(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187901
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】光反応性基を含む重合体の組成物、光学薄膜
(51)【国際特許分類】
C08F 283/01 20060101AFI20221213BHJP
C08L 77/12 20060101ALI20221213BHJP
G02F 1/1337 20060101ALI20221213BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20221213BHJP
C08F 299/04 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C08F283/01
C08L77/12
G02F1/1337 520
G02B5/30
C08F299/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096132
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】七田 優輝
(72)【発明者】
【氏名】坂下 竜一
(72)【発明者】
【氏名】一條 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】村上 範武
【テーマコード(参考)】
2H149
2H290
4J002
4J127
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AB01
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2H149FA12Z
2H149FD22
2H149FD25
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2H290BF25
4J002CF032
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4J127BG23Y
4J127BG23Z
4J127DA20
4J127EA12
4J127FA31
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低い加熱温度の下でも高い位相差を発現する重合体の組成物を提供する。
【解決手段】たとえば、2つのシンナモイル基を2個のフェノールの間に有するビスフェノール残基と、2つの3級アミノ基を2個のフェノールの間に有するビスフェノール残基と、フタル酸残基からなる不飽和ポリエステルを80~99.99重量%、及び分子量が200以上10000以下の熱再配向促進剤を0.01~20重量%を含有する樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1)で表される構成単位Aを有し、以下の式(2)で表される構成単位Bまたは以下の式(3)で表される構成単位Cのうち少なくとも1種を有する重合体を80~99.99重量%、分子量が200以上10000以下の熱再配向促進剤を0.01~20重量%を含有する樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、X
1~X
3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5~7の芳香環または置換基を有していてもよい炭素数5~7の脂環式炭化水素基のいずれかを表し、該芳香環中または該脂環式炭化水素基中の任意の炭素原子は窒素原子、酸素原子、硫黄原子に置換されてもよい。ここでX
1~X
3における置換基は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基からなる群の1種を表し、X
1~X
3が置換基を有さない場合、水素原子である。Y
1およびY
2は、それぞれ独立に、-O-、-CO-、-NR
9-からなる群の1種を表す。ここで、R
9は水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5~7の芳香環を表し、該芳香環中の任意の炭素原子は窒素原子、酸素原子、硫黄原子に置換されてもよい。ここでAr
1およびAr
2における置換基は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基からなる群の1種を表し、Ar
1およびAr
2が置換基を有さない場合、水素原子である。
R
1~R
4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基からなる群の1種を表す。L
1およびL
4は、単結合または-O-、-NR
5-からなる群の1種を表す。ここで、R
5は水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。L
2およびL
3は、単結合または-O-、-CO-O-、-CO-NR
6-、-CO-、-CR
7R
8-からなる群の1種を表す。
ここで、R
6は水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。R
7およびR
8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。aおよびbは、それぞれ独立に、0または1を表す。)
【化2】
(式(2)中、Y
3およびY
4は、それぞれ独立に、-O-、-CO-、-NR
10-からなる群の1種を表す。ここで、R
10は水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。X
4~X
6は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5~7の芳香環または置換基を有していてもよい炭素数5~7の脂環式炭化水素基のいずれかを表し、該芳香環中または該脂環式炭化水素基中の任意の炭素原子は窒素原子、酸素原子、硫黄原子に置換されてもよい。R
11およびR
12は、水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。cは、0または1を表す。)
【化3】
(式(3)中、Y
5およびY
6は、それぞれ独立に、-O-、-CO-、-NR
13-からなる群の1種を表す。ここで、R
13は水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。Zは、炭素数5~7の脂環式炭化水素基、炭素数2~20の直鎖状のアルキレン基、炭素数4~20の分枝状のアルキレン基からなる群の一種を表す。)
【請求項2】
前記重合体が式(1)で表される構成単位Aおよび式(2)で表される構成単位Bを有する請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
式(1)中のY1およびY2が-O-である請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
式(1)中のAr1およびAr2が置換基を有していてもよいベンゼン環である請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
熱再配向促進剤が可塑剤である請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
熱再配向促進剤が酸化防止剤である請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
熱再配向促進剤が光安定剤である請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む光学薄膜。
【請求項9】
請求項8に記載の光学薄膜に紫外線を照射して得られる光学薄膜。
【請求項10】
請求項9に記載の光学薄膜に、偏光紫外線または斜め入射紫外線を照射して得られる光学薄膜。
【請求項11】
光反応性基の光反応率が50%以下である請求項9または請求項10に記載の光学薄膜。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか一項に記載の光学薄膜に該樹脂組成物が液晶性を発現する範囲内の温度で加熱してなることを特徴とする光学薄膜。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか一項に記載の薄膜を備えた位相差膜。
【請求項14】
請求項8~12のいずれか一項に記載の薄膜を備えた液晶配向膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反応性基を含む重合体の組成物に関する。より詳細には、光反応性基を含む重合体の組成物及びその組成物を含む位相差膜に関する。
【背景技術】
【0002】
