(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186399
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】皮革様シート
(51)【国際特許分類】
D06N 3/12 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
D06N3/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094598
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100133798
【弁理士】
【氏名又は名称】江川 勝
(72)【発明者】
【氏名】割田 真人
【テーマコード(参考)】
4F055
【Fターム(参考)】
4F055AA01
4F055AA03
4F055BA12
4F055CA18
4F055DA08
4F055EA01
4F055EA04
4F055EA12
4F055EA14
4F055EA21
4F055EA24
4F055EA30
4F055FA15
4F055GA03
4F055HA11
(57)【要約】
【課題】日射によって熱を帯びにくく、黒度の高い黒色系の濃色の着色樹脂層を備える皮革様シートを提供する。
【解決手段】繊維基材と繊維基材に積層された着色樹脂層とを備える皮革様シートであって、着色樹脂層は、ポリウレタンと、平均分散粒子径が1~10μmである、3~20g/m
2の赤外線反射黒色顔料とを含有し、赤外線反射黒色顔料は、分光反射率が、波長650~780nmの範囲において平均8%以下、780~2500nmの範囲において平均40%以上である、皮革様シートを用いる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材と繊維基材に積層された着色樹脂層とを備える皮革様シートであって、
前記着色樹脂層は、ポリウレタンと、平均分散粒子径が1~10μmである、3~20g/m2の赤外線反射黒色顔料とを含有し、
前記赤外線反射黒色顔料は、分光反射率が、波長650~780nmの範囲において平均8%以下、780~2500nmの範囲において平均40%以上である、ことを特徴とする皮革様シート。
【請求項2】
L*a*b*表色系において、L*値≦30、a*値≦1の表面を有する請求項1に記載の皮革様シート。
【請求項3】
波長780~2500nmの範囲における日射反射率が平均30%以上である表面を有する請求項1または2に記載の皮革様シート。
【請求項4】
前記着色樹脂層は、前記赤外線反射黒色顔料を除く顔料を含まない、または前記赤外線反射黒色顔料を除く顔料を0.3g/m2以下の範囲で含む、請求項1~3の何れか1項に記載の皮革様シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃色の着色樹脂層を備える皮革様シートに関する。
【背景技術】
【0002】
鞄や衣料や靴等の素材として、繊維基材と繊維基材に積層された銀付調の樹脂層とを備える皮革様シートが用いられている。銀付調の樹脂層は様々な色に着色されるが、黒色系の濃色はとくに広く採用されている。
【0003】
ところで、近年の地球温暖化による気温上昇により、夏場における暑熱対策が強く求められている。一般的に黒色系の濃色は近赤外線等の赤外線を吸収しやすいために、日射によって熱を帯びやすい。そのために、濃色の樹脂層を備える皮革様シートにおいても、日射によって熱を帯びにくくすることが望まれる。
【0004】
このような技術は、いくつか提案されている。例えば、下記特許文献1は、基材層と、基材層の上に設けられた樹脂層と、樹脂層の上に設けられた最表層とを備え、樹脂層が吸湿性微粒子及び赤外線反射顔料を含有し、最表層は0.2g/m2以上、1g/m2以下の吸湿性微粒子を含有する合成皮革を開示する。そして、このような合成皮革は、樹脂層に赤外線反射顔料を含有しているので、黒色ないし濃色であっても太陽光の下で熱くなりにくく、また、樹脂層の上に最表層を備えていることにより耐退色性にも優れることを開示する。また、赤外線反射顔料は、波長780~1800nmの領域における平均反射率が20%以上であり、且つ、400~760nmの領域における平均吸収率が70%以上であることを開示する。
【0005】
また、例えば、下記特許文献2は、シート基材上に樹脂層を有し、樹脂層が780~1800nmの波長領域における平均吸収率が30%以下である黒色顔料と、380~780nmの波長領域における平均透過率が30%以上であり、780~1800nmの波長領域における平均反射率が20%以上である赤外線反射顔料とを含有する暗色シート材を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-168907号公報
【特許文献2】特開2013-75366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の技術により得られるシート材においては、赤外線を反射しやすい赤外線反射黒色顔料を用いることにより、表面を着色する樹脂層を黒色系の濃色に着色することができるとともに、日射によって熱を帯びにくくすることもできる。しかしながら、従来の赤外線反射黒色顔料を用いて樹脂層を黒色系の濃色に着色したとき、L*a*b*表色系における赤みの指標となるa*値が大きい発色になり、赤みを帯びた黒度の低い濃色にしか着色できなかった。また、黒度の高いカーボンブラック等の黒色顔料を赤外線反射黒色顔料と併用した樹脂層によれば、黒度の高い黒色系の濃色に着色することもできるが、この場合、カーボンブラックが赤外線を吸収するために、赤外線反射黒色顔料を配合することによる熱を帯びにくくする効果を低減させるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決すること、すなわち、日射によって熱を帯びにくく、赤みを帯びにくい黒度の高い黒色系の濃色の着色樹脂層を備える皮革様シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
