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特開2022-186815ワーク配分管理方法、ワーク配分管理装置、及び測定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186815
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】ワーク配分管理方法、ワーク配分管理装置、及び測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/00 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
G01B21/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165688
(22)【出願日】2022-10-14
(62)【分割の表示】P 2018062876の分割
【原出願日】2018-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】仲田 謙太郎
(57)【要約】
【課題】複数の同型の測定機のうち、優れた測定機を客観的な情報に基づいて検出し、実測値のバラツキが少ない測定機に、より多くのワークを配分し効率的な測定を行うことができるワーク配分管理方法、ワーク配分管理装置、及び測定システムを提供する。
【解決手段】ワーク配分管理方法は、第1の配分率でワークを配分する第1の配分ステップと、実測値を取得する実測値取得ステップ(ステップS2A)と、実測値を、測定機毎に蓄積する蓄積ステップ(ステップS2A)と、測定機毎に実測値のバラツキ度合いを示す統計量を算出する統計量算出ステップ(ステップS3A)と、実測値のバラツキ度合いが小さい測定機に、より多くのワークが配分されるように第2の配分率を算出する配分率更新ステップ(ステップS4A)と、測定機に第2の配分率でワークを配分する第2の配分ステップと、を含む。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ設計値で加工された複数のワークを、複数の同型の測定機に配分して測定する際のワーク配分管理方法であって、
前記測定機に第1の配分率で前記ワークを配分する第1の配分ステップと、
前記測定機により、配分された前記ワークを測定した結果である実測値を取得する実測値取得ステップと、
前記実測値取得ステップで取得された前記実測値を、前記測定機毎に蓄積する蓄積ステップと、
前記蓄積ステップで蓄積された前記実測値に基づいて、前記測定機毎に保証された精度の範囲である許容差範囲内における前記実測値のバラツキ度合いを示す統計量を算出する統計量算出ステップと、
前記統計量算出ステップにより算出された前記測定機毎の前記統計量に基づいて、前記実測値のバラツキ度合いが小さい測定機に、より多くの前記ワークが配分されるように第2の配分率を算出する配分率更新ステップと、
前記測定機に前記第2の配分率で前記ワークを配分する第2の配分ステップと、
を含むワーク配分管理方法。
【請求項2】
前記統計量算出ステップでは、前記測定機が三次元座標測定機である場合には、X軸、Y軸、Z軸からなる機械座標系の軸毎に前記統計量を算出し、
前記配分率更新ステップでは、前記ワークの測定課題を達成するために使用される前記軸の前記統計量に基づいて、前記実測値のバラツキ度合いが小さい前記軸を有する前記三次元座標測定機に、より多くの前記測定課題を有する前記ワークを配分する前記第2の配分率を算出する請求項1に記載のワーク配分管理方法。
【請求項3】
前記統計量算出ステップでは、以下の[数1]式に基づいて、前記実測値のバラツキ度合いを示すバラツキ指数D%を前記統計量として算出する請求項1又は2に記載のワーク配分管理方法。
【数1】
なお[数1]式において、Lmaxは実測値の最大値を示し、Lminは実測値の最小値を示す。UPは前記許容差範囲における最大許容差を示し、LPは前記許容差範囲における最小許容差を示す。
【請求項4】
前記統計量算出ステップでは、前記実測値の分散又は標準偏差を前記統計量として算出する請求項1又は2に記載のワーク配分管理方法。
【請求項5】
同じ設計値で加工された複数のワークを、複数の同型の測定機に配分して測定する際のワーク配分管理装置であって、
前記測定機に第1の配分率で前記ワークを配分する指令を出力する第1の配分指令部と、
前記測定機により、配分された前記ワークを測定した結果である実測値を取得する実測値取得部と、
前記実測値取得部で取得された前記実測値を、前記測定機毎に蓄積する蓄積部と、
