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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187717
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】画像形成装置、及びその作動方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20221213BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20221213BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G02B26/10 A
G02B26/10 104Z
G02B26/10 C
G02B26/08 E
H04N5/74 A
H04N5/74 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095860
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸也
(72)【発明者】
【氏名】園田 慎一郎
【テーマコード(参考)】
2H045
2H141
5C058
【Fターム(参考)】
2H045AB01
2H045AB08
2H045AB13
2H045AB24
2H045AB81
2H045BA12
2H045BA24
2H045CA98
2H141MA12
2H141MB24
2H141MC09
2H141MD12
2H141MD13
2H141MD16
2H141MD20
2H141MD24
2H141ME01
2H141ME13
2H141ME21
2H141ME24
2H141ME25
2H141ME29
2H141MF05
2H141MF12
2H141MG04
2H141MZ06
2H141MZ15
2H141MZ16
2H141MZ30
5C058BA35
5C058EA05
5C058EA27
(57)【要約】
【課題】画像の乱れを抑制することを可能とする画像形成装置、及びその作動方法を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、光を出射する発光装置と、発光装置から出射された光を反射する可動ミラーと、可動ミラーを第1軸の周りに揺動させる第1アクチュエータと、可動ミラーの第1軸周りの振れ角が第1基準角となる時点を推測して第1基準信号を出力する第1基準信号出力部と、第1基準信号出力部から出力された第1基準信号に基づいて発光装置に光を出射させる発光制御部と、可動ミラーにより反射された光を撮像する撮像装置と、撮像装置により取得された撮像情報に基づいて、第1基準信号出力部が出力する第1基準信号のタイミングを補正する補正部と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する発光装置と、
前記発光装置から出射された前記光を反射する可動ミラーと、
前記可動ミラーを第1軸の周りに揺動させる第1アクチュエータと、
前記可動ミラーの前記第1軸周りの振れ角が第1基準角となる時点を推測して第1基準信号を出力する第1基準信号出力部と、
前記第1基準信号出力部から出力された前記第1基準信号に基づいて前記発光装置に前記光を出射させる発光制御部と、
前記可動ミラーにより反射された前記光を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置により取得された撮像情報に基づいて、前記第1基準信号出力部が出力する前記第1基準信号のタイミングを補正する補正部と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記可動ミラーを第2軸の周りに揺動させる第2アクチュエータと、
前記可動ミラーの前記第2軸周りの振れ角が第2基準角となる時点を推測して第2基準信号を出力する第2基準信号出力部と、を備え、
前記補正部は、前記撮像装置により撮像された撮像情報に基づいて、前記第1基準信号出力部が出力する前記第1基準信号のタイミングと、前記第2基準信号出力部が出力する前記第2基準信号のタイミングとを補正する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1基準角は、前記可動ミラーの前記第1軸周りの振れ角がゼロとなる角度であり、前記第2基準角は、前記可動ミラーの前記第2軸周りの振れ角がゼロとなる角度である、
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1基準角は、前記可動ミラーの前記第1軸周りの振れ角が最大又は最小となる角度であり、前記第2基準角は、前記可動ミラーの前記第2軸周りの振れ角が最大又は最小となる角度である、
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1基準信号出力部は、前記第1アクチュエータに与えられる第1駆動信号に基づいて、前記可動ミラーの前記第1軸周りの振れ角が第1基準角となる時点を推測し、
前記第2基準信号出力部は、前記第2アクチュエータに与えられる第2駆動信号に基づいて、前記可動ミラーの前記第2軸周りの振れ角が第2基準角となる時点を推測する、
請求項2から請求項4のうちいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記可動ミラーにより反射された前記光の光路上に、前記光の一部を前記撮像装置へ導く光学素子を備える、
請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
光を出射する発光装置と、
前記発光装置から出射された前記光を反射する可動ミラーと、
前記可動ミラーを第1軸の周りに揺動させる第1アクチュエータと、
