(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185487
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 16/44 20060101AFI20221207BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20221207BHJP
H01L 21/205 20060101ALN20221207BHJP
【FI】
C23C16/44 A
H01L21/90 P
H01L21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093208
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】東雲 秀司
(72)【発明者】
【氏名】藤田 成樹
(72)【発明者】
【氏名】光成 正
(72)【発明者】
【氏名】河野 有美子
(72)【発明者】
【氏名】池 進一
【テーマコード(参考)】
4K030
5F033
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA02
4K030AA03
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(57)【要約】
【課題】第1膜が露出する第1領域と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜が露出する第2領域とのうちの、第1領域に選択的に膜を形成できる、技術を提供する。
【解決手段】成膜方法は、下記(A)~(D)を含む。(A)第1膜が露出する第1領域と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜が露出する第2領域とを表面に有する基板を準備する。(B)前記第1領域が前記第2領域よりも高くなるように前記表面に段差を形成する。(C)前記段差が形成された前記表面に液体を供給する。(D)前記液体を化学変化させる処理ガスを前記表面に供給し、前記処理ガスと前記液体との反応によって前記液体を前記第2領域から前記第1領域に移動させ、前記第2領域に対して前記第1領域に選択的に膜を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第1膜が露出する第1領域と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜が露出する第2領域とを表面に有する基板を準備することと、
(B)前記第1領域が前記第2領域よりも高くなるように前記表面に段差を形成することと、
(C)前記段差が形成された前記表面に液体を供給することと、
(D)前記液体を化学変化させる処理ガスを前記表面に供給し、前記処理ガスと前記液体との反応によって前記液体を前記第2領域から前記第1領域に移動させ、前記第2領域に対して前記第1領域に選択的に膜を形成することと、を有する、成膜方法。
【請求項2】
前記第1膜は絶縁膜であり、前記第2膜は導電膜である、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記(B)は、前記第1領域に対して前記第2領域に選択的に自己組織化単分子膜を形成することと、前記自己組織化単分子膜を用いて前記第2領域における第2絶縁膜の形成を阻害すると共に前記第1領域に前記第2絶縁膜を形成することと、を含む、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記(B)は、前記第1領域に対して前記第2領域を選択的にエッチングすることを含む、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記膜の一部をエッチングすることを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記液体は、ハロゲン化物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記(C)は、前記ハロゲン化物の原料である原料ガスと、前記原料ガスと反応する反応ガスとの反応によって、前記液体を形成することを含む、請求項6に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記液体は、液体状のポリマーである、請求項1~5のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記液体は、前記基板を収容する処理容器内で合成され、前記基板の前記表面に供給される、請求項8に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記(D)で前記液体を化学変化させる前記処理ガスは、前記液体に取り込まれる元素を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記液体を化学変化させる前記処理ガスは、酸素含有ガスを含む、請求項10に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記液体を化学変化させる前記処理ガスは、窒素含有ガスを含む、請求項10に記載の成膜方法。
【請求項13】
前記液体を化学変化させる前記処理ガスは、水素化物のガスを含む、請求項10に記載の成膜方法。
【請求項14】
前記液体を化学変化させる前記処理ガスは、前記液体を構成する元素を脱ガスさせる、請求項1~9のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項15】
前記液体を化学変化させる前記処理ガスは、還元性ガスを含む、請求項14に記載の成膜方法。
【請求項16】
前記還元性ガスは、水素ガス、又は重水素ガスである、請求項15に記載の成膜方法。
【請求項17】
前記(D)は、前記液体を化学変化させる前記処理ガスをプラズマ化することを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項18】
前記膜を改質することを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項19】
第1膜が露出する第1領域と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜が露出する第2領域とを表面に含む基板を搬送する搬送部と、
前記搬送部によって前記基板が搬入出される処理容器と、
前記処理容器の内部にて、前記基板の前記表面を上に向けて前記基板を水平に保持する保持部と、
前記保持部で保持されている前記基板の前記表面に対して、前記表面に段差を形成するガスと、前記段差が形成された前記表面に供給される原料ガスと、前記原料ガスと反応する反応ガスと、前記原料ガスと前記反応ガスの反応によって形成される液体を化学変化させる処理ガスと、を供給するガス供給部と、
前記搬送部と前記ガス供給部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
(A)前記基板を前記処理容器の内部に搬入することと、
(B)前記第1領域が前記第2領域よりも高くなるように前記表面に前記段差を形成することと、
(C)前記段差が形成された前記表面に、前記原料ガスと前記反応ガスとの反応によって形成される液体を供給することと、
(D)前記処理ガスを前記表面に供給し、前記処理ガスと前記液体との反応によって前記液体を前記第2領域から前記第1領域に移動させ、前記第2領域に対して前記第1領域に選択的に膜を形成することと、
