(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185586
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】六方晶窒化ホウ素粉末及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 21/064 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
C01B21/064 M
C01B21/064 H
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089340
(22)【出願日】2022-06-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2021093063
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】台木 祥太
(72)【発明者】
【氏名】上田 晃平
(72)【発明者】
【氏名】池田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】廣實 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悟
(57)【要約】
【課題】粗粒の少ない六方晶窒化ホウ素粉末を提供する。
【解決手段】湿式粒度分布測定における2.0~5.0μmの粒子の割合が50体積%以上、グラインドゲージ測定粒径が29μm以下であることを特徴とする六方晶窒化ホウ素粉末。このような六方晶窒化ホウ素粉末は、粗粒が少なく、狭い間隙に充填する封止材料用のフィラーとして好適に使用出来るだけでなく、該封止材料に高い熱伝導性を付与することが可能である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式粒度分布測定における2.0~5.0μmの粒子の割合が50体積%以上、グラインドゲージ測定粒径が29μm以下であることを特徴とする六方晶窒化ホウ素粉末。
【請求項2】
比表面積が6.0~12.0m2/gである、請求項1記載の六方晶窒化ホウ素粉末。
【請求項3】
グラインドゲージ測定粒径(μm)/湿式粒度分布測定D100(μm)が1.0~2.3である、請求項1または2記載の六方晶窒化ホウ素粉末。
【請求項4】
X(μm)の間隙に充填する封止材料用フィラーであり(ただし、Xは10~30μmの範囲である)、前記グラインドゲージ測定粒径の上限がX-1(μm)であることを特徴とする請求項1または2記載の六方晶窒化ホウ素粉末。
【請求項5】
請求項4記載の六方晶窒化ホウ素粉末と樹脂とを含有する樹脂組成物からなる、X(μm)の間隙充填用途の封止材料。
【請求項6】
湿式粒度分布測定D50が2.0~4.0μmの原料六方晶窒化ホウ素粉末が含有割合14質量%以下で溶媒に分散した六方晶窒化ホウ素スラリーを、目開き5μm~15μmのフィルターを通過させて処理する工程を含む、六方晶窒化ホウ素粉末の製造方法。
【請求項7】
前記フィルターを通過させる工程は、内側でスクリューを回転させた円筒フィルターに原料六方晶窒化ホウ素スラリーを投入する工程を含むことを特徴とする、請求項6記載の六方晶窒化ホウ素粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は六方晶窒化ホウ素粉末に関する。詳しくは、粗大粒子が極めて少なく狭い間隙への充填した時に、良好な充填性を発現する六方晶窒化ホウ素粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の小型化と高性能化への要求から、半導体デバイスの高集積化が進み、同時にデバイスから発生する熱を効率的に逃がすための放熱材料の使用量が拡大しており、さらに材料の放熱性能の向上が求められている。半導体素子の発生する熱をヒートシンクや筺体等に逃がす経路には様々な放熱材料が用いられる。半導体デバイスにおける、封止材料、接着剤、グリース、樹脂シートなどの樹脂複合材料には、アルミナ、窒化アルミニウム、六方晶窒化ホウ素などの高熱伝導性フィラーが使用されている。これら放熱部材は、近年、更なる軽量化を求めて小型化への検討が進められており、高熱伝導性フィラーのなかでも六方晶窒化ホウ素は、比重が低く、軽いフィラーであるため、部品の軽量化に寄与出来る魅力的なフィラーである。
【0003】
封止材料は、放熱性の向上のために半導体デバイスの間隙に充填する材料である。近年は半導体デバイスの小型化、高集積化に伴い、封止材料を充填する間隙の狭窄化が進んでおり、とりわけ30μm以下の狭い間隙に適した封止材料が求められてきている。このような狭い間隙へ封止材料を充填する際に、フィラー中に粗大粒子が含まれると、詰まりが発生し、充填ムラやボイド、成形不良が発生するなどの問題が発生する恐れがあり、高熱伝導性フィラーから粗粒カットの必要性が高まってきている。また、狭窄化した間隙に充填する封止材料においては、熱伝導性向上のためには、間隙サイズに応じた粒径の高熱伝導性フィラーの存在が重要である。よって、狭い間隙に充填する封止材料の熱伝導率を高めるためには、高熱伝導性フィラーの粒径を、間隙の厚みに応じて適した粒径に制御する必要がある。
【0004】
従来、高熱伝導フィラーを充填した樹脂組成物を実現するにあたって、特許文献1では、小粒径の六方晶窒化ホウ素粉末を使用するという技術が報告されている。特許文献2では、湿式レーザー回折粒度分布において、36μm以上の粒子が0.1~5.0体積%含有する窒化ホウ素粉末が報告されている。しかしながら、これらの六方晶窒化ホウ素粉末は粗大粒子が十分に除去されておらず、上記問題点を十分に解決することが出来るものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2015/122378号公報
【特許文献2】WO2019/172440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、六方晶窒化ホウ素粉末から粗大粒子を除去することにより、30μm程度以下の間隙に充填する封止材料のフィラーとして特に適した六方晶窒化ホウ素粉末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。しかしながら、従来の六方晶窒化ホウ素粉末を、単に乾式篩で分級して粗大粒子を除去するのみでは、粗大粒子の量をコントロールすることが出来たとしても、微粉が増加してしまい、該封止材料の熱伝導性を高めるのに適した粒径である粒径2.0~5.0μm程度の粒子の存在割合が少なくなってしまった。
【0008】
そこでさらに検討を進めた結果、ホウ素酸化物と、窒素を含む有機化合物を含む混合粉末を用いるメラミン法を用いて粒径2.0~4.0μm程度の粒子の存在割合が多い原料六方晶窒化ホウ素粉末を得た後、特定の湿式分級処理を行う、特定の製造方法を採用することによって得られた六方晶窒化ホウ素粉末により、前記課題を全て解消できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、以下に記載のものである。
