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特開2022-184856硬化性樹脂、硬化性樹脂組成物、及び、硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184856
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】硬化性樹脂、硬化性樹脂組成物、及び、硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/07 20060101AFI20221206BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20221206BHJP
   C08K 5/5313 20060101ALI20221206BHJP
   C08G 63/21 20060101ALI20221206BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20221206BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20221206BHJP
   D06M 15/227 20060101ALI20221206BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20221206BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C08L67/07
C08K5/521
C08K5/5313
C08G63/21
C08J5/24 CER
C08J5/24 CEY
C08J5/24 CEZ
C08J5/24 CFC
D06M15/263
D06M15/227
B32B15/08 105Z
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139113
(22)【出願日】2022-09-01
(62)【分割の表示】P 2022505298の分割
【原出願日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2020138860
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020214063
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】松岡 龍一
(72)【発明者】
【氏名】楊 立宸
(72)【発明者】
【氏名】神成 広義
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特定構造を有する硬化性樹脂、前記硬化性樹脂、ラジカル重合開始剤、及び、難燃剤を含有する硬化性樹脂組成物を使用することで、難燃性、耐熱性(高ガラス転移温度)、及び、誘電特性(低誘電特性)に優れた硬化物等を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される硬化性樹脂、ならびに、前記硬化性樹脂、ラジカル重合開始剤(B)、及び、難燃剤(C)を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物を提供する。

(式中、Ra及びRbは、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表す。kは、0~3の整数を示す。Xは、炭化水素基を表す。Yは、-C(=O)-または-C(=O)-Z-C(=O)-を表し、Zは、脂環式基、芳香族基、または、複素環基を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位と、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、及び、アリルエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基を末端構造として有することを特徴とする硬化性樹脂。
【化1】

(式中、Ra及びRbは、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表す。kは、0~3の整数を示す。Xは、炭化水素基を表す。Yは、下記一般式(2)、または、(3)を表す。)
【化2】

(式中、Zは、脂環式基、芳香族基、または、複素環基を表す。)
【請求項2】
上記一般式(1)が、下記一般式(1A)で表される繰り返し単位である請求項1に記載の硬化性樹脂。
【化3】

(式中、Rcは水素原子、または、メチル基を表す。)
【請求項3】
前記Zが、ベンゼン環である請求項1または2に記載の硬化性樹脂。
【請求項4】
前記反応性基が、メタクリロイルオキシ基である請求項1~3のいずれかに記載の硬化性樹脂。
【請求項5】
前記硬化性樹脂の重量平均分子量が、500~50000である請求項1~4のいずれかに記載の硬化性樹脂。
【請求項6】
前記硬化性樹脂の硬化物において、誘電率が3以下である請求項1~5のいずれかに記載の硬化性樹脂。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の硬化性樹脂、
ラジカル重合開始剤(B)、及び、
難燃剤(C)を含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
更に、請求項1~6いずれかに記載の硬化性樹脂以外の硬化性樹脂(D)を含有する請求項6に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(B)成分が、ジアルキルパーオキサイド系の有機過酸化物である請求項7または8に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
前記(C)成分が、下記一般式(P-1)~(P-5)のいずれかで表されるリン系難燃剤を含有する請求項7~9のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【化4】
(P-1)

(上記一般式(P-1)中、R11は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、R12は、アルキレン基またはアリーレン基を表し、aは、0~3の整数を示す。)
【化5】
(P-2)

(上記一般式(P-2)中、R13は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、Mb+は、b価の金属イオンを表し、bは、1~3の整数を示す。)
【化6】
(P-3)

(上記一般式(P-3)中、R14は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、R15は、アルキレン基またはアリーレン基を表し、Mc+は、c価の金属イオンを表し、c、d及びeは、それぞれ独立に1~3の整数を示し、c×d=2×eを満たす。)
【化7】
(P-4)

(上記一般式(P-4)中、R16は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、リン原子と共に環状構造を形成してもよく、R17は、ビニル基、ビニルベンジル基、又は、(メタ)アクリロイルオキシ基を表し、f及びgは、それぞれ独立に、0又は1を示す。)
【化8】
(P-5)

(上記一般式(P-5)中、R18は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、リン原子と共に環状構造を形成してもよく、R19は、アリーレン構造を有する3価の基を表し、R20は、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、又は、アリルエーテル基を表し、hは、0又は1を示す。)
【請求項11】
前記(D)成分が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、シアネートエステル樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、及び、ビニル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の硬化性樹脂である請求項8~10のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項7~11のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化反応させて得られる硬化物。
【請求項13】
請求項7~11のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を有機溶剤で希釈したものであるワニス。
【請求項14】
補強基材、及び、前記補強基材に含浸した請求項13に記載のワニスの半硬化物を有するプリプレグ。
【請求項15】
基材と、請求項12に記載の硬化物を含む層を有する積層体。
【請求項16】
請求項14に記載のプリプレグ、及び、銅箔を積層し、加熱圧着成型して得られる回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定構造を有する硬化性樹脂、前記硬化性樹脂、ラジカル重合開始剤、及び難燃剤を含有する硬化性樹脂組成物により得られる硬化物、ワニス、プリプレグ、積層体、及び、回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報通信量の増加に伴い、高周波数帯域での情報通信が盛んに行われるようになり、より優れた電気特性、なかでも高周波数帯域での伝送損失を低減させるため、低誘電率と低誘電正接を有する電気絶縁材料が求められてきている。
【0003】
さらにそれら電気絶縁材料が使われているプリント基板あるいは電子部品は、実装時に高温のハンダリフローに曝されるため、耐熱性に優れた高いガラス転移温度を示す材料が求められ、特に最近は、環境問題の観点から、融点の高い鉛フリーのハンダが使われるため、より耐熱性の高い電気絶縁材料の要求が高まってきている。
【0004】
これらの要求に対して、従来より、種々の化学構造を持つビニル基含有の硬化性樹脂が提案されている。このような硬化性樹脂としては、例えば、ビスフェノールのジビニルベンジルエーテル、あるいはノボラックのポリビニルベンジルエーテルなどの硬化性樹脂、脂肪族不飽和を含有するポリフェニレンエーテル樹脂が提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0005】
しかし、これらのビニルベンジルエーテルは、誘電特性が十分に小さい硬化物を与えることができず、得られる硬化物は高周波数帯域で安定して使用するには問題があり、さらにビスフェノールのジビニルベンジルエーテルは耐熱性においても十分に高いとはいえないものであった。
【0006】
このように、従来のポリビニルベンジルエーテルを含めビニル基含有の硬化性樹脂は、電気絶縁材料用途、特に高周波数対応の電気絶縁材料用途として必要な低い誘電正接と、鉛フリーのハンダ加工に耐えうる耐熱性とを兼備する硬化物を与えるものではなかった。
【0007】
また、プリント基板などの電気絶縁材料においては、難燃性も要求されるが、難燃性を満足するために難燃剤を多量に配合すると、誘電特性に劣るなど、難燃性と誘電特性を同時に満足できるまでには至っていないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63-68537号公報
【特許文献2】特開昭64-65110号公報
【特許文献3】特許4320171号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明が解決しようとする課題は、特定構造を有する硬化性樹脂、前記硬化性樹脂、ラジカル重合開始剤、及び難燃剤を含有する硬化性樹脂組成物を使用することで、難燃性、耐熱性(高ガラス転移温度)、及び、誘電特性(低誘電特性)に優れた硬化物、これらの性能に寄与する、又は、これらの性能を兼備したワニス、プリプレグ、積層体、及び、回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、耐熱性、及び、低誘電特性に寄与できる硬化性樹脂、及び、前記硬化性樹脂、ラジカル重合開始剤、及び難燃剤を含有する硬化性樹脂組成物より得られる硬化物が、難燃性、耐熱性、及び、低誘電特性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位と、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、及び、アリルエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基を末端構造として有することを特徴とする硬化性樹脂、前記硬化性樹脂、ラジカル重合開始剤(B)、及び、難燃剤(C)を含有する樹脂組成物に関する。
【化1】

(式中、Ra及びRbは、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表す。kは、0~3の整数を示す。Xは、炭化水素基を表す。Yは、下記一般式(2)、または、(3)を表す。)
【化2】