前記蓄積部で蓄積された前記実測値に基づいて、前記測定機毎に保証された精度の範囲である許容差範囲内における前記実測値のバラツキ度合いを示す統計量を算出する統計量算出部と、
前記統計量算出部により算出された前記測定機毎の前記統計量に基づいて、前記実測値のバラツキ度合いが小さい測定機に、より多くの前記ワークが配分されるように第2の配分率を算出する配分率更新部と、
前記測定機に前記第2の配分率で前記ワークを配分する指令を出力する第2の配分指令部と、
を備えるワーク配分管理装置。
【請求項6】
請求項5に記載されたワーク配分管理装置と、
前記ワークを運搬するワーク運搬装置と、
運搬された前記ワークを測定する複数の同型の測定機と、
を備える測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク配分管理方法、ワーク配分管理装置、及び測定システムに関し、特に複数の同型の測定機にワークを配分する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワークの搬送に関する技術が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、ワークの効率的な搬送を目的とした、複数の無人搬送車から構成される無人搬送車制御システムが記載されている。この無人搬送車制御システムでは、先ず各無人搬送車の現在位置を求め、被搬送物載置の有無及び異常発生の有無を判定する。そして次に、求めた現在位置と判定結果と保持手段に保持されている各種情報(被搬送物の搬送順序、無人搬送車の待機位置情報等)とから、搬送に供する無人搬送車の特定、使用台数の決定、複数台の無人搬送車を用いるときの各々の無人搬送車の相対的な配車パターンの決定が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04-59464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、複数の同型の測定機を使用して、同じ設計値で加工された複数のワークを測定する場合には、オペレータの経験に基づいてワークの配分が行われている。例えば、オペレータは、エラーの発生頻度が少ない測定機を経験的に認識し、その測定機にはより多くのワークを配分する。このようにオペレータの経験によりワークの配分を決める場合には、オペレータが認識できるようなエラーのみワークの配分に考慮され、オペレータが認識できない測定機間の違いはワークの配分に考慮されない。
【0006】
一方で、スペック上は全く同等である同型の測定機であっても、組立精度、使用環境、メンテナンス有無等の様々な要因により、保証された精度内での実測値のバラツキ度合いや、測定項目の得手不得手といった僅かな差異や再現性に振れ幅が存在する。
【0007】
複数の同型の測定機を使用して、同じ設計値で加工された複数のワークを測定する場合においても、測定機間の実測値に関するバラツキ度合いを把握し、実測値のバラツキ度合いが少ない測定機により多くのワークを配分することにより、効率的な測定を行うことができる。
【0008】
上述した特許文献1には、このようなワークの配分に関する技術に関しては言及されていない。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、複数の同型の測定機のうち、実測値のバラツキ度合いが少ない測定機を検出し、その測定機に、より多くのワークを配分し効率的な測定を行うことができるワーク配分管理方法、ワーク配分管理装置、及び測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の一の態様であるワーク配分管理方法は、同じ設計値で加工された複数のワークを、複数の同型の測定機に配分して測定する際のワーク配分管理方法であって、測定機に第1の配分率でワークを配分する第1の配分ステップと、測定機により、配分されたワークを測定した結果である実測値を取得する実測値取得ステップと、実測値取得ステップで取得された実測値を、測定機毎に蓄積する蓄積ステップと、蓄積ステップで蓄積された実測値に基づいて、測定機毎に実測値のバラツキ度合いを示す統計量を算出する統計量算出ステップと、統計量算出ステップにより算出された測定機毎の統計量に基づいて、実測値のバラツキ度合いが小さい測定機に、より多くのワークが配分されるように第2の配分率を算出する配分率更新ステップと、測定機に第2の配分率でワークを配分する第2の配分ステップと、を含む。
【0011】
本態様によれば、複数の同型の測定機において、統計量に基づいて実測値のバラツキ度合いが少ない測定機を検出し、その測定機に多くのワークが配分されるので、効率的な測定を行うことができる。
