(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186913
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】医薬物を注入するための皮下注入装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/158 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
A61M5/158 500P
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171142
(22)【出願日】2022-10-26
(62)【分割の表示】P 2019214567の分割
【原出願日】2015-03-25
(31)【優先権主張番号】61/971,966
(32)【優先日】2014-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤルディムシ,アティフ メーメット
(72)【発明者】
【氏名】タン,アーロン
(72)【発明者】
【氏名】ディーアニ,テジャス
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル,ナタン
(72)【発明者】
【氏名】ジェドルゼジェク,エリック
(72)【発明者】
【氏名】カヌガ,チンメイ
(57)【要約】
【課題】使用者の身体に医薬物をデリバリーする医薬物デリバリー装置を提供する。
【解決手段】折り曲げできるハブ18は、左ウィング20と右ウィング22があり、一端部にチューブ16が接続され、その反対側端部に針28が取り付けられる。1つの第1リブ32が、左ウィングには少なくとも配置され、少なくとも1つの第2リブ34が、右ウィングには配置される。これらのウィング20、22は、針とは反対方向に折り曲げられ、互いに合わせてピンチされたとき、使用者の皮膚に針を挿入している間、第1リブ32と第2リブ34がウィング20、22相互の歪み及び/又は滑りを抑え、これにより、ウィング20、22の不必要な動きによる針28の損傷を防ぐ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の身体に医薬物をデリバリーする医薬物デリバリー装置であって、
左ウィング(20)と右ウィング(22)を有し折り曲げできるハブ(18)を備え、前記ハブ(18)は一端部にチューブ(16)が接続され、その反対側端部に曲げられている針(28)が接続されており、
前記針(28)を刺す時、前記左ウィング(20)と前記右ウィング(22)は、前記針(28)から離れる方向に折り曲げられ、
前記左ウィング(20)と前記右ウィング(22)それぞれの下面(50)に斜めに配置され、注入中に前記ハブ(18)の不必要な動きを阻止する複数の下面リブ(48)を有し、前記下面リブ(48)は、前記ハブ(18)が前記針(28)の尖った先端に向う前方方向への動きを阻止するが、前記針(28)の尖った先端から反対の後方方向への動きはできるように傾斜しており、
使用中に前記針(28)の曲折した中間域(44)での剪断及び/又は垂直応力を小さくすることを特徴とする医薬物デリバリー装置。
【請求項2】
前記医薬物デリバリー装置は、使用者の皮膚の皮下組織に医薬物である医薬液体を投与するための前記医薬物デリバリー装置であることを特徴とする請求項1に記載の医薬物デリバリー装置。
【請求項3】
前記医薬物デリバリー装置は、使用者の身体に医薬物を皮下注入するための皮下注入装置であることを特徴とする請求項1に記載の医薬物デリバリー装置。
【請求項4】
前記ハブ(18)における中心部(38)の第1端部にある第1挿入口(40)は、前記針(28)を挿入できるように形成され、前記チューブ(16)と液体が流通する前記中心部(38)の反対側の第2端部にある第2挿入口(42)は、前記チューブ(16)が挿入できるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の医薬物デリバリー装置。
【請求項5】
前記チューブ(16)は、前記第2挿入口(42)から前記中心部(38)の凡そ半分長さに挿入されて、前記針(28)の全長を短くすることを特徴とする請求項4に記載の医薬物デリバリー装置。
【請求項6】
さらに、一端部で雌ルアーコネクター(14)が取り付けられたルアーキャップ(12)を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の医薬物デリバリー装置。
【請求項7】