(式中、Zは、脂環式基、芳香族基、または、複素環基を表す。)
【0012】
本発明の硬化性樹脂は、上記一般式(1)が、下記一般式(1A)で表されることが好ましい。
【化3】
【0013】
本発明の硬化性樹脂は、前記Zが、ベンゼン環であることが好ましい。
【0014】
本発明の硬化性樹脂は、前記反応性基が、メタクリロイルオキシ基であることが好ましい。
【0015】
本発明の硬化性樹脂は、前記硬化性樹脂の重量平均分子量が、500~50000であることが好ましい。
【0016】
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、前記硬化性樹脂以外の硬化性樹脂(D)を含有することが好ましい。
【0017】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記(B)成分が、ジアルキルパーオキサイド系の有機過酸化物であることが好ましい。
【0018】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記(C)成分が、下記一般式(P-1)~(P-5)のいずれかで表されるリン系難燃剤を含有することが好ましい。
【化4】
(P-1)

(上記一般式(P-1)中、R11は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、R12は、アルキレン基またはアリーレン基を表し、aは、0~3の整数を示す。)
【化5】
(P-2)

(上記一般式(P-2)中、R13は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、Mb+は、b価の金属イオンを表し、bは、1~3の整数を示す。)
【化6】
(P-3)

(上記一般式(P-3)中、R14は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、R15は、アルキレン基またはアリーレン基を表し、Mc+は、c価の金属イオンを表し、c、d及びeは、それぞれ独立に1~3の整数を示し、c×d=2×eを満たす。)
【化7】
(P-4)

(上記一般式(P-4)中、R16は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、リン原子と共に環状構造を形成してもよく、R17は、ビニル基、ビニルベンジル基、又は、(メタ)アクリロイルオキシ基を表し、f及びgは、それぞれ独立に、0又は1を示す。)
【化8】
(P-5)

