(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185570
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】シャワーヘッド、電極ユニット、ガス供給ユニット、基板処理装置及び基板処理システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080141
(22)【出願日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2021092921
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135677
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 光一
(74)【代理人】
【識別番号】100131598
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 和宗
(72)【発明者】
【氏名】須田 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】戸村 幕樹
(72)【発明者】
【氏名】野上 達
(72)【発明者】
【氏名】藥師寺 秀明
(72)【発明者】
【氏名】村上 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】若生 悠輔
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004BA09
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB28
5F004BB29
5F004BB30
5F004CA06
5F004DA00
5F004DA01
5F004DA17
5F004DA18
5F004DA20
5F004DA24
(57)【要約】
【課題】処理ガスに対する腐食耐性を高める技術を提供する。
【解決手段】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理用のシャワーヘッドであって、第1の面と、第1の面と反対側の第2の面と、複数の内側面とを有する本体部であって、複数の内側面は、第1の面から第2の面に亘って本体部を貫通する複数のガス孔を規定する、本体部を備え、第2の面は、第1の耐腐食性材料で構成されているシャワーヘッドが提供される。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理用のシャワーヘッドであって、
第1の面と、前記第1の面と反対側の第2の面と、複数の内側面とを有する本体部であって、前記複数の内側面は、前記第1の面から前記第2の面に亘って前記本体部を貫通する複数のガス孔を規定する、本体部を備え、
前記第2の面は、第1の耐腐食性材料で構成されている、
シャワーヘッド。
【請求項2】
前記第1の耐腐食性材料は、前記本体部を構成する材料よりも、F2、XeF2、WF6、MoF6、IF7、HF及びClF3からなる群から選択される少なくとも1種を含むガスに対する腐食耐性が高い材料である、請求項1に記載のシャワーヘッド。
【請求項3】
前記第1の耐腐食性材料は、前記本体部を構成する材料よりもフッ化水素ガスに対する腐食耐性が高い材料である、請求項1に記載のシャワーヘッド。
【請求項4】
前記第2の面に、前記第1の耐腐食性材料からなる膜を有する、請求項1に記載のシャワーヘッド。
【請求項5】
前記複数の内側面に、前記膜をさらに有する、請求項4に記載のシャワーヘッド。
【請求項6】
前記膜が前記第1の面に形成されていない、請求項4に記載のシャワーヘッド。
【請求項7】
前記本体部が、前記第1の耐腐食性材料で構成されている、請求項1に記載のシャワーヘッド。
【請求項8】
前記第1の耐腐食性材料は、炭素含有材料又は金属含有材料である、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のシャワーヘッド。
【請求項9】
前記第1の耐腐食性材料は、フッ化炭素樹脂、カーボン、フッ素添加カーボン、ポリイミド樹脂及びシリコンカーバイドからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項8に記載のシャワーヘッド。
【請求項10】
前記第1の耐腐食性材料は、金属、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化物及び合金からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項8に記載のシャワーヘッド。
【請求項11】
前記本体部は、シリコン含有材料で構成されている、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のシャワーヘッド。
【請求項12】
前記シリコン含有材料は、導電性のシリコン含有材料である、請求項11に記載のシャワーヘッド。
【請求項13】
前記シリコン含有材料は、シリコン酸化物である、請求項11に記載のシャワーヘッド。
【請求項14】
前記本体部は、カーボンを含む基材と、前記基材の表面を覆うシリコンカーバイド膜とから構成される、請求項11に記載のシャワーヘッド。
【請求項15】
前記本体部は、略円板状であり、前記第1の面が円板の一方の面を構成し、前記第2の面が当該円板の他方の面を構成する、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のシャワーヘッド。
【請求項16】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のシャワーヘッドと、
前記シャワーヘッドの前記第2の面側に配置され、前記シャワーヘッドの前記複数のガス孔に処理ガスを供給するためのガス供給路を有する導電性の支持体と、を備える電極ユニット。
【請求項17】
前記支持体の、前記シャワーヘッドの前記第2の面に対向する第3の面は第2の耐腐食性材料で構成されている、請求項16に記載の電極ユニット。
【請求項18】
前記第2の耐腐食性材料は、半封孔処理された陽極酸化皮膜である、請求項17に記載の電極ユニット。
【請求項19】
プラズマ処理用のガス供給ユニットであって、
環状の本体部と、前記本体部の半径方向内側に、周方向に沿って複数設けられたガス孔と、前記本体部の内部に設けられ、前記複数のガス孔に連通するガス供給路と、を備え、
前記ガス供給路は、少なくとも内周面が第1の耐腐食性材料で構成されている、
ガス供給ユニット。
【請求項20】
プラズマ処理用のチャンバと、
前記チャンバ内に設けられた基板支持器と、
前記基板支持器に前記シャワーヘッドの前記第1の面が対向するように前記チャンバの上部に配置された請求項16に記載の電極ユニットと、
プラズマ生成部と、
制御部と、
を備える基板処理装置。
【請求項21】
プラズマ処理用のチャンバと、
前記チャンバ内に設けられた基板支持器と、
前記チャンバの内壁に沿って取り付けられた請求項19に記載のガス供給ユニットと、
