(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185008
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】転写フィルム、電極保護膜、積層体、静電容量型入力装置、及び、タッチパネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/038 20060101AFI20221206BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20221206BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20221206BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G03F7/038 501
G03F7/027 502
G03F7/004 512
G06F3/041 660
G06F3/041 495
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152820
(22)【出願日】2022-09-26
(62)【分割の表示】P 2019562783の分割
【原出願日】2018-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2017252308
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】霜山 達也
(72)【発明者】
【氏名】袴田 旺弘
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水蒸気透過度(WVTR)が低減された硬化膜が得られ、タック性が小さく、かつ、現像液中での引っ掻き耐性に優れる転写フィルム、上記転写フィルムを用いた電極保護膜、積層体、静電容量型入力装置、及び、タッチパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】転写フィルムは、仮支持体、及び、感光性層を備え、上記感光性層が、下記式A1により表される構成単位と、脂環式構造を有するモノマーに由来する構成単位と、ラジカル重合性基を有する構成単位と、を含む重合体A、ラジカル重合性化合物、及び光重合開始剤を含み、上記式A1により表される構成単位の含有量が、重合体Aの全質量に対して10質量%以上であり、上記脂環式構造を有するモノマーに由来する構成単位の含有量が、重合体Aの全質量に対して15質量%以上であり、上記脂環式構造を有するモノマーのホモポリマーのガラス転移温度が120℃以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮支持体、及び、感光性層を備え、
前記感光性層が、
下記式A1により表される構成単位と、脂環式構造を有するモノマーに由来する構成単位と、ラジカル重合性基を有する構成単位と、を含む重合体A、
ラジカル重合性化合物、及び
光重合開始剤を含み、
前記式A1により表される構成単位の含有量が、重合体Aの全質量に対して10質量%以上であり、
前記脂環式構造を有するモノマーに由来する構成単位の含有量が、重合体Aの全質量に対して15質量%以上であり、
前記脂環式構造を有するモノマーのホモポリマーのガラス転移温度が120℃以上である
転写フィルム。
【化1】
式A1中、Arはフェニル基又はナフチル基を表し、R
A1は水素原子又はアルキル基を表す。
【請求項2】
前記重合体Aが、酸基を有する構成単位を更に含む、請求項1に記載の転写フィルム。
【請求項3】
前記感光性層が、熱架橋性化合物を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の転写フィルム。
【請求項4】
前記熱架橋性化合物における熱架橋性基が、ブロックイソシアネート基である、請求項3に記載の転写フィルム。
【請求項5】
前記熱架橋性化合物が、ラジカル重合性基を有する、請求項3又は請求項4に記載の転写フィルム。
【請求項6】
タッチパネル用保護膜の形成に用いられる請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の転写フィルムから、前記仮支持体が取り除かれた、電極保護膜。
【請求項8】
静電容量型入力装置の電極を含む基板上に、
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の転写フィルムから仮支持体を除いた後の感光性層を有する
積層体。
【請求項9】
請求項7に記載の電極保護膜、又は、請求項8に記載の積層体を有する静電容量型入力装置。
【請求項10】
基板上にタッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方が配置された構造を有するタッチパネル用基板を準備することと、
前記タッチパネル用基板の前記タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方が配置された側の面の上に、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の転写フィルムを用いて感光性層を形成することと、
前記タッチパネル用基板上に形成された前記感光性層をパターン露光することと、
パターン露光された前記感光性層を現像することにより、前記タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方の少なくとも一部を保護するタッチパネル用保護膜を得ることと、を含む
タッチパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転写フィルム、電極保護膜、積層体、静電容量型入力装置、及び、タッチパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、感光性組成物、及び、感光性組成物を用いた感光性層を備えた転写フィルム(「感光性フィルム」とも呼ばれている)が知られている。
特許文献1には、樹脂と、下記一般式(1)に示す構造を含む重合性化合物と、光重合開始剤と、を含む感光性樹脂組成物が記載されている。
【0003】
【0004】
一般式(1)に示す構造は、*の位置で他の構造と結合して重合性化合物をなす。また、一般式(1)において、R0は水素原子又はメチル基を表し、R1は水素原子、一価の有機基又は上記他の構造と結合して-R1CHX-を含む環構造を形成する二価の有機基を表す。Xは-O-、-NR2-又は-S-を表す。R2は水素原子、一価の有機基又は上記他の構造と結合して-R2N-を含む環構造を形成する二価の有機基を表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
転写フィルムにおける感光性層を硬化させた硬化膜に対し、水蒸気透過度(WVTR;Water Vapor Transmission Rate)の低減が求められる場合がある。例えば、タッチパネルに含まれるタッチパネル用保護膜を、感光性層を硬化させた硬化膜として形成する場合には、形成されるタッチパネル用保護膜(即ち、硬化膜)に対し、WVTRの低減が求められる。
この点に関し、特許文献1に記載の感光性組成物を用いた感光性層を硬化させた硬化膜においては、WVTRの低減に改善の余地がある。
また、転写フィルムにおける感光性層に対し、タック性の低減が求められる場合がある。感光性層のタック性が大きいと、仮支持体の剥離が困難となる場合がある。
【0007】
また、転写フィルムにおける感光性層は、基材へ転写した後に、露光及び現像することによりパターン状の硬化膜が形成される。ここで、上記現像時において、例えば感光性層と搬送ロールとの接触等により、現像中の感光性層の表面に引っ掻き傷が発生してしまう場合がある。上記引っ掻き傷の発生を抑制することができれば、面状が優れた硬化膜が得られ、硬化膜の光学特性の面内均一性が良好になるため、好ましいと考えられる。
本開示において、現像中に上記引っ掻き傷が発生しにくいことを、「現像液中での引っ掻き耐性に優れる」ともいう。
【0008】
本開示に係る実施形態は、水蒸気透過度(WVTR)が低減された硬化膜が得られ、タック性が小さく、かつ、現像液中での引っ掻き耐性に優れる転写フィルム、上記転写フィルムを用いた電極保護膜、積層体、静電容量型入力装置、及び、タッチパネルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 仮支持体、及び、感光性層を備え、
上記感光性層が、
下記式A1により表される構成単位と、脂環式構造を有するモノマーに由来する構成単位と、ラジカル重合性基を有する構成単位と、を含む重合体A、
ラジカル重合性化合物、及び
光重合開始剤を含み、
上記式A1により表される構成単位の含有量が、重合体Aの全質量に対して10質量%以上であり、
上記脂環式構造を有するモノマーに由来する構成単位の含有量が、重合体Aの全質量に対して15質量%以上であり、
上記脂環式構造を有するモノマーのホモポリマーのガラス転移温度が120℃以上である
転写フィルム。
【0010】
【0011】
式A1中、Arはフェニル基又はナフチル基を表し、RA1は水素原子又はアルキル基を表す。
<2> 上記重合体Aが、酸基を有する構成単位を更に含む、上記<1>に記載の転写フィルム。
<3> 上記感光性層が、熱架橋性化合物を更に含む、上記<1>又は<2>に記載の転写フィルム。
<4> 上記熱架橋性化合物における熱架橋性基が、ブロックイソシアネート基である、上記<3>に記載の転写フィルム。
<5> 上記熱架橋性化合物が、ラジカル重合性基を有する、上記<3>又は<4>に記載の転写フィルム。
<6> タッチパネル用保護膜の形成に用いられる上記<1>~<5>のいずれか1つに記載の転写フィルム。
<7> 上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の転写フィルムから、上記仮支持体が取り除かれた、電極保護膜。
<8> 静電容量型入力装置の電極を含む基板上に、
上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の転写フィルムから仮支持体を除いた後の感光性層を有する
積層体。
<9> 上記<7>に記載の電極保護膜、又は、上記<8>に記載の積層体を有する静電容量型入力装置。
<10> 基板上にタッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方が配置された構造を有するタッチパネル用基板を準備することと、
上記タッチパネル用基板の上記タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方が配置された側の面の上に、上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の転写フィルムを用いて感光性層を形成することと、
上記タッチパネル用基板上に形成された上記感光性層をパターン露光することと、
パターン露光された上記感光性層を現像することにより、上記タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方の少なくとも一部を保護するタッチパネル用保護膜を得ることと、を含む
タッチパネルの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係る実施形態によれば、水蒸気透過度(WVTR)が低減された硬化膜が得られ、タック性が小さく、かつ、現像液中での引っ掻き耐性に優れる転写フィルム、上記転写フィルムを用いた電極保護膜、積層体、静電容量型入力装置、及び、タッチパネルの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る転写フィルムの一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るタッチパネルの第1具体例を示す概略断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るタッチパネルの第2具体例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
本明細書における基(原子団)の表記について、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。また、本明細書中における「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、感光性層等の層中の各成分の量は、感光性層等の層に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、感光性層等の層中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を包含する概念である。
【0015】
本明細書において、「光」は、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線といった活性エネルギー線を包含する概念である。
本明細書における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、及びEUV(Extreme ultraviolet)光等による露光のみならず、電子線、及びイオンビーム等の粒子線による露光も含む。
本明細書において、「透明」とは、23℃における波長400nm~800nmにおける最低透過率が80%以上(好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上)であることを意味する。
また、本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0016】
(転写フィルム)
本開示に係る転写フィルムは、仮支持体、及び、感光性層を備え、上記感光性層が、上記式A1により表される構成単位(以下、「構成単位A1」ともいう。)と、脂環式構造を有するモノマーに由来する構成単位(以下、「構成単位B1」ともいう。)と、ラジカル重合性基を有する構成単位(以下、「構成単位C1」ともいう。)と、を含む重合体A、ラジカル重合性化合物、及び光重合開始剤を含み、上記式A1により表される構成単位の含有量が、重合体Aの全質量に対して10質量%以上であり、上記脂環式構造を有するモノマーに由来する構成単位の含有量が、重合体Aの全質量に対して15質量%以上であり、上記脂環式構造を有するモノマーのホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が120℃以上である。
