(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186059
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】給湯システム
(51)【国際特許分類】
F24H 15/375 20220101AFI20221208BHJP
F24H 1/18 20220101ALI20221208BHJP
F24H 15/212 20220101ALI20221208BHJP
【FI】
F24H4/02 N
F24H1/18 B
F24H1/18 302Q
F24H4/02 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094084
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】赤石 拓也
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA04
3L122AA12
3L122AA23
3L122AA53
3L122AA66
3L122AB03
3L122AB22
3L122AB54
3L122BA12
3L122BA13
3L122BB03
3L122BB34
3L122BB37
3L122DA21
3L122EA64
(57)【要約】
【課題】供給管からの戻り温水を貯湯槽の中温領域にバッファして給湯に有効利用し、ヒートポンプの成績係数の低下を防ぐ。
【解決手段】給湯システム1は、温度センサー3A~3Cにより貯湯槽2の中温水が増加したことを検出した場合、第2弁56を開いて貯湯槽2の中温水を供給管40内の戻り温水および高温水と混合して循環用温水を作る。また、供給管40からの戻り温水の少なくとも一部を中間槽6に戻して蓄え、必要に応じて、中間槽6の中温水を用いて循環用温水を作ることができるから、貯湯槽2への戻り温水の流入量を減らし、小温度差でのヒートポンプの運転を抑制して、ヒートポンプの成績係数を高めることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端口、中間口、および上端口を、下方から上方へ向けて順に備えた密閉型の貯湯槽と、
密閉型の中間槽と、
入口と出口を有し、前記入口から供給された原水を加熱して前記出口から流出させるヒートポンプと、
給水源に接続可能とされ、前記ヒートポンプの前記入口に接続された給水管と、
前記ヒートポンプの前記出口、前記貯湯槽の前記上端口、および混合弁の第1ポートとを接続する熱水管と、
前記給水管と前記貯湯槽の前記下端口とを接続する第1弁と、
前記貯湯槽の前記中間口と前記混合弁の第2ポートを接続する第2弁と、
前記中間槽と前記給水管とを接続する第3弁と、
前記混合弁の第3ポート、温水を供給すべき給湯設備、前記中間槽、および前記混合弁の前記第2ポートを接続する供給管と、
前記中間槽と前記熱水管とを接続する第4弁と、
前記貯湯槽の内部の温度分布に対応する信号を出力する温度センサーと、
前記温度センサーからの前記信号を受けて、前記第1弁から前記第4弁および前記ヒートポンプを制御する制御装置とを具備する給湯システム。
【請求項2】
前記中間槽は、下端口、中間口、および上端口を、下方から上方へ向けて順に備え、
前記第3弁は、前記中間槽の前記下端口に接続されており、
前記供給管は、前記中間槽の前記中間口に接続されており、
前記第4弁は、前記中間槽の前記と前記上端口に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の給湯システム。
【請求項3】
下端口、中間口、および上端口を、下方から上方へ向けて順に備えた密閉型の貯湯槽と、
密閉型の中間槽と、
入口と出口を有し、前記入口から供給された原水を加熱して前記出口から流出させるヒートポンプと、
給水源に接続可能とされ、前記ヒートポンプの前記入口に接続された給水管と、
前記ヒートポンプの前記出口、前記貯湯槽の前記上端口、および混合弁の第1ポートとを接続する熱水管と、
前記給水管と前記貯湯槽の前記下端口との間を接続する第1弁と、
前記貯湯槽の前記中間口と前記混合弁の第2ポートを接続する第2弁と、
前記給水管と前記混合弁の前記第2ポートを接続する冷水管と、
前記混合弁の第3ポート、温水を供給すべき給湯設備、前記中間槽を接続して循環する供給管と、
前記貯湯槽の内部の温度分布に対応する信号を出力する温度センサーと、
前記温度センサーからの前記信号を受けて、前記第1弁、前記第2弁および前記ヒートポンプを制御する制御装置とを具備する給湯システム。
【請求項4】
前記中間槽内の温水を加熱する加熱手段をさらに具備することを特徴とする請求項3に記載の給湯システム。
【請求項5】
前記温度センサーは、前記貯湯槽の前記下端口に対応する位置での水温を測定する下端部温度センサーと、前記中間口に対応する位置での水温を測定する下位中間温度センサーと、前記上端口に対応する位置での水温を測定する上端部温度センサーとを具備することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の給湯システム。
【請求項6】
前記供給管を通じて供給される温水の温度を測定する供給温度センサーと、前記供給温度センサーの信号を受けて、前記混合弁の前記第1ポートから前記第3ポートに到る弁開度、および前記混合弁の前記第2ポートから前記第3ポートに到る弁開度を制御する温度制御装置を具備することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の給湯システム。
【請求項7】
前記貯湯槽は、低温貯湯槽、中温貯湯槽、高温貯湯槽を有し、
前記低温貯湯槽の下端に前記下端口が形成され、
前記低温貯湯槽の上端と前記中温貯湯槽の下端が接続され、
前記中温貯湯槽の上端と前記高温貯湯槽の下端が接続されて前記中間口が形成され、
前記高温貯湯槽の上端に前記上端口が形成され、
前記温度センサーは、少なくとも前記中温貯湯槽の内部の温度分布に対応する信号を出力することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプおよび密閉型の貯湯槽を備えた給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