プラズマ生成部と、
制御部と、
を備える基板処理装置。
【請求項22】
前記チャンバは、フッ化水素ガスを含む処理ガスを供給するためのガスソース群と接続しており、
前記制御部は、
前記支持体の、前記シャワーヘッドの前記第2の面に対向する第3の面の温度を220℃以下に制御する工程と、
前記基板支持器上に、シリコン含有膜を有する基板を配置する工程と、
前記ガスソース群から前記チャンバ内に、前記処理ガスを供給する工程と、
前記プラズマ生成部により、前記処理ガスからプラズマを生成して、前記シリコン含有膜をエッチングする工程と、
を含む処理を実行するように構成される、請求項20に記載の基板処理装置。
【請求項23】
請求項20に記載の基板処理装置と、
ガスソース群と
前記ガスソース群から前記基板処理装置に処理ガスを供給するためのガス供給管と、
を含み、
前記ガス供給管は、少なくとも内周面が耐腐食性材料で構成されている、
基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、シャワーヘッド、電極ユニット、ガス供給ユニット、基板処理装置及び基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1にはプラズマを処理するチャンバの内側をコーティングする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、処理ガスに対する腐食耐性を高める技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一つの例示的実施形態において、プラズマ処理用のシャワーヘッドであって、第1の面と、前記第1の面と反対側の第2の面と、複数の内側面とを有する本体部であって、前記複数の内側面は、前記第1の面から前記第2の面に亘って前記本体部を貫通する複数のガス孔を規定する、本体部を備え、前記第2の面は、第1の耐腐食性材料で構成されている、シャワーヘッドが提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一つの例示的実施形態によれば、処理ガスに対する腐食耐性を高める技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2A】膜CRとして、ポリイミド膜が形成された場合の耐腐食効果を説明するための概念図である。
【
図2B】本体BDがシリコンカーバイドで構成された場合の耐腐食効果を説明するための概念図である。
【
図5】基板処理装置1における基板処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】上部電極における処理ガスの流れを説明するための図である。
【
図7C】
図6Bのガス供給ユニットGUのA-A'断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の各実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理用のシャワーヘッドであって、第1の面と、第1の面と反対側の第2の面と、複数の内側面とを有する本体部であって、複数の内側面は、第1の面から第2の面に亘って本体部を貫通する複数のガス孔を規定する、本体部を備え、第2の面は、第1の耐腐食性材料で構成されているシャワーヘッドが提供される。
【0010】
一つの例示的実施形態において、第1の耐腐食性材料は、本体部を構成する材料よりも、F2、XeF2、WF6、MoF6、IF7、HF及びClF3からなる群から選択される少なくとも1種を含むフッ素含有ガスに対する腐食耐性が高い材料である。
【0011】
一つの例示的実施形態において、第1の耐腐食性材料は、本体部を構成する材料よりもフッ化水素ガスに対する腐食耐性が高い材料である。
【0012】
一つの例示的実施形態において、第2の面に、第1の耐腐食性材料からなる膜を有する。
【0013】
一つの例示的実施形態において、複数の内側面に、膜をさらに有する。
【0014】
一つの例示的実施形態において、膜が第1の面に形成されていない。
【0015】
一つの例示的実施形態において、本体部が、第1の耐腐食性材料で構成されている。
【0016】
一つの例示的実施形態において、第1の耐腐食性材料は、炭素含有材料又は金属含有材料である。
【0017】
一つの例示的実施形態において、第1の耐腐食性材料は、フッ化炭素樹脂、カーボン、フッ素添加カーボン、ポリイミド樹脂及びシリコンカーバイドからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0018】
一つの例示的実施形態において、第1の耐腐食性材料は、金属、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化物及び合金からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0019】
一つの例示的実施形態において、本体部は、シリコン含有材料で構成されている。
【0020】
一つの例示的実施形態において、シリコン含有材料は、導電性のシリコン含有材料である。
【0021】
一つの例示的実施形態において、シリコン含有材料は、シリコン酸化物である。
【0022】
一つの例示的実施形態において、本体部は、カーボンを含む基材と、基材の表面を覆うシリコンカーバイド膜とから構成されている。
【0023】
一つの例示的実施形態において、本体部は、略円板状であり、第1の面が円板の一方の面を構成し、第2の面が円板の他方の面を構成する。
【0024】
一つの例示的実施形態において、シャワーヘッドと、シャワーヘッドの第2の面側に配置され、シャワーヘッドの複数のガス孔に処理ガスを供給するためのガス供給路を有する導電性の支持体と、を備える電極ユニットが提供される。
【0025】
一つの例示的実施形態において、支持体の、シャワーヘッドの第2の面に対向する第3の面は第2の耐腐食性材料で構成されている。
【0026】
一つの例示的実施形態において、第2の耐腐食性材料は、半封孔処理された陽極酸化皮膜である。
【0027】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理用のガス供給ユニットであって、環状の本体部と、本体部の半径方向内側に、周方向に沿って複数設けられたガス孔と、本体部の内部に設けられ、複数のガス孔に連通するガス供給路と、を備え、ガス供給路は、少なくとも内周面が第1の耐腐食性材料で構成されている、ガス供給ユニットが提供される。
【0028】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理用のチャンバと、チャンバ内に設けられた基板支持器と、基板支持器にシャワーヘッドの第1の面が対向するようにチャンバの上部に配置された電極ユニットと、プラズマ生成部と、制御部と、を備える基板処理装置が提供される。
【0029】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理用のチャンバと、チャンバ内に設けられた基板支持器と、チャンバの内壁に沿って取り付けられたガス供給ユニットと、プラズマ生成部と、制御部と、を備える基板処理装置が提供される。
