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  • 特開-異常検出方法及び異常検出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187735
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】異常検出方法及び異常検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/165 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
G01R19/165 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095890
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】398026347
【氏名又は名称】株式会社アバールデータ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】別生 朋也
(72)【発明者】
【氏名】林 志郎
(72)【発明者】
【氏名】原田 順一
(72)【発明者】
【氏名】野口 顕嗣
【テーマコード(参考)】
2G035
【Fターム(参考)】
2G035AB08
2G035AC18
2G035AD26
2G035AD28
2G035AD64
2G035AD65
(57)【要約】
【課題】交流信号の異常を精度よく検出できる技術を提供する。
【解決手段】本開示の一態様による異常検出方法は、交流電源から入力される交流信号の異常を検出する方法であって、理想的な前記交流信号をVsinωt(V:振幅、ω:角周波数、t:時刻)とした場合に、sinωt+cosωtで表される値を含む演算値を算出するステップと、前記演算値が閾値の範囲を外れる場合に前記交流信号が異常であると判定するステップと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から入力される交流信号の異常を検出する方法であって、
理想的な前記交流信号をVsinωt(V:振幅、ω:角周波数、t:時刻)とした場合に、
sinωt+cosωtで表される値を含む演算値を算出するステップと、
前記演算値が閾値の範囲を外れる場合に前記交流信号が異常であると判定するステップと、
を有する、異常検出方法。
【請求項2】
時刻t及び時刻t+Δtにおける前記交流信号の値を検出するステップを更に有し、
前記演算値を算出するステップは、前記交流信号の値を検出するステップで検出した前記交流信号の値に基づいて前記演算値を算出することを含む、
請求項1に記載の異常検出方法。
【請求項3】
前記演算値を算出するステップは、
時刻tにおける前記交流信号の値に基づいてsinωtを算出することと、
時刻t及び時刻t+Δtにおける前記交流信号の値に基づいてcosωtを算出することと、
を含む、請求項2に記載の異常検出方法。
【請求項4】
予め設定された期間における前記演算値の統計量を算出するステップを更に有する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の異常検出方法。
【請求項5】
前記交流信号は、半導体製造装置が備えるヒータに入力される信号を含む、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の異常検出方法。
【請求項6】
前記交流信号は、半導体製造装置が備えるプラズマ発生用高周波電源に入力される信号を含む、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の異常検出方法。
【請求項7】
前記判定するステップにおいて前記交流信号が異常であると判定された場合に、異常であると判定された時刻及び該時刻の前後における前記交流信号の値及び前記演算値を含む時系列データを保存するステップを更に有する、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の異常検出方法。
【請求項8】
交流電源から入力される交流信号の異常を検出する装置であって、
理想的な前記交流信号をVsinωt(V:振幅、ω:角周波数、t:時刻)とした場合に、
sinωt+cosωtで表される値を含む演算値を算出する算出部と、
前記演算値が閾値の範囲を外れる場合に前記交流信号が異常であると判定する判定部と、
を有する、異常検出装置。
【請求項9】
前記算出部及び前記判定部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)により実現される、
請求項8に記載の異常検出装置。
【請求項10】
前記算出部は、リアルタイムで前記演算値を算出することを含み、
前記判定部は、リアルタイムで前記交流信号の異常を判定することを含む、
請求項8又は9に記載の異常検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、異常検出方法及び異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ローパスフィルタを用いて入力波形の平滑化を行い、異常の有無を検出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-179849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、交流信号の異常を精度よく検出できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による異常検出方法は、交流電源から入力される交流信号の異常を検出する方法であって、理想的な前記交流信号をVsinωt(V:振幅、ω:角周波数、t:時刻)とした場合に、sinωt+cosωtで表される値を含む演算値を算出するステップと、前記演算値が閾値の範囲を外れる場合に前記交流信号が異常であると判定するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、交流信号の異常を精度よく検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の異常検出装置の一例を示すブロック図
