(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185697
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】吸収性物品の収容体
(51)【国際特許分類】
B65D 85/07 20170101AFI20221208BHJP
【FI】
B65D85/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093472
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】市川 誠
(72)【発明者】
【氏名】デリ リダ ライナ
【テーマコード(参考)】
3E068
【Fターム(参考)】
3E068AA40
3E068AB02
3E068AC07
3E068BB06
3E068BB17
3E068CC22
3E068CD01
3E068CE01
3E068CE02
3E068DD02
3E068DD04
3E068DD08
3E068DE11
3E068DE13
3E068DE14
3E068DE15
3E068EE32
(57)【要約】
【課題】高い防湿性を備えた紙製の吸収性物品収容体を提供する。
【解決手段】
吸収性物品100と、収容部材10とを備え、収容部材10は、少なくとも一部が紙で構成された第1の面(S1)と第2の面(S2)とを有し、第2の面(S2)は、折り誘導線(FL1)を基準として第1の面(S1)に対して所定の角度をなすように折り曲げられており、第1の面(S1)から第2の面(S2)に亘って開封口(30)を形成するための切り取り誘導線(12)を有する、収性物品の収容体(1)であって、切り取り誘導線(12)は、間隔(g12S)を空けて設けられた複数の切り込み(12S)によって構成されており、複数の切り込み(12S)は、それぞれ、折り誘導線(FL1)と重複しない位置に設けられている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品と、前記吸収性物品を収容する収容部材とを備え、
前記収容部材は、少なくとも一部が紙で構成された第1の面と第2の面とを有し、
前記第2の面は、折り誘導線を基準として前記第1の面に対して所定の角度をなすように折り曲げられており、
前記第1の面から前記第2の面に亘って開封口を形成するための切り取り誘導線を有する、収性物品の収容体であって、
前記切り取り誘導線は、間隔を空けて設けられた複数の切り込みによって構成されており、
複数の前記切り込みは、それぞれ、前記折り誘導線と重複しない位置に設けられている、ことを特徴とする吸収性物品の収容体。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品の収容体であって、
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、
前記折り誘導線は、前記左右方向において一部が不連続となった不連続部を有し、
複数の前記切り込みは、前記不連続部と重複する位置に設けられている、ことを特徴とする吸収性物品の収容体。
【請求項3】
請求項1に記載の吸収性物品の収容体であって、
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、
前記折り誘導線は、前記左右方向の一端側から他端側まで連続して設けられており、
前記上下方向において、隣り合う二つの前記切り込みの間に、前記折り誘導線が設けられている、ことを特徴とする吸収性物品の収容体。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の吸収性物品の収容体であって、
前記折り誘導線の幅は、隣り合う二つの前記切り込みの間隔よりも小さい、ことを特徴とする吸収性物品の収容体。
【請求項5】
請求項1~3の何れか1項に記載の吸収性物品の収容体であって、
前記折り誘導線の幅は、隣り合う二つの前記切り込みの間隔以上である、ことを特徴とする吸収性物品の収容体。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の吸収性物品の収容体であって、
前記第1の面と前記第2の面とがなす角度のうち小さい方の角度が90度よりも大きい、ことを特徴とする吸収性物品の収容体。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の吸収性物品の収容体であって、
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、
前記切り取り誘導線は、前記第1の面と前記第2の面との境界を跨ぐ位置に、前記左右方向に間隔を空けて一対配置されており、
一対の前記切り取り誘導線の、前記左右方向の間の領域に前記折り誘導線が設けられている、ことを特徴とする吸収性物品の収容体。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の吸収性物品の収容体であって、
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、
前記収容部材は、前記前後方向において、前記第1の面及び前記第2の面の反対側に位置する第3の面及び第4の面を有し、
前記第3の面から前記第4の面に亘って、前記収容部材の後側に前記開封口を形成するための前記切り取り誘導線を有する、ことを特徴とする吸収性物品の収容体。
【請求項9】
請求項8に記載の吸収性物品の収容体であって、
前記第3の面に、前記開封口の位置及び形状の少なくとも何れかに関する情報を表す図柄が設けられている、ことを特徴とする吸収性物品の収容体。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載の吸収性物品の収容体であって、
前記収容部材は、紙製の層と、樹脂製の層とが積層された基材シートによって構成されており、
前記収容部材の全体重量に対する前記紙製の層の重量の割合が50%以上である、ことを特徴とする吸収性物品の収容体。
【請求項11】
請求項10に記載の吸収性物品の収容体であって、
