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特開2022-184806CIP用アルカリ洗浄剤組成物及びCIP洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184806
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】CIP用アルカリ洗浄剤組成物及びCIP洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/06 20060101AFI20221206BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20221206BHJP
   C11D 7/22 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C11D7/06
C11D7/32
C11D7/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087932
(22)【出願日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2021091588
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(71)【出願人】
【識別番号】593085808
【氏名又は名称】ADEKAクリーンエイド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 福一
(72)【発明者】
【氏名】松本 卓也
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AC05
4H003AC07
4H003AC08
4H003BA12
4H003DA05
4H003DB01
4H003DC02
4H003EA21
4H003EB13
4H003EB24
4H003EB32
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA07
4H003FA19
(57)【要約】
【課題】
超高温下でCIP洗浄におけるアルカリ洗浄を行った場合でも、良好な洗浄性を維持しつつ金属腐食防止性に優れたCIP用アルカリ洗浄剤組成物及びCIP洗浄方法を提供する。
【解決手段】
CIP用アルカリ洗浄剤組成物は、(A)成分としてアルカリ金属水酸化物、(B)成分としてメチルグリシン二酢酸及び/又はその塩、グルタミン酸二酢酸及び/又はその塩より選ばれた少なくとも1種、(C)成分として、オレフィン-マレイン酸共重合体又はその塩、(D)成分として水を含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分としてアルカリ金属水酸化物、
(B)成分としてメチルグリシン二酢酸及び/又はその塩、グルタミン酸二酢酸及び/又はその塩より選ばれた少なくとも1種、
(C)成分として、オレフィン-マレイン酸共重合体又はその塩、
(D)成分として水
を含有することを特徴とするCIP用アルカリ洗浄剤組成物。
【請求項2】
(B)成分が、メチルグリシン二酢酸及び/又はその塩である請求項1に記載のCIP用アルカリ洗浄剤組成物。
【請求項3】
(C)成分が、重量平均分子量8000以上、50000以下のオレフィン-マレイン酸共重合体又はその塩である請求項1又は2の何れかに記載のCIP用アルカリ洗浄剤組成物。
【請求項4】
(A)成分及び(C)成分を、質量比(A)/(C)の値が、5以上、4000以下となる割合で含有することを特徴とする請求項3に記載のCIP用アルカリ洗浄剤組成物。
【請求項5】
(B)成分及び(C)成分を、質量比(B)/(C)の値が、0.05以上、1000以下となる割合で含有することを特徴とする請求項3に記載のCIP用アルカリ洗浄剤組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のCIP用アルカリ洗浄剤組成物を、水又は湯にて(C)成分が0.001%質量以上、1質量%以下になるように希釈した洗浄液を、110℃以上に加温してアルカリ洗浄工程に用いることを特徴とするCIP洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品工場や飲料工場等における製造設備等に付着した汚れを洗浄・除去するために適したCIP用アルカリ洗浄剤組成物及びそれを用いたCIP洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲料工場や食品工場等では、製造設備の大型化や、製造品種の増加による洗浄頻度の増加に伴い、製造設備の分解洗浄が困難になってきている。そのため、分解洗浄に代わって配管、殺菌機及び充填機などの製造設備内に洗浄液を満たして循環させ、或いは製造設備内に対し洗浄液をスプレーすることで、残留汚れを洗浄・除去するCIP洗浄(Cleaning in place:定置洗浄)方式が広く採用されている。
【0003】
このCIP洗浄には、アルカリ洗浄剤、酸洗浄剤、又は殺菌剤などから選択される1以上の洗浄剤が使用されている。例えば一般に、CIP洗浄は、1.水洗浄、2.アルカリ洗浄、3.水すすぎ、4.酸洗浄、5.水すすぎ、6.殺菌、7.水すすぎという工程で行われる。また、各洗浄剤の配合成分、或いは汚れの種類や状態に応じて、上記工程の一部が省略され、上記工程の順序が変更され、或いは同じ工程が繰り返し実施される場合もある。
【0004】
