(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185571
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】研磨パッドおよびこれを用いた半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221207BHJP
B24B 37/24 20120101ALI20221207BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20221207BHJP
C08K 5/18 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H01L21/304 622F
B24B37/24 C
C08L75/04
C08K5/18
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082432
(22)【出願日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0071644
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】505232852
【氏名又は名称】エスケーシー ソルミックス カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SKC solmics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1043,Gyeonggi-daero,Pyeongtaek-si,Gyeonggi-do 17784, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ジョンウク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ウンソン
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ジャンウォン
(72)【発明者】
【氏名】ホ、ヘヨン
【テーマコード(参考)】
3C158
4J002
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CA01
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3C158ED00
4J002CH01X
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4J002GQ05
4J002GT00
5F057AA03
5F057AA16
5F057AA21
5F057AA24
5F057BA11
5F057BA15
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5F057EB09
5F057EB13
5F057EB27
5F057EB30
5F057FA37
5F057FA39
(57)【要約】 (修正有)
【課題】半導体基板の表面上に現れる残渣、スクラッチ及びチャターマーク特性の表面欠陥を改善することができ、研磨率をさらに向上させ得る研磨パッド及びその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体の化学機械的平坦化(chemical mechanical planarization、CMP)工程に用いられる研磨パッドは、特定成分の硬化剤を用いて形成された研磨層を有することにより、低硬度を実現することができ、研磨パッドの表面粗さ減少率(RSk(%))及び回復弾性抵抗指数(RERI)を特定範囲に調節する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨層を含む研磨パッドにおいて、
前記研磨層は、ウレタン系プレポリマーと、硬化剤と、発泡剤とを含む組成物の硬化物を含み、
前記硬化剤は、エーテル(ether)結合を含む3級アミン系ポリオールを含み、
前記研磨パッドは、
下記式1で表示される表面粗さ減少率(RSk(%))が50%未満であり、
下記式2で表示される回復弾性抵抗指数(RERI)が40以下である、研磨パッド:
[式1]
前記式1において、
Sk
1は、研磨前の研磨パッドのコア粗さ深さ(core roughness depth)であり、
Sk
2は、4.0psiのキャリア加圧条件、87rpmのキャリア回転速度、および93rpmの定盤回転速度の条件下で、シリコン酸化膜を含む半導体基板に対してか焼セリアスラリーを250ml/分の速度で噴射してシリコン酸化膜を60秒間研磨した後に測定した研磨パッドのコア粗さ深さであり、
Sk
1およびSk
2のそれぞれは、研磨前研磨パッドおよび研磨後研磨パッドについて光学用表面粗さ測定器で測定したデータをISO25178-2規格に基づいて計算した値であり、
[式2]
前記式2において、
RSk(%)は、前記式1で定義した通りであり、
H
25は、25℃にて測定した研磨パッドのショアD硬度であり、
回復弾性抵抗指数(RERI)は、単位を除いた数値間の比である。
【請求項2】
前記Sk1とSk2との差(Sk1-Sk2)が15μm以下である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記3級アミン系ポリオールが下記構造式で表される、請求項1に記載の研磨パッド:
[構造式]
前記構造式において、nは1~10の整数である。
【請求項4】
前記硬化剤が、芳香族アミン化合物をさらに含む、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記3級アミン系ポリオールの含有量が、重量を基準に前記芳香族アミン化合物の含有量と同一かそれ以上である、請求項4に記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記3級アミン系ポリオールが、400g/mol~3000g/molの重量平均分子量を有し、
前記芳香族アミン化合物が、450g/mol~600g/molの重量平均分子量を有する、請求項4に記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記芳香族アミン化合物は、ジエチルトルエンジアミン、3,5-ジメチルチオ-2,4-トルエンジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン、N,N'-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ジフェニルメタン、4,4'-メチレン-ビス-(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート、N,N'-ジアルキルジアミノジフェニルメタン、p,p'-メチレンジアニリン、m-フェニレンジアミン、4,4'-メチレン-ビス-(2,6-ジエチルアニリン)、4,4'-メチレン-ビス-(2,3-ジクロロアニリン)、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジエチル-5,5'-ジメチルジフェニルメタン、2,2',3,3'-テトラクロロジアミノジフェニルメタン、トリメチレングリコールジ-p-アミノベンゾエート、3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルエステル、ビス(4-アミノ-2-クロロ-3,5-ジエチルフェニル)メタン、プロパンジオールビスp-アミノベンゾエート、ブチルジアミノクロロベンゾエート、メチレンビス-メチルアントラニレート、クロロジエチルトルエンジアミン、メチレンビス-o-エチルアニリン、およびこれらの異性体からなる群より選択される1種以上を含む、請求項4に記載の研磨パッド。
【請求項8】
前記研磨パッドは、下記の特性から選択された少なくとも1つの特性を満足する、請求項1に記載の研磨パッド:
40ショアD~60ショアDの25℃における表面硬度、
10N/mm2~25N/mm2の引張強度、
80%~320%の伸び率、および
1600Å/分~3300Å/分の酸化膜に対する研磨率。
【請求項9】
ウレタン系プレポリマーと、硬化剤と、発泡剤とを混合して研磨層製造用組成物を調製する段階と、
前記研磨層製造用組成物をモールド内に注入し硬化して、研磨層を含む研磨パッドを得る段階とを含み、
前記硬化剤は、エーテル(ether)結合を含む3級アミン系ポリオールを含み、
前記研磨パッドは、
下記式1で表示される表面粗さ減少率(RSk(%))が50%未満であり、下記式2で表示される回復弾性抵抗指数(RERI)が40以下である、研磨パッドの製造方法:
[式1]
前記式1において、
Sk
1は、研磨前の研磨パッドのコア粗さ深さであり、
Sk
2は、4.0psiのキャリア加圧条件、87rpmのキャリア回転速度、および93rpmの定盤回転速度の条件下で、シリコン酸化膜を含む半導体基板に対してか焼セリアスラリーを250ml/分の速度で噴射してシリコン酸化膜を60秒間研磨した後に測定した研磨パッドのコア粗さ深さであり、
Sk
1およびSk
2のそれぞれは、研磨前研磨パッドおよび研磨後研磨パッドについて光学用表面粗さ測定器で測定したデータをISO25178-2規格に基づいて計算した値であり、
[式2]
前記式2において、
RSk(%)は、前記式1で定義した通りであり、
H
25は、25℃にて測定した研磨パッドのショアD硬度であり、
回復弾性抵抗指数(RERI)は、単位を除いた数値間の比である。
【請求項10】
研磨層を含む研磨パッドを提供する段階と、
前記研磨層の研磨面に研磨対象の被研磨面が当接するように相対回転させながら前記研磨対象を研磨する段階とを含み、
前記研磨パッドは、ウレタン系プレポリマーと、硬化剤と、発泡剤とを含む組成物の硬化物を含む研磨層を含み、
前記硬化剤は、エーテル結合を含む3級アミン系ポリオールを含み、
前記研磨パッドは、
下記式1で表示される表面粗さ減少率(RSk(%))が50%未満であり、
下記式2で表示される回復弾性抵抗指数(RERI)が40以下である、半導体素子の製造方法:
[式1]
前記式1において、
Sk
1は、研磨前の研磨パッドのコア粗さ深さであり、
Sk
2は、4.0psiのキャリア加圧条件、87rpmのキャリア回転速度、および93rpmの定盤回転速度の条件下で、シリコン酸化膜を含む半導体基板に対してか焼セリアスラリーを250ml/分の速度で噴射してシリコン酸化膜を60秒間研磨した後に測定した研磨パッドのコア粗さ深さであり、
Sk
1およびSk
2のそれぞれは、研磨前研磨パッドおよび研磨後研磨パッドについて光学用表面粗さ測定器で測定したデータをISO25178-2規格に基づいて計算した値であり、
[式2]
前記式2において、
RSk(%)は、前記式1で定義した通りであり、
H
25は、25℃にて測定した研磨パッドのショアD硬度であり、
回復弾性抵抗指数(RERI)は、単位を除いた数値間の比である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドおよびそれを用いた半導体素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学機械的平坦化(Chemical Mechanical Planarization、CMP)または化学機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing、CMP)工程は、様々な技術分野において様々な目的により行われ得る。CMP工程は、研磨対象の所定の研磨面を対象に行われ、研磨面の平坦化、凝集された物質の除去、結晶格子損傷の解消、スクラッチおよび汚染源の除去などの目的から行われ得る。
【0003】
研磨パッドは、このようなCMP工程において重要な役割を担う必須の原・副資材として、通常、ポリウレタン系の樹脂からなり、表面にスラリーの大きな流動を担う溝(groove)と、微細な流動をサポートする気孔(pore)とを備える。中でも、研磨パッド内の気孔は、空隙を有する固相発泡剤、気相発泡剤、液相発泡剤を用いて形成するか、または化学的反応によりガスを発生させて形成され得る。
