタノール、又はエタノールであることがより好ましい。
【0340】
〔熱可塑性樹脂層〕
本開示に用いられる感光性転写材料は、熱可塑性樹脂層を有してもよい。感光性転写材料は、仮支持体と感光性樹脂層との間に熱可塑性樹脂層を有することが好ましい。感光性転写材料が仮支持体と感光性樹脂層との間に熱可塑性樹脂層を有することで、被着物への追従性が向上して、被着物と感光性転写材料との間の気泡の混入が抑制される結果、層間の密着性が向上するためである。
【0341】
熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂として、アルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましい。
【0342】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、及びポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0343】
アルカリ可溶性樹脂は、現像性、及び熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性の観点から、アクリル樹脂であることが好ましい。ここで、「アクリル樹脂」とは、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び(メタ)アクリル酸アミドに由来する構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種を有する樹脂を意味する。
【0344】
アクリル樹脂において、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び(メタ)アクリル酸アミドに由来する構成単位の合計含有量の割合は、アクリル樹脂の全質量に対して、50質量%以上であることが好ましい。アクリル樹脂において、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の合計含有量の割合は、アクリル樹脂の全質量に対して、30質量%~100質量%であることが好ましく、50質量%~100質量%であることがより好ましい。
【0345】
また、アルカリ可溶性樹脂は、酸基を有する重合体であることが好ましい。酸基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、及びホスホン酸基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
【0346】
アルカリ可溶性樹脂は、現像性の観点から、酸価が60mgKOH/g以上であるアルカリ可溶性樹脂であることが好ましく、酸価が60mgKOH/g以上であるカルボキシ基含有アクリル樹脂であることがより好ましい。酸価の上限は、制限されない。アルカリ可溶性樹脂の酸価は、200mgKOH/g以下であることが好ましく、150mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0347】
酸価が60mgKOH/g以上であるカルボキシ基含有アクリル樹脂としては、制限されず、公知の樹脂から適宜選択して用いることができる。酸価が60mgKOH/g以上であるカルボキシ基含有アクリル樹脂としては、例えば、特開2011-95716号公報の段落0025に記載のポリマーのうち酸価が60mgKOH/g以上であるカルボキシ基含有アクリル樹脂、特開2010-237589号公報の段落0033~段落0052に記載のポリマーのうち酸価が60mgKOH/g以上であるカルボキシ基含有アクリル樹脂、及び特開2016-224162号公報の段落0053~段落0068に記載のバインダーポリマーのうち酸価が60mgKOH/g以上であるカルボキシ基含有アクリル樹脂が挙げられる。
【0348】
カルボキシ基含有アクリル樹脂におけるカルボキシ基を有する構成単位の含有割合は、カルボキシ基含有アクリル樹脂の全質量に対して、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることがより好ましく、12質量%~30質量%であることが特に好ましい。
【0349】
アルカリ可溶性樹脂は、現像性、及び熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性の観点から、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有するアクリル樹脂であることが特に好ましい。
【0350】
アルカリ可溶性樹脂は、反応性基を有してもよい。反応性基は、例えば、付加重合可能な基であればよい。反応性基としては、例えば、エチレン性不飽和基、重縮合性基(例えば、ヒドロキシ基、及びカルボキシ基)、及び重付加反応性基(例えば、エポキシ基、及び(ブロック)イソシアネート基)が挙げられる。
【0351】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上であることが好ましく、1万~10万であることがより好ましく、2万~5万であることが特に好ましい。
【0352】
熱可塑性樹脂層は、1種単独、又は2種以上のアルカリ可溶性樹脂を含んでもよい。
【0353】
アルカリ可溶性樹脂の含有割合は、現像性、及び熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、10質量%~99質量%であることが好ましく、20質量%~90質量%であることがより好ましく、40質量%~80質量%であることが更に好ましく、50質量%~70質量%であることが特に好ましい。
【0354】
熱可塑性樹脂層は、発色時の波長範囲である400nm~780nmにおける最大吸収波長が450nm以上であり、かつ、酸、塩基、又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素(以下、「色素B」という場合がある。)を含むことが好ましい。色素Bの好ましい態様は、後述する点以外は、上記した色素Nの好ましい態様と同様である。
【0355】
色素Bは、露光部の視認性、非露光部の視認性、及び解像性の観点から、酸、又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素であることが好ましく、酸により最大吸収波長が変化する色素であることがより好ましい。
【0356】
熱可塑性樹脂層は、露光部の視認性、非露光部の視認性、及び解像性の観点から、色素Bとして酸により最大吸収波長が変化する色素と、後述する化合物Cと、を含むことが好ましい。
【0357】
熱可塑性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の色素Bを含んでもよい。
【0358】
色素Bの含有割合は、露光部の視認性、非露光部の視認性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.2質量%以上であることが好ましく、0.2質量%~6質量%であることがより好ましく、0.2質量%~5質量%であることが更に好ましく、0.25質量%~3.0質量%であることが特に好ましい。
【0359】
