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特開2022-185863ポリイミド前駆体の製造方法、及び硬化物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185863
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】ポリイミド前駆体の製造方法、及び硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20221208BHJP
   C08G 73/12 20060101ALI20221208BHJP
   C08F 299/02 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C08G73/10
C08G73/12
C08F299/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093756
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】398008295
【氏名又は名称】HDマイクロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴沼 宏輔
(72)【発明者】
【氏名】大江 匡之
(72)【発明者】
【氏名】朝田 皓
【テーマコード(参考)】
4J043
4J127
【Fターム(参考)】
4J043PA01
4J043PA19
4J043PC085
4J043QB15
4J043QB23
4J043RA35
4J043SA06
4J043SB01
4J043TA26
4J043TA35
4J043TB03
4J043UA111
4J043UA112
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA211
4J043UA212
4J043UB011
4J043UB012
4J043UB031
4J043UB032
4J043UB121
4J043UB122
4J043UB151
4J043UB152
4J043UB281
4J043UB282
4J043UB301
4J043UB302
4J043UB311
4J043UB312
4J043UB351
4J043UB352
4J043UB401
4J043UB402
4J043VA011
4J043VA012
4J043VA051
4J043VA062
4J043WA13
4J043XA16
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4J043XB03
4J043YA02
4J043YA03
4J043YA14
4J043YA23
4J043YB08
4J043ZA23
4J043ZB22
4J127AA02
4J127AA06
4J127BB041
4J127BB071
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC151
4J127BD261
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BF451
4J127BF45Y
4J127BF531
4J127BF53Z
4J127BG051
4J127BG05Y
4J127BG05Z
4J127BG081
4J127BG08Z
4J127BG121
4J127BG12Y
4J127BG171
4J127BG17Y
4J127BG251
4J127BG25Z
4J127BG311
4J127BG31Z
4J127CA01
4J127FA17
4J127FA38
(57)【要約】
【課題】精製での工程数を減らすことが可能なポリイミド前駆体の製造方法、及び硬化物の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリイミド前駆体の製造方法は、水とポリイミド前駆体とを含む水含有液を準備する工程と、前記水含有液に溶媒を添加して、前記ポリイミド前駆体を前記溶媒に溶解させる工程と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水とポリイミド前駆体とを含む水含有液を準備する工程と、
前記水含有液に溶媒を添加して、前記ポリイミド前駆体を前記溶媒に溶解させる工程と、
を含む、ポリイミド前駆体の製造方法。
【請求項2】
前記溶媒の溶解度パラメータが、20MPa1/2~25MPa1/2である、請求項1に記載のポリイミド前駆体の製造方法。
【請求項3】
前記ポリイミド前駆体と前記溶媒の総量に対する前記溶媒の量の割合が、50質量%以上である、請求項1又は請求項2に記載のポリイミド前駆体の製造方法。
【請求項4】
前記ポリイミド前駆体と前記溶媒の総量に対する前記溶媒の量の割合が、95質量%以下である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体の製造方法。
【請求項5】
前記水含有液における、前記ポリイミド前駆体及び前記水の総量に対する前記水の量の割合が、50質量%以上である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体の製造方法。
【請求項6】
前記水含有液における、前記ポリイミド前駆体及び前記水の総量に対する前記水の量の割合が、75質量%以下である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体の製造方法。
【請求項7】
前記ポリイミド前駆体が、重合性の不飽和結合を有する、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体の製造方法。
【請求項8】
前記ポリイミド前駆体が、下記一般式(1)で表される構造単位を有する、請求項7に記載のポリイミド前駆体の製造方法。
【化1】


(一般式(1)中、Xは4価の有機基を表し、Yは2価の有機基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、下記一般式(2)で表される基、又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、R及びRの少なくとも一方が、下記一般式(2)で表される基である。)
【化2】


(一般式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基を表し、qは1~10の整数を表す。)
【請求項9】
前記水含有液を準備する工程の前に、
カルボン酸ハロゲン化物にアミン化合物を反応させて、ポリイミド前駆体を得る工程をさらに含む、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体の製造方法。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の製造方法によりポリイミド前駆体を得る工程と、
前記ポリイミド前駆体と光重合開始剤とを反応させて光重合物を得る工程と、
前記光重合物を加熱する工程と、
を含む硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリイミド前駆体の製造方法、及び硬化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路(LSI)の保護膜材料として、ポリイミド樹脂等の高い耐熱性を有する有機材料が広く適用されている。このようなポリイミド樹脂の硬化膜を用いた保護膜は、ポリイミド前駆体又はポリイミド前駆体を含有する樹脂組成物を基板上に塗布及び乾燥して形成した樹脂膜を、加熱して硬化することで得られる。あるいは、ポリイミド前駆体をイミド化し、得られたポリイミドを溶媒に溶解してポリイミド溶液を準備し、このポリイミド溶液を基板上に塗布及び乾燥することで保護膜が得られる。
【0003】
通常、不要な成分を除去するため、基板上に塗布する前に、ポリイミド前駆体又はポリイミドの精製を行っている。精製方法としては、例えば引用文献1に記載されるように、ポリイミドの粉末をメタノールなどの貧溶媒を用いて洗浄し、吸引濾過する方法が挙げられる。洗浄は、2回以上繰り返し行うことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-002163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される方法では、反応溶媒中のポリイミドを乾燥し、そして粉砕してから、貧溶媒で洗浄するため、工程数が多いという課題がある。特に、洗浄を繰り返し行う場合には、都度、ポリイミドを乾燥する必要があり、極めて煩雑な操作であり、コストもかかる。
かかる事情に鑑み、本開示は、精製での工程数を減らすことが可能なポリイミド前駆体の製造方法、及び硬化物の製造方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
<1> 水とポリイミド前駆体とを含む水含有液を準備する工程と、
前記水含有液に溶媒を添加して、前記ポリイミド前駆体を前記溶媒に溶解させる工程と、
を含む、ポリイミド前駆体の製造方法。
<2> 前記溶媒の溶解度パラメータが、20MPa1/2~25MPa1/2である、<1>に記載のポリイミド前駆体の製造方法。
<3> 前記ポリイミド前駆体と前記溶媒の総量に対する前記溶媒の量の割合が、50質量%以上である、<1>又は<2>に記載のポリイミド前駆体の製造方法。
<4> 前記ポリイミド前駆体と前記溶媒の総量に対する前記溶媒の量の割合が、95質量%以下である、<1>~<3>のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体の製造方法。