かかるCIP洗浄におけるアルカリ洗浄に用いられるためのアルカリ洗浄剤としては、特許文献1~4などが知られる。具体的には、特許文献1には、アルカリ金属水酸化物、炭化水素基の炭素数が6~10の脂肪酸及び/又はその塩、キレート剤、非イオン界面活性剤、ポリアクリル酸等の高分子分散剤を含有する液体アルカリ性洗浄剤組成物が開示されており、特許文献2には、アルカリ剤及びジエチレントリアミン5酢酸又はその塩、及び、メチルグリシン2酢酸又はその塩からなる群から選択されるキレート剤を含有するアルカリ洗浄剤組成物が開示されており、また特許文献3には、水酸化ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸及び/又はその塩、トリエチレンテトラアミン六酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミン二コハク酸及びこれらの塩から選択される少なくとも1種の可溶化剤を含有する硬質表面用液体洗浄剤組成物が開示されている。更に、特許文献4にはアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物と、メチルグリシン二酢酸又はその塩を含有するCIP用洗浄剤組成物を水で希釈した希釈洗浄液に対して、塩素系除菌剤を添加して飲食料品製造ラインのCIP洗浄及び除菌洗浄を同時に行うCIP洗浄方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-059851号公報
【特許文献2】特開2017-210522号公報
【特許文献3】特開2012-087161号公報
【特許文献4】特開2017-002250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、食品や飲料品等の製品製造時の最終工程では、製品を殺菌するための製品殺菌工程を超高温(110℃以上の温度)で行うことが一般的である。一方、CIP洗浄におけるアルカリ洗浄工程及び酸洗浄工程は、100℃以下の温度で行われることが一般的である。薬剤が入った洗浄剤を用い超高温で洗浄工程を実施すると、被洗浄物である製造設備等に備えられた金属部分に腐食(以下、単に金属腐食ともいう)が発生する場合があるからである。そのため、製品の製造からCIP洗浄に切り替える際、被洗浄物である製造設備等内の温度を下げなければならず、この冷却に要する時間及びコストがかかり問題であった。
【0007】
本発明者らの検討によれば、酸洗浄工程は、これに用いられる酸洗浄剤に含有される酸成分としてリン酸などを選択することで超高温にしても金属腐食の発生を抑制可能であることがわかった。しかし、アルカリ洗浄工程では、上述する特許文献1~4に開示されるCIP用アルカリ洗浄剤組成物に代表される従来のアルカリ洗浄剤組成物を超高温の環境で使用した場合、金属腐食を防止することは困難であった。
【0008】
そのため、超高温で使用されても金属腐食を誘発しないCIP用アルカリ洗浄剤組成物の提供が求められていた。またアルカリ洗浄に起因する金属腐食を抑制しつつ、製品の製造からCIP洗浄に切り替える際、冷却工程を割愛可能であって、CIP洗浄の時間短縮及びコストダウンが可能なCIP洗浄方法の提供が求められていた。
【0009】
本発明は上記課題を鑑みなされたものである。即ち、本発明は、超高温下でCIP洗浄におけるアルカリ洗浄を行った場合でも、良好な洗浄性を維持しつつ金属腐食防止性に優れたCIP用アルカリ洗浄剤組成物及びCIP洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、アルカリ系の洗浄剤において、特定のキレート剤と、オレフィン-マレイン酸共重合体とを含有させることによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明のCIP用アルカリ洗浄剤組成物は、(A)成分としてアルカリ金属水酸化物、(B)成分としてメチルグリシン二酢酸及び/又はその塩、グルタミン酸二酢酸及び/又はその塩より選ばれた少なくとも1種、(C)成分として、オレフィン-マレイン酸共重合体又はその塩、(D)成分として水を含有することを特徴とする。
【0012】
また本発明のCIP洗浄方法は、本発明のCIP用アルカリ洗浄剤組成物を用い、水又は湯にて(C)成分が0.001%質量以上、1質量%以下になるように希釈した洗浄液を、110℃以上に加温してアルカリ洗浄工程に用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
かかる構成を備える本発明のCIP用アルカリ洗浄剤組成物は、超高温で使用した場合であっても、良好な洗浄性を維持しつつ被洗浄物である装置内の金属が腐食することを防止可能である。
また本発明のCIP洗浄方法は、超高温下でアルカリ洗浄を実施した場合であっても、良好な洗浄性を示し、かつ当該アルカリ洗浄に起因する金属腐食の発生を良好に防止することができる。したがって本発明のCIP洗浄によれば、時間短縮及びコストダウンを図ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明のCIP用アルカリ洗浄剤組成物及びCIP洗浄方法について順に説明する。
尚、本発明に関する説明において、超高温とは、特段の断りがない場合には、110℃以上の温度を指す。
【0015】
本発明のCIP用アルカリ洗浄剤組成物は、(A)成分としてアルカリ金属水酸化物、(B)成分としてメチルグリシン二酢酸及び/又はその塩、グルタミン酸二酢酸及び/又はその塩より選ばれた少なくとも1種、(C)成分として、オレフィン-マレイン酸共重合体又はその塩、(D)成分として水を含有する。
かかる構成の本発明のCIP用アルカリ洗浄剤組成物は、超高温で使用した場合であっても、良好な洗浄性を維持しつつ被洗浄物である製造設備等の金属腐食を防止可能である。
【0016】
上記(A)成分のアルカリ金属水酸化物としては、CIP洗浄に用いられるアルカリ洗浄剤に用いられ得るアルカリ金属水酸化物であればよく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明のCIP用アルカリ洗浄剤組成物100質量%において、(A)成分のアルカリ金属水酸化物は10質量%以上、40質量%以下含有されていることが好ましく、20質量%以上、38質量%以下含有されていることがより好ましく、26質量%以上、35質量%以下含有されていることが更に好ましい。