ここで、色素Bの含有割合は、熱可塑性樹脂層に含まれる色素Bの全てを発色状態にした場合の色素の含有割合を意味する。以下、ラジカルにより発色する色素を例として、色素Bの含有割合の定量方法を説明する。メチルエチルケトン(100mL)に、色素(0.001g)、及び色素(0.01g)をそれぞれ溶かした2つの溶液を調製する。得られた各溶液に、光ラジカル重合開始剤としてIRGACURE OXE01(BASF社製)を加えた後、365nmの光を照射することによりラジカルを発生させ、全ての色素を発色状態にする。次に、大気雰囲気下で、分光光度計(UV3100、(株)島津製作所製)を用いて、液温が25℃である各溶液の吸光度を測定し、検量線を作成する。次に、色素に代えて熱可塑性樹脂層(0.1g)をメチルエチルケトンに溶かすこと以外は上記と同様の方法で、色素を全て発色させた溶液の吸光度を測定する。得られた熱可塑性樹脂層を含有する溶液の吸光度から、検量線に基づいて熱可塑性樹脂層に含まれる色素の量を算出する。
【0360】
熱可塑性樹脂層は、光により酸、塩基、又はラジカルを発生する化合物(以下、「化合物C」という場合がある。)を含んでもよい。化合物Cは、活性光線(例えば、紫外線、及び可視光線)を受けて、酸、塩基、又はラジカルを発生する化合物であることが好ましい。化合物Cとしては、公知の、光酸発生剤、光塩基発生剤、及び光ラジカル重合開始剤(光ラジカル発生剤)が挙げられる。化合物Cは、光酸発生剤であることが好ましい。
【0361】
熱可塑性樹脂層は、解像性の観点から、光酸発生剤を含むことが好ましい。光酸発生剤としては、上述した感光性樹脂層に含まれてもよい光カチオン重合開始剤が挙げられ、後述する点以外は好ましい態様も同じである。
【0362】
光酸発生剤は、感度、及び解像性の観点から、オニウム塩化合物、及びオキシムスルホネート化合物よりなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましく、感度、解像性、及び密着性の観点から、オキシムスルホネート化合物を含むことがより好ましい。
【0363】
また、光酸発生剤は、以下の構造を有する光酸発生剤であることも好ましい。
【0364】
【化18】
【0365】
熱可塑性樹脂層は、光塩基発生剤を含んでもよい。光塩基発生剤としては、例えば、2-ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、O-カルバモイルヒドロキシルアミド、O-カルバモイルオキシム、[[(2,6-ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2-ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン-1,6-ジアミン、4-(メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノエタン、(4-モルホリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン、及び2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2,4-ジニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジンが挙げられる。
【0366】
熱可塑性樹脂層は、光ラジカル重合開始剤を含んでもよい。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、上述した感光性樹脂層に含まれてもよい光ラジカル重合開始剤が挙げられ、好ましい態様も同じである。
【0367】
熱可塑性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の化合物Cを含んでもよい。
【0368】
化合物Cの含有割合は、露光部の視認性、非露光部の視認性、及び解像性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0369】
熱可塑性樹脂層は、解像性、熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性、及び現像性の観点から、可塑剤を含むことが好ましい。
【0370】
可塑剤の分子量(オリゴマー又はポリマーの分子量については重量平均分子量(Mw)をいう。以下、本段落において同じ。)は、アルカリ可溶性樹脂の分子量よりも小さいことが好ましい。可塑剤の分子量は、200~2,000であることが好ましい。
【0371】
可塑剤は、アルカリ可溶性樹脂と相溶して可塑性を発現する化合物であれば制限されない。可塑剤は、可塑性付与の観点から、分子中にアルキレンオキシ基を有する化合物であることが好ましく、ポリアルキレングリコール化合物であることがより好ましい。可塑剤に含まれるアルキレンオキシ基は、ポリエチレンオキシ構造、又はポリプロピレンオキシ構造を有することが好ましい。
【0372】
可塑剤は、解像性、及び保存安定性の観点から、(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。相溶性、解像性、及び熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂がアクリル樹脂であり、かつ、可塑剤が(メタ)アクリレート化合物を含むことがより好ましい。
【0373】
可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、上記エチレン性不飽和化合物において記載した(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。感光性転写材料において、熱可塑性樹脂層と感光性樹脂層とが直接接触して配置される場合、熱可塑性樹脂層、及び感光性樹脂層は、それぞれ、同じ(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂層、及び感光性樹脂層が、それぞれ、同じ(メタ)アクリレート化合物を含むことで、層間の成分拡散が抑制され、保存安定性が向上するためである。
【0374】
熱可塑性樹脂層が可塑剤として(メタ)アクリレート化合物を含む場合、熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性の観点から、露光後の露光部においても(メタ)アクリレート化合物は重合しないことが好ましい。
【0375】
ある実施形態において、可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物は、解像性、熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性、及び現像性の観点から、一分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
【0376】
ある実施形態において、可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物は、酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、又はウレタン(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
【0377】
熱可塑性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の可塑剤を含んでもよい。
【0378】
可塑剤の含有割合は、解像性、熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性、及び現像性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、1質量%~70質量%であることが好ましく、10質量%~60質量%であることがより好ましく、20質量%~50質量%であることが特に好ましい。
【0379】