前記基材シートの厚さ方向において、前記樹脂製の層の表側に前記紙製の層が設けられており、前記紙製の層の表側に前記基材シートを被覆する水溶性インクからなる被覆層が設けられている、ことを特徴とする吸収性物品の収容体。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項に記載の吸収性物品の収容体であって、
前記収容部材を構成している前記紙は、100%再生紙である、ことを特徴とする吸収性物品の収容体。
【請求項13】
請求項1~12の何れか1項に記載の吸収性物品の収容体であって、
前記吸収性物品は、フィルム製の包装材によって個別に包装された個包装状態で前記収容部材に収容されている、ことを特徴とする吸収性物品の収容体。
【請求項14】
請求項13に記載の吸収性物品の収容体であって、
個包装状態の前記吸収性物品の厚さ方向が、前記第1の面の法線方向と交差するように、複数の前記吸収性物品が前記厚さ方向に重ねられた状態で、前記収容部材に収容されている、ことを特徴とする吸収性物品の収容体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品の収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のおむつや生理用ナプキン等の吸収性物品が収容部材の内部に収容された吸収性物品の収容体が知られている。このような吸収性物品の収容体として、近年、脱プラ等の環境配慮の観点から、紙を用いた紙パッケージの製品が注目されている。例えば、特許文献1には、紙層とフィルム層とが積層された積層体によって形成された平行六面体形状の可撓性ガセットパッケージの内部に、複数の物品を収容したパッケージ製品に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような紙パッケージは、従来のプラスチックフィルム等のパッケージと比較して硬いため、折り誘導線を設けて紙を折り曲げやすくしておくことで、収容部材の形状(例えば、平行六面体形状)を安定させることが一般に行われている。また、収容された製品を取り出すための開封口を形成しやすくするために、紙パッケージの表面に、所謂ミシン目等の切り取り誘導線が設けられる場合がある。
【0005】
しかしながら、ミシン目等の切り取り誘導性が折り誘導線と重なって設けられていた場合、開封前にミシン目が広がって開封口の一部が開いてしまい、大気中の水分等が内部に浸入することによって防湿性が損なわれてしまうおそれがある。特に、ナプキンやおむつ等の吸収性物品を収容する吸収性物品の収容体においては、吸水性能を悪化させないために高い防湿性を備えている必要がある。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、高い防湿性を備えた紙製の吸収性物品収容体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、吸収性物品と、前記吸収性物品を収容する収容部材とを備え、前記収容部材は、少なくとも一部が紙で構成された第1の面と第2の面とを有し、前記第2の面は、折り誘導線を基準として前記第1の面に対して所定の角度をなすように折り曲げられており、前記第1の面から前記第2の面に亘って開封口を形成するための切り取り誘導線を有する、収性物品の収容体であって、前記切り取り誘導線は、間隔を空けて設けられた複数の切り込みによって構成されており、複数の前記切り込みは、それぞれ、前記折り誘導線と重複しない位置に設けられている、ことを特徴とする吸収性物品の収容体である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い防湿性を備えた紙製の吸収性物品収容体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】生理用ナプキン収容体1を斜め前方から見たときの概略斜視図である。
【
図2】生理用ナプキン収容体1を斜め後方から見たときの概略斜視図である。
【
図3】生理用ナプキン収容体1の内部に複数の吸収性物品100が収容されている状態について説明する図である。
【
図4】収容部材10を構成する基材シート11の断面構造について説明する図である。
【
図5】収容部材10に収容された状態における吸収性物品100の概略斜視図である。
【
図6】展開した状態の吸収性物品100の概略平面図および該略断面図である。
【
図7】切り取り誘導線12及び折り曲げ誘導線FL1の配置について説明する図である。
【
図8】左右方向から見たときの収容部材10の断面形状について表す図である。
【
図9】切り取り誘導線12及び折り曲げ誘導線FL1の配置の変形例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
吸収性物品と、前記吸収性物品を収容する収容部材とを備え、前記収容部材は、少なくとも一部が紙で構成された第1の面と第2の面とを有し、前記第2の面は、折り誘導線を基準として前記第1の面に対して所定の角度をなすように折り曲げられており、前記第1の面から前記第2の面に亘って開封口を形成するための切り取り誘導線を有する、収性物品の収容体であって、前記切り取り誘導線は、間隔を空けて設けられた複数の切り込みによって構成されており、複数の前記切り込みは、それぞれ、前記折り誘導線と重複しない位置に設けられている、ことを特徴とする吸収性物品の収容体。
【0011】
このような吸収性物品の収容体によれば、折り曲げ誘導線を基準として第1の面と第2の面とを折り曲げる際に生じる力が、切り取り誘導線に対して直接作用し難くなる。したがって、収容体の開封前に、切り込みが広がって開封口の一部が開いてしまうことを抑制することができる。これにより、高い防湿性を備え、形状を維持しやすく吸収性物品を取り出しやすい紙パッケージ製の吸収性物品収容体を実現することができる。
【0012】
かかる吸収性物品の収容体であって、互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、前記折り誘導線は、前記左右方向において一部が不連続となった不連続部を有し、複数の前記切り込みは、前記不連続部と重複する位置に設けられている、ことが望ましい。
【0013】
