(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187176
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】ポンプケーシング
(51)【国際特許分類】
F04D 29/62 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
F04D29/62 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095049
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100117411
【弁理士】
【氏名又は名称】串田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】小川 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】野村 俊行
(72)【発明者】
【氏名】うすい 幹
(72)【発明者】
【氏名】中村 陽一
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB22
3H130AB46
3H130AC01
3H130AC27
3H130BA91J
3H130BA97J
3H130BA98J
3H130DD01Z
3H130DG02X
3H130DG03X
3H130EA02J
(57)【要約】
【課題】設計/製造コストが増えるというデメリットを改善したポンプケーシングを提供する。
【解決手段】ポンプケーシング18は、第1のポンプ用ケーシング181と、第1のポンプ用ケーシング181に接続する第1の吸込流路部201と、第1のポンプ用ケーシング181に接続する第1の吐出流路部221を有する。さらにポンプケーシング18は、第2のポンプ用ケーシング182と、第2のポンプ用ケーシング182に接続する第2の吸込流路部202と、第2のポンプ用ケーシング182に接続する第2の吐出流路部222を有する。またポンプケーシング18は吸込分岐部24と、吐出合流部26とを有する。第1のポンプ用ケーシング181と第2のポンプ用ケーシング182は同一形状であり、第1の吐出流路部221と第2の吐出流路部222同一形状である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を移送するためのポンプ装置に使用されるポンプケーシングであって、
第1のポンプ用ケーシングと、
前記第1のポンプ用ケーシングに接続する第1の吸込流路部と、
前記第1のポンプ用ケーシングに接続する第1の吐出流路部と、
第2のポンプ用ケーシングと、
前記第2のポンプ用ケーシングに接続する第2の吸込流路部と、
前記第2のポンプ用ケーシングに接続する第2の吐出流路部と、
前記第1の吸込流路部および前記第2の吸込流路部と接続する吸込分岐部と、
前記第1の吐出流路部および前記第2の吐出流路部と接続する吐出合流部と、を有し、
前記第1のポンプ用ケーシングと前記第2のポンプ用ケーシングは実質的に同一形状であり、前記第1の吐出流路部と前記第2の吐出流路部は実質的に同一形状であることを特徴とするポンプケーシング。
【請求項2】
前記第1の吐出流路部と前記第1のポンプ用ケーシングは別個独立である、および/または前記第2の吐出流路部と前記第2のポンプ用ケーシングは別個独立であることを特徴とする請求項1記載のポンプケーシング。
【請求項3】
前記第1の吐出流路部と前記吐出合流部との接続部における前記第1の吐出流路部の流路の断面形状は矩形である、および/または前記第2の吐出流路部と前記吐出合流部との接続部における前記第2の吐出流路部の流路の断面形状は矩形であることを特徴とする請求項1または2記載のポンプケーシング。
【請求項4】
第1の電動機と、
前記第1の電動機に連結された第1の回転軸と、
前記第1の回転軸に固定され、かつ前記第1のポンプ用ケーシング内に収容される第1の羽根車と、
第2の電動機と、
前記第2の電動機に連結された第2の回転軸と、
前記第2の回転軸に固定され、かつ前記第2のポンプ用ケーシング内に収容される第2の羽根車と、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポンプケーシングを備えたポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプケーシングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からポンプ装置は、各種住宅や工場等の各現場で様々な用途で使用されている。例えば、ポンプ部とモータ部とを一体とし、ポンプの吸込口・吐出口を同一線上に配置したインラインポンプは、配管の途中に簡単に取り付け可能であるため広く用いられている。建築設備にインラインポンプを設置する場合、1台のインラインポンプが故障したとき又は1台を定期点検するときに送液停止を避けることが望まれる。