位相差フィルムは、視野角拡大などの観点から、様々な画像表示装置で用いられる。既存の位相差膜として、重合性液晶性化合物を用いて作製される。このとき、重合性液晶性化合物を配向させるために、光学異方性層を形成する支持体上に配向膜を設けることが必要であり、ラビング処理や光配向処理を施した配向膜が用いられている(例えば、特許文献1~3参照)。しかしながら、どちらも複雑な製造装置と工程が必要となり、製品歩留まりに於いても課題がある。また、光反応性基を含む側鎖型液晶アクリレート樹脂を用いて、配向膜を必要とせず、偏光紫外線照射および加熱処理により、位相差Re/厚みが100nm以上を発現する光学薄膜および位相差膜を形成する提案がなされている(例えば、特許文献4,5)。しかし光反応性基を含む側鎖型液晶アクリレート樹脂は、モノマーの合成に多段階を要し高価である、耐熱温度が低い等の問題が存在する。光反応性基を含む直鎖型液晶ポリエステル樹脂は、配向膜を必要とせず、偏光紫外線照射および加熱処理により光学薄膜および位相差膜を形成でき、安価なモノマーから耐熱性に優れた光学薄膜および位相差膜の製造が期待できる。しかし、直鎖型液晶ポリエステル樹脂は、優れた耐熱性を持つ反面200度以上の高い加工温度を要する課題が存在する(例えば、特許文献6~8)。そのため、直鎖型液晶ポリエステル樹脂を光学薄膜および位相差膜として適用する場合、例えば、ポリエチレンテレフタレ-ト(耐熱温度約160℃)、ポリエチレンテレナフタレート(耐熱温度約200℃)、シクロオレフィンポリマー(耐熱温度約160℃)などの安価な汎用の樹脂フィルム支持基材が使用できない問題点が存在した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-160430
【特許文献2】特表2003-505561
【特許文献3】国際公開第2010-150748
【特許文献4】特開2002-226858
【特許文献5】国際公開第2014-017497
【特許文献6】特開2018-188529
【特許文献7】特開2021-028375
【特許文献8】特開2021-028384
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、200℃以下の低い加熱温度の下でも配向し、かつ、位相差Re/厚みが100nm以上という高い位相差を発現する重合体の組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の光反応性基を有する重合体と、特定の添加剤を含有する組成物が、上記課題を解決し、汎用の樹脂フィルム支持基板の耐熱温度以下の熱処理温度で重合体の熱再配向性を促進させ、汎用の樹脂フィルム支持基板上で製造可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の一つの態様は、以下の式(1)で表される構成単位Aを有し、以下の式(2)で表される構成単位Bまたは以下の式(3)で表される構成単位Cのうち少なくとも1種を有する重合体を80~99.99重量%、分子量が200以上10000以下の熱再配向促進剤を0.01~20重量%を含有する樹脂組成物に関するものである。
【0007】
【0008】
(式(1)中、X1~X3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5~7の芳香環または置換基を有していてもよい炭素数5~7の脂環式炭化水素基のいずれかを表し、該芳香環中または該脂環式炭化水素基中の任意の炭素原子は窒素原子、酸素原子、硫黄原子に置換されてもよい。ここでX1~X3における置換基は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基からなる群の1種を表し、X1~X3が置換基を有さない場合、水素原子である。Y1およびY2は、それぞれ独立に、-O-、-CO-、-NR9-からなる群の1種を表す。ここで、R9は水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5~7の芳香環を表し、該芳香環中の任意の炭素原子は窒素原子、酸素原子、硫黄原子に置換されてもよい。ここでAr1およびAr2における置換基は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基からなる群の1種を表し、Ar1およびAr2が置換基を有さない場合、水素原子である。R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基からなる群の1種を表す。L1およびL4は、単結合または-O-、-NR5-からなる群の1種を表す。ここで、R5は水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。L2およびL3は、単結合または-O-、-CO-O-、-CO-NR6-、-CO-、-CR7R8-からなる群の1種を表す。ここで、R6は水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。R7およびR8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。aおよびbは、それぞれ独立に、0または1を表す。)
【0009】
【0010】
(式(2)中、Y3およびY4は、それぞれ独立に、-O-、-CO-、-NR10-からなる群の1種を表す。ここで、R10は水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。X4~X6は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5~7の芳香環または置換基を有していてもよい炭素数5~7の脂環式炭化水素基のいずれかを表し、該芳香環中または該脂環式炭化水素基中の任意の炭素原子は窒素原子、酸素原子、硫黄原子に置換されてもよい。R11およびR12は、水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。cは、0または1を表す。)
【0011】
【0012】
(式(3)中、Y5およびY6は、それぞれ独立に、-O-、-CO-、-NR13-からなる群の1種を表す。ここで、R13は水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。Zは、炭素数5~7の脂環式炭化水素基、炭素数2~20の直鎖状のアルキレン基、炭素数4~20の分枝状のアルキレン基からなる群の一種を表す。)
【0013】
また、本発明の別の態様は、前記組成物を含む光学薄膜に関するものである。
【0014】
また、本発明の別の態様は、前記薄膜を備えた位相差膜に関するものである。
【0015】
さらに、本発明の別の態様は、前記薄膜を備えた液晶配向膜に関するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、200℃以下の熱処理温度でも高い位相差を発現するため、汎用の樹脂基板上で製膜可能な紫外光に対する反応性を示す組成物、光学薄膜、およびそれからなる位相差膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の一態様である組成物について詳細に説明する。
【0018】
本発明の一つの態様として、以下の式(1)で表される構成単位Aを有し、以下の式(2)で表される構成単位Bまたは以下の式(3)で表される構成単位Cのうち少なくとも1種を有する重合体を80~99.99重量%、分子量が200以上10000以下の熱再配向促進剤を0.01~20重量%を含有する組成物(以下、「本発明の組成物」という。)を挙げることができる。
【0019】
【0020】
(式(1)中、X1~X3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5~7の芳香環または置換基を有していてもよい炭素数5~7の脂環式炭化水素基のいずれかを表し、該芳香環中または該脂環式炭化水素基中の任意の炭素原子は窒素原子、酸素原子、硫黄原子に置換されてもよい。ここでX1~X3における置換基は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基からなる群の1種を表し、X1~X3が置換基を有さない場合、水素原子である。Y1およびY2は、それぞれ独立に、-O-、-CO-、-NR9-からなる群の1種を表す。ここで、R9は水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5~7の芳香環を表し、該芳香環中の任意の炭素原子は窒素原子、酸素原子、硫黄原子に置換されてもよい。ここでAr1およびAr2における置換基は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基からなる群の1種を表し、Ar1およびAr2が置換基を有さない場合、水素原子である。R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基からなる群の1種を表す。L1およびL4は、単結合または-O-、-NR5-からなる群の1種を表す。ここで、R5は水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。L2およびL3は、単結合または-O-、-CO-O-、-CO-NR6-、-CO-、-CR7R8-からなる群の1種を表す。ここで、R6は水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。R7およびR8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。aおよびbは、それぞれ独立に、0または1を表す。)
