(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185407
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】接続構造体の製造方法及び画像表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/14 20060101AFI20221207BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20221207BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20221207BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20221207BHJP
C09J 4/00 20060101ALI20221207BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20221207BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20221207BHJP
H01R 12/62 20110101ALI20221207BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20221207BHJP
G02F 1/1345 20060101ALI20221207BHJP
C09J 7/00 20180101ALI20221207BHJP
【FI】
H05K1/14 C
C09J7/30
C09J201/00
C09J9/02
C09J4/00
B32B7/025
B32B17/10
H01R12/62
H01R11/01 501C
G02F1/1345
C09J7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093078
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】飯村 忠光
(72)【発明者】
【氏名】工藤 直
【テーマコード(参考)】
2H092
4F100
4J004
4J040
5E223
5E344
【Fターム(参考)】
2H092GA42
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2H092MA32
2H092NA27
4F100AA20B
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5E223AA16
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5E344DD06
5E344DD10
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5E344EE21
(57)【要約】
【課題】 回路部材同士を接続する際に対向する電極間の導通を充分に確保することができるとともに、接続構造体の再生作業を行う場合であっても、作業負荷を小さくすることができる接続構造体の製造方法及び画像表示装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】 第一の回路基板の主面上に第一の回路電極が設けられている第一の回路部材と、第二の回路基板の主面上に第二の回路電極が設けられている第二の回路部材と、第一の回路電極及び第二の回路電極を電気的に接続する接続部と、を備える、接続構造体の製造方法であって、第一の回路部材、フィルム状接着剤及び第二の回路部材がこの順で積層した積層体を得る第1工程と、積層体を熱圧着して、フィルム状接着剤の硬化物を含む接続部を形成する第2工程と、を備え、フィルム状接着剤の厚さをT(μm)、第一の回路電極の高さと第二の回路電極の高さとの合計をH(μm)、及び、硬化物の第一の回路電極の隣り合う電極間からはみ出すはみ出し量をE(μm)としたときに下記の式(i)及び(ii)を満たす。
E≦50 …(i)
0.6≦T/H≦1.1 …(ii)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の回路基板の主面上に第一の回路電極が設けられている第一の回路部材と、
第二の回路基板の主面上に第二の回路電極が設けられている第二の回路部材と、
前記第一の回路電極及び前記第二の回路電極を電気的に接続する接続部と、を備える、接続構造体の製造方法であって、
前記第一の回路部材、フィルム状接着剤及び前記第二の回路部材がこの順で積層した積層体を得る第1工程と、
前記積層体を熱圧着して、前記フィルム状接着剤の硬化物を含む前記接続部を形成する第2工程と、を備え、
前記フィルム状接着剤の厚さをT(μm)、前記第一の回路電極の高さと前記第二の回路電極の高さとの合計をH(μm)、及び、前記硬化物の前記第一の回路電極の隣り合う電極間からはみ出すはみ出し量をE(μm)としたときに下記の式(i)及び(ii)を満たす、接続構造体の製造方法。
E≦50 …(i)
0.6≦T/H≦1.1 …(ii)
【請求項2】
前記第一の回路基板がフレキシブル基板であり、前記第二の回路基板がガラス基板である、請求項1に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項3】
前記ガラス基板がタッチパネル用である、請求項2に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項4】
前記接続構造体が、前記第二の回路基板上に樹脂硬化物で接着されている第三の回路部材を有しており、
前記樹脂硬化物と前記第一の回路電極との最短距離が200μm以下である、請求項1又は2に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項5】
前記フィルム状接着剤が、(a)熱可塑性樹脂、(b)ラジカル重合性化合物、及び(c)ラジカル重合開始剤を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項6】
前記フィルム状接着剤が、(d)導電性粒子を更に含有する、請求項5に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項7】
第一の回路基板の主面上に第一の回路電極が設けられている第一の回路部材と、