<5> 前記水含有液における、前記ポリイミド前駆体及び前記水の総量に対する前記水の量の割合が、50質量%以上である、<1>~<4>のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体の製造方法。
<6> 前記水含有液における、前記ポリイミド前駆体及び前記水の総量に対する前記水の量の割合が、75質量%以下である、<1>~<5>のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体の製造方法。
<7> 前記ポリイミド前駆体が、重合性の不飽和結合を有する、<1>~<6>のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体の製造方法。
<8> 前記ポリイミド前駆体が、下記一般式(1)で表される構造単位を有する、<7>に記載のポリイミド前駆体の製造方法。
【化1】


(一般式(1)中、Xは4価の有機基を表し、Yは2価の有機基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、下記一般式(2)で表される基、又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、R及びRの少なくとも一方が、下記一般式(2)で表される基である。)
【化2】


(一般式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基を表し、qは1~10の整数を表す。)
<9> 前記水含有液を準備する工程の前に、
カルボン酸ハロゲン化物にアミン化合物を反応させて、ポリイミド前駆体を得る工程をさらに含む、<1>~<8>のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体の製造方法。
<10> <1>~<9>のいずれか1項に記載の製造方法によりポリイミド前駆体を得る工程と、
前記ポリイミド前駆体と光重合開始剤とを反応させて光重合物を得る工程と、
前記光重合物を加熱する工程と、
を含む硬化物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、精製での工程数を減らすことが可能なポリイミド前駆体の製造方法、及び硬化物の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。但し、本開示の実施形態は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示の実施形態を制限するものではない。
【0009】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
【0010】
≪ポリイミド前駆体の製造方法≫
本開示のポリイミド前駆体の製造方法は、水とポリイミド前駆体とを含む水含有液を準備する工程と、前記水含有液に溶媒を添加して、前記ポリイミド前駆体を前記溶媒に溶解させる工程と、を含む。
本開示のポリイミド前駆体の製造方法では、精製のための準備として、水とポリイミド前駆体とを含む水含有液を準備すればよく、この水含有液には合成の際に用いたN-メチルピロリドン等の反応溶媒が含まれていてもよく、この場合ポリイミド前駆体の乾燥、粉砕等の複数の工程を省略することができる。また、乾燥工程を経ない場合には、乾燥時の加熱によるポリイミド前駆体の重合が抑えられ、結果、予定しない分子量の増加が抑えられて、ポリイミド前駆体の分子量を制御しやすい傾向にある。
また、水含有液において析出したポリイミド前駆体は濾別せず、析出したポリイミド前駆体を含む水含有液に溶媒を添加するため、ここでの濾別工程が省略される。
【0011】
ポリイミド前駆体の精製において、乾燥工程、粉砕工程、濾別工程等は、設備を長時間占有するため、高コスト化の要因となる。本開示のポリイミド前駆体の製造方法では、これらの工程が省略されるため、低コスト化を図ることが可能である。
また、工程が増えると、各工程で使用する装置から不純物が混入されやすくなる。本開示のポリイミド前駆体の製造方法では工程数が削減されるため、装置からの不純物の混入が抑えられ、精製の繰り返し回数を抑えることが可能となる。よって、さらに低コスト化を図ることが可能である。
【0012】
(ポリイミド前駆体)
まず、精製に供されるポリイミド前駆体について説明する。
ポリイミド前駆体は、カルボン酸とアミン化合物との反応物であるポリアミック酸であっても、部分的にエステル化したカルボン酸エステルとアミン化合物との反応物であるポリアミック酸エステルであってもよい。
ネガ型感光性樹脂組成物に用いる観点からは、ポリイミド前駆体は重合性の不飽和結合を有することが好ましい。以下、重合性の不飽和結合を有するポリイミド前駆体を「不飽和ポリイミド前駆体」と称することがある。重合性の不飽和結合としては、炭素-炭素の二重結合等が挙げられる。
【0013】
不飽和ポリイミド前駆体は、例えば、下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体であってもよい。不飽和ポリイミド前駆体が一般式(1)で表される構造単位を有することで、i線の透過率が高く、380℃以下の硬化時にも良好な硬化物を形成できる傾向にある。
【0014】
【化3】
【0015】
一般式(1)中、Xは4価の有機基を表し、Yは2価の有機基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、下記一般式(2)で表される基、又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、R及びRの少なくとも一方が、下記一般式(2)で表される基である。
【0016】
【化4】
【0017】
一般式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基を表し、qは1~10の整数を表す。
【0018】
ネガ型感光性樹脂組成物に用いる観点からは、不飽和ポリイミド前駆体に占める下記一般式(1)で表される構造単位の含有率は、不飽和ポリイミド前駆体に含有される全構造単位に対して、50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されず、100モル%でもよい。
【0019】
不飽和ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを用いて合成されたものであってもよい。この場合、Xは、テトラカルボン酸二無水物由来の残基に該当し、Yは、はジアミン化合物由来の残基に該当する。なお、不飽和ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物に替えて、テトラカルボン酸を用いて合成されたものであってもよい。
【0020】
一般式(1)において、Xで表される4価の有機基は、炭素数が4~25であることが好ましく、4~13であることがより好ましく、6~12であることがさらに好ましい。
Xで表される4価の有機基は、芳香環を含んでもよい。Xで表される4価の有機基が芳香環を含む場合、芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環等が挙げられる。これらの中でも、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸エステルの紫外領域における光透過性を向上する観点から、ベンゼン環が好ましい。
Xで表される4価の有機基が芳香環を含む場合、各芳香環は、置換基を有していてもよいし、無置換であってもよい。芳香環の置換基としては、アルキル基、フッ素原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。
Xで表される4価の有機基がベンゼン環を含む場合、Xで表される4価の有機基は1個~4個のベンゼン環を含むことが好ましく、1個~3個のベンゼン環を含むことがより好ましく、1個又は2個のベンゼン環を含むことがさらに好ましい。
Xで表される4価の有機基が2個以上のベンゼン環を含む場合、各ベンゼン環は、単結合により連結されていてもよいし、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、カルボニル基、スルホニル基、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)、シリレン結合(-Si(R-;Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表す。)シロキサン結合(-O-(Si(R-O-);Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表し、nは1又は2以上の整数を表す。)等の連結基、これら連結基を少なくとも2つ組み合わせた複合連結基などにより結合されていてもよい。また、2つのベンゼン環が単結合及び連結基の少なくとも一方により2箇所で結合されて、2つのベンゼン環の間に連結基を含む5員環又は6員環が形成されていてもよい。
【0021】
一般式(1)において、-COOR基と-COOR基とが同じ芳香環に結合している場合、両者は互いにメタ位又はパラ位にあることが好ましい。
【0022】
Xで表される4価の有機基の具体例としては、下記式(A)~下記式(E)で表される基を挙げることができるが、本開示は下記具体例に限定されるものではない。
【0023】
【化5】
【0024】