【0003】
送液停止を避けるために、1台が他の1台をバックアップできるように、2台のインラインポンプを並列に設置するケースが様々な国の市場で見られる。このときに2台のインラインポンプが並列に並び、1個の吸込口と1個の吐出口が2台のインラインポンプに接続されて、2台のインラインポンプが1個の吸込口と1個の吐出口を共用しているツインポンプと呼ばれる製品がある。なお、以下では、2台のインラインポンプが1個の吸込口と1個の吐出口を共用していない場合、すなわち、2台のインラインポンプがそれぞれ1個の吸込口と1個の吐出口を有する場合、これらのポンプをシングルポンプと呼ぶ。
【0004】
ツインポンプを設置する事により、片方のポンプでトラブルが発生した場合等において、トラブルが発生したポンプのケーシング以外の部分を取り外し、閉止フランジでケーシングの上部を覆う。ケーシング以外の部分とは、例えば、ケーシングの上部に配置される電動機と、電動機に連結された回転軸と、回転軸に固定され、かつケーシング内に収容される羽根車である。ツインポンプでは、ポンプのメンテナンス期間あるいは、故障したポンプのスペアパーツを待っている期間も他方のポンプにより運転を継続することができる。
【0005】
ポンプにおいては、省スペースと長寿命が求められる。ポンプメーカーは自社の機器をなるべくコンパクトにするために、内蔵する機器を小さくしたいという要求がある。この要求に対して、2台のシングルポンプを並列に設置する場合と比較して、ツインポンプの場合、配管を2台のシングルポンプに分岐させるまたは合流させるためのヘッダパイプの長さが低減する。また、逆流防止用のチェッキバルブ等のバルブを、ツインポンプを構成する2台のポンプ間で共通化することにより省スペース化を計ることができる。これらのことにより、ツインポンプメーカーは顧客からの省スペース要求に応じることができる。またツインポンプを構成する2台のポンプを交互運転することによりポンプ寿命を単純に2倍にすることができる。
【0006】
ツインポンプを構成する2台のポンプ間の性能差については、基準値が決められている。また、吸込口と吐出口の位置関係や、吸込口と吐出口との間の距離などは、シングルポンプと同一にすることが、ポンプの設置と運用の点から好まれる。そこで、特許文献1では、ツインポンプを構成する2台のポンプを互いに逆方向に回転させて、2台のポンプ間の性能差を抑制することが開示されている。特許文献1では、逆回転するポンプを用いるため、性能差を極小にすることが可能である。しかしながら、構造の異なる2種類のポンプを製作する必要があり、設計/製造/管理コストが増える、また在庫が増えるというデメリットがある。
【0007】
特許文献2では、流路を適切に設計することによって、形状の異なる2台のポンプ間の性能差を抑制することが開示されている。特許文献2では、吸込口の中心と吐出口の中心
を結ぶ線に関して2台のポンプの回転軸が対称な位置にあるように、2台のポンプの回転軸が配置されるため、ポンプの効率を犠牲にしていると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2018/137019号
【特許文献2】欧州特許公開第2161455A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一形態は、このような問題点を解消すべくなされたもので、その目的は、設計/製造/管理コストが増えるというデメリットを改善したポンプケーシングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、第1の形態では、液体を移送するためのポンプ装置に使用されるポンプケーシングであって、第1のポンプ用ケーシングと、前記第1のポンプ用ケーシングに接続する第1の吸込流路部と、前記第1のポンプ用ケーシングに接続する第1の吐出流路部と、第2のポンプ用ケーシングと、前記第2のポンプ用ケーシングに接続する第2の吸込流路部と、前記第2のポンプ用ケーシングに接続する第2の吐出流路部と、前記第1の吸込流路部および前記第2の吸込流路部と接続する吸込分岐部と、前記第1の吐出流路部および前記第2の吐出流路部と接続する吐出合流部と、を有し、前記第1のポンプ用ケーシングと前記第2のポンプ用ケーシングは実質的に同一形状であり、前記第1の吐出流路部と前記第2の吐出流路部は実質的に同一形状であることを特徴とするポンプケーシングという構成を採っている。