第二の回路基板の主面上に第二の回路電極が設けられている第二の回路部材と、
前記第一の回路電極及び前記第二の回路電極を電気的に接続する接続部と、を備え、
前記第一の回路基板がフレキシブル基板であり、
前記第二の回路基板がガラス基板又はプラスチック基板である、画像表示装置の製造方法であって、
前記第一の回路部材、フィルム状接着剤及び前記第二の回路部材がこの順で積層した積層体を得る第1工程と、
前記積層体を熱圧着して、前記フィルム状接着剤の硬化物を含む前記接続部を形成する第2工程と、を備え、
前記フィルム状接着剤の厚さをT1(μm)、前記第一の回路電極の高さと前記第二の回路電極の高さとの合計をH1(μm)、及び、前記硬化物の前記第一の回路電極の隣り合う電極間からはみ出すはみ出し量をE1(μm)としたときに下記の式(iii)及び(iv)を満たす、画像表示装置の製造方法。
E1≦50 …(iii)
0.6≦T1/H1≦1.1 …(iv)
【請求項8】
前記画像表示装置が、前記第二の回路基板上に樹脂硬化物で接着されている第三の回路部材を有し、
前記樹脂硬化物と前記第一の回路電極との最短距離が200μm以下である、請求項7に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記画像表示装置が、タッチパネルディスプレイである、請求項7又は8に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記フィルム状接着剤が、(a)熱可塑性樹脂、(b)ラジカル重合性化合物、及び(c)ラジカル重合開始剤を含有する、請求項7~9のいずれか一項に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記フィルム状接着剤が、(d)導電性粒子を更に含有する、請求項10に記載の画像表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続構造体の製造方法及び画像表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置の製造において、表示パネルに半導体素子及び液晶表示素子等の電子回路部品を接続する目的で種々の接着剤組成物が回路接続材料として使用されている。この接着剤組成物には、接着性をはじめとして、耐熱性、高温高湿状態における信頼性等の多様な特性が要求される。
【0003】
接着される被着体は、プリント配線板、ポリイミドフィルム等の有機材料、銅、アルミニウム等の金属、ITO、SiN、SiO2等の金属化合物のように、種々の材料から形成された多様な表面を有する。そのため、接着剤組成物は、各被着体に合わせて設計される。
【0004】
接着剤組成物として、高接着性且つ高信頼性を示すエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照。)。かかる接着剤組成物は、一般に、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂と反応するフェノール樹脂等の硬化剤、及びエポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進する熱潜在性触媒を含有する。このうち、熱潜在性触媒は、硬化温度及び硬化速度を決定する重要な因子である。そのため、熱潜在性触媒として、室温での貯蔵安定性、及び加熱時の硬化速度の観点から種々の化合物が用いられている。この接着剤組成物は、一般に170~250℃の温度で1~3時間加熱することにより硬化して所望の接着性を発揮する。
【0005】
また、アクリレート誘導体又はメタクリレート誘導体と過酸化物とを含む、ラジカル硬化型接着剤が注目されている(例えば、特許文献2参照。)。ラジカル硬化型接着剤は、反応活性種であるラジカルが反応性に富むため、短時間硬化の点で有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1-113480号公報
【特許文献2】国際公開第98/44067号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最近の表示パネルの高画質化に伴って電子回路部品の高精細化が進んでいる。このような電子回路部品を回路接続材料を用いて表示パネルに搭載又は接続する場合、接続信頼性の点から、接続部に空隙が発生することを抑制しつつ、対向する電極間の導通を充分確保する必要がある。
【0008】
一方で、生産性の点から、以下の不具合に対応する必要がある。表示パネルの高画質化、電子回路部品の高精細化によって、例えば、わずかな搭載ずれが回路短絡となったり、小さな異物でも外観異常として判定されるなどの不具合が発生しやすくなる。このような不具合が発生した場合、高額な表示パネルは廃棄せずに、不具合のある電子回路部品を剥がして再生作業が行われるが、低コスト化のためには再生作業のスループットを向上させる必要がある。しかし、再生作業において、隣り合った電子回路部品からはみ出した接着剤の樹脂硬化物が重なっていると、部品を剥がす作業がしずらいという問題がある。また、過剰にはみ出した接着剤が表示パネルの下部に回りこんで実装装置に付着したりするという問題もある。
【0009】
最近では、携帯・モニタ類は画面の大型化に伴って額縁の狭小化が進み、電子回路部品の配置間隔は500μmから150μmへと狭間隔になっている。このような状況においては、上述した接着剤のはみ出しに起因する問題に対応することが一層困難となっている。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、回路部材同士を接続する際に対向する電極間の導通を充分に確保することができるとともに、接続構造体の再生作業を行う場合であっても、作業負荷を小さくすることができる接続構造体の製造方法及び画像表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の一側面は、第一の回路基板の主面上に第一の回路電極が設けられている第一の回路部材と、第二の回路基板の主面上に第二の回路電極が設けられている第二の回路部材と、第一の回路電極及び第二の回路電極を電気的に接続する接続部と、を備える、接続構造体の製造方法であって、第一の回路部材、フィルム状接着剤及び第二の回路部材がこの順で積層した積層体を得る第1工程と、積層体を熱圧着して、フィルム状接着剤の硬化物を含む接続部を形成する第2工程と、を備え、フィルム状接着剤の厚さをT(μm)、第一の回路電極の高さと第二の回路電極の高さとの合計をH(μm)、及び、硬化物の第一の回路電極の隣り合う電極間からはみ出すはみ出し量をE(μm)としたときに下記の式(i)及び(ii)を満たす、接続構造体の製造方法を提供する。