【0012】
好ましくは、統計量算出ステップでは、測定機が三次元座標測定機である場合には、X軸、Y軸、Z軸からなる機械座標系の軸毎に統計量を算出し、配分率更新ステップでは、ワークの測定課題を達成するために使用される軸の統計量に基づいて、実測値のバラツキ度合いが小さい軸を有する三次元座標測定機に、より多くの前述の測定課題を有するワークが配分されるように第2の配分率を算出する。これにより、ワークの測定課題で使用される機械座標系の軸を考慮してワークが配分されるので、効率的に測定を行うことができる。
【0013】
好ましくは、統計量算出ステップでは、以下の[数1]式に基づいて、設計値の許容差に対する実測値のバラツキ度合いを示すバラツキ指数D%を統計量として算出する。
【0014】
【数1】
【0015】
なお上式において、Lmaxは実測値の最大値を示し、Lminは実測値の最小値を示す。UPは最大許容差を示し、LPは最小許容差を示す。
【0016】
これにより、設計値の許容差に対するバラツキ度合であるバラツキ指数Dが統計量として算出され、より効率的な測定を行うことができる。
【0017】
好ましくは、統計量算出ステップでは、実測値の分散又は標準偏差を統計量として算出する。これにより、正確に実測値のバラツキ度合いを示す統計量を算出することができ、より効率的な測定を行うことができる。
【0018】
本発明の他の態様であるワーク配分管理装置は、同じ設計値で加工された複数のワークを、複数の同型の測定機に配分して測定する際のワーク配分管理装置であって、測定機に第1の配分率でワークを配分する指令を出力する第1の配分指令部と、測定機により、配分されたワークを測定した結果である実測値を取得する実測値取得部と、実測値取得部で取得された実測値を、測定機毎に蓄積する蓄積部と、蓄積部で蓄積された実測値に基づいて、測定機毎に実測値のバラツキ度合いを示す統計量を算出する統計量算出部と、統計量算出部により算出された測定機毎の統計量に基づいて、実測値のバラツキ度合いが小さい測定機に、より多くのワークが配分されるように第2の配分率を算出する配分率更新部と、測定機に第2の配分率でワークを配分する指令を出力する第2の配分指令部と、を備える。
【0019】
本発明の他の態様である測定システムは、上述のワーク配分管理装置と、ワークを運搬するワーク運搬装置と、運搬されたワークを測定する複数の同型の測定機と、を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数の同型の測定機において、実測値のバラツキ度合いが少ない測定機に多くのワークが配分されるので、効率的な測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、測定システムの概略図である。
図2図2は、測定システムを構成する各装置の機能構成例を示す図である。
図3図3は、ワーク配分管理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図4図4は、測定システムによるワークWの配分管理の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、実測値を示す図である。
図6図6は、統計量とワークの配分とに関して一例を示す概念図である。
図7図7は、スコアの例に関して示す図である。
図8図8は、スコアの例に関して示す図である。
図9図9は、スコアの例に関して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。
【0023】
[測定システムの全体構成]
図1は、測定システム1の概略図である。測定システム1は、ワーク配分管理装置10、ワーク運搬装置11、及び同型の三次元座標測定機12A、12B、12Cで構成される。
【0024】
三次元座標測定機12A、12B、12Cは、同型であり同じ構成であるので、ここでは1つの三次元座標測定機12Aを例に挙げて説明を行う。また、本実施形態では、三次元座標測定機12A、12B、12Cによる測定対象のワークWの種類は同じであり、ワークWは同じ設計値で加工されている。したがって、理想的にはワークWの実測値は、三次元座標測定機12A、12B、12Cにおいても等しくなる。
【0025】
三次元座標測定機12Aは、本発明の測定機に相当するものであり、テーブル18Aと、キャリッジ20Aと、プローブヘッド22Aと、プローブ24Aとを備える。三次元座標測定機12Aは、不図示の駆動機構によりキャリッジ20A及びプローブヘッド22Aを駆動して、プローブ24Aの位置及び姿勢を変位させながらプローブ24AをワークWに接触させることにより、ワークWの測定箇所における座標値(互いに直交する3軸方向の座標値)を取得する。なお、三次元座標測定機12Aの詳細な構成については公知技術であるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0026】
