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特開2022-187537橋梁支承におけるサイドブロックの固定構造
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  • 特開-橋梁支承におけるサイドブロックの固定構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187537
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】橋梁支承におけるサイドブロックの固定構造
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/04 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
E01D19/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095561
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】509199007
【氏名又は名称】株式会社川金コアテック
(71)【出願人】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100104363
【弁理士】
【氏名又は名称】端山 博孝
(72)【発明者】
【氏名】比志島 康久
(72)【発明者】
【氏名】姫野 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】岩本 いづみ
(72)【発明者】
【氏名】針原 拳太
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA33
2D059AA37
(57)【要約】
【課題】構造をコンパクト化してコストの低減を図ることができる、橋梁支承のサイドブロックの固定構造を提供する。
【解決手段】下沓54に形成された穴12に、サイドブロック下部の挿入部13が穴12の壁面との間に隙間が存するように挿入され、隙間に楔15が嵌め込まれている。穴12の壁面のうち、下沓54の中央側の第1壁面12aは下沓54の下面側を向く傾斜面に形成され、下沓54の外周側の第2壁面12bは下沓54の上面側を向く傾斜面に形成され、サイドブロック10の挿入部13は、第1壁面12aと対向する前面が傾斜面に形成され、第2壁面12bと対向する後面との間に楔15が嵌め込まれる隙間が形成される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造の上面に設置される下沓上に固定されて、上部構造の変位を拘束するサイドブロックの固定構造であって、
前記下沓に形成された穴に、前記サイドブロック下部の挿入部が前記穴の壁面との間に隙間が存するように挿入され、
前記隙間に楔が嵌め込まれていることを特徴とする橋梁支承におけるサイドブロックの固定構造。
【請求項2】
前記サイドブロックは、前記下沓上に設けられた支承本体を橋軸直角方向に挟んだ両側に設けられていることを特徴とする請求項1記載の橋梁支承におけるサイドブロックの固定構造。
【請求項3】
前記穴は、橋軸方向に平行な1対の壁面と、橋軸直角方向に平行な1対の壁面とを有する平面視四角形のものであり、前記サイドブロックの前記挿入部は断面四角形のものであることを特徴とする請求項1又は2記載の橋梁支承におけるサイドブロックの固定構造。
【請求項4】
前記橋軸方向に平行な1対の壁面のうち、前記下沓の中央側の第1壁面は前記下沓の下面側を向く傾斜面に形成され、前記下沓の外周側の第2壁面は前記下沓の上面側を向く傾斜面に形成され、
前記サイドブロックの前記挿入部は、前記第1壁面と対向する前面が傾斜面に形成され、前記第2壁面と対向する後面との間に前記楔が嵌め込まれる隙間が形成されることを特徴とする請求項3記載の橋梁支承におけるサイドブロックの固定構造。
【請求項5】
前記楔は、前記穴から突出する上端部にフランジを有し、このフランジに取り付けられたボルトにより前記下沓に固定されていることを特徴とする請求項4記載の橋梁支承におけるサイドブロックの固定構造。
【請求項6】
前記サイドブロックには、橋軸直角方向に平行な両側面であって前記挿入部とその上方部分との境界に段付き部が設けられていることを特徴とする請求項4又は5記載の橋梁支承におけるサイドブロックの固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、橋梁支承におけるサイドブロックの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の支承部を構成する部材として、下部構造の上面に設置された下沓上に固定されるサイドブロックが知られている(例えば、特許文献1の図3及び図4参照)。このサイドブロックは、一般に、上部構造の荷重を支持する積層ゴム等の支承本体を挟んだ橋軸直角方向両側に配置され、上部構造に作用する地震時の水平力を下部構造に伝達することにより上部構造の変位を拘束し、また上部構造に作用する上揚力を抑制する機能を持っている。
【0003】