E≦50 …(i)
0.6≦T/H≦1.1 …(ii)
【0012】
一側面の接続構造体の製造方法によれば、上記式(i)及び(ii)を満たす条件で積層体の熱圧着を行うことにより、硬化物のはみ出しに起因する問題が発生することを防止しながら、対向する電極間の導通を充分に確保することができる。これにより、接続構造体の接続信頼性及び生産性の向上を図ることができる。
【0013】
第一の回路基板がフレキシブル基板であり、第二の回路基板がガラス基板であってもよい。上記の接続構造体の製造方法は、いわゆる、FOG(Film on Glass)実装に適用することができる。
【0014】
更に、上記のガラス基板はタッチパネル用であってもよい。この場合、フレキシブル基板とタッチパネル用のガラス基板とを接続する際に、表示装置の額縁領域から硬化物がはみ出すことを防止することができる。これにより、タッチパネルディスプレイの狭額縁化へも対応することができる。
【0015】
接続構造体が、第二の回路基板上に樹脂硬化物で接着されている第三の回路部材を有しており、樹脂硬化物と第一の回路電極との最短距離が200μm以下であってもよい。
【0016】
接続構造体が、上記の配置間隔を有する場合であっても、硬化物のはみ出しに起因する問題が発生することを防止することができる。
【0017】
フィルム状接着剤は、(a)熱可塑性樹脂、(b)ラジカル重合性化合物、及び(c)ラジカル重合開始剤を含有するものであってもよい。
【0018】
フィルム状接着剤は、(d)導電性粒子を更に含有することができる。
【0019】
本発明の別の側面は、第一の回路基板の主面上に第一の回路電極が設けられている第一の回路部材と、第二の回路基板の主面上に第二の回路電極が設けられている第二の回路部材と、第一の回路電極及び前記第二の回路電極を電気的に接続する接続部と、を備え、第一の回路基板がフレキシブル基板であり、第二の回路基板がガラス基板又はプラスチック基板である、画像表示装置の製造方法であって、第一の回路部材、フィルム状接着剤及び第二の回路部材がこの順で積層した積層体を得る第1工程と、積層体を熱圧着して、フィルム状接着剤の硬化物を含む接続部を形成する第2工程と、を備え、フィルム状接着剤の厚さをT1(μm)、第一の回路電極の高さと第二の回路電極の高さとの合計をH1(μm)、及び、硬化物の第一の回路電極の隣り合う電極間からはみ出すはみ出し量をE1(μm)としたときに下記の式(iii)及び(iv)を満たす、画像表示装置の製造方法を提供する。
E1≦50 …(iii)
0.6≦T1/H1≦1.1 …(iv)
【0020】
上記の画像表示装置の製造方法によれば、上記式(iii)及び(iv)を満たす条件で積層体の熱圧着を行うことにより、硬化物のはみ出しに起因する問題が発生することを防止しながら、対向する電極間の導通を充分に確保することができる。これにより、画像表示装置の接続信頼性及び生産性の向上を図ることができる。
【0021】
画像表示装置が、第二の回路基板上に樹脂硬化物で接着されている第三の回路部材を有し、樹脂硬化物と第一の回路電極との最短距離が200μm以下であってもよい。
【0022】
画像表示装置はタッチパネルディスプレイであってもよい。
【0023】
フィルム状接着剤は、(a)熱可塑性樹脂、(b)ラジカル重合性化合物、及び(c)ラジカル重合開始剤を含有するものであってもよい。
【0024】
フィルム状接着剤は、(d)導電性粒子を更に含有することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、回路部材同士を接続する際に対向する電極間の導通を充分に確保することができるとともに、接続構造体の再生作業を行う場合であっても、作業負荷を小さくすることができる接続構造体の製造方法及び画像表示装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】画像表示装置の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】
図1の(b)に示す画像表示装置を上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」等の他の類似の表現においても同様である。また、「(ポリ)」とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合の双方を意味する。また、「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。また、以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0028】
<接続構造体の製造方法>
本実施形態の接続構造体の製造方法は、第一の回路基板の主面上に第一の回路電極が設けられている第一の回路部材と、第二の回路基板の主面上に第二の回路電極が設けられている第二の回路部材と、第一の回路電極及び第二の回路電極を電気的に接続する接続部と、を備える、接続構造体の製造方法であって、第一の回路部材、フィルム状接着剤及び第二の回路部材がこの順で積層した積層体を得る第1工程と、積層体を熱圧着して、フィルム状接着剤の硬化物を含む接続部を形成する第2工程と、を備える。
【0029】
第一の回路部材及び第二の回路部材は、電気的接続を必要とする回路電極を有するものであれば特に制限はない。第一の回路基板及び第二の回路基板は、例えば、半導体、ガラス、セラミック等の無機材料の基板、ポリイミド、ポリカーボネート等の有機材料の基板、ガラス/エポキシ等の無機物と有機物とを含む基板が挙げられる。
【0030】
第一の回路電極及び第二の回路電極は、銅、アルミニウム等の金属、ITO(indium tin oxide)膜等の無機材料から形成することができる。より良好な電気的接続を得る点では、第一の回路電極及び第二の回路電極の少なくとも一方の表面を、金、銀、錫及び白金族から選ばれる金属にすることができる。表面層は金、銀、白金族、又は錫のいずれかから選択され、これらを組み合わせて用いてもよい。また、銅/ニッケル/金のように複数の金属を組み合わせて多層構成としてもよい。
【0031】
接続される回路部材の具体例としては、液晶ディスプレイに用いられている、銅配線、ITO膜等の電極が形成されているガラス又はプラスチック基板、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンチップ等が挙げられる。これらは必要に応じて組み合わせて使用される。