を実施する、成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の成膜方法は、第1材料が露出する第1領域、および前記第1材料とは異なる第2材料が露出する第2領域を有する基板を準備する工程と、前記第1領域および前記第2領域のうちの前記第1領域に選択的に所望の対象膜を形成する工程と、前記基板に対してClF3ガスを供給することにより、前記対象膜の形成時に前記第2領域に生じた生成物を除去する工程とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、第1膜が露出する第1領域と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜が露出する第2領域とのうちの、第1領域に選択的に膜を形成できる、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様の成膜方法は、下記(A)~(D)を含む。(A)第1膜が露出する第1領域と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜が露出する第2領域とを表面に有する基板を準備する。(B)前記第1領域が前記第2領域よりも高くなるように前記表面に段差を形成する。(C)前記段差が形成された前記表面に液体を供給する。(D)前記液体を化学変化させる処理ガスを前記表面に供給し、前記処理ガスと前記液体との反応によって前記液体を前記第2領域から前記第1領域に移動させ、前記第2領域に対して前記第1領域に選択的に膜を形成する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、第1膜が露出する第1領域と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜が露出する第2領域とのうちの、第1領域に選択的に膜を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図2(A)はステップS1の一例を示す断面図であり、
図2(B)はステップS2の第1段階の一例を示す断面図であり、
図2(C)はステップS2の第2段階の一例を示す断面図であり、
図2(D)はステップS2の第3段階の一例を示す断面図である。
【
図3】
図3(A)はステップS3の一例を示す断面図であり、
図3(B)はステップS4の第1段階の一例を示す断面図であり、
図3(C)はステップS4の第2段階の一例を示す断面図である。
【
図4】
図4(A)はステップS7の直前の一例を示す断面図であり、
図4(B)はステップS7の直後の一例を示す断面図である。
【
図5】
図5(A)はステップS1の変形例を示す断面図であり、
図5(B)はステップS2の変形例を示す断面図であり、
図5(C)はステップS3の変形例を示す断面図であり、
図5(D)はステップS4の第1段階の変形例を示す断面図である。
【
図6】
図6(A)はステップS4の第2段階の変形例を示す断面図であり、
図6(B)はステップS7の直前の変形例を示す断面図であり、
図6(C)はステップS7の直後の変形例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。
【
図8】
図8は例1に係る基板のSEM写真であって、(A)はステップS3の後であってステップS4の前のSEM写真、(B)はステップS4の途中のSEM写真、(C)はステップS4の後のSEM写真である。
【
図9】
図9は例2に係る基板のSEM写真であって、(A)はステップS3の後であってS4の前のSEM写真、(B)はステップS4の後のSEM写真である。
【
図10】
図10は、例3に係るステップS9(表2)の処理時間と、凹部内の液体の厚みとの関係を示す図である。
【
図11】
図11(A)は例4に係る基板の処理後のSEM写真、
図11(B)は例5に係る基板の処理後のSEM写真、
図11(C)は例6に係る基板の処理後のSEM写真、
図11(D)は例7に係る基板の処理後のSEM写真である。
【
図12】
図12(A)は例8に係る基板の処理後のSEM写真、
図12(B)は例9に係る基板の処理後のSEM写真、
図12(C)は例10に係る基板の処理後のSEM写真である。
【
図13】
図13(A)は例11に係る基板の処理後のSEM写真、
図13(B)は例12に係る基板の処理後のSEM写真である。
【
図14】
図14(A)は例13に係る基板の処理後のSEM写真、
図14(B)は例14に係る基板の処理後のSEM写真である。
【
図15】
図15は、例17に係る基板の処理後のSEM写真である。
【
図16】
図16は、例18に係る基板の処理後のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0009】
図1~
図4を参照して、成膜方法の一例について説明する。成膜方法は、
図1に示すように、例えばステップS1~S7を有する。なお、成膜方法は、少なくともステップS1~S4を有すればよい。また、成膜方法は、ステップS1~S7以外のステップを更に有してもよい。
【0010】
図1のステップS1では、
図2(A)に示すように、基板Wを準備する。基板Wは、第1膜W1が露出する第1領域A1と、第1膜W1とは異なる材料で形成される第2膜W2が露出する第2領域A2とを表面に有する基板Wを準備する。第1領域A1と第2領域A2とは、基板Wの板厚方向片側に設けられる。第1領域A1と第2領域A2は、境界に段差を有さなくてもよく、面一であってもよい。
【0011】
基板Wは例えば不図示のシリコンウェハを含み、シリコンウェハの上に第1膜W1及び第2膜W2が形成される。基板Wは、シリコンウェハの代わりに、化合物半導体ウェハ、又はガラス基板を含んでもよい。化合物半導体ウェハは、特に限定されないが、例えばGaAsウェハ、SiCウェハ、GaNウェハ、又はInPウェハである。
【0012】
第1膜W1は、例えば絶縁膜である。絶縁膜は、例えば、SiO膜、SiN膜、SiCO膜、SiCN膜、SiON膜、又はSiC膜である。ここで、SiO膜とは、シリコン(Si)と酸素(O)を含む膜という意味である。SiO膜におけるSiとOの原子比は1:1には限定されない。SiO膜、SiN膜、SiCO膜、SiCN膜、SiON膜、又はSiC膜について同様である。
【0013】
一方、第2膜W2は、例えば導電膜である。導電膜は、金属膜又は金属窒化膜である。金属膜は、例えば、Cu膜、Ru膜、Co膜、W膜、又はTi膜である。金属窒化膜は、例えばTiN膜又はTaN膜である。ここで、TiN膜とは、チタン(Ti)と窒素(N)を含む膜という意味である。TiN膜におけるTiとNの原子比は1:1には限定されない。TaN膜について同様である。
【0014】
本実施形態では第1膜W1が絶縁膜であり第2膜W2が導電膜であるが、絶縁膜と導電膜は逆であってもよく、第1膜W1が導電膜であって第2膜W2が絶縁膜であってもよい。また、第1領域A1の数は、
図2(A)では1つであるが、複数でもよい。例えば2つの第1領域A1が第2領域A2を挟むように配置されてもよい。第1領域A1と第2領域A2は、
図2(A)では隣接しているが、離れていてもよい。
【0015】
基板Wは、その表面に、第1領域A1及び第2領域A2に加えて、不図示の第3領域を有してもよい。第3領域は、第1膜W1及び第2膜W2とは異なる材料の第3膜が露出する領域である。第3領域は、第1領域A1と第2領域A2との間に配置されてもよいし、第1領域A1及び第2領域A2の外に配置されてもよい。
【0016】
例えば、基板Wは、その表面に、不図示のバリア膜が露出する第3領域を更に有してもよい。この場合、第3領域は、第1領域A1と第2領域A2の間に形成される。バリア膜は、絶縁膜の凹部に沿って形成され、絶縁膜の凹部に埋め込まれる金属膜から絶縁膜への金属拡散を抑制する。バリア膜は、特に限定されないが、例えば、TaN膜、又はTiN膜である。
【0017】
また、基板Wは、その表面に、不図示のライナー膜が露出する第4領域を更に有してもよい。この場合、第4領域は、第2領域A2と第3領域の間に形成される。ライナー膜は、バリア膜の上に形成され、金属膜の形成を支援する。金属膜は、ライナー膜の上に形成される。ライナー膜は、特に限定されないが、例えば、Co膜、又はRu膜である。
