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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187349
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】含硫化合物臭の抑制剤の探索方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20221212BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20221212BHJP
【FI】
C12Q1/02 ZNA
C12N15/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095338
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100220836
【弁理士】
【氏名又は名称】堂前 里史
(72)【発明者】
【氏名】江口 諒
(72)【発明者】
【氏名】田澤 寿明
(72)【発明者】
【氏名】福谷 洋介
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ13
4B063QR90
4B063QS28
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】悪臭抑制効果が実際の製品において充分に得られやすく、実用的な消臭剤に適した含硫化合物臭の抑制剤を探索できる方法を提供する。
【解決手段】OR2T11、OR2T1、OR2T6、OR2T11と同等の機能を有するポリペプチド、OR2T1と同等の機能を有するポリペプチド及びOR2T6と同等の機能を有するポリペプチドからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の嗅覚受容体と試験物質とを金属イオンの存在下で混合し、次いで、前記嗅覚受容体と含硫化合物とを接触させることを含む、含硫化合物臭の抑制剤の探索方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
OR2T11、OR2T1、OR2T6、OR2T11と同等の機能を有するポリペプチド、OR2T1と同等の機能を有するポリペプチド及びOR2T6と同等の機能を有するポリペプチドからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の嗅覚受容体と試験物質とを金属イオンの存在下で混合し、次いで、前記嗅覚受容体と含硫化合物とを接触させることを含む、含硫化合物臭の抑制剤の探索方法。
【請求項2】
前記含硫化合物が気体状態である、請求項1に記載の探索方法。
【請求項3】
前記嗅覚受容体と前記含硫化合物とを接触させた後、前記嗅覚受容体の応答を抑制した試験物質を、前記抑制剤として選択することをさらに含む、請求項1又は2に記載の探索方法。
【請求項4】
OR2T11と同等の機能を有するポリペプチドのアミノ酸配列が、OR2T11のアミノ酸配列と80%以上の相同性を示す、請求項1~3のいずれか一項に記載の探索方法。
【請求項5】
OR2T1と同等の機能を有するポリペプチドのアミノ酸配列が、OR2T1のアミノ酸配列と80%以上の相同性を示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の探索方法。
【請求項6】
OR2T6と同等の機能を有するポリペプチドのアミノ酸配列が、OR2T6のアミノ酸配列と80%以上の相同性を示す、請求項1~5のいずれか一項に記載の探索方法。
【請求項7】
前記含硫化合物が、硫化水素、メチルメルカプタン、アリルメルカプタン、ジメチルトリスルフィド、ジメチルジスルフィド、二硫化アリル、t-ブチルメルカプタン、3-メルカプト-3-メチルブタン-1-オール、4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノン、硫化メチル及び2-プロパンチオールからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の探索方法。
【請求項8】
前記抑制剤が、前記嗅覚受容体のアンタゴニストである、請求項1~7のいずれか一項に記載の探索方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含硫化合物臭の抑制剤の探索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
嗅覚は、嗅上皮の嗅神経細胞に存在する嗅覚受容体が匂い分子に応答することで認識されている。嗅覚受容体の匂い分子に対する応答に基づいて、悪臭の知覚を抑制することが提案されている(特許文献1)。