(上記一般式(P-5)中、R18は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、リン原子と共に環状構造を形成してもよく、R19は、アリーレン構造を有する2価の基を表し、R20は、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、又は、アリルエーテル基を表し、hは、0又は1を示す。)
【0019】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記(D)成分が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、シアネートエステル樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、及び、ビニル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の硬化性樹脂であることが好ましい。
【0020】
本発明は、前記硬化性樹脂組成物を硬化反応させて得られる硬化物に関する。
【0021】
本発明は、前記硬化性樹脂組成物を有機溶剤で希釈したものであるワニスに関する。
【0022】
本発明は、補強基材、及び、前記補強基材に含浸した前記ワニスの半硬化物を有するプリプレグに関する。
【0023】
本発明は、基材と、前記硬化物を含む層を有する積層体に関する。
【0024】
本発明は、前記プリプレグ、及び、銅箔を積層し、加熱圧着成型して得られる回路基板に関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の硬化性樹脂は、耐熱性、及び、低誘電特性に優れ、前記硬化性樹脂、ラジカル重合開始剤、及び、難燃剤を含有する硬化性樹脂組成物により得られる硬化物は、難燃性、耐熱性、及び、低誘電特性に優れ、有用である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
<硬化性樹脂>
本発明の硬化性樹脂は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位と、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、及び、アリルエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基(架橋基)を末端構造として有する硬化性樹脂に関する。以下、下記一般式(1)で表される繰り返し単位と、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、及び、アリルエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基(架橋基)を末端構造として有する硬化性樹脂を、硬化性樹脂(A)(「(A)成分」ともいう。)と呼ぶ。
【化9】
【0028】
上記一般式(1)中、Ra及びRbは、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表す。kは、0~3の整数を示す。Xは、炭化水素基を表す。Yは、下記一般式(2)、または、(3)を表す。
【化10】
【0029】
上記一般式(3)中、Zは、脂環式基、芳香族基、または、複素環基を表す。
【0030】
前記(A)成分が、上記一般式(1)で表される繰り返し単位と、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、及び、アリルエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基(架橋基)を末端構造として有することにより、前記(A)成分中に含まれるエステル結合、または、カーボネート結合は、エーテル基などに比べて、分子運動性が低いため、低誘電特性(特に低誘電正接)となり、更に前記反応性基(架橋基)に隣接した箇所に、置換基であるRaやRb(特に、Ra)が存在することにより、前記反応性基(架橋基)由来の極性が、Raの立体障害により拘束され、更に誘電正接が低い硬化物を得ることができ、好ましい。また、前記(A)成分中に、反応性基(架橋基)を有することで、得られる硬化物が耐熱性に優れ、更に、分子運動性の低いエステル結合、または、カーボネート結合を有することで、低誘電特性だけでなく、高ガラス転移温度を有する硬化物を得ることができる。
【0031】
上記一般式(1)中、Ra及びRbは、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、好ましくは、炭素数1~4のアルキル基、アリール基、または、シクロアルキル基である。前記Ra及びRbが炭素数1~12のアルキル基等であることで、上記一般式(1)中のベンゼン環の近傍の平面性が低下し、結晶性低下により、溶剤溶解性が向上するとともに、融点が低くなり、好ましい態様となる。また、前記反応性基(架橋基)に隣接する位置に、置換基であるRaやRb(特に、Ra)が存在することにより、前記反応性基(架橋基)由来の極性が、Raの立体障害により拘束され、更に誘電正接が低い硬化物を得ることができ、好ましい。
【0032】
上記一般式(1)中、kは、0~3の整数を示し、好ましくは、0~1の整数である。kが前記範囲内にあることにより、上記一般式(1)中のベンゼン環の近傍の平面性が低下し、結晶性低下により、溶剤溶解性が向上するとともに、融点が低くなり、好ましい態様となる。また、kが0ではない場合、つまり、置換基であるRbが存在し、前記反応性基(架橋基)の近傍に存在する場合には、前記反応性基(架橋基)由来の極性が、Rbの立体障害により拘束され、誘電正接が低い硬化物を得ることができ、好ましい。
【0033】
上記一般式(1)中、Xは、炭化水素基であればよいが、工業原料の入手のしやすさから、下記一般式(4)~(6)の構造で表されることが好ましく、特に下記一般式(4)の構造であることが、耐熱性と低誘電特性のバランスがよく、より好ましい。
【化11】
【0034】
上記一般式(4)~(6)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基で表され、あるいは、R及びRが共に結合し環状骨格を形成していても良い。nは0~2の整数を示し、好ましくは、0~1の整数である。nが前記範囲内にあることにより、高耐熱性となり、好ましい態様となる。
【0035】
上記一般式(1)中、Yは、上記一般式(2)、または、(3)を表され、耐熱性の観点から、好ましくは、上記一般式(2)である。
【0036】
上記一般式(3)中、Zは、高耐熱性の硬化物を得るため、脂環式基、芳香族基、または、複素環基で表されるが、好ましくは、下記一般式(7)~(11)で表される構造であり、特に下記一般式(7)の構造(ベンゼン環)が、コスト面と耐熱性の観点から、更に好ましい。
【化12】
【0037】
前記(A)成分は、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、及び、アリルエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基(架橋基)を末端構造として有し、好ましくは、前記末端構造として、メタクリロイルオキシ基が、得られる硬化物が低誘電正接となる点でより好ましい。前記メタクリロイルオキシ基は、エステル結合を形成するのに対して、ビニルベンジルエーテル基、アリルエーテル基は、エーテル結合を形成し、分子運動性が高く、誘電正接が高くなる傾向にある。
【0038】
本発明の硬化性樹脂は、上記一般式(1)が、下記一般式(1A)で表される繰り返し単位であり、前記反応性基が、メタクリロイルオキシ基であることが好ましい。前記末端構造として、メタクリロイルオキシ基を有することで、得られる硬化物が低誘電正接となり好ましい。
【化13】
【0039】
上記一般式(1A)中、Rcは水素原子、または、メチル基を表すことが好ましく、水素原子であることがより好ましい。前記Rcが水素原子等であることにより、低極性となり、好ましい態様となる。なお、上記一般式(3)中、Ra、Rb、及び、Yは、上記一般式(1)の場合と同様である。
【0040】
前記(A)成分は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位(または、上記一般式(1A)で表される繰り返し単位)と、前記反応性基(架橋基)を末端構造として有することを特徴とするが、前記(A)成分の特性を損なわない範囲であれば、その他繰り返し単位(構造)を含んでも良い。
【0041】
前記(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、500~50000であることが好ましく、1000~10000であることがより好ましく、1500~5000が更に好ましい。前記範囲内であると、溶剤溶解性が向上し、加工作業性が良好であり、好ましい。
【0042】
<硬化性樹脂(A)の製造方法>
前記(A)成分の製造方法を以下に説明する。
【0043】
前記製造方法としては、界面重合法等の有機溶媒中で反応させる方法、または、溶融重合等の溶融状態で反応させる方法等が挙げられる。
【0044】
<界面重合法>
前記界面重合法としては、二価カルボン酸ハライドと末端構造である反応性基(架橋基)導入に使用される架橋基導入剤を水と相溶しない有機溶媒に溶解させた溶液(有機相)を、二価フェノール、重合触媒および酸化防止剤を含むアルカリ水溶液(水相)に混合し、50℃以下の温度で1~8時間撹拌しながら重合反応を行う方法が挙げられる。
また、別の前記界面重合法としては、末端構造である反応性基(架橋基)導入に使用される架橋基導入剤を水と相溶しない有機溶媒に溶解させた溶液(有機相)を、二価フェノール、重合触媒および酸化防止剤を含むアルカリ水溶液(水相)に混合した中にホスゲンを吹き込み、50℃以下の温度で1~8時間撹拌しながら重合反応をおこなう方法などが挙げられる。
【0045】
有機相に用いる有機溶媒としては、水と相溶せず、ポリアリレートを溶解する溶媒が好ましい。このような溶媒としては、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、o-,m-,p-ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族系炭化水素、もしくはテトラヒドロフランなどが挙げられ、製造上使用しやすいことから、塩化メチレンが好ましい。
【0046】
水相に用いるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウムの水溶液および水酸化カリウムの水溶液が挙げられる。
【0047】
酸化防止剤は、二価フェノール成分の酸化を防止するために用いられる。酸化防止剤としては、例えば、ハイドロサルファイトナトリウム、L-アスコルビン酸、エリソルビン酸、カテキン、トコフェノール、ブチルヒドロキシアニソールが挙げられる。中でも、水溶性に優れていることから、ハイドロサルファイトナトリウムが好ましい。
【0048】
重合触媒としては、例えば、トリ-n-ブチルベンジルアンモニウムハライド、テトラ-n-ブチルアンモニウムハライド、トリメチルベンジルアンモニウムハライド、トリエチルベンジルアンモニウムハライド等の第四級アンモニウム塩;およびトリ-n-ブチルベンジルホスホニウムハライド、テトラ-n-ブチルホスホニウムハライド、トリメチルベンジルホスホニウムハライド、トリエチルベンジルホスホニウムハライド等の第四級ホスホニウム塩が挙げられる。中でも、分子量が高く、酸価の低いポリマーを得ることができることから、トリ-n-ブチルベンジルアンモニウムハライド、トリメチルベンジルアンモニウムハライド、テトラ-n-ブチルアンモニウムハライド、トリ-n-ブチルベンジルホスホニウムハライド、テトラ-n-ブチルホスホニウムハライドが好ましい。
【0049】
前記重合触媒の添加量としては、重合に用いる二価フェノールのモル数に対して、0.01~5.0mol%が好ましく、0.1~1.0mol%がより好ましい。なお、重合触媒の添加量が0.01mol%以上であると、重合触媒の効果が得られ、ポリアリレート樹脂の分子量が高くなるため好ましい。一方、5.0mol%以下である場合には、二価の芳香族カルボン酸ハライドの加水分解反応が抑制され、ポリアリレート樹脂の分子量が高くなり好ましい。
【0050】
二価フェノールとしては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,6-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5,6-トリメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,6-トリメチルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,6-ジメチルフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5,6-トリメチルフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,3,6-トリメチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ブタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エタン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、1,4-ビス(2-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシル-6-メチルフェニル)プロパンなどが挙げられる。
【0051】
二価カルボン酸ハライドとしては、例えば、テレフタル酸ハライド、イソフタル酸ハライド、オルソフタル酸ハライド、ジフェン酸ハライド、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸ハライド、1,4-ナフタレンジカルボン酸ハライド、2,3-ナフタレンジカルボン酸ハライド、2,6-ナフタレンジカルボン酸ハライド、2,7-ナフタレンジカルボン酸ハライド、1,8-ナフタレンジカルボン酸ハライド、1,5-ナフタレンジカルボン酸ハライド、ジフェニルエーテル-2,2’-ジカルボン酸ハライド、ジフェニルエーテル-2,3’-ジカルボン酸ハライド、ジフェニルエーテル-2,4’-ジカルボン酸ハライド、ジフェニルエーテル-3,3’-ジカルボン酸ハライド、ジフェニルエーテル-3,4’-ジカルボン酸ハライド、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸ハライド、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ハライド、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸ハライドなどが挙げられる。
【0052】
前記(A)成分の末端構造として、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、及び、アリルエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基を有するが、これら反応性基(架橋基)を導入するために、架橋基導入剤を用いることができる。前記架橋基導入剤としては、例えば、無水(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロリド、クロロメチルスチレン、クロロスチレン、塩化アリル、及び、臭化アリル等を反応させることができ、特に前記末端構造として、メタクリロイルオキシ基を導入した硬化性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物により得られる硬化物は、低誘電正接となる点から、無水(メタ)アクリル酸、または、(メタ)アクリル酸クロリドを用いることがより好ましい。これらを反応させることにより、硬化性樹脂中に反応性基を導入することができ、また、低誘電率、低誘電正接となり、好ましい態様となる。
【0053】
前記無水(メタ)アクリル酸としては、無水アクリル酸と無水メタクリル酸が挙げられる。前記(メタ)アクリル酸クロリドとしては、メタクリル酸クロリドとアクリル酸クロリドが挙げられる。また、クロロメチルスチレンとしては、例えば、p-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレンが挙げられ、クロロスチレンとしては、例えば、p-クロロスチレン、m-クロロスチレンが挙げられる。また、塩化アリルとしては、例えば、3-クロロ-1-プロペンが挙げられ、臭化アリルとしては、例えば、3-ブロモ-1-プロペンが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても混合して用いてもよい。中でも、より低誘電正接の硬化物が得られる無水メタクリル酸や、メタクリル酸クロリドを用いることが特に好ましい。
