(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186971
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】ウェーハの位置決め装置及びそれを用いた面取り装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/68 20060101AFI20221208BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01L21/68 G
H01L21/68 N
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172126
(22)【出願日】2022-10-27
(62)【分割の表示】P 2021077568の分割
【原出願日】2017-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】110003535
【氏名又は名称】スプリング弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岸下 真一
(72)【発明者】
【氏名】森田 要一
(57)【要約】
【課題】ガラス、樹脂、シリコンで貼り合わせ処理やモールド処理されたウェーハであっても、確実にエッジ部を検出可能なウェーハの位置決め装置及びそれを用いた面取り装置を得る。
【解決手段】外周エッジを検出してウェーハWの中心を検出するウェーハの位置決め装置において、ウェーハWを載置してウェーハWを保持しながら回転可能とされた測定テーブル66と、載置されたウェーハWの外周エッジ近傍に測定テーブル66と所定の間隔を保持して設置され、ウェーハWの略円盤状の面からの反射光を受光する光学センサ1と、を備え、光学センサ1の受光角度は、ウェーハWの水平面に対して斜面となる面では検出感度が小さくなるように狭められている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイズの異なる大径ウェーハと小径ウェーハの2枚のウェーハが貼り合わされた積層ウェーハのうちサイズの小さい方のウェーハである前記小径ウェーハの外周エッジを検出してウェーハの中心を検出するウェーハの位置決め装置において、
前記積層ウェーハを載置して前記積層ウェーハを保持しながら回転可能とされた測定テーブルと、
載置された前記積層ウェーハのうち前記小径ウェーハの外周エッジ近傍に前記測定テーブルと所定の間隔を保持して設置され、前記小径ウェーハと前記大径ウェーハの略円盤状の面からの反射光を受光する光学センサと、
を備え、
前記光学センサの受光角度が狭められ、前記小径ウェーハの水平面に対して、斜面となる面からの反射光を受光しないようにされたことを特徴とするウェーハの位置決め装置。
【請求項2】
前記受光角度が2枚の前記ウェーハの境界部分のエッジの形状により決定される、請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記反射光により、前記積層ウェーハの面幅のみが検出される、請求項1又は2に記載の位置決め装置。
【請求項4】
サイズの異なる大径ウェーハと小径ウェーハの2枚のウェーハが貼り合わされた積層ウェーハのうちサイズの小さい方のウェーハである前記小径ウェーハの外周エッジを検出してウェーハの中心を検出するウェーハの位置決め装置において、
前記積層ウェーハを載置して前記積層ウェーハを保持しながら回転可能とされた測定テーブルと、
載置された前記積層ウェーハのうち前記小径ウェーハの外周エッジ近傍に前記測定テーブルと所定の間隔を保持して設置され、前記小径ウェーハと前記大径ウェーハの略円盤状の面からの反射光を受光する光学センサと、
を備え、
前記光学センサの受光角度は、前記小径ウェーハの水平面に対して斜面となる面では検出感度が小さくなるように狭められて、前記小径ウェーハの水平面から外周エッジ、そして前記大径ウェーハの水平面まで前記光学センサで測定し、
前記積層ウェーハは、ガラス、樹脂、シリコンのうちの少なくともいずれかを用いて貼り合わせ処理されたウェーハであり、前記受光角度は、前記小径ウェーハにおける斜面部の水平面に対する角度の1/10以下とされたことを特徴とするウェーハの位置決め装置。
【請求項5】
サイズの異なる大径ウェーハと小径ウェーハの2枚のウェーハが貼り合わされた積層ウェーハ端面を研削して面取り加工する面取り装置において、