特許文献1では、OR4S2等の嗅覚受容体のアゴニストとなる化合物をメチルメルカプタン臭抑制剤として選択することが開示されている。特許文献1におけるメチルメルカプタン臭抑制剤は、OR4S2等の嗅覚受容体のアゴニストとして機能する。そのため、当該メチルメルカプタン臭抑制剤は、OR4S2等に結合して、嗅覚受容体を脱感作させる。その結果、悪臭に対する嗅覚感度が低下し、悪臭の知覚が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-10629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の実施例では嗅覚受容体の発現細胞を培養した後の液体培地に、悪臭分子としてメチルメルカプタンナトリウム水溶液を直接添加している。しかし、実際の鼻の嗅上皮の嗅覚受容体は空気中に漂う悪臭分子であるメチルメルカプタンが嗅粘液に溶け込んだものに対して応答する。このように、メチルメルカプタンナトリウム水溶液の直接添加では、悪臭の知覚メカニズムが実際の挙動とは異なる環境下でメチルメルカプタン臭抑制剤が探索されている。そのため、当該メチルメルカプタン臭抑制剤では悪臭抑制効果が実際の製品において充分に得られない可能性がある。
【0005】
また、特許文献1の方法で選択された嗅覚受容体のアゴニストは、嗅覚受容体の脱感作を利用して悪臭を抑制することから、対象の空間にて当該アゴニストが高濃度で拡散した状態を維持する必要がある。そのためアゴニストの拡散量、飛散量等が多くなるように設定する必要があり、消臭剤として実用的ではない。
そこで本発明は、悪臭抑制効果が実際の製品において充分に得られやすく、実用的な消臭剤に適した含硫化合物臭の抑制剤を探索できる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] OR2T11、OR2T1、OR2T6、OR2T11と同等の機能を有するポリペプチド、OR2T1と同等の機能を有するポリペプチド及びOR2T6と同等の機能を有するポリペプチドからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の嗅覚受容体と試験物質とを金属イオンの存在下で混合し、次いで、前記嗅覚受容体と含硫化合物とを接触させることを含む、含硫化合物臭の抑制剤の探索方法。
[2] 前記含硫化合物が気体状態である、[1]の探索方法。
[3] 前記嗅覚受容体と前記含硫化合物とを接触させた後、前記嗅覚受容体の応答を抑制した試験物質を、前記抑制剤として選択することをさらに含む、[1]又は[2]の探索方法。
[4] OR2T11と同等の機能を有するポリペプチドのアミノ酸配列が、OR2T11のアミノ酸配列と80%以上の相同性を示す、[1]~[3]のいずれかの探索方法。
[5] OR2T1と同等の機能を有するポリペプチドのアミノ酸配列が、OR2T1のアミノ酸配列と80%以上の相同性を示す、[1]~[4]のいずれかの探索方法。
[6] OR2T6と同等の機能を有するポリペプチドのアミノ酸配列が、OR2T6のアミノ酸配列と80%以上の相同性を示す、[1]~[5]のいずれかの探索方法。
[7] 前記含硫化合物が、硫化水素、メチルメルカプタン、アリルメルカプタン、ジメチルトリスルフィド、ジメチルジスルフィド、二硫化アリル、t-ブチルメルカプタン、3-メルカプト-3-メチルブタン-1-オール、4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノン、硫化メチル及び2-プロパンチオールからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である、[1]~[6]のいずれかの探索方法。
[8] 前記抑制剤が、前記嗅覚受容体のアンタゴニストである、[1]~[7]のいずれかの探索方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、悪臭抑制効果が実際の製品において充分に得られやすく、実用的な消臭剤に適した含硫化合物臭の抑制剤を探索できる方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例においてメチルメルカプタンに対する嗅覚受容体の応答強度(fold increase)を測定した結果を示す図である。
図2】実施例において硫化水素に対する嗅覚受容体の応答強度(fold increase)を測定した結果を示す図である。
図3】実施例においてメチルメルカプタンに対するOR2T11の応答を測定した結果を示す図である。
図4】実施例においてメチルメルカプタンに対するOR2T1の応答を測定した結果を示す図である。
