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特開2022-184741エネルギー管理方法及び情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184741
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】エネルギー管理方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/35 20060101AFI20221206BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20221206BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20221206BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20221206BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221206BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H02J7/35 K
H02J13/00 A
H02J13/00 311T
H02J13/00 301
H02J3/14
H02J7/02 J
H01M10/48 P
H01M10/44 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070365
(22)【出願日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2021091782
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 さよ子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 清雄
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G064AC05
5G064CB21
5G064DA07
5G064DA11
5G066JA01
5G066JB03
5G066KA01
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA10
5G503FA06
5H030AA01
5H030AS08
5H030BB09
5H030FF41
(57)【要約】
【課題】異なる規格の機器を効率的に制御する。
【解決手段】エネルギー管理方法は、第1通信規格に対応する第1充電機器、第2通信規格に対応する第2充電機器、並びに当該第1充電機器及び当該第2充電機器を制御する制御装置、及び当該制御装置と当該第2充電機器との間に接続された変換器とを有する需要家における機器の制御方法であって、制御装置が、第1通信規格で記述された指示であって、第2充電機器において処理のパラメータを変更する処理を実行させる指示を変換器に出力するステップと、変換器が、指示を第1通信規格に従った形式から第2通信規格に従った形式に変換するステップと、第2充電機器が、2通信規格に従った形式に変換された指示に従って処理を実行するステップとを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信規格に対応する第1充電機器、第2通信規格に対応する第2充電機器、並びに当該第1充電機器及び当該第2充電機器を制御する制御装置、及び当該制御装置と当該第2充電機器との間に接続された変換器とを有する需要家における機器の制御方法であって、
前記制御装置が、前記第1通信規格で記述された指示であって、前記第2充電機器において処理のパラメータを変更する処理を実行させる指示を前記変換器に出力するステップと、
前記変換器が、前記指示を前記第1通信規格に従った形式から前記第2通信規格に従った形式に変換するステップと、
前記第2充電機器が、前記第2通信規格に従った形式に変換された指示に従って処理を実行するステップと
を有するエネルギー管理方法。
【請求項2】
前記制御装置が、前記需要家における消費電力量に余裕があるか判断するステップを有し、
前記需要家における消費電力量に余裕があると判断された場合、前記指示が、前記第2通信規格において定められる前記パラメータの値の範囲を超える値に当該パラメータの値を設定する指示であって、前記第1通信規格に従った形式で記述された指示である
請求項1に記載のエネルギー管理方法。
【請求項3】
前記指示が、前記パラメータについて前記第1通信規格において可能な設定値のうち第2通信規格において定められる当該パラメータの範囲を超えかつ最小の設定値を含む
請求項2に記載のエネルギー管理方法。
【請求項4】
前記制御装置が、前記需要家に含まれる機器の状態を示す状態情報を取得するステップを有し、
前記消費電力量に余裕があるか判断するステップにおいて、前記状態情報が用いられる
請求項2又は3に記載のエネルギー管理方法。
【請求項5】
前記第1充電機器及び前記第2充電機器の一方が電気自動車の充電器であり、他方が据置型充電器である
請求項1に記載のエネルギー管理方法。
【請求項6】
前記第1通信規格及び前記第2通信規格の一方がECHONET Lite(登録商標)であり、他方がOCPPである
請求項1に記載のエネルギー管理方法。
【請求項7】
第1充電機器、サーバからの第2通信規格に従った制御計画に応じて、第1通信規格に従って対象機器を制御する制御装置、及び当該サーバと当該制御装置との間に接続された変換器を有する需要家、並びに当該需要家の外部に設けられ、第2通信規格に対応する第2充電機器を有するシステムにおける機器の制御方法であって、
前記サーバが、前記第1充電機器において前記需要家に対応する電動車両に対して行われた充電に係る第1充電情報を取得するステップと、
前記サーバが、前記第2充電機器において前記電動車両に対して行われた充電に係る第2充電情報を取得するステップと、
前記サーバが、前記第1充電情報及び前記第2充電情報を用いて、前記第1充電機器の制御計画であって前記第2通信規格に従って記述された制御計画を生成するステップと、
前記サーバが、前記制御計画を出力するステップと、
前記変換器が、前記制御計画を前記第2通信規格に従った記述から前記第1通信規格に従って記述に翻訳するステップと、
前記変換器が、前記第1通信規格に従って記述された前記制御計画を前記制御装置に出力するステップと
を有するエネルギー管理方法。
【請求項8】
前記第1充電機器が前記第1通信規格に対応していない機器であり、
前記システムが前記第1充電機器における電力使用量を計測する計測器を有し、
前記サーバが、前記計測器において計測された電力使用量から電動車両における電池残量を推定するステップを有し、
前記第1充電情報が、前記推定された電池残量を用いて生成される情報であり、
前記制御計画を生成するステップにおいて、前記第1充電情報として前記推定された電池残量が用いられる
請求項7に記載のエネルギー管理方法。
【請求項9】
前記推定するステップにおいて、前記電動車両における最小可能充電量が推定され、
