(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185494
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】重合性液晶組成物および偏光子
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20221207BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20221207BHJP
C09B 57/00 20060101ALN20221207BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/22
C09B57/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093224
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 遼
(72)【発明者】
【氏名】岡田 悟史
(72)【発明者】
【氏名】仲嶋 翔
(72)【発明者】
【氏名】齊部 佑紀
【テーマコード(参考)】
2H148
2H149
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA12
2H148CA19
2H148CA24
2H149AA02
2H149AB01
2H149BA12
2H149DA02
2H149DA12
2H149DB02
2H149FA24W
2H149FA24Y
2H149FA28W
2H149FA28Y
2H149FC08
(57)【要約】
【課題】本発明は、近赤外線吸収色素を含む新規な液晶組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】二色性色素と、スメクチック液晶相を示す重合性液晶化合物とを含む、重合性液晶組成物であって、前記二色性色素が、700nm以上の波長領域に最大吸収波長を有する近赤外線吸収色素である、重合性液晶組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二色性色素と、スメクチック液晶相を示す重合性液晶化合物とを含む、重合性液晶組成物であって、
前記二色性色素が、700nm以上の波長領域に最大吸収波長を有する近赤外線吸収色素である、重合性液晶組成物。
【請求項2】
前記近赤外線吸収色素のアスペクト比が1.5以上である、請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【請求項3】
前記近赤外線吸収色素がスクアリリウム色素である、請求項1または2に記載の重合性液晶組成物。
【請求項4】
前記近赤外線吸収色素が、下記式(X)で表される化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【化1】
[前記式(X)中の記号は以下のとおりである。
Arは炭素数5~14の芳香族性を有する単環、縮環または連結環である。
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子、または、置換基を有してもよく、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子もしくは環構造を含んでよい炭素数1~20の1価炭化水素基を示す。
R
1とR
2、R
1およびR
2の少なくとも一方とArを構成する炭素原子は、互いに連結して窒素原子と共に員数が3から10の複素環を形成してもよい。]
【請求項5】
前記Arは、ハロゲン原子、水酸基、または炭素数1~9の1価有機基RArから選ばれる1以上の置換基を有する、請求項4に記載の重合性液晶組成物。
【請求項6】
前記スメクチック液晶相が、スメクチック液晶B相、スメクチック液晶F相、またはスメクチック液晶I相である、請求項1~5のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【請求項7】
偏光子用である、請求項1~6のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物の重合体からなる光学異方性材料。
【請求項9】
請求項8に記載の光学異方性材料を有する光学素子。
【請求項10】
請求項8に記載の光学異方性材料を有する偏光子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性液晶組成物および偏光子等に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、偏光子等の光学素子が用いられている。また、偏光子は、二色性色素、重合性液晶化合物、重合開始剤を含む重合性液晶組成物を用いて製造されることが知られている。
例えば、特許文献1および2には、二色性色素と重合性液晶化合物とを含む重合性液晶組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5923941号公報
【特許文献2】特許第6343866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および2に記載された液晶組成物における二色性色素は、可視光領域を吸収する色素であり、近赤外線領域を吸収する色素を用いた液晶組成物は知られていない。
本発明は、偏光子等の様々な光学素子に有用な、近赤外線吸収色素を含む新規な液晶組成物、これを利用した偏光子等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は下記重合性液晶組成物に関する。
二色性色素と、スメクチック液晶相を示す重合性液晶化合物とを含む、重合性液晶組成物であって、前記二色性色素が、700nm以上の波長領域に最大吸収波長を有する近赤外線吸収色素である、重合性液晶組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、近赤外線吸収色素を含む新規な液晶組成物、これを利用した偏光子等を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において、式(A1)で示される化合物を化合物(A1)という。他の式で表される化合物も同様である。化合物(A1)からなるNIR色素をNIR色素(A1)ともいい、他の色素についても同様である。また、例えば、式(1a)で表される基を基(1a)とも記し、他の式で表される基も同様である。
本明細書において、数値範囲を表す「~」では、上下限を含む。
【0008】
本明細書において、特に断りのない限り、アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状またはこれらの構造を組み合わせた構造でもよい。
ハロゲン原子としては、特に断りのない限り、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
本明細書において、特に断りのない限り、アリール基は芳香族化合物が有する芳香環、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル等を構成する炭素原子を介して結合する基をいう。また、ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を有する芳香族化合物が有する芳香環、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環等を構成する炭素原子あるいはヘテロ原子を介して結合する基をいう。
【0009】
本明細書において、スクアリリウム化合物とは、構造式において下記式(S2)で表す共鳴構造をとり得る下記式(S1)で表されるスクアリリウム骨格を有する化合物をいう。本明細書において、スクアリリウム骨格は式(S1)または式(S2)のいずれかで示される。
【0010】
【0011】
本明細書において、最大吸収波長や二色性等の光学特性は、可視吸収スペクトル計により測定・算出される。
【0012】
<重合性液晶組成物>
本発明の重合性液晶組成物(以下、「本発明の組成物」とも記載する)は、二色性色素と、スメクチック液晶相を示す重合性液晶化合物とを含む。二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度が異なる性質を有する色素を意味する。本発明の組成物が二色性色素を含むことで、得られる光学素子が偏光子として機能できる。
本発明の組成物における二色性色素は、700nm以上の波長領域に最大吸収波長を有する近赤外線吸収色素である。二色性色素が近赤外線吸収色素であることで、近赤外及び赤外領域の偏光を吸収できる偏光子を作ることができる。
最大吸収波長を有する波長領域は好ましくは800nm以上である。
【0013】
近赤外線吸収色素は、重合性液晶の配向に追従して配向できるよう、直線性が高い構造であることが望ましく、アスペクト比が好ましくは1.5以上、より好ましくは1.6以上、さらに好ましくは1.8以上である。
ここで言うアスペクト比とは、分子が内接する最小直径の円柱の長さ(L)と直径(D)の比(L/D)で定義される。
本発明記載のアスペクト比については次の方法で測定・算出できる。米国Gaussian社製の分子軌道計算用ソフトウェアであるGaussian16を用い、キーワードとしてB3LYP/6-31G*を用い、対象とする分子構造の構造最適化を行う。さらに該最適化構造から、X-Ability社製シミュレーションソフトウェアであるWinmostar(Winmostar V10)を用い、アスペクト比を算出する。
【0014】
近赤外線吸収色素は、700nm以上の近赤外・赤外光領域を吸収できる観点から、スクアリリウム色素が好ましく、下記式(X)で表される化合物がより好ましい。
【0015】
【0016】
前記式(X)中の記号は以下のとおりである。
Arは炭素数5~14の芳香族性を有する単環、縮環または連結環である。
【0017】
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、または、置換基を有してもよく、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子もしくは環構造を含んでよい炭素数1~20の1価炭化水素基を示す。
1価炭化水素基としては、分岐状でも直鎖状でも環状でもよく、スクアリリウム色素が直線状となりやすい、すなわち二色性を発現しやすい観点から、直鎖状もしくは後述するようにR1とR2が連結しているのが好ましい。
1価炭化水素基の炭素数は1~12がより好ましい。
また、R1およびR2は同一であっても異なっていてもよい。さらに、R1およびR2が直鎖状の場合は、スクアリリウム色素が直線状となりやすい観点から、R1およびR2は異なっていることが好ましい。
【0018】
R1とR2、R1およびR2の少なくとも一方とArを構成する炭素原子は、互いに連結して窒素原子と共に員数が3から10の複素環を形成してもよい。これによりスクアリリウム色素が直線状となりやすい、すなわち二色性を発現しやすい。
【0019】
R1およびR2が複素環を形成する場合、R1およびR2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよく、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子もしくは環構造を含んでよい炭素数1~20の2価炭化水素基を示す。
【0020】
R1およびR2における置換基としてはハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、炭素数1~19のアルコキシ基が挙げられる。
なお、R1およびR2が置換基を有する場合、置換基の炭素数はR1およびR2の炭素数に含まれる。
【0021】
R1およびR2における置換基としては、さらに、環状のアルキル基またはアリール基が挙げられる。アリール基としては、1~5個の置換基を有してもよいフェニル基または、1~7個の置換基を有してもよいナフチル基が好ましい。フェニル基およびナフチル基の水素原子を置換してもよい置換基としては、炭素-炭素原子間に不飽和結合または酸素原子を含んでよい炭素数1~12のアルキル基、もしくはアルコキシ基、またはアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は1~12)が挙げられる。フェニル基およびナフチル基は、非置換または、水素原子が1~3個置換されているのが好ましく、置換基としては、メチル基、t-ブチル基、ジメチルアミノ基、メトキシ基等が好ましい。
【0022】
R1およびR2におけるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子が好ましい。
【0023】
R1およびR2が、主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、脂環の炭素数としては3~10が好ましい。芳香環の炭素数は4~14が好ましい。
【0024】
R1およびR2における置換基は、さらに、重合性液晶化合物と共重合させるための重合性基であってもよい。
【0025】
R1とR2が互いに連結して窒素原子と共に複素環を形成する場合、かかる複素環の員数は、スクアリリウム色素が直線状となりやすい観点、すなわち二色性を発現しやすい観点から、4~6が好ましい。
かかる複素環において、窒素原子から最も遠い炭素原子に結合する水素原子の一つが、炭素原子間に不飽和結合またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~12、好ましくは1~8、さらに好ましくは3~8のアルキル基に置換されていてもよい。
また、かかる複素環において、窒素原子から最も遠い炭素原子が窒素原子に置き換えられ、当該窒素原子に結合する水素原子が、炭素原子間に不飽和結合またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~12、好ましくは1~8、さらに好ましくは3~8のアルキル基に置換されていてもよい。
アルキル基は分岐状でも直鎖状でも環状でもよいが、スクアリリウム色素が二色性を発現しやすい観点から、直鎖状が好ましい。また、かかる複素環における水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換されていてもよく、その場合、窒素原子と隣接しない炭素原子に結合する水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換されていることが好ましい。
【0026】
R1およびR2の少なくとも一方とArを構成する炭素原子が互いに連結して窒素原子と共に複素環を形成する場合、かかる複素環の員数は、5~7が好ましい。かかる複素環において、窒素原子に隣接する炭素原子に結合する水素原子の一つが、炭素原子間に不飽和結合またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~12、好ましくは1~8、さらに好ましくは3~8のアルキル基に置換され、残りの水素原子の一部または全部が、炭素原子間に不飽和結合またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~4のアルキル基に置換されていてもよい。アルキル基は分岐状でも直鎖状でも環状でもよいが、スクアリリウム色素が二色性を発現しやすい観点から、直鎖状が好ましい。また、かかる複素環における水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換されていてもよく、その場合、窒素原子と隣接しない炭素原子に結合する水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換されていることが好ましい。
【0027】
なお、2つのR1は、スクアリリウム骨格の左右で異なってもよいが、製造容易性の観点から左右が同一であることが好ましい。R2、Arについても同様である。また、これ以降の記号についても同様である。すなわち化学式中における2つの記号はスクアリリウム骨格の左右で異なってもよいが、製造容易性の観点から左右が同一であることが好ましい。
【0028】