図5】実施例においてメチルメルカプタンに対するOR2T6の応答を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書における以下の用語の意味は、下記の通りである。
「嗅覚受容体と同等の機能を有するポリペプチド」とは、細胞膜上に発現可能なポリペプチドであって、匂い分子の結合により、細胞内のcAMPの産生を引き起こすポリペプチド、又は細胞外から細胞内へのカルシウムイオンの流入を促進するポリペプチドをいう。
「含硫化合物臭」とは、硫黄原子を分子内に含む化合物から生じる匂いを意味する。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0010】
アミノ酸配列の配列同一性は、例えば、基準アミノ酸配列に対する対象アミノ酸配列の配列同一性として、次のようにして求めることができる。まず、基準アミノ酸配列及び対象アミノ酸配列をアラインメントする。ここで、各アミノ酸配列には、配列同一性が最大となるようにギャップを含めてもよい。次いで、基準アミノ酸配列及び対象アミノ酸配列において、一致したアミノ酸のアミノ酸残基数を算出し、下記式(1)にしたがって、配列同一性を求めることができる。
配列同一性(%)=(一致したアミノ酸残基数/対象アミノ酸配列の総アミノ酸残基数)×100 ・・・式(1)
【0011】
<含硫化合物臭の抑制剤の探索方法>
一実施形態の含硫化合物臭の抑制剤の探索方法では、OR2T11、OR2T1、OR2T6、OR2T11と同等の機能を有するポリペプチド、OR2T1と同等の機能を有するポリペプチド及びOR2T6と同等の機能を有するポリペプチドからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の嗅覚受容体と試験物質とを金属イオンの存在下で混合し、次いで、嗅覚受容体と気体の含硫化合物とを接触させる。
【0012】
試験物質と混合された嗅覚受容体が、試験物質に対しては当該嗅覚受容体の応答を引き起こさず、かつ、気体の含硫化合物と接触したときに気体の含硫化合物に対して応答しにくくなれば、特定の嗅覚受容体と混合した試験物質はアンタゴニストとして機能しているとすることができる。この場合、試験物質が含硫化合物臭の抑制剤として有用であると期待できる。
そのため一実施形態において、嗅覚受容体と気体の含硫化合物とを接触させたとき、嗅覚受容体の応答を抑制した試験物質を含硫化合物臭の抑制剤として選択できる。すなわち、一実施形態において含硫化合物臭の抑制剤は、嗅覚受容体のアンタゴニストであるとも言える。
【0013】
OR2T11は、ヒト嗅覚受容細胞での発現が確認されている嗅覚受容体であり、Gene ID:127077としてGenBank(NCBI)に登録されている。OR2T11は、配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
一実施形態において、OR2T11はOR2T11と同等の機能を有するポリペプチドと代替可能である。OR2T11と同等の機能を有するポリペプチドのアミノ酸配列は、OR2T1のアミノ酸配列と80%以上の相同性を示すことが好ましく、85%以上の相同性を示すことがより好ましく、90%以上の相同性を示すことがさらに好ましく、95%以上の相同性を示すことがさらにいっそう好ましく、98%以上の相同性を示すことが特に好ましく、99%以上の相同性を示すことが最も好ましい。
【0014】
OR2T1は、ヒト嗅覚受容細胞での発現が確認されている嗅覚受容体であり、Gene ID:26696としてGenBank(NCBI)に登録されている。OR2T1は、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
一実施形態において、OR2T1はOR2T1と同等の機能を有するポリペプチドと代替可能である。OR2T1と同等の機能を有するポリペプチドのアミノ酸配列は、OR2T1のアミノ酸配列と80%以上の相同性を示すことが好ましく、85%以上の相同性を示すことがより好ましく、90%以上の相同性を示すことがさらに好ましく、95%以上の相同性を示すことがさらにいっそう好ましく、98%以上の相同性を示すことが特に好ましく、99%以上の相同性を示すことが最も好ましい。
【0015】
OR2T6は、ヒト嗅覚受容細胞での発現が確認されている嗅覚受容体であり、Gene ID:254879としてGenBank(NCBI)に登録されている。OR2T6は、配列番号3のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
