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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187362
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】ウェハ洗浄水供給装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20221212BHJP
   B01F 21/00 20220101ALI20221212BHJP
   B01F 23/40 20220101ALI20221212BHJP
   B01F 25/40 20220101ALI20221212BHJP
【FI】
H01L21/304 648K
H01L21/304 647Z
H01L21/304 648G
B01F1/00 A
B01F3/08 Z
B01F5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095356
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】杉田 航
【テーマコード(参考)】
4G035
5F157
【Fターム(参考)】
4G035AA01
4G035AB28
4G035AB36
4G035AC26
4G035AE13
5F157BD04
5F157BD05
5F157BD06
5F157BD25
5F157BD33
5F157BD35
5F157BE12
5F157BE32
5F157BE43
5F157BE44
5F157BF39
5F157CF04
5F157CF14
5F157CF42
5F157CF44
5F157CF60
5F157CF99
5F157DB02
5F157DB03
5F157DC86
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】 各種ガス成分を溶解した洗浄水を安定供給可能なウェハ洗浄水供給装置を提供する。
【解決手段】 ウェハ洗浄水供給装置1は、貯留槽2と、この貯留槽2に超純水Wを補給する補給管3と、この貯留槽2に接続した循環式のウェハ洗浄水供給管4とを有する。ウェハ洗浄水供給管4の供給側4A側には、薬液の供給源7Aと送液ポンプ7Bとが付設された供給管7が接続されているとともに、この供給管7より下流側には、ガス溶解膜モジュール8が設けられていて、このガス溶解膜モジュール8の気相側には、機能性ガスのガス供給管9が接続している。そして、貯留槽2には、ガス溶解膜モジュール8で溶解する機能性ガスと同じ機能性ガス供給源11Aに接続したガス供給管11が接続していて、貯留槽2内をガス溶解膜モジュール8で溶解する機能性ガスでパージ可能となっている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超純水又は薬剤溶液に対して機能性ガスを溶解したウェハ洗浄水をユースポイントに供給するウェハ洗浄水供給装置であって、
超純水、薬剤溶液又はウェハ洗浄水の貯留槽と、
前記貯留槽からユースポインを経由して該貯留槽に返送する循環式のウェハ洗浄水供給管と、
前記ウェハ洗浄水供給管の貯留槽とユースポインとの間に配置された送液手段と、
前記貯留槽に超純水、薬剤溶液又は機能性ガス溶解水を補給する補給管と、を備え、
前記貯留槽に超純水又は薬剤溶液に溶解する機能性ガスと同じ機能性ガスの供給管が接続されていて、該貯留槽内の空間が前記機能性ガスでパージ可能となっている、ウェハ洗浄水供給装置。
【請求項2】
前記補給管に前記超純水又は薬剤溶液の供給源が接続されており、該補給管から貯留槽に超純水又は薬剤溶液が供給され、前記循環式のウェハ洗浄水供給管の前記ユースポイントより上流側に前記機能性ガスを溶解するガス溶解膜モジュールが設けられている、請求項1に記載のウェハ洗浄水供給装置。
【請求項3】
前記補給管に超純水に機能性ガスを溶解した機能性ガス溶解水の供給源が接続されており、該補給管から貯留槽に機能性ガス溶解水が供給される、請求項1に記載のウェハ洗浄水供給装置。
【請求項4】
前記循環式のウェハ洗浄水供給管の前記ユースポイントより上流側に薬液注入機構を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のウェハ洗浄水供給装置。