【0004】
前記研磨層は、CMP工程中に半導体基板の表面と直接相互作用するため、半導体基板の表面の加工品質に影響を与え、特に研磨層の成分や物性および気孔の形状によってCMP工程の熱的安定性および研磨安定性に影響を与え得る。
【0005】
これを解決するために様々な研究が行われた。例えば、硬化剤として4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)を用いて研磨率および研磨安定性を向上させる方法が研究された。
【0006】
しかし、硬化剤としてMOCAを使用すると、研磨パッドの硬度が高くなり硬化が激しく、表面粗さ減少率が増加してパッドグレージング(glazing)現象が発生して研磨性能が低下し、半導体基板の表面上に現れる残渣(residue)、スクラッチ(scratch)およびチャターマーク(chatter mark)等の表面欠陥が増加すると言う問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第2008-0037719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来技術の問題を解決するために考案されたものである。
本発明の目的は、特定成分の硬化剤を用いて形成された研磨層を含むことにより、低硬度を実現することができ、研磨パッドの表面粗さ低減率および回復弾性指数を特定範囲に制御することにより、半導体基板の表面上に現れる残渣、スクラッチ、およびチャターマーク特性の表面欠陥を改善することができ、研磨率をさらに向上させ得る研磨パッドおよびその製造方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、前記研磨パッドを用いて研磨対象膜質(半導体基板)上に有用な半導体素子を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、研磨層を含む研磨パッドにおいて、前記研磨層は、ウレタン系プレポリマーと、硬化剤と、発泡剤とを含む組成物の硬化物を含み、前記硬化剤はエーテル(ether)結合を含む3級アミン系ポリオールを含み、前記研磨パッドは、下記式1で表示される表面粗さ減少率(RSk(%))が50%未満であり、下記式2で表示される回復弾性抵抗指数(RERI)が40以下である、研磨パッドを提供する。
【0011】
[式1]
前記式1において、
Sk
1は、研磨前の研磨パッドのコア粗さ深さ(core roughness depth)であり、
Sk
2は、4.0psiのキャリア加圧条件、87rpmのキャリア回転速度、および93rpmの定盤回転速度の条件下で、シリコン酸化膜を含む半導体基板に対してか焼セリアスラリーを250ml/分の速度で噴射してシリコン酸化膜を60秒間研磨した後に測定した研磨パッドのコア粗さ深さであり、
Sk
1およびSk
2のそれぞれは、研磨前研磨パッドおよび研磨後研磨パッドについて光学用表面粗さ測定器で測定したデータをISO25178-2規格に基づいて計算した値である。
【0012】
[式2]
前記式2において、
RSk(%)は、前記式1で定義した通りであり、
H
25は、25℃にて測定した研磨パッドのショアD硬度であり、
前記回復弾性抵抗指数(RERI)は、単位を除いた数値間の比である。
【0013】
また、本発明は、ウレタン系プレポリマーと、硬化剤と、発泡剤とを混合して研磨層製造用組成物を調製する段階と、前記研磨層製造用組成物をモールド内に注入し硬化して、研磨層を含む研磨パッドを得る段階とを含み、前記硬化剤はエーテル結合を含む3級アミン系ポリオールを含み、前記研磨パッドは、前記式1で表示される表面粗さ減少率(RSk(%))が50%未満であり、前記式2で表示される回復弾性抵抗指数(RERI)が40以下である、研磨パッドの製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、研磨層を含む研磨パッドを提供する段階と、前記研磨層の研磨面に研磨対象の被研磨面が当接するよう相対回転させながら前記研磨対象を研磨する段階とを含み、前記研磨パッドはウレタン系プレポリマーと、硬化剤と、発泡剤とを含む組成物の硬化物を含む研磨層を含み、前記硬化剤はエーテル結合を含む3級アミン系ポリオールを含み、前記研磨パッドは、前記式1で表示される表面粗さ減少率(RSk(%))が50%未満であり、前記式2で表示される回復弾性抵抗指数(RERI)が40以下である、半導体素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施例による研磨パッドは、特定成分の硬化剤を用いて形成された研磨層を含むことにより、低硬度を実現することができ、研磨パッドの表面粗さ減少率および回復弾性抵抗指数を特定範囲に制御することにより、研磨パッドの機械的物性の向上はもちろん、半導体基板の表面上に現れる表面欠陥特性を向上させることができ、研磨率をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実現例による半導体素子製造工程の概略的な工程図を示すものである。
【
図2】
図2は、研磨パッドの光学用表面粗さ測定器で測定する際、ISO25178-2規格に基づく面積材料比曲線から導出される表面粗さを説明するための図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実現例による研磨パッドの製造工程のフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の一実現例による半導体素子の製造工程のフローチャートである。
【
図5】
図5の(a)および(b)は、それぞれ実施例1~3および比較例1で製造した研磨パッドの断面を100倍率および300倍率で分析した走査電子顕微鏡(SEM)の写真である。
【
図6】
図6は、一実現例によるウェーハ上の残渣形状を示す写真である。
【
図7】
図7は、一実現例によるウェーハ上のスクラッチ形状を示す写真である。
【
図8】
図8は、一実現例によるウェーハ上のチャターマーク形状を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明についてさらに具体的に説明する。
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、後述の実施例を参照すると明確になることである。しかし、本発明は、以下で開示する実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現されるものであり、本実施例は単に本発明の開示が完全たるものとなるようにし、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範囲によって定義されるのみである。
【0018】
図面において、複数の層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示している。そして、図面において説明の便宜のために、一部の層および領域の厚さを誇張して示している。明細書全体を亘って同一参照番号は同一構成要素を指す。
【0019】
[研磨パッド]
本発明による一実現例において、研磨層を含み、前記研磨層は、ウレタン系プレポリマーと、硬化剤と、発泡剤とを含む組成物の硬化物を含み、前記硬化剤はエーテル(ether)結合を含む3級アミン系ポリオールを含み、前記研磨パッドは、下記式1で表示される表面粗さ減少率(RSk(%))が50%未満であり、下記式2で表示される回復弾性抵抗指数(RERI)が40以下である、研磨パッドを提供する。
【0020】
[式1]
前記式1において、
Sk
1は、研磨前研磨パッドのコア粗さ深さ(core roughness depth)であり、
Sk
2は、4.0psiのキャリア加圧条件、87rpmのキャリア回転速度、および93rpmの定盤回転速度の条件下で、シリコン酸化膜を含む半導体基板に対してか焼セリアスラリーを250ml/分の速度で噴射してシリコン酸化膜を60秒間研磨した後に測定した研磨パッドのコア粗さ深さであり、
Sk
1およびSk
2のそれぞれは、研磨前研磨パッドおよび研磨後研磨パッドについて光学用表面粗さ測定器で測定したデータをISO25178-2規格に基づいて計算した値である。
【0021】
[式2]
前記式2において、
RSk(%)は、前記式1で定義した通りであり、
H
25は、25℃にて測定した研磨パッドのショアD硬度であり、
回復弾性抵抗指数(RERI)は、単位を除いた数値間の比である。
【0022】
半導体製造工程中の研磨工程は、研磨パッド、研磨スラリーおよび研磨対象膜質などが有機的に連携されてなるものであり、通常、前記研磨パッドと前記研磨対象膜質との接触界面に研磨スラリーが供給されることにより行われる。
【0023】
前記研磨パッドは気孔を含む研磨層を含み、前記研磨層はCMP工程中に半導体基板の表面と直接相互作用するため、半導体基板の表面の加工品質に影響を与える。特に、研磨層の成分、具体的に研磨層の主原料物質であるプレポリマーと硬化剤との組成によって硬度、引張強度および伸び率等の機械的物性が変わることとなり、このような物性の中で特に硬度によって、研磨パッドの重要な性能である研磨率のみならず、研磨対象膜質上の表面欠陥(defect)に大きな影響を与える。さらには、前記硬度は、研磨除去速度の均一性(uniformity)にも影響を与える。
【0024】
したがって、これらの研磨層の組成を適切に設計し、物性を所望の範囲に制御することが極めて重要である。
【0025】
具体的に、研磨を行う間、研磨パッド上に研磨スラリーが研磨パッドと半導体基板との間に提供され、研磨スラリー内の化学成分が半導体基板の表面と反応して反応層を生成する。該反応層は、研磨ヘッドと研磨パッドとがそれぞれの駆動軸を中心に互いに回転し、それにより研磨ヘッド上に付着された半導体基板の研磨面と研磨パッドとが互いに密着した状態で摩擦することによって物理的に除去される。
【0026】
ところで、研磨パッドの表面は、半導体基板における反応物、スラリー粒子、異物等が、高い圧力と温度によりガラス質化された後固着して、いわゆるグレージング(glazing)現象が発生し、研磨パッド内の位置によって研磨パッドと半導体基板との間の相対運動距離差により不均一な表面変形が起こることがあり、そうすると、研磨率および表面粗さ等を悪化させ、残渣、スクラッチおよびチャターマークなどとして現れる研磨対象膜質(半導体基板)上の欠陥を増加させる問題が発生し得る。
【0027】
特に、前記グレージング現象が多発すると、半導体基板の被研磨面と接触する面積が増加することとなり、グレージング現象が発生した部分と半導体基板の被研磨面との間にスラリーの研磨粒子等が介入して凝集することにより、欠陥をさらに多く誘発することとなる。
【0028】
したがって、本発明の実現例は、研磨パッドの表面粗さ減少率(RSk(%))および回復弾性抵抗指数(RERI)を特定範囲以下に制御することにより、前記グレージング現象および研磨後研磨パッドの表面変形発生率を下げて、研磨性能および表面欠陥を最小化することに技術的意義がある。
【0029】
本明細書において、前記表面粗さ減少率(RSk(%))とは、研磨前研磨パッドの表面粗さに対する、研磨前と研磨後の研磨パッドの表面粗さ差の比を百分率(パーセント、%)で表したものであり、下記式1で表示し得る。
【0030】
[式1]
前記式1において、
Sk
1は、研磨前の研磨パッドのコア粗さ深さであり、
Sk
2は、4.0psiのキャリア加圧条件、87rpmのキャリア回転速度、および93rpmの定盤回転速度の条件下で、シリコン酸化膜を含む半導体基板に対してか焼セリアスラリーを250ml/分の速度で噴射して、シリコン酸化膜を60秒間研磨した後に測定した研磨パッドのコア粗さ深さであり、
Sk
1およびSk
2のそれぞれは、研磨前研磨パッドおよび研磨後研磨パッドについて光学用表面粗さ測定器で測定したデータをISO25178-2規格に基づいて計算した値である。