Arは1以上の置換基を有してもよい。ここで、スクアリリウム色素の短軸方向の分子長と長軸方向の分子長の比率(アスペクト比)が大きい方が二色性を発現しやすい観点から、置換基はハロゲン原子、水酸基、または置換基を有してもよい炭素数1~9の1価有機基RArから選ばれることが好ましい。なお、RArの炭素数およびRArが有する置換基の炭素数は上記Arの炭素数には含まれない。RArの炭素数は好ましくは1~7、より好ましくは1~5である。
ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
1価有機基RArとしては、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルアリール基、アミノ基、アルケニル基、アルキニル基、イミノ基、シアノ基、カルボニル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
RArは置換基を有してもよい。置換基の炭素数はRArの炭素数に含まれる。
【0029】
スクアリリウム色素としては、下記式(I)~(VI)のいずれかで表される化合物が好ましい。なお、スクアリリウム色素は1種以上の化合物を含んでもよい。
【0030】
<スクアリリウム色素(I)>
【0031】
【0032】
[上記式中の記号は以下のとおりである。
R11およびR21は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよく、炭素原子間に不飽和結合もしくはヘテロ原子を含んでよい炭素数1~20のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数1~19のアシルオキシ基、炭素数6~11のアリール基、または、置換基を有していてもよく炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18のアルアリール基を示す。
R31およびR51は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~8のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数1~8のアシルオキシ基、炭素数6~9のアリール基、置換基を有してもよく炭素原子間に酸素原子を有してもよい炭素数7~9のアルアリール基、-NR31aR31b(R31aおよびR31bは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、-C(=O)-R31c(R31cは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有してもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい炭素数1~8の炭化水素基)、-NHR31d、または、-SO2-R31d(R31dは、それぞれ1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、またはシアノ基で置換されてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい炭素数1~8の炭化水素基)を示す。)、または、下記式(S)で示される基(R31e、R31fは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~3のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。kは2または3である。)を示す。
【0033】
【0034】
R41およびR61は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~8のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数1~8のアシルオキシ基、炭素数6~9のアリール基、または、置換基を有していてもよく炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~9のアルアリール基を示す。
R11とR21、R11とR41、およびR21とR61は、互いに連結して窒素原子と共に、それぞれ員数が4から6の複素環A1、員数が5から7の複素環B1、および員数が5から7の複素環C1を形成してもよい。]
【0035】
R11およびR21がアルキル基である場合、スクアリリウム色素が二色性を発現しやすい観点から、直鎖状が好ましい。
【0036】
複素環A1が形成される場合のR11とR21は、これらが結合した2価の基-Q1-として、炭素数3~5のアルキレン基または炭素数2~4のアルキレンオキシ基を示す。ここで、窒素原子とQ1とから構成される複素環において、窒素原子から最も遠い炭素原子に結合する水素原子の一つが、炭素原子間に不飽和結合またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~12、好ましくは1~8、さらに好ましくは3~8のアルキル基に置換されていてもよい。アルキル基はスクアリリウム色素が二色性を発現しやすい観点から、直鎖状が好ましい。また、かかる複素環における水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換されていてもよく、その場合、窒素原子と隣接しない炭素原子に結合する水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換されていることが好ましい。
【0037】
複素環B1が形成される場合のR11とR41、および複素環C1が形成される場合のR21とR61は、これらが結合したそれぞれ2価の基-X1-Y1-および-X2-Y2-(窒素に結合する側がX1およびX2)として、X1およびX2がそれぞれ下記式(1x)または(2x)で示される基であり、Y1およびY2がそれぞれ下記式(1y)~(5y)から選ばれるいずれかで示される基である。X1およびX2が、それぞれ下記式(2x)で示される基の場合、Y1およびY2はそれぞれ単結合であってもよく、その場合、炭素原子間に酸素原子を有してもよい。
【0038】
【0039】
式(1x)中、4個のZは、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基、または-Nx38x39(x38およびx39は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~8のアルキル基を示す)を示す。x31~x36はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~12のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を、x37は炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を示す。
R31a、R31b、R31c、x31~x37、複素環を形成していない場合のR11、R21、R41およびR61は、これらのうちの他のいずれかと互いに結合して5員環または6員環を形成してもよい。x31とx36、x31とx37は直接結合してもよい。
【0040】
R11およびR21における置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、炭素数1~19のアルコキシ基が挙げられる。
【0041】
R11およびR21における置換基としては、さらに、環状のアルキル基またはアリール基が挙げられる。アリール基としては、1~5個の置換基を有してもよいフェニル基または、1~7個の置換基を有してもよいナフチル基が好ましい。フェニル基およびナフチル基の水素原子を置換してもよい置換基としては、炭素-炭素原子間に不飽和結合または酸素原子を含んでよい炭素数1~12のアルキル基、もしくはアルコキシ基、またはアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は1~12)が挙げられる。フェニル基およびナフチル基は、非置換または、水素原子が1~3個置換されているのが好ましく、置換基としては、メチル基、t-ブチル基、ジメチルアミノ基、メトキシ基等が好ましい。
【0042】
R11およびR21が、主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、脂環の炭素数としては3~10が好ましい。芳香環の炭素数は4~14が好ましい。
【0043】
R11およびR21における置換基は、さらに、重合性液晶化合物と共重合させるための重合性基であってもよい。
【0044】
化合物(I)としては、例えば、式(I-1)~(I-4)のいずれかで示される化合物が挙げられる。
【0045】
【0046】
式(I-1)~式(I-4)中の記号は、式(I)における同記号の各規定と同じであり、特に言及しない限り好ましい態様も同様である。
【0047】
化合物(I-1)において、R11は水素原子または炭素数1~12の直鎖アルキル基が好ましい。
【0048】
化合物(I-1)において、X1としては、基(2x)が好ましく、Y1としては、単結合または基(1y)が好ましい。すなわち-Y1-X1-として、-C(x31)(x32)-C(x33)(x34)-または-C(x35)(x36)-C(x31)(x32)-C(x33)(x34)-が好ましい。
この場合、x31、x32、x35、x36としては、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。
x33、x34は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~12のアルキル基が好ましい。
【0049】
化合物(I-1)において、複素環における窒素原子に隣接する炭素原子に直鎖アルキル基が1つ結合する場合、または、窒素原子に直鎖アルキル基が1つ結合する場合、化合物の直線性が得られ二色性を発現しやすい。かかる観点から、R11、x33、x34のうち、いずれか1つが好ましくは炭素数3~12、より好ましくは炭素数3~8の直鎖アルキル基であり、残余の2つが各々独立に水素原子または炭素数2以下のアルキル基であることが好ましい。
【0050】
なお、-Y1-X1-として、具体的には、下記式(11-1)~(11-4)、(12-1)~(12-3)で示される2価の有機基が挙げられる。
-C(CH3)2-CH(CH3)- …(11-1)
-C(CH3)2-CH2- …(11-2)
-C(CH3)2-CH(nCkH2k+1)- …(11-3)(k=2~6)
-C(CH3)2-C(CH3)(nCkH2k+1)- …(11-4)(k=3~6)
-C(CH3)2-CH2-CH2- …(12-1)
-C(CH3)2-CH2-CH(CH3)- …(12-2)
-C(CH3)2-CH(CH3)-CH2- …(12-3)
【0051】
化合物(I-4)において、R51は水素原子または水酸基が好ましい。
【0052】
<スクアリリウム色素(II)>
【0053】
【0054】
[上記式中の記号は以下のとおりである。
環Z2は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を環中に0~3個有する5員環または6員環であり、環Z2が有する水素原子は置換されていてもよい。
R12とR22は、それぞれ独立して、水素原子、または、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、置換基を有してもよい炭素数1~20の1価炭化水素基を示す。
R32およびR42は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよく、置換基を有してもよい炭素数1~8のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
R12とR22、R12とR42、およびR22と環Z2を構成する炭素原子またはヘテロ原子は、互いに連結して窒素原子とともにそれぞれ員数が4から6の複素環A2、員数が5から7の複素環B2、および員数が5から7の複素環C2を形成していてもよい。複素環A2、複素環B2および複素環C2が有する水素原子は置換されていてもよい。]
【0055】
R12およびR22における置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、炭素数1~19のアルコキシ基が挙げられる。
【0056】
R12およびR22における置換基としては、さらに、環状のアルキル基またはアリール基が挙げられる。アリール基としては、1~5個の置換基を有してもよいフェニル基または、1~7個の置換基を有してもよいナフチル基が好ましい。フェニル基およびナフチル基の水素原子を置換してもよい置換基としては、炭素-炭素原子間に不飽和結合または酸素原子を含んでよい炭素数1~12のアルキル基、もしくはアルコキシ基、またはアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は1~12)が挙げられる。フェニル基およびナフチル基は、非置換または、水素原子が1~3個置換されているのが好ましく、置換基としては、メチル基、t-ブチル基、ジメチルアミノ基、メトキシ基等が好ましい。
【0057】
R12およびR22が、主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、脂環の炭素数としては3~10が好ましい。芳香環の炭素数は4~14が好ましい。
【0058】
R12およびR22における置換基は、さらに、重合性液晶化合物と共重合させるための重合性基であってもよい。
【0059】
化合物(II)としては、例えば、式(II-1)~(II-3)のいずれかで示される化合物が挙げられ、耐久性の観点から、式(II-1)で示される化合物、式(II-3)で示される化合物が特に好ましい。
【0060】
【0061】
式(II-1)、式(II-2)中、R12およびR22は、それぞれ独立に水素原子、または、置換基を有してもよく、炭素原子間に不飽和結合またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~20のアルキル基を示す。R32、R42、R52、R62はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~8、好ましくは炭素数1~4のアルキル基を示す。アルキル基における置換基としてはハロゲン原子が挙げられる。
【0062】
化合物(II-1)および化合物(II-2)におけるR12およびR22は、配向度の観点から、独立して、置換基を有してもよく、炭素原子間に不飽和結合またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~20の直鎖アルキル基が好ましい。R12は炭素数1~12の直鎖アルキル基がより好ましく、炭素数3~8の直鎖アルキル基が特に好ましい。R22は炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、炭素数1~4の直鎖アルキル基が特に好ましい。R12およびR22は同一でも異なっていてもよいが、直鎖アルキル基である場合、分子の直線性の観点から、異なっていることが好ましい。
【0063】
また、化合物(II-1)および化合物(II-2)におけるR12とR22を構成する炭素原子が互いに連結して窒素原子と共に複素環を形成してもよく、複素環が4員環~6員環であることが特に好ましい。かかる複素環において、窒素原子から最も遠い炭素原子に結合する水素原子の一つが、炭素原子間に不飽和結合またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~12、好ましくは1~8、さらに好ましくは3~8の直鎖アルキル基に置換されていてもよい。
【0064】
R32およびR42は、独立して、配向度の観点から、水素原子、ハロゲン原子が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0065】
式(II-3)中、R12は、水素原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基を示す。R92a~R92dは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1以上のアルキル基を示し、かつ、-CR92aR92b-CR92cR92d-全体の炭素数が20以下である。R32、R72およびR82はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~8、好ましくは炭素数1~4のアルキル基を示す。アルキル基における置換基としてはハロゲン原子が挙げられる。