【0018】
図1のステップS2では、
図2(B)~
図2(D)に示すように、第1領域A1が第2領域A2よりも高くなるように基板Wの表面に段差を形成する。例えば、まず、
図2(B)に示すように、基板Wの表面に対して有機化合物を供給し、第1領域A1に対して第2領域A2に選択的に自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer:SAM)W3を形成する。有機化合物は、本実施形態では気体の状態で供給されるが、液体の状態で供給されてもよい。
【0019】
自己組織化単分子膜W3の原料である有機化合物は、第1膜W1及び第2膜W2の材質に応じて適宜選定される。第1膜W1が絶縁膜であり、第2膜W2が導電膜である場合、有機化合物は例えばチオール系化合物である。チオール系化合物は、例えば一般式R-SHで表される化合物である。チオール基(SH)は、絶縁膜に比べて導電膜に化学吸着しやすい。
【0020】
ここで、Rは、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であり、水素の一部をハロゲンで置き換えてもよい。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素等を含む。チオール系化合物は、例えば、CF3(CF2)X(CH2)2SH(X=0~17の整数)、又はCH3(CH2)XSH(X=1~19の整数)である。
【0021】
また、ステップS2は、
図2(C)に示すように、自己組織化単分子膜W3を用いて第2領域A2における第2絶縁膜W4の形成を阻害すると共に、第1領域A1に第2絶縁膜W4を形成することを含む。第2絶縁膜W4は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、又はALD(Atomoic Layer Deposition)法で形成される。
【0022】
第2絶縁膜W4は、例えばSiO膜、AlO膜、SiN膜、ZrO膜、又はHfO膜等である。ここで、AlO膜とは、アルミニウム(Al)と酸素(O)を含む膜という意味である。AlO膜におけるAlとOの原子比は1:1には限定されない。SiO膜、SiN膜、ZrO膜、及びHfO膜について同様である。第2絶縁膜W4は、第1膜W1である絶縁膜と同じ材質の膜でもよいし、異なる材質の膜でもよい。
【0023】
AlO膜をALD法で形成する場合、TMA(トリメチルアルミニウム)ガスなどのAl含有ガスと、水蒸気(H2Oガス)などの酸化ガスとが、基板Wの表面に対して交互に供給される。水蒸気は疎水性の自己組織化単分子膜W3に吸着しないので、AlOは第1領域A1に選択的に堆積する。Al含有ガス及び酸化ガスの他に、水素ガス等の改質ガスが基板Wに対して供給されてもよい。これらの原料ガスは、化学反応を促進すべく、プラズマ化されてもよい。また、これらの原料ガスは、化学反応を促進すべく、加熱されてもよい。
【0024】
HfO膜をALD法で形成する場合、テトラキスジメチルアミドハフニウム(TDMAH:Hf[N(CH3)2]4)ガス等のHf含有ガスと、水蒸気(H2Oガス)等の酸化ガスとが、基板Wの表面に対して交互に供給される。水蒸気は疎水性の自己組織化単分子膜W3に吸着しないので、HfOは第1領域A1に選択的に堆積する。Hf含有ガス及び酸化ガスの他に、水素ガス等の改質ガスが基板Wに対して供給されてもよい。これらの原料ガスは、化学反応を促進すべく、プラズマ化されてもよい。また、これらの原料ガスは、化学反応を促進すべく、加熱されてもよい。
【0025】
また、ステップS2は、
図2(D)に示すように、自己組織化単分子膜W3を除去することを含む。その除去方法は、一般的なものであってよく、例えば、オゾン等でアッシングする方法が用いられる。また、プラズマ水素、プラズマ酸素、プラズマアンモニアで除去してもよい。
【0026】
ところで、
図2(C)に示すように自己組織化単分子膜W3を用いて第2領域A2における第2絶縁膜W4の形成を阻害すると共に、第1領域A1に第2絶縁膜W4を形成すると、
図2(D)に示すように第2絶縁膜W4が第1領域A1から横にはみ出すことがある。第2絶縁膜W4の膜厚が厚くなるほど、第2絶縁膜W4が横方向にはみ出しやすい。第2絶縁膜W4をエッチングすれば、第2絶縁膜W4の第1領域A1から横にはみ出した部分を除去できるが、第2絶縁膜W4の膜厚が薄くなってしまう。
【0027】
そこで、本実施形態の成膜方法は、ステップS2で形成した段差を、後述するように拡張する。段差を拡張する前の基板表面Waは、
図2(D)に示すように、隣り合う凹部Wbと凸部Wcを含む。凹部Wbは、トレンチ又はホール等である。ホールはビアホールを含む。凸部Wcは、ピラー又はフィン等であってもよい。
【0028】
基板表面Waは、例えば、凹部底面Wb1と、凹部側面Wb2と、凸部頂面Wc1と、を含む。例えば、凸部頂面Wc1は平坦面であり、凹部Wbは凸部頂面Wc1から凹む。凹部Wbの深さが段差の大きさを表す。凹部底面Wb1は、第2膜W2である導電膜によって形成される。一方、凹部側面Wb2と凸部頂面Wc1は、第2絶縁膜W4によって形成される。
【0029】
図1のステップS3では、
図3(A)に示すように、基板表面Waに液体Lを供給する。液体Lは、
図3(A)では凹部Wbのみに充填され、凸部頂面Wc1を覆わないが、凹部Wbからあふれ出し凸部頂面Wc1を覆ってもよい。
【0030】
液体Lは、強い分子間力を有するものが好ましい。分子間力が強いほど、凝集力が強い。液体Lの凝集力が大きければ、液体Lの蒸発を防止できる。液体Lの分子間力は、例えば30kJ/mol以上である。
【0031】
液体Lは、例えばハロゲン化物である。液体状のハロゲン化物は、例えばハロゲン化物の原料ガスと、原料ガスと反応する反応ガスとの反応によって形成される。原料ガスと反応ガスの両方、又は反応ガスをプラズマ化することで、液体Lの生成を促進させてもよい。原料ガスは例えばTiCl4ガスであり、反応ガスは例えばH2ガスである。
【0032】
TiCl4ガスとH2ガスは、一般的には、液体Lの形成ではなく、Ti膜の形成に用いられる。Ti膜は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法、又はALD(Atomoic Layer Deoposition)法で形成される。CVD法では、基板Wに対して、TiCl4ガスとH2ガスとを同時に供給する。一方、ALD法では、基板Wに対して、TiCl4ガスとH2ガスとを交互に供給する。CVD法又はALD法によれば、下記の式(1)~(3)がTi膜の形成に寄与していると推定される。
TiCl4+H2→TiHxCly・・・(1)
TiHxCly→TiCl2+HCl・・・(2)
TiCl2+H2→Ti+HCl・・・(3)
なお、上記の式(2)及び(3)において、TiCl2はTiCl又はTiCl3であってもよい。
【0033】
Ti膜の形成では、基板Wの温度が400℃以上に制御される。その結果、上記の式(1)~(3)の反応が順次進行し、Ti膜が形成される。
【0034】
一方、液体Lの形成では、基板Wの温度が-100℃~390℃、好ましくは20℃~350℃に制御される。その結果、上記の式(2)の反応と上記の(3)の反応が抑制されるので、TiHxClyを含む液体Lが形成される。液体Lは、Ti、TiCl、TiCl2、TiCl3、又はTiCl4を含んでもよい。基板Wの温度は、液体Lの分解点よりも低ければよい。
【0035】
なお、原料ガスは、TiCl4ガスには限定されない。例えば、原料ガスは、SiCl4ガス、Si2Cl6ガス、SiHCl3ガス等のハロゲン化シリコンガス、又はWCl4ガス、VCl4ガス、AlCl3ガス、MoCl5ガス、SnCl4ガス、GeCl4ガス等のハロゲン化金属ガスであってもよい。原料ガスは、ハロゲンを含めばよく、ハロゲンとして、塩素(Cl)の代わりに、臭素(Br)、ヨウ素(I)又はフッ素(F)等を含んでもよい。これらの原料ガスも、基板Wの温度が低ければ、上記の式(1)と同様の反応が主に進むので、ハロゲン化物の液体Lが形成される。