このような吸収性物品の収容体によれば、不連続部では、第1の面と第2の面との折り曲げが緩くなることから、切り取り誘導線を構成している切り込みに対して、折り曲げによる力が作用し難くなる。したがって、切り込みが広がって開封口の一部が開いてしまうことを抑制しやすくすることができる。これにより、収容体の防湿性をより向上させることができる。
【0014】
かかる吸収性物品の収容体であって、互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、前記折り誘導線は、前記左右方向の一端側から他端側まで連続して設けられており、前記上下方向において、隣り合う二つの前記切り込みの間に、前記折り誘導線が設けられている、ことが望ましい。
【0015】
このような吸収性物品の収容体によれば、切り取り誘導線を構成している切り込みに対して折り曲げによる力が直接作用し難くなり、収容体の開封前に、切り込みが広がって開封口の一部が開いてしまうことを抑制することができる。また、折り誘導線が連続しているため、第1の面と第2の面との境界部に折り目を形成しやすく、収容部材の形状をより安定させやすくすることができる。
【0016】
かかる吸収性物品の収容体であって、前記折り誘導線の幅は、隣り合う二つの前記切り込みの間隔よりも小さい、ことが望ましい。
【0017】
このような吸収性物品の収容体によれば、隣り合う二つの切り込みの間隔を折り誘導線の幅よりも広くとることにより、切り取り誘導線を構成する切り込み同士が繋がってしまうことが抑制され、開封前に開封口が開いてしまうことを抑制しやすくなる。これにより、収容体の防湿性をより向上させることができる。
【0018】
かかる吸収性物品の収容体であって、前記折り誘導線の幅は、隣り合う二つの前記切り込みの間隔以上である、ことが望ましい。
【0019】
このような吸収性物品の収容体によれば、切り取り誘導線を構成する切り込みの間隔をなるべく狭くすることで、切り取り誘導線に沿って収容部材を破りやすくすることができる。したがって、紙を含むことによって硬くなっている収容部材に開封口を形成する動作を行いやすくすることができる。
【0020】
かかる吸収性物品の収容体であって、前記第1の面と前記第2の面とがなす角度のうち小さい方の角度が90度よりも大きい、ことが望ましい。
【0021】
このような吸収性物品の収容体によれば、第1の面に対する第2の面の折り曲げ角度が小さくなるため、折り曲げに際して切り取り誘導線に作用する力を弱くすることができる。これにより、開封前に開封口が開いてしまうことを抑制しやすく、収容体の防湿性をより向上させることができる。
【0022】
かかる吸収性物品の収容体であって、互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、前記切り取り誘導線は、前記第1の面と前記第2の面との境界を跨ぐ位置に、前記左右方向に間隔を空けて一対配置されており、一対の前記切り取り誘導線の、前記左右方向の間の領域に前記折り誘導線が設けられている、ことが望ましい。
【0023】
このような吸収性物品の収容体によれば、収容部材のうち、開封口を形成する際に切り取り誘導線に沿って切り取られる部分が、折り誘導線を基準として折れ曲がった状態を維持しやすくなり、切り取られた後も開封口を覆うカバーとしてそのまま使用することが可能となる。これにより、開封口から水滴等が入ってしまうことを抑制することができる。
【0024】
かかる吸収性物品の収容体であって、互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、前記収容部材は、前記前後方向において、前記第1の面及び前記第2の面の反対側に位置する第3の面及び第4の面を有し、前記第3の面から前記第4の面に亘って、前記収容部材の後側に前記開封口を形成するための前記切り取り誘導線を有する、ことが望ましい。
【0025】
このような吸収性物品の収容体によれば、収容部材のうち、第1の面及び第2の面(前側)に加えて、第3の面及び第4の面(後側)にも開口部が設けられることにより、収容部材の内部に収容されている吸収性物品をより取り出しやすくすることができる。
【0026】
かかる吸収性物品の収容体であって、前記第3の面に、前記開封口の位置及び形状の少なくとも何れかに関する情報を表す図柄が設けられている、ことが望ましい。
【0027】
このような吸収性物品の収容体によれば、ユーザーは、図柄を視認することで、収容部材の後側において開封口が形成される位置や開封口の形状を一見して把握することが可能となり、収容体の開封作業を行いやすくすることができる。
【0028】
かかる吸収性物品の収容体であって、前記収容部材は、紙製の層と、樹脂製の層とが積層された基材シートによって構成されており、前記収容部材の全体重量に対する前記紙製の層の重量の割合が50%以上である、ことが望ましい。
【0029】
このような吸収性物品の収容体によれば、紙の重量割合を50%以上とすることで、収容体が環境に優しい製品であることを、ユーザーに認識させやすくすることができる。また、収容部材の基材シートが樹脂層を有しているため、紙製品でありつつも、内部に収容された吸収性物品に水分が浸透し難く、十分な防湿性を担保することが可能となる。
【0030】
かかる吸収性物品の収容体であって、前記基材シートの厚さ方向において、前記樹脂製の層の表側に前記紙製の層が設けられており、前記紙製の層の表側に前記基材シートを被覆する水溶性インクからなる被覆層が設けられている、ことが望ましい。
【0031】
このような吸収性物品の収容体によれば、厚さ方向の表側の層(外層)が紙製であったとしても、被覆層でコーティングすることにより当該紙製の層の耐水性を高めることができる。これにより、収容部材の内部に収容されている吸収性物品に水分が到達してしまうことを抑制することができる。また、被覆層が設けられることにより、外層の強度が高められるため、収容部材の形状を崩れ難くすることができる。
【0032】
かかる吸収性物品の収容体であって、前記収容部材を構成している前記紙は、100%再生紙である、ことが望ましい。
【0033】
このような吸収性物品の収容体によれば、再生紙を用いることで、収容部材において、紙の風合いや質感を出しやすくなり、且つ、環境に配慮した製品であることをユーザーにより認識させやすくすることができる。また、再生紙は通常の紙と比較して剛性が高くなりやすいため、折り誘導線に沿って基材シートを折り曲げた際の形状が安定しやすく、収容部材の形状を崩れ難くすることができる。