【0066】
化合物(II-3)におけるR12は、配向度の観点から、炭素数1~18の直鎖アルキル基が好ましい。
【0067】
R92aは、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよく炭素原子間に不飽和結合もしくはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~18のアルキル基がより好ましい。
R92b~R92dは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
【0068】
さらに、化合物(II-3)において、複素環における窒素原子に隣接する炭素原子に直鎖アルキル基が1つ結合する場合、または、窒素原子に直鎖アルキル基が1つ結合する場合、化合物の直線性が得られ二色性を発現しやすい。かかる観点から、R12、R92aのうち、一方が好ましくは炭素数3~18、より好ましくは炭素数3~12の直鎖アルキル基であり、他方が水素原子または炭素数2以下のアルキル基であることが好ましい。
【0069】
-CR92aR92b-CR92cR92d-として、下記基(13-1)~(13-9)で示される2価の有機基が挙げられる。
-CH(CH3)-C(CH3)2- …(13-1)
-C(CH3)2-CH(CH3)- …(13-2)
-C(CH3)2-CH2- …(13-3)
-C(CH3)2-CH(C2H5)- …(13-4)
-CH(CH3)-C(CH3)(CH2-CH(CH3)2)-…(13-5)
-CH(CH2CH(CH3)2)-C(CH3)2-…(13-6)
-CH(CnH2n+1)-C(CH3)2- …(13-7)(n=1~12)
-CH(CnH2n+1)-CH2- …(13-8)(n=1~12)
-C(CH3)(CnH2n+1)-CH2- …(13-9)(n=1~12)
【0070】
R72およびR82は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、メチル基がより好ましい。
【0071】
化合物(II-1)としては、より具体的には以下の表に示す化合物が挙げられる。また、以下の表に示す化合物は、スクアリリウム骨格の左右において各記号の意味は同一である。
【0072】
【0073】
化合物(II-3)としては、より具体的には以下の表に示す化合物が挙げられる。また、以下の表に示す化合物は、スクアリリウム骨格の左右において各記号の意味は同一である。
【0074】
【0075】
化合物(I)~(II)は、それぞれ公知の方法で製造できる。化合物(I)については、米国特許第5,543,086号明細書、米国特許出願公開第2014/0061505号明細書、国際公開第2014/088063号に記載された方法で製造可能である。化合物(II)については、国際公開第2017/135359号に記載された方法で製造可能である。
【0076】
<スクアリリウム色素(III)>
【0077】
【0078】
[上記式中の記号は以下のとおりである。
R13およびR23は、それぞれ独立して、置換基を有してもよく、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、脂環もしくは芳香環を含んでよい、炭素数1~20のアルキル基である。
R33は、不飽和結合を必須としない有機基R33Aまたは不飽和結合を必須とする有機基R33Bである。
X31はCR43またはNである。
X32はS、NR53、またはOである。
X33はS、NR63、またはOである。
R43は水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル構造含有1価有機基、リン酸基、シリル基、チオール基、スルフィド基、アミド構造含有1価有機基、スルホンアミド基、ウレア基、ウレタン構造含有1価有機基、置換基を有してもよい炭素数1~9のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~9のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~9のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数6~9のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3~9のヘテロアリール基、置換基を有してもよい炭素数1~9のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数2~9のアシルオキシ基、または、―N(R43g)2(R43gは水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~4のアルキル基である。)である。
R53およびR63は、それぞれ独立に、水素原子、カルボニル構造含有1価有機基、スルホ基、または置換基を有してもよい炭素数1~9のアルキル基である。
R13は、R23、R33、X31、X32、またはX33と連結して員数3~6の環を形成してもよい。
R23は、R13、R33、X31、X32、またはX33と連結して員数3~6の環を形成してもよい。
R33は、X31、X32、またはX33と連結して員数5~7の環を形成してもよい。]
【0079】
R13およびR23における置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、炭素数1~19のアルコキシ基が挙げられる。
【0080】
R13およびR23における置換基としては、さらに、環状のアルキル基またはアリール基が挙げられる。アリール基としては、1~5個の置換基を有してもよいフェニル基または、1~7個の置換基を有してもよいナフチル基が好ましい。フェニル基およびナフチル基の水素原子を置換してもよい置換基としては、炭素-炭素原子間に不飽和結合または酸素原子を含んでよい炭素数1~12のアルキル基、もしくはアルコキシ基、またはアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は1~12)が挙げられる。フェニル基およびナフチル基は、非置換または、水素原子が1~3個置換されているのが好ましく、置換基としては、メチル基、t-ブチル基、ジメチルアミノ基、メトキシ基等が好ましい。
【0081】
R13およびR23が、主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、脂環の炭素数としては3~10が好ましい。芳香環の炭素数は4~14が好ましい。
【0082】
R13およびR23における置換基は、さらに、重合性液晶化合物と共重合させるための重合性基であってもよい。
【0083】
R13の炭素数としては1~20が挙げられる。R13の炭素数は、直鎖状の場合2~20が好ましく、2~16がより好ましく、2~12がさらに好ましい。R13の炭素数は、分岐鎖状の場合、3~20が好ましく、3~16がより好ましく、3~12がさらに好ましい。
R23の炭素数としては1~20が挙げられる。R23の炭素数は、配向度の観点から直鎖状の場合1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましい。R23の炭素数は、分岐鎖状の場合、3~10が好ましく、3~6がより好ましい。
R13およびR23が置換基を有する場合、および主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、上記炭素数に置換基、脂環、芳香環の炭素数は含まれる。
【0084】
R13およびR23は同一であっても異なってもよい。配向度の観点から、鎖状である場合、R13およびR23は異なっていることが好ましい。
【0085】
R13およびR23は、配向度の観点から、直鎖状であることが好ましい。
【0086】
R13およびR23は、例えば、基(1b)~(5b)、基(1c)~(2c)から選ばれる基がさらに好ましい。
-CH(CnH2n+1)2 …(1b)
-C(CnH2n+1)3 …(1c)
-CH2-CH(CnH2n+1)2 …(2b)
-CH2-C(CnH2n+1)3 …(2c)
-(CH2)2-CH(CnH2n+1)2 …(3b)
-(CH2)3-CH(CnH2n+1)2 …(4b)
-(CH2)m-CH3 …(5b)
【0087】
ただし、式(1b)~(4b)、式(1c)~(2c)においてnは1~10の整数であり、1~8が好ましく、1~4がより好ましい。ただし、基(1b)~(4b)、基(1c)~(2c)の炭素数は1~20の範囲内とする。式(1b)~(4b)における2個のCnH2n+1、式(1c)~(2c)における3個のCnH2n+1は、それぞれ直鎖であっても分岐鎖であってもよく、同一であっても異なってもよい。式(5b)においてmは0~19の整数であり、1~19が好ましく、2~19がより好ましく、4~19がさらに好ましい。さらに、基(1b)~(5b)、基(1c)~(2c)は炭素-炭素原子間に酸素原子を有してもよい。
【0088】
また、R13およびR23が互いに連結して窒素原子と共に複素環を形成する場合、R13およびR23が結合した2価の基-Q3-として、炭素数3~5のアルキレン基または炭素数2~4のアルキレンオキシ基を示す。ここで、窒素原子とQ3とから構成される複素環において、窒素原子から最も遠い炭素原子に結合する水素原子の一つが、炭素原子間に不飽和結合またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~12、好ましくは1~8、さらに好ましくは3~8のアルキル基に置換されていてもよい。アルキル基はスクアリリウム色素が二色性を発現しやすい観点から、直鎖状が好ましい。また、かかる複素環における水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換されていてもよく、その場合、窒素原子と隣接しない炭素原子に結合する水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換されていることが好ましい。
【0089】
R33は、不飽和結合を必須としない有機基R33Aまたは不飽和結合を必須とする有機基R33Bである。
不飽和結合を必須としない有機基R33Aは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、または、置換基を有してもよく、炭素-炭素原子間に不飽和結合または酸素原子を含んでよいアルキル基、アルコキシ基、アリール基もしくはアルアリール基である。
不飽和結合を必須とする有機基R33Bは、置換基を有してもよい炭素数2以上のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2以上のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数1以上のイミノ基、シアノ基、カルボニル構造を含み置換基を有してもよい炭素数1以上の有機基、置換基を有してもよい炭素数6~9のアリール基、または置換基を有してもよい炭素数3~9のヘテロアリール基である。
R33は、X31、X32、またはX33と連結して環を形成してもよい。環としては員数5~7の環が好ましい。また、該環は置換基を有していてもよい。
【0090】
R33Aにおける置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、炭素数1~8のアルコキシ基が挙げられる。R33Aがアリール基またはアルアリール基の場合、置換基は、芳香環に結合する水素原子またはこれらが有するアルキル基の水素原子を置換する基であり、上記置換基の他にさらにアリール基を含む。
【0091】
R33Aがアルキル基またはアルコキシ基の場合、炭素数は1~8が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい。R33Aがアリール基の場合、炭素数は6~9が好ましい。R33Aがアルアリール基の場合、炭素数は7~9が好ましい。
R33Aが置換基を有する場合、R33Aの炭素数に置換基の炭素数は含まれる。
【0092】
R33Aは、光安定性と配向度の観点から、水素原子または炭素数1~3のアルキル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0093】
不飽和結合を必須とする有機基R33Bにおける置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボニル構造含有1価有機基、リン酸基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、チオール基、スルフィド基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~8のアリール基、炭素数3~8のヘテロアリール基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数2~8のアルキニル基、シリル基、炭素数1~8のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
R33Bが置換基を有する場合、R33Bの炭素数に置換基の炭素数は含まれる。
【0094】
R33Bがアルケニル基の場合、炭素数は2以上であり、好ましくは2~8であり、より好ましくは2~6であり、さらに好ましくは2~4である。
アルケニル基としては下記式(3-1)で表される基が好ましい。
【0095】
【0096】
R3a、R3b、R3cは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~7のアルコキシ基、炭素数1~7のアルキル基、炭素数6~7のアラルキル基、置換基を有してもよい炭素数6~7のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3~7のヘテロアリール基、置換基を有してもよい炭素数2~7のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~7のアルキニル基、炭素数3~7のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基等)、炭素数3~7のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~7のハロゲン化アルキル基である。R3bはR3aまたはR3cと連結してヘテロ原子を含んでもよい員数3~6の環を形成してもよく、その場合、該環は置換基を有していてもよい。
【0097】
アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、R3bがR3aまたはR3cと連結して形成した環における置換基としては、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~6のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基等)、炭素数3~6のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~6のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0098】
基(3-1)としては好ましくは下記構造が挙げられる。
【0099】
【0100】
R33Bがアルキニル基の場合、炭素数は2以上であり、好ましくは2~8であり、より好ましくは2~6であり、さらに好ましくは2~4である。
アルキニル基としては下記式(3-2)で表される基が好ましい。
【0101】
【0102】
R3dは水素原子、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~7のアルコキシ基、炭素数1~7のアルキル基、炭素数6~7のアラルキル基、置換基を有してもよい炭素数6~7のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3~7のヘテロアリール基、置換基を有してもよい炭素数2~7のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~7のアルキニル基、炭素数3~7のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基等)、炭素数3~7のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~7のハロゲン化アルキル基である。