【0036】
また、反応ガスは、H2ガスには限定されない。反応ガスは、原料ガスとの反応によって液体Lを形成できるものであればよい。例えば、反応ガスは、D2ガスであってもよい。反応ガスは、アルゴンガスなどの不活性ガスと共に供給されてもよい。
【0037】
ステップS3は、例えば基板Wに対して原料ガスと反応ガスを同時に供給することを含む。この場合、ステップS3は、更に、原料ガスと反応ガスの両方をプラズマ化することを含んでもよい。プラズマ化によって、原料ガスと反応ガスの反応を促進できる。また、プラズマ化によって、低い基板温度で液体Lを形成しやすくなる。
【0038】
なお、ステップS3は、本実施形態では基板Wに対して原料ガスと反応ガスを同時に供給することを含むが、基板Wに対して原料ガスと反応ガスを交互に供給することを含んでもよい。後者の場合、ステップS3は、更に、反応ガスをプラズマ化することを含んでもよい。プラズマ化によって、原料ガスと反応ガスの反応を促進できる。また、プラズマ化によって、低い基板温度で液体Lを形成しやすくなる。また、ステップS3は、基板Wに対して原料ガスのみを供給することを含んでもよい。
【0039】
液体Lは、強い分子間力を有するものであればよく、イオン液体、液体状の金属、又は液体状のポリマーなどであってもよい。金属は、純金属でもよいし、合金でもよい。ポリマーは、例えば、Si2Cl6ガス、SiCl4ガス、SiHCl3ガス、SiH2Cl2ガス、SiH3Clガス、SiH4ガス、Si2H6ガス、Si3H8ガス、Si4H10ガス、シクロヘキサシランガス、テトラエトキシシラン(TEOS)ガス、ジメチルジエトキシシラン(DMDEOS)ガス、2,4,6,8―テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)ガス、又はトリシリルアミン(TSA)ガス等を2分子以上重合反応させて形成したオリゴマー若しくはポリマーであってよく、例えばポリシロキサン、ポリシラン、又はポリシラザンであってもよい。また、液体Lは、シラノールなどであってもよい。これらの液体Lは、スピンコート法により基板Wの凹部Wbに供給されるか、基板Wを収容する処理容器の内部で合成され、基板Wの凹部Wbに供給される。
【0040】
図1のステップS4では、
図3(B)に示すように、液体Lを化学変化させる処理ガスGを基板表面Waに供給し、処理ガスGと液体Lとの反応によって液体Lを凹部Wbから凸部頂面Wc1に移動させ、
図3(C)に示すように、凸部頂面Wc1に膜W5を形成することで、基板表面Waの段差を拡張する。段差の大きさは、凹部Wbの深さで表される。
【0041】
膜W5は、
図3(C)に示すように凹部側面Wb2にも形成されてもよい。凹部側面Wb2における膜W5の厚みが凸部頂面Wc1における膜W5の厚みよりも薄ければ、例えば膜W5を等方性エッチングしても、膜W5の形成によって基板表面Waの段差を拡張できる。
【0042】
また、図示しないが、膜W5は、凹部底面Wb1にも形成されてもよい。凹部底面Wb1における膜W5の厚みが凸部頂面Wc1における膜W5の厚みよりも薄ければ、基板表面Waの段差を拡張できる。
【0043】
膜W5は、固体でもよいし、粘性体でもよい。膜W5の厚みは、液体Lの供給量で制御できる。膜W5は、絶縁性を有してもよい。絶縁性を有する膜W5を、以下、第3絶縁膜W5とも呼ぶ。第3絶縁膜W5は、例えば金属酸化膜、又は金属窒化膜である。
【0044】
処理ガスGは、例えば基板表面Waの上方から供給され、液体Lと反応する。液体Lは、処理ガスGと反応し、化学変化する。化学変化は、液体Lの表面から徐々に進行するため、表面張力差が発生し、また、液体Lの表面から体積膨張、若しくは体積収縮が発生し、液体Lは不安定になり対流が発生する。液体Lの表面は処理ガスGとの反応によって表面張力の強い物質に変化するので、凸部頂面Wc1に向けて液体Lが移動する。また、液体Lの表面の化学変化による体積増減に引きずられて、凸部頂面Wc1に向けて液体Lが移動する。図示しないが、全ての液体Lは、処理ガスGとの反応によって、最終的に凸部頂面Wc1まで移動してもよい。
【0045】
なお、液体Lの化学変化の際に、液体Lと処理ガスGとの反応により液体Lから脱ガスが発生する。脱ガスの発生に起因する液体Lの運動も、液体Lの移動に寄与する要因と考えられる。また、基板Wの微細な振動も、液体Lの移動に寄与する要因になりえると考えられる。
【0046】
処理ガスGは、例えば、液体Lとの反応によって、液体Lに取り込まれる元素を含む。つまり、処理ガスGは、膜W5に取り込まれる元素を含む。例えば、処理ガスGの酸素が液体Lに取り込まれ、酸化物である膜W5が得られる。あるいは、処理ガスGの窒素が液体Lに取り込まれ、窒化物である膜W5が得られる。処理ガスG中の元素が液体Lに取り込まれればよく、その過程で、液体Lを構成する元素が脱ガスされてもよい。
【0047】
例えば、処理ガスGは、酸素含有ガスを含む。酸素含有ガスは、液体Lに取り込まれる元素として、酸素を含む。酸素含有ガスは、液体Lに取り込まれる元素として、更に窒素を含んでもよい。酸素含有ガスは、例えば、O2ガス、O3ガス、H2Oガス、NOガス、又はN2Oガスを含む。
【0048】
処理ガスGは、窒素含有ガスを含んでもよい。窒素含有ガスは、液体Lに取り込まれる元素として、窒素を含む。窒素含有ガスは、例えば、N2ガス、NH3ガス、N2H4ガス、又はN2H2ガスを含む。
【0049】
処理ガスGは、水素化物のガスを含んでもよい。水素化物のガスは、液体Lに取り込まれる元素として、水素に結合された元素、例えばSi、Ge、B、C又はPを含む。水素化物のガスは、例えば、SiH4ガス、Si2H6ガス、GeH4ガス、B2H6ガス、C2H4ガス等の炭化水素ガス又はPH3ガスを含む。
【0050】
処理ガスGは、液体Lとの反応によって、液体Lを構成する元素を脱ガスさせてもよい。例えば、処理ガスGは、還元性ガスを含む。還元性ガスは、例えば、水素(H2)ガス、又は重水素(D2)ガスである。
【0051】
処理ガスGは、アルゴンガスなどの不活性ガスと共に供給されてもよい。
【0052】
ステップS4は、処理ガスGをプラズマ化することを含んでもよい。プラズマ化によって、処理ガスGと液体Lとの反応を促進できる。
【0053】
図1のステップS5では、ステップS4で形成した膜W5を改質する。改質後の膜W5は、改質前の膜W5に比べて、耐薬品性に優れる。例えば、改質後の膜W5は、改質前の膜W5に比べて、希フッ酸(DHF)に対して低いエッチングレートを有する。
【0054】
膜W5の改質は、例えば下記(A)~(B)の少なくとも1つを含む。(A)膜W5中のハロゲン元素又は水素元素を低減する。(B)膜W5を高密度化する。膜W5の高密度化は、例えば、膜W5の未結合手を改質ガスに含まれる元素で終端させること、又は膜W5中の既存元素同士の結合を促進することで実現できる。
【0055】
ステップS5では、膜W5に対して改質ガスを供給してもよい。S5の改質ガスと、S4の処理ガスGとは、同じガスである場合、異なる条件で供給される。具体的には、例えば、改質ガスがプラズマ化されるのに対し、処理ガスGはプラズマ化されない。或いは、改質ガスは、処理ガスGに比べて、高い温度、若しくは高い気圧で供給される。
【0056】
但し、S5の改質ガスと、S4の処理ガスGとは、異なるガスであってもよい。例えば、処理ガスGは窒素ガスであってプラズマ化されるのに対し、改質ガスはアンモニア(NH3)ガスであってプラズマ化されるか、又はヒドラジン(N2H4)ガスである。或いは、処理ガスGは酸素(O2)ガスであるのに対し、改質ガスはオゾン(O3)ガスであるか、又は水蒸気(H2O)である。
【0057】
図1のステップS6では、第1サイクルをM(Mは1以上の整数)回実施したか否かを確認する。1回の第1サイクルは、上記ステップS3~S5を含む。なお、第1サイクルは、少なくともステップS3~S4を含めばよく、ステップS5を含まなくてもよい。Mは、2以上の整数であってもよい。