【0030】
一つの例示的実施形態において、基板処理装置において、チャンバは、フッ化水素ガスを含む処理ガスを供給するためのガスソース群と接続されている。制御部は、支持体の、シャワーヘッドの第2の面に対向する第3の面の温度を220℃以下に制御する工程と、基板支持器上に、シリコン含有膜を有する基板を配置する工程と、ガスソース群から前記チャンバ内に、処理ガスを供給する工程と、プラズマ生成部により、処理ガスからプラズマを生成して、シリコン含有膜をエッチングする工程と、を含む処理を実行するように構成されている。
【0031】
一つの例示的実施形態において、基板処理装置と、ガスソース群とガスソース群から基板処理装置に処理ガスを供給するためのガス供給管と、を含み、ガス供給管は、少なくとも内周面が第3の耐腐食性材料で構成されている基板処理システムが提供される。
【0032】
以下、図面を参照して、本開示の各実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づいて上下左右等の位置関係を説明する。図面の寸法比率は実際の比率を示すものではなく、また、実際の比率は図示の比率に限られるものではない。
【0033】
<シャワーヘッドSHの構成>
図1Aは、一つの例示的実施形態に係るシャワーヘッドSHの平面図である。
図1Bは、
図1AのシャワーヘッドSHのA-A断面図である。シャワーヘッドSHは、プラズマ処理用のシャワーヘッドである。シャワーヘッドSHは、例えば、プラズマを生成するように構成されたチャンバ(以下、単に「チャンバ」ともいう。)に取り付けられ、このチャンバの内部空間にプラズマ生成用の処理ガスを供給する部材として用いられ得る。
【0034】
シャワーヘッドSHは、略円板状の本体BDを有する。本体BDは、円板の一方の面を構成する第1の面BD1、円板の他方の面を構成し、第1の面BD2の反対側の第2の面BD2、及び、複数の内側面BD3を有する。複数の内側面BD3は、第1の面BD1及び第2の面BD2に連続した面である。複数の内側面BD3は、第1の面BD1から第2の面BD2に亘って本体BDを貫通する複数のガス孔(貫通孔)GHを規定する。第1の面BD1は、シャワーヘッドSHがチャンバに取り付けられた場合に、チャンバの内部空間に面し、チャンバで生成されるプラズマに暴露される部分になり得る。第2の面BD2は、シャワーヘッドSHがチャンバに取り付けられた場合に、チャンバの内部空間に面せず、チャンバで生成されるプラズマに暴露されない部分になり得る。複数の内側面BD3の全部又は一部は、シャワーヘッドSHがチャンバに取り付けられた場合に、プラズマに暴露されない部分になり得る。内側面BD3の一部、例えば、第1の面BD1の近傍は、プラズマに暴露される部分になり得る。複数のガス孔GHは、チャンバに取り付けられた場合に、チャンバへ処理ガスを供給する流路の一部を構成し得る。
【0035】
本体BDは、任意の形状を有し得る。例えば、第1の面や第2の面は、平坦な面でなくてもよく、例えば、曲面でもよいし、凹凸を有してもよい。第1の面及び第2の面は、平面視円形でなくてもよく、任意の形状(例えば円形、楕円、長円形、長方形等)でよい。第1の面と第2の面は互いに同一又は相似形でもよいし、互いに異なってもよい。また、複数のガス孔GHは、それぞれ任意の形状(例えば、円形、楕円、長円形、長方形等)でよい。複数のガス孔GHは、任意の配置(等距離に配置、特定の範囲が密になるように配置、中心から螺旋状に配置等)をとり得る。
【0036】
本体BDは、例えば、シリコン含有材料で構成されてよい。シリコン含有材料は、例えば、シリコンや炭化シリコン等の導電性材料でも、シリコン酸化物(例えば石英)等の絶縁性材料でもよい。また、本体BDは、カーボンを含む基材(芯材)と、基材(芯材)の表面を覆うシリコンカーバイド膜とから構成されてもよい。
【0037】
本体BDの第2の面BDは、第1の耐腐食性材料で構成されている。一例では、本体BDの第2の面BD2には、第1の耐腐食性材料からなる膜CRが形成されている。膜CRは複数の内側面BD3にも形成されてよい。膜CRの厚みは例えば、10nm~100μmである。なお、膜CRは本体BDの第1の面BD1には形成されても、形成されなくてもよい。
【0038】
膜CRを構成する第1の耐腐食性材料は、ガス孔BHを流れ得る処理ガスに対して腐食耐性が高くてよい。このような処理ガスとしては、チャンバでプラズマ化される前の段階(たとえば常温条圧の段階)で高い腐食性を有するガス、例えば、F2、CF4、SF6、NF3、XeF2、WF6、SiF4、TaF5、IF7、HF、ClF3、ClF5、BrF5、AsF5、NF5、PF5、NbF5、BiF5、UF5などのフッ素含有ガスが含まれ得る。これらの中でも、フッ素含有ガスは、F2、XeF2、WF6、MoF6、IF7、HF及びClF3からなる群から選択される少なくとも1種のガスであってよく、一例では、フッ化水素(HF)ガスであってよい。膜CRを構成する第1の耐腐食性材料は、本体BDを構成する材料よりも腐食耐性が高くてよい。
【0039】
第1の耐腐食性材料は、例えば、炭素含有材料又は金属含有材料でよい。炭素含有材料は、例えば、カーボン(例えばアモルファスカーボン、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン又はグラファイト)、フッ素添加カーボン、フッ化炭素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド樹脂及びシリコンカーバイドからなる群から選択される少なくとも1種でよく、一例では、ポリイミド樹脂又はシリコンカーバイドでよい。金属含有材料は、金属(例えば、白金、金又はタングステン)、金属窒化物(例えば窒化鉄)、金属炭化物(例えば炭化タングステン)、金属酸化物(例えば酸化クロム、酸化イットリア又はアルミナ)又は合金(例えばハステロイ)でよい。
【0040】
膜CRを形成する方法は特に限定はない。例えば、CVD法を用いて、本体BDの第2の面BD2及び複数の内側面BD3側の母材上に第1の耐腐食性材料を成膜することで膜CRを形成してよい。なお、本体BDの第1の面BD1側の母材上にも膜CRを形成し、その後、第1の面BD1の膜CRを除去することで、本体BDの第2の面BD2及び内側面BD3のみに膜CRが残るようにしてもよい。第1の面BDの膜CRの除去は、例えば、シャワーヘッドSHをチャンバへ取り付けた後、チャンバ内で生成したプラズマに第1の面BDを暴露することで行ってよい。また、膜CRは、本体BDを構成する材料(例えば、本体BDがシリコン含有材料である場合はシリコン)を窒化又は炭化することにより不動態化して形成してもよい。すなわち、膜CRは不動態膜でもよい。
【0041】
一例では、膜CRを形成することに加えて又は代えて、本体BDを構成する材料を上述した第1の耐腐食性材料で構成してよい。この場合、膜CRを形成しなくても、第2の面BD2を含む本体BDの表面は第1の耐腐食性材料で構成されることになる。
【0042】
図2A及び
