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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187944
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】放送エリア算出装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/318 20150101AFI20221213BHJP
   H04H 60/32 20080101ALI20221213BHJP
【FI】
H04B17/318
H04H60/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096218
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】日浦 人誌
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】丸本 雅人
(72)【発明者】
【氏名】岡 章
(57)【要約】
【課題】地上デジタル放送を受信可能なエリアを精度高くかつ高速に算出する。
【解決手段】放送エリア算出装置1-1の放送エリア算出部17の前処理部30は、送信点を基準として水平360度の対象方向hoko毎に、自由空間伝搬損失を考慮した最大距離kyori2を算出する。最大地点設定部31は、空中線利得を考慮した最大距離kyoriを算出し、プロフィール点毎の電界Eを算出し、遠方から送信点へ向けて、電界Eが所要電界min_se以上となる最大地点max_ptを設定する。放送エリア算出部17は、最大地点max_ptをエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoに設定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上デジタル放送を受信可能な放送エリアを算出する放送エリア算出装置において、
放送局の送信点を基準として、水平360度を所定角度毎に区切った対象方向hoko毎に、所定の所要電界min_seを満たす前記放送エリアのエリア頂点群の緯度及び経度を、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoとして算出する放送エリア算出部を備え、
前記放送エリア算出部は、
前記放送局のアンテナから送信される電波の実効輻射電力である送信点実効輻射電力ERP及び前記所要電界min_seに基づいて、自由空間伝搬による受信点の最大距離kyori2を算出する前処理部と、
前記前処理部により算出された前記最大距離kyori2に対応する受信点を仮想受信点として、前記送信点から前記仮想受信点までの間のプロフィール点毎の電界Eを算出し、
前記仮想受信点から前記送信点へ向けて、前記プロフィール点毎に、前記電界Eが前記所要電界min_se以上であるか否かを判定し、最初に前記電界Eが前記所要電界min_se以上であると判定した前記プロフィール点を最大地点max_ptに設定する最大地点設定部と、を備え、
前記最大地点max_ptを前記エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoに設定する、ことを特徴とする放送エリア算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放送エリア算出装置において、
さらに、最遠地点を設定する最遠地点設定部を備え、
前記最遠地点設定部は、
前記送信点から前記最大地点設定部により設定された前記最大地点max_ptへ向けて、前記電界Eが前記所要電界min_se以上となる最大幅max1を算出し、前記最大幅max1の地点における前記最大地点max_ptに最も近い前記プロフィール点を最遠地点max_pに設定し、
前記送信点から前記最遠地点max_pへ向けて、前記電界Eが前記所要電界min_se未満となる最大幅max2を算出し、前記最大幅max2の地点における前記最遠地点max_pに最も近い前記プロフィール点を最遠地点min_pに設定し、
前記最大幅max2が所定値よりも広いか否かを判定し、前記最大幅max2が所定値よりも広くないと判定した場合、前記最遠地点max_pの座標を、前記エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoとして設定し、
前記最大幅max2が所定値よりも広いと判定した場合、前記送信点から前記最遠地点min_pへ向けて、前記電界Eが前記所要電界min_se以上となる最大幅max3を算出し、前記最大幅max3の地点における前記最遠地点min_pに最も近い前記プロフィール点を前記最遠地点max_pに再設定すると共に、前記エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoに設定し、
前記最遠地点max_pから前記最大地点max_ptへ向けて、前記電界Eが前記所要電界min_se未満となる幅を順次算出し、最大となる前記幅を最大幅dspanとして設定し、前記幅が設定した前記最大幅dspanよりも大きい場合は前記最大幅dspanを更新すると共に、前記電界Eが所要電界min_se以上となる幅Aを算出し、前記幅Aが前記最大幅dspanの所定倍を超える場合に、前記幅Aの地点における前記最大地点max_ptに最も近い前記プロフィール点を、前記エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoとして設定する、ことを特徴とする放送エリア算出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の放送エリア算出装置において、
さらに、前記放送エリア算出部により算出された前記対象方向hoko毎の隣り合う所定数の前記エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoの位置を平均化する放送エリア補正部を備えたことを特徴とする放送エリア算出装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の放送エリア算出装置において、
前記最大地点設定部は、
前記送信点から前記最大地点max_ptまでの間のそれぞれの前記プロフィール点について、当該プロフィール点を含む連続する複数の前記プロフィール点の前記電界Eに基づいて平均値を算出し、当該平均値を、当該プロフィール点の前記電界Eに設定する、ことを特徴とする放送エリア算出装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の放送エリア算出装置において、
前記最大地点設定部は、
前記放送局のアンテナの垂直方向の所定角度j毎に空中線指向性ant_lossを算出し、空中線の利得が最大となる前記空中線指向性ant_lossを空中線指向性a_lossとし、前記最大距離kyori2及び前記空中線指向性a_lossに基づいて、最大距離kyoriを算出し、
前記最大距離kyori2の代わりに前記最大距離kyoriを用いて、前記最大距離kyoriに対応する受信点を前記仮想受信点とし、前記最大地点max_ptを設定する、ことを特徴とする放送エリア算出装置。
【請求項6】
請求項3に記載の放送エリア算出装置において、
さらに、所定サイズのメッシュ毎の土地利用データを記憶した土地利用データ記憶部を備え、
前記放送エリア補正部は、
前記土地利用データ記憶部から、前記補正した前記エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoの位置の前記土地利用データを読み出し、前記土地利用データが海域である場合、前記エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoが示す前記エリア頂点が前記海域の前記メッシュ内に入らないように、前記補正した前記エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoの位置を前記送信点側へ移動させる、ことを特徴とする放送エリア算出装置。
【請求項7】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の放送エリア算出装置において、
さらに、所定サイズのメッシュ毎の土地利用データを記憶した土地利用データ記憶部を備え、
前記最大地点設定部は、
前記土地利用データ記憶部から、前記送信点から前記仮想受信点までの間の前記プロフィール点の前記土地利用データを読み出し、前記プロフィール点の前記土地利用データが海域であるか否かを判定し、
前記土地利用データが前記海域でない場合の前記プロフィール点について前記電界Eを算出する、ことを特徴とする放送エリア算出装置。
【請求項8】
放送局の送信点を基準として、水平360度を所定角度毎に区切った対象方向hoko毎に、所定の所要電界min_seを満たす放送エリアのエリア頂点群の緯度及び経度を、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoとして算出する放送エリア算出装置を構成するコンピュータを、
前記放送局のアンテナから送信される電波の実効輻射電力である送信点実効輻射電力ERP及び前記所要電界min_seに基づいて、自由空間伝搬による受信点の最大距離kyori2を算出する前処理部、及び、
前記前処理部により算出された前記最大距離kyori2に対応する受信点を仮想受信点として、前記送信点から前記仮想受信点までの間のプロフィール点毎の電界Eを算出し、
前記仮想受信点から前記送信点へ向けて、前記プロフィール点毎に、前記電界Eが前記所要電界min_se以上であるか否かを判定し、最初に前記電界Eが前記所要電界min_se以上であると判定した前記プロフィール点を最大地点max_ptに設定する最大地点設定部として機能させ、
前記最大地点max_ptを前記エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoに設定する、ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上デジタル放送を受信可能なエリアを算出する放送エリア算出装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地上デジタル放送の受信点の電界強度は、直接波、反射波及び回折波を合成することにより算出される。反射地点の電気定数は田、畑、海等によって異なり、反射波の電界強度は、反射地点の電気定数による反射係数に依存する。そのため、受信点での直接波及び反射波の合成電界は、反射地点での土地利用状況に応じて異なり、送受信点間の距離及び海抜高だけでなく、反射地点の土地利用状況も考慮する必要がある。
【0003】
また、反射地点と受信点との間に高い山または建物等の遮蔽物がある場合には、反射波を考慮しなくてよい一方で、遮蔽物での回折波を考慮し、直接波及び回折波の合成波が受信点の電界強度となる。遮蔽物の海抜高が送信点と受信点を結ぶ直線上の海抜高よりも高い場合、見通し外となり、直接波は受信点に到達しないため、回折波のみによる受信点での電界強度を計算する必要がある。
【0004】
加えて、回折波のみの計算の場合にも、回折点を送信点とみなし、再度、直接波と反射波を求め、受信点の電界強度を計算する必要があり、この計算は回折の発生回数だけ実施する必要がある。
【0005】
これより、受信点での電界強度は、送信点から受信点までの間の伝搬路の状況に応じて異なるため、前述の条件を考慮して計算した場合には、近接する受信点においても電界強度が大きく異なる可能性がある。
【0006】
このような電界強度を算出するためには、郵政省告示第640号(非特許文献1)に記載されたミリントン(Millington)法(例えば、非特許文献2を参照)が広く利用されている。また、この手法を用いた中波放送のサービスエリア計算手法が報告されている(例えば、非特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“無線局免許手続規則第七条第二項の規定に基づく放送区域等を計算による電界強度に基づいて定める場合における当該電界強度の算出の方法”、[online]、郵政省告示第六百四十号、[令和2年6月15日検索]、インターネット<URL:https://www.tele.soumu.go.jp/horei/reiki_honbun/a720730001.html>
【非特許文献2】Rec. ITU-R P.368-9 Annex 2、“GROUND-WAVE PROPAGATION CURVES FOR FREQUENCIES BETWEEN 10 kHz AND 30 MHz”、2007.