【0031】
本明細書において、表面粗さ(surface roughness)とは、研磨パッドの表面が加工または研磨によって形成される研磨パッドの表面粗さのことを意味し、本発明で使用した光学用表面粗さ測定器は、ブルカー(Bruker)社のContour GTモデルである。研磨パッドの表面粗さ測定の詳細条件は、本明細書の実施例を参照する。
【0032】
前記研磨前、研磨工程中、および研磨後の研磨パッドの表面粗さが一定に維持されたとき、グレージング現象が減少して、研磨速度が一定に維持され、半導体基板の表面上に現れる表面欠陥が減少し得る。
【0033】
一例として、
図1を参照すると、前記研磨パッドはCMP工程に使用され、その工程中にヘッド110に付着された半導体基板(ウェーハ)120によって加えられる垂直方向の圧縮力と、プラテン(定盤)130の回転によって生じる水平方向のせん断応力とによって、研磨パッドの表面形状が変形する。
【0034】
前記研磨パッドは、表面にスラリー140の大きな流動を担う溝(groove)と、微細な流動をサポートする気孔(pore)とを備える。前記研磨パッドは、外部応力によって表面の溝だけでなく気孔150の形状が変形し、これは研磨パッドの表面粗さの変化を誘発し得る。
【0035】
特に、研磨後研磨パッドの表面粗さの変化を誘発する気孔の形状変化または気孔の凝集程度は、CMP工程の重要な性能のうち、研磨率、半導体基板の平坦化、半導体基板の表面に発生する残渣、スクラッチ、およびチャターマークなどに影響を与え得るため、その制御が特に重要である。
【0036】
このような特性に応じて調節される研磨後研磨パッドの表面粗さは、ウレタン系プレポリマー、発泡剤、または硬化剤の種類によって異なり得る。また、前記表面粗さは、各成分混合時のミキシングヘッドの回転速度、溝加工程度、プレコンディショニング条件等に応じて異なることがあり、他にも様々な変数によって表面粗さを制御し得る。
【0037】
本発明の実現例による研磨パッドの表面粗さ減少率(RSk(%))は、研磨前研磨パッドのコア粗さ深さ(Sk1)に対する研磨前と研磨後の研磨パッドのコア粗さ深さ(Sk2)の差(Sk1-Sk2)の比に対する百分率であり、前記表面粗さ減少率(RSk(%))は、例えば50%未満、例えば48%以下、例えば47%以下、例えば45%以下、例えば43%以下、例えば42%以下、例えば41%以下、例えば38%以下、または例えば35%以下であり得る。前記表面粗さ減少率(RSk(%))は、具体的に、例えば5%以上~50%未満、例えば10%以上~48%以下、例えば15%以上~48%以下、例えば20%以上~48%以下、例えば25%以上~48%以下、例えば30%以上~48%以下、例えば32%以上~48%以下、例えば34%以上~47%以下、例えば34%以上~45%以下、例えば34%以上~42%以下、例えば34%以上~40%以下、または例えば34%以上~38%以下であり得る。
【0038】
本発明の実現例による研磨パッドは、前記式1で表示される表面粗さ減少率(RSk(%))が50%未満に調節されることにより、グレージング現象が少なく発生して、研磨率、半導体基板の表面に現れる表面欠陥特性を改善し得る。もし、前記表面粗さ減少率(RSk(%))が50%以上であると、グレージング現象による研磨パッドの不均一な表面変形が大きくなり、これによって研磨率、平坦度、表面粗さ等を悪化させ、研磨対象膜質上の欠陥を増加させ得る。
【0039】
前記式1で表示される表面粗さ減少率(RSk(%))は、研磨前および研磨後の研磨パッドのコア粗さ深さをそれぞれ測定し、その値を前記式1に代入して算出し得る。
【0040】
前記研磨パッドの表面粗さ、例えば研磨パッドのコア粗さ深さは、表面粗さ測定器を用いて面積材料比曲線によって得られる。前記面積材料比曲線は、ベアリング面積曲線(bearing area curve、BAC)またはアボットファイヤーストーン曲線(abbott-firestone curve)と言い、前記表面粗さ測定器により単位面積に対して測定された高さによる累積データをプロット(plot)したグラフである。
【0041】
図2を参照すると、前記表面粗さの面積材料比曲線から導出されるパラメータとしては、深さ(高さ)で換算したパラメータであるSパラメータ、具体的にSpk、SvkおよびSkがある。
【0042】
前記Spkは減少したピーク高さ(reduced peak height)であり、CMP工程中に研磨パッドが半導体基板の表面に接触したときの初期接触面積を提供し、したがって、高い接触応力領域(力/面積)を提供する高いピークからなる表面のことを意味する。前記Spkは、稼働中に除去され得る材料の公称高さを示し得る。
【0043】
前記Skは、コア粗さ深さ(core roughness depth)であり、表面が摩耗した後、荷重が分散され得る表面の中心粗さのことを意味する。
【0044】
前記Svkは、減少した谷深さ(reduced valley depth)であり、前記表面の中心粗さの下の谷深さを測定した値であり、スラリー担持力または研磨パッドデブリス(debris)捕捉力に関連する。
【0045】
一方、
図2において、SMr1はピーク材料部(peak material portion)であり、前記Spkに関連するピーク構造を構成する材料の比を示す。
【0046】
また、SMr2は谷材料部(valley material portion)であり、Svkに関連するさらに深い谷構造を構成する測定領域の百分率(100%-SMr2)を示す。
【0047】
本発明の実現例による研磨パッドは、特に、前記Sパラメータのうち、研磨パッドのコア粗さ深さ(Sk)を用いた表面粗さ減少率(RSk(%))を制御することが特徴である。すなわち、前記研磨パッドは、研磨前に対して研磨後表面が摩耗した後、荷重が分散され得る表面の中心粗さの減少率を50%未満に制御することにより、研磨性能を向上させ、半導体基板の表面欠陥を最小化し得る。
【0048】
前記Sk1は研磨前研磨パッドのコア粗さ深さ(μm)であって、10以上~40以下、10以上~35以下、10以上~30以下、15以上~30以下、18以上~30以下、または20以上~30以下であり得る。前記Sk1が前記範囲を満足すると、研磨性能にさらに優れ得る。
【0049】
前記Sk2は研磨後研磨パッドのコア粗さ深さ(μm)であって、3以上~30以下、5以上~25以下、9以上~25以下、9以上~20以下、10以上~18以下、または12以上~17以下であり得る。前記Sk2が前記範囲を満足すると、研磨パッドの表面粗さ減少率(RSk(%))を下げて、優れた研磨性能および低い表面欠陥特性を実現するのにさらに有利である。この際、前記研磨は、4.0psiのキャリア加圧条件、87rpmのキャリア回転速度、および93rpmの定盤回転速度条件下において、シリコン酸化膜を含む半導体基板に対して、か焼セリアスラリーを250ml/分の速度で噴射して、シリコン酸化膜を60秒間研磨して行われ、前記Sk2はこのような条件にて研磨後に測定した研磨パッドのコア粗さ深さである。
【0050】
前記Sk1とSk2との差(Sk1-Sk2)(μm)は、15以下、13以下、12以下、11以下、10以下、または9以下であり得る。具体的に、前記Sk1とSk2との差(Sk1-Sk2)(μm)は、5以上~15以下、7以上~13以下、7以上~12以下、または8以上~12以下であり得る。前記Sk1とSk2との差(Sk1-Sk2)が前記範囲を満足すると、研磨パッドの表面粗さ減少率(RSk(%))を下げて、優れた研磨性能および低い表面欠陥特性を実現し得る。
【0051】
一方、前記回復弾性抵抗指数(RERI)は、研磨後弾性によって元の状態に戻る性質を妨げる程度を数値化したものであり、これは前記研磨パッドの表面粗さ減少率(RSk(%))と硬度によって異なり得る。
【0052】
前記回復弾性抵抗指数(RERI)は下記式2で表示され、前記回復弾性抵抗指数(RERI)は40以下である。
【0053】
[式2]
前記式2において、
RSk(%)は、前記式1で定義した通りであり、
H
25は、25℃にて測定した研磨パッドのショアD硬度であり、
回復弾性抵抗指数(RERI)は、単位を除いた数値間の比である。
【0054】
具体的に、本発明の実現例によると、低い表面粗さ減少率(RSk(%))と低い硬度とを実現することにより、前記回復弾性抵抗指数(RERI)を40以下に制御し得る。すなわち、前記回復弾性抵抗指数(RERI)は、前記研磨パッドの表面粗さ減少率(RSk(%))および硬度が低いほど低く、前記研磨パッドの表面粗さ減少率(RSk(%))および硬度が高いほど高くなり得る。例えば、前記研磨パッドの表面粗さ減少率(RSk(%))が低いため、研磨後にも研磨パッドの表面粗さが研磨前の研磨パッドの表面粗さとの差が少ないと、回復弾性抵抗指数(RERI)が減少し得る。その場合、研磨工程により表面粗さの凹凸が傾いても、研磨パッドの低い硬度のため、弾性によって凹凸が元通りにまっすぐ立っている状態に戻り得る。これにより、半導体基板の表面上に現れる残渣、スクラッチ、チャターマークなどの表面欠陥を少なく誘発し得る。したがって、前記回復弾性抵抗指数RERIが低いほど、半導体基板の表面上に現れる表面欠陥が少なく発生し得る。
【0055】
前記回復弾性抵抗指数(RERI)は、具体的に、例えば38以下、例えば35以下、例えば32以下、例えば30以下、例えば25以下、例えば23以下、または例えば20以下であり得る。前記回復弾性抵抗指数(RERI)が前記範囲を満足することにより、半導体基板の表面上に現れる欠陥を低減し得る。
【0056】
一方、本発明の実現例による研磨パッドは低硬度を有し得る。具体的に、前記研磨パッドは、25℃における表面硬度が、40ショアD~60ショアD、40ショアD~55ショアD、40ショアD~52ショアD、40ショアD~50ショアD、または42ショアD~48ショアDであり得る。前記研磨パッドの25℃における表面硬度が前記範囲を満足すると、本発明の実現例において目的とする回復弾性抵抗指数(RERI)を40以下に制御するのにさらに有利であり、これによって半導体基板の表面上に現れる欠陥を最小化し得る。
【0057】
本発明の実現例による研磨パッドは、10N/mm2~100N/mm2、15N/mm2~70N/mm2、15N/mm2~50N/mm2、または15N/mm2~40N/mm2の引張強度を有し得る。また、本発明の他の実現例による研磨パッドは低い引張強度を有し得る。例えば、前記研磨パッドは、10N/mm2~25N/mm2、15N/mm2~25N/mm2、または16N/mm2~25N/mm2の引張強度を有し得る。
【0058】
本発明の実現例による研磨パッドは、30%~320%、または50%~320%の伸び率を有し得る。また、本発明の他の実現例による研磨パッドは高い伸び率を有し得る。例えば、前記研磨パッドは、80%~320%、90%~320%、100%~320%、150%~320%、200%~320%、または220%~320%の伸び率を有し得る。
【0059】
本発明の実現例による研磨パッドは、0.6g/cm3~0.9g/cm3の比重を有し得る。より具体的に、前記研磨パッドは、0.7g/cm3~0.85g/cm3の比重を有し得るが、これに限定されるものではない。
【0060】
本発明の実現例による研磨パッドは、25℃にて表面硬度が40ショアD~60ショアDであり、引張強度が10N/mm2~25N/mm2、伸び率が80%~320%であり得る。
【0061】
一方、前記研磨パッドは複数の気孔を含む。
本発明の実現例による研磨パッドは、複数の気孔の平均径が5μm~200μmであり得る。また、前記複数の気孔の平均径は、7μm~100μm、10μm~60μm、10μm~50μm、10μm~32μm、または20μm~32μmであり得る。前記複数の気孔の平均径は、気孔径の数平均値で計算した。例えば、前記研磨パッドを、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて200倍で画像面積を観察した。画像解析ソフトウェアを用いて得られた画像から複数の気孔それぞれの直径を測定し、平均径(Da)を計算した。前記平均径は、研磨面1mm2内の複数の気孔径の和を複数の気孔数で除した平均値と定義した。