【0017】
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記構成を採用することにより、水蒸気透過度(WVTR)が低減された硬化膜が得られ、タック性が小さく、かつ、現像液中での引っ掻き耐性に優れる転写フィルムが得られることを見出した。
上記効果が得られる機序については必ずしも明確ではないが、以下のように推測している。
重合体Aにおける構成単位A1の含有量が、重合体Aの全質量に対して10質量%以上であり、かつ、構成単位B1の含有量が、重合体Aの全質量に対して15質量%以上であることにより、硬化膜が疎水化するため、WVTRが低減されると考えられる。
また、重合体Aが構成単位C1を有することにより、感光性層の効果により得られる硬化膜が緻密化するため、WVTRが低減されると考えられる。
更に、重合体Aにおける構成単位B1の含有量が、重合体Aの全質量に対して15質量%以上であり、かつ、構成単位B1を形成する脂環式構造を有するモノマーのホモポリマーのTgが120℃以上であることにより、感光性層の流動性が低下し、感光性層表面のタック性に優れると考えられる。
なお、本開示において、脂環式構造を有するモノマーに由来する構成単位(構成単位B1)における脂環式構造を有するモノマーを、「構成単位B1を形成する脂環式構造を有するモノマー」とも称する。
加えて、重合体A中の構成単位C1が、他の構成単位C1又はラジカル重合性化合物等と架橋構造を形成することにより、現像時における感光性層の表面の硬度が向上し、現像液中での引っ掻き耐性に優れると考えられる。
【0018】
本開示に係る転写フィルムは、基材上への硬化膜の形成に好適である。本開示に係る転写フィルムを用いて基材上に硬化膜を形成する場合には、例えば、硬化膜を形成しようとする基材に対し、本開示に係る転写フィルムの感光性層を転写し、上記基材上に転写された感光性層に対し、露光及び現像等の処理を施すことにより、基材上に硬化膜を形成する。
本開示に係る転写フィルムによれば、WVTRが低減された硬化膜を形成できるという効果が奏される。
従って、本開示に係る転写フィルムは、硬化膜として、タッチパネル用保護膜を形成する用途に特に好適である。
以下、本開示に係る転写フィルムを構成する各要件について説明する。
【0019】
<仮支持体>
本開示の転写フィルムは、仮支持体を備える。
仮支持体は、フィルムであることが好ましく、樹脂フィルムであることがより好ましい。
仮支持体としては、可撓性を有し、かつ、加圧下、又は、加圧及び加熱下において、著しい変形、収縮又は伸びを生じないフィルムを用いることができる。
このようなフィルムとして、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリイミドフィルム、及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。
中でも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0020】
仮支持体の厚みは特に制限はないが、5μm~200μmであることが好ましい。仮支持体の厚みは、取扱い易さ及び汎用性の観点から、10μm~150μmが特に好ましい。
【0021】
<感光性層>
本開示に係る転写フィルムは感光性層を備える。
本開示における感光性層は、構成単位A1と、構成単位B1と、構成単位C1と、を含む重合体A、ラジカル重合性化合物、及び、光重合開始剤を含み、構成単位A1の含有量が、重合体Aの全質量に対して10質量%以上であり、構成単位B1の含有量が、重合体Aの全質量に対して15質量%以上であり、構成単位B1を形成する脂環式構造を有するモノマーのホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が120℃以上である。
本開示における感光性層は、露光により硬化する、いわゆるネガ型感光性層であることが好ましい。
また、本開示における感光性層は、透明であることが好ましい。
【0022】
〔構成単位A1〕
本開示に用いられる重合体Aは、下記式A1により表される構成単位(構成単位A1)を含む。
【0023】
【0024】
式A1中、Arはフェニル基又はナフチル基を表し、RA1は水素原子又はアルキル基を表す。
式A1中、Arは置換基を有していてもよいが、無置換のフェニル基又は無置換のナフチル基が好ましい。フェニル基又はナフチル基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基等が挙げられる。また、フェニル基又はナフチル基は置換基を複数有していてもよい。
式A1中、RA1は水素原子であることが好ましい。RA1がアルキル基を表す場合、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0025】
式A1により表される構成単位は、例えば、重合体Aの製造時に使用される単量体として、下記式A2により表される単量体を用いることにより、重合体A中に導入される。
【0026】
【0027】
式A2中、Ar及びRA1はそれぞれ式A1中のAr及びRA1と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0028】
式A2により表される単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、4-ヒドロキシスチレン、4-ブロモスチレン、4-メトキシスチレン等が挙げられ、スチレンが特に好ましい。
【0029】
式A1により表される構成単位の具体例を下記に示すが、式A1により表される構成単位はこれに限定されるものではない。
【0030】
【0031】
WVTRを低減する観点から、重合体Aの全質量に対する、式A1により表される構成単位の含有量は、10質量%以上であり、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。上限は特に制限は無いが、50質量%以下とすることができる。
重合体Aは、式A1により表される構成単位を複数種含有してもよい。その場合、上記含有量は式A1により表される複数の構成単位の含有量の合計値である。
【0032】
〔構成単位B1〕
本開示における重合体Aは、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度が120℃以上であるモノマーであって、脂環式構造を有するモノマーに由来する構成単位(構成単位B1)を含む。
構成単位B1を形成する脂環式構造は、特に限定されず、炭化水素環構造であってもヘテロ原子を含む複素環式構造であってもよいが、ヘテロ原子を含まない炭化水素環構造が好ましい。ヘテロ原子を含む場合のヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられる。
上記脂環式構造に更に芳香環構造が結合していてもよく、脂環式構造は、縮合多環式構造であってもよい。
構成単位B1を形成する脂環式構造は、5員環~30員環が好ましく、5員環~20員環がより好ましい。
また、構成単位B1は複数の脂環式構造を有していてもよい。
脂環式構造を有し、Tgが120℃以上であり、かつ、ラジカル重合性基を有する構成単位は、構成単位B1に該当し、後述する構成単位C1には該当しないものとする。
【0033】
-脂環式構造を有するモノマー-
構成単位B1を形成する脂環式構造を有するモノマーとしては、ホモポリマーとしたときのTgが120℃以上であれば特に限定されないが、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物、又は、N-置換マレイミド化合物等が挙げられる。
構成単位B1を形成する脂環式構造を有するモノマーとしては、例えば、ジシクロペンタニルメタクリレート(Tg:175℃)、ジシクロペンタニルアクリレート(Tg:120℃)、イソボルニルメタクリレート(Tg:173℃)、1-アダマンチルメタクリレート(Tg:250℃)、1-アダマンチルアクリレート(Tg:153℃)、N-フェニルマレイミド(Tg:276℃)等に由来する構成単位であることが好ましい。重合体Aが上記化合物に由来する構成単位を含むことにより、仮支持体上の感光性層の表面のタック性(粘着性)が低減され、感光性層と接触するロールとの摩擦力が低下するため、感光性層表面のシワの発生が抑制できる。
上記具体例中、Tgの値は各モノマーをホモポリマーとした場合のTgの値である。
また、構成単位B1を形成する脂環式構造を有するモノマーのホモポリマーのTgは、120℃以上であり、150℃以上であることが好ましく、170℃以上であることがより好ましい。Tgが上記範囲であれば、感光性層の表面のタック性を低減できる。ガラス転移温度の上限は、特に限定されるものではないが、250℃以下であることが好ましい。
上記ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は、構成単位B1を形成する脂環式構造を有するモノマーの重量平均分子量10,000以上のホモポリマーを製造した後に、JIS K7121規定に記載の方法に従い、示差走査熱量計(DSC)等を用いて測定することができる。なお、分子量によってガラス転移温度(Tg)が変化するが、重量平均分子量10,000以上の場合には、分子量によるTgの変動は無視できる程度である。
【0034】
構成単位B1の含有量は、重合体Aの全質量に対して15質量%以上であり、15質量%以上70質量%以下であることが好ましく、20質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、25質量%以上50質量%以下であることが更に好ましい。
構成単位B1の含有量が15質量%以上であれば、感光性層表面のタック性が小さくなり、仮支持体上に感光性層を形成した転写フィルムの搬送時に感光性層表面にシワが発生しにくくなる。また、構成単位B1の含有量が70質量%以下であれば、転写フィルムを基材に転写するときの転写性が向上し、硬化膜の膜質が脆くなることが防がれ、曲げに対する耐性が向上するため好ましい。
重合体Aは、式B1により表される構成単位を複数種含有してもよい。その場合、上記含有量は式B1により表される複数の構成単位の含有量の合計値である。
【0035】
〔構成単位C1〕
本開示における重合体Aは、ラジカル重合性基を含む構成単位(構成単位C1)を含むことが好ましい。
ラジカル重合性基としては、特に限定されないが、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロイル基又はビニルフェニル基がより好ましく、(メタ)アクリロキシ基が更に好ましい。
【0036】
構成単位C1としては、下記式C2で表される単位(以下、「構成単位C2」ともいう)が好ましい。
【0037】
【0038】
式C2中、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Lは、2価の連結基を表す。
【0039】
R2及びR3で表されるアルキル基の炭素数としては、それぞれ独立に、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0040】
Lで表される2価の連結基としては、カルボニル基(即ち、-C(=O)-基)、酸素原子(即ち、-O-基)、アルキレン基、及びアリーレン基からなる群から選ばれる1つの基、又は、上記群から選ばれる2つ以上の基が連結されて形成される基が好ましい。
アルキレン基又はアリーレン基は、それぞれ、置換基(例えば、1級水酸基以外の水酸基、ハロゲン原子、等)によって置換されていてもよい。
Lで表される2価の連結基は、分岐構造を有していてもよい。
【0041】
Lで表される2価の連結基の炭素数としては、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、2~10が更に好ましい。
【0042】
Lで表される2価の連結基としては、下記式L-1~式L-6のいずれかにより表される基が特に好ましい。
【0043】
【0044】
上記の各基において、*1は、式C2中の主鎖に含まれる炭素原子との結合位置を表し、*2は、式C2において二重結合を形成している炭素原子との結合位置を表す。
また、式L-5において、n及びmは、それぞれ独立に、1~6の整数を表す。
【0045】
構成単位C1としては、(メタ)アクリル酸単位に対してエポキシ基含有モノマーが付加された構成単位、水酸基含有モノマー単位に対してイソシアネート基含有モノマーが付加された構成単位、等が挙げられる。
エポキシ基含有モノマーとしては、総炭素数が5~24であるエポキシ基含有(メタ)アクリレートが好ましく、総炭素数が5~12であるエポキシ基含有(メタ)アクリレートがより好ましく、グリシジル(メタ)アクリレート又は3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
水酸基含有モノマー単位を形成するための水酸基含有モノマーとしては、総炭素数が4~24であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、総炭素数が4~12であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0046】
ここで、「(メタ)アクリル酸単位」とは、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を意味する。
同様に、本明細書中において、モノマー名の直後に「単位」の語を付した用語(例えば「水酸基含有モノマー単位」)は、そのモノマー(例えば水酸基含有モノマー)に由来する構成単位を意味する。
【0047】
構成単位C1として、より具体的には、
(メタ)アクリル酸単位に対してグリシジル(メタ)アクリレートが付加された構成単位、
(メタ)アクリル酸単位に対して(メタ)アクリル酸が付加された構成単位、
(メタ)アクリル酸単位に対して3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートが付加された構成単位、
