(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187287
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20221212BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
A61B5/11 210
G08B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095243
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(72)【発明者】
【氏名】吉田 寛
(72)【発明者】
【氏名】川原 靖弘
【テーマコード(参考)】
4C038
5C086
【Fターム(参考)】
4C038VA05
4C038VA11
4C038VB35
4C038VC20
5C086AA18
5C086AA22
5C086AA49
5C086BA19
5C086CA11
5C086CA19
5C086FA01
5C086FA11
(57)【要約】
【課題】騒音や振動などの脳機能を抑制する負荷が存在する環境下に在る被験者の転倒リスクを評価することを可能にする技術を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る情報処理装置は、被験者の脳血流を計測する第1の脳血流計測装置を使用して前記被験者の前記脳血流をモニタする第1のモニタリング部と、前記被験者の重心動揺を計測する重心動揺計測装置を使用して前記被験者の前記重心動揺をモニタする第2のモニタリング部と、前記被験者の転倒リスクを評価するために使用する脳血流閾値を決定する決定部と、を備え、前記被験者の脳機能が抑制装置を使用して抑制され、前記決定部は、前記被験者の前記重心動揺が所定の重心動揺閾値を超えたときにおける前記被験者の前記脳血流を前記脳血流閾値として決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の脳血流を計測する第1の脳血流計測装置を使用して前記被験者の前記脳血流をモニタする第1のモニタリング部と、
前記被験者の重心動揺を計測する重心動揺計測装置を使用して前記被験者の前記重心動揺をモニタする第2のモニタリング部と、
前記被験者の転倒リスクを評価するために使用する脳血流閾値を決定する決定部と、
を備え、
前記被験者の脳機能が抑制装置を使用して抑制され、前記決定部は、前記被験者の前記重心動揺が所定の重心動揺閾値を超えたときにおける前記被験者の前記脳血流を前記脳血流閾値として決定する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記抑制装置は、前記被験者の前記脳機能を抑制するために音響刺激を発生させる、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報処理装置と、
前記第1の脳血流計測装置と、
前記重心動揺計測装置と、
前記抑制装置と、
を備える情報処理システム。
【請求項4】
前記被験者の前記脳血流を計測する第2の脳血流計測装置と、
前記第2の脳血流計測装置から出力される計測値が前記脳血流閾値を下回ることに応答して警告を出力する警告装置と、
をさらに備える
請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
被験者の脳血流を計測する第1の脳血流計測装置を使用して前記被験者の前記脳血流をモニタすることと、
前記被験者の重心動揺を計測する重心動揺計測装置を使用して前記被験者の前記重心動揺をモニタすることと、
前記被験者の転倒リスクを評価するために使用する脳血流閾値を決定することと、
を備え、
前記被験者の脳機能が抑制装置を使用して抑制され、前記脳血流閾値を決定することは、前記被験者の前記重心動揺が所定の重心動揺閾値を超えたときにおける前記被験者の前記脳血流を前記脳血流閾値として決定することを含む、
情報処理方法。
【請求項6】
前記被験者の前記脳血流が前記脳血流閾値を下回ることに応答して警告を出力することをさらに備える
請求項5に記載の情報処理方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の情報処理装置が備える各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場での作業においては、工事に伴い発生する騒音及び振動などにより作業者の脳機能が抑制される。重心バランス制御において脳機能は大きな役割を果たすことから、脳機能の抑制により作業者の転倒リスクが増大することが考えられる。作業者の転倒は高所からの転落につながり得る。
【0003】