【0062】
前記気孔は、前記研磨パッドの内部に配置される閉鎖型気孔と、前記研磨パッドの研磨面に配置される開放型気孔とを含む。
【0063】
具体的に、前記開放型気孔は、研磨面状に気孔入口が露出される。
なお、前記開放型気孔の入口の直径は、前記開放型気孔の入口の平面積と同じ平面積を有する円の直径を意味し得る。また、前記開放型気孔の入口の平均径は、前記研磨面に存在する複数の開放型気孔入口の直径を数平均して算出され得る。
【0064】
研磨パッドの単位面積(mm2)当たりの気孔の総数が700個以上であり得る。より具体的に、研磨パッドの単位面積(mm2)当たりの気孔の総数が750個以上であり得る。さらに具体的に、研磨パッドの単位面積(mm2)当たりの気孔の総数が800個以上であり得る。さらにより具体的に、研磨パッドの単位面積(mm2)当たりの気孔の総数が900個以上であり得るが、これに限定されるものではない。また、前記研磨パッドの単位面積(mm2)当たりの気孔の総数が2500個以下、具体的に2200個以下、1500個以下、または1200個以下であり得るが、これに限定されるものではない。したがって、前記研磨パッドの単位面積(mm2)当たりの気孔の総数は、700個~2500個、例えば、750個~2200個、800個~1500個、または800個~1200個まで含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0065】
具体的に、前記研磨パッドの弾性モジュラスは60kgf/cm2以上であり得る。より具体的に、前記研磨パッドの弾性モジュラスは100kgf/cm2以上であり得るが、これに限定されるものではない。前記研磨パッドの弾性モジュラスの上限は150kgf/cm2であり得るが、これに限定されるものではない。
【0066】
本発明の実現例による研磨パッドは、1mm~10mmの厚さを有し得る。具体的に、前記研磨パッドは、1mm~9mm、1mm~8.5mm、1.5mm~10mm、1.5mm~9mm、1.5mm~8.5mm、1.8mm~10mm、1.8mm~9mm、または1.8mm~8.5mmの厚さを有し得る。
【0067】
また、前記研磨パッドは1mm~5mmの厚さを有し得る。具体的に、前記研磨パッドは、1mm~3mm、1mm~2.5mm、1.5mm~5mm、1.5mm~3mm、1.5mm~2.5mm、1.8mm~5mm、1.8mm~3mm、または1.8mm~2.5mmの厚さを有し得る。研磨パッドの厚さが前記範囲内であるとき、研磨パッドとしての基本的物性を十分に発揮し得る。
【0068】
前述のように、実現例による研磨パッドは、表面粗さ減少率(RSk(%))および回復弾性抵抗指数(RERI)を特定範囲以下に制御することにより、研磨率を向上させ、半導体基板の表面上に現れる表面欠陥を減少し得る。
【0069】
一方、前記研磨パッドは、か焼セリアスラリーを用いてシリコン酸化膜を含む半導体基板を研磨する場合、酸化膜に対して研磨率が1600Å/分~3300Å/分、1600Å/分~3000Å/分、1600Å/分~2500Å/分、または1600Å/分~2200Å/分であり得る。前記酸化膜に対する研磨率が前記範囲内であるとき、パッドグレージング現象を抑制して、その後繰り返される研磨工程において適正レベルの優れた研磨率を維持するのに有利である。
【0070】
また、前記研磨条件にてシリコン酸化膜を研磨した後、欠陥検査装置(AIT XP+、KLA Tencor社)を用いて測定した研磨後半導体基板(ウェーハ)の表面上に現れる表面欠陥の数が20以下であり得る。この際、前記表面欠陥の数は、半導体基板の表面上に現れる残渣、スクラッチおよびチャターマークの総和を意味し得る。
【0071】
前記残渣は、実質的に不定形の異物が半導体基板の表面上に付着していることを意味するものであり、一例として
図6に示すような形状の欠陥のことを指す。
【0072】
前記スクラッチは、実質的に連続的な線形のひっかき傷を意味するものであり、一例として
図7に示すような形状の欠陥のことを指す。
【0073】
一方、前記チャターマークは、実質的に不連続な線形のひっかき傷を意味するものであり、一例として
図8に示すような形状の欠陥のことを意味する。
【0074】
前記半導体基板上に現れる表面欠陥の数は、15以下、10以下、8以下、7以下、5以下、または3以下であり得る。
【0075】
一方、前記研磨パッドは、表面に機械的研磨のための溝を有し得る。前記溝は、機械的研磨のための適切な深さ、幅および間隔を有することができ、特に限定されない。
【0076】
実現例による研磨パッドは、前述の研磨パッドの物性を同時に示し得る。
【0077】
一方、本発明の実現例による研磨パッドは研磨層を含み、前記研磨層はウレタン系プレポリマーと、硬化剤と、発泡剤とを含む組成物の硬化物を含む。
【0078】
本発明の実現例によると、前記研磨パッドの表面粗さ減少率(RSk(%))および回復弾性抵抗指数(RERI)は、前記硬化物を形成する組成物の組成に応じて異なり得る。具体的に、前記研磨パッドの表面粗さ減少率(RSk(%))および回復弾性抵抗指数(RERI)は、ウレタン系プレポリマー、硬化剤および発泡剤の種類によって異なり得る。また、前記研磨パッドの表面粗さ減少率(RSk(%))および回復弾性抵抗指数(RERI)は、各成分の原料の精製有無、各成分混合時のミキシングヘッドの回転速度、溝加工程度、プレコンディショニング条件等に応じて異なり、他にも様々な変数によって前記特性を制御し得る。
【0079】
前記組成物に含まれる各成分について、以下で具体的に説明する。
本発明の一実現例によると、前記研磨層を形成する組成物に含まれる硬化剤は、エーテル結合を含む3級アミン系ポリオールを含む。
【0080】
本発明の実現例においては、前記エーテル結合を含む3級アミン系ポリオールを硬化剤として用いることにより、ウレタン系プレポリマーと化学的に反応して前記研磨層内の最終的な硬化構造を形成するとともに、本発明で目的とする研磨パッドの特性を実現し得る。
【0081】
具体的に、前記研磨層を形成する組成物のうち、前記特定成分の3級アミン系ポリオールを含むことにより、低硬度の研磨パッドを得ることができ、前記研磨パッドの表面粗さ減少率(RSk(%))および回復弾性抵抗指数(RERI)を本発明で目的とする範囲以下に制御し得る。
【0082】
前記硬化剤は、例えば、下記構造式で表される化合物を含み得る。
[構造式]
前記構造式において、nは1~10の整数である。前記nは、例えば1~9、例えば1~8、例えば1~7、または例えば1~6であり得る。
【0083】
前記硬化剤は、例えばメチルオキシラン含有1,2-エタンジアミン高分子化合物、例えば商品名LA-480を含み得る。
【0084】
前記3級アミン系ポリオールの重量平均分子量(Mw)は、400g/mol~3000g/molの分子量を有し得る。具体的に、前記3級アミン系ポリオールの重量平均分子量は、例えば400g/mol~2700g/mol、例えば400g/mol~2500g/mol、例えば400g/mol~2490g/mol、例えば400g/mol~2450g/mol、例えば400g/mol~2400g/mol、例えば400g/mol~2000g/mol、例えば400g/mol~1800g/mol、例えば400g/mol~1500g/mol、例えば400g/mol~1300g/mol、または例えば400g/mol~1000g/molであり得る。前記3級アミン系ポリオールの重量平均分子量が前記範囲を満足すると、硬化時に適切なゲル化時間を有することができ、低硬度の研磨パッドを得ることができ、本発明で目的とする表面粗さ減少率(RSk(%))および回復弾性抵抗指数(RERI)を特定の範囲に制御するのにさらに有利であり得る。
【0085】
もし、前記3級アミン系ポリオールの重量平均分子量が小さすぎると、ゲル化時間(gel time)が短くなり得る。なお、前記ゲル化時間は、前記研磨層形成用組成物が硬化によってゲル化するまでの一定時間がかかるが、これをゲル化時間と言う。前記組成物のゲル化時間は、50秒以上、70秒以上、80秒以上、100秒以上であり得る。例えば、前記組成物のゲル化時間は、50秒~200秒、50秒~150秒、50秒~100秒、100秒~200秒、150秒~200秒であり得る。具体的な一例として、前記組成物は80秒~120秒のゲル化時間を有し得る。前記ゲル化時間は、例えば70℃にて測定された値であり得る。
【0086】
本発明の実現例によると、前記硬化剤は芳香族アミン化合物をさらに含み得る。すなわち、前記硬化剤は、前記3級アミン系ポリオールと芳香族アミン化合物との混合物を含み得る。
【0087】
前記芳香族アミン化合物は、ジエチルトルエンジアミン、3,5-ジメチルチオ-2,4-トルエンジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン、N,N'-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ジフェニルメタン、4,4'-メチレン-ビス-(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート、N,N'-ジアルキルジアミノジフェニルメタン、p,p'-メチレンジアニリン、m-フェニレンジアミン、4,4'-メチレン-ビス-(2,6-ジエチルアニリン)、4,4'-メチレン-ビス-(2,3-ジクロロアニリン)、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジエチル-5,5'-ジメチルジフェニルメタン、2,2',3,3'-テトラクロロジアミノジフェニルメタン、トリメチレングリコールジ-p-アミノベンゾエート、3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルエステル、ビス(4-アミノ-2-クロロ-3,5-ジエチルフェニル)メタン、プロパンジオールビスp-アミノベンゾエート、ブチルジアミノクロロベンゾエート、メチレンビス-メチルアントラニレート、クロロジエチルトルエンジアミン、メチレンビス-o-エチルアニリン、およびこれらの異性体からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0088】
具体的に、前記芳香族アミン化合物は、N,N'-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ジフェニルメタン、3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸-2-メチルプロピルエステル、ビス(4-アミノ-2-クロロ-3,5-ジエチルフェニル)メタン、プロパンジオールビスp-アミノベンゾエート、ブチルジアミノクロロベンゾエート、メチレンビス-メチルアントラニレート、クロロジエチルトルエンジアミン、メチレンビス-o-エチルアニリン、およびこれらの異性体からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0089】
前記芳香族アミン化合物は2級アミン化合物を含み得る。
前記芳香族アミン化合物の重量平均分子量(Mw)は、450g/mol~600g/mol、例えば450g/mol~580g/mol、または450g/mol~550g/molであり得る。
【0090】
前記硬化剤として、前記3級アミン系ポリオールと前記芳香族アミン化合物とを併用すると、低硬度の研磨パッドを得ることができ、本発明で目的とする表面粗さ減少率(RSk(%))と回復弾性抵抗指数(RERI)とを特定の範囲に制御するのに有利であり得る。
【0091】
ところで、前記3級アミン系ポリオールと前記芳香族アミン化合物との混合重量比は、研磨パッドの機械的物性および研磨性能を調節し、半導体基板の表面欠陥特性を制御するために非常に重要な要素となり得る。
【0092】
具体的に、前記3級アミン系ポリオールの含有量は、重量を基準に前記芳香族アミン化合物の含有量と同一か、それ以上であり得る。
【0093】
