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特開2022-184742プログラム、電力制御方法、及び電力制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184742
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】プログラム、電力制御方法、及び電力制御システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20221206BHJP
   G06Q 10/04 20120101ALI20221206BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070366
(22)【出願日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2021091597
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】黒田 さよ子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 清雄
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】より長期間における電力の利用計画を立てやすくする技術を提供する。
【解決手段】プログラムは、コンピュータに、電力調達価格の予測をするステップと、前記電力調達価格の予測に基づいて、電力使用量の調整を需要家に要求する期間を決定するステップと、前記期間に関する情報を前記需要家に対応するユーザに提示するステップとを実行させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
電力調達価格の予測をするステップと、
前記電力調達価格の予測に基づいて、電力使用量の調整を需要家に要求する期間を決定するステップと、
前記期間に関する情報を前記需要家に対応するユーザに提示するステップと
を実行させるためのプログラム。
【請求項2】
前記コンピュータに、対象となる地域の天気予報を含む気象予報データを取得するステップを実行させ、
前記期間を決定するステップにおいて、前記電力調達価格の予測及び前記天気予報に基づいて前記期間が決定される
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記気象予報データが、前記天気予報の信頼度を示す情報を含み、
前記期間を決定するステップにおいて、前記電力調達価格の予測、前記天気予報、及び前記信頼度に基づいて前記期間が決定される
請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記期間を決定するステップにおいて、一の候補期間について、前記信頼度が基準以上であり、前記電力調達価格が基準よりも低く、かつ前記天気予報が所定の条件を満たす場合、当該一の候補期間が前記電力使用量の調整を需要家に要求する期間として決定される
請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記期間を決定するステップにおいて、一の候補期間について、前記信頼度が基準以上であり、前記電力調達価格が基準よりも低く、かつ前記天気予報及び当該一の候補期間の属性が所定の条件を満たす場合、当該一の候補期間が前記電力使用量の調整を需要家に要求する期間として決定される
請求項4に記載のプログラム。
【請求項6】
前記所定の条件が、前記天気予報が晴れであり、かつ前記一の候補期間が日中に相当する時間帯であるという条件を含む
請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記所定の条件が、前記天気予報が雨であり、かつ前記一の候補期間が夜間に相当する時間帯であるという条件を含む
請求項5に記載のプログラム。
【請求項8】
前記期間を決定するステップにおいて、一の候補期間について、前記信頼度が基準以上であり、前記電力調達価格が基準よりも低く、かつ前記天気予報、当該一の候補期間の属性、及び前記需要家の属性が所定の条件を満たす場合、当該一の候補期間が前記電力使用量の調整を需要家に要求する期間として決定される
請求項5に記載のプログラム。
【請求項9】
前記プログラムが、
複数の需要家を、定義された複数のグループのうちいずれかのグループに分類するステップ
をさらに実行させるためのプログラムであって、
前記電力使用量の調整を需要家に要求する期間が、前記グループ毎に決定される
請求項1に記載のプログラム。
【請求項10】
前記複数のグループは、需要家が有する設備の種類に応じて区分される
請求項9に記載のプログラム。
【請求項11】
前記設備の種類が、太陽光発電設備及びV2H機器の有無に応じて区分される
請求項10に記載のプログラム。
【請求項12】
前記複数のグループは、需要家に対応するユーザの属性に応じて区分される
請求項9に記載のプログラム。
【請求項13】
電力調達価格の予測をするステップと、
前記電力調達価格の予測に基づいて、電力使用量の調整を需要家に要求する期間を決定するステップと、
前記期間に関する情報を前記需要家に対応するユーザに提示するステップと
を有する電力制御方法。
【請求項14】
電力調達価格の予測をする予測手段と、
前記電力調達価格の予測に基づいて、電力使用量の調整を需要家に要求する期間を決定する決定手段と、
前記期間に関する情報を前記需要家に対応するユーザに提示する提示手段と
