(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185652
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】硬化性シリコーン組成物およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/14 20060101AFI20221208BHJP
C08L 83/08 20060101ALI20221208BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20221208BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C08L83/14
C08L83/08
C08K3/36
C08K5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093405
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小材 利之
(72)【発明者】
【氏名】松田 剛
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP102
4J002CP161
4J002CP163
4J002DJ017
4J002EK006
4J002EK046
4J002FD017
4J002FD142
4J002FD156
4J002GQ00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】硬化性が良好であり、優れたゴム物性を有するとともに耐湿性の高い硬化物を与える硬化性シリコーン組成物を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1)
(R
1は、互いに独立して一価炭化水素基を、R
2はアルキレン基を、R
3は、互いに独立して、アクリロイルオキシアルキル基、メタクリロイルオキシアルキル基、アクリロイルオキシアルキルオキシ基、またはメタクリロイルオキシアルキルオキシ基を、pは0≦p≦10を満たす数を、aは1≦a≦3を満たす数を、破線は結合手を表す。)
で示される基を1分子中に2個有し、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、(B)ケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基を有するオルガノポリシロキサン、および(C)有機過酸化物および光重合開始剤から選ばれる1種以上を含有する硬化性シリコーン組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1は、互いに独立して、炭素原子数1~20の一価炭化水素基を表し、R
2は、炭素原子数1~20のアルキレン基を表し、R
3は、互いに独立して、アクリロイルオキシアルキル基、メタクリロイルオキシアルキル基、アクリロイルオキシアルキルオキシ基、またはメタクリロイルオキシアルキルオキシ基を表し、pは、0≦p≦10を満たす数を表し、aは、1≦a≦3を満たす数を表し、破線は、結合手を表す。)
で示される基を1分子中に2個有し、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状(主鎖の一部に分岐を有する直鎖状を含む)または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、
(B)ケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基を有するオルガノポリシロキサン:(B)成分中のメルカプト基が、組成物中の脂肪族不飽和結合1個に対し、0.01~1.2個の範囲となる量、および
(C)有機過酸化物および光重合開始剤から選ばれる1種以上
を含有する硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
さらに、(D)(a)下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
1、R
2、R
3、aおよびpは、前記と同じ意味を表す。)
で示される単位と、(b)R
4
3SiO
1/2単位(式中、R
4は、互いに独立して、炭素原子数1~10の一価炭化水素基を表す。)と、(c)SiO
4/2単位とからなり、(a)単位および(b)単位の合計と、(c)単位とのモル比が、0.4~1.2:1であるオルガノポリシロキサンレジンを、(A)成分100質量部に対して0.1~1,000質量部含む請求項1記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
さらに、(E)シリカを、(A)成分100質量部に対して1~200質量部含む請求項1または2記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載の硬化性シリコーン組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性シリコーン組成物およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、液晶ディスプレー、車載部品等に代表されるようなエレクトロニクス機器には、高性能化のみならず、耐熱・耐湿性等、厳しい環境下でも問題無く使用できるよう信頼性の高い材料が求められている。
【0003】
車載部品の固定、ポッティングおよび接着では、耐熱性に優れたアルケニル基とヒドロシリル基による付加硬化型シリコーン材料が使用される場合が多いが、この付加硬化型シリコーン材料は、アミン含有化合物、硫黄含有化合物の存在や、ハンダフラックス等により硬化阻害を受けることがある。