前記可動ミラーの前記第1軸周りの振れ角が第1基準角となる時点を推測して第1基準信号を出力する第1基準信号出力部と、
前記第1基準信号出力部から出力された前記第1基準信号に基づいて前記発光装置に前記光を出射させる発光制御部と、
前記可動ミラーにより反射された前記光を撮像する撮像装置と、
を備える光走査装置の作動方法であって、
前記撮像装置により取得された撮像情報に基づいて、前記第1基準信号出力部が出力する前記第1基準信号のタイミングを補正する、
を備える画像形成装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、画像形成装置、及びその作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)により構成された光走査装置に光を照射することにより、スクリーン等に画像を描画する画像形成装置が知られている。光走査装置は、直交する2つの軸周りに揺動する可動ミラーを備える。例えば、光走査装置は、入力画像に応じて強度変調された光をリサージュ走査する。可動ミラーは、周波数が異なる2つの正弦波により共振駆動される。リサージュ走査では、可動ミラーは、2つの軸周りに共振駆動されるため、振れ角が大きく、光の走査範囲を大きくすることができるという利点がある。
【0003】
この光走査装置により画像を描画するには、可動ミラーが揺動している際の振れ角を正確に推測し、推測した振れ角に応じて可動ミラーに所定の強度の光を照射する必要がある。可動ミラーの振れ角の推測精度が低い場合には、光走査装置により描画される画像が乱れてしまう。例えば、可動ミラーの揺動の往路と復路とで照射タイミングがずれることにより、光走査装置により描画される画像が乱れてしまう。
【0004】
特許文献1には、光走査装置内に歪センサを設け、歪センサからのセンサ信号に基づいて可動ミラーの振れ角を推測する構成が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、測定画像を投影して撮像することにより投影距離を測定し、測定した投影距離に基づいてキャリブレーション画像を投影してキャリブレーションを行う画像の位置を補正する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第8559086号明細書
【特許文献2】特開2020-39082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
可動ミラーの振れ角は、特許文献1に記載の歪センサの他に、可動ミラーを駆動するための駆動信号、又は圧電素子により構成された角度センサにより推測することが可能である。
【0008】
しかしながら、駆動信号又はセンサ信号には、ノイズ等により時間的な遅れが生じるため、可動ミラーの振れ角を正確に推測することは難しい。
【0009】
また、特許文献2には、キャリブレーション画像を投影することにより、表示面に表示される画像上の位置と撮像画像上の位置とを対応付けるキャリブレーションを行うことが記載されているが、これは投影ユニットによる投影タイミングを補正するものではない。
【0010】
本開示の技術は、画像の乱れを抑制することを可能とする画像形成装置、及びその作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本開示の画像形成装置は、光を出射する発光装置と、発光装置から出射された光を反射する可動ミラーと、可動ミラーを第1軸の周りに揺動させる第1アクチュエータと、可動ミラーの第1軸周りの振れ角が第1基準角となる時点を推測して第1基準信号を出力する第1基準信号出力部と、第1基準信号出力部から出力された第1基準信号に基づいて発光装置に光を出射させる発光制御部と、可動ミラーにより反射された光を撮像する撮像装置と、撮像装置により取得された撮像情報に基づいて、第1基準信号出力部が出力する第1基準信号のタイミングを補正する補正部と、を備える。
【0012】
可動ミラーを第2軸の周りに揺動させる第2アクチュエータと、可動ミラーの第2軸周りの振れ角が第2基準角となる時点を推測して第2基準信号を出力する第2基準信号出力部と、を備え、補正部は、撮像装置により撮像された撮像情報に基づいて、第1基準信号出力部が出力する第1基準信号のタイミングと、第2基準信号出力部が出力する第2基準信号のタイミングとを補正することが好ましい。
【0013】
第1基準角は、可動ミラーの第1軸周りの振れ角がゼロとなる角度であり、第2基準角は、可動ミラーの第2軸周りの振れ角がゼロとなる角度であることが好ましい。
【0014】
第1基準角は、可動ミラーの第1軸周りの振れ角が最大又は最小となる角度であり、第2基準角は、可動ミラーの第2軸周りの振れ角が最大又は最小となる角度であることが好ましい。
【0015】
第1基準信号出力部は、第1アクチュエータに与えられる第1駆動信号に基づいて、可動ミラーの第1軸周りの振れ角が第1基準角となる時点を推測し、第2基準信号出力部は、第2アクチュエータに与えられる第2駆動信号に基づいて、可動ミラーの第2軸周りの振れ角が第2基準角となる時点を推測することが好ましい。
【0016】
可動ミラーにより反射された光の光路上に、光の一部を撮像装置へ導く光学素子を備えることが好ましい。
【0017】
本開示の画像形成装置の作動方法は、光を出射する発光装置と、発光装置から出射された光を反射する可動ミラーと、可動ミラーを第1軸の周りに揺動させる第1アクチュエータと、可動ミラーの第1軸周りの振れ角が第1基準角となる時点を推測して第1基準信号を出力する第1基準信号出力部と、第1基準信号出力部から出力された第1基準信号に基づいて発光装置に光を出射させる発光制御部と、可動ミラーにより反射された光を撮像する撮像装置と、を備える光走査装置の作動方法であって、撮像装置により取得された撮像情報に基づいて、第1基準信号出力部が出力する第1基準信号のタイミングを補正する、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本開示の技術によれば、画像の乱れを抑制することを可能とする画像形成装置、及びその作動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】画像形成装置の構成の一例を示す模式図である。