【非特許文献3】岡本他、“中波放送サービスエリアの自動計算”、2001年映像情報メディア学会年次大会、20-1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、実際の電波伝搬は波としての性質があるため、回り込みが行われたり、伝搬途中の建物等で複雑な反射を繰り返したりする。そのため、正確な受信電界を求めるためには、正確な地形及び建物データに加えて、波の性質を考慮した電波伝搬の計算が必要になり、計算時間が非常にかかるという課題がある。
【0009】
また、このような手順で受信電界を正確に求めようとした場合であっても、空気中の屈折率の変動によって電界値が時間変動するという課題もある。
【0010】
また、海域等の人が住んでいない地点においては、そもそも正確に電界値を求める必要がない。
【0011】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、地上デジタル放送を受信可能なエリアを精度高くかつ高速に算出可能な放送エリア算出装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、請求項1の放送エリア算出装置は、地上デジタル放送を受信可能な放送エリアを算出する放送エリア算出装置において、放送局の送信点を基準として、水平360度を所定角度毎に区切った対象方向hoko毎に、所定の所要電界min_seを満たす前記放送エリアのエリア頂点群の緯度及び経度を、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoとして算出する放送エリア算出部を備え、前記放送エリア算出部が、前記放送局のアンテナから送信される電波の実効輻射電力である送信点実効輻射電力ERP及び前記所要電界min_seに基づいて、自由空間伝搬による受信点の最大距離kyori2を算出する前処理部と、前記前処理部により算出された前記最大距離kyori2に対応する受信点を仮想受信点として、前記送信点から前記仮想受信点までの間のプロフィール点毎の電界Eを算出し、前記仮想受信点から前記送信点へ向けて、前記プロフィール点毎に、前記電界Eが前記所要電界min_se以上であるか否かを判定し、最初に前記電界Eが前記所要電界min_se以上であると判定した前記プロフィール点を最大地点max_ptに設定する最大地点設定部と、を備え、前記最大地点max_ptを前記エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoに設定する、ことを特徴とする。
【0013】
また、請求項2の放送エリア算出装置は、請求項1に記載の放送エリア算出装置において、さらに、最遠地点を設定する最遠地点設定部を備え、前記最遠地点設定部が、前記送信点から前記最大地点設定部により設定された前記最大地点max_ptへ向けて、前記電界Eが前記所要電界min_se以上となる最大幅max1を算出し、前記最大幅max1の地点における前記最大地点max_ptに最も近い前記プロフィール点を最遠地点max_pに設定し、前記送信点から前記最遠地点max_pへ向けて、前記電界Eが前記所要電界min_se未満となる最大幅max2を算出し、前記最大幅max2の地点における前記最遠地点max_pに最も近い前記プロフィール点を最遠地点min_pに設定し、前記最大幅max2が所定値よりも広いか否かを判定し、前記最大幅max2が所定値よりも広くないと判定した場合、前記最遠地点max_pの座標を、前記エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoとして設定し、前記最大幅max2が所定値よりも広いと判定した場合、前記送信点から前記最遠地点min_pへ向けて、前記電界Eが前記所要電界min_se以上となる最大幅max3を算出し、前記最大幅max3の地点における前記最遠地点min_pに最も近い前記プロフィール点を前記最遠地点max_pに再設定すると共に、前記エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoに設定し、前記最遠地点max_pから前記最大地点max_ptへ向けて、前記電界Eが前記所要電界min_se未満となる幅を順次算出し、最大となる前記幅を最大幅dspanとして設定し、前記幅が設定した前記最大幅dspanよりも大きい場合は前記最大幅dspanを更新すると共に、前記電界Eが所要電界min_se以上となる幅Aを算出し、前記幅Aが前記最大幅dspanの所定倍を超える場合に、前記幅Aの地点における前記最大地点max_ptに最も近い前記プロフィール点を、前記エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoとして設定する、ことを特徴とする。
【0014】
また、請求項3の放送エリア算出装置は、請求項1または2に記載の放送エリア算出装置において、さらに、前記放送エリア算出部により算出された前記対象方向hoko毎の隣り合う所定数の前記エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoの位置を平均化する放送エリア補正部を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項4の放送エリア算出装置は、請求項1から3までのいずれか一項に記載の放送エリア算出装置において、前記最大地点設定部が、前記送信点から前記最大地点max_ptまでの間のそれぞれの前記プロフィール点について、当該プロフィール点を含む連続する複数の前記プロフィール点の前記電界Eに基づいて平均値を算出し、当該平均値を、当該プロフィール点の前記電界Eに設定する、ことを特徴とする。
【0016】
また、請求項5の放送エリア算出装置は、請求項1から4までのいずれか一項に記載の放送エリア算出装置において、前記最大地点設定部が、前記放送局のアンテナの垂直方向の所定角度j毎に空中線指向性ant_lossを算出し、空中線の利得が最大となる前記空中線指向性ant_lossを空中線指向性a_lossとし、前記最大距離kyori2及び前記空中線指向性a_lossに基づいて、最大距離kyoriを算出し、前記最大距離kyori2の代わりに前記最大距離kyoriを用いて、前記最大距離kyoriに対応する受信点を前記仮想受信点とし、前記最大地点max_ptを設定する、ことを特徴とする。
【0017】
また、請求項6の放送エリア算出装置は、請求項3に記載の放送エリア算出装置において、さらに、所定サイズのメッシュ毎の土地利用データを記憶した土地利用データ記憶部を備え、前記放送エリア補正部が、前記土地利用データ記憶部から、前記補正した前記エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoの位置の前記土地利用データを読み出し、前記土地利用データが海域である場合、前記エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoが示す前記エリア頂点が前記海域の前記メッシュ内に入らないように、前記補正した前記エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoの位置を前記送信点側へ移動させる、ことを特徴とする。
【0018】
また、請求項7の放送エリア算出装置は、請求項1から5までのいずれか一項に記載の放送エリア算出装置において、さらに、所定サイズのメッシュ毎の土地利用データを記憶した土地利用データ記憶部を備え、前記最大地点設定部が、前記土地利用データ記憶部から、前記送信点から前記仮想受信点までの間の前記プロフィール点の前記土地利用データを読み出し、前記プロフィール点の前記土地利用データが海域であるか否かを判定し、前記土地利用データが前記海域でない場合の前記プロフィール点について前記電界Eを算出する、ことを特徴とする。
【0019】
さらに、請求項8のプログラムは、放送局の送信点を基準として、水平360度を所定角度毎に区切った対象方向hoko毎に、所定の所要電界min_seを満たす放送エリアのエリア頂点群の緯度及び経度を、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoとして算出する放送エリア算出装置を構成するコンピュータを、前記放送局のアンテナから送信される電波の実効輻射電力である送信点実効輻射電力ERP及び前記所要電界min_seに基づいて、自由空間伝搬による受信点の最大距離kyori2を算出する前処理部、及び、前記前処理部により算出された前記最大距離kyori2に対応する受信点を仮想受信点として、前記送信点から前記仮想受信点までの間のプロフィール点毎の電界Eを算出し、前記仮想受信点から前記送信点へ向けて、前記プロフィール点毎に、前記電界Eが前記所要電界min_se以上であるか否かを判定し、最初に前記電界Eが前記所要電界min_se以上であると判定した前記プロフィール点を最大地点max_ptに設定する最大地点設定部として機能させ、前記最大地点max_ptを前記エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoに設定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、地上デジタル放送を受信可能なエリアを精度高くかつ高速に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1の放送エリア算出装置の構成例を示すブロック図である。
図2】放送エリア算出装置の処理例を示すフローチャートである。
図3】放送エリア算出部の構成例を示すブロック図である。
図4】放送エリア算出部の処理例(ステップS202)を示すフローチャートである。
図5】前処理の例(ステップS402)を示すフローチャートである。
図6】対象方向等設定処理の例(ステップS403)を示すフローチャートである。
図7】処理1:遠方から送信点へ向けた最大地点設定処理の例(ステップS404)を示すフローチャートである。
図8】処理1aの例を示すフローチャートである。
図9】処理1bの例を示すフローチャートである。
図10】処理1cの例を示すフローチャートである。
図11】処理1dの例を示すフローチャートである。
図12】処理2:送信点から遠方へ向けた最遠地点設定処理の例(ステップS405)を示すフローチャートである。
図13】処理2aの例を示すフローチャートである。
図14】処理2bの例を示すフローチャートである。
図15】処理2cの例を示すフローチャートである。
図16】処理2dの例を示すフローチャートである。
図17】処理2dのステップS1602~S1608の詳細(1)を示すフローチャートである。
図18】処理2dのステップS1602~S1608の詳細(2)を示すフローチャートである。
図19】放送エリア補正部19の処理例(ステップS203)を示すフローチャートである。
図20】対象方向hoko設定処理の例(ステップS601)を説明する図である。
図21】処理1aの例を説明する図である。
図22】処理1bの例を説明する図である。
図23】処理1cの例を説明する図である。
図24】処理1dの例を説明する図である。
図25】処理2aの例を説明する図である。
図26】処理2bの例を説明する図である。
図27】処理2cの例を説明する図である。
図28】処理2dの例を説明する図である。
図29】実施例2の放送エリア算出装置の構成例を示すブロック図である。
図30】実施例2における放送エリア補正部の処理例(ステップS203に対応)を示すフローチャートである。
図31】実施例3の放送エリア算出装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。以下、地上デジタル放送の送信点から発射された電波が届き、地上デジタル放送を受信可能な受信点において、受信点の電界強度(以下、「電界」という。)が所要電界に基づいた所定条件を満たす範囲を「放送エリア」という。
【0023】
〔実施例1〕
まず、実施例1の放送エリア算出装置について説明する。実施例1の放送エリア算出装置は、送信点を基準として水平360度の対象方向毎に、自由空間伝搬損失及び空中線利得を考慮した仮想受信点を求めてプロフィール点毎の電界Eを算出し、遠方から送信点へ向けた処理にて最大地点max_ptを設定し、送信点から遠方へ向けた処理にて最遠地点max_p,min_pを設定し、電界E及び所要電界min_seの比較処理にて、放送エリアを算出することを特徴とする。実施例1によれば、放送エリアを精度高くかつ高速に算出することができる。
【0024】
図1は、実施例1の放送エリア算出装置の構成例を示すブロック図であり、図2は、放送エリア算出装置の処理例を示すフローチャートである。この放送エリア算出装置1-1は、所要電界入力部10、定数記憶部11、送信点情報記憶部12、地形高データ記憶部13、土地反射係数記憶部14、土地利用データ記憶部15、土地反射係数算出部16、放送エリア算出部17、放送エリア情報記憶部18、放送エリア補正部19及び放送エリア描画部20を備えている。
【0025】
所要電界入力部10は、ユーザの操作に従い、放送エリアを算出するための基準となる2つの所要電界syoyou_e,syoyou_e2を入力する機能、及び放送エリアを算出する処理を開始する指示を入力する機能を有する。所要電界入力部10は、ユーザの操作に従って入力した所要電界syoyou_e,syoyou_e2及び開始指示を放送エリア算出部17に出力する。ここで、所要電界入力部10は、2つの所要電界syoyou_e,syoyou_e2を入力するようにしたが、2つの所要電界syoyou_e,syoyou_e2のうちの1つ以上を入力できればよい。
【0026】
定数記憶部11には、角度方向ステップ数hoko_stepの定数が記憶されている。角度方向ステップ数hoko_stepは、送信点を基準にした1回転の360度において、放送エリアが算出される方向を定める際の角度の単位を示す。例えば、角度方向ステップ数hoko_step=2[度]が用いられ、この場合、360度に対して2度毎の方向について、放送エリアが算出される。角度方向ステップ数hoko_stepは、ユーザにより予め設定されるか、または外部の手段により格納される。
【0027】
送信点情報記憶部12には、計算対象の放送局(以下、「送信点」という。)の緯度経度、空中線高(送信点高さsend_h)、空中線利得、送信点実効輻射電力ERP等の送信点情報が記憶されている。送信点情報は、ユーザにより予め設定されるか、または外部の手段により格納される。送信点実効輻射電力ERPは、放送局のアンテナから送信される電波の実効電力である。
【0028】
地形高データ記憶部13には、所定サイズ(例えば5[m]四方、10[m]四方、50[m]四方)でメッシュ状に区切られた(メッシュ毎の)地形の高さ(地形高データ)が記憶されている。所定サイズのメッシュ毎の地形高データは、ユーザにより予め設定されるか、または外部の手段により格納される。
【0029】
土地反射係数記憶部14には、土地反射係数算出部16により算出された所定サイズのメッシュ毎の土地反射係数が記憶されている。土地反射係数は、放送エリアの算出処理において、プロフィール点の電界Eの算出時の反射波を計算するときに用いられる。
【0030】
土地利用データ記憶部15には、所定サイズのメッシュ毎の土地利用データが記憶されている。土地利用データは、例えば海域、段丘、大起伏山地等に分類されたデータである。
【0031】
土地反射係数算出部16は、土地利用データ記憶部15から所定サイズのメッシュ毎の土地利用データを読み出す。そして、土地反射係数算出部16は、土地利用データに基づいて土地反射係数を算出し、所定サイズのメッシュ毎の土地反射係数を土地反射係数記憶部14に格納する。
【0032】
例えば土地反射係数算出部16は、土地利用データと土地反射係数との関係が定義されたテーブル(予め設定されたテーブル)を備えている。土地反射係数算出部16は、所定サイズのメッシュ毎に、土地利用データ記憶部15から土地利用データを読み出し、テーブルから、土地利用データに対応する土地反射係数を読み出し、これを土地反射係数記憶部14に格納する。