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート単位に対して2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレートが付加された構成単位、
ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート単位に対して2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレートが付加された構成単位、
ヒドロキシスチレン単位に対して2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレートが付加された構成単位、
等が挙げられる。
【0048】
構成単位C1としては、
(メタ)アクリル酸単位に対して(メタ)アクリル酸グリシジルが付加された構成単位又は(メタ)アクリル酸単位に対して(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチルが付加された構成単位が更に好ましく、
メタクリル酸単位に対してメタクリル酸グリシジルが付加された構成単位又はメタクリル酸単位に対してメタクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチルが付加された構成単位が特に好ましい。
【0049】
硬化膜のWVTRの低減とタック性の低減とを両立する観点から、重合体Aの全質量に対する、構成単位C1の含有量は、5質量%~60質量%であることが好ましく、15質量%~50質量%であることがより好ましい。
重合体Aは、構成単位C1を複数種含有してもよい。その場合、上記含有量は複数の構成単位C1の含有量の合計値である。
【0050】
〔酸基を有する構成単位〕
重合体Aは、酸基を有する構成単位(以下、「構成単位D1」ともいう。)を含むことが好ましい。
酸基とは、解離性のプロトンを有する置換基であり、例えば、カルボキシ基、ホスホニル基、ホスホリル基、スルホ基、ホウ酸基といった酸性を示す基を意味する。これらの中でも、酸基としては、カルボキシ基、スルホ基又はホスホニル基が好ましく、カルボキシ基がより好ましい。
【0051】
酸基を有する構成単位は、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート又は2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等の酸基を有する単量体に由来する構成単位であることが好ましく、メタクリル酸又はアクリル酸に由来する構成単位であることがより好ましく、タック性を小さくする観点からメタクリル酸に由来する構成単位であることが更に好ましい。
【0052】
重合体Aの全質量に対する、酸基を有する構成単位の含有量は、現像性及び現像液中での引っ掻き耐性の観点から、5質量%以上30質量%以下とすることが好ましく、10質量%以上25質量%以下がより好ましい。
重合体Aは、酸基を有する構成単位を複数種含有してもよい。その場合、上記含有量は酸基を有する複数の構成単位の含有量の合計値である。
【0053】
また、重合体Aが酸基を有する構成単位を含む場合、重合体Aの酸価としては、60mgKOH/g以上が好ましく、60mgKOH/g~200mgKOH/gがより好ましく、60mgKOH/g~150mgKOH/gが更に好ましく、60mgKOH/g~110mgKOH/gが特に好ましい。
酸価としては、特開2004-149806号公報の段落0063又は特開2012-211228号公報の段落0070等に記載の計算方法により算出した理論酸価の値を用いることができる。
【0054】
〔その他の構成単位〕
重合体Aは、上述した構成単位以外のその他の構成単位を含んでいてもよい。
その他の構成単位は、ラジカル重合性基、及び、酸基のいずれも有しないアルキル(メタ)アクリレート単位が挙げられる。
その他の構成単位としてのアルキル(メタ)アクリレート単位の総炭素数は、好ましくは4~24であり、より好ましくは4~20である。
アルキル(メタ)アクリレート単位におけるアルキル部分は、環状構造及び分岐構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有していてもよい。
【0055】
<重合体Aの特性>
〔重合体Aの重量平均分子量〕
重合体Aの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、現像性、硬化膜のWVTRをより低減させる観点、及び、タック性を小さくする観点から、10,000~200,000が好ましく、10,000~100,000がより好ましく、10,000~60,000が特に好ましい。
本開示において、重量平均分子量(Mw)の測定は、下記の条件にて、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)により行うことができる。検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F-40」、「F-20」、「F-4」、「F-1」、「A-5000」、「A-2500」、「A-1000」、「n-プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
-条件-
・GPC:HLC(登録商標)-8020GPC(東ソー(株)製)
・カラム:TSKgel(登録商標)、Super MultiporeHZ-H(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本
・溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
・試料濃度:0.45質量%
・流速:0.35ml/min
・サンプル注入量:10μl
・測定温度:40℃
・検出器:示差屈折計(RI)
【0056】
〔含有量〕
本開示における感光性層における重合体Aの含有量には特に制限はない。
重合体Aの含有量は、感光性層の全質量に対し、10質量%~95質量%であることが好ましく、20質量%~80質量%であることがより好ましく、30質量%~70質量%であることが特に好ましい。
【0057】
本開示における感光性層は、重合体A以外のその他のポリマー(例えば、アクリル樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂等)を含有していてもよい。
本開示における感光性層において、含有されるポリマーの総含有量に対する重合体Aの含有量は、60質量%~100質量%が好ましく、80質量%~100質量%がより好ましく、90質量%~100質量%が特に好ましい。
【0058】
〔具体例〕
本開示において用いられる重合体Aの具体例としては、後述する実施例における重合体P-1~重合体P-17が挙げられる。
【0059】
<ラジカル重合開始剤>
本開示における感光性層は、ラジカル重合開始剤を少なくとも1種含有する。
ラジカル重合開始剤としては特に制限はなく、公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。
ラジカル重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、
オキシムエステル構造を有するラジカル重合開始剤(以下、「オキシム系重合開始剤」ともいう)、
α-アミノアルキルフェノン構造を有するラジカル重合開始剤(以下、「α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤」ともいう)、
α-ヒドロキシアルキルフェノン構造を有するラジカル重合開始剤(以下、「α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤」ともいう)、
アシルフォスフィンオキサイド構造を有するラジカル重合開始剤(以下、「アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤」ともいう)、
等が挙げられる。
【0060】
ラジカル重合開始剤は、オキシム系重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤、及びα-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、オキシム系重合開始剤及びα-アミノアルキルフェノン系重合開始剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0061】
また、ラジカル重合開始剤としては、例えば、特開2011-95716号公報の段落0031~0042、特開2015-014783号公報の段落0064~0081に記載された重合開始剤を用いてもよい。
【0062】
ラジカル重合開始剤の市販品としては、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)](商品名:IRGACURE(登録商標) OXE-01、BASF社製)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(商品名:IRGACURE OXE-02、BASF社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(商品名:IRGACURE 379EG、BASF社製)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名:IRGACURE 907、BASF社製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(商品名:IRGACURE 127、BASF社製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(商品名:IRGACURE 369、BASF社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名:IRGACURE 1173、BASF社製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:IRGACURE 184、BASF社製)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名:IRGACURE 651、BASF社製)、オキシムエステル系の(商品名:Lunar 6、DKSHジャパン(株)製)などが挙げられる。
【0063】
〔含有量〕
本開示における感光性層におけるラジカル重合開始剤の含有量には特に制限はない。
本開示における感光性層は、ラジカル重合開始剤を1種単独で含んでもよいし、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合開始剤の含有量は、感光性層の全質量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が更に好ましい。
また、ラジカル重合開始剤の含有量は、感光性層の全質量に対し、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0064】
<ラジカル重合性化合物>
本開示における感光性層は、硬化膜の強度をより向上させる観点から、ラジカル重合性化合物を少なくとも1種含有する。
ラジカル重合性化合物は、2官能以上のラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。
【0065】
ここで、ラジカル重合性化合物とは、一分子中にラジカル重合性基を有するモノマーを意味し、2官能以上のラジカル重合性化合物とは、一分子中にラジカル重合性基を2つ以上有するモノマーを意味する。
ラジカル重合性基を有する化合物のうち、重合体Aに該当するものは、本開示でいう「ラジカル重合性化合物」には該当しないものとする。
ラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和基(即ち、エチレン性二重結合を有する基)が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリレートが好ましい。
【0066】
本開示における感光性層は、硬化膜のWVTRの低減を向上する観点から、2官能のラジカル重合性化合物(好ましくは、2官能の(メタ)アクリレート)と、3官能以上のラジカル重合性化合物(好ましくは、3官能以上の(メタ)アクリレート)と、を含有することが特に好ましい。
また、本開示における感光性層が3官能以上の(メタ)アクリレートを含有することにより、得られる硬化膜における架橋密度が上昇し、よりWVTRが低減されやすくなる。
【0067】
〔環構造を有する2官能のラジカル重合性化合物〕
本開示における感光性層は、硬化膜のWVTRを低減する観点から、上記2官能以上のラジカル重合性化合物として、環構造を有する2官能のラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。
環構造としては、脂環式構造であっても芳香環式構造であってもよいが、脂環式構造であることが好ましい。
脂環式構造を有する2官能のラジカル重合性化合物としては、トリシクロデカンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられ、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、芳香環式構造を有する2官能のラジカル重合性化合物としては、ビスフェノール構造(ビスフェノールA構造、ビスフェノールF構造等)を有する2官能のラジカル重合性化合物が挙げられ、ビスフェノール構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物(例えば、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等)が好ましい。
脂環式構造を有する2官能のラジカル重合性化合物としては、市販品を使用してもよく、市販品としては、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(A-DCP 新中村化学工業(株)製)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(DCP 新中村化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0068】
