(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187970
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】マレック病ウイルスMeqタンパク質に対する抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20221213BHJP
C12N 5/20 20060101ALI20221213BHJP
C07K 16/08 20060101ALI20221213BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20221213BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C12N15/13
C12N5/20 ZNA
C07K16/08
G01N33/574 A
G01N33/53 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021729
(22)【出願日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2021095843
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100107870
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100098121
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 世津子
(72)【発明者】
【氏名】黒川 葵
(72)【発明者】
【氏名】山本 佑
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA92X
4B065AA92Y
4B065AB05
4B065AC14
4B065BA08
4B065CA25
4B065CA46
4H045AA11
4H045DA76
4H045EA53
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】 ホルマリン固定パラフィン包埋標本におけるMeqタンパク質を非特異反応なく検出可能な抗Meq抗体を提供する。
【解決手段】 受託番号NITE P-03455、NITE P-03456、又はNITE P-03457で特定されるハイブリドーマにより産生される、Meqタンパク質に対するモノクローナル抗体。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号NITE P-03455、NITE P-03456、又はNITE P-03457で特定される抗体産生用ハイブリドーマ。
【請求項2】
請求項1に記載の抗体産生用ハイブリドーマにより産生される、Meqタンパク質に対するモノクローナル抗体。
【請求項3】
Meqタンパク質に対するモノクローナル抗体であって、以下の(a)~(c)のいずれかに記載の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを有するモノクローナル抗体、
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(b)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(c)配列番号5に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号6に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【請求項4】
Meqタンパク質に対するモノクローナル抗体であって、以下の(d)~(f)のいずれかに記載の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを有するモノクローナル抗体、
(d)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(e)配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(f)配列番号5に示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【請求項5】
Meqタンパク質に対するモノクローナル抗体であって、以下の(g)~(i)のいずれかに記載の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを有するモノクローナル抗体、
(g)配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号2に示されるアミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(h)配列番号3に示されるアミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号4に示されるアミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(i)配列番号5に示されるアミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号6に示されるアミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【請求項6】
Meqタンパク質に対するモノクローナル抗体であって、以下の(j)~(l)のいずれかに記載の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを有するモノクローナル抗体、
(j)配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるCDR3を有する重鎖可変領域と配列番号10に示されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号11に示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号12に示されるアミノ酸配列からなるCDR3を有する軽鎖可変領域、
