(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185241
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20221207BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H01L21/302 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092775
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】貝嶋 祥
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084BB21
2G084CC03
2G084CC04
2G084CC05
2G084CC09
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC14
2G084CC15
2G084CC17
2G084CC33
2G084DD24
2G084DD37
2G084DD38
2G084DD55
2G084EE17
2G084FF15
2G084HH05
2G084HH06
2G084HH26
2G084HH27
2G084HH28
2G084HH29
2G084HH31
2G084HH43
2G084HH55
2G084HH56
5F004AA16
5F004BA09
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004CA04
5F004CA06
5F004CB05
(57)【要約】
【課題】プラズマの生成における高周波電力の電力結合効率を高める技術を提供する。
【解決手段】開示されるプラズマ処理装置において、高周波電源が、第1の期間における高周波電力のレベルが第1の期間と第2の期間における高周波電力のレベルよりも高くなるように、高周波電力を変調する。第2の期間は、第1の期間と交互の期間である。バイアス電源は、第3の期間におけるバイアスエネルギーのレベルが第4の期間におけるバイアスエネルギーのレベルよりも高くなるように、バイアスエネルギーを変調する。第4の期間は、第3の期間と交互の期間である。バイアス電源は、第1の期間と部分的に重複する第3の期間の開始時点の第1の期間の開始時点に対する時間差を、進行波のパワー及び反射波のパワーから得られる高周波電力のプラズマへの電力結合効率に応じて調整する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
電極を有し、前記チャンバ内に設けられた基板支持部と、
前記チャンバ内でガスからプラズマを生成するために高周波電力を供給するように構成された高周波電源と、
前記基板支持部上に載置された基板に前記プラズマからイオンを引き込むためにバイアスエネルギーを前記基板支持部の前記電極に与えるように構成されたバイアス電源と、
前記高周波電力の進行波のパワー及び反射波のパワーを測定する測定器と、
を備え、
前記高周波電源は、第1の期間における前記高周波電力のレベルが該第1の期間と交互の第2の期間における前記高周波電力のレベルよりも高くなるように、前記高周波電力を変調し、
前記バイアス電源は、
第3の期間における前記バイアスエネルギーのレベルが該第3の期間と交互の第4の期間における該バイアスエネルギーのレベルよりも高くなるように、前記バイアスエネルギーを変調し、
前記第1の期間と部分的に重複する前記第3の期間の開始時点の該第1の期間の開始時点に対する時間差を、前記進行波のパワー及び前記反射波のパワーから得られる前記高周波電力の前記プラズマへの電力結合効率に応じて、調整する、
ように構成されている、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記バイアス電源は、前記第3の期間の前記開始時点が前記第1の期間の前記開始時点に対して先行し、且つ、前記時間差が前記電力結合効率が低いほど大きくなるように、該時間差を調整するように構成されている、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記バイアス電源は、前記第1の期間の終了時点と該第1の期間と部分的に重複する前記第3の期間の終了時点が一致するように、該第3の期間の時間長を設定する、請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記バイアスエネルギーは、高周波電力又は周期的に発生される電圧のパルスである、請求項1~3の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記高周波電源は、前記第2の期間において前記高周波電力の供給を停止するように構成されており、
前記バイアス電源は、前記第4の期間において前記バイアスエネルギーの供給を停止するように構成されている、
請求項1~4の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