【0054】
<溶融重合法>
前記溶融重合法としては、原料の二価フェノールをアセチル化した後、アセチル化された二価フェノールと二価カルボン酸とを脱酢酸重合する方法、または、二価フェノールと炭酸エステルとをエステル交換反応する方法が挙げられる。
【0055】
アセチル化反応においては、反応容器に、芳香族ジカルボン酸成分と二価フェノール成分と無水酢酸を投入する。その後、窒素置換を行い、不活性雰囲気下、100~240℃、好ましくは120~180℃の温度で、5分~8時間、好ましくは30分~5時間、常圧または加圧下で撹拌する。二価フェノール成分のヒドロキシル基に対する無水酢酸のモル比は、1.00~1.20とすることが好ましい。
【0056】
脱酢酸重合反応とは、アセチル化した二価フェノールと二価カルボン酸を反応させ、重縮合する反応である。脱酢酸重合反応においては、240℃以上、好ましくは260℃以上、より好ましくは280℃以上の温度、500Pa以下、好ましくは260Pa以下、より好ましくは130Pa以下の減圧度で、30分以上保持し、撹拌する。温度が240℃以上である場合、減圧度が500Pa以下である場合、または保持時間が30分以上の場合、脱酢酸反応が十分に進行し、得られるポリアリレート樹脂中の酢酸量を低減できるほか、全体の重合時間を短縮したり、ポリマー色調の悪化を抑制できる。
【0057】
アセチル化反応および脱酢酸重合反応においては、必要に応じて、触媒を用いることが好ましい。触媒としては、例えば、テトラブチルチタネート等の有機チタン酸化合物;酢酸亜鉛;酢酸カリウム等のアルカリ金属塩;酢酸マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;三酸化アンチモン;ヒドロキシブチルスズオキサイド、オクチル酸スズ等の有機錫化合物;N-メチルイミダゾール等のヘテロ環化合物が挙げられる。触媒の添加量は、得られるポリアリレート樹脂の全モノマー成分に対して、通常1.0モル%以下であり、より好ましくは0.5モル%以下であり、さらに好ましくは0.2モル%以下である。
【0058】
エステル交換反応においては、120~260℃、好ましくは160~200℃の温度で0.1~5時間、好ましくは0.5~6時間、常圧~1Torrの圧力で反応させる。
【0059】
エステル交換反応の触媒としては、例えば、亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛の塩が好ましく用いられ、これらは単独もしくは組み合わせて用いることができる。エステル交換触媒としては、具体的には、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)等が用いられる。これらの触媒は、二価フェノールの合計1モルに対して、0.000001~0.1モル%の比率で、好ましくは0.00001~0.01モル%の比率で用いられる。
【0060】
二価フェノールとしては、上述した界面重合法での二価フェノールを同様に使用できる。
【0061】
二価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ジフェン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル-2,2’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-2,3’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-2,4’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-3,3’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-3,4’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。
【0062】
炭酸エステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが挙げられる。
【0063】
前記(A)成分の末端構造として、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、及び、アリルエーテル基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基を有するが、これら反応性基(架橋基)を導入するために、架橋基導入剤を用いることができ、前記架橋基導入剤としては、上述した界面重合法での架橋基導入剤を同様に使用できる。
【0064】
本発明は、前記硬化性樹脂(A)、及び、後述するラジカル重合開始剤(B)、難燃剤(C)を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物に関する。前記硬化性樹脂は溶剤溶解性に優れるため、硬化性樹脂組成物の調製が容易で、ハンドリング性に優れ、前記硬化性樹脂組成物は、難燃性、耐熱性、及び、低誘電特性に寄与でき、有用である。
【0065】
<硬化性樹脂(D)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、前記(A)成分以外の硬化性樹脂(D)(「(D)成分」ともいう。)を含有することが好ましい。前記(D)成分を含む硬化性樹脂組成物を用いることで、それぞれの硬化性樹脂に基づく性能を付与した硬化物を得ることができ、好ましい態様となる。
【0066】
前記(D)成分としては、高耐熱性、高密着性、低熱膨張性、混和性の観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、シアネートエステル樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、及び、ビニル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の硬化性樹脂であることが好ましい。
【0067】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、脂肪族環状エポキシ樹脂及びそれらのハロゲン化物、水素添加物、及び前記樹脂の混合物から選ばれた1種または2種以上の混合物等が挙げられる。
【0068】
前記フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック、p-クレゾールノボラック、t-ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、ポリパラビニルフェノール、ビスフェノールA型ノボラック、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル型フェノールノボラック樹脂、ビフェニル型ナフトールノボラック樹脂、デカリン変性ノボラック、ポリ(ジ-o-ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ-m-ヒドロキシフェニル)メタン、及びポリ(ジ-p-ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。
【0069】
前記活性エステル樹脂としては、例えば、カルボン酸化合物および/またはチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物および/またはチオール化合物とを反応させたものから得られる活性エステル化合物が挙げられる。
【0070】
前記シアネートエステル樹脂としては、例えば、ビス(4-シアナトフェニル)エタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-シアナトフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、α,α’-ビス(4-シアナトフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン、フェノール付加ジシクロペンタジエン重合体のシアネートエステル化物等が挙げられる。
【0071】
前記マレイミド樹脂としては、例えば、4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、ビスフェノール A ジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3'-ジメチル-5,5'-ジエチル-4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6'-ビスマレイミド- (2,2,4-トリメチル)ヘキサンが挙げられる。
【0072】
前記ベンゾオキサジン樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型ベンゾオキサジン化合物、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン化合物などのようにビスフェノール化合物とアミン化合物(例えば、アニリン等)の反応によって得られるFa型ベンゾオキサジン化合物、ジアミノジフェニルメタン型ベンゾオキサジン化合物などのようにフェニルジアミン化合物とフェノール化合物の反応によって得られるPd型ベンゾオキサジン化合物が挙げられる。
【0073】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂としては、例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリスチレンのアロイ化ポリマー、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン-ブタジエンコポリマのアロイ化ポリマー等が挙げられる。
【0074】
前記ビニル樹脂としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート等のトリアルケニルイソシアヌレート化合物、繰り返し単位が1,2-ブタジエン、シス-1,4-ブタジエン、トランス-1,4-ブタジエンのポリブタジエン樹脂、分子中にビニルベンジル基を有するスチレン、ジビニルベンゼン等のビニルベンジル化合物等が挙げられる。
【0075】
前記(D)成分として、誘電正接を低減させることから、特に、マレイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、及び、ビニル樹脂が好ましい。
【0076】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記(A)成分100質量部に対して、前記(D)成分を0~80質量部含有することが好ましく、0~60質量部含有することがより好ましい。前記(D)成分は、本発明の特性を損なわない範囲で配合することができ、前記(A)成分を超えない範囲で、前記(D)成分に起因する特性を付与したい際に、適宜使用することができる。
【0077】
<ラジカル重合開始剤(B)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合開始剤(B)(「(B)成分」ともいう。)を含有することを特徴とする。前記(B)成分を含む硬化性樹脂組成物を用いることで、反応性が向上し、低分子量成分の残存が少なくなることで、耐熱性に優れた硬化物を得ることができ、好ましい態様となる。
【0078】
前記(B)成分としては、例えば、イソブチルパーオキサイド、α,α’-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ-n-プロピルパーオキシジカルボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、1-シクロへキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカルボネート、ジ(2-エチルヘキシルパーオキシ)ジカルボネート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ジメトキシブチルパーオキシジデカネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチルパーオキシ)ジカルボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、m-トルオイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンなどが挙げられる。特に、架橋密度が向上することから、ジアルキルパーオキサイド系有機過酸化物であることが好ましく、中でも、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3の使用がより好ましい。
【0079】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記(A)成分100質量部に対して、前記(B)成分を0.05~30質量部含有することが好ましく、0.1~20質量部含有することがより好ましく、0.5~10質量部含有することが更に好ましい。前記(B)成分の含有量が0.05質量部以上であると、十分に硬化した硬化物を得られ、30質量部以下であると、誘導特性の悪化を抑制することができ、好ましい。
【0080】
<難燃剤(C)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、難燃剤(C)(「(C)成分」ともいう。)を含有することを特徴とする。前記(C)成分を含む硬化性樹脂組成物を用いて得られる硬化物は、難燃性に優れ、好ましい態様となる。
【0081】
前記(C)成分としては、特に制限なく使用できるが、例えば、リン系難燃剤、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物、ポリシラン等が挙げられ、前記リン系難燃剤としては、有機リン系難燃剤、反応性有機リン系難燃剤、及び、有機系窒素含有リン化合物等が好ましい。
【0082】
前記有機リン系難燃剤としては、例えば、三光(株)製のHCA、HCA-HQ、HCA-NQ等のフェナントレン型リン化合物、昭和高分子(株)製のHFB-2006M等のリン含有ベンゾオキサジン化合物、味の素ファインテクノ(株)製のレオフォス30、50、65、90、110、TPP、RPD、BAPP、CPD、TCP、TXP、TBP、TOP、KP140、TIBP、ADEKA(株)製のFP-800、FP-600、北興化学工業(株)製のPPQ、大八化学(株)製のPX-200等のリン酸エステル化合物、クラリアント(株)製のOP930、OP935、OP945等の有機ホスフィン酸塩、東都化成(株)製のFX289、FX305等のリン含有エポキシ樹脂、東都化成(株)製のERF001等のリン含有フェノキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン(株)製のYL7613等のリン含有エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0083】
前記反応性有機リン系難燃剤としては、例えば、片山化学工業(株)製のMC-2、MC-4、S-2、S-4、V1、V2、V3、V4、V5、W-1o、W-2h、W-2o、W-3o、W-4o等が挙げられる。
【0084】
前記有機系窒素含有リン化合物としては、例えば、四国化成工業(株)製のSP670、SP703等のリン酸エステルアミド化合物、大塚化学(株)製のSPB100、SPEl00、(株)伏見製作所製FP-series等のホスファゼン化合物等が挙げられる。
【0085】
前記金属水酸化物としては、例えば、宇部マテリアルズ(株)製のUD65、UD650、UD653等の水酸化マグネシウム、巴工業(株)製のB-30、B-325、B-315、B-308、B-303、UFH-20等の水酸化アルミニウム等が挙げられる。ポリシランとしては、大阪ガスケミカル(株)製のSI-10、SI-20、SI-30等が挙げられる。
【0086】
一般的な難燃剤は、その使用により、誘電正接が高くなる傾向にあるが、前記(C)成分として、特に誘電正接を低減させることが可能な観点から、大八化学(株)製のPX-200等のリン酸エステル化合物、クラリアント(株)製のOP930、OP935、OP945の有機ホスフィン酸塩、片山化学工業(株)製のMC-2、MC-4、S-2、S-4、V1、V2、V3、V4、V5、W-1o、W-2h、W-2o、W-3o、W-4o等の反応性有機リン系難燃剤の使用が好ましい。
【0087】
また、前記(C)成分としては、下記一般式(P-1)~(P-5)のいずれかで表されるリン系難燃剤を含有することが好ましい。
【化14】
(P-1)