給湯システムとして、二酸化炭素を熱媒として用いたヒートポンプで水を加熱し、得られた温水を密閉型の貯湯槽に温度成層を形成しつつ貯留して、給湯に用いるものが従来から知られており、ヒートポンプの利用により運転コストが安く、しかも、高温水を空気に触れさせずに貯留できることから衛生的である。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された給湯システムは、原水供給路と連結した貯湯槽に、貯湯用循環流路を介してヒートポンプを連結し、このヒートポンプにより加熱した湯を前記貯湯槽内に貯留するとともに、前記貯湯槽に連結した給湯路に、出湯用端末を取り付けた循環給湯回路を連通させ、前記出湯用端末から給湯可能としている。前記給湯路と循環給湯回路とは、混合弁を介して連結され、前記循環給湯回路の中途から分岐させて前記貯湯槽の底部側に連通連結した返湯路の中途に、返し湯を一時的に貯留するサブタンクを設け、このサブタンクに前記循環給湯回路から流入した返し湯の分だけ、前記貯湯槽内に貯留した湯を前記循環給湯回路内に流入させている。
【0004】
特許文献2の給湯システムは、密閉型の貯湯槽と、その下部から給水可能かつヒートポンプに接続された給水管と、貯湯槽の下部から取り出した低温水をヒートポンプで加熱して貯湯槽の上部に戻す加熱管と、一端が貯湯槽の上部に接続され他端が混合弁に接続された高温水配管と、一端が貯湯槽の中間部に接続され他端が混合弁に接続された中温水配管と、一端が混合弁に接続され他端が給湯先に接続された給湯管と、一端が給水管から分岐し、他端が中温水配管に接続された給水分岐管とを備えている。給湯管には、温水の温度を検出する給湯温度センサーが設けられ、給湯先に供給される給湯の温度が設定温度になるように、混合弁の開度を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4949818号公報
【特許文献2】特許第6351101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の給湯システムは、例えば給湯負荷にばらつきがある場合、貯湯槽中の高温水層量の変動に伴い、熱水層と冷水層の界面が上下に移動して熱水層と冷水層の混合が進み、貯湯槽の内部で中温水層が徐々に拡大し、貯湯槽の中の温度成層が維持しにくくなることがあった。また、貯湯槽内の中温水が増えた場合には、貯湯槽の下端口から中温水を流出させてヒートポンプで再加熱することが必要となるが、ヒートポンプへ供給される水の温度が上昇すると、ヒートポンプから出力すべき高温水との温度差が小さくなる。
【0007】
特に、二酸化炭素を熱媒として用いるヒートポンプでは、温水入口と温水出口の温度差が大きければ高い効率で運転できるが、温度差が小さくなるに従い加熱効率が低下するため、ヒートポンプでの成績係数(COP)が悪化するという問題があった。給湯システムにヒートポンプを利用する際は、ヒートポンプの成績係数により給湯システムの効率が左右されるため、ヒートポンプ性能が低下する小温度差での運転をなるべく減らせるようにシステムを構築することが重要である。
【0008】
特許文献2の給湯システムは、比較的小規模な給湯設備を対象としているため、供給管を流れる温水を常に循環させて給湯温度を安定化しつつ、戻り温水を再加熱することはできず、給湯先までの距離がある大規模なビルなどの給湯システムには適していない。
【0009】
本発明は、供給管を流れる温水を常に循環させて給湯温度を安定化しつつ、ヒートポンプ性能が低い小温度差での運転をなるべく減らすことができ、ヒートポンプの成績係数を高めることができる給湯システムの提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明に係る第1態様の給湯システムは、
下端口、中間口、および上端口を、下方から上方へ向けて順に備えた密閉型の貯湯槽と、
密閉型の中間槽と、
入口と出口を有し、前記入口から供給された原水を加熱して前記出口から流出させるヒートポンプと、
給水源に接続可能とされ、前記ヒートポンプの前記入口に接続された給水管と、
前記ヒートポンプの前記出口、前記貯湯槽の前記上端口、および混合弁の第1ポートとを接続する熱水管と、
前記給水管と前記貯湯槽の前記下端口とを接続する第1弁と、
前記貯湯槽の前記中間口と前記混合弁の第2ポートを接続する第2弁と、
前記中間槽と前記給水管とを接続する第3弁と、
前記混合弁の第3ポート、温水を供給すべき給湯設備、前記中間槽、および前記混合弁の前記第2ポートを接続する供給管と、
前記中間槽と前記熱水管とを接続する第4弁と、
前記貯湯槽の内部の温度分布に対応する信号を出力する温度センサーと、
前記温度センサーからの前記信号を受けて、前記第1弁から前記第4弁および前記ヒートポンプを制御する制御装置とを具備する。
【0011】
前記態様[1]の給湯システムによれば、温度センサーにより貯湯槽の内部の中温水が増加したことを検出した場合、第2弁を開くとともに第3弁を閉じて、貯湯槽の中間口から中温水を抜き、この中温水を混合弁により貯湯槽の上端口からの高温水またはヒートポンプからの高温水と混合して、供給管を経て給湯設備へ供給することができる。これにより、貯湯槽内の中温水を有効に利用して、貯湯槽内の中温水域の拡大を防ぎ、中温水がヒートポンプへ流れることによる成績係数の低下を抑制することができる。
【0012】
また、供給管からの戻り温水の少なくとも一部を中間槽に戻して蓄え、必要に応じて、中間槽に蓄えた温水を循環用温水をつくることに使用できるため、貯湯槽への戻り温水の流入量を減らすことができる。よって、貯湯槽中に中温水が過剰に滞留することをこの点からも防止でき、中温水がヒートポンプへ流れることによる成績係数の低下を抑制することができ、中温水を再加熱する動力を減らすことが可能であるとともに、中温水域中で繁殖しやすいレジオネラ菌の増殖も抑制することが可能である。
【0013】
[2]前記態様[1]の給湯システムにおいて、
前記中間槽は、下端口、中間口、および上端口を、下方から上方へ向けて順に備え、
前記第3弁は、前記中間槽の前記下端口に接続されており、