前記積層ウェーハを載置して前記積層ウェーハを保持しながら回転可能とされた測定テーブルと、
載置された前記積層ウェーハの外周エッジ近傍に前記測定テーブルと所定の間隔を保持して設置され、前記積層ウェーハの略円盤状の面からの反射光を受光する光学センサと、
を備え、
前記光学センサの受光角度が狭められ、前記小径ウェーハの水平面に対して、斜面となる面からの反射光を受光しないようにされた面取り装置。
【請求項6】
前記受光角度が2枚の前記ウェーハの境界部分のエッジの形状により決定される、請求項5に記載の面取り装置。
【請求項7】
前記反射光により、前記積層ウェーハの面幅のみが検出される、請求項5又は6に記載の面取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス、樹脂、シリコンで貼り合わせ処理やモールド処理されたウェーハの位置決め装置及びそれを用いた面取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス、樹脂、シリコンで貼り合わせ処理やモールド処理されたウェーハが提案されており、例えば、基板の絶縁性・透明性などからプロジェクター、高周波デバイス、MEMS応用製品、など様々な応用が期待されている。また、ウェーハの外周縁部には、その結晶方位が後の工程で分かるようにするための目印として、所定の位置にオリフラ(オリエンテーションフラット(OF))またはノッチと言われる切欠きが設けられている。
【0003】
したがって、このような構成のウェーハを、さらなる加工を行う面取り装置や検査を行う検査機等の各種装置に投入する場合には、上記オリフラを基準として、ウェーハの位置決めを行う必要がある。特に、ウェーハの品質向上の要求から、ウェーハ端面(エッジ部)の加工状態が重要視され、ハンドリングによるチッピングを防止するため、縁部を研削することで面取り加工が行われている。
【0004】
ウェーハの位置決めを行う技術として、円板状のウェーハの外周縁部に設けられたオリフラやノッチ等の位置決め基準部を光学的に検出して、この位置決め基準部を基準としてウェーハの位置決めを行うため、ウェーハのセンタリング後、このウェーハを回転させながら、ラインセンサによりウェーハの外周縁部を光学的に測定することが知られ、特許文献1に記載されている。
【0005】
また、上下に積層される半導体ウェーハの位置合わせを行う場合、赤外線カメラ等の撮像手段によって、撮像手段から見て手前側に配置された半導体ウェーハの表面上に形成されたアライメントマークを撮像することが知られ、特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-181849号公報
【特許文献2】特開2015-188042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術においては、積層された状態のウェーハの外形を検出する際、ウェーハ全体の最大外形が検出され、貼り合わせ面に対応する外形を正しく検出することは困難であった。特に、光学的な検出では、被写界深度が有限なことにより焦点位置以外の部分はピンぼけになったり、光源の広がりにより影の境界がぼやけたり、対象物の丸い角で陰影ができたり、エッジ近辺での局所的な反射により歪んだり、することより、実際の画像から得られるエッジは理想のエッジとは程遠く、安定した測定が困難であった。
【0008】
特に、ガラスとシリコンとを貼り合わせたウェーハで、シリコンを基準としてアライメントを行う場合、通常のライン型センサ、画像ではガラス部の透明性、ごみや重なり方、気泡、うねり、汚れ等の問題で位置決めが極めて困難であった。
【0009】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、ガラス、樹脂、シリコンで貼り合わせ処理やモールド処理されたウェーハであっても、汎用的な面取り装置に簡単に組み込むことができると共に、確実にエッジ部を検出可能なウェーハの位置決め装置及びそれを用いた面取り装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の構成は、以下のとおりである。