カーボンブラック等の一般的な黒色顔料は、平均分散粒子径が小さいことにより比表面積が大きくなり、可視光の吸収効率が高くなって黒度の高い黒色を発色する。そのために、赤外線反射黒色顔料においても、黒度を向上させるためには平均分散粒子径を小さくすればするほど黒度が向上すると予想される。しかしながら、発明者らは、赤外線反射黒色顔料において平均分散粒子径を小さくすれば小さくするほど、赤みを帯びた濃色を発色することに気づいた。発明者らは、赤外線反射黒色顔料においては、樹脂層中の平均分散粒子径が小さすぎて比表面積が大きくなったとき、赤外線反射黒色顔料が近赤外線に隣接する650~800nmの赤色光や遠赤色光もわずかに反射してしまうために、赤みを帯びて黒度が低下した濃色を発色すると考えた。このような知見に基づいて、本発明に想到するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の一局面は、繊維基材と繊維基材に積層された着色樹脂層とを備える皮革様シートであって、着色樹脂層は、ポリウレタンと、平均分散粒子径が1~10μmである、3~20g/m2の赤外線反射黒色顔料とを含有し、赤外線反射黒色顔料は、分光反射率が、波長650~780nmの範囲において平均8%以下、780~2500nmの範囲において平均40%以上である、皮革様シートである。このような皮革様シートによれば、日射によって熱を帯びにくく、L*a*b*表色系におけるa*値の低い、赤みを帯びにくい濃色の着色樹脂層を備える皮革様シートを提供することができる。赤外線反射黒色顔料は赤外線を反射するが、赤外線の波長の範囲に隣接する波長650~780nm付近の赤色の可視光や遠赤色光もわずかに反射する。本発明においては、特定の分光反射率を有する赤外線反射黒色顔料を用い、その平均分散粒子径を1~10μmに制御することにより、赤外線反射黒色顔料が赤外線を反射させる際に、波長650~780nm付近の赤色の可視光や遠赤色光の反射を低減させることにより、日射に対して熱を帯びにくく、且つ、黒度の高い黒色系の濃色の着色樹脂層を備える皮革様シートが得られる。すなわち、その赤外線反射黒色顔料を平均分散粒子径1~10μmに分散させることによれば、比表面積が適度であることにより、可視光や遠赤色光を充分に吸収するとともに、分散粒子径が大きすぎることによる乱反射を抑制できる。
【0011】
また、皮革様シートは、L*a*b*表色系において、明度L*値≦30、a*値≦1の表面を有することが、L*a*b*表色系におけるa*値の低い、赤みを帯びにくい黒色系等の濃色を発色する点から好ましい。
【0012】
また、皮革様シートは、波長780~2500nmの範囲における日射反射率が平均30%以上であることが、日射時の温度上昇を充分に抑制することができる点から好ましい。
【0013】
また、着色樹脂層は、赤外線反射黒色顔料以外の顔料を含まない、または赤外線反射黒色顔料を除く顔料を0.3g/m2以下の範囲で含むことが、赤外線反射黒色顔料による赤外線の反射を著しく阻害しない点から好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、日射によって熱を帯びにくい、黒度の高い濃色の着色樹脂層を備える皮革様シートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施例で用いた皮革様シートの表面へ白色赤外線ヒートランプを照射したときの表面温度の測定方法を説明するための説明図である。
【
図2】
図2は、実施例で用いた赤外線反射黒色顔料の分光反射率を測定したスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る皮革様シートの一実施形態について、詳しく説明する。本実施形態の皮革様シートは、繊維基材と繊維基材に積層された着色樹脂層とを備える皮革様シートである。そして、着色樹脂層は、ポリウレタンと、3~20g/m2の赤外線反射黒色顔料とを含有する。また、着色樹脂層に分散する赤外線反射黒色顔料の平均分散粒子径が1~10μmである。そして、赤外線反射黒色顔料は、分光反射率が、波長650~780nmの範囲において平均8%以下、780~2500nmの範囲において平均40%以上である。
【0017】
繊維基材としては、不織布,織物,編物またはそれらにポリウレタン等の高分子弾性体を含浸付与された基材等、従来知られた、人工皮革の製造に用いられている人工皮革基材や、合成皮革の製造に用いられている合成皮革基材がとくに限定なく用いられる。
【0018】
繊維基材を形成する繊維の種類は特に限定されず、具体的には、例えば、ナイロン系繊維,ポリエステル系繊維,ポリオレフィン系繊維,ポリウレタン系繊維等が挙げられる。
【0019】
また、繊維基材を形成する繊維の繊度も特に限定されず、例えば、1dtex超のようなレギュラー繊維であっても、1dtex未満の極細繊維であってもよい。また、繊維の形態も特に限定されず、中実繊維であっても、中空繊維やレンコン状繊維のような空隙を有する繊維であってもよい。
【0020】
また、繊維基材の厚さも特に限定されず、例えば、0.3~3mm、さらには0.5~1.5mm程度のものが挙げられる。
【0021】
本実施形態の皮革様シートは、繊維基材に直接または間接的に積層された着色樹脂層を備える。なお、間接的に積層とは、本実施形態における着色樹脂層が、接着層等の他の樹脂層を介して接着されていることを意味する。
【0022】
着色樹脂層は、ポリウレタンと、3~20g/m2の赤外線反射黒色顔料とを含有する。また、着色樹脂層に分散する赤外線反射黒色顔料の平均分散粒子径が1~10μmである。そして、赤外線反射黒色顔料は、後述するような、分光反射率が、波長650~780nmの範囲において平均8%以下、780~2500nmの範囲において平均40%以上である赤外線反射黒色顔料である。