前記供給管は、前記中間槽の前記中間口に接続されており、
前記第4弁は、前記中間槽の前記と前記上端口に接続されていてもよい。
【0014】
[3]本発明に係る他の態様の給湯システムは、
下端口、中間口、および上端口を、下方から上方へ向けて順に備えた密閉型の貯湯槽と、
密閉型の中間槽と、
入口と出口を有し、前記入口から供給された原水を加熱して前記出口から流出させるヒートポンプと、
給水源に接続可能とされ、前記ヒートポンプの前記入口に接続された給水管と、
前記ヒートポンプの前記出口、前記貯湯槽の前記上端口、および混合弁の第1ポートとを接続する熱水管と、
前記給水管と前記貯湯槽の前記下端口との間を接続する第1弁と、
前記貯湯槽の前記中間口と前記混合弁の第2ポートを接続する第2弁と、
前記給水管と前記混合弁の前記第2ポートを接続する冷水管と、
前記混合弁の第3ポート、温水を供給すべき給湯設備、前記中間槽を接続して循環する供給管と、
前記貯湯槽の内部の温度分布に対応する信号を出力する温度センサーと、
前記温度センサーからの前記信号を受けて、前記第1弁、前記第2弁および前記ヒートポンプを制御する制御装置とを具備する。
【0015】
前記態様[3]の給湯システムによれば、温度センサーにより貯湯槽の内部の中温水が増加したことを検出した場合、第2弁を開いて貯湯槽の中間口から中温水を放出し、この中温水を混合弁により貯湯槽の上端口からの高温水またはヒートポンプからの高温水と混合して、供給管を経て給湯設備へ供給することができる。これにより、貯湯槽内の中温水を有効に利用して、貯湯槽内の中温水域の拡大を防ぎ、中温水がヒートポンプへ流れることによる成績係数の低下を抑制することができる。
【0016】
また、前記供給管からの戻り温水の少なくとも一部を、中間槽に戻して蓄え、中間槽から戻り温水を混合弁からの高温水と混合して供給管へ再放出することにより、貯湯槽への戻り温水の流入量を減らすことができる。よって、貯湯槽中に中温水が過剰に滞留することをこの点からも防止でき、中温水がヒートポンプへ流れることによる成績係数の低下を抑制することができ、中温水を再加熱する動力を減らすことが可能であるとともに、中温水域中で繁殖しやすいレジオネラ菌の増殖も抑制することが可能である。
【0017】
[4]前記態様[3]の給湯システムにおいて、前記中間槽内の温水を加熱する加熱手段をさらに具備してもよい。
[5]前記態様[1]~[4]の給湯システムにおいて、前記温度センサーは、前記貯湯槽の前記下端口に対応する位置での水温を測定する下端部温度センサーと、前記中間口に対応する位置での水温を測定する中間温度センサーと、前記上端口に対応する位置での水温を測定する上端部温度センサーとを具備してもよい。
【0018】
前記態様[5]の給湯システムによれば、前記貯湯槽に設けられた温度センサーが、下端部温度センサー、下位中間温度センサー、および上端部温度センサーとを具備するから、貯湯槽の内部の中温水が増加・減少することを検出することが容易であり、高精度の制御が行いやすい。
【0019】
[6]前記態様[1]~[5]の給湯システムにおいて、前記供給管を通じて供給される温水の温度を測定する供給温度センサーと、前記供給温度センサーの信号を受けて、前記混合弁の前記第1ポートから前記第3ポートに到る弁開度、および前記混合弁の前記第2ポートから前記第3ポートに到る弁開度を制御する温度制御装置を具備してもよい。
【0020】
前記態様[6]の給湯システムによれば、供給管を通じて供給される温水の温度を供給温度センサーで測り、混合弁の開度を温度制御装置で制御することにより、供給管を通じて給湯設備に供給される温水の温度の制御を高精度に行うことが容易である。
【0021】
[7]前記態様[1]~[6]の給湯システムにおいて、
前記貯湯槽は、低温貯湯槽、中温貯湯槽、高温貯湯槽を有し、
前記低温貯湯槽の下端に前記下端口が形成され、
前記低温貯湯槽の上端と前記中温貯湯槽の下端が接続されて前記中間口が形成され、
前記中温貯湯槽の上端と前記高温貯湯槽の下端が接続され、
前記高温貯湯槽の上端に前記上端口が形成され、
前記温度センサーは、少なくとも前記中温貯湯槽の内部の温度分布に対応する信号を出力してもよい。
【0022】
前記態様[7]の給湯システムによれば、前記貯湯槽は、低温貯湯槽、中温貯湯槽、高温貯湯槽を有するから、貯湯槽のコンパクト化が図れるとともに、明確な温度成層を形成することが容易になるので、中温水と低温水、高温水の混合をなるべく減らして中温水の増加を抑制することが容易である。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る給湯システムによれば、供給管からの戻り温水を前記貯湯槽の中温領域にバッファすることで給湯(温水消費)に有効利用できるから、ヒートポンプの成績係数の低下を防ぎ、高効率運転を維持できる利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る給湯システムの第1実施形態を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態における(1A)循環/中間槽の高温水熱源モードでの運転状態を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態における(1B)給湯/貯湯槽の高温水熱源モードでの運転状態を示すブロック図である。
【
図4】第1実施形態における(2A)循環/ヒートポンプ熱源モードでの運転状態を示すブロック図である。
【
図5】第1実施形態における(2B)給湯/ヒートポンプ+貯湯槽の高温水+中間槽の中温水熱源モードでの運転状態を示すブロック図である。
【
図6】第1実施形態における(3A)循環/中間槽の高温水熱源モードでの運転状態を示すブロック図である。
【
図7】第1実施形態における(3B)給湯/中間槽の高温水と中温水熱源モードでの運転状態を示すブロック図である。
【
図8】第1実施形態における(4A)循環/ヒートポンプ熱源モードでの運転状態を示すブロック図である。
【
図9】第1実施形態における(4B)給湯/ヒートポンプ+貯湯槽の高温水熱源モードでの運転状態を示すブロック図である。
【
図10】第1実施形態における(5A)循環/中間槽の高温水熱源モードでの運転状態を示すブロック図である。