【0032】
例えば、第一の回路部材が、ポリイミドフィルム等の樹脂フィルムを回路基板として有するフレキシブルプリント配線板(FPC)であり、第二の回路部材が、ガラス又はプラスチック基板を回路基板として有する液晶ディスプレイパネル等の表示パネル又はタッチパネルであってもよい。これらを接続して得られる接続構造体は、タッチパネルディスプレイ等の画像表示装置であってもよい。
【0033】
接続部は、フィルム状接着剤の硬化物を含む。接続部は、フィルム状接着剤の樹脂硬化物中に分散した導電性粒子を含有していてもよい。この場合、第一の回路電極及び第二の回路電極は、導電性粒子を介して電気的に接続されているため、第一の回路電極及び第二の回路電極間の接続抵抗が十分に低減される。接続部が導電性粒子を含有していない場合には、第一の回路電極と第二の回路電極とが接触することで、電気的に接続される。
【0034】
フィルム状接着剤は、フィルム状であることから取り扱いが容易である。このため、第一の回路部材と第二の回路部材との間にフィルム状接着剤を容易に介在させることができ、第一の回路部材と第二の回路部材との接続作業を容易に行うことができる。
【0035】
フィルム状接着剤は、フィルム状に形成された接着剤組成物(回路接続材料)であり、導電性粒子を含んでいてもよい。接着剤組成物は、導電性粒子を含有しない場合も、異方導電性接続のために回路接続材料として使用できる。導電性粒子を含有しない回路接続材料は、NCF(Non-Conductive-FILM)又はNCP(Non-Conductive-Paste)と呼ばれることもある。接着剤組成物が導電性粒子を有する場合、これを用いた回路接続材料は、ACF(Anisotropic Conductive FILM)又はACP(Anisotropic Conductive Paste)と呼ばれることもある。
【0036】
本実施形態に係る接着剤組成物は、(a)熱可塑性樹脂、(b)ラジカル重合性化合物、及び(c)ラジカル重合開始剤を含有することができる。
【0037】
上記(a)熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂から選ばれる1種又は2種以上の樹脂が挙げられる。
【0038】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、5000~400000であってもよく、5000~200000であってもよく、10000~150000であってもよい。熱可塑性樹脂の重量平均分子量が5000以上であると、接着剤組成物の接着力が向上する傾向がある。また、熱可塑性樹脂の重量平均分子量が400000以下であれば、他の成分との良好な相溶性が得られやすい傾向があり、接着剤の流動性が得られやすい傾向がある。ここでの重量平均分子量は、実施例に記載の条件に従ってゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC)により標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定される。
【0039】
熱可塑性樹脂として、応力緩和及び接着性向上を目的として、ゴム成分を用いることもできる。ゴム成分は、例えば、アクリルゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、1,2-ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2-ポリブタジエン、水酸基末端1,2-ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンゴム、水酸基末端スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、アルコキシシリル基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール及びポリ-ε-カプロラクトンが挙げられる。ゴム成分は、接着性向上の観点から、高極性基であるシアノ基又はカルボキシル基を側鎖基又は末端基として有することが好ましい。これらのゴム成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
熱可塑性樹脂の含有量は、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、20~80質量部であってもよく、30~70質量部であってもよく、35~65質量部であってもよい。熱可塑性樹脂の含有量が20質量部以上であると、接着力が向上したり、接着剤組成物のフィルム形成性が向上したりする傾向があり、80質量部以下であれば、接着剤の流動性が得られやすい傾向がある。
【0041】
(b)ラジカル重合性化合物としては、公知のものを用いることができる。当該ラジカル重合性化合物は、例えば後述する化合物のモノマー及びオリゴマーのいずれであってもよいし、両者を併用したものであってもよい。
【0042】
上記化合物としては、2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する1種又は2種以上の多官能の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。このような(メタ)アクリレート化合物は、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレートが挙げられる。上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルの2つのグリシジル基に(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルの2つのグリシジル基にエチレングリコール及び/又はプロピレングリコールを付加させた化合物に(メタ)アクリロイルオキシ基を導入した化合物が挙げられる。
【0043】