を有する電力制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、需要家に電力使用量の調整を要求する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の需要家におけるエネルギー機器を管理する技術として、いわゆるデマンドレスポンスが知られている。デマンドレスポンスは、例えば電力小売事業者が需要家に対して電力の使用を要求し、これに応答する形で需要家がエネルギー機器の使用を制御するものである。例えば特許文献1は、HEMSシステムを有する需要家に供給するために電力小売事業者が電力を調達する際の調達額を最適化するため、蓄電池における充放電タイミングを制御する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/026874号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の例において、電力調達価格は、日本卸電力取引所(Japan Electric Power Exchange,JEPX)から所定の時刻に提供される。しかし調達価格データは、翌日1日のみの価格変化を示すものであり、翌々日以降の調達価格は未確定のままである。すなわちこの調達価格データを用いる限り、翌々日以降の長期間に渡る充放電タイミングを決めることが難しく、需要家のユーザに対しては短期間での判断を求めることになる。この状況で需要家のユーザは、電気自動車及び蓄電池等の負荷の利用計画を立てづらいという問題がある。
【0005】
これに対し本発明は、より長期間における電力の利用計画を立てやすくする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、コンピュータに、電力調達価格の予測をするステップと、前記電力調達価格の予測に基づいて、電力使用量の調整を需要家に要求する期間を決定するステップと、前記期間に関する情報を前記需要家に対応するユーザに提示するステップとを実行させるためのプログラムを提供する。
【0007】
本開示の別の一態様は、電力調達価格の予測をするステップと、前記電力調達価格の予測に基づいて、電力使用量の調整を需要家に要求する期間を決定するステップと、前記期間に関する情報を前記需要家に対応するユーザに提示するステップとを有する電力制御方法を提供する。
【0008】
本開示の別の一態様は、電力調達価格の予測をする予測手段と、前記電力調達価格の予測に基づいて、電力使用量の調整を需要家に要求する期間を決定する決定手段と、前記期間に関する情報を前記需要家に対応するユーザに提示する提示手段とを有する電力制御システムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より長期間における電力の利用計画を立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る電力制御システムの概要を示す図。
図2】電力制御システムの機能構成を例示する図。
図3】サーバのハードウェア構成を例示する図。
図4】電力制御システムの動作の概要を示すシーケンスチャート。
図5】デマンドレスポンスを要求するスケジュールを決定する処理の詳細を例示するフローチャート。
図6】天気予報を例示する図。
図7】電力調達価格の推移を例示する図。
図8A】UI画面を例示する図。
図8B】UI画面を例示する図。
図8C】UI画面を例示する図。
図9】デマンドレスポンスの対象期間となる条件の別の例を示す図。
図10】変形例に係る動作の概要を示すシーケンスチャート。
図11】各グループの代表的な電力消費を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.構成
図1は、一実施形態に係る電力制御システム1の概要を示す図である。電力制御システム1は、発電装置10、蓄電池20、電力負荷30、電力量計40、制御装置50、サーバ60、及びユーザ端末70を有する。これらのうち、発電装置10、蓄電池20、電力負荷30、及び制御装置50は、需要家Hに設置される。図面を簡単にするため図1では単一の需要家Hのみを図示しているが、電力制御システム1は複数の需要家Hを含んでもよい。また、各需要家Hには商用電源(図1では略)からの電力も供給される。商用電源からの電力は、電力小売事業者により販売(又は提供)される。サーバ60は、需要家Hの制御装置50とネットワーク90を介して接続される。電力制御システム1において、サーバ60からの指示に応じて制御装置50が電力制御を行う。制御装置50は、いわゆるHEMSコントローラー及びゲートウェイ機器の機能を有する。制御装置50は、需要家H内の装置(発電装置10、蓄電池20、電力負荷30、及び電力量計40)に指示を送ったり、これらの装置から応答やデータを受け付けたりする制御を行う。また、制御装置50は、サーバ60等の外部装置から指示を受け付けたり、外部装置にデータ又は要求を送信したりする制御を行う。一例として、制御装置50の機能には、例えば、電力量計40から電力量データの入力を受け付け、受け付けた電力データを記録又はサーバ60等の外部装置に送信する機能が含まれる。
【0012】
ユーザ端末70は、需要家Hのユーザが使用する端末である。ユーザ端末70は、ネットワーク90を介してサーバ60にアクセスすることができる。
【0013】
発電装置10は、発電を行う装置である。一例において、発電装置10は、自然エネルギーを用いて発電を行う装置、具体的には太陽光発電装置である。蓄電池20は、発電装置10又は商用電源から供給された電力を用いて充電され、蓄えた電力を必要に応じて放電する装置である。一例において、蓄電池20は据置型である。据置型蓄電池に代えて、又は加えて、電気自動車のバッテリーが蓄電池20として用いられてもよい。電力負荷30は、需要家Hにおいて電力を消費する装置であり、家電製品、冷暖房装置、及び照明装置等を含む。電力量計40は、買電及び売電に係る電力量を計測する装置である。この例において、電力量計40は、いわゆる買電メーター及び売電メーターの機能を含む。なお、図示は省略したが、電力制御システム1は、発電装置10の発電量を計測する電力量計、及び蓄電池20の充放電量を計測する電力量計を有する。制御装置50は、その需要家Hにおいて発電装置10、蓄電池20、電力負荷30、及び電力量計40に関する制御を行う。
【0014】