図2】MEMSミラーの構成の一例を示す概略斜視図である。
図3】ミラー部が揺動する際の振れ角について説明する図であり、(A)は第1振れ角を示し、(B)は第2振れ角を示す。
図4】制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図5】第1駆動信号、第1ゼロクロス信号、及び第1基準信号の一例を示す図である。
図6】第2駆動信号、第2ゼロクロス信号、及び第2基準信号の一例を示す図である。
図7】LUTの一例を示す図である。
図8】キャリブレーションモードにおいて投影面に描画されるパターンの一例を示す図である。
図9】ミラー部の揺動と第1基準信号及び第2基準信号のタイミングとの間にずれが生じた場合に、投影面に描画されるパターンの一例を示す図である。
図10】補正部の機能構成の一例を示す図である。
図11】信号補正部によるタイミング補正の一例を示す図であり、(A)は第1基準信号のタイミングを補正する例を示し、(B)は第2基準信号のタイミングを補正する例を示す。
図12】第1基準線及び第2基準線の位置設定に係る第1変形例を示す図である。
図13】第1基準線及び第2基準線の位置設定に係る第2変形例を示す図である。
図14】リサージュ走査の1走査周期内にレーザ光を1回のみ照射する例を示す図である。
図15】画像形成装置の第1変形例を示す図である。
図16】画像形成装置の第2変形例を示す図である。
図17】第1基準角を第1振れ角が最大又は最小となる角度とし、第2基準角を第2振れ角が最大又は最小となる角度とする例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本開示の技術に係る実施形態を詳細に説明する。一例として、以下の実施形態では、本開示の技術を、レーザ光をリサージュ方式により走査することにより投影面に画像を形成する画像形成装置に適用した形態について説明する。
【0021】
図1には、本実施形態の画像形成装置10の構成の一例を示す。図1に示すように本実施形態の画像形成装置10は、制御装置20、MEMSドライバ22、発光装置24、合波光学系26、コリメータ28、MEMSミラー30、及び撮像装置32を備える。なお、MEMSミラー30は、本開示の技術に係る「光走査装置」の一例である。
【0022】
発光装置24は、レーザドライバ25及びレーザ光源27を有する。本実施形態のレーザドライバ25は、制御装置20から供給される強度変調信号に基づいてレーザ光源27を駆動し、画像を形成するためのレーザ光をレーザ光源27から出力させる。レーザ光源27は、例えば、R(Red)、G(Green)、及びB(B:Blue)の3色のレーザ光を出力する。なお、レーザ光は、本開示の技術に係る「光」の一例である。
【0023】
レーザ光源27から出力されたレーザ光は、合波光学系26により合波された後、コリメータ28を介してMEMSミラー30に照射される。MEMSミラー30に集光されたレーザ光は、MEMSミラー30により投影面34に向けて反射される。投影面34は、例えば、画像を投影するためのスクリーン、又は人の目の網膜などである。すなわち、本実施形態の画像形成装置10は、プロジェクタ、又はAR(Augmented Reality)グラスなどに用いられる。
【0024】
なお、本実施形態において投影面34は、スクリーン等の実際の物体の表面に限定されず、空間上の仮想面も含むものとする。
【0025】
MEMSドライバ22は、制御装置20からの制御に基づいて、MEMSミラー30を駆動する。MEMSミラー30では、レーザ光Lを反射するミラー部40(図2参照)が、互いに直交する2つの軸のそれぞれを中心軸として独立して揺動する。本実施形態では、駆動信号に基づいてミラー部40が揺動することにより、投影面34においてレーザ光Lがリサージュ曲線を描く状態に走査される。リサージュ曲線とは、第1軸周りの揺動周波数、第2軸周りの揺動周波数、及びそれらの位相差によって決まる曲線である。ミラー部40は、本開示の技術に係る「可動ミラー」の一例である。
【0026】
本実施形態の制御装置20は、FPGA(Field Programmable Gate Array)20A、及びメモリ20Bを含む。メモリ20Bは、例えば、揮発性メモリであり、投影面34に投影する画像を表す画像信号等の各種情報を記憶する。メモリ20Bには、例えば、画像形成装置10の外部から入力された画像信号が記憶される。
【0027】
撮像装置32は、MEMSミラー30によりレーザ光Lが照射された投影面34を撮像することにより、撮像画像IPを生成し、生成した撮像画像IPを制御装置20へ出力する。撮像装置32は、CCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型イメージセンサ等のイメージセンサにより構成されている。また、撮像装置32は、PSD(Position Sensitive Detector)により構成されていてもよい。撮像画像IPは、後述する第1基準信号及び第2基準信号のタイミングの補正に用いられる。撮像画像IPは、本開示の技術に係る「撮像情報」の一例である。
【0028】
図2は、MEMSミラー30の構成の一例を示す。MEMSミラー30は、ミラー部40、第1支持部41、第1可動枠42、第2支持部43、第2可動枠44、接続部45、及び固定枠46を有する。
【0029】