【0010】
[1]
湿式粒度分布測定における2.0~5.0μmの粒子の割合が50体積%以上、グラインドゲージ測定粒径が29μm以下であることを特徴とする六方晶窒化ホウ素粉末。
【0011】
[2]
さらに、比表面積が6.0~12.0m2/gである六方晶窒化ホウ素粉末。
【0012】
[3]
さらに、グラインドゲージ測定粒径(μm)/湿式粒度分布測定D100(μm)が1.0~2.3である六方晶窒化ホウ素粉末。
【0013】
[4]
X(μm)の間隙に充填する封止材料用のフィラーであり(ただし、Xは10~30μmの範囲である)、前記グラインドゲージ測定粒径の上限がX-1(μm)であることを特徴とする前記六方晶窒化ホウ素粉末。
【0014】
[5]
前記六方晶窒化ホウ素粉末と樹脂とを含有する樹脂組成物からなる、X(μm)の間隙充填用の封止材料。
【0015】
[6]
湿式粒度分布測定D50が2.0~4.0μmの原料六方晶窒化ホウ素粉末が含有割合14質量%以下で溶媒に分散した六方晶窒化ホウ素スラリーを、目開き5~15μmのフィルターを通過させて処理する工程を含む、六方晶窒化ホウ素粉末の製造方法。
【0016】
[7]
前記フィルターを通過させる工程は、内側でスクリューを回転させた円筒フィルターに六方晶窒化ホウ素スラリーを投入する工程を含むことを特徴とする、六方晶窒化ホウ素粉末の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の六方晶窒化ホウ素粉末は粗大粒子が少ないため、狭い間隙に充填する封止材料に好適に使用することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の六方晶窒化ホウ素粉末は、湿式粒度分布測定における2.0~5.0μmの粒子の割合が50体積%以上である。
【0019】
本発明における六方晶窒化ホウ素粉末の湿式粒度分布測定において、測定サンプルは、50mLスクリュー管瓶にエタノール20gを分散媒として加え、エタノール中に六方晶窒化ホウ素粉末1gを分散させることで調製した。なお、測定サンプルに対して超音波処理は行わない。これを、レーザー回折散乱型粒度分布計を用いて粒度分布を測定した。測定装置としては、これに限定されるものではないが、例えば、後述する実施例に記載しているように、日機装株式会社製:粒子径分布測定装置MT3000を用いることができる。これにより得られた粒子径の体積頻度分布から、2.0~5.0μmの粒子の体積割合を求める。また、前記粒子径の体積頻度分布において、体積頻度の累積値が50%となるところの粒径の値をD50、95%となるところの粒径の値をD95、100%となるところの粒径の値をD100とする。
【0020】
5~30μmの間隙に充填する封止材料においては、粒径2~5μm付近の粒子により、熱伝導率を高めることが出来る。そのため、本発明の六方晶窒化ホウ素粉末は、湿式粒度分布測定における2.0~5.0μmの粒子の割合が50体積%以上、好ましくは60体積%以上である。
【0021】
本発明の六方晶窒化ホウ素粉末は、D50が2.0~4.0μm、D95が4.5~7.0μm、D100が15μm以下の範囲にあることが好ましい。D50が2.0μm、D95が5.0μm未満の場合、封止材料の粘度が高くなり間隙に充填する際の操作性が低下する傾向にある。また、5μm~20μm程度の間隙に充填する封止材料において、高い熱伝導率が得られにくくなる。また、D50が4.0μm、D95が7.0μm、D100が15μmより大きいと、粒子による抵抗のため封止材料の充填する際の操作性が低下する傾向にある。D50は、より好ましくは2.1~3.8μmであり、D95は、より好ましくは4.8~6.7μmである。
【0022】
従来の湿式粒度分布測定では、ある一定量以上含まれる粒子しかカウントされないため、実際に存在する粒子でも、粒度分布上には現れず、また、溶媒に分散している間に、凝集した粗大粒子が緩やかにほぐれてしまうこともある。そのため、実際の六方晶窒化ホウ素粉末中には、湿式粒度分布で測定したD100よりも大きな粒子が含まれている場合が多く、湿式粒度分布測定では粗大粒子や凝集粒子の存在を十分に評価することは困難であり、従来は狭い間隙に特に適した六方晶窒化ホウ素粉末が得られていなかった。一方で、グラインドゲージで測定すると、極微量の粗大粒子で斑点を生じるため、実際に六方晶窒化ホウ素粉末を狭い間隙に充填する封止材料用のフィラーとして使用した際に、問題発生の原因となる粗大粒子を精度よく検出することが出来る。そのため、粒度分布測定には現れない粗大粒子や凝集粒子の量をコントロールするために、グラインドゲージ測定粒径を制御することが重要である。
【0023】
本発明において、好ましいグラインドゲージ測定粒径は29μm以下である。グラインドゲージ測定粒径が29μm以下であることで、30μm程度の間隙への充填を想定する封止材料において、間隙に充填する際に詰まりが発生し、充填ムラやボイド、成形不良が発生するなどの問題を高度に防止することが出来る。
【0024】
なお、六方晶窒化ホウ素粉末のグラインドゲージ測定粒径の上限値を調整することで、30μmよりも狭い間隙向けの封止材料に対しても使用可能となるため、目的とする間隙サイズに応じた六方晶窒化ホウ素粉末を開示することが出来る。具体的には、目的とする間隙サイズがX(μm)である場合、グラインドゲージ測定粒径の上限をX-1(μm)に調整することが好ましく、例えば25μmの間隙に充填する封止材料に使用する場合は、グラインドゲージ測定粒径の上限を24μmに、20μmの間隙に充填する封止材料に使用する場合は、グラインドゲージ測定粒径の上限を19μmに制御すれば良い。そのため、湿式粒度分布測定における2.0~5.0μmの粒子の割合が50体積%以上、グラインドゲージ測定粒径の上限がX-1(μm)である、Xμmの間隙に充填する封止材料用のフィラーである六方晶窒化ホウ素粉末(ただし、間隙サイズXは5~30μmの範囲である)を、本発明として開示することもできる。
【0025】
グラインドゲージ測定粒径の下限は特に限定されないが、5~30μm程度の間隙に充填する封止材料において高い熱伝導率の樹脂シートが得られやすくなるため、グラインドゲージ測定粒径は4μm以上であることが好ましい。
【0026】
また、本発明の六方晶窒化ホウ素粉末は、グラインドゲージ測定粒径(μm)/湿式粒度分布測定D100(μm)が1.0~2.3の範囲にあることが好ましい。グラインドゲージ測定粒径(μm)/湿式粒度分布測定D100(μm)が1.0を下回る粉末は作製する事は困難であり、グラインドゲージ測定粒径(μm)/湿式粒度分布測定D100(μm)が2.3を超えると、シート内で熱伝導率を効果的に発現させる粒径の大きい粒子の割合が少ないことを意味し、間隙5~30μmに充填する樹脂組成物において高い熱伝導率が得られにくくなる。グラインドゲージ測定粒径(μm)/湿式粒度分布測定D100(μm)は、好ましくは1.0~2.1の範囲である。
【0027】
なお、グラインドゲージ測定粒径は、JISK5600-2-5によって測定されるものである。具体的には、六方晶窒化ホウ素粉末1質量部と、25℃での動粘度が1000cStのシリコーン樹脂10質量部を混合して得た樹脂ペーストを、グラインドゲージを使用した際に斑点が表れる点を観察することで測定したものである。