電力制御システム1における電力制御には、いわゆるデマンドレスポンスが適用される。デマンドレスポンスとは、電力卸市場価格の高騰時または系統信頼性の低下時において、電気料金価格の設定またはインセンティブの支払に応じて、需要家側が電力の使用を増加又は抑制するよう電力の消費パターンを変化させることをいう。具体的には、デマンドレスポンスとは、例えば電力調達価格が相対的に安いときに(電気料金を割り引く等のインセンティブを付与したりして)電力を使用するよう需要家Hに促し、電力調達価格が相対的に高いときに(電気料金を引き上げたり等、インセンティブを低くしたりして)電力を使用しないよう需要家Hに要求する又は促すことをいう。
【0015】
課題の項で説明したように、日本卸電力取引所から所定の時刻に提供される、確定した電力調達価格のデータは翌日1日のみの価格変化を示すものであり、翌々日以降の調達価格は未確定のままである。すなわちこの調達価格データを用いる限り、翌々日以降のデマンドレスポンスの計画を立てることは難しい。本実施形態においては、確定した電力調達価格のデータにより示される期間よりも長い期間においてデマンドレスポンスを提供するためのサービスが提供される。以下デマンドレスポンスのために需要家にインセンティブを与えることを「特定サービス」という。特定サービスは、例えば、電気料金の割引、キャッシュバックの付与、ポイントの付与、及びクーポンの発行の少なくとも1種を含む。
【0016】
図2は、電力制御システム1の機能構成を例示する図である。電力制御システム1は、記憶手段61、取得手段62、予測手段63、決定手段64、提示手段65、処理手段66、記憶手段71、取得手段72、表示手段73、及び送信手段74を有する。この例において、記憶手段61、取得手段62、予測手段63、決定手段64、提示手段65、及び処理手段66はサーバ60に実装される。記憶手段71、取得手段72、表示手段73、及び送信手段74はユーザ端末70に実装される。
【0017】
サーバ60において、記憶手段61は、各種のデータを記憶する。この例において、記憶手段61が記憶するデータには、スケジュールデータベース(図示略)が含まれる。スケジュールデータベースは、デマンドレスポンスを需要家に要求するスケジュールに関する情報が記録されたデータベースである。取得手段62は、対象となる地域の天気予報を含む気象予報データを取得する。予測手段63は、電力調達価格の予測をする。決定手段64は、少なくとも電力調達価格の予測に基づいて、電力使用量の調整(デマンドレスポンス)を需要家に要求する期間を決定する。一例において、決定手段64は、電力調達価格の予測及び天気予報に基づいて期間を決定する。提示手段65は、電力使用量の調整を需要家に要求する期間に関する情報を、需要家に対応するユーザに提示する。
【0018】
ユーザ端末70において、記憶手段71は、各種のデータを記憶する。取得手段72は、電力使用量の調整を需要家に要求する期間に関する情報を取得する。表示手段73は、電力使用量の調整の要求に対する応答を入力するための画面を表示する。送信手段74は、電力使用量の調整の要求に対する応答をサーバ60に送信する。
【0019】
サーバ60において、処理手段66は、ユーザ端末70から送信された、電力使用量の調整の要求に対する応答に応じた処理を行う。
【0020】
図3は、サーバ60のハードウェア構成を例示する図である。サーバ60は、CPU(Central Processing Unit)601、メモリ602、ストレージ603、及び通信IF(Interface)604を有するコンピュータ装置である。CPU601は、プログラムを実行して各種の演算を行い、サーバ60の他のハードウェア要素を制御する制御装置である。メモリ602は、CPU601がプログラムを実行する際のワークエリアとして機能する主記憶装置である。ストレージ603は、各種のプログラム及びデータを記憶する不揮発性の補助記憶装置である。通信IF604は、所定の通信規格(例えばイーサネット(登録商標))に従って他の装置と通信する通信装置である。
【0021】
この例において、ストレージ603に記憶されるプログラムには、コンピュータ装置を電力制御システム1におけるサーバ60として機能させるためのプログラム(以下「サーバプログラム」という)が含まれる。CPU601がサーバプログラムを実行することにより、コンピュータ装置に図2の機能が実装される。CPU601がサーバプログラムを実行している状態において、メモリ602及びストレージ603の少なくとも一方が記憶手段61の一例である。CPU601が取得手段62、予測手段63、決定手段64、提示手段65、及び処理手段66の一例である。
【0022】
詳細な説明は省略するが、ユーザ端末70は、プロセッサ、メモリ、ストレージ、ディスプレイ、入力装置、及び通信IFを含むコンピュータ装置、例えばスマートフォン又はパーソナルコンピュータである。この例において、ストレージに記憶されるプログラムには、コンピュータ装置を電力制御システム1におけるユーザ端末70として機能させるためのプログラム(以下「クライアントプログラム」という)が含まれる。プロセッサがクライアントプログラムを実行している状態において、メモリ及びストレージの少なくとも一方が記憶手段71の一例である。プロセッサが取得手段72の一例である。ディスプレイが表示手段73の一例である。通信IFが送信手段74の一例である。
【0023】
2.動作
図4は、電力制御システム1の一実施形態に係る動作の概要を示すシーケンスチャートである。ステップS1において、サーバ60は、デマンドレスポンスを要求する(すなわち特定サービスを提供する)スケジュールを決定する。すなわち、サーバ60は、需要家Hが電力を使用するインセンティブを与える期間を決定する。
【0024】
図5は、ステップS1の処理(デマンドレスポンスを要求するスケジュールを決定する処理)の詳細を例示するフローチャートである。図5のフローは、例えば、所定のイベントが発生したことをトリガとして開始される。図5のフローを開始させるイベントは、例えば、毎日、所定の時刻になったというイベントである。なお以下において、サーバ60又はユーザ端末70を処理の主体として記載するが、これは、サーバプログラム等のプログラムを実行しているCPU601等のハードウェア要素が、他のハードウェア要素と協働して処理を実行することを意味する。