【0004】
そこで、アルケニル基とメルカプト基による付加反応を利用することで、硬化阻害耐性を有する付加硬化型シリコーン組成物が提案されている(特許文献1~3)。
しかし、この組成物から得られる硬化物は、耐久性に劣り、特に高湿環境で劣化する場合がある。この問題を改善すべく、酸化防止剤を添加した組成物も開発されているが、耐久性は十分ではない(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5010761号公報
【特許文献2】特開2018-058991号公報
【特許文献3】特開2019-507813号公報
【特許文献4】特許第6422277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、硬化性が良好であり、優れたゴム物性を有するとともに耐湿性の高い硬化物を与える硬化性シリコーン組成物およびその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、特定の(メタ)アクリロイルオキシ含有基を有するオルガノポリシロキサン、特定量のメルカプト基含有オルガノポリシロキサン、ならびに有機過酸化物および光重合開始剤から選ばれる1種以上を含む硬化性シリコーン組成物が、硬化性が良好であり、優れたゴム物性を有するとともに耐湿性の高い硬化物を与えることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
1. (A)下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1は、互いに独立して、炭素原子数1~20の一価炭化水素基を表し、R
2は、炭素原子数1~20のアルキレン基を表し、R
3は、互いに独立して、アクリロイルオキシアルキル基、メタクリロイルオキシアルキル基、アクリロイルオキシアルキルオキシ基、またはメタクリロイルオキシアルキルオキシ基を表し、pは、0≦p≦10を満たす数を表し、aは、1≦a≦3を満たす数を表し、破線は、結合手を表す。)
で示される基を1分子中に2個有し、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状(主鎖の一部に分岐を有する直鎖状を含む)または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、
(B)ケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基を有するオルガノポリシロキサン:(B)成分中のメルカプト基が、組成物中の脂肪族不飽和結合1個に対し、0.01~1.2個の範囲となる量、および
(C)有機過酸化物および光重合開始剤から選ばれる1種以上
を含有する硬化性シリコーン組成物、
2. さらに、(D)(a)下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
1、R
2、R
3、aおよびpは、前記と同じ意味を表す。)
で示される単位と、(b)R
4
3SiO
1/2単位(式中、R
4は、互いに独立して、炭素原子数1~10の一価炭化水素基を表す。)と、(c)SiO
4/2単位とからなり、(a)単位および(b)単位の合計と、(c)単位とのモル比が、0.4~1.2:1であるオルガノポリシロキサンレジンを、(A)成分100質量部に対して0.1~1,000質量部含む1の硬化性シリコーン組成物、
3. さらに、(E)シリカを、(A)成分100質量部に対して1~200質量部含む1または2の硬化性シリコーン組成物、
4. 1~3のいずれかの硬化性シリコーン組成物の硬化物
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、硬化性が良好で、かつその硬化物はゴム物性および耐湿性に優れるため、スマートフォン、液晶ディスプレー、車載部品等の用途に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、下記(A)~(C)成分を含有する。
(A)下記一般式(1)で示される基を1分子中に2個有するオルガノポリシロキサン
(B)ケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基を含有するオルガノポリシロキサン
(C)有機過酸化物および光重合開始剤から選ばれる1種以上
【0011】
(A)オルガノポリシロキサン
本発明に使用される(A)成分は、本組成物の架橋成分であり、下記一般式(1)で示される基を1分子中に2個有し、主鎖が実質的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなるオルガノポリシロキサンである。
【0012】
【0013】
式(1)において、R1は、互いに独立して、炭素原子数1~20の一価炭化水素基であるが、好ましくは、脂肪族不飽和基を除く、炭素原子数1~10、より好ましくは1~8の一価炭化水素基である。
R2は、炭素原子数1~20のアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数1~10、より好ましくは1~5のアルキレン基である。
R3は、互いに独立して、アクリロイルオキシアルキル基、メタクリロイルオキシアルキル基、アクリロイルオキシアルキルオキシ基、またはメタクリロイルオキシアルキルオキシ基である。
【0014】
R1の炭素原子数1~20の一価炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、例えば、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル基等が挙げられる。