【
図11】第1実施形態における(5B)給湯/貯湯槽の高温水と中温水熱源モードでの運転状態を示すブロック図である。
【
図12】第1実施形態における(6A)循環/中間槽の高温水熱源モードでの運転状態を示すブロック図である。
【
図13】第1実施形態における(6B)給湯/ヒートポンプ+貯湯槽の高温水+中間槽の中温水熱源モードでの運転状態を示すブロック図である。
【
図14】本発明に係る給湯システムの第2実施形態を示すブロック図である。
【
図15】本発明に係る給湯システムの第3実施形態を示すブロック図である。
【
図16】本発明に係る給湯システムの第4実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて本発明の給湯システムの実施形態を詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は第1実施形態の給湯システム1を示し、この給湯システム1は、原水を加熱するヒートポンプ4、加熱された水を蓄えて循環させる貯湯槽2および中間槽6、および給湯システム1の温水の流れを制御する制御装置8を備え、ビル内などに設置された給湯設備10へ温水を常に循環しつつ供給するものである。
【0026】
この実施形態の貯湯槽2は単一のタンクであり、鉛直方向に延びる円筒形の側板部と、この側板部の上端および下端をドーム状に塞ぐ天板部および底板部を有し、気密性と断熱性を有している。貯湯槽2の形状は図示のものに限らず、角柱状であってもよいし、内部に水平な層をなす温度成層を形成できれば傾いていてもよいし、複数の貯湯槽を並列または直列に連結したものであってもよい。
【0027】
貯湯槽2の底板部には下端口2Aが設けられ、側板部の高さ方向のほぼ中央部には中間口2Bが形成され、天板部には上端口2Cが形成されている。上端口2Cから高温水、下端口2Aから低温水を貯湯槽2に注入することにより、貯湯槽2の内部には低温領域L、中温領域M、および高温領域Hが温度成層として形成され、各領域の境界面の高さはそれぞれの液量により変化する。
【0028】
貯湯槽2には、下端部の水温を測る下端部温度センサー3A、中間口2Bの高さに対応した水温を測る中間温度センサー3B、上端部の水温を測る上端部温度センサー3Cがそれぞれ設けられ、制御装置8へ接続されている。本発明では、温度センサーの個数は上記のように3基に限定されず、上下の2基またはより細分化した5基以上であってもよいし、貯湯槽2の内部全体の温度分布を連続的に捉えるラインセンサーや二次元画像センサーのようなものであってもよい。
【0029】
給湯システム1には、原水の供給源に接続される給水管9が設けられ、ヒートポンプ4の入口4Aに接続されている。貯湯槽2の下端口2Aは、電磁弁等からなる第1弁14を介して給水管9に接続されている。また、貯湯槽2の下端口2Aと給水管9の間には配管16が接続されている。配管16は例えば図示しない逆止弁を有し、下端口2Aから給水管9側への一方向のみ水が流れる。貯湯槽2の下端口2Aと給水管9の間は配管16で常時連通されているが、第1弁14を開くと配管16の場合よりも大容量が流れるようにされている。
【0030】
中間槽6は、貯湯槽2よりも小型のタンクであり、鉛直方向に延びる円筒形の側板部と、この側板部の上端および下端をドーム状に塞ぐ天板部および底板部を有し、気密性と断熱性を有している。中間槽6の形状は図示のものに限らず、角柱状であってもよいし、内部に水平な層をなす温度成層を形成できれば傾いていてもよいし、複数の貯湯槽を並列または直列に連結したものであってもよい。
【0031】
中間槽6の底板部には下端口6Aが設けられ、側板部の高さ方向のほぼ中央部には中間口6Bが形成され、天板部には上端口6Cが形成されている。上端口6Cから高温水、下端口6Aから低温水を注入することにより、中間槽6の内部には温度成層が形成されるようになっている。
【0032】
中間槽6には、中間槽6の下端部の水温を測る下端温度センサー7A、中間口6Bの高さに対応した位置での水温を測る中間温度センサー7B、上端部の水温を測る上端温度センサー7Cがそれぞれ設けられている。本発明では、中間槽6の温度センサーの個数は上記のように3基に限定されず、中央の1基のみ、上下の2基のみ、またはより細分化した4基以上であってもよいし、中間槽6の内部全体の温度分布を連続的に捉えるラインセンサーや二次元画像センサーのようなものであってもよい。
【0033】
ヒートポンプ4は、この種の用途に使用される一般的なものであってよく、熱媒は二酸化炭素であることが環境問題や運転コストの点で現実的であるため、以下では熱媒を二酸化炭素とした場合について説明するが、フロンや他の熱媒ガスであっても実施は可能である。ヒートポンプ4は、入口4Aから供給された低温の水を出口4Bへ向けて図示しないポンプで加圧するとともに、図示しない熱媒流路内で断熱圧縮されて高温になった二酸化炭素と原水とを熱交換させ、原水を例えば約90℃に加熱して出口4Bから流出させる。以後、同様に各部の水温を具体的に記載するが、本発明はこれらの温度に限定されるものではなく、給湯システムの用途に応じて適宜設定されるべきである。
【0034】
ヒートポンプ4の出口4Bには高温水が流れる熱水管32が接続され、熱水管32は貯湯槽2の上端口2Cおよび混合弁38の第1ポートに接続されている。混合弁38の出口となる第3ポートには、温水を流すための供給管40の上流端が接続され、この供給管40は、例えばビル内などの給湯設備10(給湯蛇口、温水シャワー、温水暖房設備など)を次々に経由し、ポンプ50を経て供給管40の下流端が混合弁38の第2ポートに接続されている。
【0035】
中間槽6の中間口6Bは、供給管40へ接続されている。中間槽6の上端口6Cは熱水管32に配管34を介して接続されるとともに、中間槽6の上端口6Cと熱水管32の間は、電磁弁等からなる第4弁36を介しても接続されている。中間槽6の上端口6Cと熱水管32の間は配管34で常時連通されているが、第4弁36を開くと配管34のみの場合よりも大流量が流れるようにされている。
貯湯槽2の中間口2Bは、電磁弁等からなる第2弁56を経て、供給管40へ接続されている。
【0036】