【0033】
放送エリア算出部17は、所要電界入力部10から所要電界syoyou_e,syoyou_e2及び開始指示を入力する。また、放送エリア算出部17は、定数記憶部11から角度方向ステップ数hoko_step(=2)を、送信点情報記憶部12から送信点情報を、地形高データ記憶部13から所定サイズのメッシュ毎の地形高データを読み出す。また、放送エリア算出部17は、土地反射係数記憶部14から所定サイズのメッシュ毎の土地反射係数を読み出す。
【0034】
放送エリア算出部17は、所要電界入力部10から開始指示を入力すると(ステップS201)、放送エリア算出処理を開始する(ステップS202)。
【0035】
つまり、放送エリア算出部17は、所要電界syoyou_e,syoyou_e2、角度方向ステップ数hoko_step、送信点情報、所定サイズのメッシュ毎の地形高データ及び土地反射係数等を用いて、送信点を基準として水平360度方向の電界Eを算出する等して、受信点の電界Eが所要電界min_seを満たす放送エリアを算出する。
【0036】
放送エリアは、送信点を基準として水平360度の各方向において、電界Eが所要電界min_seを満たす最遠方地点を結んだエリア頂点群により構成され、エリア頂点群の緯度及び経度であるエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoで表される。
【0037】
放送エリア算出部17は、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを放送エリア情報として放送エリア情報記憶部18に格納する。
【0038】
放送エリア情報記憶部18には、放送エリアを定めるエリア頂点群の緯度及び経度がエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoとして、送信点を基準として水平360度方向を角度方向ステップ数hoko_stepで区切った対象方向hoko毎に記憶されている。
【0039】
放送エリア補正部19は、放送エリア情報記憶部18から放送エリア情報であるエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを読み出す。そして、放送エリア補正部19は、エリア頂点群のエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを結んだ形状(放送エリアの形状)が滑らかになるように、エリア頂点の飛び出し及び切り込みを排除する等の補正を行う(ステップS203)。例えば放送エリア補正部19は、隣り合う複数のエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを比較し、突出したエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoの位置を検出して平均化する。
【0040】
放送エリア補正部19は、補正後のエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを放送エリア描画部20に出力する。補正後のエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoは、放送エリア描画部20において放送エリア描画用の頂点群として扱われる。放送エリア補正部19の処理の詳細については後述する。
【0041】
放送エリア描画部20は、放送エリア補正部19から補正後のエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを入力する。そして、放送エリア描画部20は、補正後のエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoに基づいて、放送エリアを地図上に描画するための表示信号を生成し、当該表示信号を表示装置2へ出力する(ステップS204)。
【0042】
尚、放送エリア描画部20は、所要電界入力部10から描画色を入力し、当該描画色にて放送エリアを地図上に描画するための表示信号を生成し、表示装置2へ出力するようにしてもよい。
【0043】
〔放送エリア算出部17〕
次に、図1に示した放送エリア算出部17について詳細に説明する。図3は、放送エリア算出部17の構成例を示すブロック図であり、図4は、放送エリア算出部17の処理例(ステップS202)を示すフローチャートである。
【0044】
放送エリア算出部17は、前処理部30、最大地点設定部31及び最遠地点設定部32を備えている。
【0045】
放送エリア算出部17は、所要電界入力部10から所要電界syoyou_e,syoyou_e2及び開始指示を入力し、開始指示を入力したタイミングにて、放送エリア算出処理を開始する。そして、放送エリア算出部17は、定数記憶部11から角度方向ステップ数hoko_stepを入力すると共に、送信点情報記憶部12から送信点情報を入力し、受信点の電界Eを算出する際に、地形高データ記憶部13及び土地反射係数記憶部14からそれぞれ所定サイズのメッシュ毎の地形高データ及び土地反射係数を読み出す(ステップS401)。
【0046】
前処理部30は、送信点を基準とした0~360度の全方向の電界Eを算出する前の準備処理として、所要電界min_seを設定し、自由空間伝搬による受信点の最大距離kyori2を設定する等の前処理を行う(ステップS402)。前処理部30による前処理の詳細については後述する。
【0047】
最大地点設定部31は、放送エリアの算出対象となる対象方向hoko等を設定する処理を行う(ステップS403)。最大地点設定部31による対象方向等設定処理の詳細については後述する。設定された対象方向hoko毎に、後述するステップS404,S405の処理が行われる。
【0048】
最大地点設定部31は、仮想受信点が設定される遠方から送信点へ向けて、受信点の電界E及び所要電界min_seの大小比較に基づいた最大地点max_ptを設定する等の処理(処理1a,1b,1c,1d)を行う(ステップS404)。最大地点設定部31による遠方から送信点へ向けた最大地点設定処理の詳細については後述する。
【0049】
最大地点max_ptは、回折波及び反射波等の影響を考慮した所要電界min_seを満たす受信点のうち、仮想受信点に最も近いプロフィール点である。
【0050】
最遠地点設定部32は、送信点から、仮想受信点が設定される遠方へ向けて、受信点の電界E及び所要電界min_seの大小比較にて導出される最大幅max1,max2等に基づいた最遠地点max_p,min_pを設定し、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを算出する等の処理(処理2a,2b,2c,2d)を行う(ステップS405)。
【0051】
最遠地点max_pは、送信点から仮想受信点までの直線上において、電界Eが所要電界min_se以上となる最大幅max1の受信点のうち、仮想受信点に最も近いプロフィール点である。また、最遠地点min_pは、送信点から仮想受信点までの直線上において、電界Eが所要電界min_se未満となる最大幅max2の受信点のうち、仮想受信点に最も近いプロフィール点である。
【0052】
最遠地点設定部32は、全ての対象方向hokoの処理が完了したか否かを判定する(ステップS406)。最遠地点設定部32は、ステップS406において、全ての対象方向hokoの処理が完了していないと判定した場合(ステップS406:N)、ステップS403へ移行する。これにより、新たな対象方向hokoが設定される等して、ステップS403~S405の処理が行われる。
【0053】
一方、最遠地点設定部32は、ステップS406において、全ての対象方向hokoの処理が完了したと判定した場合(ステップS406:Y)、全ての対象方向hokoのエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを放送エリア情報として放送エリア情報記憶部18に格納する(ステップS407)。最遠地点設定部32による送信点から遠方へ向けた最遠地点設定処理の詳細については後述する。
【0054】
(前処理)
次に、図4に示した前処理部30によるステップS402の前処理について詳細に説明する。図5は、前処理の例(ステップS402)を示すフローチャートである。
【0055】
前処理部30は、定数記憶部11から角度方向ステップ数hoko_step(例えば2[度])を読み出すことで、後述の処理に用いる角度方向ステップ数hoko_stepを設定する(ステップS501)。
【0056】
角度方向ステップ数hoko_stepは、送信点を中心として水平360度を離散的に選択するための角度である。ここで、放送エリアの頂点が送信点から離れるほど、水平の1度の角度差によって隣り合う頂点が離れてしまう。このため、できる限り細かい角度の角度方向ステップ数hoko_stepとすべきであるが、細かい角度方向ステップ数hoko_stepであるほど、計算回数が多くなる。そこで、実績として、例えば角度方向ステップ数hoko_step=2[度]とすることで、放送エリアを十分な精度で算出することができる。
【0057】
前処理部30は、送信点情報記憶部12から送信点情報を読み出し、送信点情報に含まれる送信点実効輻射電力ERPに基づき、送信点実効輻射電力ERPが小さいほど小さい値となり、送信点実効輻射電力ERPが大きいほど大きい値となるように、距離方向ステップ数stpを設定する(ステップS502)。
【0058】
例えば前処理部30は、送信点実効輻射電力ERPが1[W]未満である場合、距離方向ステップ数stp=2を設定し、送信点実効輻射電力ERPが1[W]以上かつ10[W]未満である場合、距離方向ステップ数stp=3を設定する。また、前処理部30は、送信点実効輻射電力ERPが10[W]以上かつ100[W]未満である場合、距離方向ステップ数stp=4を設定し、送信点実効輻射電力ERPが100[W]以上かつ1000[W]未満である場合、距離方向ステップ数stp=5を設定する。また、前処理部30は、送信点実効輻射電力ERPが1000[W]以上かつ10000[W]未満である場合、距離方向ステップ数stp=6を設定し、送信点実効輻射電力ERPが10000[W]以上である場合、距離方向ステップ数stp=7を設定する。
【0059】
これにより、送信点実効輻射電力ERPが小さいほど、小さい値の距離方向ステップ数stpが設定され、送信点実効輻射電力ERPが大きいほど、大きい値の距離方向ステップ数stpが設定される。この距離方向ステップ数stpは、後述する処理1dにて用いられる。
【0060】
ここで、送信点実効輻射電力ERPが大きい場合、放送エリアはより遠方まで広がることとなり、その途中で算出される最大地点max_pt及び仮想受信点も遠方の地点となってしまう。具体的には、後述する処理1dにおいて、送信点実効輻射電力ERPが大きいほど、処理対象のプロフィール点の数が増えるため、プロフィール点毎に電界E=0を設定する処理及び電界Eを平均化する処理の回数が増え、処理負荷が高くなってしまう。
【0061】
そこで、送信点実効輻射電力ERPの大きさに応じて処理回数を変更するようにした。具体的には、前処理部30は、送信点実効輻射電力ERPが大きい場合、大きい値の距離方向ステップ数stpを設定するようにし、後述する処理1dの処理回数を少なくするようにした。したがって、送信点実効輻射電力ERPが大きい場合、後述する処理1dの処理負荷を低減することができ、高速化を実現することができる。
【0062】
前処理部30は、所要電界入力部10から2つの所要電界syoyou_e,syoyou_e2を入力し、所要電界syoyou_e,syoyou_e2のうち低い方を所要電界min_seに設定する(ステップS503)。尚、前処理部30は、所要電界入力部10から所要電界min_seを直接入力するようにしてもよい。
【0063】
前処理部30は、送信点実効輻射電力ERP及び所要電界min_seに基づいて、以下の式にて、自由空間損失を考慮した最遠方距離である最大距離kyori2を算出する(ステップS504)。
[数1]
kyori2=(7√ERP/10(min_se-60)/20)×1000[m] ・・・(1)
【0064】
前処理部30は、ステップS504にて算出した最大距離kyori2が1000[km]を超える場合、kyori2を1000[km]にクリップする。
【0065】
(対象方向等設定処理)
次に、図4に示した最大地点設定部31によるステップS403の対象方向等設定処理について詳細に説明する。図6は、対象方向等設定処理の例(ステップS403)を示すフローチャートである。
【0066】
最大地点設定部31は、前処理部30により設定された角度方向ステップ数hoko_step(例えば2[度])に基づいて、以下の式にて、放送エリアの算出対象となる対象方向hokoを設定する(ステップS601)。
[数2]
hoko=hoko_step×k[度] ・・・(2)
ここで、パラメータk=0,1,・・・,179である。
【0067】
図20は、対象方向hoko設定処理の例(ステップS601)を説明する図である。図20に示すように、送信点を基準とした水平360度方向において、k=0,1,・・・,179に対応する対象方向hoko=0,2,・・・,358[度]が設定される。また、後述するステップS602により仮想受信点の座標が算出される。
【0068】
図6に戻って、最大地点設定部31は、送信点を基準として対象方向hokoの最大距離kyori2に対応する地点を仮想受信点とする。最大地点設定部31は、最大距離kyori2及び対象方向hoko、並びに送信点情報に含まれる送信点の緯度及び経度に基づいて、仮想受信点座標(仮想受信点の緯度及び経度)を算出する(ステップS602)。これにより、対象方向hoko毎に仮想受信点座標が算出される。
【0069】
(処理1:遠方から送信点へ向けた最大地点設定処理)
次に、図4に示した最大地点設定部31によるステップS404の処理1:遠方から送信点へ向けた最大地点設定処理について詳細に説明する。図7は、処理1:遠方から送信点へ向けた最大地点設定処理の例(ステップS404)を示すフローチャートである。
【0070】
最大地点設定部31は、送信点のアンテナについて、その垂直方向の角度を変更することで、垂直方向の角度毎の空中線指向性を算出する。そして、最大地点設定部31は、最大の空中線指向性を特定し(空中線の利得が最大(損失が最小)となる空中線指向性を特定し)、最大の空中線指向性に基づいた最大距離kyoriを算出する(ステップS701、処理1a)。
【0071】
最大地点設定部31は、最大距離kyoriに対応した仮想受信点座標を算出し、プロフィール点毎の電界E、プロフィール点数p_count及びステップ数p_stepを算出する(ステップS702、処理1b)。
【0072】
最大地点設定部31は、遠方の仮想受信点から送信点へ向けて、プロフィール点毎の電界Eからステップ数p_step毎の指定地点の電界Eを特定する。そして、最大地点設定部31は、指定地点の電界E及び所要電界min_seの比較処理にて、最大地点max_ptを設定する(ステップS703、処理1c)。
【0073】
最大地点設定部31は、送信点から最大地点max_ptまでの間の電界Eについて、連続する所定数のプロフィール点の平均化を行い、最大地点max_pt以降のプロフィール点から仮想受信点までの間の電界Eを0に設定する(ステップS704、処理1d)。
【0074】
(処理1a)
次に、図7に示したステップS701の処理1a:空中線指向性に基づいた最大距離kyori算出処理について詳細に説明する。図8は、処理1aの例を示すフローチャートであり、図21は、処理1aの例を説明する図である。
【0075】
前述のとおり、処理1aは、送信点のアンテナにおける垂直方向の角度毎の空中線指向性を算出し、空中線の利得が最大(損失が最小)となる空中線指向性を特定し、最大の空中線指向性に基づいた最大距離kyoriを算出する処理である。
【0076】