【0028】
本発明の六方晶窒化ホウ素粉末は、窒素吸着1点法で測定したBET比表面積が6.0~12.0m2/gの範囲にあることが好ましい。比表面積が6.0m2/g未満だと、六方晶窒化ホウ素単粒子の粒径が大きく、特に上記単粒子が凝集する場合や上記単粒子が楕円形や細長い粒子である場合、粗大粒子が存在しやすくなる。比表面積が12.0m2/gを超えると、一次粒子径が小さいため凝集粒子を構成して粗大粒子が発生しやすくなる。比表面積は、6.5~11.0m2/gがより好ましく、7.0~10.0m2/gがさらに好ましい。
【0029】
本発明の六方晶窒化ホウ素粒子の一次粒子の平均アスペクト比(長径/厚み)は3~20、特には3~15であることが好ましい。3未満は製造困難であり、20を超えると、比表面積の低い粉末の場合、長径が大きい薄片板状粒子になる恐れがあり、好ましくない。
【0030】
また、本発明の六方晶窒化ホウ素粉末は、単粒子が凝集した凝集粒子を含むことが好ましい。一般に六方晶窒化ホウ素の一次粒子は扁平であり、且つ幅方向の熱伝導性が高く厚み方向の熱伝導性が低い熱伝導異方性がある。従って、樹脂に配合されたとき、熱伝導に異方性を示し、粒子の幅方向の熱伝導性が高く、粒子の厚み方向の熱伝導性は低い。このような熱伝導の異方性は、厚みが薄い樹脂シートや小間隙に充填される封止材において、特に顕著に表れ、熱伝導率が低くなる方向が生じてしまう。しかしながら、一次粒子が凝集していると、凝集体中で単粒子がランダムな向きを指向しているため、上記のような熱伝導の異方性が抑制され、熱伝導性の低い方向の発生を有効に防止することができる。
【0031】
本発明において、六方晶窒化ホウ素粉末における凝集粒子の存在は、超音波処理を行う湿式粒度分布測定から算出したD50Sと前記湿式粒度分布測定でのD50との比(D50S/D50)から確認することができる。即ち、凝集粒子は超音波によって解砕されるため、凝集粒子を多く含んでいれば、D50S/D50の値が小さくなる。例えば、D50S/D50の値は、0.40~0.85、特には0.50~0.80が好ましい。
【0032】
なお、超音波処理を行う湿式粒度分布測定は、測定サンプルの調製において、50mLスクリュー管瓶にエタノール20gを分散媒として加え、エタノール中に六方晶窒化ホウ素粉末1gを分散させた後、90Wで20分超音波処理を行う以外は、超音波処理を行わない場合と同様の方法で行うことができる。
【0033】
本発明の六方晶窒化ホウ素粉末は、高純度であることが好ましいため、不純物酸化ホウ素量が400ppm以下であることが好ましい。より好ましくは250ppm以下である。また、同様の理由で、炭素含有量が0.001~0.050質量%、酸素含有量が0.01~0.95質量%であることが好ましい。
【0034】
本発明の六方晶窒化ホウ素粉末の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、メラミン法によって得られる所定の粒度分布を有する原料六方晶窒化ホウ素粉末から、湿式分級により粗大粒子を取り除くことにより得ることができる。前記原料六方晶窒化ホウ素粉末は、湿式粒度分布測定D50が2.0~4.0μmである。D50が2.0μm未満であると、小粒径粒子の割合が増えたり、凝集の発生によりグラインドゲージ測定粒径が大きくなったりしやすくなるため好ましくなく、4.0μmを超えると粗大粒子が混入しやすくなる。原料六方晶窒化ホウ素粉末は、粒度分布測定D50が、2.0~3.5μmであることが好ましく、2.0μm~3.0μmであることがより好ましい。また、後述のように湿式分級後に凝集粒子が生成して粗大粒子が発生する場合もあるため、原料窒化ホウ素粉末の比表面積は12.0m2/g以下であることが好ましく、11.0m2/g以下であることがより好ましく、10.0m2/g以下であることがさらに好ましい。比表面積が12.0m2/g以下であることで、一次粒子が小さく、湿式分級後に凝集が発生しにくい。
【0035】
(原料六方晶窒化ホウ素粉末の製造方法)
本発明において、原料六方晶窒化ホウ素粉末の製造方法は、特に制限されるものではないが、代表的な製造方法を例示すれば、ホウ素酸化物と、窒素を含む有機化合物を含む混合粉末を加熱する加熱工程を含む、所謂メラミン法が挙げられる。メラミン法は小粒径の窒化ホウ素粉末を得ることが容易であるため、本発明の原料六方晶窒化ホウ素粉末を得るために好ましい方法である。
【0036】
原料六方晶窒化ホウ素粉末の製造方法において、前記混合粉末に含まれるホウ素酸化物としては、三酸化二ホウ素(酸化ホウ素)、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素、硼砂、または無水硼砂等を例示でき、なかでも三酸化二ホウ素を用いることが好ましい。ホウ素酸化物として三酸化二ホウ素を用いることにより、安価な原料を使用するので工業的に有益である。なお、ホウ素酸化物として、二種以上を併用してもよい。
【0037】
混合粉末に含まれる窒素を含む有機化合物としては、メラミン、アンメリン、アンメリド、メラム、メロン、ジシアンジアミド、および尿素等を例示でき、なかでもメラミンを用いることが好ましい。窒素を含む有機化合物としてメラミンを用いることにより、安価な原料を使用するので工業的に有益である。なお、窒素を含む有機化合物として、二種以上を併用してもよい。
【0038】
前記混合粉末における窒素原子に対するホウ素原子の質量比(B/N)は、0.30以上、1.00以下であることが好ましく、0.35以上、0.95以下であることがより好ましい。B/Nが0.30以上であることにより、B源を確保し、十分な収率を確保することができる。また、B/Nが1.00以下であることにより、窒化に十分なN源を確保することができる。なお、加熱工程において加熱する混合粉末における窒素原子は、窒素を含む有機化合物由来であり、過熱工程において加熱する混合粉末におけるホウ素原子は、ホウ素酸化物由来である。
【0039】
前記混合粉末はホウ素酸化物と窒素を含む有機化合物以外に、フラックス剤として、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の炭酸塩または酸化物、複合酸化物を含んでも良い。上記アルカリ金属およびアルカリ土類金属の炭酸塩または酸化物、複合酸化物としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、硼砂、無水硼砂を例示される。なお、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の炭酸塩または酸化物、複合酸化物としては、二種以上を併用してもよい。
【0040】
また、前記混合粉末におけるフラックス剤の割合(窒素を含む有機化合物とホウ素酸化物のB基準酸化ホウ素換算重量の合計質量)/(フラックス剤の質量)は、1.0以上、2.5以下であることが好ましく、1.1以上、2.2以下であることがより好ましい。(窒素を含む有機化合物とホウ素酸化物のB基準酸化ホウ素換算重量の合計質量)/(フラックス剤の質量)比が1.0未満であると、フラックス剤の量が少なく好ましくない。2.5を超えると、焼き上がりの窒化品が硬くなり、好ましくない。