上記一般式(P-1)中、R11は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、低誘電正接の点から、好ましくは、2,6位に置換基を有するフェニル基であり、特に好ましくは、2,6-ジメチルフェニル基である。R12は、アルキレン基またはアリーレン基を表し、耐熱性の点から、好ましくは、フェニレン基である。aは、0~3の整数を示し、難燃性の点から、好ましくは、0または1である。
【0088】
【化15】
(P-2)

上記一般式(P-2)中、R13は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、低誘電率の点から、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェニル基である。Mb+は、b価の金属イオンを表し、前記金属としては、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムなどが挙げられ、難燃性の点から、好ましくは、アルミニウムである。bは、1~3の整数を示し、難燃性の点から、好ましくは、3である。
【0089】
【化16】
(P-3)

上記一般式(P-3)中、R14は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、低誘電率の点から、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェニル基である。R15は、アルキレン基またはアリーレン基を表し、耐熱性の点から、好ましくは、フェニレン基である。Mc+は、c価の金属イオンを表し、前記金属としては、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムなどが挙げられ、難燃性の点から、好ましくは、アルミニウムである。c、d及びeは、それぞれ独立に1~3の整数を示し、難燃性の点から、好ましくは、cは3、dは2、eは3であり、c×d=2×eを満たすことが好ましい。
【0090】
【化17】
(P-4)

上記一般式(P-4)中、R16は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、耐熱性の点から、好ましくは、フェニル基である。リン原子と共に環状構造を形成してもよく、R17は、ビニル基、ビニルベンジル基、又は、(メタ)アクリロイルオキシ基を表し、低誘電正接の点から、好ましくは、ビニル基、ビニルベンジル基である。f及びgは、それぞれ独立に、0又は1を示す。なお、前記リン原子と共に環状構造を形成するリン系難燃剤としては、下記一般式(P1)などが挙げられる。
【化18】
(P1)
【0091】
【化19】
(P-5)