〔その他の2官能のラジカル重合性化合物〕
その他の2官能のラジカル重合性化合物としては特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。
その他の2官能のラジカル重合性化合物としては、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、等のアルキレンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
その他の2官能のラジカル重合性化合物としては、市販品を使用してもよく、市販品としては、1,9-ノナンジオールジアクリレート(A-NOD-N 新中村化学工業(株)製)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(A-HD-N 新中村化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0069】
〔3官能以上のラジカル重合性化合物〕
3官能以上のラジカル重合性化合物としては特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。
3官能以上のラジカル重合性化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート骨格の(メタ)アクリレート化合物、等が挙げられる。
【0070】
ここで、「(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、及びヘキサ(メタ)アクリレートを包含する概念であり、「(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレートを包含する概念である。
【0071】
ラジカル重合性化合物としては、
(メタ)アクリレート化合物のカプロラクトン変性化合物(日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標) DPCA-20、新中村化学工業(株)製A-9300-1CL等)、(メタ)アクリレート化合物のアルキレンオキサイド変性化合物(日本化薬(株)製KAYARAD RP-1040、新中村化学工業(株)製ATM-35E、A-9300、ダイセル・オルネクス社製EBECRYL(登録商標) 135等)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業(株)製A-GLY-9E等)、等も挙げられる。
【0072】
〔ウレタン(メタ)アクリレート〕
ラジカル重合性化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート(好ましくは3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート)も挙げられる。
3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、8UX-015A(大成ファインケミカル(株)製)、UA-32P(新中村化学工業(株)製)、UA-1100H(新中村化学工業(株)製)、等が挙げられる。
【0073】
〔酸基を有するラジカル重合性化合物〕
また、ラジカル重合性化合物は、アルカリ可溶性向上(即ち現像性向上)の観点から、酸基を有するラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。
酸基としては、例えば、リン酸基、スルホン酸基、及びカルボキシ基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
酸基を有するラジカル重合性化合物としては、例えば、酸基を有する3~4官能のラジカル重合性化合物(ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート[PETA]骨格にカルボン酸基を導入したもの(酸価=80mgKOH/g~120mgKOH/g))、酸基を有する5~6官能のラジカル重合性化合物(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート[DPHA]骨格にカルボン酸基を導入したもの(酸価=25~70mgKOH/g))、等が挙げられる。
これら酸基を有する3官能以上のラジカル重合性化合物は、必要に応じ、酸基を有する2官能のラジカル重合性化合物と併用してもよい。
【0074】
酸基を有するラジカル重合性化合物としては、カルボキシ基を含有する2官能以上のラジカル重合性化合物及びそのカルボン酸無水物よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
カルボキシ基を含有する2官能以上のラジカル重合性化合物は特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択できる。
カルボキシ基を含有する2官能以上のラジカル重合性化合物としては、例えば、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成(株)製)、アロニックスM-520(東亞合成(株)製)、又はアロニックスM-510(東亞合成(株)製)を好ましく用いることができる。
【0075】
酸基を有するラジカル重合性化合物は、特開2004-239942号公報の段落0025~0030に記載の酸基を有する重合性化合物であることも好ましい。この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0076】
〔分子量〕
本開示における感光性層に含有され得るラジカル重合性化合物の分子量(分布を有する場合は、重量平均分子量)としては、200~3000が好ましく、250~2600がより好ましく、280~2200が更に好ましい。
本開示における感光性層に含有されるすべてのラジカル重合性化合物のうち、分子量が最小のものの分子量は、250以上が好ましく、280以上がより好ましく、300以上が更に好ましい。
本開示における感光性層に含有されるすべてのラジカル重合性化合物のうち、分子量300以下のラジカル重合性化合物の含有量の割合は、感光性層に含有されるすべての重合性化合物に対して、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0077】
〔含有量〕
ラジカル重合性化合物の含有量は、感光性層の全質量に対し、1質量%~70質量%が好ましく、10質量%~70質量%がより好ましく、20質量%~60質量%が更に好ましく、20質量%~50質量%が特に好ましい。
【0078】
また、本開示に係る感光性層が2官能のラジカル重合性化合物と3官能以上のラジカル重合性化合物とを含有する場合、2官能のラジカル重合性化合物の含有量は、感光性層に含まれる全てのラジカル重合性化合物に対し、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~85質量%がより好ましく、30質量%~80質量%が更に好ましい。
また、この場合、3官能以上のラジカル重合性化合物の含有量は、感光性層に含まれる全てのラジカル重合性化合物に対し、10質量%~90質量%が好ましく、15質量%~80質量%がより好ましく、20質量%~70質量%が更に好ましい。
また、この場合、2官能以上のラジカル重合性化合物の含有量は、2官能のラジカル重合性化合物と3官能以上のラジカル重合性化合物との総含有量に対し、50質量%以上100質量%未満であることが好ましく、60質量%~95質量%であることがより好ましく、70質量%~95質量%であることが特に好ましい。
【0079】
また、本開示における感光性層が2官能以上のラジカル重合性化合物を含有する場合、この感光性層は、更に単官能のラジカル重合性化合物を含有してもよい。
但し、本開示における感光性層が2官能以上のラジカル重合性化合物を含有する場合、感光性層に含有されるラジカル重合性化合物において、2官能以上のラジカル重合性化合物が主成分であることが好ましい。
具体的には、本開示における感光性層が2官能以上のラジカル重合性化合物を含有する場合において、2官能以上のラジカル重合性化合物の含有量は、感光性層に含有されるラジカル重合性化合物の総含有量に対し、60質量%~100質量%が好ましく、80質量%~100質量%がより好ましく、90質量%~100質量%が特に好ましい。
【0080】
また、本開示に係る感光性層が、酸基を有するラジカル重合性化合物(好ましくは、カルボキシ基を含有する2官能以上のラジカル重合性化合物又はそのカルボン酸無水物)を含有する場合、酸基を有するラジカル重合性化合物の含有量は、感光性層の全質量に対し、1質量%~50質量%が好ましく、1質量%~20質量%がより好ましく、1質量%~10質量%が更に好ましい。
【0081】
本開示における感光性層において、重合体Aに対するラジカル重合性化合物の含有質量比(ラジカル重合性化合物/重合体A)は、1.5以下が好ましく、0.1~1.5がより好ましく、0.5~1.2が更に好ましく、0.7~1.0が更に好ましい。
【0082】
<熱架橋性化合物>
本開示における感光性層は、熱架橋性化合物を更に含むことが好ましい。
熱架橋性化合物とは、熱架橋性基を少なくとも1つ有する化合物である。
本開示において、熱架橋性基とは、ラジカル重合性基以外の、熱の作用により重合体Aやその他の成分(熱架橋性化合物どうしの結合も含む)との結合を生じる基を意味し、より好ましくは、重合体Aとの結合を生じる基である。
本開示における感光性層が熱架橋性化合物を含有する場合には、上記感光性層は、感光性(即ち、光硬化性)だけでなく、更に、熱硬化性をも有する。
本開示における感光性層が光硬化性及び熱硬化性の両方を有する場合には、光硬化により強度に優れた硬化膜を形成でき、硬化膜形成後の熱硬化により、硬化膜の強度を更に向上させ、かつ、硬化膜のWVTRをより低減させることができる。
【0083】
熱架橋性化合物の熱架橋性基は、硬化膜のWVTRをより低減させる観点から、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、エポキシ基、ケテン基、ブロック化イソシアネート基、及びブロック化ケテン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、エポキシ基又はブロックイソシアネート基がより好ましく、ブロックイソシアネート基が更に好ましい。
即ち、熱架橋性化合物は、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、ケテン基、ブロック化イソシアネート基、及びブロック化ケテン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種である熱架橋性基を、一分子中に1つ以上有することが特に好ましい。一分子中の熱架橋性基の数の上限には特に制限は無いが、一分子中の熱架橋性基の数は、例えば30以下とすることができ、10以下がより好ましい。
【0084】
熱架橋性基を有する化合物は、一分子中に親水性基を有していてもよい。
熱架橋性を有する化合物が一分子中に親水性基を有することにより、現像性が向上する。
一分子中に親水性基を有する熱架橋性化合物としては特に制限されず、公知の化合物を用いることができる。
一分子中に親水性基を有する熱架橋性化合物の合成方法も特に制限されない。
一分子中に親水性基を有する熱架橋性化合物における親水性基として、ノニオン型親水性基又はカチオン型親水性基が好ましい。
ノニオン型親水性基は特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、エチレングリコール、及びジエチレングリコールのうちいずれかのアルコールの水酸基に、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加した構造の基が挙げられる。
【0085】
熱架橋性を有する化合物は、熱により酸基又は水酸基と反応する化合物であってもよい。
熱により酸基や水酸基と反応する化合物である熱架橋性基を有する化合物は、加熱により、系内に存在する酸基や水酸基(例えば、その他の重合体としての(メタ)アクリル樹脂中の酸基や水酸基)と反応する。これにより、系内の極性が減少するため親水性が低下し、WVTRがより低減される。
熱により酸基や水酸基と反応する化合物である熱架橋性基を有する化合物としては、熱反応性基として、ブロック剤により一時的に不活性化されている基(例えば、ブロック化イソシアネート基、ブロック化ケテン基、等)を有し、かつ、所定の解離温度においてブロック剤由来の基が解離することにより酸と反応可能となる化合物や、エポキシ基を有する化合物であることが好ましい。
熱により酸基や水酸基と反応する化合物である熱架橋性を有する化合物は、25℃における酸との反応性よりも、25℃を超えて加熱した後における酸との反応性の方が高い化合物であることが好ましい。
【0086】
熱により酸と反応する化合物である熱架橋性化合物としては、ブロック化イソシアネート基を有する化合物(以下、「ブロックイソシアネート化合物」)又はエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」)が特に好ましい。
【0087】
〔ブロックイソシアネート化合物〕
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物(即ち、イソシアネート基を有する化合物)のイソシアネート基をブロック剤で保護(マスク)した構造を有する化合物が好ましい。
【0088】
ブロックイソシアネート化合物は、一分子中に親水性基を有することが好ましい。親水性基の好ましい態様は、上述のとおりである。
【0089】
ブロックイソシアネート化合物の解離温度は、100℃~160℃が好ましく、130℃~150℃がより好ましい。
ここで、ブロックイソシアネート化合物の解離温度とは、「示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)製、DSC6200)により、DSC(Differential Scanning Calorimetry)分析にて測定した場合に、ブロックイソシアネートの脱保護反応に伴う吸熱ピークの温度」のことをいう。
【0090】