(k)配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号14に示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号15に示されるアミノ酸配列からなるCDR3を有する重鎖可変領域と配列番号16に示されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号17に示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号18に示されるアミノ酸配列からなるCDR3を有する軽鎖可変領域、
(l)配列番号19に示されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号20に示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号21に示されるアミノ酸配列からなるCDR3を有する重鎖可変領域と配列番号22に示されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号23に示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号24に示されるアミノ酸配列からなるCDR3を有する軽鎖可変領域。
【請求項7】
以下の工程(1)及び(2)を含む、マレック病の診断方法、
(1)診断対象動物から採取した試料と、請求項2乃至6のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体とを接触させて、試料中のMeqタンパク質とモノクローナル抗体を反応させる工程、
(2)Meqタンパク質とモノクローナル抗体の反応物を検出する工程。
【請求項8】
診断対象動物が、鳥類である、請求項7に記載のマレック病の診断方法。
【請求項9】
試料が、腫瘍組織である、請求項7又は8に記載のマレック病の診断方法。
【請求項10】
腫瘍組織が、腫瘍組織切片である、請求項9に記載のマレック病の診断方法。
【請求項11】
腫瘍組織切片が、ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織切片である、請求項10に記載のマレック病の診断方法。
【請求項12】
請求項2乃至6のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体を含む、マレック病診断キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Meqタンパク質に対するモノクローナル抗体、それを産生するハイブリドーマ、それを使用したマレック病の診断方法、それを含むマレック病診断キットに関する。
【背景技術】
【0002】
マレック病は、トリアルファヘルペスウイルス2(マレック病ウイルス:MDV)を原因とする届出伝染病であり、鶏にウイルス誘発性のリンパ腫を発症させる。ワクチン普及にもかかわらず、マレック病の発生は年間2-18万件が報告されており、養鶏産業の生産性に多大な影響を与えている。さらに海外ではワクチンの効かない野外ウイルス株の出現が問題となっている。
【0003】
マレック病の確定診断は、病理組織検査におけるリンパ腫の確認で行われている。しかしながら、単純な形態学的な判定のみではMDV感染とリンパ腫形成との直接的な関連を証明できないため、正しい診断が行われていない可能性がある。
【0004】
マレック病の正確な診断技術の確立のため、MDVがコードする癌関連タンパク質、MDV-EcoRI-Q(Meq)が着目されている。Meqは転写調節因子や癌抑制遺伝子などに作用することでTリンパ球の腫瘍化に関与しており、腫瘍化リンパ球に特異的に発現しているとされる。従って、Meqに対する抗体を作出することができれば、免疫組織化学的にリンパ腫細胞におけるMeqの発現が証明可能になり、従来よりも精度の高いマレック病の新規診断法を確立できる。
【0005】
抗Meq抗体に関する文献としては非特許文献1~4がある。非特許文献1には、Meqのオープンリーディングフレームを挿入した組換え鶏痘ウイルスをマウスに免疫してマウス抗Meqモノクローナル抗体(clone 23B46)を作製したことが記載されている。非特許文献2には、大腸菌タンパク質発現系により作製したMeq抗原を用いてウサギ抗Meqポリクローナル抗体を作製したことが記載されている。非特許文献3には、マウス抗Meqモノクローナル抗体(clone FD7)を作製したことが記載されている。非特許文献4には、原核生物タンパク質発現系により作製したMeq抗原を用いて作製したマウス抗Meqモノクローナル抗体を免疫組織化学で使用したことが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Liu et al., 1996. Biological properties of the Marek’s disease latent protein Meq: subcellular localization and transforming potential. Current Research on Marek’s Disease (pp. 271-277)Kennett Square, PA: American Association of Avian Pathologists.
【非特許文献2】Liu et al., 1997. Nucleolar and nuclear localization properties of a herpesvirus bZIP oncoprotein, MEQ. J Virol. 71(4):3188-3196.
【非特許文献3】Brown et al., 2006. Interaction of MEQ protein and C-terminal-binding protein is critical for induction of lymphomas by Marek’ s disease virus. Proc. Natl. Acad. Sci. 103:1687-1692.