三次元座標測定機12A、12B、12Cの夫々は、制御装置14A、14B、14Cが設けられている。なお、制御装置14A、14B、14Cは、同じ構成であるので、ここでは1つの制御装置14Aを例に挙げて説明を行う。制御装置14Aは、例えばパーソナルコンピュータ等の演算処理装置であり、例えばCPU(Central Processing Unit)又はFPGA(field-programmable gate array)等を含む各種の演算部及びメモリ等から構成された演算回路と、各種の機能回路とを備える。この制御装置14Aは、対応する三次元座標測定機12Aに有線接続(無線接続でも可)されている。
【0027】
制御装置14Aは、三次元座標測定機12AによるワークWの測定項目ごとの測定の制御と、ワークWの測定項目ごとの実測値の演算と、を実行する。また、制御装置14Aは、ワーク配分管理装置10に有線接続(無線接続でも可)されている。ここでワークWの測定項目とは、少なくともワークW内での測定箇所(測定位置)と、測定内容(形状及び寸法等)とを定めたものである。
【0028】
ワーク配分管理装置10は、例えばパーソナルコンピュータ等の演算処理装置であり、制御装置14A、14B、14Cに有線接続(無線接続でも可)されている。このワーク配分管理装置10は、三次元座標測定機12A、12B、12Cにより測定された測定項目ごとの実測値を取得し蓄積記憶する。
【0029】
またワーク配分管理装置10は、三次元座標測定機12A、12B、12CへのワークWの配分を管理する。具体的にはワーク配分管理装置10は、ワーク運搬装置11の駆動を制御して、配分率Jに基づいてワークWを三次元座標測定機12A、12B、12Cに配分する。ワーク配分管理装置10は、ワーク運搬装置11に有線接続(無線接続でも可)されている。
【0030】
ワーク運搬装置11は、ワーク配分管理装置10からの指令により駆動し、ワークWを三次元座標測定機12A、12B、12Cに配分する。なお、ワーク運搬装置11の詳細な構成については公知技術であるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0031】
[各装置の機能構成例]
図2は、図1で示した測定システム1を構成する各装置の機能構成例を示す図である。なお、制御装置14A、14B、14Cは同じ構成であるので、ここでは代表して制御装置14Aの各部について説明を行い、制御装置14B、14Cの説明は省略する。
【0032】
三次元座標測定機12Aは、制御装置14Aに接続されている。そして制御装置14Aには、三次元座標測定機12Aの他に操作部30A及び表示部31Aが接続されている。操作部30Aへの入力操作に応じて三次元座標測定機12AによるワークWの測定等が制御される。制御装置14Aは、三次元座標測定機12Aで行われたワークWの測定結果である実測値26をワーク配分管理装置10に出力する。
【0033】
ワーク配分管理装置10は、管理装置本体42と、操作部44と、表示部46と、を備える。操作部44は、例えばキーボード及びマウス等であり、管理装置本体42に対する操作指示の入力に用いられる。表示部46は、管理装置本体42の制御の下、各種表示を行う。
【0034】
ワーク配分管理装置10には、制御装置14A、制御装置14B、制御装置14Cから出力された各実測値26が入力される。そしてワーク配分管理装置10は、各実測値26を三次元座標測定機12A、12B、12C毎に蓄積し記憶する。ワーク配分管理装置10は、三次元座標測定機12A、12B、12C毎に蓄積された実測値26に基づき統計量を算出して、ワークWの配分率Jを算出する。そしてワーク配分管理装置10は、ワーク運搬装置11から出力された配分率の問い合わせ27に対して、配分率の回答28(配分率J)を出力する。なお、管理装置本体42の詳しい説明は後で行う。
【0035】
ワーク運搬装置11は、主にインタフェース51、運搬制御部53、及び駆動部57を備えている。
【0036】
ワーク運搬装置11は、運搬制御部53からインタフェース51を介して配分率の問い合わせ27をワーク配分管理装置10に出力する。そしてワーク運搬装置11には、インタフェース51を介して、ワーク配分管理装置10から出力した配分率の回答28が入力される。運搬制御部53は、入力された配分率Jに基づいて駆動部59を作動させ、ワークWを三次元座標測定機12A、12B、12Cに運搬する。