【0021】
【0022】
(式(2)中、Y3およびY4は、それぞれ独立に、-O-、-CO-、-NR10-からなる群の1種を表す。ここで、R10は水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。X4~X6は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5~7の芳香環または置換基を有していてもよい炭素数5~7の脂環式炭化水素基のいずれかを表し、該芳香環中または該脂環式炭化水素基中の任意の炭素原子は窒素原子、酸素原子、硫黄原子に置換されてもよい。R11およびR12は、水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。cは、0または1を表す。)
【0023】
【0024】
(式(3)中、Y5およびY6は、それぞれ独立に、-O-、-CO-、-NR13-からなる群の1種を表す。ここで、R13は水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。Zは、炭素数5~7の脂環式炭化水素基、炭素数2~20の直鎖状のアルキレン基、炭素数4~20の分枝状のアルキレン基からなる群の一種を表す。)
【0025】
式(1)中、X1~X3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5~7の芳香環または置換基を有していてもよい炭素数5~7の脂環式炭化水素基のいずれかを表し、該芳香環中または該脂環式炭化水素基中の任意の炭素原子は窒素原子、酸素原子、硫黄原子に置換されてもよい。ここでX1~X3における置換基として、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基を挙げることができ、X1~X3が置換基を有さない場合、水素原子である。X1~X3は、好ましくはベンゼン環、メチルベンゼン環、t-ブチルベンゼン環、ジメチルベンゼン環、テトラフルオロベンゼン環またはシクロヘキサン環からなる群の1種であり、さらに好ましくはtrans-シクロヘキサン環である。
【0026】
Y1およびY2は、それぞれ独立に、-O-、-CO-、-NR9-からなる群の1種を表す。ここで、R9は水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。Y1およびY2は、好ましくは-O-である。
【0027】
Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5~7の芳香環を表し、該芳香環中の任意の炭素原子は窒素原子、酸素原子、硫黄原子に置換されてもよい。ここでAr1およびAr2における置換基として、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基を挙げることができ、Ar1およびAr2が置換基を有さない場合、水素原子である。Ar1およびAr2は、好ましくは置換基を有していてもよいベンゼン環であり、さらに好ましくはベンゼン環である。
【0028】
R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基からなる群の1種を表す。R1~R4は、好ましくは水素原子またはシアノ基であり、さらに好ましくは水素原子である。
【0029】
L1およびL4は、それぞれ独立に、単結合または-O-、-NR5-からなる群の1種を表す。L1およびL4は、好ましくは-O-または-NR5-である。L1およびL4におけるR5は水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。R5における炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基を挙げることができる。
【0030】
L2およびL3は、それぞれ独立に、単結合または-O-、-CO-O-、-CO-NR6-、-CO-、-CR7R8-からなる群の1種を表す。ただし、L2およびL3の左右の関係は、逆になってもよい。L2およびL3は、好ましくは単結合または-CO-NR6-であり、さらに好ましくは単結合である。L2およびL3におけるR6は水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。R6における炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基を挙げることができる。L2およびL3におけるR7およびR8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。R7およびR8におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。R7およびR8における炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基を挙げることができる。
【0031】
aおよびbは、それぞれ独立に、0または1を表す。
【0032】
式(2)中、Y3およびY4は、それぞれ独立に、-O-、-CO-、-NR10-からなる群の1種を表す。ここで、R10は水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。Y3およびY4は、好ましくは-O-または-CO-である。
【0033】
X4~X6は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5~7の芳香環または置換基を有していてもよい炭素数5~7の脂環式炭化水素基のいずれかを表し、該芳香環中または該脂環式炭化水素基中の任意の炭素原子は窒素原子、酸素原子、硫黄原子に置換されてもよい。ここでX4~X6における置換基として、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基を挙げることができ、X4~X6が置換基を有さない場合、水素原子である。X4~X6は、好ましくはベンゼン環、メチルベンゼン環、t-ブチルベンゼン環、ジメチルベンゼン環、テトラフルオロベンゼン環またはシクロヘキサン環からなる群の1種であり、さらに好ましくはベンゼン環またはtrans-シクロヘキサン環である。
【0034】
R11およびR12は、水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。R5における炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基を挙げることができる。
【0035】
cは、0または1を表す。
【0036】
式(3)中、Y5およびY6は、それぞれ独立に、-O-、-CO-、-NR13-からなる群の1種を表す。ここで、R13は水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。Y5およびY6は、好ましくは-CO-である。
【0037】
Zは、炭素数5~7の脂環式炭化水素基、炭素数2~20の直鎖状のアルキレン基、炭素数4~20の分枝状のアルキレン基からなる群の一種を表す。Zは、好ましくは炭素数5~7の脂環式炭化水素基、炭素数2~20の直鎖状のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数5~7の脂環式炭化水素基、炭素数2~10の直鎖状のアルキレン基である。
【0038】
本発明の組成物に含まれる共重合体は、好ましくは、以下の式(4)で表されるシンナモイル基を含む構成単位A1と、以下の式(5)で表される構成単位C1を有する重合体である。
【0039】
【0040】
(式(4)中、X7およびX8は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5~7の芳香環または置換基を有していてもよい炭素数5~7の脂環式炭化水素基のいずれかを表す。L5は、単結合または-O-、-CO-O-、-CO-NR16-、-CO-、-CR17R18-からなる群の1種を表す。ここで、R16は水素原子または炭素数1~5のアルキル基のいずれかを表す。R17およびR18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。mおよびlは、それぞれ独立に、0または1を表す。R14およびR15は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のアルコキシ基からなる群の1種を表す。n1およびn2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。)
【0041】
【0042】
(式(5)中、Zは炭素数2~20の直鎖状のアルキレン基または炭素数4~20の分枝状のアルキレン基のいずれかを表す。)
【0043】
本発明の組成物に含まれる共重合体において、構成単位A1は以下の式(6)で表される構成単位A2であることが好ましい。
【0044】
【0045】
(式(6)中、Y7は、置換基を有していてもよいベンゼン環、ビフェニル環、シクロヘキサン環、ビシクロヘキサン環からなる群の1種を表す。R14およびR15は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のアルコキシ基を表す。n1およびn2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。)