【0034】
かかる吸収性物品の収容体であって、前記吸収性物品は、フィルム製の包装材によって個別に包装された個包装状態で前記収容部材に収容されている、ことが望ましい。
【0035】
このような吸収性物品の収容体によれば、包装材によって吸収性物品が個々に包装されているため、吸収体等が大気に露出し難くなり、大気中の水分を吸収して吸収性能が悪化してしまうこと等を抑制することができる。したがって、収容体を開封した後であっても、内部に収容されている複数の吸収性物品の吸収性能を良好な状態に保ちやすくすることができる。
【0036】
かかる吸収性物品の収容体であって、個包装状態の前記吸収性物品の厚さ方向が、前記第1の面の法線方向と交差するように、複数の前記吸収性物品が前記厚さ方向に重ねられた状態で、前記収容部材に収容されている、ことが望ましい。
【0037】
このような吸収性物品の収容体によれば、厚さ方向に重ねられた吸収性物品同士の間に空間が形成され、このような空間あることにより、切り取り誘導線に囲まれた領域を外側から内側に押し込む動作が、内部の吸収性物品によって干渉されてしまうことが抑制され、切り取り誘導線を切り取りやすくなる。これにより、開封口を形成しやすくすることができる。
===実施形態===
【0038】
<吸収性物品収容体1の基本構成>
本発明に係る吸収性物品の収容体として、生理用ナプキンを収容する生理用ナプキン収容体1(以下、単に「収容体1」とも呼ぶ)を例に挙げて実施形態を説明する。但し、収容体1に収容される吸収性物品は生理用ナプキンには限られず、使い捨ておむつやパンティーライナー、軽失禁用パッド等、収容部材に収容可能なものであれば良い。
【0039】
図1は、生理用ナプキン収容体1(収容体1)を斜め前方から見たときの概略斜視図である。
図2は、生理用ナプキン収容体1(収容体1)を斜め後方から見たときの概略斜視図である。
図3は、収容体1の内部に複数の吸収性物品100が収容されている状態について説明する図である。収容体1は、袋状の部材である収容部材10と、該収容部材10の内部に収容される1以上(複数)の吸収性物品100(以下、「ナプキン100」とも呼ぶ)とを有している。また、収容体1(収容部材10)は、
図1~
図3に示されるように、互いに交差する上下方向と、左右方向と、前後方向と、を有している。
【0040】
(収容部材10)
収容部材10は、
図1に示されるように上部が三角形の屋根型形状となった略7面体の容器であり、該収容部材10を構成するシート部材である基材シート11を折り曲げて、所定の部位を接合することによって形成される。基材シート11を折り曲げて、
図1のような略7面体形状の収容部材10を形成する方法は、例えば公知のミルクカートンの製造方法と同様の方法を用いても良いし、その他の方法を用いても良い。
【0041】
本実施形態では、収容部材10の前側の面を前側面S1、前側面の上側に設けられた斜めの面を前側上面S2とする。同様に、収容部材10の後側の面を後側面S3、後側面の上側に設けられた斜めの面を後側上面S4とする。また、収容部材10の右側の側面を右側面S5、左側の側面を左側面S6、底面を底面S7とする(
図1及び
図2参照)。
【0042】
これらの面S1~S7は、それぞれ隣り合う面との境界線を基準として折り曲げられることによって形成されている。例えば、前側上面S2(第2の面)は、下側に隣り合う前側面S1(第1の面)との境界線(
図1ではFL1)を基準として、当該前側面S1に対して所定の角度で折り曲げられることによって形成されている。本実施形態では、折り曲げの基準となる境界線の位置に、折り誘導線FL(詳細は後述)を設けることにより、隣り合う面同士を折り曲げやすくしている。
【0043】
収容部材10の前側には、切り取り誘導線12が設けられている。切り取り誘導線12は、
図1のように前側面S1(第1の面)から前側上面S2(第2の面)に亘って配置されており、当該切り取り誘導線12に沿って収容部材10を構成する基材シート11の一部を切り取ることによって、ナプキン100を取り出すための開封口30が形成される(
図3参照)。また、収容部材10の後側には、切り取り誘導線12と同様に開封口30を形成するための切り取り誘導線13が設けられている(
図2参照)。切り取り誘導線13は、
図2のように後側面S3(第3の面)から後側上面S4(第4の面)に亘って配置されている。切り取り誘導線12(13)の具体的な構成については後で説明する。
【0044】
収容部材10の表面には、図柄15が設けられている。図柄15は、収容体1(ナプキン100)に関する各種情報をユーザーに視認させるために設けられる。例えば、収容部材10の前側面S1には、内部に収容されているナプキン100の名称(例えば、ブランド名及びサブブランド名)や特徴(例えば、吸収容量)、吸収性物品100をイメージさせるグラフィック(例えば、ナプキンの絵)、着用対象者のサイズ等に関する種々の情報が図柄15として設けられている。また、図柄15として各種認証マークの表示(不図示)が設けられていても良い。図柄15は、主に印刷によって形成される。
【0045】
図4は、収容部材10を構成する基材シート11の断面構造について説明する図である。基材シート11は、複数のシート部材が厚さ方向に積層されてなる積層シート部材である。本実施形態の基材シート11は、厚さ方向の外側(収容部材10の表面側)に配置された外層11aと、厚さ方向の内側(収容部材10の裏面側)に配置された内層11bとの2層構造を有している。但し、基材シート11は、3層以上の層を有していても良い。
【0046】
外層11aは、少なくとも一部分が、紙で構成されている。ここで「紙」とは、植物繊維その他を膠着させて製造したものであり、広義には、素材として合成高分子物質を用いて製造した合成紙のほか,繊維状無機材料を配合した紙も含むものとする。外層11aが紙素材であることにより、収容体1が、石油由来の材料を削減した所謂「脱プラ」製品であることをユーザーに認識させやすく、環境に優しいイメージをユーザーに与えることができる。本実施形態における外層11aは、パルプ繊維等の植物繊維からなる「紙」によって構成されていることが望ましく、外層11aの全体が再生紙によって構成されていることがより望ましい。
【0047】