混合弁38にはアクチュエータ46が設けられ、アクチュエータ46は温度制御装置44で駆動される。温度制御装置44には混合弁38の第3ポート近くで供給管40に設けられた供給温度センサー42が接続され、供給温度センサー42からの信号に応じて、温度制御装置44が、混合弁38の第1ポートから第3ポートに到る弁開度、および第2ポートから第3ポートに到る弁開度をそれぞれ独立かつ連続的にフィードバック制御する。これにより、第1ポートに流れ込む約90℃の高温水と、第2ポートに流れ込む温水の混合量を調整し、第3ポートから供給管40へ常に約60℃(約65℃の場合もある)の温水が供給される。
【0037】
供給管40の全長は、システム1を設ける施設の規模によっては比較的長距離に達することもある。業務用の給湯では即時給湯が求められるため、給湯設備10へ約60℃(仮に熱媒を二酸化炭素とする場合)の温水を常時供給するために、ポンプ50により常に温水を供給管40に循環させて供給管40内を温めておく必要がある。温水の循環量は、供給管40からの戻り温水の温度が約60℃から例えば5℃程度低下して約55℃(供給温度が65℃であれば約60℃)になるように、供給温度や供給管40での放熱量等に基づいてポンプ50の出力が調整される。
【0038】
第1弁14、第2弁56、第3弁12、第4弁36、ヒートポンプ4、およびポンプ50は、いずれも制御装置8によって制御され、制御装置8には、貯湯槽2の温度センサー3A~3C、および中間槽6の温度センサー7A~7Cの信号が伝達される。制御装置8は、例えば制御プログラムを記憶したコンピューターを備え、温度センサー3A~3Cおよび温度センサー7A~7Cの信号に基づいて、第1弁14、第2弁56、第3弁12、第4弁36、ヒートポンプ4、およびポンプ50を動作させ、下記のような運転モードを実現するように構成されている。必要に応じては、下記の各運転モードの他の運転モードを設けてもよいし、下記の各運転モードでの流路を若干変更することも可能であるし、下記の各運転モードのいずれかは行わない構成としてもよい。
【0039】
(1A)循環/中間槽の高温水熱源モード
給湯設備10での温水の消費がなく、貯湯槽2内の高温水を補う必要がなく、中間槽6内には高温水が十分にある場合の運転モードである。
図2に示すように、給水管9からの原水の供給を停止し、ヒートポンプ4を休止させ、第1弁14を閉じ、第2弁56を閉じ、第3弁12を閉じ、第4弁36を開ける。約60℃の温水を供給管40へ流し、消費されないまま約55℃に低下した戻り温水をポンプ50で加圧する。戻り温水の一部が中間口6Bから中間槽6へ流入し、中間槽6の上端口6Cから第4弁36および配管34を経て約90℃の高温水が押し出され、混合弁38において、約55℃の戻り温水の残部と混合され、混合弁38で高温水と混合されて約60℃の温水となって供給管40を循環する。この運転モードによれば、貯湯槽2内の温度成層に影響を与えず、中間槽6内の高温水のみを用いて、供給管40に温水を循環させることができる。
【0040】
(1B)給湯/貯湯槽の高温水熱源モード
給湯設備10で温水が消費され、供給管40を介して温水を循環させており、貯湯槽2内の高温水量は十分にあり、中間槽6の中温水量が多い場合の運転モードである。
図3に示すように、給水管9から原水を供給し、ヒートポンプ4を停止し、第1弁14を開き、第2弁56を閉じ、第3弁12を閉じ、第4弁36を開く。これにより、給水管9からの例えば約16℃の原水を貯湯槽2の下端口2Aから注入し、貯湯槽2の上端口2Cから貯湯槽2内の約90℃の高温水を流出させる。貯湯槽2の上端口2Cからの高温水の一部は第4弁36および配管34を通じて中間槽6の上端口6Cから中間槽6内に供給され、中間槽6内の中温水が中間口6Bから流出して、供給管40内を流れる戻り温水と混合され、約60℃の温水となって供給管40を循環する。この運転モードによれば、貯湯槽2内の高温水を消費しつつ、中間槽6内に高温水を補充することができる。
【0041】
(2A)循環/ヒートポンプ熱源モード
給湯設備10での温水の消費がなく、貯湯槽2内の熱水量は十分にあり補う必要がなく、中間槽6内の高温水は補充する必要がある場合の運転モードである。
図4に示すように、給水管9からの原水の供給を停止し、ヒートポンプ4を稼働し、第1弁14を閉じ、第2弁56を閉じ、第3弁12を開き、第4弁36は閉じる。これにより、給水管9から供給された原水はヒートポンプ4で約90℃に加熱され、熱水管32を通って、高温水の一部が配管34を通って小流量で上端口6Cから中間槽6へ補充される。中間槽6の下端口6Aからは十分に冷たい低温水が流出してヒートポンプ4へ供給される。熱水管32を流れる高温水の残部は混合弁38へ供給され、供給管40からの約55℃の戻り温水と混合されて約60℃の温水となり、供給管40を循環する。戻り温水の一部が中間口6Bを経て中間槽6内に供給される。この運転モードによれば、貯湯槽2内の高温水を消費せず、貯湯槽2内の温度成層を静置したまま、中間槽6の上端口6Cから高温水を補充して、供給管40に温水を循環させることができる。
【0042】
(2B)給湯/ヒートポンプ+貯湯槽の高温水+中間槽の中温水熱源モード
給湯設備10で温水が消費されており、貯湯槽2内の高温水は十分にあり、中間槽6内の中温水が多い場合の運転モードである。
図5に示すように、給水管9から原水を供給し、ヒートポンプ4を稼働し、第1弁14を開き、第2弁56を閉じ、第3弁12を開き、第4弁36を閉じる。これにより、給水管9から供給された例えば16℃の原水が、中間槽6の下端口6Aおよび貯湯槽2の下端口2Aへ供給され、残部がヒートポンプ4で加熱される。ヒートポンプ4で加熱された高温水と、貯湯槽2の上端口2Cから流出した高温水とが混合され、その一部が配管34を通じて小流量で上端口6Cから中間槽6へ補充される。中間槽6の中間口6Bから中温水が流出し、供給管40の戻り温水と混合されて、混合弁38へ到り、熱水管32を流れてきた高温水と混合弁38で混合されて、約60℃の温水として供給管40へ供給される。この運転モードによれば、貯湯槽2の高温水を消費しつつ、中間槽6へ高温水を補充し、中間槽6内の過剰な中温水を消費することができる。ヒートポンプ4には、給水管9からの冷たい原水が供給されるので、ヒートポンプ4の成績係数が高く、高効率運転を維持できる。