【非特許文献4】Wen et al., 2018. Characterizing the histopathology of natural co -infection with Marek’s disease virus and subgroup J avian leucosis virus in egg-laying hens. Avian Pathol. 47(1):83-89.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、抗Meq抗体に関する文献は既に幾つか知られている。しかし、非特許文献1及び3には、作製した抗Meqモノクローナル抗体(clone 23B46、FD7)が凍結標本を用いた免疫組織化学でMeqを検出できたことが記載されているが、ホルマリン固定パラフィン包埋標本を用いた免疫組織化学においても使用可能であるかどうかについては記載されていない。また、非特許文献2及び4には、作製した抗Meq抗体がホルマリン固定パラフィン包埋標本を用いた免疫組織化学でMeqを検出できたことが記載されているが、非腫瘍細胞に対する反応が認められたことが記載されている。
【0008】
本発明は、このような背景の下でなされたものであり、ホルマリン固定パラフィン包埋標本におけるMeqタンパク質を非特異反応なく検出可能な抗Meq抗体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一般的に、ハイブリドーマの選抜はELISA法で実施するが、ホルマリン固定パラフィン包埋したマレック病の腫瘍を用いた免疫組織化学で使用可能な抗体を選抜するため、本発明者は、ELISA法と免疫組織化学を用いてハイブリドーマの選抜を実施した。この結果、ホルマリン固定パラフィン包埋標本におけるMeqタンパク質を非特異反応なく検出可能な抗Meq抗体を分泌するハイブリドーマを複数株樹立することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下の〔1〕~〔12〕を提供するものである。
〔1〕受託番号NITE P-03455、NITE P-03456、又はNITE P-03457で特定される抗体産生用ハイブリドーマ。
【0011】
〔2〕〔1〕に記載の抗体産生用ハイブリドーマにより産生される、Meqタンパク質に対するモノクローナル抗体。
【0012】
〔3〕Meqタンパク質に対するモノクローナル抗体であって、以下の(a)~(c)のいずれかに記載の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを有するモノクローナル抗体、
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(b)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(c)配列番号5に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号6に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【0013】
〔4〕Meqタンパク質に対するモノクローナル抗体であって、以下の(d)~(f)のいずれかに記載の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを有するモノクローナル抗体、
(d)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(e)配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(f)配列番号5に示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【0014】
〔5〕Meqタンパク質に対するモノクローナル抗体であって、以下の(g)~(i)のいずれかに記載の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを有するモノクローナル抗体、
(g)配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号2に示されるアミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(h)配列番号3に示されるアミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号4に示されるアミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(i)配列番号5に示されるアミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号6に示されるアミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【0015】
〔6〕Meqタンパク質に対するモノクローナル抗体であって、以下の(j)~(l)のいずれかに記載の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを有するモノクローナル抗体、
(j)配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるCDR3を有する重鎖可変領域と配列番号10に示されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号11に示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号12に示されるアミノ酸配列からなるCDR3を有する軽鎖可変領域、
(k)配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号14に示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号15に示されるアミノ酸配列からなるCDR3を有する重鎖可変領域と配列番号16に示されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号17に示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号18に示されるアミノ酸配列からなるCDR3を有する軽鎖可変領域、