その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-デシル基等のアルキル基;ビニル、アリル(2-プロペニル)、1-プロペニル、イソプロペニル、ブテニル基等のアルケニル基;フェニル、トリル、キシリル、ナフチル基等のアリール基;ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0015】
また、これら一価炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子や、シアノ基等のその他の置換基で置換されていてもよく、それらの具体例としては、クロロメチル、ブロモエチル、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基;シアノエチル基等のシアノ置換炭化水素基などが挙げられる。
これらの中でも、R1としては、炭素原子数1~5のアルキル基、フェニル基が好ましく、メチル基、エチル基、フェニル基がより好ましい。
【0016】
R2の炭素原子数1~20のアルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、イソブチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デシレン基等が挙げられる。
これらの中でも、R2としては、メチレン、エチレン、トリメチレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0017】
R3のアクリロイルオキシアルキル基、メタクリロイルオキシアルキル基、アクリロイルオキシアルキルオキシ基、またはメタクリロイルオキシアルキルオキシ基におけるアルキル(アルキレン)基の炭素数としては、特に限定されるものではないが、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。これらアルキル基の具体例としては、R1で例示した基のうち、炭素原子数1~10のものが挙げられる。
R3の具体例としては、下記式で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
【0019】
上記式中、bは、1≦b≦4を満たす数であるが、1≦b≦3を満たす数が好ましい。
R5は、炭素原子数1~10のアルキレン基であるが、好ましくは炭素原子数1~5のアルキレン基である。R5の具体例としては、R2で例示した基のうち、炭素原子数1~10のものが挙げられ、中でもメチレン、エチレン、トリメチレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0020】
式(1)中、pは、0≦p≦10を満たす数であるが、0≦p≦5が好ましく、0または1が好ましく、aは、1≦a≦3を満たす数であるが、1または2が好ましい。
【0021】
(A)成分のオルガノポリシロキサン分子中における上記一般式(1)で示される基の結合位置は、分子鎖末端(片末端または両末端)であっても、分子鎖非末端(すなわち、分子鎖途中または分子鎖側鎖)であっても、あるいはこれらの両方であってもよいが、得られる硬化物の柔軟性の面では、末端のみであることが望ましい。
【0022】
(A)成分のオルガノポリシロキサン分子中において、上記一般式(1)で示される基以外のケイ素原子に結合した有機基は、例えば、上記R1と同様の基が挙げられ、特に、脂肪族不飽和結合を有しない炭素原子数1~12、好ましくは1~10の一価炭化水素基が好ましい。
これらの具体例としては、上記R1で例示した基と同様のものが挙げられるが、合成の簡便さから、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基が好ましく、メチル基、フェニル基、トリフロロプロピル基がより好ましい。
【0023】
また、(A)成分の分子構造は、基本的に、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状または分岐鎖状(主鎖の一部に分岐を有する直鎖状を含む)であり、特に、分子鎖両末端が上記一般式(1)で示される基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンが好ましい。
(A)成分は、これらの分子構造を有する単一の重合体、これらの分子構造からなる共重合体、またはこれらの重合体の2種以上の混合物であってもよい。
【0024】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの23℃における粘度は、組成物の取り扱い易さや硬化物の力学特性をより向上させることを考慮すると、10~10,000mPa・sが好ましく、50~5,000mPa・sがより好ましい。この粘度範囲は、通常、直鎖状オルガノポリシロキサンの場合、数平均重合度で、約10~550、好ましくは約50~450程度に相当するものである。
なお、本発明において、粘度は、回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメーター等)により測定できる(以下、同じ)。
本発明において、重合度(または分子量)は、例えば、トルエン等を展開溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(または数平均分子量)として求めることができる(以下、同じ)。
【0025】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの具体例としては、下記式(3)~(5)で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
【化5】
(式中、R
1、R
5、およびbは、上記と同じ意味を表し、Meは、メチル基を表し、nは、上記オルガノポリシロキサンの粘度を上記値とする数であるが、1~800が好ましく、50~600がより好ましい。)