熱可塑性樹脂層は、厚さの均一性の観点から、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤としては、例えば、上述した感光性樹脂層に含まれてもよい界面活性剤が挙げられ、好ましい態様も同じである。
【0380】
熱可塑性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の界面活性剤を含んでもよい。
【0381】
界面活性剤の含有割合は、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.001質量%~10質量%であることが好ましく、0.01質量%~3質量%であることがより好ましい。
【0382】
熱可塑性樹脂層は、増感剤を含んでもよい。増感剤としては、例えば、上述したネガ型感光性樹脂層に含まれてもよい増感剤が挙げられる。
【0383】
熱可塑性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の増感剤を含んでもよい。
【0384】
増感剤の含有割合は、光源に対する感度の向上、露光部の視認性、及び非露光部の視認性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.05質量%~1質量%であることがより好ましい。
【0385】
熱可塑性樹脂層は、上記成分以外に、必要に応じて公知の添加剤を含んでもよい。
【0386】
また、熱可塑性樹脂層については、特開2014-85643号公報の段落0189~段落0193に記載されている。上記公報の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0387】
熱可塑性樹脂層の厚さは、制限されない。熱可塑性樹脂層の平均厚さは、熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性の観点から、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。熱可塑性樹脂層の平均厚さの上限は、制限されない。熱可塑性樹脂層の平均厚さは、現像性、及び解像性の観点から、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。
【0388】
熱可塑性樹脂層の形成方法は、上記の成分を含む層を形成可能な方法であれば制限されない。熱可塑性樹脂層の形成方法としては、例えば、仮支持体の表面に、熱可塑性樹脂組成物を塗布し、熱可塑性樹脂組成物の塗膜を乾燥する方法が挙げられる。
【0389】
熱可塑性樹脂組成物としては、例えば、上記の成分を含む組成物が挙げられる。熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物の粘度を調節し、熱可塑性樹脂層の形成を容易にするため、溶剤を含むことが好ましい。
【0390】
熱可塑性樹脂組成物に含まれる溶剤としては、熱可塑性樹脂層に含まれる成分を溶解、又は分散可能な溶剤であれば制限されない。溶剤としては、上述した感光性樹脂組成物が含んでもよい溶剤が挙げられ、好ましい態様も同じである。
【0391】
熱可塑性樹脂組成物は、1種単独、又は2種以上の溶剤を含んでもよい。
【0392】
熱可塑性樹脂組成物における溶剤の含有割合は、熱可塑性樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、50質量部~1,900質量部であることが好ましく、100質量部~900質量部であることがより好ましい。
【0393】
熱可塑性樹脂組成物の調製、及び熱可塑性樹脂層の形成は、上述した感光性樹脂組成物の調製方法、及びネガ型感光性樹脂層の形成方法に準じて行えばよい。例えば、熱可塑性樹脂層に含まれる各成分を溶剤に溶解した溶液を予め調製し、得られた各溶液を所定の割合で混合することにより、熱可塑性樹脂組成物を調製した後、得られた熱可塑性樹脂組成物を仮支持体の表面に塗布し、熱可塑性樹脂組成物の塗膜を乾燥させることにより、熱可塑性樹脂層を形成することができる。また、保護フィルム上に、感光性樹脂層を形成した後、感光性樹脂層の表面に熱可塑性樹脂層を形成してもよい。
【0394】
〔保護フィルム〕
感光性転写材料は、保護フィルムを有することが好ましい。
なお、保護フィルムは、上記転写層には含まれない。
感光性樹脂層と保護フィルムとは、直接接していることが好ましい。
【0395】
保護フィルムを構成する材料としては、樹脂フィルム及び紙が挙げられ、強度及び可撓性の観点から、樹脂フィルムが好ましい。
樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、及び、ポリカーボネートフィルムが挙げられる。中でも、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、又は、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0396】
保護フィルムの厚さ(層厚)は、特に制限されないが、5μm~100μmが好ましく、10μm~50μmがより好ましい。
保護フィルムにおける上記感光性樹脂層側とは反対側の面の算術平均粗さRaは、搬送性、樹脂パターンの欠陥抑制性、及び、解像性の観点から、保護フィルムにおける上記感光性樹脂層側の面の算術平均粗さRa以下であることが好ましく、保護フィルムにおける上記感光性樹脂層側の面の算術平均粗さRaより小さいことがより好ましい。
保護フィルムにおける上記感光性樹脂層側とは反対側の面の算術平均粗さRaは、搬送性及び巻き取り性の観点から、300nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、70nm以下が更に好ましく、50nm以下であることが特に好ましい。
また、保護フィルムにおける上記感光性樹脂層側の面の算術平均粗さRaは、解像性により優れる点から、300nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、70nm以下が更に好ましく、50nm以下であることが特に好ましい。保護フィルムの表面のRa値が上記範囲であることにより、感光性樹脂層及び形成される樹脂パターンの層厚の均一性が向上するためと考えられる。
保護フィルムの表面のRa値の下限は、特に制限されないが、両面ともそれぞれ、1nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、20nm以上が特に好ましい。
また、保護フィルムの剥離力は、仮支持体の剥離力よりも小さいことが好ましい。
【0397】
感光性転写材料は、上述した層以外の層(以下「その他の層」ともいう。)を備えてもよい。その他の層としては、例えば、コントラストエンハンスメント層が挙げられる。
コントラストエンハンスメント層については、国際公開第2018/179640号の段落0134に記載されている。また、その他の層については特開2014-85643号公報の段落0194~0196に記載されている。これらの公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0398】
感光性転写材料の総厚みは、5μm~55μmであることが好ましく、10μm~50μmであることがより好ましく、20μm~40μmであることが特に好ましい。感光性転写材料の総厚みは、上記各層の厚みの測定方法に準ずる方法によって測定する。
感光性転写材料における仮支持体及び保護フィルムを除く各層の総厚みは、本開示における効果をより発揮する観点から、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、8μm以下であることが更に好ましく、2μm以上8μm以下であることが特に好ましい。