【0041】
原料六方晶窒化ホウ素粉末の製造方法において、加熱工程では、混合粉末を最高温度1000℃以上、1500℃以下で加熱することが好ましい。1000℃以上の温度で混合粉末を加熱することにより、六方晶窒化ホウ素一次粒子の粒子径が過度に小さくなることを抑制できる。最高温度は、1100℃以上であることがより好ましく、1150℃以上であることがさらに好ましい。また、1500℃以下の温度で混合粉末を加熱することにより、フラックス剤を使用する場合、その揮発を防ぐことができるとともに、六方晶窒化ホウ素一次粒子の粒子径が大きくなることを抑制できる。最高温度は1450℃以下であることがより好ましい。
【0042】
前記加熱工程では、不活性ガス雰囲気下であって、常圧または減圧環境下において、混合粉末を加熱することが好ましい。上記環境において加熱することにより、加熱炉体の損傷を抑制できる。なお、本明細書において、不活性ガス雰囲気下とは、混合粉末を加熱する容器に不活性ガスを流入させ、当該容器内部の気体を不活性ガスで置換した状態である。不活性ガスの流入量は、特に限定されないが、不活性ガスの流入量が5L/min.以上であってよい。また、不活性ガスは、例えば窒素ガス、炭酸ガスまたはアルゴンガス等であってよい。
【0043】
(解砕工程)
本発明の六方晶窒化ホウ素粉末の製造方法において、上述の方法で得られた六方晶窒化ホウ素窒化品は、凝集しているため、粒径の調整を目的に解砕工程を設けても良い。かかる解砕工程は、六方晶窒化ホウ素窒化品に含有される六方晶窒化ホウ素一次粒子が凝集することにより構成された六方晶窒化ホウ素窒化品を解砕する工程である。解砕方法は特に限定されずロールクラッシャーやジェットミル、ビーズミル、遊星ミル、石臼型摩砕機などによる解砕であって良い。また、これらの解砕方法を組み合わせても良く、さらに複数回行っても良い。なお、解砕工程により装置等から金属不純物が混入する場合があるが、後述の酸洗浄工程及び水洗工程により高度に除去することが可能である。
【0044】
(酸洗浄)
前記製造方法において、上述のメラミン法によって得られる窒化物は、六方晶窒化ホウ素粉末の他に、酸化ホウ素からなる酸化物等の不純物が存在するため、酸を用いて洗浄することが好ましい。かかる酸洗浄の方法は特に制限されず、公知の方法が制限無く採用される。例えば、窒化処理後に得られた窒化物を解砕して容器に投入し、該窒化物の5~10倍量の希塩酸(5~20質量%HCl)を加え、4~8時間接触せしめる方法などが挙げられる。上記酸洗浄時に用いる酸としては、塩酸以外にも、硝酸、硫酸、酢酸等を用いることも可能である。
【0045】
上記酸洗浄の後、残存する酸を洗浄する目的で、純水を用いて洗浄しても良い。上記洗浄の方法としては、上記酸洗浄時の酸をろ過した後、使用した酸と同量の純水に酸洗浄した窒化ホウ素を分散させ、再度ろ過する。
【0046】
(乾燥)
上記酸洗浄と、必要に応じて水洗浄を行った後の含水塊状物を、50~250℃の大気、もしくは減圧下での乾燥を行うことが好ましい。乾燥時間は、特に指定しないが、含水率が0%に限りなく近づくまで乾燥することが好ましい。
【0047】
(乾式分級)
乾燥後の原料六方晶窒化ホウ素粉末は、解砕後、後述の湿式分級の前に、必要に応じて、乾式篩等による粗大粒子の除去や、気流分級等による微粉除去を行うことが出来る。特に乾式篩工程を行うことが好ましい。原料六方晶窒化ホウ素粉末が、粒度分布の広く、粗粒の多い場合、後述の湿式分級時に、目詰まりが生じて湿式分級処理が行うことが困難となる場合が多いが、湿式分級の前に乾式篩によりある程度粗粒を除いておくことで、これを防止することが容易となる。前記乾式篩は目開き38~90μm篩であることが好ましい。ここで、目開きの下限を38μmとしたのは、乾式篩においては、目開き38μm未満の処理は、目詰まりなどを起こし、連続した篩処理を行うことが困難になるためである。
【0048】
上記製造方法により、湿式粒度分布測定D50が2.0~4.0μmの原料六方晶窒化ホウ素粉末を容易に得ることが出来る。なお、上記製造方法では、一次粒子の平均アスペクト比(長径/厚み)が3~20であり、薄片粒子の含有割合が少なく、後述する湿式分級処理を行うのに適した原料六方晶窒化ホウ素粉末を容易に得ることが出来る。
【0049】
(湿式分級操作)
本発明の六方晶窒化ホウ素粉末は、上記のような原料六方晶窒化ホウ素粉末を湿式分級して、特定の粒径以上の粗大粒子を除去することで得ることができる。湿式分級を行うことで、効率的に粗大粒子を除去して本願の六方晶窒化ホウ素粉末を得ることができる。湿式分級は、前記原料六方晶窒化ホウ素粉末を溶媒に分散した六方晶窒化ホウ素スラリーを、フィルターを通過させて処理する方法(以下、「フィルター分級」と称することがある)と、流体状にして粗大粒子と微粒子を分ける流体分級があるが、フィルター分級が、分級精度が良く、生産能力も高いため好ましい。
【0050】
(湿式分級の分散媒)
湿式分級は、原料六方晶窒化ホウ素粉末を溶媒に分散させた六方晶窒化ホウ素スラリーを処理することで行う。六方晶窒化ホウ素スラリーの溶媒は、原料六方晶窒化ホウ素粉末を分散可能な溶媒であれば特に制限なく使用可能であり、例えば、イオン交換水、純水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などが好適に使用できる。これらの溶媒は、1種のみを使用してもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0051】
(分散媒の量)
六方晶窒化ホウ素スラリーは、原料六方晶窒化ホウ素粉末の含有量が14質量%以下であることが好ましい。スラリー粘度が14質量%を超えると、つまりが発生してスラリーがスクリーンを通過することが困難となり、本発明の六方晶窒化ホウ素粉末を得ることが出来ない。原料六方晶窒化ホウ素の含有量は、12質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。また、生産性の観点から、原料六方晶窒化ホウ素の含有量は1質量%以上であれば好ましい。
【0052】
(分散方法)
原料六方晶窒化ホウ素を溶媒に分散させる工程は、特に限定されず、所定量の原料六方晶窒化ホウ素粉末と溶媒とを測り取って混合して、スラリーを調整すれば良い。なお、溶媒に分散させる前の原料六方晶窒化ホウ素粉末は、大部分の粒子が緩い凝集状態にある場合が多い。そのため、十分に分散させて目詰まりを抑制するために、ディスパーザー、ホモジナイザー、超音波分散機、ナノマイザー、プラネタリーミキサー、エジェクター、ウォータージェットミル、高圧分散機などの衝突分散機、湿式ボールミル、湿式振動ボールミル、湿式ビーズミルなどでスラリーを処理することが好ましく、ディスパーザー、ホモジナイザー、超音波分散機などで処理することが特に好ましい。
【0053】
(スラリー粘度)
前記原料六方晶窒化ホウ素スラリーは、25℃における粘度が1.0~60mPa・Sであることが好ましい。粘度を前記範囲とすることによって、後述の湿式フィルター分級を効率的に行うことが出来る。
【0054】
(湿式フィルター分級)