上記一般式(P-5)中、R18は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または、シクロアルキル基を表し、耐熱性の点から、好ましくは、フェニル基である。リン原子と共に環状構造を形成してもよく、R19は、アリーレン構造を有する2価の基を表し、耐熱性の点から、好ましくは、フェニル基である。R20は、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルベンジルエーテル基、又は、アリルエーテル基を表し、低誘電正接の点から、好ましくは、ビニルベンジルエーテル基である。hは、0又は1を示す。なお、前記リン原子と共に環状構造を形成するリン系難燃剤としては、下記一般式(P2)などが挙げられる。
【化20】
(P2)
【0092】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記(A)成分100質量部に対して、前記(C)成分を0.05~300質量部含有することが好ましく、0.1~200質量部含有ことがより好ましく、1~100質量部含有することがより好ましく、5~50質量部含有することが更に好ましい。前記(C)成分の含有量が、0.05質量部以上であると、得られる硬化物の難燃性に優れ、300質量部以下であると、誘電特性の悪化を抑えることができ、好ましい。
【0093】
<その他樹脂等>
本発明の硬化性樹脂組成物には、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び、(D)成分に加えて、その他樹脂、硬化剤、硬化促進剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で特に限定なく使用できる。前記硬化性樹脂組成物は、硬化剤や硬化促進剤を配合することなく、加熱等により硬化物を得ることができるが、例えば、前記(D)成分などを併せて配合する際には、別途、硬化剤や硬化促進剤などを配合することができる。
【0094】
<その他樹脂>
前記(A)成分や(D)成分だけでなく、必要に応じて、熱可塑性樹脂を配合してもよい。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレンブタジエン樹脂、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック樹脂、スチレン-イソプレン-スチレン樹脂、スチレン-無水マレイン酸樹脂、アクリロニトリルブタジエン樹脂、ポリブタジエン樹脂あるいはそれらの水素添加した樹脂、アクリル樹脂、及び、シリコーン樹脂などを用いることができる。前記熱可塑性樹脂を使用することで、その樹脂に起因する特性を硬化物に付与することができ、好ましい態様となる。例えば、付与できる性能としては、成形性、高周波特性、導体接着性、半田耐熱性、ガラス転移温度の調整、熱膨張係数、スミア除去性の付与などに寄与することができる。
【0095】
<硬化剤>
前記硬化剤としては、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ-ル系化合物、シアネートエステル化合物などが挙げられる。これらの硬化剤は、単独でも2種類以上の併用でも構わない。
【0096】
<硬化促進剤>
前記硬化促進剤としては、種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール類、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、トリフェニルフォスフィン等のリン系化合物、又は、イミダゾール類が好ましい。これらの硬化促進剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0097】
また、前記硬化促進剤としては、前記硬化性樹脂組成物に、前記(D)成分として、エポキシ樹脂を使用する場合には、例えば、有機ホスフィン化合物:TPP、TPP-K、TPP-S、TPTP-S(北興化学工業(株))、アミン類:ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルエタン、グアニル尿素、ノバキュア(旭化成工業(株))、フジキュア(富士化成工業(株))などのアミンアダクト化合物、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等、イミダゾール類:2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、ベンゾイミダゾール、キュアゾール2MZ、2E4MZ、C11Z、C11Z-CN、C11Z-CNS、C11Z-A、2MZ-OK、2MA-OK、2PHZ(四国化成工業(株))を用いることができ、前記(D)成分として、マレイミド樹脂を使用する場合には、例えば、酸性触媒:p-トルエンスルホン酸、アミン化合物:トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン、第3級アミン化合物;第4級アンモニウム化合物、イミダゾール化合物、リン系化合物、有機過酸化物:ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3,2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、カルボン酸塩:マンガン、コバルト、亜鉛を用いることができ、前記(D)成分として、シアネートエステル樹脂を使用する場合には、イミダゾール化合物及びその誘導体、マンガン、コバルト、亜鉛等のカルボン酸塩;マンガン、コバルト、亜鉛等の遷移金属のアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物などを用いることができる。
【0098】
<無機充填剤>
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、無機充填剤を配合することができる。前記無機充填剤として、例えば、シリカ(溶融シリカ、結晶シリカ)、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレニ、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。またシランカップリング剤で表面処理をしてもよい。前記無機充填剤の配合量を特に大きくする場合は、溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、かつ、成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。
【0099】
<その他配合剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0100】
<硬化物>
本発明は、前記硬化性樹脂組成物を硬化反応させて得られる硬化物に関する。前記硬化性樹脂組成物は、前記(A)成分、(B)成分、及び、(C)成分に加えて、目的に応じて、前記(D)成分や硬化剤等の各成分を均一に混合することにより得られ、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。前記硬化物としては、積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
【0101】
前記硬化反応としては、熱硬化や紫外線硬化反応などが挙げられ、中でも熱硬化反応としては、無触媒下でも容易に行われるが、前記(B)成分を使用することで、さらに速く反応を進行させることができる。また、前記(B)成分に加えて、その他、重合開始剤や触媒等を使用することもできる。
【0102】
<ワニス>
本発明は、前記硬化性樹脂組成物を有機溶剤で希釈したものであるワニスに関する。前記ワニスの調製方法としては、公知の方法を使用でき、前記硬化性樹脂組成物を、有機溶剤に溶解(希釈)した樹脂ワニスとすることができる。
【0103】
<プリプレグ>
本発明は、補強基材、及び、前記補強基材に含浸した前記ワニスの半硬化物を有するプリプレグに関する。前記ワニス(樹脂ワニス)を補強基材に含浸させ、前記ワニス(樹脂ワニス)を含浸させた補強基材を熱処理することにより、前記硬化性樹脂組成物を半硬化(あるいは未硬化)させることで、プリプレグとすることができる。
【0104】
前記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の中から、単独、あるいは、2種以上の混合溶媒として用いることができる。
【0105】
前記ワニス(樹脂ワニス)を含浸させる補強基材としては、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の無機繊維、有機繊維からなる織布や不織布、またはマット、紙等であり、これらを単独、あるいは、組み合わせて用いることができる。
【0106】
前記プリプレグ中の硬化性樹脂組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の硬化性樹脂組成物(中の樹脂分)が20~60質量%となるように調製することが好ましい。
【0107】
前記プリプレグの熱処理の条件としては、使用する有機溶剤、触媒、各種添加剤の種類や使用量などに応じて、適宜選択されるが、通常、80~220℃の温度で、3分~30分といった条件で行われる。
【0108】
<積層体>
本発明は、基材と、前記硬化物を含む層を有する積層体に関する。前記硬化物を含む層(硬化物層)より形成される積層体は、低誘電率、低誘電正接、高耐熱性であるため、高周波対応プリント基板などに使用することができ、好ましい。
【0109】
前記積層体に用いる基材としては、金属やガラス等の無機材料や、プラスチックや木材といった有機材料等、用途によって適時使用すればよく、例えば、ガラス繊維:Eガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス、球状ガラス、NEガラス、Lガラス、Tガラス、無機繊維:クォーツ、全芳香族ポリアミド:ポリパラフェニレンテレフタラミド(ケブラー(登録商標)、デュポン株式会社製)、コポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミド(テクノーラ(登録商標)、帝人テクノプロダクツ株式会社製)、ポリエステル:2,6-ヒドロキシナフトエ酸・パラヒドロキシ安息香酸(ベクトラン(登録商標)、株式会社クラレ製)、ゼクシオン(登録商標、KBセーレン製)、有機繊維:ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(ザイロン(登録商標)、東洋紡績株式会社製)、ポリイミドなどが挙げられる。
【0110】
前記積層体の形状としても、平板、シート状、あるいは3次元構造を有していても立体状であっても構わない。全面にまたは一部に曲率を有するもの等、目的に応じた任意の形状であってよい。また、基材の硬度、厚み等にも制限はない。また、本発明の硬化物を基材とし、更に本発明の硬化物を積層しても構わない。
【0111】
前記積層体を回路基板や半導体パッケージ基板に使用する場合、金属箔を積層することが好ましく、金属箔としては銅箔、アルミ箔、金箔、銀箔などが挙げられ、加工性が良好なことから銅箔を用いることが好ましい。
【0112】
前記積層体において、前記硬化物を含む層(硬化物層)は、基材に対して直接塗工や成形により形成してもよく、すでに成形したものを積層させても構わない。直接塗工する場合、塗工方法としては特に限定は無く、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法等が挙げられる。直接成形する場合は、インモールド成形、インサート成形、真空成形、押出ラミネート成形、プレス成形等が挙げられる。
【0113】
また、本発明の硬化物に対して、前記基材となりうる前駆体を塗工して硬化させることで積層させてもよく、前記基材となりうる前駆体または本発明の硬化性樹脂組成物が未硬化あるいは半硬化の状態で接着させた後に硬化させてもよい。前記基材となりうる前駆体としては特に限定はなく、各種硬化性樹脂組成物等を用いることもできる。
【0114】
<用途>
本発明の硬化性樹脂組成物により得られる硬化物が難燃性、耐熱性、及び、誘電特性に優れることから、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能である。特に、プリプレグの製造に使用されるワニス、プリプレグ、回路基板、半導体封止材、半導体装置、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、接着剤やレジスト材料などに好適に使用できる。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用でき、難燃性で高耐熱性のプリプレグとして特に適している。こうして得られる耐熱部材や電子部材は、各種用途に好適に使用可能であり、例えば、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品、宇宙・航空関連部品、電子・電気部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材等が挙げられるが、これらに限定される物ではない。
【0115】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて製造される代表的な製品について例を挙げて説明する。
【0116】
<回路基板>
本発明は、前記プリプレグ、及び、銅箔を積層し、加熱圧着成型して得られる回路基板に関する。具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物から回路基板を得る方法としては、上記プリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1~10MPaの加圧下に170~300℃で10分~3時間、加熱圧着成型させる方法が挙げられる。
【0117】
<半導体封止材>
