(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185394
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】情報処理装置、シミュレーション方法及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20221207BHJP
H01L 21/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
G05B23/02 G
H01L21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093049
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】榎本 忠
(72)【発明者】
【氏名】山本 政和
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA13
3C223BA03
3C223BB17
3C223CC02
3C223EB01
3C223FF22
3C223FF23
3C223GG01
3C223HH02
3C223HH04
(57)【要約】
【課題】半導体製造装置内に導入されるガスの温度をプロセスパラメータに含むシミュレーションモデルを構築する。
【解決手段】半導体製造装置において実行中のプロセス状態のシミュレーションを、前記半導体製造装置のシミュレーションモデルを用いて実行する情報処理装置であって、プロセスパラメータに従ってプロセスを実行中の前記半導体製造装置で測定された物理センサデータを取得する物理センサデータ取得部と、前記物理センサデータを含むプロセスパラメータに従って前記シミュレーションモデルによるシミュレーションを実行して仮想センサデータ及び仮想プロセス結果データを算出するシミュレーション実行部と、を有し、前記物理センサデータ取得部が取得する物理センサデータは、前記プロセスを実行中の前記半導体製造装置に導入されるガスの温度を含む、情報処理装置が提供される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置において実行中のプロセス状態のシミュレーションを、前記半導体製造装置のシミュレーションモデルを用いて実行する情報処理装置であって、
プロセスパラメータに従ってプロセスを実行中の前記半導体製造装置で測定された物理センサデータを取得する物理センサデータ取得部と、
前記物理センサデータを含むプロセスパラメータに従って前記シミュレーションモデルによるシミュレーションを実行して仮想センサデータ及び仮想プロセス結果データを算出するシミュレーション実行部と、を有し、
前記物理センサデータ取得部が取得する物理センサデータは、前記プロセスを実行中の前記半導体製造装置に導入されるガスの温度を含む、情報処理装置。
【請求項2】
前記物理センサデータ取得部は、前記半導体製造装置のガス導入口にガスを導入するガス導入配管内に配置された温度センサが測定するガスの温度を取得する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記物理センサデータと、前記仮想センサデータと、が近似するように、前記プロセスパラメータを調整するプロセスパラメータ調整部を有する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記プロセスパラメータ調整部は、ユーザに指定された物理プロセス結果データとなるように、前記物理プロセス結果データに近似した前記仮想プロセス結果データとなる前記プロセスパラメータを決定する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記プロセスパラメータに従ったプロセスを実行後の物理プロセス結果データと、前記シミュレーション実行部により算出された前記仮想プロセス結果データと、が近似すると共に、前記物理センサデータと、前記仮想センサデータと、が近似するように、前記シミュレーションモデルを作成又は更新するシミュレーションモデル編集部を有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記シミュレーションモデル編集部は、複数台の前記半導体製造装置の前記物理プロセス結果データ、前記仮想プロセス結果データ、前記物理センサデータ、及び前記仮想センサデータ、を用いて、前記シミュレーションモデルを作成又は更新する、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記物理センサデータ、前記仮想センサデータ、及び前記仮想プロセス結果データを用いて、前記プロセスの実行中に、前記半導体製造装置のプロセス状態を可視化して表示部に表示させる表示制御部を有する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記仮想プロセス結果データによる前記半導体製造装置のプロセス状態と、前記プロセスパラメータに従ったプロセスを実行後の物理プロセス結果データによる前記半導体製造装置のプロセス状態と、を比較できる形態で表示する、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記表示制御部は、前記半導体製造装置のプロセス状態を可視化して表示部に表示させる際に、前記物理センサデータの測定ポイント及び前記仮想センサデータの測定ポイントを可視化して表示部に表示させる、
請求項7又は8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
情報処理装置が、半導体製造装置において実行中のプロセス状態のシミュレーションを、前記半導体製造装置のシミュレーションモデルを用いて実行するシミュレーション方法であって、
プロセスパラメータに従ってプロセスを実行中の前記半導体製造装置で測定された物理センサデータを取得する工程と、
前記物理センサデータを含むプロセスパラメータに従って前記シミュレーションモデルによるシミュレーションを実行して仮想センサデータ及び仮想プロセス結果データを算出する工程と、を有し、
前記物理センサデータを取得する工程では、取得する前記物理センサデータに、前記プロセスを実行中の前記半導体製造装置に導入されるガスの温度を含む、シミュレーション方法。
【請求項11】
半導体製造装置を制御する装置制御コントローラと、前記半導体製造装置において実行中のプロセス状態のシミュレーションを、前記半導体製造装置のシミュレーションモデルを用いて実行する情報処理装置と、を有する情報処理システムであって、
前記装置制御コントローラは、前記半導体製造装置において実行するプロセスを制御し、
前記情報処理装置は、プロセスパラメータに従ってプロセスを実行中の前記半導体製造装置で測定された物理センサデータを取得する物理センサデータ取得部と、
前記物理センサデータを含むプロセスパラメータに従って前記シミュレーションモデルによるシミュレーションを実行して仮想センサデータ及び仮想プロセス結果データを算出するシミュレーション実行部と、を有し、
前記物理センサデータ取得部が取得する物理センサデータは、前記プロセスを実行中の前記半導体製造装置に導入されるガスの温度を含む、情報処理システム。
【請求項12】
前記物理センサデータ取得部は、前記半導体製造装置のガス導入口にガスを導入するガス導入配管内に配置された温度センサが測定するガスの温度を取得する、
請求項11に記載の情報処理システム。
【請求項13】
前記装置制御コントローラは、前記ガスの温度に基づき前記半導体製造装置のガス導入口にガスを導入するガス導入配管内に配置されたヒータを制御する、