最大地点設定部31は、仮想受信点の高さを送信点の高さである送信点高さsend_hと同一に設定し、空中線指向性a_lossを初期化(取り得る最小値を空中線指向性a_lossに設定)する(ステップS801)。
【0077】
最大地点設定部31は、送信点のアンテナについて、垂直方向の角度jを設定する(ステップS802)。角度j=0,2,・・・,10とし、角度jは、ステップS801及び後述するステップS806から移行する毎に、順番に設定される。
【0078】
最大地点設定部31は、送信点高さsend_h、最大距離kyori2及び角度jに基づいて、以下の式にて、計算用仮想受信点高さrecv_hを算出する(ステップS803)。
[数3]
recv_h=send_h-floor{kyori2×tan(jπ/180)×10}・・・(3)
floorは、床関数を示す。
【0079】
最大地点設定部31は、計算用仮想受信点高さrecv_hに基づいて、空中線指向性ant_loss(recv_h)を算出する(ステップS804)。具体的には、空中線指向性ant_loss(recv_h)は、送信点の位置(緯度及び経度)及び送信点高さsend_hを既知として、計算用仮想受信点高さrecv_h等の受信点の情報に基づいて算出される。
【0080】
最大地点設定部31は、空中線指向性a_lossが空中線指向性ant_loss(recv_h)よりも小さいか否かを判定し(a_loss<ant_loss(recv_h))、a_loss<ant_loss(recv_h)である場合、空中線指向性ant_loss(recv_h)を空中線指向性a_lossに設定する(ステップS805)。つまり、最大地点設定部31は、空中線指向性ant_loss(recv_h)の最大値を空中線指向性a_lossに設定する。尚、ここでは、最大地点設定部31は、計算用仮想受信点高さrecv_hを算出し、計算用仮想受信点高さrecv_hに基づいて空中線指向性ant_lossを算出するようにした。しかし、空中線は製作段階で角度方向の利得特性を測定したデータが存在するため、最大地点設定部31は、計算用仮想受信点高さrecv_hを算出しなくてもよい。
【0081】
最初の処理においては、空中線指向性a_lossは大きな損失を持つ値として初期化されている。このため、最大地点設定部31は、a_loss<ant_loss(recv_h)を判定し、空中線指向性ant_loss(recv_h)を空中線指向性a_lossに設定する。
【0082】
最大地点設定部31は、全ての角度jの処理が完了したか否かを判定する(ステップS806)。最大地点設定部31は、ステップS806において、全ての角度jの処理が完了していないと判定した場合(ステップS806:N)、ステップS802へ移行する。そして、最大地点設定部31は、次の角度jについてステップS802~S805の処理を行う。
【0083】
そして、最大地点設定部31は、ステップS806において、全ての角度jの処理が完了したと判定した場合(ステップS806:Y)、最大距離kyori2及び空中線指向性a_lossに基づいて、以下の式にて、最大距離kyoriを算出する(ステップS807)。
[数4]
kyori=kyori2×10a_loss/20 ・・・(4)
【0084】
このように、最大地点設定部31は、処理1aにて、送信点のアンテナの垂直方向の角度j毎に空中線指向性ant_loss(recv_h)を算出し、最大の空中線指向性ant_loss(recv_h)を空中線指向性a_lossとし、最大距離kyori2及び空中線指向性a_lossに基づいて最大距離kyoriを算出する。ここで、最大の空中線指向性ant_loss(recv_h)とは、空中線の利得が最大(損失が最小)であること、すなわち電波をより遠くまで届けることができることを意味する。これにより、空中線指向性による最小損失を考慮した最大距離kyoriが得られる。
【0085】
一般に、空中線指向性ant_loss(recv_h)は、空中線の中心軸方向(地面に対して水平方向(0度方向))が最大となるが、送信点の設置環境によっては、送信空中線は、必ずしも空中線の中心軸方向に設置されているとは限らない。このため、垂直方向に角度がずれることにより空中線の利得が変化することとなる。
【0086】
最大距離kyori2は、送信点の高さ(送信点高さsend_h)と仮想受信点の高さとが同じであることを前提としているため、これは空中線の利得が最大のときの距離である。最大距離kyoriの算出にあたり、仮想受信点の高さを下げることで空中線指向性ant_loss(recv_h)を求め、送信空中線における垂直方向の角度ずれに対応した仮想受信点の高さについての空中線指向性ant_loss(recv_h)について、その損失の最小値を空中線指向性a_lossとしている。
【0087】
(処理1b)
次に、図7に示したステップS702の処理1b:プロフィール点毎の電界E、プロフィール点数p_count及びステップ数p_step算出処理について詳細に説明する。図9は、処理1bの例を示すフローチャートであり、図22は、処理1bの例を説明する図である。
【0088】
前述のとおり、処理1bは、最大距離kyoriに対応した仮想受信点座標を算出し、送信点から仮想受信点までの間のプロフィール点毎の電界E、プロフィール点数p_count及びステップ数p_stepを算出する処理である。
【0089】
最大地点設定部31は、最大距離kyori及び対象方向hoko、並びに送信点情報に含まれる送信点の緯度及び経度に基づいて、仮想受信点座標を算出する(ステップS901)。
【0090】
最大地点設定部31は、地形高データ記憶部13から、仮想受信点座標についての(使用するメッシュサイズのメッシュ毎の)地形高データを読み出し、仮想受信点座標の地形高(メッシュ高)を特定する。そして、最大地点設定部31は、メッシュ高に予め設定された増分(地面から家に設置されたアンテナまでの高さ)を加算し、加算結果を仮想受信点の高さに設定する(ステップS902)。
【0091】
最大地点設定部31は、プロフィール計算を実行することで、図22の下図に示すように、送信点から仮想受信点までの間のプロフィール点毎の電界Eを算出する(ステップS903)。
【0092】
具体的には、最大地点設定部31は、仮想受信点座標、仮想受信点の高さ、送信点情報記憶部12から読み出した送信点情報、地形高データ記憶部13から読み出した送信点、反射点及び受信点の地形高データ、土地反射係数記憶部14から読み出した送信点、反射点及び受信点の土地反射係数等に基づいて、送信点から仮想受信点までの間のプロフィール点毎の電界Eを算出する。
【0093】
尚、電界Eを算出するプロフィール計算の手法は既知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0094】
最大地点設定部31は、使用するメッシュサイズ及び送信点と仮想受信点との間の距離(最大距離kyori)に基づいて、プロフィール点数p_countを算出する(ステップS904)。
【0095】
最大地点設定部31は、プロフィール点数p_countに基づいて、以下の式にて、ステップ数p_stepを算出する(ステップS905)。
[数5]
p_step=floor(p_count/10) ・・・(5)
【0096】
尚、前記式(5)では、最大地点設定部31は、プロフィール点数p_countを10で除算するようにしているが、10は例示であり正の整数であればよい。
【0097】
例えば図22の下図を参照して、プロフィール点数p_count=1000及びステップ数p_step=floor(1000/10)=100が得られる。
【0098】
最大地点設定部31は、使用するメッシュサイズに応じて、ステップS905にて算出したステップ数p_stepを補正する(ステップS906)。
【0099】
具体的には、最大地点設定部31は、ステップ数p_stepが、使用するメッシュサイズに応じた数よりも大きい場合、使用するメッシュサイズに応じた数をステップ数p_stepに設定する。例えば、使用するメッシュサイズが10[m]四方である場合、ステップ数p_stepが300よりも大きいときには、ステップ数p_stepに300が設定される。また、使用するメッシュサイズが50[m]四方である場合、ステップ数p_stepが60よりも大きいときには、ステップ数p_stepに60が設定される。
【0100】
このように、最大地点設定部31は、処理1bにて、最大距離kyoriに対応した仮想受信点座標を算出し、送信点から仮想受信点までの間のプロフィール点毎の電界E、プロフィール点数p_count及びステップ数p_stepを算出し、ステップ数p_stepを補正する。
【0101】
ここで、プロフィール計算では、使用するメッシュサイズに応じてプロフィール点数p_countが異なっており、メッシュサイズが小さい場合、プロフィール点数p_countが大きくなり、ステップ数p_stepも大きくなってしまう。
【0102】
そこで、最大地点設定部31は、ステップS906において、使用するメッシュサイズに応じてステップ数p_stepが必要以上に大きくならないように、補正するようにした。これにより、ステップ数p_stepが大きくならないため、計算が粗くなることはなく、計算精度を確保することができる。
【0103】
また、後述する処理1c等において、プロフィール点数p_count(例えば1000点)のそれぞれについて処理を行う代わりに、プロフィール点数p_countのうちのステップ数p_step(100点)間隔で処理が行われる。つまり、1000回の処理が10回の処理に収めることができ、約1/100の処理負荷及び約100倍の処理速度を実現することができる。ステップ数p_stepは、処理負荷の低減及び処理の高速化を実現するために用いられる。
【0104】
(処理1c)
次に、図7に示したステップS703の処理1c:最大地点max_pt設定処理について詳細に説明する。図10は、処理1cの例を示すフローチャートであり、図23は、処理1cの例を説明する図である。
【0105】
前述のとおり、処理1cは、遠方の仮想受信点から送信点へ向けて、プロフィール点毎の電界Eからステップ数p_step毎の指定地点の電界Eを特定し、指定地点の電界E及び所要電界min_seの比較処理にて、最大地点max_ptを設定する処理である。
【0106】
最大地点設定部31は、遠方の仮想受信点から送信点へ向けて、ステップ数p_stepの間隔を空けたプロフィール点毎の指定地点を設定する(ステップS1001)。指定地点は、処理1cを開始するとき、及び後述するステップS1003から移行する毎に、仮想受信点から送信点へ向けて設定される。
【0107】
最大地点設定部31は、プロフィール点毎の電界Eから、指定地点の電界Eを特定する(ステップS1002)。
【0108】
最大地点設定部31は、指定地点の電界Eが所要電界min_se以上であるか否かを判定する(ステップS1003)。最大地点設定部31は、ステップS1003において、指定地点の電界Eが所要電界min_se以上でないと判定した場合(ステップS1003:N)、ステップS1001へ移行する。そして、最大地点設定部31は、送信点へ向けてステップ数p_stepの間隔を空けた次の指定地点を設定し、ステップS1001,S1002の処理を行う。
【0109】
一方、最大地点設定部31は、ステップS1003において、指定地点の電界Eが所要電界min_se以上であると判定した場合(ステップS1003:Y)、仮想受信点から送信点へ向けて最初に電界Eが所要電界min_se以上となる指定地点を特定する。そして、最大地点設定部31は、当該指定地点にステップ数p_stepを加算する(ステップS1004)。そして、最大地点設定部31は、加算結果のプロフィール点を最大地点max_ptに設定する(ステップS1005)。
【0110】
電界Eが所要電界min_se以上であると判定された指定地点を最大地点max_ptに設定しないのは、当該指定地点と、当該指定地点にステップ数p_stepを加算したプロフィール点(ステップ数p_stepだけ仮想受信点側へ戻った地点)との間に、所要電界min_se以上のプロフィール点が含まれる可能性を考慮したためである。
【0111】
例えば図23の下図を参照して、プロフィール点500の指定地点の電界Eが所要電界min_se=60以上であると判定された場合を想定する。この場合、最大地点max_ptには、プロフィール点500の指定地点にステップ数p_step=100を加算したプロフィール点(プロフィール点600の指定地点)が設定される。これは、プロフィール点500の指定地点とプロフィール点600の指定地点との間に、電界Eが所要電界min_se以上のプロフィール点が存在する可能性を考慮したためである。尚、図23には、プロフィール点500の指定地点とプロフィール点600の指定地点との間に、所要電界min_se以上のプロフィール点は存在しない。
【0112】
図10に戻って、最大地点設定部31は、送信点実効輻射電力ERPに応じて、ステップS1005にて設定した最大地点max_ptを補正する(ステップS1006)。これにより、送信点実効輻射電力ERPに応じて予め設定された(電波が届く)距離以上の位置に、最大地点max_ptが設定される。
【0113】
具体的には、最大地点設定部31は、ステップS1005にて設定した最大地点max_ptに対応する距離(送信点から最大地点max_ptまでの間の距離)が、送信点実効輻射電力ERPに応じて予め設定された距離(電波が届く最大距離)よりも短いか否かを判定する。そして、最大地点設定部31は、最大地点max_ptに対応する距離が、予め設定された距離よりも短いと判定した場合、最大地点max_ptを、当該距離に対応するプロフィール点に補正する。
【0114】
例えば使用するメッシュサイズが10[m]四方であり、送信点実効輻射電力ERPが100[W]よりも大きい場合、ステップS1005にて設定した最大地点max_ptが1000以下であるとき、1000を最大地点max_ptに設定する。これは、送信点実効輻射電力ERPが100[W]よりも大きい場合、送信点から10[km]以上は電波が届くことを想定し、1000×10=10[km]を最大地点max_ptに対応する距離とするためである。
【0115】
また、使用するメッシュサイズが10[m]四方であり、送信点実効輻射電力ERPが100[W]以下である場合、ステップS1005にて設定した最大地点max_ptが300以下であるとき、300を最大地点max_ptに設定する。これは、送信点実効輻射電力ERPが100[W]以下である場合、送信点から3[km]以上は電波が届くことを想定し、300×10=3[km]を最大地点max_ptに対応する距離とするためである。
【0116】
例えば使用するメッシュサイズが50[m]四方であり、送信点実効輻射電力ERPが100[W]よりも大きい場合、ステップS1005にて設定した最大地点max_ptが200以下であるとき、200を最大地点max_ptに設定する。これは、送信点実効輻射電力ERPが100[W]よりも大きい場合、送信点から10[km]以上は電波が届くことを想定し、200×50=10[km]を最大地点max_ptに対応する距離とするためである。
【0117】
また、使用するメッシュサイズが50[m]四方であり、送信点実効輻射電力ERPが100[W]以下である場合、ステップS1005にて設定した最大地点max_ptが60以下であるとき、60を最大地点max_ptに設定する。これは、送信点実効輻射電力ERPが100[W]以下である場合、送信点から3[km]以上は電波が届くことを想定し、60×50=3[km]を最大地点max_ptに対応する距離とするためである。
【0118】
このように、最大地点設定部31は、処理1cにて、仮想受信点から送信点へ向けて、プロフィール点毎の電界Eからステップ数p_step毎の指定地点の電界Eを特定し、指定地点の電界E及び所要電界min_seの比較処理にて、最大地点max_ptを設定し、送信点実効輻射電力ERPに応じて最大地点max_ptを補正する。
【0119】
