(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185864
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】植物性容器
(51)【国際特許分類】
B65D 65/46 20060101AFI20221208BHJP
A01G 24/22 20180101ALI20221208BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20221208BHJP
B65D 1/26 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B65D65/46
A01G24/22
B65D1/00 110
B65D1/26 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093757
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】池之上 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 夕香
(72)【発明者】
【氏名】長畑 雄也
(72)【発明者】
【氏名】小原 宏史
【テーマコード(参考)】
2B022
3E033
3E086
【Fターム(参考)】
2B022BA12
2B022BA14
2B022BB01
3E033AA08
3E033AA10
3E033BA30
3E033CA07
3E033CA09
3E033CA20
3E033FA01
3E086AD05
3E086AD06
3E086BA29
3E086BB41
3E086BB49
3E086CA01
3E086DA07
(57)【要約】
【課題】
植物性の油糧原料を使用した植物性容器、及びその製造方法の提供。
【解決手段】
植物性の油糧原料とバインダーとを含む組成物から成形された、植物性容器。
植物性容器の製造方法であって、
植物性の油糧原料と、バインダーとを混合する工程、及び
植物性の油糧原料とバインダーとの混合物を成形する工程
を含む、製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性の油糧原料とバインダーとを含む組成物から成形された、植物性容器。
【請求項2】
前記油糧原料が菜種の搾油残渣、大豆の搾油残渣、コーンの搾油残渣及びオリーブの搾油残渣からなる群から選ばれる少なくとも1種の油糧原料である、請求項1に記載の植物性容器。
【請求項3】
前記バインダーが澱粉を含むバインダーである、請求項1又は請求項2に記載の植物性容器。
【請求項4】
前記油糧原料に対する前記バインダーの質量比が0.02以上0.4未満である、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の植物性容器。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の植物性容器の製造方法であって、
植物性の油糧原料と、バインダーとを混合する工程、及び
植物性の油糧原料とバインダーとの混合物を成形する工程
を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物性容器に関する。詳細には、本発明は植物性の油糧原料を使用した植物性容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラスチック製容器が主に使用されているが、プラスチックは生分解性が低く、土に埋めても分解され難いので、プラスチックの使用は環境問題を引き起こす原因となる。また、プラスチックの原料である石油は化石燃料なので、プラスチックの燃焼時に発生する二酸化炭素が大気中に増加することによって、地球温暖化の原因となる。
そのため、近年、環境問題や地球温暖化の関心が世界的に高まっており、プラスチックの使用削減に向けて、生分解性プラスチックや生分解性容器の開発・普及や、プラスチック製容器から紙製容器への代替が進んでいる。
【0003】
生分解性プラスチックとしては、ポリ乳酸(PLA)が有名であり、ポリヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート(PHPB)が開発されており、また、100%天然素材を微細化した主材と、100%天然素材からなるバインダーとを水を介して混合し、所定形状に乾燥固化して構成したことを特徴とする生分解性プラスチックが提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、生分解性容器としては、粉砕微粉末化された植物性原料粉末体と、粉砕微粉末化されたバインダー粉末体と、ホルムアルデヒド放散防止の添加剤と、前記植物性原料粉末体と前記バインダー粉末体、及び前記添加剤を計量混合し撹拌されて成形されたトレー容器類成形品をコーティングするコーティング材とからなる植物性原料トレー容器類(特許文献2)や、主原料に植物性バイオマスを利用し、バインダーとしてゼラチン等、副バインダーとして清涼飲料水の製造残滓とオカラや大豆・菜種油の製造残滓を使用することで、無機材料を使用しない100%有機材のバイオマストレー容器類が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-023262号公報