【0037】
[ワーク配分管理装置の機能構成例]
図3は、ワーク配分管理装置10の機能構成例を示すブロック図であり、特に管理装置本体42の機能構成例を詳細に示している。
【0038】
管理装置本体42は、管理制御部52、記憶部54、及びインタフェース50を備えている。また、管理装置本体42は、操作部44、表示部46が接続されている。
【0039】
管理制御部52は、例えば演算部(CPU又はFPGA等)とメモリとを含む各種演算回路などにより構成されている。管理制御部52は、統計量算出部58、実測値取得部60、配分率更新部62、及び配分指令部64を備えている。また記憶部54は、蓄積部70を備えている。
【0040】
実測値取得部60は、インタフェース51を介して実測値26を取得する。実測値26は、三次元座標測定機12A、12B、12CによりワークWが実際に測定された結果である。
【0041】
蓄積部70は、実測値26を蓄積記憶する。具体的には、三次元座標測定機12A、12B、12CがワークWの測定を行った毎回の実測値26を、三次元座標測定機12A、12B、12C毎に記憶する。
【0042】
統計量算出部58は、蓄積部70に記憶されている蓄積された実測値26を読み出し、実測値26のバラツキ度合いを示す統計量を算出する。
【0043】
配分率更新部62は、三次元座標測定機12A、12B、12Cの統計量を比較して、バラツキ度合いが小さい三次元座標測定機に、優先的にワークを配分するように配分率Jを更新する。
【0044】
なお、統計量算出部58で行われる統計量の算出、及び配分率更新部62で行われる配分率Jの更新に関しては後で詳細に説明する。
【0045】
配分指令部(第1の配分指令部及び第2の配分指令部に相当)64は、ワーク運搬装置11からの配分率の問い合わせ27をインタフェース50を介して取得し、それに応じて、配分率の回答28(ワークを配分する指令に相当)を、インタフェース50を介してワーク運搬装置11に出力する。
【0046】
図4は、測定システム1によるワークWの配分管理の流れを示すフローチャートである(本発明のワーク配分管理方法に相当)。
【0047】
先ず、ワーク運搬装置11は、ワークWの配分率の問い合わせ27をワーク配分管理装置10に送信する(ステップS1C)。そして、ワーク配分管理装置10は、配分率の回答28として初期値である配分率J0(第1の配分率に相当)をワーク運搬装置11に送信する(ステップS1A:本発明の第1の配分ステップに相当)。ワーク運搬装置11は、ワーク配分管理装置10から送信された配分率J0により、ワークWを三次元座標測定機12A、12B、12Cの各々に配分する(ステップS2C)。その後、ワークWを配分された三次元座標測定機12A、12B、12Cは、ワークWの測定を行う(ステップS1B)。三次元座標測定機12A、12B、12Cで取得された実測値26は制御装置14A、14B、14Cにより、ワーク配分管理装置10に送信される。
【0048】
次に、ワーク配分管理装置10は、送信された実測値26を取得し、三次元座標測定機12A、12B、12C毎に蓄積部70に記憶する(ステップS2A:本発明の実測値取得ステップ及び蓄積ステップに相当)。その後、統計量算出部58は、三次元座標測定機12A、12B、12Cに対して、実測値のバラツキ度合いを示す統計量を算出する(ステップS3A:本発明の統計量算出ステップに相当)。そして統計量算出部58は、三次元座標測定機12A、12B、12Cの統計量を相互比較して、バラツキ度合いが少ない三次元測定機に、多くのワークWを配分する配分率J1(第2の配分率に相当)を算出し、初期値の配分率J0を配分率J1に更新する(ステップS4A:本発明の配分率更新ステップに相当)。
【0049】
その後、ワーク配分管理装置10は次のワークWの配分を行うために、配分率の問い合わせ27をワーク配分管理装置10に送信する(ステップS3C)。ワーク配分管理装置10は、ワーク運搬装置11から送信される配分率の問い合わせ27を受信し、更新された配分率の回答28(配分率J1)を送信する(ステップS5A:本発明の第2の配分ステップに相当)。
【0050】
以下、各ステップの処理が繰り返し実行され、ワークWの測定毎に変化する実測値のバラツキ度合いを示す統計量を反映させて第1の配分率を第2の配分率に更新し、実測値のバラツキ度合いが小さい三次元座標測定機にワークWが多く配分される。これにより、三次元座標測定機における問題の発生が抑制され、巻き戻りなどなく効率的な測定を行うことができる。
【0051】
[統計量及び配分率の算出]
次に、統計量算出部58で行われる統計量の算出、及び配分率更新部62で行われる配分率Jの算出に関して説明する。
【0052】