【0058】
第1サイクルの実施回数がM回未満である場合(ステップS6、NO)、基板表面Waの段差の大きさが目標値未満であるので、第1サイクルを再度実施する。Mは、特に限定されないが、例えば2~30であり、好ましくは5~20である。
【0059】
第1サイクルがM回行われる間に、隣り合う凹部側面Wb2同士がつながらなければよく、凹部Wbが閉塞されなければよい。凹部Wbが閉塞されてしまうと、段差が無くなってしまうからである。凹部Wbが閉塞されないように、Mの上限値が設定される。
【0060】
一方、第1サイクルの実施回数がM回に達した場合(ステップS6、YES)、基板表面Waの段差の大きさが目標値に達しているので、ステップS7以降の処理を実施する。ステップS7の直前の基板Wの一例を
図4(A)に示し、ステップS7の直後の基板Wの一例を
図4(B)に示す。
【0061】
図1のステップS7では、膜W5の一部をエッチングする。エッチングによって、
図4(B)に示すように、第2絶縁膜W4と第3絶縁膜W5の、第1領域A1からはみ出した部分を除去できる。エッチング後、凹部底面Wb1は第2膜W2である導電膜によって形成され、凹部側面Wb2は第2絶縁膜W4と第3絶縁膜W5によって形成され、凸部頂面Wc1は第3絶縁膜W5によって形成される。
【0062】
本実施形態によれば、第2絶縁膜W4の第1領域A1からはみ出した部分をエッチングする前に、第2絶縁膜W4の上に第3絶縁膜W5を形成する。第3絶縁膜W5によって絶縁膜の厚みを厚くでき、エッチングによる絶縁膜の厚みの低下に対応できる。その結果、第1領域A1から絶縁膜をはみ出させることなく、絶縁膜の厚みを厚くできる。
【0063】
エッチングは、等方性エッチングと異方性エッチングのいずれでもよい。等方性エッチングと異方性エッチングが組み合わせて用いられてもよい。等方性エッチングは、凹部底面Wb1及び凸部頂面Wc1だけではなく、凹部側面Wb2をもエッチングでき、第1領域A1からはみ出した部分を除去できる。一方、異方性エッチングは、凹部側面Wb2に対して、凹部底面Wb1及び凸部頂面Wc1を選択的にエッチングできる。
【0064】
エッチングは、ドライエッチングとウェットエッチングのいずれでもよいが、好ましくはドライエッチングである。ドライエッチングでは、エッチングガスが基板表面Waに供給される。ドライエッチングでは、エッチングガスと共にH2ガス、O2ガス、又はNH3ガスなどが基板表面Waに供給されてもよい。
【0065】
ドライエッチングが熱エッチングである場合、エッチングガスとしては例えばCl2ガス、ClF3ガス、F2ガス、又はHFガスなどが用いられる。一方、ドライエッチングがプラズマエッチングである場合、プラズマ化されるエッチングガスとしては例えばCl2ガス、CF4ガス、CHF3ガス、C4F8ガス、又はSF6ガスなどが用いられる。
【0066】
エッチングはALE(Atomic Layer Etching)のように、エッチングガスと反応ガスが交互に供給されてもよい。エッチングガスとしては例えばCl2ガス、CF4ガス、C4F8ガス、WF6ガスなどが用いられる。反応ガスとしては、Arガス、Heガス、H2ガス、BCl3ガスなどが用いられる。反応ガスはプラズマ化されて、供給されてもよい。
【0067】
M回の第1サイクルと、M回の第1サイクルの後に行われるステップS7とで第2サイクルが構成される。第2サイクルは、
図1では1回しか実施しないが、複数回実施してもよい。また、第2サイクルを複数回実施した後で、さらに、エッチングを実施してもよい。最終的に、第2絶縁膜W4と第3絶縁膜W5の、第1領域A1からはみ出した部分を除去できればよい。
【0068】
ところで、上記実施形態のステップS2は、第2領域A2に対して第1領域A1に第2絶縁膜W4を選択的に形成することを含む。一方、下記変形例のステップS2は、
図5(A)及び
図5(B)に示すように第1領域A1に対して第2領域A2を選択的にエッチングすることを含む。
【0069】
本変形例においても、ステップS2で形成した段差を拡張する。段差を拡張する前の基板表面Waは、
図5(B)に示すように、隣り合う凹部Wbと凸部Wcを含む。凹部Wbは、トレンチ又はホール等である。ホールはビアホールを含む。凸部Wcは、ピラー又はフィン等であってもよい。
【0070】
基板表面Waは、例えば、凹部底面Wb1と、凹部側面Wb2と、凸部頂面Wc1と、を含む。例えば、凸部頂面Wc1は平坦面であり、凹部Wbは凸部頂面Wc1から凹む。凹部Wbの深さが段差の大きさを表す。凹部底面Wb1は、第2膜W2である導電膜によって形成される。一方、凹部側面Wb2と凸部頂面Wc1は、第1膜W1である絶縁膜によって形成される。
【0071】
ステップS3~S7は、上記実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略し、簡単に説明する。ステップS3では、
図5(C)に示すように、基板表面Waに液体Lを供給する。ステップS4では、
図5(D)に示すように、液体Lを化学変化させる処理ガスGを基板表面Waに供給し、処理ガスGと液体Lとの反応によって液体Lを凹部Wbから凸部頂面Wc1に移動させ、
図6(A)に示すように、凸部頂面Wc1に第3絶縁膜W5を形成することで、基板表面Waの段差を拡張する。ステップS5では、ステップS4で形成した第3絶縁膜W5を改質する。ステップS6では、第1サイクルをM(Mは1以上の整数)回実施したか否かを確認する。第1サイクルの実施回数がM回未満である場合(ステップS6、NO)、基板表面Waの段差の大きさが目標値未満であるので、第1サイクルを再度実施する。一方、第1サイクルの実施回数がM回に達した場合(ステップS6、YES)、基板表面Waの段差の大きさが目標値に達しているので、ステップS7以降の処理を実施する。ステップS7の直前の基板Wの一例を
図6(B)に示し、ステップS7の直後の基板Wの一例を
図6(C)に示す。ステップS7では、第3絶縁膜W5の一部をエッチングする。エッチングによって、
図6(C)に示すように、第3絶縁膜W5の第1領域A1からはみ出した部分を除去できる。エッチング後、凹部底面Wb1は第2膜W2である導電膜によって形成され、凹部側面Wb2は第1膜W1である絶縁膜と第3絶縁膜W5によって形成され、凸部頂面Wc1は第3絶縁膜W5によって形成される。
【0072】
次に、
図7を参照して、成膜装置1について説明する。成膜装置1は、略円筒状の気密な処理容器2を備える。処理容器2の底壁の中央部には、排気室21が設けられている。排気室21は、下方に向けて突出する例えば略円筒状の形状を備える。排気室21には、例えば排気室21の側面において、排気配管22が接続されている。
【0073】
排気配管22には、圧力調整部23を介して排気部24が接続されている。圧力調整部23は、例えばバタフライバルブ等の圧力調整バルブを備える。排気配管22は、排気部24によって処理容器2内を減圧できるように構成されている。処理容器2の側面には、搬送口25が設けられている。搬送口25は、ゲートバルブ26によって開閉される。処理容器2内と搬送室(図示せず)との間における基板Wの搬入出は、搬送口25を介して行われる。
【0074】
処理容器2内には、ステージ3が設けられている。ステージ3は、基板Wの表面Waを上に向けて基板Wを水平に保持する保持部である。ステージ3は、平面視で略円形状に形成されており、支持部材31によって支持されている。ステージ3の表面には、例えば直径が300mmの基板Wを載置するための略円形状の凹部32が形成されている。凹部32は、基板Wの直径よりも僅かに大きい内径を有する。凹部32の深さは、例えば基板Wの厚さと略同一に構成される。ステージ3は、例えば窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料により形成されている。また、ステージ3は、ニッケル(Ni)等の金属材料により形成されていてもよい。なお、凹部32の代わりにステージ3の表面の周縁部に基板Wをガイドするガイドリングを設けてもよい。