前記制御計画を生成するステップにおいて、前記第1充電情報として前記最小可能充電量が用いられる
請求項8に記載のエネルギー管理方法。
【請求項10】
前記第1充電機器が前記第1通信規格に対応する機器であり、
前記第1充電情報が、前記電動車両の電池残量であり、
前記対象機器が前記第1充電機器を含む
請求項7に記載のエネルギー管理方法。
【請求項11】
前記制御計画が、前記需要家に対するデマンドレスポンスの要求を含む
請求項7乃至10のいずれか一項に記載のエネルギー管理方法。
【請求項12】
第1通信規格に対応する第1充電機器、第2通信規格に対応する第2充電機器、及び当該第2充電機器との間に接続された変換器を含む需要家におけるエネルギー管理システムを制御するため他の装置と通信する通信手段と、
前記第1通信規格で記述された指示であって、前記第2充電機器において処理のパラメータを変更する処理を実行させる指示を前記変換器に出力する出力手段と
を有する情報処理装置。
【請求項13】
前記需要家における消費電力量に余裕があるか判断する判断手段を有し、
前記需要家における消費電力量に余裕があると判断された場合、前記出力手段は、前記第2通信規格において定められる前記パラメータの値の範囲を超える値に当該パラメータの値を設定する前記指示であって、前記第1通信規格に従った形式で記述された前記指示を出力する
請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
第1充電機器において需要家に対応する電動車両に対して行われた充電に係る第1充電情報を取得する第1取得手段と、
前記需要家の外部に設けられ、第2通信規格に対応する第2充電機器において前記電動車両に対して行われた充電に係る第2充電情報を取得する第2取得手段と、
前記第1充電情報及び前記第2充電情報を用いて、前記第1充電機器の制御計画であって前記第2通信規格に従って記述された制御計画を生成する生成手段と、
前記制御計画を出力する出力手段と
を有する情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー機器を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭用のエネルギーを一元管理する、いわゆるスマートハウスが知られている。スマートハウスは家庭用エネルギー管理システム(Home Energy Management System,HEMS)により電力消費、発電、及び蓄電を管理するものである。スマートハウス向けの標準通信規格として例えばECHONETLite(登録商標)がある。標準通信規格に対応するHEMSコントローラに接続するには、各機器がその標準通信規格に対応する必要があるが、中には未対応の機器もある。例えば特許文献1は、ECHONETLite(登録商標)未対応の機器の状態をHEMSでモニターする技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-175828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は標準通信規格に未対応の機器の状態をモニターするだけであり、その機器を制御することは難しかった。
【0005】
これに対し本発明は、異なる規格の機器を効率的に制御する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、第1通信規格に対応する第1充電機器、第2通信規格に対応する第2充電機器、並びに当該第1充電機器及び当該第2充電機器を制御する制御装置、及び当該制御装置と当該第2充電機器との間に接続された変換器とを有する需要家における機器の制御方法であって、前記制御装置が、前記第1通信規格で記述された指示であって、前記第2充電機器において処理のパラメータを変更する処理を実行させる指示を前記変換器に出力するステップと、前記変換器が、前記指示を前記第1通信規格に従った形式から前記第2通信規格に従った形式に変換するステップと、前記第2充電機器が、前記第2通信規格に従った形式に変換された指示に従って処理を実行するステップとを有するエネルギー管理方法を提供する。
【0007】
本開示の別の一態様は、第1通信規格に対応する第1充電機器、第2通信規格に対応する第2充電機器、及び当該第2充電機器との間に接続された変換器を含むエネルギー管理システムを制御するため他の装置と通信する通信手段と、前記第1通信規格で記述された指示であって、前記第2充電機器において処理のパラメータを変更する処理を実行させる指示を前記変換器に出力する出力手段とを有する情報処理装置を提供する。
【0008】
本開示のさらに別の一態様は、第1充電機器、サーバからの第2通信規格に従った制御計画に応じて、第1通信規格に従って対象機器を制御する制御装置、及び当該サーバと当該制御装置との間に接続された変換器を有する需要家、並びに当該需要家の外部に設けられ、第2通信規格に対応する第2充電機器を有するシステムにおける機器の制御方法であって、前記サーバが、前記第1充電機器において前記需要家に対応する電動車両に対して行われた充電に係る第1充電情報を取得するステップと、前記サーバが、前記第2充電機器において前記電動車両に対して行われた充電に係る第2充電情報を取得するステップと、前記サーバが、前記第1充電情報及び前記第2充電情報を用いて、前記第1充電機器の制御計画であって前記第2通信規格に従って記述された制御計画を生成するステップと、前記サーバが、前記制御計画を出力するステップと、前記変換器が、前記制御計画を前記第2通信規格に従った記述から前記第1通信規格に従って記述に翻訳するステップと、前記変換器が、前記第1通信規格に従って記述された前記制御計画を前記制御装置に出力するステップとを有するエネルギー管理方法を提供する。
【0009】
本開示のさらに別の一態様は、第1充電機器において需要家に対応する電動車両に対して行われた充電に係る第1充電情報を取得する第1取得手段と、前記需要家の外部に設けられ、第2通信規格に対応する第2充電機器において前記電動車両に対して行われた充電に係る第2充電情報を取得する第2取得手段と、前記第1充電情報及び前記第2充電情報を用いて、前記第1充電機器の制御計画であって前記第2通信規格に従って記述された制御計画を生成する生成手段と、前記制御計画を出力する出力手段とを有する情報処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1通信規格に対応する充電機器及び第2通信規格に対応する充電機器が混在するシステムをより効率的に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】需要家における消費電力量を例示する図。
図2】第1実施形態に係るHEMSシステムの構成を示す図。
図3】通信変換器の機能構成を例示する図。
図4】第2実施形態に係るHEMSシステムの動作を示すフローチャート。
図5】機器データベースに記録されるデータを例示する図。
図6】履歴データベースに記録されるデータを例示する図。
図7】制御計画を生成する処理の詳細を示す図。
図8】制御計画の概要を例示する図。
図9】第2実施形態に係るHEMSシステムの構成を示す図。