また、感光性転写材料における感光性樹脂層、水溶性樹脂層及び熱可塑性樹脂層の総厚みは、本開示における効果をより発揮する観点から、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、8μm以下であることが更に好ましく、2μm以上8μm以下であることが特に好ましい。
【0399】
〔感光性転写材料の製造方法〕
本開示に用いられる感光性転写材料の製造方法は、特に制限されず、公知の製造方法、例えば、公知の各層の形成方法を用いることができる。
以下、図1を参照しながら、本開示に用いられる感光性転写材料の製造方法について説明する。但し、本開示に用いられる感光性転写材料は、図1に示す構成を有するものに制限されない。
図1は、本開示に用いられる感光性転写材料の一実施態様における層構成の一例を示す概略断面図である。図1に示す感光性転写材料20は、仮支持体11と、熱可塑性樹脂層13と、水溶性樹脂層15と、感光性樹脂層17と、保護フィルム19とがこの順に積層された構成を有する。また、図1における転写層12は、熱可塑性樹脂層13、水溶性樹脂層15、及び、感光性樹脂層17である。
【0400】
上記の感光性転写材料20の製造方法としては、例えば、仮支持体11の表面に熱可塑性樹脂組成物を塗布した後、熱可塑性樹脂組成物の塗膜を乾燥させることにより、熱可塑性樹脂層12を形成する工程と、熱可塑性樹脂層13の表面に水溶性樹脂層組成物を塗布した後、水溶性樹脂層組成物の塗膜を乾燥させて水溶性樹脂層15を形成する工程と、水溶性樹脂層15の表面にエチレン性不飽和化合物を含有する感光性樹脂組成物を塗布した後、感光性樹脂組成物の塗膜を乾燥させて感光性樹脂層16を形成する工程とを含む方法が挙げられる。
上記の製造方法において、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する熱可塑性樹脂組成物と、水及び水混和性の有機溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する水溶性樹脂層組成物と、バインダーポリマー、エチレン性不飽和化合物、並びに、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する感光性樹脂組成物とを使用することが好ましい。これにより、熱可塑性樹脂層13の表面への水溶性樹脂層組成物の塗布、及び/又は、水溶性樹脂層組成物の塗膜を有する積層体の保存期間における、熱可塑性樹脂層13に含有される成分と水溶性樹脂層15に含有される成分との混合を抑制でき、なお且つ、水溶性樹脂層15の表面への感光性樹脂組成物の塗布、及び/又は、感光性樹脂組成物の塗膜を有する積層体の保存期間における、水溶性樹脂層15に含有される成分と感光性樹脂層16に含有される成分との混合を抑制できる。
【0401】
上記の製造方法により製造された積層体の感光性樹脂層17に、保護フィルム19を圧着させることにより、感光性転写材料20が製造される。
本開示に用いられる感光性転写材料の製造方法としては、感光性樹脂層17の第2面に接するように保護フィルム19を設ける工程を含むことにより、仮支持体11、熱可塑性樹脂層13、水溶性樹脂層15、感光性樹脂層17及び保護フィルム19を備える感光性転写材料20を製造することが好ましい。
上記の製造方法により感光性転写材料20を製造した後、感光性転写材料20を巻き取ることにより、ロール形態の感光性転写材料を作製及び保管してもよい。ロール形態の感光性転写材料は、後述するロールツーロール方式での基板との貼り合わせ工程にそのままの形態で提供できる。
【0402】
<顔料>
感光性樹脂層は、顔料を含む着色樹脂層となっていてもよい。
近年の電子機器が有する液晶表示窓には、液晶表示窓を保護するために、透明なガラス基板等の裏面周縁部に黒色の枠状遮光層が形成されたカバーガラスが取り付けられている場合がある。このような遮光層を形成するために着色樹脂層が使用し得る。
顔料としては、所望とする色相に合わせて適宜選択すればよく、黒色顔料、白色顔料、黒色及び白色以外の有彩色の顔料の中から選択できる。中でも、黒色系のパターンを形成する場合には、顔料として黒色顔料が好適に選択される。
【0403】
黒色顔料としては、本開示における効果を損なわない範囲であれば、公知の黒色顔料(有機顔料又は無機顔料等)を適宜選択することができる。中でも、光学濃度の観点から、黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、チタンカーバイド、酸化鉄、酸化チタン及び黒鉛等が好適に挙げられ、カーボンブラックが特に好ましい。カーボンブラックとしては、表面抵抗の観点から、表面の少なくとも一部が樹脂で被覆されたカーボンブラックが好ましい。
【0404】
黒色顔料の粒径は、分散安定性の観点から、数平均粒径で0.001μm~0.1μmが好ましく、0.01μm~0.08μmがより好ましい。
ここで、粒径とは、電子顕微鏡で撮影した顔料粒子の写真像から顔料粒子の面積を求め、顔料粒子の面積と同面積の円を考えた場合の円の直径を指し、数平均粒径は、任意の100個の粒子について上記の粒径を求め、求められた100個の粒径を平均して得られる平均値である。
【0405】
黒色顔料以外の顔料として、白色顔料については、特開2005-007765号公報の段落0015及び0114に記載の白色顔料を使用できる。具体的には、白色顔料のうち、無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、リトポン、軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、又は硫酸バリウムが好ましく、酸化チタン又は酸化亜鉛がより好ましく、酸化チタンが更に好ましい。無機顔料としては、ルチル型又はアナターゼ型の酸化チタンが更に好ましく、ルチル型の酸化チタンが特に好ましい。
また、酸化チタンの表面は、シリカ処理、アルミナ処理、チタニア処理、ジルコニア処理、又は有機物処理が施されていてもよく、二つ以上の処理が施されてもよい。これにより、酸化チタンの触媒活性が抑制され、耐熱性及び褪光性等が改善される。
加熱後の感光性樹脂層の厚みを薄くする観点から、酸化チタンの表面への表面処理としては、アルミナ処理及びジルコニア処理の少なくとも一方が好ましく、アルミナ処理及びジルコニア処理の両方が特に好ましい。
【0406】
また、感光性樹脂層が着色樹脂層である場合、転写性の観点から、感光性樹脂層は、黒色顔料及び白色顔料以外の有彩色の顔料を更に含んでいることも好ましい。有彩色の顔料を含む場合、有彩色の顔料の粒径としては、分散性がより優れる点で、0.1μm以下が好ましく、0.08μm以下がより好ましい。
有彩色の顔料としては、例えば、ビクトリア・ピュアーブルーBO(Color Index(以下C.I.)42595)、オーラミン(C.I.41000)、ファット・ブラックHB(C.I.26150)、モノライト・エローGT(C.I.ピグメント・エロー12)、パーマネント・エローGR(C.I.ピグメント・エロー17)、パーマネント・エローHR(C.I.ピグメント・エロー83)、パーマネント・カーミンFBB(C.I.ピグメント・レッド146)、ホスターバームレッドESB(C.I.ピグメント・バイオレット19)、パーマネント・ルビーFBH(C.I.ピグメント・レッド11)、ファステル・ピンクBスプラ(C.I.ピグメント・レッド81)、モナストラル・ファースト・ブルー(C.I.ピグメント・ブルー15)、モノライト・ファースト・ブラックB(C.I.ピグメント・ブラック1)及びカーボン、C.I.ピグメント・レッド97、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド149、C.I.ピグメント・レッド168、C.I.ピグメント・レッド177、C.I.ピグメント・レッド180、C.I.ピグメント・レッド192、C.I.ピグメント・レッド215、C.I.ピグメント・グリーン7、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:4、C.I.ピグメント・ブルー22、C.I.ピグメント・ブルー60、C.I.ピグメント・ブルー64、及びC.I.ピグメント・バイオレット23等が挙げられる。中でも、C.I.ピグメント・レッド177が好ましい。