【0023】
赤外線反射黒色顔料とは、通常の顔料に比べて赤外領域の反射が高い顔料のうち、黒色の顔料である。本実施形態の赤外線反射黒色顔料は、赤外線反射黒色顔料の粉体とポリウレタンとを50:50で含む厚さ6mmのフィルムを用い、積分球を備えた分光分析装置で測定された、波長領域400~2500nmの範囲で測定して得られる分光反射率のスペクトルのうち、波長650~780nmの範囲において平均8%以下、780~2500nmの範囲において平均40%以上である、黒色顔料である。上述のような測定方法によれば、フィルム中の赤外線反射黒色顔料の濃度が充分に高いために、分散粒子径に依存しない、赤外線反射黒色顔料の本来の分光反射率のスペクトルを測定することができる。
【0024】
本実施形態の赤外線反射黒色顔料は、波長650~780nmの範囲において平均8%以下、好ましくは6%以下であり、780~2500nmの範囲において平均40%以上、好ましくは50%以上である、分光反射率を有する。赤外線反射黒色顔料が、650~780nmの範囲において平均8%以下である分光反射率を有することにより、赤みを帯びにくい濃色の着色樹脂層が形成される。また、赤外線反射黒色顔料が、780~2500nmの範囲において平均40%以上である分光反射率を有することにより、日射に対して熱を帯びにくい着色樹脂層が形成される。
【0025】
このような赤外線反射黒色顔料は、例えば、Ca-Ti-Mn系複合酸化物,Cu-Bi系複合酸化物,Fe-Cr系複合酸化物等が挙げられる。Ca-Ti-Mn系複合酸化物の赤外線反射黒色顔料の具体例としては、例えば、石原産業(株)製のタイペークブラックSG-101が挙げられる。また、Cu-Bi系複合酸化物の赤外線反射黒色顔料の具体例としては、例えば、大日精化工業(株)製、ダイピロキサイドブラック#9581が挙げられる。また、Fe-Cr系複合酸化物の赤外線反射黒色顔料の具体例としては、例えば、大日精化工業(株)製、ダイピロキサイドブラック#9596が挙げられる。これらの中では、Ca-Ti-Mn系複合酸化物の赤外線反射黒色顔料及びCu-Bi系複合酸化物の赤外線反射黒色顔料が、環境負荷を与えるクロムを含有しない点から好ましい。
【0026】
着色樹脂層は、ポリウレタンを主体とする樹脂に上述したような赤外線反射黒色顔料が3~20g/m2分散されており、赤外線反射黒色顔料の平均分散粒子径が1~10μmである。なお、ポリウレタンを主体とするとは、樹脂中の50質量%以上、さらには、70質量%以上、とくには90質量%以上、ことには100質量%がポリウレタンであることを意味する。ポリウレタン以外の樹脂は、特に限定されない。
【0027】
着色樹脂層に含まれるポリウレタンは、高分子ポリオール,有機ポリイソシアネート,及び鎖伸長剤を含む、ウレタン原料を反応させることにより得られる。ポリウレタンは、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF),メチルエチルケトン(MEK),アセトン,トルエンなどを溶媒として含む有機溶媒溶液、エマルジョン等の水性分散液、または溶融体として調製される。
【0028】
高分子ポリオールの具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,ポリテトラメチレングリコール,ポリメチルテトラメチレングリコール等のポリエーテル系ポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートジオール,ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンカーボネート)ジオール,ポリペンタメチレンカーボネートジオール,ポリテトラメチレンカーボネートジオール等のポリカーボネート系ポリオール;ポリエチレンアジペートジオール,ポリブチレンアジペートジオール,ポリプロピレンアジペートジオール,ポリブチレンセバケートジオール,ポリヘキサメチレンアジペートジオール,ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンアジペート)ジオール、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンセバケート)ジオール,ポリカプロラクトンジオールなどのポリエステル系ポリオール,またはそれらの共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
また、有機ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート,2,6-トリレンジイソシアネート,4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート,キシリレンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネートを含む難黄変型ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネート,ノルボルネンジイソシアネート,4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族系あるいは脂環族系ジイソシアネート等の無黄変型ジイソシアネート、等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、必要に応じて、3官能イソシアネートや4官能イソシアネートなどの多官能イソシアネートを組み合わせて用いてもよい。
【0030】