ミラー部40は、入射光を反射する反射面40Aを有する。反射面40Aは、例えば、金(Au)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、又は銀の合金等の金属薄膜で形成されている。反射面40Aの形状は、例えば、円形状である。
【0030】
第1支持部41は、ミラー部40の外側に、第2軸aを挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。第1支持部41は、第1軸a上でミラー部40と接続されており、ミラー部40を第1軸a周りに揺動可能に支持している。
【0031】
第1可動枠42は、ミラー部40を取り囲む矩形状の枠体であって、第1軸a上で第1支持部41を介してミラー部40と接続されている。第1可動枠42の上には、第1軸aを挟んで対向する位置にそれぞれ圧電素子50が形成されている。このように、第1可動枠42上に2つの圧電素子50が形成されることにより、一対の第1アクチュエータ51が構成されている。
【0032】
一対の第1アクチュエータ51は、第1軸aを挟んで対向する位置に配置されている。第1アクチュエータ51は、ミラー部40に、第1軸a周りの回転トルクを作用させることにより、ミラー部40を第1軸a周りに揺動させる。
【0033】
第2支持部43は、第1可動枠42の外側に、第1軸aを挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。第2支持部43は、第2軸a上で第1可動枠42と接続されており、第1可動枠42及びミラー部40を、第2軸a周りに揺動可能に支持している。本実施形態では、第2支持部43は、第2軸aに沿って延伸したトーションバーである。
【0034】
第2可動枠44は、第1可動枠42を取り囲む矩形状の枠体であって、第2軸a上で第2支持部43を介して第1可動枠42と接続されている。第2可動枠44の上には、第2軸aを挟んで対向する位置にそれぞれ圧電素子50が形成されている。このように、第2可動枠44上に2つの圧電素子50が形成されることにより、一対の第2アクチュエータ52が構成されている。
【0035】
一対の第2アクチュエータ52は、第2軸aを挟んで対向する位置に配置されている。第2アクチュエータ52は、ミラー部40及び第1可動枠42に、第2軸aの周りの回転トルクを作用させることにより、第2軸aの周りにミラー部40を揺動させる。
【0036】
接続部45は、第2可動枠44の外側に、第1軸aを挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。接続部45は、第2軸a上で第2可動枠44と接続されている。
【0037】
固定枠46は、第2可動枠44を取り囲む矩形状の枠体であって、第2軸a上で接続部45を介して第2可動枠44と接続されている。
【0038】
本実施形態では、第1軸aと第2軸aとは互いに直交している。以下の説明では、第1軸aに平行な方向をX方向とし、第2軸aに平行な方向をY方向とし、第1軸a及び第2軸aに直交する方向をZ方向とする。
【0039】
図3は、ミラー部40が揺動する際の振れ角について説明する。図3(A)は、ミラー部40の第1軸a周りの振れ角(以下、第1振れ角という。)θ1を示す。図3(B)は、ミラー部40の第2軸a周りの振れ角(以下、第2振れ角という。)θ2を示す。
【0040】
第1振れ角θ1は、反射面40Aの法線が、YZ平面においてZ方向に対して傾斜する角度である。第2振れ角θ2は、反射面40Aの法線が、XZ平面においてZ方向に対して傾斜する角度である。
【0041】
図4は、制御装置20の機能構成の一例を示す。図4に示すように、制御装置20には、画像入力部60、情報生成部61、情報記憶部62、第1基準信号出力部63A、第2基準信号出力部63B、発光制御部64、補正部65、テーブル保持部66、及び湿温度センサ67が構成されている。画像入力部60、情報生成部61、情報記憶部62、第1基準信号出力部63A、第2基準信号出力部63B、発光制御部64、補正部65、及びテーブル保持部66は、FPGA20A及びメモリ20Bが協業して動作することにより実現される機能部である。
【0042】
画像入力部60には、形成する画像を表す画像データDTが外部から入力される。以下、画像入力部60に入力された画像データDTに応じた画像を、入力画像という場合がある。一例として、本実施形態では、RGB信号で表されるカラーの画像データDTが、画像入力部60に入力される。画像入力部60に入力された画像データDTは、情報生成部61へ出力される。なお、画像入力部60に入力される画像データDTは、本実施形態に限定されず、形成する画像に応じたデータであればよい。例えば、レーザ光Lを出力するか否かを表す2値化されたデータであってもよい。また例えば、出力量の多値を表すデータであってもよい。
【0043】
情報生成部61は、MEMSミラー30によるレーザ光Lの走査位置と、入力画像の信号強度との対応関係を表す強度情報SIを生成する。入力画像がカラー画像の場合、信号強度は、RGB信号の各々の強度を表す。情報記憶部62は、情報生成部61により生成された強度情報SIを記憶する。
【0044】
MEMSドライバ22は、一例として図5に示す第1駆動信号V1A及びV1Bを、MEMSミラー30の一対の第1アクチュエータ51へ出力するとともに、第1ゼロクロス信号ZC1を生成して第1基準信号出力部63Aへ出力する。第1駆動信号V1Aと第1駆動信号V1Bとは、位相が180°異なる正弦波である。
【0045】
第1ゼロクロス信号ZC1は、第1駆動信号V1A及びV1Bがゼロとなる点を表すパルス状の信号である。なお、MEMSドライバ22から第1基準信号出力部63Aへ出力される信号は、ゼロクロス信号に限られず、第1駆動信号V1A及びV1Bと同一の周期を有する信号であればよい。
【0046】
MEMSドライバ22は、一例として図6に示す第2駆動信号V2A及びV2Bを、MEMSミラー30の一対の第2アクチュエータ52へ出力するとともに、第2ゼロクロス信号ZC2を生成して第2基準信号出力部63Bへ出力する。第2駆動信号V2Aと第2駆動信号V2Bとは、位相が180°異なる正弦波である。