【0011】
本実施形態では、第1のポンプ用ケーシングと第2のポンプ用ケーシングは実質的に同一形状であり、第1の吐出流路部と第2の吐出流路部は実質的に同一形状であるため、ポンプを構成する羽根車やケーシング等、及び吐出流路部を2台のポンプ間で共通部品化できる。2台のポンプ間で同じ回転方向のモータが使用でき、回転体の共通部品化ができる。このため、設計/製造/管理コストが増えるというデメリット、および在庫が増えるというデメリットを改善したポンプケーシングを提供することができる。
【0012】
第2の形態では、前記第1の吐出流路部と前記第1のポンプ用ケーシングは別個独立である、および/または前記第2の吐出流路部と前記第2のポンプ用ケーシングは別個独立であることを特徴とする第1の形態記載のポンプケーシングという構成を採っている。
【0013】
第3の形態では、前記第1の吐出流路部と前記吐出合流部との接続部における前記第1の吐出流路部の流路の断面形状は矩形である、および/または前記第2の吐出流路部と前記吐出合流部との接続部における前記第2の吐出流路部の流路の断面形状は矩形であることを特徴とする第1または第2の形態記載のポンプケーシングという構成を採っている。
【0014】
第4の形態では、第1の電動機と、前記第1の電動機に連結された第1の回転軸と、前記第1の回転軸に固定され、かつ前記第1のポンプ用ケーシング内に収容される第1の羽根車と、第2の電動機と、前記第2の電動機に連結された第2の回転軸と、前記第2の回転軸に固定され、かつ前記第2のポンプ用ケーシング内に収容される第2の羽根車と、第1ないし第3のいずれかの形態記載のポンプケーシングを備えたポンプ装置という構成を採っている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ポンプケーシングの一実施形態を示す概略図である。
【
図2】第1のポンプ装置の一実施形態を示す概略図である。
【
図6】
図3に示す方向66から第2の吐出流路部の終端部を見た図である。
【
図7】内径の断面が円形である場合に、
図3に示す方向66から第2の吐出流路部の終端部を見た図である。
【
図8】第1の吐出流路部と第2の吐出流路部が同一形状でない例を示す図である。
【
図9】第1の吐出流路部と第2の吐出流路部が同一形状でない例を示す図である。
【
図10】第1の吐出流路部と第2の吐出流路部が同一形状でない例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同一または相当する部材には同一符号を付して重複した説明を省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0017】
図1は、本発明のポンプケーシング18の一実施形態を示す概略図である。ポンプケーシング18は、液体を移送するためのポンプ装置16に使用される。1個のポンプケーシング18が、第1のポンプ用ケーシング181と、第1のポンプ用ケーシング181に接続する第1の吸込流路部201と、第1のポンプ用ケーシング181に接続する第1の吐出流路部221を有する。さらにポンプケーシング18は、第2のポンプ用ケーシング182と、第2のポンプ用ケーシング182に接続する第2の吸込流路部202と、第2のポンプ用ケーシング182に接続する第2の吐出流路部222を有する。
【0018】
またポンプケーシング18は、第1の吸込流路部201および第2の吸込流路部202と接続する吸込分岐部24と、第1の吐出流路部221および第2の吐出流路部222と接続する吐出合流部26を有する。第1のポンプ用ケーシング181と、第1の吸込流路部201と、第1の吐出流路部221と、第2のポンプ用ケーシング182と、第2の吸込流路部202と、第2の吐出流路部222と、吸込分岐部24と、吐出合流部26は、一体化した鋳物である。なお、これらのうちの一部、例えば、第1の吐出流路部221、第2の吐出流路部222、吐出合流部26等をそれ以外の部分とは別の鋳物として製造してもよい。すなわち第1の吐出流路部221と第1のポンプ用ケーシング181を別個独立の部品とすること、および/または第2の吐出流路部222と第2のポンプ用ケーシング182を別個独立の部品とすることができる。
【0019】
第1のポンプ用ケーシング181と第2のポンプ用ケーシング182は実質的に同一形状である。第1の吐出流路部221と第2の吐出流路部222は実質的に同一形状である。本実施形態では、第1のポンプ用ケーシングと第2のポンプ用ケーシングは実質的に同一形状であり、第1の吐出流路部と第2の吐出流路部は実質的に同一形状であるため、ポンプを構成する羽根車やケーシング、及び吐出流路部を2台のポンプ間で共通部品化できる。2台のポンプ間で同じ回転方向のモータが使用でき、回転体の共通部品化ができる。このため、同一形状でない場合の設計/製造コストが増えるというデメリット、および在庫が増えるというデメリットを改善したポンプケーシングを提供することができる。同一形状であるため、一方のポンプの設計データや部品を、設計段階、製造段階、保守段階において転用できるということであり、各段階においてコスト低減ができる。