【請求項5】
前記循環式のウェハ洗浄水供給管の前記ユースポイントより下流側に排水機構が付設されており、該排水機構より下流側にユースポイントから貯留槽に返送するウェハ洗浄水中の溶存ガス濃度の測定手段が設けられていて、前記溶存ガス濃度の数値が所定の値を超えると、前記循環式のウェハ洗浄水供給管が排水機構側に切替可能となっている、請求項1~4のいずれか1項に記載のウェハ洗浄水供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体用ウェハの洗浄・リンス工程において有効な、各種ガス成分を溶解した洗浄水を安定供給できるウェハ洗浄水供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体用シリコンウェハなどの洗浄工程では、pHや酸化還元電位の制御に有効な溶質を超純水にごく低濃度溶解した水(以下、機能性水と呼ぶ)が使われることがある。この機能性水は、超純水を基本材料として、洗浄やリンス工程などそれぞれの工程の目的に合致したpHや酸化還元電位などの液性を持たせるために、HCl、HSO及びNaOHなどの酸・アルカリ、Hなどの酸化剤、CO、H及びOなどのガス成分を微量添加したものである。pH調整と酸化性付与には、一般的に薬液をポンプ注入や密閉容器に充填した薬剤を不活性ガスによる加圧で押し出す方式で、液体の薬剤を微量添加(薬注)する方法が実用化されている。
【0003】
この場合、超純水の流量が一定であれば、所望の溶質濃度となるように薬注することは容易であるが、実際にウェハ洗浄水が用いられる洗浄機は複数台で構成されるので、ウェハに注がれる洗浄水の供給・停止が複数のバルブの開閉で制御されており、流量が不規則に変動する。この変動に対して、ウェハ洗浄水の溶質濃度が所望の範囲に収まるように超純水流量に対して供給する溶質の比例制御、濃度モニタの信号を受けてのPID制御など、様々な手法による溶解コントロールが行われている。しかし、特に複数の洗浄チャンバを有する枚葉式洗浄機における不規則な流量変動に十分追随できる薬注コントロールは実現できていない。この対策として、最大使用量を想定したウェハ洗浄水を製造して洗浄機に供給することが考えられるが、これでは大幅に過剰量のウェハ洗浄水を供給することになるので、高価なウェハ洗浄水が無駄になってしまう。そこで、ウェハ洗浄水の節水を目的として貯留槽を設け、洗浄機で使用しないウェハ洗浄水を貯留槽に戻し循環する方式のウェハ洗浄水供給装置が特許文献1で提案されている。
【0004】
この貯留槽を設けウェハ洗浄水を貯留槽に戻し循環する方式のウェハ洗浄水供給装置の一例を図4に示す。図4においてウェハ洗浄水供給装置21は、貯留槽22と、この貯留槽22に超純水Wを補給する補給管23と、この貯留槽22に接続した循環式のウェハ洗浄水供給管24とを有する。循環式のウェハ洗浄水供給管24は、送液ポンプ25を介してユースポイント26に洗浄水W1を送液可能となっている。そして、送液ポンプ25側のウェハ洗浄水供給管24とユースポイント26との間の送液部(供給側24A)には、アンモニアや塩酸などの薬液の供給源27Aと送液ポンプ27Bとが付設された供給管27が接続されているとともに、この供給管27より下流側には、膜式脱気装置28と、ガス溶解膜モジュール29とが順次設けられていて、このガス溶解膜モジュール29の気相側には、H、CO、Oなどの機能性ガス供給源30Aに連通したガス供給管30が接続している。一方、ウェハ洗浄水供給管24のユースポイント26より下流側(返送側24B)には、分離膜31が設けられている。そして、貯留槽22には、不活性ガスとしてのNガス源32Aに接続したガス供給管32が接続していて、貯留槽22内をNガスでパージ可能となっている。
【0005】
上述したようなウェハ洗浄水供給装置21において、貯留槽22に超純水Wを所定量貯留したら、送液ポンプ25を駆動してウェハ洗浄水供給管24に供給し、pH調整剤の供給管27からpH調整剤を添加して所望のpHに調整し、余分な溶存ガス成分を膜式脱気装置28で除去した後、ガス溶解膜モジュール29により所望の機能性ガス成分を溶解して洗浄水W1を調整し、この洗浄水W1をユースポイント26に供給することで洗浄を行う。一方、未使用の洗浄水W1は、分離膜31により微粒子を除去した後、返送側24Bから貯留槽22に戻すことで、洗浄水W1を効率よく利用している。この際、貯留槽22をNガスでパージすることにより、貯留している超純水W(超純水W+洗浄水W1)に酸素が溶解して溶存酸素(DO)が増加しないようになっている。そして、貯留槽22内の貯留水量が所定量を下回ったら、超純水Wを補給することで、ユースポイント26に安定的に洗浄水W1を供給可能となっている。