さらに、一端部で雌ルアーコネクター(14)に接続され、その反対側端部で前記折り曲げできるハブ(18)に接続されるフレキシブルな長い前記チューブ(16)と、
前記チューブ(16)の長さ方向軸に対して交軸方向に調節して前記チューブ(16)中の前記医薬物の流れを制御できるスライドクランプ(24)と、を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の医薬物デリバリー装置。
【請求項8】
前記ウィング(20、22)それぞれの下面(50)にある前記下面リブ(48)は、平行に等間隔で、対応する前記ウィング(20、22)の斜め全長にわたって延びていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の医薬物デリバリー装置。
【請求項9】
前記ウィング(20、22)それぞれの下面(50)にある前記下面リブ(48)は、前記ハブ(18)の中心部(38)の長さ方向軸に対して凡そ45°の角度に位置することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の医薬物デリバリー装置。
【請求項10】
前記左ウィング(20)の下面にある前記下面リブ(48)のそれぞれは、前記左ウィング(20)の左側から、前記中心部(38)の方向である前記左ウィング(20)の右側に向かって斜めに、すなわち上方に傾斜していることを特徴とする請求項9に記載の医薬物デリバリー装置。
【請求項11】
前記右ウィング(22)の下面にある前記下面リブ(48)のそれぞれは、前記中心部(38)に隣接する前記右ウィング(22)の左側から、前記右ウィング(22)の右側に向って斜めに、すなわち下方に傾斜していることを特徴とする請求項9に記載の医薬物デリバリー装置。
【請求項12】
前記ウィングの下面(50)に配置された複数の前記下面リブ(48)は、山形模様または杉綾模様に構築され、並んでいることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の医薬物デリバリー装置。
【請求項13】
前記針(28)は、医薬物を受け入れる薄い管壁を有し、中間域(44)が前記ハブ(18)の外側端部に位置する保持域(46)を囲むように、前記中間域(44)が予め定めた曲率半径に曲げられていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の医薬物デリバリー装置。
【請求項14】
前記保持域(46)が前記針(28)の曲がっている前記中間域(44)を支えるように、前記針(28)の前記中間域(44)が、45~90°の角度に緩やかに曲がっていることを特徴とする請求項13に記載の医薬物デリバリー装置。
【請求項15】
前記針(28)の尖った先端は、前記ハブ(18)の長さ方向軸に対して交軸方向に前記第1挿入口(40)から外に延びていることを特徴とする請求項4に記載の医薬物デリバリー装置。
【請求項16】
前記左ウィング(20)の下面に配置された各下面リブ(48)は、前記左ウィング(20)の左側から前記左ウィング(20)の右側へ、前記ハブ(18)の中心部(38)に向かって上向きに傾きまたは傾斜し、前記右ウィング(22)の下面に配置された各下面リブ(48)は、前記中心部(38)に隣接した前記右ウィング(22)の左側から前記右ウィング(22)の右側へ下向きに傾きまたは傾斜していることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の医薬物デリバリー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、一般に、医薬物(medicinal substances)を注入するための装置、特に、粘稠な液体医薬物を使用者の身体に皮下投与するための医薬液体デリバリー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮下注入装置(subcutaneous infusion devices)は、患者、すなわち使用者の皮膚の下に位置する所望の注入箇所に、選ばれた医薬物を投与するに使用され、医療技術では良く知られている。このような注入装置は、一般に、デリバリーチューブを通して医薬物を受け取るハブで支えられ、かつそのハブから突出するチューブ状カニューレ又はカテーテルが含まれる。典型的に、このハブは、小さな針を有していて、皮膚表面の下に挿入して数日に至る間その場所に留まる。
【0003】