【0020】
また同一形状であるため、2台のポンプの性能差をISOの基準値以内に収めることが、従来よりも容易に達成できる。ISOの基準値はポンプの種類やポンプの等級に応じて種々あるが、例えば、2台のポンプ間の流量差(m3/分)が±9%%以内であり、全揚程差(m)が±7%以内である。ISOの規格としては例えばISO9906がある。なおISO9906は一例であり、本実施形態は、ISO9906以外の他の同様な規格にも対応可能である。
【0021】
なお吸込分岐部24は、吸込口20から、第1の吸込流路部201と第2の吸込流路部202に分岐するところまでの区間を言う。具体的には吸込口20から第1の吐出流路部201の開始端部58までの区間と、吸込口20から第2の吐出流路部202の開始端部60までの区間を言う。吐出合流部26は、第1の吐出流路部221と第2の吐出流路部222が合流するところから吐出口22までの区間を言う。具体的には第1の吐出流路部221の終端部281から吐出口22までの区間と、第2の吐出流路部222の終端部282から吐出口22までの区間を言う。ポンプ装置16の吸込口20とは、ポンプ装置16の吸込み側におけるポンプ装置16と配管(図示しない)の接続部である。ポンプ装置16の吐出口22とは、ポンプ装置16の吐出側におけるポンプ装置16と配管(図示しない)の接続部である。
【0022】
上述のように、第1の吐出流路部221と第1のポンプ用ケーシング181を別個独立の部品とすること、および/または第2の吐出流路部222と第2のポンプ用ケーシング182を別個独立の部品とすることができる。第1の吐出流路部221と第1のポンプ用ケーシング181を別個独立の部品とする場合、第1の吐出流路部221と第1のポンプ用ケーシング181の境界は、例えば、
図1に示す接続部284とすることができる。第2の吐出流路部222と第2のポンプ用ケーシング182を別個独立の部品とする場合、第2の吐出流路部222と第2のポンプ用ケーシング182の境界は、例えば、
図1に示す接続部285とすることができる。接続部284と接続部285の位置は一例であり、接続部284と接続部285の位置よりも吐出口22に近い位置に境界を設けてもよく、また、接続部284と接続部285の位置よりも吐出口22に遠い位置に境界を設けてもよい。
【0023】
ポンプ装置16は、第1のポンプ装置161と第2のポンプ装置162を有する。第1のポンプ装置161と第2のポンプ装置162の構成は同一であっても、また異なっていてもよい。しかし、互換性という点からは、第1のポンプ装置161と第2のポンプ装置162の構成は同一であることが好ましい。本実施形態では、第1のポンプ装置161と第2のポンプ装置162は実質的に同一構成である。すなわち第1の羽根車51、第1のポンプ用ケーシング181、第1の吐出流路部221はそれぞれ、第2の羽根車52、第2のポンプ用ケーシング182、第2の吐出流路部222と同一寸法形状である。第1の羽根車51の回転方向54は、第2の羽根車52の回転方向56と同一である。一方、第1の吸込流路部201と、第2の吸込流路部202の寸法形状は若干異なる。
【0024】
本実施形態では、第1のポンプ装置161と第2のポンプ装置162は渦巻ポンプであるが、第1のポンプ装置161と第2のポンプ装置162は渦巻ポンプに限られず、非容積型ポンプであればよい。すなわち、第1のポンプ装置161と第2のポンプ装置162は、タービンポンプ、軸流ポンプ、斜流ポンプでもよい。
【0025】
第1のポンプ装置161と第2のポンプ装置162は実質的に同一構成であるため、第1のポンプ装置161の構成について、
図2により説明する。
図2は、第1のポンプ装置161の一実施形態を示す概略図である。第1のポンプ装置161は、第1の電動機101と、第1の電動機101に連結された第1の回転軸121と、第1の回転軸121に固定され、かつ第1のポンプ用ケーシング181内に収容される第1の羽根車51を有する。
【0026】
図示しないが、第2のポンプ装置162も第1のポンプ装置161と同様に、第2の電動機と、第2の電動機に連結された第2の回転軸と、第2の回転軸に固定され、かつ第2のポンプ用ケーシング182内に収容される第2の羽根車52を有する。
【0027】