【0006】
上述したような機能性水において、所望のガス成分を溶解させる場合、この所望とする溶解ガス以外のガスが溶け込んでいると、所望とする溶解ガスの飽和濃度が低減し、必要なガス成分の濃度が得られないばかりか、pHや酸化還元電位にも影響を与えかねない。このような対策として、特許文献1では、ガス溶解膜モジュール29の前段に膜式脱気装置28を設置している。また、特許文献2及び特許文献3にも、溶存ガスのDOを除去するため、ガス溶解膜モジュールの前段に脱気膜モジュールを設置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-182099号公報
【特許文献2】特開2014-225570号公報
【特許文献3】特許第6020626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、貯留槽22に超純水Wを貯留して循環させる方式では、循環する過程で洗浄水W1に酸素が溶解するだけでなく、貯留槽22の残存空間に存在する酸素も溶解し、機能性水の溶存酸素(DO)が上昇してしまう、という問題点がある。そこで、循環する機能性水のDOを抑制するために、貯留槽22にNガスをパージしているが、この方式では洗浄水W1に溶解するガス成分がNガスと異なる場合、貯留槽で供給水にNが溶解する。したがって、ガス溶解膜モジュールで十分にガス溶解が進まないことが懸念される。この対策として、特許文献2,3のようにガス溶解膜モジュールの前段に脱気膜モジュールを設置することが考えられるが、この場合、機能性水水中に含まれる所望とする溶解ガス成分も同時に除去されるため、所望とする溶解ガス成分の溶解ロスが多くなってしまう、という問題がある。また、ガス溶解膜モジュール29の前段に膜式脱気装置28を設置しなければならず、装置の構成要素が増加し、設置スペースも大きくなる、という問題がある。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、各種ガス成分を溶解した洗浄水を安定供給可能なウェハ洗浄水供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的に鑑み本発明は、超純水又は薬剤溶液に対して機能性ガスを溶解したウェハ洗浄水をユースポイントに供給するウェハ洗浄水供給装置であって、超純水、薬剤溶液又はウェハ洗浄水の貯留槽と、前記貯留槽からユースポインを経由して該貯留槽に返送する循環式のウェハ洗浄水供給管と、前記ウェハ洗浄水供給管の貯留槽とユースポインとの間に配置された送液手段と、前記貯留槽に超純水、薬剤溶液又は機能性ガス溶解水を補給する補給管とを備え、前記貯留槽に超純水又は薬剤溶液に溶解する機能性ガスと同じ機能性ガスの供給管が接続されていて、該貯留槽内の空間が前記機能性ガスでパージ可能となっている、ウェハ洗浄水供給装置を提供する(発明1)。
【0011】
かかる発明(発明1)によれば、貯留槽に超純水に溶解する機能性ガスと同じガスをパージすることにより、貯留槽に貯留されている超純水やウェハ洗浄水に他のガス成分が溶解するのを抑制することができるので、溶解する機能性ガスの飽和濃度が低減することがなく、安定した機能性ガスガス濃度のウェハ洗浄水をユースポイントに供給することができる。
【0012】
上記発明(発明1)においては、前記補給管に前記超純水又は薬剤溶液の供給源が接続されており、該補給管から貯留槽に超純水又は薬剤溶液が供給され、前記循環式のウェハ洗浄水供給管の前記ユースポイントより上流側に前記機能性ガスを溶解するガス溶解膜モジュールが設けられていることが好ましい(発明2)。
【0013】
かかる発明(発明2)によれば、超純水又は薬剤溶液にガス溶解膜モジュールにより所望とするガス成分を溶解してウェハ洗浄水を調整するに際し、超純水又は薬剤溶液に所望とするガス成分以外の気体の溶解が抑制されているので、ガス溶解膜モジュールの前段で膜式脱気装置により溶存ガスを脱気する必要がなく、安定した機能性ガスの濃度のウェハ洗浄水を供給することができる。