【0043】
(3A)循環/中間槽の高温水熱源モード
給湯設備10での温水の消費がなく、貯湯槽2内の高温水を補う必要がなく、中間槽6内には高温水が十分にある場合の運転モードである。
図6に示すように、給水管9からの原水の供給を停止し、ヒートポンプ4を休止させ、第1弁14を閉じ、第2弁56を閉じ、第3弁12を閉じ、第4弁36を開ける。これにより、第4弁36および配管34を通じ
て中間槽6の上端口6Cから約90℃の高温水が流出し、混合弁38へ到り、約55℃の戻り温水の残部と混合され、約60℃の温水となって供給管40を循環する。消費されないまま約55℃に低下した戻り温水の一部が中間口6Bから中間槽6へ流入して、中間槽6の上端口6Cから約90℃の高温水を押し出す。この運転モードによれば、貯湯槽2内の温度成層に影響を与えず、中間槽6内の高温水のみを用いて、供給管40に温水を循環させることができる。
【0044】
(3B)給湯/中間槽の高温水と中温水熱源モード
給湯設備10で温水が消費されており、貯湯槽2内に高温水を補充する必要は無く、中間槽6内の高温水および中温水が多い場合の運転モードである。
図7に示すように、給水管9から原水を供給し、ヒートポンプ4を停止し、第1弁14を閉じ、第2弁56を閉じ、第3弁12を開き、第4弁36を開く。これにより、給水管9から供給された例えば16℃の原水が第3弁12を通じて下端口6Aから中間槽6へ供給され、中間槽6の中間口6Bから中温水が流出するとともに、上端口6Cから第4弁36および配管34を通じて高温水が流出する。中間口6Bから流出した中温水は供給管40内の戻り温水と混合され、混合弁38へ到る。中間槽6の上端口6Cから流出した高温水は混合弁38へ到り、戻り温水と混合されて約60℃の温水となり、供給管40へ供給される。なお、このモードでは、第1弁14を開いて給水管9からの原水の一部を下端口2Aから貯湯槽2へ供給し、上端口2Cから流出した高温水を中間槽6からの高温水と混合して補助的に用いてもよい(点線矢印で示す)。この運転モードによれば、主として中間槽6内の高温水および中温水を用い、給湯設備10での温水消費をまかなうことができる。
【0045】
(4A)循環/ヒートポンプ熱源モード
給湯設備10での温水の消費がなく、貯湯槽2内の熱水量は十分にあり補う必要がなく、中間槽6内の高温水は補充する必要がある場合の運転モードである。
図8に示すように、給水管9からの原水の供給を停止し、ヒートポンプ4を稼働し、第1弁14を閉じ、第2弁56を閉じ、第3弁12を開き、第4弁36は閉じる。これにより、給水管9から供給された原水はヒートポンプ4で約90℃に加熱され、熱水管32を通って、高温水の一部が配管34を通じて小流量で上端口6Cから中間槽6へ補充される。中間槽6の下端口6Aからは十分に冷たい低温水が流出してヒートポンプ4へ供給される。熱水管32を流れる高温水の残部は混合弁38へ供給され、供給管40からの約55℃の戻り温水と混合されて約60℃の温水となり、供給管40を循環する。戻り温水の一部が中間口6Bを経て中間槽6内に供給される。この運転モードによれば、貯湯槽2内の高温水を消費せず、貯湯槽2内の温度成層を静置したまま、中間槽6の上端口6Cから高温水を補充して、供給管40に温水を循環させることができる。
【0046】
(4B)給湯/ヒートポンプ+貯湯槽の高温水熱源モード
給湯設備10で温水が消費されており、貯湯槽2内の高温水は十分にあり、中間槽6内の中温水が多い場合の運転モードである。
図9に示すように、給水管9から原水を供給し、ヒートポンプ4を稼働し、第1弁14を開き、第2弁56を閉じ、第3弁12を開き、第4弁36を閉じる。これにより、給水管9から供給された例えば16℃の原水が、中間槽6の下端口6Aおよび貯湯槽2の下端口2Aへ供給され、残部がヒートポンプ4で加熱される。ヒートポンプ4で加熱された高温水と、貯湯槽2の上端口2Cから流出した高温水とが混合され、その一部が配管34を通じて小流量で上端口6Cから中間槽6へ補充される。中間槽6の中間口6Bから中温水が流出し、供給管40の戻り温水と混合されて、混合弁38へ到り、熱水管32を流れてきた高温水と混合弁38で混合されて、約60℃の温水として供給管40へ供給される。この運転モードによれば、貯湯槽2の高温水を消費しつつ、中間槽6へ高温水を補充し、中間槽6内の過剰な中温水を消費することができる。ヒートポンプ4には、給水管9からの冷たい原水が供給されるので、ヒートポンプ4の成績係数が高く、高効率運転を維持できる。
【0047】
(5A)循環/中間槽の高温水熱源モード
給湯設備10での温水の消費がなく、貯湯槽2内の高温水を補う必要がなく、中間槽6内には高温水が十分にある場合の運転モードである。
図10に示すように、給水管9からの原水の供給を停止し、ヒートポンプ4を休止させ、第1弁14を閉じ、第2弁56を閉じ、第3弁12を閉じ、第4弁36を開ける。これにより、中間槽6の上端口6Cから約90℃の高温水が流出し、第4弁36および配管34を通じて混合弁38へ到り、約55℃の戻り温水の残部と混合され、約60℃の温水となって供給管40を循環する。消費されないまま約55℃に低下した戻り温水の一部が中間口6Bから中間槽6へ流入して、中間槽6の上端口6Cから約90℃の高温水を押し出す。この運転モードによれば、貯湯槽2内の温度成層に影響を与えず、中間槽6内の高温水のみを用いて、供給管40に温水を循環させることができる。
【0048】
(5B)給湯/貯湯槽の高温水と中温水熱源モード
給湯設備10で温水が消費されており、貯湯槽2内に十分な高温水があり、中間槽6内の中温水が多い場合の運転モードである。
図11に示すように、給水管9から原水を供給し、ヒートポンプ4を停止し、第1弁14を開き、第2弁56を開き、第3弁12を閉じ、第4弁36を開く。これにより、給水管9から供給された例えば16℃の原水が下端口2Aから貯湯槽2へ供給され、中間口2Bから中温水が押し出されるとともに、上端口2Cから高温水が押し出される。上端口2Cからの高温水は熱水管32を流れ、その一部が第4弁36および配管34を通じて上端口6Cから中間槽6へ供給される。熱水管32の高温水の残部は混合弁38へ到る。一方、中間口2Bから流出した中温水は第2弁56を経て、供給管40の戻り温水と混合される。中間槽6の中間口6Bから流出した中温水も供給管40の戻り温水と混合され、混合弁38で高温水と混合されて約60℃の温水となり、供給管40へ供給される。この運転モードによれば、貯湯槽2内の高温水および中温水を主に使用して、給湯設備10での温水消費をまかなうとともに、中間槽6へ高温水を補充することができる。