工事現場において、作業者の転倒リスクに直接的に関係する作業者の重心動揺を計測することは困難である。このため、工事現場で作業を行う作業者の転倒リスクを定量的に評価することは困難である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Masahito Mihara et al., “Role of the prefrontal cortex in human balance control”, NeuroImage 43(2):329-336, 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、騒音や振動などの脳機能を抑制する負荷が存在する環境下に在る被験者の転倒リスクを評価することを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、被験者の脳血流を計測する第1の脳血流計測装置を使用して前記被験者の前記脳血流をモニタする第1のモニタリング部と、前記被験者の重心動揺を計測する重心動揺計測装置を使用して前記被験者の前記重心動揺をモニタする第2のモニタリング部と、前記被験者の転倒リスクを評価するために使用する脳血流閾値を決定する決定部と、を備え、前記被験者の脳機能が抑制装置を使用して抑制され、前記決定部は、前記被験者の前記重心動揺が所定の重心動揺閾値を超えたときにおける前記被験者の前記脳血流を前記脳血流閾値として決定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、脳機能を抑制する負荷が存在する環境下に在る被験者の転倒リスクを評価することを可能にする技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理システムを示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した閾値決定システムが適用される状況を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した警告システムが適用される状況を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1に示した情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、
図1に示した警告装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、
図1に示した情報処理装置により実行される閾値決定方法を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図1に示した警告装置により実行される警告方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0010】
工事現場などの騒音や振動などの負荷が存在する環境下では、負荷の影響により人の脳機能は抑制される。人は、脳機能が強く抑制されると、バランスを崩して転倒しやすくなる。すなわち、脳機能が強く抑制されると、転倒リスクが高まる。脳機能抑制度は脳血流に関連する。例えば、脳機能が強く抑制されるほど、脳血流が少なくなる。よって、脳血流を計測することにより、脳機能抑制度を推定することが可能である。脳機能の抑制がバランス制御にもたらす影響は人によって異なる。このため、単に脳血流を計測するだけでは、転倒リスクを評価することはできない。
【0011】
本発明の実施形態では、転倒リスクを評価する対象となる被験者自身について、脳血流と姿勢安定性との関係性を示す情報を事前に生成する。これにより、被験者が騒音や振動などの負荷が存在する環境下にいるときに、被験者の転倒リスクを評価することが可能になる。
【0012】
[構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理システム10を概略的に示している。
図1に示すように、情報処理システム10は、脳血流計11、重心動揺計12、抑制装置13、情報処理装置14、脳血流計16、及び警告装置17を備える。脳血流計は脳血流計測装置とも称され、重心動揺計は重心動揺計測装置とも称される。脳血流計11、重心動揺計12、抑制装置13、及び情報処理装置14は、被験者の転倒リスクを評価するために使用する脳血流閾値を決定する閾値決定システム15を構成する。脳血流計16及び警告装置17は、閾値決定システム15により決定される脳血流閾値を使用して被験者の転倒リスクを評価し、転倒リスクが高いとの評価結果に応答して警告を出力する警告システム18を構成する。閾値決定システム15及び警告システム18は異なるフェーズで使用される。例えば、閾値決定システム15は工事現場などの現場での作業より前に被験者に適用され、警告システム18は現場で作業している被験者に適用される。