仮に、処理1cを、送信点から仮想受信点へ向けた処理とした場合には、送信点から設定対象の最大地点max_ptまでの間の電界Eが地形の凹凸等によって変動し、電界Eが所要電界min_se以上であるプロフィール点が多数存在するため、最大地点max_ptを設定するための処理負荷が高く、時間もかかってしまう。
【0120】
これに対し、処理1cを、仮想受信点から送信点へ向けた処理とすることで、電界Eが所要電界min_se以上であると最初に判定したプロフィール点を求めればよいため、処理負荷は低減され、高速化を実現できる。特に、送信点実効輻射電力ERPが大きい場合は、仮想受信点はより遠方に存在することになるため、処理負荷の低減及び処理の高速化を一層実現することができる。
【0121】
また、ステップ数p_step毎の処理が行われることから、プロフィール点毎の処理に比べ処理回数を減らすことができ、処理負荷の低減及び処理の高速化を実現することができる。
【0122】
尚、最大地点設定部31は、プロフィール点数p_countを例えば正の整数である10で除算することでステップ数p_stepを求め(前記式(5))、仮想受信点から送信点へ向けて、ステップ数p_stepの間隔を空けたプロフィール点毎に指定地点を設定し、指定地点の電界Eが所要電界min_se以上である場合、指定地点にステップ数p_stepを加算し、加算結果が示すプロフィール点を最大地点max_ptに設定するようにした。
【0123】
これに対し、最大地点設定部31は、仮想受信点から送信点へ向けて、プロフィール点の電界Eが所要電界min_se以上であるか否かを判定し、最初に電界Eが所要電界min_se以上であると判定した当該プロフィール点を最大地点max_ptに設定するようにしてもよい。
【0124】
(処理1d)
次に、図7に示したステップS704の処理1d:電界平均化等処理について詳細に説明する。図11は、処理1dの例を示すフローチャートであり、図24は、処理1dの例を説明する図である。
【0125】
前述のとおり、処理1dは、送信点から最大地点max_ptまでの間の電界Eについて、連続する所定数のプロフィール点の平均化を行い、最大地点max_pt以降のプロフィール点から仮想受信点までの間の電界Eを0に設定する処理である。
【0126】
最大地点設定部31は、送信点から最大地点max_ptまでの間のプロフィール点について、ステップS1102へ移行し、最大地点max_pt以降のプロフィール点から仮想受信点までの間のプロフィール点について、ステップS1105へ移行する(ステップS1101)。
【0127】
最大地点設定部31は、送信点から最大地点max_ptまでの間のプロフィール点の電界Eについて、距離方向ステップ数stp間隔で一定(階段状)となるように変更する(ステップS1102)。
【0128】
最大地点設定部31は、ステップS1102から移行して、プロフィール点毎に、連続する3つのプロフィール点(当該プロフィール点及びその前後)の電界Eの平均値を算出する(ステップS1103)。そして、最大地点設定部31は、その平均値を、3つのプロフィール点のうち中央のプロフィール点の電界Eに設定する(ステップS1104)。
【0129】
これにより、距離方向ステップ数stp間隔のプロフィール点における一定の電界Eから、全体として滑らかな電界Eを得ることができる。
【0130】
一方、最大地点設定部31は、最大地点max_pt以降のプロフィール点から仮想受信点までの間のプロフィール点について、プロフィール点毎の電界E=0を設定する(ステップS1105)。
【0131】
このように、最大地点設定部31は、処理1dにて、送信点から最大地点max_ptまでの間の電界Eについて、連続する所定数のプロフィール点の平均化を行い、最大地点max_pt以降のプロフィール点から仮想受信点までの間の電界Eを0に設定する。
【0132】
これにより、送信点から最大地点max_ptまでの間の電界Eについて、3つの連続するプロフィール点の電界Eで平均化されるため、近距離における地形のわずかな起伏等による電界Eの変動を抑えることができる。特に、所要電界min_se前後の電界Eの変動を抑えることができ、後述する処理2a等における電界E及び所要電界min_seの比較処理において、計算量を抑え、処理負荷の低減及び処理の高速化を実現することができる。
【0133】
また、最大地点max_pt以降のプロフィール点から仮想受信点までの間の電界Eが0に設定されるため、後述する処理2a等において、当該範囲のプロフィール点を処理対象外とすることができ、処理負荷の低減及び処理の高速化を実現することができる。
【0134】
(送信点から遠方へ向けた最遠地点設定処理)
次に、図4に示した最遠地点設定部32によるステップS405の処理2:送信点から遠方へ向けた最遠地点設定処理について詳細に説明する。図12は、処理2:送信点から遠方へ向けた最遠地点設定処理の例(ステップS405)を示すフローチャートである。
【0135】
最遠地点設定部32は、送信点から遠方の最大地点max_ptへ向けて、電界Eが所要電界min_se以上となる最大幅max1を算出し、最遠地点max_pを設定する(ステップS1201、処理2a)。
【0136】
最遠地点設定部32は、送信点から遠方の最遠地点max_pへ向けて、電界Eが所要電界min_se未満となる最大幅max2を算出し、最遠地点min_pを設定する(ステップS1202、処理2b)。
【0137】
最遠地点設定部32は、最遠地点min_p設定時の最大幅max2が所定値よりも広い場合、ステップS1201と同じ処理にて送信点から最遠地点min_pまでの間で最遠地点max_pを再設定する(ステップS1203、処理2c)。
【0138】
最遠地点設定部32は、最遠地点max_pが最遠地点min_pよりも送信点に近いか否かを判定し、放送エリアを定めるエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを設定する(ステップS1204、処理2d)。
【0139】
尚、最遠地点設定部32は、図7のステップS703の処理1cにて設定した最大地点max_ptの座標を、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoとして設定するようにしてもよい。また、最遠地点設定部32は、ステップS1201の処理2aにて設定した最遠地点max_pの座標を、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoとして設定するようにしてもよい。
【0140】
(処理2a)
次に、図12に示したステップS1201の処理2a:所要電界min_se以上の最遠地点max_p設定処理について詳細に説明する。図13は、処理2aの例を示すフローチャートであり、図25は、処理2aの例を説明する図である。
【0141】
前述のとおり、処理2aは、送信点から遠方の最大地点max_ptへ向けて、電界Eが所要電界min_se以上となる最大幅max1を算出し、最遠地点max_pを設定する処理である。
【0142】
最遠地点設定部32は、送信点から最大地点max_ptへ向けて、電界Eが所要電界min_se以上となる幅を算出し、最も広い幅を特定して最大幅max1を設定する(ステップS1301)。
【0143】
例えば図25の下図において、送信点から最大地点max_ptへ向けて、最初に電界Eが所要電界min_se以上となる幅EW1が算出され、最大幅max1=EW1が設定される。その後電界Eが所要電界min_se以上となる幅EW2が算出され、EW1>EW2であるため、最大幅max1=EW1が維持される。そして、電界Eが所要電界min_se以上となる幅EW3が算出され、EW1<EW3であるため、最大幅max1=EW3が設定される。そして、最大地点max_ptへ向けて処理が行われるが、電界Eが所要電界min_se以上となる幅は算出されないため、最大幅max1=EW3が確定する。
【0144】
図13に戻って、最遠地点設定部32は、最大幅max1の地点に含まれるプロフィール点のうち、最大地点max_ptに最も近い(送信点からみて最遠の)プロフィール点を最遠地点max_pに設定する(ステップS1302)。
【0145】
例えば図25の下図では、最大幅max1=EW3の地点に含まれるプロフィール点350~530のうち、最大地点max_ptに最も近いプロフィール点530が最遠地点max_pとして設定される。
【0146】
このように、最遠地点設定部32は、処理2aにて、送信点から遠方の最大地点max_ptまでの間のプロフィール点を処理対象とし、最大幅max1を算出して最遠地点max_pを設定する。
【0147】
これにより、送信点から仮想受信点までの間のプロフィール点のうち、最大地点max_ptから仮想受信点までの間のプロフィール点が処理対象外となるため、処理負荷の低減及び処理の高速化を実現することができる。
【0148】
(処理2b)
次に、図12に示したステップS1202の処理2b:所要電界min_se未満の最遠地点min_p設定処理について詳細に説明する。図14は、処理2bの例を示すフローチャートであり、図26は、処理2bの例を説明する図である。
【0149】
前述のとおり、処理2bは、送信点から遠方の最遠地点max_pへ向けて、電界Eが所要電界min_se未満となる最大幅max2を算出し、最遠地点min_pを設定する処理である。
【0150】
最遠地点設定部32は、送信点から最遠地点max_pへ向けて、電界Eが所要電界min_se未満となる幅を算出し、最も広い幅を特定して最大幅max2を設定する(ステップS1401)。
【0151】
例えば図26の下図において、送信点から最遠地点max_pへ向けて、最初に電界Eが所要電界min_se未満となる幅EW1が算出され、最大幅max2=EW1が設定される。その後電界Eが所要電界min_se未満となる幅EW2が算出され、EW1<EW2であるため、最大幅max2=EW2が設定される。そして、最遠地点max_pへ向けて処理が行われるが、電界Eが所要電界min_se未満となる幅は算出されないため、最大幅max2=EW2が確定する。
【0152】
図14に戻って、最遠地点設定部32は、最大幅max2の地点に含まれるプロフィール点のうち、最遠地点max_pに最も近い(送信点からみて最遠の)プロフィール点を最遠地点min_pに設定する(ステップS1402)。
【0153】
例えば図26の下図では、最大幅max2=EW2の地点に含まれるプロフィール点300~350のうち、最遠地点max_pに最も近いプロフィール点350が最遠地点min_pとして設定される。
【0154】
このように、最遠地点設定部32は、処理2bにて、送信点から遠方の最遠地点max_pまでの間のプロフィール点を処理対象とし、最大幅max2を算出して最遠地点min_pを設定する。
【0155】
これにより、送信点から仮想受信点までの間のプロフィール点のうち、最遠地点max_pから仮想受信点までの間のプロフィール点が処理対象外となるため、処理負荷の低減及び処理の高速化を実現することができる。
【0156】
(処理2c)
次に、図12に示したステップS1203の処理2c:最遠地点max_p再設定処理について詳細に説明する。図15は、処理2cの例を示すフローチャートであり、図27は、処理2cの例を説明する図である。
【0157】
前述のとおり、処理2cは、最遠地点min_p設定時の最大幅max2が所定値よりも広い場合、処理2aのステップS1201と同じ処理にて、最遠地点max_pを再設定する処理である。
【0158】
最遠地点設定部32は、図14に示した処理2bのステップS1401により算出された最大幅max2が所定値(例えば10[km])よりも広いか否かを判定する(ステップS1501)。
【0159】
最遠地点設定部32は、ステップS1501において、最大幅max2が所定値よりも広いと判定した場合(ステップS1501:Y)、最遠地点min_pよりも遠方に最遠地点max_pが設定されているのは不適切であると判断する。
【0160】
最遠地点min_pよりも遠方に最遠地点max_pが設定されているのが不適切であるとするのは、最大幅max2が所定値よりも広い場合、送信点から最遠地点max_pまでの間に電波が届かない区間である最大幅max2が存在するにも関わらず、当該最大幅max2の区間を超えて電波が届くとする最遠地点max_pが存在するのが妥当でないことを意味する。このため、最遠地点max_pは再設定されるべきである。
【0161】
そこで、最遠地点設定部32は、送信点から最遠地点min_pへ向けて、電界Eが所要電界min_se以上となる幅を算出し、最も広い幅を特定して最大幅max3を設定する(ステップS1502)。
【0162】
例えば図27の下図において、送信点から最遠地点min_pへ向けて、最初に電界Eが所要電界min_se以上となる幅EW1が算出され、最大幅max3=EW1が設定される。その後電界Eが所要電界min_se以上となる幅EW2が算出され、EW1>EW2であるため、最大幅max3=EW1が維持される。そして、最遠地点min_pへ向けて処理が行われるが、電界Eが所要電界min_se以上となる幅は算出されないため、最大幅max3=EW1が確定する。
【0163】
図15に戻って、最遠地点設定部32は、最大幅max3の地点に含まれるプロフィール点のうち、最遠地点min_pに最も近い(送信点からみて最遠の)プロフィール点を最遠地点max_pに再設定する(ステップS1503)。
【0164】
例えば図27の下図では、最大幅max3=EW1の地点に含まれるプロフィール点0~180のうち、最遠地点min_pに最も近いプロフィール点180が最遠地点max_pとして再設定される。
【0165】
図15に戻って、一方、最遠地点設定部32は、ステップS1501において、最大幅max2が所定値よりも広くないと判定した場合(ステップS1501:N)、当該処理を終了する。
【0166】
このように、最遠地点設定部32は、処理2cにて、最遠地点min_p設定時の最大幅max2が所定値よりも広い場合、送信点から遠方の最遠地点min_pまでの間のプロフィール点を処理対象とし、最大幅max3を算出して最遠地点max_pを再設定する。
【0167】
これにより、最大幅max2が所定値よりも広い場合に、不適切な最遠地点max_pの代わりに適切な最遠地点max_pを得ることができる。また、最遠地点max_pを再設定する際に、送信点から仮想受信点までの間のプロフィール点のうち、最遠地点min_pから仮想受信点までの間のプロフィール点が処理対象外となるため、処理負荷の低減及び処理の高速化を実現することができる。
【0168】
(処理2d)
次に、図12に示したステップS1204の処理2d:エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keido設定処理について詳細に説明する。図16は、処理2dの例を示すフローチャートであり、図28は、処理2dの例を説明する図である。
【0169】
前述のとおり、処理2dは、最遠地点max_pが最遠地点min_pよりも送信点に近いか否かを判定し、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを設定する処理である。
【0170】
最遠地点設定部32は、最遠地点max_pが最遠地点min_pよりも送信点に近いか否か(最遠地点max_p<最遠地点min_p)を判定する(ステップS1601)。最遠地点設定部32は、ステップS1601において、最遠地点max_pが最遠地点min_pよりも送信点に近いと判定した場合(ステップS1601:Y、最遠地点max_p<最遠地点min_p)、ステップS1602へ移行する。一方、最遠地点設定部32は、ステップS1601において、最遠地点max_pが最遠地点min_pよりも送信点に近くないと判定した場合(ステップS1601:N、最遠地点max_p≧最遠地点min_p)、ステップS1609へ移行する。
【0171】