【0046】
本発明の組成物に含まれる共重合体を合成する方法としては、特に限定されず、当該分野で公知の重合法、例えば、溶融重合法または対応するジカルボン酸クロライドを用いる溶液重合法で合成される。これらのうち、温和な条件の重合が可能な溶液重合法が特に好ましく、具体的には、溶媒中、本発明の化合物と、構成単位Bを有する化合物または構成単位Cを有する化合物のうち少なくとも1種とを界面重縮合させればよい。
【0047】
式(1)で表される構成単位Aを含まない重合体は、光反応が進行しないため、偏光紫外線照射または斜め入射紫外線照射、および加熱処理を行っても、該重合体からなる薄膜は優れた液晶配向性を示さない。
【0048】
式(2)で表される構成単位Bおよび式(3)で表される構成単位Cを含まない重合体は、熱配向性が低いため、偏光紫外線照射または斜め入射紫外線照射、および加熱処理を行っても、該重合体からなる薄膜は優れた液晶配向性を示さない。
【0049】
本発明の組成物は熱再配向促進剤を含有する。本発明の組成物を用いて得られる光学薄膜および位相差膜は、熱再配向促進剤によって分子運動性が向上することから、耐熱温度の低い汎用の樹脂製支持基板上においても重合体の熱再配向処理が可能となる。
【0050】
本発明の組成物に含まれる熱再配向促進剤は、分子量が200以上10000以下である。分子量が200未満であるとき、高温環境時の添加剤の析出及び滲出の問題、または高温環境時の添加剤の揮発の問題が生じ、光学薄膜としての性能が維持できない。分子量が10000より大きいとき、ポリエステルの分子配向性の改善効率が悪い。本発明の熱再配向促進剤は、加熱処理時の低揮発性から、300以上10000以下であることがさらに好ましい。
【0051】
本発明の組成物における重合体と熱再配向促進剤の配合割合は、重合体80~99.99重量%、熱再配向促進剤0.01~20重量%である。高温環境時の熱再配向促進剤の析出及び滲出の問題からさらに好ましくは重合体85~99.9重量%、熱再配向促進剤0.1~15重量%、熱再配向促進効率の観点から特に好ましくは重合体85~99.0重量%、熱再配向促進剤1.0~15重量%である。本発明において、熱再配向促進剤の割合が0.01重量%未満であるとき、熱再配向性促進が困難となり、20重量%より大きいとき、熱再配向促進剤の析出や滲出が起こりやすい。
【0052】
本発明の熱再配向促進剤としては、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤などが例示される。
【0053】
可塑剤としてカルボン酸エステル、リン酸エステル、ポリマー系可塑剤等が挙げられる。
【0054】
カルボン酸エステルの具体例として、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、クエン酸エステル、オレイン酸エステル、リシノール酸エステル、セバチン酸エステル、ステアリン酸エステル、アジピン酸エステル、エポキシ化エステル等を挙げることが出来る。
【0055】
ポリマー系可塑剤の具体例として、ポリエステル系可塑剤、ポリエーテル系可塑剤等を挙げることが出来る。
【0056】
本発明の熱再配向促進剤は、可塑剤であることが好ましい。
【0057】
本発明の熱再配向促進剤として挙げられるフタル酸エステルとは下記式(7)で示される構造を含む分子量200以上10000以下のものを指す。
【0058】
【0059】
(式(7)中、R19およびR20は、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、脂環式炭化水素、芳香環、複素環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。加熱処理時の低揮発性から、R19およびR20は、それぞれ独立に、炭素数2以上であることが好ましい。)
【0060】
本発明の熱再配向促進剤として挙げられるトリメリット酸エステルとは下記式(8)で示される構造を含む分子量200以上10000以下のものを指す。
【0061】
【0062】
(式(8)中、R21~R23は、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、脂環式炭化水素、芳香環、複素環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。)
【0063】
本発明の熱再配向促進剤として挙げられるピロメリット酸エステルとは下記式(9)で示される構造を含む分子量200以上10000以下のものを指す。
【0064】
【0065】
(式(9)中、R24~R27は、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、脂環式炭化水素、芳香環、複素環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。)
【0066】
本発明の熱再配向促進剤として挙げられるクエン酸エステルとは下記式(10)で示される構造を含む分子量200以上10000以下のものを指す。
【0067】
【0068】
(式(10)中、R28~R30は、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、脂環式炭化水素、芳香環、複素環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。R31は、水素原子、炭素数1~20のアセチル基、炭素数1~20のアルキル基、脂環式炭化水素、芳香環、複素環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。)
【0069】
本発明の熱再配向促進剤として挙げられるオレイン酸エステルとは下記式(11)で示される構造を含む分子量200以上10000以下のものを指す。
【0070】
【0071】
(式(11)中、R32は、炭素数1~20のアルキル基、脂環式炭化水素、芳香環、複素環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。)
【0072】
本発明の熱再配向促進剤として挙げられるリシノール酸エステルとは下記式(12)で示される構造を含む分子量200以上10000以下のものを指す。
【0073】
【0074】
(式(12)中、R33は、炭素数1~20のアルキル基、脂環式炭化水素、芳香環、複素環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。R34は、水素原子、炭素数1~20のアセチル基、炭素数1~20のアルキル基、脂環式炭化水素、芳香環、複素環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。)
【0075】
本発明の熱再配向促進剤として挙げられるセバシン酸エステルとは下記式(13)で示される構造を含む分子量200以上10000以下のものを指す。
【0076】
【0077】
(式(13)中、R35およびR36は、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、脂環式炭化水素、芳香環、複素環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。)
【0078】
本発明の熱再配向促進剤として挙げられるステアリン酸エステルとは下記式(14)で示される構造を含む分子量200以上10000以下のものを指す。
【0079】
【0080】
(式(14)中、R37は、炭素数1~20のアルキル基、脂環式炭化水素、芳香環、複素環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。)
【0081】
本発明の熱再配向促進剤として挙げられるアジピン酸エステルとは下記式(15)で示される構造を含む分子量200以上10000以下のものを指す。
【0082】
【0083】
(式(15)中、R38およびR39は、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、脂環式炭化水素、芳香環、複素環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。加熱処理時の低揮発性から、R38およびR39は、それぞれ独立に、炭素数2以上であることが好ましい。)
【0084】
本発明の熱再配向促進剤として挙げられるエポキシ化エステルとは、分子量が200以上であり、エポキシ基およびエステル結合を1つ以上有していれば特に制限はなく、例えば、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジ2-エチルヘキシル、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジ(9,10-エポキシステアリル)、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化脂肪酸イソブチル、エポキシ化脂肪酸2-エチルヘキシル等を挙げることが出来る。
【0085】
リン酸エステルとしては下記式(16)で示される化合物を挙げることができる。
【0086】
【0087】