一実施形態において、OR2T6はOR2T6と同等の機能を有するポリペプチドと代替可能である。OR2T6と同等の機能を有するポリペプチドのアミノ酸配列は、OR2T6のアミノ酸配列と80%以上の相同性を示すことが好ましく、85%以上の相同性を示すことがより好ましく、90%以上の相同性を示すことがさらに好ましく、95%以上の相同性を示すことがさらにいっそう好ましく、98%以上の相同性を示すことが特に好ましく、99%以上の相同性を示すことが最も好ましい。
【0016】
他にも、OR2T11、OR2T1及びOR2T6のそれぞれと同等の機能を有するポリペプチドとして、例えば、ヒト以外の他の動物由来の相同な嗅覚受容体が挙げられる。ヒト以外の他の動物として、例えば、マウス、ラット、その他の実験モデル生物が挙げられる。
【0017】
嗅覚受容体は、含硫化合物に対する応答性を失わない範囲内であれば、任意の態様で使用され得る。例えば、嗅覚受容体は、嗅覚受容体を天然に発現する細胞又は組織及びこれらの培養物;嗅覚受容体を担持した嗅覚受容細胞の膜;嗅覚受容体を発現する遺伝子組換え細胞及びその培養物;嗅覚受容体が発現した遺伝子組換え細胞の膜;嗅覚受容体が発現した脂質二重膜等の態様での使用が想定され得る。また、嗅覚受容体として嗅粘液を有する組織(嗅上皮、嗅粘膜等)を用いてもよい。
【0018】
一実施形態において嗅覚受容体としては、嗅覚受容体を天然に発現する細胞、嗅覚受容体を発現する遺伝子組換え細胞及びこれらの培養物の使用が好ましい。
特に、嗅覚受容体を発現するヒト由来の遺伝子組換え細胞の使用が好ましい。ヒト由来の遺伝子組換え細胞は、例えば、嗅覚受容体をコードする遺伝子を組み込んだベクターを用いてヒト培養細胞を形質転換することで調製できる。形質転換に際しては、細胞膜における嗅覚受容体の発現の促進のために、嗅覚受容体をコードする遺伝子の使用に加えて、RTP(receptor-transporting protein)をコードする遺伝子の使用が好ましい。ヒトRTP1Sをコードする遺伝子を、嗅覚受容体をコードする遺伝子とともに細胞に導入できるからである。
RTP1Sの例としては、ヒトRTP1Sが挙げられる。ヒトRTP1Sは、GeneID:132112としてGenBankに登録されている。
【0019】
試験物質は、含硫化合物臭の抑制剤としての使用を所望する物質であれば、特に制限されない。試験物質は天然由来の物質でも、合成した物質でもよい。また、試験物質は単一の物質でもよく、二以上の物質を含む混合物でもよい。例えば、単一物質の香料を用いてもよく、複数種の物質を調合した香料を用いてもよい。
試験物質は、消臭剤として商品化する点を考慮すると、含硫化合物臭とは別の匂いを知覚させる物質が好ましく、また、揮発性物質が好ましい。また、匂い強度が低い物質の使用も好ましい。
試験物質の混合方法は、特に限定されない。嗅覚受容体を発現させる細胞の培養培地に試験物質を混ぜてもよく、嗅覚受容体が発現した細胞、組織に試験物質を滴下、散布、噴霧してもよい。
【0020】
金属イオンとしては、銅イオン、銀イオン等が挙げられるが、銅イオンが好ましい。金属イオンの濃度は特に限定されず、10~300μMでもよく、1~1000μMでもよい。
金属イオンの使用態様、存在態様は特に限定されない。例えば、金属イオン含有液中で嗅覚受容体と試験物質とを混合する方法;嗅覚受容体を担持した膜又は嗅覚受容体が発現した細胞もしくは組織を、金属イオン含有液に浸漬した状態で試験物質と混合する方法;嗅覚受容体が発現した細胞、組織を培養する培地に金属イオンを添加し、次いで試験物質を添加する方法;嗅覚受容体が発現した細胞、組織を培養する培地に、試験物質とともに金属イオン含有液を混合する方法が挙げられる。
【0021】
一実施形態において、嗅覚受容体と試験物質とを金属イオンの存在下で混合した後に、気体の含硫化合物との接触の前に嗅覚受容体の応答を測定する。例えば、嗅覚受容体と試験物質とを混合した直後の嗅覚受容体の応答を測定したデータを基準データとして利用し、後述の試験データと合わせて判断してもよい。
測定の具体的手法は、嗅覚受容体の応答を評価できれば特に限定されない。例えば、細胞内cAMP量の測定が挙げられる。細胞内cAMP量を嗅覚受容体の応答の指標とすることで、嗅覚受容体の応答を評価できる。細胞内のcAMP量を測定する方法としては、例えば、ELISA法、レポータージーンアッセイ等が挙げられる。
他にも、カルシウムイメージング法、電気生理学的手法による測定が挙げられる。電気生理学的測定では、例えば、嗅覚受容体を他のイオンチャネルとともに共発現させた試験細胞(例えば、アフリカツメガエル卵母細胞等)を調製し、当該試験細胞上のイオンチャネルの活動電位をパッチクランプ法、二電極膜電位固定法等で測定してもよい。
【0022】
