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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185603
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20221208BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20221208BHJP
   C23C 16/507 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H05H1/46 L
H05H1/46 R
H01L21/302 101C
C23C16/507
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093324
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大地
(72)【発明者】
【氏名】森川 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】土居 謙太
(72)【発明者】
【氏名】中村 敏幸
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA04
2G084AA05
2G084BB05
2G084BB06
2G084BB29
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD03
2G084DD04
2G084DD13
2G084DD38
2G084DD55
2G084HH22
2G084HH24
2G084HH32
4K030CA04
4K030CA12
4K030FA03
4K030FA04
4K030GA02
4K030KA30
4K030LA15
5F004AA01
5F004AA15
5F004BA20
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB29
5F004BC03
5F004BD04
5F004CA02
5F004CA03
5F004CA06
5F004DA00
5F004DA11
5F004DA18
(57)【要約】
【課題】共振点の位置を制御可能であり、かつ、共振点をコイルアンテナの出力端に近づけることが可能なプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】入力端21Iと出力端21Oとを備えるICPアンテナ21と、付加インダクタ24と可変キャパシタ25とが直列に接続された直列回路と、可変キャパシタ25の容量を変更する制御装置33と、を備え、入力端21Iは、アンテナ用整合器22を介してアンテナ用電源23に接続され、出力端21Oは、付加インダクタ24に接続され、付加インダクタ24は、可変キャパシタ25を介して接地端に接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端と出力端とを備えるコイルアンテナと、
付加インダクタと可変キャパシタとが直列に接続された直列回路と、
前記可変キャパシタの容量を変更する制御部と、を備え、
前記入力端は、マッチング回路を介して高周波電源に接続され、
前記出力端は、前記付加インダクタに接続され、
前記付加インダクタは、前記可変キャパシタを介して接地端に接続される
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記制御部が設定する前記可変キャパシタの容量の範囲は、第1容量を含み、
前記第1容量は、前記範囲のなかで共振点が前記出力端に最も近いときの前記可変キャパシタの容量であり、
前記制御部は、前記コイルアンテナによるプラズマの生成開始時に、前記可変キャパシタの容量を前記第1容量にする処理を実行する
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記プラズマの生成開始後に、
前記出力端から前記入力端に向けて前記共振点を移動させるための前記可変キャパシタの容量の特定に前記入力端におけるピークピーク値を用いる