【0075】
ステージ3には、例えば接地された下部電極33が埋設される。下部電極33の下方には、加熱機構34が埋設される。加熱機構34は、制御部100からの制御信号に基づいて電源部(図示せず)から給電されることによって、ステージ3に載置された基板Wを設定温度に加熱する。ステージ3の全体が金属によって構成されている場合には、ステージ3の全体が下部電極として機能するので、下部電極33をステージ3に埋設しなくてよい。ステージ3には、ステージ3に載置された基板Wを保持して昇降するための複数本(例えば3本)の昇降ピン41が設けられている。昇降ピン41の材料は、例えばアルミナ(Al2O3)等のセラミックスや石英等であってよい。昇降ピン41の下端は、支持板42に取り付けられている。支持板42は、昇降軸43を介して処理容器2の外部に設けられた昇降機構44に接続されている。
【0076】
昇降機構44は、例えば排気室21の下部に設置されている。ベローズ45は、排気室21の下面に形成された昇降軸43用の開口部211と昇降機構44との間に設けられている。支持板42の形状は、ステージ3の支持部材31と干渉せずに昇降できる形状であってもよい。昇降ピン41は、昇降機構44によって、ステージ3の表面の上方と、ステージ3の表面の下方との間で、昇降自在に構成される。
【0077】
処理容器2の天壁27には、絶縁部材28を介してガス供給部5が設けられている。ガス供給部5は、上部電極を成しており、下部電極33に対向している。ガス供給部5には、整合器511を介して高周波電源512が接続されている。高周波電源512から上部電極(ガス供給部5)に450kHz~2.45GHz、好ましくは450kHz~100MHzの高周波電力を供給することによって、上部電極(ガス供給部5)と下部電極33との間に高周波電界が生成され、容量結合プラズマが生成する。プラズマ生成部51は、整合器511と、高周波電源512と、を含む。なお、プラズマ生成部51は、容量結合プラズマに限らず、誘導結合プラズマなど他のプラズマを生成するものであってもよい。
【0078】
ガス供給部5は、中空状のガス供給室52を備える。ガス供給室52の下面には、処理容器2内へ処理ガスを分散供給するための多数の孔53が例えば均等に配置されている。ガス供給部5における例えばガス供給室52の上方には、加熱機構54が埋設されている。加熱機構54は、制御部100からの制御信号に基づいて電源部(図示せず)から給電されることによって、設定温度に加熱される。
【0079】
ガス供給室52には、ガス供給路6が設けられている。ガス供給路6は、ガス供給室52に連通している。ガス供給路6の上流には、それぞれガスラインL61,L62,L63,L64,L65,L66を介して、ガス源G61,G62,G63,G64,G65,G66が接続されている。
【0080】
ガス源G61は、TiCl4のガス源であり、ガスラインL61を介して、ガス供給路6に接続されている。ガスラインL61には、マスフローコントローラM61、貯留タンクT61及びバルブV61が、ガス源G61の側からこの順番に設けられている。マスフローコントローラM61は、ガスラインL61を流れるTiCl4ガスの流量を制御する。貯留タンクT61は、バルブV61が閉じられた状態で、ガスラインL61を介してガス源G61から供給されるTiCl4ガスを貯留して貯留タンクT61内におけるTiCl4ガスの圧力を昇圧できる。バルブV61は、開閉動作により、ガス供給路6へのTiCl4ガスの供給・遮断を行う。
【0081】
ガス源G62は、Arのガス源であり、ガスラインL62を介して、ガス供給路6に接続されている。ガスラインL62には、マスフローコントローラM62及びバルブV62が、ガス源G62の側からこの順番に設けられている。マスフローコントローラM62は、ガスラインL62を流れるArガスの流量を制御する。バルブV62は、開閉動作により、ガス供給路6へのArガスの供給・遮断を行う。
【0082】
ガス源G63は、O2のガス源であり、ガスラインL63を介して、ガス供給路6に接続されている。ガスラインL63には、マスフローコントローラM63、及びバルブV63が、ガス源G63の側からこの順番に設けられている。マスフローコントローラM63は、ガスラインL63を流れるO2ガスの流量を制御する。バルブV63は、開閉動作により、ガス供給路6へのO2ガスの供給・遮断を行う。
【0083】
ガス源G64は、H2のガス源であり、ガスラインL64を介して、ガス供給路6に接続されている。ガスラインL64には、マスフローコントローラM64及びバルブV64が、ガス源G64の側からこの順番に設けられている。マスフローコントローラM64は、ガスラインL64を流れるH2ガスの流量を制御する。バルブV64は、開閉動作により、ガス供給路6へのH2ガスの供給・遮断を行う。
【0084】
ガス源G65は、ClF3のガス源であり、ガスラインL65を介して、ガス供給路6に接続されている。ガスラインL65には、マスフローコントローラM65及びバルブV65が、ガス源G65の側からこの順番に設けられている。マスフローコントローラM65は、ガスラインL65を流れるClF3ガスの流量を制御する。バルブV65は、開閉動作により、ガス供給路6へのClF3ガスの供給・遮断を行う。
【0085】
ガス源G66は、段差用ガスのガス源であり、ガスラインL66を介して、ガス供給路6に接続されている。ガスラインL66には、マスフローコントローラM66及びバルブV66が、ガス源G66の側からこの順番に設けられている。マスフローコントローラM66は、ガスラインL66を流れる段差用ガスの流量を制御する。バルブV66は、開閉動作により、ガス供給路6への段差用ガスの供給・遮断を行う。
【0086】
段差用ガスは、段差を形成するのに用いるガスである。段差用ガスは、例えば、自己組織化単分子膜W3の原料である有機化合物と、第2絶縁膜W4の原料である金属含有ガスや酸化ガス(又は窒化ガスなど)とが組み合わせて用いられる。あるいは、段差用ガスは、第1膜W1である導電膜をエッチングするエッチングガスである。段差用ガスが複数である場合、段差用ガスごとにガス源G66及びガスラインL66が設けられる。
【0087】
成膜装置1は、制御部100と、記憶部101とを備える。制御部100は、CPU、RAM、ROM等(いずれも図示せず)を備えており、例えばROMや記憶部101に格納されたコンピュータプログラムをCPUに実行させることによって、成膜装置1を統括的に制御する。具体的には、制御部100は、記憶部101に格納された制御プログラムをCPUに実行させて成膜装置1の各構成部の動作を制御することで、基板Wに対する成膜処理等を実行する。
【0088】
次に、
図7を再度参照して、成膜装置1の動作について説明する。先ず、制御部100は、ゲートバルブ26を開いて搬送機構により基板Wを処理容器2内に搬送し、ステージ3に載置する。基板Wは、表面Waを上に向けて水平に載置される。制御部100は、搬送機構を処理容器2内から退避させた後、ゲートバルブ26を閉じる。次いで、制御部100は、ステージ3の加熱機構34により基板Wを所定の温度に加熱し、圧力調整部23により処理容器2内を所定の圧力に調整する。例えば、基板Wを処理容器2内に搬入することなどが、
図1のステップS1に含まれる。
【0089】
次いで、
図1のステップS2では、制御部100は、バルブV66を開き、段差用ガスを処理容器2内に供給する。バルブV61,V62,V63,V64,V65は閉じられている。なお、段差用ガスと共に、Arガス又はO
2ガスなどを処理容器2内に供給してもよい。段差用ガスによって、基板表面Waに凹部Wbと凸部Wcとが形成される。
【0090】
次いで、
図1のステップS3では、制御部100は、バルブV61,V62,V64を開き、TiCl
4ガスとArガスとH
2ガスとを同時に処理容器2内に供給する。バルブV63,V65,V66は閉じられている。TiCl
4ガスとH
2ガスとの反応により、TiH