含硫化合物は、硫黄原子を分子内に含む化合物である。含硫化合物は特に限定されないが、例えば、硫化水素、二酸化硫黄等の無機硫黄化合物;2-メルカプト-3-メチル-1-ブタノール、3-メルカプト-2-メチル-1-ペンタノール、3-メルカプト-2-メチル-1-プロパノール、3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノール、3-メルカプト-1-ヘキサノール、3-メチル-3(2-メチルジスルファニル)-ブタン-1-オール、3-メルカプト-3-メチル-1-ヘキサノール等のスルファニルアルカノール;3-メルカプト-2-メチルペンタナール、1-メルカプト-3-ペンタノン、2-メルカプト-3-ペンタノン、3-メルカプト-3-ペンタノン、4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノン等のスルファニルアルデヒド、スルファニルケトン;3-メチル-3-メルカプトブチルアセテート、3-メチル-3-メルカプトブチルフォルメート等のスルファニルエステル;メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、アリルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、2-メチルプロピルメルカプタン、1-メトキシヘプタン-3-チオール、4-メトキシ-2-メチルブタン-2-チオール、1-プロパンチオール、2-プロパンチオール、2-スルファニルエタノール、2-(メチルチオ)-2-プロパンチオール、3-メルカプト-3-メチルブタン-1-オール等のチオール;メチルイソチオシアネート、エチルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート等のイソチオシアネート;メチルチオメタン、メチルジチオメタン、メチルトリチオメタン、エチルチオエタン、エチルジチオエタン等のチオメタン、チオエタン:チオフェン、ジチオフェン、テルチオフェン、テトラヒドロチオフェン、2,5-ジメチルチオフェン、2-アセチルチオフェン等のチオフェン類;2-イソブチルチアゾール、2-アセチルチアゾール、4-エチル-5-プロピルチアゾール等のチアゾール;3,5-ジメチルー1,2,4-トリチオラン、1,2,4-トリチオラン、3-メチル-1,3,5-トリチオラン等のチオラン;チオグリコール酸、ジチオグリコール酸等のチオカルボン酸;メチル-2-プロペニルジスルフィド、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド、ジアリルスルフィド、ジアリルジスルフィド、ジアリルトリスルフィド、ジアリルテトラスルフィド、チイラン、(1-メチルエチル)-チイラン、ジフェニルジスルフィド等のスルフィド;アリシン;アリイン;アホエン;レンチオニン;システイン;グルタチオン;メチルチオメタン;チオ酢酸;チオ酢酸メチル;等が挙げられる。
含硫化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。また、含硫化合物以外の悪臭物質と組み合わせた複合臭や、含硫化合物を含む任意の空間から採取された臭気を用いてもよい。
【0023】
一実施形態において、嗅覚受容体と気体の含硫化合物とを接触させた後に、嗅覚受容体の応答を測定する。例えば、気体の含硫化合物と接触した後の嗅覚受容体の応答を測定したデータを試験データとして利用してもよい。試験物質の添加量増加に伴い、基準データにおいてその嗅覚受容体の試験物質に対する応答が変化せず、試験データにおいて、気体の含硫化合物との接触後にその嗅覚受容体の含硫化合物に対する応答が低下していれば、特定の嗅覚受容体と混合した試験物質がアンタゴニストとして機能している。この場合、当該試験物質は、含硫化合物臭の抑制剤として有用であると考えられる。
一実施形態において、嗅覚受容体と試験物質を混合した後、気体の含硫化合物嗅覚受容体に対する接触応答を抑制した試験物質が、含硫化合物臭の抑制剤として選択できる。
【0024】
一実施形態において、試験物質を混合した嗅覚受容体の応答と対照群の嗅覚受容体の応答を測定し、それぞれの測定結果を比較することを含む。試験物質を混合した嗅覚受容体(試験群)の応答と対照群における応答との比較によって、例えば、嗅覚受容体に対する試験物質の含硫化合物臭の抑制効果を評価できる。
対照群の例として、試験物質を混合していない嗅覚受容体;試験物質を混合したが気体の含硫化合物と接触させていない嗅覚受容体;相対的に低濃度の試験物質を混合した嗅覚受容体;試験物質を添加する前の嗅覚受容体;嗅覚受容体が発現していない細胞が挙げられる。
【0025】
一実施形態において、例えば、試験物質を用いた試験群における応答が対照群と比べて抑制されていた場合、その試験物質は含硫化合物臭の抑制剤、すなわち、嗅覚受容体のアンタゴニストとして選択できる。例えば、試験群における嗅覚受容体の応答指標が、対照群と比較して統計学的に有意に低減されていれば、その試験物質は、含硫化合物臭の抑制剤として選択できる。