図2】実施形態の異常検出方法の一例を示すフローチャート
図3】実施形態の異常検出方法の一例を説明するための波形図
図4】歪みが大きい交流信号の一例を示す波形図
図5】歪みが小さい交流信号の一例を示す波形図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔異常検出装置〕
図1を参照し、実施形態の異常検出装置の一例について説明する。実施形態の異常検出装置1は、数kHz以上のサンプリング周波数でサンプリングが可能な高速サンプリング機能を有する機器である。異常検出装置1は、A/Dコンバータ10、FPGA(Field Programmable Gate Array)20、CPU(Central Processing Unit)30、メモリ40等を有する。
【0010】
A/Dコンバータ10は、交流電源2が出力し、変圧器3で所定電圧に降圧されたアナログ信号を、予め設定されたサンプリング周波数に従ってデジタル信号に変換する。変換されたデジタル信号は、FPGA20に入力される。交流電源2は、例えば50Hz/60Hz、100V/200Vの交流信号を出力する商用電源である。所定電圧は、例えば1V~10Vである。サンプリング周波数は、例えば1kHzである。
【0011】
FPGA20は、機能部として、算出部21、判定部22等を含む。算出部21は、A/Dコンバータ10から入力されるデジタル信号に基づいて、直流電圧の値を算出する。なお、直流電圧の値を算出する方法については後述する。FPGA20による算出処理はハードウェア処理であり、遅延がほとんど生じないため、リアルタイムで実施できる。判定部22は、算出部21が算出した直流電圧の値が閾値の範囲を外れているか否かを判定する。判定部22は、算出部21が算出した直流電圧の値が閾値の範囲を外れている場合、交流電源2が出力した交流信号が異常であると判定し、上位装置4にアラーム信号を出力する。上位装置4は、例えばホストコンピュータである。また、判定部22は、交流電源2が出力した交流信号が異常であると判定した時刻及び該時刻の前後におけるデジタル信号の値及び直流電圧の値を含む時系列データを、メモリ40に保存する。時系列データは、例えば波形図を含む。
【0012】
CPU30は、メモリ40に保存された時系列データについて、予め設定された期間における統計量を算出する。統計量は、最大値、最小値、平均値、分散、標準偏差、変動係数等を含む。また、CPU30は、算出した統計量をメモリ40に保存する。また、CPU30は、算出した統計量を、LAN(Local Area Network)等のネットワークを介して接続された情報端末5に出力する。情報端末5は、例えば定置型又は携帯型のコンピュータ端末、タブレット、スマートフォン等の携帯端末である。
【0013】
メモリ40は、FPGA20が算出した各種のデータ(例えば時系列データ)、CPU30が算出した各種のデータ(例えば統計量)等を保存する。
【0014】
〔異常検出方法〕
図2及び図3を参照し、実施形態の異常検出方法の一例について説明する。以下では、交流電源から入力される理想的な交流信号をVsinωt(V:振幅、ω:角周波数、t:時刻)として説明する。実施形態の異常検出方法は、異常検出装置1が、交流電源2から入力される交流信号の値を、予め設定されたサンプリング周期Δt(サンプリング周波数fs=1/Δt)で取得し、リアルタイムで実施される。交流信号は、例えば半導体製造装置が備える配管ヒータ、チャンバヒータ等のヒータに入力される信号である。
【0015】
ステップS1では、異常検出装置1は、時刻tにおける交流信号の値F(t)及び時刻t+Δtにおける交流信号の値F(t+Δt)を検出する。F(t)及びF(t+Δt)は、振幅をA、角周波数をωとすると、それぞれ以下の式(1)及び式(2)で表される。
【0016】
F(t)=Asinωt …(1)
【0017】
F(t+Δt)=Asinω(t+Δt) …(2)
【0018】
ステップS2では、異常検出装置1は、ステップS1で検出したF(t)及びF(t+Δt)に基づいて、sinωt+cosωtで表される値を算出する。sinωt及びcosωtは、以下の演算により算出される。
【0019】
式(1)を変形すると、以下の式(3)が得られる。すなわち、時刻tにおける交流信号の値F(t)に基づいて、sinωtが算出される。
【0020】
sinωt=F(t)/A …(3)
【0021】
式(1)と式(2)の差分を取ると、以下の式(4)が得られる。
【0022】
F(t+Δt)-F(t)=A{sinω(t+Δt)-sinωt} …(4)
【0023】
式(4)を三角関数の加法定理で変形すると、以下の式(5)が得られる。
【0024】
F(t+Δt)-F(t)=A(sinωtcosωΔt+sinωΔcosωt-sinωt) …(5)
【0025】
式(5)を変形すると、以下の式(6)が得られる。すなわち、時刻tにおける交流信号の値F(t)及び時刻t+Δtにおける交流信号の値F(t+Δt)に基づいて、cosωtが算出される。
【0026】
cosωt={(F(t+Δt)-F(t))/AsinωΔt}-{(sinωt(cosωΔt-1))/sinωΔt} …(6)
【0027】
式(3)及び式(6)において、角周波数ω(=2πf)は交流信号の周波数fが既知であることから既知である。また、式(6)において、サンプリング周期Δtは予め設定される値であることから既知である。
【0028】
ステップS3では、異常検出装置1は、ステップS2で算出したsinωt+cosωtで表される値が閾値の範囲を外れているか否かを判定する。閾値は、予めユーザ等により設定される。閾値は、上限値及び下限値を含んでいてもよく、上限値のみを含んでいてもよい。ステップS3において、ステップS2で算出したsinωt+cosωtで表される値が閾値の範囲を外れていると判定した場合、異常検出装置1は処理をステップS4へ進める。一方、ステップS2で算出したsinωt+cosωtで表される値が閾値の範囲内である場合、異常検出装置1は処理を終了させる。