【0047】
第2ゼロクロス信号ZC2は、第2駆動信号V2A及びV2Bがゼロとなる点を表すパルス状の信号である。なお、MEMSドライバ22から第2基準信号出力部63Bへ出力される信号は、ゼロクロス信号に限られず、第2駆動信号V2A及びV2Bと同一の周期を有する信号であればよい。
【0048】
第1駆動信号V1A及びV1Bの周波数(以下、第1駆動周波数という。)と、第2駆動信号V2A及びV2Bの周波数(以下、第2駆動周波数という。)とは、周波数比が異なる。第1駆動周波数と第2駆動周波数との周波数比は、MEMSミラー30が行う光走査のリサージュ曲線の形状に基づいて決定されている。
【0049】
第1基準信号出力部63Aは、ミラー部40の第1振れ角θ1が第1基準角となる時点を推測して第1基準信号PS1を発光制御部64へ出力する。本実施形態では、第1基準角を0°とする。第1基準信号出力部63Aは、第1駆動信号V1A及びV1Bに基づいて第1振れ角θ1が第1基準角となる時点を推測して第1基準信号PS1を生成する。
【0050】
具体的には、第1基準信号出力部63Aは、図5に示すように、MEMSドライバ22から入力される第1ゼロクロス信号ZC1を、遅延時間D1だけ遅延させた信号を、第1基準信号PS1として出力する。ミラー部40が第1軸a周りに共振する場合には、遅延時間D1は、理想的には、第1ゼロクロス信号ZC1の周期の1/4倍に相当する時間であるが、環境条件(温度、湿度等)によりずれが生じる。このため、本実施形態では、第1基準信号出力部63Aは、湿温度センサ67により検出された温度及び湿度と、テーブル保持部66に保持されたルックアップテーブル(以下、LUTという。)66Aとに基づいて遅延時間D1を取得し、取得した遅延時間D1に基づいて第1基準信号PS1を生成する。
【0051】
第2基準信号出力部63Bは、ミラー部40の第2振れ角θ2が第2基準角となる時点を推測して第2基準信号PS2を発光制御部64へ出力する。本実施形態では、第2基準角を0°とする。第2基準信号出力部63Bは、第2駆動信号V2A及びV2Bに基づいて第2振れ角θ2が第2基準角となる時点を推測して第2基準信号PS2を生成する。
【0052】
具体的には、第2基準信号出力部63Bは、図6に示すように、MEMSドライバ22から入力される第2ゼロクロス信号ZC2を、遅延時間D2だけ遅延させた信号を、第2基準信号PS2として出力する。ミラー部40が第2軸a周りに共振する場合には、遅延時間D2は、理想的には、第2ゼロクロス信号ZC2の周期の1/4倍に相当する時間であるが、環境条件(温度、湿度等)によりずれが生じる。このため、本実施形態では、第2基準信号出力部63Bは、湿温度センサ67により検出された温度及び湿度と、テーブル保持部66に保持されたLUT66Aとに基づいて遅延時間D2を取得し、取得した遅延時間D2に基づいて第2基準信号PS2を生成する。
【0053】
LUT66Aには、一例として図7に示すように、遅延時間D1、温度、及び湿度の関係と、遅延時間D2、温度、及び湿度の関係とが予め記録されている。これらの関係は、例えば、過去の履歴に基づいて決定されている。
【0054】
発光制御部64は、第1基準信号PS1及び第2基準信号PS2に基づいて発光装置24にレーザ光Lを出射させる。画像データDTに基づく画像を投影面34に描画する描画モードでは、発光制御部64は、情報記憶部62から強度情報SIを読み出し、一定の時間ごと(例えば、クロック周期ごと)に、第1基準信号PS1及び第2基準信号PS2を基準として決定される強度のレーザ光Lを、発光装置24に出射させる。
【0055】
また、本実施形態では、第1基準信号出力部63A及び第2基準信号出力部63Bがそれぞれ出力する第1基準信号PS1及び第2基準信号PS2のタイミングを補正するためのキャリブレーションモードが行われる。発光制御部64は、キャリブレーションモードでは、第1基準信号出力部63Aから第1基準信号PS1が出力されたタイミング、及び第2基準信号出力部63Bから第2基準信号PS2が出力されたタイミングに応じて、発光装置24にレーザ光Lを出射させる。すなわち、発光制御部64は、キャリブレーションモードでは、第1振れ角θ1が第1基準角(本実施形態では0°)となると推定される時点と、第2振れ角θ2が第2基準角(本実施形態では0°)となると推定される時点とにおいて発光装置24にレーザ光Lを出射させる。
【0056】
撮像装置32は、キャリブレーションモードにおいて、発光装置24から出射されるレーザ光LがMEMSミラー30で反射されることにより投影面34に描画されるパターンを撮像する。撮像装置32は、投影面34を撮像することにより生成した撮像画像IPを補正部65へ出力する。
【0057】
補正部65は、撮像画像IPに写ったパターンの規定形状からのずれ量に基づいて、第1基準信号出力部63A及び第2基準信号出力部63Bがそれぞれ出力する第1基準信号PS1及び第2基準信号PS2のタイミングを補正する。
【0058】
図8は、キャリブレーションモードにおいて、投影面34に描画されるパターンの一例を示す。本例では、説明の簡略化のため、第1駆動周波数と第2駆動周波数との周波数比を3:2としている。本例では、MEMSミラー30が行う光走査により、投影面34に、リサージュ曲線70が描かれる。
【0059】
図8は、ミラー部40の揺動と、第1基準信号PS1及び第2基準信号PS2のタイミングとの間にずれが生じていない場合を示している。このように、ずれが生じていない場合には、発光装置24は、θ1=0となる時点、及びθ2=0となる時点でレーザ光Lを出射するので、投影面34における第1基準線L1及び第2基準線L2上にレーザ光Lが照射される。本実施形態では、第1基準線L1は、リサージュ曲線70の中心を通りX方向に平行な直線であり、第2基準線L2は、リサージュ曲線70の中心を通りY方向に平行な直線である。符号Pは、投影面34においてレーザ光Lが照射される点(すなわち輝点)を示している。