請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記特定に、前記出力端におけるピークピーク値をさらに用いる
請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記コイルアンテナに接続される容量結合アンテナをさらに備え、
前記制御部が設定する前記可変キャパシタの容量の範囲は、第1特定容量と第2特定容量とを含み、
前記第1特定容量は、前記範囲のなかで共振点が前記コイルアンテナと前記容量結合アンテナとの接続点に最も近いときの前記可変キャパシタの容量であり、
前記第2特定容量は、前記第1特定容量とは異なる前記可変キャパシタの容量であり、
前記制御部は、前記可変キャパシタの容量を前記第1特定容量にする処理と、前記可変キャパシタの容量を前記第2特定容量にする処理と、を別々に実行する
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置の一例であるエッチング装置は、プラズマを生成するためのコイルアンテナを備える。コイルアンテナは、入力端がマッチング回路を介して高周波電源に接続されるとともに、出力端が接地端に接続される(例えば、特許文献1を参照)。このようなエッチング装置の分野において、プラズマ密度の分布を新たな分布に変えることは、依然として強く要求されている。例えば、コイルアンテナと接地端との間に可変キャパシタを設け、可変キャパシタの容量を制御して共振点を移動させることにより、プラズマ密度の分布を変更する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-157528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可変キャパシタを介してコイルアンテナの出力端を接地端に接続する構成は、コイルアンテナの出力端に共振点を近づけることが原理的に制限されるため、コイルアンテナの出力端に共振点を近づけた新たなプラズマ密度の分布を得るうえで改善の余地を残す。なお、このような事情は、エッチング装置に限らず、スパッタ装置やCVD装置等の他のプラズマ処理装置にも共通する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのプラズマ処理装置は、入力端と出力端とを備えるコイルアンテナと、付加インダクタと可変キャパシタとが直列に接続された直列回路と、前記可変キャパシタの容量を変更する制御部と、を備え、前記入力端は、マッチング回路を介して高周波電源に接続され、前記出力端は、前記付加インダクタに接続され、前記付加インダクタは、前記可変キャパシタを介して接地端に接続される。
【0006】
上記構成によれば、制御部が可変キャパシタの容量を変更することで、共振点の位置を制御できる。そして、コイルアンテナと可変キャパシタとの間に付加インダクタが介在する分だけ、共振点をコイルアンテナの出力端に近づけることが可能となる。
【0007】
上記プラズマ処理装置において、前記制御部が設定する前記可変キャパシタの容量の範囲は、第1容量を含み、前記第1容量は、前記範囲のなかで共振点が前記出力端に最も近いときの前記可変キャパシタの容量であり、前記制御部は、前記コイルアンテナによるプラズマの生成開始時に、前記可変キャパシタの容量を前記第1容量にする処理を実行することが好ましい。
【0008】
コイルアンテナを用いたプラズマ生成は、容量性のプラズマ生成からはじめられる。また、共振点がコイルアンテナの出力端に近いことは、入力端におけるピークピーク値を最も高めることである。したがって、コイルアンテナによるプラズマの生成開始時に共振点を出力端に近づけることで、容量性のプラズマを生成しやすくすること、ひいては、コイルアンテナによるプラズマの生成開始を安定させることが可能ともなる。
【0009】
上記プラズマ処理装置において、前記制御部は、前記プラズマの生成開始後に、前記出力端から前記入力端に向けて前記共振点を移動させるための前記可変キャパシタの容量の特定に前記入力端におけるピークピーク値を用いることが好ましい。
【0010】
