(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188064
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20221213BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221213BHJP
C23F 4/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H01L21/302 101H
H01L21/304 645C
H01L21/304 645Z
C23F4/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145856
(22)【出願日】2022-09-14
(62)【分割の表示】P 2018536215の分割
【原出願日】2018-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2017060353
(32)【優先日】2017-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 侯然
(72)【発明者】
【氏名】角屋 誠浩
(72)【発明者】
【氏名】中宇禰 功一
(72)【発明者】
【氏名】玉利 南菜子
(72)【発明者】
【氏名】井上 智己
(72)【発明者】
【氏名】中元 茂
(57)【要約】
【課題】半導体基板等のウエハをプラズマエッチングするプラズマ処理方法において、ウエハのエッチング処理によって処理室内に堆積する金属と非金属の複合堆積物を除去し、堆積物による異物の発生を低減することのできるプラズマ処理方法を提供する。
【解決手段】本発明は、材質がステンレスである部材が表面の一部に配置された処理室内にて試料をプラズマエッチングし前記処理室内をプラズマクリーニングするプラズマ処理方法において、前記試料を所定枚数プラズマエッチングするエッチング工程と、前記エッチング工程後、プラズマを用いて金属元素および非金属元素を含有し前記処理室内に堆積する堆積膜を除去する金属除去工程と、前記エッチング工程後、前記金属除去工程のプラズマと異なるプラズマを用いて金属元素および非金属元素を含有し前記処理室内に堆積する堆積膜を除去する非金属除去工程と、前記金属除去工程前、H
2ガスまたSF
6ガスを用いてプラズマ処理するトリートメント工程とを有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材質がステンレスである部材が表面の一部に配置された処理室内にて試料をプラズマエッチングし前記処理室内をプラズマクリーニングするプラズマ処理方法において、
前記試料を所定枚数プラズマエッチングするエッチング工程と、
前記エッチング工程後、プラズマを用いて金属元素および非金属元素を含有し前記処理室内に堆積する堆積膜を除去する金属除去工程と、
前記エッチング工程後、前記金属除去工程のプラズマと異なるプラズマを用いて金属元素および非金属元素を含有し前記処理室内に堆積する堆積膜を除去する非金属除去工程と、
前記金属除去工程前、H2ガスまたSF6ガスを用いてプラズマ処理するトリートメント工程とを有することを特徴とするプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料のプラズマ処理とプラズマクリーニングを含むプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体デバイスにおいて、トランジスタ特性を改善するため、従来のPolysilicon/SiO2構造からHigh-K/MetalGate構造へ移行が進んでいる。また、平面型トランジスタから立体型トランジスタ構造への移行も進んでいる。このため、トランジスタに使用される材料の種類の多様化と共に処理室内の表面の堆積物(難揮発性材料と揮発性材料)の種類とそのクリーニング方法も多様化してきている。
【0003】
更にトランジスタの微細構造を実現するために、エッチング制御性と選択比向上の要求が高まっている。こうした要求を満たすため、TiNやAl2O3等の薄膜メタルによるマスクやスペーサが利用されるようになっている。また、エッチングガスには、エッチングプロセス中に、エッチング装置の内壁に堆積物が発生しやすいCF系ガスが用いられるようになった。このようなエッチングにおける堆積物は、Si、C、Ti、Al、Taの中で一種類の元素により構成される単純な単層の堆積物ではなく、例えば、Ti、Al、TaといったメタルとSi、Cといったノンメタルの混合堆積物であることが多い。このため、このような複雑な混合堆積物にも対応するクリーニングが必要となってきている。
【0004】
従来、ウエハの処理によって発生する堆積物に対してウエハ処理毎又はロット毎にプラズマクリーニングを行って処理室内の表面状態を一定に保つ処理技術が知られている。例えば、特許文献1には、金属元素を含有する膜が配置された被処理材のプラズマエッチングにおいて、次の手順によるプラズマクリーニング方法が開示されている。(a)プラズマエッチングを行う処理室内にシリコン元素を含有する膜を堆積させる。(b)前記シリコン元素を含有する膜を堆積させた後、被処理材を前記処理室内に配置された試料台に載置する。(c)前記被処理材を前記試料台に載置した後、前記被処理材をプラズマエッチングする。(d)前記被処理材をプラズマエッチングした後、プラズマを用いて前記処理室内の金属元素を含有する物質を除去する。(e)前記金属元素を含有する物質を除去した後、前記処理室内に堆積しているシリコン元素を含有する膜をプラズマクリーニングする。そして、前記(a)における、シリコン元素を含有する膜は、シリコン元素を含有するガスを用いたプラズマにより堆積される。この場合、前記シリコン元素を含有するガスは、SiCl4ガスである。また、前記(d)における金属元素を含有する物質の除去は、Cl2ガスとBCl3ガスの混合ガス、Cl2ガスとSiCl4ガスの混合ガスまたはCl2ガスとH2ガスの混合ガスを用いて行われる。この場合、前記プラズマクリーニングは、NF3ガスを用いて行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5750496号公報