【0103】
アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基における置換基としては、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数3~5のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基等)、炭素数3~5のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~5のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0104】
基(3-2)としては好ましくは下記構造が挙げられる。
【0105】
【0106】
R33Bがイミノ基の場合、炭素数は1以上であり、好ましくは1~8であり、より好ましくは1~6であり、さらに好ましくは1~4である。
イミノ基としては下記式(3-3)で表される基が好ましい。
【0107】
【0108】
R3e、R3fは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~8のアラルキル基、置換基を有してもよい炭素数6~8のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3~10のヘテロアリール基、置換基を有してもよい炭素数2~8のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~8のアルキニル基、炭素数3~8のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基、等)、炭素数3~8のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~8のハロゲン化アルキル基である。R3eとR3fは連結してヘテロ原子を含んでもよい員数3~6の環を形成してもよく、その場合、該環は置換基を有していてもよい。
【0109】
アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、R3eとR3fが連結して形成した環における置換基としては、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~6のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基等)、炭素数3~6のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~6のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0110】
基(3-3)としては好ましくは下記構造が挙げられる。
【0111】
【0112】
R33Bがシアノ基の場合、下記式(3-4)で表される基である。
【0113】
【0114】
R33Bがカルボニル構造を含み置換基を有してもよい炭素数1以上の有機基の場合、炭素数は1以上であり、好ましくは1~8であり、より好ましくは1~6であり、さらに好ましくは1~4である。
かかる有機基としては下記式(3-5)で表される基が好ましい。
【0115】
【0116】
R3gは水素原子、水酸基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、アルコキシカルボニル基、スルフィド基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~8のアラルキル基、置換基を有してもよい炭素数6~8のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3~8のヘテロアリール基、置換基を有してもよい炭素数2~8のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~8のアルキニル基、炭素数3~8のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基等)、炭素数3~8のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~8のハロゲン化アルキル基である。
【0117】
アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基における置換基としては、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~6のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基等)、炭素数3~6のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~6のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0118】
基(3-5)としては好ましくは下記構造が挙げられる。
【0119】
【0120】
R33Bがアリール基の場合、炭素数は6~9である。
【0121】
アリール基としては下記式(3-6)で表される基が好ましい。
【0122】
【0123】
R3h、R3i、R3j、R3k、R3lは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~3のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~3のアルキニル基、トリメチルシリル基、トリメトキシシリル基、または炭素数1~3のハロゲン化アルキル基である。
R3hとR3i、R3iとR3j、R3jとR3k、R3kとR3lは互いに連結してヘテロ原子を含んでもよい員数3~6の環を形成してもよい。
【0124】
アルケニル基、アルキニル基における置換基としては、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、メトキシ基、メチル基、またはハロゲン化メチル基が挙げられる。
【0125】
基(3-6)としては好ましくは下記構造が挙げられる。
【0126】
【0127】
R33Bがヘテロアリール基の場合、炭素数は3~9である。
【0128】
ヘテロアリール基としては下記式(3-7)~(3-9)のいずれかで表される基が好ましい。
【0129】
【0130】
X3a、X3b、X3c、X3d、X3eは、それぞれ独立して、NまたはCR3mであり、少なくとも一つはNである。R3mは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基、置換基を有してもよい炭素数3~6のヘテロアリール基、置換基を有してもよい炭素数2~6のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~6のアルキニル基、炭素数3~6のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基等)、炭素数3~6のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~6のハロゲン化アルキル基である。
X3a、X3b、X3c、X3d、X3eがCR3mである場合、隣り合うX3a~X3eは互いに連結してヘテロ原子を含んでもよい員数3~6の環Ar30、Ar31、Ar32、Ar33を形成してもよく、その場合、該環は置換基を有していてもよい。
ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、環Ar30、Ar31、Ar32、Ar33における置換基としては、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、トリメチルシリル基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のアルキル基、または炭素数1~4のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0131】
基(3-7)としては好ましくは下記構造が挙げられる。
【0132】
【0133】
【0134】
X3f、X3g、X3hは、それぞれ独立してNまたはCR3nである。Y3aはS、OまたはNR3oである。
R3nはおよびR3oはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基、置換基を有してもよい炭素数3~6のヘテロアリール基、置換基を有してもよい炭素数2~6のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~6のアルキニル基、炭素数3~6のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基等)、炭素数3~6のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~6のハロゲン化アルキル基である。
X3f、X3g、X3hがCR3nであり、Y3aがNR3oである場合、隣り合うX3f、X3g、X3h、Y3aは互いに連結してヘテロ原子を含んでもよい員数3~6の環Ar34、Ar35、Ar36を形成してもよく、その場合、該環は置換基を有していてもよい。
ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、環Ar34、Ar35、Ar36における置換基としては、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、トリメチルシリル基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のアルキル基、または炭素数1~4のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0135】
基(3-8)としては好ましくは下記構造が挙げられる。
【0136】
【0137】
【0138】
X3i、X3j、X3kは、それぞれ独立してNまたはCR3pである。Y3bはS、OまたはNR3qである。R3pおよびR3qは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基、置換基を有してもよい炭素数3~6のヘテロアリール基、置換基を有してもよい炭素数2~6のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~6のアルキニル基、炭素数3~6のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基等)、炭素数3~6のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~6のハロゲン化アルキル基である。
X3i、X3j、X3kがCR3pであり、Y3bがNR3qである場合、隣り合うX3i、X3j、X3k、Y3bは互いに連結してヘテロ原子を含んでもよい員数3~6の環Ar37、Ar38、Ar39を形成してもよく、その場合、該環は置換基を有していてもよい。
アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、環Ar37、Ar38、Ar39における置換基としては、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、トリメチルシリル基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のアルキル基、または炭素数1~4のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0139】
基(3-9)としては好ましくは下記構造が挙げられる。
【0140】
【0141】
式(III)において、X31はCR43またはNである。X32はS、NR53、またはOである。X33はS、NR63、またはOである。
【0142】
R43は水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル構造含有1価有機基、リン酸基、シリル基、チオール基、スルフィド基、アミド構造含有1価有機基、スルホンアミド基、ウレア基、ウレタン構造含有1価有機基、置換基を有してもよい炭素数1~9のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~9のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~9のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数6~9のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3~9のヘテロアリール基、置換基を有してもよい炭素数1~9のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数2~9のアシルオキシ基、または、―N(R43g)2(R43gは水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~4のアルキル基である。)である。
【0143】
R43がアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、または、―N(R43g)2である場合、R43はR13~R33のいずれかと互いに連結して員数3~6の環を形成してもよい。また、当該環は置換基を有してもよい。
【0144】
R43における置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボニル構造含有1価有機基、リン酸基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、チオール基、スルフィド基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~8のアリール基、炭素数3~8のヘテロアリール基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数2~8のアルキニル基、シリル基、炭素数1~8のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
R43が置換基を有する場合、R43の炭素数に置換基の炭素数は含まれる。
【0145】
R43におけるハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。
【0146】
R43におけるカルボニル構造含有1価有機基としては、-C(=O)-R43aが好ましい。R43aは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~8のアルキル基、または置換基を有してもよい炭素数1~8のアルコキシ基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基が好ましい。
【0147】
R43におけるシリル基としては-Si(R43b)3が好ましい。R43bは、水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~3のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が好ましい。3つのR43bは同一でも異なっていてもよい。
【0148】
R43におけるスルフィド基としては-SR43cが好ましい。R43cは、水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~9のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基が好ましい。
【0149】
R43におけるアミド構造含有1価有機基としては、-C(=O)-NH-R43dが好ましい。R43dは、水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~8のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基が好ましい。