(l)配列番号19に示されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号20に示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号21に示されるアミノ酸配列からなるCDR3を有する重鎖可変領域と配列番号22に示されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号23に示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号24に示されるアミノ酸配列からなるCDR3を有する軽鎖可変領域。
【0016】
〔7〕以下の工程(1)及び(2)を含む、マレック病の診断方法、
(1)診断対象動物から採取した試料と、〔2〕乃至〔6〕のいずれかに記載のモノクローナル抗体とを接触させて、試料中のMeqタンパク質とモノクローナル抗体を反応させる工程、
(2)Meqタンパク質とモノクローナル抗体の反応物を検出する工程。
【0017】
〔8〕診断対象動物が、鳥類である、〔7〕に記載のマレック病の診断方法。
【0018】
〔9〕試料が、腫瘍組織である、〔7〕又は〔8〕に記載のマレック病の診断方法。
【0019】
〔10〕腫瘍組織が、腫瘍組織切片である、〔9〕に記載のマレック病の診断方法。
【0020】
〔11〕腫瘍組織切片が、ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織切片である、〔10〕に記載のマレック病の診断方法。
【0021】
〔12〕〔2〕乃至〔6〕のいずれかに記載のモノクローナル抗体を含む、マレック病診断キット。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、新規な抗Meq抗体を提供する。この抗体は、ホルマリン固定パラフィン包埋標本におけるMeqタンパク質を非特異反応なく検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】ウエスタンブロット法によるrMeqの検出結果を示す図。
【
図2】3種の抗Meqモノクローナル抗体(3A3-112、5F7-82、6B5-128)を用いた免疫組織化学によるMeqの検出結果を示す図。
【
図3】各ハイブリドーマ由来のモノクローナル抗体の重鎖可変領域、軽鎖可変領域、CDRのアミノ酸配列を示す図。
【
図4】3種の抗Meqモノクローナル抗体(3A3-112、5F7-82、6B5-128)を用いたウエスタンブロット法によるMSB-1細胞中のMeqの検出結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
(A)ハイブリドーマ
本発明の抗体産生用ハイブリドーマは、受託番号NITE P-03455、NITE P-03456、又はNITE P-03457で特定されるものである。
【0025】
受託番号NITE P-03455、NITE P-03456、及びNITE P-03457で特定されるハイブリドーマのクローン名は、それぞれ3A3-112、5F7-82、及び6B5-128である。これらのハイブリドーマは、マレック病ウイルスの強毒株であるMd5株のmeq遺伝子配列をもとに作製されたMeqタンパク質を抗原として、マウスに免疫し、免疫したマウスの脾臓細胞とマウスの骨髄腫細胞株とを融合させて作出されたものである。これらは、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託されている。寄託に関する詳細な情報は以下の通りである。
【0026】
(1)3A3-112
(1-1)寄託機関の名称及び住所
名称:独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター
住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8郵便番号292-0818
(1-2)寄託日:令和3年(2021年)4月6日
(1-3)受託番号:NITE P-03455
【0027】
(2)5F7-82
(2-1)寄託機関の名称及び住所
名称:独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター
住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8郵便番号292-0818
(2-2)寄託日:令和3年(2021年)4月6日
(2-3)受託番号:NITE P-03456
【0028】
(3)6B5-128
(3-1)寄託機関の名称及び住所
名称:独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター
住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8郵便番号292-0818
(3-2)寄託日:令和3年(2021年)4月6日
(3-3)受託番号:NITE P-03457
【0029】
(B)モノクローナル抗体
本発明のMeqタンパク質に対するモノクローナル抗体は、本発明の抗体産生用ハイブリドーマにより産生されるものであってよい。
【0030】
本発明のMeqタンパク質に対するモノクローナル抗体は、以下の(a)~(c)のいずれかに記載の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを有するものであってよい、
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(b)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(c)配列番号5に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号6に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【0031】