特に、そのような注入装置は、医薬物の静脈内デリバリーに代わって、医薬物を真皮と表皮の下の皮膚層を通り抜けて投与することができる。従来の技術で知られているように、皮下注入装置の使用により、患者が医薬物の投与を頻繁に受けるために注射しなければならない回数を減らすことができる。このような注入装置は、全ての医薬物を投与することができないが、患者に多数回に及ぶ注射を課すことなしに医薬物を投与するに有効で便利な方法である。
【0004】
しかしながら、あるいくつかの医薬物は、非常に粘稠(つまり、3~10cP、センチポアズの範囲)であり、また高流量でデリバリーされるが、これまでの皮下注入装置は、この流量で高粘稠のものをデリバリーするように設計されていない。そのため、そのようなものをデリバリーする間に、デリバリー圧力が過度に高くなり、注入している間に針の中あるいはその隣接域で目詰まりが生じることがある。さらに、注入装置に使用される針は、典型的に約90°に曲がっていて、針の曲がった部分あるいはその近くでねじれる危険性が高い。
【0005】
従来の注入装置の別の問題は、使用中にハブの動きで針を折ることがある。典型的に、針を所望する注入箇所に皮膚表面に対して90°の角度で刺し込んだとき、針を安全に保持するために、ハブに折り曲げできる把持ウィングが付けられている。特に、このウィングは、針とは反対方向に折り曲げ、2つ指の間に挟んで締め付ける。時々、挿入ステップで、折り曲げられたウィングが互いに反対方向に滑って、針の挿入を難しくすることがある。さらに、針が小さな径であるときに、針をしっかりと支えられず、使用中に破損する原因ともなる。
【0006】
そこで、挿入ステップで針を皮膚の上でより安定して保持し易くするように皮下注入装置を改良し、デリバリーステップで高粘稠物の流動抵抗を下げる必要がある。
【発明の概要】
【0007】
この開示は、使用者、すなわち患者の身体に粘稠な液体医薬物を皮下投与するための医療液体デリバリー装置の提供を目的としている。この注入装置は、使用者の皮膚の皮下スペースに粘稠液体あるいは溶液をデリバリーするステップで生じる圧力低下(あるいは流動抵抗)を小さくするように設計されている。以下に、より詳細に記載しているように、この注入装置は、ハブと針の形状により、粘稠な液体を従来の装置より高流量でデリバリーする。
【0008】
この注入装置の1つの態様は、皮下デリバリーの間に高粘稠液体(例えば、3~20cP)を40~400mL/時(ミリリッター/時)の流速で流すのに、低流動抵抗が達成されることである。特に、粘稠な液体を受けいれるために、薄い管壁の24G(ゲージ)針を用意し、針の中間域を予め定めた曲率半径で僅かに曲げ、中間域がハブの外側端部にある保持域を保持するようにする。
【0009】
別の重要な態様は、この注入装置は、針を、所望の注入箇所に乱れを減らして安全に置き、注入中での不快感を伴わない。使用者が装着している間に、ハブの不必要な動きを防ぐために、ハブの下面に実質斜めに配置された複数のリブを設ける。特に、斜めの下面リブは、針の尖った先端部方向に向う前方方向への動きを抑えるが、針の尖った先端部とは反対の後方方向への動きはできるように、角度をつける。さらに、斜めにしたパターンは、針を設置した後にハブの横方向の動きをなくして安定にする。この配置は、針の曲がっている部分での剪断(shear)及び/又は垂直応力(normal stress)を小さくしている。
【0010】
また、この装置の別の態様は、ハブの頂部の側には、ハブの左ウィングと右ウィングそれぞれに1つ、少なくとも2つのリブがある。それぞれのリブは、ウィングに非対称に配置され、これらのウィングが、針とは反対方向に折り曲げられ、(folded back away from the needle)、互いに合わせてピンチされた(pinched together:互いに合わせて挟み押し付けられた)とき、針を皮膚に挿入している間に2つのリブが互いに歪み及び/又は滑るのを防ぐ。従って、針は、ウィングの不必要な動きにより針の破損を防いで、挿入の間、安定して真直になったままである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】上面リブ(top ribs)を有するウィングのあるハブを描いた本発明注入装置の上から見ての斜視図である。
【
図2】
図1の2-2線に沿って、示した方角での縦断面図である。
【
図3】斜めの下面リブ(bottom ribs)があるハブを上から見ての平面図である。
【
図4】
図3の4-4線に沿って、示した方角での縦断面図である。
【
図5】ウィングのあるハブを、針を注入箇所に挿入する準備で針とは反対方向に折り曲げた状態の正面図である。
【
図6】この注入装置を、注入箇所に挿入している状態の斜視図である。
【