第1のポンプ装置161において、第1の羽根車51は、遠心羽根車である。回転軸121は、軸受(図示せず)に回転可能に支持されている。回転軸121と第1の羽根車51は一体に回転可能となっている。回転軸121および第1の羽根車51は、電動機101によって回転される。第1の羽根車51の流体入口51aの周囲にはライナーリング102が配置されている。ライナーリング102は、第1のポンプ用ケーシング181に固定されている。
【0028】
電動機101と第1のポンプ用ケーシング181との間にはケーシングカバー122が配置されている。第1のポンプ用ケーシング181上部の開口は、ケーシングカバー122によって塞がれている。電動機101は、ケーシングカバー122に固定されている。第1のポンプ用ケーシング181およびケーシングカバー122は、鋳物である。第1の羽根車51の裏側には、回転軸121とケーシングカバー122との間の隙間を封止する軸封装置15が配置されている。軸封装置15はケーシングカバー122に保持されている。軸封装置15の例としては、メカニカルシールが挙げられる。閉止フランジ(図示しない)は、メンテナンス等のときにケーシングカバー122の位置に設置される。ケーシングカバー122を取り付ける円周状に配置されたネジ穴62(
図3参照)を利用して取り付けられる。閉止フランジはディスク状のものであり、閉止フランジの外縁部の、ネジ穴62に対応した位置に取付用の穴を円周状に有する。
【0029】
ポンプケーシング18は、吸込口20を有する吸込分岐部24と、吐出口22を有する吐出合流部26を備えている。第1の羽根車51は、第1のポンプ用ケーシング181内に配置されている。吸込口20および吐出口22は、一直線上に並んでいる。吸込口20および吐出口22が一直線上に並んだポンプ装置16は、インラインポンプ装置と呼ばれる。本実施形態では、2台のインラインポンプが並列に並び、1個の吸込口と1個の吐出口が2台のインラインポンプに接続されて、2台のインラインポンプが1個の吸込口と1個の吐出口を共用している。2台のインラインポンプが1個の吸込口と1個の吐出口を共用しているとき、これらのポンプは全体として1台のツインポンプを構成する。
【0030】
ここで、ツインポンプである1台のインラインポンプと、並列に配置された2台のインラインポンプ(2台のシングルポンプ)との違いについて説明する。並列に配置された2台のシングルポンプでは吐出側において、それぞれのシングルポンプの吐出口がそれぞれ配管に接続され、その後、下流側において2本の配管が合流して1本の配管になる。また吸込み側において1本の配管が2本の配管に分岐後、それぞれの配管が、それぞれのシングルポンプの吸込口に接続する。一方、ツインポンプでは吐出側において2つの吐出流路部が吐出合流部26において合流してからツインポンプの吐出口22において配管に接続する。またツインポンプの吸込み側において、配管がポンプの吸込口20に接続した後に、吸込分岐部24を経て2つの吸込流路部に分岐する。
【0031】
電動機101が第1の羽根車51を回転させると、液体は、吸込口20からポンプケーシング18内に流れ込む。より具体的には、液体は、吸込口20から第1の吸込流路部201に流入し、第1の吸込流路部201を通じて第1の羽根車51の流体入口51aに流入する。回転する第1の羽根車51は液体に速度エネルギーを付与し、第1のポンプ用ケーシング181を流れる液体の速度エネルギーは圧力に変換される。昇圧された液体は、吐出口22を通ってポンプケーシング18から吐き出される。
【0032】
第1のポンプ装置161と第2のポンプ装置162の運転方法は、種々可能である。第1のポンプ装置161と第2のポンプ装置162の一方のみを運転し、他方は休止させる運転方法や、第1のポンプ装置161と第2のポンプ装置162の両方を同時に運転する運転方法が可能である。吐出合流部26には、
図1に示すように開閉弁28が設けられている。開閉弁28は、第1のポンプ装置161と第2のポンプ装置162の運転状態に応じて、停止しているポンプ装置に接続している吐出流路部を閉鎖する。
【0033】
例えば、第1のポンプ装置161が運転していて、第2のポンプ装置162が停止しているときは、開閉弁28は、第1の吐出流路部221からの水圧により、点線で示す位置282に移動させられて、第2の吐出流路部222を閉鎖する。第2のポンプ装置162が運転していて、第1のポンプ装置161が停止しているときは、開閉弁28は、第2の吐出流路部222からの水圧により、点線で示す位置281に移動させられて、第1の吐出流路部221を閉鎖する。第1のポンプ装置161と第2のポンプ装置162の両方を同時に運転しているときは、開閉弁28は、第1の吐出流路部221と第2の吐出流路部222からの水圧により、実戦で示す中間の位置283に移動させられる。