例えば、前記3級アミン系ポリオールの含有量は、重量を基準に前記芳香族アミン化合物の含有量よりも多くても良い。前記3級アミン系ポリオールが芳香族アミン化合物の含有量と同一か、より多い場合、研磨後に測定した研磨パッドのコア粗さ深さ(Sk2)が減少することを防止することができ、前記効果を実現するためにさらに有利であり得る。すなわち、前記3級アミン系ポリオールの含有量が大きくなるにつれ、研磨後にも研磨パッドの形状が良好に維持され、研磨パッドの表面粗さ減少率(RSk(%))の制御が容易となる。
【0094】
さらに、本発明の実現例により、前記硬化剤として前記3級アミン系ポリオールと前記芳香族アミン化合物とを混合して使用する場合、ウレタン系プレポリマー末端のイソシアネート(NCO)基が、前記3級アミン系ポリオールのヒドロキシ(OH)基と反応してウレタン結合がなされ、ウレタン系プレポリマー末端のイソシアネート(NCO)基が前記芳香族アミン化合物のアミン(NH)基と反応してウレア結合がなされ得る。この際、反応速度は、前記ウレタン結合が前記ウレア結合よりも速くなり得る。すなわち、前記3級アミン系ポリオールは、触媒の役割を果たし得るため反応速度がより速く起こり、特に前記3級アミン系ポリオールにおいて3級アミンの非共有電子対が電子を強く引っ張って、反応が速く起こり得る。
【0095】
また、前記3級アミン系ポリオールの含有量が大きくなるほど、前記ウレタン結合がより活発になり、コンディショニング時の研磨特性が向上され得る。もし、前記芳香族アミン化合物の含有量がさらに増加すると、前記研磨層製造用組成物を硬化して研磨層を製造する工程の際、硬化し難くなり問題となり得る。
【0096】
本発明の実現例によると、前記3級アミン系ポリオールと前記芳香族アミン化合物との混合重量比は、例えば5:5~9:1、例えば5:5~8:2、例えば6:4~9:1、例えば6:4~8:2、または例えば7:3~8:2であり得る。
【0097】
一方、前記硬化剤は、前記ウレタン系プレポリマー100重量部を基準に、約18重量部~約27重量部、例えば約19重量部~約26重量部、例えば約20重量部~約26重量部であり得る。前記硬化剤の含有量が前記範囲を満足すると、目的とする研磨パッドの表面特性、具体的に表面粗さ減少率(RSk(%))および回復弾性抵抗指数(RERI)を実現するのにさらに有利であり得る。
【0098】
一実現例において、前記硬化剤は4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)を含まなくても良い。もし、前記硬化剤が4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)を含むと、硬度が高くなるため、本発明で目的とする効果を実現することが難しくなり得る。
【0099】
本発明の一実現例によると、前記研磨層を形成する組成物は、ウレタン系プレポリマーを含む。
【0100】
「プレポリマー(prepolymer)」とは、硬化物の製造において、成形しやすいように重合度を中間段階で中止した比較的低い分子量を有する高分子のことを意味する。プレポリマーは、それ自体で、または他の重合性化合物と反応させた後、最終硬化物として成形され得る。
【0101】
一実現例において、前記ウレタン系プレポリマーは、イソシアネート化合物とポリオールとを反応させて調製され得る。
【0102】
前記ウレタン系プレポリマーの調製に用いられるイソシアネート化合物は、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つを使用し得る。
【0103】
前記イソシアネート化合物は、例えば、2,4-トルエンジイソシアネート(2,4-toluene diisocyanate、2,4-TDI)、2,6-トルエンジイソシアネート(2,6-toluene diisocyanate、2,6-TDI)、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート(naphthalene-1,5-diisocyanate)、パラ-フェニレンジイソシアネート(p-phenylene diisocyanate)、トリジンジイソシアネート(tolidine diisocyanate)、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4'-diphenyl methane diisocyanate)、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(dicyclohexylmethane diisocyanate)、イソホロンジイソシアネート(isophorone diisocyanate)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つを含み得る。
【0104】
前記ポリオールは、分子当りのヒドロキシ基(-OH)を少なくとも2以上含む化合物として、例えば、ポリエーテル系ポリオール(polyether polyol)、ポリエステル系ポリオール(polyester polyol)、ポリカーボネート系ポリオール(polycarbonate polyol)、アクリル系ポリオール(acryl polyol)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つを含み得る。
【0105】
前記ポリオールは、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つを含み得る。
【0106】
前記ポリオールは、約100g/mol~約3000g/molの重量平均分子量(Mw)を有し得る。前記ポリオールは、例えば、約100g/mol~約3000g/mol、例えば、約100g/mol~約2000g/mol、例えば、約100g/mol~約1800g/molの重量平均分子量(Mw)を有し得る。
【0107】
一実現例において、前記ポリオールは、重量平均分子量(Mw)が約100g/mol以上、約300g/mol未満の低分子量ポリオールと、重量平均分子量(Mw)が約300g/mol以上、約1800g/mol以下の高分子量ポリオールとを含み得る。
【0108】
前記ウレタン系プレポリマーは、約500g/mol~約3000g/molの重量平均分子量(Mw)を有し得る。前記ウレタン系プレポリマーは、例えば、約1000g/mol~約2000g/mol、例えば、約1000g/mol~約1500g/molの重量平均分子量(Mw)を有し得る。
【0109】
一実現例において、前記ウレタン系プレポリマーを調製するためのイソシアネート化合物は、芳香族ジイソシアネート化合物を含み、前記芳香族ジイソシアネート化合物は、例えば、2,4-トルエンジイソシアネート(2,4-TDI)と2,6-トルエンジイソシアネート(2,6-TDI)とを含み得る。前記ウレタン系プレポリマーを調製するためのポリオール化合物は、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)とジエチレングリコール(DEG)とを含み得る。
【0110】
他の実現例において、前記ウレタン系プレポリマーを調製するためのイソシアネート化合物は、芳香族ジイソシアネート化合物と脂環式ジイソシアネート化合物とを含み、例えば、前記芳香族ジイソシアネート化合物は、2,4-トルエンジイソシアネート(2,4-TDI)と2,6-トルエンジイソシアネート(2,6-TDI)とを含み、前記脂環式ジイソシアネート化合物は、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)を含み得る。前記ウレタン系プレポリマーを調製するためのポリオール化合物は、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)とジエチレングリコール(DEG)とを含み得る。
【0111】
前記ウレタン系プレポリマーは、イソシアネート末端基の含有量(NCO%)が、例えば約9重量%~約12重量%、例えば、約9重量%~約11重量%、例えば、約9重量%~約10重量%、例えば、約10重量%~約12重量%、または例えば、約10重量%~約11重量%であり得る。
【0112】
前記ウレタン系プレポリマーのイソシアネート末端基の含有量(NCO%)は、前記ウレタン系プレポリマーを調製するためのイソシアネート化合物およびポリオール化合物の種類および含有量、前記ウレタン系プレポリマーを調製する工程の温度、圧力、時間などの工程条件および前記ウレタン系プレポリマーの調製に用いられる添加剤の種類および含有量などを総合的に調節して設計され得る。
【0113】
前記ウレタン系プレポリマーのイソシアネート末端基の含有量(NCO%)が前述の範囲を満足すると、後続で前記ウレタン系プレポリマーと硬化剤とを反応する際の反応速度、反応時間、および最終的な硬化構造などが、最終研磨パッドの用途および使用目的に応じた研磨性能に有利な方向で調節され得る。
【0114】
本発明の一実現例によると、前記研磨層を形成する組成物は発泡剤を含む。
前記発泡剤は、前記研磨層内の気孔構造を形成するための成分として固相発泡剤を含み得る。
【0115】
本発明の実現例によると、前記固相発泡剤の種類、形状または物性等に応じて微細気孔の形状および気孔凝集現象の制御が可能であり、これにより研磨前および研磨後の研磨パッドの表面粗さを調節し得る。
【0116】
前記固相発泡剤は膨張性粒子を含み得る。前記膨張性粒子は、熱または圧力などによって膨張が可能な特性を有する粒子であって、前記研磨層を製造する過程で加えられる熱または圧力などによって最終研磨層内における大きさが定められ得る。前記膨張性粒子は、熱膨張された(expanded)粒子、未膨張(unexpanded)の粒子、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0117】
前記熱膨張された粒子は熱によって事前に膨張された粒子であって、前記研磨層の製造過程で加えられる熱または圧力によるサイズ変化が小さいか、ほとんどない粒子のことを意味する。
【0118】
前記未膨張の粒子は、事前に膨張されていない粒子であって、前記研磨層の製造過程で加えられる熱または圧力によって膨張して最終的なサイズが定められる粒子のことを意味する。本発明の実現例によると、前記固相発泡剤は、より均一な研磨パッドの気孔サイズ分布を実現する点から、未膨張粒子を含むことがさらに有利であり得る。
【0119】
前記未膨張の粒子を含む固相発泡剤は、炭化水素ガスをポリマーシェルでカプセル化(encapsulating)した微小球体(microspheres)であり得る。
【0120】
前記膨張性粒子は、樹脂材質の外皮と、前記外皮により封入された内部に存在する膨張誘発成分とを含み得る。
【0121】
例えば、前記外皮は熱可塑性樹脂を含んで良く、前記熱可塑性樹脂は、塩化ビニリデン系共重合体、アクリロニトリル系共重合体、メタクリロニトリル系共重合体、およびアクリル系共重合体からなる群より選択された1種以上であり得る。
【0122】
前記膨張誘発成分は、炭化水素化合物、クロロフルオロ化合物、テトラアルキルシラン化合物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つを含み得る。
【0123】
具体的に、前記炭化水素化合物は、エタン(ethane)、エチレン(ethylene)、プロパン(propane)、プロペン(propene)、n-ブタン(n-butane)、イソブタン(isobutene)、n-ブテン(butene)、イソブテン(isobutene)、n-ペンタン(n-pentane)、イソペンタン(isopentane)、ネオペンタン(neopentane)、n-ヘキサン(n-hexane)、ヘプタン(heptane)、石油エーテル(petroleum ether)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つを含み得る。
【0124】