(式(16)中、R40~R42は、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、脂環式炭化水素、芳香環、複素環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。加熱処理時の低揮発性から、R40~R42は、それぞれ独立に、炭素数3以上であることが好ましい。)
【0088】
本発明の熱再配向促進剤として挙げられるポリエステル系可塑剤とは下記式(17)で示される構成単位を含む重合体であり、分子量200以上10000以下のものを指す。
【0089】
【0090】
(式(17)中、R43およびR44は、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、脂環式炭化水素、芳香環、複素環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。)
【0091】
本発明の熱再配向促進剤として挙げられるポリエーテル系可塑剤とは下記式(18)で示される構成単位を含む重合体であり、分子量200以上10000以下のものを指す。
【0092】
【0093】
(式(18)中、R45は、炭素数1~20のアルキル基、脂環式炭化水素、芳香環、複素環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。)
【0094】
酸化防止剤として、例えば、フェノ-ル系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、ビタミンE系酸化防止剤、その他酸化防止剤が挙げられる。
【0095】
本発明の熱再配向促進剤は酸化防止剤であることが好ましい。
【0096】
本発明の熱再配向促進剤として挙げられるフェノール系酸化防止剤とは下記式(19)で示される構造を含む分子量200以上10000以下のものを指す。
【0097】
【0098】
(式(19)中、R50、R51のうち、少なくとも一方は、炭素数2~20の2級アルキル基、炭素数2~20の3級アルキル基、炭素数6~20のチオエーテル基、脂環式炭化水素、芳香環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよく、もう一方は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のチオエーテル基、脂環式炭化水素、芳香環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。これらの構造は特に限定しないが、入手性の観点から、tert-ブチル基が特に好ましい。R48~R50は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、脂環式炭化水素、芳香環、複素環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。)
【0099】
本発明の熱再配向促進剤として挙げられるフェノール系酸化防止剤は、式(19)で示されるものに限定されず、例えば、ガルビノキシルフリーラジカル、3,3’,5,5’-テトラ-tert-ブチル-4,4’-スチルベンキノン、4-(ヘキシルオキシ)-2,3,6-トリメチルフェノール等も挙げられる。
【0100】
本発明の熱再配向促進剤として挙げられるアミン系酸化防止剤とは下記式(20)で示される構造を含む分子量200以上10000以下のものを指す。
【0101】
【0102】
(式(20)中、Ar3は、炭素原子、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選ばれる原子を環構成原子とする、芳香環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる環を表し、これらの芳香環、多環式芳香環及び縮環式芳香環は、置換基を有していてもよい。R51は、炭素数1~20のアルキル基、脂環式炭化水素、芳香環、複素環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。加熱処理時の低揮発性から、R51は炭素数9以上であることが好ましい。)
【0103】
本発明の熱再配向促進剤として挙げられるアミン系酸化防止剤は、式(20)で示されるものに限定されず、例えば、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)等も挙げられる。
【0104】
本発明の熱再配向促進剤として挙げられるリン系酸化防止剤とは下記式(21)で示される構造を含む分子量200以上10000以下のものを指す。
【0105】
【0106】
(式(21)中、R52およびR53は、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、脂環式炭化水素、芳香環、複素環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。R54は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、脂環式炭化水素、芳香環、複素環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。加熱処理時の低揮発性から、R52、R53およびR54は、それぞれ独立に、炭素数3以上であることが好ましい。)
【0107】
本発明の熱再配向促進剤として挙げられる硫黄系酸化防止剤とは下記式(22)で示される構造を含む分子量200以上10000以下のものを指す。
【0108】
【0109】
(式(22)中、R55は、炭素数1~20のアルキル基、脂環式炭化水素、複素環、芳香環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。R56は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、脂環式炭化水素、芳香環、複素環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。加熱処理時の低揮発性から、R55およびR56は、それぞれ独立に、炭素数6以上であることが好ましい。)
【0110】
光安定剤として、例えば、ヒンダ-ドアミン系光安定剤が挙げられる。
【0111】
本発明の熱再配向促進剤は光安定剤であることが好ましい。
【0112】
本発明の熱再配向促進剤として挙げられるヒンダードアミン系光安定剤とは下記式(23)で示される構成単位を有する分子量200以上10000以下のものを指す。
【0113】
【0114】
(式(23)中、Y8は、-O-、-CO-、-NR57-からなる群の1種を表す。ここで、R57は水素原子または炭素数1~5のアルキル基からなる群の1種を表す。R58~R61は、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、脂環式炭化水素、複素環、芳香環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。これらの中でも、入手性の観点からメチル基が特に好ましい。R62は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、脂環式炭化水素原子、芳香環、複素環、多環式芳香環、又は縮環式芳香環からなる群より選ばれる1種を表し、これらは、置換基、不飽和結合のいずれかを有していてもよい。)
【0115】
これら各種添加剤の中でも、入手が容易で樹脂との相溶性が良く、樹脂に添加後も熱再配向促進性が特に優れているため、可塑剤が好ましい。これらの熱再配向促進剤は1種でもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0116】
本発明の熱再配向促進剤は、熱再配向性を向上させる目的の他に、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水蒸気透過率低減、熱安定性向上、耐候性向上等の目的で添加されてもよい。
【0117】
本発明の樹脂組成物は、発明の主旨を超えない範囲で、その他ポリマー、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、顔料、染料、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤等を含有していてもよい。
【0118】
本発明の樹脂組成物は、光反応性基を有するポリエステル樹脂、熱再配向促進剤(以下、樹脂等という)をブレンドすることにより得ることができる。
【0119】
ブレンドの方法としては、溶融ブレンド、溶液ブレンド等の方法を用いることができる。溶融ブレンド法とは、加熱により樹脂等を溶融させて混練することにより製造する方法である。溶液ブレンド法とは樹脂等を溶剤に溶解しブレンドする方法である。溶液ブレンドに用いる溶剤としては、例えば、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族溶剤;シクロペンタノン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;メタノ-ル、エタノ-ル、プロパノ-ル等のアルコ-ル溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエ-テル溶剤;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等を用いることができる。樹脂等を溶剤に溶解したのちブレンドすることも可能であり、各樹脂の粉体、ペレット等を混練後、溶剤に溶解させることも可能である。得られたブレンド樹脂溶液を貧溶剤に投入し、樹脂組成物を析出させることも可能であり、またブレンド樹脂溶液のまま光学フィルムの製造に用いることも可能である。