【0013】
脳血流計11は被験者の脳血流を計測する。例えば、脳血流計11は、
図2に示すように、被験者の頭に装着されるウェアラブルデバイスである。脳血流計11として、例えば、NIRS(near infrared spectroscopy)に基づく脳血流計を使用することができる。NIRSは近赤外光を用いた非侵襲的な計測手法である。具体的には、NIRSは、光源からの近赤外光を被験者の頭皮に照射し、光検出器で被験者の頭部内部で散乱されて被験者の頭皮外に出る近赤外光を検出し、光検出器により検出される光強度から被験者の脳血流を算出する。
【0014】
重心動揺計12は被験者の重心動揺(重心の動き)を計測する。例えば、重心動揺計12は、
図2に示すように、静止立位における被験者の重心動揺を計測する。一例として、重心動揺計12は、被験者が乗るステージと、ステージ上の複数の点にかかる荷重を検出する荷重センサと、荷重センサからの出力信号に基づいて被験者の重心の位置を算出する処理回路と、を含む。なお、重心動揺計12は、静止座位などの他の姿勢における被験者の重心動揺を計測するものであってもよい。
【0015】
抑制装置13は被験者の脳機能を抑制する。例えば、抑制装置13は、
図2に示すように、スピーカを含み、被験者に音響刺激を与える。具体的には、抑制装置13は、事前に定めた周波数、大きさ、及び時間変動に従う音を発する。なお、被験者の脳機能を抑制する方法は音響刺激に限定されない。
【0016】
情報処理装置14は、脳血流計11から出力される信号と重心動揺計12から出力される信号とに基づいて脳血流閾値を決定する。情報処理装置14は、モニタリング部141、モニタリング部142、駆動部143、決定部144、及び記憶部145を備える。情報処理装置14は、パーソナルコンピュータ(PC)などのコンピュータであってよい。
【0017】
モニタリング部141は、脳血流計11を使用して被験者の脳血流をモニタする。例えば、モニタリング部141は、脳血流計11の出力信号から被験者の脳血流の時系列データを生成する。脳血流の時系列データはノイズ除去を含む所定の処理を施されてよい。処理は移動平均などの平滑化をさらに含んでよい。
【0018】
モニタリング部142は、重心動揺計12を使用して被験者の重心動揺をモニタする。例えば、モニタリング部142は、重心動揺計12の出力信号から被験者の重心動揺の時系列データを生成する重心動揺の時系列データはノイズ除去を含む所定の処理を施されてよい。処理は移動平均などの平滑化をさらに含んでよい。
【0019】
駆動部143は、被験者の脳機能を抑制するために抑制装置13を駆動する。例えば、駆動部143は、音響信号を抑制装置13のスピーカに印加する。駆動部143は、音響刺激が被験者にとって徐々に強くなるように、抑制装置13から発せられる音を調整してよい。なお、抑制装置13は、情報処理装置14に接続されずに、人手で操作されてもよい。
【0020】
決定部144は、モニタリング部141から脳血流の時系列データを受け取り、モニタリング部142から重心動揺の時系列データを受け取る。決定部144は、被験者の重心動揺が所定の重心動揺閾値を超えるときにおける被験者の脳血流を特定し、特定した脳血流を脳血流閾値として決定する。重心動揺は姿勢安定性に関連する。重心動揺が大きいことは姿勢安定性が低くなっていることを示す。重心動揺が重心動揺閾値を超えることは高い転倒リスクに対応し、重心動揺が重心動揺閾値を下回ることは低い転倒リスクに対応する。決定部144は、決定した脳血流閾値を記憶部145に格納する。
【0021】
脳血流計16は被験者の脳血流を計測する。脳血流計16は脳血流計11と同じ構成を有することができる。例えば、脳血流計16は、
図3に示すように、工事現場などの現場で作業している被験者の頭に装着される。
【0022】
警告装置17は、脳血流計16から出力される信号と情報処理装置14により決定される脳血流閾値とに基づいて被験者の転倒リスクを評価し、評価結果に応じて警告を出力する。警告装置17は、モニタリング部171、判定部172、出力部173、及び記憶部174を備える。警告装置17は携帯型のコンピュータであり得る。なお、警告装置17は脳血流計16と一体的に形成されてもよい。
【0023】
記憶部174は、情報処理装置14により決定される脳血流閾値を格納する。脳血流閾値は、情報処理装置14と警告装置17との間でのデータ伝送により情報処理装置14から警告装置17に提供されてよい。代替として、脳血流閾値は、USBメモリなどのリムーバブルメディアにより情報処理装置14から警告装置17に提供されてよい。
【0024】
モニタリング部171は脳血流計16を使用して被験者の脳血流をモニタする。例えば、モニタリング部171は、脳血流計16の出力信号から被験者の脳血流の時系列データを生成する。脳血流の時系列データはノイズ除去を含む所定の処理を施されてよい。処理は移動平均などの平滑化をさらに含んでよい。