[1] サイズの異なる大径ウェーハと小径ウェーハの2枚のウェーハが貼り合わされた積層ウェーハのうちサイズの小さい方のウェーハである上記小径ウェーハの外周エッジを検出してウェーハの中心を検出するウェーハの位置決め装置において、上記積層ウェーハを載置して上記積層ウェーハを保持しながら回転可能とされた測定テーブルと、載置された上記積層ウェーハのうち上記小径ウェーハの外周エッジ近傍に上記測定テーブルと所定の間隔を保持して設置され、上記小径ウェーハと上記大径ウェーハの略円盤状の面からの反射光を受光する光学センサと、を備え、上記光学センサの受光角度が狭められ、上記小径ウェーハの水平面に対して、斜面となる面からの反射光を受光しないようにされたことを特徴とするウェーハの位置決め装置。
[2] 上記受光角度が2枚の上記ウェーハの境界部分のエッジの形状により決定される、[1]に記載の位置決め装置。
[3] 上記反射光により、上記積層ウェーハの面幅のみが検出される、[1]又は[2]に記載の位置決め装置。
[4] サイズの異なる大径ウェーハと小径ウェーハの2枚のウェーハが貼り合わされた積層ウェーハのうちサイズの小さい方のウェーハである上記小径ウェーハの外周エッジを検出してウェーハの中心を検出するウェーハの位置決め装置において、上記積層ウェーハを載置して上記積層ウェーハを保持しながら回転可能とされた測定テーブルと、載置された上記積層ウェーハのうち上記小径ウェーハの外周エッジ近傍に上記測定テーブルと所定の間隔を保持して設置され、上記小径ウェーハと上記大径ウェーハの略円盤状の面からの反射光を受光する光学センサと、を備え、上記光学センサの受光角度は、上記小径ウェーハの水平面に対して斜面となる面では検出感度が小さくなるように狭められて、上記小径ウェーハの水平面から外周エッジ、そして上記大径ウェーハの水平面まで上記光学センサで測定し、上記積層ウェーハは、ガラス、樹脂、シリコンのうちの少なくともいずれかを用いて貼り合わせ処理されたウェーハであり、上記受光角度は、上記小径ウェーハにおける斜面部の水平面に対する角度の1/10以下とされたことを特徴とするウェーハの位置決め装置。
[5] サイズの異なる大径ウェーハと小径ウェーハの2枚のウェーハが貼り合わされた積層ウェーハ端面を研削して面取り加工する面取り装置において、上記積層ウェーハを載置して上記積層ウェーハを保持しながら回転可能とされた測定テーブルと、載置された上記積層ウェーハの外周エッジ近傍に上記測定テーブルと所定の間隔を保持して設置され、上記積層ウェーハの略円盤状の面からの反射光を受光する光学センサと、を備え、上記光学センサの受光角度が狭められ、上記小径ウェーハの水平面に対して、斜面となる面からの反射光を受光しないようにされた面取り装置。
[6] 上記受光角度が2枚の上記ウェーハの境界部分のエッジの形状により決定される、[5]に記載の面取り装置。
[7] 上記反射光により、上記積層ウェーハの面幅のみが検出される、[5]又は[6]に記載の面と売り装置。
【0011】
本発明の他の構成は、サイズの異なる大径ウェーハと小径ウェーハの2枚のウェーハが貼り合わされた積層ウェーハのうちサイズの小さい方のウェーハである前記小径ウェーハの外周エッジを検出してウェーハの中心を検出するウェーハの位置決め装置において、前記積層ウェーハを載置して前記積層ウェーハを保持しながら回転可能とされた測定テーブルと、載置された前記積層ウェーハのうち前記小径ウェーハの外周エッジ近傍に前記測定テーブルと所定の間隔を保持して設置され、前記小径ウェーハと前記大径ウェーハの略円盤状の面からの反射光を受光する光学センサと、を備え、前記光学センサの受光角度は、前記小径ウェーハの水平面に対して斜面となる面では検出感度が小さくなるように狭められて、前記小径ウェーハの水平面から外周エッジ、そして前記大径ウェーハの水平面まで前記光学センサで測定するものである。
【0012】
また、上記において、前記受光角度を0°~4°とすることが望ましい。
【0013】
さらに、上記のものにおいて、前記積層ウェーハは、ガラス、樹脂、シリコンのうちの少なくともいずれかを用いて貼り合わせ処理されたウェーハであり、前記受光角度は、前記小径ウェーハにおける斜面部の水平面に対する角度の1/10以下とされたことが望ましい。
【0014】
さらに、上記のものにおいて、前記受光角度は、前記小径ウェーハの水平面に対して受光し、斜面となる面では受光されないように狭められたことが望ましい。
【0015】
さらに、上記のものにおいて、前記受光角度を0°~2°としたことが望ましい。
【0016】
また、本発明は、サイズの異なる大径ウェーハと小径ウェーハの2枚のウェーハが貼り合わされた積層ウェーハ端面を研削して面取り加工する面取り装置において、前記積層ウェーハを載置して前記積層ウェーハを保持しながら回転可能とされた測定テーブルと、載置された前記積層ウェーハの外周エッジ近傍に前記測定テーブルと所定の間隔を保持して設置され、前記積層ウェーハの略円盤状の面からの反射光を受光する光学センサと、