【0150】
R43におけるスルホンアミド基としては、-SO2-N(R43e)2が好ましい。R43eは、水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~4のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t-ブチル基が好ましい。2つのR43eは同一でも異なっていてもよい。
【0151】
R43におけるウレタン構造含有1価有機基としては、-NH-C(=O)O-R43fが好ましい。R43fは、水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~8のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基が好ましい。
【0152】
R43における炭素数1~9のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、が好ましい。
【0153】
R43における炭素数2~9のアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基、イソブテニル基、スチリル基、2-フルオロビニル基、2,2-ジフルオロビニル基、3,3,3-トリフルオロプロペニル基が好ましい。
【0154】
R43における炭素数2~9のアルキニル基としては、アセチレニル基、1-プロピニル基、トリメチルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、トリイソプロピルシリルエチニル基、t-ブチルジメチルシリルエチニル基が好ましい。
【0155】
R43における炭素数6~9のアリール基としては、フェニル基、4‐メトキシフェニル基、3,4,5-トリフルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、3-ニトロフェニル基が好ましい。
【0156】
R43における炭素数3~9のヘテロアリール基としては、ピリジル基、ピリミジル基、キノリル基、フリル基、チエニル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、ベンズオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基が好ましい。
【0157】
R43における炭素数1~9のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基が好ましい。
【0158】
R43における炭素数2~9のアシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ベンゾイルオキシ基が好ましい。
【0159】
R43における―N(R43g)2において2つのR43gは同一でも異なっていてもよい。また、2つのR43g同士が連結して環を形成してもよい。―N(R43g)2としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルイソプロピルアミノ基、モルホリノ基が好ましい。
【0160】
X32はS、NR53、またはOである。
R53は水素原子、カルボニル構造含有1価有機基、スルホ基、または置換基を有してもよい炭素数1~9のアルキル基であり、水素原子、メチル基、エチル基、イソブチル基、2-エチルヘキシル基、ベンジル基、t-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、2,2,2-トリエトキシカルボニル基、2―ニトロベンゼンスルホニル基が好ましい。
置換基としてはR43における置換基と同様の置換基が挙げられる。
【0161】
R53が置換基を有してもよい炭素数1~9のアルキル基である場合、R53はR13~R33のいずれかと連結して員数3~6の環を形成してもよい。
【0162】
X33はS、NR63、またはOである。
R63は水素原子、カルボニル構造含有1価有機基、スルホ基、または置換基を有してもよい炭素数1~9のアルキル基であり、水素原子、メチル基、エチル基、イソブチル基、2-エチルヘキシル基、ベンジル基、t-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、2,2,2-トリエトキシカルボニル基、2―ニトロベンゼンスルホニル基が好ましい。
置換基としてはR43における置換基と同様の置換基が挙げられる。
【0163】
R63がアルキル基である場合、R63はR43と連結して員数3~6の環を形成してもよい。
【0164】
式(III)において、X31,X32,X33としては、以下の組み合わせが挙げられる。
【0165】
【0166】
合成容易性の観点から、好ましい組み合わせは、(X31,X32,X33)=(CR43,S,S)、(CR43,S,O)、(CR43,O,S)、(CR43,O,O)、(CR43,NR53,S)、(CR43,NR53,O)であり、より好ましい組み合わせは、(X31,X32,X33)=(CR43,S,S)、(CR43,S,O)、(CR43,NR53,S)、(CR43,NR53,O)である。
【0167】
式(III)で表されるスクアリリウム化合物としては、合成容易性に加えて、分子の直線性が高まる観点から、下記式(III-1)で表されるスクアリリウム化合物および下記式(III-2)で表されるスクアリリウム化合物が好ましい。
【0168】
【0169】
R13、R23、R33A、R33B、R43は式(III)におけるR13、R23、R33A、R33B、R43と好ましい態様を含めてそれぞれ同様である。
【0170】
化合物(III-1)としては、より具体的には以下の表に示す化合物が挙げられる。また、以下の表に示す化合物は、スクアリリウム骨格の左右において各記号の意味は同一である。
【0171】
【0172】
化合物(III-2)としては、より具体的には以下の表に示す化合物が挙げられる。また、以下の表に示す化合物は、スクアリリウム骨格の左右において各記号の意味は同一である。
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
スクアリリウム化合物(III)は、公知の製造方法または後述する製造方法により合成できる。
【0178】
スクアリリウム化合物(III-1)は、例えば国際公開第2019/230570号に記載の方法により製造できる。
【0179】
スクアリリウム化合物(III)におけるR33がR33Bであるスクアリリウム化合物(III-B)を得る方法をスキーム(F-B)に示す。
【0180】
【0181】
工程A(step(A))はカルボン酸をジアルキルアミンに変換する反応であり、詳細を下記スキームに示す。
下記スキームにおいてHetArはヘテロアリールを意味する。また、azideはジフェニルホスホリルアジドが好ましい。N alkylationは、ハロゲン化アルキルと塩基を用いるSN2反応または、アルデヒドと還元剤を用いる還元的アミノ化反応が好ましい。
【0182】
【0183】
工程B(step(B))はハロゲンを各種置換基に変換する反応であり、クロスカップリング反応、Heck反応、ホルミル化、およびホルミル化により得られるアルデヒドに対するWittig反応、Knevenagel反応、ヘンリー反応、アルキル金属反応剤の求核付加反応等を利用することができるが、これらに限られない。
【0184】
スキーム(F-B)の出発原料(a2-1)は、例えば公知の化合物から下記合成方法により得ることができる。
【0185】
出発原料(a2-1)において、X31、X32、Rが下記である、化合物の合成方法:
化合物(a2-1-1):(X31、X32、R)=(-CH、S、-CH2CH3)
化合物(a2-1-2):(X31、X32、R)=(-CH、S、H)
化合物(a2-1-3):(X31、X32、R)=(-CH、O、-CH2CH3)
化合物(a2-1-4):(X31、X32、R)=(-CH、O、H)
【0186】
【0187】
出発原料(a2-1)において、X31、X32、(X33)、Rが下記である、化合物の合成方法:
化合物(a2-1-5):(X31、X32、R)=(-CH、-NH、-CH2CH3)
化合物(a2-1-6):(X31、X32、R)=(-CH、-NH、H)
化合物(a2-1-7):(X31、X32、X33、R)=(-CH、-NH、-NH、-CH2CH3)
化合物(a2-1-8):(X31、X32、X33、R)=(-CH、-NH、-NH、H)
【0188】
【0189】
出発原料(a2-1)において、X31、X32、Rが下記である、化合物の合成方法:
化合物(a2-1-9):(X31、X32、R)=(N、O、-CH2CH3)
化合物(a2-1-10):(X31、X32、R)=(N、O、H)
【0190】
【0191】
出発原料(a2-1)において、X31、X32、Rが下記である、化合物の合成方法:
化合物(a2-1-11):(X31、X32、R)=(N、-NH、-CH2CH3)
化合物(a2-1-12):(X31、X32、R)=(N、-NH、H)
【0192】
【0193】
出発原料(a2-1)において、X31、X32、Rが下記である、化合物の合成方法:
化合物(a2-1-13):(X31、X32、R)=(N、S、-CH2CH3)
化合物(a2-1-14):(X31、X32、R)=(N、S、H)
【0194】
【0195】
<スクアリリウム色素(IV)>
【0196】
【0197】
[上記式中の記号は以下のとおりである。
R14およびR24は、それぞれ独立して、置換基を有してもよく、炭素-炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、脂環もしくは芳香環を含んでよい、炭素数1~20のアルキル基である。
R34は、不飽和結合を必須としない有機基R34Aまたは不飽和結合を必須とする有機基R34Bである。
X41はCR43またはNである。
X42はS、NR53、またはOである。
X43はS、NR63、またはOである。
R43は水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル構造含有1価有機基、リン酸基、シリル基、チオール基、スルフィド基、アミド構造含有1価有機基、スルホンアミド基、ウレア基、ウレタン構造含有1価有機基、置換基を有してもよい炭素数1~9のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~9のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~9のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数6~9のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3~9のヘテロアリール基、置換基を有してもよい炭素数1~9のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数2~9のアシルオキシ基、または、―N(R43g)2(R43gは水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~4のアルキル基である。)である。
R44、R54、R64、R74は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、または炭素数1~9の1価有機基である。
R14は、R24、R54またはR74と連結して員数3~6の環を形成してもよい。
R24は、R14、R54またはR74と連結して員数3~6の環を形成してもよい。]
【0198】
R14の炭素数としては1~20が挙げられる。R14の炭素数は、直鎖状の場合2~20が好ましく、2~16がより好ましく、2~12がさらに好ましい。R14の炭素数は、分岐鎖状の場合、3~20が好ましく、3~16がより好ましく、3~12がさらに好ましい。
R24の炭素数としては1~20が挙げられる。R24の炭素数は、配向度の観点から直鎖状の場合1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましい。R24の炭素数は、分岐鎖状の場合、3~10が好ましく、3~6がより好ましい。
【0199】
R14およびR24における置換基としては、スクアリリウム色素(III)におけるR13およびR23における置換基と同様の基が挙げられる。
【0200】
R14およびR24が、主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、脂環の炭素数としては3~10が好ましい。芳香環の炭素数は4~14が好ましい。
【0201】
R14およびR24が置換基を有する場合、および主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、上記炭素数に置換基、脂環、芳香環の炭素数は含まれる。
【0202】
R14およびR24は同一であっても異なってもよい。配向度の観点から、鎖状である場合、R14およびR24は異なっていることが好ましい。
【0203】
R14およびR24は、配向度の観点から、直鎖状であることが好ましい。
【0204】
R14およびR24は、例えば、上述のスクアリリウム色素(III)中のR13およびR23における基(1b)~(5b)、基(1c)~(2c)から選ばれる基がさらに好ましい。
【0205】
また、R14およびR24が互いに連結して窒素原子と共に複素環を形成する場合、R14およびR24が結合した2価の基-Q4-としては、上述のスクアリリウム色素(III)中の2価の基-Q3-と同様の基が好ましい。
【0206】
R34は、不飽和結合を必須としない有機基R34Aまたは不飽和結合を必須とする有機基R34Bである。
不飽和結合を必須としない有機基R34Aは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、または、置換基を有してもよく、炭素-炭素原子間に不飽和結合または酸素原子を含んでよいアルキル基、アルコキシ基、アリール基もしくはアルアリール基である。
不飽和結合を必須とする有機基R34Bは、置換基を有してもよい炭素数2以上のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2以上のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数1以上のイミノ基、シアノ基、カルボニル構造を含み置換基を有してもよい炭素数1以上の有機基、置換基を有してもよい炭素数6~9のアリール基、または置換基を有してもよい炭素数3~9のヘテロアリール基である。
【0207】
R34Aにおける置換基としては、上述のスクアリリウム色素(III)中のR33Aにおける置換基と同様の基が挙げられる。
【0208】
R34Aがアルキル基またはアルコキシ基の場合、炭素数は1~8が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい。R33Aがアリール基の場合、炭素数は6~9が好ましい。R34Aがアルアリール基の場合、炭素数は7~9が好ましい。
R34Aが置換基を有する場合、R34Aの炭素数に置換基の炭素数は含まれる。
【0209】
R34Aは、光安定性と配向度の観点から、水素原子または炭素数1~3のアルキル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0210】
不飽和結合を必須とする有機基R34Bにおける置換基としては、上述のスクアリリウム色素(III)中のR33Bにおける置換基と同様の基が挙げられる。
R34Bが置換基を有する場合、R34Bの炭素数に置換基の炭素数は含まれる。
【0211】
R34Bがアルケニル基の場合、炭素数は2以上であり、好ましくは2~8であり、より好ましくは2~6であり、さらに好ましくは2~4である。
アルケニル基としては上述のスクアリリウム色素(III)中のR33Bと同様に上述の式(3-1)で表される基が好ましい。
【0212】
R34Bがアルキニル基の場合、炭素数は2以上であり、好ましくは2~8であり、より好ましくは2~6であり、さらに好ましくは2~4である。
アルキニル基としては上述のスクアリリウム色素(III)中のR33Bと同様に上述の式(3-2)で表される基が好ましい。