共振点が出力端から入力端に向けて移動するほど、入力端におけるピークピーク値は低められる。入力端におけるピークピーク値を用いて容量を特定する構成であれば、共振点を出力端から入力端に向けて移動させることの精度を高めることが可能である。コイルアンテナを用いたプラズマ生成は、容量性のプラズマから誘導性のプラズマを誘起する。容量性のプラズマを生成した後に共振点を出力端から入力端に向けて移動させることは、入力端におけるピークピーク値を最も高めてから低めることであり、誘導性のプラズマが誘起された状態において容量性のプラズマの偏りを抑えることである。結果として、誘導性のプラズマが生成された状態でプラズマの分布を均一にすることが可能ともなる。
【0011】
上記プラズマ処理装置において、前記制御部は、前記特定に、前記出力端におけるピークピーク値をさらに用いることが好ましい。
共振点が出力端から入力端に向けて移動するほど、出力端におけるピークピーク値は高められる。入力端におけるピークピーク値と出力端におけるピークピーク値とを用いて容量を特定する構成であれば、特定された容量による共振点の移動先をより高い精度で設定することが可能ともなる。
【0012】
上記プラズマ処理装置において、前記コイルアンテナに接続される容量結合アンテナをさらに備え、前記制御部が設定する前記可変キャパシタの容量の範囲は、第1特定容量と第2特定容量とを含み、前記第1特定容量は、前記範囲のなかで共振点が前記コイルアンテナと前記容量結合アンテナとの接続点に最も近いときの前記可変キャパシタの容量であり、前記第2特定容量は、前記第1特定容量とは異なる前記可変キャパシタの容量であり、前記制御部は、前記可変キャパシタの容量を前記第1特定容量にする処理と、前記可変キャパシタの容量を前記第2特定容量にする処理と、を別々に実行することが好ましい。
【0013】
コイルアンテナと容量結合アンテナとの接続点に共振点が位置するとき、容量結合アンテナにおけるピークピーク値は相対的に低く、反対に、コイルアンテナと容量結合アンテナとの接続点から共振点が離れるほど、容量結合アンテナにおけるピークピーク値は相対的に高められる。可変キャパシタの容量が第1特定容量と第2特定容量とに別々に設定される構成であれば、容量結合アンテナにおけるピークピーク値を相対的に低めた状態と、容量結合アンテナにおけるピークピーク値を相対的に高めた状態とが別々に実現される。これにより、容量結合アンテナによる堆積物の除去と停止等のように、容量結合アンテナの機能をスイッチングすることが可能ともなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】エッチング装置の装置構成を示す模式図。
図2】エッチング装置における回路構成及び制御装置の構成を示す模式図。
図3】ICPアンテナ及び付加インダクタにおけるピークピーク値を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、プラズマ処理装置の一実施形態について図1図3を参照して説明する。
図1に示すように、プラズマ処理装置の一例であるエッチング装置10は、有底筒体形状を有したチャンバ本体11と、チャンバ本体11の上側開口を封止する誘電窓12とを備える。チャンバ本体11及び誘電窓12は、チャンバ空間11Sを区画する。
【0016】
チャンバ本体11は、アルミニウム等の金属構造体である。誘電窓12は、石英からなる基材12Aと、ポリイミド等の樹脂からなる樹脂膜である被覆部12Bとを備える。被覆部12Bは、基材12Aにおけるチャンバ空間11S側の表面を被覆する。
【0017】
チャンバ空間11Sには、ステージ13が収納される。ステージ13は、エッチングの対象である基板Sを保持する。ステージ13に内蔵されたバイアス電極13Pは、バイアス用整合器14を介してバイアス用電源15に接続される。バイアス用電源15は、13.56MHzの高周波電力を出力する。バイアス用整合器14は、バイアス用電源15の出力インピーダンスと、高周波電力が入力される負荷の入力インピーダンスとを整合させることで、負荷による反射波を抑える。
【0018】
誘電窓12に対してチャンバ空間11Sとは反対側には、コイルアンテナの一例であるICPアンテナ21が配置される。ICPアンテナ21は、例えば、基板Sの周方向に2回半巻き回された渦巻き形状を各段に有する2段のコイルから構成される。ICPアンテナ21は、所定のインダクタンスを有する。例えば、ICPアンテナ21のインダクタンスは、0.3μH以上4.0μH以下が好ましい。
【0019】