(A)成分の含有量が、10質量%未満であると、洗浄性が低下する場合があり、40質量%を超えると金属腐食防止性、貯蔵安定性が十分でなくなる場合がある。
【0018】
上記(B)成分としては、メチルグリシン二酢酸及び/又はその塩、グルタミン酸二酢酸及び/又はその塩より選ばれた少なくとも1種が含まれる。本願発明における(B)成分は、所謂キレート剤と呼ばれる化合物の1種であり、CIP洗浄における設備内のスケールの付着を防止する効果が発揮される。しかし本発明において(B)成分の作用効果はこれにとどまらず、多数存在するキレート剤の中でも上記(B)成分と、後述する(C)成分とを併用することによって貯蔵安定性が良好であり、また超高温で使用された場合であっても金属腐食が良好に防止されるCIP用アルカリ洗浄剤組成物の提供を可能とする。
【0019】
中でも、特に金属腐食の防止性に優れるという観点から、(B)成分として、メチルグリシン二酢酸及び/又はその塩が含まれることが好ましい。
【0020】
本発明のCIP用アルカリ洗浄剤組成物100質量%において、上述する(B)成分は0.1質量%以上、10質量%以下含有されていることが好ましく、0.3質量%以上、8質量%以下含有されていることがより好ましく、0.5質量%以上、4質量%以下含有されていることが更に好ましい。
(B)成分の含有量が、0.1質量%未満であると、設備内におけるスケールの付着が顕著になる場合があり、10質量%を超えると金属腐食防止性、貯蔵安定性が十分でなくなる場合がある。
【0021】
上記(C)成分としては、オレフィン-マレイン酸共重合体又はその塩が含まれる。
オレフィン-マレイン酸共重合体又はその塩としては、例えばソカランCP9(BASF社製)、アキュゾール460N(ダウケミカル社製)、ダイヤカルナ30M(三菱ケミカル株式会社製)などの市販品が挙げられる。
(C)成分は、上述するとおり、(B)成分と併用されることによって、CIP用アルカリ洗浄剤組成物の貯蔵安定性を良好なものとし、かつ超高温で使用された場合であっても金属腐食を防止することが可能である。
【0022】
中でも、より金属腐食防止性の効果の高いCIP用アルカリ洗浄剤組成物を提供可能であるという観点からは、(C)成分であるオレフィン-マレイン酸共重合体又はその塩の重量平均分子量が、1000以上、200000以下であることが好ましく、3000以上、100000以下であることがより好ましく、8000以上、50000以下であることが更に好ましい。
オレフィン-マレイン酸共重合体又はその塩の重量平均分子量が、1000未満である場合には、超高温で使用された場合に金属腐食の防止効果が十分に発揮されない場合があり、また200000を超える場合、貯蔵安定性が低下する場合がある。
上記(C)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって定められた値である。尚、上記GPC法に使用する機器及び条件は以下の通りである。
使用カラム:TSKgel G4000Hxl、G3000Hxl、G2000Hxl(何れも東ソー株式会社製)を直列に接続したものを用いる。
遊離液:THF(テトラヒドロフラン)、流量:1mL/分、検出器:RI、サンプル濃度:0.1質量%(THF溶液)、サンプル量:200μL、カラム温度:40℃
【0023】
本発明のCIP用アルカリ洗浄剤組成物100質量%において、上述する(C)成分は0.01質量%以上、2質量%以下含有されていることが好ましく、0.03質量%以上、1.5質量%以下含有されていることがより好ましく、0.1質量%以上、1質量%以下含有していることが更に好ましい。
(C)成分の含有量が、0.01質量%未満であると、超高温で使用された際に金属腐食の防止効果が十分に発揮されない場合があり、2質量%を超えると貯蔵安定性が低下する場合がある。
【0024】
(D)成分の水としては、特に限定はなく、水道水、工業用水、再生水、イオン交換水、RO水、蒸留水、軟水等が挙げられる。
これらは単独で用いても、二種以上を組み合わせても良いが、経済性の点から水道水が好ましい。水道水としては、例えば、東京都荒川区の水道水(pH=7.6、総アルカリ度(炭酸カルシウム換算として)40.5mg/L、ドイツ硬度2.3°DH(そのうち、カルシウム硬度1.7°DH、マグネシウム硬度0.6°DH)、塩化物イオン21.9mg/L、ナトリウム及びその化合物15mg/L、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素1.2mg/L、フッ素及びその化合物0.1mg/L、ホウ素及びその化合物0.04mg/L、総トリハロメタン0.016mg/L、残留塩素0.4mg/L、有機物(全有機炭素量)0.7mg/L)が挙げられる。水は、CIP用アルカリ洗浄剤組成物全体が100質量%となるように配合されるものである。
【0025】
上述するCIP用アルカリ洗浄剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じ当該技術分野で通常使用される他の成分を含有していてもよい。このような成分としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、スケール防止剤、酸化剤、増粘剤、pH調整剤、消臭成分、酵素、色素、香料等が挙げられる。また本発明の効果を更に確実なものとするために、更に金属腐食抑制剤を追加してもよい。