【0213】
R34Bがイミノ基の場合、炭素数は1以上であり、好ましくは1~8であり、より好ましくは1~6であり、さらに好ましくは1~4である。
イミノ基としては上述のスクアリリウム色素(III)中のR33Bと同様に上述の式(3-3)で表される基が好ましい。
【0214】
R34Bがシアノ基の場合、上述のスクアリリウム色素(III)中のR33Bと同様に上述の式(3-4)で表される基である。
【0215】
R34Bがカルボニル構造を含み置換基を有してもよい炭素数1以上の有機基の場合、炭素数は1以上であり、好ましくは1~8であり、より好ましくは1~6であり、さらに好ましくは1~4である。
かかる有機基としては上述のスクアリリウム色素(III)中のR33Bと同様に上述の式(3-5)で表される基が好ましい。
【0216】
R34Bがアリール基の場合、炭素数は6~9である。
アリール基としては上述のスクアリリウム色素(III)中のR33Bと同様に上述の式(3-6)で表される基が好ましい。
【0217】
R34Bがヘテロアリール基の場合、炭素数は3~9である。
ヘテロアリール基としては上述のスクアリリウム色素(III)中のR33Bと同様に上述の式(3-7)~(3-9)のいずれかで表される基が好ましい。
【0218】
R44、R54、R64、R74は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、または炭素数1~9の1価有機基である。
【0219】
ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
1価有機基としては、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルアリール基、アミノ基、アルケニル基、アルキニル基、イミノ基、シアノ基、カルボニル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
【0220】
式(IV)において、X41はCR43またはNである。X42はS、NR53、またはOである。X43はS、NR63、またはOである。R43、R53、R63は、上述のスクアリリウム色素(III)中のR43、R53、R63と定義および好ましい態様も含め同様である。
【0221】
化合物(IV)としては、より具体的には以下の表に示す化合物が挙げられる。また、以下の表に示す化合物は、スクアリリウム骨格の左右において各記号の意味は同一である。
【0222】
【0223】
【0224】
化合物(IV)は、アミノ基にR14とR24が結合した4-アミノベンゼンボロン酸と、X41とX42に挟まれた炭素原子にハロゲン原子が結合した縮環した複素環化合物をカップリング反応で連結したのち、スクアリン酸と反応させることで製造できる。
【0225】
【0226】
<スクアリリウム色素(V)>
【0227】
【0228】
[上記式中の記号は以下のとおりである。
R15およびR25は、それぞれ独立して、置換基を有してもよく、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子を含んでよい、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数4~20のアルアリール基である。
R35、R45、R55、R65は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有してもよい炭素数1~9のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数4~9のアリール基または置換基を有してもよい炭素数5~9のアルアリール基である。
R35とR45、R45とR55、および、R55とR65は、それぞれ互いに連結して単環または2~4の環が縮環した多環を形成してもよい。
R15およびR25は、互いに連結して窒素原子とともに員数が4~10の複素環を形成してもよい。]
【0229】
R35、R45、R55、R65は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有してもよい炭素数1~9のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数4~9のアリール基または置換基を有してもよい炭素数5~9のアルアリール基である。
【0230】
R35、R45、R55、R65において、アルキル基、アリール基またはアルアリール基は、置換基を有してもよい。
また、アルキル基、アリール基またはアルアリール基は、炭素-炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、エステル結合、アミド結合、もしくはチオアミド結合を含んでよい。
さらに、アルキル基、アリール基またはアルアリール基は、チオフェン環と結合する末端に酸素原子、エステル結合、アミド結合、もしくはチオアミド結合を有してもよい。
【0231】
R35、R45、R55、R65における置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、炭素数1~8のアルコキシ基が挙げられる。R35、R45、R55、R65がアリール基またはアルアリール基の場合、置換基は、芳香環に結合する水素原子またはこれらが有するアルキル基の水素原子を置換する基であり、上記置換基の他にさらにアリール基を含む。
【0232】
R35、R45、R55、R65がアルキル基の場合、炭素数は1~8であり、1~4が好ましく、1~2がよりに好ましい。
R35、R45、R55、R65がアリール基の場合、炭素数は4~9であり、4~6が好ましい。
R35、R45、R55、R65がアルアリール基の場合、炭素数は5~9であり、5~7が好ましい。
【0233】
R35、R45、R55、R65が置換基を有する場合、上記炭素数には置換基の炭素数が含まれる。
【0234】
R35とR45、R45とR55、および、R55とR65は、それぞれ互いに連結して単環または2~4の環が縮環した多環を形成してもよく、その場合、該環に結合する水素原子は置換基で置換されていてもよい。
【0235】
R35とR45、および、R55とR65が連結して形成される環は脂環であっても芳香環であってもよく、炭化水素環であっても複素環であってもよい。好ましくは芳香環である。単環としては、ベンゼン環が挙げられ、多環としてはナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環等が挙げられる。
【0236】
R45とR55が連結した場合、色素(V)は、2個のチオフェン環の間に環が形成されて少なくとも3つの環が縮環した構造を含む。
【0237】
R35とR45、R45とR55、および、R55とR65が連結して形成される環に結合する水素原子は置換基で置換されていてもよい。
これらの連結環における置換基としては、R35、R45、R55、R65における置換基と同様の基、および、置換基を有してもよいフェニル基が挙げられる。
【0238】
R15およびR25は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数4~20のアルアリール基である。
【0239】
R15およびR25は、置換基を有してもよく、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子を含んでよい。
R15およびR25における置換基としてはハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、炭素数1~19のアルコキシ基が挙げられる。
なお、R1およびR2が置換基を有する場合、置換基の炭素数はR1およびR2の炭素数に含まれる。
【0240】
R15およびR25における置換基としては、さらに、環状のアルキル基またはアリール基が挙げられる。アリール基としては、1~5個の置換基を有してもよいフェニル基または、1~7個の置換基を有してもよいナフチル基が好ましい。フェニル基およびナフチル基の水素原子を置換してもよい置換基としては、炭素-炭素原子間に不飽和結合または酸素原子を含んでよい炭素数1~12のアルキル基、もしくはアルコキシ基、またはアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は1~12)が挙げられる。フェニル基およびナフチル基は、非置換または、水素原子が1~3個置換されているのが好ましく、置換基としては、メチル基、t-ブチル基、ジメチルアミノ基、メトキシ基等が好ましい。
【0241】
R15およびR25が、主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、脂環の炭素数としては3~10が好ましい。芳香環の炭素数は4~14が好ましい。
【0242】
R15およびR25における置換基は、さらに、重合性液晶化合物と共重合させるための重合性基であってもよい。
【0243】
R15およびR25がアルキル基の場合、可視光透過性や、二色比を向上させる観点から、炭素-炭素原子間にヘテロ原子を含んでよい炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基であることが好ましい。
R15の炭素数は、直鎖状の場合、2~20が好ましく、2~16がより好ましく、2~12がさらに好ましい。また、R15の炭素数は、分岐鎖状の場合、3~20が好ましく、3~16がより好ましく、3~12がさらに好ましい。さらに、R15の炭素数は、環状の場合、5~10が好ましい。
R25の炭素数は、配向度の観点から直鎖状の場合1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましい。また、R25の炭素数は、分岐鎖状の場合、3~10が好ましく、3~6がより好ましい。さらに、R25の炭素数は、環状の場合、3~7が好ましい。
R15およびR25が置換基を有する場合、上記炭素数には置換基の炭素数が含まれる。
【0244】
R15およびR25は同一であっても異なってもよい。配向度の観点から、鎖状である場合、R15およびR25は異なっていることが好ましい。
【0245】
R15は、例えば、基(1a)~(16a)から選ばれる基がさらに好ましく、配向度の観点から、基(6a)、(16a)が特に好ましい。
R25は、配向度の観点から、炭素数1~4の直鎖アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0246】
【0247】
R15およびR25は、互いに連結して窒素原子とともに員数が4~10の複素環を形成してもよく、スクアリリウム色素が直線状となりやすい観点、すなわち二色性を発現しやすい観点から、員数は4~6が特に好ましい。かかる複素環において、窒素原子から最も遠い炭素原子に結合する水素原子の一つが、炭素原子間に不飽和結合またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~12、好ましくは1~8、さらに好ましくは3~8のアルキル基に置換されていてもよい。アルキル基は分岐状でも直鎖状でも環状でもよいが、スクアリリウム色素が二色性を発現しやすい観点から、直鎖状が好ましい。また、かかる複素環における水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換されていてもよく、その場合、窒素原子と隣接しない炭素原子に結合する水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換されていることが好ましい。
【0248】
R15およびR25が結合した2価の基を-Q5-で示した場合、-Q5-として具体的には以下の基(11)~(15)が挙げられる。
【0249】
-(CH2)4- (11)
-(CH2)5- (12)
-C(CH3)2(CH2)2C(CH3)2- (13)
-C(CH3)2(CH2)3C(CH3)2- (14)
-CH2-CH(nC8H17)-(CH2)2- (15)
【0250】
スクアリリウム化合物(V)としては、例えば、以下の式(V-1)で示される化合物または、式(V-2)で示される化合物が好ましい。スクアリリウム化合物(V-1)は、スクアリリウム化合物(V)において、R45とR55が連結してシクロペンタジチオフェン環を形成してなる化合物である。スクアリリウム化合物(V-2)は、スクアリリウム化合物(V)において、R45とR55が連結せず、2個のチオフェン環が結合した構造を含む化合物である。
【0251】
【0252】
R15、R25、R35およびR65の定義は、式(V)におけるR15、R25、R35およびR65の定義と好ましい態様も含めて同様である。
R45bおよびR55bの定義は、互いに連結して環を形成しない点を除き、式(V)におけるR45およびR55の定義と好ましい態様も含めて同様である。
【0253】
R45aおよびR55aは、可視光透過性や、耐光性や、二色比向上の観点からは、水素原子あるいは炭素-炭素原子間に酸素原子を含んでよい炭素数1~9の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数は、直鎖状の場合、1~9が好ましく、1~4がより好ましい。分岐鎖状の場合、3~9が好ましく、環状の場合、5~9がより好ましい。R45aおよびR55aは、例えば、メチル基、エチル基、フェニル基などが好ましい。
【0254】
R45aおよびR55aは、耐熱性や、耐光性や、NIR吸収波長の制御の観点からは、置換基を有してもよいフェニル基または、炭素数5~9の環状アルキル基が好ましい。フェニル基の置換基としては、炭素-炭素原子間に不飽和結合または酸素原子を含んでよい炭素数1~3のアルキル基、もしくはアルコキシ基、またはアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は1~3)が挙げられ、特に、メチル基、ジメチルアミノ基、メトキシ基等が好ましい。フェニル基は、非置換または、水素原子が1~3個置換されているのが好ましい。
【0255】
置換基を有してもよいフェニル基として、具体的には、基(P1)~(P6)が挙げられる。
【0256】
【0257】
化合物(V-1)としては、より具体的には以下の表に示す化合物が挙げられる。また、以下の表に示す化合物は、スクアリリウム骨格の左右において各記号の意味は同一である。
【0258】
【0259】
【0260】
【0261】
【0262】
化合物(V-1)としては、これらの中でも、二色比向上の点から、化合物(V-1-51)、(V-1-67)等が好ましい。
【0263】
化合物(V-2)としては、より具体的には以下の表に示す化合物が挙げられる。また、以下の表に示す化合物は、スクアリリウム骨格の左右において各記号の意味は同一である。
【0264】
【0265】
【0266】
【0267】
化合物(V-2)としては、これらの中でも、二色比向上の点から、化合物(V-2-31)、(V-2-41)等が好ましい。
【0268】
化合物(V)は公知の方法で製造でき、たとえば、国際公開第2019/230660号に記載された方法で製造可能である。
【0269】
<スクアリリウム色素(VI)>
【0270】
【0271】
[上記式中の記号は以下のとおりである。
R16およびR26は、それぞれ独立して、置換基を有してもよく、炭素-炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、脂環もしくは芳香環を含んでよい、炭素数1~20のアルキル基である。
R36は、非共有電子対を有する原子を含む炭素数9以下の1価有機基である。
R46は、水素原子、または炭素数1~9のアルキル基である。
R56は、水素原子、または炭素数1~9のアルキル基である。
X61は、C=O、C=S、またはSO2である。
R16とR26、R16とR46、R36とR46は、互いに連結して員数3~6の環を形成してもよい。]
【0272】
R16およびR26における置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、炭素数1~19のアルコキシ基が挙げられる。
【0273】