【特許文献2】特開2002-205726号公報
【特許文献3】特開2009-292534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ポリ乳酸(PLA)はコンポストでの高温多湿な環境では分解されるが、通常の土壌環境や水環境では分解されにくい。また、ポリヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート(PHPB)は通常の土壌環境や水環境で分解されるが、完全に分解するまでにある程度の期間を要する。
また、紙製容器はゴミとして焼却されるので、プラスチック製容器から紙製容器への代替は、二酸化炭素排出量の削減や地球温暖化の有効な解決策になっていないという問題があった。
【0007】
さらに、特許文献3に記載のバイオマストレー容器類は、化石系のバインダーを一切使用しない100%有機のトレー容器類の提供という課題の下、提案されたものである。よって、特許文献3は、あくまで副バインダーとしてオカラや大豆・菜種油の製造残滓の使
用を提案するものであって、主原料としてオカラや大豆・菜種油の製造残滓の使用を何ら提案するものではない。また、特許文献3には、実施例が一切記載されていないので、該バイオマストレー容器類が耐熱性や耐水性などの容器類に要求される物性を満たすか否かは不明である。
【0008】
ところで、植物油製造の副産物のうち、菜種や大豆などから油分を搾油した油粕(ミール)は、良質なたんぱく質や糖質を多く含んでいるので、主として配合飼料の原料に活用されているが、油粕の粉砕粒度のサイズによっては用途や価値も様々であり、更には植物油の製造工程で発生する夾雑物や外皮の中には有効利用されていない副産物も存在する。
【0009】
本発明は、植物性の油糧原料、とりわけ従来、有効利用されていなかった植物性の油糧原料を用いて、高い生分解性を有する植物性容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上述した環境問題や地球温暖化の問題を解決すると同時に、植物油製造の副産物の新たな用途を見付けるために、鋭意検討した結果、植物性の油糧原料を用いることにより、高い生分解性を発現することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、植物性の油糧原料とバインダーとを含む組成物から成形された、植物性容器である。
【0012】
前記油糧原料は菜種の搾油残渣、大豆の搾油残渣、コーンの搾油残渣及びオリーブの搾油残渣からなる群から選ばれる少なくとも1種の油糧原料であることが好ましい。
【0013】
前記バインダーは澱粉を含むバインダーであることが好ましい。
【0014】
前記油糧原料に対する前記バインダーの質量比は0.02以上0.4未満であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、上記の植物性容器の製造方法であって、
植物性の油糧原料と、バインダーとを混合する工程、及び
植物性の油糧原料とバインダーとの混合物を成形する工程
を含む、製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡単に成形できる植物性容器を提供することができる。
また、本発明によれば、容器として使用できる程度の強度を有する植物性容器を提供することができる。
また、本発明によれば、耐熱性及び耐水性を有する植物性容器を提供することができる。
さらに、本発明によれば、生分解性を有し、使用後は肥料として有効活用できる植物性容器を提供することができる。
【0017】
本発明によれば、実質的に匂いがないか、又は匂いがあっても、食品を提供する容器として使用できる程度の匂いである植物性容器を提供することができる。
【0018】
本発明によれば、可食容器としても使用できる植物性容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は試験例4の耐水性試験の結果を示す写真である。
【
図2】
図2は試験例6の生育試験の結果を示す写真である。
【
図3】
図3は試験例7の生育試験の結果を示す写真である。
【
図4】
図4は試験例8の生育試験の結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[植物性容器]