【0027】
このようなオルガノポリシロキサンは、公知の方法で製造することができる。例えば、上記式(3)で表されるポリシロキサンは、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体とクロロジメチルシランとのヒドロシリル化反応物に2-ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得ることができる。
上記式(4)で表されるオルガノポリシロキサンは、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体と3-(1,1,3,3-テトラメチルジシロキサニル)プロピルメタクリラート(CAS No.96474-12-3)とのヒドロシリル化反応物として得られる。
上記式(5)で表されるオルガノポリシロキサンは、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体とジクロロメチルシランとのヒドロシリル化反応物に2-ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得ることができる。
【0028】
(B)ケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基を有するオルガノポリシロキサン
(B)成分は、ケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基を有するオルガノポリシロキサンであり、(A)成分中の脂肪族不飽和結合と反応して架橋を形成することにより本組成物を硬化させる成分である。
【0029】
(B)成分1分子中のケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基の個数は、架橋反応による安定した構造を確保しつつ、過度な硬化収縮を抑制する点から、平均2~20個が好ましく、より好ましくは平均2~10個であり、より一層好ましくは平均3~7個である。
(B)成分中のメルカプト基の平均個数は、ヨウ素による比色滴定により測定することができる。これは、下記式の反応を利用した方法であり、上記反応に関与しない過剰のヨウ素により滴定液が着色するまでのヨウ素添加量と(B)成分の平均分子量から算出することができる。
2R-SH + I2 → R-S-S-R + 2HI
(式中、Rは、アルキレン基を介して結合したシロキサン鎖を表す。)
【0030】
(B)成分において、ケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基は、炭素原子数1~10のメルカプトアルキル基が好ましく、具体例としては、メルカプトメチル、2-メルカプトエチル、3-メルカプトプロピル、4-メルカプトブチル、6-メルカプトヘキシル基等が挙げられるが、合成の容易さ等の点から、メルカプトメチル基、3-メルカプトプロピル基が好ましく、3-メルカプトプロピル基がより好ましい。
【0031】
(B)成分において、ケイ素原子に結合するメルカプトアルキル基以外の基としては、脂肪族不飽和結合を有しない非置換または置換の1価炭化水素基が好ましく、具体的には、炭素原子数1~6のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル基等);炭素原子数3~10のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル、シクロオクチル基等);炭素原子数6~12のアリール基(例えば、フェニル、トリル、キシリル基等);炭素原子数7~13のアラルキル基(例えば、2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル基等);ハロゲン置換炭化水素基(例えば、クロロメチル、クロロフェニル、3,3,3-トリフルオロプロピル基等)などが挙げられる。これらの中でも、合成の容易さ等の点からメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基が好ましく、メチル基、フェニル基がより好ましい。
【0032】
また、(B)成分の分子構造は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、分岐状が好ましい。(B)成分は、これらの分子構造を有する単一の重合体、これらの分子構造からなる共重合体、またはこれらの重合体の2種以上の混合物であってもよい。
【0033】
(B)成分のGPC分析におけるポリスチレン換算の数平均分子量は、500~20,000が好ましく、1,000~5,000がより好ましい。
【0034】
(B)成分の製造方法は、特に限定されず、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメチルエトキシシラン等のメルカプトアルキルアルコキシシランと、所望のアルキルクロロシラン、アルキルアルコキシシラン、シラノール含有シロキサンとを加水分解および重縮合する方法が挙げられる。
【0035】
(B)成分の添加量は、(B)成分中のメルカプト基が組成物中の脂肪族不飽和結合1個に対し、0.01~1.2個、好ましくは0.05~0.7個の範囲になる量である。0.01個未満であると、酸素阻害により組成物の表面硬化性が低下する。一方、1.2個を超えると、脂肪族不飽和結合同士の重合が阻害されるため、得られる硬化物の硬さ、伸び、引張強さ等の物性が悪化する。
【0036】
(C)有機過酸化物および/または光重合開始剤
(C)成分は、有機過酸化物および光重合開始剤から選ばれる1種以上であり、組成物中の脂肪族不飽和結合同士の重合および脂肪族不飽和結合と(B)成分中のメルカプト基との反応を誘起する成分である。組成物を加熱により硬化させる場合は有機過酸化物、紫外線により硬化させる場合は光重合開始剤を使用すればよく、熱と紫外線との両方で硬化させたい場合は両者を併用してもよい。