【0025】
ステップS101において、サーバ60は、電力制御システム1に含まれる複数の需要家Hのうち、対象となる1以上の需要家(以下「対象需要家」という)を特定する。この例において、まず地域(例えば区市町村)が特定され、その地域に存在する需要家が対象需要家として特定される。換言するとステップS101の処理は、対象地域を特定しているということもできる。
【0026】
ステップS102において、サーバ60は、気象予報データを取得する。気象予報データは、対象需要家が属する地域における所定の期間(以下「対象期間」という)の天気予報を含む。対象期間は、例えば1週間又は1ヶ月間等、比較的長い期間をいう。ここでいう「長い期間」とは、後述する、確定した電力調達価格が提供される期間(例えば将来の24時間)よりも長い期間をいう。ここで取得される気象予報データは、ステップS101において特定された対象需要家に対応する地域、具体的には、対象需要家が存在する地域の気象予報データである。
【0027】
図6は、天気予報を例示する図である。この例において、対象期間は翌日から1週間である。天気予報は、天気の種別(例えば、晴れ、曇り、雨、又は雪など)、降水確率、信頼度、及び最低/最高気温を含む。このうち信頼度は、天気予報の確からしさを示す。一例において、信頼度は、A、B、及びCの3段階で表される。信頼度A、信頼度B、及び信頼度Cはそれぞれ、例えば的中率が80%程度、70%程度、及び50%程度に相当する。なお図6の例においては、翌々日までは信頼度が「-」と記載されているが、これは予報の信頼度が最大限に高いことを示す。
【0028】
この例において、対象期間はさらに複数の期間(例えば24時間毎の期間)に分割される。天気予報は分割された期間毎に行われる。一部の項目について、この期間はさらに詳細に分割されてもよい。図6の例では、今日及び明日の降水確率に関しては分割された期間がさらに4つ(すなわち6時間毎の期間)に分割される。
【0029】
再び図5を参照する。ステップS103において、サーバ60は、電力調達価格を予測する。電力調達価格は、過去の調達価格推移の実績、及び気象予報データを用いて予測される。
【0030】
図7は、電力調達価格の推移を例示する図である。この図は、過去のある時期における、晴れの日、曇りの日、及び雨の日における調達価格の、24時間分の推移を示す。この例においては、0時から7時まで及び18時から24時までの時間帯における調達価格の推移は天気によらずほぼ同一である。一方で7時から18時までの時間帯における調達価格の推移は天気に応じて異なっている。すなわち、晴れ、曇り、及び雨の順序で価格が高くなる。これは晴れの日は太陽光発電設備から供給される電力が増え、電力卸売市場に流通する電力量が増大するためであると理解できる。
【0031】
サーバ60は、過去における電力調達価格の推移と気象データ(例えば、天気、最高気温、及び最低気温)との関係を数式化したモデルを有する。サーバ60は、このモデル及びステップS101において取得した気象予報データを用いて、対象期間における電力調達価格を予測する。
【0032】
なお対象期間のうち一部(例えば翌日の0時から24時)については確定した電力調達価格のデータが提供されるので、サーバ60は電力調達価格の予測を行わず、この確定した電力調達価格のデータを用いる。
【0033】
再び図5を参照する。ステップS104において、サーバ60は、対象副期間を特定する。対象副期間とは、対象期間をさらに分解した複数の副期間(デマンドレスポンスの対象期間の候補期間の一例)のうち以下の処理の対象となる一の副期間をいう。一例において、対象期間は1日ずつ、0時から7時まで(夜間に相当)、7時から18時まで(日中に相当)、及び18時から24時まで(夜間に相当)の3つの副期間に分割される。対象期間が1週間であれば、対象期間は21個の副期間に分割される。サーバ60は、早い時間帯から順に対象副期間を特定する。
【0034】
ステップS105において、サーバ60は、対象副期間における天気予報の信頼度が基準以上であるか判断する。例えば、基準が「信頼度A」である場合、対象副期間の天気予報の信頼度がAであれば基準以上であると判断され、信頼度がB又はCであれば基準未満であると判断される。対象副期間における天気予報の信頼度が基準以上であると判断された場合(S105:YES)、サーバ60は処理をステップS106に移行する。対象副期間における天気予報の信頼度が基準以上でないと判断された場合(S105:NO)、サーバ60は処理をステップS109に移行する。
【0035】
ステップS106において、サーバ60は、対象副期間の属性及び天気予報が特定の条件を満たすか判断する。一例において、特定の条件は、以下の(ア)及び(イ)の一方に該当するというものである。(ア)対象副期間が日中であり、かつ(その日中の)天気予報が晴れである。(イ)対象副期間が夜間であり、かつ(対応する日中の)天気予報が雨である。この条件(ア)及び(イ)は以下の想定に基づく。電力調達価格は、供給が多い時間帯は安く、需要が多い時間帯は高くなる。一般には、朝方及び夕方は電力の需要が多く、市場における調達価格も高くなる傾向にある。朝方及び夕方を除くと、一般には日中よりも深夜の方が調達価格が安い傾向にある。ただし、太陽光発電の発電量が多いとき(すなわち晴れのとき)は市場に供給される電力量が増え、深夜よりも日中の方が調達価格は安くなる。したがってサーバ60は、晴れの日中をデマンドレスポンスの対象(の候補)とする((ア)のケース)。前述のとおり晴れでなければ深夜の方が調達価格は安いので、同日の日中が(太陽光発電の発電量が少ない確率が高い)雨である深夜をデマンドレスポンスの対象(の候補)とする((イ)のケース)。なお電力需要は種々の条件に依存して変動するので、これらの条件は、対象需要家の地域及び季節等を考慮してより詳細に設定されてもよい。
【0036】