【0014】
上記発明(発明1)においては、前記補給管に超純水に機能性ガスを溶解した機能性ガス溶解水の供給源が接続されており、該補給管から貯留槽に機能性ガス溶解水が供給されることが好ましい(発明3)。
【0015】
かかる発明(発明3)によれば、所望とするガス成分の機能性ガス溶解水において、所望とするガス成分以外の期待の溶解が抑制されているので、安定した機能性ガスの濃度のウェハ洗浄水を供給することができる。
【0016】
上記発明(発明1~3)においては、前記循環式のウェハ洗浄水供給管の前記ユースポイントより上流側に薬液注入機構を備えることが好ましい(発明4)。
【0017】
かかる発明(発明4)によれば、機能性ガスを溶解するとともにpH調整剤や酸化還元電位調整剤を添加したガス溶解水のウェハ洗浄水を安定して供給することができる。
【0018】
上記発明(発明1~4)においては、前記循環式のウェハ洗浄水供給管の前記ユースポイントより下流側に排水機構が付設されており、該排水機構より下流側にユースポイントから貯留槽に返送するウェハ洗浄水中の溶存ガス濃度の測定手段が設けられていて、前記溶存ガス濃度の数値が所定の値を超えると、前記循環式のウェハ洗浄水供給管が排水機構側に切替可能となっていることが好ましい(発明5)。
【0019】
かかる発明(発明5)によれば、貯留槽に返送するウェハ洗浄水中の溶存ガス濃度を測定し、溶存ガス濃度の数値が所定の値を超えたら、所望とする機能性ガス以外の他のガス成分が溶解したとみなして、前記循環式のウェハ洗浄水供給管を排水機構側に切替えて、これを排出することにより、貯留槽を含む循環流路内を流通するウェハ洗浄水などにおける他のガス成分の濃度を抑制し、所望とする機能性ガスの溶存濃度が安定したウェハ洗浄水を継続してユースポイントに供給することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のウェハ洗浄水供給装置によれば、貯留槽に超純水に溶解する機能性ガスと同じガスをパージすることにより、貯留槽に貯留されている超純水やウェハ洗浄水に他のガス成分が溶解するのを抑制することができるので、安定した機能性ガスの濃度のウェハ洗浄水をユースポイントに供給することができる。これにより、他のガス成分を排除するための脱気膜装置を設ける必要がなくなるので、装置の構成要素を少なくすることができ、設置スペースも小さくすることができる。さらに、機能性ガスの消費量を低減することができるので、環境負荷の低減も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第一の実施形態によるウェハ洗浄水供給装置を示す概略図である。
図2】本発明の第二の実施形態によるウェハ洗浄水供給装置を示す概略図である。
図3】本発明の第三の実施形態によるウェハ洗浄水供給装置を示す概略図である。
図4】従来のウェハ洗浄水供給装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第一の実施形態>
以下、本発明のウェハ洗浄水供給装置の第一の実施形態について添付図面を参照にして詳細に説明する。
【0023】
〔ウェハ洗浄水供給装置〕
図1は、本発明の第一の実施形態によるウェハ洗浄水供給装置を示している。図1において、ウェハ洗浄水供給装置1は、貯留槽2と、この貯留槽2に超純水供給源3Aから超純水Wを補給する補給管3と、この貯留槽2に接続した循環式のウェハ洗浄水供給管4とを有する。循環式のウェハ洗浄水供給管4は、送液手段としての送液ポンプ5を介してユースポイント6に洗浄水W1を送液可能となっている。そして、ウェハ洗浄水供給管4とユースポイント6との間の送液ポンプ5側(供給側4A)には、アンモニアや塩酸などの薬液の供給源7Aとこの薬液の送液ポンプ7Bとが付設された供給管7が接続されているとともに、この供給管7より下流側には、ガス溶解膜モジュール8が設けられていて、このガス溶解膜モジュール8の気相側には、H、CO、Oなどの機能性ガス供給源9Aに連通したガス供給管9が接続している。なお、本実施形態においては、機能性ガスとしてNを用いないことが望ましい。一方、ウェハ洗浄水供給管4のユースポイント6より下流側(返送側4B)には、分離膜10が設けられている。なお、本実施形態においては、機能性ガスとしてNを用いないことが望ましい。