【0034】
図3~5にポンプケーシング18単体の構成を示す。
図3は、ポンプケーシング18の上面図である。
図4は、ポンプケーシング18の斜視図である。
図5は、ポンプケーシング18の底面図である。
図3~5においては、ポンプ装置16からポンプケーシング18以外の構成要素、すなわち第1の電動機101と、第1の回転軸121と、第1の羽根車51と、第2の電動機と、第2の回転軸と、第2の羽根車52等を外した状態のポンプケーシング18を示す。吸込口20が吸込フランジ34に設けられている。吸込フランジ34は、ポンプケーシング18を配管に接続するためのものである。吐出口22が吐出フランジ36に設けられている。吐出フランジ36は、配管にポンプケーシング18を接続するためのものである。
【0035】
ポンプケーシング18は、第1のポンプ用ケーシング181や第2のポンプ用ケーシング182に設けられた脚部46,48を有することができる。脚部46,48をこの位置に設ける理由は、第1のポンプ用ケーシング181や第2のポンプ用ケーシング182の底部は、
図2に示すように、ポンプ装置16において一番、低い位置にあるためである。
【0036】
図6に示すように、第1の吐出流路部221と吐出合流部26との接続部281における第1の吐出流路部221の流路の断面形状64を矩形とすること、および/または第2の吐出流路部222と吐出合流部26との接続部282における第2の吐出流路部222の流路の断面形状64を矩形とすることができる。
図6は、
図3に示す方向66から第2の吐出流路部222の終端部282(接続部282)を見た図である。本実施形態では、終端部281と終端部282において第1の吐出流路部221と第2の吐出流路部222の流路の断面形状64はいずれも矩形である。
【0037】
第2の吐出流路部222の形状については、接続部285において外形は丸い管状であり、内部の流路の断面形状は円形である。第2のポンプ用ケーシング182と第2の吐出流路部222との接続部285から、吐出合流部26と第2の吐出流路部222との接続部282に向かって、第2の吐出流路部222の外形は、丸い管状から矩形の管状に変化する。このとき第2の吐出流路部222の内部の流路の断面形状も円形から矩形に変化する。第1の吐出流路部221の形状についても、第2の吐出流路部222の形状と同様に変化する。
【0038】
吐出合流部26につながる第2の吐出流路部222の内径の断面を矩形にしているため、吐出合流部26内の圧力損失を低減することができる。比較のために
図7に、吐出合流部26につながる第2の吐出流路部222の内径の断面形状68が円形である場合を示す
。
図7は、内径の断面形状68が円形である場合に、
図3に示す方向66から第2の吐出流路部222の終端部282を見た図である。
図6の断面形状64を
図7の断面形状68と比較すると、断面形状64の場合、吐出合流部26内のデッドスペースが低減して、吐出合流部26内における圧力損失が低減する。すなわち、矩形にすると、斜線部70のデッドスペースが低減して、吐出合流部26内における逆流や摩擦が低減することで圧力損失が低減する。
【0039】
次に、
図8~10により本実施形態の比較例を示す。これらの比較例は、いずれも第1のポンプ用ケーシングと第2のポンプ用ケーシングは同一形状でない、もしくは第1の吐出流路部と第2の吐出流路部は同一形状でない例である。
図8は、第1の吐出流路部223と第2の吐出流路部224が同一形状でない例である。第1のポンプ用ケーシング183と第2のポンプ用ケーシング184は同一形状である。吸込口20の中心と吐出口22の中心を結ぶ線72に関して2台のポンプの回転軸74,76が対称な位置にあるように、2台のポンプの回転軸74,76が配置される。さらに、回転軸74と回転軸76を結ぶ線78と、線72との交点84は、吸込口20の中心と吐出口22の中心から等距離にあるように、2台のポンプの回転軸74,76が配置される。交点84が吸込口20の中心と吐出口22の中心から等距離にあることを
図8に示す。すなわち、距離88と距離90は等しい。
【0040】
吐出合流部26は、
図3と同様に線72に関して対称になるように配置されている。第1のポンプ用ケーシング183、第2のポンプ用ケーシング184、吐出合流部26をこのような対称性を有するように配置する場合、左側の第2の吐出流路部224から吐出合流部26に流入する流体は、吐出合流部26内において、圧力損失が大きい。この結果、左右のポンプの性能差が生まれてしまう。対策として最初に、圧力損失が少ない位置に左側の第2のポンプ用ケーシング184を配置し、吐出合流部26と第1のポンプ用ケーシング183を適切に配置する。
【0041】
既述の