【0026】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルジエステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、グリセリン脂肪酸エステル又はそのエチレンオキサイド付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル又はそのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドの付加物、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、高級脂肪酸アルカノールアミド、アルキルポリグルコシドを含むアルキルグリコシド、アルキルアミンオキサイド等から選択される1種以上が挙げられる。またポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリマー(エチレンオキシドとプロピレンオキシドはランダム、ブロック、リバースの何れでもよい)等のプルロニック型界面活性剤を用いてもよい。
尚、上述において、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドの付加物の付加形態は、ランダム状、ブロック状の何れでもよい。
中でも、タンパク質を含む汚れを洗浄した場合においても優れた抑泡性を発揮するという観点から、ノニオン界面活性剤としてはポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル又はそのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドの付加物が好ましい。具体的な市販品としては、ADEKA社製のアデカプルロニックシリーズ、アデカトールLBシリーズ、アデカノールBシリーズやBASF社製のプルラファックLFシリーズ等が挙げられる。
本発明のCIP用アルカリ洗浄剤組成物100質量%において、上述するノニオン界面活性剤は0.1質量%以上、5質量%以下含有されていることが好ましく、0.3質量%以上、3質量%以下含有されていることがより好ましく、0.5質量%以上、1.5質量%以下含有していることが更に好ましい。0.1質量%未満であると、抑泡性が向上しない場合があり、5質量%を超えると長期貯蔵安定性の低下や逆に泡立ってしまう場合がある。
【0027】
アニオン界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、硫化オレフィン塩、高級アルキルスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、硫酸化脂肪酸塩、スルホン化脂肪酸塩、リン酸エステル塩、脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、グリセライド硫酸エステル塩、脂肪酸エステルのスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩、スルホコハク酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸塩、N-アシル-N-メチルタウリンの塩、アシルオキシエタンスルホン酸塩、アルコキシエタンスルホン酸、N-アシル-N-カルボキシエチルタウリン又はその塩、及びアルキル又はアルケニルアミノカルボキシメチル硫酸塩等から選択される1種以上が挙げられる。
【0028】
カチオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキル四級アンモニウム塩、エーテル基或いはエステル基或いはアミド基を含有するモノ或いはジアルキル四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモルホニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等から選択される1種以上が挙げられる。
またカチオン界面活性剤として上述に例示する化合物のアルキル基をアルケニル基に変更した化合物も本発明に使用可能なカチオン界面活性剤として例示される。
【0029】
両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルベタイン、ラウリルジエチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、オレイルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等のアルキルベタイン型両性界面活性剤、N-ヤシ脂肪酸アシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム(2-ヤシアルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン)、N-ヤシ脂肪酸アシル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、N-牛脂脂肪酸アシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、N-牛脂脂肪酸アシル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリウムベタイン型両性界面活性剤、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ステアリン酸アミドプロピルベタイン、オレイン酸アミドプロピルベタイン等のアミドプロピルベタイン型両性界面活性剤、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、オレイルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム、オレイルアミノジプロピオン酸ナトリウム等のアミノ酸型両性界面活性剤等から選択される1種以上が挙げられる。
【0030】