【0024】
このようなウェハ洗浄水供給装置1において、貯留槽2には、ガス溶解膜モジュール8で溶解する機能性ガスと同じ機能性ガスの供給源11Aに接続したガス供給管11が接続していて、貯留槽2内を機能性ガスでパージ可能となっている。そして、ウェハ洗浄水供給管4の返送側4Bの分離膜10より下流側には、排水機構としての排出管12が接続されていて、この排出管12の接続箇所より上流側には、溶存ガス濃度の測定手段としての溶存ガスモニタ13が設けられていて、この溶存ガスモニタ13は図示しないパーソナルコンピュータなどの制御手段に接続されている。この制御手段は、溶存ガスモニタ13の検出値に基づいて、返送される洗浄水W1をウェハ洗浄水供給管4側と排出管12側とに切り替え可能となっている。
【0025】
(超純水)
本実施形態において、原水となる超純水Wとしては、例えば、抵抗率:18.1MΩ・cm以上、微粒子:粒径50nm以上で1000個/L以下、生菌:1個/L以下、TOC(TotAl OrgAnic CArbon):1μg/L以下、全シリコン:0.1μg/L以下、金属類:1ng/L以下、イオン類:10ng/L以下、過酸化水素;30μg/L以下、水温:25±2℃のものが好適である。
【0026】
(薬液)
超純水Wに溶解する薬剤としては、例えば、pH調整剤を用いることができる。このpH調整剤としては特に制限はないが、pH7未満に調整する場合には、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸などの酸性溶液を用いることができる。また、pH7以上に調整する場合には、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又はTMAH等のアルカリ性溶液を用いることができる。このpH調整剤は、超純水Wに導電性を付与する導電性付与物質としても機能する。
【0027】
また、薬剤として酸化還元電位調整剤を添加することもできる。この酸化還元電位調整剤としては、酸化還元電位を高く(プラス側)調整する場合には、過酸化水素水などを用いることができる。また、酸化還元電位を低く(マイナス側)調整する場合にはシュウ酸、硫化水素、ヨウ化カリウムなどの溶液を用いることができる。
【0028】
これらpH調整剤又は酸化還元電位調整剤は、いずれか一方を添加してもよいし、両方を添加してもよい。
【0029】
〔ウェハ洗浄水の供給方法〕
次に前述したような構成を有する本実施形態のウェハ洗浄水供給装置1を用いたウェハ洗浄水の供給方法について説明する。
【0030】
(ウェハ洗浄水製造工程)
まず、補給管3から超純水Wを貯留槽2に供給する。この貯留槽2に超純水Wが所定量溜まったら、送液ポンプ5を駆動して超純水Wをウェハ洗浄水供給管4に送液する。このとき薬液供給源7Aから供給された薬液が供給管7の合流地点で超純水Wに薬注され薬剤溶液を調整する。その後、ガス溶解膜モジュール8の気相側に機能性ガス供給源9AからH、CO、Oなどの機能性ガスを供給して、薬剤溶液にこれを溶解することでウェハ洗浄水W1を製造する。
【0031】
(ウェハ洗浄水供給・返送工程)
このようにしてウェハ洗浄水W1を調製したら、ユースポイント6に供給して枚葉式の洗浄機などで必要量が消費され、未使用分は返送側4Bから分離膜10により微粒子を除去された後、貯留槽2に返送される。
【0032】
このとき本実施形態においては、返送するウェハ洗浄水W1の溶存ガス濃度を溶存ガスモニタ13で測定する。この循環の過程でウェハ洗浄水W1に溶解した機能性ガスと異なるガスが溶解すると、ウェハ洗浄水W1の溶存ガス濃度が上昇するので、溶存ガスモニタ13の計測値が所定の管理値以上になったら、ウェハ洗浄水供給管4を貯留槽2から排出管12側に切り替えて、外部に排出することで、ウェハ洗浄水供給管4を循環するウェハ洗浄水W1の溶存ガス濃度を一定に保つことができるようになっている。この管理値は例えば、所望とする機能性ガスの溶解による溶存ガス濃度に対して溶存ガス濃度が50%以上、特に30%以上、さらには10%以上増加したらウェハ洗浄水W1を排出するように制御すればよい。
【0033】