図5は、三次元座標測定機12A、12B、12Cで10個のワークWをそれぞれ測定して得られた実測値26を示す図である。三次元座標測定機12Aの実測値26は符号80に、三次元座標測定機12Bの実測値26は符号82、三次元座標測定機12Cの実測値26は符号84に、示されている。図に示すように、三次元座標測定機12A、12B、12Cにおいて、実測値26のバラツキ度合いは異なる。したがって、統計量算出部58は、蓄積された実測値26のバラツキ度合いを種々の方法で数値化した統計量を算出し、実測値26においてバラツキ度合いが少ない三次元座標測定機を検出する。
【0053】
統計量算出部58は例えば、蓄積された実測値26の分散または標準偏差を三次元座標測定機12A、12B、12C毎に算出し、実測値のバラツキ度合いを示す統計量として算出する。
【0054】
また、統計量算出部58は、以下の[数2]式に基づいて、ワークの設計値の許容差に対する実測値のバラツキ度合いを示すバラツキ指数Dを統計量として算出する。
【0055】
【数2】
【0056】
なお上式において、Lmaxは実測値の最大値を示し、Lminは実測値の最小値を示す。UPは最大許容差を示し、LPは最小許容差を示す。Lmax、Lmin、UP、LPの具体例を図6に図示する。
【0057】
また、統計量算出部58がバラツキ指数Dを算出する際に対象とする実測値26の個数は、任意に変更可能である。
【0058】
次に、配分率更新部62で行われる配分率の算出に関して説明する。
【0059】
配分率更新部62は、統計量算出部58で算出された三次元座標測定機12A、12B、12Cのバラツキ度合いを示す統計量を相互に比較して、ワークWの配分率を算出する。具体的には、配分率更新部62は、バラツキ度合いが小さい三次元座標測定機により多くのワークWを配分し、且つ、三次元座標測定機12A、12B、12Cには少なくとも1つはワークWが配分される配分率を算出する。
【0060】
例えば、既に測定を行っている既知のワークWの場合、三次元座標測定機12A、12B、12Cの夫々のバラツキ度合いを示す統計量の逆数の比とワークWを配分する個数の比とが等しくなるような配分率Jを、配分率更新部62は算出する。
【0061】
また例えば、新規ワークの場合には、「機械座標系の軸に沿った測定課題の割合×各三次元座標測定機の軸におけるバラツキ度合いを示す統計量」が良い結果を有する三次元座標測定機に多くワークWを配分する。なお、三次元座標測定機の軸におけるバラツキ度合いを示す統計量に関しては後で詳細に説明を行う。
【0062】
図6は、バラツキ度合いを示す統計量とワークWの配分とに関して一例を示す概念図である。図6では、図5と同様に、三次元座標測定機12A、12B、12Cの実測値26を符号80、符号82、及び符号84にそれぞれ示す。また、ワークWの設計値における最大許容差UPと、最小許容差LPをワークWの実測値26と共に示す。さらに、三次元座標測定機12A、12B、12Cの各々の実測値の最大値Lmax及び実測値の最大値Lminを示している。
【0063】
また、図6では、三次元座標測定機12A(図中の符号80に対応)、12B(図中の符号82に対応)、12C(図中の符号84に対応)に、ワーク運搬装置11によって配分されるワークWを概念的に示している。
【0064】
統計量算出部58は、上述したように[数2]式によりバラツキ指数Dを三次元座標測定機12A、12B、12Cの各々に対して算出する。例えば、三次元座標測定機12Aのバラツキ指数Dは20%であり、三次元座標測定機12Bのバラツキ指数Dは10%であり、三次元座標測定機12Cのバラツキ指数Dは50%である。そして、統計量算出部58は、バラツキ度合いが小さい測定機を示すスコアを、100/(バラツキ指数D)で算出する。三次元座標測定機12Aのスコアは「5」、三次元座標測定機12Bのスコアは「10」、三次元座標測定機12Cのスコアは「2」と算出される。
【0065】
ワーク配分管理装置10は、算出されたスコアの比に沿ってワーク運搬装置11にワークWを分配させる。具体的には、三次元座標測定機12A、12B、12Cのスコアの比は「5:10:2」であるから、ワークWの配分率も同様に「5:10:2」とする。
【0066】
なお、ワーク配分管理装置10には、配分率の初期値が予め設定されており、測定開始時の初回のワークWの配分は、初期値に基づいて行われる。例えばワーク配分管理装置10は、初期値としてワークWを等しく三次元座標測定機12A、12B、12Cに配分する。またワーク配分管理装置10は、過去の測定のバラツキ度合いを示す統計量を参考に、初期値を設定してもよい。
【0067】
[その他]
≪測定機≫