また、鎖伸長剤の具体例としては、例えば、ヒドラジン,エチレンジアミン,プロピレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン,ノナメチレンジアミン,キシリレンジアミン,イソホロンジアミン,ピペラジンおよびその誘導体,アジピン酸ジヒドラジド,イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;ジエチレントリアミンなどのトリアミン類;トリエチレンテトラミンなどのテトラミン類;エチレングリコール,プロピレングリコール,1,4-ブタンジオール,1,6-ヘキサンジオール,1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン,1,4-シクロヘキサンジオールなどのジオール類;トリメチロールプロパンなどのトリオール類;ペンタエリスリトールなどのペンタオール類;アミノエチルアルコール,アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、鎖伸長反応時に、鎖伸長剤とともに、エチルアミン,プロピルアミン,ブチルアミンなどのモノアミン類;4-アミノブタン酸,6-アミノヘキサン酸などのカルボキシル基含有モノアミン化合物;メタノール,エタノール,プロパノール,ブタノールなどのモノオール類を併用してもよい。
【0031】
着色樹脂層は、例えば、ポリウレタンの有機溶媒溶液を用いる場合、赤外線反射黒色顔料をポリウレタンの有機溶媒溶液中に分散させた赤外線反射黒色顔料分散液を調製し、離型紙上に所定の厚みで塗布した後、乾燥することにより、着色樹脂層を形成するためのポリウレタンフィルムを形成することができる。
【0032】
このような赤外線反射黒色顔料分散液は、例えば、ポリウレタンの有機溶媒溶液と赤外線反射黒色顔料とを混合し、ビーズミルやボールミル等の分散機で後述するような赤外線反射黒色顔料の分散状態が得られるように調整される。例えば、ボールミルによる分散処理の場合、その条件は特に限定されず、ポリウレタン及び赤外線反射黒色顔料の濃度や、ガラスビーズ等の分散用メディアの直径や種類によって適宜調製される。また、分散処理時間としては、通常、10~30分間程度で所定の分散状態になるまで分散処理をすることが好ましい。また、赤外線反射黒色顔料の分散状態を調製した後、必要に応じて、さらに赤外線反射黒色顔料の濃度を調整するために、ポリウレタンの有機溶媒溶液を混合してもよい。
【0033】
本実施形態の着色樹脂層は、同質の組成を有する層であっても、ポリウレタンや赤外線反射黒色顔料の種類や配合割合の異なる組成を有する、又は、同質の組成を有する、表皮層及び中間層等からなる複数の着色樹脂層が積層されたものであってもよい。
【0034】
本実施形態の着色樹脂層は、3~20g/m2、好ましくは、5~15g/m2の赤外線反射黒色顔料を含有する。着色樹脂層中の赤外線反射黒色顔料の含有量が3g/m2未満である場合には、赤外線に対する反射率が低下することにより日射による温度の上昇を充分に抑制できなくなる。また、着色樹脂層中の赤外線反射黒色顔料の含有量が20g/m2を超える場合には耐摩耗性が低下する。
【0035】
着色樹脂層は、赤外線反射黒色顔料を3~20g/m2含有する限り、その厚さは特に限定されないが、10~80μm、さらには20~70μmであることが好ましい。着色樹脂層が薄すぎる場合には赤外線反射黒色顔料を3g/m2以上含有させにくくなる傾向がある。
【0036】
また、着色樹脂層の赤外線反射黒色顔料の含有割合は、着色樹脂層が赤外線反射黒色顔料を3~20g/m2含有する限り特に限定されないが、5~40質量%、さらには、10~30質量%であることが好ましい。赤外線反射黒色顔料の含有割合が低すぎる場合には、赤外線反射黒色顔料を3g/m2以上含有させにくくなり、高すぎる場合には、耐摩耗性や耐屈曲性等の機械的特性が低下する傾向がある。
【0037】
そして、本実施形態においては、赤外線反射黒色顔料が、平均分散粒子径1~10μm、好ましくは1.5~8μmになるように着色樹脂層中に分散されている。赤外線反射黒色顔料の平均分散粒子径がこのような範囲であることにより、赤外線反射黒色顔料粒子の表面における光の乱反射が抑制されることにより、黒度の高い黒色系の濃色の着色樹脂層が形成されやすくなる。
【0038】
着色樹脂層中に分散された赤外線反射黒色顔料の平均分散粒子径が1μm未満である場合、赤外線反射黒色顔料粒子の表面で光が乱反射しやすくなることにより、650~780nmの範囲の赤色光や遠赤色光の反射が大きくなり、赤みが強くなることにより黒度の低い着色樹脂層が形成されやすくなる。また、赤外線反射黒色顔料の平均分散粒子径が10μmを超える場合には、赤外線反射黒色顔料の比表面積が小さくなりすぎて可視光を充分に吸収することができなくなり、黒度の低い着色樹脂層が形成されやすくなる。また、着色樹脂層のフィルムの機械的特性が低下して耐摩耗性が低下する。
【0039】
なお、着色樹脂層は、上述した赤外線反射黒色顔料以外の顔料を含まない、または、顔料の種類にもよるが、赤外線反射黒色顔料以外の顔料の含有量が0.3g/m2以下であることが好ましい。着色樹脂層が、赤外線反射黒色顔料以外の顔料を0.3g/m2を超えて含む場合には、赤外線反射黒色顔料以外の顔料が赤外線を優先的に吸収することがあり、赤外線に対する反射率が低くなりやすく、日射による温度の上昇を抑えにくくなる。
【0040】
なお、着色樹脂層が赤外線反射黒色顔料以外の顔料を含む場合、その顔料としては、波長780~2500nmの範囲の近赤外線の吸収効率が高すぎない限り特に限定されないが、具体的には、例えば、アンスラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレンブラック等のペリレン系顔料等が挙げられる。
【0041】
本実施形態の皮革様シートは、繊維基材と繊維基材に積層された着色樹脂層とを備える皮革様シートである。また、接着層等の着色樹脂層以外の層を含んでもよい。また、本発明の効果を損なわない限り、着色樹脂層の表面に、さらに無着色の樹脂層である厚さ1~10μm程度のクリア層を必要に応じて含んでもよい。
【0042】
繊維基材の表面に、着色樹脂層を形成するためには、例えば、次のような乾式造面法を用いた方法が挙げられる。
【0043】