R16およびR26における置換基としては、さらに、環状のアルキル基またはアリール基が挙げられる。アリール基としては、置換基を有してもよいフェニル基または、置換基を有してもよいナフチル基が好ましい。フェニル基およびナフチル基の水素原子を置換してもよい置換基としては、炭素-炭素原子間に不飽和結合または酸素原子を含んでよい炭素数1~9のアルキル基、もしくはアルコキシ基、またはアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は1~9)が挙げられる。フェニル基およびナフチル基は、非置換または、水素原子が1~3個置換されているのが好ましく、置換基としては、メチル基、t-ブチル基、ジメチルアミノ基、メトキシ基等が好ましい。
【0274】
R16およびR26における置換基は、さらに、重合性液晶化合物と共重合させるための重合性基であってもよい。
【0275】
R16およびR26が、主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、耐熱性や、NIR吸収波長の制御の点で好ましい。R16およびR26が、主鎖または側鎖に脂環または芳香環を有しない場合、耐光性や、製造容易性や、二色比向上の点で好ましい。脂環の炭素数としては3~10が好ましい。芳香環の炭素数は4~14が好ましい。
【0276】
R16の炭素数としては1~20が挙げられる。R16の炭素数は、直鎖状の場合2~20が好ましく、2~16がより好ましく、2~12がさらに好ましい。R16の炭素数は、分岐鎖状の場合、3~20が好ましく、3~16がより好ましく、3~12がさらに好ましい。
R26の炭素数としては1~20が挙げられる。R26の炭素数は、配向度の観点から直鎖状の場合1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましい。R26の炭素数は、分岐鎖状の場合、3~10が好ましく、3~6がより好ましい。
【0277】
R16およびR26が置換基を有する場合、および主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、上記炭素数に置換基、脂環、芳香環の炭素数は含まれる。
【0278】
R16およびR26は同一であっても異なってもよい。配向度の観点から、鎖状である場合、R13およびR23は異なっていることが好ましい。また、R16およびR26は、配向度の観点からは、分岐鎖状より直鎖状が好ましい。
【0279】
R16およびR26が分岐鎖状の場合、分岐の数は特に制限されない。分岐の数は1~5が好ましく、1~3がより好ましい。液晶および溶媒への溶解性および製造容易性の両観点から、分岐の位置は、β位が好ましい。また、一つの炭素原子から2つに分岐していてもよく3つに分岐していてもよい。
【0280】
R16およびR26は、例えば、スクアリリウム色素(III)におけるR13およびR23のさらに好ましい態様として記載した基(1b)~(5b)、(1c)、(2c)から選ばれる基がさらに好ましい。
-CH(CnH2n+1)2 …(1b)
-C(CnH2n+1)3 …(1c)
-CH2-CH(CnH2n+1)2 …(2b)
-CH2-C(CnH2n+1)3 …(2c)
-(CH2)2-CH(CnH2n+1)2 …(3b)
-(CH2)3-CH(CnH2n+1)2 …(4b)
-(CH2)m-CH3 …(5b)
【0281】
ただし、式(1b)~(4b)、(1c)、(2c)においてnは1~10の整数であり、2~8が好ましく、2~4がより好ましい。ただし、基(1b)~(4b)、基(1c)~(2c)の炭素数は1~20の範囲内とする。式(1b)~(4b)、(1c)、(2c)における2個のCnH2n+1、式(1c)~(2c)における3個のCnH2n+1は、それぞれ直鎖であっても分岐鎖であってもよく、同一であっても異なってもよい。式(5b)においてmは0~19の整数であり、0~15が好ましく、0~11がより好ましい。さらに、基(1b)~(5b)、(1c)、(2c)は炭素-炭素原子間にヘテロ原子を有してもよい。
【0282】
R36は、非共有電子対を有する原子を含む炭素数9以下の1価有機基である。スクアリリウム骨格に最も近い炭素原子に非共有電子対を有する基が結合することで、不飽和炭素環の電子密度が高まり、色素の生成(スクアリン酸との反応)において非共有電子対を有する原子が必要となる。かかる観点から、R36における非共有電子対を有する原子は、R36が結合する不飽和炭素環の炭素原子と直接結合することが好ましい。
非共有電子対を有する原子は、N、SまたはOであることが好ましい。
【0283】
R36としては、NH-Y36a-R36a、SH、またはOHが好ましい。
NH-Y36a-R36aにおいて、Y36aは単結合または炭素数0~3の2価有機基であり、好ましくは-CO-、―COO-、-CONH-、-SO2-である。
R36としては、NH―R36a、NH―CO-R36a、NH―COO-R36a、NH-CONH-R36a、NH-SO2-R36a、SH、またはOHが好ましい。
【0284】
NH-Y36a-R36aにおいて、R36aは置換基を有してもよく、炭素-炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、脂環もしくは芳香環を含んでもよい、炭素数1~9のアルキル基である。なお、Y36aとR36aの合計炭素数の上限は9である。
【0285】
R36aの炭素数としては、直鎖状の場合、1~9が好ましく、1~4がより好ましく、1~2が特に好ましく、また、分岐鎖状の場合、3~9が好ましく、3~4が特に好ましい。
【0286】
R36aにおける置換基としては、R16およびR26における置換基と同様の基が挙げられる。
R36aが置換基を有する場合、および主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、上記炭素数に置換基、脂環、芳香環の炭素数は含まれる。
【0287】
R36aは二色比向上の観点からは、直鎖状であるのが好ましい。
【0288】
R36aとしては、基(11b)~(15b)、(11c)、(12c)から選ばれる基がさらに好ましい。
-CH(CnH2n+1)2 …(11b)
-C(ClH2l+1)3 …(11c)
-CH2-CH(CnH2n+1)2 …(12b)
-CH2-C(ClH2l+1)3 …(12c)
-(CH2)2-CH(CnH2n+1)2 …(13b)
-(CH2)3-CH(CnH2n+1)2 …(14b)
-(CH2)m-CH3 …(15b)
【0289】
ただし、式(11b)~(14b)においてnは1~3の整数であり、2~3が好ましい。式(11c)、(12c)においてlは1~2の整数である。式(11b)~(14b)、(11c)、(12c)における2個のCnH2n+1または3個のClH2l+1は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、同一であっても異なってもよい。式(15b)においてmは0~8の整数であり、0~8が好ましく、0~3がより好ましく、0~1がさらに好ましい。さらに、基(11b)~(15b)、(11c)、(12c)は炭素-炭素原子間に酸素原子を有してもよい。
【0290】
R46は、水素原子、または炭素数1~9のアルキル基である。
【0291】
アルキル基の炭素数としては、1~8が好ましく、1~4がより好ましい。
アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよいが、二色比向上の観点からは、直鎖状であるのが好ましい。
【0292】
R46が炭素数1~9のアルキル基である場合、R36aにおいて好ましい態様として記載した、基(11b)~(15b)、(11c)、(12c)から選ばれる基がさらに好ましい。
【0293】
立体障害の観点から、R46は水素原子が好ましい。
【0294】
R56は、水素原子、または炭素数1~9のアルキル基である。
立体障害の観点から、R56は水素原子が好ましい。
【0295】
R16とR26、R16とR46、R36とR46は、互いに連結して環を形成してもよい。
環としてはR16とR26、R16とR46は員数3~6の脂環、R36とR46は員数3~6の脂環または芳香環が好ましい。また、該環は置換基を有していてもよい。置換基としてはR16およびR26における置換基と同様の基が挙げられる。
【0296】
X61は、C=O、C=S、またはSO2である。
【0297】
スクアリリウム化合物(VI)としては、下記式(VI-1)で表されるスクアリリウム化合物が好ましい。
【0298】
【0299】
R16~R46は式(VI)におけるR16~R46と好ましい態様を含めて同様である。
【0300】
スクアリリウム化合物(VI)としては、R36がNH-CO-R36aである、下記スクアリリウム化合物(VI-11)、R36がNH-SO2-R36aである、下記スクアリリウム化合物(VI-12)、R36がNH-CONH-R36aである、下記スクアリリウム化合物(VI-13)、R36がNH-COO-R36aである、下記スクアリリウム化合物(VI-14)、R36がOHである、下記スクアリリウム化合物(VI-15)が好ましい。
【0301】
【0302】
【0303】
スクアリリウム化合物(VI-11)~(VI-15)としては、より具体的には、R16、R26、R36a、R46が、以下の表に示される化合物(表には、そのスクアリリウム化合物(VI-11)~(VI-15)としての略号を併せて示す。)が挙げられる。表中において、R16、R26、R36a、R46は、式が示された基である場合、式の記号を示す。表中に示す全ての化合物において、R16、R26、R36a、R46は式の左右で全て同一である。
【0304】
【0305】
【0306】
【0307】
【0308】
<化合物(VI)の製造方法>
スクアリリウム化合物(VI)の製造方法について、スクアリリウム化合物(VI-11)の製造方法を用いて説明するが、スクアリリウム化合物(VI)の製造方法はこれらに限定されない。
スクアリリウム化合物(VI-11)を得る方法をスキーム(F-A11)に示す。
【0309】
【0310】
(1)公知化合物である出発原料(pA11-1)に対し、ジイソプロピルエチルアミン(CH3CH2N(CH(CH3)2)2)と無水酢酸を反応させ、アミノ基を保護した化合物(pA11-2)を得る。
(2)ニトロ化反応により化合物(pA11-3)を得る。
(3)アミノ基の脱保護により化合物(pA11-4)を得る。
(4)N alkylation(ハロゲン化アルキルと塩基を用いるSN2反応または、アルデヒドと還元剤を用いる還元的アミノ化反応)により化合物(pA11-5)を得る。
(5)ニトロ基の還元により化合物(pA11-6)を得る。
(6)化合物(pA11-6)とアルカノイルクロライド(R36a-C(=O)-Cl)とを反応させることにより化合物(pA11-7)を得る。
(7)メトキシ基の脱保護により化合物(pA11-8)を得る。
(8)化合物(pA11-8)とスクアリン酸とを反応させることにより化合物(VI-11)を得る。
【0311】
スクアリリウム化合物(VI-12)は、上記工程(6)におけるアルカノイルクロライド(R36a-C(=O)-Cl)を、R36aSO2Clに変更することで製造できる。
スクアリリウム化合物(VI-13)は、上記工程(6)においてカルボニルジイミダゾールを反応させた後にR36aNH2を反応させることで製造できる。
スクアリリウム化合物(VI-14)は、上記工程(6)におけるアルカノイルクロライド(R36a-C(=O)-Cl)を、R36aO-C(=O)-Clに変更することで製造できる。
【0312】
本発明の組成物において、二色性色素の含有量は、吸収軸に平行な偏光に対して十分な吸光度を確保する観点から、好ましくは重合性液晶化合物100質量部に対して0.02mmol以上、より好ましくは0.05mmol以上であり、吸収軸に垂直な偏光に対しての透過率を確保し、かつ重合性液晶化合物に対する溶解性を保つ観点から、好ましくは重合性液晶化合物100質量部に対して10mmol以下、より好ましくは7mmol以下である。なお、二色性色素は二種以上を組み合わせて用いてもよく、その場合、合計含有量を上記範囲内とする。
【0313】
<重合性液晶化合物>
本発明の重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物を含む。重合性液晶化合物とは、重合性基を有し、かつ液晶性を示す化合物である。重合性基は、重合性液晶化合物の重合反応に関与する基を意味する。重合性モノマーとしての性質と液晶としての性質とを併せ持つことで、重合性液晶化合物を配向させた後に重合を行うと、液晶化合物の配向が固定された光学異方性材料が得られる。光学異方性材料は、メソゲン骨格に由来する屈折率異方性などの光学異方性を有するので、この性質を利用して回折素子や位相差板などが作製できる。
【0314】
本発明における重合性液晶化合物は、スメクチック液晶相を示す。スメクチック液晶相は、棒状分子の長軸が平行に配列して層を形成している液晶であり、棒状分子の長軸が一定の方向に配向しているが層を形成しておらず分子重心位置に規則性がないネマチック液晶よりも、規則性が高い。重合性液晶化合物が示す液晶相がスメクチック液晶相であると、配向秩序度の高い光学素子が得られる。
【0315】
スメクチック液晶相としては、スメクチック液晶A相、スメクチック液晶B相、スメクチック液晶D相、スメクチック液晶E相、スメクチック液晶F相、スメクチック液晶G相、スメクチック液晶H相、スメクチック液晶I相、スメクチック液晶J相及びスメクチック液晶K相、ならびに、これらから選ばれるスメクチック液晶相が傾斜したものが挙げられる。中でも、スメクチック液晶B相、スメクチック液晶F相、スメクチック液晶I相、傾斜したスメクチック液晶F相及び傾斜したスメクチック液晶I相が好ましく、スメクチック液晶B相がより好ましい。
【0316】
重合性液晶化合物は一以上の重合性基を含み、重合性基としては特に限定はされないが光重合性基であることが好ましい。例としては、CH2=CH-、CH2=CCl-、CH2=C(CH3)-、又は4-ビニルフェニリルなどを含み、好適な例としては、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、オキセタン、エポキシ、又は、チオレンなどが挙げられる。
【0317】
スメクチック液晶相を示す重合性液晶化合物は、Lub et al. Recl. Trav. Chim. Pays-Bas, 115, 321-328 (1996)、特許第4719156号公報等の公知文献に記載される公知の製法により合成してもよく、また、市販品を用いてもよい。
【0318】
本発明の組成物におけるスメクチック液晶相を示す重合性液晶化合物の含有量は、組成物の固形分に対して、70~99.9質量%の範囲が好ましく、90~99.9質量%の範囲がより好ましい。上記範囲内であれば、液晶化合物の配向性が高くなる傾向がある。ここで、固形分とは、組成物から溶剤を除いた成分の合計量のことをいう。液晶化合物は、単独で用いても、複数種を併用してもよい。
【0319】
<重合開始剤>
本発明の重合性液晶組成物は、さらに重合開始剤を含むことが好ましい。重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合を開始する化合物であり、光及び/又は熱の作用により活性ラジカルや酸を発生する。中でも、液晶性を保持したまま硬化させやすい点から、光の作用により活性ラジカル又は酸を発生する重合開始剤(すなわち光重合開始剤)であることが好ましく、光照射によりラジカルを発生する光重合開始剤がより好ましい。光重合に用いる光は、紫外線または可視光線が好ましい。
【0320】
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、ベンジル類、ミヒラーケトン類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、アシルホスフィンオキシド類、およびチオキサントン類などから適宜選択される光重合開始剤が好ましく用いられる。光重合開始剤は、1種または2種以上を組み合わせて使用できる。また、市販の光重合開始剤を用いることができる。
【0321】
熱重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;過酸化水素、過硫酸塩、過酸化ベンゾイル等の過酸化物等が挙げられる。また、市販の熱重合開始剤を用いることができる。
【0322】
本発明の組成物における重合開始剤の含有量は、好ましくは重合性液晶化合物100質量部に対して0.01~10質量部、より好ましくは0.05~7質量部である。上記範囲内であれば、重合性液晶化合物を、その配向を乱すことなく重合させることができる。