従来のサイドブロックは、角柱状の本体部の両側に張出し部を設けた逆T字形の形状に作られており、張出し部に取り付けられるボルトにより下沓に固定されている。このため、サイドブロック全体が大きなものとなり、加工量も多くなることから、コスト高になりがちである。また、設置される支承が固定支承である場合、サイドブロックの取付け取外しの時にボルトの頭部が上沓に当たらないように配置を考慮する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-38394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、構造をコンパクト化してコストの低減を図ることができる、橋梁支承のサイドブロックの固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、下部構造の上面に設置される下沓上に固定されて、上部構造の変位を拘束するサイドブロックの固定構造であって、
前記下沓に形成された穴に、前記サイドブロック下部の挿入部が前記穴の壁面との間に隙間が存するように挿入され、
前記隙間に楔が嵌め込まれていることを特徴とする橋梁支承におけるサイドブロックの固定構造にある。
【0007】
より具体的には、前記サイドブロックは、前記下沓上に設けられた支承本体を橋軸直角方向に挟んだ両側に設けられている。
また、前記穴は、橋軸方向に平行な1対の壁面と、橋軸直角方向に平行な1対の壁面とを有する平面視四角形のものであり、前記サイドブロックの前記挿入部は断面四角形のものである。
【0008】
前記橋軸方向に平行な1対の壁面のうち、前記下沓の中央側の第1壁面は前記下沓の下面側を向く傾斜面に形成され、前記下沓の外周側の第2壁面は前記下沓の上面側を向く傾斜面に形成され、
前記サイドブロックの前記挿入部は、前記第1壁面と対向する前面が傾斜面に形成され、前記第2壁面と対向する後面との間に前記楔が嵌め込まれる隙間が形成される構成を採用することができる。
【0009】
前記楔は、前記穴から突出する上端部にフランジを有し、このフランジに取り付けられたボルトにより前記下沓に固定されている構成を採用することができる。また、前記サイドブロックには、橋軸直角方向に平行な両側面であって前記挿入部とその上方部分との境界に段付き部が設けられている構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、サイドブロックの構造をコンパクト化することができ、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】サイドブロックが設置される橋梁支承の一例を示し、橋軸方向に見た図である。
図2】同支承の平面図である。
図3】サイドブロックの下部挿入部が挿入される下沓の穴を示す平面図である。
図4】同穴を示す下沓の断面図である。
図5】サイドブロックを示し、(a)は橋軸方向に見た図、(b)は橋軸直角方向に見た図である。
図6】楔を示し、(a)は橋軸方向に見た断面図、(b)は橋軸直角方向に見た図である。
図7】サイドブロックを下沓に固定した状態を示す橋軸方向に見た断面図である。
図8】同サイドブロックの固定状態を示す橋軸直角方向に見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1及び図2は、サイドブロックが設置される橋梁支承の一例を示し、図1は支承を橋軸方向に見た図、図2は支承の平面図である。図においてXが橋軸方向、Yが橋軸直角方向を示している。
【0013】
支承50は、下部構造51の上面に複数のアンカーボルト53を介して固定される下沓54と、上部構造52の下面に固定される上沓55と、下沓54の上に配置される支承本体56とを備える。支承本体56は、上部構造52の荷重を支持する支承の要部となる部材である。
【0014】
図に例示されている支承50は高面圧支承であり、支承本体56として高い弾性率を有するウレタンゴムを用いた弾性荷重支持板が示されている。支承が分散支承や免震支承である場合には、支承本体として積層ゴム(ゴム沓)が用いられる。
【0015】
また、図に例示されている支承50は橋梁の可動支承部に設置される可動支承であり、上沓55と支承本体56との間に中間プレート57が設けられている。支承本体56は、この中間プレート57と下沓54との間に固定されている。
【0016】
中間プレート57の上面及び上沓55の下面には、両者間で橋軸方向のすべりが生じるように、図示しないすべり材が設けられている。中間プレート57の橋軸直角方向の両端部は上沓55の下面から突出している。この中間プレート57の両端部には切欠き58が設けられている。
【0017】
サイドブロック10、10は、支承本体56を橋軸直角方向Yに挟んだ両側において下沓54上に固定されている。サイドブロック10は、地震時に上沓55に係合してその変位を受け止め、上部構造52に作用する水平力を下部構造51に伝達する。また、サイドブロック10は上端部に支承50の中央を向く張出し部11が設けられ、この張出し部11が上沓55の両端部上面に係合することにより、地震時に上部構造52に作用する上揚力を抑制する。
【0018】
さらに、サイドブロック10は、その高さ方向中間部が中間プレート57の切欠き58に係合することによりこれを拘束し、支承本体である弾性荷重支持板56にせん断変形を生じさせることなく、上沓55を中間プレート57に対してすべらせる。