図2Bは、第1の耐腐食性材料の効果について説明する図である。本体BDがシリコン(単結晶シリコン)で構成されている場合、第2の面BD2には自然酸化膜が存在する。このため、第2の面BD2がフッ化水素等のフッ素含有ガスに暴露されると、自然酸化膜を構成するSi-O結合が破壊され、腐食が進行する。
図2Aは、本体BDの第2の面BD2に、膜CRとしてポリイミド膜が形成された例を示す。ポリイミド膜は共役構造かつイミド結合の高い分子間力を有する。このため、フッ素含有ガスに対して腐食耐性が高く、第2の面BD2の腐食を抑制することができる。また、
図2Bは、本体BDがシリコンカーバイド(SiC)で構成された例を示す。この場合、第2の面BD2には自然酸化膜OFが存在する。このため、第2の面BD2がフッ化水素等のフッ素含有ガスに暴露されると、自然酸化膜OFを構成するSi-O結合が破壊される。しかしながら、本体BDが炭素原子を含むことに起因して、Si-O結合の破壊は限定的なものとなり、第2の面BD2の腐食を抑制することができる。
【0043】
<基板処理装置1の構成>
図3は、一つの例示的実施形態に係る基板処理装置1を概略的に示す図である。
図1A及び
図1Bに示すシャワーヘッドSHは、基板処理装置1に取り付けられ得る。以下で説明する基板処理装置1は、シャワーヘッドSHを上部電極30の天板34として用いた例である。
【0044】
図3に示す基板処理装置1は、チャンバ10を備える。チャンバ10は、その中に内部空間10sを提供する。チャンバ10はチャンバ本体12を含む。チャンバ本体12は、略円筒形状を有する。チャンバ本体12は、例えばアルミニウムから形成される。チャンバ本体12の内壁面上には、耐腐食性を有する膜が設けられている。耐腐食性を有する膜は、酸化アルミニウム、酸化イットリウムなどのセラミックから形成され得る。
【0045】
チャンバ本体12の側壁には、通路12pが形成されている。基板Wは、通路12pを通して内部空間10sとチャンバ10の外部との間で搬送される。通路12pは、ゲートバルブ12gにより開閉される。ゲートバルブ12gは、チャンバ本体12の側壁に沿って設けられる。
【0046】
チャンバ本体12の底部上には、支持部13が設けられている。支持部13は、絶縁材料から形成される。支持部13は、略円筒形状を有する。支持部13は、内部空間10sの中で、チャンバ本体12の底部から上方に延在している。支持部13は、基板支持器14を支持している。基板支持器14は、内部空間10sの中で基板Wを支持するように構成されている。
【0047】
基板支持器14は、下部電極18及び静電チャック20を有する。基板支持器14は、電極プレート16を更に有し得る。電極プレート16は、アルミニウムなどの導体から形成されており、略円盤形状を有する。下部電極18は、電極プレート16上に設けられている。下部電極18は、アルミニウムなどの導体から形成されており、略円盤形状を有する。下部電極18は、電極プレート16に電気的に接続されている。
【0048】
静電チャック20は、下部電極18上に設けられている。基板Wは、静電チャック20の上面の上に載置される。静電チャック20は、本体及び電極を有する。静電チャック20の本体は、略円盤形状を有し、誘電体から形成される。静電チャック20の電極は、膜状の電極であり、静電チャック20の本体内に設けられている。静電チャック20の電極は、スイッチ20sを介して直流電源20pに接続されている。静電チャック20の電極に直流電源20pからの電圧が印加されると、静電チャック20と基板Wとの間に静電引力が発生する。基板Wは、その静電引力によって静電チャック20に引き付けられて、静電チャック20によって保持される。
【0049】
基板支持器14上には、エッジリング25が配置される。エッジリング25は、リング状の部材である。エッジリング25は、シリコン、炭化シリコン、又は石英などから形成され得る。基板Wは、静電チャック20上、且つ、エッジリング25によって囲まれた領域内に配置される。
【0050】
下部電極18の内部には、流路18fが設けられている。流路18fには、チャンバ10の外部に設けられているチラーユニットから配管22aを介して熱交換媒体(例えば冷媒)が供給される。流路18fに供給された熱交換媒体は、配管22bを介してチラーユニットに戻される。基板処理装置1では、静電チャック20上に載置された基板Wの温度が、熱交換媒体と下部電極18との熱交換により、調整される。
【0051】
基板処理装置1には、ガス供給ライン24が設けられている。ガス供給ライン24は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス(例えばHeガス)を、静電チャック20の上面と基板Wの裏面との間の間隙に供給する。
【0052】
基板処理装置1は、上部電極30を更に備える。上部電極30は、基板支持器14の上方に設けられている。上部電極30は、部材32を介して、チャンバ本体12の上部に支持されている。部材32は、絶縁性を有する9材料から形成される。上部電極30と部材32は、チャンバ本体12の上部開口を閉じている。
【0053】
上部電極30は、天板34(シャワーヘッドSH)及び支持体36を含み得る。天板34(シャワーヘッドSH)及び支持体36は、一例の電極ユニットを構成する。天板34(シャワーヘッドSH)の下面(第1の面BD1)は、内部空間10sの側の面であり、内部空間10sを画成する。天板34(シャワーヘッドSH)の上面(第2の面BD2)は、内部空間10sに面しない(すなわちプラズマに暴露されない)面である。天板34(シャワーヘッドSH)の上面(第2の面BD2)には、耐腐食性の膜CR(
図1参照)が形成されている。天板34(シャワーヘッドSH)の母材は、例えばシリコンや炭化シリコン等の導電性材料や、シリコン酸化物(例えばクォーツ)等の絶縁性材料から構成され得る。天板34(シャワーヘッドSH)は、天板34(シャワーヘッドSH)をその板厚方向に貫通する複数のガス吐出孔34a(ガス孔GH)を有する。ガス吐出孔34a(ガス孔GH)を規定する天板34の内側面(内側面BD3)には、耐腐食性の膜CR(
図1参照)が形成されている。
【0054】
支持体36は、天板34(シャワーヘッドSH)の上面(第2の面)上に当該天板34と対向するようにして配置される。支持体36は、天板34(シャワーヘッドSH)の周縁部を例えばボルトで締結する又はクランプ部材で挟み込む等により着脱自在に支持する。一例では、支持体36の下面(天板34と対向する面)に静電チャックを設けて、当該静電チャックにより天板34の上面を吸着して保持してよい。静電チャックは、導電膜からなる電極板を一対の誘電膜の間に挟み込み、当該電極板に印加される電圧により静電力を発生させるように構成してよい。支持体36は、例えば、陽極酸化処理がされたアルミニウムやアルミニウム合金などの導電性材料から形成される。支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。支持体36は、ガス拡散室36aから下方に延びる複数のガス孔36bを有する。複数のガス孔36bは、複数のガス吐出孔34aにそれぞれ連通している。支持体36には、ガス導入口36cが形成されている。ガス導入口36cは、ガス拡散室36aに接続している。ガス導入口36cには、基板処理装置1の外部に設けられたガス供給管38が接続されている。ガス拡散室36a、複数のガス孔36b及びガス導入口36cは、一例のガス供給路を構成する。