ブロックイソシアネート化合物(例えば、解離温度が100℃~160℃であるブロックイソシアネート化合物)を形成するためのブロック剤としては、例えば、ピラゾール系化合物(3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾールなど)、活性メチレン系化合物(マロン酸ジエステル(マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシルなど)など)、トリアゾール系化合物(1,2,4-トリアゾールなど)、オキシム系化合物(一分子中に-C(=N-OH)-で表される構造を有する化合物;例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなど)が挙げられる。
中でも、保存安定性の観点から、オキシム系化合物及びピラゾール系化合物が好ましく、オキシム系化合物がより好ましい。
【0091】
ブロックイソシアネート化合物としては、市販品を用いてもよい。
ブロックイソシアネート化合物の市販品としては、例えば、イソホロンジイソシアネートのメチルエチルケトンオキシムブロック化体であるタケネート(登録商標)B870N(三井化学(株)製)、及びヘキサメチレンジイソシアネート系ブロックイソシアネート化合物であるデュラネート(登録商標)MF-K60B、TPA-B80E、X3071.04(いずれも旭化成ケミカルズ(株)製)が挙げられる。
【0092】
〔エポキシ化合物〕
エポキシ化合物に含まれるエポキシ基は、グリシジル基であっても脂環式エポキシ基であってもよい。
エポキシ化合物としては特に制限はなく、公知の化合物を用いることができる。
エポキシ化合物としては、特開2015-135396号公報の段落0096~0098に記載の化合物を好ましく用いることができ、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
エポキシ化合物の例としては、EPOX-MK R151((株)プリンテック製)などを挙げることができる。
【0093】
〔ラジカル重合性基〕
熱架橋性化合物は、ラジカル重合性基を有することが好ましい。
なお、熱架橋性基及びラジカル重合性基を含む化合物は、上述のラジカル重合性化合物には該当せず、熱架橋性化合物に該当するものとする。
熱架橋性化合物がラジカル重合性基を有することにより、現像液中での引っ掻き耐性に更に優れた転写フィルムが得られやすい。これは、熱架橋性化合物におけるラジカル重合性基と、感光性層に含まれるラジカル重合性化合物又は重合体Aとが露光時に更に重合されるため、現像時の感光性層の表面硬度が向上するためであると推測される。また、このように、露光後の重合体に組み込まれた熱架橋性基が現像後の加熱(ポストベーク)等において反応することにより、WVTRが更に低減された硬化膜が得られると推測される。
【0094】
熱架橋性化合物に含まれるラジカル重合性基としては、特に制限はなく、公知のラジカル重合性基を用いることができ、エチレン性不飽和基であることが好ましく、例えば、(メタ)アクリロイル基又はビニルフェニル基がより好ましく挙げられる。中でも、ラジカル重合性基としては、得られる硬化膜における表面の面状、現像速度及び反応性の観点から、エチレン性不飽和基であることが好ましく、(メタ)アクリロキシ基であることがより好ましい。
熱架橋性化合物がラジカル重合性基を有する場合、WVTRが更に低減されやすい観点から、熱架橋性化合物におけるラジカル重合性基の含有モル量は、熱架橋性基の含有モル量以下の量であることが好ましく、熱架橋性基:ラジカル重合性基(モル比)=1:1~10:1であることがより好ましく、熱架橋性基:ラジカル重合性基(モル比)=1:1~5:1であることが更に好ましい。
【0095】
ラジカル重合性基を有する熱架橋性化合物としては、特に限定されないが、例えば下記化合物が使用される。
【0096】
【0097】
また、ラジカル重合性基を有する化合物としては、市販品を使用してもよく、市販品としては、カレンズAOI-BM、カレンズMOI-BM(共に昭和電工(株)製)、DA-MGIC、MA-DGIC(共に四国化成(株)製)等が挙げられる。
【0098】
〔分子量〕
熱架橋性化合物の分子量としては、現像速度及び熱反応性の観点から、1,000以下であることが好ましい。
【0099】
〔含有量〕
本開示における感光性層が熱架橋性化合物を含有する場合、熱架橋性化合物の含有量は、感光性層の全質量に対し、1質量%~50質量%であることが好ましく、5質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0100】
<その他の成分>
本開示における感光性層は、上述した成分以外のその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、後述の金属酸化抑制剤、特許第4502784号公報の段落0017及び特開2009-237362号公報の段落0060~0071に記載の界面活性剤、公知のフッ素系界面活性剤、特許第4502784号公報の段落0018に記載の熱重合防止剤、及び特開2000-310706号公報の段落0058~0071に記載のその他の添加剤が挙げられる。
本開示における感光性層は、その他の成分として、フッ素系界面活性剤であるメガファックF-551(DIC(株)製)を含有することが好ましい。
【0101】
また、本開示における感光性層は、その他の成分として、屈折率や光透過性を調節することを目的として、粒子(例えば金属酸化物粒子)を少なくとも1種含んでもよい。
金属酸化物粒子の金属には、B、Si、Ge、As、Sb、Te等の半金属も含まれる。硬化膜の透明性の観点から、粒子(例えば金属酸化物粒子)の平均一次粒子径は、1~200nmが好ましく、3~80nmがより好ましい。平均一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて任意の粒子200個の粒子径を測定し、測定結果を算術平均することにより算出される。粒子の形状が球形でない場合には、最も長い辺を粒子径とする。
粒子の含有量は、感光性層の全質量に対して、0質量%~35質量%が好ましく、0質量%~10質量%がより好ましく、0質量%~5質量%が更に好ましく、0質量%~1質量%が更に好ましく、0質量%(即ち、感光性層に粒子が含まれないこと)が特に好ましい。
【0102】
また、本開示における感光性層は、その他の成分として、微量の着色剤(顔料、染料、等)を含有してもよいが、透明性の観点から、着色剤を実質的に含有しないことが好ましい。
具体的には、本開示における感光性層における着色剤の含有量は、感光性層の全質量に対し、1質量%未満が好ましく、0.1質量%未満がより好ましい。
【0103】
さらに、本開示における感光性層は、溶剤を含有してもよい。感光性層が溶媒を含有する場合としては、例えば、溶媒、及び、感光性層に含まれる他の成分を含有する感光性組成物を塗布し、乾燥させて感光性層を形成する場合において、乾燥後においても感光性層中に溶媒が残存した場合が挙げられる。
【0104】
〔溶媒〕
溶媒としては、通常用いられる溶媒を特に制限なく用いることができる。
溶媒としては、有機溶媒が好ましい。
有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(別名:1-メトキシ-2-プロピルアセテート)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、乳酸エチル、乳酸メチル、カプロラクタム、n-プロパノール、2-プロパノールなどを挙げることができる。本開示における感光性層は、これらの化合物の混合物である混合溶媒を含有してもよい。
溶媒としては、メチルエチルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶媒、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶媒、又は、メチルエチルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶媒が好ましい。
【0105】
本開示における感光性層が溶媒を含有する場合、溶媒の含有量は、感光性層の全質量に対し、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が特に好ましい。溶媒の含有量の下限は特に限定されず、0質量%であってもよい。
【0106】
<感光性層の特性>
〔屈折率〕
感光性層の屈折率1.47~1.56が好ましく、1.50~1.56がより好ましい。
感光性層の屈折率を制御する方法は、特に制限されない。
感光性層の屈折率を制御する方法としては、例えば、所望の屈折率を有する重合体Aを選択する方法、金属酸化物粒子又は金属粒子を添加することにより制御する方法、金属塩と重合体Aとの複合体を用いて制御する方法、等が挙げられる。
感光性層はタッチパネルの画像表示部分に適用することが好ましく、その場合、感光性層は高透明性及び高透過性を有することが好ましい。
【0107】
〔厚さ〕
本開示における感光性層の厚さは、1μm~20μmが好ましく、2μm~15μmがより好ましく、3μm~12μmが更に好ましい。
感光性層の膜厚を上記範囲とすることで、透過率が低下しにくくなる。
感光性層の膜厚を上記範囲とすることで、感光性層が波長10nm~100nmの電波(短波)を吸収しにくくなり、感光性層の黄着色化が抑制される。
【0108】
<高屈折率層>
本開示に係る転写フィルムは、更に、上記感光性層の、仮支持体とは反対の側に、波長550nmにおける屈折率が上記感光性層よりも高く、且つ1.50以上(より好ましくは1.55以上、特に好ましくは1.60以上)である透明層(高屈折率層)を備えることが好ましい。
この態様は、透明電極パターン(例えば、ITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極パターン)を備えるタッチパネル用基板に対し、転写フィルムの感光性層及び高屈折率層を転写することによりタッチパネル用保護膜を形成した場合において、透明電極パターンがより視認されにくくなる(即ち、透明電極パターンの隠蔽性がより向上する)。
高屈折率層は、波長550nmにおける屈折率が上記感光性層よりも高く、且つ1.50以上である層であればよく、その他には特に制限はない。
透明電極パターンが視認される現象、及び、透明電極パターンの隠蔽性については、特開2014-10814号公報及び特開2014-108541号公報を適宜参照できる。
【0109】
本明細書において、「屈折率」は、特に断りが無い限り、温度23℃において波長550nmの可視光で、エリプソメトリーによって測定した値を意味する。
【0110】
上記高屈折率層は、屈折率を1.50以上(より好ましくは1.55以上、特に好ましくは1.60以上)に調整し易い点で、屈折率が1.50以上(より好ましくは1.55以上、特に好ましくは1.60以上)である無機粒子、屈折率が1.50以上(より好ましくは1.55以上、特に好ましくは1.60以上)である高分子化合物、及び、屈折率が1.50以上(より好ましくは1.55以上、特に好ましくは1.60以上)である重合性モノマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0111】
また、高屈折率層は、バインダーポリマー及び粒子を含有することが好ましい。
高屈折率層の成分については、特開2014-108541号公報の段落0019~0040及び0144~0150に記載されている硬化性透明樹脂層の成分、特開2014-10814号公報の段落0024~0035及び0110~0112に記載されている透明層の成分、国際公開第2016/009980号の段落0034~段落0056に記載されているアンモニウム塩を有する組成物の成分、国際公開第2017/155003号の段落0088~段落0131に記載されている組成物の成分、等を参照することができる。
高屈折率層材料の具体的な例として、国際公開第2017/155003号の実施例の材料B-17を挙げることができる。
【0112】
<保護フィルム>
本開示に係る転写フィルムは、更に、感光性層からみて仮支持体とは反対側に、保護フィルムを備えていてもよい。
本開示に係る転写フィルムが、感光性層からみて仮支持体とは反対側に高屈折率層を備える場合には、保護フィルムは、好ましくは、高屈折率層からみて仮支持体とは反対側に配置される。
保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。
保護フィルムとしては、例えば、特開2006-259138号公報の段落0083~0087及び0093に記載のものを用いてもよい。
【0113】
<熱可塑性樹脂層>
本開示に係る転写フィルムは、更に、仮支持体と感光性層との間に、熱可塑性樹脂層を備えていてもよい。
転写フィルムが熱可塑性樹脂層を備える場合には、転写フィルムを基板に転写して積層体を形成した場合に、積層体の各要素に気泡が発生しにくくなる。この積層体を画像表示装置に用いた場合には、画像ムラなどが発生し難くなり、優れた表示特性が得られる。
熱可塑性樹脂層は、アルカリ可溶性を有することが好ましい。
熱可塑性樹脂層は、転写時において、基板表面の凹凸を吸収するクッション材として機能する。
基板表面の凹凸には、既に形成されている、画像、電極、配線なども含まれる。熱可塑性樹脂層は、凹凸に応じて変形し得る性質を有していることが好ましい。
【0114】
熱可塑性樹脂層は、特開平5-72724号公報に記載の有機高分子物質を含むことが好ましく、ヴィカー(Vicat)法(具体的には、アメリカ材料試験法エーエステーエムデーASTMD1235によるポリマー軟化点測定法)による軟化点が約80℃以下の有機高分子物質を含むことがより好ましい。
【0115】
熱可塑性樹脂層の厚さとしては、3μm~30μmが好ましく、4μm~25μmがより好ましく、5μm~20μmが更に好ましい。
熱可塑性樹脂層の厚さが3μm以上であると、基板表面の凹凸に対する追従性が向上するので、基板表面の凹凸をより効果的に吸収できる。
熱可塑性樹脂層の厚さが30μm以下であると、プロセス適性がより向上する。例えば、仮支持体に熱可塑性樹脂層を塗布形成する際の乾燥(溶剤除去)の負荷がより軽減され、また、転写後の熱可塑性樹脂層の現像時間が短縮される。
【0116】
熱可塑性樹脂層は、溶剤及び熱可塑性の有機高分子を含む熱可塑性樹脂層形成用組成物を仮支持体に塗布し、必要に応じ乾燥させることによって形成され得る。
塗布及び乾燥の方法の具体例は、それぞれ、感光性層を形成する際の塗布及び乾燥の具体例と同様である。