【0407】
感光性樹脂層が顔料を含む場合、顔料の含有量としては、感光性樹脂層の全質量に対して、3質量%超40質量%以下が好ましく、3質量%超35質量%以下がより好ましく、5質量%超35質量%以下が更に好ましく、10質量%以上35質量%以下が特に好ましい。
【0408】
感光性樹脂層が黒色顔料以外の顔料(白色顔料及び有彩色の顔料)を含む場合、黒色顔料以外の顔料の含有量は、黒色顔料に対して、30質量%以下が好ましく、1質量%~20質量%がより好ましく、3質量%~15質量%が更に好ましい。
【0409】
なお、感光性樹脂層が黒色顔料を含み、且つ、感光性樹脂層が感光性樹脂組成物で形成される場合、黒色顔料(好ましくはカーボンブラック)は、顔料分散液の形態で感光性樹脂組成物に導入されることが好ましい。
分散液は、黒色顔料と顔料分散剤とをあらかじめ混合して得られる混合物を、有機溶剤(又はビヒクル)に加えて分散機で分散させることによって調製されるものでもよい。顔料分散剤は、顔料及び溶剤に応じて選択すればよく、例えば市販の分散剤を使用することができる。なお、ビヒクルとは、顔料分散液とした場合に顔料を分散させている媒質の部分を指し、液状であり、黒色顔料を分散状態で保持するバインダー成分と、バインダー成分を溶解及び希釈する溶剤成分(有機溶剤)と、を含む。
【0410】
分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、ロールミル、アトライター、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、及びサンドミル等の公知の分散機が挙げられる。更に、機械的摩砕により摩擦力を利用して微粉砕してもよい。分散機及び微粉砕については、「顔料の事典」(朝倉邦造著、第一版、朝倉書店、2000年、438頁、310頁)の記載を参照することができる。
【0411】
(電子デバイスの製造方法)
本開示に係る電子デバイスの製造方法は、本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法により得られた導電パターンを有する基板を備える電子デバイスの製造方法であれば、特に制限されない。
【0412】
電子デバイスの製造方法における、各工程の具体的な態様、及び、各工程を行う順序等の実施態様については、上述の「導電パターンの製造方法」の項において説明した通りであり、好ましい態様も同様である。
電子デバイスの製造方法は、上記の方法により電子デバイス用配線を形成すること以外は、公知の電子デバイスの製造方法を参照すればよい。
また、電子デバイスの製造方法は、上述した以外の任意の工程(その他の工程)を含んでもよい。
【0413】
電子デバイスとしては、特に制限はないが、半導体パッケージ、プリント基板、センサー基板の各種配線形成用途、タッチパネル、電磁波シールド材、フィルムヒーターのような導電性フィルム、液晶シール材、マイクロマシン又はマイクロエレクトロニクス分野における構造物が好適に挙げられる。
上記樹脂パターンは、上記電子デバイスにおいて、永久膜である、例えば、層間絶縁膜、配線保護膜、インデックスマッチング層を有する配線保護膜などとして用いることが好ましい。
中でも、電子デバイスとしては、タッチパネルが特に好適に挙げられる。
また、電子デバイスとしては、フレキシブル表示装置、特にフレキシブルタッチパネルが好適に挙げられる。
【0414】
タッチパネルの製造に用いられるマスクのパターンの一例を、図2及び図3に示す。
図2に示されるパターンA、及び、図3に示されるパターンBにおいて、GRは非画像部(遮光部)であり、EXは画像部(露光部)であり、DLはアライメント合わせの枠を仮想的に示したものである。タッチパネルの製造方法において、例えば、図2に示されるパターンAを有するマスクを介して上記感光性樹脂層を露光することで、EXに対応するパターンAを有する回路配線が形成されたタッチパネルを製造できる。具体的には、国際公開第2016/190405号の図1に記載の方法で作製できる。製造されたタッチパネルの一例においては、露光部EXの中央部(資格が連結したパターン部分)は透明電極(タッチパネル用電極)が形成される部分であり、露光部EXの周縁部(細線部分)は周辺取出し部の配線が形成される部分である。
【0415】
上記電子デバイスの製造方法により、電子デバイス用配線を少なくとも有する電子デバイスが製造され、好ましくは、例えば、タッチパネル用配線を少なくとも有するタッチパネルが製造される。
タッチパネルは、透明基板と、電極と、絶縁層又は保護層とを有することが好ましい。
タッチパネルにおける検出方法としては、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、電磁誘導方式、及び、光学方式等の公知の方式が挙げられる。中でも、静電容量方式が好ましい。
【0416】
タッチパネル型としては、いわゆるインセル型(例えば、特表2012-517051号公報の図5図6図7及び図8に記載のもの)、いわゆるオンセル型(例えば、特開2013-168125号公報の図19に記載のもの、並びに、特開2012-89102号公報の図1及び図5に記載のもの)、OGS(One Glass Solution)型、TOL(Touch-on-Lens)型(例えば、特開2013-54727号公報の図2に記載のもの)、各種アウトセル型(いわゆる、GG、G1・G2、GFF、GF2、GF1及びG1F等)並びにその他の構成(例えば、特開2013-164871号公報の図6に記載のもの)が挙げられる。
タッチパネルとしては、例えば、特開2017-120435号公報の段落0229に記載のものが挙げられる。
【0417】
(導電パターンを有する基板)
本開示に係る導電パターンを有する基板は、基板と、上記基板の少なくとも1方の面に、金属ナノ体及び樹脂1を含む導電パターンdが形成された第1の区画と、上記導電パターンdが形成されていない第2の区画とを有し、上記第2の区画を上記基板の厚さ方向から走査型電子顕微鏡により観察した場合における空隙が観察される面積が、上記第2の区画の全面積に対し、10%以下である。
第2の区画においては、金属ナノ体が、例えばエッチングプロセスによって除去され、金属ナノ体を実質的に含まない状態である。実質的に含まない状態とは、第2の区画内の金属ナノ体が除去されて、上記区画内が絶縁体となっている状態である。第1の区画及び第2の区画が存在することで、金属ナノ体による導電パターン回路を構成することができる。
また、第2の区画においては、金属ナノ体が分散されていた樹脂が除去されずに残った状態であることが好ましい。すなわち、上記第2の区画に、上記樹脂が存在することが好ましい。この場合、エッチングで除去されなかった樹脂の膜が存在し、且つ、導電パターンではない部分が第2の区画である。
なお、第2の区画には、絶縁性を損なわない範囲で樹脂1以外の物質が含まれていてもよい。樹脂1以外の物質としては、他の樹脂、重合性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、重合開始剤、防錆剤などを挙げることができる。
