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特開2022-186761組成物および成形体、並びにこれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186761
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】組成物および成形体、並びにこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20221208BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20221208BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20221208BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/013
C08L1/02
C08J5/00 CER
C08J5/00 CEZ
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163030
(22)【出願日】2022-10-11
(62)【分割の表示】P 2018031975の分割
【原出願日】2018-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】阿部 文明
(72)【発明者】
【氏名】木村 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 豊
(72)【発明者】
【氏名】竹内 陽子
(57)【要約】
【課題】 従来のセルロース繊維とオレフィン系樹脂を含む繊維含有樹脂組成物は、セルロース繊維は同方向に配列される傾向があることから機械特性が異方性を有し、ある方向においては高い機械特性を示すものの、別の方向においては機械特性が不十分である場合がある。そこで、本発明は、方向性によらず高い機械特性を有する組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 熱可塑性樹脂と、アスペクト比が30以上であるセルロース繊維と、アスペクト比が10以上であるフィラーと、を含む、組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、アスペクト比が30以上であるセルロース繊維と、アスペクト比が10以上であるフィラーと、を含む、組成物。
【請求項2】
前記フィラーの最大径が、50μm以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記セルロース繊維の含有率が、前記熱可塑性樹脂、前記セルロース繊維、および前記フィラーの総質量に対して、0.1~20質量%である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物を成形してなる、成形体。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物の製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂、前記セルロース繊維、および前記フィラーを含む混合物を溶融混練する工程を含む、製造方法。
【請求項6】
請求項5の方法で製造された組成物を成形する工程をさらに含む、成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物および成形体、並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セルロース繊維が有する軽量性および高強度の性能が着目され、セルロース繊維を樹脂に添加した組成物の検討が行われている。セルロース繊維を樹脂に添加した組成物は、高い機械特性を示す。
【0003】
例えば、特許文献1には、セルロース繊維とオレフィン系樹脂を含む繊維含有樹脂組成物に係る発明が記載されている。この際、該セルロース繊維を構成するセルロースは、炭素数5以上の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素鎖をもつ官能基を有することを特徴とすることが記載されている。
【0004】
特許文献1には、セルロース繊維は、親水性であるため樹脂への分散が難しいこと、セルロース繊維の樹脂への分散のためにさまざまな改良がなされてきたこと、炭素数5以上の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素鎖をもつ官能基を有するセルロース繊維を用いることにより、セルロース繊維の配合による透明性の低下を抑えながら、機械物性を顕著に上昇させることが可能であることなどが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-15512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の繊維含有樹脂組成物によれば、オレフィン系樹脂にセルロース繊維が添加されることから高い機械特性が得られうる。しかしながら、セルロース繊維は同方向に配列される傾向があることから機械特性が異方性を有し、ある方向においては高い機械特性を示すものの、別の方向においては機械特性が不十分である場合があることが判明した。
【0007】
そこで、本発明は、方向性によらず高い機械特性を有する組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するべく、鋭意検討を行った。その結果、所定のアスペクト比を有するセルロース繊維と、所定のアスペクト比を有するフィラーとを併用することで上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂と、アスペクト比が30以上であるセルロース繊維と、アスペクト比が10以上であるフィラーと、を含む、組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、方向性によらず高い機械特性を有する組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0012】
<組成物>
組成物は、熱可塑性樹脂と、アスペクト比が30以上であるセルロース繊維と、アスペクト比が10以上であるフィラーと、を含む。
【0013】
従来の熱可塑性樹脂とセルロース繊維とを含む組成物において、機械特性を得るためには、セルロース繊維を熱可塑性樹脂中で分散させる必要がある。この際、セルロース繊維は、通常、その多くが略同方向に配向する。例えば、組成物を混練によって製造する場合には、セルロース繊維は樹脂の流れ方向(MD方向)に沿って配向される。これにより、MD方向においては高い機械特性(弾性率、強度等)を実現することができる。しかしながら、樹脂の流れに対して垂直な方向(TD方向)に対しては、十分な機械特性を実現することができない場合がある。その結果、得られる成形品は、その方向性によっては十分な機械特性が得られない場合がある。
【0014】
これに対し、本形態に係る組成物は、セルロース繊維は略同方向に配向(例えば、MD方向に沿って配列)され、併用されるフィラーが前記セルロース繊維に対して略垂直方向に配向(例えば、TD方向に沿って配列)される。その結果、方向性によらず高い機械特性を有する組成物を得ることができる。
【0015】
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂とは、ガラス転移温度(Tg)または融点で軟化する樹脂を意味する。
【0016】
熱可塑性樹脂としては、特に制限されないが、ポリエチレン(PE)樹脂(高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)、無水マレイン酸変性ポリエチレン等)、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂(ポリ塩化ビニリデン等)、ポリスチレン(PS)樹脂(ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン樹脂等)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)樹脂、ポリウレタン(PU)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等)、ポリアミド樹脂(ナイロン等)、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等)、ポリカーボネート(PC)樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)樹脂、ジアセチルセルロース(DAC)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリサルフォン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリケトン樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
上述のうち、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂を用いることが好ましく、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリアミド樹脂を用いることがより好ましい。
【0018】