請求項11又は12に記載の情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、シミュレーション方法及び情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製品の製造または研究開発の現場において、プロセスシミュレーションが用いられている。プロセスシミュレーションは半導体プロセス(以下、プロセスと呼ぶ)に関わる様々な物理現象を物理モデルにより扱うことができる(例えば、特許文献1参照)。例えばプロセスシミュレーションでは、プロセスを実行後の測定結果から、プロセスを実行中のプロセス状態を推測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、半導体製造装置内に導入されるガスの温度をプロセスパラメータに含むシミュレーションモデルを構築する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、半導体製造装置において実行中のプロセス状態のシミュレーションを、前記半導体製造装置のシミュレーションモデルを用いて実行する情報処理装置であって、プロセスパラメータに従ってプロセスを実行中の前記半導体製造装置で測定された物理センサデータを取得する物理センサデータ取得部と、前記物理センサデータを含むプロセスパラメータに従って前記シミュレーションモデルによるシミュレーションを実行して仮想センサデータ及び仮想プロセス結果データを算出するシミュレーション実行部と、を有し、前記物理センサデータ取得部が取得する物理センサデータは、前記プロセスを実行中の前記半導体製造装置に導入されるガスの温度を含む、情報処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、半導体製造装置内に導入されるガスの温度をプロセスパラメータに含むシミュレーションモデルを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る情報処理システムの一例の構成図である。
【
図2】コンピュータの一例のハードウェア構成図である。
【
図3】実施形態に係る自律制御コントローラの一例の機能ブロック図である。
【
図4】実施形態に係る解析サーバの一例の機能ブロック図である。
【
図5】実施形態に係る情報処理システムの処理のフローチャートである。
【
図6】
図5の処理に含まれるプロセス実行処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】シミュレーションモデルを編集する処理の一例のフローチャートである。
【
図9】実施形態に係る半導体製造装置の一例の概略図である。
【
図10】実施形態に係るガスの温度を含んだプロセスパラメータに従ったシミュレーションモデルの作成及び更新の処理を表した一例の説明図である。
【
図11】実施形態に係るガスの温度を測定する温度センサの配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
<システム構成>
図1は本実施形態に係る情報処理システム5の一例の構成図である。
図1に示す情報処理システム5は、半導体製造装置1、既存センサ2、追加センサ3、自律制御コントローラ4、装置制御コントローラ6、ホストコンピュータ7、外部測定器8、解析サーバ70、ARサーバ71、管理サーバ72及びデータレイク73を有する。
【0010】
半導体製造装置1、自律制御コントローラ4、装置制御コントローラ6、ホストコンピュータ7、外部測定器8、解析サーバ70、ARサーバ71、及び管理サーバ72は、ネットワークNを介して通信可能に接続される。ネットワークNの一例としてはLAN(Local Area Network)が挙げられる。
【0011】
半導体製造装置1は例えば後述する熱処理成膜装置(
図9)を一例とし、装置制御コントローラ6の制御によりプロセスパラメータに従ってプロセスを実行する。プロセスパラメータには、熱処理成膜装置の処理容器内の温度、処理容器内の圧力、処理容器内に供給するガスの流量(ガス濃度)、処理容器内に導入されるガスの温度等が含まれる。
【0012】
半導体製造装置1は複数の既存センサ2を搭載している。既存センサ2は熱処理成膜装置の処理容器内の温度、処理容器内の圧力、処理容器内に供給するガスの流量などを物理センサデータとして測定する物理(Physical)センサの一例である。追加センサ3は後述の仮想(Virtual)センサデータの確からしさを確認するために搭載される物理センサの一例である。仮想センサデータは後述のシミュレーションモデル(物理モデル)を元に計算される。追加センサ3はシミュレーションモデルを元に計算される仮想センサデータの確からしさを確認するために搭載されるため、顧客に出荷される最終製品に搭載されていなくてもよい。追加センサ3は温度、圧力等を物理センサデータとして測定する。
【0013】
処理容器内の温度は処理容器に配置されたヒータやガス配管に巻かれたヒータにより制御される。しかしながら、ガス導入配管に巻かれたヒータでは配管内のガスの温度を直接測定できない。また、近年の低温化プロセスでは、ヒータのパワー値が大きいためにヒータによる加熱が膜質の劣化を招く等の影響を与える。このため、処理容器内の熱負荷(Thermal Budget)の低減を図り、低温化プロセスへの影響を低減するために処理容器内のヒータを用いずに処理容器内の温度を制御したい場合がある。そこで、本開示では半導体製造装置1に導入するガスの温度を測定する温度センサを設け、測定したガスの温度に基づき、ガス配管内に設けられたヒータによりガスの温度を直接的に制御することで処理容器内に導入されるガスの温度を変更する。なお、ガス配管内のガスの温度を測定する温度センサは、追加センサ3の一例である。
【0014】
自律制御コントローラ4は半導体製造装置1を自律制御するためのコントローラであって、後述のように、シミュレーションモデルを用いた半導体製造装置1で実行中のプロセス状態のシミュレーション、プロセスパラメータの最適化などを行う。自律制御コントローラ4は半導体製造装置1ごとに設けられている。自律制御コントローラ4は後述のシミュレーションモデルを用いたシミュレーションを実行することにより、ウェーハ上の膜の付き具合(膜の形状、成膜レート等)、ウェーハの温度、ガス、プラズマ密度、プラズマ電子温度などの状態を、プロセスパラメータに従ったプロセスを実行後の結果として算出する。後述のシミュレーションモデルを用いたシミュレーションを実行することにより算出したデータ(仮想データ)には、仮想センサデータ及び仮想プロセス結果データが含まれる。仮想センサデータは仮想センサから出力されるデータである。仮想プロセス結果データは、仮想データに含まれるデータのうち、仮想センサデータ以外である。
【0015】
装置制御コントローラ6は半導体製造装置1を制御するためのコンピュータ構成を持ったコントローラである。装置制御コントローラ6は後述のように最適化されたプロセスパラメータを、半導体製造装置1の制御部品を制御するプロセスパラメータとして半導体製造装置1に出力する。装置制御コントローラ6は半導体製造装置1毎に設けられた制御部
図9の制御部90)と連携し、半導体製造装置1毎に実行するプロセスを制御する。
【0016】
ホストコンピュータ7は半導体製造装置1に対する指示をオペレータ(作業者)から受け付けると共に、半導体製造装置1に関する情報を作業者に提供するマンマシンインタフェース(MMI)の一例である。
【0017】
外部測定器8は、膜厚測定器、シート抵抗測定器、パーティクル測定器など、プロセスパラメータに従ったプロセスの実行後の結果を測定する測定器である。例えば外部測定器8は、モニタウェーハ等のウェーハ上の膜の付き具合を測定する。以下では、外部測定器8により測定したデータを物理プロセス結果データと呼ぶ。
【0018】
解析サーバ70は後述するようにシミュレーションモデルの更新、プロセスパラメータの最適化のためのデータ解析を行い、必要に応じて故障事前検知やメンテナンス時期事前検知のためのデータ解析などを行う。ARサーバ71はAR(拡張現実)技術を用いて、半導体製造装置1で実行中のプロセス状態のシミュレーションの結果の画面表示や、保守・メンテナンスなどの作業支援のための画面表示を行う。