図10】第2実施形態におけるサーバの機能構成を例示する図。
図11】第2実施形態に係る動作を例示するシーケンスチャート。
図12】車両データベースに記録される情報を例示する図。
図13】第3実施形態に係るHEMSシステムの構成を示す図。
図14】第3実施形態におけるサーバの機能構成を例示する図。
図15】第3実施形態に係るHEMSシステムの動作を例示するシーケンスチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.概要
日本ではスマートハウス向けの通信規格(ここでいう通信規格は、OSI参照モデルでいうところの第5~第7層のプロトコルに相当する。)としてECHONETLite(登録商標)が普及している。一方で欧州ではスマートネットワーク向けの通信規格としてEEBUSが普及している。また、最近は電気自動車の蓄電池をスマートハウスにおけるエネルギー源として組み込む動きもあるところ、EV充電器の通信規格として、欧米ではOCPPが、日本ではECHONETLite(登録商標)が、それぞれ普及している。スマートハウスにおいて多様な機器を管理しようとすると、このような規格の相違が問題となる場合がある。
【0013】
ここで問題点を整理するため、機器を増やしていった仮想的な例における消費電力量及びその制御を考える。
【0014】
図1(A)は、オール電化住宅にエコ型給湯器を導入した例における消費電力量を例示する図である。図の横軸は時間帯を、縦軸は消費電力量を示す。横軸は1時間毎に区切られている。各時間帯において左側のバーがエコ型給湯器導入前の状態を、右側のバーがエコ型給湯器導入後の状態を、それぞれ示す。このエコ型給湯器は、電気料金の安い夜間に湯を沸かして貯めておき、その湯を日中など電気料金の高い時間帯に使用するものである。
【0015】
図1(B)は、図1(A)の例にさらに定置型蓄電池を導入した例における消費電力量を例示する図である。各時間帯には3つのバーが含まれている。左端のバーは、図1(A)で説明したエコ型給湯器導入後の状態(すなわち定置型蓄電池導入前の状態)を示す。真ん中のバーは、定置型蓄電池導入後の状態を示す。一般に電気料金には契約により最大消費電力が決められている。いまここで、契約による最大消費電力が6.0kWである例を考える。図1(B)の例では定置型蓄電池導入により、午前1時~午前2時の時間帯の消費電力量が7kWhとなり契約電力の6.0kWを超えるので、最大消費電力量がより大きいすなわち基本料金がより高い契約に切り替える必要が出てくる。そこで、HEMSコントローラによりデマンド制御を行い、最大消費電力量を6.0kWh未満に抑制した状態を示すのが各時間帯の右端のバーである。この例によれば、最大消費電力が6.0kWの契約のままでエコ型給湯器及び定置型蓄電池を使用することができる。ただし、HEMSコントローラが定置型蓄電池のデマンド制御を行うには、定置型蓄電池及びHEMSコントローラが同じ通信規格に対応している必要がある。
【0016】
図1(C)は、図1(B)の例にさらにEV充電器を導入した例における消費電力量を例示する図である。この例では、EV充電器はHEMSコントローラと同じ通信規格に対応していないので、HEMSコントローラがEV充電器を制御することはできない。EV充電器は、専用のコントローラによりHEMSコントローラとは独立して制御される。EVの充電には10kWhが必要であり、EV充電器がこれを5時間で均等に充電する(すなわち1時間当たり2kWhを消費する)例を考える。EV充電器はHEMSコントローラとは独立して制御されるので、定置型蓄電池及びHEMSコントローラを導入した例にさらに1時間当たり2kWhが加算される(各時間帯の右端のバー)。すると、定置型蓄電池に対してデマンド制御を行ったとしても午前1時~午前2時の消費電力量が6.0kWを超えてしまう。
【0017】
図1(D)は、図1(C)の例において定置型蓄電池及びEV充電器にデマンド制御を行った例を示す図である。定置型蓄電池及びEV充電器の双方に対してデマンド制御を行えば、大消費電力が6.0kWの契約のままでエコ型給湯器、定置型蓄電池、及びEV充電器を使用することができる。ただし、HEMSコントローラがこのデマンド制御を行うには、定置型蓄電池、EV充電器、及びHEMSコントローラが全て同じ通信規格に対応している必要がある。
【0018】
しかし既に説明したように、これら複数の機器が全て同じ通信規格に対応しているとは限らず、一部の機器が他と異なる通信規格のみに対応している場合がある。本開示はこの問題に対処する。特に、電力消費量が大きい機器、より詳細には蓄電池に充電をする機器を使用するシステムにおいて、デマンド制御を行うための技術を提供する。
【0019】
2.第1実施形態
2-1.構成
図2は、第1実施形態に係るHEMSシステム1の構成を示す図である。この例において、HEMSシステム1は、管理サーバ10、スマートメーター20、分電盤30、ゲートウェイ40、HEMSコントローラ50、蓄電池システム60、通信変換器70、EV充電器80、及びEV90を有するエネルギー管理システムの一例である。この図において、実線は電気の流れを、破線は情報の流れをそれぞれ示す。この例において、需要家Hは一般家庭である。
【0020】
系統から供給される電力は、スマートメーター20を介して需要家Hに供給される。スマートメーター20は、需要家Hにおいて使用される電力量を計測し、計測した電力使用量を他の装置、この例においてはHEMSコントローラ50に送信する装置である。分電盤30は、系統から供給される電力を、需要家H内の負荷、この例においては、ゲートウェイ40、HEMSコントローラ50、蓄電池システム60、通信変換器70、及びEV充電器80に分配して供給する。ゲートウェイ40は、需要家H内の通信ネットワークと需要家H外の通信ネットワークとを中継する装置である。需要家H内では通信規格として第1通信規格(例えばECHONET Lite(登録商標))が用いられる。HEMSコントローラ50は、需要家H内の他の負荷を管理及び制御する。蓄電池システム60は、系統から供給される電力を蓄電し、需要家H内の負荷に供給するものであり、定置型蓄電池を含む。蓄電池システム60は、第1通信規格に対応する第1充電機器の一例である。EV充電器80は、EV90を充電する装置である。EV充電器80は、第2通信規格に対応する第2充電機器の一例である。EV充電器80は、第2通信規格(例えばOCPP)に対応しており、第1通信規格には対応していない。EV90は、電気エネルギーで駆動される電動車両である。ここで電動車両とは充電池を有する車両をいい、例えば、四輪車(いわゆる電気自動車)又は二輪車(いわゆる電動バイク)である。
【0021】
管理サーバ10は、需要家Hにおける電力制御を管理するサーバ(又は情報処理装置)であり、第1充電機器及び第2充電機器を制御する制御装置の一例である。管理サーバ10は、HEMSコントローラ50を介してスマートメーター20から電力情報を、電力調整設備、この例においては、蓄電池システム60から充電率情報等を取得し、取得した情報に基づきスマートメーター20を介して他の負荷、この例においては、EV充電器80および蓄電池システム60を制御する。ゲートウェイ40は、管理サーバ10とHEMSコントローラ50を通信接続し、HEMSコントローラ50が取得した電力等の情報を管理サーバ10に送信するとともに、管理サーバ10からの指示又は要求をHEMSコントローラ50に送信する。通信変換器70は、第1通信規格に従ってHEMSコントローラ50から出力される指示、要求、又は情報を、第2通信規格に従う指示、要求、又は情報に変換又は翻訳し、EV充電器80に出力する。