スケール防止剤としては、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、1-ヒドロキシプロピリデン-1,1-ジホスホン酸等の有機ホスホン酸及び/又はその塩、ビス(ポリ-2-カルボキシエチル)ホスフィン酸、ホスフィノカルボン酸共重合物等の有機ホスフィン酸及び/又はその塩、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム等の縮合リン酸又はその塩等から選択される1種以上が挙げられる。スケール防止剤は単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム等の次亜塩素酸塩、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム等の亜塩素酸塩、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム等の塩素酸塩、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、塩素化イソシアヌル酸ナトリウム、塩素化イソシアヌル酸カリウム等の塩素化イソシアヌル酸塩、二酸化塩素、過酸化水素等から選択される1種以上が挙げられる。酸化剤は単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、経済性の点から次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
【0032】
pH調整剤としては、例えば、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リン酸、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等から選択される1種以上が挙げられる。pH調整剤は、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
消臭成分としては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、高度分岐シクロデキストリン等のシクロデキストリンから選択される1種以上が挙げられる。これらのデキストリンとともに、ノニオン界面活性剤を併用することでより良好な脱臭性が示されうる。良好な脱臭効果を発揮するために、上述する1種以上のデキストリンと併用されるノニオン界面活性剤としては、上述するノニオン界面活性剤の中から適宜選択されたものが挙げられるが、中でもポリオキシアルキレンアルキルエーテル、プルロニック型界面活性剤、アルキルポリグルコシドから選択される1種以上を選択することが好ましい。
本発明のCIP用アルカリ洗浄剤組成物100質量%において、上述する消臭成分は0.1質量%以上、10質量%以下含有されていることが好ましく、0.2質量%以上、8質量%以下含有されていることがより好ましく、0.3質量%以上、5質量%以下含有していることが更に好ましい。0.1質量%未満であると、脱臭性が向上しない場合があり、10質量%を超えてもそれ以上の脱臭効果は見込めない。
【0034】
酵素としては、例えば、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、グルカナーゼ等が挙げられる。
【0035】
色素としては、例えば、天然色素、合成色素、これらの混合物が挙げられる。また、香料としては、例えば、天然香料、合成香料、これらの調合香料等が挙げられる。
【0036】
金属腐食抑制剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール及びメルカプトベンゾチアゾール等のトリアゾール、アジピン酸塩、グルタル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。金属腐食抑制剤は、単独で用いても二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0037】
良好な洗浄性を維持しつつより高い金属腐食防止性効果を発揮させるという観点からは、本発明のCIP用アルカリ洗浄剤組成物は、上述する(A)成分及び(C)成分を、質量比(A)/(C)の値が、5以上、4000以下となる割合で含有することが好ましく、10以上、500以下となる割合で含有することがより好ましく、15以上、200以下となる割合で含有することが更に好ましく、25以上、150以下であることが特に好ましい。
上記質量比(A)/(C)の値が5未満であると、洗浄性又は貯蔵安定性が十分でない場合があり、4000を超えると貯蔵安定性が低下し、或いは超高温で使用した際に金属腐食の防止効果が十分に発揮されない場合がある。
【0038】
貯蔵安定性と超高温で使用された場合の金属腐食の防止効果とをよりバランスよく発揮させるという観点からは、本発明のCIP用アルカリ洗浄剤組成物は、上述する(B)成分及び(C)成分を、質量比(B)/(C)の値が、0.05以上、1000以下となる割合で含有することが好ましく、1以上、100以下となる割合で含有することがより好ましく、3以上、20以下となる割合で含有することが更に好ましい。
上記質量比(B)/(C)の値が0.05未満であると、貯蔵安定性が低下し、又はスケールの発生が顕著になる場合があり、1000を超えると、貯蔵安定性が低下し、又は超高温で使用された場合の金属腐食防止性が十分に発揮されない場合がある。
【0039】
次に本発明のCIP洗浄方法について説明する。
本発明のCIP洗浄方法は、上述にて説明する本発明のCIP用アルカリ洗浄剤組成物を用いたアルカリ洗浄工程を含む。
上記アルカリ洗浄工程は、本発明のCIP用アルカリ洗浄剤組成物を水又は湯にて(C)成分が0.001%質量以上、1質量%以下になるように希釈した洗浄液を用いる。本発明のCIP洗浄方法では、当該洗浄液を、110℃以上に加温してアルカリ洗浄工程が実施される。つまり本願発明のCIP洗浄方法は、従来のようにCIP洗浄におけるアルカリ洗浄工程を実施する前のように、被洗浄物である製造設備等の内部の温度を100℃以下の温度に冷却する必要がなく、100℃を超える高温、特には超高温の温度環境下において、金属腐食の虞なくアルカリ洗浄工程を実施することができる。このように従来、冷却に要していた時間及びコストが削減されるため、本発明のCIP洗浄方法は、洗浄時間が削減され、またコストダウンが図られる。
【0040】