【0019】
管理サーバ72は、データレイク73などのデータ保存領域に保存された例えば1つ以上の企業の複数の半導体製造装置1に関する情報を管理する。複数の半導体製造装置1に関する情報は、半導体製造装置1でプロセスを実行したプロセスパラメータ、そのプロセスパラメータに従ってプロセスを実行した場合の物理センサデータ、及び物理プロセス結果データ等を含む。このような、複数の半導体製造装置1に関する情報を元にシミュレーションモデルを後述のように編集することで、複数の半導体製造装置1の振る舞いを元にベースのシミュレーションモデルを編集(補正)できる。シミュレーションモデルのベースは、複数の半導体製造装置1を元にした最大公約数的なモデルとなる。
【0020】
シミュレーションモデルのベースは、例えばディープラーニングにより、それぞれの半導体製造装置1へ適合するように編集する。この編集は、例えば半導体製造装置1を運用する毎に実行することで、運用するほど、それぞれの半導体製造装置1におけるシミュレーションモデルの予測精度が向上する。
【0021】
なお、
図1の情報処理システム5は一例であり、用途や目的に応じて様々なシステム構成があることは言うまでもない。
図1の半導体製造装置1、自律制御コントローラ4、装置制御コントローラ6、ホストコンピュータ7、外部測定器8、解析サーバ70、ARサーバ71、及び管理サーバ72のような装置の区分は一例である。
【0022】
例えば情報処理システム5は、半導体製造装置1、自律制御コントローラ4、装置制御コントローラ6、ホストコンピュータ7、外部測定器8、解析サーバ70、ARサーバ71、及び管理サーバ72の少なくとも2つが一体化された構成であってもよい。またこれらの各部が分割された構成であってもよく、様々な構成が可能である。また、解析サーバ70、ARサーバ71は
図1の情報処理システム5のように複数台の半導体製造装置1をまとめて扱えるようにしてもよいし、半導体製造装置1と一対一に設けるようにしてもよい。半導体製造装置1と一対一に設けた解析サーバ70及びARサーバ71は、対応する半導体製造装置1に特化した処理を行うことができる。
【0023】
<ハードウェア構成>
図1に示す情報処理システム5の自律制御コントローラ4、装置制御コントローラ6、ホストコンピュータ7、解析サーバ70、ARサーバ71、及び管理サーバ72は例えば
図2に示すようなハードウェア構成のコンピュータにより実現される。
図2はコンピュータの一例のハードウェア構成図である。
【0024】
図2のコンピュータ500は、入力装置501、出力装置502、外部I/F(インタフェース)503、RAM(Random Access Memory)504、ROM(Read Only Memory)505、CPU(Central Processing Unit)506、通信I/F507及びHDD(Hard Disk Drive)508などを備え、それぞれがバスBで相互に接続されている。なお、入力装置501及び出力装置502は必要なときに接続して利用する形態であってもよい。
【0025】
入力装置501はキーボードやマウス、タッチパネルなどであり、作業者等が各操作信号を入力するのに用いられる。出力装置502はディスプレイ等であり、コンピュータ500による処理結果を表示する。通信I/F507はコンピュータ500をネットワークに接続するインタフェースである。HDD508は、プログラムやデータを格納している不揮発性の記憶装置の一例である。
【0026】
外部I/F503は、外部装置とのインタフェースである。コンピュータ500は外部I/F503を介してSD(Secure Digital)メモリカードなどの記録媒体503aの読み取り及び/又は書き込みを行うことができる。ROM505は、プログラムやデータが格納された不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。RAM504はプログラムやデータを一時保持する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。
【0027】
CPU506は、ROM505やHDD508などの記憶装置からプログラムやデータをRAM504上に読み出し、処理を実行することで、コンピュータ500全体の制御や機能を実現する演算装置である。
【0028】
図1の自律制御コントローラ4、装置制御コントローラ6、ホストコンピュータ7、解析サーバ70、ARサーバ71、及び管理サーバ72は、
図2のコンピュータ500のハードウェア構成等により、各種機能を実現できる。
【0029】
<機能構成>
本実施形態に係る情報処理システム5の自律制御コントローラ4は、例えば
図3の機能ブロックで実現される。
図3は、本実施形態に係る自律制御コントローラの一例の機能ブロック図である。なお、
図3の機能ブロック図は本実施形態の説明に不要な構成について図示を省略している。
【0030】
自律制御コントローラ4は、自律制御コントローラ4用のプログラムを実行することにより、物理プロセス結果データ取得部100、物理センサデータ取得部102、プロセスパラメータ取得部104、データベース106、シミュレーション実行部108、シミュレーション結果判定部110、表示制御部112、及びシミュレーションモデル更新部114を実現している。また、シミュレーション結果判定部110は、プロセスパラメータ調整部124を有する構成である。
【0031】
物理プロセス結果データ取得部100は、プロセスパラメータに従ったプロセスを実行後の結果である物理プロセス結果データを取得し、データベース106に保存する。
【0032】
物理センサデータ取得部102は、既存センサ2及び追加センサ3が測定した物理センサデータを取得し、シミュレーション実行部108に提供する。物理センサデータ取得部102が取得する物理センサデータには、プロセスを実行中の半導体製造装置1に導入されるガスの温度が含まれる。プロセスパラメータ取得部104は半導体製造装置1で実行中のプロセスのプロセスパラメータを取得してシミュレーション実行部108に提供する。データベース106はシミュレーション実行部108がシミュレーションに使用するデータ及び解析サーバ70がシミュレーションモデルの更新やデータ解析に使用するデータを保存しているデータ保存領域である。
【0033】
シミュレーション実行部108は、プロセスを実行中の半導体製造装置1と同一のプロセスパラメータに従って、シミュレーションモデルによるシミュレーションを実行することで、プロセスを実行中の半導体製造装置1のプロセス状態を算出できる。
【0034】
なお、シミュレーション実行部108がシミュレーションに用いる半導体製造装置1のシミュレーションモデルは、例えば1DCAEのシミュレーションモデルを用いることができる。1DCAEのシミュレーションモデルは、上流設計である機能設計において半導体製造装置1の全体を機能ベースで表現することで、構造設計(3DCAE)の前の評価解析を可能としている。
【0035】
シミュレーション結果判定部110は、同一のプロセスパラメータに基づく物理プロセス結果データ、物理センサデータ、仮想プロセス結果データ、及び仮想センサデータを用いて後述のプロセスパラメータ調整部124によるプロセスパラメータの最適化を行う。
【0036】
表示制御部112は、半導体製造装置1でプロセスを実行しながら、半導体製造装置1と同一のプロセスパラメータに従って実行されたシミュレーションによる仮想プロセス結果データ、仮想センサデータを用いることで、プロセスを実行中の半導体製造装置1のプロセス状態をリアルタイムに可視化して例えばホストコンピュータ7に表示させることができる。
【0037】
したがって、表示制御部112はプロセスを実行中の半導体製造装置1のプロセス状態という現実(Physical)空間の変化をリアルタイムの連動性をもって仮想(Cyber)空間に再現する、いわゆるデジタルツインを実現できる。デジタルツインでは半導体製造装置1でプロセスを実行しながら、仮想空間に半導体製造装置1のプロセス状態をリアルタイムに再現できる。自律制御コントローラは、半導体製造装置1でプロセスを実行しながら、仮想空間に半導体製造装置1のプロセス状態をリアルタイムに再現するデジタルツインの動作を実行する情報処理装置の一例である。