また、接着剤組成物は、流動性の調節等を目的として、(b)ラジカル重合性化合物として、単官能(メタ)アクリレート化合物を含んでいてもよい。単官能(メタ)アクリレート化合物は、例えば、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、2-シアノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、複数のグリシジル基を有するエポキシ樹脂のグリシジル基の一つを(メタ)アクリル酸を反応させることで得られるグリシジル基含有(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイルモルホリンが挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0044】
さらに、接着剤組成物は、橋架け率の向上等を目的として、(b)ラジカル重合性化合物として、アリル基、マレイミド基、ビニル基等のラジカル重合性の官能基を有する化合物を含んでいてもよい。そのような化合物は、例えば、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルカプロラクタム、4,4’-ビニリデンビス(N,N-ジメチルアニリン)、N-ビニルアセトアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド及びN,N-ジエチルアクリルアミドが挙げられる。
【0045】
接着剤組成物は、接着力の向上を目的として、(b)ラジカル重合性化合物として、リン酸基を有するラジカル重合性化合物を含有することが好ましい。リン酸基を有するラジカル重合性化合物は、例えば、下記式(1)、(2)又は(3)で表される化合物から選ばれる。
【化1】
式(1)中、R
5は水素原子又はメチル基を示し、R
6は(メタ)アクリロイルオキシ基を示し、w及びxはそれぞれ独立に1~8の整数を示す。なお、同一分子中の複数のR
5、R
6、w及びxは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0046】
【化2】
式(2)中、R
7は(メタ)アクリロイルオキシ基を示し、y及びzはそれぞれ独立に1~8の整数を示す。同一分子中の複数のR
7、y及びzは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0047】
【化3】
式(3)中、R
8は水素原子又はメチル基を示し、R
9は(メタ)アクリロイルオキシ基を示し、b及びcはそれぞれ独立に1~8の整数を示す。同一分子中の複数のR
8及びbは同一でも異なっていてもよい。
【0048】
リン酸基を有するラジカル重合性化合物は、例えば、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2,2’-ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルホスフェート、EO(エチレンオキサイド)変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、リン酸変性エポキシ(メタ)アクリレート及びリン酸ビニルが挙げられる。
【0049】
リン酸基を有するラジカル重合性化合物の含有量は、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、0.1~15質量部であってもよく、0.5~10質量部であってもよい。リン酸基を有するラジカル重合性化合物の含有量が0.1質量部以上であれば、高い接着強度が得られやすい傾向があり、15質量部以下であると、硬化後の接着剤組成物の物性低下が生じにくく、信頼性向上の効果が良好となる。
【0050】
接着剤組成物に含まれる(b)ラジカル重合性化合物の総含有量は、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、20~80質量部であってもよく、30~70質量部であってもよく、35~65質量部であってもよい。この総含有量が20質量部以上であれば、耐熱性が向上する傾向があり、80質量部以下であると、高温高湿環境に放置後の剥離抑制の効果が大きくなる傾向がある。
【0051】
(c)ラジカル重合開始剤は、過酸化物及びアゾ化合物等の化合物から任意に選択することができる。安定性、反応性及び相溶性の観点から、1分間半減期温度が90~175℃で、且つ分子量が180~1000の過酸化物が好ましい。「1分間半減期温度」とは、過酸化物の半減期が1分である温度をいう。「半減期」とは、所定の温度において化合物の濃度が初期値の半分に減少するまでの時間をいう。
【0052】
ラジカル重合開始剤は、例えば、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジラウロイルパーオキサイド、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、3-メチルベンゾイルパーオキサイド、4-メチルベンゾイルパーオキサイド、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリン酸)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(3-メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、t-アミルパーオキシイソノナノエート及びt-アミルパーオキシベンゾエートから選ばれる1以上の化合物を用いることができる。
【0053】
回路部材の接続端子(回路電極)の腐食を抑えるために、ラジカル重合開始剤中に含有される塩素イオン又は有機酸の量は5000ppm以下であってもよく、さらに、分解後に発生する有機酸が少ないものが好ましい。また、作製した接着剤組成物の安定性が向上する点で、室温、常圧下で24時間の開放放置後に20質量%以上の質量保持率を有するラジカル重合開始剤を用いてもよい。
【0054】
ラジカル重合開始剤の含有量は、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、1~15質量部であってもよく、2.5~10質量部であってもよい。
【0055】
本実施形態に係る接着剤組成物は、シランカップリング剤を含有していてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン及び3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0056】
シランカップリング剤の含有量は、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、0.1~10質量部であってもよく、0.25~5質量部であってもよい。シランカップリング剤の含有量が0.1質量部以上であれば、回路部材とフィルム状接着剤との界面の剥離気泡発生を抑制する効果がより大きくなる傾向があり、シランカップリング剤の含有量が10質量部以下であると、接着剤組成物のポットライフが長くなる傾向がある。