本発明のCIP洗浄方法において、洗浄液が110℃以上に加温されるとは、予め110℃以上に加温された洗浄液を被洗浄物である製造設備等の内部に充填する態様、及び被洗浄物である製造設備等の内部の温度が110℃以上であって、110℃未満の温度の洗浄液が当該製造設備等の内部に充填されることで110℃以上に加温される態様の何れであってもよい。
【0041】
本発明のCIP洗浄方法におけるアルカリ洗浄工程は、被洗浄物である製造設備等内の温度が100℃を超える高温環境下で実施することができ、110℃以上の超高温環境下で実施されることが好ましく、115℃以上の更に超高温環境下で実施されることがより好ましい。一方、本発明におけるアルカリ洗浄工程における製造設備等内の温度の上限は特に制限されず、当該アルカリ洗浄工程は被洗浄物である製造設備等の最終工程で実施される熱殺菌と同程度の温度以下の温度環境下で実施されるとよく、例えば150℃以下が好ましい。
【0042】
本発明のCIP洗浄方法は、実質的にアルカリ洗浄工程のみを実施する態様、アルカリ洗浄工程並びに酸洗浄工程及び/又は殺菌工程を実施する態様の何れも包含する。
例えば、酸洗浄工程を含む態様の本発明のCIP洗浄方法において、これに用いられるCIP用酸洗浄剤組成物に含有される酸成分としてリン酸などを選択することで、アルカリ洗浄工程のみならず酸洗浄工程も超高温で実施することができるため、好ましい。
また、本発明のCIP洗浄方法は、アルカリ洗浄工程を超高温で実施することができるので、当該アルカリ洗浄工程において、アルカリ洗浄と同時に殺菌処理も実施し得る。そのため、本発明のCIP洗浄方法は、殺菌工程を割愛することが可能である。一方、本発明のCIP洗浄方法は、超高温下で実施されるアルカリ洗浄工程に加えて、更に殺菌工程を実施することで、非常に高い殺菌効果を発揮することも可能である。
【0043】
また、本発明のCIP洗浄方法におけるアルカリ洗浄工程で、110℃以上の超高温環境下で実施された場合には、配管連結部のパッキン部(シール部)に付着したフレーバー臭を除去する効果(脱臭効果)も発揮される。通常、フレーバー臭を十分に除去するためには十分な洗浄が必要であり大きな労力が要求されるが、超高温で処理することでパッキン部に付着残留した臭い成分が脱臭される。本発明の脱臭洗浄方法は、実質的にアルカリ洗浄工程のみを実施する態様、アルカリ洗浄工程並びに酸洗浄工程及び/又は殺菌工程を実施する態様の何れも包含する。
【0044】
より優れた脱臭効果を得るためには、上述のノニオン界面活性剤や消臭成分を1種以上配合することが好ましく、1種以上のノニオン界面活性剤と1種以上のシクロデキストリン等の消臭成分を両方配合することがより好ましい。ノニオン界面活性剤やシクロデキストリンを配合することで、テルペン系炭化水素類、エステル類、脂肪族高級アルコール類、芳香族アルコール類、脂肪族高級アルデヒド類、芳香族アルデヒド類、ラクトン類等の幅広いフレーバー臭をパッキン部から良好に脱臭することができる。
【実施例0045】
以下、本発明を実施例と比較例により具体的に説明する。実施例、比較例のCIP用アルカリ洗浄剤組成物において配合に用いた各成分及び配合量を下記表1~5に示す。尚、表中における実施例及び比較例の配合の数値は、純分の質量%を表す。
また、表1~5に示すCIP用アルカリ洗浄剤組成物を用いて、洗浄性、スケール除去性、金属腐食防止性、及び貯蔵安定性について試験及び評価を行った。各試験における評価結果は表1~5に示す。
【0046】
(A)成分
A-1:水酸化ナトリウム
A-2:水酸化カリウム
【0047】
(B)成分
B-1:メチルグリシン二酢酸三ナトリウム
B-2:グルタミン酸二酢酸三ナトリウム
【0048】
(B)成分の比較成分
B’-1:エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム
【0049】
(C)成分
C-1:オレフィン-マレイン酸共重合体ナトリウム1(商品名:ソカランCP9、BASF社製、重量平均分子量12,000)
C-2:オレフィン-マレイン酸共重合体ナトリウム2(商品名:アキュゾール460N、ダウケミカル社製、重量平均分子量10,000)
【0050】
(C)成分の比較成分
C’-1:ポリアクリル酸ナトリウム(商品名:アクアリックYS100、日本触媒株式会社製、重量平均分子量5,500)
C’-2:アクリル酸/マレイン酸共重合体ナトリウム1(商品名:アクアリックTL213、日本触媒株式会社製、重量平均分子量10,000)
C’-3:アクリル酸/マレイン酸共重合体ナトリウム2(商品名:ソカランCP5、BASF社製、重量平均分子量70,000)
C’-4:アクリル酸/マレイン酸共重合体ナトリウム3(商品名:ソカランCP12S、BASF社製、重量平均分子量3,000)
【0051】
(D)成分
D-1:イオン交換水
【0052】
(E)その他成分
E-1:プルロニック型ノニオン界面活性剤1(商品名:アデカプルロニック25R-1、ADEKA社製)
E-2:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル1(商品名:アデカトールLB-83、ADEKA社製)
E-3:2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸ナトリウム
E-4:1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸ナトリウム
E-5:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル2(商品名:アデカノールB-2020、ADEKA社製)
E-6:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル3(商品名:プルラファックLF-403、BASF社製)
E-7:プルロニック型ノニオン界面活性剤2(商品名:アデカプルロニックL-61、ADEKA社製)