前記クロロフルオロ化合物は、トリクロロフルオロメタン(trichlorofluoromethane、CCl3F)、ジクロロジフルオロメタン(dichlorodifluoromethane、CCl2F2)、クロロトリフルオロメタン(chlorotrifluoromethane、CClF3)、テトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene、CClF2-CClF2)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つを含み得る。
【0125】
前記テトラアルキルシラン化合物は、テトラメチルシラン(tetramethylsilane)、トリメチルエチルシラン(trimethylethylsilane)、トリメチルイソプロピルシラン(trimethylisopropylsilane)、トリメチル-n-プロピルシラン(trimethyl-n-propylsilane)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つを含み得る。
【0126】
前記固相発泡剤は、必要に応じて無機成分処理粒子を含み得る。例えば、前記固相発泡剤は、無機成分処理された膨張性粒子を含み得る。一実現例において、前記固相発泡剤は、シリカ(SiO2)粒子処理された膨張性粒子を含み得る。前記固相発泡剤の無機成分処理は、複数の粒子間凝集を防止し得る。前記無機成分処理された固相発泡剤は、無機成分処理されていないの固相発泡剤とは発泡剤表面の化学的、電気的および/または物理的特性が異なり得る。
【0127】
前記固相発泡剤の含有量は、前記ウレタン系プレポリマー100重量部を基準に、約0.5重量部~約10.0重量部、例えば、約1.0重量部~約6.0重量部、例えば、約1.5重量部~約5.5重量部、例えば、約2.0重量部~約5.0重量部であり得る。
【0128】
本発明の一実現例によると、前記固相発泡剤を用いることにより、液相発泡剤、気相発泡剤、またはそのいずれも使用せずとも、優れた研磨特性および機械的物性を提供し得る。
【0129】
前記研磨層の目的とする気孔構造および物性に応じて、前記固相発泡剤の種類および含有量を設計し得る。
【0130】
前記研磨層を製造するための組成物は、界面活性剤、反応速度調整剤などのその他の添加剤をさらに含み得る。前記「界面活性剤」、「反応速度調整剤」などの名称は、当該物質の主な役割に基づいて任意で指す名称であり、それぞれの当該物質が必ずしもその名称による役割に限られた機能のみを行うわけではない。
【0131】
前記界面活性剤は、気孔の凝集または重畳などの現象を防止する役割をする物質であれば特に制限されない。例えば、前記界面活性剤はシリコーン系界面活性剤を含み得る。
【0132】
前記界面活性剤は、前記ウレタン系プレポリマー100重量部を基準に、約0.2重量部~約2重量部の含有量で使用され得る。具体的に、前記界面活性剤は、前記ウレタン系プレポリマー100重量部を基準に、約0.2重量部~約1.9重量部、例えば、約0.2重量部~約1.8重量部、例えば、約0.2重量部~約1.7重量部、例えば、約0.2重量部~約1.6重量部、例えば、約0.2重量部~約1.5重量部、例えば、約0.5重量部~1.5重量部の含有量で含まれ得る。前記範囲内の含有量で界面活性剤を含むと、気孔がモールド内で安定して形成および維持され得る。
【0133】
前記反応速度調整剤は、反応促進または反応遅延の役割をするものであって、目的に応じて反応促進剤、反応抑制剤、またはそのいずれも使用し得る。前記反応速度調整剤は反応促進剤を含み得る。例えば、前記反応促進剤は、3級アミン系化合物および有機金属系化合物からなる群より選択された1種以上の反応促進剤であり得る。
【0134】
具体的に、前記反応速度調整剤は、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルブタンジアミン、2-メチル-トリエチレンジアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロパノールアミン、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、ビス(2-メチルアミノエチル)エーテル、トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N,N,N,N''-ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ベンジルジメチルアミン、N-エチルモルホリン、N,N-ジメチルアミノエチルモルホリン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、2-メチル-2-アザノルボルナン、ジブチルスズジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジアセテート、ジブチルスズマレート、ジブチルスズジ-2-エチルヘキサノエート、およびジブチルスズジメルカプチドからなる群より選択された1種以上を含み得る。具体的に、前記反応速度調整剤は、ベンジルジメチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、およびトリエチルアミンからなる群より選択された1種以上を含み得る。
【0135】
前記反応速度調整剤は、前記ウレタン系プレポリマー100重量部を基準に、約0.05重量部~約2重量部の量で使用され得る。具体的に、前記反応速度調整剤は、前記ウレタン系プレポリマー100重量部を基準に、約0.05重量部~約1.8重量部、例えば、約0.05重量部~約1.7重量部、例えば、約0.05重量部~約1.6重量部、例えば、約0.1重量部~約1.5重量部、例えば、約0.1重量部~約0.3重量部、例えば、約0.2重量部~約1.8重量部、例えば、約0.2重量部~約1.7重量部、例えば、約0.2重量部~約1.6重量部、例えば、約0.2重量部~約1.5重量部、例えば、約0.5重量部~約1重量部の量で使用され得る。前記反応速度調整剤が前述の含有量の範囲で用いられると、プレポリマー組成物の硬化反応速度を適切に調節して、所望のサイズの気孔および硬度を有する研磨層を形成し得る。
【0136】
一実現例において、前記研磨層内の無機物の含有量が約5ppm~約500ppmであり得る。
【0137】
前記無機物は、例えばケイ素(Si)元素、リン(P)元素、およびカルシウム(Ca)元素からなる群より選択された1種以上の元素を含み得る。
【0138】
前記無機物は、さまざまなソース(source)によって由来し得る。例えば、前記無機物は、発泡剤などの前記研磨層の製造過程で用いられる各種添加剤に由来したものであり得る。この際、前記無機物のソースとなる添加剤は、例えば、発泡剤、界面活性剤、反応速度調整剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つを含み得る。
【0139】
前記研磨層内の無機物の含有量は、発泡剤またはその他の添加剤のいずれか1つのみを単独で用い、その種類および含有量を調節することにより適切な範囲で設計されても良く、発泡剤およびその他の添加剤を同時に用い、その種類および含有量を調節することにより適切な範囲に設計されても良い。
【0140】
前記研磨層内の無機物の含有量は、約5ppm~約500ppm、例えば、約5ppm~約400ppm、例えば、約8ppm~約300ppm、例えば、約220ppm~約400ppm、例えば、約5ppm~約180ppmであり得る。この際、前記研磨層内の無機物の含有量は、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometer)分析により測定されたものであり得る。
【0141】
以下、前記研磨パッドを製造する方法を詳細に説明する。
【0142】
[研磨パッドの製造方法]
本発明による他の実現例において、ウレタン系プレポリマーと、硬化剤と、発泡剤とを混合して研磨層製造用組成物を調製する段階と、前記研磨層製造用組成物をモールド内に注入し硬化して、研磨層を含む研磨パッドを得る段階とを含み、前記硬化剤はエーテル結合を含む3級アミン系ポリオールを含み、前記研磨パッドは前記式1で表示される表面粗さ減少率(RSk(%))が50%未満であり、前記式2で表示される回復弾性抵抗指数(RERI)が40以下である、研磨パッドの製造方法を提供し得る。
【0143】
図3を参照すると、前記研磨層を含む研磨パッドの製造方法(S100)は、研磨層製造用組成物を製造する段階(S110)を含む。
【0144】
前記研磨層製造用組成物は、ウレタン系プレポリマーと、硬化剤と、発泡剤とを混合して得られ得る。
【0145】
前記ウレタン系プレポリマーは、ジイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて調製され得る。前記ジイソシアネート化合物および前記ポリオール化合物に関することは、前記研磨パッドに関して前述した通りである。
【0146】
前記プレポリマー組成物のイソシアネート基(NCO基)含有量は、例えば、約9重量%~約12重量%、例えば、約9重量%~約11重量%、例えば、約9重量%~約10重量%、例えば、約10重量%~約12重量%、または例えば、約10重量%~約11重量%であり得る。
【0147】
前記ウレタン系プレポリマー組成物のイソシアネート基含有量は、前記ウレタン系プレポリマーの末端イソシアネート基、前記ジイソシアネート化合物のうち反応していない未反応イソシアネート基などに由来し得る。
【0148】
前記ウレタン系プレポリマー組成物の粘度は、約80℃にて約100cps~約1000cpsであり、例えば、約200cps~約800cpsであり、例えば、約200cps~約600cpsであり、例えば、約200cps~約550cpsであり、例えば、約300cps~約500cpsであり得る。
【0149】
前記発泡剤および硬化剤の具体的な組成は前述の通りである。
前記ウレタン系プレポリマーと硬化剤とは、混合後反応して固相のポリウレタンを形成してシート等に製造される。具体的に、前記ウレタン系プレポリマーのイソシアネート(NCO)末端基は、前記硬化剤のアミン基、アルコール基などと反応し得る。具体的に、前記ウレタン系プレポリマー末端のイソシアネート(NCO)基が、前記3級アミン系ポリオールのヒドロキシ(OH)基と反応してウレタン結合がなされ得る。また、前記ウレタン系プレポリマー末端のイソシアネート(NCO)基が前記芳香族アミン化合物のアミン(NH)基と反応してウレア結合がなされ得る。
【0150】
前記硬化剤として、3級アミン系ポリオールと芳香族アミン化合物との混合物を用いる場合、反応速度は、前記ウレタン系プレポリマー末端のイソシアネート(NCO)基と前記3級アミン系ポリオールのヒドロキシ(OH)基との反応、すなわち、ウレタン結合が、前記ウレタン系プレポリマー末端のイソシアネート(NCO)基と前記芳香族アミン化合物のアミン(NH)基との反応、つまりウレア結合よりも速くなり得る。すなわち、前記3級アミン系ポリオールは、触媒の役割を果たし得るため反応速度がより速く起こり、特に、前記3級アミン系ポリオールにて3級アミンの非共有電子対が電子を強く引っ張って反応が速く起こり得る。
【0151】
この際、固相発泡剤のような発泡剤は、ウレタン系プレポリマーと硬化剤との反応に関与することなく原料中にむらなく分散して複数の気孔を形成する。
【0152】
本発明の実現例によると、前記ウレタン系プレポリマー、硬化剤、および発泡剤は、実質的にほぼ同時に混合過程に投入され得る。また、界面活性剤、不活性ガスなどをさらに添加する場合、これらもまた実質的にほぼ同時に混合過程に投入され得る。
【0153】
他の例として、ウレタン系プレポリマー、発泡剤および界面活性剤は予め混合し、その後硬化剤を投入し得る。
【0154】
前記混合において、ウレタン系プレポリマーと硬化剤混合物を混合して反応を開始させ、発泡剤を原料内に均一に分散させ得る。この際、反応速度調整剤は、反応初期からウレタン系プレポリマーと硬化剤混合物の反応に介入して反応の速度を調整し得る。具体的に、前記混合は1000rpm~10000rpm、または4000rpm~7000rpmの速度で行われ得る。前記速度範囲であるとき、発泡剤が原料内に均一に分散するのにより有利であり得る。