最遠地点max_pが最遠地点min_pよりも送信点に近いと判定される場合は、図15に示した処理2cにおいて、最大幅max2が所定値よりも広いと判定され、最遠地点max_pが再設定された場合に相当する。一方、最遠地点max_pが最遠地点min_pよりも送信点に近くないと判定される場合は、図15に示した処理2cにおいて、最大幅max2が所定値よりも広くないと判定され、最遠地点max_pが再設定されなかった場合に相当する。
【0172】
最遠地点設定部32は、ステップS1601(Y)から移行して、最遠地点max_pをパラメータuptに設定し(ステップS1602)、パラメータuptの地点から最大地点max_ptへ向けて、プロフィール点を設定する(ステップS1603)。プロフィール点は、ステップS1602または後述するステップS1608から移行する毎に、パラメータuptの地点から最大地点max_ptへ向けて順番に設定される。
【0173】
最遠地点設定部32は、パラメータuptの地点から最大地点max_ptに向けて電界Eが所要電界min_se未満となる幅を算出し、それを最大幅dspanとして設定し、パラメータuptの地点を更新する(ステップS1604)。パラメータuptの地点の更新については、後述する図18のステップS1805を参照されたい。ここで、パラメータuptの地点から最大地点max_ptへ向けて、最初に設定した最大幅dspanよりも広い幅がその後算出された場合、当該幅が新たな最大幅dspanとして設定される。
【0174】
最遠地点設定部32は、パラメータuptの地点から最大地点max_ptに向けて、電界Eが所要電界min_se以上となる最初の幅Aを算出する(ステップS1605)。
【0175】
最遠地点設定部32は、最大幅dspanに例えば1.5を乗算し、幅Aが乗算結果よりも広いか否かを判定する(ステップS1606)。最遠地点設定部32は、ステップS1606において、幅Aが乗算結果よりも広いと判定した場合(ステップS1606:Y)、当該プロフィール点の座標(幅Aの地点において最大地点max_ptに最も近いプロフィール点の緯度及び経度)を算出し、当該座標をエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoとして設定する(ステップS1607)。プロフィール点の座標は、最遠地点max_pから仮想受信点までの間のプロフィール点の位置、対象方向hoko、並びに送信情報に含まれる送信点の緯度及び経度等に基づいて算出される。
【0176】
尚、同一の対象方向hokoにおいて、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoが設定された後、後述するステップS1608からステップS1603へ移行し、新たなプロフィール点が設定され、ステップS1607にて新たなエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoが再設定される場合もあり得る。
【0177】
また、ステップS1604にて最大幅dspanが設定されない場合、ステップS1605にて電界Eが所要電界min_se以上となる幅Aが存在しない場合、またはステップS1606にて条件を満たすことがない場合には、ステップS1607においてエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoは設定されない。この場合、最遠地点設定部32は、図15のステップS1503にて再設定した最遠地点max_pの座標をエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoとして設定する。
【0178】
一方、最遠地点設定部32は、ステップS1606において、幅Aが乗算結果よりも広くないと判定した場合(ステップS1606:N)、ステップS1608へ移行する。
【0179】
最遠地点設定部32は、ステップS1607またはステップS1606(N)から移行して、全てのプロフィール点の処理が完了したか否かを判定する(ステップS1608)。最遠地点設定部32は、ステップS1608において、全てのプロフィール点の処理が完了していないと判定した場合(ステップS1608:N)、ステップS1603へ移行する。そして、最遠地点設定部32は、ステップS1603~S1607の処理を行う。
【0180】
そして、最遠地点設定部32は、ステップS1608において、全てのプロフィール点の処理が完了したと判定した場合(ステップS1608:Y)、当該処理を終了する。
【0181】
例えば図28の下図において、パラメータuptの地点から最大地点max_ptへ向けて、最初にプロフィール点200のときに、電界Eが所要電界min_se未満となる幅B1が算出され、最大幅dspan=B1が設定される。その後プロフィール点300のときに、電界Eが所要電界min_se以上となる幅A1が算出される。このとき、最大幅dspan=B1であり、A1>dspan×1.5であるため、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoにはプロフィール点300の座標が設定される。
【0182】
プロフィール点350のときに、電界Eが所要電界min_se未満となる幅B2が算出され、B1<B2であるため、最大幅dspan=B2が設定される。そして、最大地点max_ptへ向けて処理が行われるが、電界Eが所要電界min_se未満となる幅は算出されないため、最大幅dspan=B2が維持される。
【0183】
プロフィール点530のときに、電界Eが所要電界min_se以上となる幅A2が算出される。このとき、最大幅dspan=B2であり、A2>dspan×1.5であるため、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoにはプロフィール点530の座標が再設定される。そして、最大地点max_ptへ向けて処理が行われるが、電界Eが所要電界min_se以上となる幅は算出されないため、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoとしてプロフィール点530の座標が確定する。
【0184】
図16に戻って、一方、最遠地点設定部32は、ステップS1601(N)から移行して、最遠地点max_pの座標を算出し、当該座標をエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoとして設定し(ステップS1609)、処理を終了する。
【0185】
このように、最遠地点設定部32は、処理2dにて、最遠地点max_pが最遠地点min_pよりも送信点に近い場合(処理2cにより最遠地点max_pが再設定された場合)、最遠地点max_pから最大地点max_ptへ向けて、電界Eが所要電界min_se未満となる最大幅dspan及び電界Eが所要電界min_se以上となる幅Aを算出し、幅Aが最大幅dspanの1.5倍を超え、かつ幅Aが最大地点max_ptに最も近いプロフィール点を、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoとして設定する。また、最遠地点設定部32は、最遠地点max_pが最遠地点min_pよりも送信点に近くない場合、最遠地点max_pをエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoとして設定する。
【0186】
これにより、最遠地点max_pが最遠地点min_pよりも送信点に近い場合、最遠地点max_pから最大地点max_ptまでの間のプロフィール点のうち、最遠地点max_pから最大地点max_ptまでの間のプロフィール点が処理対象となり、最大地点max_ptから仮想受信点までの間のプロフィール点は処理対象外となる。このため、処理負荷の低減及び処理の高速化を実現することができる。
【0187】
また、電界Eが所要電界min_se以上となる幅Aが最大幅dspanの1.5倍を超えている場合、当該幅Aにおける最遠の地点がエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoとして設定される。このため、送信点と当該幅Aとの間に存在する、電界Eが所要電界min_se未満となるビル影等の範囲(図28の下図に示した最大幅B1,B2)は、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを設定する際に無視されることとなる。
【0188】
尚、最遠地点設定部32は、ステップS1606において、最大幅dspanを所定倍する際に、所定倍の値として1.5を用いるようにしたが、1.5の値は例示であり、他の値を用いるようにしてもよい。最大幅dspanに乗算される数値は、ユーザにより予め設定される。
【0189】
この1.5の値は、本発明者らが鋭意検討を行った結果、ビル影等を放送エリアから除外するのに好適な数値として得られたものである。1.5の値を用いることにより、ユーザは、当該放送エリア算出装置1-1により算出された放送エリアの妥当性を的確に判断することができる。
【0190】
(処理2dの詳細)
次に、図16に示した処理2dのステップS1602~S1608について詳細に説明する。図17は、処理2dのステップS1602~S1608の詳細(1)を示すフローチャートである。
【0191】
前述のとおり、処理2dのステップS1602~S1608は、最遠地点max_pが最遠地点min_pよりも送信点に近いと判定された場合の処理である。
【0192】
まず、最遠地点設定部32は、パラメータuptに最遠地点max_pを、パラメータdptにプロフィール点数p_countを、最大幅dspanに1を設定する(ステップS1701)。
【0193】
最遠地点設定部32は、ステップS1701から移行して、パラメータuptの地点(最遠地点max_p)のプロフィール点からプロフィール点数p_countの地点(仮想受信点)のプロフィール点までの間において、電界Eが所要電界min_se未満のプロフィール点(i)を検出する(ステップS1702)。また、最遠地点設定部32は、ステップS1702において、図17のβ(後述する図18のステップS1809)から移行して、次のプロフィール点iを検出する。
【0194】
ここで、図11のステップS1105により最大地点max_ptから仮想受信点までの電界E=0が設定されているため、実質的には、図16のステップS1603と同様に、パラメータuptの地点から最大地点max_ptまでの間の処理とすることができる。
【0195】
最遠地点設定部32は、プロフィール点iの電界Eが所要電界min_se未満であり、またはi≧p_countであるとして(ステップS1703)、ステップS1704へ移行する。
【0196】
最遠地点設定部32は、パラメータupt=1であるか、または、プロフィール点iの距離(送信点からプロフィール点iまでの間の距離)からパラメータuptの地点の距離(送信点からパラメータuptの地点までの間の距離)を減算し、減算結果が最大幅dspanに1.5を乗算した結果よりも大きいか否かを判定する(ステップS1704)。
【0197】
最遠地点設定部32は、ステップS1704において、前記条件を満たす場合、すなわちパラメータupt=1であると判定した場合、または、プロフィール点iの距離からパラメータuptの地点の距離の減算結果が最大幅dspanに1.5を乗算した結果よりも大きいと判定した場合(ステップS1704:Y)、プロフィール点(i-1)の座標を算出し、当該座標をエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoとして設定し(ステップS1705)、ステップS1706へ移行する。
【0198】
一方、最遠地点設定部32は、ステップS1704において、前記条件を満たさない場合(ステップS1704:N)、ステップS1706へ移行する。
【0199】
最遠地点設定部32は、ステップS1705またはステップS1704(N)から移行して、パラメータdptにiを設定し(ステップS1706)、ループから抜け出し(ステップS1707)、図17のα(後述する図18のステップS1801)へ移行する。
【0200】
図18は、処理2dのステップS1602~S1608の詳細(2)を示すフローチャートであり、図17の続きを示している。
【0201】
最遠地点設定部32は、判定距離hantei_kyori未満に所要電界min_se以上のプロフィール点があるか否かをチェックする。ここで、最遠地点設定部32は、フラグflag=False及びi=1を設定する(ステップS1801)。
【0202】
尚、判定距離hantei_kyoriとしては、例えば図8のステップS807にて最大地点設定部31により算出された最大距離kyoriを5で除算した結果が用いられる。
【0203】
すなわち、最遠地点設定部32は、プロフィール点(dpt+i)の距離(送信点からプロフィール点(dpt+i)までの間の距離)からプロフィール点dptの距離(送信点からプロフィール点dptまでの間の距離)を減算する。
【0204】
最遠地点設定部32は、減算結果が判定距離hantei_kyoriよりも小さい場合、及び(かつ)(dpt+i)≦p_countであるか否かを判定する(ステップS1802)。
【0205】
最遠地点設定部32は、ステップS1802において、減算結果が判定距離hantei_kyoriよりも小さく、及び(dpt+i)≦p_countであると判定した場合(ステップS1802:Y)、ステップS1803へ移行する。
【0206】
一方、最遠地点設定部32は、ステップS1802において、減算結果が判定距離hantei_kyoriよりも小さくないと判定した場合、または(dpt+i)≦p_countでないと判定した場合(ステップS1802:N)、ステップS1809へ移行する。
【0207】
最遠地点設定部32は、ステップS1802(Y)から移行して、プロフィール点(dpt+i)の電界Eが所要電界min_se以上であるか否かを判定する(ステップS1803)。
【0208】
最遠地点設定部32は、ステップS1803において、プロフィール点(dpt+i)の電界Eが所要電界min_se以上であると判定した場合(ステップS1803:Y)、フラグflag=Trueを設定すると共に、パラメータuptに(dpt+i)を設定し(ステップS1805)、ステップS1806へ移行する。
【0209】
一方、最遠地点設定部32は、ステップS1803において、プロフィール点(dpt+i)の電界Eが所要電界min_se以上でないと判定した場合(ステップS1803:N)、i=i+1を設定し(ステップS1804)、ステップS1802へ移行する。
【0210】
最遠地点設定部32は、ステップS1805から移行して、プロフィール点(dpt+i)の距離からプロフィール点dptの距離を減算し、最大幅dspanが減算結果よりも小さいか否かを判定する(ステップS1806)。
【0211】
最遠地点設定部32は、ステップS1806において、最大幅dspanが減算結果よりも小さいと判定した場合(ステップS1806:Y)、最大幅dspanに減算結果を設定し(ステップS1807)、ステップS1808へ移行する。
【0212】
一方、最遠地点設定部32は、ステップS1806において、最大幅dspanが減算結果よりも小さくないと判定した場合(ステップS1806:N)、ステップS1808へ移行する。
【0213】
最遠地点設定部32は、ステップS1807またはステップS1806(N)から移行して、ループから抜け出し(ステップS1808)、ステップS1809へ移行する。
【0214】
最遠地点設定部32は、ステップS1802(N)またはステップS1808から移行して、フラグflag=Falseであるか、またはパラメータuptがプロフィール点数p_countよりも大きいか否かを判定する(ステップS1809)。
【0215】
最遠地点設定部32は、ステップS1809において、フラグflag=Falseでなく、かつパラメータuptがプロフィール点数p_countよりも大きくないと判定した場合(ステップS1809:N)、図18のβ(図17のステップS1702)へ移行する。
【0216】