【0026】
試験物質と混合された嗅覚受容体と含硫化合物との接触の態様は、気体の含硫化合物が当該嗅覚受容体と接触できれば、特に限定されない。例えば、気体の含硫化合物を封入した密閉容器内に、嗅覚受容体を担持した膜又は嗅覚受容体が発現した細胞もしくは組織を静置する方法;嗅覚受容体を担持した膜又は嗅覚受容体が発現した細胞もしくは組織を、密閉容器内に置き、次いで、密閉容器内に気体の含硫化合物を供給する方法が挙げられる。
嗅覚受容体と含硫化合物との接触に際しては、培養プレート、シャーレを用いてもよく、循環機(サーキュレーター)を用いてもよい。
【0027】
一実施形態においては、複数のウェルが形成された細胞培養プレートを使用してもよい。例えば、細胞培養プレートの複数のウェルのそれぞれに嗅覚受容体が発現した細胞、組織と試験物質とを分注して混合し、当該細胞培養プレートの周囲に気体の含硫化合物を供給し、含硫化合物と嗅覚受容体を接触させる。
このようにあらかじめ試験物質を嗅覚受容体と混合しておけば、次いで、気体の含硫化合物を接触させることで、各ウェル内の嗅覚受容体の悪臭に対する応答開始時を揃えることができる。そのため、事前に悪臭物質を各ウェル内の嗅覚受容体に一つずつ添加した後に嗅覚受容体の応答を測定する場合に生じるような、応答開始時の各ウェル間でのタイムラグが発生しにくい。
したがって、一実施形態によれば、より測定誤差の少ない嗅覚受容体の応答データを測定できる。複数のウェルが形成された細胞培養プレートを用いる場合、各ウェル内の嗅覚受容体は互いに同一でもよく、異なっていてもよい。
【0028】
一実施形態において、官能試験をさらに実施してもよい。例えば、含硫化合物臭の抑制剤としての有用性が期待された試験物質を、含硫化合物臭の抑制剤の候補物質とし、候補物質の含硫化合物臭の抑制効果を官能試験により評価する。官能試験で含硫化合物臭の抑制効果が認められた候補物質を、含硫化合物臭の抑制剤として選択してもよい。
【0029】
官能試験は、消臭剤の通常の評価手順に準じて行われ得る。例えば、評価者は、候補物質の匂いと同時に含硫化合物臭を嗅ぎ、含硫化合物臭の強度を評価してもよく、候補物質の匂いと別々に含硫化合物臭を嗅ぎ、含硫化合物臭の強度を評価してもよい。
得られた評価結果は、含硫化合物臭の単独強度と比較される。官能試験の結果、含硫化合物臭の強度を低下させたと評価された候補物質は、含硫化合物臭の抑制剤としての有用性が期待できる。
【0030】
(用途)
含硫化合物臭の抑制剤は、含硫化合物臭の消臭剤の有効成分として使用され得る。具体的使用態様は特に限定されない。例えば、含硫化合物臭の抑制剤は、含硫化合物臭の抑制用の組成物、物品の有効成分として使用してもよく、含硫化合物臭の抑制用の組成物、物品の製造に使用できる。
適用例として例えば、人間及び動物用のトイレ又は排泄物処理;医療施設、介護施設、介護施設の排泄物処理;紙おむつ、生理用品;パーマネント剤;パーマネント剤を用いる美容室等;肌着、下着、マスク、フェイスシールド、リネン類等の服飾類、布製品、織物;洗濯用洗剤、柔軟剤;香粧品、洗浄剤、デオドラント等の外用剤、医薬品;食品等;含硫化合物臭が発生する製品の製造設備等が挙げられる。ただし、含硫化合物臭の抑制剤の適用はこれら例示には何ら限定されない。
【0031】
(作用効果)
以上説明した一実施形態に係る探索方法では、嗅覚受容体と試験物質とを金属イオンの存在下で混合し、次いで、当該嗅覚受容体と気体の含硫化合物とを接触させ、試験物質が含硫化合物臭の抑制剤、すなわち、嗅覚受容体のアンタゴニストとして機能するか試験する。
金属イオンの存在下で試験物質と混合した嗅覚受容体を、気体の含硫化合物と接触させることで、実際に嗅上皮の嗅覚受容体が空気中に漂う気体の含硫化合物に対して応答する様子を再現できる。その結果、含硫化合物臭の知覚メカニズムを実際の鼻における嗅覚受容体の反応と近づけながら含硫化合物臭の抑制剤を探索できる。このようにして同定された含硫化合物臭の抑制剤は、実際の製品に用いた際も充分に消臭効果を発揮すると考えられる。
また、含硫化合物臭の抑制剤は嗅覚受容体のアンタゴニストであるから、対象の空間において同程度の消臭効果を得るために必要な濃度は、アンタゴニストを用いる場合には、アゴニストを用いる場合と比較して低く設定できる可能性が高い。そのため含硫化合物臭の抑制剤は、含硫化合物臭の消臭剤の有効成分として実用的である。
【0032】
一実施形態に係る探索方法によれば、気体の含硫化合物を使用するため、実際の鼻における嗅覚受容体の反応を再現して含硫化合物臭に応答する嗅覚受容体のアンタゴニストを探索できる。また、悪臭の原因となる含硫化合物は気体として供給されるから、単一の化合物である必要もなく、例えば、悪臭空間から採取した空気等のように複合的な臭気を気体の含硫化合物臭として使用できる。