ICPアンテナ21は、入力端21Iと、出力端21Oとを備える。入力端21Iは、ICPアンテナ21を構成する2段のコイルのうち下段に位置するコイルの端部であって、渦巻き形状における外側の端部である。出力端21Oは、ICPアンテナ21を構成する2段のコイルのうち上段に位置するコイルの端部であって、渦巻き形状における中心側の端部である。
【0020】
ICPアンテナ21の入力端21Iには、アンテナ用整合器22を介して、アンテナ用電源23が接続される。アンテナ用電源23は、高周波電源の一例であって、例えば、13.56MHzの高周波電力を出力する。アンテナ用整合器22は、マッチング回路の一例である。アンテナ用整合器22は、アンテナ用電源23の出力インピーダンスと、アンテナ用電源23からの高周波電力が入力される負荷の入力インピーダンスとを整合させることで、負荷による反射波を抑える。
【0021】
ICPアンテナ21の出力端21Oは、ノードN1を介して付加インダクタ24に接続される。付加インダクタ24は、可変キャパシタ25を介して接地端に接続される。すなわち、付加インダクタ24と可変キャパシタ25とがICPアンテナ21の出力端21Oを接地端に接続する直列回路を構成する。
【0022】
可変キャパシタ25が取り得る容量Cの範囲は、例えば、10pF以上1000pF以下である。付加インダクタ24のインダクタンスLは、例えば、可変キャパシタ25が取り得る容量Cに対して、ωL-1/ωC=0(ωは、角周波数)を満たす何れかの値が設定される。具体例として、付加インダクタ24のインダクタンスLは、可変キャパシタ25が取り得る容量Cの範囲のなかの最大値を用いた数値計算によって、ICPアンテナ21の出力端21Oに共振点RP(図3参照)が位置するように算出された値として設定される。例えば、付加インダクタ24のインダクタンスLは、0.3μH以上2.0μH以下が好ましい。
【0023】
可変キャパシタ25の容量Cが変更されることで、共振点RPがICPアンテナ21の内部で移動する。これにより、入力端21I及び出力端21Oを含めたICPアンテナ21内部の各位置におけるピークピーク値、すなわちVppが変化する。Vppは、高周波回路中の各位置における電圧の最高値と最低値との差である。
【0024】
誘電窓12とICPアンテナ21との間には、容量結合アンテナ26が配置される。容量結合アンテナ26は、誘電窓12の上方において、誘電窓12と平行に放射状に延びる電極である。チャンバ空間11S内にプラズマPを生成した状態で容量結合アンテナ26に電圧が印加されると、イオンが誘電窓12の内面に引き込まれる。これにより、誘電窓12の内面に付着する堆積物が除去される。
【0025】
ICPアンテナ21の出力端21Oには、ノードN1を介して、付加インダクタ24と容量結合アンテナ26とが並列に接続される。すなわち、ノードN1は、ICPアンテナ21と容量結合アンテナ26との接続点である。なお、ノードN1は、高周波電力の伝送路において、出力端21Oと電気的にほぼ等しい。
【0026】
チャンバ本体11は、排気ポート11Pを備える。排気ポート11Pには、チャンバ空間11Sの流体を排気する排気部31が接続されている。排気部31は、例えば、チャンバ空間11Sの圧力を調整する圧力調整弁や各種のポンプから構成されている。
【0027】
誘電窓12は、ガス供給ポート12Pを備える。ガス供給ポート12Pには、チャンバ空間11Sにエッチングガスを流すガス供給部32が接続される。ガス供給部32は、例えば、フッ素含有ガスの一例である六フッ化硫黄ガスやホウ素含有ガスの一例である三フッ化ホウ素を供給するマスフローコントローラである。
【0028】
エッチング装置10は、制御装置33を備える。制御装置33は、エッチング装置10の各部を制御して、チャンバ空間11S内にプラズマPを生成させるための各種処理を実行する。
【0029】
図2に示すように、アンテナ用整合器22は、一例として、2つの可変キャパシタ22A,22Bと、2つの固定キャパシタ22C,22Dとによって構成される。アンテナ用電源23には、ノードN2を介して2つの可変キャパシタ22A,22Bが並列に接続される。可変キャパシタ22Aは、一方の端子がノードN2を介してアンテナ用電源23に接続され、かつ、他方の端子が接地端に接続される。可変キャパシタ22Bは、一方の端子がノードN2を介してアンテナ用電源23に接続され、かつ、他方の端子が2つの固定キャパシタ22C,22Dによって構成された並列回路を介してICPアンテナ21の入力端21Iに接続される。