この条件が満たされた場合(S106:YES)、サーバ60は、処理をステップS107に移行する。この条件が満たされなかった場合(S106:NO)、サーバ60は、処理をステップS109に移行する。
【0037】
ステップS107において、サーバ60は、対象副期間における電力調達価格の予測値が条件を満たすか、具体的には基準より安いか判断する。電力調達価格は時間とともに変動するが、ここでは対象副期間における平均値が予測値として用いられる。電力調達価格の基準は、対象副期間の属性に応じて定義される。この例では、日中向けの基準及び夜間向けの基準の2つが用いられる。対象副期間における電力調達価格の予測値が基準より安いと判断された場合(S107:YES)、サーバ60は処理をステップS108に移行する。対象副期間における電力調達価格の予測値が基準より高いと判断された場合(S107:NO)、サーバ60は処理をステップS109に移行する。
【0038】
ステップS108において、サーバ60は、対象副期間を、デマンドレスポンスの対象期間として決定する。すなわちサーバ60は、データベースにおいて対象副期間の識別情報及びその副期間に対応するフラグの値を、特定サービスを提供する旨を示す値に書き換える。
【0039】
さらに、サーバ60は、対象副期間におけるインセンティブの内容を決定する。例えば、インセンティブが電気料金の割引である場合、サーバ60はその割引額を決定する。割引額は、例えば、対象副期間における電力調達価格の予測値と基準との差の関数である。
【0040】
ステップS109において、サーバ60は、全ての副期間について処理が完了したか判断する。全ての副期間について処理が完了したと判断された場合(S109:YES)、サーバ60は、処理をステップS110に移行する。まだ処理されていない副期間があると判断された場合(S109:NO)、サーバ60は、処理をステップS104に移行する。ステップS104において対象副期間が更新され、以降の処理が繰り返し行われる。
【0041】
なお一例において、サーバ60は、デマンドレスポンスの対象期間として新たに特定された副期間に対してそのフラグの値を変更するだけでなく、デマンドレスポンスの対象期間として特定されなかった副期間に対してそのフラグの値を、特定サービスを提供する旨を示す値に書き換える。例えば、毎日17時に翌日0時から7日後の24時までの期間を対象期間として処理をする例を考える。このとき、対象期間のうち翌日0時から6日後の24時までの期間については、既に前日17時の時点で処理が行われており、条件を満たす副期間については既にフラグが書き込まれている。例えば天気予報が昨日から変更された等の事情により、ある副期間が、昨日の処理においてはデマンドレスポンスの対象期間として特定されたにもかかわらず、今日の処理においてはデマンドレスポンスの対象期間として特定されなかった場合、サーバ60は、その副期間のフラグの値を、特定サービスを提供しない旨を示す値に書き換える。
【0042】
別の例において、サーバ60は、デマンドレスポンスの対象期間として新たに特定された副期間に対してそのフラグの値を変更するだけであり、デマンドレスポンスの対象期間として特定されなかった副期間に対してそのフラグの値を変更しなくてもよい。すなわち、一度でもデマンドレスポンスの対象期間として特定された副期間については、その後の天気予報の変更等の事情にかかわらず特定サービスを提供する対象としての状態が維持されてもよい。
【0043】
ステップS110において、サーバ60は、全ての需要家を対象需要家として処理が完了したか判断する。全ての需要家について処理が完了したと判断された場合(S110:YES)、サーバ60は、図5のフローを終了する。まだ対象需要家として処理されていない需要家があると判断された場合(S110:NO)、サーバ60は、処理をステップS101に移行する。ステップS101において対象需要家が更新され、以降の処理が繰り返し行われる。
【0044】
再び図4を参照する。ステップS2において、サーバ60は、ステップS1において生成したスケジュール(すなわちデマンドレスポンスの要求)を示すデータをユーザ端末70に提示(又は送信)する。サーバ60は、ユーザ端末70からの要求によらず、新たなスケジュールが生成されたことをトリガとしてこのデータをユーザ端末70に提示する(すなわちプッシュ送信する)。あるいは、サーバ60は、ユーザ端末70からの要求に応じてこのデータを提示してもよい。一例において、このデータは、ユーザにデマンドレスポンスへの応答(すなわち電力の使用予定又は使用予約)を入力させるためのUI画面を含む。
【0045】
ステップS3において、ユーザ端末70は、デマンドレスポンスへの応答(具体的には電力負荷となる装置の使用予定又は使用予約)の入力を受け付ける。デマンドレスポンスへの応答は、ステップS2において送信されるデータを用いて表示されるUI画面を介して入力される。
【0046】
図8A図8Cは、ステップS3において表示されるUI画面を例示する図である。ここでは説明のため、同じ需要家Hのユーザに対し4月13日(図8A)、4月16日(図8B)、及び4月20日(図8C)の3つのタイミングで表示されるUI画面を示す。このUI画面は8つの領域(領域91~98)を含む。各領域は、それぞれ異なる日付に対応する。領域91には当日の情報が、領域92には翌日の情報が、…、領域98には7日後の情報が、それぞれ表示される。各領域には、(a)日付を示す情報、(b)デマンドレスポンスの候補となる時間帯の情報、(c)その時間帯に対応するインセンティブを示す情報、及び(d)そのデマンドレスポンスの対応を指定するUIオブジェクトが表示される。図8Aの領域98を例として見ると、(a)として4月20日が、(b)として(1)1時から5時まで及び(2)10時から12時までの2つの時間帯が、(c)として(1)に対して割引額5円及び(2)に対して割引額8円が、(d)として参加/不参加を切り替えるボタンが、それぞれ表示される。なお(d)に関して「参加」とはその時間帯に指定された負荷(図8Aの例では電気自動車の充電器)を使用する予定であることを示し、「不参加」とはその負荷を使用しないこと又は使用予定が不明であることを示す。需要家Hのユーザは、(d)のボタンをタップ又はクリックすることによりデマンドレスポンスへの応答を指定する。