熱可塑性樹脂の含有率は、前記熱可塑性樹脂、前記セルロース繊維、および前記フィラーの総質量に対して、50~99質量%であることが好ましく、60~95質量%であることがより好ましい。熱可塑性樹脂の含有率が50質量%以上であると、加熱溶融することによって各種形状へ成形できることから好ましい。一方、熱可塑性樹脂の含有率が99質量%以下であると、樹脂を補強することにより各種機能を付与できることから好ましい。
【0019】
[セルロース繊維]
セルロース繊維とは、セルロースが繊維状の形状を有する材料である。当該セルロース繊維は、樹脂中で概ね樹脂の流れ方向(MD方向等)に沿って配向されることにより、当該方向に高い機械特性を付与する機能を有する。なお、本明細書において、「セルロース繊維」とは、セルロース繊維の幅が1000μm以下の繊維状ものを意味する。
【0020】
セルロース繊維の幅は、上記の通り、1000μm以下であり、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは4nm~50μmであり、さらに好ましくは4nm~25μmである。セルロース繊維の幅が1000μm以下であると、複合効果が現れ補強効果を高くできることから好ましい。なお、本明細書において、「セルロース繊維の幅」は、以下の方法により測定された値を採用するものとする。すなわち、セルロース繊維を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し(倍率:5000倍)、1視野中に20本以上のセルロース繊維が交差する直線を設ける。そして、前記直線上に交差されたすべてのセルロース繊維について、観察画面内で最も数値が小さくなる2点間の距離を測定し、その平均値をセルロース繊維の幅とする。なお、組成物中に存在するセルロース繊維の幅の測定には、以下の方法により準備された測定用セルロース繊維を用いる。すなわち、まず、1cm×1cm×0.1mmの組成物のサンプルを準備する。次いで、サンプルに抽出溶媒に浸してサンプルの熱可塑性樹脂を抽出する。その際に加熱して煮沸してもよい。そして、残存したセルロース繊維を乾燥することで測定用セルロース繊維を得ることができる。なお、熱可塑性樹脂を抽出するための抽出溶媒は、用いる熱可塑性樹脂によって異なる。例えば、熱可塑性樹脂が高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、等である場合には、抽出溶媒としてキシレンを用いる。また、熱可塑性樹脂がポリアミド、ポリエステル等である場合には、抽出溶媒としてo-クロロフェノールを用いる。
【0021】
また、セルロース繊維の繊維長は、100nm以上であることが好ましく、500nm~10000μmであることがより好ましく、1~1000μmであることがさらに好ましい。セルロース繊維の繊維長が100nm以上であると、複合効果により補強効果を高くできることから好ましい。なお、本明細書において、「セルロース繊維の繊維長」は、以下の方法により測定された値を採用するものとする。すなわち、セルロース繊維を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し(倍率:1,000倍)、25視野を合成し、その中に始点と終点が観察されるセルロース繊維を20本選び、最も数値が大きくなる2点間の距離をそれぞれ測定し、その平均値をセルロース繊維の繊維長とする。なお、組成物中に存在するセルロース繊維の繊維長の測定についても、上記セルロース繊維の幅の測定と同様の方法で得られる測定用セルロース繊維を用いる。
【0022】
そして、セルロース繊維のアスペクト比は、30以上であり、好ましくは50以上であり、より好ましくは50~20,000であり、さらに好ましくは100~2,000である。セルロース繊維のアスペクト比が30以上であると、セルロース繊維が熱可塑性樹脂中で同一方向(例えば、MD方向)に配向しやすく、特に当該配向方向において高い機械的物性が得られうることから好ましい。なお、本明細書において、「アスペクト比」とは、セルロース繊維の幅に対するセルロース繊維の繊維長(セルロース繊維の繊維長/セルロース繊維の幅)を意味する。
【0023】
セルロース繊維としては、特に制限はなく、公知のものが用いられる。
【0024】
一実施形態において、セルロース繊維としては、パルプおよび合成繊維、並びにこれらを解繊したもの(解繊物)等が挙げられる。なお、パルプおよび合成繊維の「セルロース繊維の幅」は通常10~50μm、好ましくは20~30μmである。また、前記解繊物の「セルロース繊維の幅」は通常10μm未満であり、好ましくは50nm~5μmである。
【0025】
前記パルプは、モミ、マツ等を用いた針葉樹パルプ、ユーカリ、ポプラ等を用いた広葉樹パルプ等の木材パルプ;ワラパルプ、ケナフパルプ、バガスパルプ、バンブーパルプ、ヨシパルプ、クワパルプ、コットンリンターパルプ等の非木材パルプ;古紙等を脱墨等して得られる古紙パルプ等が挙げられる。
【0026】
前記合成繊維としては、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル、セロハン等が挙げられる。
【0027】
この際、前記パルプおよび前記合成繊維は漂白処理をされたものであってよいし(晒パルプ等)、漂白処理されていないものであってもよい(未晒パルプ等)。
【0028】
上述のパルプおよび合成繊維うち、パルプであることが好ましく、木材パルプであることがより好ましく、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹酸素漂白クラフトパルプ(NOKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹酸素漂白クラフトパルプ(LOKP)であることがさらに好ましく、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹酸素漂白クラフトパルプ(NOKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)であることが特に好ましい。
【0029】
前記解繊物としては、特に制限されず、セルロースミクロフィブリル、セルロースナノファイバー(CNF)、セルロースナノクリスタル(CNC)等が挙げられる。
【0030】
なお、解繊物を得るための解繊は、機械的処理によって行ってもよいし、化学的処理によって行ってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。機械的処理により解繊物を得る方法としては、高圧ホモジナイザー法、水中対向衝突法、グラインダー法、ボールミル法等が挙げられる。また、化学的処理により解繊物を得る方法としては、TEMPO触媒酸化法等が挙げられる。さらに、組成物を製造する際(例えば、溶融混練をする際)に加わる力を利用して解繊してもよい。これらの解繊は、単独で適用しても、2種以上を組み合わせて適用してもよい。
【0031】
また、セルロース繊維は、ヘミセルロース、リグニン等を含んでいてもよい。
【0032】
前記ヘミセルロースの含有率は、セルロース繊維の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、「ヘミセルロースの含有率」は、デタージェント分析法により測定された値を用いて算出するものとする。
【0033】
前記リグニンの含有率としては、セルロース繊維の全質量に対して、40質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、「リグニンの含有率」は、Klason法により測定された値を用いて算出するものとする。
【0034】
上述セルロース繊維は、未変性のものであってもよいが、変性されていてもよい。
【0035】
「セルロース繊維が変性されている」とは、セルロースを構成するβ-グルコース分子のC2位、C3位、およびC6位のヒドロキシ基(-OH)の少なくとも1つがアシル基(-COR)で修飾され、エステル結合(-OCOR)を生じたものを意味する。この際、アシル基は、β-グルコース単位のC2位、C3位、およびC6位に平均的に置換していてもよいし、分布をもって置換していてもよい。
【0036】
前記Rとしては、特に制限されないが、置換または非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換または非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素数2~20のアルキル基、置換または非置換の炭素数6~20の芳香族基等が挙げられる。
【0037】
炭素数1~20のアルキル基としては、特に制限されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、2,2-ジメチルプロピル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられる。
【0038】
炭素数2~20のアルケニル基としては、特に制限されないが、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、1-メチル-2-プロピル-3-ヘキセニル基等が挙げられる。
【0039】
炭素数2~20のアルキニル基としては、特に制限されないが、エチニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基等が挙げられる。
【0040】