一般式(D)において、J及びKは、それぞれ独立に、単結合、メチレン基、ハロゲン化メチレン基、カルボニル基、スルホニル基、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)又はシリレン結合(-Si(R-;Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表す。)を表し、J及びKの両方が単結合となることはない。
【0025】
一般式(E)において、Lは、単結合、又は、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、カルボニル基、スルホニル基、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)、シリレン結合(-Si(R-;Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表す。)、シロキサン結合(-O-(Si(R-O-);Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表し、nは1又は2以上の整数を表す。)、若しくはこれらを少なくとも2つ組み合わせた2価の基を表す。また、Lは、下記式(L1)で表される構造であってもよい。
【0026】
【化6】
【0027】
一般式(E)におけるLで表されるアルキレン基としては、炭素数が1~10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数が1~5のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数が1又は2のアルキレン基であることがさらに好ましい。
一般式(E)におけるLで表されるアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の直鎖状アルキレン基;メチルメチレン基、メチルエチレン基、エチルメチレン基、ジメチルメチレン基(イソプロピリデン基)、1,1-ジメチルエチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、エチルエチレン基、1-メチルテトラメチレン基、2-メチルテトラメチレン基、1-エチルトリメチレン基、2-エチルトリメチレン基、1,1-ジメチルトリメチレン基、1,2-ジメチルトリメチレン基、2,2-ジメチルトリメチレン基、1-メチルペンタメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、3-メチルペンタメチレン基、1-エチルテトラメチレン基、2-エチルテトラメチレン基、1,1-ジメチルテトラメチレン基、1,2-ジメチルテトラメチレン基、2,2-ジメチルテトラメチレン基、1,3-ジメチルテトラメチレン基、2,3-ジメチルテトラメチレン基、1,4-ジメチルテトラメチレン基等の分岐鎖状アルキレン基;などが挙げられる。これらの中でも、メチレン基、エチレン基等が好ましい。
【0028】
一般式(E)におけるLで表されるハロゲン化アルキレン基としては、炭素数が1~10のハロゲン化アルキレン基であることが好ましく、炭素数が1~5のハロゲン化アルキレン基であることがより好ましく、炭素数が1~3のハロゲン化アルキレン基であることがさらに好ましい。
一般式(E)におけるLで表されるハロゲン化アルキレン基の具体例としては、上述の一般式(E)におけるLで表されるアルキレン基に含まれる少なくとも1つの水素原子がフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換されたアルキレン基が挙げられる。これらの中でも、フルオロメチレン基、ジフルオロメチレン基、ヘキサフルオロジメチルメチレン基等が好ましい。
【0029】
上記シリレン結合又はシロキサン結合に含まれるR又はRで表されるアルキル基としては、炭素数が1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1~5のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が1又は2のアルキル基であることがさらに好ましい。R又はRで表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
【0030】
一般式(D)におけるJ及びKの組み合わせは特に限定されるものではなく、メチレン基とエーテル結合との組み合わせ、メチレン基とスルフィド結合との組み合わせ、カルボニル基とエーテル結合との組み合わせ等が好ましい。
一般式(E)におけるLとしては、単結合、エーテル結合、カルボニル基等が好ましい。
【0031】
一般式(1)におけるR及びRで表される脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~4であり、1又は2であることが好ましい。R及びRで表される脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
【0032】
一般式(2)におけるR~Rで表される脂肪族炭化水素基の炭素数は1~3であり、1又は2であることが好ましい。R~Rで表される脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0033】
一般式(2)におけるR~Rの組み合わせとしては、R及びRが水素原子であり、Rが水素原子又はメチル基の組み合わせが好ましい。
【0034】
一般式(2)におけるqは1~10の整数であることが好ましく、2~5の整数であることがより好ましく、2又は3であることがさらに好ましい。
【0035】
一般式(1)においては、R及びRの少なくとも一方が、一般式(2)で表される基であることが好ましく、R及びRの両方が一般式(2)で表される基であることがより好ましい。
【0036】
Xがテトラカルボン酸二無水物由来の残基に該当する場合、当該残基の元となるテトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、m-ターフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、p-ターフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス{4’-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、2,2-ビス{4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス{4’-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス{4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、4,4’-スルホニルジフタル酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物等が挙げられる。
【0037】
一般式(1)において、Yで表される2価の有機基は、炭素数が1~30であることが好ましく、5~25であることがより好ましく、10~20であることがさらに好ましい。
Yで表される2価の有機基は、2価の脂肪族基であってもよく、2価の芳香族基であってもよい。耐熱性の観点から、Yで表される2価の有機基は、2価の芳香族基であることが好ましい。
【0038】
Yで表される2価の芳香族基の具体例としては、下記一般式(F)及び下記一般式(G)で表される基を挙げることができる。
【0039】
【化7】
【0040】
一般式(F)又は一般式(G)において、Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、カルボキシ基又はフェニル基を表し、nは、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。
一般式(G)において、Dは、単結合、又は、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、カルボニル基、スルホニル基、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)、シリレン結合(-Si(R-;Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表す。)、シロキサン結合(-O-(Si(R-O-);Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表し、nは1又は2以上の整数を表す。)若しくはこれらを少なくとも2つ組み合わせた2価の基を表す。
また、Dは、上記式(L1)で表される構造であってもよい。
【0041】
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるアルキル基としては、炭素数が1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1~5のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が1又は4のアルキル基であることがさらに好ましい。
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
【0042】
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるアルコキシ基としては、炭素数が1~10のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数が1~5のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数が1又は4のアルコキシ基であることがさらに好ましい。
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられる。