プラズマ処理装置のチャンバ内に設けられた基板支持部上に基板を載置する工程と、
前記チャンバ内でプラズマを生成するために供給される高周波電力を変調する工程であり、前記高周波電力は、第1の期間における前記高周波電力のレベルが該第1の期間と交互の第2の期間における前記高周波電力のレベルよりも高くなるように変調される、該工程と、
前記基板に前記プラズマからイオンを引き込むために前記基板支持部の電極に供給されるバイアスエネルギーを変調する工程であり、前記バイアスエネルギーは、第3の期間における前記バイアスエネルギーのレベルが該第3の期間と交互の第4の期間における該バイアスエネルギーのレベルよりも高くなるように変調される、該工程と、
前記高周波電力の進行波のパワー及び前記高周波電力の反射波のパワーから得られる前記高周波電力の前記プラズマへの電力結合効率に応じて、前記第1の期間と部分的に重複する前記第3の期間の開始時点の該第1の期間の開始時点に対する時間差を調整する工程と、
を含むプラズマ処理方法。
【請求項7】
前記時間差は、前記第3の期間の前記開始時点が前記第1の期間の前記開始時点に対して先行し、且つ、該時間差が前記電力結合効率が低いほど大きくなるように、調整される、請求項6に記載のプラズマ処理方法。
【請求項8】
前記第1の期間の終了時点と該第1の期間と部分的に重複する前記第3の期間の終了時点が一致するように、該第3の期間の時間長が設定される、請求項7に記載のプラズマ処理方法。
【請求項9】
前記バイアスエネルギーは、高周波電力又は周期的に発生される電圧のパルスである、請求項6~8の何れか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項10】
前記高周波電力の供給は、前記第2の期間において停止され、
前記バイアスエネルギーの供給は、前記第4の期間において停止される、
請求項6~9の何れか一項に記載のプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置が、基板に対するプラズマ処理装置において用いられている。プラズマ処理装置では、チャンバ内でガスからプラズマを生成するために高周波電力が供給される。下記の特許文献1は、高周波電力のオン/オフ制御又はハイ/ロウ制御を行う技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマの生成における高周波電力の電力結合効率を高める技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持部、高周波電源、バイアス電源、及び測定器を備える。基板支持部は、電極を有し、チャンバ内に設けられている。高周波電源は、チャンバ内でガスからプラズマを生成するために高周波電力を供給するように構成されている。バイアス電源は、基板支持部上に載置された基板にプラズマからイオンを引き込むためにバイアスエネルギーを基板支持部の電極に与えるように構成されている。測定器は、高周波電力の進行波のパワー及び反射波のパワーを測定するように構成されている。高周波電源は、第1の期間における高周波電力のレベルが第1の期間と第2の期間における高周波電力のレベルよりも高くなるように、高周波電力を変調する。第2の期間は、第1の期間と交互の期間である。バイアス電源は、第3の期間におけるバイアスエネルギーのレベルが第4の期間におけるバイアスエネルギーのレベルよりも高くなるように、バイアスエネルギーを変調する。第4の期間は、第3の期間と交互の期間である。バイアス電源は、第1の期間と部分的に重複する第3の期間の開始時点の第1の期間の開始時点に対する時間差を、進行波のパワー及び反射波のパワーから得られる高周波電力のプラズマへの電力結合効率に応じて調整する。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、プラズマの生成における高周波電力の電力結合効率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【
図2】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【
図3】高周波電力及びバイアスエネルギーの一例のタイミングチャートである。
【
図4】電力結合効率の時間変化を例示する図である。
【
図5】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持部、高周波電源、バイアス電源、及び測定器を備える。基板支持部は、電極を有し、チャンバ内に設けられている。高周波電源は、チャンバ内でガスからプラズマを生成するために高周波電力を供給するように構成されている。バイアス電源は、基板支持部上に載置された基板にプラズマからイオンを引き込むためにバイアスエネルギーを基板支持部の電極に与えるように構成されている。測定器は、高周波電力の進行波のパワー及び反射波のパワーを測定するように構成されている。高周波電源は、第1の期間における高周波電力のレベルが第1の期間と第2の期間における高周波電力のレベルよりも高くなるように、高周波電力を変調する。第2の期間は、第1の期間と交互の期間である。バイアス電源は、第3の期間におけるバイアスエネルギーのレベルが第4の期間におけるバイアスエネルギーのレベルよりも高くなるように、バイアスエネルギーを変調する。第4の期間は、第3の期間と交互の期間である。バイアス電源は、第1の期間と部分的に重複する第3の期間の開始時点の第1の期間の開始時点に対する時間差を、進行波のパワー及び反射波のパワーから得られる高周波電力のプラズマへの電力結合効率に応じて調整する。