【0047】
このUI画面において、デマンドレスポンスの対象となる日とならない日とは異なる外観で表示される。具体的には、その時点においてデマンドレスポンスの対象でない日はグレーアウトされる(デマンドレスポンスの対象となる日はグレーアウトされない)。図8Aの例では、領域92、領域95、及び領域97がグレーアウトされている。グレーアウトされている領域について、ユーザ端末70は、(d)のボタンに対する操作を受け付けない。すなわち、領域92、領域95、及び領域97においては、(d)のボタンをタップ又はクリックしても参加/不参加を切り替えることはできない。
【0048】
図8Bは、図8Aから3日後に表示されるUI画面を示す。例えば4月17日の情報は、図8Aにおいては領域95に表示されていたが、図8Bにおいては領域92に表示される。ここで、図8Aにおいて4月17日(領域95)はグレーアウトされているが、図8Bにおいて4月17日(領域92)はグレーアウトされていない。これは、図8Aを表示した4月13日の時点では4月17日の予測が条件を満たさずデマンドレスポンスの対象となっていなかったものの、4月16日の時点では天気予報が変更された等の理由により4月17日の予測が条件を満たすようになりデマンドレスポンスの対象となったことを示す。
【0049】
図8Cは、図8Bから4日後に表示されるUI画面を示す。例えば4月20日の情報は、図8Aにおいては領域98に、図8Bにおいては領域95に、図8Cにおいては領域91に、それぞれ表示される。図8A及び図8Bの例において、4月20日の10時から12時までの時間帯における割引額は8円であったが、図8Cの例においてその割引額は10円に変更されている。これは、図8Cの時点では電力調達価格が確定しているところ、図8Bの時点の電力調達価格の予測値とは差があったことに起因している。なお割引額は日が進むにつれプラスの方向にもマイナスの方向にも変化する可能性がある。サーバ60は、既にデマンドレスポンスへの参加を指示済のユーザに対しては、参加を指示したときよりも不利な条件とならないよう、割引額を決定する。図8Cの例では、4月24日の1時から5時までの時間帯における割引額は5円でありこのユーザは既に参加を指示しているところ、これが4月24日当日になって(まだ参加を指示していないユーザ向けの)割引額が3円で確定した場合であっても、このユーザに対しては割引額5円が適用される(UI画面においても割引額は5円と表示される)。すなわちサーバ60は、各ユーザについて、デマンドレスポンスへの参加/不参加の別及び参加を指示した時点におけるインセンティブの内容をデータベースに記憶する。UI画面のデータをユーザ端末70に送信する際には、サーバ60は、このデータベースからそのユーザのデータを読み出し、そのユーザに対して適用されるインセンティブを特定する。
【0050】
再び図4を参照する。デマンドレスポンスへの応答が変更されると、ユーザ端末70は、変更された応答を示す情報をサーバ60に送信する。サーバ60は、この応答に応じた処理を行う(ステップS4)。例えば、サーバ60は、そのユーザについてデマンドレスポンスへの参加/不参加の別及び参加を指示した時点におけるインセンティブの内容をデータベースに書き込む。また、サーバ60は、そのユーザが使用した電力に対する電気料金を計算する際には、データベースに記録されているインセンティブの内容を参照する。
【0051】
以上で説明したように本実施形態によれば、電力調達価格が確定している期間よりも長い期間に対して、デマンドレスポンスの計画を生成することができる。
【0052】
3.変形例
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下の変形例に記載した事項の一部が、他の一部又は上述の実施形態と組み合わせて適用されてもよい。
【0053】
3-1.デマンドレスポンスの対象期間となる条件
デマンドレスポンスの対象となる期間の条件は実施形態において例示したものに限定されない。例えば、サーバ60は、電力調達価格の予測、天気予報、天気予報の信頼度、及び副期間の属性に加え、対象となる需要家の属性に基づいてデマンドレスポンスの対象となる期間を決定してもよい。この場合において、対象となる需要家の属性としては、例えば、太陽光発電設備の有無が用いられる。具体的には以下のとおりである。
【0054】
図9は、デマンドレスポンスの対象期間となる条件の別の例を示す図である。この例では、需要家の属性と、その属性に対応する条件とが示される。電力調達価格は、1日の変動における相対的な高低を示す。図示された表の最上行は、参考として実施形態において説明した条件(ア)及び(イ)を示す。これは、需要家における太陽光発電設備の有無によらずに適用される条件を示している。
【0055】
表の中段は、太陽光発電設備を有する需要家に適用される条件を例示する。この条件は以下のとおりである。(ウ)対象副期間が深夜であり、かつ(対応する日中の)天気予報が晴れである。この条件(ウ)は以下の想定に基づく。すなわち晴れの日の日中は太陽光発電の発電量が多く、市場に供給される電力は増えるが、一方その需要家(太陽光発電設備を有する)内においても太陽光発電設備における発電量が増え、他から電力を購入しても供給過多になり需要家内でその電力を消費できなくなるおそれがある。したがってサーバ60は、晴れの日中はデマンドレスポンスの対象とせず、その日の深夜をデマンドレスポンスの対象(の候補)とする。
【0056】
表の下段は、太陽光発電設備を有さない需要家に適用される条件を例示する。この条件は以下のとおりである。(エ)対象期間が日中であり、かつ(その日中の)天気予報が晴れである。(オ)対象期間が深夜であり、かつ(対応する日中の)天気予報が晴れである。条件(エ)に関し、晴れの日の日中は太陽光発電の発電量が多く、市場に供給される電力は増える。その需要家(太陽光発電設備を有さない)内においても太陽光発電設備による発電はないので、調達価格が安い日中をデマンドレスポンスの対象(の候補)とする。条件(オ)に関し、深夜の時間帯は(朝方及び夕方と比較して)一般に電力の調達価格が安価であるので、この時間帯をデマンドレスポンスの対象(の候補)とする。なお、太陽光発電設備の有無により適用される条件を決める例においても、実施形態において説明した条件(イ)に相当する条件は維持される。