を備え、前記光学センサの受光角度は、前記小径ウェーハの水平面に対して斜面となる面では検出感度が小さくなるように狭められて、前記小径ウェーハの水平面から外周エッジ、そして前記大径ウェーハの水平面まで前記光学センサで測定することによって前記小径ウェーハの外周エッジを検出して前記小径ウェーハの中心を検出するものである。
【0017】
さらに、上記のものにおいて、前記積層ウェーハは、シリコンと、ガラス及び樹脂のうち少なくともいずれかを用いて貼り合わせ処理されたウェーハであり、画像素子が一列に並んで配置された反射型ラインセンサとされた前記光学センサにより、前記シリコンの内周部のエッジ位置を検出し、検出された前記エッジ位置より前記積層ウェーハの中心位置を求め、面取り工程の際に、前記積層ウェーハを載置するウェーハテーブルの回転軸と前記中心位置とが一致するように載置することが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ガラス、樹脂、シリコンで貼り合わせ処理やモールド処理されたウェーハであっても、確実にエッジ部を検出可能なウェーハの位置決め装置及びそれを用いた面取り装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る面取り装置の主要部を示す正面図
【
図2】一実施形態における面取り装置の主要部を示す平面図
【
図3】一実施形態におけるウェーハのエッジ内周部の検出を示す側面図
【
図4】本発明の一実施形態に係る面取り加工部の構成を示す平面図
【
図5】従来の反射型ラインセンサによる外周エッジの検出を示す説明図
【
図7】一実施形態におけるエッジ部(斜面)の測定を示す説明図
【
図8】一実施形態及び従来におけるウェーハW高さの測定結果を比較して示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る面取り装置の主要部を示す正面図である。面取り装置10は、ウェーハ送りユニット20、砥石回転ユニット50、図示しないウェーハ供給/収納部、ウェーハ洗浄/乾燥部、ウェーハ搬送手段、及び面取り装置各部の動作を制御するコントローラ等から構成されている。
【0021】
一方、ウェーハの品質向上の要求が強く、ウェーハ端面(エッジ部)の加工状態が重要とされる。ハンドリングによるチッピングを防止するため、縁部を研削することで面取り加工が行われ、研磨による面取り加工が行われている。つまり、製造工程において、ウェーハ製造からデバイス製造に至るまで、エッジ特性の品質改善は必要不可欠なプロセスとなっている。
【0022】
面取り加工を行うには、ウェーハWの位置情報が必要とされ、ウェーハWを面取り加工前に、装置上に正確に配置する必要がある。研磨工程の前段階工程として、ウェーハの中心点の位置とウェーハWのOFの位置とを所定位置に正確に検出して、ウェーハテーブル34に載置しなければならない。さらに、通常の研削ではレジン砥石の回転軸に対してウェーハWの主面が垂直となる状態で面取り部を研削するが、レジン砥石を傾けてウェーハWの面取り部を研削する、いわゆるヘリカル研削を行うことが知られている。
【0023】
図1において、ウェーハ送りユニット20は、本体ベース11上に載置されたX軸ベース21、2本のX軸ガイドレール22、22、4個のX軸リニアガイド23、23、… 、ボールスクリュー及びステッピングモータから成るX軸駆動機構25によって図のX方向に移動されるXテーブル24を有している。
【0024】
Xテーブル24には、2本のY軸ガイドレール26、26、4個のY軸リニアガイド27、27、… 、図示しないボールスクリュー及びステッピングモータから成るY軸駆動機構によって図のY方向に移動されるYテーブル28が組み込まれている。
【0025】
Yテーブル28には、2本のZ軸ガイドレール29、29と図示しない4個のZ軸リニアガイドによって案内され、ボールスクリュー及びステッピングモータから成るZ軸駆動機構30によって図のZ方向に移動されるZテーブル31が組み込まれている。
【0026】
Zテーブル31には、モータ32、θスピンドル33が組み込まれ、θスピンドル33にはウェーハW(板状の被加工材)を吸着載置するウェーハテーブル34が取り付けられている。そして、ウェーハテーブル34はウェーハテーブル回転軸心CWを中心として図のθ方向に回転される。
【0027】