【0030】
[制御装置]
制御装置33は、制御部33Aと、記憶部33Bと、検知部33Cとを備える。制御部33Aは、エッチング装置10の各部の駆動を制御する。記憶部33Bは、エッチング装置10を構成する各部の駆動を制御するためのプログラム及びプロセス条件を記憶する。検知部33Cは、入力端21IにおけるVppである入力Vppと、出力端21OにおけるVppである出力Vppとを検知する。
【0031】
記憶部33Bは、プロセス条件の具体例として、第1目標値、第2目標値、第3目標値、及び、第4目標値を記憶する。第1目標値は、プラズマPの生成開始時に用いられる可変キャパシタ25の容量Cである。第1目標値は、第1容量の一例である。第1容量は、容量Cの変更によって移動する共振点RPのなかで最も出力端21Oに近い共振点RPを得るときの容量Cの値である。
【0032】
第1目標値は、例えば、ICPアンテナ21を用いてプラズマPを生成し始める試験によって得られてもよい。当該試験では、複数の容量Cを可変キャパシタ25に設定し、ICPアンテナ21を用いたプラズマPの生成が各容量Cにおいてそれぞれ実施される。そして、設定された複数の容量Cのなかで入力Vppが最も大きいときの容量Cが第1目標値として設定されてもよい。
【0033】
あるいは、第1目標値は、付加インダクタ24のインダクタンスL、及び、可変キャパシタ25が取り得る容量Cの範囲を用いた数値計算によって得られてもよい。例えば、当該数値計算では、可変キャパシタ25が取り得る容量Cの範囲のうち、出力Vppが最も小さくなるように計算された容量Cが第1目標値として設定されてもよい。
【0034】
第2目標値は、プラズマPの生成開始後に用いられる入力Vpp及び出力Vppの値である。入力Vpp及び出力Vppが第2目標値であるときの容量Cは、第2容量の一例である。第2容量は、第1容量と異なる値であって、一例として、入力Vppと出力Vppとがほぼ等しいときの容量Cの値である。
【0035】
第2目標値は、例えば、ICPアンテナ21を用いてプラズマPを生成し続ける試験によって得られてもよい。当該試験では、複数の容量Cを可変キャパシタ25に設定し、ICPアンテナ21を用いたプラズマPの生成が各容量Cにおいてそれぞれ実施される。そして、設定された複数の容量Cのなかで、入力Vppと出力Vppとがほぼ等しいときの入力Vpp及び出力Vppが第2目標値として設定されてもよい。
【0036】
あるいは、第2目標値は、ICPアンテナ21のインダクタンス、付加インダクタ24のインダクタンスL、及び、可変キャパシタ25の容量Cを用いた数値計算によって得られてもよい。当該数値計算では、可変キャパシタ25が取り得る容量Cの範囲のうち、生成開始後の入力Vppと出力Vppとがほぼ等しいときの入力Vpp及び出力Vppが第2目標値として設定されてもよい。
【0037】
第3目標値は、容量結合アンテナ26による誘電窓12の内面に付着した堆積物の除去が停止されるときに用いられる入力Vpp及び出力Vppの値である。入力Vpp及び出力Vppが第3目標値であるときの容量Cは、第1特定容量の一例である。第1特定容量は、一例として、共振点RPが最もノードN1の近くに位置するときの容量Cの値である。なお、本実施形態では、出力端21OとノードN1とが電気的にほぼ等しいため、出力VppとノードN1におけるVppとが一致する。したがって、第1特定容量は、第1容量と一致する。
【0038】
第3目標値は、付加インダクタ24のインダクタンスL、及び、可変キャパシタ25が取り得る容量Cの範囲を用いた数値計算によって得られてもよい。例えば、当該数値計算では、可変キャパシタ25が取り得る容量Cの範囲のうち、ノードN1におけるVppが最も小さくなる容量Cの値が算出される。そして、算出された容量Cが適用されたときの入力Vpp及び出力Vppが第3目標値として設定されてもよい。
【0039】
第4目標値は、容量結合アンテナ26によって誘電窓12の内面に付着した堆積物を除去するときに用いられる入力Vpp及び出力Vppの値である。第4目標値は、第3目標値とは異なる値である。入力Vpp及び出力Vppが第4目標値であるときの容量Cは、第2特定容量の一例である。第2特定容量は、第1特定容量と異なる容量Cの値である。
【0040】