【0038】
このようなデジタルツインの環境を利用することで、シミュレーション結果判定部110は半導体製造装置1のプロセス状態をモニタリングできる。デジタルツインの技術を使用する前は、あるパラメータの条件で半導体製造装置1によりプロセスを実行した結果得られる、膜厚、RI(屈折率)、成膜レート、エッチングレートにより例示されるプロセス特性を測定し、その測定結果に基づき次のプロセスを実行するためのパラメータの調整を行っていた。これに対して、デジタルツインの技術を使用すれば、最適化されたシミュレーションモデルに基づくバーチャル実験により、プロセス管理を容易にすることができる。一例としては、パラメータの調整及びレシピ開発の加速、物理センサの仮想センサへの置き換えにより量産時に半導体製造装置1へ配置する物理センサ数の低減、量産時のアウトプットと歩留まりの最適化が可能となる。また、後述のプロセスパラメータの調整が可能となる。更に故障事前検知、メンテナンス時期事前検知等も可能となる。
【0039】
これにより、最適化されたシミュレーションモデルに基づくバーチャル実験により、プロセス管理を容易にすることができる。特に本実施形態では、ガス導入配管24に接続された継手82を貫通する温度センサ80によりガス導入配管24内のガスの温度を測定できる。温度センサ80は、測定した温度を制御部90に送信する。ガス導入配管24内には、第2ヒータ81が配置され、第2ヒータ81はガス導入配管24内のガスを加熱するように構成されている。制御部90は温度センサ80が測定した温度に基づき配管内のガスが所望の温度になるように第2ヒータ81を制御する。これにより、半導体製造装置内に導入されるガスの温度をプロセスパラメータに含むシミュレーションモデルを構築する。この結果、ガスの温度をプロセスパラメータに含むシミュレーションモデルに基づくバーチャル実験により、プロセス管理をより容易にすることができる。
【0040】
シミュレーションモデル更新部114は、シミュレーション実行部108がプロセス状態のシミュレーションに用いるシミュレーションモデルを、解析サーバ70によって編集されたシミュレーションモデルに更新する。
【0041】
図1に示す解析サーバ70は、例えば
図4の機能ブロックで実現される。
図4は、本実施形態に係る解析サーバの一例の機能ブロック図である。なお、
図4の機能ブロック図は本実施形態の説明に不要な構成について図示を省略している。
【0042】
解析サーバ70は、解析サーバ70用のプログラムを実行することで、物理データ取得部140、仮想データ取得部142、プロセスパラメータ取得部144、シミュレーションモデル記憶部146、シミュレーションモデル編集部148、及びシミュレーションモデル更新要求部150を実現している。
【0043】
物理データ取得部140は、自律制御コントローラ4又は管理サーバ72から解析対象の半導体製造装置1の物理センサデータ及び物理プロセス結果データを、物理(Physical)データとして取得し、シミュレーションモデル編集部148に提供する。
【0044】
仮想データ取得部142は、自律制御コントローラ4又は管理サーバ72から解析対象の半導体製造装置1の仮想センサデータ及び仮想プロセス結果データを、仮想(Cyber)データとして取得し、シミュレーションモデル編集部148に提供する。
【0045】
プロセスパラメータ取得部144は、自律制御コントローラ4又は管理サーバ72から解析対象の半導体製造装置1のプロセスパラメータを取得し、シミュレーションモデル編集部148に提供する。
【0046】
シミュレーションモデル記憶部146は自律制御コントローラ4のシミュレーション実行部108が半導体製造装置1のプロセス状態のシミュレーションに用いるためのシミュレーションモデルを記憶する。シミュレーションモデル編集部148は提供された物理データ、仮想データ及びプロセスパラメータを用いて、同一のプロセスパラメータによる物理データ及び仮想データの差異が小さくなるように(最適なシミュレーションモデルとなるように)例えば機械学習などを利用してシミュレーションモデルの編集を行う。なお、シミュレーションモデルの編集は、半導体製造装置1の通常運用時に必ずしも行う必要はなく、例えばシミュレーション対象の半導体製造装置1に物理的な仕様変更が行われた場合などに行えばよい。シミュレーションモデル更新要求部150は、編集されたシミュレーションモデルの更新を自律制御コントローラ4に要求する。
【0047】
<処理>
本実施形態に係る情報処理システム5では、プロセスパラメータに従ってプロセスを実行した半導体製造装置1の物理データと、その半導体製造装置1と同一のプロセスパラメータに従って実行したシミュレーションの仮想データと、の差異が小さくなるように例えば機械学習などにより編集されたシミュレーションモデルを用いる。
【0048】
シミュレーションモデルの編集のために、物理センサデータ取得部102は、プロセスパラメータに従ってプロセスを実行中の半導体製造装置1で測定された物理センサデータを取得する。シミュレーション実行部108は、物理センサデータを含むプロセスパラメータに従ってシミュレーションモデルによるシミュレーションを実行して仮想センサデータ及び仮想プロセス結果データを算出する。シミュレーションモデル編集部148は、取得した物理データと、その半導体製造装置1と同一のプロセスパラメータに従って実行したシミュレーションの仮想データと、の差異が小さくなるように例えば機械学習などによりシミュレーションモデルを編集する。本開示ではシミュレーションモデル編集部148は、解析サーバ70が有する機能として説明するが、自律制御コントローラ4が有する機能であってもよい。
【0049】
このようなシミュレーションモデルを用いることにより、本実施形態に係る情報処理システム5では、シミュレーション実行部108が実行するシミュレーションモデルを用いたシミュレーションの結果の確からしさを確保している。なお、シミュレーションモデルの編集は、前回の編集からの経過時間やプロセスの実行回数、同一のプロセスパラメータに従った物理データと仮想データとの差異の拡大などに従い、行うようにしてもよい。
【0050】
《プロセス実行》
次に、実施形態に係る情報処理システム5の処理について、
図5及び
図6を参照して説明する。
図5は実施形態に係る情報処理システム5の処理のフローチャートである。
図6は
図5に示す処理に含まれるプロセス実行処理(デジタルツイン)の一例を示すフローチャートである。
図6のプロセス実行処理は、装置制御コントローラ6が制御し、プロセスパラメータに従い半導体製造装置1が行う物理プロセスと、物理センサデータ、仮想センサデータ、仮想プロセス結果データを用いて自律制御コントローラ4が行う仮想プロセスを含む。
【0051】
なお、予め半導体製造装置1がプロセスを実行する度に、プロセスパラメータに従ったプロセスを実行後の結果である物理プロセス結果データ、物理センサデータ、仮想プロセス結果データ、仮想センサデータが収集され、データベース106に記憶されている。
【0052】
図5の処理が開始されると、ステップS1において装置制御コントローラ6は、物理モデル制御を行うかを判定する。以下、処理容器に配置されたヒータ及び/又はガス配管の外周に巻かれたヒータを総称して第1ヒータという。また、ガス配管内に設けられ、ガス配管内を流れるガスの温度を制御するヒータを第2ヒータという。第1ヒータは、半導体製造装置1の処理容器内のガスの温度を制御する又はガス配管を加熱することにより処理容器内又はガス配管内のガスの温度を間接的に制御する。第2ヒータはガス配管内に設けられ、ガス配管内のガスの温度を直接的に制御する。
【0053】