【0055】
ガス供給管38には、流量制御器群41及びバルブ群42を介して、ガスソース群40が接続されている。なお、ガス供給管38と同様、流量制御器群41、バルブ群42及びガスソース群40は、基板処理装置1の外部に設けられている。ガスソース群40は、複数のガスソースを含む。複数のガスソースは、処理ガスのソースを含む。流量制御器群41は、複数の流量制御器を含む。流量制御器群41の複数の流量制御器の各々は、マスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器である。バルブ群42は、複数の開閉バルブを含む。ガスソース群40の複数のガスソースの各々は、流量制御器群41の対応の流量制御器及びバルブ群42の対応の開閉バルブを介して、ガス供給管38に接続されている。ガス供給管38、流量制御器群41、バルブ群42及びガスソース群40は、基板処理装置1とともに基板処理システムを構成する。
【0056】
基板処理装置1では、チャンバ本体12の内壁面及び支持部13の外周に沿って、シールド46が着脱自在に設けられている。シールド46は、チャンバ本体12に反応副生物が付着することを防止する。シールド46は、例えば、アルミニウムから形成された母材の表面に耐腐食性を有する膜を形成することにより構成される。耐腐食性を有する膜は、酸化イットリウムなどのセラミックから形成され得る。
【0057】
支持部13とチャンバ本体12の側壁との間には、バッフルプレート48が設けられている。バッフルプレート48は、例えば、アルミニウムから形成された部材の表面に耐腐食性を有する膜(酸化イットリウムなどの膜)を形成することにより構成される。バッフルプレート48には、複数の貫通孔が形成されている。バッフルプレート48の下方、且つ、チャンバ本体12の底部には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、圧力調整弁及びターボ分子ポンプなどの真空ポンプを含む。
【0058】
基板処理装置1は、高周波電源62及びバイアス電源64を備えている。高周波電源62は、高周波電力HFを発生する電源である。高周波電力HFは、プラズマの生成に適した第1の周波数を有する。第1の周波数は、例えば27MHz~100MHzの範囲内の周波数である。高周波電源62は、整合器66及び電極プレート16を介して下部電極18に接続されている。整合器66は、高周波電源62の負荷側(下部電極18側)のインピーダンスを高周波電源62の出力インピーダンスに整合させるための回路を有する。なお、高周波電源62は、整合器66を介して、上部電極30に接続されていてもよい。高周波電源62は、一例のプラズマ生成部を構成している。
【0059】
バイアス電源64は、電気バイアスを発生する電源である。バイアス電源64は、下部電極18に電気的に接続されている。電気バイアスは、第2の周波数を有する。第2の周波数は、第1の周波数よりも低い。第2の周波数は、例えば400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数である。電気バイアスは、高周波電力HFと共に用いられる場合には、基板Wにイオンを引き込むために基板支持器14に与えられる。一例では、電気バイアスは、下部電極18に与えられる。電気バイアスが下部電極18に与えられると、基板支持器14上に載置された基板Wの電位は、第2の周波数で規定される周期内で変動する。なお、電気バイアスは、静電チャック20内に設けられたバイアス電極に与えられてもよい。
【0060】
基板処理装置1においてプラズマ処理が行われる場合には、ガスが内部空間10sに供給される。また、高周波電力HF及び/又は電気バイアスが供給されることにより、上部電極30と下部電極18との間で高周波電界が生成される。生成された高周波電界が内部空間10sの中のガスからプラズマを生成する。
【0061】
基板処理装置1は、電源70を更に備えている。電源70は、上部電極30に接続されている。一例において、電源70は、プラズマ処理中、上部電極30に直流電圧又は低周波電力を供給するように構成されてよい。例えば、電源70は、上部電極30に負極性の直流電圧を供給してもよく、低周波電力を周期的に供給してもよい。直流電圧又は低周波電力はパルス波として供給してもよく、連続波として供給してもよい。
【0062】
基板処理装置1は、制御部80を更に備え得る。制御部80は、プロセッサ、メモリなどの記憶部、入力装置、表示装置、信号の入出力インターフェイス等を備えるコンピュータであり得る。制御部80は、基板処理装置1の各部を制御する。制御部80では、入力装置を用いて、オペレータが基板処理装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができる。また、制御部80では、表示装置により、基板処理装置1の稼働状況を可視化して表示することができる。さらに、記憶部には、制御プログラム及びレシピデータが格納されている。制御プログラムは、基板処理装置1で各種処理を実行するために、プロセッサによって実行される。プロセッサは、制御プログラムを実行し、レシピデータに従って基板処理装置1の各部を制御する。一つの例示的実施形態において、制御部80の一部又は全てが基板処理装置1の外部の装置の構成の一部として設けられてよい。
【0063】
<基板Wの一例>
図4は、基板Wの断面構造の一例を示す図である。基板Wは、基板処理装置1で処理される基板の一例である。基板Wは、例えば、下地膜UF、被エッチング膜EF及びマスク膜MKがこの順で積層されて形成されてよい。
【0064】
下地膜UFは、例えば、シリコンウェハやシリコンウェハ上に形成された有機膜、誘電体膜、金属膜、半導体膜等でよい。下地膜UFは、複数の膜が積層されて構成されてよい。
【0065】
被エッチング膜EFは、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜(SiON膜)、Si-ARC膜等のシリコン含有膜でよい。シリコン含有膜は、多結晶シリコン膜を含んでよい。被エッチング膜EFは、複数の膜が積層されて構成されてよい。例えば、被エッチング膜EFは、シリコン酸化膜、多結晶シリコン膜及びシリコン窒化膜からなる群から選択される少なくとも2種が積層した積層膜であってよい。一例では、被エッチング膜EFは、シリコン酸化膜と多結晶シリコン膜とが交互に積層されて構成されてよい。また、一例では、被エッチング膜EFは、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが交互に積層されて構成されてよい。
【0066】
下地膜UF及び/又は被エッチング膜EFは、CVD法、スピンコート法等により形成されてよい。下地膜UF及び/又は被エッチング膜EFは、平坦な膜であってよく、また、凹凸を有する膜であってもよい。
【0067】