フィルター分級では、目開き5~15μmのフィルターを使用する。これにより、グラインドゲージ測定粒径が29μm以下である本発明の六方晶窒化ホウ素粉末を効率的に製造することが可能となる。
【0055】
フィルターは複数の目開きの物を段階的に組み合わせて使用しても良く、例えば、目開き5~15μmのフィルターの前に、目開きが15μmより大きなフィルターを通過させても良い。
【0056】
フィルターの材質、構造、形状などは特に制限されないが、フィルターのこれらの性質により分級ポイント、分級精度、詰まり発生の度合いなどが異なるため、原料六方晶窒化ホウ素粉末の物性や目的とするグラインドゲージ測定粒径に応じて適宜選択すれば良い。
【0057】
フィルターとしてはメンブレンフィルター、樹脂フィルター、金属製フィルター、ろ紙などが使用できるが、高純度な六方晶窒化ホウ素粉末が得られやすいことから、樹脂フィルターやステンレス製フィルターが好ましい。なお、前記原料六方晶窒化ホウ素の製造方法において、酸洗浄後に水洗浄を行わない場合は、スラリーが酸性となるため、樹脂フィルターを使用する事が必要である。
【0058】
また、フィルターは、使用前に六方晶窒化ホウ素スラリーに使用する溶媒に浸漬させることで、六方晶窒化ホウ素スラリーとの馴染みが向上し、効率的に濾過を行うことが出来る。
【0059】
スラリーを、フィルターに通過させる方法は特に制限されず、重力式、吸引式、加圧式、圧送式など公知の方法を使用することが出来るが、内側でスクリューを回転させた円筒フィルターに六方晶窒化ホウ素スラリーを投入する方法を好ましい方法として例示することが出来る。この方法は、スクリューの遠心力によって、目詰まりが発生しにくいため、効率的に湿式分級を行うことが容易であり好ましい。
【0060】
(溶媒除去・乾燥)
本発明の六方晶窒化ホウ素粉末を得るためには、湿式分級後に上記スラリーから溶媒を除去する必要がある。溶媒の除去方法は特に限定されず、例えば、六方晶窒化ホウ素粉末を含むスラリーを加熱装置で加熱することで行うことが出来る。加熱装置は、スラリーから溶媒を蒸発除去させることが可能であれば特に制限なく使用でき、具体的にはコニカルドライヤー、ドラムドライヤー、V型ドライヤー、振動乾燥機、ロッキングミキサー、ナウタミキサー、リボコーン、真空造粒装置、真空乳化装置、その他攪拌型真空乾燥装置が好適に使用できる。乾燥は複数段階に分けて行っても良く、加熱装置での加熱の前に、例えば、ロータリーエバポレーター、薄膜乾燥装置、スプレードライヤー、ドラムドライヤー、ディスクドライヤー、流動層乾燥機などを使用して溶媒の一部を除去しても良い。また、加熱装置で加熱して乾燥を行う前に、ろ過を行って、溶媒の一部を除去しても良い。ろ過を行う装置は、スラリーを固体成分と液体成分に分離する装置であれば好適に使用でき、具体的には吸引ろ過装置、遠心ろ過機、デカンター、ギナ式遠心分離機、加圧ろ過機、フィルタープレス機、およびろ過と乾燥を1台で実施できるろ過乾燥装置などが挙げられる。使用するろ材の材質、保留粒子径、分離の条件等は、用いる方法や捕集率に応じて適宜選択すれば良い。
【0061】
加熱装置で加熱する際の雰囲気は特に限定されないが、真空、不活性ガス雰囲気、乾燥空気雰囲気が好ましく、中でも環境の水分の影響が少ない真空または不活性ガス雰囲気がより好ましく、真空が特に好ましい。
【0062】
スラリーからの溶媒の除去は、得られた六方晶窒化ホウ素粉末を大気中で120℃3分間静置した前後の質量変化率が0.9%未満となるまで行うことが好ましい。
【0063】
<樹脂組成物>
本発明の六方晶窒化ホウ素粉末と樹脂とを配合することで樹脂組成物を得ることが出来る。
【0064】
前記樹脂組成物を構成する樹脂は、特に制限されず、例えばシリコーン系樹脂またはエポキシ系樹脂であってよい。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型の水素添加エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ポリテトラメチレングリコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、四官能ナフタレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、ナフトールノボラックエポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ポリサルファイド編成エポキシ樹脂、トリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂、およびビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物型のエポキシ樹脂等が挙げられる。これらエポキシ樹脂の1種を単独で、あるいは、2種以上を混合して使用してもよい。また、硬化剤としてアミン系樹脂、酸無水物系樹脂、フェノール系樹脂、イミダゾール類、活性エステル系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、ナフトール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤等を用いてもよい。これら硬化剤も1種を単独で、あるいは、2種以上を混合して使用してもよい。これら、硬化剤のエポキシ樹脂に対する配合量は、エポキシ樹脂に対する当量比で、0.5~1.5当量比、好ましくは0.7~1.3当量比である。本明細書において、これらの硬化剤も樹脂に包含される。
【0065】
また、シリコーン系樹脂としては、付加反応型シリコーン樹脂とシリコーン系架橋剤との混合物である公知の硬化性シリコーン樹脂を制限なく使用することができる。付加反応型シリコーン樹脂としては、例えば、分子中にビニル基やヘキセニル基のようなアルケニル基を官能基としてもつポリジメチルシロキサン等のポリオルガノシロキサン等が挙げられる。シリコーン系架橋剤としては、例えば、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジエンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキサン基末端封鎖ポリ(メチルハイドロジエンシロキサン)、ポリ(ハイドロジエンシルセスキオキサン)等のケイ素原子結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン等が挙げられる。また、硬化触媒には、シリコーン樹脂の硬化に用いられる公知の白金系触媒等を制限なく使用することができる。例えば、微粒子状白金、炭素粉末に担持した微粒子状白金、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、パラジウム、ロジウム触媒等が挙げられる。
【0066】
また、樹脂としては、液晶ポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフタルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェノレンオキシド、フッ素樹脂、シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物などを使用することも可能である。