【0060】
リサージュ曲線70をより綿密とするように1駆動周波数と第2駆動周波数との周波数比を設定した場合には、輝点Pは、第1基準線L1及び第2基準線L2に沿った直線状のパターンを描く。
【0061】
図9は、ミラー部40の揺動と、第1基準信号PS1及び第2基準信号PS2のタイミングとの間にずれが生じている場合を示している。このように、ずれが生じている場合には、発光装置24は、θ1=0となる時点、及びθ2=0となる時点からずれた時点でレーザ光Lを出射するので、投影面34において第1基準線L1及び第2基準線L2からずれた位置にレーザ光Lが照射される。本例では、第1基準線L1からずれた直線L1A及びL1B上と、第2基準線L2からずれた直線L2A及びL2B上にレーザ光Lが照射される。
【0062】
直線L1Aは、リサージュ走査の往路においてレーザ光Lが照射される線である。直線L1Bは、リサージュ走査の復路においてレーザ光Lが照射される線である。また、直線L2Aは、リサージュ走査の往路においてレーザ光Lが照射される線である。直線L2Bは、リサージュ走査の復路においてレーザ光Lが照射される線である。なお、往路とは、Y方向については第1振れ角θ1が増加する経路をいい、X方向については第2振れ角θ2が増加する経路をいう。復路とは、Y方向については第1振れ角θ1が減少する経路をいい、X方向については第2振れ角θ2が減少する経路をいう。
【0063】
このように、ミラー部40の揺動と、第1基準信号PS1及び第2基準信号PS2のタイミングとの間にずれが生じている場合には、第1基準線L1は直線L1Aと直線L1Bとに分離され、第2基準線L2は直線L2Aと直線L2Bとに分離される。
【0064】
リサージュ曲線70をより綿密とするように1駆動周波数と第2駆動周波数との周波数比を設定した場合には、輝点Pは、直線L1A、直線L1B、直線L2A、及び直線L2Bに沿った直線状のパターンを描く。
【0065】
図10は、補正部65の機能構成の一例を示す。補正部65は、補正量算出部72及び信号補正部73を有する。補正部65には、撮像装置32から撮像画像IPが入力される。
【0066】
補正量算出部72は、撮像画像IPに基づき、直線L1Aと直線L1BとのY方向へのずれ量ΔYと、直線L2Aと直線L2BとのX方向へのずれ量ΔXとを導出する。また、補正量算出部72は、ΔX=0とするための第1基準信号PS1のタイミングの補正量δ1と、ΔY=0とするための第2基準信号PS2のタイミングの補正量δ2とを導出し、導出した補正量δ1,δ2を信号補正部73へ出力する。補正量算出部72は、例えば、予め記憶したずれ量ΔXと補正量δ1との関係、及びずれ量ΔYと補正量δ2との関係とに基づいて、補正量δ1,δ2を導出する。なお、ずれ量ΔXと補正量δ1との関係、及びずれ量ΔYと補正量δ2との関係は、それぞれほぼ比例関係にある。
【0067】
なお、補正量算出部72は、第1基準信号PS1及び第2基準信号PS2のタイミングを補正しない状態(すなわちδ1=0及びδ2=0とした状態)で得られた撮像画像IPに基づいてずれ量ΔX,ΔYを導出し、導出したずれ量ΔX,ΔYに基づいて補正量δ1,δ2を導出する。
【0068】
信号補正部73は、補正量算出部72から入力された補正量δ1に基づいて、第1基準信号出力部63Aから出力される第1基準信号PS1のタイミングを補正し、補正量算出部72から入力された補正量δ2に基づいて、第2基準信号出力部63Bから出力される第2基準信号PS2のタイミングを補正する。
【0069】
図11は、信号補正部73によるタイミング補正の一例を示す。図11(A)は、補正量δ1に基づいて第1基準信号PS1のタイミングを補正する例を示す。図11(B)は、補正量δ2に基づいて第2基準信号PS2のタイミングを補正する例を示す。第1基準信号PS1及び第2基準信号PS2のタイミングを補正することにより、ΔX=0及びΔY=0となる。これにより、直線L1Aと直線L1Bとが一致し、かつ直線L2Aと直線L2Bとが一致する。
【0070】
なお、信号補正部73は、第1基準信号出力部63A及び第2基準信号出力部63Bのそれぞれの内部に設けられていてもよい。この場合、第1基準信号出力部63Aは、補正量算出部72から入力される補正量δ1に基づいて第1基準信号PS1のタイミングを補正する。同様に、第2基準信号出力部63Bは、補正量算出部72から入力される補正量δ2に基づいて第2基準信号PS2のタイミングを補正する。
【0071】
上述のキャリブレーションモードは、例えば、画像形成装置10の起動時に所定期間の間実行される。キャリブレーションモードの終了後、描画モードにおいて、第1基準信号出力部63A及び第2基準信号出力部63Bは、上述の補正量δ1,δ2に基づくタイミング補正を継続する。なお、キャリブレーションモードは、描画モードの実行中に、定期的に実行されてもよい。
【0072】
以上説明したように、画像形成装置10は、撮像装置32により取得された撮像情報に基づいて、第1基準信号PS1及び第2基準信号PS2のタイミングを補正することにより、投影面34に描画される画像の乱れを抑制することができる。
【0073】
以下に、上記実施形態の各種の変形例について説明する。
【0074】
上記実施形態では、図8に示したように、第1基準線L1及び第2基準線L2をリサージュ曲線70の中心を通るように設定しているが、第1基準線L1及び第2基準線L2の設定位置はこれに限られず、適宜変更可能である。
【0075】