【0043】
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるハロゲン化アルキル基としては、炭素数が1~10のハロゲン化アルキル基であることが好ましく、炭素数が1~5のハロゲン化アルキル基であることがより好ましく、炭素数が1又は2のハロゲン化アルキル基であることがさらに好ましい。
一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるハロゲン化アルキル基の具体例としては、一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表されるアルキル基に含まれる少なくとも1つの水素原子がフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換されたアルキル基が挙げられる。これらの中でも、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等が好ましい。
【0044】
一般式(F)又は一般式(G)におけるnは、それぞれ独立に、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0045】
さらに、Dは、下記式(D1)又は(D2)で表される2価の基であってもよい。
-Q-Ar-Q- (D1)
-Q-Ar-Q-Ar-Q- (D2)
一般式(D1)又は一般式(D2)において、Arは、置換基を有していてもよいフェニレン基又はナフチレン基を表す。Qは、各々独立に、単結合、又は、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、カルボニル基、スルホニル基、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)、シリレン結合(-Si(R-;Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表す。)、シロキサン結合(-O-(Si(R-O-);Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表し、nは1又は2以上の整数を表す。)若しくはこれらを少なくとも2つ組み合わせた2価の基を表す。
一般式(D1)及び(D2)において、各Arに結合する2つのQの位置関係は、オルト位であってもメタ位であってもパラ位であってもよい。
Arで表されるフェニレン基又はナフチレン基が有してもよい置換基の具体例は、一般式(F)又は一般式(G)におけるRで表される基と同様である。Arで表されるフェニレン基又はナフチレン基が有してもよい置換基の数は、特に限定されない。
【0046】
一般式(G)における一般式(D1)及び一般式(D2)を除くDの具体例並びに一般式(D1)及び一般式(D2)におけるQの具体例は、一般式(E)におけるLの具体例と同様である。
一般式(G)におけるDとしては、単結合又はエーテル結合が好ましい。
【0047】
Yで表される2価の脂肪族基の具体例としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、シクロアルキレン基、ポリアルキレンオキサイド構造を有する2価の基、ポリシロキサン構造を有する2価の基等が挙げられる。
【0048】
Yで表される直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、炭素数が1~15のアルキレン基であることが好ましく、炭素数が1~10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数が1~3のアルキレン基であることがさらに好ましい。
Yで表されるアルキレン基の具体例としては、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、2-メチルヘキサメチレン基、2-メチルヘプタメチレン基、2-メチルオクタメチレン基、2-メチルノナメチレン基、2-メチルデカメチレン基等が挙げられる。
【0049】
Yで表されるシクロアルキレン基としては、炭素数が3~20のシクロアルキレン基であることが好ましく、炭素数が3~10のシクロアルキレン基であることがより好ましく、炭素数が3~6のシクロアルキレン基であることがさらに好ましい。
Yで表されるシクロアルキレン基の具体例としては、シクロプロピレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。
【0050】
Yで表されるポリアルキレンオキサイド構造を有する2価の基に含まれる単位構造としては、炭素数1~10のアルキレンオキサイド構造が好ましく、炭素数1~8のアルキレンオキサイド構造がより好ましく、炭素数1~4のアルキレンオキサイド構造がさらに好ましい。なかでも、ポリアルキレンオキサイド構造としてはポリエチレンオキサイド構造又はポリプロピレンオキサイド構造が好ましい。アルキレンオキサイド構造中のアルキレン基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。ポリアルキレンオキサイド構造中の単位構造は1種類でもよく、2種類以上であってもよい。
【0051】
Yで表されるポリシロキサン構造を有する2価の基としては、ポリシロキサン構造中のケイ素原子が水素原子、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~18のアリール基と結合しているポリシロキサン構造を有する2価の基が挙げられる。
ポリシロキサン構造中のケイ素原子と結合する炭素数1~20のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基が好ましい。
ポリシロキサン構造中のケイ素原子と結合する炭素数6~18のアリール基は、無置換でも置換基で置換されていてもよい。アリール基が置換基を有する場合の置換基の具体例としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。炭素数6~18のアリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられる。これらの中でも、フェニル基が好ましい。
ポリシロキサン構造中の炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~18のアリール基は、1種類でもよく、2種類以上であってもよい。
Yで表されるポリシロキサン構造を有する2価の基を構成するケイ素原子は、メチレン基、エチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基などを介して一般式(1)中のNH基と結合していてもよい。
【0052】
Yがジアミン化合物由来の残基に該当する場合、当該残基の元となるジアミン化合物の具体例としては、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジフルオロ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,5-ジアミノ安息香酸、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、ベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、2,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、2,4’-ジアミノジフェニルスルホン、2,2’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’-ジアミノジフェニルスルフィド、o-トリジン、o-トリジンスルホン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジイソプロピルアニリン)、2,4-ジアミノメシチレン、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ベンゾフェノンジアミン、ビス-{4-(4’-アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、2,2-ビス{4-(4’-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、2,2-ビス{4-(4’-アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、1,7-ビス(4-アミノフェノキシ)ナフタレン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス{4-(3’-アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,6-ジアミノヘキサン、2-メチル-1,7-ジアミノヘプタン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、2-メチル-1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,10-ジアミノデカン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、ジアミノポリシロキサン等が挙げられる。
ジアミン化合物は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0053】
一般式(1)における、Xで表される4価の有機基とYで表される2価の有機基との組み合わせは特に限定されない。