【0029】
ステップS4では、異常検出装置1は、交流電源2から入力される交流信号が異常であると判定し、処理を終了させる。
【0030】
以上に説明した実施形態の異常検出方法によれば、交流電源2から入力される交流信号の値に基づいて、sinωt+cosωtで表される値を算出し、算出した値が閾値の範囲を外れる場合に交流信号が異常であると判定する。sinωt+cosωtで表される値は、交流信号の波形が理想的な正弦波に近い状態では一定であるが、交流信号の波形に歪みが発生すると大きく変動する。そのため、交流信号が異常であるか否かを判定するための閾値の設定が容易であり、交流信号の異常を精度よく検出できる。これに対し、交流信号に対して閾値を設定し、交流信号が閾値を超えた場合に交流信号が異常であると判定する場合、閾値の設定が難しいため、交流信号の異常を精度よく検出できないおそれがある。なお、交流信号の異常としては、ゼロクロスの段付き、ゼロクロスの歪み、トランジェントオーバ電圧、ホワイトノイズ(白色雑音)、電圧ディップ(電圧降下)、周波数変動、瞬時電圧低下(瞬低)等が挙げられる。
【0031】
また、実施形態の異常検出方法によれば、異常検出装置1は、交流電源2から入力される交流信号の値を、予め設定されたサンプリング周期Δtで取得し、取得した値に基づいて、リアルタイムで交流信号の異常を判定する。そのため、異常検出装置1が交流信号の値を取得するのと同時又は略同時に、交流信号の異常を検出できる。
【0032】
なお、実施形態の異常検出方法では、異常検出装置1は、サンプリング周期Δtで検出した交流信号の値F(t)、サンプリング周期Δtで算出したsinωt+cosωtで表される値について、予め設定された期間における統計量を算出してもよい。統計量は、最大値、最小値、平均値、分散、標準偏差、変動係数等を含む。また、異常検出装置1は、算出した統計量をメモリ40に保存してもよい。
【0033】
また、実施形態の異常検出方法では、異常検出装置1は、異常であると判定した時刻及び該時刻の前後における交流信号の値F(t)及びsinωt+cosωtで表される値を含む時系列データをメモリ40に保存してもよい。時系列データは、例えば波形図を含む。
【0034】
また、実施形態の異常検出方法では、異常検出装置1は、交流電源2から入力される交流信号が異常であると判定した場合、外部にアラーム信号を出力してもよい。また、異常検出装置1は、交流電源2から入力される交流信号が異常であると判定した場合、交流信号が入力されるヒータを備える半導体製造装置の動作を停止してもよい。
【0035】
また、実施形態の異常検出方法では、異常検出装置1がsinωt+cosωtで表される値に基づいて交流信号の異常を判定する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、異常検出装置1は、{A(sinωt+cosωt)/2}1/2で表される直流電圧(実効値換算値)に基づいて交流信号の異常を判定してもよい。このように異常検出装置1は、sinωt+cosωtで表される値を含む演算値に基づいて、交流信号の異常を判定する。
【0036】
〔実施例〕
図4及び図5を参照し、実施形態の異常検出方法により、歪みが小さい交流信号及び歪みが大きい交流信号の夫々について、{A(sinωt+cosωt)/2}1/2で表される直流電圧(実効値換算値)を算出した結果について説明する。
【0037】
図4(a)は、交流電源2(50Hz、200V)が出力し、変圧器3で降圧した交流信号の波形図である。図4(b)は、図4(a)の波形図に示される交流信号に基づいて算出された直流電圧の波形図である。図4(a)及び図4(b)において、横軸は時間を示し、縦軸は電圧[V]を示す。
【0038】
交流信号の歪みが大きい場合(図4(a)参照)、図4(b)に示されるように、トランジェントオーバ電圧が発生した時刻において、交流信号に基づいて算出される直流電圧が大きく変動していることが分かる。そこで、閾値として交流信号の実効電圧よりも大きい値(例えば10V)を設定することで、トランジェントオーバ電圧が発生した時刻において交流信号の異常が発生したと判定できる。
【0039】
図5(a)は、交流電源2(50Hz、200V)が出力し、変圧器3で降圧した交流信号の波形図である。図5(b)は、図5(a)の波形図に示される交流信号に基づいて算出された直流電圧の波形図である。図5(a)及び図5(b)において、横軸は時間を示し、縦軸は電圧[V]を示す。
【0040】
交流信号の歪みが小さい場合(図5(a)参照)、図5(b)に示されるように、該交流信号に基づいて算出される直流電圧は、実効電圧付近に安定していることが分かる。そこで、閾値として交流信号の振幅よりも大きい値(例えば10V)を設定することで、該交流信号に異常は発生していないと判定できる。
【0041】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0042】
なお、上記の実施形態では、算出部21及び判定部22がFPGAにより実現される場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、算出部21及び判定部22は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の別のハードウェアにより実現されてもよい。
【0043】
また、上記の実施形態では、交流信号が、半導体製造装置が備えるヒータに入力される信号である場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、交流信号は、半導体製造装置が備えるプラズマ発生用高周波電源に入力される信号であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 異常検出装置
20 FPGA
21 算出部
22 判定部
図1
図2
図3
図4
図5