このようにしてウェハ洗浄水W1は貯留槽2に返送されるが、本実施形態においては、貯留槽2は超純水W1に溶解する機能性ガスと同じ機能性でパージされているので、貯留槽2において、他のガス成分が溶解することがなく、ウェハ洗浄水W1における機能性ガスの溶存ガス濃度を略一定に保つことができる。なお、貯留槽2の水位が所定の値を下回ったら超純水供給源3Aから補給管3を介して超純水Wを貯留槽2に供給し、上述したようなウェハ洗浄水W1の製造・供給・返送を繰り返せばよい。
【0034】
このように本実施形態においては、超純水Wに溶解する機能性ガスと同じガスで貯留槽2をパージしているので、貯留槽2において機能性ガス以外のガス成分が超純水W(又は超純水W+ウェハ洗浄水W1)に溶解することを防止することができる。このため、他のガス成分を排除するための脱気膜装置を設ける必要がなくなるので、ウェハ洗浄水供給装置1の構成要素を少なくすることができ、かつウェハ洗浄水供給装置1の設置スペースも小さくすることができる。さらに、機能性ガスの脱気に伴うロスがなくなるので、その消費量を低減することができ、環境負荷の低減に寄与することができる。
【0035】
<第二の実施形態>
次に本発明の第二の実施形態について説明する。
【0036】
[ウェハ洗浄水供給装置]
図2は、本発明の第二の実施形態によるウェハ洗浄水供給装置を示している。第二の実施形態のウェハ洗浄水供給装置1は、前述した第一の実施形態において、貯留槽2には、補給管3を介して超純水供給源3Aの代わりに超純水に薬液を溶解した薬剤溶液としての機能性水(FW)の供給源3Bが接続しており、薬液の供給源7A、薬液の送液ポンプ7B及び供給管7を有しない以外、同じ構成を有するので、同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0037】
〔ウェハ洗浄水の供給方法〕
次に前述したような構成を有する本実施形態のウェハ洗浄水供給装置1を用いたウェハ洗浄水の供給方法について説明する。
【0038】
(ウェハ洗浄水製造工程)
まず、補給管3から機能性水FWを貯留槽2に供給する。この貯留槽2に機能性水FWが所定量溜まったら、送液ポンプ5を駆動して機能性水FWをウェハ洗浄水供給管4に送液する。この機能性水FWにガス溶解膜モジュール8において該ガス溶解膜モジュール8の気相側に機能性ガス供給源9AからH、CO、Oなどの機能性ガスを供給して、これを溶解することでウェハ洗浄水W1を製造する。
【0039】
(ウェハ洗浄水供給・返送工程)
この調製されたウェハ洗浄水W1は、前述した第一の実施形態と同様にウェハ洗浄水W1をユースポイント6に供給・返送する。その際、溶存ガスモニタ13の計測値が所定の管理値以上になったら排出管12からウェハ洗浄水W1を外部に排出すればよい。
【0040】
このようにしてウェハ洗浄水W1は貯留槽2に返送されるが、本実施形態においては、貯留槽2は、機能性水FWに溶解する機能性ガスと同じ機能性でパージされているので、貯留槽2において機能性ガス以外のガス成分が機能性水FW(又は機能性水FW+ウェハ洗浄水W1)に溶解することを防止することができる。これにより貯留槽2において、機能性ガスと異なる他のガス成分が溶解することがなく、ウェハ洗浄水W1の溶存ガス濃度を一定に保つことができる。なお、貯留槽2の水位が所定の値を下回ったら機能性水の供給源3Bから補給管3を介して機能性水FWを貯留槽2に供給し、上述したようなウェハ洗浄水W1の製造・供給・返送を繰り返せばよい。
【0041】
<第三の実施形態>
以下、本発明の第三の実施形態について説明する。
【0042】
[ウェハ洗浄水供給装置]
図3は、本発明の第三の実施形態によるウェハ洗浄水供給装置を示している。第三の実施形態のウェハ洗浄水供給装置1は、前述した第二の実施形態において、貯留槽2には、補給管3を介して薬液を溶解した機能性水(FW)の供給源3Bの代わりに、超純水に機能性ガスを溶解した機能性ガス溶解水にさらに薬液を溶解したウェハ洗浄水W1の供給源3Cが接続しており、ウェハ洗浄水供給管4の供給側4Aにガス溶解膜モジュール8、機能性ガス供給源9A及びガス供給管9を有しない一方、微粒子除去フィルタ14を有する以外、同じ構成を有するので、同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0043】
〔ウェハ洗浄水の供給方法〕