本発明は、植物性の油糧原料とバインダーとを含む組成物から成形された、植物性容器に関する。
【0021】
<植物性の油糧原料>
植物性の油糧原料は、油糧種子などのような植物油の原料だけでなく、植物油の原料から油分を搾油した油粕(ミール)、夾雑物、皮などのような植物油製造の副産物も含むものである。
植物性の油糧原料としては、菜種、大豆、コーン、オリーブ、パーム果肉、ゴマ、荏胡麻、亜麻仁、紅花、ひまわり、綿実、米、落花生、カカオ、パーム核及びヤシなどが挙げられる。
植物性の油糧原料は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
植物性の油糧原料としては、菜種の搾油残渣、大豆の搾油残渣、コーンの搾油残渣及びオリーブの搾油残渣からなる群から選ばれる少なくとも1種の油糧原料であることが好ましく、菜種ミール、大豆ミール、コーンジャームミール、コーン皮及びオリーブミールからなる群から選ばれる少なくとも1種の油糧原料であることがより好ましい。
なお、従来、有効活用されていなかった植物性の油糧原料としては、例えば、繊維質を多く含むものや、粉砕粒度が42mesh以上のものが挙げられる。
【0023】
植物性の油糧原料中にバインダーを均一に分散させやすくする観点から、植物性の油糧原料は粉砕や破砕されたものが好ましく、粉末状、球状、粒状及びフレーク状のものがより好ましい。また、植物性の油糧原料は乾燥されたものが好ましい。
【0024】
植物性の油糧原料の含有量は、植物性の油糧原料とバインダーとを含む組成物の総質量に基づいて、通常、70質量%以上99質量%以下であり、75質量%以上95質量%以下であることが好ましく、80質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
【0025】
<バインダー>
本発明では、バインダーを用いることにより、植物性の油糧原料を成形しやすくし、また容器として使用できる程度の強度を有する容器が得られる。
バインダーとしては、天然物成分もしくは天然物から精製、抽出、変性等によって得られるバインダーを用いることができ、具体的にはゼラチン、カゼイン、大豆、にかわ、アルブミンなどのタンパク質系バインダー、澱粉、デキストリン、米、小麦などの澱粉系バインダー、キチン・キトサンなどの動物系バインダー、寒天、グルコマンナンなどの多糖類系バインダー、セルロースナノファイバーなどのセルロース系バインダー、リグニン系バインダー及びタンニン系バインダーなどが挙げられる。
【0026】
その中でも、バインダーとしては、植物性容器に生分解性を十分に発現させる観点、及び使用後は肥料として有効活用する観点から、植物から得られる植物性バインダーが好ましい。
植物性バインダーとしては、特に制限はなく、大豆などのタンパク質系バインダー、澱粉、デキストリン、米、小麦などの澱粉系バインダー、寒天、グルコマンナンなどの多糖類系バインダーが挙げられ、澱粉を含むことが好ましく、澱粉であることがより好ましい
。
澱粉としては、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ及びハイアミロースコーンスターチ等のとうもろこし澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ハイアミロース小麦澱粉、米澱粉、エンドウ豆澱粉等の豆澱粉などの未加工澱粉、並びに、未加工澱粉を化学的、物理的又は酵素的な加工処理をした加工澱粉からなる群から選択される1種又は2種以上の澱粉を用いることができる。
化学的な加工処理としては、酸処理、アルカリ処理、酸化処理、アセチル化等のエステル化処理、ヒドロキシプロピル化等のエーテル化処理及び架橋処理などが挙げられる。
物理的な加工処理としては、油脂加工処理、加熱処理、α化処理、湿熱処理、ボールミル処理及び微粉砕処理などが挙げられる。
【0027】
澱粉としては、小麦澱粉、コーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ及び酸化タピオカ澱粉からなる群から選択される1種又は2種以上を用いることが好ましく、小麦澱粉、又はコーンスターチとハイアミロースコーンスターチと酸化タピオカ澱粉との併用がより好ましい。
【0028】
バインダーの含有量は、植物性の油糧原料とバインダーとを含む組成物の総質量に基づいて、通常、1質量%以上28質量%以下であり、2質量%以上25質量%以下であることが好ましく、2質量%以上23質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上20質量%以下であることが特に好ましい。
また、植物性の油糧原料に対するバインダーの質量比は、0.02以上0.4未満であることが好ましく、0.02以上0.38以下であることがより好ましく、0.02以上0.35以下であることがさらにより好ましく、0.02以上0.3以下であることが特に好ましい。