本開示に係る導電パターンを有する基板は、本開示に係る本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法により製造されることが好ましい。
【0418】
基板、金属ナノ体、樹脂1及び導電パターンdとしては、本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法において記載した基板、金属ナノ体、樹脂1及び導電パターンdとそれぞれ同様であり、好ましい態様もそれぞれ同様である。
また、その他についても、本開示に係る導電パターンを有する基板の製造方法において記載した好ましい態様と同様である。
【0419】
本開示に係る導電パターンを有する基板における第1の区画は、基板上に形成された導電パターンdが存在する部分であり、第2の区画は導電パターンdが存在しない部分である。
本開示に係る導電パターンを有する基板は、上記第2の区画を上記基板の厚さ方向から走査型電子顕微鏡により観察した場合における空隙が観察される面積が、上記第2の区画の全面積に対し、10%以下であり、通電後の導電パターンの寸法安定性の観点から、8%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、0%以上3%以下であることが特に好ましい。
【0420】
本開示に係る導電パターンを有する基板は、通電後の導電パターンの寸法安定性の観点から、上記第1の区画の上記基板表面からの層厚さをH1、上記第2の区画の上記基板表面からの層厚さをH2としたときに、0.90≦H1/H2≦1.11を満たすことが好ましく、0.95≦H1/H2≦1.05を満たすことがより好ましい。
また、上記第2の区画に存在する深さ10nm以上の凹部の個数は、通電後の導電パターンの寸法安定性の観点から、10個/100μm以下であることが好ましく、8個/100μm以下であることが好ましく、5個/100μm以下であることが更に好ましく、3個/100μm以下であることが特に好ましい。なお、下限値は、0個/100μmである。
【0421】
(金属ナノ体用保護膜)
本開示に係る金属ナノ体用保護膜は、ガラス転移温度が150℃以下である樹脂を含む樹脂層を有する。
本開示に係る金属ナノ体用保護膜における樹脂層の好ましい態様は、上述した樹脂層bの好ましい態様と同様である。
また、本開示に係る金属ナノ体用保護膜におけるガラス転移温度が150℃以下である樹脂の好ましい態様は、ガラス転移温度以外は、上述した樹脂2の好ましい態様と同様である。
ガラス転移温度が150℃以下である樹脂のガラス転移温度は、通電後の導電パターンの寸法安定性の観点から、30℃~140℃であることが好ましく、40℃~130℃であることがより好ましく、40℃~120℃であることが特に好ましい。
【0422】
本開示に係る金属ナノ体用保護膜における樹脂層の平均厚さは、特に制限されないが、通電後の導電パターンの寸法安定性の観点から、1nm~200nmであることが好ましく、5nm~100nmであることがより好ましく、15nm~50nmであることが特に好ましい。
【0423】
また、本開示に係る金属ナノ体用保護膜は、金属ナノ体を直接接触させて保護する態様だけでなく、金属ナノ体を含む層に接触させて保護する態様も好ましく挙げられる。
【実施例0424】
以下に実施例を挙げて本発明の実施形態を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の実施形態の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の実施形態の範囲は以下に示す具体例に限定されない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0425】
(実施例1~14、及び、比較例1)
<導電性基材の作製>
ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基板上に、金属ナノワイヤが樹脂に分散された導電層(波長380nm~780nmの光に対する透過率:92%)が積層されたフィルム(ClearOhm、Cambrios社製)を用意した。
このフィルム上に、表1に記載の組成からなる保護層形成用組成物を乾燥後膜厚40ナノメートルとなるように塗布した。100℃のオーブンで乾燥させたのち、露光機(M-1S、ミカサ株式会社製)を用いて600mJ/cmの露光量で露光した。更に、140℃のコンベクションオーブンにて30分ポストベークを行って、保護層(樹脂層b)を形成した。
【0426】
なお、実施例10、実施例13、及び、実施例14では、保護層の組成として重合性化合物を含まないため、保護層形成後の露光は行わなかった。
【0427】
【表1】
【0428】
表1に記載の各成分の数値の単位は、質量部である。
また、表1に記載の略号の詳細は、以下の通りである。
A-1:ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=70/30重量%共重合体(分子量30,000、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート30重量%溶液)、ガラス転移温度75℃
A-2:ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/2-ヒドロキシエチルアクリレート=40/30/30重量%共重合体(分子量30,000、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート30重量%溶液)、ガラス転移温度41℃
A-3:エリーテル UE-9990(ポリエステル樹脂、ユニチカ株式会社製)、ガラス転移温度101℃
A-4:エリーテル UE-3690(ポリエステル樹脂、ユニチカ株式会社製)、ガラス転移温度90℃
A-5:エリーテル UE-3980(ポリエステル樹脂、ユニチカ株式会社製)、ガラス転移温度63℃
A-6:ダイヤナール MB-2952(アクリル樹脂、三菱ケミカル株式会社製)、ガラス転移温度85℃
A-7:ダイヤナール BR-113(アクリル樹脂、三菱ケミカル株式会社製)、ガラス転移温度75℃
A-8:エスレック KS-10(ポリビニルアセタール樹脂、積水化学工業株式会社製)、ガラス転移温度105℃
A-9:エスレック BL-10(ポリビニルブチラール樹脂、積水化学工業株式会社製)、ガラス転移温度67℃
A-10:フェノライト WR-104(フェノールノボラック樹脂、DIC株式会社製)、ガラス転移温度79℃
A-11:CAP-504-0.2(セルロースアセテートプロピオネート、巴工業株式会社製)、ガラス転移温度159℃
B-1:ライトアクリレート DPE-6A(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、共栄社化学株式会社製)
C-1:Irgacure OXE02(光重合開始剤、BASFジャパン株式会社製)
D-1:BT-120(1,2,3-ベンゾトリアゾール、城北化学工業株式会社製)
F-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
F-2:メチルエチルケトン
【0429】
<感光性転写材料の作製>
仮支持体(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ:16μm、ヘイズ:0.12%)上に、仮支持体の表面に、スリット状ノズルを用いて塗布幅が1.0m、且つ、乾燥層厚が3.0μmとなるように下記熱可塑性樹脂組成物を塗布した。形成された熱可塑性樹脂組成物の塗膜を80℃で40秒間かけて乾燥し、熱可塑性樹脂層を形成した。