一例として図12に示すように、レーザ光Lの描画領域の端部に第1基準線L1及び第2基準線L2の位置を設定してもよい。本例では、ミラー部40の揺動と、第1基準信号PS1及び第2基準信号PS2のタイミングとの間にずれが生じていない場合には、レーザ光Lは第1基準線L1及び第2基準線L2上に照射される。一方、ずれが生じた場合には、第1基準線L1からずれた直線L1A及びL1B上と、第2基準線L2からずれた直線L2A及びL2B上にレーザ光Lが照射される。補正部65は、上記実施形態と同様に、直線L1Aと直線L1Bとが一致し、かつ直線L2Aと直線L2Bとが一致するように、第1基準信号PS1及び第2基準信号PS2のタイミングを補正する。
【0076】
このように、描画領域の端部に第1基準線L1及び第2基準線L2の位置を設定すると、第1基準線L1及び第2基準線L2をユーザが認識しにくくなるため、投影面34に画像を表示しながら、ユーザに違和感を与えることなくキャリブレーションを実行することが可能となる。
【0077】
また、上記実施形態では、キャリブレーションモードにおいて、リサージュ走査の往路及び復路においてレーザ光Lの照射を行っている。これにより、上述のずれが生じた場合に、第1基準線L1が直線L1A及び直線L1Bに分離され、かつ第2基準線L2が直線L2A及び直線L2Bに分離される。これに代えて、リサージュ走査の往路及び復路のうち、いずれか一方においてのみレーザ光Lの照射を行ってもよい。
【0078】
図13は、レーザ光Lの描画領域の端部に第1基準線L1及び第2基準線L2の位置を設定した場合に、往路においてのみレーザ光Lの照射を行う例を示している。本例では、ミラー部40の揺動と、第1基準信号PS1及び第2基準信号PS2のタイミングとの間にずれが生じた場合には、第1基準線L1からずれた直線L1A上と、第2基準線L2からずれた直線L2A上にレーザ光Lが照射される。本例では、補正部65は、直線L1Aが第1基準線L1に一致し、かつ直線L2Aが第2基準線L2に一致するように、第1基準信号PS1及び第2基準信号PS2のタイミングを補正すればよい。
【0079】
また、上記実施形態では、キャリブレーションモードにおいて、リサージュ走査の1走査周期内に複数回レーザ光Lの照射を行っている。リサージュ走査の1走査周期は、投影面34に投影される画像のフレーム周期に対応する。キャリブレーションモードにおいて、リサージュ走査の1走査周期内にレーザ光Lを照射する回数を1回(すなわち1パルス)としてもよい。
【0080】
図14は、リサージュ走査の1走査周期内にレーザ光Lを1回のみ照射する例を示している。本例では、上述のずれが生じていない場合には、基準点P0にレーザ光Lが照射される。一方、上述のずれが生じた場合には、基準点P0からずれた点P1にレーザ光Lが照射される。本例では、補正部65は、点P1が基準点P0に一致するように、第1基準信号PS1及び第2基準信号PS2のタイミングを補正すればよい。
【0081】
なお、図14に示す例では、基準点P0を描画領域の端部に設定しているが、基準点P0は、描画領域の中心位置(すなわちθ1=0及びθ2=0となる位置)であってもよい。また、基準点P0をリサージュ曲線70が交差する点としてもよい。この場合、リサージュ走査が基準点P0を通過するたびにレーザ光Lを照射(すなわち、リサージュ走査の1走査周期内にレーザ光Lを2回照射)することも好ましい。この場合、上述のずれが生じた場合には、基準点P0は2つの点に分離するので、補正部65は、分離した2つの点が一致するように第1基準信号PS1及び第2基準信号PS2のタイミングを補正すればよい。
【0082】
上記実施形態では、MEMSミラー30からスクリーン等の投影面34にレーザ光Lを照射しているが、MEMSミラー30から人の眼球等にレーザ光Lを照射してもよい。この場合、一例として図15に示すように、MEMSミラー30により反射されたレーザ光Lの光路上に、光拡散機能を有する第1光学素子80が設けられている。第1光学素子80は、いわゆるアイボックス(目を動かして映像を見ることができる範囲)を拡張する機能を有する。
【0083】
MEMSミラー30には、発光装置24から出射されたレーザ光Lが入射する。MEMSミラー30に入射したレーザ光Lは、揺動するミラー部40により反射方向が変調されて、第1光学素子80に向けて出射される。
【0084】
第1光学素子80は、MEMSミラー30から入射したレーザ光Lを透過させ、かつ拡散させる。第1光学素子80は、例えば、マイクロレンズアレーである。第1光学素子80は、マイクロレンズアレーに限られず、すりガラス、グレーティング、ホログラム等の光学素子であってもよいし、これらを組み合わせたものであってもよい。
【0085】
第1光学素子80を透過したレーザ光Lの光路上には、レーザ光Lを眼球Eに導くための第2光学素子81が設けられている。
【0086】
また、第1光学素子80を透過したレーザ光Lの光路上には、レーザ光Lの一部を撮像装置32へ導くための第3光学素子82が設けられている。第3光学素子82は、第1光学素子80を透過したレーザ光Lの一部を集光して、撮像装置32の撮像面に結像する。本例では、第1光学素子80によりレーザ光Lが拡散されるため、レーザ光Lを集光する第3光学素子82を設けることが好ましい。なお、第3光学素子82は、本開示の技術に係る「光の一部を撮像装置へ導く光学素子」の一例である。
【0087】
第2光学素子81及び第3光学素子82は、例えば、ガラス又は樹脂により形成されたレンズである。第2光学素子81及び第3光学素子82は、レンズに限られず、ホログラム、凹面鏡等の光学素子であってもよいし、これらを組み合わせたものであってもよい。第3光学素子82を、ホログラムにより構成することは、液晶などで構成する場合と比較して、小型化の観点で好ましい。
【0088】
また、MEMSミラー30は、例えば、パッケージ90内に収容されている。パッケージ90の内部は、揺動するミラー部40の空気抵抗を減らすために減圧されているか、又は真空とされている。パッケージ90は、例えばガラスで形成されている。パッケージ90の少なくとも一部は透光性を有する。発光装置24から出射されたレーザ光Lは、パッケージ90の透光部91を介してMEMSミラー30に入射し、ミラー部40により反射されたレーザ光Lは、透光部91を介して外部へ出射される。