離型紙上に形成された着色樹脂層に接着剤を塗布し、完全または不完全に溶媒を除去して乾燥させる。そして、離型紙上に形成された着色樹脂層に積層された接着剤を繊維基材の表面に貼り合せてプレスした後、接着剤を硬化させることにより接着層を介して繊維基材と着色樹脂層とを接着する。そして、着色樹脂層の表面から離型紙を剥離することにより、繊維基材と繊維基材に積層された着色樹脂層を備える皮革様シートが得られる。
【0044】
このようにして得られる本実施形態の皮革様シートとしては、上述のような赤外線反射黒色顔料を含有する着色樹脂層により、L*a*b*表色系において、明度L*値≦30、a*値≦1の表面を有することが好ましい。
【0045】
なお、L*a*b*表色系において、明度L*値≦30、a*値≦1の表面を有するとは、皮革様シートの着色樹脂層が形成された側の面を分光光度計を用いて測色して得られるL*a*b*表色系の座標値から算出される明度がL*値≦30であり、クロマティクネス指数であるa*値がa*値≦1であることを意味する。明度L*値は、L*値≦30、さらには、L*値≦25であることが濃色度が高い点から好ましい。また、クロマティクネス指数a*値は、a*値≦1、さらにはa*値≦0.7であることが赤みの低い黒度の高い黒色系の濃色になる点から好ましい。
【0046】
本実施形態の皮革様シートは、上述のような赤外線反射黒色顔料を含有する着色樹脂層を備えることにより、日射によって熱を帯びにくく、黒度の高い黒色系等の濃色の着色樹脂層を備える皮革様シートが得られる。
【0047】
以上説明した、本実施形態の皮革様シートは、鞄や衣料や靴等の表皮材として用いられている、天然皮革に似せた銀付調の皮革様シートとして好ましく用いられる。とくには、例えば、身体を覆うような、鞄や、衣料、靴の素材として用いた場合に、それらが高温になることを抑制することができる。
【実施例0048】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0049】
はじめに、本実施例で用いた評価方法についてまとめて説明する。
(黒色顔料の平均分散粒子径)
走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製 JSM-IT500)を用い、皮革様シートから切り出した試験片の着色樹脂層の厚さ方向の断面の2000倍のSEM写真を撮影した。そして任意の2500μm2の範囲に観察される全ての黒色顔料のn個の粒子径Rnを測定した。なお、観察される黒色顔料の最も長い部分を粒子径とした。また、複数の粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には、二次粒子としての最も長い部分を粒子径とした。また、SEM撮影範囲内に複数の種類の粒子がある場合、予めSEM撮影範囲でEDS元素分析による定性分析を行い、粒子径の測定対象となる黒色顔料を判別した。
【0050】
そして、得られたn個の粒子径Rnから各体積Vnを以下の算式から算出した。なお、各体積Vnは、球形とみなして算出したものである。
【0051】
黒色顔料の粒子の体積Vn=4/3×π×(Rn/2)3
そして、得られたn個の体積Vnを粒子径Rnの小さい順に並べて累積和を算出して体積累積頻度とした。そして、体積累積頻度を粒子径Rnに対しプロットしたグラフから、体積累積頻度が50%となるときの粒子径を分散粒子径(D50)とした。以上の測定を皮革様シートの任意の5点において行い、5点の分散粒子径(D50)の平均値を平均分散粒子径とした。
【0052】
(赤外線反射黒色顔料の平均反射率)
赤外線反射黒色顔料の粉体 30質量部と、固形分30質量%のポリエーテル系ポリウレタン溶液(大日精化工業(株)製のレザミンME-8116)100質量部と、DMF 50質量部、とを円筒形密閉容器に分散用メディア(ガラスビーズφ1.5mm)とともに投入した。そして、円筒形密閉容器を(株)東洋精機製作所製の試験用分散機にセットし、5分間分散処理した。このようにして赤外線反射黒色顔料とポリエーテル系ポリウレタンを50:50で含む赤外線反射黒色顔料分散液を調製した。そして、赤外線反射黒色顔料分散液を白色の紙に、6ミル(mil)のアプリケーターを用いて塗工し、90℃の熱風乾燥機で10分間乾燥させることにより評価用フィルムを形成した。なお、白色の紙としては、JIS K 5600-4-1:1999の4.1.2[方法B(隠ぺい率試験紙)]に規定する白部及び黒部を有する隠蔽率試験紙の白部を用いた。
【0053】
そして、分光分析装置を用いて、評価用フィルムの表面の波長領域400~2500nmの範囲で反射率を測定することにより分光反射率のスペクトルを得た。なお、分光分析装置としては、日本分光(株)製の、ISN-923型積分球を備えるV-770型分光光度計を用いた。そして、分光反射率のスペクトルから、650~780nm及び780~2500nmのそれぞれの範囲における分光反射率の平均を算出した。
【0054】
なお、評価用フィルムの作成のためにポリエーテル系ポリウレタンをバインダとして用いたが、上述したように測定された分光反射率の平均値においては、ポリエーテル系ポリウレタンによる光の吸収は、実質的に無視できる。
【0055】
(L*値及びa*値の測定)
分光光度計を用いて皮革様シートの表面の反射スペクトルを測定した。なお、分光光度計としては、(株)日立ハイテクノロジーズ社製のU-3010を用いた。そして、得られた反射スペクトルからJIS Z 8781に準拠して、視野角10°、光源D65による、L*a*b*表色系の座標値を算出した。試験片から平均的な位置を万遍なく3点選択して、反射スペクトルを測定し、L*値及びa*値の平均値を求めた。
【0056】
(日射反射率)
分光分析装置を用いて、皮革様シートの表面の波長領域780~2500nmの範囲で反射率を測定することにより分光反射率のスペクトルを得た。なお、分光分析装置としては、日本分光(株)製の、ISN-923型積分球を備えるV-770型分光光度計を用いた。そして、波長領域650~780nm及び780~2500nmの範囲の分光反射率の平均を日射反射率として算出した。