【0010】
第1の期間と第3の期間との間の時間差は、高周波電力のプラズマへの結合効率に影響する。上記実施形態によれば、高周波電力のプラズマへの電力結合効率に応じて当該時間差が調整されるので、プラズマの生成における高周波電力の電力結合効率を高めることが可能となる。
【0011】
一つの例示的実施形態において、バイアス電源は、第3の期間の開始時点が第1の期間の開始時点に対して先行し、且つ、前記時間差が電力結合効率が低いほど大きくなるように、該時間差を調整するように構成されていてもよい。
【0012】
一つの例示的実施形態において、バイアス電源は、第1の期間の終了時点と第1の期間と部分的に重複する第3の期間の終了時点が一致するように、第3の期間の時間長を設定してもよい。
【0013】
一つの例示的実施形態において、バイアスエネルギーは、高周波電力又は周期的に発生される電圧のパルスであってもよい。
【0014】
一つの例示的実施形態において、高周波電源は、第2の期間において高周波電力の供給を停止するように構成されていてもよい。バイアス電源は、第4の期間においてバイアスエネルギーの供給を停止するように構成されていてもよい。
【0015】
別の一つの例示的実施形態において、プラズマ処理方法が提供される。プラズマ処理方法は、プラズマ処理装置のチャンバ内に設けられた基板支持部上に基板を載置する工程を含む。プラズマ処理方法は、チャンバ内でプラズマを生成するために供給される高周波電力を変調する工程を更に含む。高周波電力は、第1の期間における高周波電力のレベルが第2の期間における高周波電力のレベルよりも高くなるように変調される。第2の期間は、第1の期間と交互の期間である。プラズマ処理方法は、基板にプラズマからイオンを引き込むために基板支持部の電極に供給されるバイアスエネルギーを変調する工程を更に含む。バイアスエネルギーは、第3の期間におけるバイアスエネルギーのレベルが第4の期間におけるバイアスエネルギーのレベルよりも高くなるように変調される。第4の期間は、第3の期間と交互の期間である。プラズマ処理方法は、高周波電力のプラズマへの電力結合効率に応じて、第1の期間と部分的に重複する第3の期間の開始時点の第1の期間の開始時点に対する時間差を調整する工程を更に含む。電力結合効率は、高周波電力の進行波のパワー及び高周波電力の反射波のパワーから得られる。
【0016】
一つの例示的実施形態において、前記時間差は、第3の期間の開始時点が第1の期間の開始時点に対して先行し、且つ、該時間差が電力結合効率が低いほど大きくなるように、調整されてもよい。
【0017】
一つの例示的実施形態において、第1の期間の終了時点と第1の期間と部分的に重複する第3の期間の終了時点が一致するように、第3の期間の時間長が設定されてもよい。
【0018】
一つの例示的実施形態において、バイアスエネルギーは、高周波電力又は周期的に発生される電圧のパルスであってもよい。
【0019】
一つの例示的実施形態において、高周波電力の供給は、第2の期間において停止されてもよい。バイアスエネルギーの供給は、第4の期間において停止されてもよい。
【0020】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0021】
図1及び
図2は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【0022】
一実施形態において、プラズマ処理システムは、プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、基板支持部11及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも一つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも一つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも一つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持部11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0023】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも一つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP;Capacitively Coupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)、又は表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。また、AC(Alternating Current)プラズマ生成部及びDC(Direct Current)プラズマ生成部を含む、種々のタイプのプラズマ生成部が用いられてもよい。一実施形態において、ACプラズマ生成部で用いられるAC信号(AC電力)は、100kHz~10GHzの範囲内の周波数を有する。従って、AC信号は、RF(Radio Frequency)信号及びマイクロ波信号を含む。一実施形態において、RF信号は、200kHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。