【0057】
サーバ60は、デマンドレスポンスの対象(の候補)となる条件を満たすかの判断を、対象期間に含まれる副期間の一部についてのみ行ってもよい。すなわち、サーバ60は、例えば、過去の履歴から電力小売市場における電力供給量が増える時間帯、一例としては1時から5時まで及び10時から12時までの時間帯についてのみデマンドレスポンスの対象(の候補)となる条件を満たすかの判断を行ってもよい。
【0058】
3-2.電力調達価格の予測
電力調達価格を予測する具体的手法は、実施形態において例示したものに限定されない。例えば電力調達価格の予測値は、天気予報によらず、過去の同時期(例えば同月同日を中心とする前後1.5月)の平均値であってもよい。あるいは、電力調達価格の予測値は機械学習を用いて得たものであってもよい。この場合、例えば期間の属性、需要家の属性、及び気象データを入力層に、その期間の確定した電力調達価格の推移を出力層に教師データとして与えて学習をさせた機械学習モデルが用いられる。
【0059】
3-3.対象需要家の特定
対象需要家を特定する具体的手法は実施形態において例示したものに限定されない。例えば地域に応じて対象需要家を特定することに代えて、又は加えて、需要家の属性に応じて対象需要家が特定されてもよい。ここで用いられる需要家の属性は、例えば、保有するエネルギー機器の種類、エネルギー危機の量、過去の電力使用実績、及び過去の発電実績の少なくとも1種である。
【0060】
3-4.需要家群を対象とする制御
この例において、電力制御システム1は、需要家を複数のグループに分類し、グループ毎にデマンドレスポンスのスケジュールを決定する。さらに、この例において、電力制御システム1は、需要家Hからのデマンドレスポンスの応答によらず、自動的に需要家Hの機器を制御する。これらは、以下の事情による。まず、本願発明者らの実験によれば、複数の需要家Hはその属性などに応じて区分されるグループ毎に、似たような電力消費のパターンを有することが分かった。また、複数の需要家全体に対して電力消費を制御するために、毎回、デマンドレスポンスに対する個々の需要家Hの応答を待っていたのでは、(需要家Hにとって毎回応答を入力するのは手間であるので)デマンドレスポンスへの参加率が(電力制御システム1の運営事業者が期待するよりも)低くなってしまうという問題があった。この例では、この問題に対処する。
【0061】
図10は、変形例に係る動作の概要を示すシーケンスチャートである。ステップS51において、サーバ60は、需要家Hを複数のグループに分類する。各需要家Hをどのグループに分類するかの基準は、例えば電力制御システム1の運営事業者により定義される。サーバ60は、この定義を示す情報を記憶する。
【0062】
この例において、複数のグループを区分する基準は、その需要家が有する設備の種類に応じて定義される。具体的には、太陽光発電設備の有無及びV2H機器の有無に応じてグループが定義される。V2H機器とは、電気自動車の電池に蓄えられている電力を家庭でも利用できるようにした機器であり、V2H充放電器又はEV用パワーコンディショナと呼ばれる機器である。詳細には、太陽光発電設備の有無×V2H機器の有無により需要家は以下の4つのグループに区分される。
グループA:太陽光発電設備無しかつV2H機器無し
グループB:太陽光発電設備有りかつV2H機器無し
グループC:太陽光発電設備無しかつV2H機器有り
グループD:太陽光発電設備有りかつV2H機器有り
【0063】
図11は、各グループの代表的な電力消費を例示する図である。ここでは、需要家における、買電、売電、EV充電、及びEV放電の時間変化が示される。どのグループの需要家も、1:00-4:00の時間帯にEV充電を行っている。なおこの時間帯の買電量は、EV充電に使われる電力を含んだ値であるが、説明のため買電量とEV充電量とを別に図示している。例えばグループAでは1:00-4:00に約600(任意単位)の電力量がEV充電に用いられたことが示されている。この時間帯の買電量は約800(任意単位)であるが、この値にはEV充電に用いられた電力量が含まれている。すなわちEV充電以外に用いられた電力量は約200(任意単位)である。
【0064】
グループAは太陽光発電設備もV2H機器も無いので、一部の時間帯にEV充電を行う以外は買電があるだけである。グループBは太陽光発電設備があるので、7:00-16:00の時間帯に売電が発生する。グループCはV2H機器があるので、一部の時間帯にEV放電が行われる。EV放電によりEVの電池残量が減少するので、グループCでは10:00-14:00の時間帯にもEV充電が行われる。グループDは太陽光発電設備及びV2H機器があるので、10:00-14:00の時間帯にもEV充電が行われ、7:00-16:00の時間帯に売電が発生する。さらに一部の時間帯にEV放電が行われる。
【0065】
このようにグループ毎に電力消費のパターンが異なるので、サーバ60は、このような電力消費パターンの違いを踏まえたスケジュールを決定する。例えば、需要家に対して電力消費を減らすデマンドレスポンス(いわゆる下げDR)を要求する場合、V2H機器を有する需要家であれば買電量を減らしてもEV放電により電力をまかなえるので、下げDRの要求に応じてもらえる可能性が高いと予想される。
【0066】
グループの分類は、需要家が有する設備の種類により定義されるものに限定されない。需要家が有する設備の種類に加えて、又は代えて、需要家におけるユーザの生活様式により定義されてもよい。生活様式とは、日常的な行動を示す事項であり、一例としては、その需要家に属するユーザがEVを日中(例えば通勤に)使用するか否かを示す事項である。例えば、EVを所有してる需要家であっても、そのEVをユーザが通勤に使っているのであれば、(たとえV2H機器を有していたとしても)日中の時間帯はEV放電を行うことができない。したがってこの需要家に対して下げDRを要求しても応じてもらえる可能性は低いと予想される。