内層11bは、少なくとも一部分が樹脂で構成されている。ここで「樹脂」とは、高分子化合物からなる合成樹脂であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性樹脂を使用できる。紙製の外層11aの内側に樹脂による層が設けられていることにより、大気中に含まれる水分(シャワールームの水滴等も含む)が収容体1の外側から内側に浸入することが抑制され、内部に収容されたナプキン100の防湿性を維持しやすくすることができる。
【0048】
そして、基材シート11の内側面たる内層11bが熱可塑性の樹脂であることにより、収容部材10を形成する際に、当該内側面同士を熱溶着(ヒートシール)することが可能となる。例えば、
図1及び
図2に示される収容部材10において、前側上面S2の上端部S2eと、後側上面S4の上端部S4eとは、互いに内側面(内層11b)同士を対向させた状態で、左右方向に沿って形成される溶着部50によって接合されている。このようにすることで、内層11bと、当該内層11bと厚さ方向に対向する(当接する)面とを強固に接合し、また、高い防湿性を実現することができる。なお、本実施形態の収容部材10では、溶着部50以外の箇所についても、基材シート11と対向する面とが熱溶着によって接合されることにより、全体的な強度や防湿性が高められている。
【0049】
また、基材シート11の表面(すなわち、外層11aの厚さ方向における外側の面)の一部には、上述した図柄15が設けられている。そして、基材シート11の厚さ方向における最も外側には、基材シート11の表面(外側の面)を被覆する被覆層16が設けられている。本明細書中では、このような被覆層16も基材シート11の一部であるものとして説明を行う。
【0050】
被覆層16は、基材シート11の表面の全体に亘って所定の液体を塗工することで形成される層である。塗工される液体としては、例えば、水溶性Acrylateに添加剤を加えた水溶性インクを例示できる。また、被覆層16は、厚さが不均一で表面に微細な凹凸が形成されていることが望ましい。このような被覆層16を形成することにより、基材シート11の表面の光沢度を調整し、所謂マット(つや消し)調とすることができる。すなわち、被覆層16はマットコーティング層とすることができる。なお、
図4では、図柄15の厚さ方向の表面側に被覆層16を形成する例について示したが、図柄15と被覆層16とが同じタイミングで形成されても良いし。被覆層16が形成された後で図柄15が形成されるのであっても良い。
【0051】
(吸収性物品100)
続いて、収容部材10に収容される吸収性物品100(ナプキン100)について説明する。
図5は、収容部材10に収容された状態における吸収性物品100の概略斜視図である。
図6は、展開した状態の吸収性物品100の概略平面図および該略断面図である。
図5及び
図6において、ナプキン100は、互いに交差する縦方向と、横方向と厚さ方向とを有している。縦方向は、展開状態におけるナプキン100の長手方向に相当する方向であり、使用時に着用者の下腹部に当接する側を前側、臀部に当接する側を後側とする。横方向は、展開状態における吸収性物品100の短手方向に相当する方向である。また、厚さ方向において、着用者の肌に当接する側を肌側、その反対側を非肌側とする。
【0052】
ナプキン100は、ナプキン本体110と包装材150とを備えている。ナプキン本体110は、一般的な生理用ナプキンであり、
図6の展開状態において、厚さ方向の肌側から順に、肌側シート112と、吸収体111と、非肌側シート113とが積層されている。吸収体111は、経血等の排泄液を吸収して内部に保持する部材であり、パルプ繊維等の液体吸収性繊維や、液体吸収性繊維に高吸収性ポリマー(所謂SAP)を含有するものから構成されている。肌側シート112は、液透過性のシート部材であり、エアスルー不織布等を例示できる。非肌側シート113は、液不透過性のシート部材であり、ポリエチレン(PE)の樹脂フィルム等を例示できる。また、非肌側シート113の厚さ方向における非肌側の面には、ナプキン本体110の使用時に着用者の下着に固定するための中央粘着部(
図6のB-B断面図において破線で表示されている)が設けられている。なお、ナプキン100の形状は、
図6に示されるものには限られず、例えば、両側部にウイングを備えたものや、前後で形状が異なるものであっても良い。
【0053】
包装材150は、ナプキン本体110を個別に包装するシート部材であり、不織布をラミネート加工したフィルムやプラスチックフィルム、ナイロンフィルム等の各種フィルム等から形成されている。包装材150は、ナプキン本体110の厚さ方向の非肌側に重ね合わせられた状態で保護シート160を介して接合されている。
【0054】
保護シート160は、ナプキン本体110の非肌側に設けられたシート部材である。保護シート160の肌側面は、シリコン樹脂等を用いた剥離加工が施されており、ナプキン本体110の中央粘着部に対して剥離可能に貼付されている。一方、保護シート160の非肌側面は包装材150に接合されている。
【0055】
ナプキン100は、
図5に示されるような個包装状態で収容部材10に収容される。ナプキン100を個包装状態とする際には、
図6に示される展開状態から、幅方向に沿った第2折り畳み部F2、及び、第1折り畳み部F1にて、肌側面が内側となるようにナプキン本体110及び包装材150が順次折り畳まれる。そして、折り畳まれた状態において包装材150の幅方向の両端部swに熱融着等の接合処理を行い、包装材150の長手方向の端部がファスニングテープ170等を用いて係止されることで、
図5に示されるような個包装状態となる、
【0056】
個包装状態のナプキン100は、複数個ずつ収容部材10の内部に収容される。具体的には、
図3のように、収容部材10の左右方向に沿って、複数個のナプキン100が厚さ方向に重ねられた状態で収容され、生理用ナプキン収容体1として市場に流通する。ナプキン100を使用する際には、収容部材10の上部に形成される開封口30から個包装状態のナプキン100を個別に取り出し、
図6のように展開した後、ナプキン本体110から包装材150及び保護シート160を取り外して使用する。
【0057】
<切り取り誘導線12ついて>