一方、最遠地点設定部32は、ステップS1809において、フラグflag=Falseであると判定した場合、またはパラメータuptがプロフィール点数p_countよりも大きいと判定した場合(ステップS1809:Y)、当該処理を終了する。
【0217】
〔放送エリア補正部19〕
次に、図1に示した放送エリア補正部19について詳細に説明する。図19は、放送エリア補正部19の処理例(ステップS203)を示すフローチャートである。
【0218】
放送エリア補正部19は、放送エリア情報記憶部18から放送エリア情報を読み出す(ステップS1901)。前述のとおり、放送エリア情報は、放送エリアを定めるエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoである。エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoは、送信点を基準として水平360度方向を角度方向ステップ数hoko_stepで区切った対象方向hoko毎に、エリア頂点の緯度及び経度から構成される。
【0219】
放送エリア補正部19は、送信点からエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoの示す各エリア頂点の位置までの間の距離(各エリア頂点の距離)をそれぞれ算出する。そして、放送エリア補正部19は、各エリア頂点の距離に基づいて、以下のステップS1902~S1904にて各エリア頂点の位置を平均化する。
【0220】
放送エリア補正部19は、対象方向hokoのエリア頂点について、当該エリア頂点の距離、及び当該エリア頂点と隣り合う所定数の他のエリア頂点の距離に基づいて、当該エリア頂点が他のエリア頂点に対して飛び出しているか否かを判定すると共に、切り込んでいるか否かを判定する。
【0221】
放送エリア補正部19は、当該エリア頂点が他のエリア頂点に対して飛び出していると判定した場合、当該エリア頂点の飛び出しを排除するように、当該エリア頂点の新たなエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを設定する(ステップS1902)。
【0222】
また、放送エリア補正部19は、当該エリア頂点が他のエリア頂点に対して切り込んでいると判定した場合、当該エリア頂点の切り込みを排除するように、当該エリア頂点の新たなエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを設定する(ステップS1903)。
【0223】
一方、放送エリア補正部19は、当該エリア頂点が他のエリア頂点に対して飛び出していないと判定した場合、かつ切り出していないと判定した場合、当該エリア頂点のエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを維持する。
【0224】
放送エリア補正部19は、ステップS1902,S1903の処理が完了した後、対象方向hokoのエリア頂点について、当該エリア頂点を含む隣り合う所定数のエリア頂点の距離の平均値を算出する。そして、放送エリア補正部19は、当該エリア頂点の新たなエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを、平均値に対応する緯度及び経度に補正する(ステップS1904)。
【0225】
放送エリア補正部19は、補正後の新たなエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを放送エリア情報として放送エリア描画部20に出力する(ステップS1905)。
【0226】
このように、放送エリア補正部19は、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoの示す各エリア頂点を、隣り合う所定数のエリア頂点の位置に基づいて平均化することで補正する。
【0227】
これにより、送信点を基準とした各エリア頂点の凹凸が緩和され、滑らかな曲線の放送エリアを得ることができる。例えばエリア頂点付近にビルが存在する場合、当該エリア頂点は、隣り合う所定数の他のエリア頂点に対して切り込んでいる可能性がある。電波はビルを回り込んでさらに遠くへ届くため、当該エリア頂点が切り込んでいるのは不自然である。
【0228】
このような場合に、放送エリア補正部19によるエリア頂点の補正処理にて、切り込んでいるエリア頂点を現実的な位置に移動させることで、精度の高い放送エリアを得ることができる。
【0229】
以上のように、実施例1の放送エリア算出装置1-1によれば、放送エリア算出部17は、前処理において、送信点実効輻射電力ERP及び所要電界min_seに基づいて最大距離kyori2を算出し、送信点を基準として水平360度の対象方向hoko毎に、処理1a~処理2dを行う。
【0230】
放送エリア算出部17は、処理1aにおいて、送信アンテナの垂直方向の角度j毎に空中線指向性ant_lossを算出し、空中線の利得が最大(損失が最小)となる空中線指向性ant_lossをa_lossとし、最大距離kyori2及び空中線指向性a_lossに基づいて最大距離kyoriを算出する。
【0231】
これにより、空中線指向性ant_lossによる最小損失を考慮して、最大距離kyori2から最大距離kyoriが得られる。
【0232】
放送エリア算出部17は、処理1bにおいて、送信点から最大距離kyoriに対応する仮想受信点までの間のプロフィール点毎の電界Eを算出し、プロフィール点数p_count及びステップ数p_stepを算出する。そして、放送エリア算出部17は、使用するメッシュサイズに応じてステップ数p_stepを補正する。
【0233】
これにより、処理1bにて算出されたステップ数p_stepは、処理1cにてプロフィール点よりも粗い指定地点毎の処理を行う際の当該指定地点の設定のために用いられ、処理負荷の低減及び処理の高速化を実現することができる。また、ステップ数p_stepは、メッシュサイズに応じて必要以上に大きくなることはないため、処理1cにおける計算が粗くなることはなく、計算精度を確保することができる。
【0234】
放送エリア算出部17は、処理1cにおいて、仮想受信点から送信点へ向けて、ステップ数p_stepの間隔を空けたプロフィール点毎に指定地点を設定すると共に、指定地点の電界Eが所要電界min_se以上であるか否かを判定し、指定地点の電界Eが所要電界min_se以上であると判定したときの指定地点にステップ数p_stepを加算し、加算結果が示すプロフィール点を最大地点max_ptに設定する。そして、放送エリア算出部17は、送信点実効輻射電力ERPに応じて最大地点max_ptを補正する。
【0235】
これにより、仮想受信点から送信点へ向けて処理が行われ、電界Eが所要電界min_se以上であると最初に判定したプロフィール点が最大地点max_ptとして設定されるため、送信点から仮想受信点へ向けた処理に比べ、処理負荷の低減及び処理の高速化を実現することができる。
【0236】
また、ステップ数p_stepの間隔を空けたプロフィール点毎(指定地点毎)に処理が行われることから、プロフィール点毎の処理に比べ、処理負荷の低減及び処理の高速化を実現することができる。さらに、送信点から最大地点max_ptまでの間の距離が、送信点実効輻射電力ERPに応じて予め設定された距離よりも短い場合、最大地点max_ptは当該距離に対応するプロフィール点に補正される。このため、最大地点max_ptを、送信点実効輻射電力ERPに応じた適切な地点とすることができる。
【0237】
放送エリア算出部17は、処理1dにおいて、送信点から最大地点max_ptまでの間の電界Eについて平均化を行い、最大地点max_pt以降のプロフィール点から仮想受信点までの間を電界E=0に設定する。
【0238】
これにより、送信点から最大地点max_ptまでの間において、近距離における地形のわずかな起伏等による電界Eの変動を吸収することができる。また、最大地点max_pt以降のプロフィール点から仮想受信点までの間を処理対象外とすることができ、処理負荷の低減及び処理の高速化を実現することができる。
【0239】
放送エリア算出部17は、処理2aにおいて、送信点から最大地点max_ptへ向けて、電界Eが所要電界min_se以上となる最大幅max1を算出し、最遠地点max_pを設定する。
【0240】
これにより、最大地点max_ptから仮想受信点までの間のプロフィール点が処理対象外となるため、処理負荷の低減及び処理の高速化を実現することができる。
【0241】
放送エリア算出部17は、処理2bにおいて、送信点から最遠地点max_pへ向けて、電界Eが所要電界min_se未満となる最大幅max2を算出し、最遠地点min_pを設定する。
【0242】
これにより、最遠地点max_pから仮想受信点までの間のプロフィール点が処理対象外となるため、処理負荷の低減及び処理の高速化を実現することができる。
【0243】
放送エリア算出部17は、処理2cにおいて、最大幅max2が所定値よりも広い場合、処理2aと同じ処理にて、送信点から最遠地点min_pへ向けて最遠地点max_pを再設定する。
【0244】
これにより、不適切な最遠地点max_pの代わりに適切な最遠地点max_pを得ることができる。また、最遠地点min_pから仮想受信点までの間のプロフィール点が処理対象外となるため、処理負荷の低減及び処理の高速化を実現することができる。
【0245】
放送エリア算出部17は、処理2dにおいて、最遠地点max_pが最遠地点min_pよりも送信点に近い場合(処理2cにて最遠地点max_pが再設定された場合)、最遠地点max_pから最大地点max_ptへ向けて、電界Eが所要電界min_se未満となる最大幅dspan及び電界Eが所要電界min_se以上となる幅Aを算出し、幅Aが最大幅dspanの1.5倍を超える場合に、幅Aの地点における最大地点max_ptに最も近いプロフィール点を、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoとして設定する。また、放送エリア算出部17は、最遠地点max_pが最遠地点min_pよりも送信点に近くない場合、最遠地点max_pをエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoとして設定する。
【0246】
これにより、最大地点max_ptから仮想受信点までの間のプロフィール点が処理対象外となるため、処理負荷の低減及び処理の高速化を実現することができる。また、送信点と当該幅Aとの間に存在する、電界Eが所要電界min_se未満となるビル影等を無視することができ、精度の高いエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを設定することができる。
【0247】
放送エリア補正部19は、放送エリア算出部17により設定されたエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoにおけるエリア頂点群を結んだ形状(放送エリアの形状)が滑らかになるように、エリア頂点の飛び出し及び切り込みを排除する等のエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoの補正を行う。
【0248】
放送エリア描画部20は、補正後のエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoに基づいて、放送エリアを地図上に描画するための表示信号を生成し、当該表示信号を表示装置2へ出力する。
【0249】
したがって、所要電界min_seを満たす放送エリアを、精度高くかつ高速に算出することができる。
【0250】
〔実施例2〕
次に、実施例2の放送エリア算出装置について説明する。実施例2の放送エリア算出装置は、実施例1の放送エリア算出装置1-1において、放送エリアに海域を含まないように、メッシュ毎の土地利用データを用いて放送エリアを補正することを特徴とする。
【0251】
実施例2によれば、海域を含まない放送エリアが設定されるため、人が住んでいない領域を放送エリアから除外することができる。
【0252】
図29は、実施例2の放送エリア算出装置の構成例を示すブロック図である。この放送エリア算出装置1-2は、所要電界入力部10、定数記憶部11、送信点情報記憶部12、地形高データ記憶部13、土地反射係数記憶部14、土地利用データ記憶部15、土地反射係数算出部16、放送エリア算出部17、放送エリア情報記憶部18、放送エリア補正部21及び放送エリア描画部20を備えている。
【0253】
図1に示した実施例1の放送エリア算出装置1-1と実施例2の放送エリア算出装置1-2とを比較すると、放送エリア算出装置1-2は、放送エリア算出装置1-1に備えた放送エリア補正部19とは異なる放送エリア補正部21を備えている点で、放送エリア算出装置1-1と相違する。両放送エリア算出装置1-1,1-2は、放送エリア補正部19,21以外において、同一の構成部を備えている。図29において、図1と共通する部分には図1と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0254】
放送エリア補正部21は、放送エリア情報記憶部18から放送エリア情報であるエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを読み出す。そして、放送エリア補正部21は、図1に示した放送エリア補正部19と同様に、エリア頂点群を結んだ形状(放送エリアの形状)が滑らかになるように、エリア頂点の飛び出し及び切り込みを排除する等のエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoの補正を行う。
【0255】
放送エリア補正部21は、土地利用データ記憶部15から、補正後のエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoの位置の土地利用データを読み出す。そして、放送エリア補正部21は、土地利用データが海域の場合に、エリア頂点が海域のメッシュ内に入らないように、エリア頂点を送信点側へ移動させることで、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを再補正する。
【0256】
放送エリア補正部21は、再度補正したエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを放送エリア描画部20に出力する。
【0257】
図30は、実施例2における放送エリア補正部21の処理例(ステップS203に対応)を示すフローチャートである。ステップS3001~S3004の処理は、図19のステップS1901~S1904の処理と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0258】
放送エリア補正部21は、ステップS3004から移行して、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoの示すエリア頂点の土地利用データを土地利用データ記憶部15から読み出す(ステップS3005)。
【0259】
放送エリア補正部21は、エリア頂点の土地利用データが海域である場合、エリア頂点が海域のメッシュ内に入らないように、エリア頂点を送信点側へ移動させ(ステップS3006)、移動後のエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを設定する。
【0260】
具体的には、放送エリア補正部21は、エリア頂点の土地利用データが海域である場合、読み出した土地利用データ(海域)に対応するメッシュ内にエリア頂点が入らないように、エリア頂点を送信点側へ移動させ、移動後のエリア頂点の土地利用データを土地利用データ記憶部15から読み出す。
【0261】
放送エリア補正部21は、エリア頂点の土地利用データが海域である場合、再度、海域のメッシュ内にエリア頂点が入らないように、エリア頂点を送信点側へ移動させる。放送エリア補正部21は、このような処理を、エリア頂点が海域のメッシュ内に入らなくなるまで繰り返すことで、土地利用データが海域以外となるエリア頂点を特定し、移動後のエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを設定する。