【0057】
(白色赤外線ヒートランプ照射時の表面温度)
ASTM D 4803-97に準拠した装置を用いて、白色赤外線ヒートランプ照射時の表面温度を測定した。具体的には、次のようにして測定した。雰囲気温度23.9±2.8℃に調整された室内に、
図1に示すような、上部と正面が解放された木製の筐体1の内壁に、厚み25.4mmの白色の硬質ケイ酸カルシウム水和物の板2が設けられた表面温度測定用ボックス10を準備した。そして、表面温度測定用ボックス10内の奥側の壁面から152±25mmで両横側の壁面から均等な距離の位置に、76×76mmの正方形に切り出された皮革様シートの試験片4の中心が来るように着色樹脂層の側の面を上に向けて配置した。そして、試験片の中心位置から394±25mmの高さに、250Wの白色赤外線ヒートランプ3を配置した。そして、白色赤外線ヒートランプ3の電源を入れて光を照射し、照射開始から20分後の試験片の表面温度を非接触式の温度計を用いて測定した。
【0058】
(耐摩耗性:テーバー磨耗)
直径13cmの円状にカットした皮革様シートの試験片を、着色樹脂層の側の面を上に向けてテーバーアブレージョンテスター(TABER INSTRUMENT Corp.製)のターンテーブル上にセットした。そして、2個の摩耗輪(H-22(ダイトエレクトロン社製))で60rpmで着色樹脂層の側の面を1000回摩耗させた。なお、荷重は500gにセットした。そして、皮革様シートの試験片の表面状態の変化を以下の基準に従って判定した。
5級:外観変化が認められない
4級:着色樹脂層の表面に艶の変化や傷の発生が認められるが、接着層は露出していなかった。
3級:着色樹脂層の一部が摩耗して、接着層又は繊維基材が10%未満の範囲で露出していた。
2級:着色樹脂層が一部が摩耗して、接着層又は繊維基材が10%以上50%未満の範囲で露出していた。
1級:着色樹脂層が一部が摩耗して、接着層又は繊維基材が50%以上の範囲で露出している。
【0059】
また、本実施例で用いた繊維基材の製造について以下に説明する。
(繊維基材の製造)
水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールを海成分に用い、イソフタル酸変性度6モル%のPETを島成分とし、繊維1本あたりの島数が25島で、海成分/島成分が25/75(質量比)となるような溶融複合紡糸用口金を用い、260℃で海島型複合繊維のフィラメントを口金より吐出した。そして、紡糸速度が4000m/minとなるようにエジェクター圧力を調整し、平均繊度2.5dtexの海島型複合繊維をネット上に捕集することにより、目付30g/m2の長繊維のウェブを得た。
【0060】
そして、ウェブをクロスラッピングすることにより12層重ね、これに、針折れ防止油剤をスプレーした。そして、6バーブのニードル針で2000パンチ/cm2のパンチ密度でニードルパンチングすることにより、絡合されたウェブを得た。
【0061】
そして、絡合されたウェブを水蒸気により熱収縮させた。具体的には、はじめに、絡合されたウェブに、海成分の質量に対して30質量%の水分を付与し、次いで、相対湿度が90%、温度が110℃の加熱水蒸気雰囲気下で80秒間熱処理した。このときの面積収縮率は45%であった。
【0062】
次に、熱収縮させたウェブに、アニオン性自己乳化型の水性ポリウレタン(100%モジュラス 3.0MPa)の分散液を含浸させた。なお、水性ポリウレタンの分散液の濃度は、水性ポリウレタン/島成分の量の質量比が10/90になる濃度であった。そして、マイグレーションを防止するために水蒸気雰囲気下で水性ポリウレタンの分散液をゲル化処理した後、120℃で10分間乾燥した。
【0063】
そして、水性ポリウレタンを含浸付与されたウェブを95℃の熱水中に30分間浸漬することにより海成分を除去して極細繊維を形成させ、さらに、120℃の温度で10分間乾燥することにより、0.1dtexの極細繊維の不織布を含む厚さ2.1mmの繊維基材を得た。そして、厚さ2.1mmの繊維基材をその表面と略平行な面でスライス処理することにより、0.1dtexの極細繊維の不織布を含む厚さ1.0mm、目付530g/cm3の繊維基材を得た。
【0064】
また、本実施例で用いた赤外線反射黒色顔料について以下にまとめて説明する。
図2には、各赤外線反射黒色顔料の分光反射率を測定したスペクトルを示す。
・Ca-Ti-Mn系複合酸化物の赤外線反射黒色顔料:分光反射率が、波長650~780nmの範囲において平均4.9%であり、780~2500nmの範囲において平均56.0%である石原産業(株)製のタイペークブラックSG-101
・Cu-Bi系複合酸化物の赤外線反射黒色顔料:分光反射率が、波長650~780nmの範囲において平均5.1%であり、780~2500nmの範囲において平均57.2%である大日精化工業(株)製のダイピロキサイドブラック#9581
・Fe-Co-Cr系複合酸化物の赤外線反射黒色顔料:分光反射率が、波長650~780nmの範囲において平均4.2%であり、780~2500nmの範囲において平均26.5%である大日精化工業(株)製のダイピロキサイドブラック#9590
・Ni-Fe系複合酸化物の赤外線反射黒色顔料:分光反射率が、波長650~780nmの範囲において平均10.7%であり、780~2500nmの範囲において平均48.7%であるシェファードカラージャパン(株)製のブラック10C924
[実施例1]
Ca-Ti-Mn系複合酸化物の赤外線反射黒色顔料 50質量部と、固形分30質量%のポリエーテル系ポリウレタンを含有する溶液(PEt系PU溶液) 15質量部と、DMF 35質量部とを、円筒形密閉容器に分散用メディア(ガラスビーズφ1.5mm)とともに投入した。そして、(株)東洋精機製作所製の試験用分散機を用いて10分間分散処理することにより、赤外線反射黒色顔料分散液を調製した。なお、PEt系PU溶液としては、大日精化工業(株)製のレザミンME-8116を用いた。