溶剤としては、熱可塑性樹脂層を形成する高分子成分を溶解するものであれば、特に制限されず、有機溶剤(例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、n-プロパノール、及び2-プロパノール)が挙げられる。
【0117】
熱可塑性樹脂層は、100℃で測定した粘度が1,000~10,000Pa・sであることが好ましい。また、100℃で測定した熱可塑性樹脂層の粘度が、100℃で測定した感光性層の粘度よりも低いことが好ましい。
【0118】
<中間層>
本開示に係る転写フィルムは、更に、仮支持体と感光性層との間に、中間層を備えていてもよい。
本開示に係る転写フィルムが熱可塑性樹脂層を備える場合、中間層は、好ましくは、熱可塑性樹脂層と感光性層との間に配置される。
中間層の成分としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース、又は、これらのうちの少なくとも2種を含む混合物である樹脂が挙げられる。
また、中間層としては、特開平5-72724号公報に「分離層」として記載されているものを用いることもできる。
【0119】
仮支持体上に熱可塑性樹脂層、中間層、及び感光性層をこの順に備える態様の転写フィルムを製造する場合において、中間層は、例えば、熱可塑性樹脂層を溶解しない溶剤と、中間層の成分としての上記樹脂と、を含有する中間層形成用組成物を塗布し、必要に応じ乾燥させることによって形成され得る。塗布及び乾燥の方法の具体例は、それぞれ、感光性層を形成する際の塗布及び乾燥の具体例と同様である。
上記の場合、例えば、まず、仮支持体上に熱可塑性樹脂層形成用組成物を塗布し、乾燥させて熱可塑性樹脂層を形成する。次いで、この熱可塑性樹脂層上に中間層形成用組成物を塗布し、乾燥させて中間層を形成する。その後、中間層上に、有機溶剤を含有する態様の感光性組成物を塗布し、乾燥させて感光性層を形成する。この場合の有機溶剤は、中間層を溶解しない有機溶剤であることが好ましい。
【0120】
<転写フィルムの具体例>
図1は、本開示に係る転写フィルムの一具体例である転写フィルム10の概略断面図である。
図1に示されるように、転写フィルム10は、「保護フィルム16/高屈折率層20A/感光性層18A/仮支持体12」の積層構造(即ち、仮支持体12と、感光性層18Aと、高屈折率層20Aと、保護フィルム16と、がこの順に配置された積層構造)を有する。
ただし、本開示に係る転写フィルムは、転写フィルム10であることには限定されず、例えば、高屈折率層20A及び保護フィルム16は省略されていてもよい。また、仮支持体12と感光性層18Aとの間に、上述の熱可塑性樹脂層及び中間層の少なくとも一方を備えていてもよい。
【0121】
高屈折率層20Aは、感光性層18Aからみて仮支持体12が存在する側とは反対側に配置された層であり、波長550nmにおける屈折率が1.50以上である層である。
転写フィルム10は、ネガ型材料(ネガ型フィルム)である。
【0122】
転写フィルム10の製造方法は、特に制限されない。
転写フィルム10の製造方法は、例えば、仮支持体12上に感光性層18Aを形成する工程と、感光性層18A上に高屈折率層20Aを形成する工程と、高屈折率層20A上に保護フィルム16を形成する工程と、をこの順に含む。
転写フィルム10の製造方法は、高屈折率層20Aを形成する工程と保護フィルム16を形成する工程との間に、国際公開第2016/009980号の段落0056に記載されている、アンモニアを揮発させる工程を含んでもよい。
【0123】
(電極保護膜、積層体、及び、静電容量型入力装置)
本開示に係る電極保護膜は、本開示に係る転写フィルムから、仮支持体が取り除かれた電極保護膜である。
本開示に係る電極保護膜は、静電容量型入力装置の電極保護膜であることが好ましく、タッチパネル用電極保護膜であることがより好ましい。
以下に述べる本開示に係る積層体は、本開示に係る電極保護膜を有する。
【0124】
本開示に係る積層体は、静電容量型入力装置の電極を含む基板上に、本開示に係る転写フィルムから仮支持体を除いた後の感光性層を有する。
また、本開示に係る積層体は、静電容量型入力装置の電極を含む基板上に、本開示に係る転写フィルムから仮支持体を除いた後の高屈折率層、感光性層を上記基板側から順に有することが好ましい。
本開示に係る静電容量型入力装置は、本開示に係る電極保護膜、又は、本開示に係る積層体を有する。
【0125】
静電容量型入力装置の電極は、透明電極パターンであっても、引き回し配線であってもよい。積層体は、静電容量型入力装置の電極が、電極パターンであることが好ましく、透明電極パターンであることがより好ましい。
【0126】
本開示に係る積層体においては、基板と、透明電極パターンと、透明電極パターンに隣接して配置された高屈折率層と、高屈折率層に隣接して配置された感光性層と、を有し、高屈折率層の屈折率が感光性層の屈折率よりも高いことが好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.6以上であることが好ましい。
既述の積層体の構成とすることにより、透明電極パターンの隠蔽性が良好となる。
【0127】
上記基板としては、ガラス基板又は樹脂基板が好ましい。
また、基板は、透明な基板であることが好ましく、透明な樹脂基板であることがより好ましい。透明の意味については、上述のとおりである。
基板の屈折率は、1.50~1.52が好ましい。
ガラス基板としては、例えば、コーニング社のゴリラガラス(登録商標)などの強化ガラスを用いることができる。
樹脂基板としては、光学的に歪みが少ないもの及び透明度が高いものの少なくとも一方を用いることが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリイミド(PI)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、シクロオレフィンポリマー(COP)等の樹脂からなる基板が挙げられる。
透明な基板の材質としては、特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報、及び特開2010-257492号公報に記載されている材質が好ましく用いられる。
【0128】
上記静電容量型入力装置としては、タッチパネルが好適に挙げられる。
タッチパネル用電極としては、例えば、タッチパネルの少なくとも画像表示領域に配置される透明電極パターンが挙げられる。タッチパネル用電極は、画像表示領域からタッチパネルの枠部にまで延びていてもよい。
タッチパネル用配線としては、例えば、タッチパネルの枠部に配置される引き回し配線(取り出し配線)が挙げられる。
タッチパネル用基板及びタッチパネルの好ましい態様は、透明電極パターンのタッチパネルの枠部に延びている部分に、引き回し配線の一部が積層されることにより、透明電極パターンと引き回し配線とが電気的に接続されている態様が好適である。
【0129】
透明電極パターンの材質としては、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)等の金属酸化膜が好ましい。
引き回し配線の材質としては、金属が好ましい。引き回し配線の材質である金属としては、金、銀、銅、モリブデン、アルミニウム、チタン、クロム、亜鉛及びマンガン、並びに、これらの金属元素の2種以上からなる合金が挙げられる。引き回し配線の材質としては、銅、モリブデン、アルミニウム又はチタンが好ましく、銅が特に好ましい。
【0130】
本開示に係るタッチパネル用電極保護膜は、電極等(すなわち、タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方)を保護する目的で、電極等を直接又は他の層を介して覆うように設けられる。
タッチパネル用電極保護膜の厚さの好ましい範囲は、上述した感光性層の厚さの好ましい範囲と同様である。
【0131】
本開示に係る電極保護膜、好ましくはタッチパネル用電極保護膜は、開口部を有していてもよい。
上記開口部は、感光性層の非露光部が現像液によって溶解されることによって形成され得る。
この場合において、タッチパネル用電極保護膜が、転写フィルムを用いて高温のラミネート条件で形成された場合においても、タッチパネル用電極保護膜の開口部における現像残渣が抑制される。
【0132】
タッチパネルは、更に、電極等とタッチパネル用電極保護層との間に第一屈折率調整層を備えていてもよい(例えば、後述するタッチパネルの第1具体例参照)。
第一屈折率調整層の好ましい態様は、転写フィルムに備えられ得る高屈折率層の好ましい態様と同様である。第一屈折率調整層は、第一屈折率調整層形成用組成物の塗布及び乾燥によって形成されてもよいし、別途、屈折率調整層を備える転写フィルムの屈折率調整層を転写することによって形成されてもよい。
第一屈折率調整層を備える態様のタッチパネルは、好ましくは、高屈折率層を備える態様の本開示に係る転写フィルムを用い、転写フィルムにおける感光性層及び高屈折率層を転写することによって形成することが好ましい。この場合、転写フィルムにおける感光性層からタッチパネル用電極保護層が形成され、転写フィルムにおける高屈折率層から第一屈折率調整層が形成される。
【0133】
また、タッチパネル又はタッチパネル用基板は、基板と電極等との間に、第二屈折率調整層を備えていてもよい(例えば、後述するタッチパネルの第1具体例参照)。
第二屈折率調整層の好ましい態様は、転写フィルムに備えられ得る高屈折率層の好ましい態様と同様である。
【0134】
タッチパネルが第一屈折率調整層を備える態様(より好ましくは第一屈折率調整層及び第二屈折率調整層を備える態様)は、電極等が視認されにくくなる(即ち、いわゆる骨見えが抑制される)という利点を有する。
【0135】
タッチパネルの構造については、特開2014-10814号公報又は特開2014-108541号公報に記載の静電容量型入力装置の構造を参照してもよい。
【0136】
<タッチパネルの第1具体例>
図2は、本開示に係るタッチパネルの第1具体例であるタッチパネル30の概略断面図である。より詳細には、
図2は、タッチパネル30の画像表示領域の概略断面図である。
図2に示されるように、タッチパネル30は、基板32と、第二屈折率調整層36と、タッチパネル用電極としての透明電極パターン34と、第一屈折率調整層20と、タッチパネル用電極保護膜18と、がこの順序で配置された構造を有する。
タッチパネル30では、タッチパネル用電極保護膜18及び第一屈折率調整層20が、透明電極パターン34の全体を覆っている。しかし本開示に係るタッチパネルはこの態様には限定されない。タッチパネル用電極保護膜18及び第一屈折率調整層20は、透明電極パターン34の少なくとも一部を覆っていればよい。
【0137】
また、第二屈折率調整層36及び第一屈折率調整層20は、それぞれ、透明電極パターン34が存在する第1領域40及び透明電極パターン34が存在しない第2領域42を、直接又は他の層を介して連続して被覆することが好ましい。これにより、透明電極パターン34がより視認されにくくなる。
第二屈折率調整層36及び第一屈折率調整層20は、第1領域40及び第2領域42の両方を、他の層を介して被覆するよりも、直接被覆することが好ましい。「他の層」としては、例えば、絶縁層、透明電極パターン34以外の電極パターン、等が挙げられる。
【0138】
第一屈折率調整層20は、第1領域40及び第2領域42の両方にまたがって積層されている。第一屈折率調整層20は、第二屈折率調整層36と隣接しており、更に、透明電極パターン34とも隣接している。
第二屈折率調整層36と接触する箇所における透明電極パターン34の端部の形状が、
図2に示される如きテーパー形状である場合は、テーパー形状に沿って(すなわち、テーパー角と同じ傾きで)、第一屈折率調整層20が積層されていることが好ましい。
【0139】
透明電極パターン34としては、ITO透明電極パターンが好適である。
透明電極パターン34は、例えば、以下の方法により形成できる。
第二屈折率調整層36が形成された基板32の上に、スパッタリングにより電極用薄膜(例えばITO膜)を形成する。この電極用薄膜の上に、エッチング用感光性レジストを塗布することにより、又は、エッチング用感光性フィルムを転写することにより、エッチング保護層を形成する。次いで、露光及び現像により、このエッチング保護層を所望とするパターン形状にパターニングする。次いで、エッチングにより、電極用薄膜のうちパターニングされたエッチング保護層に覆われていない部分を除去する。これにより、電極用薄膜を所望の形状のパターン(すなわち、透明電極パターン34)とする。続いて、剥離液によりパターニングされたエッチング保護層を除去する。
【0140】
第一屈折率調整層20及びタッチパネル用電極保護膜18は、例えば以下のようにして、第二屈折率調整層36及び透明電極パターン34が順次設けられた基板32(即ち、タッチパネル用基板)の上に形成される。
まず、
図1に示した転写フィルム10(すなわち、「保護フィルム16/高屈折率層20A/感光性層18A/仮支持体12」の積層構造を有する転写フィルム10)を準備する。
次に、転写フィルム10から保護フィルム16を取り除く。
次に、保護フィルム16が取り除かれた転写フィルム10を、第二屈折率調整層36及び透明電極パターン34が順次設けられた基板32(即ち、タッチパネル用基板)の上にラミネートする。ラミネートは、保護フィルム16が取り除かれた転写フィルム10の高屈折率層20Aと、透明電極パターン34と、が接する向きで行う。このラミネートにより、「仮支持体12/感光性層18A/高屈折率層20A/透明電極パターン34/第二屈折率調整層36/基板32」の積層構造を有する積層体が得られる。
次に、積層体から仮支持体12を取り除く。
次に、仮支持体12が取り除かれた積層体をパターン露光することにより、感光性層18A及び高屈折率層20Aをパターン状に硬化させる。感光性層18A及び高屈折率層20Aのパターン状に硬化は、それぞれ別個のパターン露光によって別個に行ってもよいが、1回のパターン露光によって同時に行うことが好ましい。
次に、現像によって感光性層18A及び高屈折率層20Aの非露光部(即ち、非硬化部)を除去することにより、感光性層18Aのパターン状の硬化物であるタッチパネル用電極保護膜18(パターン形状については不図示)、及び、高屈折率層20Aのパターン状の硬化物である第一屈折率調整層20(パターン形状については不図示)をそれぞれ得る。パターン露光後の感光性層18A及び高屈折率層20Aの現像は、それぞれ別個の現像によって別個に行ってもよいが、1回の現像によって同時に行うことが好ましい。