【特許文献2】特開2005-142369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、メタル(例えば、Ti、Al、Ta等)と、ノンメタル(例えば、Si、C等)との混合物からなる堆積物(以下、「混合堆積物」とも称する。)を生じるプロセスにおいては、上述の従来技術のプラズマクリーニング技術では、十分にメタルとノンメタルの混合堆積物を除去できないことが発明者らのクリーニング評価により判明した。以下、クリーニング評価について説明する。
【0007】
クリーニング評価に使用したプラズマエッチング装置は、
図11に示すマイクロ波ECR(Electron Cyclotron Resonance(ECR)プラズマエッチング装置である。このプラズマエッチング装置は、次のように構成される。処理室100内にウエハ101を載置する試料台102を有している。試料台102に対向して処理室100の上方に天板103と石英製のシャワープレート104とが設けられている。シャワープレート104部にガス供給装置105が接続されてシャワープレート104を介して処理室100内に処理ガスが供給される。
【0008】
処理室100の上方には天板103を介して導波管106と高周波電源(マイクロ波源)107が設けられている。処理室100および導波管106を囲み電磁石108が巻装されている。高周波電源107から発生したマイクロ波の電場と電磁石108によって発生した磁場との相互作用によって、処理室100内に供給された処理ガスがプラズマ化される。また、処理室100の内壁面には石英製の内筒109とリング状のアース110とが設けられる。内筒109は、処理室100内に生成されるプラズマから処理室の側壁を保護し、アース110には、イオンや電子による電流が流入する。
【0009】
さらに試料台102には、整合器111を介してバイアス印加用の高周波電源112が接続され、プラズマ中のイオンをウエハ101上に引き込むためのバイアス電圧が試料台102に印加される。処理室100の底部には真空排気バルブ113を介して真空排気装置(図示省略)が接続され、処理室100内を所定の圧力に維持・制御される。なお、シャワープレート104及び内筒109は電気的に浮遊している。また、本装置は、大気開放することなく処理室内の表面の堆積物を検出可能なAttenuated Total Reflection-Fourier Transfer Infrared Spectroscopy(ATR-FTIR、以下、「FTIR」と称する)装置114をプラズマが形成される処理室100の側面部に装着している。
【0010】
上述の構成の装置によりプラズマ処理を行い、FTIR装置を用いてメタルとノンメタル混合堆積物の基礎クリーニング評価を行った。この評価について
図12により説明する。
図12(a)は、メタルクリーニングの後にノンメタルクリーニングを行うクリーニング評価のフローを示している。また、
図12(b)は、ノンメタルクリーニングの後にメタルクリーニングを行うクリーニング評価のフローを示している。
【0011】
図12(a)及び
図12(b)に示すように、先ず、製品エッチング(S1201)を1ロット(25枚のウエハ)について行う。なお、以下で「製品エッチング」とは、実際の製品ウエハに対するエッチング、あるいは、実際の製品ウエハを模した試料に対するエッチングを意味する。エッチング条件は、エッチングガスとしてカーボンの堆積性が強いCH
3Fガスを用いた。また、エッチング評価ウエハとしてAl
2O
3がウエハの全面に形成されたウエハを使用した。このエッチングにおいて、処理室には、プラズマ化されたエッチングガスから供給されるカーボンとウエハからの反応生成物であるアルミの混合堆積物とが残留する。
【0012】
図12(a)においては、製品エッチング(S1201)後に、Cl系ガスを用いて、Ti、Al、Taの除去に有効なメタルクリーニング(S1202、処理時間200秒)を1回実施した。そして、SF
6ガスとO
2ガスの混合ガスを用いたSi、C堆積物の除去に有効なノンメタルクリーニング(S1203、処理時間200秒)を1回実施した。
一方、
図12(b)の処理フローでは、エッチング直後にノンメタルクリーニング(S1203)を実施し、
図12(a)の処理フローにおけるメタルクリーニング(S1202)とノンメタルクリーニング(S1203)の順番を逆にしている。
【0013】
図13(a)は、
図12(a)の処理フローに対応する各処理後のFTIRスペクトルである。評価ウエハ(Al
2O
3が全面に形成されているウエハ)25枚の製品エッチング後には、
図13(a)に示すように波数の650cm
-1から3150cm
-1までの広範囲に渡ってCC,CH,CF系のピークが観測された。これらのピークは,処理時間200秒ものメタルクリーニングS202の実施後も殆ど変化していない。このことから、メタルクリーニング処理(S1202)においては、処理室内に堆積するCH
xF
y膜の除去レートが非常に遅いと理解できる。
その後、ノンメタルクリーニング(S1203)を実施すると、これらC系ピークは消失する一方、波数1000cm
-1以下の低波数領域で観測されるAl-O(Al-F)系のピークが残存した。すなわち、AlとCの混合堆積物中のAlは,