【0037】
本発明で使用可能な有機過酸化物としては、加熱でラジカルを発生するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、アルキルパーエステル、パーカーボネート等が挙げられる。
【0038】
より具体的には、日本油脂(株)製のパーヘキサH等のケトンパーオキサイド類;パーブチルH-69等のハイドロパーオキサイド類;ナイパーBW等のジアシルパーオキサイド類;パークミルD、パーブチルC、パーブチルD、パーブチルO等のジアルキルパーオキサイド類;パーヘキサTMH等のパーオキシケタール類;パーブチルZ、パーブチルL等のパーオキシエステル類;パーロイルTCP等のパーオキシジカーボネート類;ジイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジコハク酸パーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ[4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル]プロパン、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、n-ブチル-4,4-ジーt-ブチルパーオキシバレレート、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、p-メタンヒドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン-3-イン、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、o-クロロベンゾイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、トリス(t-ブチルパーオキシ)トリアジン、2,4,4-トリメチルペンチルパーオキシネオデカノエート、α-クミルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ-t-ブチルパーオキシトリメチルアジペート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコールビス(t-ブチルパーオキシカーボネート)、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、化薬アクゾ(株)製のトリゴノックス36-C75、ラウロックス、パーカドックスL-W75、パーカドックスCH-50L、トリゴノックスTMBH、カヤクメンH、カヤブチルH-70、パーカドックスBC-FF、カヤヘキサAD、パーカドックス14、カヤブチルC、カヤブチルD、パーカドックス12-XL25、トリゴノックス22-N70(22-70E)、トリゴノックスD-T50、トリゴノックス423-C70、カヤエステルCND-C70、トリゴノックス23-C70、トリゴノックス257-C70、カヤエステルP-70、カヤエステルTMPO-70、トリゴノックス121、カヤエステルO、カヤエステルHTP-65W、カヤエステルAN、トリゴノックス42、トリゴノックスF-C50、カヤブチルB、カヤカルボンEH、カヤカルボンI-20、カヤカルボンBIC-75、トリゴノックス117、カヤレン6-70等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
有機過酸化物の添加量は有効量でよいが、硬化性の点から(A)成分のオルガノポリシロキサン合計量100質量部に対して、好ましくは0.01~20質量部、より好ましくは0.01~5質量部、より一層好ましくは0.05~3質量部である。
【0040】
本発明で使用可能な光重合開始剤の具体例としては、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(Omnirad 651)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(Omnirad 184)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(Omnirad 1173)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(Omnirad 127)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(Omnirad MBF)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(Omnirad 907)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン(Omnirad 369)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(Omnirad 819)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(Omnirad TPO)(以上、いずれもIGM Resins B.V.社製)等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
これらの中でも、(A)成分および(B)成分との相溶性の観点から、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(Omnirad 1173)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(Omnirad 819)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(Omnirad TPO H)が好ましい。