図3では対策として、第1のポンプ用ケーシング181と第2のポンプ用ケーシング182は実質的に同一形状であり、第1の吐出流路部221と第2の吐出流路部222は実質的に同一形状であることとした。一方の形状を他方に転用するメリットは、流路の口径や形状にかかわらず、2つのポンプの性能を近づけることができることである。流路が2つのポンプで異なる設計を行うと、2つのポンプの性能に差が生まれてしまう可能性が高い。
【0042】
左側において圧力損失が大きいという問題に対する対策として
図8では、吐出合流部26の角度を時計方向に若干、例えば15°傾ける。第1の吐出流路部221と吐出合流部26の接触面は平行とする。すなわち、接続部281(
図1参照)に、第1の吐出流路部221からの流体は、垂直方向に流入する。吐出合流部26の形状は変更せずに、時計方向に若干、傾ける。
図8に示す吐出合流部26の内壁80(
図3も参照)は、傾ける前の位置を示し、
図8に示す吐出合流部26の内壁82は、傾けた後の位置を示す。傾けた後の吐出合流部26の外形は、図の明瞭化のために、
図8には示していない。第1の吐出流路部223の形状は、吐出合流部26を傾けたことに伴い、傾けた吐出合流部26に適合するように変更する。
図8の対策のメリットとしては回転軸74と回転軸76を、全体の中心である交点84からの距離が等しくなるように配置できる。このことにより重心位置が安定する。
【0043】
図8の特徴を整理すると以下の通りである。(i)吸込口20と吐出口22を結ぶ線72に関して2台のポンプの回転軸74,76が実質的に対称な位置にある。(ii)回転軸74と回転軸76を結ぶ線78と、線72との交点84は、吸込口20と吐出口22から実質的に等距離にある。(iii)吐出合流部26は、線72に関して対称である位置
から、吐出合流部26の基部92を回転中心として時計方向に(別の表現をすると、第1のポンプと第2のポンプのうち、第1のポンプの圧力損失が大きいときは、第1のポンプの第1のポンプ用ケーシング183の方へ)または反時計方向に(別の表現をすると、第1のポンプと第2のポンプのうち、第2のポンプの圧力損失が大きいときは、第2のポンプの第2のポンプ用ケーシング184の方へ)回転させた位置に配置される。
【0044】
2番目の比較例を
図9に示す。
図8に関して述べた問題の対策として、
図9では、第1の吐出流路部2231を、線72に実質的に平行に配置する。実質的に平行に配置するためには例えば、第1のポンプ用ケーシング1831を、
図8に示す第1のポンプ用ケーシング183よりも線72に近い位置に配置することによって可能である。近い位置に配置するためには例えば、第1のポンプ用ケーシング183を、回転軸74と回転軸76を結ぶ線78と実質的に平行に、交点84に向かって移動させることによって可能である。なお、
図9に示す第1のポンプ用ケーシング183、第1の吐出流路部223は、
図8に示す第1のポンプ用ケーシング183、第1の吐出流路部223を再表示したものである。
図9,10では、
図8に示す第1のポンプ用ケーシング183、第1の吐出流路部223をどのように変更したかを示すために、
図8に示す第1のポンプ用ケーシング183、第1の吐出流路部223を再表示している。
【0045】
第1の吐出流路部2231を、線72に実質的に平行に配置することは、第1のポンプ用ケーシング1831が、既述のシングルポンプの配置に近づくことを意味する。その結果、第1のポンプ用ケーシング1831から吐出合流部26に流れ込む流体に関して、吐出合流部26内での流体の流路の角度が緩やかになるため、第1のポンプ用ケーシング1831の圧力損失が低減する。右側の第1のポンプ用ケーシング183と第1の吐出流路部223によるポンプ性能が、左側の第2のポンプ用ケーシング184と第2の吐出流路部224によるポンプ性能と比べて、性能の乖離が大きい場合は、
図9に示す配置を用いることができる。
【0046】
図9の特徴を整理すると以下の通りである。第1のポンプと第2のポンプのうち、第1のポンプの圧力損失が大きいときに、第1の吐出流路部2231は、第1のポンプの回転軸74よりも、吸込口20と吐出口22を結ぶ線に近い位置にあり、かつ、第1の吐出流路部2231は、吸込口20と吐出口22を結ぶ線に実質的に平行である。
【0047】
3番目の比較例を
図10に示す。
図8に関して述べた問題の対策として、
図10では、第1の吐出流路部2232を第2の吐出流路部224よりも長くする。第1の吐出流路部2232を第2の吐出流路部224よりも長くするためには例えば、
図10に示す第1の吐出流路部223と第1のポンプ用ケーシング183を、回転軸74の周りに反時計回りに回転させ、次に、第1の吐出流路部223の端部が吐出合流部26の位置に来るように、X方向の正方向と、Y方向の正方向に移動させる。