E-8:アルキルポリグルコシド(商品名:Glucopon 215UP、BASF社製)
E-9:α-シクロデキストリン
E-10:ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン
【0053】
※1:洗浄性試験1
試験方法:
ステンレス片(6cm×7cmの長方形、厚さ1mmのSUS316L片)の質量を測定し、これに汚れとして牛乳を0.5mL噴霧(汚れ付着量0.5g)し、130℃で10分間加熱して汚れを付着させたものを試験片として質量を測定した。この試験片を、各CIP用アルカリ洗浄剤組成物を3質量%に希釈して調製した洗浄液300mLに完全に浸漬させ、80℃で20分間放置して洗浄した後、イオン交換水ですすぎ、105℃で30分間乾燥した後、質量を測定した。
洗浄前の試験片と、汚れ付着前のステンレス片との質量差を汚れ付着量とし、洗浄前後の試験片の質量変化から洗浄率を下記式(1)より算出し、以下の評価基準で洗浄性を評価した。
【0054】
[数1]
洗浄率(%)={(洗浄前試験片質量-洗浄後試験片質量)/(汚れ付着量)}×100 (1)
【0055】
評価基準:
◎:洗浄率80%以上(洗浄性に優れる)。
○:洗浄率70%以上、80%未満(洗浄性良好)。
△:洗浄率60%以上、70%未満(洗浄性あり)。
×:洗浄率60%未満(洗浄性が悪い)。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0056】
※1:洗浄性試験2
試験方法:
ステンレス片(6cm×7cmの長方形、厚さ1mmのSUS316L片)の質量を測定し、これに汚れとして牛乳を0.5mL噴霧(汚れ付着量0.5g)し、130℃で10分間加熱して汚れを付着させたものを試験片として質量を測定した。この試験片を、各CIP用アルカリ洗浄剤組成物を3質量%に希釈して調製した洗浄液300mLに完全に浸漬させ、オートクレーブ内にて130℃で10分間放置して洗浄した後、イオン交換水ですすぎ、105℃で30分間乾燥した後、質量を測定した。
洗浄前の試験片と、汚れ付着前のステンレス片との質量差を汚れ付着量とし、洗浄前後の試験片の質量変化から洗浄率を下記式(1)より算出し、以下の評価基準で洗浄性を評価した。
【0057】
[数2]
洗浄率(%)={(洗浄前試験片質量-洗浄後試験片質量)/(汚れ付着量)}×100 (1)
【0058】
評価基準:
◎:洗浄率80%以上(洗浄性に優れる)。
○:洗浄率70%以上、80%未満(洗浄性良好)。
△:洗浄率60%以上、70%未満(洗浄性あり)。
×:洗浄率60%未満(洗浄性が悪い)。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0059】
※2:スケール除去性試験
試験方法:
ステンレス片(2cm×7cmの長方形、厚さ1mmのSUS304片)を準備し質量を測定した。ビーカーに蒸留水100gを入れ、更に水酸化カルシウム2.5g及び炭酸カルシウム0.75gを添加し溶解させ、試験用の水溶液を調製した。上記水溶液の入ったビーカーにステンレス片を全浸漬させ、105℃で30分間加熱した後、カルシウムスケールが付着したステンレス片をビーカーから取り出し、105℃で30分間乾燥させたものを試験片とし、当該試験片の質量を測定した。この試験片を、各CIP用アルカリ洗浄剤組成物を3質量%に希釈して調製した洗浄液100mLに完全に浸漬させ、80℃で20分間加熱して洗浄した後、取り出してイオン交換水ですすぎ、105℃で30分間乾燥した後、質量を測定した。
洗浄前の試験片と、スケール付着前のステンレス片との質量差をスケール付着量とし、洗浄前後の試験片の質量変化からスケール除去率を下記式(2)より算出し、以下の評価基準でスケール除去性を評価した。
【0060】
[数3]
スケール除去率(%)={(洗浄前試験片質量-洗浄後試験片質量)/(スケール付着量)}×100 (2)
【0061】
評価基準:
◎:スケール除去率80%以上(スケール除去性に優れる)。
○:スケール除去率70%以上、80%未満(スケール除去性良好)。
△:スケール除去率60%以上、70%未満(スケール除去性あり)。
×:スケール除去率60%未満(スケール除去性が悪い)。
とし、評価基準が△、○、◎を実用性のあるものと判定した。
【0062】
※3:金属腐食防止性試験1
試験方法:
ステンレス:SUS304の10mm配管(IDF/ISO規格;1.5S)と、ステンレス:SUS304の40mm配管(IDF/ISO規格;1.5S)と、を溶接し全長50mmとしたステンレス:SUS304溶接管、及びステンレス:SUS316Lの10mm配管(IDF/ISO規格;1.5S)と、ステンレス:SUS316Lの40mm配管(IDF/ISO規格;1.5S)と、を溶接し全長50mmとしたステンレス:SUS316L溶接管の2種を予め中性洗剤で洗浄しアセトン処理して乾燥させたものを試験サンプルとして使用した。炭酸カルシウム換算で、75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水で各CIP用アルカリ洗浄剤組成物を3質量%に希釈して調製した洗浄液100mLを、100mL容量のポリプロピレン容器に入れ、その中に上記試験サンプルを完全に浸漬させ、25℃の恒温器内で24時間保存した。保存後の試験サンプルを取り出し、イオン交換水にてすすぎ、乾燥させて、試験サンプル表面の状態を目視により外観観察し、以下の評価基準で常温での金属腐食防止性を評価した。
【0063】
評価基準:
○:腐食がない。
△:やや腐食がみられるが、使用上問題ないレベル。
×:顕著な腐食がみられた。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0064】
※3:金属腐食防止性試験2
試験方法:
ステンレス:SUS304の10mm配管(IDF/ISO規格;1.5S)と、ステンレス:SUS304の40mm配管(IDF/ISO規格;1.5S)と、を溶接し全長50mmとしたステンレス:SUS304溶接管、及びステンレス:SUS316Lの10mm配管(IDF/ISO規格;1.5S)と、ステンレス:SUS316Lの40mm配管(IDF/ISO規格;1.5S)と、を溶接し全長50mmとしたステンレス:SUS316L溶接管の2種を予め中性洗剤で洗浄しアセトン処理して乾燥させたものを試験サンプルとして使用した。炭酸カルシウム換算で、75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水で各CIP用アルカリ洗浄剤組成物を3質量%に希釈して調製した洗浄液250mLを、250mL容量の耐熱容器に入れ、その中に上記試験サンプルを完全に浸漬させ、次いでオートクレーブ内で135℃、16時間の条件で保持する一連の工程を実施した。上記工程終了後、洗浄液から試験サンプルを取り出し、イオン交換水ですすいで室温で2時間乾燥させた後、これを試験サンプルとして再度、上述と同様の一連の工程を実施した。このようにして上述する一連の工程を8回繰り返し、合計で128時間オートクレーブ内で加熱処理した。8回目の工程における加熱処理後の試験サンプルを取り出し、イオン交換水にてすすぎ、乾燥させて、試験サンプル表面の状態を目視により外観観察し、以下の評価基準で超高温下でのアルカリ洗浄による金属腐食防止性を評価した。
【0065】
評価基準:
○:腐食がない。
△:やや腐食がみられるが、使用上問題ないレベル。
×:顕著な腐食がみられた。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0066】
※4:貯蔵安定性試験
試験方法:
各CIP用アルカリ洗浄剤組成物100mLを100mL容量のポリプロピレン容器に入れ、-5℃、25℃、40℃の温度環境下で1ヶ月静置した後に外観を観察し、以下の評価基準で貯蔵安定性を評価した。
【0067】
評価基準:
○:分離や濁りが見られず安定である。
△:全体的な分離はないが、若干の濁りが見られる。
×:分離もしくは濁りが見られる。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0068】
※5:抑泡性試験
試験方法:
炭酸カルシウム換算で75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水で、各CIP用アルカリ洗浄剤組成物を2質量%に希釈して調製した希釈洗浄液100mLを調製し、80℃に加温後、スキムミルク0.5gを添加した。次にスキムミルクが完全に溶解するまで攪拌し、20gを100mLガラス栓つきエプトン管に入れ、湯浴中で80℃となるように昇温した。その後、1秒間に1回の割合で60回上下に振とうし、80℃に保持したまま1分間静置後の、洗浄剤水溶液面から泡の最上部までの高さ(泡高さ)を測定し、以下の基準で抑泡性を評価した。
【0069】
評価基準:
○:泡高さが15mm未満。
△:泡高さが15mm以上、20mm未満。
×:泡高さが20mm以上。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0070】
※6:脱臭性試験
試験方法:
EPDMパッキン(一辺5cmの正方形、厚さ5mm)を、各試験飲料中に全浸漬し、100℃で8時間放置したものを被試験体とした。試験飲料として、グレープフルーツ飲料、アップル飲料、バナナオレ飲料を用いた。
イオン交換水を用いて各CIP用アルカリ洗浄剤組成物の3質量%希釈液を調整した。各希釈液200mLを、それぞれ250mL容量の耐熱容器に入れ、その中に上記の方法により調整した脱臭試験被試験体のパッキンを、それぞれの耐熱容器に1枚投入して、オートクレーブ内で121℃、1分の条件で保持する工程を実施した。その後、パッキンを十分に水道水ですすぎ、イオン交換水100mLを入れた100mL透明ポリプロピレン製容器中に投入して80℃で1時間抽出し、パッキンを取り出した水を試験水とし、評価用のサンプルとした。
評価方法:
10人のパネラーにより試験水の臭いについて下記の4段階で評価した。その点数が少ないほど脱臭効果に優れているといえる。10人のパネラーによる評価点の合計点を「臭い残留度」として評価した。判断基準は下記の通りである。
[評価点基準]
1点:飲料のフレーバー臭なし。
2点:僅かにフレーバー臭あり。
3点:ややフレーバー臭強い。
4点:フレーバー臭強い。
「臭い残留度」
◎:合計点が16点未満。
〇:合計点が16点以上22点未満。
△:合計点が22点以上28点未満。
×:合計点が28点以上。
とし、◎、〇及び△を実用性のあるものとした。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)(A)成分としてアルカリ金属水酸化物、
(B)成分としてメチルグリシン二酢酸及び/又はその塩、グルタミン酸二酢酸及び/又はその塩より選ばれた少なくとも1種、
(C)成分として、オレフィン-マレイン酸共重合体又はその塩、
(D)成分として水
を含有することを特徴とするCIP用アルカリ洗浄剤組成物。
(2)(B)成分が、メチルグリシン二酢酸及び/又はその塩である上記(1)に記載のCIP用アルカリ洗浄剤組成物。
(3)(C)成分が、重量平均分子量8000以上、50000以下のオレフィン-マレイン酸共重合体又はその塩である上記(1)又は(2)の何れかに記載のCIP用アルカリ洗浄剤組成物。
(4)(A)成分及び(C)成分を、質量比(A)/(C)の値が、5以上、4000以下となる割合で含有することを特徴とする上記(1)から(3)の何れか一項に記載のCIP用アルカリ洗浄剤組成物。
(5)(B)成分及び(C)成分を、質量比(B)/(C)の値が、0.05以上、1000以下となる割合で含有することを特徴とする上記(1)から(4)の何れか一項に記載のCIP用アルカリ洗浄剤組成物。
(6)上記(1)から(5)の何れか一項に記載のCIP用アルカリ洗浄剤組成物を、水又は湯にて(C)成分が0.001%質量以上、1質量%以下になるように希釈した洗浄液を、110℃以上に加温してアルカリ洗浄工程に用いることを特徴とするCIP洗浄方法。