第4目標値は、一例として、第2目標値と同一の値が用いられる。この場合、第2特定容量は、第2容量と一致する。なお、第4目標値は、第3目標値と異なる値であれば、第2目標値と異なる値であってもよい。
【0041】
第4目標値は、例えば、ICPアンテナ21を用いてプラズマPを生成し続ける試験によって得られてもよい。当該試験では、複数の容量Cを可変キャパシタ25に設定し、ICPアンテナ21を用いたプラズマPの生成が各容量Cにおいてそれぞれ実施される。そして、設定された複数の容量Cのなかで、出力Vppが容量結合アンテナ26によって堆積物を除去できる程度の大きさであるときの入力Vpp及び出力Vppが第4目標値として設定されてもよい。
【0042】
[実施形態の作用]
以下、図3を参照してエッチング装置10の作用について説明する。図3に示すグラフ40は、プラズマPの生成開始時及び生成開始後におけるICPアンテナ21及び付加インダクタ24の各位置のVppを模式的に示している。なお、図3に示すグラフ40の横軸において、左端が入力端21Iを示し、破線41の位置が出力端21O及びノードN1を示し、破線42の位置が付加インダクタ24と可変キャパシタ25との接続点を示す。
【0043】
まず、制御部33Aは、排気部31を制御することで、チャンバ空間11Sを所定の圧力まで排気する。次に、制御部33Aは、ガス供給部32を制御することで、チャンバ空間11Sにエッチングガスを供給する。さらに、制御部33Aは、記憶部33Bに記憶された第1目標値を参照して、可変キャパシタ25の容量Cを第1容量に設定する。そして、制御部33Aは、アンテナ用電源23を制御してICPアンテナ21に高周波電力を供給する。これにより、チャンバ空間11S内ではプラズマPの一例である容量性のプラズマの生成が始められる。
【0044】
図3に示すように、プラズマPの生成開始時において、制御部33Aが可変キャパシタ25の容量Cを第1容量に設定することで、共振点RPが出力端21Oの最も近くに位置する。入力Vppは、共振点RPがICPアンテナ21の出力端21Oに最も近いときに最も大きくなる。結果として、ICPアンテナ21によるプラズマPの生成開始時に共振点RPを出力端21Oに近づけることで、入力端21Iの近傍で容量性のプラズマを生成しやすくすることができる。そして、ICPアンテナ21によるプラズマPの生成開始を安定させることが可能ともなる。
【0045】
仮に、付加インダクタ24を含まない構成の場合では、共振点RPを出力端21Oに近づけようとしても、可変キャパシタ25のリアクタンス(1/ωC)が存在する分だけ、共振点RPが出力端21Oから入力端21Iに向かって変位してしまう。これに対して、ICPアンテナ21と可変キャパシタ25との間に付加インダクタ24を設けた場合では、付加インダクタ24と可変キャパシタ25との合成リアクタンスは、ωL-1/ωCとして表される。そして、ωL-1/ωC=0を満たすように付加インダクタ24のインダクタンスLと可変キャパシタ25の容量Cとを設定することで、共振点RPを出力端21Oにより近づけることができる。
【0046】
また、出力端21OとノードN1とが電気的にほぼ等しいことから、プラズマPの生成開始時において、ノードN1には共振点RPが位置した状態となる。換言すると、プラズマPの生成開始時において、制御部33Aによって設定された容量Cは、第1容量であるとともに第1特定容量でもある。ノードN1に共振点RPが位置するとき、ノードN1におけるVpp、すなわち、容量結合アンテナ26のVppが最も小さい状態であるため、容量結合アンテナ26による容量性のプラズマ生成が抑制される。したがって、プラズマPの生成開始時には、容量結合アンテナ26による誘電窓12の内面に付着した堆積物の除去が停止される。
【0047】
次いで、プラズマPの生成開始後において、制御部33Aは、記憶部33Bに記憶された第2目標値と、検知部33Cが検知した入力Vpp及び出力Vppの実測値とを参照して、可変キャパシタ25の容量Cを第2容量に設定する。
【0048】
具体的に、制御部33Aは、検知部33Cが検知した入力Vpp及び出力Vppの測定値が第2目標値に近づくように、制御データを用いて第2容量を特定する。制御データは、例えば、検知部33Cの測定値が第2目標値に近づくように、第2目標値と測定値との差分値と、容量Cとを関係づけた関係式あるいはテーブルである。共振点RPが出力端21Oから入力端21Iに向けて移動するほど、出力Vppが高められるとともに入力Vppが低められるため、このような関係性を示す関係式あるいはテーブルを制御データとして用いればよい。制御データは、記憶部33Bに記憶される。