前記炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基は置換基を有していてもよい。当該置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基(-NHR’)、ジアルキルアミノ基(-NR’)、トリアルキルアンモニウム基(-NR’ )、ニトロ基、チオール基等が挙げられる。この際、前記R’は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基が挙げられる。これらの置換基は単独で有していても、2以上有していてもよい。
【0041】
炭素数6~20の芳香族基としては、特に制限されないが、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ペンタレニル基、インデニル基、インダセニル基、ビフェニレニル基、アセナフチレニル基、フェナレニル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、イミダゾリジニル基、ピラゾリル基、ピラゾリジニル基、チアゾリル基、チアゾリジニル基、イソチアゾリル基、イソチアゾリジニル基、オキサゾリル基、オキサゾリジニル基、イソオキサゾリル基、イソオキサゾリジニル基、フラザニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、キノリル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、アンチリジニル基等が挙げられる。
【0042】
前記炭素数6~20の芳香族基の置換基としては、特に制限されないが、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基(-NHR’)、ジアルキルアミノ基(-NR’)、トリアルキルアンモニウム基(-NR’ )、ニトロ基、チオール基等が挙げられる。これらの置換基は単独で有していても、2以上有していてもよい。
【0043】
上述のうち、Rとしては、メチル基、1-カルボキシメチル-2-プロピル-3-ヘキセニル基、2-カルボキシ-3-プロピル-4-ヘプテニル基、1-カルボキシメチル-3-トリデケニル基、2-カルボキシ-4-テトラデケニル基、1-カルボキシメチル-2-ヘプタデケニル基、2-カルボキシ-3-オクタデケニル基が好ましい。
【0044】
なお、セルロース繊維が変性される場合において、セルロース繊維がヘミセルロース、リグニンを含む場合、前記ヘミセルロース、リグニンの有するヒドロキシ基の少なくとも1つが変性されることがある。
【0045】
なお、セルロース繊維が上述のRを複数有する場合には、それぞれのRは同一のものであっても、異なるものであってもよい。
【0046】
上述のセルロース繊維の変性は、公知の化合物を用いて行うことができる。例えば、Rがメチル基である場合(セルロース繊維のヒドロキシ基をアセチル基で変性することにより、メチルカルボニルオキシ基(-OCOCH)とする場合)、酢酸、無水酢酸等を用いることによってセルロース繊維の変性を行うことができる。また、Rがアルケニル基である場合、アルケニルカルボン酸を用いることによってセルロース繊維の変性を行うことができる。さらに、Rがカルボキシ基を置換基として有するアルケニル基である場合、アルケニルコハク酸無水物、アルケニルジカルボン酸等を用いることによってセルロース繊維の変性を行うことができる。
【0047】
セルロース繊維が変性されている場合の置換度としては、0.05~2.0であることが好ましく、0.1~1.0であることがより好ましく、0.1~0.8であることがさらに好ましい。置換度が0.05以上であると、セルロース繊維が好適に樹脂に分散しうることから好ましい。一方、置換度が2.0以下であると、セルロース繊維の強度が維持され、高い機械特性を実現できることから好ましい。なお、本明細書において、「置換度」とは、β-グルコース単位あたりの水酸基の置換の程度の平均数を示し、下記式により算出されるものを意味する。
【0048】
置換度=3-DS
この際、「DS」とは、β-グルコース単位あたりに有する水酸基の数を意味し、下記式により測定することができる。
【0049】
DS=0.0113X-0.0122
上記式において、Xは、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて赤外分光法(IR)にて測定される赤外吸収スペクトルの1733cm-1付近のエステル基のカルボニル(C=O)の吸収ピーク面積である。なお、前記DSはセルロースの変性の反応時において逐次測定をすることができるため、反応の追跡に利用することができる。
【0050】
具体例を挙げると、β-グルコースのC2位、C3位、およびC6位の水酸基がすべてアシル基で置換されている場合には、当該置換度(最大値)は3.0となる。
【0051】
上記のうち、セルロース繊維は、未変性セルロース、部分変性セルロース(置換度が2以下、好ましくは0.1~1のもの)であることが好ましい。
【0052】
なお、上述のセルロース繊維は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
セルロース繊維の含有率としては、前記熱可塑性樹脂、前記セルロース繊維、および前記フィラーの総質量に対して、0.1~20質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましく、0.5~10質量%であることがさらに好ましい。セルロース繊維の含有率が0.1質量%以上であると、高い機械特性、特に樹脂の流れ方向(MD方向)において高い物性(弾性率、強度)が得られうることから好ましい。一方、セルロース繊維の含有率が20質量%以下であると、溶融粘度を低くすることができ、取扱い性に優れることから好ましい。
【0054】
[フィラー]
フィラーとは、樹脂に添加される添加剤である。当該フィラーは、樹脂中で樹脂の流れ方向に対して略垂直方向(TD方向等)に配向されることにより、当該方向に高い機械特性を付与する機能を有する。
【0055】
フィラーのアスペクト比は、10以上であり、好ましくは10~75であり、より好ましくは10~60であり、さらに好ましくは20~50である。フィラーのアスペクト比が10以上であると、高い機械特性が得られ、機械特性(弾性率、強度等)がより一層高くなる傾向があることから好ましい。なお、フィラーのアスペクト比が75以下であると、弾性率についてより異方性が生じにくくなりうることから好ましい。また、本明細書において、「フィラーのアスペクト比」とは、フィラーの最小径に対するフィラーの最大径(フィラーの最大径/フィラーの最小径)を意味する。ここで「フィラーの最大径」とは、フィラーを一組の平行な面ではさんだときに最大となる長さである。また、「フィラーの最小径」とは同様にフィラーを一組の平行な面ではさんだときに最小となる長さである。なお、フィラーが平板状である場合、「フィラーの最小径」はいわゆる厚さに相当する。そして、「フィラーの最大径」はフィラーを走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し(倍率:5,000倍)、1視野中に存するフィラーを任意に30個選択し、最大径を測定する。また「フィラーの最小径」の値は、同様にSEMにて観察し(倍率:10,000倍)、4視野中に存するフィラーを任意に30個選択し、最小径を測定する。なお、組成物中に存在するフィラーの最大径、フィラーの最小径の測定は、25℃において、1cm×1cm×0.1mmの組成物のサンプルを用いて行う。
【0056】
フィラーの最大径は、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましく、0.01~10μmであることが特に好ましく、0.1~10μmであることが極めて好ましく、1~7.5μmであることが最も好ましい。フィラーの最大径が50μm以下であると、添加剤としての体積効果が十分に発揮される結果、機械特性(弾性率、強度等)が高くなりうることから好ましい。
【0057】
また、フィラーの最小径は、0.001μm以上であることが好ましく、0.01μm以上であることがより好ましく、0.05~5μmであることがさらに好ましく、0.05~0.75μmであることが特に好ましい。フィラーの最小径が0.001μm以上であると、フィラーのアスペクト比が高くなり複合材の機械特性を向上できることから好ましい。
【0058】
フィラーとしては、特に制限はなく、有機フィラー、無機フィラーのいずれも用いられうる。
【0059】
有機フィラーとしては、特に制限されないが、(メタ)アクリル樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等の樹脂粒子;アラミド繊維等の有機繊維等が挙げられる。
【0060】
無機フィラーとしては、特に制限されないが、金属化合物、ケイ酸塩鉱物、炭素化合物、無機繊維等が挙げられる。
【0061】
前記金属酸化物としては、特に制限されないが、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、塩化マグネシウム等が挙げられる。
【0062】
前記ケイ酸塩鉱物としては、特に制限されないが、かんらん石、ざくろ石、ジルコン、珪線石、藍晶石等のネソケイ酸塩鉱物(島条四面体型ケイ酸塩鉱物);ゲーレン石、ローソン石、かいれん石等のソロケイ酸塩鉱物(群構造型ケイ酸塩鉱物);緑柱石、きんせい石、大隅石等のサイクロケイ酸塩鉱物(環状体型ケイ酸塩鉱物);頑火輝石、鉄珪輝石、ピジョン輝石、透輝石、ひすい輝石、珪灰石、直閃石、カミントン閃石、グリュネル閃石、透閃石等のイノケイ酸塩鉱物(環状体型ケイ酸塩鉱物);カオリナイト、ハロイ石、モンモリロナイト、ヘクトライト、タルク(滑石)、マイカ(雲母)、クロライト、バーミキュライト等のフィロケイ酸塩鉱物(層状型ケイ酸塩鉱物);正長石、曹長石、灰長石、霞石、ゼオライト等のテクトケイ酸塩鉱物(網目構造型ケイ酸塩鉱物)等が挙げられる。