【0067】
液晶ポリマーには、溶融状態で液晶性を示すサーモトロピック液晶ポリマーと、溶液状態で液晶性を示すレオトロピック液晶ポリマーとがあり何れの液晶ポリマーを用いてもよい。
【0068】
サーモトロピック液晶ポリマーとしては、例えば、パラヒドロキシ安息香酸(PHB)と、テレフタル酸と、4,4’-ビフェノールから合成されるポリマー 、PHBと2,6-ヒドロキシナフトエ酸から合成されるポリマー、PHBと、テレフタル酸と、エチレングリコールから合成されるポリマーなどが挙げられる。
【0069】
フッ素樹脂としては、例えば、例えば四ふっ化エチレン樹脂(PTFE)、四ふっ化エチレン-六ふっ化プロピレン共重合樹脂(PFEP)、四ふっ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)などが挙げられる。
【0070】
シアン酸エステル化合物としては、例えば、フェノールノボラック型シアン酸エステル化合物、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物、ナフチレンエーテル型シアン酸エステル化合物、キシレン樹脂型シアン酸エステル化合物、アダマンタン骨格型シアン酸エステル化合物が好ましく、フェノールノボラック型シアン酸エステル化合物、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物が挙げられる。
【0071】
マレイミド化合物としては、例えば、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、下記式(1)で表されるマレイミド化合物、下記式(2)で表されるマレイミド化合物などが挙げられる。
【0072】
【0073】
上記式(1)中、R5は、各々独立して、水素原子又はメチル基を示し、好ましくは水素原子を示す。また、n1は、1以上の整数を表し、好ましくは10以下の整数であり、より好ましくは7以下の整数である。
【0074】
【0075】
上記式(2) 中、複数存在するRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等)、又はフェニル基を表し、耐燃性及びピール強度をより一層向上する観点から、水素原子、メチル基、及びフェニル基からなる群より選択される基であることが好ましく、水素原子及びメチル基の一方であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。nは、1~20の整数である。
【0076】
樹脂と六方晶窒化ホウ素粉末との配合比は、用途に応じて適宜決定すればよく、例えば、全樹脂組成物中に上述の六方晶窒化ホウ素粉末を好ましくは30~90体積%、より好ましくは40~80体積%、さらに好ましくは50~70体積%配合することができる。
【0077】
樹脂組成物は、六方晶窒化ホウ素および樹脂以外の成分を含んでいてもよい。樹脂組成物は、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、シリカ、窒化アルミニウムのような無機フィラー、硬化促進剤、変色防止剤、界面活性剤、分散剤、カップリング剤、着色剤、可塑剤、粘度調整剤、抗菌剤などを本発明の効果に影響を与えない範囲で適宜含んでいてもよい。
【0078】
本発明の樹脂組成物の用途は、例えば、接着フィルム、プリプレグ等のシート状積層材料(樹脂シート)、回路基板(積層板用途、多層プリント配線板用途)、ソルダーレジスト、アンダ-フィル材、熱接着剤、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂、熱インターフェース材(シート、ゲル、グリース等)、パワーモジュール用基板、電子部品用放熱部材等を挙げることができる。
【0079】
特に、5~30μmの間隙に充填する封止材料に好適に使用することが出来る。上記のように、本発明の六方晶窒化ホウ素粉末は、粗大粒子が存在しないため狭い間隙に充填する封止材料に適しており、且つ5~30μmの間隙に充填する封止材料において高熱伝導性を実現する粒度分布を有している。そのため、本発明の六方晶窒化ホウ素粉末を含有する樹脂組成物は、5~30μmの間隙に充填する封止材料に特に適している。なお、六方晶窒化ホウ素粉末のグラインドゲージ測定粒径の上限値は、充填する間隙X(μm)に応じて調整することが好ましく、具体的には、間隙Xμmに充填する封止材料の場合、六方晶窒化ホウ素粉末のグラインドゲージ測定粒径の上限は(X-1)μmであることが好ましい。
【0080】
なお、本発明の樹脂組成物は、5~30μmの狭い間隙に充填する封止材料に特に適しているが、30μm超の間隙に充填する封止材料に使用することも、可能である。封止材料としては、例えばアンダーフィル材やグリース状の熱インターフェース材が挙げられる。
【0081】
本発明の樹脂組成物をアンダーフィル材としてとして使用する場合、樹脂としては、耐熱性、体質性、機械的強度等の観点からエポキシ樹脂であることが好まし、常温で液状のエポキシ樹脂を使用することが特に好ましい。
【0082】
本発明の樹脂組成物をグリース状の熱インターフェース材として使用する場合には、樹脂としてシリコーン樹脂を使用することが好ましい。シリコーン樹脂としては、付加反応型シリコーン樹脂として下記式(3)で示されるポリオルガノシロキサンと、シリコーン系架橋剤として1分子中に少なくともケイ素原子結合水素原子を有するポリオルガノシロキサンとを使用することが好ましい。
【0083】
【0084】
式中、R1は独立に非置換又は置換の1価炭化水素基であり、炭素数1~3の1価の炭化水素基であることが好ましい。R3は独立に炭素数1~ 4のアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基又はアシル基である。pは5~100の整数であり、好ましくは10~50である。aは1~3の整数である。
【0085】
また、本発明の樹脂組成物は、樹脂シート、特には膜厚5~30μmの樹脂シートにも好適に使用する事ができる。上記のように、本発明の六方晶窒化ホウ素粉末を配合した樹脂組成物は、5~30μmの間隙に充填した場合と同様に、厚さ5~30μmの樹脂シートにおいても高熱伝導性を示すことが出来る。加えて、粗大粒子が存在しないため、シート内を粗大粒子が貫通することによる絶縁耐力の低下が抑制され、高い絶縁耐力を得ることが出来る。なお、六方晶窒化ホウ素粉末のグラインドゲージ測定粒径の上限値は、膜厚X(μm)に応じて調整することが好ましく、具体的には、膜厚X(μm)の樹脂シートの場合、六方晶窒化ホウ素粉末のグラインドゲージ測定粒径はX-1(μm)以下であることが好ましい。前記樹脂シートの用途は特に限定されないが、例えば回路基板用途(特に樹脂組成物と銅箔とを積層した銅張積層板用途)や多層プリント配線板の絶縁層用途に使用することができる。これらの用途においては、薄膜樹脂シートを使用することで、熱抵抗を低下させたり、各種デバイスを小型化したりすることが可能である。
【0086】