収容部材10に設けられた切り取り誘導線12の詳細について説明する。なお、切り取り誘導線13については、切り取り誘導線12とほぼ同様の構成を有していることから、ここでは説明を省略する。
図7は、切り取り誘導線12及び折り誘導線FL1の配置について説明する図である。切り取り誘導線12は、複数の切り込み12Sが所定の間隔(g12S)を空けて並ぶことによって形成されたミシン目状の線であり、収容部材10の前側面S1(第1の面)から前側上面S2(第2の面)に亘って、
図7に示されるような略U字型に配置されている。すなわち、切り取り誘導線12は、前側面S1(第1の面)と前側上面S2(第2の面)との境界線を跨ぐように配置されている
【0058】
各々の切り込み12Sは、
図4に示す基材シート11(及び被覆層16)を厚さ方向の肌側から非肌側に貫通するスリットであり、収容部材10の製造過程において、基材シート11に対して切り込み形成用の刃(所謂、ミシン刃等)を厚さ方向に押し当てることで形成される。このような切り込み12Sが断続的に並んでいることにより、切り取り誘導線12に沿って基材シート11を簡単に切り取ることが可能となり、該切り取り誘導線12を外縁とする開封口30を形成しやすくすることができる。なお、切り込み12Sは、必ずしも基材シート11を厚さ方向に貫通している必要はなく、厚さ方向に非貫通であっても良い。例えば、基材シート11のうち、外層11aのみを貫通し、内層11bは貫通していないような構成としても良い。このような構成であれば、大気中の水分が切り込み12Sを透過して収容部材10の内部に浸入してしまうことが抑制されやすくなり、吸収性物品100の防湿性をより高めることが可能となる。
【0059】
ところで、本実施形態の収容部材10は上述したように少なくとも一部(基材シート11の外層11a)が紙素材によって構成されている。このような紙製のパッケージは、ポリエチレン樹脂等によって形成された従来のフィルム製のパッケージと比較して、硬く変形し難い。そこで、本実施形態では、収容部材10の各面S1~S7の境界線上に折り誘導線FLを設けて基材シート11を折り曲げやすくすることで、収容部材10を
図1のような略7面体形状に形成しやすくしている。収容部材10の形状を安定させることにより、開封口30を介して収容部材10の内部から吸収性物品100(ナプキン100)を取り出す動作を行いやすくすることができる。
【0060】
折り誘導線FLは、収容部材10の製造過程において、基材シート11を厚さ方向に圧搾することによって形成される。例えば、平面状態の基材シート11を折り曲げて面S1~S7を形成する前に、折り曲げ対象となる境界線に沿って所定の幅(tFL)を有する帯状に基材シート11を予め圧搾しておくことで、当該帯状の圧搾部に沿って基材シート11を折り曲げやすくすることができる。
図7では、前側面S1(第1の面)と前側上面S2(第2の面)との境界線に沿って、幅tFL1を有する折り誘導線FL1が形成されている。
【0061】
実際に収容部材10を製造する際には、平面状の基材シート11に対して、折り誘導線FLを形成してから、当該折り誘導線FLに沿って各面が折り曲げられる。しかしながら、本実施形態では、切り取り誘導線12が前側面S1(第1の面)と前側上面S2(第2の面)との境界線を跨ぐように配置されているため、切り取り誘導線12自体にも折り曲げによる力が作用して、切り取り誘導線12が破れてしまう場合がある。また、収容体1を購入したユーザーが自宅等で保管している間に、折り誘導線FLの影響で切り込み12Sが広がって、収容体1を開封する前に、開封口30の一部が開いてしまう場合がある。このような場合、収容体1の防湿性が損なわれ、収容部材10の内部に収容されている吸収性物品100の品質が悪化するおそれがある。
【0062】
そこで、本実施形態の収容部材10では、切り取り誘導線12を構成する複数の切り込み12Sと、折り誘導線FL1とがそれぞれ重複しないように配置されている。これにより、各々の切り込み12Sに対して折り曲げによる力が直接作用し難くなり、収容体1の開封前に、切り込み12Sが広がって開封口30の一部が開いてしまうことを抑制することができる。したがって、開封口30等の形状を維持しやすく吸収性物品100を取り出しやすい紙製の収容体1において、高い防湿性を実現することができる。
【0063】
切り込み12Sと折り誘導線FL1とが重複しないようにするための具体的な方法としては、左右方向において、折り誘導線FL1に不連続部dcを設け、当該不連続部dcと切り取り誘導線12の切り込み12Sとが重複しないようにする方法が挙げられる。
図7では、左右方向に沿って設けられる折り誘導線FL1のうち、左右方向における一部(間隔gdcの部分)が不連続となった、不連続部dcが2か所設けられている。そして、この不連続部dcと重複する位置に切り取り誘導線12(切り込み12S)が配置されている。不連続部dcでは、前側面S1(第1の面)と前側上面S2(第2の面)との折り曲げが緩くなることから、切り取り誘導線12(切り込み12S)に対して力が作用し難くなり、切り込み12Sが広がって開封口30の一部が開いてしまうことを抑制しやすくすることができる。また、不連続部dcは、左右方向に所定の間隔gdcを有するように形成されているため、収容部材10の製造過程において、切り取り誘導線12の形成位置が左右方向に多少ずれたとしても切り込み12Sと折り誘導線FL1とは重複し難く、収容体1の開封前に開封口30が開いてしまうことが抑制されやすい。これにより、収容体1の防湿性をより向上させることができる。
【0064】
このとき、隣り合う2つの切り込み12S,12Sの間隔g12S(
図7では上下方向における間隔)は、折り誘導線FL1の幅tFL1(
図7では上下方向における幅)よりも大きいことが好ましい(g12S>tFL1)。隣り合う切り込み12S,12Sの間隔を折り誘導線の幅と比較してなるべく広くとることにより、当該切り込み12S,12Sが繋がってしまうことが抑制されやすくなり、開封前に開封口30が開いてしまうことを抑制しやすくなる。また、仮に、折り誘導線FL1に不連続部dcが設けられておらず、折り誘導線FL1が左右方向に連続して設けられていたとしても、切り込み12S,12Sの間隔g12Sの間隔が折り誘導線FL1の幅tFL1よりも広ければ(
図9参照)、切り込み12Sと折り誘導線FL1とが重複してしまう確率を低くすることができる。