【0029】
バインダーは上述した澱粉以外のバインダーや、その他の成分を含むことができる。
バインダーが澱粉を含むものである場合、澱粉と水とを混合などして調製した粘性のバインダーを使用することが好ましい。
バインダーが澱粉を含むものである場合、澱粉の含有量は、バインダーの総質量に基づいて、通常、5質量%以上99質量%以下であり、10質量%以上70質量%以下が好ましく、12質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0030】
<その他の添加剤>
本発明の植物性容器の成形に用いる組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記の必須成分以外に、着色料、香料、クレー等の無機材料、パルプ等の木質原料などの添加剤を用いることができる。
【0031】
本発明に用いる、植物性の油糧原料とバインダーとを含む組成物を製造する方法は特に限定されず、植物性の油糧原料及びバインダー、並びに、添加剤及び水などの任意成分を混合・攪拌する方法が挙げられる。
【0032】
[植物性容器の製造方法]
本発明は、
植物性の油糧原料と、バインダーとを混合する工程、及び
植物性の油糧原料とバインダーとの混合物を成形する工程
を含む、植物性容器の製造方法に関する。
以下、各工程について説明する。
【0033】
<混合工程>
本工程では、植物性の油糧原料とバインダーとを混合する。
油糧原料とバインダーとを混合する方法としては、植物性の油糧原料とバインダーとを均一に混合できれば特に限定されず、手動で又は公知の攪拌機を用いて、植物性の油糧原料とバインダーとを混合する方法などが挙げられる。
その他、混合する方法として、原料に糊や接着剤を噴霧する機械(グルーブレンダー等)を用いて、植物性の油糧原料にバインダーを噴霧し、植物性の油糧原料の表面にバインダーを付着させる方法なども挙げられる。
本工程では、植物性の油糧原料とバインダーとを混合できればよいので、植物性の油糧原料を含む水溶液とバインダーを含む水溶液とを用いて混合してもよく、また植物性の油糧原料とバインダーと水とを一緒に混合してもよい。
本工程において、植物性の油糧原料とバインダーとの混合と同時に、植物性の油糧原料を粉砕して、粉末状にしてもよい。
【0034】
<成形工程>
本工程では、混合工程で得られた混合物を成形する。
植物性の油糧原料とバインダーとの混合物を成形する方法としては、加圧成形(プレス成形)及び射出成形などが挙げられ、作業性の観点から、加圧成形(プレス成形)が好ましい。
加圧成形(プレス成形)において、加圧時の温度は、例えば70℃以上130℃以下であり、圧力は、例えば1MPa以上5MPa以下であり、加圧時間は、例えば1分以上10分以下である。
本工程により、肉厚が、例えば2mm±2mmである植物性容器が得られる。
【0035】
本発明の植物性容器を製造する方法は、上記の混合工程及び成形工程以外の工程をさらに含むこともできる。そのような工程としては、例えば、コーティング工程や乾燥工程が挙げられる。
【0036】
<コーティング工程>
本工程では、抗菌剤、殺菌剤、撥水剤及びツヤ剤(光沢剤)などのコーティング剤を用いて、成形工程で得られた植物性容器の表面の少なくとも一部、好ましくは表面全体をコーティングする。
コーティングする方法としては、植物性容器をコーティング剤に浸漬する方法や、植物性容器の表面にコーティング剤を塗布する方法などが挙げられる。
コーティングの膜厚は、例えば、0.1μm以上50μm以下である。
【0037】
<乾燥工程>
本工程では、コーティング工程で得られたコーティングした植物性容器を乾燥させる。
乾燥方法としては、自然乾燥や、公知の乾燥機を用いて、乾燥させる方法などが挙げられる。
乾燥温度としては、室温(例えば、20℃以上30℃以下)でも構わないが、早く乾燥させるために、例えば、40℃以上50℃以下でもよい。
乾燥温度としては、例えば、5分以上60分以下である。
【0038】
さらに必要に応じて、得られた植物性容器を滅菌するために、放射線、電子線やオートクレーブ等の公知の滅菌処理を施してもよい。
【0039】
本発明の植物性容器は、例えば、お皿、お椀、丼容器、ボウル、弁当箱、トレー及びコップなどの食品容器、ゴミ箱、花瓶等として使用することができる。
その中でも、本発明の植物性容器は、生分解性に優れており、使用後は肥料として有効活用できるので、現在、主にプラスチック原料から製造されている、お皿、コップ、丼容器及び弁当箱の代替品として好ましく使用することができる。
【実施例0040】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0041】
実施例で使用した植物性の油糧原料、原料及びバインダーは下記のとおりである。なお、「%」は質量%を意味する。
<植物性の油糧原料>