【0065】
そして、赤外線反射黒色顔料分散液 10質量部と、PEt系PU溶液100質量部と、DMF30質量部と、MEK10質量部と、を混合することにより、着色樹脂層用組成物を調製した。
【0066】
そして、離型紙上に着色樹脂層用組成物を、乾燥後の厚さが30μmになるようにウェット塗布量130g/m2塗布し、120℃で2分間乾燥させることにより表皮層を形成した。さらに、離型紙上に形成された表皮層の表面に、乾燥後の厚さが30μmになるように同じ着色樹脂層用組成物を塗布し、120℃で2分間乾燥させることにより中間層を形成した。なお、離型紙としては、リンテック(株)製のEV130TPDR-8を用いた。
【0067】
このようにして、ポリウレタンと、12g/m2の赤外線反射黒色顔料とを含有する、厚さが60μmの着色樹脂層を形成させた。
【0068】
一方、固形分60質量%のポリエーテル系ポリウレタン溶液(大日精化工業(株)製のレザミンUD-8310NTT)100質量部、イソシアネート架橋剤(大日精化工業(株)製のNE架橋剤)10質量部、架橋促進剤(大日精化工業(株)製のUD-103促進剤)2質量部、DMF30質量部、MEK20質量部を配合することにより、接着層を形成するためのポリウレタン溶液を調製した。
【0069】
そして、離型紙上に形成された着色樹脂層の表面に、接着層を形成するためのポリウレタン溶液をウェット塗布量150g/m2で塗布し、80℃で1分間乾燥させ、半乾燥の状態で、繊維基材の表面に貼り合わせた後、さらに130℃で5分間乾燥した。さらに、接着層の架橋反応を促進させるために、雰囲気温度60℃の乾燥機内で48時間の加熱処理を行った。そして、離型紙を剥がすことにより人工皮革である皮革様シートを得た。
【0070】
そして、得られた皮革様シートの特性を以下の評価方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0071】
【0072】
[実施例2]
実施例1において、赤外線反射黒色顔料分散液 10質量部を混合する代わりに、赤外線反射黒色顔料分散液 2.3質量部を混合した以外は同様にして着色樹脂層用組成物を調製した。このようにして、ポリウレタンと、3.3g/m2の赤外線反射黒色顔料とを含有する、厚さが60μmの着色樹脂層を形成させた以外は実施例1と同様にして皮革様シートを得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、赤外線反射黒色顔料分散液 10質量部を混合する代わりに、赤外線反射黒色顔料分散液 17質量部を混合した以外は同様にして着色樹脂層用組成物を調製した。このようにして、ポリウレタンと、18.0g/m2の赤外線反射黒色顔料とを含有する、厚さが60μmの着色樹脂層を形成させた以外は実施例1と同様にして皮革様シートを得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例1において、赤外線反射黒色顔料分散液を調整するための分散処理時間10分間を20分間に変更した以外は実施例1と同様にして皮革様シートを得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例1において、赤外線反射黒色顔料分散液を調整するための分散処理時間10分間を5分間に変更した以外は実施例1と同様にして皮革様シートを得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例6]
実施例1において、さらにペリレンブラック分散液を0.38質量部混合した以外は同様にして着色樹脂層用組成物を調製した。
【0073】
ペリレンブラック分散液は次の方法で調整した。ペリレンブラック(Paliogen Black S0084、BASF製) 20質量部と、固形分30質量%のポリエーテル系ポリウレタンを含有する溶液(PEt系PU溶液) 15質量部と、DMF 35質量部とを、円筒形密閉容器に分散用メディア(ガラスビーズφ1.5mm)とともに投入した。そして、(株)東洋精機製作所製の試験用分散機を用いて30分間分散処理することにより、ペリレンブラック分散液を調製した。なお、PEt系PU溶液としては、大日精化工業(株)製のレザミンME-8116を用いた。
【0074】
このようにして、ポリウレタンと、12.0g/m2の赤外線反射黒色顔料と、0.2g/m2のペリレンブラックと、を含有する、厚さが60μmの着色樹脂層を形成させた以外は実施例1と同様にして皮革様シートを得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例7]
実施例1において、さらにペリレンブラック分散液を0.75質量部混合した以外は同様にして着色樹脂層用組成物を調製した。このようにして、ポリウレタンと、12.0g/m2の赤外線反射黒色顔料と、0.4g/m2のペリレンブラックと、を含有する、厚さが60μmの着色樹脂層を形成させた以外は実施例1と同様にして皮革様シートを得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例8]
実施例1において、中間層用の着色樹脂層用組成物の調製のために、赤外線反射黒色顔料分散液のかわりにカーボンブラック分散液(セイカセブンDUT-4794、大日精化工業(株)製、固形分24%)を1.3質量部添加し、着色樹脂層中の赤外線反射黒色顔料含有量を6.0g/m2およびカーボンブラックの含有量を0.5g/m2にして色相調整した以外は実施例1と同様にして人工皮革を得、評価した。結果を表2に示す。
[実施例9]
実施例1において、中間層用の着色樹脂層用組成物に、赤外線反射黒色顔料分散液のかわりにカーボンブラック分散液を21質量部添加し、着色樹脂層中の赤外線反射黒色顔料含有量を12g/m2およびカーボンブラックの含有量を6.0g/m2にして色相調整した以外は実施例1と同様にして人工皮革を得、評価した。結果を表2に示す。
[実施例10]