【0025】
判定部172は、モニタリング部171から脳血流の時系列データを受け取る。判定部172は、被験者の脳血流が脳血流閾値を下回るか否かを判定する。例えば、判定部172は、被験者の脳血流が脳血流閾値より高い状態から脳血流閾値より低い状態に遷移することを検出するために、脳血流計16から次々に出力される脳血流の計測値と脳血流閾値との比較を行う。判定部172は、被験者の脳血流が脳血流閾値を下回ったときに通知信号を出力部173に与える。
【0026】
出力部173は、被験者の脳血流が脳血流閾値を下回ったときに警告を出力する。例えば、出力部173は、判定部172から通知信号を受け取ったことに応答して警告を出力する。警告は被験者の転倒リスクが高いことを知らせる信号である。出力部173は、例えば音又は振動など、被験者又は周囲の者が認識可能な刺激を発生させてよい。代替として又は追加として、出力部173は、被験者又は他者が保持する端末装置に、被験者の転倒リスクが高いことを示す情報を送信してよい。
【0027】
図4は、情報処理装置14のハードウェア構成例を概略的に示している。
図4に示すように、情報処理装置14は、ハードウェア構成要素として、プロセッサ41、RAM(Random Access Memory)42、プログラムメモリ43、ストレージデバイス44、及び入出力インタフェース45を備える。プロセッサ41は、RAM42、プログラムメモリ43、ストレージデバイス44、及び入出力インタフェース45と通信可能に接続される。
【0028】
プロセッサ41は、CPU(Central Processing Unit)などの汎用プロセッサを含む。RAM42はSDRAMなどの揮発性メモリを含む。RAM42はワーキングメモリとしてプロセッサ41により使用される。プログラムメモリ43は、閾値決定プログラムを含む、プロセッサ41により実行されるプログラムを記憶する。プログラムはコンピュータ実行可能命令を含む。プログラムメモリ43として例えばROM(Read Only Memory)が使用される。ストレージデバイス44の一部領域がプログラムメモリ43として使用されてもよい。
【0029】
プロセッサ41は、プログラムメモリ43に記憶されたプログラムをRAM42に展開し、プログラムを解釈及び実行する。閾値決定プログラムは、プロセッサ41により実行されると、情報処理装置14に関して説明される一連の処理をプロセッサ41に行わせる。
【0030】
ストレージデバイス44は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリを含む。ストレージデバイス44は脳血流閾値などのデータを記憶する。
【0031】
入出力インタフェース45は、外部装置と通信するための通信モジュールと、周辺機器を接続するための複数の端子と、を備える。通信モジュールは有線モジュール及び/又は無線モジュールを含む。周辺機器の例は、脳血流計11、重心動揺計12、及び抑制装置13を含む。プロセッサ41は、入出力インタフェース45を介して脳血流計11及び重心動揺計12からデータを受信する。プロセッサ41は、入出力インタフェース45を介して抑制装置13に駆動信号を出力する。プロセッサ41は、入出力インタフェース45を介して警告装置17に脳血流閾値を示す情報を送信してよい。
【0032】
なお、プロセッサ41は、汎用プロセッサに代えて又は追加して、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(field-programmable gate array)などの専用回路を含んでよい。
【0033】
図5は、警告装置17のハードウェア構成例を概略的に示している。
図5に示すように、警告装置17は、ハードウェア構成要素として、プロセッサ51、RAM52、プログラムメモリ53、ストレージデバイス54、入出力インタフェース55、及び出力装置56を備える。プロセッサ51は、RAM52、プログラムメモリ53、ストレージデバイス54、入出力インタフェース55、及び出力装置56と通信可能に接続される。
【0034】
プロセッサ51は、CPUなどの汎用プロセッサを含む。RAM52はSDRAMなどの揮発性メモリを含む。RAM52はワーキングメモリとしてプロセッサ51により使用される。プログラムメモリ53は、警告プログラムを含む、プロセッサ51により実行されるプログラムを記憶する。プログラムはコンピュータ実行可能命令を含む。プログラムメモリ53として例えばROMが使用される。ストレージデバイス54の一部領域がプログラムメモリ53として使用されてもよい。
【0035】