第1ヒータのパワー値が大きいために第1ヒータによる加熱によって処理容器内の温度が600℃程度まで上昇してしまうと、低温化プロセスの場合、膜の劣化等の影響を与える。このため、処理容器内の熱負荷(Thermal Budget)の低減を図り、低温化プロセスへの影響を抑えるために第1ヒータを用いずに処理容器内へ供給されるガスの温度を制御したい場合がある。例えば第2ヒータを用いてガスの温度を直接制御する場合、制御したガスの温度によって処理容器内を加熱することや冷却することができる。係る制御によれば、プロセスによってガスの温度を直接制御することで処理容器内の温度を高温にしたくない場合にも対応でき、処理容器内の熱負荷(Thermal Budget)の低減を図ることができる。この結果、低温化プロセス等のいずれのプロセスにおいても良質な成膜又はその他のウェーハ処理を実現できる。
【0054】
「物理モデル制御を行うか否か」のステップS1の判定は、予め設定された設定情報に基づき判定する。ただし、これに限らず、事前にシミュレーションを行う、もしくは、後述するヒータ制御用モデル(TVS)による制御によって成膜された膜厚、RI等の膜特性に関する測定データから判別を行い、ヒータ制御用モデルによる制御でプロセス結果が良好でないと判断した場合には、自動でステップS3に遷移しても良い。
【0055】
装置制御コントローラ6は、物理モデル制御を行わないと判定した場合、ステップS1にて「NO」と判定し、ステップS2に進む。ステップS2において、装置制御コントローラ6は、第1ヒータの制御を行い、ヒータ制御用モデルに従いプロセスを実行し、プロセスの実行を終了後、本処理を終了する。ヒータ制御用モデルに基づく制御では、第1ヒータの制御を行い、基板Wの温度を上昇又は降下させながら処理ガスを供給して熱処理を行う。例えば基板Wを昇温しながら熱処理を実行する場合、基板Wの周縁部の温度が中心部の温度よりも所定量だけ大きくなるように第1ヒータの制御を行った後に処理ガスを供給し、成膜を開始する。一方、例えば基板Wを降温しながら熱処理を実行する場合、基板Wの中心部の温度が周縁部の温度よりも所定量だけ大きくなるように第1ヒータの制御を行った後に処理ガスを供給し、成膜を開始する。
【0056】
一方、装置制御コントローラ6は、物理モデル制御を行うと判定した場合、ステップS1において「YES」と判定し、ステップS3に進む。ステップS3において装置制御コントローラ6は、ガス配管内の第2ヒータによるガスの温度の変更の可否を判定する。ガスの温度の変更の可否は、オペレータがその可否を選択してもよいし、装置制御コントローラ6がその可否を自動選択してもよい。例えばガス配管内に第2ヒータが設置されていない場合、オペレータ又は装置制御コントローラ6はガス配管内のガスの温度を変更できないため、ステップS3において「NO」と判定する。
【0057】
また、本開示のシミュレーションによりガス配管内のガスの温度とプロセス結果の膜形状との相関データが得られている場合、相関データに基づき、第2ヒータによるガスの温度の制御によって所望の膜形状が得られないと判断した場合、オペレータ又は装置制御コントローラ6はステップS3において「NO」と判定し、ステップS4に進む。第2ヒータによるガスの温度の制御によって所望の膜形状が得られると判断した場合、オペレータ又は装置制御コントローラ6はステップS3において「YES」と判定し、ステップS7に進む。
【0058】
ステップS4において装置制御コントローラ6は、プロセスパラメータのうちガスの流量又は処理容器内の圧力を変更する。なお、ステップS4では、装置制御コントローラ6は、ガスの流量と処理容器内の圧力の両方を変更してもよい。
【0059】
ステップS5において半導体製造装置1は、変更したガスの流量又は処理容器内の圧力を含むプロセスパラメータの条件に基づきプロセスを実行する。ステップS5のプロセスは、半導体製造装置1によりプロセスを実行しながら、仮想空間にて半導体製造装置1のプロセス状態をリアルタイムにする仮想プロセスを再現するデジタルツインである。装置制御コントローラ6はプロセスパラメータに従い半導体製造装置1によるプロセスを制御する。自律制御コントローラ4は、ユーザに指定された物理プロセス結果データに近似した仮想プロセス結果データとなるプロセスパラメータを決定し、シミュレーションモデルに従い仮想プロセスを制御する。ステップS5で実行するデジタルツインのプロセスの詳細については、
図6を用いて後述する。
【0060】
ステップS5においてプロセスの実行が終了すると、ステップS6に進み、装置制御コントローラ6及び自律制御コントローラ4は、物理センサデータ、物理プロセス結果データ、仮想センサデータ、仮想プロセス結果データをデータベース106に収集(保存)し、本処理を終了する。
【0061】
ステップS7において装置制御コントローラ6は、ガス配管内に測温部を有する温度センサ80により測定したガスの温度を取得し、取得したガスの温度に基づき第2ヒータに供給する電流値を算出する。例えばユーザに指定された物理プロセス結果データ(ユーザが望む膜形状のプロセス結果データ等)となるように、第2ヒータ81に供給する電流値が算出される。
【0062】
ステップS8において装置制御コントローラ6は、算出した電流値を第2ヒータに供給する。これにより、ガス配管(例えば
図9のガス導入配管24)から半導体製造装置1の処理容器内に導入されるガスの温度を所望の温度に制御することでウェーハ上の温度等を制御でき、これにより、ユーザが望む膜形状のプロセスを実現できる。
【0063】
ステップS9において半導体製造装置1は、変更したガスの温度を含めたプロセスパラメータの条件に基づきプロセスを実行する。ステップS9のプロセスは、半導体製造装置1によりプロセスを実行しながら、仮想空間にて半導体製造装置1のプロセス状態をリアルタイムにする仮想プロセスを再現するデジタルツイン技術を用いた物理モデル制御である。装置制御コントローラ6はプロセスパラメータに従い半導体製造装置1によるプロセスを制御する。自律制御コントローラ4は、シミュレーションモデルに従い仮想プロセスを制御する。装置制御コントローラ6はプロセスパラメータに従い半導体製造装置1によるプロセスを制御する。自律制御コントローラ4は、ユーザに指定された物理プロセス結果データに近似した仮想プロセス結果データとなるプロセスパラメータを決定し、シミュレーションモデルに従い仮想プロセスを制御する。ステップS9で実行するデジタルツインのプロセスの詳細については、
図6を用いて後述する。
【0064】
ステップS9においてプロセスの実行が終了すると、ステップS6に進み、装置制御コントローラ6及び自律制御コントローラ4は、物理センサデータ、物理プロセス結果データ、仮想センサデータ、仮想プロセス結果データをデータベース106に収集(保存)し、本処理を終了する。
【0065】
次に、
図6を参照しながら、ステップS5及びステップS9のプロセス実行処理の詳細について説明する。本処理は、ステップS5又はステップS9から呼び出され、開始される。
【0066】
ステップS10において半導体製造装置1は、装置制御コントローラ6から出力されたプロセスパラメータに従い、プロセスを実行する。
図5のステップS5から呼び出されて実行されるプロセスでは、プロセスパラメータにガスの温度は含まれない。ステップS9から呼び出されて実行されるプロセスでは、プロセスパラメータにガスの温度が含まれる。ステップS12において自律制御コントローラ4は、プロセスを実行中である半導体製造装置1から、既存センサ2及び追加センサ3で測定された物理センサデータを取得する。例えば、ステップS9のプロセスでは、ガスの温度を測定する温度センサで測定された物理センサデータを取得する。
【0067】
ステップS14において、自律制御コントローラ4のシミュレーション実行部108はプロセスを実行中の半導体製造装置1と同一のプロセスパラメータに従って、シミュレーションモデルによるシミュレーションを実行し、仮想センサデータ及び仮想プロセス結果データを算出する。
【0068】