【0022】
図3は、HEMSシステム1の機能構成を例示する図である。HEMSシステム1は、記憶手段11、通信手段12、判断手段13、出力手段14、通信手段71、通信手段72、記憶手段73、及び変換手段74を有する。この例において、記憶手段11、通信手段12、判断手段13、及び出力手段14は管理サーバ10に実装される。通信手段71、通信手段72、記憶手段73、及び変換手段74は通信変換器70に実装される。なお図3においては、管理サーバ10、HEMSコントローラ50、通信変換器70、及びEV充電器80以外の要素は図示を省略している。
【0023】
記憶手段11は、各種のデータ及びプログラムを記憶する。この例において、記憶手段11は、データベース111、データベース112、及びデータベース113を記憶する。データベース111は、各需要家が有する機器に関する情報が記録されたデータベース(機器データベース)である。データベース112は、機器の状態の履歴が記録されたデータベース(履歴データベース)である。データベース113は、複数の需要家の各々について、その需要家における機器の制御計画が記録されたデータベース(制御計画データベース)である。
【0024】
通信手段12は、他の装置と通信する。判断手段13は、需要家Hにおける消費電力量に余裕があるか判断する。出力手段14は、EV充電器80において処理のパラメータを変更する処理を実行させる指示を通信変換器70に出力する。この指示は、第1通信規格で記述される。この例において、出力手段14は、需要家Hにおける消費電力量に余裕があると判断された場合、第2通信規格において定められる前記パラメータの値の範囲を超える値に当該パラメータの値を設定する指示であって、第1通信規格に従った形式で記述された指示を出力する。この指示は、HEMSコントローラ50を介して通信変換器70に送信される。
【0025】
通信変換器70において、通信手段71は、第1通信規格に対応する機器(この例においてはHEMSコントローラ50)と通信する。通信手段72は、第2通信規格に対応する機器(この例においてはEV充電器80)と通信する。記憶手段73は、第1通信規格に準拠した形式の指示を第2通信規格に準拠した形式の指示に変換又は翻訳するための情報、及び第1通信規格に準拠した形式の指示を第2通信規格に準拠した形式の指示に変換又は翻訳するための情報を含む。記憶手段73に記憶される情報は、例えば変換テーブルである。変換手段74は、第1通信規格に準拠した形式の指示及び第2通信規格に準拠した形式の指示を、一方から他方に変換する。
【0026】
詳細な説明は省略するが、管理サーバ10は、プロセッサ、メモリ、ストレージ、及び通信インターフェースを有するコンピュータ装置である。このストレージには、コンピュータ装置を管理サーバ10として機能させるためのプログラムが記憶されている。プロセッサがこのプログラムを実行することにより、コンピュータ装置に管理サーバ10の機能が実装される。同様に、通信変換器70は、プロセッサ、メモリ、及び通信インターフェースを有するコンピュータ装置である。このメモリには、コンピュータ装置を通信変換器70として機能させるためのプログラムが記憶されている。プロセッサがこのプログラムを実行することにより、コンピュータ装置に通信変換器70の機能が実装される。
【0027】
2-2.動作
図4は、一実施形態に係るHEMSシステム1の動作を示すフローチャートである。図4のフローは、所定のイベントをトリガとして開始される。一例において、図4のフリーは、毎日16:00になったというイベントをトリガとして開始される。
【0028】
ステップS1において、管理サーバ10は、需要家Hにおける電力消費に関する情報を収集する。既に説明したように、管理サーバ10において、記憶手段11は、データベース111及びデータベース112を記憶する。
【0029】
図5は、データベース111に記録されるデータを例示する図である。このデータベースは複数のレコードを有する。各レコードは、需要家ID及び1以上の機器情報を含む。需要家IDは、需要家を一意に特定する識別情報である。機器情報は、その需要家に設置されている機器に関する情報である。この例において、機器情報は、第1通信規格に準拠した形式で記述される。第1通信規格において、各機器は、オブジェクトとして定義される。各オブジェクトには、クラスIDが設定される。クラスIDは、クラスグループID、クラスコード、及びインスタンスコードを含み、機器を特定する識別情報である。クラスグループIDは、あらかじめ決められた機器の種類(例えば、住宅・機器関連機器、調理・家事関連機器、空調関連機器等)を示す。クラスコードは、機器の細分類(例えば、住宅・機器関連機器であれば、瞬間湯沸器、蓄電池、電気自動車充放電器等)を示す。インスタンスコードは、同じ機器を区別するための番号である。
【0030】
機器情報は、さらに、その機器が対応している通信規格を示す情報を含む。この情報は、その機器が対応している通信規格の識別情報、すなわちこの例においては第1通信規格及び第2通信規格のいずれを示す。
【0031】
一例において、HEMSコントローラ50は、そのHEMSコントローラ50に接続されている機器の各々の状態を定期的に(例えば30分毎に)取得する。具体的には、HEMSコントローラ50は、自身に接続されている機器が記録されたデータベースを有する。HEMSコントローラ50は、このデータベースに記録されている各機器に対し、定期的にその状態を問い合わせる。機器の状態は第1通信規格においてプロパティとして定義されており、例えば蓄電池システムであれば、プロパティは動作状態(オンかオフか)、充電電流設定値、及び放電電流設定値等を含む。各機器は、HEMSコントローラ50に対し、自身の状態を示す状態情報を返信する。HEMSコントローラ50は、各機器から得られた状態情報を定期的に管理サーバ10に送信する。HEMSコントローラ50が管理サーバ10に状態情報を送信する周期は、HEMSコントローラ50が各機器に状態を問い合わせる周期と同じであってもよいし、この周期よりも長くてもよい。管理サーバ10は、HEMSコントローラ50から受信した状態情報をデータベース112に記録する。こうして、管理サーバ10は、需要家Hにおける各機器の稼働状況に関する情報を取得する。
【0032】
図6は、データベース112に記録されるデータを例示する図である。このデータベースは複数のレコードを有する。各レコードは、機器を特定する識別情報、日時情報、及び状態情報を含む。識別情報は、例えば第1通信規格に従って記述されるクラスIDである。日時情報は、対応する状態情報が取得された日時を示す。状態情報は、その日時における機器の状態を示す。
【0033】