【0065】
但し、隣り合う2つの切り込み12S,12Sの間隔g12S(上下方向における間隔)が、折り誘導線FL1の幅tFL1(上下方向における幅)以下となる構成としても良い(g12S≦tFL1)。収容部材10を構成する基材シート11として再生紙を用いる場合、基材シート11自体が硬くなりやすく、切り取り誘導線12に沿って基材シート11を破って開封口30を形成する動作が困難になる場合がある。このような場合には、切り込み12S,12Sの間隔g12Sをなるべく狭くすることで、開封口30を形成する動作を行いやすくすることができる。なお、上述したように、本実施形態では、
折り誘導線FL1に設けられる不連続部dcが、左右方向に所定の間隔gdcを有しており、切り取り誘導線12の配置が多少ずれたとしても折り誘導線FL1と重複してしまう確率は低い。したがって、切り込み12S,12Sの間隔g12Sを小さくしたとしても、開封前に開封口30が開いてしまうことを抑制することが可能である。
【0066】
また、収容部材10において、折り誘導線FL1を基準として折り曲げられた前側面S1(第1の面)と前側上面S2(第2の面)とがなす角度は90度以上(鈍角)となっている。
図8は、左右方向から見たときの収容部材10の断面形状について表す図である。同
図8に示されるように、前側面S1(第1の面)と前側上面S2(第2の面)とがなす角度α(前側面S1と前側上面S2とがなす角度のうち、小さい方の角度)は、90度よりも大きくなっている。仮に、角度αを90度未満にしようとした場合、平面状態の基材シート11を折り誘導線FL1を基準として90度以上折り曲げる必要が生じ、前側面S1から前側上面S2に亘って設けられている切り取り誘導線12にも大きな折り曲げ力が作用し、切り込み12Sが開きやすくなってしまうおそれがある。
【0067】
これに対して、本実施形態では、角度αが90度以上であり、基材シート11が折り曲げられる角度(前側面S1に対する前側上面S2の折り曲げ角度)を小さくすることができる。したがって、折り誘導線FL1を基準とする折れ曲がりの角度が緩くなり、その分切り取り誘導線12に作用する力を弱くすることができる。これにより、開封前に開封口30が開いてしまうことを抑制し易くすることができる。
【0068】
また、前側面S1(第1の面)と前側上面S2(第2の面)との境界を跨いで配置されている左右一対の切り取り誘導線12,12の間の領域にも折り誘導線FL1が設けられている。
図7では、一対の切り取り誘導線12,12によって左右方向に挟まれている部分に曲げ誘導線FL1cが設けられている。この部分は、収容部材10のうち、開封口30を形成する際に切り取り誘導線12に沿って切り取られる部分であるが、切り取られた後も
図3のように折り誘導線FL1cを基準として折れ曲がった状態が維持されるため、そのまま開封口30を覆うカバー(蓋)として機能させることができる。例えば、開封後の収容体1がシャワールーム等の置かれていた場合、開封口30から収容部材10の内部に水滴等が入りやすくなり、吸収性物品100の液吸収性が悪化してしまうおそれがある。これに対して、切り取り誘導線12に沿って切り取られた部分がカバー(蓋)として開封口30を塞ぐことにより、水分等の浸入を抑制しやすくすることができる。したがって、収容体1の防湿性を維持しやすくすることができる。
【0069】
また、本実施形態の収容部材10は、前後方向の後側にも開封口30を形成することができる。すなわち、収容部材10は、後側面S3(第3の面)から後側上面S4(第4の面)に亘って切り取り誘導線13を備えており(
図2参照)、当該切り取り誘導線13に沿って収容部材10の一部を切り取ることによって、前側面と同様の開封口30が形成される。収容部材10の前後に開封口30が設けられることにより、収容されている吸収性物品100をより取り出しやすくすることができる。なお、収容部材10を構成している基材シート11の外層11aは紙製で強度が高いため、前後に開封口30が設けられていたとしても、収容部材10の形状(7面体形状)は崩れ難く、吸収性物品100を取り出す動作を安定して行うことが可能である。
【0070】
なお、収容部材10の後側面S3には、当該後側面S3(及び後側上面S4)に形成される開封口30の位置及び形状の少なくとも何れかに関する情報を示すための表示が設けられていることが好ましい。
図2では、切り取り誘導線13を縁取るような模様(斜線部)と、切り取り誘導線13によって囲まれる領域に「OPEN」の文字とが、開封口30の位置及び形状を示す図柄15pとして設けられている。ユーザーは、図柄15pを視認することで、収容部材10の後側において開封口30が形成される位置や開封口30の形状を一見して把握することが可能となり、収容体1の開封作業を行いやすくすることができる。また、後側面S3にこのような図柄15pが設けられているので、前側面S1には必ずしも同等の図柄を設ける必要が無く、その分、前側面S1において吸収性物品100のブランド名やサブブランド名を表示するスペースを大きくすることが可能となる。これにより、ユーザーに対して製品としての収容体1を認識させやすくすることができる。
【0071】
また、収容部材10において、全体の重量に対する紙の部分の重量の割合は50%以上であることが好ましい。
図4の場合、基材シート11は、紙製の外層11aと樹脂製の内層11bの積層構造を有しており、このうち紙製の外層11aの重量が、収容部材10の全体の重量の50%以上となっている。国によっては、紙の重量割合が50%以上の製品は、紙製品であることを表示することが可能となったり、紙ごみとして廃棄可能となったりすることから、紙の重量割合が50%以上であることは、紙パッケージ製品であることの指標となりやすい。したがって、紙の重量割合を50%以上とすることで、本実施形態の収容体1が環境に優しい製品であることを、ユーザーに認識させやすくすることができる。また、収容部材10の内層11bはポリエチレン等の液不透過性の樹脂によって構成されているため、紙製品でありつつも、内部に収容された吸収性物品100は濡れにくく、十分な防湿性を担保することが可能である。
【0072】