【0057】
本実施形態に係る接着剤組成物は、導電性粒子をさらに含有していてもよい。
【0058】
導電性粒子は、例えば、Au、Ag、Pd、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子、カーボン粒子などが挙げられる。また、導電性粒子は、ガラス、セラミック、プラスチック等の非導電性材料からなる核体粒子と、該核体粒子を被覆する金属、金属粒子、カーボン等の導電層と、を有する複合粒子であってもよい。金属粒子は、銅粒子及び銅粒子を被覆する銀層を有する粒子であってもよい。複合粒子の核体粒子は、好ましくはプラスチック粒子である。
【0059】
上記プラスチック粒子を核体粒子とする複合粒子は、加熱及び加圧によって変形する変形性を有するので、回路部材同士を接着する際に、該回路部材が有する回路電極と導電性粒子との接触面積を増加させることができる。そのため、これらの複合粒子を導電性粒子として含有するフィルム状接着剤を用いることにより、接続信頼性の点でより一層優れる接続構造体が得られやすくなる。
【0060】
上記導電性粒子と、その表面の少なくとも一部を被覆する絶縁層又は絶縁性粒子とを有する絶縁被覆導電性粒子を、接着剤組成物が含有していてもよい。絶縁層は、ハイブリダイゼーション等の方法により設けることができる。絶縁層又は絶縁性粒子は、高分子樹脂等の絶縁性材料から形成される。このような絶縁被覆導電性粒子を用いることで、隣接する導電性粒子同士による短絡が生じにくくなる。
【0061】
導電性粒子の平均粒径は、良好な分散性及び導電性を得る観点から、1~18μmであってもよい。
【0062】
導電性粒子の含有量は、接着剤組成物の全体積を基準として、0.1~30体積%であってもよく、0.1~10体積%であってもよく、0.5~7.5体積%であってもよい。導電性粒子の含有量が0.1体積%以上であれば、導電性が向上する傾向がある。導電性粒子の含有量が30体積%以下であれば、回路電極間の短絡が生じにくくなるという傾向がある。導電性粒子の含有量(体積%)は、硬化前のフィルム状接着剤を構成する各成分の23℃での体積に基づいて決定される。各成分の体積は、比重を利用して質量を体積に換算することで求めることができる。体積を測定しようとする成分を溶解したり膨潤させたりせず、その成分をよくぬらすことができる適当な溶媒(水、アルコール等)をメスシリンダー等に入れ、そこへ測定対象の成分を導入して増加した体積をその成分の体積として求めることもできる。
【0063】
接着剤組成物は、導電性粒子の他に、絶縁性の有機又は無機微粒子を含有していてもよい。無機微粒子は、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、シリカ-アルミナ微粒子、チタニア微粒子、ジルコニア微粒子等の金属酸化物微粒子の他、窒化物微粒子などが挙げられる。有機微粒子は、例えば、シリコーン微粒子、メタクリレート-ブタジエン-スチレン微粒子、アクリル-シリコーン微粒子、ポリアミド微粒子、ポリイミド微粒子、ポリウレタン微粒子などが挙げられる。これらの微粒子は、均一な構造を有していてもよいし、コア-シェル型構造を有していてもよい。
【0064】
有機微粒子及び無機微粒子の含有量は、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、5~30質量部であってもよく、7.5~20質量部であってもよい。有機微粒子及び無機微粒子の含有量が5質量部以上であれば、相対する電極間の電気的接続を維持することが比較的容易になる傾向があり、30質量部以下であれば、フィルム状接着剤の流動性が向上する傾向がある。
【0065】
フィルム状接着剤は、上述した本実施形態に係る接着剤組成物に必要に応じて溶剤等を加えるなどして得られた溶液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離型紙等の剥離性支持体上に塗布し、溶剤等を除去する方法により得ることができる。
【0066】
フィルム状接着剤の厚さは、3~50μmであってもよく、4~30μmであってもよく、5~25μmであってもよい。
【0067】
本実施形態の接続構造体の製造方法においては、フィルム状接着剤の厚さをT(μm)、第一の回路電極の高さと第二の回路電極の高さとの合計をH(μm)、及び、硬化物の第一の回路電極の隣り合う電極間からはみ出すはみ出し量をE(μm)としたときに下記の式(i)及び(ii)を満たす条件で接続部を形成することができる。
E≦50 …(i)
0.6≦T/H≦1.1 …(ii)
【0068】
生産性及び製造コストの観点から、Hは、3~50μm、10~40μm、15~25μm、又は7~9μmであってもよい。
【0069】
圧着時に、上下の電極間に位置する樹脂は排除され、電極がない隙間に樹脂を充填しやすくする観点から、Tは、3~40μm、7~30μm、10~20μm、又は5~7μmであってもよい。
【0070】
隣接した部材が接触せず、コンパクトに部材を配置しやすくする観点から、Eは、0μm以上200μm以下、0μm超50μm以下、3~50m、又は10~30μmであってもよい。
【0071】
はみ出し量Eは、例えば、Hを小さくすること、T/Hを小さくすること、のうちの1つ又は2つ以上の組み合わせにより、上記式(i)を満たしやすくなる。
【0072】
はみ出し量Eは、例えば、隣り合う第一の回路電極の端部を結ぶ線と、この線に平行ではみ出した硬化物の頂点(最もはみ出している点)を通る線との距離とすることができる。なお、はみ出し量Eは、5箇所の電極間について測定した値の平均とすることができる。
【0073】
積層体を得る第1工程は、例えば、第一の回路部材及び第二の回路部材の一方にフィルム状接着剤を仮接続した後、他方を積層してもよい。仮接続は、加熱しながら加圧してもよい。なお、加熱温度はフィルム状接着剤中の接着剤組成物が硬化しない温度、例えば、ラジカル重合開始剤がラジカルを急激に発生する温度よりも十分に低い温度に設定することができる。
【0074】
第2工程は、例えば、積層体を積層方向に圧力を加えながら、加熱することができる。このときの加熱温度は、例えば、ラジカル重合開始剤がラジカルを十分に発生する温度に設定することができる。
【0075】