【0067】
さらに、グループの分類は、上記の事項に加えて、又は代えて、需要家に属するユーザの属性に応じて定義される。ユーザの属性は、例えば、そのユーザの家族構成である。例えば幼い子供がいる家庭と単身社会人の家庭とでは電力を消費する時間帯が異なると考えられる。
【0068】
実施形態においては説明を省略したが、デマンドレスポンスのスケジュールを決定する際には、以下の処理が行われる。サーバ60は、まず、ある対象期間において、電力制御システム1が管理する需要家全体の電力需要を予測する。次に、サーバ60は、その対象期間において、商用電源における供給予備率の情報を取得する。供給予備率の情報は、例えば電力会社から提供される。さらに、サーバ60は、需要家全体の発電量(太陽光発電設備などによる自家発電の総量)を予測する。デマンドレスポンスにはいわゆる下げDRと上げDRとがある。サーバ60は、下げDRを要求する条件(例えば、予測される供給予備率がしきい値を下回る)及び上げDRを要求する条件(例えば、下げDRの前後の時間帯において余剰供給力が生じる)を記憶しており、これらの条件に従って、下げDRを要求するか上げDRを要求するかを決める。例えば、サーバ60は、供給予備率がしきい値を下回り、かつ需要家全体の発電量がしきい値を下回る場合、下げDRを要求することを決定する。
【0069】
時間帯及び下げDR/上げDRの別によってどのグループにDR要求をすると応じてもらえる可能性が高いか、あらかじめ予測又は判断をすることができる。サーバ60は、どの時間帯にどちらのDRをどのグループに対して要求すると応じてもらえる可能性が高いか、その優劣を示すデータベース(図示略)を記憶している。サーバ60は、このデータベースを参照して、どのグループに対しDR要求を送信するか決定する。
【0070】
再び図10を参照する。ステップS52において、サーバ60は、デマンドレスポンスを要求するスケジュールを決定する。この処理は例えばステップS1と同様に行われる。ステップS53において、サーバ60は、ステップS52において生成したスケジュール(すなわちデマンドレスポンスの要求)を示すデータを、DR要求の対象となるグループに属する(すべての)ユーザ端末70に提示(又は送信)する。サーバ60は、ユーザ端末70からの要求によらず、新たなスケジュールが生成されたことをトリガとしてこのデータをユーザ端末70に提示する(すなわちプッシュ送信する)。あるいは、サーバ60は、ユーザ端末70からの要求に応じてこのデータを提示してもよい。
【0071】
サーバ60からデマンドレスポンスの要求を受信すると、ユーザ端末70は、受信したスケジュールを記憶する(ステップS54)。この例では、図4の例とは異なり、ユーザに対しデマンドレスポンスへの応答(具体的には電力負荷となる装置の使用予定又は使用予約)の入力を受け付けられず、自動的に電力負荷となる装置の使用予定又は使用予約が設定される。なお、そのデマンドレスポンスの要求に応えられないときは、ユーザは、その予定又は予約をユーザ端末70からキャンセルすることができる。
【0072】
以上で説明したようにこの例によれば、需要家はユーザの生活様式に応じて決まるグループ(又は需要家群)に分類され、そのグループに対してデマンドレスポンスのスケジュールが決定される。したがって、より適正な需要家に対しより適切なデマンドレスポンスの要求をすることができる。
【0073】
なおこの例では、需要家のユーザからのデマンドレスポンスへの応答によらず自動的にデマンドレスポンスのスケジュールを決定する例を説明したが、実施形態の例のように、サーバ60は、ユーザからのデマンドレスポンスへの応答に応じてデマンドレスポンスのスケジュールを確定してもよい。
【0074】
3-5.インセンティブ
適用されるインセンティブの種類及びその決め方は実施形態において例示したものに限定されない。実施形態においてはデマンドレスポンスが電力の使用を増加させるためのものである例を説明したが、例えば、デマンドレスポンスがその期間の電力の使用を抑制させるためのものであれば、インセンティブは電気料金の割増又はマイナスポイントの付与であってもよい。
【0075】
3-6.他の実施形態
電力制御システム1における機能要素とハードウェア要素との対応関係は実施形態において例示したものに限定されない。例えば、実施形態においてサーバ60の機能として説明したものの一部を、制御装置50に実装してもよい。あるいは、実施形態においてサーバ60の機能として説明したものの一部を、ネットワーク上の他の装置に実装してもよい。
【0076】
電力制御システム1のハードウェア要素は実施形態において例示したものに限定されない。要求される機能を実装できるものであれば、電力制御システム1はどのようなハードウェア構成を有していてもよい。例えば、サーバ60は物理サーバであってもよいし、仮想サーバ(例えばいわゆるクラウド)であってもよい。
【0077】
実施形態において例示した各種のプログラムは、それぞれ、インターネット等のネットワークを介したダウンロードにより提供されてもよいし、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記録媒体に記録された状態で提供されてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…電力制御システム、10…発電装置、20…蓄電池、30…電力負荷、50… 制御装置、60…サーバ、61…記憶手段、62…取得手段、63…予測手段、64…決定手段、65…提示手段、66…処理手段、70…ユーザ端末、71…記憶手段、72…取得手段 、73…表示手段、74…送信手段、90…ネットワーク、601…CPU、602…メモリ、603…ストレージ、604…通信IF
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11