半導体封止材としては、前記硬化性樹脂組成物を含有することが好ましい。具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物から半導体封止材を得る方法としては、前記硬化性樹脂組成物に、更に任意成分である硬化促進剤、および無機充填剤等の配合剤とを必要に応じて押出機、ニ-ダ、ロ-ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法が挙げられる。その際、無機充填剤としては、通常、溶融シリカが用いられるが、パワートランジスタ、パワーIC用高熱伝導半導体封止材として用いる場合は、溶融シリカよりも熱伝導率の高い結晶シリカ,アルミナ,窒化ケイ素などの高充填化、または溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素などを用いるとよい。その充填率は、硬化性樹脂組成物100質量部当たり、無機充填剤を30~95質量部の範囲で用いることが好ましく、中でも、難燃性や耐湿性や耐ハンダクラック性の向上、線膨張係数の低下を図るためには、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上であることがさらに好ましい。
【0118】
<半導体装置>
半導体装置としては、前記半導体封止材を加熱硬化した硬化物を含むことが好ましい。具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物から半導体装置を得る半導体パッケージ成形としては、上記半導体封止材を注型、または、トランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50~250℃で、2~10時間の間、加熱硬化する方法が挙げられる。
【0119】
<ビルドアップ基板>
本発明の硬化性樹脂組成物からビルドアップ基板を得る方法としては、工程1~3を経由する方法が挙げられる。工程1では、まず、ゴム、フィラーなどを適宜配合した前記硬化性樹脂組成物を、回路を形成した回路基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。工程2では、必要に応じて、硬化性樹脂組成物が塗布された回路基板に所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、前記基板に凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。工程3では、工程1~2の操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップしてビルドアップ基板を成形する。なお、前記工程において、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行うとよい。また、本発明におけるビルドアップ基板は、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170~300℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0120】
<ビルドアップフィルム>
ビルドアップフィルムとしては、前記硬化性樹脂組成物を含有することが好ましい。本発明の硬化性樹脂組成物からビルドアップフィルムを得る方法としては、例えば、支持フィルム上に硬化性樹脂組成物を塗布したのち、乾燥させて、支持フィルムの上に樹脂組成物層を形成する方法が挙げられる。本発明の硬化性樹脂組成物をビルドアップフィルムに用いる場合、該フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70~140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう前記各成分を配合することが好ましい。
【0121】
ここで、回路基板のスルーホールの直径は通常0.1~0.5mm、深さは通常0.1~1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
【0122】
前記したビルドアップフィルムを製造する具体的な方法としては、有機溶剤を配合してワニス化した樹脂組成物を調製した後、支持フィルム(Y)の表面に、前記ワニス化した樹脂組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥して、樹脂組成物層(X)を形成する方法が挙げられる。
【0123】
ここで用いる有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分30~60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0124】
なお、形成される前記樹脂組成物層(X)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする必要がある。回路基板が有する導体層の厚さは通常5~70μmの範囲であるので、前記樹脂組成物層(X)の厚さは10~100μmの厚みを有するのが好ましい。なお、本発明における前記樹脂組成物層(X)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0125】
前記支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、前記支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10~150μmであり、好ましくは25~50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1~40μmとするのが好ましい。
【0126】
前記支持フィルム(Y)は、回路基板にラミネートした後に、あるいは、加熱硬化することにより、絶縁層を形成した後に、剥離される。ビルドアップフィルムを構成する樹脂組成物層が加熱硬化した後に支持フィルム(Y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
【0127】
なお、前記のようにして得られたビルドアップフィルムから多層プリント回路基板を製造することができる。例えば、前記樹脂組成物層(X)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、前記樹脂組成物の層(X)を回路基板に直接接するように回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。また必要により、ラミネートを行う前にビルドアップフィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を70~140℃とすることが好ましく、圧着圧力を1~11kgf/cm(9.8×10~107.9×10N/m)とすることが好ましく、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
【0128】
<導電ペースト>
本発明の硬化性樹脂組成物から導電ペーストを得る方法としては、例えば、導電性粒子を該組成物中に分散させる方法が挙げられる。上記導電ペーストは、用いる導電性粒子の種類によって、回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とすることができる。
【実施例0129】
以下に、本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、「部」及び「%」は特に断わりのない限り、質量基準である。なお、以下に示す条件で、硬化性樹脂(比較例1においては、単に「樹脂」とする)、及び、前記硬化性樹脂(または樹脂)を用いて得られる硬化物を調製し、更に得られた硬化物について、以下の条件にて測定・評価を行った。
【0130】
<GPC測定(硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)の評価)>
以下の測定装置、測定条件を用いて測定し、以下に示す合成方法で得られた硬化性樹脂のGPCチャートを得た。前記GPCチャートの結果より、硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)を算出した(GPCチャートは図示せず)。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料:実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂の固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0131】
(実施例1)
撹拌装置を備えた反応容器に、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン113.8質量部、水酸化ナトリウム64.0質量部、トリ-n-ブチルベンジルアンモニウムクロライドを0.25質量部、純水2000質量部を仕込み、溶解させ、水相を調製した。塩化メチレン1500質量部に、テレフタル酸ジクロリド30.5質量部、イソフタル酸ジクロリド30.5質量部、メタクリル酸クロリド20.9質量部を溶解させ、有機相を調製した。
水相をあらかじめ撹拌しておき、有機相を水相中に強撹拌下で添加し、20℃で5時間反応させた。この後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離し、有機相を純水で10回洗浄した。この後、有機相から塩化メチレンをエバポレーターで減圧蒸留し、反応により得られたポリマーを乾固させた。得られたポリマーを、減圧乾燥し、下記繰り返し単位を有し、末端にメタクリロイルオキシ基を有する重量平均分子量が3100の硬化性樹脂を得た。
【化21】
【0132】
(実施例2)
上記実施例1における2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンを、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メタン102.5質量部に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法で合成を実施し、下記繰り返し単位を有し、末端にメタクリロイルオキシ基を有する重量平均分子量が2900の硬化性樹脂を得た。
【化22】
【0133】
(実施例3)
上記実施例1における2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンを、2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン141.0質量部に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法で合成を実施し、下記繰り返し単位を有し、末端にメタクリロイルオキシ基を有する重量平均分子量が3200の硬化性樹脂を得た。
【化23】
【0134】
(実施例4)
上記実施例1における2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンを、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシル-6-メチルフェニル)プロパン157.0質量部に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法で合成を実施し、下記繰り返し単位を有し、末端にメタクリロイルオキシ基を有する重量平均分子量が3200の硬化性樹脂を得た。
【化24】
【0135】
(実施例5)
上記実施例1における2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンを、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5,6-トリメチルフェニル)プロパン113.8質量部に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法で合成を実施し、下記繰り返し単位を有し、末端にメタクリロイルオキシ基を有する重量平均分子量が3100の硬化性樹脂を得た。
【化25】
【0136】
(実施例6)
上記実施例1における2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンを、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロヘキサン129.8質量部に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法で合成を実施し、下記繰り返し単位を有し、末端にメタクリロイルオキシ基を有する重量平均分子量が3100の硬化性樹脂を得た。
【化26】
【0137】
(実施例7)
上記実施例1における2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンを、1,4-ビス(2-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-2-プロピル)ベンゼン161.0質量部に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法で合成を実施し、下記繰り返し単位を有し、末端にメタクリロイルオキシ基を有する重量平均分子量が3500の硬化性樹脂を得た。
【化27】
【0138】
(実施例8)
上記実施例1におけるテレフタル酸ジクロリドとイソフタル酸ジクロリドを、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド62.7質量部に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法で合成を実施し、下記繰り返し単位を有し、末端にメタクリロイルオキシ基を有する重量平均分子量が3100の硬化性樹脂を得た。
【化28】
【0139】
(実施例9)
上記実施例1におけるテレフタル酸ジクロリドとイソフタル酸ジクロリドを、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸ジクロリド88.5質量部に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法で合成を実施し、下記繰り返し単位を有し、末端にメタクリロイルオキシ基を有する重量平均分子量が3500の硬化性樹脂を得た。
【化29】