【0024】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0025】
以下に、プラズマ処理装置1の一例としての容量結合プラズマ処理装置の構成例について説明する。容量結合プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、複数の電源、及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも一つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。側壁10aは接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0026】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板(ウェハ)Wを支持するための中央領域(基板支持面)111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域(リング支持面)111bとを有する。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。
【0027】
一実施形態において、本体部111は、基台114及び静電チャック116を含む。基台114は、導電性部材を含む。基台114の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャック116は、基台114の上に配置される。静電チャック116の上面は、基板支持面111aを有する。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも一つはエッジリングである。また、図示は省略するが、基板支持部11は、静電チャック116、リングアセンブリ112、及び基板Wのうち少なくとも一つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と基板支持面111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0028】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも一つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも一つのガス供給口13a、少なくとも一つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0029】
ガス供給部20は、少なくとも一つのガスソース21及び少なくとも一つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも一つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも一つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する少なくとも一つの流量変調デバイスを含んでもよい。
【0030】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0031】
プラズマ処理装置1の複数の電源は、高周波電源31及びバイアス電源32を含む。高周波電源31は、チャンバ10内でガスからプラズマを生成するために高周波電力RFを供給するように構成されている。高周波電力RFは、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。高周波電源31は、整合器31mを介して基板支持部11の電極(例えば、基台114)に接続されている。整合器31mは、高周波電源31の負荷のインピーダンスを高周波電源31の出力インピーダンスに整合させるための整合回路を含んでいる。なお、高周波電源31は、基台114に代えて基板支持部11の他の電極に接続されていてもよい。或いは、高周波電源31は、整合器31mを介して上部電極に接続されていてもよい。
【0032】
バイアス電源32は、基板支持部11の電極(例えば、基台114)に電気的に接続されている。バイアス電源32は、基板支持部11上に載置された基板Wにプラズマからイオンを引き込むためにバイアスエネルギーBEを基板支持部11の電極に与えるように構成されている。なお、バイアス電源32は、基台114の代わりに、基板支持部11の他の電極に電気的に接続されていてもよい。
【0033】