ある態様では、ポリイミドの環化反応を低温で進行させる低温硬化性の観点から、一般式(1)において、Xが一般式(E)で表され一般式(E)におけるLが単結合又はエーテル結合で表される基であり、Yが一般式(G)で表され一般式(G)におけるDが単結合又はエーテル結合で表される基の組み合わせが好ましい。
【0054】
また、ある態様では、露光の際に照射光を膜底部まで到達させる透過性の観点から、一般式(1)において、Xが一般式(E)で表され一般式(E)におけるLがエーテル結合で表される基であり、Yが一般式(G)で表され一般式(G)におけるDがエーテル結合で表される基の組み合わせが好ましい。この場合、Yが一般式(F)で表される基を含んでもよい。Yが一般式(G)で表され一般式(G)におけるDがエーテル結合で表される基及び一般式(F)で表される基を併用する場合、Yに占める一般式(F)で表される基の割合は、5モル%~30モル%であることが好ましく、6モル%~15モル%であることがより好ましい。
【0055】
また、ある態様では、硬化膜の強靭性の観点から、一般式(1)において、Xの少なくとも一部が式(A)で表される基であり、Yが任意の2価の有機基の組み合わせ等が挙げられる。低温硬化性、透過性及び強靭性の観点から、Xが式(A)で表される基及び一般式(E)で表される基の併用であってもよい。Xが式(A)で表される基及び一般式(E)で表される基の併用である場合、Xに占める式(A)の割合は、10モル%~80モル%であることが好ましく、30モル%~70モル%であることがより好ましい。
【0056】
不飽和ポリイミド前駆体は、一般式(1)で表される構造単位以外のその他の構造単位を有していてもよい。一般式(1)で表される構造単位以外のその他の構造単位としては、一般式(1)におけるR及びRが、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基である構造単位、つまりは、一般式(1)におけるR及びRのいずれもが一般式(2)で表される基ではない構造単位が挙げられる。
【0057】
ポリイミド前駆体の分子量は特に制限はない。ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、10,000~100,000であることが好ましく、15,000~100,000であることがより好ましく、20,000~85,000であることがさらに好ましく、30,000~60,000であることが特に好ましく、37,000~43,000であることが極めて好ましい。
ポリイミド前駆体を感光性樹脂組成物に用いる場合に、硬化後の応力を十分に低下させる観点から、ポリイミド前駆体の重量平均分子量は10,000以上であることが好ましい。また、ポリイミド前駆体の溶媒への溶解性及びポリイミド前駆体溶液の取り扱い性を向上する観点から、ポリイミド前駆体の重量平均分子量は100,000以下であることが好ましい。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができ、標準ポリスチレン検量線を用いて換算することによって求めることができる。GPC法による分子量の測定条件の詳細は、後述の実施例を参照できる。
【0058】
(ポリイミド前駆体の合成方法)
ポリイミド前駆体の合成方法は特に制限されず、カルボキシ基を2つ以上有するカルボン酸とアミン化合物とを用いて合成されてもよい。直鎖状のポリイミド前駆体を得る観点からは、カルボキシ基を2つ以上有する化合物は、カルボキシ基を2つ有する化合物であることが好ましい。カルボキシ基を2つ以上有するカルボン酸は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0059】
カルボン酸に代えて、酸無水物を用いてもよい。なお、本開示では、環状無水物構造を1つ以上有する酸無水物を、カルボキシ基を2つ以上有するカルボン酸と称して説明する場合がある。酸無水物は、環状無水物構造を2つ以上有することが好ましく、環状無水物構造を2つ有することがより好ましい。酸無水物は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。酸無水物は、下記一般式(3)で表される酸無水物を含んでもよい。
【0060】
【化8】
【0061】
一般式(3)において、Xは、一般式(1)におけるXと同義である。
【0062】
カルボン酸は、部分的にエステル化されていてもよい。部分的にエステル化されたカルボン酸は、カルボキシ基を2つ以上有し、カルボキシ基を2つ有することが好ましい。部分的にエステル化されたカルボン酸は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0063】
部分的にエステル化されたカルボン酸としては、テトラカルボン酸ジエステル等が挙げられる。部分的にエステル化されたカルボン酸は、下記一般式(4)で表されるテトラカルボン酸ジエステルを含んでもよい。
【0064】
【化9】

【0065】
一般式(4)において、X、R及びRは、一般式(1)におけるX、R及びRとそれぞれ同義である。
【0066】
部分的にエステル化されたカルボン酸は、ピロメリット酸二無水物のエステル化物及び4,4’-オキシジフタル酸二無水物のエステル化物からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0067】
また、カルボン酸に代えて、カルボン酸ハロゲン化物を用いてもよい。つまり、カルボン酸ハロゲン化物にアミン化合物を反応させて、ポリイミド前駆体を得てもよい。カルボン酸ハロゲン化物は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0068】
カルボン酸ハロゲン化物としては、カルボン酸クロライドを用いることが好ましい。以下、カルボン酸クロライドを用いてポリイミド前駆体を合成する方法を「酸クロライド法」と称することがある。酸クロライド法ではカルボキシ基のハロゲン化率を制御可能であり、これによりポリイミド前駆体の分子量を制御しやすい傾向にある。
【0069】
カルボン酸ハロゲン化物は、カルボン酸ハライド基を2つ以上有する。直鎖状のポリイミド前駆体を得る観点からは、カルボン酸ハロゲン化物は、カルボン酸ハライド基を2つ有する化合物が好ましい。
【0070】
カルボン酸ハロゲン化物は、部分的にエステル化されていてもよい。部分的にエステル化されたカルボン酸ハロゲン化物は、カルボン酸ハライド基を2つ以上有し、カルボン酸ハライド基を2つ有することが好ましい。部分的にエステル化されたカルボン酸ハロゲン化物は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
部分的にエステル化されたカルボン酸ハロゲン化物は、下記一般式(5)で表される化合物を含んでもよい。
【0071】
【化10】
【0072】
一般式(5)において、X、R及びRは、一般式(1)におけるX、R及びRとそれぞれ同義である。X11及びX12は、それぞれ独立に、ハロゲン原子を表し、塩素原子であることが好ましい。
【0073】
部分的にエステル化されたカルボン酸ハロゲン化物としては、テトラカルボン酸ジエステルジクロライド等が挙げられる。テトラカルボン酸ジエステルジクロライドは、下記一般式(6)で表される化合物を含んでもよい。
【0074】
【化11】
【0075】
一般式(6)において、X、R及びRは、一般式(1)におけるX、R及びRとそれぞれ同義である。
【0076】
部分的にエステル化されたカルボン酸ハロゲン化物は、ピロメリット酸二無水物のエステル化物のクロライド物及び4,4’-オキシジフタル酸二無水物のエステル化物のクロライド物からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0077】
一般式(1)で表される構造単位を有する不飽和ポリイミド前駆体は、例えば、次のような方法で合成することができる。
一般式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物とモノアルコール化合物とを、N-メチル-2-ピロリドン等の有機溶剤中にて反応させジエステル誘導体とした後、ジエステル誘導体とHN-Y-NHで表されるジアミン化合物とを縮合反応させる。
一般式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物とHN-Y-NHで表されるジアミン化合物とを有機溶剤中にて反応させポリアミック酸を得て、モノアルコール化合物を加え、有機溶剤中で反応させエステル基を導入する。
一般式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物にモノアルコール化合物を作用させてジエステル誘導体とした後、塩化チオニル等の塩素化剤を作用させて酸塩化物に変換し、次いで、HN-Y-NHで表されるジアミン化合物と酸塩化物とを反応させる(酸クロライド法)。
一般式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物にモノアルコール化合物を作用させてジエステル誘導体とした後、カルボジイミド化合物の存在下でHN-Y-NHで表されるジアミン化合物とジエステル誘導体とを反応させる。
一般式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物とHN-Y-NHで表されるジアミン化合物とを反応させてポリアミック酸とした後、トリフルオロ酢酸無水物の存在下でポリアミック酸をイソイミド化し、次いでモノアルコール化合物を作用させる。この場合、テトラカルボン酸二無水物の一部に予めモノアルコール化合物を作用させて、部分的にエステル化されたテトラカルボン酸二無水物とHN-Y-NHで表されるジアミン化合物とを反応させてポリアミック酸としてもよい。
【0078】