【0019】
この発明によれば、サイドブロック10は、その下部挿入部が下沓54に形成された穴に挿入されて固定される。図3及び図4は、サイドブロック10の下部挿入部が挿入される穴12を示し、図3は平面図、図4は断面図である。穴12は橋軸方向Xに平行な1対の壁面12a、12bと、橋軸直角方向Yに平行な1対の壁面12c、12cとを有する平面視四角形のものである。
【0020】
橋軸方向Xに平行な1対の壁面12a、12bのうち、下沓54の中央側の第1壁面12aは下沓54の下面側を向く傾斜面に形成されている。また、下沓54の外周側の第2壁面12bは、下沓54の上面側を向く傾斜面に形成されている。
【0021】
ここに、第1、第2壁面12a、12bの傾斜角度、すなわち下沓54の上下面と直角な面に対して第1、第2壁面12a、12bのなす角度をそれぞれα°、β°とすると、α°≧β°の関係にあるように設定される。なお、橋軸直角方向Yに平行な1対の壁面12c、12cは、いずれも下沓54の上下面に対して直角な面である。
【0022】
図5はサイドブロックを示し、(a)は橋軸方向に見た図、(b)は橋軸直角方向に見た図である。サイドブロック10は、その下部が下沓54の穴12に挿入される挿入部13を構成し、この挿入部13を含む全体が断面四角形に形成されている。
【0023】
下沓54の中央側を向く挿入部13の前面13aは、挿入部13が穴12に挿入された際に、穴12の第1壁面12aと対向することとなる面である。この前面13aは上向きの傾斜面に形成されていて、その傾斜角度は第1壁面12aの傾斜角度と等しいα°に設定されている。挿入部13の後面13bは、挿入部13が穴12に挿入された際に、穴12の第2壁面12bと対向し、第2壁面12bとの間に楔15(図6参照)を嵌め込むための隙間を形成する面である。
【0024】
サイドブロック10には、橋軸直角方向に平行な両側面であって挿入部13とその上方部分との境界に段付き部14、14が形成されている。この段付き部14、14は、挿入部13が穴12に挿入されると、下沓54の上面に係合する面である。
【0025】
図6は楔を示し、(a)は橋軸方向に見た断面図、(b)は橋軸直角方向に見た図である。楔15は、穴12に挿入されたサイドブロック10の挿入部13の後面13bと対向する前面15aと、穴12の第2壁面12bと対向する後面15bとを有している。後面15bは下向きの傾斜面に形成されていて、その傾斜角度は穴12の第2壁面12bの傾斜角度と等しいβ°に設定されている。
【0026】
楔15の上端部には後面15b側に張り出すフランジ16が設けられている。このフランジ16には下沓54に固定されるボルト17が取り付けられる。
【0027】
図7及び図8は、サイドブロック10を下沓54に取付け、固定した状態を示し、図7は橋軸方向に見た断面図、図8は橋軸直角方向に見た図である。サイドブロック10の挿入部13は、穴12の第1壁面12aと挿入部13の前面13aとが対向するようにして、穴12に挿入される。そして、挿入部13の後面13bと穴12の第2壁面12bとの間に形成される隙間に楔15が嵌め込まれ(打ち込まれ)、フランジ16に取り付けた抜け止めのためのボルト17が下沓54に固定される。
【0028】
サイドブロック10は上記のようにして下沓54に固定されるが、上記実施形態によれば、次のような作用効果が得られる。
(1)サイドブロック10は、その下部挿入部13が下沓54に形成した穴12に挿入されたうえ、楔15により固定されるので、従来のようなボルト締結のための張出し部が不要となり、構造をコンパクト化してコストの低減を図ることができる。
【0029】
(2)楔効果によりサイドブロック10の挿入部13の傾斜した前面13aが、下沓54の穴12の傾斜した第1壁面12aに強固に押し付けられるので、サイドブロック10が穴12から抜けようとする上向きの力に抵抗させることができる。
(3)サイドブロック10の橋軸直角方向に平行な両側面には下沓54の上面に係合する段付き部14、14が設けられているので、サイドブロック10に作用する下向きの力に抵抗させることができる。
【0030】
下沓やサイドブロックに形成される傾斜面は、マシニングセンターなどを用いエンドミルで加工するとよい。この場合、下沓の傾斜面の角部はR加工、サイドブロックの傾斜面の角部はC面取りとなる。
【0031】
L1レベルの地震力でサイドブロックを破断させたい場合は、サイドブロックの段付き部に支承の外周側から薄い切り込み(ノッチ)を入れるとよい。
【0032】
上記実施形態は例示にすぎず、この発明は種々の態様を採ることができる。例えば、上記実施形態では、この発明が適用される支承として高面圧支承が示されているが、サイドブロックが下沓に固定される支承であれば、他の形式の支承に適用できる。
【符号の説明】
【0033】
10:サイドブロック
12:穴
12a:第1壁面
12b:第2壁面
13:挿入部
13a:前面
13b:後面
14:段付き部
15:楔
16:フランジ
17:ボルト
50:支承
51:下部構造
52:上部構造
54:下沓
55:上沓
56:支承本体(弾性荷重支持板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8