【0049】
(6A)循環/中間槽の高温水熱源モード
給湯設備10での温水の消費がなく、貯湯槽2内の高温水を補う必要があり、中間槽6内には高温水が十分にある場合の運転モードである。
図12に示すように、給水管9からの原水の供給を停止し、ヒートポンプ4を稼働させ、第1弁14を開き、第2弁56を閉じ、第3弁12を閉じ、第4弁36を開ける。これにより、貯湯槽2内の低温水を下端口2Aから第1弁14を通じて排出し、ヒートポンプ4へ供給して約90℃の高温水としてそのほぼ全量を上端口2Cから貯湯槽2内に補充する。一方、中間槽6内の高温水を上端口6Cから第4弁36および配管34を通じて熱水管32へ放出し、混合弁38で戻り温水と混合して約60℃の温水とし、供給管40へ供給する。供給管40の戻り温水の一部は中間口6Bから中間槽6へ注入され、残部は混合弁38へ到る。この運転モードによれば、貯湯槽2内へ高温水を急速に注入しながら、中間槽6内の高温水を用いて供給管40に温水を循環させることができる。
【0050】
(6B)給湯/ヒートポンプ+貯湯槽の高温水+中間槽の中温水熱源モード
給湯設備10で温水が消費されており、ヒートポンプ4の高温水、貯湯槽2内の高温水および中間槽6内の中温水を使用する場合の運転モードである。
図13に示すように、給水管9から原水を供給し、ヒートポンプ4を稼働し、第1弁14を開き、第2弁56を閉じ、第3弁12を閉じ、第4弁36を開く。これにより、給水管9から供給された例えば16℃の原水の一部が、貯湯槽2の下端口2Aへ供給され、貯湯槽2内の高温水が上端口2Cから熱水管32へ供給される。原水の残部は、ヒートポンプ4へ供給され、約90℃の高温水となって貯湯槽2からの高温水と合流し、その一部が第4弁36および配管34を通じて中間槽6へ補充される。中間槽6の中間口6Bから中温水が流出し、供給管40の戻り温水と合流して混合弁38へ到り、熱水管32からの高温水と混合されて約60℃の温水となり、供給管40へ供給される。この運転モードによれば、貯湯槽2の高温水を消費しつつ、中間槽6へ高温水を補充し、中間槽6内の過剰な中温水を消費することができる。ヒートポンプ4には、給水管9からの冷たい原水が供給されるので、ヒートポンプ4の成績係数が高く、高効率運転を維持できる。
【0051】
[第1実施形態の効果]
以上説明したように、第1実施形態の給湯システム1によれば、温度センサー3A~3Cにより貯湯槽2の内部の中温水が増加したことを検出した場合、第2弁56を開いて貯湯槽2の中温水を供給管40内の戻り温水と混合し、さらに混合弁38で高温水と混合して約60℃の循環用温水をつくることができるため、貯湯槽2内の中温水を有効に消費して貯湯槽2内の中温水域の拡大を防ぎ、ヒートポンプ4へ供給される水の温度の上昇を抑制し、ヒートポンプ4での成績係数の低下を防ぐことができる。したがって、中温水を再加熱する動力を減らすことが可能であるとともに、温水域中で繁殖しやすいレジオネラ菌の増殖も抑制することが可能である。
【0052】
また、供給管40からの戻り温水の少なくとも一部を、中間槽6に戻して蓄え、必要に応じて、中間槽6から中温水を約60℃の循環用温水をつくることに使用できるため、貯湯槽2への戻り温水の流入量を減らすことができる。よって、貯湯槽2中に中温水が過剰に滞留することをこの点からも防止でき、ヒートポンプ4へ供給される水の温度上昇を抑制し、ヒートポンプ4で再加熱する動力を減らすことが可能であるとともに、中温水域中で繁殖しやすいレジオネラ菌の増殖も抑制することが可能である。
【0053】
[第2実施形態]
次に、
図14は、本発明に係る給湯システムの第2実施形態を示している。この第2実施形態では、第1実施形態と中間槽6の使用方法が異なり、供給管40の戻り温水の全量を中間槽6に注入し、中間槽6内で戻り温水を加熱して供給管40に戻すようにしている。以下、第1実施形態と異なる点のみを説明し、第1実施形態と同様の部分の説明は省略して第1実施形態の説明を援用する。
【0054】
この第2実施形態では、混合弁38の第2ポートが冷水管57を介して、給水管9に接続され、給水管9からの原水が混合弁38の第2ポートへ供給される。混合弁38の第3ポートには、供給管40の上流端が接続され、供給管40は給湯設備10、およびポンプ50を経て、供給管40の下流端が中間槽6の下端口6Aに接続されている。これにより、供給管40からの戻り温水の全量が下端口6Aから中間槽6へ注入される。中間槽6の上端口6Cは、供給管40の上流端に接続され、中間槽6内の温水が供給管40の上流端に戻されるようになっている。
【0055】
中間槽6には、中間口6Bの代わりに、下部口6Dおよび上部口6Eが形成され、中間槽6の下部口6Dから抜き取られた温水がポンプ53で加圧され、加熱手段55を通って加熱された上、上部口6Eから中間槽6の上部内へ戻される。加熱手段55は、ヒートポンプ4とは別のヒートポンプであってもよいし、通電により発熱する電熱装置であってもよい。加熱手段55は、制御装置8に接続されており、中間槽6の温度センサー7A~7Cからの信号に基づいて、例えば、中間槽6の下部に溜まった約55℃の戻り温水を約60℃に加熱するものでもよい。
【0056】
あるいは、供給温度センサー42を、中間槽6からの温水が供給される位置よりも下流側に設けて供給温度センサー42Aとし、供給温度センサー42Aの出力信号に基づいて温度制御装置44により混合弁38を制御してもよい。そうすれば、給湯設備10による消費がある場合には、中間槽6から供給管40に供給される水温が何度であっても、供給管40に供給される水温は約60℃に保つことができる。
【0057】
このような第2実施形態によっても、前記第1実施形態と同様に、多種の運転モードを実現することが可能である。具体的には、(1)ヒートポンプ4を稼働する場合と稼働しない場合の選択、(2)貯湯槽2の上端口2Cから高温水を放出する/放出しない/高温水を補充する場合の選択、(3)貯湯槽2の中間口2Bから中温水を放出する/放出しない/中温水を補充する場合の選択、の組み合わせが可能である。