図10では反時計回りに29°回転させ、次にX方向の正方向と、Y方向の正方向に移動させたものが第1のポンプ用ケーシング1832と第1の吐出流路部2232である。
【0048】
第1の吐出流路部2232は第2の吐出流路部224よりも長いため、第1のポンプ用ケーシング1832から吐出合流部26に向かう方向に、第1の吐出流路部2232の流路の口径を、第2の吐出流路部224と比較して緩やかに拡大することができる。第1の吐出流路部2232は、単位長さ当たりの流路の口径の拡大量(すなわち拡大率)が相対的に小さいことにより、急拡大による圧力損失が少なくなる。この結果、右側の第1のポンプの性能が向上して、左側の第2のポンプとの性能差が改善する。
【0049】
図10の特徴を整理すると以下の通りである。(i)第1のポンプと第2のポンプのうち、第1のポンプの圧力損失が大きいときに、第1の吐出流路部2232の長さを第2の
吐出流路部224の長さよりも長くする。
【0050】
以上、本発明の実施形態の例について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0051】
16…ポンプ装置
18…ポンプケーシング
20…吸込口
22…吐出口
24…吸込分岐部
26…吐出合流部
28…開閉弁
34…吸込フランジ
36…吐出フランジ
51…第1の羽根車
52…第2の羽根車
101…電動機
101…第1の電動機
121…回転軸
121…第1の回転軸
161…第1のポンプ装置
162…第2のポンプ装置
181…ポンプケーシング
181…第1のポンプ用ケーシング
182…第2のポンプ用ケーシング
201…第1の吸込流路部
202…第2の吸込流路部
221…第1の吐出流路部
222…第2の吐出流路部
【手続補正書】
【提出日】2022-11-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
なお吸込分岐部24は、吸込口20から、第1の吸込流路部201と第2の吸込流路部202に分岐するところまでの区間を言う。具体的には吸込口20から第1の吸込流路部201の開始端部58までの区間と、吸込口20から第2の吸込流路部202の開始端部60までの区間を言う。吐出合流部26は、第1の吐出流路部221と第2の吐出流路部222が合流するところから吐出口22までの区間を言う。具体的には第1の吐出流路部221の終端部281から吐出口22までの区間と、第2の吐出流路部222の終端部282から吐出口22までの区間を言う。ポンプ装置16の吸込口20とは、ポンプ装置16の吸込み側におけるポンプ装置16と配管(図示しない)の接続部である。ポンプ装置16の吐出口22とは、ポンプ装置16の吐出側におけるポンプ装置16と配管(図示しない)の接続部である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
例えば、第1のポンプ装置161が運転していて、第2のポンプ装置162が停止しているときは、開閉弁28は、第1の吐出流路部221からの水圧により、点線で示す位置282に移動させられて、第2の吐出流路部222を閉鎖する。第2のポンプ装置162が運転していて、第1のポンプ装置161が停止しているときは、開閉弁28は、第2の吐出流路部222からの水圧により、点線で示す位置281に移動させられて、第1の吐出流路部221を閉鎖する。第1のポンプ装置161と第2のポンプ装置162の両方を同時に運転しているときは、開閉弁28は、第1の吐出流路部221と第2の吐出流路部222からの水圧により、実線で示す中間の位置283に移動させられる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
左側において圧力損失が大きいという問題に対する対策として
図8では、吐出合流部26の角度を時計方向に若干、例えば15°傾ける。第1の吐出流路部
223と吐出合流部26の接触面は平行とする。すなわち、接続部281(
図1参照)に、第1の吐出流路部
223からの流体は、垂直方向に流入する。吐出合流部26の形状は変更せずに、時計方向に若干、傾ける。
図8に示す吐出合流部26の内壁80(
図3も参照)は、傾ける前の位置を示し、
図8に示す吐出合流部26の内壁82は、傾けた後の位置を示す。傾けた後の吐出合流部26の外形は、図の明瞭化のために、
図8には示していない。第1の吐出流路部223の形状は、吐出合流部26を傾けたことに伴い、傾けた吐出合流部26に適合するように変更する。
図8の対策のメリットとしては回転軸74と回転軸76を、全体の中心である交点84からの距離が等しくなるように配置できる。このことにより重心位置が安定する。