次に前述したような構成を有する本実施形態のウェハ洗浄水供給装置1を用いたウェハ洗浄水の供給方法について説明する。
【0044】
(ウェハ洗浄水供給工程)
まず、補給管3からウェハ洗浄水W1を貯留槽2に供給する。この貯留槽2にウェハ洗浄水W1が所定量溜まったら、送液ポンプ5を駆動してウェハ洗浄水供給管4にウェハ洗浄水W1を送液する。このウェハ洗浄水W1は、微粒子除去フィルタ14により微粒子を除去された後ユースポイント6に供給される。
【0045】
(ウェハ洗浄水返送工程)
このウェハ洗浄水W1はユースポイント6の枚葉式の洗浄機などで必要量が消費され、未使用分は返送側4Bから分離膜10により微粒子を除去された後、貯留槽2に返送される。その後は、前述した第一の実施形態と同様に溶存ガスモニタ13の計測値が所定の管理値以上になったら排出管12からウェハ洗浄水W1を外部に排出すればよい。
【0046】
このようにしてウェハ洗浄水W1は貯留槽2に返送されるが、本実施形態においては、貯留槽2は、ウェハ洗浄水W1に溶解する機能性ガスと同じ機能性でパージされているので、貯留槽2において、機能性ガス以外の他のガス成分がウェハ洗浄水W1に溶解することがなく、ウェハ洗浄水W1の溶存ガス濃度を一定に保つことができる。なお、貯留槽2の水位が所定の値を下回ったら機能性水の供給源3Bから補給管3を介して機能性水FWを貯留槽2に供給し、上述したようなウェハ洗浄水W1の製造・供給・返送を繰り返せばよい。
【0047】
以上、本発明について添付図面を参照にして実施形態に基づき説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変更実施が可能である。例えば、第一の実施形態においては、薬液の供給源7Aから送液ポンプ7Bにより、供給側4Aに薬液を供給しているが、送液ポンプ7Bを用いずに、密閉容器に薬液をNガスなどの不活性ガスとともに入れておき、不活性ガスの圧力によりこの薬液を押し出す加圧押出式ポンプも好適に用いることができる。また、薬液としてpH調整剤や酸化還元電位調整剤を添加する場合には、ウェハ洗浄水W1のpHや酸化還元電位を計測するpH計やORP計などを有していてもよい。そして、この計測値に基づいて薬液の注入量を制御するようにしてもよい。さらに、場合によっては排出管12を設けずに、溶存ガスモニタ13による溶存ガス濃度の測定のみを行うようにしてもよく、必要に応じて膜式脱気装置などの脱気膜を返送側4Bの貯留槽2の前段に設けてもよい。また、溶存ガス濃度は、溶存酸素濃度など溶解させたい機能性ガス以外の個別のガスを計測することで概算しても良い。
【実施例0048】
以下の具体的実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0049】
[実施例1]
図1に示すウェハ洗浄水供給装置1において、150Lの超純水Wを貯留槽2に供給したら送液ポンプ5を駆動して、この超純水Wをウェハ洗浄水供給管4の供給側4Aに送液した。この超純水Wに対し、供給管7から導電率が1μS/cmとなるようにアンモニア(導電性付与物質)を添加し、さらにガス供給管9からガス溶解膜モジュール8の気相室側に水素濃度1.4ppmとなるよう水素を添加してウェハ洗浄水W1を製造した。
【0050】
この洗浄水W1を枚葉式洗浄機を備えたユースポイント6に供給し、ユースポイント6で使用しなかった洗浄水W1をウェハ洗浄水供給管4の返送側4Bから分離膜10により微粒子を除去した後、水素ガスをパージした貯留槽2に返送し、貯留槽2に超純水Wを適宜補充しながらこれを繰り返すことで循環させた。この際、返送するウェハ洗浄水W1の溶存ガス濃度を溶存ガスモニタ13で測定し、溶存ガス濃度が水素の溶解量に対して30%以上増加したら、ウェハ洗浄水W1を排出管12から排出し、20%未満となったら貯留槽2に返送する制御とした。1時間経過後の洗浄水W1の溶存ガス濃度を測定したところ、溶存水素ガス濃度を初期設定値に対し±10%以下に制御することができた。
【0051】
[比較例1]
実施例1において、貯留槽2にNガスをパージし、超純水Wを適宜補充することを繰り返すことでユースポイントに供給しながら循環させた。この際、溶存ガス濃度の計測結果による洗浄水W1の排出は行なわず、循環を継続した。1時間経過後の洗浄水W1の溶存ガス濃度を測定したところ、溶存ガス濃度が水素の溶解量に対して100%以上増加しており、水素以外のガス、例えば、酸素、窒素、二酸化炭素などが溶解し、水素濃度が低下していると推測でき、酸化還元電位が変動して実施例1におけるウェハ洗浄水W1として不適当であった。