【0042】
光重合開始剤の添加量は有効量でよいが、硬化性の点から(A)100質量部に対して、好ましくは0.01~20質量部、より好ましくは0.01~5質量部、より一層好ましくは0.05~3質量部である。
【0043】
(D)オルガノポリシロキサンレジン
本発明の組成物は、さらに、(a)下記式(2)で示される単位(MA単位)と、(b)R4
3SiO1/2単位(M単位)と、(c)SiO4/2単位(Q単位)とからなる(メタ)アクリロイルオキシ含有基を有するオルガノポリシロキサンレジンを含んでいてもよい。
【0044】
【化6】
(式中、R
1、R
2、R
3、aおよびpは、上記と同じ意味を表す。)
【0045】
(b)単位中のR4は、互いに独立して、炭素原子数1~10の一価炭化水素基である。その具体例としては、上記R1で例示した基のうち、炭素原子数1~10のものが挙げられるが、中でもメチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル基等の炭素原子数1~8、好ましくは炭素原子数2~6のアルキル基;フェニル、トリル基等の炭素原子数6~10のアリール基、ベンジル基等の炭素原子数7~10のアラルキル基;ビニル、アリル、ブテニル基等の炭素原子数2~6のアルケニル基などが好ましい。
なお、上記R4の一価炭化水素基も、R1と同様に、炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が、上述したその他の置換基で置換されていてもよい。
【0046】
本発明の(D)成分では、組成物の粘度および硬化物のゴム物性の点から、(a)上記式(2)で示される単位(MA単位)および(b)R4
3SiO1/2単位(M単位)の合計と、(c)SiO4/2単位(Q単位)のモル比が、MA単位+M単位:Q単位=0.4~1.2:1が好ましく、0.6~1.2:1がより好ましい。
【0047】
また、MA単位とM単位のモル比により、硬化物のゴム物性を調節でき、硬化物の強度の観点から、MA単位:M単位=0.01~1:1が好ましく、MA単位:M単位=0.05~0.5:1がより好ましい。
【0048】
MA単位の含有量は、(D)成分のオルガノポリシロキサンレジン中の全シロキサン単位に対し、3~30モル%が好ましく、5~25モル%がより好ましい。このような範囲であると、硬化物の機械物性が良好となる。
【0049】
(D)成分は、R1SiO3/2(R1は、上記と同じ意味を表す。)で表される三官能性シロキサン単位(即ち、オルガノシルセスキオキサン単位)を構成単位として含んでいてもよく、この場合、R1SiO3/2単位およびSiO4/2単位の合計の含有量は、好ましくは(D)成分のオルガノポリシロキサンレジン中の全シロキサン単位の10~90モル%、より好ましくは20~80モル%である。
【0050】
(D)成分の数平均分子量は、500~30,000が好ましく、1,000~20,000がより好ましい。このような範囲であると、組成物の作業性が良好となる。なお、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)における標準ポリスチレン換算値である。
【0051】
(D)成分を用いる場合、その添加量は、組成物の粘度および硬化物のゴム物性の点から、好ましくは(A)成分100質量部に対して、5~200質量部であり、より好ましくは10~100質量部である。
なお、(D)成分は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0052】
(E)シリカ
本発明の組成物には、組成物の粘度を調節し、また、硬化物の物性(硬さ、切断時伸び、引張強さ)を向上する目的でシリカを添加することができる。
シリカとしては、ヒュームドシリカ(乾式シリカ)や沈殿シリカ(湿式シリカ)が挙げられ、ヒュームドシリカ(乾式シリカ)が好ましい。
【0053】
(E)成分のシリカのBET比表面積は、特に限定されるものではないが、組成物のチクソ性および作業性の点から50~400m2/gが好ましく、100~350m2/gがより好ましい。
【0054】
(E)成分は、そのまま用いても構わないが、表面疎水化処理剤で処理したものを用いてもよい。
表面疎水化処理剤としては、アルキルアルコキシシラン、アルキルクロロシラン、アルキルシラザン、シランカップリング剤等を使用することができる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて同時または任意の順序で用いて表面疎水化処理を行ってもよい。
また、(E)成分は、予め表面疎水化処理剤で処理したものを用いても、組成物への混練時に表面疎水化処理剤を添加し、混練と表面疎水化処理を同時に行ってもよい。
【0055】
(E)成分を用いる場合、その添加量は、上記(A)成分100質量部に対して1~200質量部の範囲が好ましく、5~150質量部がより好ましく、10~100質量部がより一層好ましい。なお、(E)成分は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、炭酸カルシウム、アルミナ等の充填剤、色材(顔料または染料)、接着助剤、重合禁止剤、酸化防止剤、耐光性安定剤である紫外線吸収剤、光安定化剤、シロキサン構造を含まない単官能(メタ)アクリレート化合物等の添加剤を配合することができる。
さらに、本発明の組成物はその他の樹脂組成物と適宜混合して使用することもできる。