また、ウェーハテーブル34の下部には、ウェーハWの周縁を仕上げ面取りする砥石のツルーイングに用いるツルーイング砥石41(以下ツルアー41と称する)が、ウェーハテーブル回転軸心CWと同芯に取り付けられている。
【0028】
このウェーハ送りユニット20によって、ウェーハW及びツルアー41は図のθ方向に回転されると共に、X、Y、及びZ方向に移動される。
【0029】
砥石回転ユニット50は、外周粗研削砥石52が取り付けられ、図示しない外周砥石モータによって軸心を中心に回転駆動される外周砥石スピンドル51、上方に配置されたターンテーブル53に取り付けられた上外周精研スピンドル54及び上外周精研モータ56を有している。同じくターンテーブル53に下固定枠59(
図1では、一部切り欠いて図示)を介して下外周精研スピンドル57及び下外周精研モータ(図示せず)が設けられている。
【0030】
上外周精研スピンドル54及び下外周精研スピンドル57は、ウェーハWの回転軸に対して回転軸が3°~15°、望ましくは6°~10°傾斜させた状態でウェーハWの外周面取りの仕上げ加工を行う。これにより、ヘリカル研削が行われ、ウェーハWの面取り部には斜め方向に弱い研削痕が発生するものの、通常研削に比べ面取り部の表面粗さが改善される効果が得られる。
上外周精研スピンドル54にはウェーハWの外周を仕上げ研削する面取り用砥石である上外周精研削砥石(上研削砥石)が取り付けられ、同様に、下外周精研スピンドル57には下外周精研削砥石(下研削砥石)が上外周精研削砥石に対してウェーハWの厚さより小さい0.1~1mm程度の隙間を持って回転軸が略同芯となるように取り付けられる。
【0031】
また、上外周精研削砥石と下外周精研削砥石とは回転方向が逆回転、つまり反対回転となるように上外周精研スピンドル54、下外周精研スピンドル57でそれぞれ駆動される。ウェーハWを加工するための研削溝は、上外周精研削砥石と下外周精研削砥石とで形成される。
【0032】
ウェーハ加工プロセスは、ブロック切断→オリエンテーションフラット(OF)加工→スライス→面取り→ラップ→エッチング→ドナーキラー→精面取りの順で行われ、工程間には汚れを取り除くため、各種洗浄が用いられる。ブロック切断では、インゴットの両端部(トップとテール)を切断し外周を研削して、長いものは適切な長さで切断され所定の直径を持った円柱状の「ブロック」を作る。
【0033】
オリエンテーションフラット(OF)加工では、結晶方位を測定し、後の工程で方位が判るように所定の位置にオリエンテーションフラット(OF)又は「ノッチ」を刻み込む。スライスでは、ブロックからダイシングソー、ワイヤーソー、又は内周刃ブレードでウェーハ状に切り出す。直径300mmのブロックは、通常、マルチ・ワイヤーソーによって1度に最大200枚の切断が行われる。
【0034】
面取りでは、ウェーハの端面がスライシング時の鋭利なままでは、続く処理工程での搬送や位置合わせなどの取り扱い時に容易に割れたり欠けたりして、断片がウェーハ表面を傷つけたり汚染したりする。これを防ぐため、切り出されたウェーハの端面をダイヤモンドでコートされた研削砥石で面取りする。
【0035】
面取り工程は、ラッピング工程の後に行われることもある。この時、ばらつきのある外周の直径を合わせ、オリエンテーションフラット(OF)の幅の長さを合わせることや、ノッチと呼ばれる微少な切り欠きの寸法を合わせることも含まれる。
【0036】
図2は、面取り装置10全体の主要部を示す平面図であり、供給回収部は、面取り加工するウェーハWをウェーハカセット70から供給すると共に、面取り加工されたウェーハをウェーハカセット70に回収する。この動作は供給回収ロボット40で行われる。ウェーハカセット70はカセットテーブル71にセットされ、面取り加工するウェーハWが多数枚収納されている。供給回収ロボット40はウェーハカセット70からウェーハWを1枚ずつ取り出したり、面取り加工されたウェーハWをウェーハカセット70に収納したり、する。
【0037】
供給回収ロボット40は3軸回転型のアーム80を備えており、アーム80は、その上面部に図示しない吸着パッドを備えている。アーム80は、吸着パッドでウェーハの裏面を真空吸着してウェーハWを保持する。すなわち、この供給回収ロボット40のアーム80は、ウェーハWを保持した状態で前後、昇降移動、及び旋回することができ、この動作を組み合わせることによりウェーハWの搬送を行う。
【0038】
面取り装置10は正面部に配置されており、ウェーハWの外周面取りの全加工、すなわち、粗加工から仕上げ加工までを行う。面取り装置10はウェーハ送りユニット20、砥石回転ユニット50から構成されている。