【0049】
プラズマPの生成開始後において、制御部33Aは、可変キャパシタ25の容量Cを、第2目標値と入力Vpp及び出力Vppの実測値とから特定された第2容量に設定する。制御部33Aが容量Cを第2容量に設定することで、入力Vppと出力Vppとがほぼ等しい状態となるように、共振点RPが出力端21Oから入力端21Iと出力端21Oとの間に移動する。
【0050】
プラズマPの生成過程では、最初に容量性のプラズマが生成された後、容量性のプラズマからプラズマPの一例である誘導性のプラズマが誘起される。容量性のプラズマを生成した後に共振点RPを出力端21Oから遠ざけることは、入力Vppを最も高めてから低めることであって、誘導性のプラズマが誘起された状態において容量性のプラズマの偏りを抑えることである。結果として、プラズマPの生成開始後において、誘導性のプラズマが生成された状態でプラズマPの分布が均一な状態となる。
【0051】
また、本実施形態では、プラズマPの生成開始後において、制御部33Aによって設定された容量Cは、第2容量であるとともに第2特定容量でもある。共振点RPが出力端21Oから入力端21Iと出力端21Oとの間に移動することで、共振点RPが出力端21Oに位置するときよりもノードN1におけるVpp、すなわち、容量結合アンテナ26のVppが高められた状態となる。結果として、プラズマPの生成開始後には、容量結合アンテナ26による容量性のプラズマ生成が行われる。これにより、容量結合アンテナ26によって誘電窓12の内面に付着した堆積物が除去されるとともに、誘電窓12の内面への新たな堆積物の付着が抑制される。
【0052】
エッチング装置10は、一例として、以下のエッチング条件を用いてプラズマPの生成を行う。なお、エッチング条件は、以下の条件に限定されるものではない。
[エッチング条件]
・基板 :サファイア基板
・アンテナ用高周波電力 :2100W
・バイアス用高周波電力 :1000W
・バイアス用高周波電力の周波数:2MHz
・エッチングガス :BCl3
・エッチングガス流量 :150sccm
[実施形態の効果]
上記実施形態によれば以下に列挙する効果を得ることができる。
【0053】
(1)制御部33Aが可変キャパシタ25の容量Cを変更することで、共振点RPの位置を制御できる。そして、ICPアンテナ21と可変キャパシタ25との間に付加インダクタ24が介在する分だけ、共振点RPをICPアンテナ21の出力端21Oに近づけることが可能となる。
【0054】
(2)ICPアンテナ21によるプラズマPの生成開始時において、可変キャパシタ25の容量Cを第1容量に設定することで、共振点RPが出力端21Oの最も近くに位置する。これにより、入力Vppが最も高められた状態となる。したがって、容量性のプラズマを生成しやすくすること、ひいては、ICPアンテナ21によるプラズマPの生成開始を安定させることが可能ともなる。
【0055】
(3)プラズマPの生成開始後において、入力Vppと出力Vppとが第2目標値に近づくように可変キャパシタ25の容量Cを第2容量に設定することで、共振点RPが出力端21Oから入力端21Iと出力端21Oとの間に移動する。これにより、入力Vppと出力Vppとがほぼ等しい状態となる。結果として、容量性のプラズマによるプラズマPの偏りが抑えられるため、プラズマPの生成開始後におけるプラズマPの分布を均一にできる。
【0056】
(4)制御部33Aが第2容量を特定する際に、検知部33Cが検知した入力Vpp及び出力Vppの測定値を用いることで、共振点RPを出力端21Oから入力端21Iに向けて移動させることの精度を高めることが可能である。
【0057】
(5)プラズマPの生成開始時では、可変キャパシタ25の容量Cが第1特定容量に設定されることで、容量結合アンテナ26による堆積物の除去が停止される。一方、プラズマPの生成開始後では、可変キャパシタ25の容量Cが第2特定容量に設定されることで、容量結合アンテナ26による堆積物が除去される。すなわち、可変キャパシタ25の容量Cが第1特定容量と第2特定容量とに別々に設定されることで、容量結合アンテナ26におけるVppを相対的に低めた状態と、容量結合アンテナ26におけるVppを相対的に高めた状態とが別々に実現される。これにより、容量結合アンテナ26による堆積物の除去と停止等のように、容量結合アンテナ26の機能をスイッチングすることが可能ともなる。