菜種ミール:水分12.3%、タンパク質37.1%、油分2.2%、炭水化物32.3%、粗繊維9.7%、灰分6.4%
大豆ミール:水分11.7%、タンパク質46.1%、油分1.3%、炭水化物29.4%、粗繊維5.6%、灰分5.9%
コーン皮:コーン皮(水分58.9%、タンパク質6.8%、油分1.3%、炭水化物26.9%、粗繊維4.6%、灰分1.5%)を乾燥させたもの
オリーブミール:オリーブミール(水分63.4%、タンパク質2.6%、油分4.4%、炭水化物11.7%、粗繊維16.8%、灰分1.1%)を凍結乾燥させたもの
オリーブミール(早摘):早摘のオリーブミール(水分63.4%、タンパク質2.6%、油分4.4%、炭水化物11.7%、粗繊維16.8%、灰分1.1%)を凍結乾燥させたもの
<原料>
木材原料:スギやヒノキを主原料とする木くず
小麦ふすま:水分11.3%、タンパク質15.7%、油分4%、炭水化物54.6%、粗繊維9.3%、灰分5.1%
【0042】
<バインダー>
バインダー1:小麦粉30gと水200mLとを混合し、弱火でかき混ぜながら、トロミがでるまで煮詰めて作製した澱粉のり。
バインダー2:コーンスターチ[(株)J-オイルミルズ製レギュラーコーンスターチY]と、ハイアミロースコーンスターチ[(株)J-オイルミルズ製HS-7]と、酸化タピオカ澱粉[(株)J-オイルミルズ製ジェルコールSP-2]と、水とを質量比1:1:1:15で混合し、弱火でかき混ぜながら、トロミがでるまで煮詰めて作製した澱粉のり。
バインダー3:コーンスターチ[(株)J-オイルミルズ製レギュラーコーンスターチY]と、ハイアミロースコーンスターチ[(株)J-オイルミルズ製HS-7]と、酸化タピオカ澱粉[(株)J-オイルミルズ製ジェルコールSP-2]と、水とを質量比10:20:70:350で混合し、弱火でかき混ぜながら、トロミがでるまで煮詰めて作製した澱粉のり。
【0043】
[実施例1-1:植物性容器の製造]
菜種ミール50gとバインダー1 10gとを混合した後、金型に充填し、加熱温度120℃、加圧力2MPaで5分間、プレス成形し、直径15cmのプレート(皿)を得た。得られたプレート(皿)の肉厚は2mmであった。
その結果を表1に示す。
【0044】
[実施例1-2~実施例7:植物性容器の製造]
実施例1-2~実施例7について、菜種ミールを表1に示す油糧原料に代えた以外は、上記実施例1-1と同様の手順で、プレートを得た。なお、実施例7については、プレス成形時の加熱温度を80℃とした。
その結果を表1に示す。
【0045】
[比較例1-1~比較例2-3:植物性容器の製造]
比較例1-1~比較例2-3について、菜種ミールを表2に示す原料に代えた以外は、上記実施例1-1と同様の手順で、プレートを得た。
その結果を表2に示す。
【0046】
[試験例1:植物性容器の強度試験]
実施例及び比較例で得られた各プレートについて、食品を提供する容器(食品容器)として適度な強度を有しているか否かを、4名の専門パネラーにより評価した。具体的には、片手でプレートの縁を持ち、プレートを机に軽くトントンと叩いた際に、プレートが崩れないか、プレートの縁等が割れないかについて確認し、評価した。その結果を表1及び表2に示す。
<強度の評価基準>
○:崩れや割れが生じない
△:やや崩れやすく割れやすいが、食品容器として問題なく使用できる
×:崩れやすく割れやすい
【0047】
[試験例2:植物性容器の匂い試験]
実施例及び比較例で得られた各プレートについて、食品を提供する容器として許容できる匂いの強さであるか、4名の専門パネラーにより官能評価を実施した。その結果を表1及び表2に示す。
<匂いの評価基準>
○:匂いが弱く食品容器に適する
△:匂いがあるが、食品容器として問題なく使用できる
×:匂いが強く食品容器として適さない
【0048】
[試験例3:植物性容器の耐熱性試験]
実施例及び比較例で得られた各プレートを、180℃の乾熱滅菌機に入れた。0.5時間後に、加温をやめ、乾熱滅菌機の扉を開き、乾熱滅菌機ならびに各プレートが室温に戻るまで放置した。2時間後、乾熱滅菌機からプレートを取り出し、プレートが変形していないか、変色していないかについて確認し、評価した。その結果を表1及び表2に示す。<耐熱性の評価基準>
○:加熱しても変形・変色しない
△:加熱するとやや変形及び/又は変色するが、問題なく使用できる
×:加熱すると変形及び/又は変色する
【0049】
[試験例4:植物性容器の耐水性試験]
実施例及び比較例で得られた各プレートの表面に100μLの水を垂らし、垂らした水が、プレートに完全に浸み込む時間を測定し、評価した。その結果を表1、表2及び
図1に示す。
<耐水性の評価基準>
◎:水が完全に浸み込むまでの時間が20分以上
○:水が完全に浸み込むまでの時間が20分未満5分以上
△:水が完全に浸み込むまでの時間が5分未満2分以下
×:水が完全に浸み込むまでの時間が2分未満
【0050】