上記実施形態では、測定機の例として三次元座標測定機に関して説明をしてきが、本発明は形状粗さ測定機、真円度測定機など他の測定機にも適用が可能である。また、上記実施形態では、三次元座標測定機12A、12B、12Cと3台の測定機へのワークWの配分に関して説明したが、測定機の台数に制限はない。
【0068】
≪スコアの他の例≫
上記実施形態では、バラツキ度合いが小さい測定機を示すスコアを三次元座標測定機の単位で算出する例を説明したがこれに限定されるものではない。例えば三次元座標測定機における機械座標系の軸(測定軸)の単位でスコアを算出してもよい。例えば、X座標値の測定課題を有するワークWは、三次元座標測定機のX軸のスコアに基づく配分率により配分される。Y座標値の測定課題を有するワークWは、三次元座標測定機のY軸のスコアに基づく配分率により配分される。XY平面の平面度測定課題を有するワークWは、三次元座標測定機のZ軸のスコアに基づく配分率により配分される。XY平面の真円度測定課題を有するワークWは、(三次元座標測定機のX軸のスコア/2)と(三次元座標測定機のY軸のスコア/2)との和に基づく配分率により配分される。XYZ軸にまたがった平面度測定課題を有するワークWは、測定時の各軸の移動量の割合にしたがって、X軸、Y軸、Z軸の各スコアを分配して算出された配分率により配分される。
【0069】
上記実施形態では、バラツキ度合いが小さい測定機を示すスコアの例として、100/(バラツキ指数D)で算出する例を挙げたがこれに限定されるものではない。例えば、統計量算出部58は、実測値26の分散の逆数又は実測値26の標準偏差の逆数に所定の定数(例えば100)を乗じることによりスコアを算出してもよい。
【0070】
図7図8、及び図9は、バラツキ度合いが小さい測定機を示すスコアの例に関して示す図である。なお、図7図8、及び図9ではスコアが高い程実測値26のバラツキ度合いが少ないことを示している。
【0071】
図7は、ワークW単位の三次元座標測定機A、B、Cの実測値26のスコアに関して示している。ワークDに関しては三次元座標測定機Bが最も良いスコアを有するので、三次元座標測定機Bにより多くのワークDが配分される。また、ワークEに関しては三次元座標測定機Aが最も良いスコアを有しているので、三次元座標測定機Aにより多くのワークEが配分される。ワークFに関しては三次元座標測定機Cが最も良いスコアを有しているので、三次元座標測定機Cにより多くのワークFが配分される。
【0072】
図8は、測定課題(部位)単位の三次元座標測定機A、B、Cの実測値26のスコアに関して示している。測定課題αに関しては三次元座標測定機Aが最も良いスコアを有するので、三次元座標測定機Aに優先的に測定課題αを有するワークが配分される。また、測定課題βに関しては三次元座標測定機Aが最も良いスコアを有するので、三次元座標測定機Aに優先的に測定課題βを有するワークが配分される。また、測定課題γに関しては三次元座標測定機Bが最も良いスコアを有するので、三次元座標測定機Bに優先的に測定課題γを有するワークが配分される。
【0073】
図9は、機械座標系の各軸単位の三次元座標測定機A、B、Cの実測値26のスコアに関して示している。X軸に関しては三次元座標測定機Bが最も良いスコアを有するので、三次元座標測定機BにX軸の測定課題を有するワークが優先的に配分される。Y軸に関しては三次元座標測定機Aが最も良いスコアを有するので、三次元座標測定機AにY軸の測定課題を有するワークが優先的に配分される。Z軸に関しては三次元座標測定機B及びCが最も良いスコアを有するので、三次元座標測定機B及CにZ軸の測定課題を有するワークが優先的に配分される。
【0074】
[本実施形態の効果]
以上のように本実施形態では、同じ設計値で加工された複数のワークを、複数の同型の測定機に配分して測定する際に、実測値のバラツキ度合いを示す統計量に基づいて、実測値のバラツキ度合いが少ない測定機に、より多くのワークを配分して測定させるので、より効率的な測定を行うことができる。
【0075】
以上で本発明の例に関して説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0076】
1 :測定システム
10 :ワーク配分管理装置
11 :ワーク運搬装置
12A-12C :三次元座標測定機
14A-14C :制御装置
42 :管理装置本体
52 :管理制御部
53 :運搬制御部
54 :記憶部
57 :駆動部
58 :統計量算出部
59 :駆動部
60 :実測値取得部
62 :配分率更新部
64 :配分指令部
70 :蓄積部
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9