【0063】
前記炭素化合物としては、特に制限されないが、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーク、カーボンブラック(ソフトカーボン、ハードカーボン)、カーボンナノファイバー等が挙げられる。
【0064】
前記無機繊維としては、特に制限されないがガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維等が挙げられる。
【0065】
上述のうち、フィラーは無機フィラーであることが好ましく、ケイ酸塩鉱物、炭素化合物であることがより好ましく、フィロケイ酸塩鉱物、テクトケイ酸塩鉱物、炭素化合物であることがより好ましく、タルク、マイカ、スクメタイト、黒鉛、グラフェンであることがさらに好ましい。
【0066】
また、上述のフィラーは、表面修飾されていてもよい。
【0067】
表面修飾に用いられる表面処理剤としては、特に制限されないが、エポキシシラン、アミノシラン、(メタ)アクリルシラン、ビニルシラン、フェニルシラン、メルカプトシラン等にシランカップリング剤が挙げられる。
【0068】
これらの表面処理剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
上述のフィラーは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
フィラーの含有率としては、前記熱可塑性樹脂、前記セルロース繊維、および前記フィラーの総質量に対して、1~40質量%であることが好ましく、2~30質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。フィラーの含有率が1質量%以上であると、高い機械特性、特に樹脂の流れに対して垂直な方向(TD方向)において高い物性(弾性率、強度)が得られうることから好ましい。一方、フィラーの含有率が40質量%以下であると、複合材料の靱性が高くできることから好ましい。
【0071】
[分散剤]
組成物は分散剤を含んでいてもよい。当該分散剤は、セルロース繊維を熱可塑性樹脂中に分散させる機能等を有する。
【0072】
分散剤としては、特に制限されないが、ヒドロキシ基、カルボキシ基、第4級アンモニウム基、リン酸基、およびスルホン酸基、並びにこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの親水性基を含む親水性基含有化合物、グリコールエーテル化合物、前記親水性基含有化合物または前記グリコールエーテル化合物の単独重合体、前記親水性基含有化合物および前記グリコールエーテル化合物の少なくとも1つ並びに/または疎水性化合物を含む第1の共重合体、炭素数6~18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーおよびアミド基を有するアクリルモノマー、並びに/または他のモノマーの第2の共重合体、コリン化合物等が挙げられる。
【0073】
親水性基含有化合物としては、特に制限されないが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ポリオキシエチレンメチルエーテルカルボン酸、N-アシルグルタミン酸等のカルボキシ基含有化合物;ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ミリスチルトリメチルアンモニウム、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルのベンジル化物、[2-{(メタ)アクリロイルオキシ}エチル]トリメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム基含有化合物;リン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、メタリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸、ホスホン酸等のリン酸基含有化合物;ドデシル硫酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ジメチルスルホコハク酸等のスルホン酸基含有化合物等が挙げられる。
【0074】
この際、前記親水性基含有化合物が塩である場合、その塩の対イオンは、特に制限されないが、陰イオンである場合は、ハロゲン化イオン(フッ化イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化イオン)等であることが好ましい。他方、陽イオンである場合は、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩)、第2族元素の塩(カルシウム塩、マグネシウム塩)等であることが好ましい。
【0075】
グリコールエーテル化合物としては、上述の親水性基含有化合物以外のものであれば特に制限されないが、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチルエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
【0076】
前記単独重合体としては、特に制限されないが、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリリン酸、ポリスチレンスルホン酸、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0077】
前記第1の共重合体に使用されうる前記親水性基含有化合物および前記グリコールエーテル化合物は上述したものが用いられる。この際、前記親水性基含有化合物および前記グリコールエーテル化合物は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
前記第1の共重合体に使用されうる疎水性化合物としては、特に制限されないが、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸カプリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸リノレル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン等のスチレン系モノマー等が挙げられる。前記疎水性化合物は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
前記第1の共重合体の具体例としては、ヒドロキシ基含有化合物と(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体、カルボキシ基含有化合物と(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体、第4級アンモニウム基含有化合物と(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体等が挙げられる。より具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸ラウリルとの共重合体、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸シクロヘキシルとの共重合体、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシルとの共重合体、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸イソボニルとの共重合体、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルとの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸ラウリルとの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸シクロヘキシルとの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシルとの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸イソボニルとの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸との共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルとの共重合体、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルのベンジル化物と(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルのベンジル化物と(メタ)アクリル酸ラウリルとの共重合体、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルのベンジル化物と(メタ)アクリル酸シクロヘキシルとの共重合体、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルのベンジル化物と(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシルとの共重合体、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルのベンジル化物と(メタ)アクリル酸イソボニルとの共重合体、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルのベンジル化物と(メタ)アクリル酸との共重合体、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルのベンジル化物と(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルとの共重合体、[2-{(メタ)アクリロイルオキシ}エチル]トリメチルアンモニウムと(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体、[2-{(メタ)アクリロイルオキシ}エチル]トリメチルアンモニウムと(メタ)アクリル酸ラウリルとの共重合体、[2-{(メタ)アクリロイルオキシ}エチル]トリメチルアンモニウムと(メタ)アクリル酸シクロヘキシルとの共重合体、[2-{(メタ)アクリロイルオキシ}エチル]トリメチルアンモニウムと(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシルとの共重合体、[2-{(メタ)アクリロイルオキシ}エチル]トリメチルアンモニウムと(メタ)アクリル酸イソボニルとの共重合体、[2-{(メタ)アクリロイルオキシ}エチル]トリメチルアンモニウムと(メタ)アクリル酸との共重合体、[2-{(メタ)アクリロイルオキシ}エチル]トリメチルアンモニウムと(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルとの共重合体等が挙げられる。この際、前記共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよいが、ランダム共重合体、ブロック共重合体であることが好ましい。なお、前記疎水性化合物は、共重合により分散剤に組み込むことで分散剤の疎水性を高めることができ、熱可塑性樹脂との親和性をより向上させることができる。
【0080】
前記第2の共重合体に使用されうる炭素数6~18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、特に制限されないが、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの炭素数6~18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
前記第2の共重合体に使用されうるアミド基を有するアクリルモノマーとしては、特に制限されないが、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ドデシルアクリルアミド、N-プロポキシメチルアクリルアミド、6-(メタ)アクリルアミドヘキサン酸、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-[2,2-ジメチル-3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド等が挙げられる。これらのアミド基を有するアクリルモノマーは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
前記第2の共重合体に使用されうる他のモノマーとしては、特に制限されないが、前記親水性基含有化合物、前記グリコールエーテル化合物、(メタ)アクリル酸2-メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、γ―メタクリロキシプロピルトリメトシキシラン、ビニルトリエトキシシラン、グリシジル(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらの他のモノマーは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
前記第2の共重合体の具体例としては、ヘキシル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリルアミドとの共重合体ヘキシル(メタ)アクリレートとN-メチル(メタ)アクリルアミドとの共重合体、ヘキシル(メタ)アクリレートとN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドとの共重合体、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリルアミドとの共重合体、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートとN-メチル(メタ)アクリルアミドとの共重合体、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートとN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドとの共重合体、ラウリル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリルアミドとの共重合体、ラウリル(メタ)アクリレートとN-メチル(メタ)アクリルアミドとの共重合体、ラウリル(メタ)アクリレートとN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドとの共重合体、ラウリル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸との共重合体、ラウリル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体等が挙げられる。なお、第2の共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよいが、ランダム共重合体、ブロック共重合体であることが好ましい。
【0084】
前記コリン化合物としては、特に制限されないが、2-(メタ)アクリロイルオキシメチルホスホリルコリン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2-(メタ)アクリロイルオキシメチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、2-(メタ)アクリロイルオキシメチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、2-(メタ)アクリロイルオキシメチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸プロピル共重合体、2-(メタ)アクリロイルオキシメチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、2-(メタ)アクリロイルオキシメチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸カプリル共重合体、2-(メタ)アクリロイルオキシメチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸ラウリル共重合体、2-(メタ)アクリロイルオキシメチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸ミリスチル共重合体、2-(メタ)アクリロイルオキシメチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸ステアリル共重合体、2-(メタ)アクリロイルオキシメチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸オレイル共重合体、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸プロピル共重合体、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸カプリル共重合体、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸ラウリル共重合体、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸ミリスチル共重合体、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸ステアリル共重合体、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン-(メタ)アクリル酸オレイル共重合体等が挙げられる。
【0085】
上述のうち、分散剤は、第1の共重合体、第2の共重合体、コリン化合物であることが好ましく、第2の共重合体であることがより好ましい。
【0086】
分散剤の添加量は、前記熱可塑性樹脂、前記セルロース繊維、および前記フィラーの総質量を100質量部とした場合に、10~200質量部であることが好ましく、20~150質量部であることがより好ましく、30~100質量部であることがさらに好ましい。分散剤の添加量が10質量部以上であると、セルロース繊維やフィラーをより微分散できることから好ましい。一方、分散剤の添加量が200質量部以下であると、熱劣化やブリードアウトによる複合材の性能低下が抑制できることから好ましい。
【0087】
[溶媒]
一実施形態において、組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