【0155】
前記研磨層を含む研磨パッドの製造方法(S100)は、研磨層製造用組成物をモールド内に注入して硬化する段階(S120)を含んで、研磨層を含む研磨パッドが得られ得る。
【0156】
一実現例において、前記研磨層を含む研磨パッドを得る工程は、第1温度に予熱されたモールドを準備する段階と、前記予熱されたモールドに前記研磨層製造用組成物である原料混合物を注入して硬化させる段階とを含み得る。
【0157】
一実現例において、前記予熱されたモールドに前記研磨層製造用組成物を注入する際、不活性ガス、具体的に窒素(N2)ガスを注入しなくても良い。一般に、前記研磨層製造用組成物を注入する際、例えば窒素(N2)を注入し得るが、本発明では、前記特定成分の3級アミン系ポリオールの使用により、不活性ガスを注入すると、密度が不安定になり得る。特に、前記硬化剤として前記3級アミン系ポリオールを用いる場合、硬化速度が速いため、不活性ガスの注入が困難となり得る。
【0158】
一実現例において、前記第1温度は、約60℃~約120℃、例えば約65℃~約110℃、例えば約70℃~約110℃であり得る。
【0159】
前記研磨層製造用組成物を前記第1温度下で硬化させる段階は、約5分~約60分、例えば、約5分~約40分、例えば、約5分~約30分、例えば、約5分~約25分間行われ得る。
【0160】
前記ウレタン系プレポリマーと硬化剤との反応はモールド内で完了し、モールドの形状通りに固相化したケーキ状の成形体が得られ得る。
【0161】
その後、得られた成形体を適宜スライスまたは切削して、研磨パッドの製造のためのシートに加工し得る。一例として、最終的に製造される研磨パッドの厚さの5倍~50倍高さのモールドに成形した後、成形体を同一厚さ間隔でスライスして、多数の研磨パッド用シートを一度に製造し得る。この場合、十分な固相化時間を確保するために、反応速度調整剤として反応遅延剤を用いることができ、これにより、モールドの高さを最終的に製造される研磨パッド厚さの5倍~50倍に設けてから成形してもシートの製造が可能となり得る。ただ、スライスされたシートは、モールド内の成形された位置により異なる直径の気孔を有し得る。すなわち、モールドの下部で成形されたシートの場合は、微細な直径の気孔を有するのに対し、モールドの上部で成形されたシートは、下部で形成されたシートに比べて直径の大きい気孔を有し得る。
【0162】
したがって、好ましくは、各シート別にも均一な直径の気孔を持たせるために、1回の成形で1枚のシート製造が可能なモールドを用い得る。そのために、前記モールドの高さは、最終的に製造される研磨パッドの厚さに大差がなくなり得る。例えば、前記成形は、最終的に製造される研磨パッドの厚さの1倍~3倍となる高さを有するモールドを用いて行われ得る。より具体的に、前記モールドは、最終的に製造される研磨パッド厚さの1.1倍~4.0倍、または1.2倍~3.0倍の高さを有し得る。この際、より均一な粒径の気孔を形成するために、反応速度調整剤として反応促進剤を用い得る。具体的に、1枚のシートで製造された前記研磨パッドは、1mm~10mmの厚さを有し得る。具体的に、前記研磨パッドは、1mm~9mm、1mm~8.5mm、1.5mm~10mm、1.5mm~9mm、1.5mm~8.5mm、1.8mm~10mm、1.8mm~9mm、または1.8mm~8.5mmの厚さを有し得る。
【0163】
その後、前記モールドから得た成形体の上端および下端のそれぞれを切削し得る。例えば、前記成形体の上端および下端のそれぞれを成形体の総厚さの1/3以下の分ずつ切削するか、1/22~3/10の分ずつ切削するか、または1/12~1/4の分ずつ切削し得る。
【0164】
具体的な一例として、前記成形が最終的に製造される研磨パッドの厚さの1.2倍~2倍に相当する高さを有するモールドを用いて行われ、前記成形後に前記モールドから得られた成形体の上端および下端のそれぞれを、成形体総厚さの1/12~1/4の分ずつ切削する工程をさらに含み得る。
【0165】
前記製造方法は、前記表面切削後に、表面に溝を加工する工程、下層部との接着工程、検査工程、包装工程等をさらに含み得る。これらの工程は、通常の研磨パッドの製造方法の通りに行い得る。
【0166】
また、前述のような製造方法により製造された研磨パッドは、前述のような実現例による研磨パッドの特性を全て示す。
【0167】
一方、一実現例により、前記研磨層を加工する段階をさらに含み得る。
【0168】
前記研磨層の少なくとも一面を加工する段階は、前記研磨層の少なくとも一面上に溝(groove)を形成する段階(1)と、前記研磨層の少なくとも一面を旋削(line turning)加工する段階(2)と、前記研磨層の少なくとも一面を粗面化する段階(3)とのうち少なくとも1つの段階を含み得る。
【0169】
前記段階(1)において、前記溝は、前記研磨層の中心から所定の間隔で離隔形成される同心円状の溝と、前記研磨層の中心から前記研磨層のエッジ(edge)まで連続して連結される放射状の溝の少なくとも1つを含み得る。
【0170】
前記段階(2)において、前記旋削加工は、切削工具を用いて前記研磨層を所定の厚さの分を削り取る方法により行われ得る。
【0171】
前記段階(3)において、前記粗面化は、前記研磨層の表面を研削ローラー(Sanding roller)で加工する方法により行われ得る。
【0172】
前記研磨パッドの製造方法は、前記研磨層の研磨面の裏面上にクッション層を積層する段階をさらに含み得る。
【0173】
前記研磨層と前記クッション層とは、熱溶着接着剤を介して積層され得る。
【0174】
前記研磨層の研磨面の裏面上に前記熱溶着接着剤を塗布し、前記クッション層の前記研磨層と当接する表面上に前記熱溶着接着剤を塗布し、それぞれの熱溶着接着剤が塗布された面が当接するように前記研磨層と前記クッション層とを積層した後、加圧ローラーを用いて両層を融着させ得る。
【0175】
前記クッション層は、前記研磨層を支持しながら、前記研磨層に加えられる外部衝撃を吸収し分散させる役割をすることにより、前記研磨パッドを適用した研磨工程中の研磨対象に対する損傷および欠陥の発生を最小化し得る。
【0176】
前記クッション層は不織布またはスエードを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0177】
一実現例において、前記クッション層は樹脂含浸不織布であり得る。前記不織布は、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つを含む繊維不織布であり得る。
【0178】
前記不織布に含浸された樹脂は、ポリウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレン-ブタジエン共重合樹脂、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合樹脂、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合樹脂、シリコーンゴム樹脂、ポリエステル系エラストマー樹脂、ポリアミド系エラストマー樹脂、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つを含み得る。
【0179】
[半導体素子の製造方法]
本発明のまた他の実現例において、研磨層を含む研磨パッドを提供する段階と、前記研磨層の研磨面に研磨対象の被研磨面が当接するように相対回転させながら前記研磨対象を研磨する段階とを含み、前記研磨パッドは、ウレタン系プレポリマーと、硬化剤と、発泡剤とを含む組成物の硬化物を含む研磨層を含み、前記硬化剤はエーテル結合を含む3級アミン系ポリオールを含み、前記研磨パッドは、前記式1で表示される表面粗さ減少率(RSk(%))が50%未満であり、前記式2で表示される回復弾性抵抗指数(RERI)が40以下である、半導体素子の製造方法を提供する。
【0180】
図4を参照すると、前記半導体素子の製造方法(S200)は、研磨層を含む研磨パッドを提供する段階(S210)を含む。
【0181】
前記研磨層を含む研磨パッドを提供する段階(S210)は、前述の通りである。
【0182】
前記半導体素子の製造方法(S200)は、研磨対象を研磨する段階(S220)を含む。
【0183】
具体的に、前記一実現例による研磨パッドを定盤上に装着した後、半導体基板を前記研磨パッド上に配置する。この際、前記半導体基板は、例えば、シリコンウェーハであり、前記半導体基板の表面は前記研磨パッドの研磨面に直接接触する。研磨のために前記研磨パッド上に、ノズルを介して研磨スラリーを噴射され得る。前記ノズルを介して供給される研磨スラリーの流量は、約10cm3/分~約1000cm3/分の範囲内で目的に応じて選択され、例えば、約50cm3/分~約500cm3/分であり得るが、これに限定されるものではない。
【0184】
その後、前記半導体基板と前記研磨パッドとが互いに相対回転して、前記半導体基板の表面が研磨され得る。この際、前記半導体基板の回転方向と前記研磨パッドの回転方向とは同一方向でも良く、逆方向でも良い。前記半導体基板と前記研磨パッドとの回転速度は、約10rpm~約500rpmの範囲で目的に応じて選択され、例えば、約30rpm~約200rpmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0185】
前記半導体基板は、研磨ヘッドに装着された状態で前記研磨パッドの研磨面に所定の荷重で加圧されて当接するようにした後、その表面が研磨され得る。前記研磨ヘッドによって前記半導体基板の表面が前記研磨パッドの研磨面に当接するよう加えられる荷重は、約1gf/cm2~約1000gf/cm2の範囲で目的に応じて選択され、例えば、約10gf/cm2~約800gf/cm2であり得るが、これに限定されるものではない。
【0186】
本発明の実現例によると、前記研磨パッドが特定成分の硬化剤を用いて形成された研磨層を含むことにより、低硬度を実現することができ、研磨パッドの表面粗さ減少率(RSk(%))および回復弾性抵抗指数(RERI)を特定の範囲に調節することにより、研磨パッドの機械的物性の向上はもちろん、半導体基板の表面上に現れる表面欠陥特性を改善することができ、研磨率をさらに向上させることができ、前記研磨パッドを用いて優れた品質の半導体素子を効率良く製造し得る。
【0187】
(実施例)
以下、本発明を下記実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を例示するためのものであるのみ、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0188】
(実施例1.研磨パッドの製造)
(1)ウレタン系プレポリマーの調製
トルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate;TDI、BASF社)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(dicyclohexylmethane diisocyanate;H12MDI)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(polytetramethylene ether glycol;PTMEG、Korea PTG社)、およびジエチレングリコール(diethylene glycol;DEG)を4口フラスコに投入し、80℃にて3時間反応させて、ウレタン系プレポリマーを調製した。この際、NCO%は10%に調節した。
【0189】
(2)研磨パッドの製造
ウレタン系プレポリマー、硬化剤、および発泡剤等の原料をそれぞれ供給するためのタンクおよび投入ラインを備えられたキャスティング装置を用意した。先に調製されたウレタン系プレポリマー、硬化剤として、3級アミン系ポリオールであるメチルオキシラン含有1,2-エタンジアミンポリマー(LA-480、CAS No.25214-63-5)と、芳香族アミン化合物であるN,N'-ビス(sec-ブチルアミノ)ジフェニルメタンとを50:50重量比で混合して、混合硬化剤を用意した。固相発泡剤は、未膨張(unexpanded)粒子を含む固相発泡剤(AkzoNobel社、551DU40)を用意した。さらに、シリコーン系界面活性剤(Evonik社)を用意した。