【0262】
放送エリア補正部21は、ステップS3006から移行して、移動後のエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを補正後の放送エリア情報として放送エリア描画部20に出力する(ステップS3007)。
【0263】
以上のように、実施例2の放送エリア算出装置1-2によれば、放送エリア補正部21は、土地利用データ記憶部15から、エリア頂点の飛び出し及び切り込みの排除等が行われたエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoの位置の土地利用データを読み出す。そして、放送エリア補正部21は、土地利用データが海域の場合に、エリア頂点を送信点側へ移動させることで、エリア頂点の土地利用データが海域以外となるようにし、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを再補正する。
【0264】
これにより、実施例1と同様の効果を奏する。また、海域を含まない放送エリアが設定されるため、人が住んでいない領域を放送エリアから除外することができる。
【0265】
尚、放送エリア補正部21は、土地反射係数記憶部14から、補正後のエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoの位置の土地反射係数を読み出し、土地反射係数に基づいて、補正後のエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoの位置が海域であるか否かを判定するようにしてもよい。放送エリア補正部21は、補正後のエリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoの位置が海域であると判定した場合、エリア頂点が海域のメッシュ内に入らないように、エリア頂点を送信点側へ移動させることで、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを再補正する。
【0266】
〔実施例3〕
次に、実施例3の放送エリア算出装置について説明する。実施例3の放送エリア算出装置は、実施例1の放送エリア算出装置1-1において、放送エリアを算出する際に、土地利用データが海域を示しているメッシュの領域を、処理対象から除外することを特徴とする。
【0267】
実施例3によれば、海域を示すメッシュの領域が処理対象から除外されるため、放送エリアを高速に算出することができ、海域を含まない放送エリアが設定されるため、人が住んでいない領域を放送エリアから除外することができる。
【0268】
図31は、実施例3の放送エリア算出装置の構成例を示すブロック図である。この放送エリア算出装置1-3は、所要電界入力部10、定数記憶部11、送信点情報記憶部12、地形高データ記憶部13、土地反射係数記憶部14、土地利用データ記憶部15、土地反射係数算出部16、放送エリア算出部22、放送エリア情報記憶部18、放送エリア補正部19及び放送エリア描画部20を備えている。
【0269】
図1に示した実施例1の放送エリア算出装置1-1と実施例3の放送エリア算出装置1-3とを比較すると、放送エリア算出装置1-3は、放送エリア算出装置1-1に備えた放送エリア算出部17とは異なる放送エリア算出部22を備えている点で、放送エリア算出装置1-1と相違する。両放送エリア算出装置1-1,1-3は、放送エリア算出部17,22以外において、同一の構成部を備えている。図31において、図1と共通する部分には図1と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0270】
放送エリア算出部22は、図1に示した放送エリア算出部17と同様に、所要電界入力部10から開始指示を入力すると、放送エリア算出処理を開始する。放送エリア算出部22は、所要電界syoyou_e,syoyou_e2、角度方向ステップ数hoko_step、送信点情報、所定サイズのメッシュ毎の地形高データ及び土地反射係数等を用いて、土地利用データが海域を示しているメッシュの領域を処理対象から除外しながら、送信点を基準として水平360度方向の電界Eを算出する等して、受信点の電界Eが所要電界min_seを満たす放送エリアを算出することで、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを求める。
【0271】
放送エリア算出部22は、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを放送エリア情報として放送エリア情報記憶部18に格納する。
【0272】
具体的には、放送エリア算出部22は、対象方向hoko毎に、送信点から最大距離kyoriに対応する仮想受信点までの間の各プロフィール点について、土地利用データ記憶部15からプロフィール点を含むメッシュ毎の土地利用データを読み出す。
【0273】
放送エリア算出部22の最大地点設定部31は、図9に示した処理1bのステップS903におけるプロフィール計算の実行にあたり、プロフィール点毎に土地利用データが海域であるか否かを判定する。
【0274】
最大地点設定部31は、プロフィール点の土地利用データが海域でないと判定した場合、当該プロフィール点の電界Eを算出する。一方、最大地点設定部31は、プロフィール点の土地利用データが海域であると判定した場合、当該プロフィール点の電界Eを算出することなく、当該プロフィール点をスキップし、次のプロフィール点の処理へ移行する。
【0275】
最大地点設定部31及び最遠地点設定部32は、土地利用データが海域であると判定され電界Eが算出されなかったプロフィール点について、処理対象から除外する。
【0276】
つまり、最大地点設定部31は、図10に示した処理1cのステップS1001における指定地点の設定にあたり、土地利用データが海域であると判定され電界Eが算出されなかったプロフィール点を指定地点に設定しないようにする。つまり、海域であると判定され電界Eが算出されなかったプロフィール点については、ステップS1002,S1003の処理は行われない。
【0277】
また、最大地点設定部31は、図11に示した処理1dにおいて、土地利用データが海域であると判定され電界Eが算出されなかったプロフィール点について、ステップS1102~S1104の処理対象から除外する。
【0278】
また、最遠地点設定部32は、図13に示した処理2a、図14に示した処理2b及び図15に示した処理2cにおいて、土地利用データが海域であると判定され電界Eが算出されなかったプロフィール点について、ステップS1301,S1401,S1502の処理対象から除外する(最大幅max1等に当該プロフィール点を含まないように、処理を行う)。これにより、最大幅max1,max2,max3には、土地利用データが海域であるプロフィール点が存在しないこととなり、最遠地点max_p,min_pには、土地利用データが海域であるプロフィール点が設定されないこととなる。
【0279】
また、最遠地点設定部32は、図16に示したステップS1603におけるプロフィール点の設定にあたり、土地利用データが海域であると判定され電界Eが算出されなかったプロフィール点を設定しないようにする。つまり、土地利用データが海域であると判定され電界Eが算出されなかったプロフィール点については、当該プロフィール点のステップS1604~S1607の処理は行われない(最大幅dspan及び幅Aに当該プロフィール点を含まないように処理を行う)。これにより、最大幅dspan及び幅Aには、土地利用データが海域であるプロフィール点が存在しないこととなり、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoには、土地利用データが海域であるプロフィール点が設定されないこととなる。
【0280】
以上のように、実施例3の放送エリア算出装置1-3によれば、放送エリア算出部22は、土地利用データ記憶部15からプロフィール点の土地利用データを読み出し、土地利用データが海域を示しているメッシュの領域を処理対象から除外しながら、プロフィール点毎の電界Eを算出する等して、エリア頂点座標area_data[hoko].ido,keidoを求める。この場合、放送エリア算出部22は、送信点から仮想受信点までの間で、土地利用データが海域でない場合のプロフィール点について電界Eを算出し、土地利用データが海域である場合のプロフィール点について電界Eを算出しない。
【0281】
これにより、海域を示すメッシュの領域が処理対象から除外されるため、放送エリアを一層高速に算出することができる。また、海域を含まない放送エリアが設定されるため、人が住んでいない領域を放送エリアから除外することができる。
【0282】
尚、放送エリア算出部22は、各プロフィール点について、土地反射係数記憶部14からプロフィール点の土地反射係数を読み出し、土地反射係数に基づいて、当該プロフィール点が海域であるか否かを判定するようにしてもよい。放送エリア算出部22は、プロフィール点が海域であると判定した場合、前述の土地利用データが海域であると判定したときと同様の処理を行い、プロフィール点が海域でないと判定した場合、前述の土地利用データが海域でないと判定したときと同様の処理を行う。
【0283】
以上、実施例1~3を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施例1~3に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0284】
例えば前記実施例1~3において、放送エリア算出装置1-1,1-3は放送エリア補正部19を備え、放送エリア算出装置1-2は放送エリア補正部21を備えるようにした。放送エリア補正部19,21は、放送エリア情報記憶部18から放送エリア情報を読み出して補正し、補正後の放送エリア情報を放送エリア描画部20へ出力する。
【0285】
これに対し、放送エリア算出装置1-1,1-3は放送エリア補正部19を備えないようにし、放送エリア算出装置1-2は放送エリア補正部21を備えないようにしてもよい。この場合、放送エリア描画部20は、放送エリア情報記憶部18から放送エリア情報を読み出し、表示信号を生成して表示装置2へ出力する。これにより、回路規模及び処理負荷を低減することができる。
【0286】
また、例えば前記実施例1~3において、放送エリア算出部17,22の最大地点設定部31は、図8に示した処理1aにて、最大距離kyori2から最大距離kyoriを算出し、図9に示した処理1b及び図10に示した処理1c等にて、当該最大距離kyoriに対応する仮想受信点を基準にしてそれぞれの処理を行うようにした。
【0287】
これに対し、最大地点設定部31は、最大距離kyoriの代わりに最大距離kyori2を用いて、当該最大距離kyori2に対応する仮想受信点を基準にしてそれぞれの処理を行うようにしてもよい。この場合、最大地点設定部31は、最大距離kyoriを算出する必要はない。これにより、処理負荷を低減し、処理の高速化を実現することができる。
【0288】
また、例えば前記実施例1~3において、放送エリア算出部17,22の最大地点設定部31は、図11に示した処理1dを行うようにしたが、当該処理1dを行わなくてもよい。この場合、最遠地点設定部32は、処理1dによる平均化処理が行われていない電界Eを用いて、処理2a~2dを行う。
【0289】
また、例えば前記実施例2において、放送エリア算出装置1-2の放送エリア補正部21は、放送エリアに海域を含まないように、メッシュ毎の土地利用データを用いて放送エリア情報を補正するようにした。本発明は、放送エリアから除外する土地利用データの区分を海域に限定するものではなく、海域以外の区分の領域を含まないように、放送エリア情報を補正してもよいし、海域等の複数の区分の領域または海域以外の複数の区分の領域を含まないように、放送エリア情報を補正してもよい。
【0290】
また、例えば前記実施例3において、放送エリア算出装置1-3の放送エリア算出部22は、放送エリアを算出する際に、土地利用データが海域を示しているメッシュの領域を処理対象から除外するようにした。本発明は、処理対象から除外する土地利用データを海域に限定するものではなく、海域以外の区分の領域を処理対象から除外してもよいし、海域等の複数の区分の領域または海域以外の複数の区分を処理対象から除外してもよい。
【0291】
尚、本発明の実施例1~3による放送エリア算出装置1-1~1-3のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。放送エリア算出装置1-1~1-3は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。
【0292】
放送エリア算出装置1-1に備えた所要電界入力部10、定数記憶部11、送信点情報記憶部12、地形高データ記憶部13、土地反射係数記憶部14、土地利用データ記憶部15、土地反射係数算出部16、放送エリア算出部17、放送エリア情報記憶部18、放送エリア補正部19及び放送エリア描画部20の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
【0293】
また、放送エリア算出装置1-2に備えた所要電界入力部10、定数記憶部11、送信点情報記憶部12、地形高データ記憶部13、土地反射係数記憶部14、土地利用データ記憶部15、土地反射係数算出部16、放送エリア算出部17、放送エリア情報記憶部18、放送エリア補正部21及び放送エリア描画部20の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
【0294】
また、放送エリア算出装置1-3に備えた所要電界入力部10、定数記憶部11、送信点情報記憶部12、地形高データ記憶部13、土地反射係数記憶部14、土地利用データ記憶部15、土地反射係数算出部16、放送エリア算出部22、放送エリア情報記憶部18、放送エリア補正部19及び放送エリア描画部20の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
【0295】
これらのプログラムは、前記記憶媒体に格納されており、CPUに読み出されて実行される。また、これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD-ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもでき、ネットワークを介して送受信することもできる。
【符号の説明】
【0296】
1-1,1-2,1-3 放送エリア算出装置
2 表示装置
10 所要電界入力部
11 定数記憶部
12 送信点情報記憶部
13 地形高データ記憶部
14 土地反射係数記憶部
15 土地利用データ記憶部
16 土地反射係数算出部
17,22 放送エリア算出部
18 放送エリア情報記憶部
19,21 放送エリア補正部
20 放送エリア描画部
30 前処理部
31 最大地点設定部
32 最遠地点設定部
syoyou_e,syoyou_e2,min_se 所要電界
hoko_step 角度方向ステップ数
stp 距離方向ステップ数
ERP 送信点実効輻射電力
kyori2,kyori 最大距離
hoko 対象方向
a_loss,ant_loss(recv_h) 空中線指向性
recv_h 計算用仮想受信点高さ
send_h 送信点高さ
j 垂直方向の角度
hantei_kyori 判定距離
p_count プロフィール点数
p_step ステップ数
E 電界
max_pt 最大地点
max1,max2,max3,dspan 最大幅
max_p,min_p 最遠地点
area_data[hoko].ido,keido エリア頂点座標(緯度及び経度)
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