バイアスエネルギーBEは、高周波電力、即ち高周波バイアス電力LF又は周期的に発生される電圧のパルスPVであってもよい(
図3参照)。高周波バイアス電力LFは、400kHz~13.56MHzの範囲内のバイアス周波数を有する。バイアスエネルギーBEが高周波バイアス電力LFである場合には、バイアス電源32は、整合器32mを介して基板支持部11の電極に接続される。整合器32mは、バイアス電源32の負荷のインピーダンスをバイアス電源32の出力インピーダンスに整合させるための整合回路を含む。
【0034】
電圧のパルスPVは、バイアス周波数の逆数である時間長を有する周期で発生される。バイアス周波数は、100kHz~13.56MHzの範囲内の周波数であり得る。電圧のパルスPVは、負の電圧のパルスであり得る。電圧のパルスPVは、負の直流電圧のパルスであってもよい。電圧のパルスPVは、矩形パルス波、三角パルス波、インパルス波のような任意の波形を有していてもよい。
【0035】
以下、
図2と共に、
図3を参照する。
図3は、高周波電力及びバイアスエネルギーの一例のタイミングチャートである。
図3に示すように、高周波電源31は、第1の期間P1における高周波電力RFのレベル(ワット)が第2の期間P2における高周波電力RFのレベル(ワット)よりも高くなるように、高周波電力RFを変調する。第2の期間P2は、第1の期間P1と交互の期間である。第2の期間P2における高周波電力RFのレベルは、0ワットであってもよい。即ち、一実施形態において、高周波電源31は、第2の期間P2において高周波電力RFの供給を停止するように構成されていてもよい。或いは、第2の期間P2における高周波電力RFのレベルは、0ワットよりも大きくてもよい。なお、各々が第1の期間P1と第2の期間P2を含む高周波電力RFの変調周期の時間長の逆数である変調周波数は、バイアス周波数よりも低い。変調周波数は、例えば1Hz~100kHzの範囲内の周波数である。
【0036】
バイアス電源32は、第3の期間P3におけるバイアスエネルギーBEのレベルが第4の期間P4におけるバイアスエネルギーBEのレベルよりも高くなるように、バイアスエネルギーBEを変調する。バイアスエネルギーBEのレベルは、バイアスエネルギーBEが高周波バイアス電力LFである場合には、電力レベルである。バイアスエネルギーBEのレベルは、バイアスエネルギーBEが電圧のパルスPVである場合には、パルスPVの電圧レベルの絶対値である。第4の期間P4は、第3の期間P3と交互の期間である。第4の期間P4におけるバイアスエネルギーBEのレベルは、0であってもよい。即ち、一実施形態において、バイアス電源32は、第4の期間P4においてバイアスエネルギーBEの供給を停止するように構成されていてもよい。或いは、第4の期間P4におけるバイアスエネルギーBEのレベルは、0よりも大きくてもよい。なお、各々が第3の期間P3と第4の期間P4を含むバイアスエネルギーBEの変調周期の時間長は、上述の変調周波数の逆数である。
【0037】
バイアス電源32は、
図3に示すように、初期的には第3の期間P3の開始時点が第1の期間P1の開始時点と一致するように、バイアスエネルギーBEを供給してもよい。バイアス電源32は、第1の期間P1に部分的に重複する第3の期間P3の開始時点の第1の期間P1の開始時点に対する時間差TDを、高周波電力RFのプラズマへの電力結合効率に応じて調整するように構成されている。
【0038】
電力結合効率は、高周波電力RFのプラズマへの結合効率を表す指標であり、高周波電力RFの進行波のパワーPf及び反射波のパワーPrから求められる。電力結合効率は、{(Pf-Pr)/Pf}×100%から求められる。或いは、電力結合効率は、(Pf-Pr)から求められてもよい。なお、進行波のパワーPf及び反射波のパワーPrは、第1の期間P1の開始時点において測定され得る。
【0039】
プラズマ処理装置1において、進行波のパワーPf及び反射波のパワーPrは、測定器34によって測定される。測定器34は、高周波電源31と整合器31mとの間で、進行波のパワーPf及び反射波のパワーPrを測定するように設けられていてもよい。或いは、測定器34は、整合器31mと基板支持部11の電極(例えば、基台114)との間で、進行波のパワーPf及び反射波のパワーPrを測定するように設けられていてもよい。
【0040】
電力結合効率に応じた時間差TDは、予め準備された関数又はテーブルを用いて決定されてもよい。電力結合効率及びこれに応じた時間差TDは、バイアス電源32において求められてもよい。或いは、電力結合効率及びこれに応じた時間差TDは、制御部2において求められて、求められた時間差TDが制御部2からバイアス電源32に指定されてもよい。
【0041】
一実施形態において、バイアス電源32は、第3の期間P3の開始時点が第1の期間P1の開始時点に対して先行し、且つ、時間差TDが電力結合効率が低いほど大きくなるように、時間差TDを調整するように構成されていてもよい。また、バイアス電源32は、
図3に示すように、第1の期間P1の終了時点と第1の期間P1と部分的に重複する第3の期間P3の終了時点が一致するように、第3の期間P3の時間長を設定してもよい。