【0088】
前記溶媒としては、特に制限されないが、水、有機溶媒が挙げられる。
【0089】
前記有機溶媒としては、特に制限されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;イソプロピルアルコール、ブタノール、セロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類等が挙げられる。これらのうち、前記有機溶媒としては、アルコール、ケトン類を用いることが好ましく、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトンを用いることがより好ましい。なお、これらの有機溶媒は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
溶媒の含有量としては、組成物の固形分質量100部に対して、1000部以下であることが好ましく、200部以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、「組成物の固形分」とは、組成物中の溶媒を除いた成分の総質量を意味する。したがって、組成物が溶媒を含まない場合には、組成物の全質量が固形分となる。
【0091】
[添加剤]
一実施形態において、組成物は添加剤を含んでいてもよい。
【0092】
前記添加剤としては、特に制限されないが、尿素、尿素誘導体、糖、糖アルコール、有機酸、有機酸塩等の解繊助剤;前記解繊助剤の分解物;リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等の難燃剤;可塑剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;光安定化剤;帯電防止剤;導電性付与剤;応力緩和剤;離型剤;結晶化促進剤;加水分解抑制剤;潤滑剤;衝撃付与剤;摺動性改良剤;核剤;強化剤;補強剤;流動調整剤;染料;増感材;着色用顔料;ゴム質重合体;増粘剤;沈降防止剤;タレ防止剤;消泡剤;カップリング剤;防錆剤;抗菌・防カビ剤;防汚剤;導電性高分子等が挙げられる。これらの添加剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
<組成物の製造方法>
組成物は、特に制限されず、公知の方法により製造されうる。
【0094】
例えば、セルロース繊維およびフィラーを混合し、これを熱可塑性樹脂に混合して組成物を製造してもよいし、熱可塑性樹脂およびフィラーを混合し、これにセルロース繊維を混合して組成物を製造してもよいし、熱可塑性樹脂およびセルロース繊維を混合し、これにフィラーを混合して組成物を製造してもよいし、熱可塑性樹脂およびセルロース繊維を混合し、熱可塑性樹脂およびフィラーを混合し、個別に調製した混合物を混合して組成物を製造してもよい。この際、前記セルロース繊維が変性セルロース繊維である場合には、セルロース繊維を変性してセルロース分散液を調製する工程をさらに含んでいてもよい。
【0095】
好ましい一実施形態によれば、組成物の製造方法は、熱可塑性樹脂と、セルロース繊維と、フィラーと、を含む、混合物を溶融混練する工程を含む。
【0096】
以下、上記好ましい一実施形態について詳細に説明する。
【0097】
[混合物]
混合物は、熱可塑性樹脂と、セルロース繊維と、フィラーと、を含む。
【0098】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂は、上述したものが用いられうることからここでは説明を省略する。
【0099】
混合物中の熱可塑性樹脂の含有率は、混合物の固形分の全質量に対して、50~99質量%であることが好ましく、70~95質量%であることがより好ましい。熱可塑性樹脂の添加量が50質量%以上であると、得られる組成物において加熱溶融することによって各種形状へ成形できることから好ましい。一方、熱可塑性樹脂の添加量が99質量%以下であると、得られる組成物において樹脂を補強することにより各種機能を付与できることから好ましい。なお、本明細書において、「混合物の固形分」とは、混合物中に含有される溶媒を除く不揮発性の成分を意味する。混合物が溶媒を含まない場合には、混合物の全質量が混合物の固形分となる。
【0100】
(セルロース繊維)
セルロース繊維は、上述したものが用いられうることからここでは説明を省略する。
【0101】
混合物中のセルロース繊維原料の含有率は、混合物の固形分の全質量に対して、0.1~20質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましい。セルロース繊維の添加量が0.1質量%以上であると、得られる組成物において高い機械特性、特に樹脂の流れ方向(MD方向)において高い物性(弾性率、強度)が得られうるできることから好ましい。一方、セルロース繊維の添加量が20質量%以下であると、得られる組成物において溶融粘度を低くすることができ、取扱い性に優れることから好ましい。
【0102】
(フィラー)
フィラーについても上述したものが用いられうることからここでは説明を省略する。
【0103】
混合物中のフィラーの含有率は、混合物の固形分の全質量に対して、2~30質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。フィラーの添加量が2質量%以上であると、得られる組成物において高い機械特性、特に樹脂の流れに対して垂直な方向(TD方向)において高い物性(弾性率、強度)が得られうることから好ましい。一方、フィラーの添加量が30質量%以下であると、得られる組成物において複合材料の靱性が高くできることから好ましい。
【0104】
(分散剤)
混合物は分散剤を含んでいてもよい。混合物が分散剤を含むことで、後述する溶融混練をする際に、特にセルロース繊維が熱可塑性樹脂中で好適に分散しうる。
【0105】
分散剤としては、上述したものが用いられうることからここでは説明を省略する。
【0106】
混合物中の分散剤の含有率は、混合物の固形分の全質量に対して、1~20質量%であることが好ましく、2~15質量%であることがより好ましい。分散剤の添加率が1質量%以上であると、セルロース繊維やフィラーをより微分散できることから好ましい。一方、分散剤の添加率が20質量%以下であると、熱劣化やブリードアウトによる複合材の性能低下が抑制できることから好ましい。
【0107】
(解繊助剤)
混合物は解繊助剤を含んでいてもよい。混合物が解繊助剤を含むことで、後述する溶融混練をする際に、特にセルロース繊維の少なくとも一部が解繊しうる。これにより、より高い機械的特性を発現しうる。
【0108】
例えば、比較的セルロース繊維の幅および/または繊維長が大きいセルロース繊維を用いた場合、混合物に解繊助剤を添加し、後述する溶融混練時に生じる圧力等を利用することでセルロース繊維を解繊し、セルロース繊維の幅および/または繊維長が小さいセルロース繊維、またはセルロース繊維の解繊物を含む組成物を製造することができる。
【0109】
このような利点は、セルロース繊維が未変性の場合により有効である。セルロース繊維が未変性であると、セルロース繊維は多数のヒドロキシ基を有するため、分子内および/または分子間水素結合により解繊しにくい。このため、通常、水中で未変性セルロース繊維を解繊した後に脱水、乾燥して熱可塑性樹脂と混合される。しかしながら、本実施形態によれば、別途要する水中での解繊、脱水、乾燥等の工程を行うことなく、溶融混練中で解繊することができる。これにより、解繊された未変性セルロース繊維が熱可塑性樹脂に好適に分散した組成物が得られうる。よって、より好ましい一実施形態において、組成物の製造方法は、熱可塑性樹脂と、未変性セルロース繊維と、フィラーと、解繊助剤と、を含む、混合物を溶融混練する工程を含む。
【0110】
解繊助剤としては、上述したものが用いられうることからここでは説明を省略する。
【0111】
混合物中の解繊助剤の含有率は、混合物の固形分の全質量に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。解繊助剤の添加率が0.1質量%以上であると、セルロース繊維をより細く解繊できることから好ましい。一方、解繊助剤の添加率が10質量%以下であると、得られる組成物における機械物性低下を抑制できることから好ましい。
【0112】
(溶媒、添加剤)
混合物は、溶媒、添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0113】
溶媒、添加剤は上述と同様であるからここでは説明を省略する。
【0114】
ただし、製造コスト、組成物の性能等の観点から、溶媒については用いないことが好ましい。
【0115】
(混合物の調製方法)
混合物の調製方法は特に制限されない。例えば、セルロース繊維にフィラーを混合しこれを熱可塑性樹脂に混合して調製してもよいし、セルロース繊維およびフィラーをそれぞれ独立に熱可塑性樹脂に混合して調製してもよい。
【0116】
[溶融混練]
上述の混合物を溶融混練することにより、組成物を製造することができる。なお、必要に応じて溶融混練中に熱可塑性樹脂、セルロース繊維、フィラー等を添加して組成物の組成を調整することができる。なお、溶融混練の際にセルロース繊維が解繊されうることから、混合物中に含まれるセルロース繊維と、得られる組成物に含まれるセルロース繊維とは、セルロース繊維の幅、繊維長、アスペクト比等が異なることがある。また、溶融混練の際にフィラーに力が加わることから、混合物中に含まれるフィラーと、得られる組成物に含まれるフィラーとは、最大径、最小径、アスペクト比、平均粒径等が異なることがある。