【0089】
また、一例として図16に示すように、撮像装置32は、パッケージ90の内部に設けられていてもよい。図16において、撮像装置32は、ミラー部40により反射されたレーザ光Lのうち、透光部91の表面で反射されたレーザ光Lの光路上に設けられている。この場合、撮像装置32は、レーザ光Lが拡散される前のレーザ光Lを受光するので、レーザ光Lを集光するための光学素子(図15に示した第3光学素子82)を設ける必要はない。撮像装置32が撮像動作を行うことにより生成される撮像画像IPは、リード端子35を介して外部に出力される。このように、撮像装置32をパッケージ90の内部に収容することにより、画像形成装置10の小型化が可能となる。なお、本例では、透光部91が、本開示の技術に係る「光の一部を撮像装置へ導く光学素子」の一例である。
【0090】
また、上記実施形態では、第1基準角及び第2基準角を共に0°としているが、第1基準角及び第2基準角は、0°以外の角度であってもよい。例えば、第1基準角を第1振れ角θ1が最大又は最小となる角度とし、第2基準角を第2振れ角θ2が最大又は最小となる角度としてもよい。この場合、一例として図17に示すように、投影面34において、4つの基準線L1~L4上にレーザ光Lが照射される。基準線L1~L4は、リサージュ曲線70の外形に接する直線である。第1基準信号PS1及び第2基準信号PS2のタイミングとの間にずれが生じた場合には、レーザ光Lの輝点Pは、基準線L1~L4から内側に変位する。補正部65は、撮像画像IPを用いて導出される基準線L1~L4からの輝点Pの変位量に基づいて第1基準信号PS1及び第2基準信号PS2のタイミングを補正すればよい。
【0091】
また、上記実施形態では、第1基準信号出力部63Aは、湿温度センサ67により検出された温度及び湿度とLUT66Aとを用いて第1振れ角θ1が第1基準角となる時点を推測して第1基準信号PS1を出力している。これに代えて、第1基準信号出力部63Aは、第1振れ角θ1を検出する角度センサ(図示せず)に基づいて第1振れ角θ1が第1基準角となる時点を推測して第1基準信号PS1を出力してもよい。同様に、第2基準信号出力部63Bは、第2振れ角θ2を検出する角度センサ(図示せず)に基づいて第2振れ角θ2が第2基準角となる時点を推測して第2基準信号PS2を出力してもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、光走査装置として2軸のMEMSミラー30を用いているが、光走査装置として1軸のMEMSミラーを用いてもよい。したがって、本開示の技術は、可動ミラーを第1軸の周りに揺動する1軸の光走査装置を備える画像形成装置に適用することも可能である。
【0093】
なお、上記実施形態及び各変形例は、矛盾が生じない限り、適宜組み合わせることが可能である。
【0094】
上記実施形態において、例えば、画像入力部60、情報生成部61、情報記憶部62、第1基準信号出力部63A、第2基準信号出力部63B、発光制御部64、補正部65、及びテーブル保持部66といった各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)に加えて、前述のFPGA等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device: PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0095】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、及び/又は、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0096】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip: SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0097】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【0098】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0099】
10 画像形成装置
20 制御装置
20A FPGA
20B メモリ
22 ドライバ
24 発光装置
25 レーザドライバ
26 合波光学系
27 レーザ光源
28 コリメータ
30 MEMSミラー
32 撮像装置
34 投影面
35 リード端子
40 ミラー部
40A 反射面
41 第1支持部
42 第1可動枠
43 第2支持部
44 第2可動枠
45 接続部
46 固定枠
50 圧電素子
51 第1アクチュエータ
52 第2アクチュエータ
60 画像入力部
61 情報生成部
62 情報記憶部
63A 第1基準信号出力部
63B 第2基準信号出力部
64 発光制御部
65 補正部
66 テーブル保持部
66A LUT
67 湿温度センサ
70 リサージュ曲線
72 補正量算出部
73 信号補正部
80 第1光学素子
81 第2光学素子
82 第3光学素子
90 パッケージ
91 透光部
ΔX,ΔY ずれ量
δ1,δ2 補正量
θ1 第1振れ角
θ2 第2振れ角
D1,D2 遅延時間
DT 画像データ
E 眼球
IP 撮像画像
L レーザ光
L1 第1基準線
L1A,L1B 直線
L2 第2基準線
L2A,L2B 直線
P 輝点
P0 基準点
P1 点
PS1 第1基準信号
PS2 第2基準信号
SI 強度情報
V1A,V1B 第1駆動信号
V2A,V2B 第2駆動信号
ZC1 第1ゼロクロス信号
ZC2 第2ゼロクロス信号
第1軸
第2軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17