ステップS16において、自律制御コントローラ4の表示制御部112は、プロセスを実行中の半導体製造装置1の物理センサデータ、半導体製造装置1と同一のプロセスパラメータに従って実行されたシミュレーションによる仮想プロセス結果データ、及び仮想センサデータを用いて、プロセスを実行中の半導体製造装置1のプロセス状態を例えば
図7のように可視化してホストコンピュータ7に表示させることができる。
【0069】
物理センサデータ、仮想センサデータ、及び仮想プロセス結果データを用いて、プロセスの実行中に半導体製造装置5のプロセス状態を可視化して表示部に表示してもよい。仮想プロセス結果データによる半導体製造装置5のプロセス状態と、プロセスパラメータに従ったプロセスを実行後の物理プロセス結果データによる半導体製造装置5のプロセス状態と、を比較できる形態で表示してもよい。半導体製造装置5のプロセス状態を可視化して表示部に表示させる際に、物理センサデータの測定ポイント及び前記仮想センサデータの測定ポイントを可視化して表示部に表示してもよい。本開示では、ガスの温度制御を仮想化し、ガス配管内のガスの可視化を実現できる。
【0070】
図7は温度評価画面の一例のイメージ図である。
図7の温度評価画面1000は、実行中のプロセスの温度表示画面1002と、プロセスの実行前に事前予測した温度表示画面1004と、が同時に表示された画面例である。
【0071】
なお、
図7の温度評価画面1000は一例である。最適化前のプロセスパラメータに従って実行されたシミュレーションの結果に基づく温度表示画面と、最適化後のプロセスパラメータに従って実行されたシミュレーションの結果に基づく温度表示画面と、が同時に表示される画面であってもよい。これにより、作業者はプロセスパラメータの最適化による改善度合いを確認できる。さらに、
図7の温度評価画面1000は、実行中のプロセスの温度表示画面と、予測した未来の温度表示画面と、が同時に表示される画面であってもよい。
【0072】
図7の温度表示画面1002及び1004は、例えばウェーハ、内管、外管、内側温度センサ、外側温度センサ、ガスの温度を測定する温度センサなどの各部の温度、仮想気流、対流などを表示する。
図7の温度表示画面1002及び1004は、温度やガス濃度の分布を色で表示する。
図7の温度表示画面1002及び1004は、360度、様々な視点で表示できる。
図7の温度表示画面1002及び1004は、輪切りにして必要な箇所を表示できる画面例を一例として示している。なお、不要な箇所は非表示にできるようにしてもよい。
【0073】
図7の温度表示画面1002及び1004は物理センサ又は仮想センサによる温度の測定点を黒色の点で表示する。
図7の温度表示画面1002及び1004は作業者がマウスなどでクリックした位置(作業者が温度を知りたい位置)の温度を表示するようにしてもよい。
【0074】
図6のステップS18に戻り、自律制御コントローラ4は半導体製造装置1で実行中のプロセスが終了するまでステップS12~S16の処理を繰り返す。半導体製造装置1で実行中のプロセスが終了すると、ステップS18からS20の処理に進み、自律制御コントローラ4のシミュレーション結果判定部110は、同一の位置及び時間の物理センサデータ及び仮想センサデータを比較する。比較の結果、同一の位置及び時間の物理センサデータ及び仮想センサデータが同じであるか否かを判定する。
【0075】
物理センサデータと仮想センサデータとが同じでないと判定すると、シミュレーション結果判定部110のプロセスパラメータ調整部124は、顧客が要望するプロセス実行後の結果を得られるようにプロセスパラメータを最適化(オプティマイズ)するステップS22のプロセスパラメータ調整処理を行う。
【0076】
なお、ステップS22のプロセスパラメータ調整処理は、例えば同一の位置及び時間の物理センサデータ及び仮想センサデータの差が所定の閾値を超えた場合に、プロセスパラメータの最適化を中止し、シミュレーションモデルの編集又は半導体製造装置1のメンテナンスにより対処するようにしてもよい。これにより、顧客が要望するプロセス実行後の結果を得られるようにシミュレーションモデルを最適化できる。
【0077】
ステップS9のプロセスで使用するプロセスパラメータと、ステップS5のプロセスで使用するプロセスパラメータは種類が異なり、シミュレーションモデルも異なる。よって、シミュレーションモデルの最適化も、それぞれ別のシミュレーションモデルに対して行われる。
【0078】
シミュレーションモデルの編集は例えば
図8に示すような処理手順で実行される。
図8はシミュレーションモデルを編集する処理の一例のフローチャートである。解析サーバ70はステップS30において、半導体製造装置1で実行されたプロセスのプロセスパラメータ、そのプロセスパラメータに従ったプロセスの結果である半導体製造装置1の物理データ、及びシミュレーションモデルを元に計算した仮想データを取得する。
【0079】
ステップS32において、解析サーバ70のシミュレーションモデル編集部148は同一の位置及び時間の物理センサデータ及び仮想センサデータの差が所定の閾値を超えているか否かを判定する。所定の閾値を超えていなければ、シミュレーションモデル編集部148はステップS34~S36の処理をスキップする。
【0080】
所定の閾値を超えていれば、シミュレーションモデル編集部148はステップS34において、ステップS30で取得した物理データ、仮想データ及びプロセスパラメータを用いて、同一のプロセスパラメータによる物理データ及び仮想データの差異が小さくなるように例えば機械学習や統計処理などを利用してシミュレーションモデルの編集を行う。
【0081】
ステップS36に進み、解析サーバ70のシミュレーションモデル更新要求部150はステップS34で編集されたシミュレーションモデルの更新を自律制御コントローラ4に要求することで、自律制御コントローラ4のシミュレーション実行部108が利用するシミュレーションモデルを更新できる。
【0082】
なお、ベースとなるシミュレーションモデルの場合は、複数の半導体製造装置1の物理データ、仮想データ及びプロセスパラメータを取得し、例えば機械学習や統計処理などを利用してシミュレーションモデルの編集を行えばよい。
【0083】
[半導体製造装置]
以上に説明したプロセスを実行する半導体製造装置1の一例について
図1を参照して説明する。半導体製造装置1は、処理容器10、ガス供給部20、排気部30、加熱部40、冷却部50、制御部90等を有する。
【0084】
処理容器10は、略円筒形状を有する。処理容器10は、内管11、外管12、マニホールド13、インジェクタ14、ガス出口15、蓋体16等を含む。内管11は、略円筒形状を有する。外管12は、有天井の略円筒形状を有し、内管11と外管12とにより2重管構造を構成する。例えば石英等の耐熱材料により形成されている。内管11及び外管12は、例えば石英等の耐熱材料により形成されている。
【0085】
マニホールド13は、略円筒形状を有する。マニホールド13は、内管11及び外管12の下端を支持する。マニホールド13は、例えばステンレス鋼により形成されている。インジェクタ14は、マニホールド13を貫通して内管11内に水平に延びると共に、内管11内でL字状に屈曲して上方に延びる。インジェクタ14は、基端がガス導入配管24と接続され、先端が開口する。インジェクタ14は、ガス導入配管24を介して導入される処理ガス(以下、単に「ガス」ともいう。)を先端の開口から内管11内に吐出する。インジェクタ14は複数本であってもよい。
【0086】
ガス出口15は、マニホールド13に形成されている。処理ガスは、ガス出口15を介して排気部30により排気される。蓋体16は、マニホールド13の下端の開口を気密に塞ぐ。蓋体16は、例えばステンレス鋼により形成されている。蓋体16上には、保温筒17を介してウェーハボート18が載置されている。保温筒17及びウェーハボート18は、例えば石英等の耐熱材料により形成されている。ウェーハボート18は、複数のウェーハWを鉛直方向に所定間隔をあけて略水平に保持する。ウェーハボート18は、昇降機構19が蓋体16を上昇させることで処理容器10内へと搬入(ロード)され、処理容器10内に収容される。ウェーハボート18は、昇降機構19が蓋体16を下降させることで処理容器10内から搬出(アンロード)される。