【0141】
ラミネート、パターン露光、現像の好ましい態様は後述する。
【0142】
タッチパネルの構造については、特開2014-10814号公報又は特開2014-108541号公報に記載の静電容量型入力装置の構造を参照してもよい。
【0143】
<タッチパネルの第2具体例>
図3は、本開示に係るタッチパネルの第2具体例であるタッチパネル90の概略断面図である。
図3に示されるように、タッチパネル90は、画像表示領域74及び画像非表示領域75(すなわち、枠部)を有する。
図3に示されるように、タッチパネル90は、基板32の両面にタッチパネル用電極を備えている。詳細には、タッチパネル90は、基板32の一方の面に第1透明電極パターン70を備え、他方の面に第2透明電極パターン72を備えている。
タッチパネル90では、第1透明電極パターン70及び第2透明電極パターン72のそれぞれに、引き回し配線56が接続されている。引き回し配線56は、例えば銅配線である。
タッチパネル90では、基板32の一方の面において、第1透明電極パターン70及び引き回し配線56を覆うようにタッチパネル用電極保護膜18が形成されており、基板32の他方の面において、第2透明電極パターン72及び引き回し配線56を覆うようにタッチパネル用電極保護膜18が形成されている。
基板32の一方の面及び他方の面には、それぞれ、第1具体例における第一屈折率調整層及び第二屈折率調整層が設けられていてもよい。
【0144】
<タッチパネルの製造方法>
本開示に係るタッチパネルを製造する方法には、特に制限はないが、以下の製造方法が好ましい。
本開示に係るタッチパネルの好ましい製造方法は、
基板上に電極等(すなわち、タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方)が配置された構造を有するタッチパネル用基板を準備する工程(以下、「準備工程」ともいう。)と、
タッチパネル用基板の電極等が配置された側の面の上に、本開示に係る転写フィルムを用いて感光性層を形成する工程(以下、「感光性層形成工程」ともいう。)と、
タッチパネル用基板の上記面の上に形成された感光性層をパターン露光する工程(以下、「パターン露光工程」ともいう。)と、
パターン露光された感光性層を現像することにより、電極等の少なくとも一部を保護するタッチパネル用電極保護膜を得る工程(以下、「現像工程」ともいう。)と、
を含む。
【0145】
上記好ましい製造方法によれば、WVTRが低減されたタッチパネル用電極保護膜を備えるタッチパネルを製造できる。
また、上記好ましい製造方法では、本開示に係る転写フィルムを用い高温のラミネート条件で感光性層を形成した場合においても、現像後の感光性層の非露光部において、現像残渣の発生が抑制される。
【0146】
以下、上記好ましい製造方法の各工程について説明する。
【0147】
<準備工程>
準備工程は、便宜上の工程であり、基板上に電極等(すなわち、タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方)が配置された構造を有するタッチパネル用基板を準備する工程である。
準備工程は、予め製造されたタッチパネル用基板を単に準備するだけの工程であってもよいし、タッチパネル用基板を製造する工程であってもよい。
タッチパネル用基板の好ましい態様は、上述のとおりである。
【0148】
<感光性層形成工程>
感光性層形成工程は、タッチパネル用基板の電極等が配置された側の面の上に、本開示に係る転写フィルムを用いて感光性層を形成する工程である。
【0149】
以下、感光性層形成工程において、本開示に係る転写フィルムを用いる態様について説明する。
この態様では、本開示に係る転写フィルムをタッチパネル用基板の電極等が配置された側の面の上にラミネートし、本開示に係る転写フィルムの感光性層を上記面の上に転写することにより、上記面の上に感光性層を形成する。
ラミネート(感光性層の転写)は、真空ラミネーター、オートカットラミネーター等の公知のラミネーターを用いて行うことができる。
【0150】
ラミネート条件としては、一般的な条件を適用できる。
ラミネート温度としては、80℃~150℃が好ましく、90℃~150℃がより好ましい。
上述のとおり、本開示に係る転写フィルムを用いる態様では、ラミネート温度が高温(例えば120℃~150℃)である場合においても、熱かぶりによる現像残渣の発生が抑制される。
ゴムローラーを備えたラミネーターを用いる場合、ラミネート温度は、ゴムローラー温度を指す。
ラミネート時の基板温度には特に制限はない。ラミネート時の基板温度としては、10℃~150℃が挙げられ、20℃~150℃が好ましく、30℃~150℃がより好ましい。基板として樹脂基板を用いる場合には、ラミネート時の基板温度としては、10℃~80℃が好ましく、20℃~60℃がより好ましく、30℃~50℃が特に好ましい。
また、ラミネート時の線圧としては、0.5N/cm~20N/cmが好ましく、1N/cm~10N/cmがより好ましく、1N/cm~5N/cmが特に好ましい。
また、ラミネート時の搬送速度(ラミネート速度)としては、0.5m/分~5m/分が好ましく、1.5m/分~3m/分がより好ましい。
【0151】
「保護フィルム/感光性層/中間層/熱可塑性樹脂層/仮支持体」の積層構造を有する転写フィルムを用いる場合には、まず、転写フィルムから保護フィルムを剥離して感光性層を露出させ、次いで、露出した感光性層とタッチパネル用基板の電極等が配置された側の面とが接するようにして、転写フィルムとタッチパネル用基板とを貼り合わせ、次いで加熱及び加圧を施す。これにより、転写フィルムの感光性層が、タッチパネル用基板の電極等が配置された側の面上に転写され、「仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性層/電極等/基板」の積層構造を有する積層体が形成される。この積層構造のうち、「電極等/基板」の部分が、タッチパネル用基板である。
その後、必要に応じ、上記積層体から仮支持体を剥離する。ただし、仮支持体を残したまま、後述のパターン露光を行うこともできる。
【0152】
タッチパネル用基板上に転写フィルムの感光性層を転写し、パターン露光し、現像する方法の例としては、特開2006-23696号公報の段落0035~0051の記載を参照することもできる。
【0153】
<パターン露光工程>
パターン露光工程は、タッチパネル用基板上に形成された感光性層をパターン露光する工程である。
ここで、パターン露光とは、パターン状に露光する態様、すなわち、露光部と非露光部とが存在する態様の露光を指す。
タッチパネル用基板上の感光性層のうち、パターン露光における露光部が硬化され、最終的に硬化膜となる。
一方、タッチパネル用基板上の感光性層のうち、パターン露光における非露光部は硬化せず、次の現像工程で、現像液によって除去(溶解)される。非露光部は、現像工程後、硬化膜の開口部を形成し得る。
パターン露光は、マスクを介した露光でもよいし、レーザー等を用いたデジタル露光でもよい。
【0154】
パターン露光の光源としては、感光性層を硬化し得る波長域の光(例えば、365nm又は405nm)を照射できるものであれば適宜選定して用いることができる。光源としては、例えば、各種レーザー、発光ダイオード(LED)、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、及び、メタルハライドランプが挙げられる。露光量は、好ましくは5mJ/cm2~200mJ/cm2であり、より好ましくは10mJ/cm2~200mJ/cm2である。
【0155】
転写フィルムを用いて基板上に感光性層を形成した場合には、パターン露光は、仮支持体を剥離してから行ってもよいし、仮支持体を剥離する前に露光し、その後、仮支持体を剥離してもよい。
また、露光工程では、パターン露光後であって現像前に、感光性層に対し熱処理(いわゆるPEB(Post Exposure Bake))を施してもよい。
【0156】
<現像工程>
現像工程は、パターン露光された感光性層を現像することにより(即ち、パターン露光における非露光部を現像液に溶解させることにより)、電極等の少なくとも一部を保護するタッチパネル用電極保護膜を得る工程である。
【0157】
現像に用いる現像液は特に制限されず、特開平5-72724号公報に記載の現像液など、公知の現像液を用いることができる。
現像液としては、アルカリ性水溶液を用いることが好ましい。
アルカリ性水溶液に含有され得るアルカリ性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、コリン(2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド)、等が挙げられる。
アルカリ性水溶液の25℃におけるpHとしては、8~13が好ましく、9~12がより好ましく、10~12が特に好ましい。
アルカリ性水溶液中におけるアルカリ性化合物の含有量は、アルカリ性水溶液全量に対し、0.1質量%~5質量%が好ましく、0.1質量%~3質量%がより好ましい。
【0158】
現像液は、水に対して混和性を有する有機溶剤を含有してもよい。
有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、乳酸エチル、乳酸メチル、ε-カプロラクタム、及び、N-メチルピロリドンを挙げることができる。
有機溶剤の濃度は、0.1質量%~30質量%が好ましい。
現像液は、公知の界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤の濃度は0.01質量%~10質量%が好ましい。
現像液の液温度は20℃~40℃が好ましい。
【0159】
現像の方式としては、例えば、パドル現像、シャワー現像、シャワー及びスピン現像、ディップ現像、等の方式が挙げられる。
シャワー現像を行う場合、パターン露光後の感光性層に現像液をシャワー状に吹き付けることにより、感光性層の非露光部を除去する。感光性層と熱可塑性樹脂層及び中間層の少なくとも一方とを備える転写フィルムを用いた場合には、これらの層の基板上への転写後であって感光性層の現像の前に、感光性層の溶解性が低いアルカリ性の液をシャワー状に吹き付け、熱可塑性樹脂層及び中間層の少なくとも一方(両方存在する場合には両方)を予め除去してもよい。
また、現像の後に、洗浄剤などをシャワーにより吹き付けつつブラシなどで擦ることにより、現像残渣を除去することが好ましい。
現像液の液温度は、20℃~40℃が好ましい。
【0160】
現像工程は、上記現像を行う段階と、上記現像によって得られた硬化膜を加熱処理(以下、「ポストベーク」ともいう)する段階と、を含んでいてもよい。
基板が樹脂基板である場合には、ポストベークの温度は、100℃~180℃が好ましく、130℃~180℃がより好ましい。
このポストベークにより、透明電極パターンの抵抗値を調整することもできる。
また、感光性層がカルボキシル基含有(メタ)アクリル樹脂を含む場合には、ポストベークにより、カルボキシル基含有(メタ)アクリル樹脂の少なくとも一部をカルボン酸無水物に変化させることができる。
特に、感光性層が熱架橋性化合物を含む場合、ポストベークを行うことにより硬化膜における架橋が密となり、WVTRがより低減されやすい。
【0161】
また、現像工程は、上記現像を行う段階と、上記現像によって得られた硬化膜を露光(以下、「ポスト露光」ともいう。)する段階と、を含んでいてもよい。
現像工程がポスト露光する段階及びポストベークする段階を含む場合、好ましくは、ポスト露光、ポストベークの順序で実施する。
【0162】
パターン露光、現像などについては、例えば、特開2006-23696号公報の段落0035~0051の記載を参照することもできる。
【0163】
本開示に係るタッチパネルの好ましい製造方法は、上述した工程以外のその他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、通常のフォトリソ工程に設けられることがある工程(例えば、洗浄工程など)を特に制限なく適用できる。
【0164】
(画像表示装置)
本開示に係る画像表示装置は、本開示に係る静電容量型入力装置、好ましくは本開示に係るタッチパネル(例えば、第1~第2具体例のタッチパネル)を備える。
本開示に係る画像表示装置としては、本開示に係るタッチパネルを公知の液晶表示素子と重ね合わせた構造を有する液晶表示装置が好ましい。
タッチパネルを備える画像表示装置の構造としては、例えば、『最新タッチパネル技術』(2009年7月6日発行(株)テクノタイムズ)、三谷雄二監修、『タッチパネルの技術と開発』、シーエムシー出版(2004,12)、FPD International 2009 Forum T-11講演テキストブック、Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292に開示されている構造を適用することができる。
【実施例0165】
以下に実施例を挙げて本開示を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本開示の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
なお、以下の実施例において、樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算で求めた重量平均分子量である。また、酸価は、理論酸価を用いた。
【0166】
<樹脂Aの合成>
まず、転写フィルムの感光性層に含まれる樹脂として、本開示に用いられる重合体Aの具体例である重合体P-1~P-17、及び、比較例用の重合体である重合体R-1~R-4をそれぞれ合成した。
【0167】
<重合体P-1の合成>
3口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG、和光純薬工業(株)製)244.2質量部を入れ、窒素下、90℃に保持した。そこに、メタクリル酸ジシクロペンタニル(東京化成工業(株)製)120.4質量部、メタクリル酸(MAA、和光純薬工業(株)製)96.1質量部、スチレン(和光純薬工業(株)製)87.2質量部、MFG188.5質量部、p-メトキシフェノール(和光純薬工業(株)製)0.0610質量部、V-601(ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、和光純薬工業(株)製)16.7質量部の混合液を3時間かけて滴下した。