再び図4を参照する。ステップS2において、管理サーバ10は、需要家Hにおける各機器の制御計画を生成する。この制御計画は、蓄電池に関連した機器の充電状態/非充電状態を切り替えるタイミングを含む。蓄電池に関連した機器とは、大型の(すなわち基準より容量の大きい)蓄電池に充電をする機器をいい、例えば、蓄電池システム60及びEV充電器80をいう。管理サーバ10は、各種の情報及びあらかじめ決められたアルゴリズムを用いて制御計画を生成する。この制御計画は、HEMSシステム1に属する複数の需要家Hにおける電力需要を制御することを目的とするものであり、いわゆるデマンドレスポンスの要求(以下「DR要求」という)を含んでもよい。制御計画を生成する際に用いられる情報は、例えば、需要家Hに含まれる各機器の属性情報、需要家HのHEMSコントローラ50から取得した各機器の稼働状況に関する情報、需要家Hに関連するユーザの過去の行動履歴(例えばEV90の使用履歴を含む)、天気予報、及び売電価格の推移の少なくとも1種が含まれる。
【0034】
図7は、制御計画を生成する処理の詳細を示す図である。この例において、機器の制御計画は第1通信規格に従った形式で生成される。第1通信規格と第2通信規格とでは、データ形式だけでなく、指示に用いられるパラメータが異なる。ここでは以下の例を用いる。EV充電器80を充電する際、第1通信規格においては充電電力(又は電流値)が指定されるが、第2通信規格においては充電時の最大電力(又は最大電流値)が指定される。第1通信規格において充電電力は1kW単位で設定されるが、第2通信規格において充電電力は0.1kW単位で設定される。また、EV充電器の最大充電電力は2.5kWである。
【0035】
ステップS201において、管理サーバ10は、計画を生成する対象期間を特定する。対象期間の始期は、あらかじめ決められている。例えばステップS1の処理が毎日16:00に開始され、当日の17:00から翌日の17:00までの24時間が対象期間として特定される。ステップS202において、管理サーバ10は副対象期間を特定する。副対象期間は、対象期間を細分化した期間である。例えば、管理サーバ10は、当日の17:00から翌日の17:00までの24時間を、30分ずつ48個の副対象期間に細分化する。
【0036】
ステップS203において、管理サーバ10は、対象となる機器を特定する。例えば需要家Hに含まれる全ての機器にはあらかじめ決められたルールに従って、又はユーザの指定により優先順位が決められている。管理サーバ10は、この優先順位に従って対象機器を1つずつ特定する。
【0037】
ステップS204において、管理サーバ10は、対象機器の消費電力(例えばEV充電器80の充電に用いられる電力)の、第1通信規格における最大値を求める。例えばEV充電器80の充電時最大電力が第2通信規格において2.5kWであることが示される場合、第1通信規格において可能な設定値のうち第2通信規格における充電時最大電力を超えかつ最小の設定値(すなわち3kW)がいま求めるべき最大値である。
【0038】
ステップS205において、管理サーバ10は、その副対象期間における消費電力量を予測する。この消費電力量の予測値は、この時点での対象機器の消費電力量を除いた消費電力量である。また、この時点で既に制御計画が生成されている機器については、その制御計画に従った消費電力量が計上される。制御計画が生成されていない機器については、管理サーバ10は、例えば、需要家Hに含まれる各機器の属性情報、需要家HのHEMSコントローラ50から取得した各機器の稼働状況に関する情報、需要家Hに関連するユーザの過去の行動履歴(例えばEV90の使用履歴を含む)、天気予報、及び売電価格の推移の少なくとも1種を参照してその消費電力量を予測する。
【0039】
ステップS206において、管理サーバ10は、一の副対象期間について、消費電力量に余裕があるか判断する。より具体的には、管理サーバ10は、対象機器を除いた消費電力量に余裕があるか判断する。ここで、「消費電力量に余裕がある」とは、対象機器を除いた消費電力量の予測値と、対象機器の消費電力の仮設定値から得られる消費電力量との差がしきい値以上であることをいう。対象機器の消費電力の仮設定値の初期値は、第1通信規格における消費電力の最大値(上の例では3kW)である。対象機器の消費電力の仮設定値から得られる消費電力量は、その副対象期間、対象機器の消費電力が仮設定値の状態であると仮定したときの消費電力量をいう。例えば3kWで30分間使用するのであれば対象機器の消費電力量は1.5kWhである。
【0040】
消費電力量に余裕があると判断された場合(ステップS206:YES)、管理サーバ10は、処理をステップS207に移行する。消費電力量に余裕がないと判断された場合(ステップS206:NO)、管理サーバ10は、処理をステップS208に移行する。
【0041】
ステップS207において、管理サーバ10は、対象機器の消費電力を、仮設定値の値で確定する。すなわち、対象機器についての制御計画を確定する。
【0042】
ステップS208において、管理サーバ10は、対象機器の消費電力の仮設定値を1単位減少させる。例えば仮設定値が3kWであった場合、管理サーバ10は、仮設定値を2kWに設定する。仮設定値を更新すると、管理サーバ10は、処理を再びステップS206に移行する。
【0043】
ステップS209において、管理サーバ10は、対象機器の制御計画の生成が完了したか判断する。対象機器には必要な消費電力量(例えば充電量)が設定されている。すなわち管理サーバ10は、ここまでの制御計画で必要な消費電力量が確保されているか判断する。例えば、EV90の充電容量(すなわち電池容量)が10kWhである場合、EV充電器80の消費電力量(すなわち充電済量)が累積で10kWhになれば、対象機器の制御計画の生成が完了したと判断する。EV充電器80の消費電力量(すなわち充電済量)が累積で10kWhに達していなければ、対象機器の制御計画の生成がまだ完了していないと判断する。対象機器の制御計画の生成が完了したと判断された場合(ステップS209:YES)、管理サーバ10は処理をステップS210に移行する。対象機器の制御計画の生成が完了していないと判断された場合(ステップS209:NO)、管理サーバ10は処理をステップS211に移行する。
【0044】
ステップS210において、管理サーバ10は、対象機器について計画生成済のフラグを付与する。
【0045】
ステップS211において、管理サーバ10は、優先順位に従って対象機器を更新する。対象機器を更新すると、管理サーバ10は、処理を再びステップS204に移行する。
【0046】
ステップS212において、管理サーバ10は、副対象期間を次の副対象期間に更新する。副対象期間を更新すると、管理サーバ10は、処理を再びステップS203に移行する。
【0047】
全ての副対象期間及び全ての機器について制御計画が確定されると、管理サーバ10は、制御計画をデータベース113に書き込む(ステップS213)。
【0048】
図8は、制御計画の概要を例示する図である。ここでは説明のため、制御計画をグラフで示す。このグラフの横軸は時間帯を、縦軸は電力量をそれぞれ示す。この制御計画は、将来の所定期間(例えば次の24時間分)の計画を含む。図8の例では、蓄電池システム60及びEV充電器80において充電を行う時間帯が指定される。例えば、この制御計画によれば、EV90は、午前1時から午前2時まで4kWh、午前2時から午前3時まで4kWh、午前3時から午前4時まで2kWhが充電され、それ以外の時間帯では充電されないことが示される。さらに、この制御計画によれば、蓄電池システム60は、午前0時から午前1時まで5kWh、前記1時から午前2時までは1kWhが充電され、それ以外の時間帯では充電されないことが示される。