【0087】
ガス供給部20は、ガスソース21、IGS22(Integrated Gas System)、外部配管23、及びガス導入配管24を含む。ガスソース21は、処理ガスの供給源であり、例えば成膜ガスソース、クリーニングガスソース、パージガスソースを含む。IGS22は、ガス配管の集積回路であり、ガスソース21の成膜ガスソース、クリーニングガスソース、パージガスソース等にそれぞれ接続された配管群が集積される。IGS22内には流量制御部が設置され、各配管を流れるガスの流量を制御する。流量制御部は、例えばマスフローコントローラ、開閉バルブを含む。
【0088】
IGS22は、外部配管23に接続されている。外部配管23は、ガス導入配管24に接続されている。外部配管23の外周に図示しない第1ヒータを巻き、外部配管23を加熱するように構成されている。ガス導入配管24は、半導体製造装置1の処理容器10に接続され、処理容器10の内部にガスを導入する。つまり、ガスソース21からの処理ガスをIGS22内の流量制御部でその流量を制御し、外部配管23を通流する際に加熱してガス導入配管24に流し、ガス導入配管24からインジェクタ14を介して処理容器10内に供給する。インジェクタ14は処理容器10のガス導入口として機能する。
【0089】
処理容器10のガス導入口付近には、ガス導入配管24に接続されたガス配管用の継手82が設けられている。温度センサ80は、継手82を貫通するように構成されている。温度センサ80は、ガス導入配管24内のガスの温度を測定するように構成されている。温度センサ80は、測定した温度を制御部90に送信する。また、ガス導入配管24内には、第2ヒータ81が配置され、第2ヒータ81はガス導入配管24内のガスを加熱するように構成されている。
【0090】
排気部30は、排気装置31、排気配管32及び圧力制御器33を含む。排気装置31は、例えばドライポンプ、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプである。圧力制御器33は、排気配管32に介設されており、排気配管32のコンダクタンスを調整することにより処理容器10内の圧力を制御する。圧力制御器33は、例えば自動圧力制御バルブである。
【0091】
加熱部40は、断熱材41、第1ヒータ42及び外皮43を含む。断熱材41は、略円筒形状を有し、外管12の周囲に設けられている。断熱材41は、シリカ及びアルミナを主成分として形成されている。第1ヒータ42は、線状を有し、断熱材41の内周に螺旋状又は蛇行状に設けられている。第1ヒータ42は、処理容器10の高さ方向に複数のゾーンに分けて温度制御が可能なように構成されている。外皮43は、断熱材41の外周を覆うように設けられている。外皮43は、断熱材41の形状を保持すると共に断熱材41を補強する。外皮43は、ステンレス鋼等の金属により形成されている。また、加熱部40の外部への熱影響を抑制するために、外皮43の外周に水冷ジャケット(図示せず)を設けてもよい。係る加熱部40は、第1ヒータ42が発熱することにより、処理容器10内を加熱する。
【0092】
冷却部50は、処理容器10に向けて冷却流体を供給し、処理容器10内のウェーハWを冷却する。冷却流体は、例えば空気であってよい。冷却部50は、例えば熱処理の後にウェーハWを急速降温させる際に処理容器10に向けて冷却流体を供給する。また、冷却部50は、例えば処理容器10内の堆積膜を除去するクリーニングの際に処理容器10内に向けて冷却流体を供給する。冷却部50は、流体流路51、吹出孔52、分配流路53、流量調整部54、排熱口55を有する。
【0093】
流体流路51は、断熱材41と外皮43との間に高さ方向に複数形成されている。流体流路51は、例えば断熱材41の外側に周方向に沿って形成された流路である。吹出孔52は、各流体流路51から断熱材41を貫通して形成されており、外管12と断熱材41との間の空間に冷却流体を吹き出す。分配流路53は、外皮43の外部に設けられており、冷却流体を各流体流路51に分配して供給する。流量調整部54は、分配流路53に介設されており、流体流路51に供給される冷却流体の流量を調整する。
【0094】
排熱口55は、複数の吹出孔52よりも上方に設けられており、外管12と断熱材41との間の空間に供給された冷却流体を半導体製造装置1の外部に排出する。半導体製造装置1の外部に排出された冷却流体は、例えば熱交換器により冷却されて再び分配流路53に供給される。ただし、半導体製造装置1の外部に排出された冷却流体は、再利用されることなく排出されてもよい。
【0095】
温度センサ60は、処理容器10内の温度を検出する。温度センサ60は、例えば内管11内に設けられている。ただし、温度センサ60は、処理容器10内の温度を検出できる位置に設けられていればよく、例えば内管11と外管12との間の空間に設けられていてもよい。温度センサ60は、例えば複数のゾーンに対応して高さ方向の異なる位置に設けられた複数の測温部を有する。温度センサ60の測温部は、それぞれ上から順に「TOP」、「C-T」、「CTR」、「C-B」及び「BTM」のゾーンに対応して設けられている。複数の測温部は、例えば熱電対、測温抵抗体であってよい。温度センサ60は、複数の測温部で検出した温度を制御部90に送信する。
【0096】
制御部90は、装置制御コントローラ6と連動して半導体製造装置1にて実行するプロセスを制御する。制御部90は、半導体製造装置1の動作を制御する。制御部90は、例えばコンピュータであってよい。
【0097】
以上に説明した半導体製造装置1のプロセスでは、処理容器内の温度、処理容器内の圧力、ガスの流量(ガス濃度)、及びガスの温度のプロセスパラメータの組み合わせでプロセスの結果が左右される。
【0098】
そこで、ガスの温度を直接測定できる温度センサ80が配置されている。温度センサ80は、ガス導入配管24に接続した継手82に配置されている。温度センサ80は、測温部がガス導入配管24に接触せずにガス導入配管24内に配置されているため、ガスの温度を直接測定できる。
図5のステップS7~S9の処理では、一例として温度センサ80が測定したガスの温度に基づき、ガス導入配管24内に配置した第2ヒータ81に供給する電流値を制御することで処理容器10に導入するガスの温度を制御できる。このようにして半導体製造装置1の処理容器10内に導入されるガスの温度を所望の温度に制御することでウェーハ上の温度等を制御でき、これにより、ユーザが望む膜形状のプロセスを実現できる。
【0099】
これまでの半導体製造装置1のプロセスではガスの温度を直接的に制御するための構造を有していなかった。これに対して、本実施形態に係る半導体製造装置1では、処理容器10内にガスを導入するガス導入口の近傍のガス導入配管内に、当該配管に測温部が接しないように温度センサ80を設け、同配管内に第2ヒータ81を配置した構成を有する。これにより、処理容器10内に導入されるガスの温度を直接測温することで、ガスの温度の測定精度を向上させることができる。また、直接測定したガスの温度に基づき、ガスの温度を目標値に近づけるために、同配管内に配置した第2ヒータ81へ供給する電流値を制御する。これにより、ガスの温度の測定結果に基づきプロセスパラメータの一つであるガスの温度を第2ヒータ81により正確に制御できる。これにより、ガスの温度を物理センサデータとして用いて半導体製造装置1で実行したプロセス中に処理容器10内に導入されたガスによりどの程度ウェーハ上の熱が奪われるのかをシミュレーションモデルを用いて計算できる。これにより、導入したガスの温度に応じたウェーハからの抜熱等、ガスの温度がウェーハにどの程度の影響を与え、どのような形状及び膜質の膜が形成されるかをシミュレーションできる。このシミュレーション結果を用いて、所望の形状の膜が形成されるように半導体製造装置1を動作させながら、プロセス実行中にガスの温度等のプロセスパラメータを変更し、ウェーハ上に期待される形状及び期待される膜質の膜を形成できる。