【0058】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・容量結合アンテナ26がノードN1を介してICPアンテナ21の出力端21Oに接続される構成を例示した。しかし、これに限定されず、例えば、ICPアンテナ21の入力端21Iと出力端21Oとの間の任意の位置に電極を設け、当該電極に容量結合アンテナ26を接続してもよい。
【0059】
具体例として、入力Vppと出力Vppとが第2目標値であるときの共振点RPの位置に端子を設け、当該端子に容量結合アンテナ26を接続する。この場合、プラズマPの生成開始後において、制御部33Aによって設定された容量Cは、第2容量であるとともに第1特定容量でもある。したがって、プラズマPの生成開始後では、容量結合アンテナ26のVppが最も小さい状態であるため、容量結合アンテナ26による容量性のプラズマ生成が抑制される。
【0060】
そして、プラズマPの生成開始後において、制御部33Aが容量Cを第2容量、すなわち第1特定容量から第2特定容量に設定することで、ICPアンテナ21と容量結合アンテナ26との接続点から共振点RPを移動させる。このときの第2特定容量は、第2容量と異なる任意の容量であって、例えば、第1容量であってもよい。これによって、当該接続点におけるVppが高められる。結果として、容量結合アンテナ26による容量性のプラズマ生成が行われる。以上のように、入力Vppと出力Vppとが第2目標値であるときの共振点RPの位置に容量結合アンテナ26を接続する構成であっても、容量結合アンテナ26の機能をスイッチングすることができる。
【0061】
・エッチング装置10が容量結合アンテナ26を備える構成を例示した。しかし、これに限定されず、例えば、他の手段によって天板の内面等の堆積物を除去できる構成であれば、エッチング装置10が容量結合アンテナ26を備えなくてもよい。
【0062】
・プラズマPの生成開始後において、制御部33Aが入力Vpp及び出力Vppの測定値を用いて第2容量を特定する構成を例示した。しかし、これに限定されず、例えば、入力Vppの実測値のみを参照して第2容量を特定する構成であってもよい。この場合、出力Vppの測定値に代えて、例えば、付加インダクタ24のインダクタンスLと、プラズマPの生成開始時において可変キャパシタ25に設定された第1容量とから算出された出力Vppを用いればよい。
【0063】
制御部33Aが入力Vpp及び出力Vppの測定値を用いて第2容量を特定する構成であれば、入力Vppの実測値のみを参照して第2容量を特定する構成よりも特定された第2容量による共振点RPの移動先をより高い精度で設定することが可能となる。これに対して、入力Vppの実測値のみを参照して第2容量を特定する構成であれば、検知部33Cが出力Vppを検知することが不要になるとともに、第2容量を特定する計算処理を簡略化できる。
【0064】
・制御部33Aが第2目標値と、入力Vpp及び出力Vppの測定値とを用いて第2容量を特定する構成を例示した。これに代えて、例えば、ICPアンテナ21のインダクタンス、付加インダクタ24のインダクタンスL、及び、可変キャパシタ25の容量Cを用いた数値計算によって予め得られた第2容量を用いてもよい。この場合,検知部33Cが入力Vpp及び出力Vppを検知することが不要になるとともに、第2容量を特定する計算処理を簡略化できる。
【0065】
・ICPアンテナ21を構成するコイルは、例えば、1段でもよいし、3段以上であってもよい。
・プラズマ処理装置は、エッチング装置10に限らず、例えば、成膜ガスから堆積物を生成する成膜装置、あるいは対象物の表面にプラズマを照射する表面処理装置であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
N1,N2…ノード
P…プラズマ
RP…共振点
10…エッチング装置
21…ICPアンテナ
21I…入力端
21O…出力端
22…アンテナ用整合器
23…アンテナ用電源
24…付加インダクタ
25…可変キャパシタ
26…容量結合アンテナ
33…制御装置
33A…制御部
33B…記憶部
33C…検知部
図1
図2
図3