銅張積層板用途においては、好適な樹脂として、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリマー、ふっ素樹脂、シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物等を挙げることが出来る。この中でも衛星放送の受信機器や携帯電話等の電子通信機器に搭載される銅張積層板用途においては、高周波特性、耐熱性、耐候性、耐薬品性、撥水性に優れていることから、ふっ素樹脂が特に好適な樹脂として挙げられる。また、回路基板が鉛フリー半田を使用して製造される場合には、鉛フロー半田のリフロー温度が260℃程度であることから、耐熱性の高い液晶ポリマーを使用することが好適であり、耐熱性や難燃性により優れることから、サーモトロピック液晶ポリマーが特に好適である。
【0087】
また、銅張積層板用途においては、エポキシ樹脂及び/またはマレイミド化合物と、シアン酸エステル化合物とを使用することも好ましい形態として挙げることが出来る。このような樹脂組成とすることで、ピール強度や吸湿耐熱性に優れた樹脂組成物とすることが容易となる。この場合、エポキシ樹脂としては、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂が難燃性や耐熱性の観点から好ましく、マレイミド化合物としては、2,2’-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン及び前記式(B-1)で表されるマレイミド化合物、及び前記式(B-2)で表されるマレイミド化合物が、熱膨張率やガラス転移温度の観点から好ましく、シアン酸エステル化合物としては、フェノールノボラック型シアン酸エステル化合物、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物が、ガラス転移温度やめっき密着性の観点から好ましい。
【0088】
多層プリント配線板の絶縁層として使用する場合、樹脂としては、耐熱性と銅箔回路への接着性に優れることから、エポキシ樹脂を使用することが好ましい。エポキシ樹脂としては、温度20℃で液状のエポキシ樹脂と、温度20℃で固形状のエポキシ樹脂とを併用することが、優れた可撓性を有する樹脂組成物が得られると共に、絶縁層の破断強度が向上するため好ましい。好ましい温度20℃で液状のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂が挙げられる。好ましい温度20℃で固形状のエポキシ樹脂としては、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂が挙げられる。温度20℃で液状のエポキシ樹脂と、温度20℃で固形状のエポキシ樹脂の配合比は、質量比で1:0.1~1:4の範囲が好ましく、1:0.8~1:2.5がより好ましい。
【実施例0089】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に
制限されるものではない。本発明における各種物性測定方法は、それぞれ以下のとおりである。
【0090】
[湿式粒度分布測定]
日機装株式会社製:粒子径分布測定装置MT3000を使用して測定した。なお、測定サンプルは、以下に示す方法により調製した。まず、50mLスクリュー管瓶にエタノール20gを分散媒として加え、エタノール中に六方晶窒化ホウ素粉末1gを分散させた。これを、レーザー回折散乱型粒度分布計を用いて粒度分布を測定した。このときに、凝集粒子を壊さないために、超音波処理等は行わずに測定した。得られた粒子径の体積頻度分布から、粒径2.0~5.0μm程度の粒子の存在割合を求めた。また、体積頻度の累積値が50%となるところの粒径の値をD50、95%となるところの粒径の値をD95、100%となるところの粒径の値をD100として求めた。
【0091】
[超音波処理湿式粒度分布測定]
日機装株式会社製:粒子径分布測定装置MT3000を使用して測定した。なお、測定サンプルは、以下に示す方法により調製した。まず、50mLスクリュー管瓶にエタノール20gを分散媒として加え、エタノール中に六方晶窒化ホウ素粉末1gを分散させた。これを、レーザー回折散乱型粒度分布計を用いて粒度分布を測定した。このときに、凝集粒子を壊すために、90W20分の超音波処理を行った。得られた粒子径の体積頻度分布から、体積頻度の累積値が50%となるところの粒径の値をD50Sとして求めた。
【0092】
[BET比表面積]
六方晶窒化ホウ素粉末のBET比表面積測定には、比表面積測定装置(島津製作所製:フローソーブ2-2300型)を用いて、BET法(窒素吸着1点法)により求めた
[酸素・炭素分析]
六方晶窒化ホウ素粉末の酸素濃度は、堀場製作所製:酸素/窒素分析装置EMGA-620を使用して測定した。六方晶窒化ホウ素粉末の炭素含有量は、炭素分析装置(堀場製作所製EMIA-110)で測定した。本発明の実施例の六方晶窒化ホウ素粉末は全て、酸素含有量が0.01~0.95質量%、炭素含有量が0.001~0.050質量%の範囲内であった。
【0093】
[溶出ホウ素量]
150ccのビーカーに、0.04mol/Lの濃度の硫酸水溶液50g、六方晶窒化ホウ素粉末2gを投入し、振盪撹拌した後、120分静置した。その間、液の温度を25℃ に調整した。その後、得られた液中のホウ素をICP発光分光分析装置(THERMO FISHER社製iCAP6500)により分析して測定されたホウ素量をB2O3に換算し、これを前記六方晶窒化ホウ素粉末の質量で除して溶出ホウ素量(ppm)を求め、六方晶窒化ホウ素粉末を構成する六方晶窒化ホウ素粒子表面における酸化ホウ素濃度とした。本発明の実施例の六方晶窒化ホウ素粉末は全て、不純物酸化ホウ素量が400ppm以下であった。
【0094】
[熱伝導率]
作製した樹脂シートの熱伝導率(W/m・K)を、熱拡散率(m2/秒)×密度(kg/m3)×比熱(J/kg・K)で求めた。熱拡散率は温度波熱分析法(アイフェイズ社製:ai-Phase Mobile u、ISO22007-3)、密度はアルキメデス法(メトラー・トレド社製:XS204V)、比熱は示差走査熱量計(DSC)法(リガク社製:Thermo Plus Evo DSC8230)で測定した。
【0095】
[グラインドゲージ測定粒径]
JIS―K5600-2-5に準拠して、幅90mm、長さ240mm、最大深さ50μmのグラインドゲージ(粒ゲージ)を用いて評価した。六方晶窒化ホウ素粉末0.4gと、25℃での動粘度が1000cStのシリコーン樹脂(モメンティブ社製:Element14 PDMS 1000-J)4gとを、24mlのプラ軟こう壺に投入し、この軟こう壺を自転・公転ミキサー(株式会社シンキ―社製:ARE-310)で公転速度2000rpm、自転速度800rpmで2分間処理し、測定用ペーストを得た。グラインドゲージに測定用ペーストを載せ、スクレーパーを垂直に当てて溝の上をスライドさせ、顕著な斑点が現れ始める点を観察した。観察は2.5μm刻みで行い、溝を横切って3mmの幅に5個以上の粒子を含む最も大きな点を、グラインドゲージ測定粒径粒径を求めた。操作はn=6で行い、6回の平均値をグラインドゲージ測定粒径とした。
【0096】
[アスペクト比]