熱圧着は、例えば、加熱温度が130~230℃、圧力が2~10MPa、加圧時間が3~20秒の条件で行うことできる。これらの条件は、フィルム状接着剤、回路部材によって適宜選択される。第2工程では、必要に応じて、後硬化を行ってもよい。
【0076】
本実施形態の方法においては、接続構造体が、第二の回路基板上に樹脂硬化物で接着されている第三の回路部材を有しており、樹脂硬化物と第一の回路電極との最短距離が200μm以下であってもよく、3~50μmであってもよい。
【0077】
接続構造体が、上記の配置間隔を有する場合であっても、硬化物のはみ出しに起因する問題が発生することを防止することができる。
【0078】
第三の回路部材は、例えば、半導体基板を回路基板として有する半導体シリコンチップ、上述した第一の回路基板と同様のフレキシブル基板が挙げられる。
【0079】
第三の回路部材は、上述したフィルム状接着剤によって第二の回路部材と接続することができ、樹脂硬化物が当該フィルム状接着剤の硬化物であってもよい。
【0080】
<画像表示装置の製造方法>
本実施形態の画像表示装置の製造方法は、第一の回路基板の主面上に第一の回路電極が設けられている第一の回路部材と、第二の回路基板の主面上に第二の回路電極が設けられている第二の回路部材と、第一の回路電極及び前記第二の回路電極を電気的に接続する接続部と、を備え、第一の回路基板がフレキシブル基板であり、第二の回路基板がガラス基板又はプラスチック基板である、画像表示装置の製造方法であって、第一の回路部材、フィルム状接着剤及び第二の回路部材がこの順で積層した積層体を得る第1工程と、積層体を熱圧着して、フィルム状接着剤の硬化物を含む接続部を形成する第2工程と、を備え、フィルム状接着剤の厚さをT1(μm)、第一の回路電極の高さと第二の回路電極の高さとの合計をH1(μm)、及び、硬化物の第一の回路電極の隣り合う電極間からはみ出すはみ出し量をE1(μm)としたときに下記の式(iii)及び(iv)を満たす。
E1≦50 …(iii)
0.6≦T1/H1≦1.1 …(iv)
【0081】
図1は、画像表示装置の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。
図1の(a)は、第一の回路基板の主面上に第一の回路電極が設けられている第一の回路部材10、フィルム状接着剤30、及び第二の回路基板の主面上に第二の回路電極が設けられている第二の回路部材20がこの順で積層した積層体を、ツール50によって熱圧着するときの工程を示す。
図1の(a)に示される積層体は、第二の回路基板の主面上に、第二のフィルム状接着剤35と第三の回路部材40とがこの順に積層されている。
【0082】
第一の回路部材10は、ポリイミドフィルムを回路基板として有するフレキシブルプリント配線板(FPC)であってもよい。回路電極の高さは、例えば、3~50μm、15~25μm、又は7~9μmであってもよい。
【0083】
第二の回路部材20は、ガラス基板又はプラスチック基板を回路基板として有し、ITO、銅等から形成された回路電極を有する液晶ディスプレイパネル等の表示パネル又はタッチパネルであってもよい。回路電極の高さは、例えば、1~500Å、10~300Å、又は10~50Åであってもよい。
【0084】
第三の回路部材40は、半導体基板を回路基板として有する半導体シリコンチップであってもよい。
【0085】
フィルム状接着剤30及び第二のフィルム状接着剤35は、上述した接着剤組成物から形成することができる。
【0086】
図1の(a)に示される積層体においては、フィルム状接着剤30の厚さT
1(μm)と、第一の回路電極の高さと第二の回路電極の高さとの合計H
1(μm)とが、上記式(iv)の条件を満たすことができる。T
1及びH
1は、上述したT及びHの範囲と同様に設定することができる。
【0087】
図1の(b)は、
図1の(a)に示す積層体を熱圧着して得られる接続構造体を示す。熱圧着は、上述した条件で行うことができる。
【0088】
図1の(b)に示される画像表示装置は、第一の回路部材10の第一の回路電極及び第二の回路部材20の第二の回路電極を電気的に接続する接続部32と、第二の回路部材20の別の回路電極及び第三の回路部材40の第三の回路電極を電気的に接続する接続部37とを備える。接続部32は、フィルム状接着剤30の硬化物を含んでおり、接続部37は、第二のフィルム状接着剤35の硬化物を含んでいる。
【0089】
接続部32及び接続部37は、画像表示装置における額縁領域に設けられていてもよい。
【0090】
はみ出し量E
1は、上述したEと同様にして測定される。例えば、
図2に示すように、隣り合う第一の回路電極12の端部を結ぶ線と、この線に平行ではみ出した硬化物の頂点(最もはみ出している点)を通る線との距離とすることができる。なお、はみ出し量E
1は、5箇所の第一の回路電極12の間について測定した値の平均とすることができる。
【0091】
本実施形態の画像表示装置の製造方法においては、第一の回路部材10と第二の回路部材20との接続において不具合が発生した場合であっても、第二の回路部材20は廃棄せずに、第一の回路部材10を剥がして再生作業を効率よく行うことができる。すなわち、E1が上記式(iii)を満たすことで、接続部32の硬化物が接続部37の樹脂硬化物と重なることを防止できるため、第一の回路部材10を剥がす作業の負荷が小さくなり、再生作業のスループットを向上させることができる。
【0092】
また、本実施形態の画像表示装置の製造方法によれば、画像表示装置がタッチパネルディスプレイである場合、フレキシブル基板とタッチパネル用のガラス基板とを接続する際に、表示装置の額縁領域から硬化物がはみ出すことを防止することができる。これにより、タッチパネルディスプレイの狭額縁化へも対応することができる。
【実施例0093】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0094】
<ポリウレタン樹脂の合成>