【0049】
より詳細には、制御計画は、第1通信規格に従った形式で記述される。例えば、制御計画は、その指示を送信する時刻を指定する情報、対象となる機器のクラスID、並びにプロパティの番号(例えば「充電電流設定値」に相当する番号)及びその値(例えば2Aに相当する値)を含む。
【0050】
管理サーバ10がある需要家Hについて1つの制御計画を生成してから次の制御計画を生成するまでの期間は、制御計画における所定期間(上の例では24時間)と同じであってもよいし、その所定期間より短くてもよい。例えば、管理サーバ10は、2時間おきに、その時点から24時間後までの制御計画を生成してもよい。
【0051】
再び図4を参照する。ステップS3において、管理サーバ10は、生成した制御計画をHEMSコントローラ50に送信する。HEMSコントローラ50は、管理サーバ10から受信した制御計画を記憶手段に記憶する。HEMSコントローラ50は、制御計画で指定された時刻になると、対象となる機器に指示を出力又は送信する(ステップS4)。第1通信規格に対応していない機器に関しては、通信変換器70がHEMSコントローラ50から出力される指示を解読し、第2通信規格に準拠した形式に翻訳又は変換して(ステップS5)EV充電器80に出力する。第1通信規格に対応した機器に対しては、HEMSコントローラ50から直接、その機器に指示が出力される。指示を受信した機器は、その指示に従って処理を実行する(すなわち自身の動作状態を変更する)(ステップS6)。例えば、蓄電池システム60は、この指示に従って充電を開始又は終了したり、放電を開始又は終了したりする。
【0052】
この例において、HEMSコントローラ50から出力される指示は、第1通信規格に準拠した形式で記述される。制御の対象となる機器が第1通信規格に対応していれば、直接この指示を受信して解読することができる。図2の例では、スマートメーター20及び蓄電池システム60は、HEMSコントローラ50から出力される指示を解読することができる。
【0053】
この例において、EV充電器80は第1通信規格に対応しておらず、HEMSコントローラ50から出力される指示を直接、解読することができない。本開示においては、通信変換器70がHEMSコントローラ50から出力される指示を解読し、第2通信規格に準拠した形式に翻訳又は変換してEV充電器80に送信する。EV充電器80は、第2通信規格に準拠した形式の指示を解読し、処理を行う。
【0054】
このように本実施形態によれば、第1通信規格に対応する機器及び第2通信機器に対応する機器が混在するシステムにおいても、より効率のよい制御計画を生成することができる。
【0055】
3.第2実施形態
図9は、第2実施形態に係るHEMSシステム2の構成を示す図である。この例において、HEMSシステム2は、管理サーバ10、スマートメーター20、分電盤30、ゲートウェイ40、HEMSコントローラ50、蓄電池システム60、通信変換器75、EV充電器85、EV90、及びEV充電器200を有する。HEMSシステム1と共通する要素については、共通の符号を用いる。このうち需要家Hは、スマートメーター20、分電盤30、ゲートウェイ40、HEMSコントローラ50、蓄電池システム60、通信変換器75、EV充電器85、及びEV90を有する。以下HEMSシステム2と共通する点は説明を省略する。
【0056】
管理サーバ10は、第2通信規格に対応するサーバである。通信変換器75は、管理サーバ10とHEMSコントローラ50との間に設けられる。通信変換器75は、管理サーバ10から第2通信規格に従った形式で出力された指示を、第1通信規格(例えばECHONETLite(登録商標))に従った形式に変換し、HEMSコントローラ50に出力する。HEMSコントローラ50は、蓄電池システム60及びEV充電器85を含む機器を制御する。EV充電器85は、第1通信規格に対応しており、第2通信規格(例えばOCPP)には対応していない
【0057】
EV充電器200は、需要家Hとは独立したいわゆる外部のEV充電器である。EV充電器200は、ショッピングモールの駐車場等、不特定多数のユーザに使用される場所に設置される。EV充電器200は、第2通信規格に対応しており、第1通信規格には対応していない。EV充電器200は、通信変換器を介さずに管理サーバ10から指示を受信する。管理サーバ10は、需要家HのEV充電器85及び外部のEV充電器200を管理することができるので、EV充電器85を単独で制御する例と比較するとより統合的なサービスを提供することができる。
【0058】
図10は、第2実施形態における管理サーバ10の機能構成を例示する図である。第1実施形態における管理サーバ10の機能と比較すると、記憶手段11がデータベース114を記憶する点、並びに取得手段15及び取得手段16を有する点が異なる。なお、生成手段17は、第1実施形態における管理サーバ10も同等の機能を有していたが図3には明示していなかったものである。データベース114は、EV90の属性を記録するデータベース(車両データベース)である。取得手段15(第1取得手段の一例)は、第1充電機器から第1充電情報を取得する。第1充電機器は、需要家H内のEV充電器であり、この例ではEV充電器85である。第1充電情報は、第1充電機器においてその需要家Hに対応する電動車両(この例ではEV90)に対して行われた充電に係る情報であり、例えば、EV90の電池の充電率(いわゆるSoC、State of Charge)を含む。取得手段16(第2取得手段の一例)は、第2充電機器から第2充電情報を取得する。第2充電機器は、需要家H外部のEV充電器であり、この例ではEV充電器200である。第2充電情報は、第2充電機器においてその需要家Hに対応する電動車両(この例ではEV90)に対して行われた充電に係る情報であり、例えば、EV90の電池の充電率を含む。生成手段17は、第1充電情報及び第2充電情報を用いて、需要家Hに対する制御計画を生成する。この制御計画は第2通信規格に従って記述される。またこの制御計画は、第1充電機器の制御計画を含む。
【0059】
図11は、HEMSシステム2の動作を例示するシーケンスチャートである。ステップS201において、EV充電器85は、EV90を充電する。これは、ユーザすなわち需要家Hの住人が、自宅でEV90を充電する状況に相当する。充電が完了すると、EV充電器85は、充電情報を生成する。この充電情報は、例えば、タイムスタンプ、車両ID、充電器ID、及びSoCを含む。タイムスタンプは、充電が完了した時刻を示す。車両IDは、EV90を一意に特定する識別情報である。充電器IDは、充電器200を一意に特定する識別情報である。SoCは、充電完了時におけるEV90の電池の充電率を示す。EV充電器85は、充電情報をHEMSコントローラ50に出力する(ステップS202)。この充電情報は、第1通信規格に従って記述される。EV充電器85から充電情報を受信すると、HEMSコントローラ50は、この充電情報を管理サーバ10に送信する(ステップS203)。