【0039】
搬送アーム63は、搬送時にウェーハWを姿勢保持させながら、搬送レール60を介して測定テーブル66とウェーハテーブル34の間を搬送可能とする。このために、搬送アーム63は、ウェーハWを吸着固定および吸着解除可能となっている。
【0040】
搬送アーム63は、各工程のテーブル上からウェーハWをリフトアップし、また、テーブル上へウェーハWをリフトダウン(載置)する。なお、測定テーブル66上に載置されるウェーハWの中心は、ウェーハWの外周エッジが反射型ラインセンサ1による計測可能な位置範囲であれば、測定テーブル66の回転中心から少し偏心していてもよい。
【0041】
搬送レール60は、各工程間を、例えば測定工程と面取り工程との間で、所定のテーブルへウェーハWを搬送するために、搬送アーム63を移動させるための敷設レールである。ウェーハテーブル34は、面取り工程の際に、ウェーハWを載置させるためのテーブルである。ウェーハテーブル34は、載置されたウェーハWを研磨可能なように、ウェーハWを強固に保持する。このために、ウェーハテーブル34は、ウェーハWを吸着固定する。
【0042】
また、ウェーハテーブル34は、2次元平面上のX方向およびY方向に移動可能とされているので、ウェーハWの偏心量および偏心方向を調整して、ウェーハWを載置する際にウェーハWの中心の位置をウェーハテーブル34の回転中心に合わせることができる。これにより、ウェーハテーブル34は、測定テーブル66から搬送されたウェーハWが載置される際に、検出されたウェーハWの偏心量および偏心方向を少なくとも含む調整データに基づいて、ウェーハWの中心の位置をウェーハテーブル34の回転中心に合わせることができる。
【0043】
面取り工程において、ウェーハWの中心とウェーハテーブル34の回転中心(回転軸中心)を合わせることにより、面取りの際、ウェーハWにおける研磨量を少なくすることができる。これにより、面取り工程でのサイクルタイムの削減に繋げることもできる。
【0044】
図3は、貼り合わせウェーハのエッジ内周部の検出を示す図である。上側のガラス基板に下側のシリコンが貼り合わせられたウェーハWの中心の位置をウェーハテーブル34の回転中心に合わせる。測定テーブル66は、薄板円盤状に形成され、円盤状の外径はウェーハWの外径よりも小さく形成されている。
【0045】
測定テーブル66は、回転自在に制御可能とされる。測定テーブル66は、ウェーハWを載置して回転する。測定テーブル66は、回転角度を測定可能とされ、反射型ラインセンサ1によりウェーハWの全周に至る外周エッジの位置を検出して外周エッジと回転中心との距離を求める。反射型ラインセンサ1は、ウェーハWの半径方向に画像素子が一列に最外周から内周に向けて並んで配置されている。
【0046】
図3において、反射型ラインセンサ1は、ウェーハWの外周エッジ近傍に、設置され、ウェーハWの略円盤状の面に対しての略垂直方向に矢印のように光を照射して照射された光の反射光を受光してウェーハWの外周エッジを検出する。外周エッジが検出されたら測定テーブル66の中心からの距離を演算する。演算はウェーハWを回転させることで、ウェーハWの全周に渡って回転角ごとの測定データが得られる。測定データには、この他にも、測定日時、測定対象のウェーハWを特定可能な識別番号、測定テーブル66における測定結果(測定不能や、再測定回数)などを含んでもよい。測定データに基づいて、ウェーハWの中心位置、半径と、ウェーハWの中心に対する測定テーブル66の回転中心からの偏心量および偏心方向等を求める。
【0047】
図4は、加工部の構成を示す平面図である。加工開始前の待機状態では、ウェーハテーブル34に保持されるウェーハWは、測定データから求められたウェーハWの中心位置がウェーハテーブル34の回転軸と一致するように載置される。このとき、ウェーハWのOF部は所定方向を向くように配置される。
【0048】
外周粗研削砥石52及び外周精研削砥石55は、ウェーハWからそれぞれ所定距離だけ離れた位置にある。具体的には、外周粗研削砥石52の回転中心はウェーハWの回転中心に対してY軸方向に所定距離だけ離れた位置に配置され、かつその回転中心はウェーハWに対してX軸方向に所定距離だけ離れた位置に配置される。
【0049】
まず始めに、アライメント動作が行われる。このアライメント動作では、ウェーハテーブル34に保持されたウェーハWと外周粗研削砥石52及び外周精研削砥石55との上下方向(Z軸方向)について相対的な位置関係が調整される。
【0050】