【0042】
以下、
図4を参照する。
図4は、電力結合効率の時間変化を例示する図である。
図4に示す三つの電力結合効率の時間変化は、プラズマ処理装置1を用いて、第1の期間P1の開始時点における高周波電力RFの電力結合効率を取得することにより得たものである。
図4に示す三つの電力結合効率の時間変化を取得したときの高周波電力RF及びバイアスエネルギーBEの変調周波数は400kHzであった。バイアスエネルギーBEとしては、電圧のパルスPVを用いた。
図4に示す三つの電力結合効率の時間変化の取得においては、バイアスエネルギーBEの変調周期と高周波電力RFの変調周期との間の位相差として、0deg、-9deg、-18degの三種類の位相差を用いた。即ち、第3の期間P3の開始時点とこれに続く第1の期間P1の開始時点との間の時間差TDを、0秒、0.0625μ秒、0.125μ秒に設定することにより、
図4に示す三つの電力結合効率の時間変化を取得した。
図4に示すように、高周波電力RFのパルスの供給が開始された時点では、位相差が大きいほど、即ち、時間差TDが大きいほど、プラズマへの高周波電力RFの電力結合効率は、高くなっていた。
【0043】
図4に示す三つの電力結合効率の時間変化からわかるように、第1の期間P1と第3の期間P3との間の時間差TDは、高周波電力RFのプラズマへの結合効率に影響する。プラズマ処理装置1によれば、高周波電力RFのプラズマへの電力結合効率に応じて時間差TDが調整されるので、プラズマの生成における高周波電力RFの電力結合効率を高めることが可能となる。
【0044】
以下、
図5を参照して、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理方法について説明する。
図5は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理方法の流れ図である。以下、プラズマ処理装置1が用いられる場合を例にとって、
図5に示すプラズマ処理方法(以下、「方法MT」という)について説明する。なお、方法MTの各工程において、プラズマ処理装置1の各部は、制御部2によって制御され得る。
【0045】
方法MTは、工程STaで開始する。工程STaでは、基板支持部11上に基板Wが載置される。方法MTの工程STb~工程STdは、基板Wが基板支持部11上に載置された状態で実行される。また、工程STb~工程STdが実行されている期間においては、処理ガスがガス供給部20からチャンバ10内に供給され、チャンバ10内の圧力が指定された圧力に排気システム40によって調整される。
【0046】
工程STbでは、高周波電力RFが変調される。高周波電力RFは、チャンバ10内でプラズマを生成するために供給される。高周波電力RFは、上述したように、第1の期間P1における高周波電力RFのレベルが第2の期間P2における高周波電力RFのレベルよりも高くなるように変調される。
【0047】
工程STcでは、バイアスエネルギーBEが変調される。バイアスエネルギーBEは、基板Wにプラズマからイオンを引き込むために基板支持部11の電極(例えば、基台114)に供給される。バイアスエネルギーBEは、上述したように、第3の期間P3におけるバイアスエネルギーBEのレベルが第4の期間P4におけるバイアスエネルギーBEのレベルよりも高くなるように変調される。
【0048】
工程STdでは、高周波電力RFのプラズマへの電力結合効率に応じて、第1の期間P1と部分的に重複する第3の期間P3の開始時点の第1の期間P1の開始時点に対する時間差TDが調整される。電力結合効率は、上述したように、測定器34によって取得される高周波電力RFの進行波のパワーPf及び高周波電力の反射波のパワーPrから得られる。進行波のパワーPf及び反射波のパワーPrは、第1の期間P1の開始時点において測定され得る。
【0049】
工程STdにおいて、時間差TDは、第3の期間P3の開始時点が第1の期間P1の開始時点に対して先行し、且つ、時間差TDが電力結合効率が低いほど大きくなるように、調整されてもよい。また、第1の期間P1の終了時点と第1の期間P1と部分的に重複する第3の期間P3の終了時点が一致するように、第3の期間P3の時間長が設定されてもよい。
【0050】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0051】
例えば、別の実施形態において、プラズマ処理装置は、他の容量結合型のプラズマ処理装置であってもよい。或いは、プラズマ処理装置は、誘導結合型のプラズマ処理装置、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ処理装置、マイクロ波のような表面波によりプラズマを生成するプラズマ処理装置のような他のタイプのプラズマ処理装置であってもよい。また、方法MTは、プラズマ処理装置1とは別のプラズマ処理装置を用いて実行されてもよい。
【0052】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0053】
1…プラズマ処理装置、10…チャンバ、11…基板支持部、31…高周波電源、32…バイアス電源、34…測定器。