【0057】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、上記(A)~(C)成分、および必要に応じて(D)成分、(E)成分ならびにその他の成分を、任意の順序で混合し、撹拌等して得ることができる。撹拌等の操作に用いる装置は、特に限定されないが、擂潰機、3本ロール、ボールミル、プラネタリーミキサー等が挙げられる。また、これらの装置を適宜組み合わせてもよい。
【0058】
本発明の硬化性シリコーン組成物の23℃における粘度は、塗布時の成型性や作業性の観点から、5,000Pa・s以下が好ましく、3,000Pa・s以下がより好ましく、1,500Pa・s以下がより一層好ましい。5,000Pa・sを超えると作業性が著しく悪くなる場合がある。
【0059】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、加熱または紫外線を照射することにより速やかに硬化する。
加熱により硬化させる場合、加熱温度は、好ましくは50~200℃、より好ましくは100~150℃であり、加熱時間は、好ましくは0.5~24時間、より好ましくは1~2時間である。なお、加熱時間および加熱時間は使用する有機過酸化物の半減期により調節することができる。
【0060】
紫外線で硬化させる場合、照射する紫外線の光源として、例えば、UVLEDランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアークランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
紫外線の照射量(積算光量)は、紫外線の照射のみで硬化させる場合、例えば、本発明の組成物を2.0mm程度の厚みに成形したシートに対して、好ましくは1~10,000mJ/cm2であり、より好ましくは10~8,000mJ/cm2である。すなわち、照度100mW/cm2の紫外線を用いた場合、0.01~100秒程度紫外線を照射すればよい。
【実施例0061】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例で使用した各成分の化合物は以下のとおりである。下記式中、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表し、Viはビニル基を表す。
【0062】
(A)成分
【化7】
(式中、括弧内のシロキサン単位の配列順は任意である。)
【0063】
(B)成分
(B-1)構成単位のモル比が(HSC3H6SiO3/2)単位/(Me3SiO1/2)単位=1/1で表されるオルガノポリシロキサン(数平均分子量2,100、1分子中のメルカプト基の平均個数:10個)
【0064】
(C)成分
(C-1)2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(Omnirad 1173、IGM Resins B.V.社製)
(C-2)ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド
【0065】
(D)成分
(D-1)下記式(6)で表されるメタクリロイルオキシ基含有単位、ViMe2SiO1/2単位、Me3SiO1/2単位およびSiO2単位を含有し、メタクリロイルオキシ基含有単位/(ViMe2SiO1/2単位)/(Me3SiO1/2単位)/(SiO2単位)のモル比が0.07/0.10/0.67/1.00であるオルガノポリシロキサンレジン(数平均分子量5,700)の50%キシレン溶液
【0066】
【0067】
(E)成分
(E-1)疎水性フュームドシリカ(レオロシールDM-30S、(株)トクヤマ製、比表面積235m2/g)
【0068】
[実施例1~7および比較例1~4]
上記(A)~(E)成分を表1および表2の組成で混合し、各シリコーン組成物を調製した。なお、(D)成分を使用した実施例3、6および7では、(A)成分と(D)成分とを混合し、減圧下にて100℃でキシレンを留去した後、(B)~(E)成分を混合した。表1における組成物の粘度は、回転粘度計を用いて23℃で測定した値である。
実施例1~3および比較例1,2では、調製したシリコーン組成物を、アイグラフィック(株)製アイUV電子制御装置(型式UBX0601-01)を用い、窒素雰囲気下、室温(25℃)で、波長365nmの紫外光での照射量が4,000mJ/cm2となるように紫外線を照射し、硬化させた。なお、シートの厚みは2.0mmとした。
実施例4~7および比較例3,4では、調製したシリコーン組成物を、120℃のオーブンで1時間加熱し硬化させた。なお、シートの厚みは2.0mmとした。
得られたシートについて、下記の評価を行った結果を表1および表2に併せて示す。
【0069】
[表面硬化性]
シート表面に未硬化のオイルが無いものについては〇とし、あるものについては×とした。
[引張強度および切断時伸び]
引張強さおよび切断時伸びは、JIS-K6249:2003に準じて測定した。
[硬度]
硬化直後および85℃85%RHの環境に500時間暴露した後のシートのType A硬度を、JIS-K6249:2003に準じて測定した。
【0070】
【0071】
【0072】
表1に示されるように、実施例1~3で調製した紫外線硬化性シリコーン組成物および実施例4~7で調製した加熱硬化性シリコーン組成物の硬化物は、硬化物表面に酸素阻害による未硬化物が無く、優れた引張強度を有しており、85℃、85%RHの環境に500時間暴露した後の硬さ変化が小さいことがわかる。
一方、表2に示されるように、比較例1および比較例3で調製した硬化性シリコーン組成物の硬化物は、(B)成分が添加されていないため引張強度が小さくなり、酸素による硬化阻害が発生し、未硬化物が確認された。また、比較例2および比較例4で調製した硬化性シリコーン組成物の硬化物は、本発明のSH/脂肪族不飽和結合の範囲を超える量で(B)成分を添加したため、硬度および引張強さが小さくなり、85℃、85%RHの環境に500時間暴露した後の硬度変化が大きいことがわかる。