【0052】
[実施例2]
図1に示すウェハ洗浄水供給装置1において、150Lの超純水Wを貯留槽2に供給したら送液ポンプ5を駆動して、この超純水Wをウェハ洗浄水供給管4の供給側4Aに送液した。この超純水Wに対し、供給管7から導電率が100μS/cmとなるようにアンモニア(導電性付与物質)を添加し、さらにガス供給管9からガス溶解膜モジュール8の気相室側にオゾン(O)を30ppmとなるよう添加してウェハ洗浄水W1を製造した。
【0053】
この洗浄水W1を枚葉式洗浄機を備えたユースポイント6に供給し、ユースポイント6で使用しなかった洗浄水W1をウェハ洗浄水供給管4の返送側4Bから分離膜10により微粒子を除去した後、オゾンガスをパージした貯留槽2に返送し、貯留槽2に超純水Wを適宜補充しながらこれを繰り返すことで循環させた。この際、返送するウェハ洗浄水W1の溶存ガス濃度を溶存ガスモニタ13で測定し、溶存ガス濃度がオゾンの溶解量に対して30%以上増加したら、ウェハ洗浄水W1を排出管12から排出し、20%未満となったら貯留槽2に返送する制御とした。1時間経過後の洗浄水W1の溶存ガス濃度を測定したところ、溶存オゾン濃度を初期設定値に対し±10%以下に制御することができた。
【0054】
[比較例2]
実施例2において、貯留槽2にNガスをパージし、超純水Wを適宜補充することを繰り返すことでユースポイントに供給しながら循環させた。この際、溶存ガス濃度の計測結果による洗浄水W1の排出は行なわず、循環を継続した。1時間経過後の洗浄水W1の溶存ガス濃度を測定したところ、溶存ガス濃度がオゾンの溶解量に対して100%以上増加しており、オゾン以外のガス、例えば、酸素、窒素、二酸化炭素などが溶解し、オゾン濃度が低下していると推測でき、実施例2におけるウェハ洗浄水W1として不適当であった。
【0055】
[実施例3]
図2に示すウェハ洗浄水供給装置1において、超純水に過酸化水素を100ppm添加した機能性水FWを150L貯留槽2に供給したら送液ポンプ5を駆動して、この機能性水FWをウェハ洗浄水供給管4の供給側4Aに送液した。この機能性水FWに対し、ガス供給管9からガス溶解膜モジュール8の気相室側に二酸化炭素(CO)を50ppmとなるよう添加してウェハ洗浄水W1を製造した。
【0056】
この洗浄水W1を枚葉式洗浄機を備えたユースポイント6に供給し、ユースポイント6で使用しなかった洗浄水W1をウェハ洗浄水供給管4の返送側4Bから分離膜10により微粒子を除去した後、二酸化炭素をパージした貯留槽2に返送し、貯留槽2に機能性水FWを適宜補充しながらこれを繰り返すことで循環させた。この際、返送するウェハ洗浄水W1の溶存ガス濃度を溶存ガスモニタ13で測定し、溶存ガス濃度が二酸化炭素の溶解量に対して30%以上増加したら、ウェハ洗浄水W1を排出管12から排出し、20%未満となったら貯留槽2に返送する制御とした。1時間経過後の洗浄水W1の溶存ガス濃度を測定したところ、溶存二酸化炭素濃度を初期設定値に対し±10%以下に制御することができた。
【0057】
[比較例3]
実施例3において、貯留槽2にNガスをパージし、超純水Wを適宜補充することを繰り返すことでユースポイントに供給しながら循環させた。この際、計測結果による洗浄水W1の排出は行なわず、循環を継続した。1時間経過後の洗浄水W1の溶存ガス濃度を測定したところ、溶存ガス濃度は二酸化炭素の溶解量に対して100%以上増加しており、二酸化炭素以外のガス、例えば、酸素、窒素などが溶解し、pHや酸化還元電位が変動していると推測でき、実施例3におけるウェハ洗浄水W1として不適当であった。
【符号の説明】
【0058】
1 ウェハ洗浄水供給装置
2 貯留槽
3 補給管
3A 超純水供給源
4 循環式のウェハ洗浄水供給管
4A 供給側
4B 返送側
5 送液ポンプ(送液手段)
6 ユースポイント
7 供給管
7A 薬液の供給源
7B 送液ポンプ
8 ガス溶解膜モジュール
9 ガス供給管
9A 機能性ガス供給源
10 分離膜
11 ガス供給管
11A 機能性ガス供給源
12 排出管(排水機構)
13 溶存ガスモニタ(溶存ガス濃度の測定手段)
W 超純水
W1 洗浄水
FW 機能水
図1
図2
図3
図4