【0140】
(実施例10)
撹拌装置、蒸留塔、減圧装置を備えた反応容器に、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン113.8質量部、炭酸ジフェニル64.2質量部、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド質量部0.01質量部を仕込み、窒素置換した後、140℃で溶解した。30分間撹拌後、内温を180℃に昇温し,内圧100mmHgで30分間反応させ、生成するフェノールを溜去した。つづいて内温を200℃に昇温しつつ、徐々に減圧し、50mmHgで30分間フェノールを溜去しつつ反応させた。さらに220℃、1mmHgまで徐々に昇温、減圧し、同温度、同圧力条件下で30分間反応させた。得られた固形分をメタノールで洗浄した後、減圧乾燥し、中間体化合物を得た。
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けた200mLフラスコに、トルエン20g及び前記中間体化合物22gを混合して約85℃に加熱した。ジメチルアミノピリジン0.19gを添加した。固体がすべて溶解したと思われる時点で、無水メタクリル酸30.6gを徐々に添加した。得られた溶液を連続混合しながら85℃に3時間維持した。次に、溶液を室温に冷却して、1Lのビーカー中マグネチックスターラーで激しく撹拌したメタノール中に滴下した。得られた沈殿物を減圧濾過後乾燥し、下記繰り返し単位を有し、末端にメタクリロイルオキシ基を有する重量平均分子量が2700の硬化性樹脂を得た。
【化30】
【0141】
(実施例11)
上記実施例1におけるメタクリル酸クロリドを、クロロメチルスチレン30.5質量部に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法で合成を実施し、下記繰り返し単位を有し、末端にビニルベンジルエーテル基を有する重量平均分子量が3100の硬化性樹脂を得た。
【化31】
【0142】
(実施例12)
上記実施例1におけるメタクリル酸クロリドを、塩化アリル15.3質量部に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法で合成を実施し、下記繰り返し単位を有し、末端にアリルエーテル基を有する重量平均分子量が3100の硬化性樹脂を得た。
【化32】
【0143】
(比較例1)
撹拌装置を備えた反応容器に、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン113.8質量部、水酸化ナトリウム64.0質量部、トリ-n-ブチルベンジルアンモニウムクロライドを0.25質量部、純水2000質量部を仕込み、溶解させ、水相を調製した。塩化メチレン1500質量部に、テレフタル酸ジクロリド30.5質量部、イソフタル酸ジクロリド30.5質量部を溶解させ、有機相を調製した。
水相をあらかじめ撹拌しておき、有機相を水相中に強撹拌下で添加し、20℃で5時間反応させた。この後、撹拌を停止し、水相と有機相を分離し、有機相を10%酢酸水溶液で洗浄した後、さらに純水で10回洗浄した。この後、有機相から塩化メチレンをエバポレーターで減圧蒸留し、反応により得られたポリマーを乾固させた。得られたポリマーを、減圧乾燥し、下記繰り返し単位を有し、末端にフェニル基を有する重量平均分子量が2800の樹脂を得た。
【化33】
【0144】
(比較例2)
上記実施例1における2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンを、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン91.3質量部に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法で合成を実施し、下記繰り返し単位を有し、末端にメタクリロイルオキシ基を有する重量平均分子量が3000の硬化性樹脂を得た。
【化34】
【0145】
<樹脂フィルム(硬化物)の作製>
実施例、及び、比較例で得られた硬化性樹脂を5cm角の正方形の型枠に入れ、ステンレス板で挟み、真空プレスにセットした。常圧常温下で1.5MPaまで加圧した。次に10torrまで減圧後、熱硬化温度より50℃高い温度まで30分かけて加温した。さらに2時間静置後、室温まで徐冷し、平均膜厚が100μmの均一な樹脂フィルム(硬化物)を得た。
なお、比較例1で得られた樹脂は、その他実施例及び比較例と異なり、自己硬化しないため、エポキシ樹脂(jER828、三菱化学社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)と比較例1で得られた樹脂(末端水酸基含有フェノール樹脂)を、フェノール性水酸基当量/エポキシ当量が1になるように配合し、更に樹脂(樹脂全体の合計)100質量部に対して、硬化触媒である2-エチル-4-メチルイミダゾール0.2質量部を配合したものを使用し、樹脂フィルム(硬化物)を得た。
【0146】
<誘電特性の評価>
得られた樹脂フィルム(硬化物)の面内方向の誘電特性について、キーサイト・テクノロジー社のネットワークアナライザーN5247Aを用いて、スプリットポスト誘電体共振器法により、周波数10GHzについて誘電率、及び、誘電正接を測定した。
前記誘電正接としては、10.0×10-3以下であれば、実用上問題がなく、好ましくは、3.0×10-3以下であり、より好ましくは2.5×10-3以下である。
また、前記誘電率としては、3以下であれば、実用上問題がなく、好ましくは、2.7以下であることが好ましく、より好ましくは、2.5以下である。
【0147】
<耐熱性の評価(ガラス転移温度)>
得られた樹脂フィルム(硬化物)について、パーキンエルマー製DSC装置(Pyris Diamond)を用い、30℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される発熱ピーク温度(熱硬化温度)の観測後、それより50℃高い温度で30分間保持した。ついで、20℃/分の降温条件で30℃まで試料を冷却し、さらに、再度20℃/分の昇温条件で昇温し、樹脂フィルム(硬化物)のガラス転移点温度(Tg)(℃)を測定した。
前記ガラス転移点温度(Tg)としては、100℃以上であれば、実用上問題がなく、好ましくは、150℃以上、より好ましくは、190℃以上である。
【0148】
【表1】
【0149】
<硬化性樹脂組成物の調製>
上記実施例、及び、比較例で得られた硬化性樹脂を用いて、下記表2、及び、表3に記載の配合内容(原料、配合量)の硬化性樹脂組成物、及び、下記に示す条件(温度、時間など)に基づき、評価用の試料(樹脂フィルム(硬化物))を作製し、これらを実施例及び比較例として、評価を行った。表2、及び、表3中に示す硬化性樹脂は、具体的には、実施例1で得られた硬化性樹脂を、硬化性樹脂(A1)、実施例2で得られた硬化性樹脂を、硬化性樹脂(A2)、実施例11で得られた硬化性樹脂を、硬化性樹脂(A3)、比較例2で得られた硬化性樹脂を、硬化性樹脂(A4)とした。
【0150】
<樹脂フィルム(硬化物)の作製>
下記表1、及び、表2に記載の配合内容の硬化性樹脂組成物を10cm角の正方形の型枠に入れ、ステンレス板で挟み、真空プレスにセットした。常圧30℃下で1.5MPaまで加圧した。次に10torrまで減圧後、100℃まで30分かけて加温し、1時間静置した。その後、220℃まで30分かけて加温し、2時間静置した。その後、30℃まで徐冷した。平均膜厚が100μmの均一な樹脂フィルム(硬化物)を作製した。
【0151】
<耐熱性の評価(ガラス転移温度)>
得られた樹脂フィルム(硬化物)について、パーキンエルマー製DSC装置(Pyris Diamond)を用い、30℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される発熱ピーク温度(熱硬化温度)の観測後、それより50℃高い温度で30分間保持した。ついで、20℃/分の降温条件で30℃まで試料を冷却し、さらに、再度20℃/分の昇温条件で昇温し、樹脂フィルム(硬化物)のガラス転移点温度(Tg)(℃)を測定した。なお、前記ガラス転移点温度(Tg)としては、100℃以上であれば、実用上問題がなく、好ましくは、150℃以上、より好ましくは、200℃以上である。
【0152】
<耐熱性の評価(10%重量減少温度)>
得られた樹脂フィルム(硬化物)について、株式会社リガク製TG-DTA装置(TG-8120)を用いて、20mL/分の窒素流下、20℃/分の昇温速度で測定を行い、10%重量減少温度(Td10)を測定した。なお、10%重量減少温度としては、400℃以上であれば、実用上問題がなく、好ましくは、410℃以上であり、より好ましくは、420℃以上である。
【0153】
<誘電特性の評価>
得られた樹脂フィルム(硬化物)の面内方向の誘電特性について、キーサイト・テクノロジー社のネットワークアナライザーN5247Aを用いて、スプリットポスト誘電体共振器法により、周波数10GHzについて誘電率、及び、誘電正接を測定した。なお、前記誘電正接としては、10.0×10-3以下であれば、実用上問題がなく、好ましくは、3.0×10-3以下であり、より好ましくは2.5×10-3以下である。また、前記誘電率としては、3.0以下であれば、実用上問題がなく、好ましくは、2.7以下であることが好ましく、より好ましくは、2.5以下である。
【0154】
<難燃性の評価>
樹脂フィルムを幅13mm、長さ100mmの短冊状に切断して難燃性評価用の試験片とした。UL94、20mm垂直燃焼試験を行い、以下の基準で評価した。なお、難燃性は、V-1であれば、実用上問題がなく、好ましくは、V-0である。
○:UL94 V-0
△:UL94 V-1
×:UL94 V-1未満
【0155】
下記表2、及び、表3中の略記については、以下に詳細を示した。
V5:片山化学工業株式会社V5(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ビニル-10-フォスファフェナントレン-10-オキシド)
OP930:クラリアントジャパン株式会社製OP930(アルミニウムトリス(ジエチルフォスフィネート))
PX-200:大八化学工業株式会社製PX-200(レゾルシノールビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート))剤
DT-4000:ロンザジャパン株式会社製DT-4000(ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂)、
SA9000:SABICジャパン合同会社製SA9000(末端メタクリロイル変性ポリフェニレンエーテル樹脂)
BMI-5100:大和化成工業株式会社製BMI-5100(3,3'-ジメチル-5,5'-ジエチル-4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド)
【0156】
【表2】
【0157】
【表3】
【0158】
上記表1の評価結果より、全ての実施例においては、硬化性樹脂を使用することで得られる硬化物は、耐熱性、及び、低誘電特性の両立を図ることができ、実用上問題のないレベルであることが確認できた。
【0159】
一方、上記表1の評価結果より、比較例3(比較例1の樹脂を使用)においては、エポキシ樹脂と末端水酸基含有フェノール樹脂を使用・反応させたことで、水酸基が生成したため、誘電特性が高くなることが確認された。また、比較例4(比較例2の硬化性樹脂を使用)においては、使用した硬化性樹脂の構造中に、Raに相当する置換基を有していないため、誘電特性が実施例と比較して高くなることが確認された。
【0160】
上記表2、及び、表3の評価結果より、全ての実施例においては、硬化性樹脂を使用することで得られる硬化物は、難燃性、耐熱性、及び、低誘電特性の向上を図ることができ、実用上問題のないレベルであることが確認できた。
【0161】
一方、上記表3の評価結果より、比較例5においては、(A)成分のみを使用し、比較例6においては、(A)成分および(B)成分を使用し、比較例7においては、(A)成分および(C)成分のみを使用し、比較例8においては、所望の構造(Ra及びRb)を有さない(A)成分を使用した硬化性樹脂組成物を用いて硬化物を作製したため、難燃性、耐熱性、及び、低誘電特性の全てを同時に満足するものは得られなかった。特に比較例5及び比較例7では、ラジカル重合開始剤である(B)成分を使用しなかったため、反応性が低下し、低分子量成分が多く残留することにより、高温加熱時の重量減少が認められ、耐熱性に劣ることが確認された。また、比較例5及び比較例6では、難燃剤である(C)成分を配合しなかったため、難燃性に劣ることが確認された。比較例8では、所望の構造(Ra及びRb)を有さない(A)成分を使用したため、反応性基(架橋基)に隣接する位置に、置換基であるRa及びRb(特にRa)が存在せず、前記反応性基(架橋基)由来の極性がRaなどの立体障害により拘束されにくく、誘電特性に劣る結果となったものと推認された。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明の硬化制樹脂組成物を使用し得られる硬化物は、難燃性、耐熱性、及び、低誘電特性に優れることから、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能であり、特に、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板等や、接着剤やレジスト材料に好適に使用可能である。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用可能であり、高耐熱性のプリプレグとして適している。