【0120】
本発明の組成物は、発明の主旨を越えない範囲で、その他高分子、結晶核剤、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、無機フィラ-、顔料、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤等を配合してもよい。
【0121】
本発明の組成物は薄膜の形状にして使用することができる。これにより光学特性を発現し、光学薄膜(以下、「本発明の薄膜」という。)として使用することができる。薄膜を製造する方法については特に制限はなく、例えば、溶融製膜法、溶液キャスト法等の方法が挙げられる。
【0122】
(溶融製膜法)
溶融製膜する方法は、具体的にはTダイを用いた溶融押出法、カレンダ-成形法、熱プレス法、共押出法、共溶融法、多層押出、インフレ-ション成形法等があり、特に限定されない。
【0123】
(溶液キャスト法)
溶液キャスト法は、組成物を溶媒に溶解した溶液(以下、「キャスト用ド-プ」という。)を支持基板上に流延した後、加熱等により溶媒を除去して薄膜を得る方法である。その際、キャスト用ド-プを支持基板上に流延する方法としては、スピンコート法、Tダイ法、ドクタ-ブレ-ド法、バ-コ-タ-法、ロ-ルコ-タ-法、リップコ-タ-法等が用いられる。特に工業的にはダイからキャスト用ド-プをベルト状またはドラム状の支持基板に連続的に押し出す方法が最も一般的である。用いられる支持基板としては、例えば、ガラス基板、ステンレスやフェロタイプ等の金属基板、ポリエチレンテレフタレ-ト、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド等のフィルム等がある。
【0124】
本発明の薄膜を用いた光学薄膜は、光学部材の薄膜化への適合性の観点から、厚みが0.01~20μmであることが好ましく、膜厚歩留まりの観点から1~20μmが特に好ましい。
【0125】
(界面活性剤)
本発明の薄膜は、膜厚むらを低減させるために界面活性剤を少なくとも1種類以上含有してもよい。含有することができる界面活性剤としては、アルキルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルリン酸塩、フルオロアルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン誘導体、フルオロアルキルエチレンオキシド誘導体、ポリエチレングリコール誘導体、アルキルアンモニウム塩、フルオロアルキルアンモニウム塩類等をあげることができ、特に含フッ素界面活性剤が好ましい。
【0126】
前記したように、本発明の薄膜は光学薄膜として好適に使用することができ、特に位相差を発現することから、位相差膜として好適に使用することができる。
【0127】
本発明の薄膜は、紫外線を照射することで位相差を発現する。紫外線は、偏光紫外線または斜め入射紫外線であってもよい。この際、紫外線の波長は200nm以上400nm以下であることが好ましく、ランプの取り扱い上の観点から248nm以上365nm以下であることが特に好ましい。照射エネルギー量としては10mJ/cm2以上10000mJ/cm2以下であることが好ましく、生産性の観点から、10mJ/cm2以上5000mJ/cm2以下であることが特に好ましい。
【0128】
本発明の薄膜は、前記紫外線照射を行った後で、さらに熱処理を行う。これにより位相差を発現する。樹脂フィルム支持基板の耐熱性の観点から、熱処理温度は50℃以上200℃以下が好ましい。
【0129】
本発明の薄膜は、偏光紫外線照射または斜め入射紫外線照射を行い、さらに加熱処理を行うことで、三次元屈折率異方性を発現させ、位相差膜として用いることができる。
【0130】
本発明の薄膜を用いた光学薄膜の位相差特性は、目的とする位相差膜により異なるものであり、例えば、下記式(A)で示される10μm換算での面内位相差(Re)が好ましくは80nm以上、さらに好ましくは100~10000nm、特に好ましくは100~5000nmであるもの等が挙げられる。このときの位相差特性は試料傾斜型自動複屈折計(AXOMETRICS社製、商品名:AxoScan)を用い、測定波長589nmの条件で測定されるものである。
Re=(ny-nx)×d (A)
(式中、nxは面内の進相軸方向の屈折率を示し、nyは面内の遅相軸方向の屈折率を示し、dは厚みを示す。)
【0131】
本発明の薄膜は位相差を発現することから、位相差膜として使用することができる。位相差膜として使用する場合は、単膜で用いてもよく、他の膜を積層させた複層膜として使用してもよい。本発明の薄膜に積層される膜としては、本発明の薄膜でもよいし、重合性液晶膜、スパッタ膜、ポリエチレンテレフタレ-ト、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド等の樹脂フィルムでもよい。
【0132】
本発明の薄膜は膜上の液晶化合物を配向させることから、液晶配向膜として用いることができる。
【実施例0133】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0134】
<核磁気共鳴スペクトルの測定>
核磁気共鳴装置(日本電子製、商品名:ECZ 400S)を用いて、1H-NMRスペクトルを測定した。
【0135】
<偏光紫外線照射>
バンドパスフィルター(248nm)を組み込んだ水銀光源(朝日分光製、商品名:REX-250)を用いて紫外線を照射した。偏光紫外線を照射する場合は、対応する波長の偏光ビームスプリッターにてP偏光のみを照射した。
【0136】
<加熱処理>
無酸化雰囲気恒温器イナートオーブン(ESPEC製、商品名:IPHH-202)のいずれかを用いて、加熱処理を行った。
【0137】
<位相差特性の測定>
試料傾斜型自動複屈折計(AXOMETRICS社製、商品名:AxoScan)を用いて、波長589nmの光を用いて位相差膜の位相差特性を測定した。
【0138】
<薄膜の膜厚測定>
分光エリプソメーター(J.A. Woollam社製、商品名:RC2-U)を用いて、薄膜の膜厚を測定した。
【0139】
<偏光顕微鏡観察>
顕微鏡(オリンパス製、商品名:BX53)、偏光用コンデンサ(オリンパス製、商品名:U-POC-2)、アナライザ(オリンパス製、商品名:U-AN360P-2)を用いて、薄膜上の低分子液晶を観察し、液晶配向性を観察した。
【0140】
<合成例1>
Chinese Journal of chemistry, 23, 1523, 2005. に記載の方法で、フェノール部位を保護したテトラヒドロピラニル-クマル酸(10g、40.3mmmol)とtrans-シクロヘキサンジオール(2.29g、19.7mmol)、塩基触媒として4-ジメチルアミノピリジン(2.5g)を脱水ジクロロメタン(100ml)に窒素気流下0℃にて溶解させた。これに1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(8.49g、44.3mmmol)を加え、室温へ戻して一晩反応させた。水を加えて反応を停止させ、溶媒を減圧留去した。
残滓をテトラヒドロフラン(200ml)に再溶解し、2N 塩化水素(40ml)を加え、室温にて二時間撹拌した。沈殿物をろ過して化合物1 6.74gを得た。1H-NMRスペクトルの結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,(CD3)2SO):δ7.53-7.49(m,6H),6.76-6.73(m,4H),6.38-6.31(m,2H),4.79(brs,2H),1.94(brs,4H),1.54(brs,4H).
(化合物1)
【0141】
【0142】
<合成例2>
窒素気流下、4-メトキシ-N-メチルアニリン(3.00g, 21.9mmol)、テトラヒドロフラン(20mL)、水(20mL)の混合物を氷冷した後、炭酸水素ナトリウム(11g)を加えた。混合物を撹拌しながら、テレフタル酸クロリド(2.17g,10.7mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液をゆっくりと加え、3時間氷冷下で撹拌した。反応混合物に水(500mL)を加え、生じた固体をろ取した後、2N塩酸(200mL)、メタノール(300mL)にて洗浄することでN,N’-ビス(4-メトキシフェニル)-N,N’-ジメチル-1,4-ベンゼンジカルボキシアミド(3.91g,収率:90%)を得た。1H-NMRスペクトルの結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,(CD3)2SO):δ7.07(s,4H),6.83(d,J=8.0Hz,4H),6.67(d,J=8.0Hz,4H),3.73(s,6H),3.38(s,6H).