形成された熱可塑性樹脂層の表面に、スリット状ノズルを用いて塗布幅が1.0m、且つ、乾燥後の層厚が1.2μmとなるように下記水溶性樹脂層組成物を塗布した。水溶性樹脂層組成物の塗膜を80℃で40秒間かけて乾燥し、水溶性樹脂層を形成した。
形成された水溶性樹脂層の表面に、スリット状ノズルを用いて塗布幅が1.0m、且つ、乾燥後の層厚が5.0μmとなるように、下記感光性樹脂組成物を塗布し、100℃で2分間乾燥して感光性樹脂層を形成した。感光性樹脂層上に保護フィルム(ポリプロピレンフィルム、厚さ:12μm)を貼り合わせて感光性転写材料を作製した。
【0430】
<熱可塑性樹脂組成物の組成>
・ベンジルメタクリレート、メタクリル酸及びアクリル酸の共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分濃度30.0%、Mw30,000、酸価153mgKOH/g):42.85部
・NKエステルA-DCP(新中村化学工業株式会社製):4.33部
・8UX-015A(大成ファインケミカル株式会社製):2.31部
・アロニックスTO-2349(東亞合成株式会社製):0.77部
・メガファックF-552(DIC株式会社製):0.03部
・メチルエチルケトン(三協化学株式会社製):39.80部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(昭和電工株式会社製):9.51部
・下記に示す構造の化合物(光酸発生剤、特開2013-47765号公報の段落0227に記載の方法に従って合成した化合物。):0.32部
【0431】
【化19】
【0432】
・下記に示す構造の化合物(酸により発色する色素):0.08部
【0433】
【化20】
【0434】
<水溶性樹脂層組成物の組成>
クラレポバールPVA-205(ポリビニルアルコール、株式会社クラレ製):3.22質量部
ポリビニルピロリドンK-30(株式会社日本触媒製):1.49質量部
メガファックF-444(フッ素系界面活性剤、DIC株式会社製):0.0015質量部
イオン交換水:38.12質量部
メタノール(三菱ガス化学株式会社製):57.17質量部
【0435】
<感光性樹脂組成物の組成>
スチレン/メタクリル酸/メタクリル酸メチルの共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分濃度:30.0質量%、各モノマーの比率:52質量%/29質量%/19質量%、Mw:70,000):23.4質量部
BPE-500(エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、新中村化学工業株式会社製):4.1質量部
NKエステルHD-N(1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、新中村化学工業株式会社製):2.2質量部
B-CIM(2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、光重合開始剤、黒金化成株式会社製):0.25質量部
SB-PI 701(4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、増感剤、三洋貿易株式会社より入手):0.04質量部
TDP-G(フェノチアジン、川口化学工業株式会社製):0.0175質量部
1-フェニル-3-ピラゾリドン(富士フイルム和光純薬株式会社製):0.0011質量部
ロイコクリスタルバイオレット(東京化成工業株式会社製):0.051質量部
N-フェニルカルバモイルメチル-N-カルボキシメチルアニリン(富士フイルム和光純薬株式会社製):0.02質量部
1,2,4-トリアゾール(東京化成工業株式会社製):0.75質量部
メガファックF-552(フッ素系界面活性剤、DIC株式会社製):0.05質量部
メチルエチルケトン(三協化学株式会社製):40.4質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(昭和電工株式会社製):26.7質量部
メタノール(三菱ガス化学株式会社製):2質量部
【0436】
<配線パターンの形成>
上記で作製した感光性転写材料から保護フィルムを剥がした後、ロール温度100℃、線圧0.8MPa、線速度3.0m/分のラミネート条件で、上記で作製した導電性基材に対し、保護フィルムを剥がした感光性転写材料を貼り合わせた。
貼り合せた感光性転写材料に対し、仮支持体を剥離せずに、線幅100μmの配線パターンを有するガラスマスクを仮支持体上に密着させ、露光機(M-1S、ミカサ株式会社製)を用いて露光を行った。
露光後1時間放置した後、仮支持体を剥離し、現像液(28℃、1.0%炭酸カリウム水溶液)をシャワーで吹き付けることで未硬化部分を除去し、樹脂パターンを作製した。
得られた樹脂パターンを有する導電性基材に対し、硝酸鉄水溶液(30℃、40.0質量%)をシャワーで吹き付けることで、樹脂パターンが存在しない部分の導電層に含まれる金属ナノワイヤを除去した。更に、40℃の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液(2.38質量%)をシャワーで吹き付けることで残存する樹脂パターンを除去し、導電パターンを作製した。
導電パターンを形成した基材を、赤外線オーブンで140℃30分間加熱処理を行い、導電パターン(配線パターン)を有する基板(配線基板)を作製した。
【0437】
<空隙の検査>
得られた配線パターンのうち、配線パターンが存在しない部分(金属ナノワイヤを除去した部分)について、基板の面方向に垂直な方向(厚み方向)から走査型電子顕微鏡で100μm四方に存在する空隙を観察した。観察した画像の空隙部分を二値化して観察視野に占めるピクセル数の割合を空隙率とした。サンプル上の異なる場所、3か所での観察を行い、平均値をそのサンプルの空隙率とした。
空隙率によって、以下のようにA(良)~D(悪)の評価付けとした。配線基板としては、評価C以上が好ましい。
A:空隙率≦3%
B:3%<空隙率≦5%
C:5%<空隙率≦10%
D:10%<空隙率
【0438】
<通電後パターン異常の検査(通電後の導電パターンの寸法安定性)>
得られた配線パターンの端子部に電極を接続し、85%RH、85℃の恒温槽内に設置して直流(DC)10Vの電圧を600分印加した。印加後、配線パターンを観察し、印加前と比較したパターン幅の変化率を、以下のようにA(良)~D(悪)の評価付けとした。配線基板としては、評価C以上が好ましい。
A:パターン幅変化率<15%
B:15%≦パターン幅変化率<20%
C:20%≦パターン幅変化率<25%
D:25%≦パターン幅変化率
【0439】
<空隙深さの検査>
得られた配線パターンのうち、配線パターンが存在する部分(金属ナノワイヤが除去されていない部分)について、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて基板の面方向に垂直な方向(厚み方向)から100μm区画内の測定を行い、得られた粗さ曲線からRvを求めた。サンプル上の異なる場所、3か所での観察を行い、平均値をそのサンプルのRv1とした。
一方、配線パターンが存在しない部分(金属ナノワイヤが除去された部分)について同様にAFMによる粗さ測定を行い、RvがRv1よりも10nm以上大きい箇所を空隙とみなした。100平方ミクロン区画内での空隙数を数え、サンプル上の異なる場所、3か所での空隙の平均値をそのサンプルの空隙数(個/100μm)とした。
【0440】
(実施例15)