マスク膜MKは、被エッチング膜EF上に形成されている。マスク膜MKは、被エッチング膜EF上において少なくとも1つの開口OPを規定する。開口OPは、被エッチング膜EF上の空間であって、マスク膜MKの側壁S1に囲まれている。すなわち、
図4において、被エッチング膜EFは、マスク膜MKによって覆われた領域と、開口OPの底部において露出した領域とを有する。
【0068】
開口OPは、基板Wの平面視(基板Wを
図4の上から下に向かう方向に見た場合)において、任意の形状を有してよい。当該形状は、例えば、穴形状や線形状、穴形状と線形状との組み合わせであってよい。マスク膜MKは、複数の側壁S1を有し、複数の側壁S1が複数の開口OPを規定してもよい。複数の開口OPは、それぞれ線形状を有し、一定の間隔で並んでライン&スペースのパターンを構成してもよい。また、複数の開口OPは、それぞれ穴形状を有し、アレイパターンを構成してもよい。
【0069】
マスク膜MKは、例えば、有機膜や金属含有膜である。有機膜は、例えば、スピンオンカーボン膜(SOC)、アモルファスカーボン膜、フォトレジスト膜でよい。金属含有膜は、例えば、タングステン、タングステンカーバイド、タングステンシリサイド、窒化チタンを含んでよい。マスク膜MKは、CVD法、スピンコート法等により形成されてよい。開口OPは、マスク膜MKをエッチングすることで形成されてよい。マスク膜MKは、リソグラフィによって形成されてもよい。
【0070】
<基板処理方法の一例>
図5は、基板処理装置1における基板処理方法の一例(以下「本処理方法」という。)を示すフローチャートである。本処理方法は、基板Wの被エッチング膜EFをエッチングするために、基板Wが配置されたチャンバ内に処理ガスを供給してプラズマを生成する例である。本処理方法は、基板を準備する工程(ステップST1)と、処理ガスの供給をする工程(ステップST2)と、プラズマを生成する工程(ステップST3)とを含む。以下では、
図3に示す制御部80が基板処理装置1の各部を制御して、
図4に示す基板Wに対して本処理方法を実行する場合を図例に説明する。
【0071】
(ステップST1:基板の準備)
ステップST1において、基板Wをチャンバ10の内部空間10s内に準備する。内部空間10s内において、基板Wは、基板支持器14の上面に配置され、静電チャック20により保持される。基板Wの各構成を形成するプロセスの少なくとも一部は、内部空間10s内で行われてよい。また、基板Wの各構成の全部又は一部が基板処理装置1の外部の装置又はチャンバで形成された後、基板Wが内部空間10s内に搬入され、基板支持器14の上面に配置されてもよい。
【0072】
(ステップST2:処理ガスの供給)
ステップST2において、ガス供給部から内部空間10s内に処理ガスを供給する。処理ガスは、フッ素含有ガスを含んでよい。フッ素含有ガスは、F2、CF4、SF6、NF3、XeF2、WF6、SiF4、TaF5、IF7、HF、ClF3、ClF5、BrF5、AsF5、NF5、PF5、NbF5、BiF5、UF5などのガスであってよく、F2、XeF2、WF6、MoF6、IF7、HF、ClF3などのガスであってよい。また、フッ素含有ガスは、プラズマ処理中に、チャンバ10内でフッ化水素(HF)種を生成可能なガスであってよい。HF種は、フッ化水素のガス、ラジカル及びイオンの少なくともいずれかを含む。一例では、フッ素含有ガスは、HFガス又はハイドロフルオロカーボンガスであってよい。また、フッ素含有ガスは、水素源及びフッ素源を含む混合ガスであってもよい。水素源は、例えば、H2、NH3、H2O、H2O2又はハイドロカーボン(CH4、C3H6等)であってよい。フッ素源は、NF3、SF6、WF6、XeF2、フルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンであってよい。以下、これらのフッ素含有ガスを「HF系ガス」ともいう。HF系ガスを含む処理ガスから生成されるプラズマは、HF種(エッチャント)を多く含む。HF系ガスは、主エッチャントガスでもよい。HF系ガスは、処理ガス中の反応ガスの総流量に占める流量割合が最も大きくてよく、例えば、反応ガスの総流量に対して50体積%以上、60体積%以上、70体積%以上、80体積%以上、90体積%以上でよい。また、HF系ガスは、反応ガスの総流量に対して96体積%以下でよい。本実施形態においては、反応ガスには、Ar等の貴ガスは含まれない。別の例では処理ガスは、反応ガスに加えて貴ガスを含んでよい。
【0073】
内部空間10s内に供給された処理ガスの圧力は、チャンバ本体12に接続された排気装置50の圧力調整弁を制御することで調整される。処理ガスの圧力は、例えば、5mTorr(0.7Pa)以上100mTorr(13.3Pa)以下、10mTorr(1.3Pa)以上60mTorr(8.0Pa)以下、又は20mTorr(2.7Pa)以上40mTorr(5.3Pa)以下でよい。
【0074】
(ステップST3:プラズマの生成)
次に、ステップST3において、プラズマ生成部(高周波電源62及び/又はバイアス電源64)から高周波電力及び/又は電気バイアスを供給する。これにより、上部電極30と基板支持器14との間で高周波電界が生成され、内部空間10s内の処理ガスからプラズマが生成される。生成されたプラズマ中のイオン、ラジカルといった活性種が基板Wに引き寄せられて、基板Wの被エッチング膜EFがエッチングされる。
【0075】
なお、プラズマ生成中、支持体36の下面(第3の面)361(
図6参照)の温度は、220℃以下に制御してよく、200℃以下に制御してよく、180℃以下に制御してよく、160℃以下に制御してよい。これにより、フッ素含有ガスによる支持体36の下面(第3の面)361の腐食をより効果的に抑制することができる。支持体36の下面(第3の面)361の温度は、例えば、支持体36内に設けた流路に、熱交換媒体(例えば冷媒)を供給することにより制御することができる。
【0076】
<上部電極における処理ガスの流れ>
図6は、上部電極30における処理ガスの流れを説明するための図である。ステップST2において、ガスソース群40及びガス供給管38から上部電極30を介して、内部空間10s内に処理ガスが供給される。このとき、上部電極30では、支持体36のガス供給路(ガス導入口36c、ガス拡散室36a、複数のガス孔36b)から天板34(シャワーヘッドSH)のガス吐出孔34a(ガス孔GH)に向かって処理ガスが流れる(
図6の矢印A1)。
【0077】
図6に示すように、支持体36と天板34(シャワーヘッドSH)との間に隙間GPが生じている場合がある。この場合、支持体36のガス孔36bから天板34(シャワーヘッドSH)のガス吐出孔34a(ガス孔GH)に向かって流れる処理ガスの一部は、この隙間GPに向かって流れ得る(
図6の矢印B1及びB2)。
【0078】
すなわち、
図6に示すように、処理ガスは、天板34(シャワーヘッドSH)のガス吐出孔34a(ガス孔GH)内と、天板34(シャワーヘッドSH)の上面(第2の面BD2)上とを流れ得る。ここで、天板34の上面(第2の面BD2)は、膜CRが形成され、第1の耐腐食性材料により構成されている。そのため、処理ガスが腐食性のガス(例えば、プラズマ化される前でも高い反応性を有するHF系ガス)を含む場合であっても、天板34の上面の腐食を抑制し得る。