上記にて得たN,N’-ビス(4-メトキシフェニル)-N,N’-ジメチル-1,4-ベンゼンジカルボキシアミド(1.00g,2.47mmol)をジクロロメタン(25mL)に溶解した後、氷冷下にて1mol/L三臭化ほう素ジクロロメタン溶液(7.4mL)を5分かけて加えた。反応系を室温まで昇温させた後、15時間撹拌し、反応混合物を氷冷した水(300mL)に加えた。系中に生じた固体をろ取し、水(500mL)で洗浄することで化合物2の褐色固体(776mg,83%)を得た。1H-NMRスペクトルの結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,(CD3)2SO):δ9.55-9.28(br,2H),6.98(s,4H),6.87-6.67(m,4H),6.58-6.49(m,4H),3.20(s,6H).
(化合物2)
【0143】
【0144】
<合成例3>
滴下漏斗を具備した三口フラスコに、イオン交換水(18.5mL)を取り、化合物1(0.160g、0.392mmol)と化合物2(1.24g、3.29mmol)と水酸化ナトリウム(0.300g、7.50mmol)を溶解させ撹拌した。触媒として臭化テトラn-ブチルアンモニウムの2.0重量%水溶液(1.5mL)を加え、装置内を窒素置換した。クロロホルム(18.5mL)に化合物3(0.773g、3.70mmol)を溶解させた溶液を滴下漏斗に取り、滴下した後、常温で三時間撹拌した。反応後の溶液をメタノールへ投入し、沈殿物をろ別した後、真空乾燥して重合体1を得た(収率88%)。
(化合物3)
【0145】
【0146】
[実施例1]
4.5重量%の重合体1と熱再配向促進剤としてフタル酸ジブチル(分子量:278)0.5重量%を、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール95重量%へ溶解した。これを石英ガラス基板上に流延して6000rpmで60秒間スピンコートし、オーブン中60℃で60分乾燥させ薄膜(膜厚0.847μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、150℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0147】
[実施例2]
5.0重量%の重合体1と熱再配向促進剤としてフタル酸ジトリデシル(分子量:531)0.56重量%を、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール94.44重量%へ溶解した。これを石英ガラス基板上に流延して6000rpmで60秒間スピンコートし、オーブン中60℃で60分乾燥させ薄膜(膜厚0.941μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0148】
[実施例3]
熱再配向促進剤としてイソフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(分子量:391)を用いたこと以外は実施例2と同様にして薄膜(膜厚0.916μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0149】
[実施例4]
熱再配向促進剤としてトリメリット酸トリブチル(分子量:378)を用いたこと以外は実施例1と同様にして薄膜(膜厚0.714μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、150℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0150】
[実施例5]
熱再配向促進剤としてトリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)(分子量:547)を用いたこと以外は実施例2と同様にして薄膜(膜厚0.955μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0151】
[実施例6]
熱再配向促進剤としてクエン酸トリエチル(分子量:276)を用いたこと以外は実施例1と同様にして薄膜(膜厚0.851μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、150℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0152】
[実施例7]
熱再配向促進剤としてO-ブチリルクエン酸トリヘキシル(分子量:514)を用いたこと以外は実施例2と同様にして薄膜(膜厚0.879μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0153】
[実施例8]
熱再配向促進剤としてリン酸トリブチル(分子量:266)を用いて、4000rpmでスピンコートしたこと以外は実施例1と同様にして薄膜(膜厚0.881μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0154】
[実施例9]
熱再配向促進剤としてリン酸トリス(2-クロロエチル)(分子量:285)を用いて、4000rpmでスピンコートしたこと以外は実施例1と同様にして薄膜(膜厚0.867μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0155】
[実施例10]
熱再配向促進剤としてリン酸トリアミル(分子量:308)を用いて、4000rpmでスピンコートしたこと以外は実施例1と同様にして薄膜(膜厚0.902μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0156】
[実施例11]
熱再配向促進剤としてリン酸トリフェニル(分子量:326)を用いて、4000rpmでスピンコートしたこと以外は実施例1と同様にして薄膜(膜厚0.899μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0157】
[実施例12]
熱再配向促進剤としてリン酸2-エチルヘキシルジフェニル(分子量:362)を用いて、4000rpmでスピンコートしたこと以外は実施例1と同様にして薄膜(膜厚0.945μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0158】
[実施例13]
熱再配向促進剤としてリン酸トリ-о-クレジル(分子量:368)を用いて、4000rpmでスピンコートしたこと以外は実施例1と同様にして薄膜(膜厚0.879μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0159】
[実施例14]
4.95重量%の重合体1と熱再配向促進可塑剤としてリン酸トリクレジル(分子量:368)0.05重量%を、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール95重量%へ溶解した。これを石英ガラス基板上に流延して4000rpmで60秒間スピンコートし、オーブン中60℃で60分乾燥させ薄膜(膜厚1.022μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0160】
[実施例15]
熱再配向促進可塑剤としてリン酸トリクレジル(分子量:368)を用いて、6000rpmでスピンコートしたこと以外は実施例2と同様にして薄膜(膜厚0.911μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0161】
[実施例16]
4重量%の重合体1と熱再配向促進可塑剤としてリン酸トリクレジル(分子量:368)1重量%を、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール95重量%へ溶解した。これを石英ガラス基板上に流延して5000rpmで60秒間スピンコートし、オーブン中60℃で60分乾燥させ薄膜(膜厚0.752μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0162】
[実施例17]
熱再配向促進可塑剤としてリン酸トリス(2-ブトキシエチル)(分子量:398)を用いて、4000rpmでスピンコートしたこと以外は実施例1と同様にして薄膜(膜厚0.881μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0163】
[実施例18]
熱再配向促進可塑剤としてリン酸トリス(1,3-ジクロロ-2-プロピル)(分子量:431)を用いて、4000rpmでスピンコートしたこと以外は実施例1と同様にして薄膜(膜厚0.901μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0164】
[実施例19]
熱再配向促進可塑剤としてリン酸トリス(2-エチルヘキシル)(分子量:435)を用いて、4000rpmでスピンコートしたこと以外は実施例1と同様にして薄膜(膜厚0.967μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0165】
[実施例20]
熱再配向促進可塑剤として4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジオクチル(分子量:451)を用いたこと以外は実施例2と同様にして薄膜(膜厚0.945μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0166】
[実施例21]