【0190】
前記調製されたウレタン系プレポリマー、混合硬化剤、固相発泡剤、および界面活性剤の注入ラインが備えられたキャスティング装置にて、ウレタン系プレポリマータンクに前記NCO%10%で合成されたウレタン系プレポリマーを充填し、硬化剤タンクに前記混合硬化剤を充填すると同時に、固相発泡剤を注入し、ミキシングヘッドの回転速度を5000rpmに調整して撹拌した。この際、各成分の含有量は表1の通りであり、前記ウレタン系プレポリマーと混合硬化剤との当量を1:1に合わせた。前記混合された混合物を1分当たり10kgの速度で吐出し、100℃に予熱された縦横1000mm、高さ3mmの開口状のモールドに注入し、熱硬化反応により固相化して成形体を得た。
【0191】
その後、前記成形体の固形物をスライスしてシート状に加工した。前記加工済みシートを、溝加工工程を経て厚さ2mmのシート1枚(研磨層)を得た。加工が完了したシートを接着剤によりサブパッドと積層して、最終的に研磨パッドを得た。
【0192】
(実施例2~3)
表1に記載のように、3級アミン系ポリオールおよび芳香族アミン化合物の重量比を変更したことを除いては、実施例1と同様の方法により行って研磨パッドを得た。
【0193】
(実施例4)
表1に記載のように、硬化剤として、3級アミン系ポリオールであるメチルオキシラン含有1,2-エタンジアミンポリマー(LA-480、CAS No.25214-63-5)を単独使用したことを除いては、実施例1と同様の方法により行って研磨パッドを得た。
【0194】
(比較例1)
表1に記載のように、硬化剤として、4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)を単独で使用したことを除いては、実施例1と同様の方法により行って研磨パッドを得た。
【0195】
(比較例2)
表1に記載のように、硬化剤として、3級アミン系ポリオールであるメチルオキシラン含有1,2-エタンジアミンポリマー(LA-480、CAS No.25214-63-5)および4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)の混合硬化剤を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法により行って研磨パッドを得た。
【0196】
下記表1は、CMP工程の細部条件をまとめたものである。
【0197】
【0198】
(試験例)
(試験例1:物性)
前記実施例および比較例で得られた研磨パッドを以下の項目について試験し、その結果を表3に示した。
【0199】
(1)硬度
前記実施例および比較例により製造された研磨パッドのショアD硬度を測定し、前記実施例および比較例により製造された研磨パッドを2cm角(厚さ:2mm)の大きさに裁断した後、温度25℃にて16時間静置した。その後、硬度計(D型硬度計)を用いて研磨パッドの硬度を測定した。
【0200】
(2)比重
前記実施例および比較例により製造された研磨パッドを4cm×8.5cmの長方形(厚さ:2mm)に裁断した後、温度23±2℃、湿度50±5%の環境にて16時間静置した。比重計を用いて研磨パッドの比重を測定した。
【0201】
(3)引張強度
前記実施例および比較例により製造された研磨パッドを4cm×1cm(厚さ:2mm)に裁断し、万能試験機(UTM)を用いて50mm/分の速度において研磨パッドの破断直前の最高強度値を測定した。
【0202】
(4)伸び率
前記実施例および比較例により製造された研磨パッドを4cm×1cm(厚さ:2mm)に裁断し、万能試験機(UTM)を用いて50mm/分の速度において研磨パッドの破断直前の最大変形量を測定した後、最初の長さに対する最大変形量の比を百分率(%)で示した。
【0203】
(試験例2:表面粗さ)
実施例および比較例により製造された研磨パッドについて、粗さ測定装置(Bruker社製、モデル名:contour-gt)を用いて表2の条件で研磨前後のSk値を測定し、下記式1で表示される表面粗さ減少率(RSk(%))を算出した。
【0204】
[式1]
前記式1において、
Sk
1は、研磨前の研磨パッドのコア粗さ深さ(core roughness depth)であり、
Sk
2は、4.0psiのキャリア加圧条件、87rpmのキャリア回転速度、および93rpmの定盤回転速度の条件下で、シリコン酸化膜を含む半導体基板に対してか焼セリアスラリーを250ml/分の速度で噴射してシリコン酸化膜を60秒間研磨した後測定した研磨パッドのコア粗さ深さであり、
Sk
1およびSk
2のそれぞれは、研磨前研磨パッドおよび研磨後研磨パッドについて光学用表面粗さ測定器で測定したデータをISO25178-2規格に基づいて計算した値である。
【0205】
【0206】
(試験例3:走査電子顕微鏡(SEM))
実施例および比較例で製造された研磨パッドの断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察して
図5に示した。
図5の(a)は、実施例1~3、および比較例1で製造した研磨パッド断面を100倍率で分析したSEM画像であり、(b)は実施例1~3、および比較例1で製造した研磨パッド断面を300倍率で分析したSEM画像である。
【0207】
図5から分かるように、実施例1~3の研磨パッドの気孔は、比較例1に比べて広い面積にわたって微細かつ均一に分布している。
【0208】
(試験例4:研磨率(removal rate))
研磨パッド製造直後の初期研磨率を以下のように測定した。
【0209】
直径300mmのシリコンウェーハに酸化ケイ素を化学気相蒸着(CVD)工程により蒸着した。CMP装置に研磨パッドを貼り付け、シリコンウェーハの酸化ケイ素層が研磨パッドの研磨面に向くように設置した。その後、研磨荷重が4.0psiとなるように調整し、研磨パッド上にか焼セリアスラリーを250ml/分の速度で投入しながら、定盤を100rpmで60秒間回転させて、シリコン酸化膜を研磨した。研磨後、シリコンウェーハをキャリアから取り出し、回転式脱水機(spin dryer)に装着して精製水(DIW)で洗浄した後、窒素(N)で15秒間乾燥した。乾燥したシリコンウェーハを分光干渉式ウェーハ厚み計(Kyence社製、モデル名:SI-F80R)を用いて研磨前後の膜厚変化を測定した。その後、下記式3を用いて研磨率を計算した。
[式3]
研磨率(Å/分)=シリコンウェーハの研磨厚さ(Å)/研磨時間(分)
【0210】
(試験例5:表面欠陥測定)
研磨パッドを用いて実施例および比較例に記載の研磨工程を行った後、欠陥検査装置(AIT XP+、KLA Tencor社)を用いて研磨後にウェーハ表面上に現れる残渣、スクラッチおよびチャターマークを測定した(条件:しきい値150、ダイフィルタ(die filter)しきい値280)。
【0211】
具体的に、研磨後、シリコンウェーハをクリーナー(Cleaner)に移動させ、1%HFと精製水(DIW)、1%H2NO3、精製水(DIW)をそれぞれ使用して10秒ずつ洗浄した。その後、回転式脱水機に移動させ精製水(DIW)で洗浄した後、窒素で15秒間乾燥した。乾燥したシリコンウェーハを前記欠陥検査装置により研磨前後の欠陥変化を測定した。
【0212】
前記残渣は、実質的に不定形の異物がウェーハ表面上に付着していることを意味するものであり、一例として
図6に示すような形状の欠陥(defect)のことを意味する。
【0213】
前記スクラッチは、実質的に連続的な線形のひっかき傷のことを意味するものであり、一例として
図7に示すような形状の欠陥のことを意味する。
【0214】
一方、前記チャターマークは、実質的に不連続的な線形のひっかき傷のことを意味するものであり、一例として
図8に示すような形状の欠陥のことを意味する。
前記残渣、スクラッチおよびチャターマークの総欠陥数を下記表4に示す。
【0215】
【0216】
【0217】
前記表3に示すように、硬化剤としてエーテル結合を含む3級アミン系ポリオールを使用し、表面粗さ減少率(RSk(%))および回復弾性抵抗指数(RERI)を特定の範囲に調整した実施例1~4の研磨パッドは、硬度、引張強度および伸び率などの機械的物性が全体的に優れていることを確認した。
【0218】
具体的に見てみると、実施例1~4の研磨パッドは硬度が45.6ショアD~47.3ショアDで低硬度を実現できる反面、比較例1の研磨パッドは硬度が65.7ショアDであり、比較例2の研磨パッドは52.1ショアDと、硬度が実施例1~4の研磨パッドよりも高いため、さらにハード(hard)となることが分かる。
【0219】
さらに、実施例1~4の研磨パッドは、引張強度が16.5N/mm2~19.2N/mm2であり、伸び率が232%~302%であるのに対し、比較例1および2の研磨パッドは、それぞれ引張強度が25.3N/mm2および20.2N/mm2と非常に高く、伸び率が72%および130%と、低い伸び率を有することを確認した。
【0220】
特に、実施例1~4の研磨パッドは、エーテル結合を含む3級アミン系ポリオールの含有量が増加するにつれ硬度および引張強度が減少し、伸び率が上昇して、本発明において満足する機械的物性を実現できることを確認した。
【0221】
このような機械的物性は、研磨パッドの研磨性能および半導体基板の表面に現れる表面欠陥の減少効果を増進し得る。
【0222】
具体的に、前記表4に示すように、実施例1~実施例4の研磨パッドは研磨率に優れ、ウェーハ表面に現れる残渣、表面スクラッチおよびチャターマーク数等の表面欠陥が、比較例1および2の研磨パッドを使用した場合に比べて著しく低いことが分かる。
【0223】
具体的に見てみると、実施例1~4の研磨率は1695Å/分~1715Å/分と概ね優れているのに対し、比較例1および2の研磨パッドの研磨率はそれぞれ3765Å/分および3200Å/分と、スラリーを担持し得る空隙に対する摩擦部位の比が増加して、初期研磨率が過度に高かった。これにより、比較例1および2の研磨パッドは、パッドグレージング(pad glazing)現象による研磨率のさらなる増加が予想される。
【0224】
また、ウェーハ表面に現れる表面欠陥を見ると、実施例1~実施例4の研磨パッドを用いた場合は、表面欠陥の数が3個~8個であるのに対し、比較例1および比較例2の研磨パッドを用いた場合は、表面欠陥の数がいずれも20個以上と、実施例1~実施例4の研磨パッドを用いた場合に比べて3倍~8倍以上著しく増加することを示した。これは、比較例1の研磨パッドのパッドグレージング現象によりウェーハ表面に現れる表面欠陥が上昇したことを予測し得る。
【0225】
一方、同一含有量の混合硬化剤を用いた実施例1および比較例2を見ると、3級アミン系ポリオールであるLA-480および芳香族アミン化合物であるN,N'-ビス(sec-ブチルアミノ)ジフェニルメタンの混合硬化剤を用いた実施例1の研磨パッドは、LA-480およびMOCAを用いた比較例2の研磨パッドに比べて、本発明で目的とする表面粗さ減少率(RSk(%))および回復弾性抵抗指数(RERI)を同時に特定範囲で満足することができ、これにより、実施例1の研磨パッドが比較例2の研磨パッドに比べて、機械的物性はもちろん、研磨率およびウェーハ表面に現れる表面欠陥改善効果などがいずれも著しく向上したことが確認できる。
【0226】
したがって、特定成分の硬化剤を使用し、表面粗さ減少率(RSk(%))および回復弾性抵抗指数(RERI)を特定範囲に調節することにより、低硬度、低引張強度および高伸び率などの機械的物性を向上させることができ、特に、前記研磨パッドは表面粗さ減少率(RSk(%))が低いので、パッドグレージング現象を最小化することができ、これにより研磨率およびウェーハ表面の表面欠陥を下げるのに大きな利点があることが確認できる。
【符号の説明】
【0227】
110:ヘッド
120:半導体基板(ウェーハ)
130:プラテン(定盤)
140:スラリー
150:気孔