保護層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、導電パターンを有する基板を作製し、評価を行った。
【0441】
(実施例16)
配線パターン形成後に加熱を行わなかった以外は、実施例2と同様にして、導電パターンを有する基板を作製し、評価を行った。
【0442】
(実施例17)
ポリイミドフィルム(株式会社アイ.エス.テイ製TORMED(登録商標) Type S)上に、銀ナノ粒子及び樹脂を含むインク(DNS-0163I、株式会社ダイセル製)をインクジェット法により乾燥膜厚0.05μmとなるよう塗布し、120℃で30分焼成を行い、導電性基板を形成した。
この導電性基板上に実施例1で使用した保護層形成用組成物1を乾燥後膜厚40ナノメートルとなるように塗布した。100℃のオーブンで乾燥させたのち、露光機(M-1S、ミカサ株式会社製)を用いて600mJ/cmの露光量で露光した。更に、140℃のコンベクションオーブンにて30分ポストベークを行って、保護層(樹脂層b)を形成した。
実施例1と同じ感光性転写材料から保護フィルムを剥がした後、ロール温度100℃、線圧0.8MPa、線速度3.0m/分のラミネート条件で、上記で作製した導電性基材に対し、保護フィルムを剥がした感光性転写材料を貼り合わせた。
貼り合せた感光性転写材料に対し、仮支持体を剥離せずに、線幅100μmの配線パターンを有するガラスマスクを仮支持体上に密着させ、露光機(M-1S、ミカサ株式会社製)を用いて露光を行った。
露光後1時間放置した後、仮支持体を剥離し、現像液(28℃、1.0%炭酸カリウム水溶液)をシャワーで吹き付けることで未硬化部分を除去し、樹脂パターンを作製した。
得られた樹脂パターンを有する導電性基材に対し、硝酸鉄水溶液(30℃、40.0質量%)をシャワーで吹き付けることで、樹脂パターンが存在しない部分の導電層に含まれる銀ナノ粒子を除去した。更に、40℃の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液(2.38質量%)をシャワーで吹き付けることで残存する樹脂パターンを除去し、導電パターンを作製した。最後に赤外線オーブンで140℃30分間加熱処理を行い、導電パターン(配線パターン)を有する基板(配線基板)を作製した。
実施例1と同様にして、評価を行った。
【0443】
(実施例18)
シクロオレフィンポリマーフィルム(日本ゼオン株式会社製ZeonorFilm(登録商標) ZB)上に、銅ナノ粒子及び樹脂を含むインク(IJ-02A、石原ケミカル株式会社製)を乾燥膜厚0.05μmとなるよう塗布し、キセノンフラッシュランプを用いて30分間の焼成を行い、導電性基板を形成した。
この導電性基板上に実施例1で使用した保護層形成用組成物1を乾燥後膜厚40ナノメートルとなるように塗布した。100℃のオーブンで乾燥させたのち、露光機(M-1S、ミカサ株式会社製)を用いて600mJ/cmの露光量で露光した。更に、140℃のコンベクションオーブンにて30分ポストベークを行って、保護層(樹脂層b)を形成した。
実施例1と同じ感光性転写材料から保護フィルムを剥がした後、ロール温度100℃、線圧0.8MPa、線速度3.0m/分のラミネート条件で、上記で作製した導電性基材に対し、保護フィルムを剥がした感光性転写材料を貼り合わせた。
貼り合せた感光性転写材料に対し、仮支持体を剥離せずに、線幅100μmの配線パターンを有するガラスマスクを仮支持体上に密着させ、露光機(M-1S、ミカサ株式会社製)を用いて露光を行った。
露光後1時間放置した後、仮支持体を剥離し、現像液(28℃、1.0%炭酸カリウム水溶液)をシャワーで吹き付けることで未硬化部分を除去し、樹脂パターンを作製した。
塩化第二銅・2水和物(5g)、28%のアンモニア水(12g)及び塩化アンモニウム(8g)を水に溶解することによって1Lの銅エッチング液を調製した。該銅エッチング液を、得られた樹脂パターンを有する導電性基材に対しシャワーで吹き付けることで、樹脂パターンが存在しない部分の導電層に含まれる銅ナノ粒子を除去した。更に、40℃の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液(2.38質量%)をシャワーで吹き付けることで残存する樹脂パターンを除去し、導電パターンを作製した。最後に赤外線オーブンで140℃30分間加熱処理を行い、導電パターン(配線パターン)を有する基板(配線基板)を作製した。
実施例1と同様にして、評価を行った。
【0444】
<膜厚の測定>
実施例1~実施例18において、導電パターンの平均膜厚と、金属ナノ体が除去された樹脂部分の平均膜厚とを測定した。いずれの実施例においても、0.90≦導電パターンの平均膜厚/金属ナノ体が除去された樹脂部分の平均膜厚≦1.11の範囲内であった。
【0445】
(比較例2)
<導電性基材の作製>
ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基板上に、金属ナノワイヤが樹脂に分散された導電層が積層されたフィルム(ClearOhm、Cambrios社製)を用意した。
【0446】
<配線パターンの形成>
上述した感光性転写材料から保護フィルムを剥がした後、ロール温度100℃、線圧0.8MPa、線速度3.0m/分のラミネート条件で、上記導電性基材に対し、保護フィルムを剥がした感光性転写材料を貼り合わせた。
貼り合せた感光性転写材料に対し、仮支持体を剥離せずに、線幅100μmの配線パターンを有するガラスマスクを仮支持体上に密着させ、露光機(M-1S、ミカサ株式会社製)を用いて露光を行った。
露光後1時間放置した後、仮支持体を剥離し、現像液(28℃、1.0%炭酸カリウム水溶液)をシャワーで吹き付けることで未硬化部分を除去し、樹脂パターンを作製した。
得られたサンプルに対し、硝酸鉄水溶液(30℃、40.0質量%)をシャワーで吹き付けることで樹脂パターンが存在しない部分の導電層に含まれる金属ナノワイヤを除去した。更に、40℃のTMAH水溶液(2.38質量%)をシャワーで吹き付けることで残存する樹脂パターンを除去し、導電パターンを有する基板を作製した。
実施例1と同様にして、評価を行った。
【0447】
評価結果をまとめて、表2に示す。
【0448】
【表2】
【0449】
表2に示すように、実施例1~14においては、空隙が少なく、通電後のパターン異常がない良好な配線パターンを得ることができた。
実施例15では保護層は設けなかったが、加熱を行わなかった比較例2と対比して空隙がやや少なく、通電後パターン異常が改良した。エッチング後の加熱時に導電層に含まれる樹脂が軟化し、空隙を埋めたものと推定している。
実施例16では、実施例2と比較して空隙は多くなり通電後パターンも若干悪化したが、加熱を行わなくても配線形成材料として使用しうるものであった。この原因は明らかではないが、保護層2に用いた樹脂であるA-2の親水性が高く、ガラス転移温度Tgが低いため、配線形成のエッチング工程及び/又は剥離工程においてA-2が膨潤し、空隙をある程度塞いだためと推定される。すなわち、配線形成のエッチング工程及び/又は剥離工程にて、工程5aが行われたものと推測される。
実施例17及び実施例18では、導電性基板の作製方法を変更し導電パターンを有する基板を作製した。実施例17及び実施例18の導電パターンを有する基板は、実施例1と比較して空隙は多くなり通電後パターンも若干悪化したが、配線形成材料として十分使用しうるものであった。
【符号の説明】
【0450】
11:仮支持体、12:転写層、13:熱可塑性樹脂層、15:水溶性樹脂層、17:感光性樹脂層、19:保護フィルム、20:感光性転写材料、GR:遮光部(非画像部)、EX:露光部(画像部)、DL:アライメント合わせの枠
図1
図2
図3