【0117】
溶融混練の温度は、使用する熱可塑性樹脂によっても異なるが、100~380℃であることが好ましく、120~280℃であることがより好ましい。
【0118】
溶融混練の時間は、使用する熱可塑性樹脂によっても異なるが、1~20分であることが好ましく、3~10分であることがより好ましい。
【0119】
<成形体>
本発明の一形態によれば、成形体が提供される。この際、前記成形体は、上述の組成物を成形してなる。
【0120】
上述の組成物は、樹脂の流れ方向(MD方向等)にセルロース繊維が配向する傾向があり、樹脂の流れ方向に対して垂直な方向(TD方向等)にフィラーが配向する傾向がある。その結果、方向性によらず高い機械特性を有する。このため、前記組成物を成形して得られる成形体もまた、方向性によらず高い機械特性を有する。
【0121】
一実施形態において、前記成形体は、あらゆる方向からの外力に対して高い機械特性を有することから、自動車、電車、船舶、飛行機等の内装材、外装材、構造材等;パソコン、テレビ、時計、電話、携帯電話、携帯音楽再生機器、映像再生機器、印刷機器、複写機器、スポーツ用品等の筺体、構造材、内部部品等;建築材;文具等の事務機器等、容器、コンテナー等に好適に適用することができる。
【0122】
<成形体の製造方法>
本発明の一形態によれば、成形体の製造方法が提供される。この際、前記成形体の製造方法は、上述の方法で製造された組成物を成形することを含む。
【0123】
組成物の成形方法としては、特に制限されないが、圧縮成形、射出成形、押出成形、中空成形、発泡成形等が挙げられる。これらの成形方法は、単独で適用しても、2種以上を組み合わせて適用してもよい。
【0124】
なお、成形前または成形中に組成物に、熱可塑性樹脂、セルロース繊維、フィラー等をさらに添加して物性を調整してもよい。
【実施例0125】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」または「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」または「質量%」を表す。
【0126】
[実施例1]
(組成物の製造)
熱可塑性樹脂である高密度ポリエチレン(HDPE)80部、セルロース繊維原料である針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)(幅:50μm、繊維長:2mm、Howe Sound Pulp and Paper社製)4.8部、フィラーである黒鉛(アスペクト比:45、平均粒径:11μm)15.2部、分散剤3部を混合した。得られた混合物を、混練装置であるKZW25(株式会社テクノベル製)にて140℃の条件で溶融混練し組成物を製造した。
【0127】
得られた組成物中のセルロース繊維の幅を以下の方法で測定した。具体的には、ポリエチレンテレフタレート製シートに挟み、160℃で1mm厚さにプレスした後、中央部を1cm切り取り金属メッシュに包み、熱キシレン(マントルヒーターを用い加熱還流)で樹脂を抽出後、金網に残ったセルロース繊維を乾燥させた。そして、得られた乾燥セルロース繊維について、以下の方法でSEM観察した。すなわち、倍率5,000倍で観察し、1視野中に20本以上のセルロース繊維が交差する直線を設けた。そして、前記直線上に交差されたすべてのセルロース繊維について、観察画面中のセルロース繊維のうち、最も数値が小さくなる2点間の距離を測定し、その平均値をセルロース繊維の幅とした。その結果、セルロース繊維の幅は、0.7μmであった。なお、このことから組成物中のセルロース繊維はNBKPの解繊物であるといえる。
【0128】
また、得られた組成物中のセルロース繊維の繊維長を以下の方法で測定した。具体的には、組成物をポリエチレンテレフタレート製シートに挟み、160℃で1mm厚さにプレスした後、中央部を1cm切り取り金属メッシュに包み、熱キシレンで樹脂を抽出後、金網に残ったセルロース繊維を乾燥させた。そして、得られた乾燥セルロース繊維について、以下の方法でSEMにて観察を行った。すなわち、倍率500倍で観察し、25視野を合成し、その中に始点と終点が観察されるセルロース繊維を20本選び、最も数値が大きくなる2点間の距離をそれぞれ測定し、その平均値をセルロース繊維の繊維長とした。その結果、セルロース繊維の繊維長は、88μmであった。
【0129】
そして、組成物中のセルロース繊維のアスペクト比(繊維長/幅)を算出したところ、126であった。
【0130】
また、得られた組成物のフィラーの最大径を以下の方法で測定した。具体的には、組成物を1cm×1cm×0.1mmに切り取り、得られたサンプルを以下の方法でSEM観察した。すなわち、倍率5000倍で観察し、1視野中に存するフィラーを任意に30個選択し、それぞれのフィラーの最大径を測定し、その平均値を算出した。その結果、フィラーの最大径は4.5μmであった。
【0131】
さらに、フィラーの最小径について、上記サンプルを用いた以下の方法でSEM観察した。すなわち、倍率10,000倍観察し、4視野中に存するフィラーを任意に30個選択し、それぞれ最小径を測定し、その平均値を算出した。その結果、0.1μmであった。
【0132】
フィラーのアスペクト比を(最大径/最小径)により計算した。その結果のアスペクト比は45であった。
【0133】
(成形体の製造)
製造した組成物を、射出成形機であるSE-75D(住友重機械工業株式会社製)を用いて、160℃の条件でISO D2の形状(平板形状)に成形した。
【0134】
[実施例2]
フィラーとして黒鉛に代えて、タルク(アスペクト比:20、平均粒径:5μm)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物および成形体を製造した。
【0135】
なお、組成物中のセルロース繊維の幅、繊維長、およびアスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ0.7μm、95μm、135であった。
【0136】
また、組成物中のフィラーの最大径、最小径、アスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ3.6μm、0.15μm、24であった。
【0137】
[実施例3]
フィラーとして黒鉛に代えて、マイカ(アスペクト比:80、平均粒径:25μm)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物および成形体を製造した。
【0138】
なお、組成物中のセルロース繊維の幅、繊維長、およびアスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ0.7μm、85μm、121であった。
【0139】
また、組成物中のフィラーの最大径、最小径、アスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ13μm、0.15μm、86であった。
【0140】
[実施例4]
熱可塑性樹脂の添加量を73.5部、セルロース繊維原料の添加量を10.3部、フィラーの添加量を16.2部に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物および成形体を製造した。
【0141】
なお、組成物中のセルロース繊維の幅、繊維長、およびアスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ0.7μm、88μm、126であった。
【0142】
また、組成物中のフィラーの最大径、最小径、アスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ4.5μm、0.1μm、45であった。
【0143】
[実施例5]
熱可塑性樹脂の添加量を84.0部、セルロース繊維原料の添加量を0.8部、フィラーの添加量を15.1部に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物および成形体を製造した。
【0144】
なお、組成物中のセルロース繊維の幅、繊維長、およびアスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ0.7μm、89μm、127であった。
【0145】
また、組成物中のフィラーの最大径、最小径、アスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ4.5μm、0.1μm、45であった。
【0146】
[実施例6]
熱可塑性樹脂として高密度ポリエチレン(HDPE)に代えて、ポリプロピレン(PP)を用い、熱可塑性樹脂の添加量を84.7部、セルロース繊維原料の添加量を5.1部、フィラーの添加量を10.2部に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物および成形体を製造した。
【0147】
なお、組成物中のセルロース繊維の幅、繊維長、およびアスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ0.8μm、77μm、96であった。
【0148】
また、組成物中のフィラーの最大径、最小径、アスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ4.5μm、0.1μm、45であった。
【0149】
[実施例7]
熱可塑性樹脂として高密度ポリエチレン(HDPE)に代えて、ポリアミド(PA)であるPA6(宇部興産株式会社製)を用い、熱可塑性樹脂の添加量を84.7部、セルロース繊維原料の添加量を5.1部、フィラーの添加量を10.2部に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物および成形体を製造した。