図8】針が注入サイト(infusion site)に挿入された後での、ウィングのあるハブの拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~2を参照すると、この皮下注入装置は、一般に10としており、真皮と表皮の下に医薬物を皮下デリバリーするようデザインされている。典型的な医薬物としては、栄養製品および漢方薬がある。この装置10は、廃棄可能であると考えられる。装置10にはルアーキャップ12があり、ルアーキャップ12は、一端部で液体を受け、その反対側端部では補完的な螺旋ねじで雌ルアーコネクター14が取り付けられ、キャップとコネクターをネジ固定している。粘稠な液体医薬物を注入箇所に送るため、長いフレキシブルなチューブ16は、一端部が雌ルアーコネクター14に接続され、その反対側端部が折り曲げできるハブ18に接続されている。このハブ18は、左側すなわち第1ウィング20と右側すなわち第2ウィング22を有している。
【0013】
チューブ16の典型的な長さは、凡そ24インチであるが、異なる適用に適するように如何なる長さのチューブも使用できると考えられる。チューブ16中の粘稠な液体医薬物の流量制御は、スライドクランプ24をチューブの長さ方向軸に対して交軸方向に調節することにより行われる。例として、スライドクランプ24の中心に可動リリーススロット26を設け、リリーススロットをチューブ16に対し選択的に滑らせて、クランプを咬み合う位置と咬み合わない位置の間で変えることができるようにする。
【0014】
好ましい実施形態では、ウィングのあるハブ18は、ハブとその接続部位を一体に形成されるように射出成型あるいは同種のもので成型する。しかしながら、ハブ18は、化学接着剤、溶剤接着、超音波溶接あるいはその他従来の固着化技術によって接続部位にくっつけてもよいと考えられる。特に、ハブ18は、一端部にチューブ16が取り付けられ、その反対側端部に針28が取り付けられ、その針28は、使用していないときには、針プロテクター30の内部にスライドして固定され、安全に守られる。ハブ18が成型された後、接着剤を用いて針28をハブ18上に取り付けることも考えられる。また別に、針28を覆ってハブ18を成型してもよい。
【0015】
典型的な針サイズは、注入中に不快感がないよう凡そ24Gで、典型的な針の長さは、適用に依って6、9あるいは12mm(ミリメートル)のうちの1つとする。好ましくは、針28は、粘稠な液体医薬を受け入れられるように薄い管壁とする。
【0016】
このハブ18の1つの重要な態様は、ハブの折り曲げできる左および右ウィング20、22のそれぞれが、対応するウィングの長さ方向全長に沿って延びる少なくとも1つの上面リブ(top rib)32、34を有している。上面リブ32、34それぞれは、対応するウィング20、22の上面36に配置され、ウィングが折り曲げられたとき、上面リブ32、34が、対応する反対側のウィングの上面36と直接に接触する。その結果、左ウィング20に配置された上面リブ32は、右ウィング22の上面36と合わさり(係合:engage)、反対に、右ウィング22に配置された上面リブ34は、左ウィング20の上面36に合わさる。
【0017】
例として
図1と5の実施形態に示したように、左側、すなわち第1の上面リブ(first top rib)32を、右側、すなわち第2の上面リブ(second top rib)34とは非対称に配置し、ウィング20、22が、針28とは反対方向に折り曲げられ(folded back away from the needle)、互いに合わせてピンチされた(pinched together:互いに合わせて挟み押し付けられた)とき、第1の上面リブ32は第2の上面リブ34と並置する(
図5)。とりわけ、第1の上面リブ32を、ハブ18の長く延びた中心部38とは予め定めた第1距離DA(
図1)離して平行に配置し、第2の上面リブ34を、中心部38とは予め定めた第2距離DB(
図1)離して平行に配置し、第1距離DAと第2距離DBが異なるようにする。
【0018】
例えば、
図5の実施形態に最もよく見られるように、第1距離DAは第2距離DBより長く、そして、ウィング20、22が折り返されたとき、第1リブ(first rib)32が第2リブ(second rib)34の上にいって、リブ32、34が互いに隣り合わせて位置する。その結果、上面リブ32、34のこの特別な配置は、ウィング20、22が互いにねじれる、あるいは滑るのを防ぎ、これにより、皮膚に針を挿入している間に針28が破損する危険を減らす。
【0019】