アライメント動作が完了したら、外周砥石スピンドル51が駆動される。次に、外周粗研削砥石52による研削(粗加工)を開始する。具体的には、Y軸モータ(図示せず)が駆動され、外周砥石スピンドル51がY軸方向に沿ってウェーハテーブル34に向かって送られる。
【0051】
ウェーハテーブル34に向かって外周砥石スピンドル51が送られると、ウェーハWの外周が外周粗研削砥石52に形成された外周粗研削用の研削溝に接触し、ウェーハWの外周部が外周粗研削砥石52により研削されて、ウェーハWの外周面取りの粗加工が開始される。
【0052】
外周粗研削砥石52による粗加工が開始された後、ウェーハテーブル34に保持されたウェーハWが一定速度で矢印方向に回転を開始する。この回転角度、つまり加工点が直線部となるOF部に至ると、外周砥石スピンドル51をY方向、ウェーハテーブル34に向かう送り量を多くすると共に、外周砥石スピンドル51をX方向に直線移動させ直線部を加工する。その後、直線部の加工を終了すると、再び、ウェーハテーブル34に保持された板状のウェーハWを一定速度で矢印方向に回転させ、残りの円形部を研削して外周粗研削砥石52による粗加工を終了する。
【0053】
ガラス、樹脂、シリコンのうちの少なくともいずれかを用いて貼り合わせ処理やモールド処理された半導体基板は、透明なウェーハである。そのため、シリコン基準でアライメントを行おうとしても、通常のライン型センサ、画像では外周エッジのダレによる丸味、うねり、ごみ、貼り合わせの重なり方、ガラス面での気泡、汚れ、照明によるばらつき等の影響により外周エッジの特定が極めて困難であった。
【0054】
図5は、従来の反射型ラインセンサ1による外周エッジの検出を示す説明図であり、
図6は一実施例による平面の測定を示す説明図、
図7は一実施例によるエッジ部(斜面)の測定を示す説明図、
図8はそれぞれのウェーハW高さの測定結果を比較して示すグラフである。図において、矢印1-1、1-2は、反射型ラインセンサ1における画像素子の一つを代表して示している。矢印1-1は、ウェーハWの面に光を照射していることを示し、ウェーハWの面で反射した光を矢印1-2で示すように比較的に広い受光角度で受光している。なお、照射は反射型ラインセンサ1で行わなくて、測定場所における照明であっても良い。
【0055】
ウェーハWのシリコン面W-2の内周部は略水平であるが、外周に向かうに連れて斜面となり、その角はダレて丸味を持っている。さらに、貼り合わせの重なり方、ガラス面での気泡、汚れ等で、エッジを特定することは困難で、例えば、
図8の点線のような測定結果となる。
図8は、縦軸が反射型ラインセンサ1により、測定されたウェーハWの厚さ方向の高さを示し、横軸はウェーハWの半径方向の位置を示している。
【0056】
図8の右端の水平線がシリコン面W-2の水平面の高さであり、左端の水平線はガラス面W-1の高さである。点線部分はシリコン面W-2とガラス面W-1との境界部分であり、シリコン面W-2の斜面部分の形状がそのまま反映される。そして、ごみや重なり方の影響を受けて不規則となり、境界は不明確となる。
【0057】
この状態で境界であるシリコン面W-2のエッジを特定するには、点線の部分で高さの閾値を定めなければ判定できない。ところが、透明なウェーハであることから照射する光、あるいは照明のばらつきによる影響を大きく受けて、図の高さデータの値は極めて不安定である。
【0058】
図6、
図7は、上記に対する改善した例を示しており、反射型ラインセンサ1が受光し得る余裕角度、つまり受光角度φを受光方向の前面に配置されたスリット1-3で狭めたものである。
図6は測定面が水平な場合であり、受光角度φが小さくなっているが、狭めていない
図5の状態と何ら変わりなく測定が行われる。
図7は、斜面部での測定を示し、反射光は、矢印1-2で示すように、スリット1-3で遮られる。つまり、ウェーハWの水平面に対して受光し得る余裕角度を超えた斜面からの反射光は、検出しない、あるいは検出感度が小さくなるように狭められている。あるいは水平面からの反射光は受光しても斜面からの反射光は受光しないように受光角度φを狭くしても良い。
【0059】
その結果、ウェーハWの略水平な部分、つまり面幅のみを検出することができる。受光角度φは、ガラス、樹脂、シリコンで貼り合わせ処理やモールド処理されたウェーハWの実状、例えばシリコン面W-2とガラス面W-1との境界部分のエッジの角度、丸味等より決定する。種々の実験等の結果、受光角度φを0°~4°望ましくは0°~2°とすることが良い結果を得られた。