ここで、HN-Y-NHで表されるジアミン化合物におけるYは、一般式(1)におけるYと同義である。
【0079】
モノアルコール化合物としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、グリセロールジアクリレート、1-(アクリロイルオキシ)-3-(メタクリロイルオキシ)-2-プロパノール、グリセロールジメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート等が挙げられる。
【0080】
一般式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物、HN-Y-NHで表されるジアミン化合物及びモノアルコール化合物は、各々、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0081】
下記に、酸クロライド法の一例として、一般式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物のジエステル化物に、ROHで表されるモノアルコールを作用させ、そしてハロゲン化剤として塩化チオニルを作用させて、一般式(1’)で表されるポリイミド前駆体を合成するスキームを概説する。なお、本開示の実施形態は以下の例に限定されない。
【0082】
【化12】
【0083】
上図中、Rはそれぞれ独立に置換又は非置換のアルキル基を表し、Xはそれぞれ独立に4価の有機基を表し、Yはそれぞれ独立に2価の有機基を表す。
【0084】
テトラカルボン酸二無水物にモノアルコール化合物を作用させてテトラカルボン酸ジエステルを得る場合、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、少なくとも2モル以上のモノアルコール化合物を塩基性触媒存在下で作用させることが好ましい。未反応のモノアルコール化合物の量を抑制する観点からは、モノアルコール化合物の使用量は、一般式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物1モルに対して、2.0モル~2.5モルであることが好ましく、2.0モル~2.3モルであることがより好ましく、2.0モル~2.2モルであることがさらに好ましい。
【0085】
テトラカルボン酸二無水物にモノアルコール化合物を作用させる際に用いる塩基性触媒としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン等が挙げられる。
【0086】
テトラカルボン酸二無水物にモノアルコール化合物を作用させてテトラカルボン酸ジエステルを得る場合の反応溶媒は、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルを溶解可能な溶媒であればよく、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0087】
原料として、2種類以上のテトラカルボン酸二無水物を用いる場合、それぞれのテトラカルボン酸二無水物を別々にテトラカルボン酸ジエステルとした後で、これらを混合して用いてもよい。また、予め2種類以上のテトラカルボン酸二無水物を混合し、一括してテトラカルボン酸ジエステルの混合物を合成してもよい。
【0088】
ハロゲン化剤としては、塩素化剤、ヨウ素化剤等が挙げられ、反応性、取り扱い性等の観点からは、塩素化剤が好ましい。ハロゲン化剤としては、塩化チオニル、塩化オキサリル等が挙げられる。
【0089】
ハロゲン化剤の使用量は、テトラカルボン酸ジエステルに対して、当量比で2.00倍以上添加されることが好ましい。また、ハロゲン化剤の使用量は、作用させるテトラカルボン酸ジエステルの量に対して過剰量となる量であることが好ましい。一態様において、ハロゲン化剤は、テトラカルボン酸ジエステルに対して、当量比で2.00倍を超えて添加されてもよく、2.05倍以上添加されてもよく、2.10倍以上添加されてもよく、2.20倍以上添加されてもよく、2.30倍以上添加されてもよく、2.40倍以上添加されてもよく、2.50倍以上添加されてもよく、2.60倍以上添加されてもよい。ハロゲン化物の添加量が、上記範囲であると、ハロゲン化率が十分に高まり、その後の水の添加によるハロゲン化率の調節の幅が広がる。また、一態様において、未反応のハロゲン化剤を抑える観点からは、ハロゲン化剤は、テトラカルボン酸ジエステルに対して、当量比で5.00倍以下添加されてもよく、4.00倍以下添加されてもよく、3.00倍以下添加されてもよく、2.80倍以下添加されてもよい。かかる観点から、ハロゲン化剤は、テトラカルボン酸ジエステルに対して、当量比で2.05倍~5.00倍添加されてもよく、2.05倍~4.00倍添加されてもよく、2.05倍~3.00倍添加されてもよく、2.05倍~2.80倍添加されてもよい。
【0090】
ハロゲン化剤によるハロゲン化によって、テトラカルボン酸ジエステルのハロゲン化率は、例えば90%以上となってもよく、95%以上となってもよく、96%以上となってもよく、97%以上となってもよく、98%以上となってもよい。ハロゲン化率が100%に近いほど、その後の水添加によるハロゲン化率の調整の幅が広がる。
【0091】
テトラカルボン酸ジエステルに対してハロゲン化剤を作用させる際の温度は、0℃~20℃であってもよく、副反応を制御する観点から0℃~15℃であってもよく、0℃~10℃であってもよい。
テトラカルボン酸ジエステルに対してハロゲン化剤を作用させる時間は、0.5時間~8時間であってもよく、副反応制御の観点から0.5時間~6時間であってもよく、0.5時間~3時間であってもよい。
【0092】
カルボン酸クロライドに対してアミン化合物を作用させる場合には、塩基性化合物を併用してもよい。塩基性化合物は、カルボン酸クロライドとアミン化合物とが反応した際に発生する塩化水素を捕捉する目的で用いられる。
塩基性化合物としては、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン等を用いることができる。塩基性化合物の使用量は、得られるポリイミド前駆体の分子量を高くし、硬化後の応力を向上させる観点から、塩素化剤1モルに対して、1.5モル~2.5モルであることが好ましく、1.7モル~2.4モルであることがより好ましく、1.8モル~2.3モルであることがさらに好ましい。
【0093】
(ポリイミド前駆体の精製方法)
ポリイミド前駆体の精製では、水とポリイミド前駆体とを含む水含有液を準備する工程(以下、「水含有液準備工程」とも称する)と、前記水含有液に溶媒を添加して、前記ポリイミド前駆体を前記溶媒に溶解させる工程(以下、「再溶解工程」とも称する)と、を含む。
上述の通り、ポリイミド前駆体は反応溶媒中で合成され、得られたポリイミド前駆体溶液に水を添加すると、ポリイミド前駆体が析出し、不要な成分は水に残る。そして、このポリイミドと水とを含む水含有液に溶媒を添加すると、ポリイミド前駆体が溶媒に再溶解する。
【0094】
例えば、酸クロライド法でポリイミド前駆体を合成した場合、得られたポリイミド前駆体溶液は塩素を含んでいる。塩素は半導体集積回路の腐食等の原因となるため、半導体集積回路に付与する前に除去することが望ましい。ポリイミド前駆体溶液に水を添加すると、塩素は水に溶解したままでポリイミド前駆体が析出する。よって、この工程を経ることでポリイミド前駆体中の塩素量を低減することができる。
【0095】
水含有液における、ポリイミド前駆体及び水の総量に対する水の量の割合は、50質量%以上であることが好ましく、66質量%以上であることがより好ましい。上記割合が66質量%以上であると、塩素等の不要な成分の除去性に優れる傾向にある。
また、水含有液における、ポリイミド前駆体及び水の総量に対する水の量の割合は、75質量%以下であることが好ましく、66質量%以下であることがより好ましい、廃液量が抑えられ、かつ溶液が分離を抑えつつ洗浄性に優れる傾向にある。
【0096】
不要な成分をより除去する観点から、水含有液を撹拌してもよい。撹拌条件は、処理する液の量、粘度、撹拌容器の大きさ等によって適宜設定することができる。例えば、撹拌速度は、200rpm(回転/分)以上であってもよく、500rpm以上であってもよい。また、撹拌速度は、1000rpm(回転/分)以下であってもよく、1500rpm(回/分)以下であってもよい。撹拌時間は、10分以上であってもよく、30分以上であってもよい。また、撹拌時間は、60分以下であってもよく、120分以下であってもよい。
【0097】
再溶解工程で使用する溶媒は、ポリイミド前駆体が溶解する溶媒であればよい。
例えば、溶媒の溶解度パラメータは20MPa1/2~25MPa1/2であってもよく、20MPa1/2~30MPa1/2であってもよい。溶解度パラメータが上記範囲にあると、ポリイミド前駆体及び水の双方と相互作用するため、洗浄性に優れ、精製工程の繰り返し回数が抑えられる傾向にある。
【0098】
溶媒の溶解度パラメータδは、溶媒のモル蒸発エネルギーΔE(J/mol)と、モル体積V(cm/mol)を用いて、次の式により算出される。
δ=(ΔE/V)1/2[MPa1/2
【0099】
水を1としたときの溶媒の比重は、4~5であってもよく、5以上であってもよい。溶媒の比重が上記範囲にあると、洗浄性に優れる傾向にある。
【0100】
溶媒は1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
溶媒の具体例としては、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、乳酸エチル(EL)、テトラメチル尿素(TMU)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、メチルスルホキシド(DMSO)、イソプロパノール(IPA)、γ-ブチロラクトン(GBL)、メチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。