【0150】
なお、組成物中のセルロース繊維の幅、繊維長、およびアスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ0.9μm、68μm、76であった。
【0151】
また、組成物中のフィラーの最大径、最小径、アスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ4.5μm、0.1μm、45であった。
【0152】
[比較例1]
熱可塑性樹脂の添加量を83.3部、セルロース繊維原料の添加量を16.7部、フィラーを添加しなかったことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物および成形体を製造した。
【0153】
なお、組成物中のセルロース繊維の幅、繊維長、およびアスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ0.7μm、88μm、126であった。
【0154】
[比較例2]
熱可塑性樹脂の添加量を84.7部、フィラーの添加量を15.3部、セルロース繊維を添加しなかったことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物および成形体を製造した。
【0155】
なお、組成物中のフィラーの最大径、最小径、アスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ4.5μm、0.1μm、45であった。
【0156】
[比較例3]
フィラーとして黒鉛に代えて、タルク(アスペクト比:20、平均粒径:5μm)を用いたことを除いては、比較例2と同様の方法で組成物および成形体を製造した。
【0157】
なお、組成物中のフィラーの最大径、最小径、アスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ3.6μm、0.15μm、24であった。
【0158】
[比較例4]
フィラーとして黒鉛に代えて、マイカ(アスペクト比:80、平均粒径:25μm)を用いたことを除いては、比較例2と同様の方法で組成物および成形体を製造した。
【0159】
なお、組成物中のフィラーの平均粒径、アスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ13μm、0.15μm、86であった。
【0160】
[比較例5]
フィラーとして黒鉛に代えて、タルク(アスペクト比:5、平均粒径:5μm)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物および成形体を製造した。
【0161】
なお、組成物中のセルロース繊維の幅、繊維長、およびアスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ0.7μm、86μm、125であった。
【0162】
また、組成物中のフィラーの平均粒径、最小径、アスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ0.8μm、0.16μm、5であった。
【0163】
[比較例6]
セルロース繊維原料として針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)に代えて、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)(幅:50μm、繊維長:0.8mm、Howe Sound Pulp and Paper社製)を用い、フィラーとして黒鉛に代えて、タルク(アスペクト比:20、平均粒径:5μm)を用い、熱可塑性樹脂の添加量を78.1部、セルロース繊維原料の添加量を7.8部、フィラーの添加量を14.1部に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で組成物および成形体を製造した。
【0164】
なお、組成物中のセルロース繊維の幅、繊維長、およびアスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ1.5μm、30μm、20であった。
【0165】
また、組成物中のフィラーの平均粒径、最小径、アスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ3.6μm、0.15μm、24であった。
【0166】
[比較例7]
熱可塑性樹脂として高密度ポリエチレン(HDPE)に代えて、ポリプロピレン(PP)を用いたことを除いては、比較例1と同様の方法で組成物および成形体を製造した。
【0167】
なお、組成物中のセルロース繊維の幅、繊維長、およびアスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ0.7μm、98μm、140であった。
【0168】
[比較例8]
熱可塑性樹脂として高密度ポリエチレン(HDPE)に代えて、ポリプロピレン(PP)を用いたことを除いては、比較例3と同様の方法で組成物および成形体を製造した。
【0169】
なお、組成物中のフィラーの平均粒径、最小径、アスペクト比を実施例1と同様の方法で測定、算出したところ、それぞれ3.6μm、0.15μm、24であった。
【0170】
実施例1~7および比較例1~8で製造した組成物の組成を下記表1に示す。
【0171】
【表1】
【0172】
[物性評価]
実施例1~7および比較例1~8で製造した組成物または成形体について各種物性の評価を行った。
【0173】
(メルトフローレート(MFR))
製造した組成物5gをシリンダ内に投入し、所定の温度に昇温した。そして、2.16kgfの荷重条件において、シリンダ底部のダイス(口径(最大径):2mm)から押し出される樹脂を1分間ごとに2回手動で切り取った。前記10分当たりの樹脂量を計算し、その平均値を算出して、以下の基準に従って評価した。得られた結果を下記表2に示す。
【0174】
なお、実施例1~6および比較例1~8については前記所定の温度は190℃であり、実施例7については前記所定の温度は230℃である。
【0175】
○:4g/10分以上
△:1g/10分以上4g/10分未満
×:1g/10分未満
【0176】
(MD曲げ弾性率)
製造した成形体を、MD方向に幅25mmを切り出し、MD方向試験片を作製した。得られた試験片を用いて、ISO 178による曲げ試験により、MD方向の曲げ弾性率を測定した。得られた曲げ弾性率は、以下の基準に従って評価した。得られた結果を下記表2に示す。
【0177】
○:MD方向の曲げ弾性率が2.5GPa以上
△:MD方向の曲げ弾性率が2.0GPa以上2.5GPa未満
×:MD方向の曲げ弾性率が2.0GPa未満
【0178】
(TD曲げ弾性率)
製造した成形体を、TD方向に幅25mmを切り出し、TD方向試験片を作製した。得られた試験片を用いて、ISO 178による曲げ試験により、TD方向の曲げ弾性率を測定した。得られた曲げ弾性率は、以下の基準に従って評価した。得られた結果を下記表2に示す。
【0179】
○:TD方向の曲げ弾性率が2.5GPa以上
△:TD方向の曲げ弾性率が2.0GPa以上2.5GPa未満
×:TD方向の曲げ弾性率が2.0GPa未満
【0180】
(MD/TD弾性率比)
MD曲げ弾性率の測定値をTD曲げ弾性率の測定値で除した値(MD曲げ弾性率/TD曲げ弾性率)をMD/TD弾性率比として算出し、以下の基準に従って評価した。得られた結果を下記表2に示す。
【0181】
○:MD/TD弾性率比が0.9~1.1
×:MD/TD弾性率比が0.9未満または1.1超
【0182】
(MD/TD強度比)
上記MD方向試験片およびTD方向試験片を用いて、ISO 178による曲げ試験により、MD方向の強度(MD強度)およびTD方向の強度(TD強度)を測定した。そして、MD強度の測定値をTD強度の測定値で除した値(MD強度/TD強度)をMD/TD強度比として算出し、以下の基準に従って評価した。得られた結果を下記表2に示す。
【0183】
○:MD/TD強度比が0.9~1.0
×:MD/TD強度比が0.9未満または1.0超
【0184】
(比弾性率)
上記MD方向試験片を用いて、アルキメデス法により比重を測定した。そして、MD曲げ弾性率を比重で除した値(MD曲げ弾性率/比重)を比弾性率として算出し、以下の基準に従って評価した。得られた結果を下記表2に示す。
【0185】
○:比弾性率が2.5GPa以上
△:比弾性率が2.0GPa以上2.5GPa未満
×:比弾性率が2.0GPa未満
【0186】
(比強度)
上記MD方向試験片を用いて、アルキメデス法により比重を測定した。そして、MD方向の強度の測定値を比重で除した値(MD方向の強度/比重)を比弾性率として算出し、以下の基準に従って評価した。得られた結果を下記表2に示す。
【0187】
○:比強度が40N・m/kg以上
△:比強度が30N・m/kg以上40N・m/kg未満
×:比強度が30N・m/kg未満
【0188】
【表2】
【0189】
実施例1~7と比較例1~8とを対比すると、実施例1~7は、MD方向およびTD方向ともに曲げ弾性率に優れ、その弾性率比も同等レベルであることが分かる。すなわち、実施例1~7は、方向性によらず高い機械特性を有することが分かる。
【0190】
なお、比較例5については、MD曲げ弾性率およびTD曲げ弾性率がともに「△」であるが、測定値を用いてMD/TD弾性率比を算出した場合には、「×」の評価結果となった。