【0323】
<酸化防止剤>
本発明の重合性液晶組成物は、さらに酸化防止剤を含むことが好ましい。本発明の組成物が酸化防止剤を含むことにより、重合性液晶化合物の重合を制御することができ、本発明の重合性液晶組成物の安定性を向上させることができる。
【0324】
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、ハイドロキノン、アルコキシ基含有ハイドロキノン、アルコキシ基含有カテコール(例えばブチルカテコール等)、ピロガロール、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤、チオフェノール類、β-ナフチルアミン類、およびβ-ナフトール類等が挙げられる。
【0325】
本発明の組成物における酸化防止剤の含有量は、好ましくは重合性液晶化合物100質量部に対して0.01~3質量部、より好ましくは0.05~2質量部である。上記範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合を制御できる。
【0326】
<レベリング剤>
本発明の重合性液晶組成物は、さらにレベリング剤を含有してもよい。レベリング剤とは、重合性液晶組成物の流動性を調整し、塗布した膜を平坦にする機能を有するものである。重合性液晶組成物から塗布膜を形成する場合は、レベリング剤を含有することで平坦な膜が得られるため好ましい。レベリング剤としては、界面活性剤等が好ましく用いられる。
本発明の組成物におけるレベリング剤の含有量は、好ましくは重合性液晶化合物に対して0.3質量部以上5質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上3質量部以下である。である。上記範囲内であれば、平坦な塗布膜が得られやすい。
【0327】
<溶剤>
本発明の重合性液晶組成物は、さらに溶剤を含有してもよい。重合性液晶組成物から塗布膜を形成する場合は、溶剤を含有することで均一な膜が得られるため好ましい。溶剤としては、液晶化合物や二色性色素等の成分を溶解でき、また、液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤が好ましい。
【0328】
溶剤としては例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン又はプロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチルなどのエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン及びメチルイソブチルケトンなどのケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリルなどのニトリル溶剤;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタンなどのエーテル溶剤;クロロホルム及びクロロベンゼンなどの塩素含有溶剤;などが挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0329】
本発明の組成物が溶剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量に対して50~98質量%が好ましい。換言すると、組成物における固形分濃度が2~50質量%であることが好ましい。上記範囲であれば、組成物から得られる膜の厚みが二色性を示すのに十分であり、また、塗布時に均一な膜が得られるため好ましい。
【0330】
<光学異方性材料>
本発明の光学異方性材料は、本発明の重合性液晶組成物の重合体からなる。
重合方法は特に限定されないが、重合性液晶組成物がスメクチック液晶相を示す状態で、且つ、液晶が配向した状態で重合する必要がある。
重合性液晶組成物がスメクチック液晶相を示す状態を作るためには、雰囲気温度を該重合性液晶化合物がスメクチック液晶相を示す温度範囲内、またはそれ以下とすればよい。この際、該重合性液晶化合物がネマチック液晶相を示す温度以上に重合性液晶組成物を加熱しネマチック液晶相を形成させた後、該重合性液晶化合物がスメクチック液晶相を示す温度範囲内、またはそれ以下まで冷却することにより、スメクチック液晶相を形成するのが好ましい。さらに、ネマチック液晶相を形成させる際、該重合性液晶化合物が等方相を示す温度以上に重合性液晶組成物を加熱し等方相を形成させた後、該重合性液晶化合物がネマチック液晶相を示す温度範囲内、またはそれ以下まで冷却することにより、ネマチック液晶相を形成させてもよい。これらの操作により、より均質な配向を作ることができる。
【0331】
なお、ネマチック液晶相及びスメクチック液晶相の確認は例えば、偏光顕微鏡によるテクスチャー観察、X線回折測定又は示差走査熱量測定により行うことができる。
【0332】
光学異方性材料の形成は、例えば、重合性液晶組成物を、表面に配向処理を施した一対の基板間に挟持した状態で重合することで行うことができる。
【0333】
基板としては、ガラスまたは透明樹脂からなる基板が挙げられる。基板の厚みは、通常、0.2~1.5mmが好ましい。
【0334】
基板の表面に配向処理を施す方法としては、例えば、基板の上に配向膜を形成し、配向膜に対して配向処理を行うことが挙げられる。配向膜は、液晶を配向させる機能を有するものであればよく、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルシンナメートおよびポリスチレンなどの有機材料、または、SiO2およびAl2O3などの無機材料を用いることができる。配向処理は、具体的には、ラビング法などを用いて行うことができる。例えば、ナイロンやレーヨンなどのラビング布で、配向膜の表面を一方向に擦ることによって、その方向に液晶化合物が配向するようにする。また、ラビング法以外にも、SiO2の斜め蒸着、イオンビーム法または光配向膜などによって、液晶化合物の配向を揃えることもできる。
【0335】
次に、配向膜の上に光学異方性材料を形成する。上記の基板(以下、第1の基板と称す。)とは別に、表面に配向膜が形成された第2の基板を新たに準備する。この配向膜については、第1の基板と同様にして形成すればよい。次いで、必要に応じて第2の基板の配向膜が形成された側の表面に離型処理を行う。離型剤としては、例えば、フルオロシラン系または含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体などを使用することができる。次に、この第2の基板に第1の基板を重ね合わせて間隔をおいて仮接着する。このとき、第2の基板の配向膜が形成された面または離型処理された面と、第1の基板の配向膜が形成された面とが互いに内側を向くようにする。また、外部から重合性液晶組成物を充填可能な開口部を設けておく。次いで、この開口部を通じて、基板間に重合性液晶組成物を注入する。注入には、真空注入法を用いてもよいし、大気中で毛細管現象を利用した方法を用いてもよく、この際に液晶組成物を加熱により融解させて注入してもよい。重合性液晶組成物を注入した後は、雰囲気温度を該重合性液晶化合物がスメクチック液晶相を示す温度範囲内、またはそれ以下とすることで、重合性液晶組成物がスメクチック液晶相を示す状態とする。この時、重合性液晶化合物がネマチック相を示す温度範囲内、もしくは等方相を示す温度範囲内まで重合性液晶組成物を加熱し、重合性液晶化合物がスメクチック液晶相を示す温度範囲内、またはそれ以下まで冷却することによりスメクチック液晶相を示す状態とするのが好ましい。次いで、重合性液晶組成物を重合させる。重合性液晶組成物の重合性基が光重合性基であれば、所定の波長の光を照射して光重合を行い、重合性基が熱重合性基であれば、加熱して熱重合を行う。その後、必要に応じて仮接着していた第2の基板を取り除くことによって、2枚の基板間または第1の基板の上に、配向膜と光学異方性材料とが形成された構造を得ることができる。本発明の実施の形態では、重合性液晶組成物は、第1の基板の表面と略平行な方向に配向し、光学異方性材料は、この配向が固定された状態で得られる。
【0336】
また、光学異方性材料の形成は、例えば、次のようにして行うこともできる。
まず、配向膜が形成された第1の基板と、配向膜が形成された表面上に必要に応じて離型剤が施された第2の基板とを準備する。次いで、第1の基板に形成された配向膜の上に、光硬化性の重合性液晶組成物を滴下する。その後、第2の基板を、配向膜が形成された面または離型剤の塗布面が重合性液晶組成物の側になるようにして、第1の基板と重ね合わせる。次いで、重合性液晶組成物がスメクチック液晶相を示す状態で、重合性液晶組成物を重合させる。その後、必要に応じて第2の基板を除去すると、上記と同様に、2枚の基板間または第1の基板の上に、配向膜と光学異方性材料とが形成された構造を得ることができる。
【0337】
また、光学異方性材料の形成は、例えば、次のようにして行うこともできる。
まず、表面に配向処理を施した基板表面に重合性液晶組成物を塗布し、得られた塗布膜を、液晶相が形成された膜に転換させた状態で重合する。この場合、塗布のハンドリングを良好とする観点から、塗布時において重合性液晶組成物は溶剤を含むことが好ましい。また、基板上への塗布方法としては、スピンコート、ダイコート、ディップコート、バーコート等の方法が挙げられる。基板への塗布後は、成膜性の観点から溶剤等の揮発性成分を乾燥により除去することが好ましい。塗布膜を、スメクチック液晶相が形成された膜に転換させるには、重合性液晶化合物がネマチック相を示す温度範囲内、もしくは等方相を示す温度範囲内まで重合性液晶組成物を加熱し、重合性液晶化合物がスメクチック液晶相を示す温度範囲内、またはそれ以下まで冷却すればよい。
【0338】
<光学素子>
本発明の光学異方性材料は、光学素子用の材料として用いることができる。
本発明において二色性色素は可視光を透過し近赤外光を吸収するため、本発明の光学異方性材料は、屈折率異方性および光吸収異方性の両者の性質を兼ね備える。したがって、可視光領域においては位相差板として機能し、近赤外光領域では偏光子として機能する。
光学素子としては、偏光子、位相差板の他、波面補正素子、回折格子等が挙げられる。これらを用いることでディスプレイ部材、撮像部材、センサーなどを作製することができる。
本発明の光学異方性材料を用いた光学素子は、近赤外線吸収能を有するため、近赤外光、及び赤外光のセンサーなどに用いることができ、反射型・回折型の偏光子と比べると迷光が生じにくいという利点がある。
【0339】
本発明の光学素子は、以下に記載する種々の機器に搭載可能である。
【0340】
<撮像装置>
本発明の撮像装置は、例えば、固体撮像素子と、撮像レンズと、上記本発明の光学素子とを備える。これにより色再現性の高い良好な画像を得られる。
【0341】
<光波測距装置>
本発明の光波測距装置は、例えば、レーザーダイオードと、ビームスプリッターやMEMSミラー等の走査部と、フォトダイオードと、上記本発明の光学素子とを備える。これによりレーザーダイオードへの戻り光雑音や光波測距装置内の迷光を抑制し、検出精度が向上し、誤検出を減少できる。
【0342】
<仮想現実装置>
本発明の仮想現実装置は、例えば、LCD、OLED、μLED等のディスプレイユニットと、レンズユニットと、ディスプレイユニットとレンズユニットの間に本発明の光学素子と、ユーザーの眼を撮影可能な近赤外線照明を搭載したカメラとを備える。
レンズユニットは位相差板と反射偏光子を備えることができ、位相差板としては本発明の位相差板を用いることができる。
ディスプレイユニットとレンズユニットの間の光学素子としては、本発明の位相差板や偏光子を用いることができる。
上記構成により仮想現実装置内の近赤外光の迷光を抑制し、視線追跡精度が向上し、誤検出を減少できる。
【実施例0343】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【0344】
各例で用いた色素は下記のとおりである。
<近赤外線吸収色素>
化合物1:ピロリドンとTMS-Clを反応させてN-TMSピロリドンとし、これにLDAを作用させヨウ化n-オクタンを反応させ、水を加えることで5-オクチルピロリドンとし、LiAlH4で還元することで、対応するアミン(3-オクチルピロリジン)を合成し、その他は国際公開第2017/135359号に基づき合成した。
化合物2:アミンとして3-オクチルピロリジンを用いた以外は国際公開第2019/230570号に基づき合成した。
化合物3:ケトンとしてアセトン、アミンとして3-オクチルピロリジンを用いた以外は国際公開第2019/230660号に基づき合成した。
化合物4:ケトンとしてアセトン、アミンとしてピロリジンを用いた以外は国際公開第2019/230660号に基づき合成した。
<可視光吸収色素>
化合物5:市販品(株式会社 林原製、商品名G-205)を用いた。
化合物6:市販品(東京化成工業株式会社製、2,4-Bis[4-(diethylamino)-2-hydroxyphenyl]squaraine)を用いた。
【0345】
各色素のアスペクト比は、分子軌道計算用ソフトウェアGaussian16にてキーワードとしてB3LYP/6-31G*を用い、構造最適化を行ったのち、該最適化構造をシミュレーションソフトウェアWinmostarに読み込ませることにより算出した。
【0346】
液晶化合物としては、スメクチック液晶B相を示す下記重合性スメクチック液晶化合物を用いた。液晶化合物はLub et al. Recl. Trav. Chim. Pays-Bas, 115, 321-328 (1996)、特許第4719156号公報等の公知文献に記載の方法により合成した。
【0347】
【0348】
光重合開始剤として、BASF社製、Irgacure369Eを用いた。
【0349】
酸化防止剤として、BASF社製、Irganox1010を用いた。
【0350】
<重合性液晶組成物の製造・二色比評価>
(例1)
上記液晶化合物100質量部に対して、化合物1のスクアリリウム色素0.3mmolと、上記重合開始剤0.2質量部と、酸化防止剤0.4質量部とをジクロロメタンに溶解し、乾燥してジクロロメタンを除去することで例1の重合性液晶組成物を得た。
イーエッチシー社製の5μmのギャップが保たれた配向セルを120℃に加熱し、得られた重合性液晶組成物をセル内に注入し、140℃で5分間加熱した後、室温(25℃)まで放冷し、スメクチックB相を形成させた。
波長365nmのUV光を、50mW/cm2×30秒の条件で照射することで、組成物を重合させた。
ラビング方向と平行な偏光および垂直な偏光を各々照射し、それぞれの吸収スペクトル(A||およびA⊥)を可視吸収スペクトル計(島津製作所製、SolidSpec―3700DUV)にて測定することで二色比を測定した。
【0351】
【0352】
(例2)
スクアリリウム色素として化合物2を用いた以外は例1と同様に、重合性液晶組成物を調製し、重合体を得て、二色比を測定した。
【0353】
【0354】
(例3)
スクアリリウム色素として化合物3を用い、色素の量を重合性液晶化合物100質量部に対して1.2mmolに変更した以外は例1と同様に、重合性液晶組成物を調製し、重合体を得て、二色比を測定した。
【0355】
【0356】
(例4)
スクアリリウム色素として化合物4を用いた以外は例1と同様に、重合性液晶組成物を調製し、重合体を得て、二色比を測定した。
【0357】
【0358】
(例5)
色素として化合物5の可視光吸収色素を用い、色素の量を重合性液晶化合物100質量部に対して1mmolに変更した以外は例1と同様に、重合性液晶組成物を調製し、重合体を得て、二色比を測定した。
【0359】
【0360】
(例6)
色素として化合物6の可視光吸収色素を用いた以外は例1と同様に、重合性液晶組成物を調製し、重合体を得て、二色比を測定した。
【0361】
【0362】
上記各重合性液晶組成物から得られた重合体の二色比と各色素の最大吸収波長を下記表に示す。
なお、例1~例4が実施例であり、例5~6が参考例である。
【0363】
【0364】
上記結果より、実施例の重合性液晶組成物から得られた重合体はいずれも、優れた二色性を示した。
本発明の重合性液晶組成物は、偏光子、位相差板、波面補正素子、回折格子等の光学素子の材料として有用である。また、本発明の重合性液晶組成物から得られる重合体は、近赤外線吸収能を有するため、近赤外光、及び赤外光のセンサーなどに特に有用である。