【0101】
溶媒としては、カルボニル基を有する化合物であることが好ましく、カルボニル基とカルボニル基に直接結合する電子供与性基とを有する化合物であることがより好ましく、カルボニル基とカルボニル基に直接結合するアルキル基又はアミノ基とを有する化合物であることがさらに好ましい。
【0102】
上記の溶媒の中でも、アセトン、NMP、NEP、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、DMF、DMAc、EL、TMU及びDMIが好ましく、アセトン、NMP、NEP、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、及びTMUがより好ましく、アセトンがさらに好ましい。
【0103】
溶媒を2種以上併用する場合の組み合わせは特に限定されず、例えば、NMPと3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドとの組み合わせ、NMPとアセトンとの組み合わせ、NMPとDMSOとの組み合わせ、NMPとIPAとの組み合わせ、アセトンと-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドとの組み合わせ等が挙げられ、NMPと3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドとの組み合わせ、NMPと3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドとの組み合わせがより好ましい。
【0104】
溶媒を2種以上併用する場合、それぞれの配合比は特に限定されない。例えば、NMPと他の溶媒とを組み合わせて使用する場合、NMPと他の溶媒との配合比(NMP:他の溶媒)は、体積基準で1:1~1:4であってもよく、4:1~1:1であってもよい。また、アセトンと他の溶媒とを組み合わせて使用する場合、アセトンと他の溶媒との配合比(アセトン:他の溶媒)は、体積基準で1:1~1:4であってもよく、4:1~1:1であってもよい。
【0105】
再溶解工程で用いる溶媒が合成で用いる反応溶媒と異なる場合、反応溶媒から別の溶媒への置換が可能となる。反応溶媒としてはNMPを用いることが多いが、NMPフリーの組成物(例えば感光性樹脂組成物)が要求されることがある。このような場合、再溶解工程でNMP以外の溶媒を使用することで、上記要求に応えることができる。また、この方法によれば、乾燥工程を経ずに別の溶媒への置換が可能であり、コストの低減を図ることが可能である。
【0106】
再溶解工程では、ポリイミド前駆体及び溶媒の総量に対する溶媒の量の割合が、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。溶媒の割合が上記範囲であると、塩素の除去効率により優れる傾向にある。また、ポリイミド前駆体及び溶媒の総量に対する溶媒の量の割合は、95質量%以下であることが好ましい。
【0107】
再溶解工程では、水含有液に溶媒を添加した液(「再溶解液」ともいう)が酸性であることが好ましい。再溶解液が酸性であると、再溶解工程後、再溶解液に水を加えて再結晶化し析出したポリイミド前駆体を濾別する際の濾過性に優れ、濾過時間の短縮化を図ることができる傾向にある。再溶解液のpHは、3.5以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.9以下であることがさらに好ましい。
【0108】
再溶解液を酸性にするため、酸を添加してもよい。酸の種類としては特に限定されず、腐食を抑制する観点からは、有機酸であることが好ましく、酢酸、クエン酸等が挙げられる。
【0109】
溶媒を添加した後、静置することが好ましい。静置時間は、処理する液の量、粘度、撹拌容器の大きさ等によって適宜設定することができる。例えば、静置時間は、30分以上であってもよい。
【0110】
再溶解工程で得られた再溶解液から、精製されたポリイミド前駆体を取り出すには、再溶解液の総量の4倍量(体積基準)以上の水中に再溶解液を滴下して再結晶させ、固形分を濾別すればよい。
【0111】
水含有液準備工程及び再溶解工程を1セットとして、2セット以上を繰り返してもよい。2セット以上繰り返すことで、不要な成分がより除去される。例えば、2セット目は、1回目の再溶解工程で得られた再溶解液を再溶解液の総量の4倍量(体積基準)以上の水へ滴下してポリイミド前駆体を濾別し、得られたポリイミド前駆体を溶媒に再び再溶解させて再沈殿を行うことで不純物の除去ができる。
【0112】
再溶解工程後、水及び不純物を取り除いたポリイミド前駆体溶液は、基板上に付与する塗液として使用してもよい。
また、再溶解工程後に水及び不純物を取り除いたポリイミド前駆体溶液を、乾燥して、粉末状のポリイミド前駆体を得てもよい。
【0113】
≪硬化物の製造方法≫
本開示の硬化物の製造方法は、上述の本開示の製造方法によりポリイミド前駆体を得る工程と、前記ポリイミド前駆体と光重合開始剤とを反応させて光重合物を得る工程と、前記光重合物を加熱する工程と、を含む。光重合開始剤、及び必要に応じて用いられる重合性モノマー、カップリング剤、溶剤、熱重合開始剤、増感剤、安定剤、界面活性剤、レベリング剤、防錆剤等の成分は、本分野で一般的に用いられるものを用いることができる。
【0114】
光重合開始剤は、活性光線照射によりラジカルを発生しうる化合物であれば特に制限はない。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン;N,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン等のベンゾフェノン誘導体;アセトフェノン;2,2-ジエトキシアセトフェノン、3’-メチルアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン誘導体;チオキサントン;2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;ベンジル;ベンジルジメチルケタール、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール等のベンジル誘導体;ベンゾイン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン、プロピルベンゾイン等のベンゾイン誘導体;1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(O-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-ベンゾイル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンキシムジオン-2-(O-ベンゾイル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-3-エトキシプロパントリオン-2-(O-ベンゾイル)オキシム、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシム誘導体;N-フェニルグリシン等のN-アリールグリシン類;ベンゾイルパークロライド等の過酸化物類;2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(2-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(2-又は4-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の芳香族ビイミダゾール類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド誘導体等が挙げられる。光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
これらのなかでも、金属元素を含まず、かつ反応性が高く高感度である観点からオキシム誘導体が好ましい。
【0115】
光重合開始剤の量は、ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.1質量部~20質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましく、2質量部~12質量部であることがさらに好ましい。
【0116】
光重合物は、本開示のポリイミド前駆体と、光重合開始剤と、必要に応じて他の任意の成分と、を含む感光性樹脂組成物を露光することにより得られる。
照射する活性光線としては、i線等の紫外線、可視光線、放射線などが挙げられ、i線が好ましい。
露光装置としては、平行露光機、アライナー、投影露光機、ステッパ、スキャナ露光機等を用いることができる。
【0117】
基板上に付与した感光性樹脂組成物に対して、フォトマスク等を介してパターン露光を行ってもよい。露光後、現像することで、パターン形成された樹脂膜(パターン樹脂膜)を得ることができる。一般的に、ネガ型感光性樹脂組成物を用いた場合には、未露光部を現像剤で除去する。現像剤としては、感光性樹脂膜の良溶媒を単独で、又は良溶媒と貧溶媒を適宜混合して用いることができる。
【0118】
光重合物を加熱処理することにより、硬化物を得ることができる。ポリイミド前駆体が、加熱処理工程によって脱水閉環反応を起こし、ポリイミド樹脂となる。
【0119】