【0033】
一実施形態に係る探索方法によれば、含硫化合物臭の抑制剤、すなわち、嗅覚受容体のアンタゴニストを消臭剤の有効成分として使用できる。アンタゴニストは含硫化合物臭と拮抗して嗅覚受容体の応答及び悪臭の知覚を阻害することから、アゴニストのように事前に拡散した状態を維持する必要もなくなる。そのため、アンタゴニストの含硫化合物臭の抑制剤は、スプレー剤等の瞬間的な消臭用途にも好適である。
【実施例0034】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下の実施例の記載に限定されない。
【0035】
<ヒト嗅覚受容体発現細胞の調製>
(pCI-ヒト嗅覚受容体ベクター、pCI-ヒトRTP1Sベクター)
GenBankに登録されている配列情報を基に、表1、2に記載のヒト嗅覚受容体をコードする遺伝子をクローニングした。各遺伝子は、human genomic DNA Human mixed(G3041:Promega)を鋳型としたPCR法によりクローニングした。PCR法により増幅した各遺伝子をpCIベクター(Invitrogen)に製品プロトコルにしたがって組み込んだ。具体的には、pCIベクター上に存在するNheI制限酵素サイト、BamHI制限酵素サイトを利用してRhoタグ配列が組み込み、その下流のMlu制限酵素サイト、NotI制限酵素サイトを利用してRhoタグ配列の下流に嗅覚受容体遺伝子を組み込んだ。次いで、ヒトRTP1Sをコードする遺伝子をpCIベクターのMluI制限酵素サイト、NotI制限酵素サイトへ組み込んだ。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
(嗅覚受容体発現細胞)
Hana3A細胞を50%コンフルエントになるように96ウェルプレート(コーニング、BioCoat)で培養した。表3に示す組成の反応液を調製し、クリーンベンチ内で15分静置した後、96ウェルプレート(コーニング、BioCoat)の各ウェルに50μLずつ添加した。37℃、5%CO雰囲気保持したインキュベータ内で24時間培養し、ヒト嗅覚受容体392種のそれぞれを発現させたHana3A細胞を調製した。
【0039】
【表3】
【0040】
<含硫化合物>
以下の匂い物質を含硫化合物として使用した。
・メチルメルカプタン(2%ガス/窒素)(相互産業株式会社)
・硫化水素(1.5%ガス/窒素)(相互産業株式会社)
・アリルメルカプタン
・ジメチルトリスルフィド
・ジメチルジスルフィド
・二硫化アリル
・t-ブチルメルカプタン
・3-メルカプト-3-メチルブタン-1-オール
・4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノン
・硫化メチル
・2-プロパンチオール
【0041】
<Glo Sensorアッセイ>
嗅覚受容体の応答の測定には、Glo Sensorアッセイを行った。Hana3A細胞に発現した嗅覚受容体は、細胞内在性のGαsおよびGαоlfと共役し、アデニル酸シクラーゼを活性化することで、細胞内cAMP量を増加させる。細胞内cAMP量の増加をホタルルシフェラーゼ遺伝子由来の発光値として測定し、嗅覚受容体の応答を測定した。
ルシフェラーゼの活性測定には、Glo Sensor cAMP Reagent(Promega)を用い、製品プロトコルにしたがって測定を行った。各種刺激条件について、臭気刺激前のルシフェラーゼ由来の発光値に対して、臭気刺激後のルシフェラーゼ由来の発光値で除した値、(刺激後の発光値)/(刺激前の発光値)を算出した。匂い物質の刺激により誘導された(刺激後の発光値)/(刺激前の発光値)を応答強度の測定値とした。
【0042】
<含硫化合物に応答する嗅覚受容体の探索>
(OR2T11、OR2T1、OR2T6の同定)
嗅覚受容体発現細胞の培養物から培地を取り除き、10mMのHEPESを含むHBSS緩衝液で希釈したGlo Sensor cAMP Reagentを96ウェルプレートの各ウェルに25μLずつ添加した。細胞を遮光環境で2~3時間培養して細胞内にcAMP Reagentを導入した後、5Lのフレックサンプラーバッグ内に96ウェルプレートと空気循環用のファンを入れ純空気で満たした。最後に悪臭分子としてメチルメルカプタンガス又は硫化水素ガスを気相終濃度が所定の値になるようにシリンジで注入した。10分間、嗅覚受容体発現細胞と悪臭分子を接触させ、その後、Glo Sensorアッセイを行い、悪臭分子に対する嗅覚受容体の応答強度(fold increase)を測定した。硫化水素(濃度40ppm)についての測定結果を図1、メチルメルカプタン(濃度7ppm)についての測定結果を図2に示す。