上記(a)の重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、受託番号NITE P-03455で特定される抗体産生用ハイブリドーマ(3A3-112)により産生されるモノクローナル抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域であり、上記(b)の重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、受託番号NITE P-03456で特定される抗体産生用ハイブリドーマ(5F7-82)により産生されるモノクローナル抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域であり、上記(c)の重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、受託番号NITE P-03457で特定される抗体産生用ハイブリドーマ(6B5-128)により産生されるモノクローナル抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域である。
【0032】
本発明のMeqタンパク質に対するモノクローナル抗体は、以下の(d)~(f)のいずれかに記載の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを有するものであってよい、
(d)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(e)配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(f)配列番号5に示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【0033】
上記(d)、(e)、及び(f)において置換、欠失、挿入、及び/又は付加されるアミノ酸の個数は、「1又は複数個」であればよいが、好適には、「1又は数個」であり、より好適には、「1~5個」であり、更に好適には、「1~3個」である。
【0034】
本発明のMeqタンパク質に対するモノクローナル抗体は、以下の(g)~(i)のいずれかに記載の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを有するものであってよい、
(g)配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号2に示されるアミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(h)配列番号3に示されるアミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号4に示されるアミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(i)配列番号5に示されるアミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と配列番号6に示されるアミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【0035】
上記(g)、(h)、及び(i)において配列同一性は、90%以上であればよいが、好適には95%以上であり、より好適には97%以上であり、更に好適には99%以上である。
【0036】
本発明のMeqタンパク質に対するモノクローナル抗体は、以下の(j)~(l)のいずれかに記載の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを有するものであってよい、
(j)配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号9に示されるアミノ酸配列からなるCDR3を有する重鎖可変領域と配列番号10に示されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号11に示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号12に示されるアミノ酸配列からなるCDR3を有する軽鎖可変領域、
(k)配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号14に示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号15に示されるアミノ酸配列からなるCDR3を有する重鎖可変領域と配列番号16に示されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号17に示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号18に示されるアミノ酸配列からなるCDR3を有する軽鎖可変領域、
(l)配列番号19に示されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号20に示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号21に示されるアミノ酸配列からなるCDR3を有する重鎖可変領域と配列番号22に示されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号23に示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号24に示されるアミノ酸配列からなるCDR3を有する軽鎖可変領域。
【0037】
本発明の抗体は、遺伝子組み換えによって作製された抗体も含み、また、抗体断片(例えば、Fab、F(ab')
2、Fcなど)、一本鎖抗体(scFv)なども含む。
本発明の抗体は、正常組織とは反応することなく、ホルマリン固定パラフィン包埋標本におけるMeqタンパク質を検出できるという特徴を持つ(表2及び
図2)。また、この抗体のサブクラスはIgG1である。3種類の抗体はそれぞれ単独で使用するか、あるいは2種類以上を混合してカクテル抗体として用いてもよい。
【0038】