プロセッサ51は、プログラムメモリ53に記憶されたプログラムをRAM52に展開し、プログラムを解釈及び実行する。警告プログラムは、プロセッサ51により実行されると、警告装置17に関して説明される一連の処理をプロセッサ51に行わせる。
【0036】
ストレージデバイス54は、HDD又はSSDなどの不揮発性メモリを含む。ストレージデバイス54は、脳血流閾値などのデータを記憶する。
【0037】
入出力インタフェース55は、外部装置と通信するための通信モジュールと、周辺機器を接続するための複数の端子と、を備える。通信モジュールは有線モジュール及び/又は無線モジュールを含む。周辺機器の例は脳血流計16を含む。プロセッサ51は、入出力インタフェース55を介して脳血流計16からデータを受信する。プロセッサ51は、入出力インタフェース55を介して情報処理装置14から脳血流閾値を示す情報を受信してよい。
【0038】
出力装置56は、表示装置、スピーカ、及びバイブレータを含む。プロセッサ51は、出力装置56を使用して警告を出力してよい。プロセッサ51は、警告を出力するために、入出力インタフェース55を介して外部装置に情報を送信してよい。
【0039】
なお、プロセッサ51は、汎用プロセッサに代えて又は追加して、ASICやFPGAなどの専用回路を含んでよい。
【0040】
プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記憶された状態で情報処理装置14又は警告装置17に提供されてよい。この場合、情報処理装置14又は警告装置17は、記録媒体からデータを読み出すドライブを備え、記録媒体からプログラムを取得する。記録媒体の例は、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD-ROM、DVD-Rなど)、光磁気ディスク(MOなど)、及び半導体メモリを含む。また、プログラムはネットワークを通じて配布するようにしてもよい。具体的には、プログラムをネットワーク上のサーバに格納し、情報処理装置14又は警告装置17がサーバからプログラムをダウンロードするようにしてもよい。
【0041】
[動作]
次に、情報処理システム10の動作について説明する。
【0042】
図6は、情報処理装置14により実行される被験者の脳血流に関する閾値を決定する方法を概略的に示している。
図6に示すフローは転倒リスクを評価する対象となる被験者自身を対象として実行される。
図6に示すフローの実行時には、被験者は、
図2に示すように、脳血流計11を頭に装着し、重心動揺計12上で立位状態且つ静止状態を保つ。
【0043】
ステップS61において、モニタリング部141は脳血流計11を使用して被験者の脳血流を計測し、モニタリング部142は重心動揺計12を使用して被験者の重心動揺を計測する。ステップS61の処理は、抑制装置13を駆動せずに行われる。すなわち、正常状態での被験者の脳血流及び重心動揺が計測される。モニタリング部141は脳血流計11から出力される計測値を正常時の被験者の脳血流Ynとして得て、モニタリング部142は重心動揺計12から出力される計測値を正常時の被験者の重心動揺Vnとして得る。
【0044】
ステップS62において、駆動部143は、被験者の脳機能を抑制するために、抑制装置13を駆動する。例えば、駆動部143は音響信号を抑制装置13のスピーカに適用する。
【0045】
ステップS63において、モニタリング部141は脳血流計11を使用して被験者の脳血流を計測し、モニタリング部142は重心動揺計12を使用して被験者の重心動揺を計測する。被験者が脳機能を抑制する刺激を受けた状態で被験者の脳血流及び重心動揺が計測される。情報処理装置14は、脳血流計11から出力される計測値を脳機能抑制状態での被験者の脳血流Ysとして得て、重心動揺計12から出力される計測値を脳機能抑制状態での被験者の重心動揺Vsとして得る。
【0046】
ステップS64において、決定部144は、被験者の重心動揺Vsを所定の重心動揺閾値Vthと比較する。被験者の重心動揺Vsが重心動揺閾値Vth以下である場合(ステップS64;No)、フローはステップS62に戻る。
【0047】
ステップS62では、駆動部143は、脳機能をより強く抑制するように、抑制装置13を駆動してよい。例えば、駆動部143は、抑制装置13から発せられる音を大きくする。ステップS63では、モニタリング部141は、脳血流計11から出力される計測値を脳血流Ysとして新たに得て、モニタリング部142は、重心動揺計12から出力される計測値を重心動揺Vsとして新たに得る。ステップS64では、決定部144は、新たに得られた重心動揺Vsを重心動揺閾値Vthと比較する。重心動揺Vsが重心動揺閾値Vthを超えると(ステップS64;Yes)、フローはステップS65に進む。このように、被験者の重心動揺Vsが重心動揺閾値Vthを超えるまで、ステップS62、S63の処理が繰り返される。