xCl
y等の液体Lが基板Wの凹部Wbに供給される。
【0091】
ステップS3の具体的な処理条件は、例えば下記の通りである。
TiCl4ガスの流量:1sccm~100sccm
Arガスの流量:10sccm~100000sccm、好ましくは100sccm~20000sccm
H2ガスの流量:1sccm~50000sccm、好ましくは10sccm~10000sccm
処理時間:1秒~1800秒
処理温度:-100℃~390℃、好ましくは20℃~350℃
処理圧力:0.1Pa~10000Pa、好ましくは0.1Pa~2000Pa。
【0092】
ステップS3において、制御部100は、プラズマ生成部51によりプラズマを生成し、TiCl4ガスとH2ガスとの反応を促進してもよい。制御部100は、TiCl4ガスとH2ガスとを同時に供給する場合には、TiCl4ガスとH2ガスの両方をプラズマ化する。
【0093】
なお、ステップS3において、制御部100は、TiCl4ガスとH2ガスとを同時に処理容器2内に供給する代わりに、交互に供給してもよい。この場合、制御部100は、TiCl4ガスとH2ガスのうち、H2ガスのみをプラズマ化してもよい。
【0094】
ステップS3の後、バルブV61,V64が閉じられる。このとき、バルブV62は開いているので、処理容器2内にはArが供給され、処理容器2内に残留するガスが排気配管22へと排出され、処理容器2内がArの雰囲気に置換される。
【0095】
次いで、
図1のステップS4では、制御部100は、バルブV63を開き、O
2ガスをArガスと共に処理容器2内に供給する。O
2ガスと液体Lとの反応によって、液体Lが凹部Wbから凸部頂面Wc1に移動し、凸部頂面Wc1に第3絶縁膜W5が形成される。その結果、基板表面Waの段差が拡張される。
【0096】
ステップS4の具体的な処理条件は、例えば下記の通りである。
O2ガスの流量:1sccm~100000sccm、好ましくは1sccm~10000sccm
Arガスの流量:10sccm~100000sccm、好ましくは100sccm~20000sccm
処理時間:1秒~1800秒
処理温度:-100℃~390℃、好ましくは20℃~350℃
処理圧力:0.1Pa~10000Pa、好ましくは0.1Pa~2000Pa。
【0097】
次いで、
図1のステップS5では、ステップS4と同様に、制御部100は、O
2ガスをArガスと共に処理容器2内に供給する。また、ステップS5では、ステップS4とは異なり、制御部100は、プラズマ生成部51によりプラズマを生成し、第3絶縁膜W5を改質する。ステップS5の具体的な処理条件は、プラズマを生成する以外、ステップS4の処理条件と同様であるので、説明を省略する。
【0098】
ステップS5の後、バルブV63が閉じられる。このとき、バルブV62は開いているので、処理容器2内にはArが供給され、処理容器2内に残留するガスが排気配管22へと排出され、処理容器2内がArの雰囲気に置換される。
【0099】
次いで、
図1のステップS6では、制御部100は、第1サイクルをM(Mは1以上の自然数)回実施したか否かを確認する。1回の第1サイクルは、上記ステップS3~S5を含む。なお、第1サイクルは、少なくともステップS3~S4を含めばよく、ステップS5を含まなくてもよい。
【0100】
第1サイクルの実施回数がM回未満である場合(ステップS6、NO)、制御部100は第1サイクルを再度実施する。一方、第1サイクルの実施回数がM回に達した場合(ステップS6、YES)、制御部100はステップS7を実施する。
【0101】
次いで、
図1のステップS7では、制御部100は、バルブV65を開き、ClF
3ガスをArガスと共に処理容器2内に供給する。ClF
3ガスによって、第2絶縁膜W4の一部及び第3絶縁膜W5の一部がエッチングされる。なお、ステップS7では、制御部100は、プラズマ生成部51によりプラズマを生成してもよく、ClF
3ガスをプラズマ化してもよい。
【0102】
ステップS7の具体的な処理条件は、例えば下記の通りである。
ClF3ガスの流量:1sccm~100sccm
Arガスの流量:10sccm~100000sccm、好ましくは100sccm~20000sccm
処理時間:1秒~1800秒
処理温度:30℃~350℃、好ましくは80℃~200℃
処理圧力:0.1Pa~10000Pa、好ましくは0.1Pa~2000Pa。
【0103】
ステップS7の後、バルブV65が閉じられる。このとき、バルブV62は開いているので、処理容器2内にはArが供給され、処理容器2内に残留するガスが排気配管22へと排出され、処理容器2内がArの雰囲気に置換される。
【0104】
なお、ステップS7と、ステップS3~S5とは、本実施形態では同じ処理容器2の内部で実施されるが、別の処理容器2の内部で実施されてもよい。
【0105】
ステップS7の後、制御部100は、処理容器2内への基板Wの搬入とは逆の手順で、基板Wを処理容器2から搬出する。
【0106】
[実施例]
次に、実施例などについて説明する。下記の例1~例18のうち、例12が実施例であり、例1~例11及び例13~例18は参考例である。下記の例1~例18では、
図7に示す処理容器2に基板Wを搬入する前に、基板表面Waに予め凹部と凸部を形成した。予め形成した凸部頂面Wc1を、以下、凸部頂面Wdとも記す。
【0107】
<例1~例2>
例1~例2では、
図7に示す成膜装置1を用いて、表1に示す処理条件でステップS1~S4及びS6を実施し、ステップS5及びS7を実施しなかった。なお、上記の通り、処理容器2に基板Wを搬入する前に、基板表面Waに予め凹部と凸部を形成した。
【0108】
【0109】
表1において、「凸部頂面」は、ステップS3の実施前に予め形成した凸部頂面Wdの材質である。ステップS3の実施前に予め形成した凹部側面の材質は、凸部頂面Wdの材質と同じである。「凹部底面」は、ステップS3の実施前に予め形成した凹部底面の材質である。また、各種ガスの「〇」は各種ガスを供給したことを意味し、「RF」の「ON」は高周波電力によってガスをプラズマ化したことを意味する。更に、「サイクル数」はステップS3,S4の繰り返しの数(つまり、ステップS6のM)である。後述する表2~表8において同様である。
【0110】
図8に、例1に係る基板W-1のSEM写真を示す。
図8(A)に示すように、ステップS3によって、液体L-1が凹部Wb-1に供給された。液体L-1の供給量は、凹部Wb-1の内部に収まる程度であった。また、
図8(B)に示すように、ステップS4の途中で処理を中断した場合、具体的にはステップS4の処理時間が10秒である場合、
図2(B)と同様の様子、つまり、液体L-1が凹部Wb-1から凸部頂面Wd-1に向けて這い上がる様子が確認された。更に、
図8(C)に示すように、ステップS4によって、凸部頂面Wd-1に選択的に膜W5-1が形成された。
【0111】
図9に、例2に係る基板W-2のSEM写真を示す。
図9(A)に示すように、ステップS3によって、液体L-2が凹部Wb-2に供給された。例2では、例1よりもステップS3の処理時間が長く液体L-2の供給量が多かったので、液体L-2が凹部Wb-2だけではなく凸部頂面Wd-2にも供給された。また、
図9(B)に示すように、ステップS4によって、凸部頂面Wd-2に選択的に膜W5-2が形成された。
【0112】
<例3>
例3では、
図7に示す成膜装置1を用いて、表2に示す処理条件でステップS1~S3を実施した後、ステップS4~S7を実施することなく、表2に示す処理条件でステップS9を実施した。ステップS9では、処理容器2内にArガスのみを供給し、凹部Wb内の液体Lの変化を観察した。
【0113】
【0114】
図10に、例3に係るステップS9の処理時間と、凹部Wb内の液体Lの厚みとの関係を示す。
図10から明らかなように、減圧雰囲気下で長時間放置しても、凹部Wb内の液体Lの移動、および減少は認められなかった。これは、液体Lと処理ガスGの反応が始まるまで液体Lの移動が生じないことと、液体Lは分子間力が強く凝集力が強いので蒸発しにくいことと、を意味する。