実施例1において、中間層用の着色樹脂層用組成物に赤外線反射黒色顔料を混合しなかった以外は実施例1と同様にして人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例11]
実施例1において、Ca-Ti-Mn系複合酸化物の赤外線反射黒色顔料の代わりに、Cu-Bi系複合酸化物の赤外線反射黒色顔料を用いた以外は実施例1と同様にして皮革様シートを得、評価した。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、赤外線反射黒色顔料分散液 10質量部を混合する代わりに、赤外線反射黒色顔料分散液 1.5質量部を混合した以外は同様にして着色樹脂層用組成物を調製した。このようにして、ポリウレタンと、2.2g/m2の赤外線反射黒色顔料とを含有する、厚さが60μmの着色樹脂層を形成させた以外は実施例1と同様にして皮革様シートを得、評価した。結果を表2に示す。
【0075】
【0076】
[比較例2]
実施例1において、赤外線反射黒色顔料分散液 10質量部を混合する代わりに、赤外線反射黒色顔料分散液 25.0質量部を混合した以外は同様にして着色樹脂層用組成物を調製した。このようにして、ポリウレタンと、23.1g/m2の赤外線反射黒色顔料とを含有する、厚さが60μmの着色樹脂層を形成させた以外は実施例1と同様にして皮革様シートを得、評価した。結果を表2に示す。
[比較例3]
実施例1において、赤外線反射黒色顔料分散液を調整するための分散処理時間10分間を40分間に変更した以外は実施例1と同様にして皮革様シートを得、評価した。結果を表2に示す。
[比較例4]
実施例1において、赤外線反射黒色顔料分散液を調整する際に分散用メディアを使用せず、分散処理時間を5分間に変更した以外は実施例1と同様にして人工皮革を得、評価した。結果を表2に示す。
[比較例5]
実施例11において、赤外線反射黒色顔料分散液を調整するための分散処理時間10分間を40分間に変更した以外は実施例1と同様にして皮革様シートを得、評価した。結果を表2に示す。
[比較例6]
実施例1において、Ca-Ti-Mn系複合酸化物の赤外線反射黒色顔料の代わりに、Fe-Co-Cr系複合酸化物の赤外線反射黒色顔料を用いた以外は実施例1と同様にして皮革様シートを得、評価した。結果を表2に示す。
[比較例7]
実施例1において、Ca-Ti-Mn系複合酸化物の赤外線反射黒色顔料の代わりに、Ni-Fe系複合酸化物の赤外線反射黒色顔料を用いた以外は実施例1と同様にして皮革様シートを得、評価した。結果を表2に示す。
[比較例8]
実施例7において、さらにフタロシアニングリーン分散液を1.3質量部混合した以外は同様にして着色樹脂層用組成物を調製した。
【0077】
フタロシアニングリーン分散液は次の方法で調整した。フタロシアニングリーン(N-DYM8510グリーン、大日精化工業(株)製、固形分100%) 20質量部と、固形分30質量%のポリエーテル系ポリウレタンを含有する溶液(PEt系PU溶液) 15質量部と、DMF 35質量部とを、円筒形密閉容器に分散用メディア(ガラスビーズφ1.5mm)とともに投入した。そして、(株)東洋精機製作所製の試験用分散機を用いて30分間分散処理することにより、フタロシアニングリーン分散液を調製した。なお、PEt系PU溶液としては、大日精化工業(株)製のレザミンME-8116を用いた。
【0078】
このようにして、ポリウレタンと、12.0g/m2の赤外線反射黒色顔料と、0.6g/m2のフタロシアニングリーンと、を含有する、厚さが60μmの着色樹脂層を形成させた以外は実施例1と同様にして皮革様シートを得、評価した。結果を表1に示す。
[比較例9]
実施例1において、表皮層の赤外線反射黒色顔料の代わりにカーボンブラック分散液(セイカセブンDUT-4794、大日精化工業(株)製、固形分24%)を用い、カーボンブラックの含有量12.0g/m2の着色樹脂層を形成させた以外は実施例1と同様にして皮革様シートを得、評価した。結果を表2に示す。
【0079】
表1を参照すれば、着色樹脂層が、ポリウレタンと、3~20g/m2の赤外線反射黒色顔料とを含有し、平均分散粒子径が1~10μmであり、且つ、分光反射率が、波長650~780nmの範囲において平均8%以下、780~2500nmの範囲において平均40%以上である赤外線反射黒色顔料を用いた、実施例1~11で得られた皮革様シートは、何れもL*値≦30かつa*値≦1の赤みの少ない黒度の高い濃色を発色し、日射を模した白色赤外線ヒートランプ照射時の表面温度も上昇しにくく、耐摩耗性にも優れた皮革様シートであった。
【0080】
一方、着色樹脂層が3g/m2以上の赤外線反射黒色顔料を含有しない比較例1で得られた皮革様シートは、L*値≦30のような濃色が得られず、また、白色赤外線ヒートランプ照射時の表面温度も上昇しやすかった。また、着色樹脂層が20g/m2を超える赤外線反射黒色顔料を含有する比較例2で得られた皮革様シートは、耐摩耗性に著しく劣っていた。また、着色樹脂層の赤外線反射黒色顔料の平均分散粒子径が1μm以下である比較例3及び比較例5で得られた皮革様シートは、a*値≧1の赤みが強く、黒度が低い濃色を発色した。
【0081】
また、着色樹脂層の赤外線反射黒色顔料の平均分散粒子径が10μmを超える比較例4で得られた皮革様シートは、白色赤外線ヒートランプ照射時の表面温度は上昇しにくかったが、L*値≧30の黒度の低い発色であり、また、耐摩耗性にも劣った皮革様シートであった。
【0082】
また、分光反射率が波長650~780nmの範囲において平均8%を超える赤外線反射黒色顔料を用いた比較例7で得られた皮革様シートは、a*値≧1の赤みが強く、黒度が低い濃色を発色した。さらに、比較例7で得られた皮革様シートの赤みを低減させるために、フタロシアニングリーンをさらに混合してa*値≦1になるように色相を調整された比較例8で得られた皮革様シートは、白色赤外線ヒートランプ照射時の表面温度の上昇が充分に抑制されなかった。