【0048】
ステップS65において、情報処理装置14は、被験者の脳血流Ysを被験者に固有の脳血流閾値Ythとして決定する。このように、被験者の重心動揺Vsが重心動揺閾値Vthを超えたときにおける被験者の脳血流Ysが脳血流閾値Ythとして決定される。
【0049】
図7は、警告装置17により実行される被験者の転倒リスクが高いことを警告する方法を概略的に示している。
図7に示すフローは工事現場などの現場で作業を行っている被験者を対象として実行され、
図6に示した方法により決定される当該被験者に固有の脳血流閾値Ythが使用される。
図7に示すフローの実行時には、被験者は
図3に示すように脳血流計16を頭に装着する。
【0050】
ステップS71において、モニタリング部171は脳血流計16を使用して被験者の脳血流を計測する。具体的には、モニタリング部171は脳血流計16から出力される計測値を被験者の脳血流Yxとして得る。
【0051】
ステップS72において、判定部172は被験者の脳血流Yxを脳血流閾値Ythと比較する。脳血流Yxが脳血流閾値Yth以上である場合(ステップS72;No)、フローはステップS71に戻る。ステップS71では、モニタリング部171は、脳血流計16から出力される計測値を脳血流Yxとして新たに得る。
【0052】
脳血流Yxが脳血流閾値Ythを下回ると(ステップS72;Yes)、フローはステップS73に進む。ステップS73において、出力部173は警告を出力する。例えば、出力部173は、被験者の転倒リスクが高いことを音又は振動で知らせるために、スピーカ又はバイブレータを駆動する。
【0053】
[効果]
閾値決定システム15では、情報処理装置14は、脳血流計11を使用して被験者の脳血流をモニタし、重心動揺計12を使用して被験者の重心動揺をモニタする。情報処理装置14は、抑制装置13を使用して被験者の重心動揺が重心動揺閾値を超えるまで被験者の脳機能を抑制し、被験者の重心動揺が重心動揺閾値を超えたときにおける脳血流の計測値を脳血流閾値として決定する。これにより、転倒リスクを評価する対象となる被験者について脳血流閾値を得ることができる。被験者について得られた脳血流閾値は、現場においてその被験者の脳血流を計測することにより、その被験者の転倒リスクを評価することを可能にする。
【0054】
抑制装置13は、被験者の脳機能を抑制するために音響刺激を発生させる。音響刺激は被験者の重心動揺の計測に対する影響がない又は少ない点で好ましい。例えば、被験者の脳機能を抑制する刺激として振動を使用する場合、重心動揺計12が振動をノイズとして検出してしまい、被験者の重心動揺を正確に計測することが困難になる。
【0055】
警告システム18では、警告装置17は、脳血流計16を使用して被験者の脳血流をモニタし、被験者の脳血流が閾値決定システム15により当該被験者について決定された脳血流閾値を下回ることに応答して警告を出力する。これにより、被験者の転倒リスクが高いことを被験者又は他者に提示することができる。
【0056】
[変形例]
上述した実施形態では、転倒リスクを2つのレベル(高い/低い)で評価する。他の実施形態では、転倒リスクを3つ以上のレベルで評価してもよい。転倒リスクを3つのレベルで評価する場合、情報処理装置14は2つの重心動揺閾値を使用して2つの脳血流閾値を決定する。警告装置17は、被験者の脳血流が第1の脳血流閾値を下回ったときと被験者の脳血流が第2の脳血流閾値(第1の脳血流閾値より低い)を下回ったときとで異なる態様で警告を出力する。例えば、警告装置17は、被験者の脳血流が第1の脳血流閾値を下回ったことに応答して被験者に警告を与え、被験者の脳血流が第2の脳血流閾値を下回ったことに応答して被験者及び他者に警告を与える。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。さらに、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要素から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要素が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0058】
10…情報処理システム
11…脳血流計
12…重心動揺計
13…抑制装置
14…情報処理装置
141,142…モニタリング部
143…駆動部
144…決定部
145…記憶部
15…閾値決定システム
16…脳血流計
17…警告装置
171…モニタリング部
172…判定部
173…出力部
174…記憶部
18…警告システム
41,51…プロセッサ
42,52…RAM
43,53…プログラムメモリ
44,54…ストレージデバイス
45,55…入出力インタフェース
56…出力装置