滴下後、90℃で1時間撹拌し、V-601(2.1質量部)とMFG(5.2質量部)の混合液を添加し、1時間撹拌後、V-601(2.1質量部)とMFG(5.2質量部)の混合液を更に添加した。1時間撹拌後、V-601(2.1質量部)とMFG(5.2質量部)の混合液を更に添加した。3時間撹拌後、MFG2.9質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、ダイセル化学製)166.9質量部を添加し、均一になるまで撹拌した。
反応液に、付加触媒としてのテトラメチルアンモニウムブロミド(TEAB、東京化成工業(株)製)1.5質量部、p-メトキシフェノール0.7質量部を添加し、100℃に昇温した。更に、メタクリル酸グリシジル(GMA、和光純薬工業(株)製)62.8質量部を添加し、100℃、9時間撹拌し、重合体P-1のMFG/PGMEA混合溶液を得た。P-1のGPC測定による重量平均分子量は20,000(ポリスチレン換算)であり、固形分濃度は36.3質量%であった。
【0168】
<重合体P-2~P-17及びR-1~R-4の合成>
重合体に含まれる各構成単位及び各構成単位の含有量を、表1に示すように変更したこと以外は重合体P-1の合成と同様にして、重合体P-2~P-17及びR-1~R-4を合成した。いずれの重合体も、重合体溶液として合成し、かつ、重合体溶液における重合体濃度(固形分濃度)が35質量%となるように、希釈剤(PGMEA)の量を調整した。
ここで、重合体R-1~R-4は、比較用の重合体である。
【0169】
表1中、ラジカル重合性基を有する構成単位以外の構成単位については、各構成単位を形成するためのモノマーの略称で示している。
ラジカル重合性基を有する構成単位については、モノマーとモノマーとの付加構造の形式で示している。例えば、MAA-GMAは、メタクリル酸に由来する構成単位に対してグリシジルメタクリレートが付加した構成単位を意味する。
【0170】
【0171】
〔表1中の説明〕
・略称の意味は以下のとおりである。
St:スチレン(和光純薬工業(株)製)
VN:ビニルナフタレン(和光純薬工業(株)製)
AMS:α-メチルスチレン(東京化成工業(株)製)
DCPMA:ジシクロペンタニルメタクリレート(Tg:175℃、ファンクリルFA-513M、日立化成(株)製)
IBXMA:イソボルニルメタクリレート(Tg:173℃、ライトエステルIB-X、共栄社化学(株)製)
PMI:N-フェニルマレイミド(Tg:276℃、イミレックス-P、(株)日本触媒製)
ADMA:1-アダマンチルメタクリレート(Tg:250℃、Adamantate AM(出光興産(株)製))
ADA:1-アダマンチルアクリレート(Tg:153℃、Adamantate AA(出光興産(株)製))
DCPA:ジシクロペンタニルアクリレート(Tg:120℃、ファンクリルFA-513AS、日立化成(株)製)
CHMA;シクロヘキシルメタクリレート(Tg=66℃、CHMA、三菱ガス化学(株)製)
MAA-GMA:メタクリル酸に由来する構成単位に対してグリシジルメタクリレートが付加した構成単位
MAA-M100:メタクリル酸に由来する構成単位に対してCYM-M100((株)ダイセル製;3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート)が付加した構成単位
MAA:メタクリル酸(和光純薬工業(株)製)
AA:アクリル酸(和光純薬工業(株)製)
MMA:メチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製)
nBMA:ノルマルブチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製)
【0172】
<感光性組成物の調製>
各実施例又は比較例において、下記表2又は表3に示す組成の感光性組成物を調製した。表2又は表3中、各成分の数値は各成分の含有量(質量部)を表し、重合体の量は、重合体溶液(重合体濃度36.3質量%)の量を意味する。
【0173】
【0174】
【0175】
<転写フィルムの作製>
各実施例又は比較例において、ポリエチレンテレフタレートフィルムである厚み16μmの仮支持体の上に、スリット状ノズルを用いて、各実施例又は比較例において調製した上記表2又は表3に記載の感光性組成物を塗布し、乾燥後膜厚が8μmの感光性透明樹脂層を形成した。感光性透明樹脂層の上に保護フィルム(厚さ16μmのポリエチレンフタレートフィルム)を圧着し、実施例1~28、及び、比較例1~4の転写フィルムを作製した。
【0176】
<水蒸気透過度(WVTR)の評価>
〔透湿度測定用試料の作製〕
各実施例又は比較例の転写フィルムを、保護フィルムを剥離してから、住友電工製PTFE(四フッ化エチレン樹脂)メンブレンフィルターFP-100-100(以下、単に「メンブレンフィルター」という)上にラミネートし、「仮支持体/厚さ8μmの感光性層/メンブレンフィルター」の層構造を有する積層体Aを形成した。ラミネートの条件は、メンブレンフィルター温度40℃、ラミロール温度110℃、線圧3N/cm、搬送速度2m/分とした。
さらに、積層体Aから仮支持体を剥離し、感光性層に保護フィルムを剥離した転写フィルムを上記と同様にさらに4回ラミネートして、「仮支持体/合計膜厚40μmの感光性層/メンブレンフィルター」の積層構造を有する積層体Bを形成した。
得られた積層体Bの感光性層を、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、仮支持体を介して露光量100mJ/cm2(i線)で露光した。仮支持体を剥離してから、更に露光量375mJ/cm2(i線)で露光した後、170℃、30分間のポストベークを行うことにより、感光性層を硬化させて硬化膜を形成した。
以上により、「合計膜厚40μmの硬化膜/メンブレンフィルター」の積層構造を有する透湿度測定用試料を得た。
【0177】
〔水蒸気透過度(WVTR)の測定〕
透湿度測定用試料を用い、JIS-Z-0208(1976)を参考にして、カップ法による透湿度測定を実施した。以下、詳細を説明する。
まず、透湿度測定用試料から直径70mmの円形試料を切り出した。次に、測定カップ内に乾燥させた20gの塩化カルシウムを入れ、次いで上記円形試料によって蓋をすることにより、蓋付き測定カップを準備した。
この蓋付き測定カップを、恒温恒湿槽内にて65℃、90%RHの条件で24時間放置した。上記放置前後での蓋付き測定カップの質量変化から、円形試料の水蒸気透過度(WVTR)(単位:g/(m2・day))を算出した。
上記測定を3回実施し、3回の測定でのWVTRの平均値を算出した。WVTRの平均値に基づき、下記評価基準に従い、水蒸気透過度(WVTR)を評価した。下記評価基準において、A、B、Cのいずれかであることが好ましく、A又はBがより好ましく、Aが最も好ましい。
結果を表4に示す。
なお、上記測定では、上述のとおり、「硬化膜/メンブレンフィルター」の積層構造を有する円形試料のWVTRを測定した。しかし、メンブレンフィルターのWVTRが硬化膜のWVTRと比較して極めて高い(水蒸気を透過しやすい)ことから、上記測定では、実質的には、硬化膜自体のWVTRを測定したことになる。
【0178】
〔水蒸気透過度(WVTR)の評価基準〕
A:WVTRの平均値が160g/(m2・day)未満
B:WVTRの平均値が160g/(m2・day)以上180g/(m2・day)未満
C:WVTRの平均値が180g/(m2・day)以上200g/(m2・day)未満
D:WVTRの平均値が200g/(m2・day)以上250g/(m2・day)未満
D:WVTRの平均値が250g/(m2・day)以上
【0179】
〔タック性の評価〕
各実施例又は比較例における転写フィルムを5cm×18cmの長方形に裁断した。厚み500μmのPFA(ポリテトラフルオロエチレン)フィルムを10cm×15cmの長方形に裁断し、水平な面に固定した。PFAフィルムと上記裁断した転写フィルムの上記感光性層が形成された面とが接するように、上記PFAフィルムと上記転写フィルムとを重ね、その上に底部4cm×6cmの直方体形状の70gの重りを乗せた。SHIMPO製Force Gauge Standを用いて、上記重ねた転写フィルムを転写フィルムの長辺と平行な水平方向に一定速度で引き、上記重りの荷重がかかった状態での摩擦力(単位:N)を測定した。
摩擦力を70で割った値(以下、「タック性指標値」ともいう。)をタック性の指標とした。
下記評価基準において、A、B、Cのいずれかであることが好ましく、A又はBがより好ましく、Aが最も好ましい。
評価結果を表4に示す。
【0180】
〔タック性の評価基準〕
A:タック性指標値が2未満である。
B:タック性指標値が2以上4未満である。
C:タック性指標値が4以上6未満である。
D:タック性指標値が6以上10未満である。
E:タック性指標値が10以上である。
【0181】
〔現像液中での引っかき耐性の評価〕
各実施例又は比較例における転写フィルムを4.5cm×9cmの大きさに裁断し、保護フィルムを剥離してから、5cm×10cmの大きさのガラス(イーグルXG、コーニング社製)上にラミネートし、「仮支持体/厚さ8μmの感光性層/ガラス」の層構造を有する積層体を形成した。ラミネートの条件は、メンブレンフィルター温度40℃、ラミロール温度110℃、線圧3N/cm、搬送速度2m/分とした。その後、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、仮支持体を介して露光量100mJ/cm2(i線)で全面露光した。
露光してから2時間後に上記積層体から仮支持体を剥離し、仮支持体を積層体の感光層の表面に約1cm幅で濃度1質量%、温度33℃の炭酸ナトリウム水溶液を長さ約6cmにわたりスポイトで滴下してから、トライボギア(表面性測定機 TYPE:14DR、新東科学(株)製)を用いて現像液中で感光性層表面の引っかきを実施した。ここで引っかきの圧子は先端が円形状であり、かつ、先端の直径が7μmであるダイヤモンド圧子を用い、荷重条件は10g、速度は60mm/分とした。
引っかきを実施した後の感光層表面の傷の深さを3次元光学プロファイラー(Zygo NewView6210、キヤノン(株)製)を用いて計測し、傷の深さを現像液中での引っかき耐性の評価の指標とした。
下記評価基準において、A、B、Cのいずれかであることが好ましく、A又はBがより好ましく、Aが最も好ましい。
評価結果を表4に示す。
【0182】
〔現像液中での引っかき耐性の評価基準〕
A:傷の深さが0.10μm未満である。
B:傷の深さが0.10μm以上0.15μm未満である。
C:傷の深さが0.15μm以上0.20μm未満である。
D:傷の深さが0.20μm以上0.30μm未満である。
E:傷の深さが0.30μm以上である。
【0183】
【0184】
表4に示すように、仮支持体、及び、感光性層を備え、上記感光性層が、式A1により表される構成単位と、脂環式構造を有するモノマーに由来する構成単位と、ラジカル重合性基を有する構成単位と、を含む重合体A、ラジカル重合性化合物、及び、光重合開始剤を含み、上記式A1により表される構成単位の含有量が、重合体Aの全質量に対して10質量%以上であり、上記脂環式構造を有するモノマーに由来する構成単位の含有量が、重合体Aの全質量に対して15質量%以上であり、上記脂環式構造を有するモノマーのホモポリマーのガラス転移温度が120℃以上である、上記実施例1~実施例28に係る転写フィルムは、水蒸気透過度(WVTR)が低減された硬化膜が得られ、タック性が小さく、かつ、現像液中での引っ掻き耐性に優れることがわかる。
また、比較例1においては、構成単位A1の含有量が5質量%であり、係る場合には、WVTRが低減されていないことがわかる。
比較例2においては、構成単位B1の含有量が12質量%であり、係る場合には、タック性が大きいことがわかる。
比較例3においては、構成単位B1に該当する構成単位(シクロヘキシルメタクリレートに由来する構成単位)におけるモノマーのホモポリマーのTgが66℃であり、係る場合には、タック性が大きいことがわかる。
比較例4においては、重合体中に構成単位C1を有しておらず、係る場合には、現像液中の引っ掻き耐性が低いことがわかる。
【0185】
(実施例101~128:タッチパネルの製造)
ポリエチレンテレフタレートフィルムである厚み16μmの仮支持体の上に、スリット状ノズルを用いて、上記実施例1~実施例28においてそれぞれ調製した各感光性組成物を塗布し、乾燥後膜厚が8μmの感光性透明樹脂層を形成した。感光性透明樹脂層の上に、国際公開第2017/155003号の実施例の材料B-17を塗布し、乾燥膜厚が90nmの高屈折率層を形成した。高屈折率層の上に保護フィルム(厚さ16μmのポリエチレンフタレートフィルム)を圧着し、実施例101~128の転写フィルムを作製した。
【0186】
実施例101~128の転写フィルムの保護フィルムを剥離してから、「ITO透明電極パターン/屈折率調整層/COP(シクロオレフィンポリマー)基板」の積層構造にラミネートし、「厚さ8μmの感光性層/高屈折率層/ITO透明電極パターン/屈折率調整層/COP基板」の層構造を有する積層体を形成した。ラミネートの条件は、基板温度40℃、ラミロール温度110℃、線圧3N/cm、搬送速度2m/分とした。上記積層体の感光性層を、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、露光マスク(オーバーコート形成用パターンを有す石英露光マスク)面と仮支持体との間の距離を125μmに設定し、仮支持体を介して露光量100mJ/cm2(i線)で露光した。仮支持体を剥離してから、濃度1質量%温度33℃の炭酸ナトリウム水溶液で現像して不要部分を除去した。さらに露光量375mJ/cm2(i線)で露光した後、170℃、30分間のポストベークを行うことにより、感光性層を硬化させた。
作製した「硬化した感光性層/高屈折率層/ITO透明電極パターン/屈折率調整層/COP基板」の層構造を有する積層体を用いて、公知の方法によりタッチパネルを製造した。製造したタッチパネルを、特開2009-47936号公報の段落<0097>~<0119>に記載の方法で製造した液晶表示素子に貼り合わせることにより、タッチパネルを備えた液晶表示装置を製造した。
タッチパネルを備えた液晶表示装置について、表示特性に優れ、問題無く動作することを確認した。