本発明の抗体は、マレック病の確定診断、特に鶏白血病や細網内皮症との類症鑑別に有用である。但し、抗体の用途は、これに限定されるわけではない。
【0039】
(C)マレック病の診断方法
本発明のマレック病の診断方法は、下記の工程(1)及び(2)を含むものである。
【0040】
工程(1)では、診断対象動物から採取した試料と、本発明のモノクローナル抗体とを接触させて、試料中のMeqタンパク質とモノクローナル抗体を反応させる。
【0041】
マレック病は鳥類の感染症なので、診断対象動物は、通常、鳥類であるが、鳥類以外の動物(但し、ヒトを除く)を診断対象としてもよい。診断対象とする鳥類は特に限定されず、通常、鶏、ウズラ、七面鳥、ガチョウ、アヒルなどの家禽を診断対象とするが、マガンなどの野鳥を診断対象としてもよい。
【0042】
試料は特に限定されないが、腫瘍組織を試料とするのが好ましい。また、本発明においては、通常、免疫組織化学的にMeqタンパク質を検出するので、このような手法により検出可能になるように、腫瘍組織は切片化されていることが好ましい。
【0043】
組織切片には、凍結組織切片やホルマリン固定パラフィン包埋組織切片があるが、本発明においては、室温で長期間保存が可能で、整理や扱いが容易なホルマリン固定パラフィン包埋組織切片が好ましい。なお、ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片は、抗原を変性させるため、凍結組織切片に比べ抗原を検出し難いが、上述したように、本発明のモノクローナル抗体は、問題なく、Meqタンパク質を検出することができる。
【0044】
ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片中の抗原を免疫組織化学的に検出する場合、通常、抗原と抗体を反応させる前に、パラフィンの除去と抗原賦活化が行われるが、本発明においても、これらの処理を行うことが好ましい。抗原賦活化法としては、タンパク質分解酵素による方法や加熱による方法があるが、本発明においては、いずれの方法を用いてもよい。
【0045】
工程(2)では、Meqタンパク質とモノクローナル抗体の反応物を検出する。
【0046】
反応物の検出は、標識を用いて行うことができる。反応物の検出においては、抗Meq抗体自体を標識してもよく、抗Meq抗体(一次抗体)に対する抗体(二次抗体)を標識してもよい。
【0047】
標識は、抗体による抗原検出法において一般的に使用されるものでよく、例えば、酵素、酵素基質、放射性同位元素、発光物質、蛍光物質、ビオチン、着色物質などを使用することができる。これらの中では、酵素又は蛍光物質を使用するのが好ましい。酵素としては、例えば、ペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコース-6-リン酸脱水素酵素などを挙げることができ、蛍光物質としては、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、フィコエリスリンなどを挙げることができる。
【0048】
(D)マレック病診断キット。
本発明のマレック病診断キットは、本発明のモノクローナル抗体を含むものである。
【0049】
キットに含まれる本発明のモノクローナル抗体(抗Meq抗体)は標識されていても、標識されていなくてもよい。本発明のマレック病診断キットは、本発明のモノクローナル抗体以外のものを含んでいてもよい。そのようなものとしては、標識された二次抗体、洗浄用緩衝液、ブロッキング液、作業手順指示書などを挙げることができる。
【実施例0050】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0051】
〔実施例1〕 組換えMarek's disease virus EcoRI-Q(rMeq)の作製
Marek's disease virus(MDV)の超強毒株であるMd5株のmeq遺伝子配列の情報(GenBank AF243438.1)をNational Center for Biotechnology Information databaseから入手した。このmeq遺伝子の全長339 bpの配列情報をもとにBac to Bac baculovirus recombinant protein expression system(Thermo Fisher Scientific Inc.)を用いてrMeqを作製した。具体的にはまず、meq遺伝子のN末にHisタグ配列を組み込み、人工的に合成したmeq遺伝子をpFastbac1バキュロウイルストランスファーベクターにクローニングした。作製したベクターを大腸菌株(DH10Bac)にトランスフェクトしてバクミドを作製した。このバクミドをSf9昆虫細胞にトランスフェクトすることにより組換えバキュロウイルスを得た。この組換えバキュロウイルスを再度、Sf9昆虫細胞に感染させ、Hisタグ付加rMeqを作製した。発現タンパク質はNiカラムを用いたアフィニティー精製法により精製した。rMeqの発現は、抗Hisタグ抗体(clone 3D5、Thermo Fisher Scientific Inc.)を用いたウエスタンブロット法により確認した。ウエスタンブロット法の結果を
図1に示す。
【0052】
〔実施例2〕 抗Meqモノクローナル抗体の作製
水酸化アルミニウムアジュバントと混合したrMeq(0.3 mg/mL)を7週齢のBALB/cマウス2匹に2週間の間隔で3回免疫した。最終免疫の3日後にマウスの脾臓を回収し、Hybri-Max(Sigma-Aldrich Inc.)を用いて脾細胞とマウス骨髄腫細胞株P3U1を細胞融合させ、ハイブリドーマを作出した。抗rMeq IgG抗体を分泌するハイブリドーマをEnzyme-Linked Immuno Sorbent Assay(ELISA)により選択し(方法は下記の実施例3に記載)、限界希釈法によりクローニングした。クローニング後、ハイブリドーマ3株(3A3-112、5F7-82、6B5-128)の抗Meqモノクローナル抗体を含む培養上清を下記の実施例4の免疫組織化学(IHC)に用いるため回収した。抗Meqモノクローナル抗体のサブクラスはrapid mouse antibody isotyping kit(Thermo Fisher Scientific Inc.)を用いて決定した。サブクラス判定の結果を表1に示す。