熱再配向促進可塑剤としてアデカサイザー P-300(分子量:3000、アジピン酸系ポリエステル)を用いて、2000rpmでスピンコートしたこと以外は実施例1と同様にして薄膜(膜厚1.113μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0167】
[実施例22]
熱再配向促進可塑剤としてIrganox(登録商標) 245(ビス[3―(3-tert―ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)])(分子量:587)を用いたこと以外は実施例14と同様にして薄膜(膜厚0.952μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0168】
[実施例23]
熱再配向促進可塑剤としてIrganox(登録商標) 245(ビス[3―(3-tert―ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)])(分子量:587)を用いて、4000rpmでスピンコートしたこと以外は実施例1と同様にして薄膜(膜厚0.915μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0169】
[実施例24]
4.25重量%の重合体1と熱再配向促進可塑剤としてIrganox(登録商標) 245(ビス[3―(3-tert―ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)])(分子量:587)0.75重量%を、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール95重量%へ溶解した。これを石英ガラス基板上に流延して4000rpmで60秒間スピンコートし、オーブン中60℃で60分乾燥させ薄膜(膜厚0.936μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0170】
[実施例25]
4.5重量%の重合体1と熱再配向促進可塑剤として4,4‘-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(分子量:406)0.5重量%を、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム=4/1(重量比)溶液95重量%へ溶解し、2000rpmでスピンコートしたこと以外は実施例1と同様にして薄膜(膜厚1.337μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0171】
[実施例26]
熱再配向促進可塑剤として亜リン酸イソデシル(分子量:503)を用いて、2000rpmでスピンコートしたこと以外は実施例1と同様にして薄膜(膜厚1.127μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0172】
[実施例27]
熱再配向促進可塑剤として3,3‘-チオジプロピオン酸ジドデシル(分子量:515)を用いて、2000rpmでスピンコートしたこと以外は実施例1と同様にして薄膜(膜厚1.054μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0173】
[実施例28]
熱再配向促進可塑剤としてセバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(分子量:509)を用いたこと以外は実施例14と同様にして薄膜(膜厚0.963μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0174】
[実施例29]
熱再配向促進可塑剤としてセバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(分子量:509)を用いて、4000rpmでスピンコートしたこと以外は実施例1と同様にして薄膜(膜厚0.937μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0175】
[実施例30]
熱再配向促進可塑剤としてセバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(分子量:509)を用いて、4000rpmでスピンコートしたこと以外は実施例24と同様にして薄膜(膜厚1.009μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差が発現した。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0176】
[実施例31]
1.8重量%の重合体1と熱再配向促進剤としてリン酸トリクレジル(分子量:368)0.2重量%を、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール98重量%へ溶解した。これを石英ガラス基板上に流延して6000rpmで60秒間スピンコートし、オーブン中60℃で60分乾燥させ薄膜(膜厚0.2μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、130℃にて加熱し液晶配向膜を作成した。
1.5mm×20mmに切り取った厚さ25μmのPETフィルム(東レ製、製品名:ルミラー(R)T60)2枚をスペーサーとして、本液晶配向膜が積層された石英ガラス板2枚を薄膜が内側に、かつ偏光紫外光が照射された方向が平行になるように重ね合わせ、液晶注入口エリアとなる部分を除く石英ガラス板の周辺に瞬間接着剤(東亞合成製、アロンアルフア201)で接着して液晶空セルとした。接着後、液晶空セルに50℃で加熱した4-シアノ-4‘-ペンチルビフェニルを注入し、液晶セルとした。得られた液晶セルについて、偏光顕微鏡を用いて薄膜に偏光紫外光が照射された方向に対して偏光子の角度が0°、45°、90°となるように3方向観察したところ、顕微鏡像は暗、明、暗と変化し、液晶ダイレクタが均一に整って配向していることを確認した。200℃以下の加熱処理による液晶配向膜の製造可否を表2に示す。
[本明細書において、液晶ダイレクタとは液晶性分子の長軸が配向している方向(配向主軸)のベクトルを意図する。]
【0177】
[比較例1]
5重量%の重合体1を、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール95重量%へ溶解した。これを石英ガラス基板上に流延して6000rpmで60秒間スピンコートし、オーブン中60℃で60分乾燥させ薄膜(膜厚0.954μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、140℃にて加熱したところ、高位相差は発現しなかった。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0178】
[比較例2]
4.5重量%の重合体1とフタル酸ジメチル(分子量:194)0.5重量%を、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール95重量%へ溶解した。これを石英ガラス基板上に流延して6000rpmで60秒間スピンコートし、オーブン中60℃で60分乾燥させ薄膜(膜厚0.856μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、150℃にて加熱したところ、高位相差は発現しなかった。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0179】
[比較例3]
4.5重量%の重合体1とリン酸トリメチル(分子量:140)0.5重量%を、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール95重量%へ溶解した。これを石英ガラス基板上に流延して4000rpmで60秒間スピンコートし、オーブン中60℃で60分乾燥させ薄膜(膜厚0.867μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、150℃にて加熱したところ、高位相差は発現しなかった。膜厚10μm換算の位相差量を表1に示す。
【0180】
[比較例4]
2重量%の重合体1を、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール98重量%へ溶解した。これを石英ガラス基板上に流延して7000rpmで60秒間スピンコートし、オーブン中60℃で60分乾燥させ薄膜(膜厚0.2μm)を得た。得られた薄膜に248nmの偏光紫外光を500mJ/cm2照射した後、130℃にて加熱し薄膜を作成した。
1.5mm×20mmに切り取った厚さ25μmのPETフィルム(東レ製、製品名:ルミラー(R)T60)2枚をスペーサーとして、本薄膜が積層された石英ガラス板2枚を薄膜が内側に、かつ偏光紫外光が照射された方向が平行になるように重ね合わせ、液晶注入口エリアとなる部分を除く石英ガラス板の周辺に瞬間接着剤(東亞合成製、アロンアルフア201)で接着して液晶空セルとした。接着後、液晶空セルに50℃で加熱した4-シアノ-4‘-ペンチルビフェニルを注入し、液晶セルとした。得られた液晶セルについて、偏光顕微鏡を用いて薄膜に偏光紫外光が照射された方向に対して偏光子の角度が0°、45°、90°となるように3方向観察したところ、顕微鏡像は常に明るいままであり、液晶ダイレクタが均一に整って配向していないことを確認した。200℃以下の加熱処理による液晶配向膜の製造可否を表2に示す。
【0181】
実施例31の薄膜に、偏光紫外光の照射と200℃以下の加熱処理を行うことにより、液晶配向膜として使用できることは比較例4との比較によってより顕著となる。
【0182】
【0183】