【0058】
第2実施形態の給湯システム1によれば、第1実施形態と同様に、温度センサー3A~3Cにより貯湯槽2の内部の中温水が増加したことを検出した場合、第2弁56を開いて貯湯槽2の中温水を給水管9からの原水と混合したうえで、混合弁38に供給し、熱水管32からの高温水と混合して約60℃の循環用温水をつくることができるため、貯湯槽2内の中温水を有効に消費して貯湯槽2内の中温水域の拡大を防ぎ、ヒートポンプ4へ供給される水の温度の上昇を抑制し、ヒートポンプ4での成績係数の低下を防ぐことができる。
【0059】
また、供給管40からの戻り温水を中間槽6に戻して蓄え、加熱手段55により加熱して循環用温水をつくることに使用できるため、貯湯槽2への戻り温水の流入がなくなる。よって、貯湯槽2中に中温水が過剰に滞留することを防止でき、ヒートポンプ4へ供給される水の温度上昇を抑制し、ヒートポンプ4で再加熱する動力を減らすことが可能である。したがって、中温水を再加熱する動力を減らすことが可能であるとともに、温水域中で繁殖しやすいレジオネラ菌の増殖も抑制することが可能である。
【0060】
[第3実施形態]
次に、
図15は、本発明に係る給湯システムの第3実施形態を示している。この第3実施形態では、第1実施形態で用いた単一の貯湯槽2の代わりに、直列に接続された低温貯湯槽60、中温貯湯槽62、および高温貯湯槽64を有することを特徴としており、その他の構成は第1実施形態と同じ機能を果たすため同一の符号を付して説明を省略して第1実施形態の説明を援用する。
【0061】
低温貯湯槽60、中温貯湯槽62および高温貯湯槽64は、互いにほぼ同形状をなし、鉛直方向に延びる円筒形の側板部と、この側板部の上端および下端をドーム状に塞ぐ天板部および底板部を有し、気密性と断熱性を有している。ただし、貯湯槽60~64の形状は図示のものに限らず、互いに容量や寸法が異なっていてもよいし、角柱状であってもよいし、内部に水平な層をなす温度成層を形成できれば傾いていてもよいし、3本が直線状に並べて配置されていてもよい。また、低温貯湯槽60、中温貯湯槽62および高温貯湯槽64の他にサブタンクなどを設けてもよい。
【0062】
低温貯湯槽60の下端には下端口60Aが形成され、第1実施形態の貯湯槽2の下端口2Aと同様に給水管9に接続されている。低温貯湯槽60の上端口60Bは低位中間管66により中温貯湯槽62の下端口62Aに接続されている。中温貯湯槽62の上端口62Bは、上位中間管68により高温貯湯槽64の下端口64Aに接続されており、上位中間管68は、第1実施形態の貯湯槽2の中間口2Bと同様に、第2弁56を介して供給管40の下流側に接続されている。
【0063】
低温貯湯槽60には低温部温度センサー70が設けられている。中温貯湯槽62には下部、中央部、および上部のそれぞれに下部温度センサー72、中央部温度センサー74、上部温度センサー76が設けられている。高温貯湯槽64には高温部温度センサー78が設けられている。これらの温度センサー70~78は、制御装置8に接続されており、制御装置8はこれらからの信号に基づいて、第1実施形態と同様の制御を行う。
【0064】
水量によって温度成層の位置は変化するが、低温貯湯槽60の内部は主として低温領域Lに相当し、中温貯湯槽62の内部は主として中温領域Mに相当し、高温貯湯槽64の内部は主として高温領域Hに相当し、第1実施形態のそれらと同様の作用を果たす。
この第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、(1A)~(6B)の運転モードを実施することができ、第1実施形態と同様の効果を奏する。
また、第3実施形態によれば、貯湯槽が3本に分かれているから、貯湯槽の配置の自由度が高く、給湯システム全体の形状の自由度が高く、コンパクト化が図れる利点を有する。
【0065】
[第4実施形態]
次に、
図16は、本発明に係る給湯システムの第4実施形態を示している。この第4実施形態では、貯湯槽2については第3実施形態の特徴を有し、中間槽6については第2実施形態の特徴を有するため、第1~第3実施形態の説明を援用して説明を省略する。
この第4実施形態によっても、第2実施形態と同様の多種の運転モードを実現でき、第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0066】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されることなく、特許請求の範囲内において構成の削除、既知の構成の付加、置換など自由に行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係る給湯システムによれば、供給管を流れる温水を常に循環させて給湯温度を安定化しつつ、ヒートポンプ性能が低い小温度差でのヒートポンプの運転をなるべく減らすことができ、ヒートポンプの成績係数を高めることができるから、産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 給湯システム 2 貯湯槽
2A 下端口 2B 中間口
2C 上端口 3A 下端温度センサー
3B 中間温度センサー 3C 上端温度センサー
4 ヒートポンプ 4A 入口
4B 出口
6 中間槽 6A 下端口
6B 中間口 6C 上端口
6D 下部口 6E 上部口
7A 下端温度センサー 7B 中間温度センサー
7C 上端温度センサー 8 制御装置
9 給水管 10 給湯設備
12 第3弁 14 第1弁
16 配管 32 熱水管
34 配管 36 第4弁
38 混合弁 40 供給管
42 供給温度センサー 44 温度制御装置
46 アクチュエータ 50、53 ポンプ
55 加熱手段 56 第2弁
60 低温貯湯槽 60A 下端口
60B 上端口 62 中温貯湯槽
62A 下端口 62B 上端口
64A 下端口 64B 上端口
64 高温貯湯槽 66 低位中間管
68 上位中間管 70 低温部温度センサー
72 下部温度センサー 74 中央部温度センサー
76 上部温度センサー 78 高温部温度センサー
L 低温領域 M 中温領域
H 高温領域