図1~2に戻って、中心部38の第1端部にある第1挿入口40には針28が挿入できるように、そして中心部の反対側でチューブ16と液体流通する第2端部には第2挿入口42は、チューブが挿入できるようになっている。好ましい実施形態では、チューブ16を、第1挿入口40に、中心部38のほぼ半分の長さに挿入して、針28の全長を短くしている(
図2)。
【0020】
両方の挿入口40、42は、液体医薬物をデリバリーする通路となる。この通路は、高粘稠の液体(例えば、3~20cP)の流動抵抗を低くして、皮下デリバリーしている間、10psi(平方インチ当たりポンド)以上の液体圧力低下なしに、40~400mL/時の流速で流れるようにしている。特に、例示した薄い管壁の24Gステンレス針28が、粘稠な液体医薬物を受け入れる。そして、針28の中間域44を予め定めた曲率半径(例えば、典型的に0.125”で、0.060”以上、あるいは0.200”以下)に僅かに曲がって、針の中間域が、中心域38の第1挿入口40あるいはその近くに位置する保持域46を囲むようにする。
【0021】
保持域46が針の曲がっている中間域を支えることができるように、針28の中間域44が、45~90°(実質90°近く)の角度に緩やかに(gradually)曲げられていることが好ましい。針28の尖った先端は、中心部の長さ方向軸に対して交軸方向になるように中心部38の第1挿入口40から外に延びている。その結果、保持域46は、針28を皮膚に挿入する間のみならず、使用者の身体に付けられている間にも、針が破損する危険性を小さくし、曲がった中間域44を一体に保持している。
【0022】
図2~4、及び
図8を参照すると、ウィング20、22それぞれの下面、すなわち底面50には複数の実質斜めの下面リブ(bottom rib)48a、48bが配置されて、使用中にハブ18の不必要な動きを抑えている。下面リブ48a、48bは、一般に平行に等間隔で、対応するウィング20、22の斜め全長にわたって延びている。下面リブ48a、48bは、針28の尖った先端に向う前方方向への動きを阻止するが、針28の尖った先端とは反対の後方方向への動きはできるように、斜めに、すなわち傾斜している。この特定な並びは、使用中に針28の曲折した中間域44での剪断及び/又は垂直応力を小さくしている。
【0023】
好ましい実施形態では、ハブ18にある第1および第2ウィング20、22の両方とも、下面リブ48a、48bが、中心部38の長さ方向軸に対して凡そ45°の角度で下面50に配置されている。しかしながら、これらリブ48a、48bの重要な態様は、第1ウィング20の下面50に配置された下面リブ48aそれぞれが、第1ウィングの左側から第1ウィングの右側、中心部38に向って上向きに傾き、すなわち傾斜している。鏡に映した配置で、第2ウィング22の下面50に配置された下面リブ48bそれぞれは、中心部38に隣接した第2ウィングの左側から、第2ウィングの右側、下向きに傾き、すなわち傾斜している。全体として、下面リブ48a、48bは、山形あるいは杉綾模様に構築され、並んでいて、これにより、使用者の身体に取付けられている間、ハブ18の不必要な動きを防止している。
【0024】
これらリブ48a、48bによってもたらされる摩擦により、使用中にハブ18が皮膚から滑り落ちるのを防ぐ。斜めに並んだリブ48a、48bは、説明のために示したものであり、ウィング20、22の下面50での摩擦を大きくする摩擦形成として、如何なるタイプの節のあるあるいは織り状のリブ、細長い隆起、溝、突出などでことが考えられる。さらに、リブ48a、48bの傾斜形状及び/又は間隔は、状況に合うように変えることができる。
【0025】
図5~7を参照して、この注入装置の典型的な使用例を、より詳細に説明する。針28を皮膚に挿入する前に、使用者は、ウィング20、22を針28から反対方向に折り曲げ、そしてウィングを2本の指の間に挟んで締め付ける(pinches)。次いで、使用者は、針28から針プロテクター30を抜き、プロテクターを外に出す(
図5)。挿入の準備で、使用者は、所望の注入箇所の清浄にした皮膚を1インチ挟み、そして、針28を、90°の角度で注入箇所に真っ直ぐ一気に挿入する(
図6)。次いで、使用者は、プランジャー54を後方に引くことにより注射器52を付けた針の位置をチェックする。注射器52に血液が見られたときには、この装置10を取り除き、廃棄可能な装置の場合には捨てる。あるいは、使用者は、この装置10と注入場所を準備するプロセスを繰り返す。注射器52に血液が見られないときには、使用者は、針28をその場に固定し、健康管理専門家によって指図された注入を始める(
図7-8)。
【0026】
この注入装置の特定の実施形態を示し、記載したが、当分野の熟練者は、広く、以下の請求の範囲の内で、この開示から逸脱することなしに変更及び修正ができることがわかるであろう。