図6に示すように、ガス吐出孔34a(ガス孔GH)を規定する側面(内側面BD3)にも膜CRが形成されている場合、当該側面の腐食も抑制し得る。これにより、天板34(シャワーヘッドSH)の腐食に伴う上部電極30の導電不良やパーティクルの発生(内部空間10sの汚染)を抑制することができる。
【0079】
一方、天板34(シャワーヘッドSH)の下面(第1の面BD1)は、第1の耐腐食性材料からなる膜は形成されていなくてもよい。当該下面(第1の面BD1)は、内部空間10sに面しており、内部空間10s内で生成されたプラズマに暴露される。そのため、当該下面(第1の面BD1)が処理ガスにより腐食したとしても、当該腐食箇所は、例えばチャンバ10のクリーニング時にプラズマに暴露することで比較的容易に除去し得る。これに対し、天板34の上面(第2の面BD2)は、チャンバ内で生成されるプラズマに直接暴露される面ではなく、かかる除去手段はとり得ない上、腐食され得る面積が大きく、上述した導電不良やパーティクルの問題を生じやすい。そのため、天板34の上面(第2の面BD2)を第1の耐腐食性材料により構成し、表面の腐食自体を抑制することが有効である。また、ガス吐出孔34a(ガス孔GH)を規定する側面(内側面BD3)の一部(内部空間10sの近傍)は、プラズマに暴露され得るとしても、当該側面全部について上記除去手段は取りえないため、当該側面を第1の耐腐食性材料により構成し、腐食自体を抑制することが有効である。なお、本体BD自体を第1の耐腐食性材料で構成した場合や、本体BDを、カーボンを含む基材と、当該基材の表面を覆うシリコンカーバイド膜とから構成した場合には、第1の面BD1及び内側面BD3は、第1の耐腐食性材料から構成されることとなる。
【0080】
本開示の各実施形態は、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく種々の変形をなし得る。例えば、
図6に示す支持体36の下面(第3の面)361(隙間GPを規定する面)やガス供給路(ガス導入口36c、ガス拡散室36a、複数のガス孔36b)の内周面及び
図6に示すガス供給管38の内周面は、いずれも、処理ガスによって腐食され得る一方で、チャンバ内で生成されるプラズマに暴露される部分ではなく、プラズマによる腐食の除去が困難な部分である。そのため、これらの面ないし内周面の少なくとも一部を耐腐食性材料で構成し、腐食自体を抑制するようにしてよい。この場合、耐腐食性材料は、第1の耐腐食性材料と同一であってもよく、異なってもよい。例えば、支持体36の下面(第3の面)361に第2の耐腐食性材料の膜を形成してもよく、また支持体36自体を第2の耐腐食性材料で構成してもよい。第2の耐腐食性材料は、半封孔処理された陽極酸化皮膜であってよい。陽極酸化皮膜は、一例では、アルミニウム製の支持体36の下面(第3の面)361を陽極酸化処理した後、半封孔処理することにより形成される酸化アルミニウム膜であってよい。半空孔処理の条件は、特に限定されることなく、水蒸気や沸騰水を用いた化学的封孔処理であってもよく、有機物質や無機物質を用いた電解処理により行われる電気化学的封孔処理であってもよい。なお、半封孔処理は、陽極酸化処理後に処理面に生じるボア(空孔)を不完全に封孔する処理である。半封孔処理では、処理面の酸化物が膨張しても、膨張した酸化物の逃げ場を確保することができる。このため、プラズマからの入熱により、支持体36が熱膨張した場合であっても支持体36にクラックが発生することを抑制できる。半封孔処理後における支持体36の下面(第3の面)361の空孔率は、5%以上であってよく、10%以上であってよく、15%以上であってよい。空孔率が10%未満では、プラズマ処理中、プラズマからの入熱により、支持体36にクラックが発生しやすくなる場合がある。また、支持体36の下面(第3の面)361の空孔率は、50%以下であってよく、40%以下であってよく、30%以下であってよい。空孔率が50%を超えると、支持体36の下面(第3の面)361の物理的強度が低下する場合がある。なお、空孔率は、走査型電子顕微鏡を用いて支持体36を断面観察した場合に、空孔の開口面積を、支持体36の下面(第3の面)361の表面積で除することにより求めることができる。
【0081】
また例えば、支持体36のガス供給路及び/又はガス供給管38の内周面に第3の耐腐食性材料の膜を形成してもよく、また支持体36のガス供給路及び/又はガス供給管38自体を第3の耐腐食性材料で構成してもよい。この場合、第3の耐腐食性材料は、第1の耐腐食性材料又は第2の耐腐食性材料と同一であってもよく、異なってもよい。
【0082】
また例えば、基板処理装置1は、シャワーヘッドSHに加えて、次述するガス供給ユニットGUを備えてもよい。なお、ガス供給ユニットGUは、上述の容量結合型の基板処理装置1のほか、誘導結合型プラズマやマイクロ波プラズマ等、任意のプラズマ源を用いた他の基板処理装置に適用可能である。
【0083】
図7Aは、一つの例示的実施形態にかかるガス供給ユニットGUを示す斜視図である。
図7Bはガス供給ユニットGUの平面図である。
図7Cは、
図7Bのガス供給ユニットGUのA-A'断面図である。ガス供給ユニットGUは、チャンバ内にガスを供給するためのガス供給手段の一例である。ガス供給ユニットGUは、チャンバの内壁に沿ってチャンバ取り付け可能である。ガス供給ユニットGUは、チャンバに複数個設けてもよい。
【0084】
図7A及び
図7Bに示すように、ガス供給ユニットGUは、環状の本体部100を有している。本体部100は、例えば、シリコン含有材料で構成されてよい。シリコン含有材料は、例えば、シリコンや炭化シリコン等の導電性材料でも、シリコン酸化物(例えばクォーツ)等の絶縁性材料でもよい。本体部100は、半径方向内側の側面100Aと、半径方向外側の側面100Bとを有し、側面100B側がチャンバの内壁に取り付けられると、側面100A側がチャンバ内の処理空間に面するようになっている。
【0085】
図7Cに示すように、本体部100は、中空体であり、本体部100の内部を周方向に1周するようにガス供給路102が設けられている。ガス供給路102は、小径のガス孔104と連通している。ガス孔104は、本体部100の半径方向内側の側面100Aに向かって開口している。ガス孔104は、本体部100の周方向に沿って所定の間隔で複数個設けられている。
【0086】
ガス供給路102は、ガス導入口(図示せず)を少なくとも一つ有している。ガス導入口は、外部のガスソース群からガス供給管を介してチャンバに供給される処理ガスが導入される。ガス導入口を介してガス供給路102内に流入する処理ガスは、ガス供給路102内を周方向に沿って流れ、複数のガス孔104のいずれかから吐出される
図7Cに示す例では、ガス孔104が設けられた側面100Aの下部は傾斜を有しているため、ガス孔104から吐出される処理ガスは斜め下方向に吐出される。
【0087】
本体部100の内周面100Cは、第1の耐腐食性材料で構成されている。