【0051】
【0052】
上記表1に示した結果より、植物性の油糧原料を用いた本発明の植物性容器は、成形しやすくて、食品容器として使用できる程度の強度を有していた。また、本発明の植物性容器は、食品を提供する容器として許容できる程度の匂いを有していた。さらに、本発明の植物性容器は、食品容器として使用できる程度の耐熱性及び耐水性を有していた。
一方、上記表2に示した結果より、木材原料を用いた植物性容器は、成形できないか、
又は成形できたとしても、崩れやすく割れやすかった。また、ふすまを用いた植物性容器は、植物性の油糧原料を用いた植物性容器に比べて、強度が劣っていた。
以上のことから、本発明の植物性容器は、植物性の油糧原料を用いたことにより、成形性に優れ、かつ食品容器に要求される物性、とりわけ強度、耐熱性及び耐水性を満たすことが明らかである。
【0053】
[試験例5:植物性容器の生分解性試験]
事業所内で採取した土と市販の園芸用土とを質量比50:50で混合し、プランターに入れた。そして、実施例及び比較例で得られた各プレートを網メッシュに入れた後、該プランター中の土に埋めて、4週間観察した。4週間後に、各試験プレートを引き上げ、1日風乾した後に、試験前のプレートの質量と比較した。
その結果を表3及び表4に示す。
【0054】
【0055】
【0056】
上記表3に示した結果より、植物性の油糧原料を用いた本発明の植物性容器は、土に埋めた後、4週間で完全に分解(すなわち、試験プレートは分解して消失した)、又は80%以上分解した。
したがって、本発明の植物性容器は、4週間程度でほとんど完全に分解することができるので、優れた生分解性を有することが明らかある。
【0057】
[試験例6:シソを用いた生育試験]
市販の園芸用の土と、実施例1-1で得られたプレート10gを1cm角に破砕したものとを、500mL容量の容器に入れた。そこに、購入したシソの苗木を植えた。土が乾かないよう適宜水やりを行い、17日間観察をおこなった。シソの苗木の成長の度合いを観察し、評価をおこなった。
また、参考比較例1の100%小麦ブラン皿(市販品)についても、同様に生育試験を実施した。
その結果を表5及び
図2に示す。
【0058】
【0059】
上記表5及び
図2に示した結果より、実施例1-1のプレートを埋めた土で育てたシソは、コントロールのシソより、成長した。
したがって、本発明の植物性容器は、植物の成長に悪影響を与えることなく、成長を促進することができるので、使用後は肥料として有効活用できることが明らかである。
【0060】
[試験例7:トマトを用いた生育試験]
事業所内で採取した土と市販の園芸用の土とを混合した土と、実施例1-1で得られたプレート30gを0.5cm角に破砕したものとを、500mL容量の容器に入れた。そこに、購入したトマトの苗木を植えた。土が乾かないよう適宜水やりを行い、30日間観察をおこなった。トマトの苗木の成長の度合いと、実ったトマトの実の個数とを観察し、評価をおこなった。
また、参考比較例1の100%小麦ブラン皿(市販品)についても、同様に生育試験を実施した。
その結果を表6及び
図3に示す。
【0061】
【0062】
上記表6及び
図3に示した結果より、実施例1-1のプレートを埋めた土で育てたトマトは、コントロールのトマトより、成長しており、且つ実ったトマトの実の数が多かった(
図3中、実ったトマトの実は矢印で示す。)。
したがって、本発明の植物性容器は、植物の成長に悪影響を与えることなく、成長を促進することができるので、使用後は肥料として有効活用できることが明らかである。
【0063】
[試験例8:ラディッシュを用いた生育試験]
市販の園芸用の土と、実施例1-1で得られたプレート10gを0.5cm角に破砕したものとを、1000mL容量の容器に入れた。そこに、ラディッシュの種を蒔いた(4か所)。土が乾かないよう適宜水やりを行い、6週間観察をおこなった。実ったラディッシュの実の個数を観察し、評価をおこなった。
また、参考比較例1の100%小麦ブラン皿(市販品)についても、同様に生育試験を実施した。
その結果を表7及び
図4に示す。
【0064】
【0065】
上記表7及び
図4に示した結果より、実施例1-1のプレートを埋めた土で育てたラディッシュは、コントロールのラディッシュより、実った実の数が多かった(
図4中、実ったラディッシュの実は矢印で示す。)。
したがって、本発明の植物性容器は、植物に悪影響を与えることなく、成長を促進することができるので、使用後は肥料として有効活用できることが明らかである。
【0066】
以上の結果から、本発明の植物性容器は、容器に要求される物性を満たし、かつ生分解性に優れ、使用後は肥料として有効活用できるものである。
よって、本発明の植物性容器は、植物性の油糧原料、とりわけ従来、有効利用されていなかった植物性の油糧原料の新たな用途を提案するものであり、また環境問題や地球温暖化の問題を解決し得るものである。