【0060】
通信変換器75は、HEMSコントローラ50から、管理サーバ10宛の充電情報を受信する。通信変換器75は、受信した充電情報を、第1通信規格に従って記述から第2通信規格に従った記述に翻訳する(ステップS204)。通信変換器75は、翻訳された充電情報を管理サーバ10に送信する(ステップS205)。
【0061】
需要家Hから充電情報を受信すると、管理サーバ10は、受信した充電情報(の少なくとも一部)をデータベース114に記録する。
【0062】
ステップS207において、EV充電器200は、EV90を充電する。これは、ユーザが、充電スタンド等の自宅外でEV90を充電する状況に相当する。充電が完了すると、EV充電器200は、充電情報を生成する。この充電情報は、例えば、タイムスタンプ、車両ID、充電器ID、及びSoCを含む。EV充電器200は、充電情報を管理サーバ10に送信する(ステップS208)。この充電情報は、第2通信規格に従って記述される。EV充電器200から充電情報を受信すると、管理サーバ10は、この充電情報をデータベース114に記録する(ステップS209)。
【0063】
図12は、データベース114に記録される情報を例示する図である。データベース114は、複数のレコードを含む。各レコードは、1台の車両に関する情報を含む。具体的には、各レコードは、需要家ID、車両ID、電池容量、及び充電情報を含む。需要家IDは、その車両を使用する(又は所有する)ユーザに対応する需要家を特定する識別情報である。車両IDはその車両の識別情報である。電池容量はその車両が有する充電池の電池容量(満充電時の容量)を示す。充電情報は、EV充電器から取得した充電情報である。
【0064】
この例において、充電情報は、複数のサブレコードを含む。各サブレコードは、1回の充電に対応している。各サブレコードは、タイムスタンプ、充電器ID、及びSoCを含む。これらのサブレコードの一部は、EV充電器85から取得したものであり、別の一部はEV充電器200から取得したものである。
【0065】
なお、図11ではEV充電器85における充電及びEV充電器200における充電をこの順番で説明したが、これはあくまで一例である。ユーザは基本的に自らの意志によりEV90の充電を行うものである。ある期間においてEV充電器200による充電が先に行われEV充電器85による充電が後で行われてもよいし、ある期間においてEV充電器200又はEV充電器85のいずれか一方のみによる充電が行われてもよい。
【0066】
再び図11を参照する。所定の条件が満たされると(例えば毎日、所定の時刻になると)、管理サーバ10は、制御計画を生成する(ステップS210)。制御計画の生成は、例えば、第1実施形態において説明した手法と同じように行われる。このとき管理サーバ10は、データベース114に記録されている、統合された充電情報を参照することができるので、EV90の(より新しい)電池残量に応じた制御計画を生成することができる。この制御計画は、第2通信規格に従って記述される。管理サーバ10は、生成した制御計画を需要家HのHEMSコントローラ50に送信する(ステップS211)。第1実施形態において説明したように、管理サーバ10から送信される制御計画は、DR要求を含んでもよい。
【0067】
例えば、EV90の電池容量が60kWhであり、最新の充電率が80%であることがデータベース114に記録されている場合、このEV90に対しては、少なくとも
60kWh×(1-0.8)=12kWh
の充電が可能であることが分かる。最後の充電後に走行をした場合、EV90の充電率は80%よりさらに低下している可能性があるが、少なくとも12kWhぶんの充電が可能であることが期待される。したがってこの数値を、「最小可能充電量」という。管理サーバ10は、EV90の電池容量及び充電率から最小可能充電量を計算する。ある期間、例えば明日の10時~14時の間に、ある地域において20kWhの電力消費が必要であると判断された場合、管理サーバ10は、このEV90に明日10時から12kWhぶんの充電すなわち電力消費を割り当てる。管理サーバ10は、残りの8kWhについてはこの需要家Hの他の機器又は他の需要家Hの機器に対してDR要求を生成する。
【0068】
需要家Hにおいて、管理サーバ10から送信される制御計画は、ゲートウェイ40(図10では略)から通信変換器75に送信される。通信変換器75は、受信した制御計画を、第2通信規格から第1通信規格に翻訳する(ステップS212)。通信変換器75は、第1通信規格に翻訳された制御計画をHEMSコントローラ50に送信する(ステップS213)。
【0069】
制御計画を受信すると、HEMSコントローラ50は、その制御計画に従って各機器に制御指示を出力する。この制御計画にDR要求が含まれる場合、HEMSコントローラ50は、ユーザに対し、そのDR要求を受諾するかどうか回答の入力を要求する。例えば、HEMSコントローラ50は、表示装置にそのDR要求の内容(例えば、○月○日の○時からEV90の充電を開始し、満充電されるまで充電を継続する)を表示する。ユーザは、このDR要求の受諾の可否をHEMSコントローラ50に対し入力する。HEMSコントローラ50は、ユーザからの入力に応じて、DR要求受諾の可否を示すDR応答を管理サーバ10に送信する(ステップS214)。管理サーバ10は、このDR応答に応じた処理を行う。
【0070】
制御計画にEV充電器85における充電が含まれている場合、又はEV充電器85を制御対象とするDR要求を受諾した場合、HEMSコントローラ50は、制御指示をEV充電器85に出力する(ステップS215)。既に説明したように、この制御指示は、EV90を外部のEV充電器200において充電した際の充電情報(具体的にはSoC)を考慮した指示であるので、外部のEV充電器200における充電情報を考慮しない例と比較してより適切な充電量である可能性が高い。
【0071】
このように、需要家H内のEV充電器85による充電情報と外部のEV充電器200による充電情報とが統合されることにより、HEMSシステム2は、より統合されたサービスをユーザに提供することができる。統合されたサービスとは、例えば、統合された充電情報により示されるEV90の電池残量に応じた、需要家H内の機器の制御である。あるいは、統合されたサービスとは、統合された充電情報により示される充電量に応じた料金の割引である。
【0072】
4.第3実施形態
第2実施形態において、管理サーバ10が、需要家H内のEV充電器及び外部のEV充電器から取得した充電情報を統合してサービスを提供する例を説明した。しかし、実際には、需要家H内のEV充電器が通信機能を有さない(又は第1通信規格及び第2通信規格のいずれにも対応していない)場合がある。本実施形態においては、このような問題に対処する。
【0073】
図13は、第3実施形態に係るHEMSシステム3の構成を示す図である。第2実施形態に係るHEMSシステム2と比較すると、HEMSシステム3はEV充電器85を有しておらず、EV充電器87を有する。EV充電器87は通信機能を有しておらず、HEMSコントローラ50と通信することができない。そこでHEMSシステム3は、EV充電器87における使用電力量を計測器により計測する。HEMSシステム3は、計測された電力量を充電量とみなして処理を行う。例えば、スマートメーター20がEV充電器87における使用電力量を計測する。あるいは、スマートメーター20とは別に、EV充電器87専用の計測器を準備し、これを設置して用いてもよい。