図7Cに示すように、本体部100の内周面100Cは、上述した第1の耐腐食性材料からなる膜CRが形成されている。一例では、膜CRを形成することに代えて又は加えて本体部100自体を第1の耐腐食性材料で構成してよい。本体部100の内周面100Cは、処理ガスによって腐食され得る一方で、チャンバ内で生成されるプラズマに暴露される部分ではなく、プラズマによる腐食の除去が困難な部分である。そのため、本体部100の内周面100Cを第1の耐腐食性材料により構成し、腐食自体を抑制することが有効である。なお、ガス孔104を第1の耐腐食性材料で構成してよい。
【0088】
本開示の実施形態は、以下の態様をさらに含む。
【0089】
(付記1)
プラズマ処理用のシャワーヘッドであって、
第1の面と、前記第1の面と反対側の第2の面と、複数の内側面とを有する本体部であって、前記複数の内側面は、前記第1の面から前記第2の面に亘って前記本体部を貫通する複数のガス孔を規定する、本体部を備え、
前記第2の面は、第1の耐腐食性材料で構成されている、
シャワーヘッド。
【0090】
(付記2)
前記第1の耐腐食性材料は、前記本体部を構成する材料よりも、F2、XeF2、WF6、MoF6、IF7、HF、ClF3からなる群から選択される少なくとも1種を含むフッ素含有ガスに対する腐食耐性が高い材料である、付記1に記載のシャワーヘッド。
【0091】
(付記3)
前記第1の耐腐食性材料は、前記本体部を構成する材料よりもフッ化水素ガスに対する腐食耐性が高い材料である、付記1に記載のシャワーヘッド。
【0092】
(付記4)
前記第2の面に、前記第1の耐腐食性材料からなる膜を有する、付記1乃至付記3のいずれか1項に記載のシャワーヘッド。
【0093】
(付記5)
前記複数の内側面に、前記膜をさらに有する、付記4に記載のシャワーヘッド。
【0094】
(付記6)
前記膜が前記第1の面に形成されていない、付記4又は付記5に記載のシャワーヘッド。
【0095】
(付記7)
前記本体部が、前記第1の耐腐食性材料で構成されている、付記1に記載のシャワーヘッド。
【0096】
(付記8)
前記第1の耐腐食性材料は、炭素含有材料又は金属含有材料である、付記1乃至付記7のいずれか1項に記載のシャワーヘッド。
【0097】
(付記9)
前記第1の耐腐食性材料は、フッ化炭素樹脂、カーボン、フッ素添加カーボン、ポリイミド樹脂及びシリコンカーバイドからなる群から選択される少なくとも1種を含む、付記8に記載のシャワーヘッド。
【0098】
(付記10)
前記第1の耐腐食性材料は、金属、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化物及び合金からなる群から選択される少なくとも1種を含む、付記8に記載のシャワーヘッド。
【0099】
(付記11)
前記本体部は、シリコン含有材料で構成されている、付記1乃至付記10のいずれか1項に記載のシャワーヘッド。
【0100】
(付記12)
前記シリコン含有材料は、導電性のシリコン含有材料である、付記11に記載のシャワーヘッド。
【0101】
(付記13)
前記シリコン含有材料は、シリコン酸化物である、付記11に記載のシャワーヘッド。
【0102】
(付記14)
前記本体部は、カーボンを含む基材と、前記基材の表面を覆うシリコンカーバイド膜とから構成される、付記11に記載のシャワーヘッド。
【0103】
(付記15)
前記本体部は、略円板状であり、前記第1の面が円板の一方の面を構成し、前記第2の面が当該円板の他方の面を構成する、付記1乃至付記14のいずれか1項に記載のシャワーヘッド。
【0104】
(付記16)
付記1乃至付記15のいずれか1項に記載のシャワーヘッドと、
前記シャワーヘッドの前記第2の面側に配置され、前記シャワーヘッドの前記複数のガス孔に処理ガスを供給するためのガス供給路を有する導電性の支持体と、を備える電極ユニット。
【0105】
(付記17)
前記支持体の、前記シャワーヘッドの前記第2の面に対向する第3の面は第2の耐腐食性材料で構成されている、付記16に記載の電極ユニット。
【0106】
(付記18)
前記第2の耐腐食性材料は、半封孔処理された陽極酸化皮膜である、付記17に記載の電極ユニット。
【0107】
(付記19)
プラズマ処理用のガス供給ユニットであって、
環状の本体部と、前記本体部の半径方向内側に、周方向に沿って複数設けられたガス孔と、前記本体部の内部に設けられ、前記複数のガス孔に連通するガス供給路と、を備え、
前記ガス供給路は、少なくとも内周面が第1の耐腐食性材料で構成されている、
ガス供給ユニット。
【0108】
(付記20)
プラズマ処理用のチャンバと、
前記チャンバ内に設けられた基板支持器と、
前記基板支持器に前記シャワーヘッドの前記第1の面が対向するように前記チャンバの上部に配置された付記16又は付記17に記載の電極ユニットと、
プラズマ生成部と、
制御部と、
を備える基板処理装置。
【0109】
(付記21)
プラズマ処理用のチャンバと、
前記チャンバ内に設けられた基板支持器と、
前記チャンバの内壁に沿って取り付けられた付記19に記載のガス供給ユニットと、
プラズマ生成部と、
制御部と、
を備える基板処理装置。
【0110】
(付記22)
前記チャンバは、フッ化水素ガスを含む処理ガスを供給するためのガスソース群と接続しており、
前記制御部は、
前記支持体の、前記シャワーヘッドの前記第2の面に対向する第3の面の温度を200℃以下に制御する工程と、
前記基板支持器上に、シリコン含有膜を有する基板を配置する工程と、
前記ガスソース群から前記チャンバ内に、前記処理ガスを供給する工程と、
前記プラズマ生成部により、前記処理ガスからプラズマを生成して、前記シリコン含有膜をエッチングする工程と、
を含む処理を実行するように構成される、付記20又は付記21に記載の基板処理装置。
【0111】
(付記23)
付記20又は付記21に記載の基板処理装置値と、
ガスソース群と、
前記ガスソース群から前記基板処理装置に処理ガスを供給するためのガス供給管と、
を含み、
前記ガス供給管は、少なくとも内周面が第3の耐腐食性材料で構成されている、
基板処理システム。
【0112】
(付記24)
プラズマ処理装置のシャワーヘッドを支持するための支持体であって、
前記支持体は、前記シャワーヘッドに処理ガスを供給するためのガス供給路を有し、
前記シャワーヘッドを支持する支持面は、第2の耐腐食性材料で構成されている、
支持体。
【0113】
(付記25)
前記第2の耐腐食性材料は、半封孔処理された陽極酸化皮膜である、付記24に記載の支持体。
【符号の説明】
【0114】
1……基板処理装置、10……チャンバ、10s……内部空間、12……チャンバ本体、14……基板支持器、16……電極プレート、18……下部電極、20……静電チャック、30……上部電極、34……天板、34a……ガス吐出孔、36……支持体、38……ガス供給管、50……排気装置、62……高周波電源、64……バイアス電源、80……制御部、CT……制御部、EF……被エッチング膜、MK……マスク膜、OP……開口、UF……下地膜、W……基板、SH……天板、CR……耐腐食性の膜、BD……本体部、BD1……第1の面、BD2……第2の面、BD3……内側面、GH……ガス孔、GH……ガス供給ユニット