【表1】
【0053】
〔実施例3〕 ELISAによる抗Meq抗体のスクリーニング
rMeq(0.3 mg/mL)を同量の0.1 % Triton X-100(ナカライテスク株式会社)と混合した後、96ウェルプレートに100 μl/ウェルずつ分注し、1時間、37℃で抗原を固層化した。洗浄後、20 % ブロックエース溶液(UK-B80、DSファーマバイオメディカル株式会社)を100 μl/ウェルずつ分注し、一晩、4 ℃でブロッキングを行った。洗浄後、抗体分泌ハイブリドーマの細胞培養プレートの各ウェルから採取した抗Meq抗体を含む培養上清を100 μl/ウェルに入れ、1時間、37 ℃で反応させた。洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ウサギ抗マウスIgGγ鎖(61-6020、Zymed Laboratories Inc.)を1時間、37 ℃で反応させた。洗浄後、HRPの基質として2,2’-Azino-di-(3-ethylbenzthiazoline sulfonic acid)(Sigma-Aldrich Inc.)を加え、マイクロプレートリーダー(Multiskan FC basic、Thermo Fisher Scientific Inc.)を用いて405nmの吸光度を測定した。
【0054】
〔実施例4〕 抗Meqモノクローナル抗体を用いたIHCによるホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片におけるMeqの検出
作出した抗Meqモノクローナル抗体を用いて、FFPE切片に存在するMeq抗原をIHCにより検出可能かどうか評価した。2種類のFFPE切片、すなわちマレック病(MD)由来の腫瘍細胞株である1)MDCC-MSB-1(MSB-1)細胞、MDVの超強毒株であるMS1株を実験的に接種したspecific pathogen free(SPF)鶏由来の2)腫瘍組織を用いた。さらに、IHCにおける抗Meqモノクローナル抗体による非特異反応は、MDV非感染のSPF鶏の3)正常組織(脳、心臓、肺、胸腺、膵臓、肝臓、腎臓、脾臓、十二指腸、盲腸、ファブリキウス嚢、皮膚)のFFPE切片を用いて評価した。
【0055】
1)MSB-1細胞、2)腫瘍組織、3)正常組織を10 %中性緩衝ホルマリン(富士フイルム和光純薬株式会社)で固定後、パラフィン包埋し、FFPE切片を作製した。切片は脱パラフィン後、0.3 %H2O2添加メタノールに20分間、室温で浸漬し、内因性ペルオキシダーゼ活性を抑制した。4種類の抗原賦活化条件、無処理、クエン酸緩衝液(pH 6)あるいはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)緩衝液(pH 9)を用いた加熱処理、アクチナーゼEを用いた酵素処理を試験した。加熱処理は、各緩衝液に浸漬した切片を電子レンジ(500 W)で15分間加熱して実施した。酵素処理は、切片を0.1%アクチナーゼE(科研製薬株式会社)に10分間、35 ℃で浸漬して実施した。抗体の非特異的な結合は、5 %スキムミルク溶液を20分間、室温で反応させて抑制した。上述した3株の抗Meqモノクローナル抗体をphosphate buffered saline(PBS)で4倍希釈し、一晩、4 ℃で反応させた。切片をPBSで洗浄後、二次抗体としてヒストファイン シンプルステインMAX-PO(M)(ニチレイバイオサイエンス株式会社)を45分間、室温で反応させた。顕微鏡下でDAB基質キット(ニチレイバイオサイエンス株式会社)を用いて反応を可視化した。対比染色はマイヤーのヘマトキシリン(武藤化学工業株式会社)で行った。
【0056】
Meqに対するIHCの陽性反応は4段階、-:なし、+:弱い、++:中程度、+++:強い、で評価した。正常組織への非特異的な反応は、-:なし、+:あり、で評価した。結果を表2、
図2に示す。
【表2】
【0057】
〔実施例5〕 重鎖可変領域、軽鎖可変領域、及びCDRのアミノ酸配列の決定
各ハイブリドーマ約2×105個からQuick-RNA Microprep(Zymo Research Corp.)を用いてmRNAを抽出し、cDNAを合成した。5’-RACE法を用いて増幅し、配列解析用ベクターにクローニングした。各ハイブリドーマに対して、10クローンのH鎖及びL鎖配列解析を行い、コンセンサス配列を確定した。得られた配列からCDRを同定した。
【0058】
各ハイブリドーマ(3A3-112、5F7-82、6B5-128)の重鎖可変領域、軽鎖可変領域及びCDRのアミノ酸配列を
図3に示す。また、各アミノ酸配列は、配列表にも示す。アミノ酸配列と配列番号の関係は、下表の通りである。
【表3】
【0059】
〔実施例6〕 ウエスタンブロット法によるMSB-1細胞中のMeq検出
〔材料・方法〕
0.1 % SDS solutionを添加したRIPA Buffer(ナカライテスク株式会社)を用いて、MSB-1細胞1×106個からタンパク質を抽出した。NuPAGE MOPS SDS Running Buffer(Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いた還元条件下で抽出したタンパク質をNuPAGE 4-12% Bis-Trisアクリルアミド電気泳動ゲル(Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いてSDS-PAGE電気泳動し、ニトロセルロース膜に転写した。ニトロセルロース膜は洗浄後、0.8 %ブロックエース溶液(UK-B80、DSファーマバイオメディカル株式会社)で一晩、4 ℃でブロッキングを行った。洗浄後、5倍希釈した抗Meq抗体を含む培養上清を1時間、37 ℃で反応させた。洗浄後HRP標識ヤギ抗マウスIgG+A+M(H+L)(61-6420、Zymed Laboratories Inc.)を1時間、37 ℃で反応させた。洗浄後、HRPの基質として2,2’-Azino-di-(3-ethylbenzthiazoline sulfonic acid)(Sigma-Aldrich Inc.)を加え、反応を可視化した。
【0060】
〔結果〕
本発明の抗体は、MSB-1細胞中の約55-60 kDaのMeqを検出した(
図4)。