結果は、銅イオン存在下での各受容体発現細胞における、匂い刺激なしの条件での応答強度を1としたときの、匂い刺激に対する相対応答強度で表す(図1図2)。
392種類の嗅覚受容体それぞれを発現させた細胞について、銅イオン存在下で悪臭分子に対する応答を測定した結果、メチルメルカプタンに対して最も高い応答性を示した嗅覚受容体としてOR2T11が同定された。他にも、メチルメルカプタンに対して応答性を示した嗅覚受容体としてOR2T1が同定された。硫化水素に対しては最も高い応答性を示した嗅覚受容体としてOR2T11が同定された。他にも、硫化水素に対して応答性を示した嗅覚受容体としてOR2T1、OR2T6が同定された。
【0043】
(OR2T11、OR2T1、OR2T6の応答の含硫化合物に対する濃度依存性)
異なる濃度のメチルメルカプタンに対するOR2T11、OR2T1、OR2T6の応答を測定した。OR2T11についての結果を図3に、OR2T1についての結果を図4に、OR2T6についての結果を図5に示す。
その結果、OR2T11及びOR2T1はメチルメルカプタン濃度依存的な応答を示し、メチルメルカプタン受容体であることが確認された。このうち、OR2T11が最も応答性が高くメチルメルカプタンに特に高感度な受容体であることが分かった(図3~5)。
【0044】
(含硫化合物に対するOR2T11の応答確認)
アリルメルカプタン、ジメチルトリスルフィド、ジメチルジスルフィド、二硫化アリル、t-ブチルメルカプタン、3-メルカプト-3-メチルブタン-1-オール、4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノン、硫化メチル及び2-プロパンチオールについて、濃度10μMにおけるOR2T11の応答を測定した。結果を表4に示す。
その結果、OR2T11はこれらの含硫化合物に応答を示し、これらの含硫化合物に対する受容体であることが確認された。
【0045】
【表4】
【0046】
<試験物質>
試験物質(Compounds)として105種の化合物を10mMのHEPESを含むHBSS緩衝液で希釈し、200μM(終濃度100μM)になるよう調製した。
【0047】
<OR2T11のアンタゴニストの探索>
OR2T11発現細胞の培養物から培地を取り除き、10mMのHEPESを含むHBSS緩衝液で希釈したGloSensor cAMP Reagentを96ウェルプレートの各ウェルに25μLずつ添加した。細胞を2~3時間培養して細胞内にcAMP Reagentを導入した。その後、GloSensorアッセイを行い、試験物質を添加する前の嗅覚受容体の応答強度を測定し、基準データを得た。次いで、96ウェルプレートの各ウェルに試験物質を25μL添加し、10分後にGloSensorアッセイを行い、試験物質に対する嗅覚受容体の応答強度(fold increase)を測定し、試験データを得た。
その後、5Lのフレックサンプラーバッグ内に96ウェルプレートと空気循環用のファンを入れ純空気で満たした。最後に悪臭分子としてメチルメルカプタンガス又は硫化水素ガスを気相終濃度が所定の値になるようにシリンジで注入した。10分間、嗅覚受容体発現細胞と悪臭分子を接触させ、その後、GloSensorアッセイを行い、悪臭分子に対する嗅覚受容体の応答強度(fold increase)を測定した。
応答強度の測定の結果、アンタゴニストとして、ゲラニオール、シトラール、リナリルアセテート、ターピニルアセテート、アセチルセドレン、β-イオノン、α-イオノン、α-イソメチルイオノン、α-ダマスコン、δ-ダマスコン、β-ダマセノン、β-ダマスコン、α-イロンが同定された。これら13種類のアンタゴニストについて、応答強度の測定結果を表5に示す。
【0048】
【表5】
【0049】
表5に示すように、13種類の化合物はOR2T11のメチルメルカプタンに対する応答を抑制したことから、OR2T11のアンタゴニストとして機能していると考えられる。
【0050】
上記の13種類のアンタゴニストについて硫化水素を刺激物質として用い、メチルメルカプタンの場合と同様に応答強度を測定した。結果を表6に示す。
【0051】
【表6】
【0052】
表6に示すように、13種類の化合物はOR2T11の硫化水素に対する応答も抑制したことから、OR2T11のアンタゴニストとして機能していると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、悪臭抑制効果が実際の製品において充分に得られやすく、実用的な消臭剤に適した含硫化合物臭の抑制剤を探索できる。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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