【0115】
<例4~例7>
例4~例7では、
図7に示す成膜装置1を用いて、表3に示す処理条件でS1~S4及びS6を実施し、ステップS5及びS7を実施しなかった。なお、上記の通り、処理容器2に基板Wを搬入する前に、基板表面Waに予め凹部と凸部を形成した。
【0116】
【0117】
図11(A)に、例4に係る基板W-4の処理後のSEM写真を示す。例4では、例1と同様に、ステップS3及びS4を1回ずつ実施した。その結果、凹部Wb-4と凸部頂面Wd-4のうち、凸部頂面Wd-4に選択的に膜W5-4が形成された。
【0118】
図11(B)に、例5に係る基板W-5の処理後のSEM写真を示す。例5では、例1とは異なり、ステップS3及びS4を10回ずつ実施した。その結果、凹部Wb-5と凸部頂面Wd-5のうち、凸部頂面Wd-5に選択的に膜W5-5が形成された。
【0119】
図11(C)に、例6に係る基板W-6の処理後のSEM写真を示す。例6では、例1とは異なり、ステップS4においてO
2ガスの代わりに、H
2Oガスを処理容器2内に供給した。その結果、凹部Wb-6と凸部頂面Wd-6のうち、凸部頂面Wd-6に選択的に膜W5-6が形成された。
【0120】
図11(D)に、例7に係る基板W-7の処理後のSEM写真を示す。例7では、例1とは異なり、ステップS4においてO
2ガスの代わりに、N
2ガスを処理容器2内に供給した。また、N
2ガスはプラズマ化した。その結果、凹部Wb-7と凸部頂面Wd-7のうち、凸部頂面Wd-7に選択的に膜W5-7が形成された。
【0121】
例4~例7から明らかなように、様々な種類の処理ガスGを用いて、凸部頂面Wdに選択的に膜W5を形成できた。
【0122】
<例8~例12>
例8~例12では、
図7に示す成膜装置1を用いて、表4に示す処理条件でS1~S4及びS6を実施し、ステップS5及びS7を実施しなかった。なお、上記の通り、処理容器2に基板Wを搬入する前に、基板表面Waに予め凹部と凸部を形成した。
【0123】
【0124】
図12(A)に、例8に係る基板W-8の処理後のSEM写真を示す。例8では、凸部頂面及び凹部底面の材質を酸化チタン(TiO
2)に変更した以外、例4と同じ条件で、ステップS3及びS4を1回ずつ実施した。その結果、凹部Wb-8と凸部頂面Wd-8のうち、凸部頂面Wd-8に選択的に膜W5-8が形成された。
【0125】
図12(B)に、例9に係る基板W-9の処理後のSEM写真を示す。例9では、凸部頂面及び凹部底面の材質を窒化シリコン(SiN)に変更した以外、例4と同じ条件で、ステップS3及びS4を1回ずつ実施した。その結果、凹部Wb-9と凸部頂面Wd-9のうち、凸部頂面Wd-9に選択的に膜W5-9が形成された。
【0126】
図12(C)に、例10に係る基板W-10の処理後のSEM写真を示す。例10では、凸部頂面及び凹部底面の材質をシリコン(Si)に変更した以外、例4と同じ条件で、ステップS3及びS4を1回ずつ実施した。その結果、凹部Wb-10と凸部頂面Wd-10のうち、凸部頂面Wd-10に選択的に膜W5-10が形成された。
【0127】
図13(A)に、例11に係る基板W-11の処理後のSEM写真を示す。例11では、凸部頂面及び凹部底面の材質をカーボン(C)に変更した以外、例4と同じ条件で、ステップS3及びS4を1回ずつ実施した。その結果、凹部Wb-11と凸部頂面Wd-11のうち、凸部頂面Wd-11に選択的に膜W5-11が形成された。
【0128】
図13(B)に、例12に係る基板W-12の処理後のSEM写真を示す。例12では、凸部頂面の材質をルテニウム(Ru)に変更した以外、例4と同じ条件で、ステップS3及びS4を1回ずつ実施した。その結果、凹部Wb-12と凸部頂面Wd-12のうち、凸部頂面Wd-12に選択的に膜W5-12が形成された。
【0129】
例8~例12から明らかなように、様々な材質の基板Wを用いて、凸部頂面Wdに選択的に膜W5を形成できた。
【0130】
<例13~例14>
例13~例14では、
図7に示す成膜装置1を用いて、表5に示す処理条件でS1~S4及びS6を実施し、ステップS5及びS7を実施しなかった。なお、上記の通り、処理容器2に基板Wを搬入する前に、基板表面Waに予め凹部と凸部を形成した。
【0131】
【0132】
図14(A)に、例13に係る基板W-13の処理後のSEM写真を示す。例13では、基板温度を80℃に変更した以外、例4と同じ条件で、ステップS3及びS4を1回ずつ実施した。その結果、凹部Wb-13と凸部頂面Wd-13のうち、凸部頂面Wd-13に選択的に膜W5-13が形成された。
【0133】
図14(B)に、例14に係る基板W-14の処理後のSEM写真を示す。例14では、基板温度を200℃に変更した以外、例4と同じ条件で、ステップS3及びS4を1回ずつ実施した。その結果、凹部Wb-14と凸部頂面Wd-14のうち、凸部頂面Wd-14に選択的に膜W5-14が形成された。
【0134】
例13~例14から明らかなように、様々な基板温度で、凸部頂面Wdに選択的に膜W5を形成できた。
【0135】
<例15~例16>
例15では、
図7に示す成膜装置1を用いて、表6に示す処理条件でS1~S4及びS6を実施し、ステップS5及びS7を実施しなかった。一方、例16では、
図7に示す成膜装置1を用いて、表6に示す処理条件でS1~S6を実施し、ステップS7を実施しなかった。なお、上記の通り、処理容器2に基板Wを搬入する前に、基板表面Waに予め凹部と凸部を形成した。
【0136】
【0137】
例15で凸部頂面Wdに形成された膜W5を、HF濃度が0.5質量%の水溶液でエッチングしたところ、そのエッチングレートは762.8Å/minであった。一方、例16で凸部頂面Wdに形成された膜W5を、HF濃度が0.5質量%の水溶液でエッチングしたところ、そのエッチングレートは81.3Å/minであった。従って、ステップS5によって膜W5を改質できた。
【0138】
<例17>
例17では、
図7に示す成膜装置1を用いて、表7に示す処理条件でS1~S4及びS6を実施し、ステップS5及びS7を実施しなかった。なお、上記の通り、処理容器2に基板Wを搬入する前に、基板表面Waに予め凹部と凸部を形成した。
【0139】
【0140】
図15に、例17に係る基板W-17の処理後のSEM写真を示す。例17では、例1とは異なり、ステップS3において、原料ガスとして、TiCl
4の代わりに、Si
2Cl
6(HCD)を処理容器2内に供給した。また、ステップS4において、ArガスとO
2ガスをプラズマ化した。また、ステップS3及びS4を2回ずつ実施した。更に、凸部頂面及び凹部底面の材質をTiO
2に変更した。その結果、凹部Wb-17と凸部頂面Wd-17のうち、凸部頂面Wd-17に選択的に膜W5-17が形成された。なお、凸部頂面及び凹部底面の材質をSiO
2に変更した場合も、同様の結果が得られた。
【0141】
<例18>
例18では、
図7に示す成膜装置1を用いて、表8に示す処理条件でS1~S4及びS6を実施し、ステップS5及びS7を実施しなかった。なお、上記の通り、処理容器2に基板Wを搬入する前に、基板表面Waに予め凹部と凸部を形成した。
【0142】
【0143】
図16に、例18に係る基板W-18の処理後のSEM写真を示す。例18では、例1とは異なり、ステップS3において、原料ガスとして、TiCl
4の代わりに、SnCl
4を処理容器2内に供給した。その結果、凹部Wb-18と凸部頂面Wd-18のうち、凸部頂面Wd-18に選択的に膜W5-18が形成された。
【0144】
例17~例18から明らかなように、様々な原料ガスを用いて、凸部頂面Wdに選択的に膜W5を形成できた。
【0145】
以上、本開示に係る成膜方法及び成膜装置の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0146】
A1 第1領域
A2 第2領域
L 液体
W 基板
W1 第1膜
W2 第2膜
W5 膜(第3絶縁膜)