還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えたセパラブルフラスコに、エーテル結合を有するジオールであるポリプロピレングリコール(Mn=2000)1000質量部及び溶媒としてのメチルエチルケトン4000質量部を加え、40℃で30分間撹拌した。溶液を70℃まで昇温した後、触媒としてのジメチル錫ラウレート12.7mgを加えた。次いで、この溶液に対して、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート125質量部をメチルエチルケトン125質量部に溶解して調製した溶液を、1時間かけて滴下した。その後、赤外分光光度計でNCOの吸収ピークが見られなくなるまでこの温度で撹拌を続けて、ポリウレタン樹脂のメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液の固形分濃度(ポリウレタン樹脂の濃度)が30質量%となるように調整した。得られたポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定の結果、320000(標準ポリスチレン換算値)であった。以下にGPCの測定条件を示す。
(測定条件)
装置:東ソー株式会社製 GPC-8020
検出器:東ソー株式会社製 RI-8020
カラム:日立化成株式会社製 Gelpack GL-A160-S+GL-A150-SG2000Hhr
試料濃度:120mg/3mL
溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:60μL
圧力:2.94×106Pa
流量:1.00mL/min
【0095】
<ウレタンアクリレートの合成>
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を装着した2リットルの四つ口フラスコに、ポリカーボネートジオール(アルドリッチ社製、数平均分子量2000)4000質量部と、2-ヒドロキシエチルアクリレート238質量部と、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.49質量部と、錫系触媒4.9質量部とを仕込んで反応液を調製した。70℃に加熱した反応液に対して、イソホロンジイソシアネート(IPDI)666質量部を3時間かけて均一に滴下し、反応させた。滴下完了後、15時間反応を継続し、電位差自動滴定装置(商品名AT-510、京都電子工業株式会社製)にてNCO含有量が0.2質量%以下となったことを確認した時点で反応を終了し、ウレタンアクリレートを得た。GPCによる分析の結果、ウレタンアクリレートの重量平均分子量は8500(標準ポリスチレン換算値)であった。なお、GPCによる分析は前述のポリウレタン樹脂の重量平均分子量の分析と同様の条件で行った。
【0096】
<導電性粒子の作製>
ポリスチレン粒子の表面に、厚さ0.2μmのニッケル層を形成し、さらにこのニッケル層の外側に、厚さ0.04μmの金層を形成させた。こうして平均粒径4μmの導電性粒子を作製した。
【0097】
<フィルム状接着剤の作製>
表1に示す原料を、表1に示す質量比で混合した。そこに上記導電性粒子を1.5体積%の割合で分散させて、フィルム状接着剤を形成するための塗工液を得た。この塗工液を厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗工装置を用いて塗布した。塗膜を70℃で10分間熱風乾燥して、厚み6μm、13μm、20μm、27μm、32μmのフィルム状接着剤をそれぞれ形成させた。
【0098】
表1に示す、ポリウレタン樹脂、ウレタンアクリレートは上述のとおり合成したものである。フェノキシ樹脂は、PKHC(ユニオンカーバイト社製、商品名、平均分子量45000)40gをメチルエチルケトン60gに溶解して調製した40質量%溶液の形態で用いた。アクリレート化合物は、シクロヘキシルアクリレート(商品名アリックスCHA、東亞合成株式会社製)を用いた。ラジカル重合開始剤として、ラウロイルパーオキサイド(商品名パーロイルL、日油株式会社製、分子量398.6)を用いた。無機微粒子として、シリカ粒子(商品名R104、日本アエロジル株式会社製)10gをトルエン45g及び酢酸エチル45gの混合溶媒に分散させて調製した10質量%の分散液を調製し、これを塗工液中に配合した。ポリウレタンビーズは、P-800T(根上工業株式会社製、商品名、平均粒子径:6μm、ガラス転移温度:-34℃)10gをメチルエチルケトン90gに分散した10質量%溶液の形態で用いた。
【0099】
【0100】
<第一の回路部材の準備>
第一の回路部材として以下のフレキシブルプリント配線板(FPC)を準備した。
FPC1:ポリイミド基板上に、ライン幅100μm、ピッチ200μm及び電極高さ21μmの金メッキ回路を有するフレキシブルプリント配線板。
FPC2:ポリイミド基板上に、ライン幅100μm、ピッチ200μm及び電極高さ12μmの金メッキ回路を有するフレキシブルプリント配線板。
FPC3:ポリイミド基板上に、ライン幅100μm、ピッチ200μm及び電極高さ8μmの金メッキ回路を有するフレキシブルプリント配線板。
【0101】
<第二の回路部材の準備>
第一の回路部材として以下のITO基板を準備した。
ITO基板1:ガラス基板上に形成された厚さ0.2μmの酸化インジウム(ITO)の薄層を有するITO基板(厚さ1.1mm、表面抵抗20Ω/□)。
【0102】
<接続構造体1~15の作製>
上記で得られた厚みが異なるフィルム状接着剤(厚み6μm、13μm、20μm、27μm、32μm)を用い、上記のITO基板1上に、上記のFPC1~3を接続した。接続は、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用い、150℃、3MPaで5秒間の加熱及び加圧により行った。これにより、幅1.0mmにわたりFPCとITO基板とがフィルム状接着剤の硬化物により接続された接続構造体1~15を作製した。
【0103】
<はみ出し量の測定及び判定>
隣り合う第一の回路電極の端部を結ぶ線と、この線に平行ではみ出した硬化物の頂点(最もはみ出している点)を通る線との距離を顕微鏡で測長し、5箇所の電極間についての測定値の平均をはみ出し量とした。はみ出し量が50μm以下の場合をAと判定し、50μmを超える場合をBと判定した。
【0104】
<接続抵抗の測定及び判定>
得られた接続構造体の隣接回路間の抵抗値(接続抵抗)を、マルチメーターで測定した。抵抗値は、隣接回路間の抵抗18点で測定し、平均値が10Ω以下の場合をAと判定し、10Ωを超える場合をBと判定をした。
【0105】
【0106】
はみ出し量が50μm以下である接続構造体1、2、6、7、11、12のうち、T/Hが0.6~1.1の範囲にある接続構造体2、7、11は、接続抵抗の評価がAであることが確認された。
10…第一の回路部材、12…第一の回路電極、20…第二の回路部材、30…フィルム状接着剤、32…接続部、35…第二のフィルム状接着剤、37…接続部(樹脂硬化物)、40…第三の回路部材。