六方晶窒化ホウ素一次粒子のアスペクト比は分析走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ株式会社製:S-3400N)を用いて測定した。倍率10000倍の走査電子顕微鏡観察像から異なる六方晶窒化ホウ素一次粒子100個を無作為に選び、六方晶窒化ホウ素一次粒子の長径の長さ、厚みを測定してそれぞれのアスペクト比(長径の長さ/厚みの長さ)を算出し、その平均値をアスペクト比とした。その結果、全ての実施例と比較例において、原料六方晶窒化ホウ素及び六方晶窒化ホウ素のアスペクト比は、3~15の範囲にあった。
【0097】
[スラリー粘度の測定]
原料六方晶窒化ホウ素スラリーを、粘度計(アズワン社:ASJ-8ST)を用いて、回転数3rpmで測定した。全ての実施例において、25℃における原料六方晶窒化ホウ素スラリーの粘度は1~60mPa・Sの範囲内であった。
【0098】
実施例1
酸化ホウ素50g、メラミン40g、無水硼砂80gを乳鉢を使用して混合した。この混合物を、黒鉛製タンマン炉を用いて、窒素ガス雰囲気下、1200℃まで昇温し、1200℃で12時間加熱することでメラミン法により窒化粉を得た。次いで、得られた窒化粉を石臼式磨砕機で解砕した後、ポリエチレン製の容器に投入し、窒化粉100gに対して100gの塩酸(37重量%HCl)と300gの純水を加えて酸スラリーを調整し、8時間撹拌することで酸による洗浄を行った。酸による洗浄後、ブフナー漏斗を用いて酸スラリーを濾過した後に、窒化粉の10倍量(重量比)以上の純水を用いて水スラリーを調整して洗浄を行った後、吸引濾過により窒化粉の水分率が40重量%以下になるまで脱水を行った後、200℃で12時間真空乾燥させた。乾燥後に得られた粉末を目開き90μmの篩にかけて、原料六方晶窒化ホウ素粉末を得た。
4質量%原料六方晶窒化ホウ素スラリー(六方晶窒化ホウ素粉末:純水=1質量:25質量)を10L準備して、アコージャパン株式会社製スラリースクリーナーを用いて、内側でスクリュー回転数:50Hz、回転角度40°で回転させた目開き10μmのナイロン円筒フィルターにまず、純水を浸漬させるため、5L通水し、その後前記原料六方晶窒化ホウ素スラリーを投入し、1L/分の速度で湿式分級処理を行った。フィルター通過スラリーを濾別し、脱水ケーキとし、上記脱水ケーキを200℃で真空乾燥し、目的とする六方晶窒化ホウ素粉末を得た。なお、フィルター上に残留した粉末とフィルターを通過しなかったスラリーを乾燥させて得られた粉末は、原料六方晶窒化ホウ素粉末に対して5質量%未満であり、原料六方晶窒化ホウ素粉末の95質量%以上は、10μmフィルターを通過した。製造条件と得られた六方晶窒化ホウ素粉末の評価結果を表1~3に示す。
【0099】
実施例2~7
表1に示すように各条件を変更した以外は実施例1と同様に行った。製造条件と得られた六方晶窒化ホウ素粉末の評価結果を表1~3に示す。
【0100】
比較例1~4
表1に示すように各条件を変更した以外は実施例1と同様に行った。製造条件と得られた六方晶窒化ホウ素粉末の評価結果を表1~3に示す。
【0101】
比較例5
市販のBN粉末を表1に示すように実施例1と同様に湿式分級処理を行った。製造条件と得られた六方晶窒化ホウ素粉末の評価結果を表1~3に示す。
【0102】
比較例6
スラリー濃度を15質量%に変更した以外は実施例1と同様に行った。比較例6では、スラリー濃度が15質量%以上と大きく、スラリーがスクリーンをほとんど通過せず、本発明の六方晶窒化ホウ素粉末を得ることが出来なかった。
【0103】
以下のように、実施例1~7、比較例1~5で得られた六方晶窒化ホウ素粉末をエポキシ樹脂に充填し、樹脂組成物を作製し、熱伝導率の評価を行った。硬化性エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製JER828)100質量部と、硬化剤(イミダゾール系硬化剤、四国化成株式会社製キュアゾール2E4MZ)5質量部と、溶媒としてメチルエチルケトン210質量部とを混合したワニス状混合物を準備した後、前記ワニス状混合物と前記六方晶窒化ホウ素粉末とを、樹脂35体積%、六方晶窒化ホウ素粉末65体積%となるように、自転・公転ミキサー(倉敷紡績株式会社製MAZERUSTAR)にて混合して樹脂複合体混合物を得た。
【0104】
上記樹脂複合体混合物を、テスター産業社製自動塗工機PI-1210を用いて、PETフィルム上に厚み25μm程度に塗工した後、乾燥させ、溶媒を除去した。次いで、2枚を貼り合わせ、減圧下、温度:200℃、圧力:5MPa、保持時間:30分の条件で硬化させ、膜厚30μmの樹脂シートを作製した。また、実施例5で作製した六方晶窒化ホウ素粉末を配合した樹脂組成物に関しては、膜厚10μmの樹脂シートも同様に作製し、熱伝導率を測定した。該樹脂シートの熱伝導率を測定した結果を表4に示す。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
前記試験結果より、2.0~5.0μmの粒子の割合が50体積%以上である実施例1~7、比較例1~3の六方晶窒化ホウ素粉末を含有する樹脂組成物は、膜厚10~30μmの樹脂シートにおいて、高い熱伝導率が得られた。前記試験結果は、樹脂シートの熱伝導率を測定したものであるが、同程度の厚みに充填した封止材料はシート状の形状で存在することとなり、シートと封止材料で熱伝導パス形成の機構は共通するため、2.0~5.0μmの粒子の割合が50体積%以上である六方晶窒化ホウ素粉末を含有する樹脂組成物は、封止材料として10~30μmの間隙に充填した場合でも、樹脂シートの場合と同様に、高い熱伝導率が得られると言える。
【0110】
前記実施例1~7、比較例1~6で得られた六方晶窒化ホウ素粉末をエポキシ樹脂に充填し、樹脂組成物を作製し、間隙浸透性の評価を行った。六方晶窒化ホウ素粉末0.85gと、液状エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式製YDF-8170C)3gとを、24mlのプラ軟こう壺に投入し、この軟こう壺を自転・公転ミキサー(株式会社シンキ―社製:ARE-310)で公転速度2000rpm、自転速度800rpmで2分間処理し、樹脂組成物を得た。スライドガラス2枚(76x26mm、厚み1.0mm)を、幅1cmで所定の厚みの間隙が出来るように、両面テープ(日東電工製両面テープNO.5603=30μm、NO.5601=10μm)で調整して張り合わせ、ホットプレート(ASONE HHP-170D)で3分間、100℃に加熱した後、上記樹脂組成物を0.005~0.01g滴下し、間隙浸透性試験を行った。間隙浸透試験は、浸透開始1分間後の間隙浸透距離を定規で測定した。浸透しなければ×とした。結果を表3に示す。
【0111】
前記試験結果より、樹脂と六方晶窒化ホウ素粉末からなる樹脂組成物において、六方晶窒化ホウ素粉末のグラインドゲージ測定粒径が間隙サイズよりも小さい場合、浸透性が格段に高くなることが分かる。このことから、六方晶窒化ホウ素粉末のグラインドゲージ測定粒径を、封止材料を充填する間隙のサイズ以下とすることで、封止材料を間隙に充填する際に詰まりが発生しにくく、充填ムラやボイド、成形不良が発生するなどの問題を高度に防止することが可能であると言える。