【0074】
図14は、第3実施形態における管理サーバ10の機能構成を例示する図である。第2実施形態における管理サーバ10の機能と比較すると、推定手段18を有する点が異なる。取得手段16は、HEMSコントローラ50から、第1充電機器の電力使用量を取得する。第1充電機器は、需要家H内のEV充電器であり、HEMSコントローラ50と通信しない(又はできない)充電器であり、この例ではEV充電器87である。推定手段18は、取得手段16が取得した情報から、この需要家Hに対応する電動車両における電池残量を推定する。
【0075】
図15は、HEMSシステム3の動作を例示するシーケンスチャートである。まず、EV充電器87が、EV90を充電する。これは、ユーザすなわち需要家Hの住人が、自宅でEV90を充電する状況に相当する。この間、スマートメーター20は、EV充電器87における電力使用量を計測する(ステップS301)。充電が完了すると、スマートメーター20は、電力量情報を生成する。この電力量情報は、例えば、タイムスタンプ、需要家ID、充電器ID、及び電力量を含む。タイムスタンプは、充電が完了したとスマートメーター20が判断した時刻を示す。スマートメーター20は、電力量情報をHEMSコントローラ50に出力する(ステップS302)。この電力量情報は、第1通信規格に従って記述される。スマートメーター20から電力量情報を受信すると、HEMSコントローラ50は、この電力量情報を管理サーバ10に送信する(ステップS303)。
【0076】
通信変換器75は、HEMSコントローラ50から、管理サーバ10宛の電力量情報を受信する。通信変換器75は、受信した電力量情報を、第1通信規格に従って記述から第2通信規格に従った記述に翻訳する(ステップS304)。通信変換器75は、翻訳された電力量情報を管理サーバ10に送信する(ステップS305)。
【0077】
需要家Hから電力量情報を受信すると、管理サーバ10は、受信した電力量情報から、EV90の電池残量を推定する(ステップS306)。具体的には、まず、管理サーバ10は、データベース114から、需要家Hに対応するEV90の最新のSoC及び電池容量を取得する。管理サーバ10は、これらの情報から、EV90のSoCを推定する。例えば、電力量情報が8kWhを示していた場合、
(60kWh×0.8+8kWh)/60kWh=93%
が推定されるSoCである。管理サーバ10は、推定されたSoCを、受信した電力量情報に含まれる需要家IDに対応するレコードに記録する(ステップS307)。
【0078】
ステップS308~S315の処理は、図11のステップS207~S214の処理と同じである。なおこの例ではHEMSコントローラ50がEV充電器87を制御できないので、制御計画により指定された時刻にEV充電器87でEV90を充電するようユーザに注意を促すように、管理サーバ10はHEMSコントローラ50又はユーザが所持する端末に対し指示又は要求を送信する。
【0079】
この例によれば、需要家Hが第1通信規格及び第2通信規格のいずれにも対応していないEV充電器を使用している場合でも、第2実施形態と同様に、外部のEV充電器200による充電情報を用いた、より統合されたサービスをユーザに提供することができる。
【0080】
5.変形例
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下の変形例に記載された事項のうち少なくとも一部が上記の実施形態又は他の変形例と組み合わせて適用されてもよい。
【0081】
HEMSシステム1のハードウェア構成は実施形態において例示したものに限定されない。例えば、実施形態においてはEV充電器80が他の機器とは異なる通信規格に対応する例を説明した。しかし、例えば管理サーバ10が他の機器と異なる通信規格に対応してもよい。すなわち、管理サーバ10が第2通信規格に、HEMSコントローラ50、蓄電池システム60、及びEV充電器80が第1通信規格に対応してもよい。この場合、管理サーバ10とHEMSコントローラ50との間に通信変換器70が設けられる。通信変換器70は、管理サーバ10から第2通信規格に従った形式で出力された指示を、第1通信規格に従った形式に変換し、HEMSコントローラ50に出力する。この場合において、HEMSシステム1は、さらに、第2通信規格に対応する外部のEV充電器(図示略)と連携してもよい。管理サーバ10は、通信変換器を介さずに外部のEV充電器に指示を出力する。この例によれば、需要家HのEV充電器80と外部のEV充電器とを管理することができるので、管理サーバ10は統合的なサービスを提供することができる。これは第2実施形態及び第3実施形態で具体的に説明したとおりである。
【0082】
第1充電機器及び第2充電機器はそれぞれ実施形態において例示したものに限定されない。容量が基準より大きい蓄電池を充電するための機器であれば、第1充電機器及び第2充電機器はどのような機器であってもよい。また、第1通信規格及び第2通信規格はそれぞれ実施形態において例示したものに限定されない。それぞれ具体的にはどのような規格であってもよい。
【0083】
なお本発明に係るエネルギー管理システムはHEMSに限定されず、いわゆるBEMS(Building Energy Management System)、FEMS(Factory Energy Management System)、又はCEMS(Community Energy Management System)であってもよい。
【0084】
機能要素とハードウェアとの対応関係は実施形態において例示したものに限定されない。例えば、実施形態において管理サーバ10に実装されるものとして説明した機能の少なくとも一部がHEMSコントローラ50に実装されてもよい。管理サーバ10は物理サーバであってもよいし、仮想サーバ(いわゆるクラウドを含む)であってもよい。
【0085】
管理サーバ10及びHEMSコントローラ50等においてプロセッサが実行するプログラムは、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)等の記録媒体に記録されて提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介したダウンロードにより提供されてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1…HEMSシステム、10…管理サーバ、11…記憶手段、111…データベース、112…データベース、113…データベース、12…通信手段、13…判断手段、14…出力手段、20…スマートメーター、30…分電盤、40…ゲートウェイ、50… HEMSコントローラ、60…蓄電池システム、70…通信変換器、71…通信手段、72…通信手段、73…記憶手段、74…変換手段、80…EV充電器、90…EV
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15