【0060】
なお、受光角度φ=0°は、ウェーハWの水平面からの反射光が反射型ラインセンサ1と正対して反射型ラインセンサ1が受光する中心が一致していること(
図6の状態)を意味している。また、貼り合わせ処理されたウェーハWで斜面部は、内周から外周になるに連れて高さが小さくなるので、水平部の受光角度0°から斜面方向に4°、つまり、受光角度φ=0°~4°、望ましくは0°~2°としても良い。あるいは、水平部の受光角度φに余裕を持たせて、-1°~4°、望ましくは-1°~2°とするようにしても良く、実際に得られる出力、画像等から定めればよい。
【0061】
貼り合わせウェーハの外周における斜面部の角度が水平面に対して20°~30°であると言う実状から、その場合において、斜面部の角度の1/10以下となるように受光角度φを2°以下に狭めた場合の測定結果を
図8の実線で示す。
図8の右端の水平線がシリコン面W-2の水平面の高さ、左端の水平線はガラス面W-1の高さである。反射型ラインセンサ1の受光角度φは、ウェーハWの水平面に対して斜面となる面では検出感度が小さくなるように狭められている。
【0062】
そして、シリコン面W-2とガラス面W-1との境界部分は、受光角度φを2°以下では検出感度を極端に小さく、殆ど出力されないようにしている。つまり、ウェーハWの水平で平坦な面である面幅のみが出力される。これにより、シリコン基準でウェーハWをアライメントする場合は、シリコン面W-2の出力される範囲でエッジ位置をウェーハWの外周エッジとして検出すれば良い。
【0063】
ウェーハWの外周エッジが検出されたら測定テーブル66の中心からの距離を求め、ウェーハWを回転させることで、ウェーハWの全周に渡って回転角ごとの測定データを得る。さらに、測定データに基づいて、ウェーハWの中心位置が外周エッジのダレによる丸味、うねり、ごみ、貼り合わせの重なり方、ガラス面での気泡、汚れ、照明によるばらつき等の影響を受けずにシリコンの内周部のエッジ位置を求めることができる。
【0064】
実験の結果では、受光角度φを0°~4°、望ましくは0°~2°とすることでアライメント精度を±0.1mm以下とすることが可能であり、実用上で問題の無いことを確認できている。また、光学的な検出でありながら、焦点位置以外の部分のピンぼけ、光源の広がりによる境界のぼけ、丸い角での陰影、エッジ近辺での局所的な反射による歪み、の影響を受けないで安定したエッジ検出が可能である。
【0065】
なお、外周エッジの検出を画像素子が一列に並んで配置された反射型ラインセンサ1として説明したが、画像素子が縦横方向に並び、二次元的に配置されたエリアセンサ、反射型のレーザセンサ、光電センサ等の光学センサの受光角度φを狭めた構造にすることにより、光軸の限られた領域のみで検出するようにすれば、同様に安定したエッジ検出が可能である。
【0066】
シリコンの内周部のエッジ位置からウェーハWの半径を求め、全周に渡る回転角ごとの測定データにおける差異を所定の閾値以内であるか否かを判定する。そして、所定の閾値以内であると判定された測定データを有効データ群として抽出する。
【0067】
次に、有効データ群からウェーハWの中心位置を求めれば、ウェーハWの外周エッジに付着した異物や欠け、ガラス部の気泡、うねり、汚れ等によるイレギュラな要素に起因する余分な誤差を除外することができる。そして、ウェーハWの外周エッジに対する測定データからウェーハの中心をより精度よく求めることができる。
【符号の説明】
【0068】
W…ウェーハ、W-1…ガラス面、W-2…シリコン面、1…反射型ラインセンサ、1-1、1-2…矢印、1-3…スリット、10…面取り装置、11…本体ベース、20…ウェーハ送りユニット、21…X軸ベース、22…X軸ガイドレール、23…X軸リニアガイド、24…Xテーブル、25…X軸駆動機構、26…Y軸ガイドレール、27…Y軸リニアガイド、28…Yテーブル、29…Z軸ガイドレール、30…Z軸駆動機構、31…Zテーブル、32…モータ、33…スピンドル、34…ウェーハテーブル、40…供給回収ロボット、41…ツルアー、50…砥石回転ユニット、51…外周砥石スピンドル、52…外周粗研削砥石、53…ターンテーブル、54…上外周精研スピンドル、55…外周精研削砥石、55-1…上外周精研削砥石(上研削砥石)、55-2…下外周精研削砥石(下研削砥石)、56…上外周精研モータ、57…下外周精研スピンドル、59…下固定枠、60…搬送レール、63…搬送アーム、66…測定テーブル、70…ウェーハカセット、71…カセットテーブル、80…アーム