【0100】
また、シミュレーションモデルでは、ウェーハ上に成膜するガスの反応モデルを使って、ガスの温度に対するウェーハ表面のガスの反応を予測できる。これにより、インジェクタ14から処理容器10内に供給されたガスがウェーハに供給され、プロセスパラメータに基づきどのような厚さの膜ができるかを、供給するガスの温度に応じて予測できる。これにより、シミュレーション結果を用いてプロセスパラメータを変更することでセンターの厚さがエッジの厚さよりも厚い膜、エッジの厚さがセンターの厚さよりも厚い膜等、ユーザが望む形状の膜を形成できる。
【0101】
特に、処理容器10内の第1ヒータ42の温度を制御する場合、ヒータ出力値が高く、処理容器10内の熱負荷を低減できず、低温化プロセスにおける膜質の劣化等の影響がある場合がある。ウェーハ上の膜に形成される配線層の微細化により、膜質の劣化を抑制するために処理容器10内の温度を所定以上に高くさせたくないことがある。
【0102】
これに対して、本開示では、ガス配管内の第2ヒータによりガスの温度を制御する。これにより、ガスの温度によって処理容器10内を冷却したり加熱したりすることができ、様々なプロセスにおいてユーザが所望する形状及び膜質の膜を形成できる。また、処理容器10内の熱負荷を低減できる。
【0103】
より好ましい形状の膜を形成するために、シミュレーションモデルを用いたシミュレーション結果として例えばウェーハのセンター、ミドル、エッジの各領域の成膜レートを出力してもよい。また、シミュレーションモデルを用いたシミュレーション結果としてガスのウェーハへの接触量、成膜後の使用されなかったガスの流量を出力してもよい。
【0104】
これらのシミュレーション結果に基づき、シミュレーションモデルを最適化し、最適化されたシミュレーションモデルを使用して第2ヒータによりガスの温度を直接制御する。この結果、ウェーハのセンター、ミドル、エッジの各領域で好ましい成膜レートの差分を作り出し、これにより、所望の膜形状を形成できる。
【0105】
例えば、シミュレーションモデルの作成及び更新では
図10に示すような処理を行ってもよい。
図10は実施形態に係るガスの温度を含んだプロセスパラメータに従ったシミュレーションモデルの作成及び更新の処理を表した一例の説明図である。
図11は、ガスの温度を測定する温度センサM1~M6の温度センサの配置の一例を示す図である。
【0106】
自律制御コントローラ4のシミュレーション実行部108は半導体製造装置1で実行中のプロセスのプロセスパラメータの一例として、例えばヒータのパワー値、送風機の設定値、ガス流量、ウェーハボート昇降位置、ガスの温度等を取得する。シミュレーション実行部108はプロセスパラメータに従って、半導体製造装置1のシミュレーションモデルによるシミュレーションを実行することで、仮想温度センサデータ及び仮想プロセス結果データを出力する。
【0107】
物理温度センサは測定ポイントの温度を測定し、測定ポイントの物理温度センサデータとして出力する。
図11の例では、ガスの温度を測定する温度センサM1~M4が各測定ポイントに物理温度センサとして設けられている。温度センサM1は、ガスソース21の出力側であってIGS22の入力側のガス配管内のガスの温度を測定する。温度センサM2は、IGS22の出口のガス配管内のガスの温度を測定する。温度センサM3は、外部配管23内のガスの温度を測定する。温度センサM4は、
図9の温度センサ80に相当し、処理容器10のガス導入口付近に位置し、ガス導入配管24内のガスの温度を測定する。温度センサM3と温度センサM4の間にバルブVが設け、ガスの流量を制御する。温度センサM1~M4は、
図9の温度センサ80と同様にいずれもガス配管内のガスの温度を直接測定する。なお、温度センサM5,M6は、半導体製造装置1内(処理容器10内)の温度を測定する温度センサであり、ガス配管内のガスの温度を直接測定するセンサではない。
【0108】
データベース106は出力された仮想温度センサデータ、仮想プロセス結果データ、測定ポイントの物理温度センサデータ、及び以前の物理温度センサデータを保存する。
【0109】
シミュレーション結果判定部110は、データベース106に保存された仮想温度センサデータと物理温度センサデータとを測定ポイント毎に比較し、データベース106に保存された同一の測定ポイントの仮想温度センサデータと物理温度センサデータとが同じであるか否かを判定する。
【0110】
同じであると判定すれば、シミュレーション結果判定部110は仮想温度センサデータが確からしいと判断する。同じでないと判定すれば、シミュレーション結果判定部110は物理温度センサデータ及び仮想温度センサデータを記録のために出力する。
【0111】
この後、例えばオフラインにてデータ検証を行いながら手動でシミュレーションモデルの編集を行い、シミュレーション実行部108のシミュレーションモデルを更新する。
【0112】
このように、シミュレーションモデルの作成及び更新では、オフラインにてデータ検証を行いながら必要に応じてシミュレーション実行部108のシミュレーションモデルを更新できる。なお、シミュレーションモデルの作成及び更新では、対象の半導体製造装置1に物理的な仕様変更が行われない限り、仮想データと物理データとを比較し、プロセスパラメータをアルゴリズムに従って編集しながら、仕様の入力データに対して、最大の成果を生み出す運用を行うようにしてもよい。
【0113】
温度センサM1~M3はシミュレーションモデルを元に計算される仮想センサデータの確からしさを確認するために搭載されるため、顧客に出荷される最終製品に搭載されていなくてもよい。ただし、温度センサM4は、処理容器10に導入されるガスの温度を測定する温度センサであり、最終製品に搭載され、物理センサデータとしてガスの温度を測定する。ただし、温度センサM1~M3が最終製品に搭載されてもよいし、温度センサM4が最終製品に搭載されなくてもよい。
【0114】
以上に説明したように、実施形態の情報処理装置、シミュレーション方法及び情報処理システムによれば、半導体製造装置内に導入されるガスの温度をプロセスパラメータに含むシミュレーションモデルを構築することができる。これにより、プロセスをより精度よく仮想化でき、例えば成膜の最適化等、プロセスの安定性を向上させることができる。また、プロセス結果におけるガスの温度のゆらぎを抑制することができる。また、処理容器10内の熱負荷の低減を図ることができる。更に、ガス配管内のガスの可視化及びガスの温度制御の仮想化を実現できる。
【0115】
今回開示された実施形態に係る情報処理装置、シミュレーション方法及び情報処理システムは、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0116】
本開示のシミュレーション方法を含むプロセスを実行する半導体製造装置は、熱処理成膜装置に限らない。半導体製造装置は、Atomic Layer Deposition(ALD)装置、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Radial Line Slot Antenna(RLSA)、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)のいずれのタイプの装置でも適用可能である。
【0117】
また、本開示の半導体製造装置は、基板に所定の処理(例えば、成膜処理、エッチング処理等)を施す装置であれば、プラズマを使用する装置、プラズマを使用しない装置のいずれにも適用できる。また、本開示の半導体製造装置は、基板を一枚ずつ処理する枚葉装置、複数枚の基板を一括処理するバッチ装置、バッチ装置で一括処理する枚数よりも少ない複数枚の基板を一括処理するセミバッチ装置のいずれにも適用できる。
【符号の説明】
【0118】
1:半導体製造装置、2:既存センサ、3:追加センサ、4:自律制御コントローラ、5:情報処理システム、6:装置制御コントローラ、10:処理容器、42:第1ヒータ、80:温度センサ、81:第2ヒータ