加熱処理の温度は、380℃以下であることが好ましく、250℃~350℃であることがより好ましく、270℃~320℃であることがさらに好ましい。加熱処理の温度が上記範囲内であることにより、基板又はデバイスへのダメージを小さく抑えることができ、デバイスを歩留りよく生産することが可能となり、プロセスの省エネルギー化を実現することができる。
【0120】
加熱処理の時間は、5時間以下であることが好ましく、30分間~3時間であることがより好ましい。加熱処理の時間が上記範囲内であることにより、架橋反応又は脱水閉環反応を十分に進行することができる。
加熱処理の雰囲気は大気中であっても、窒素等の不活性雰囲気中であってもよく、パターン樹脂膜の酸化を防ぐことができる観点から、窒素雰囲気下であることが好ましい。
【0121】
加熱処理に用いられる装置としては、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、マイクロ波硬化炉等が挙げられる。
【0122】
硬化物は、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜等として用いることができる。さらには、硬化物は、パッシベーション膜、バッファーコート膜等として用いることができる。
上記パッシベーション膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜、カバーコート層、及び表面保護膜等からなる群より選択される1以上を用いて、信頼性の高い、半導体装置、多層配線板、各種電子デバイス、マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ等の積層デバイスなどの電子部品を製造することができる。
【実施例0123】
次に本開示の実施形態を実施例により具体的に説明するが、本開示の実施形態はこれらの実施例に限定されない。
【0124】
〔ピロメリット酸-2-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステルの合成〕
0.5リットルのポリ瓶中に、160℃の乾燥機で24時間乾燥させたピロメリット酸二無水物35.7g(164mmol)と、2-ヒドロキシエチルメタクリレート45.0g(346.1mmol)と、ハイドロキノン0.18g(1.6mmol)と、をN-メチル-2-ピロリドン387.9gに溶解し、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンを0.25g(1.6mmol)添加後、室温下(25℃)で24時間撹拌し、エステル化を行うことで、ピロメリット酸-2-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステル溶液を得た。この溶液をPMDA(HEMA)溶液とする。
【0125】
〔4,4’-オキシジフタル酸-2-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステルの合成〕
0.5リットルのポリ瓶中に、160℃の乾燥機で24時間乾燥させた4,4’-オキシジフタル酸二無水物50.9g(164mmol)と、2-ヒドロキシエチルメタクリレート45.0g(346.1mmol)と、ハイドロキノン0.18g(1.6mmol)と、をN-メチル-2-ピロリドン387.9gに溶解し、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンを0.75g(4.9mmol)添加後、室温下(25℃)で48時間撹拌し、エステル化を行い、4,4’-オキシジフタル酸-2-ヒドロキシエチルメタクリレートジエステル溶液を得た。この溶液をODPA(HEMA)溶液とする。
【0126】
〔ハロゲン化(酸クロライド化)〕
撹拌機及び温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に上記で得られたPMDA(HEMA)溶液195.6gとODPA(HEMA)溶液58.6gを入れ、その後、氷冷下で塩化チオニル25.1gを反応溶液温度が10℃以下に保たれるように滴下漏斗を用いて滴下した。塩化チオニルの滴下が終了した後、氷冷下で2時間反応を行いPMDA(HEMA)とODPA(HEMA)の酸クロライドの溶液を得た。
【0127】
〔ポリイミド前駆体(ポリアミック酸エステル)の合成〕
得られたPMDA(HEMA)とODPA(HEMA)の酸クロライドの溶液を用いて、以下の方法でポリアミック酸エステルを合成した。
【0128】
滴下漏斗を用いて、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル29.2g(91.0mmol)、ピリジン32.5g(410.1mmol)、及びハイドロキノン0.07g(0.6mmol)のN-メチル-2-ピロリドン83.0g溶液を、氷冷化で反応溶液の温度が10℃を超えないように注意しながらPMDA(HEMA)とODPA(HEMA)の酸クロライドの溶液の280.7gに滴下し、ポリイミド前駆体溶液を得た。
【0129】
〔ポリイミド前駆体(ポリアミック酸エステル)の精製〕
得られたポリイミド前駆体溶液1.0gに水2.0gを加え、さらに下記表1に示す溶媒10gをそれぞれ添加し、30分間静置した。静置の際の液を目視した様子を表1に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
上記表1の結果から、添加した溶媒にポリイミド前駆体が溶解しており、ポリイミド前駆体の精製が可能であることが分かった。
【0132】
他方、先行文献1のように乾燥工程を含む場合を想定して、合成後のポリイミド前駆体溶液に対して40℃~70℃で24時間の加熱を行った。加熱後のポリイミド前駆体について、分子量を測定した。分子量は、次の方法で測定した。
【0133】
ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)装置(株式会社島津製作所)にて、TMF/DMF=50/50(体積基準)、0.06MのHPO、及び0.03MのLiBr/HO溶離液を用いて、ポリアミド前駆体を溶出させ、ポリスチレン標本の溶出時間から分子量溶出速度を測定した。
【0134】
分子量の測定結果を表2に示す。
【表2】
【0135】
表2に示されるように、乾燥工程によって分子量が増加し得ることが分かった。したがって、乾燥工程を経ずにポリイミド前駆体を含有する水含有液に溶媒を添加し再溶解させる精製方法によれば、乾燥に起因する分子量の増加が抑えられることがわかる。
【0136】
〔精製によるポリイミド前駆体への影響〕
上記の合成で得られたポリイミド前駆体溶液に水を加え、さらにアセトンを添加し、再溶解液を準備した。この再溶解液は、水に対するアセトンの量(アセトン/水、体積基準)が4.5であり、且つポリイミド前駆体の固形分濃度が5.3質量%であった。この再溶解液を30分間静置してから、再溶解液の総量の4倍(体積基準)の水を添加し、ポリイミド前駆体を再結晶させ、析出したポリイミド前駆体を濾過した。
【0137】
精製前後のポリイミド前駆体について、以下の方法で、塩素量(質量ppm)、エステル化率(%)、NMPの含有量(質量%)、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(Mw/Mn)を測定した。得られた結果を表5に示す。
【0138】
(塩素量の測定)
自動滴定装置(株式会社HIRANUMA、COM-1700S)を用いて電位差滴定法(硝酸銀滴定法)により測定した。
まず、100mLポリカップにポリイミド前駆体粉末の約0.2gを計り取り、γ-ブチロラクトン約50gに溶解させた。ポリマ溶液に希硝酸0.53±0.03gを添加した後、測定を実施した。測定後、希釈倍率を乗じてポリイミド前駆体粉末中の濃度に換算した。
【0139】
(エステル化率及びNMPの含有量の測定)
エステル化率及びNMPの含有量は、H-NMRピークより求めた。測定条件は以下のとおりである。
【0140】
【表3】
【0141】
NMPのメチル基(2.7ppm)の積分値から、ポリイミド前駆体中のNMPの含有量(質量%)を算出した。
NMP含有量[質量%] = NMPピーク積分値×5.287+5×10-5
【0142】
また、ポリイミド前駆体の側鎖上のメタクリル酸2-ヒドロキシエチルのメチレンプロトン(4.2ppm~4.7ppm)の積分値とアロマティックプロトン(7.0ppm~8.8ppm)の積分値の比と、エステル化率が100%の場合の理論上の比からエステル化率を求めた。
【0143】
(分子量の測定)
ポリマの分子量は、GPC法によって、ポリスチレン標品による較正曲線より算出した。測定条件は以下のとおりである。
【0144】
【表4】
【0145】
【表5】
【0146】
表5に示されるように、精製の前後で、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)、及びエステル化率(%)に大きな変動が無いことが分かった。そのうえで、塩素量が劇的に低減され、且つ、合成において反応溶媒として使用したNMPの含有量が低減されていることが分かった。
【0147】
〔pHの影響〕
体積基準でアセトンと水が1/3(=アセトン/水)で含有され、且つ上記ポリイミド前駆体の固形分濃度が10質量%である再溶解液を500mL準備し、この再溶解液に酢酸を添加してpHを2.8に調整し、再溶解液1を準備した。この再溶解液1を30分間静置してから、再溶解液1の総量の4倍(体積基準)の水を添加し、ポリイミド前駆体を再結晶させ、析出したポリイミド前駆体を、吸引濾過器にて濾過した。濾過に要した時間は5分であった。
他方、pH調整前の再溶解液にアンモニアを添加してpHを5.8に調整した再溶解液2を準備した。この再溶解液2を用いた以外は、再溶解液1と同様にして、再結晶化および濾過を行ったところ、濾過に要した時間は1.5時間以上であった。