また、紙製の外層11aの厚さ方向の外側(表側)には、水溶性インク等からなる被覆層16(マットコーティング)が設けられている。このような被覆層16が設けられていることにより、外層11aが紙で構成されていたとしても、当該外層11aの耐水性を高めることが可能となり、収容部材10の外側から水滴等が付着した場合等でも、内部に収容されている吸収性物品100に水分が到達してしまうことを抑制することができる。すなわち、収容体1の防湿性を向上させることができる。また、被覆層16によって外層11a自体の強度が高められるため、収容部材10の形状が崩れ難くなる。そして、被覆層16の表面に凹凸を設けることで、収容部材10の表面を所謂マット調とすることが可能となり、光の反射を抑えることで収容部材10に設けられた図柄15の視認性を高めることができる。
【0073】
さらに、基材シート11の外層11aを構成している紙は、100%再生紙であることがより好ましい。再生紙を用いることで、収容部材10において、紙の風合いや質感を出しやすくなり、且つ、環境に配慮した製品であることをユーザーにより認識させやすくすることができる。また、再生紙は通常の紙と比較して剛性を高めやすいため、折り誘導線FLに沿って基材シート11を折り曲げた際の形状を安定させやすく、収容部材10の形状を崩れ難くすることができる。
【0074】
また、収容体1において、吸収性物品100は、フィルム等の包装材150によって個包装された個包装状態で収容部材10に収容されている。包装材150によって吸収性物品100(ナプキン100)が個々に包装されているため、吸収性物品100の吸収体111等が大気に露出し難くなり、大気中の水分を吸収してしまうことで吸収性能が悪化すること等を抑制することができる。したがって、収容部材10を開封した後(開封口30が形成された後)であっても、内部に収容されている複数の吸収性物品100の吸収性能を良好な状態に保ちやすくすることができる。
【0075】
なお、個包装状態の吸収性物品100を収容部材10に収容する際には、
図3に示されるように、複数の吸収性物品100の個包装体を厚さ方向に重ねた状態で、該厚さ方向を収容部材の左右方向に沿わせるようにして収容する。言い換えると、個包装された吸収性物品100の厚さ方向が、収容部材10の前側面S1の法線方向と交差するように、複数の吸収性物品100が厚さ方向に重ねられた状態で、収容部材10に収容されている。
【0076】
収容体1において、開封口30を形成する際には、収容部材10のうち切り取り誘導線12によって囲まれる領域を、外側から内側に押し込むようにして切り取り誘導線12を切り取る動作が行われる。仮に、吸収性物品100の厚さ方向が収容部材10の前側面S1の法線方向に対して平行となるように、吸収性物品100が収容されていた場合、切り取り誘導線12によって囲まれる領域を外側から内側に押し込む動作において、内部に収容された吸収性物品100が干渉してしまい、切り取り誘導線12が破れ難くなるおそれがある。これに対して、吸収性物品100の厚さ方向が、収容部材10の前側面S1の法線方向に対して交差するように収容されていた場合、厚さ方向に重ねられた吸収性物品100,100の間に空間が形成される。そして、この空間があることによって、切り取り誘導線12によって囲まれる領域を外側から内側に押し込む動作が干渉され難くなり、切り取り誘導線12が切り取りやすくなる。これにより、開封口30を形成しやすくすることができる。
【0077】
<変形例>
上述の実施形態では、収容部材10に設けられる折り誘導線FL1が、不連続部dcを有しており、当該不連続部dcと切り取り誘導線12とが重複して配置されている例について説明したが、折り誘導線FL1及び切り取り誘導線12の配置を以下のように変形することも可能である。
図9は、切り取り誘導線12及び折り誘導線FL1の配置の変形例について説明する図である。なお、本変形例において、切り取り誘導線12及び折り誘導線FL1以外の他の構成は、
図1に示される収容体1とほぼ同様である。
【0078】
本変形例では、折り誘導線FL1が左右方向の一端側から他端側まで連続して設けられている。すなわち、変形例の折り誘導線FL1は不連続部dcを有していない。また、本変形例の切り取り誘導線12は、隣り合う二つの切り込み12S,12Sの間隔g12Sが、折り誘導線FL1の幅tFL1よりも大きく(g12S>tFL1)、且つ、隣り合う切り込み12S,12Sの間に折り誘導線FL1が配置されている。言い換えると、切り込み12Sは、上下方向において折り誘導線FL1よりも上側及び下側にそれぞれ折り誘導線FL1と重複しないように配置されている。すなわち、変形例の収容部材10においても、切り取り誘導線12を構成する複数の切り込み12Sと、折り誘導線FL1とは重複していない。
【0079】
これにより、切り取り誘導線12に対して折り曲げによる力が直接作用し難くなり、収容体1の開封前に、切り込み12Sが広がって開封口30の一部が開いてしまうことを抑制することができる。また、折り誘導線FL1が連続しているため、前側面S1(第1の面)と前側上面S2(第2の面)との境界部に折り目を形成しやすく、収容部材10の立体形状をより安定させやすくすることができる。
===その他の実施の形態===
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【0081】
上述の実施形態では、収容部材10が、単一の基材シート11を折り曲げることによって形成されていたが、収容部材10の構成はこれに限られない。たとえば、複数の基材シート11を接合することによって
図1に示されるものと同等の形状を有する収容部材10が形成されるのであっても良い。
【符号の説明】
【0082】
1 生理用ナプキン収容体(収容体)、
10 収容部材、
11 基材シート、
11a 外層、11b 内層、
12 切り取り誘導線、
12S 切り込み、
13 切り取り誘導線、
15 図柄、15p 図柄、
16 被覆層、
30 開封口、
50 溶着部、
100 吸収性物品(ナプキン)、
110 ナプキン本体、
111 吸収体、112 肌側シート、113 非肌側シート、
150 包装材、
160 保護シート、
170 ファスニングテープ、
S1 前側面(第1の面)、S2 前側上面(第2の面)、
S3 後側面(第3の面)、S4 後側上面(第4の面)、
S5 右側面、S6 左側面、S7 底面、
FL 折り誘導線、
FL1 折り誘導線、
dc 不連続部