図12(a)のクリーニングのフローでは除去が困難であることが判明した。メタルクリーニングでこれを除去しようとすると、数時間以上かかり、場合によっては数日間以上の処理でも除去できない。
【0014】
一方で、
図13(b)は、
図12(b)のフローに対応する各処理後のFTIRスペクトルである。
図13(b)に示すように製品エッチング直後のノンメタルクリーニング(S1203)によってC系のピークが消失するが、波数1000cm
-1以下の低波数領域で観測されるAl-O(Al-F)系のピークが観測される。その後にメタルクリーニング(S1202)を実施することにより、Al-O(Al-F)が減少することを確認した。
【0015】
図12(b)のフローによって、Al-O(Al-F)が減少する現象は、
図14を用いて説明できる。
図14(a)は、エッチング直後のメタルクリーニング中の推定反応モデルを図示したものである。エッチング後の混合堆積物に対して、メタルクリーニングをノンメタルクリーニングに対して先に行う場合、C系堆積物がプラズマ中のClラジカルをブロックするため、堆積物中のAlとClラジカルとの反応が困難になる。
【0016】
一方、
図14(b)は、製品エッチング直後のノンメタルクリーニング中の推定反応モデルを図示したものである。
図14(b)に示すように、ノンメタルクリーニングを製品エッチング直後に行うと、O、FラジカルによりC系堆積物が除去されるため、ノンメタルクリーニング後にはAlが露出する。CによるブロックがなくなったAlは、次に行われるメタルクリーニング中のClと反応してAlCl
3として揮発・排気することができる。
しかしながら、ノンメタルクリーニング中のO、Fラジカルによって一部のAlが酸化されたり、フッ化されたりして除去し難い反応物に変化し、メタルクリーニング後にも一部のAl系堆積物が残存し、完全に堆積物を除去することはできない。
【0017】
このようなことから本発明の目的は、半導体基板等のウエハのプラズマ処理において、ウエハのプラズマ処理によって処理室内に堆積する金属と非金属の複合堆積物を除去し、堆積物による異物の発生を低減することのできるプラズマ処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の代表的なプラズマ処理方法の一つは、材質がステンレスである部材が表面の一部に配置された処理室内にて試料をプラズマエッチングし前記処理室内をプラズマクリーニングするプラズマ処理方法において、
前記試料を所定枚数プラズマエッチングするエッチング工程と、
前記エッチング工程後、プラズマを用いて金属元素および非金属元素を含有し前記処理室内に堆積する堆積膜を除去する金属除去工程と、
前記エッチング工程後、前記金属除去工程のプラズマと異なるプラズマを用いて金属元素および非金属元素を含有し前記処理室内に堆積する堆積膜を除去する非金属除去工程と、
前記金属除去工程前、H2ガスまたSF6ガスを用いてプラズマ処理するトリートメント工程とを有することにより達成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ウエハのプラズマ処理によって発生する金属と非金属との複合堆積物に起因する異物(ディフェクト)を低減することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係るプラズマ処理方法の第1の実施例を示すプラズマ処理のフロー図及びFTIRのスペクトル図である。
【
図2】
図1に示すプラズマ処理フローにおけるクリーニング中の推定反応モデルである。
【
図3】本発明に係るプラズマ処理方法の第2の実施例を示すプラズマ処理のフロー図である。
【
図4】本発明に係るプラズマ処理方法の第3の実施例を示すプラズマ処理のフロー図である。
【
図5】
図4に示すプラズマ処理におけるステンレストリートメント処理を評価するフロー図である。
【
図6】
図5に示すステンレストリートメント処理の評価結果を示す図である。
【
図7】本発明に係るプラズマ処理方法の第4の実施例を示すプラズマ処理のフロー図である。
【
図8】発光強度におけるサイクリッククリーニングのサイクル回数依存性を示す図である。
【
図9】
図7に示すプラズマ処理におけるメタルクリーニング中の発光スペクトルを示す図である。
【
図10】本発明に係るプラズマ処理方法の第5の実施例を示すプラズマ処理のフロー図である。
【
図11】クリーニング評価に用いたプラズマエッチング装置を示す縦断面図である。
【
図12】クリーニング評価に用いたプラズマ処理フローを示す図である。
【
図13】
図12に示すプラズマ処理フローの各ステップに対応し得られたFTIRのスペクトルを示す図である。
【
図14】
図12に示すプラズマ処理フローにおけるクリーニング中の推定反応モデルを示す図である。
【
図15】サイクリッククリーニングの終点判定方法を改良したフロー図である。
【
図16】AlとCが積層する混合堆積物に対してサイクリッククリーニングを実施した場合のAl発光強度・CS発光強度とサイクル数の関係を示す図である。
【
図17】AlとCが積層する混合堆積物に対してサイクリッククリーニングを実施した場合のAl差分強度・CS差分強度とサイクル数の関係を示す図である。
【
図18】サイクリッククリーニングの各サイクルにおける処理室の表面状態の推定図である。
【
図19】フォークト関数を用いたAlピークの検出例である。
【
図20】ECR HighとLow設定時のアルミナクリーニングレート分布である。
【
図21】上下2つのECR高さを持つメタルクリーニングを用いたサイクリッククリーニングのシーケンスフローの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、プラズマ処理によって発生した金属元素を含有する堆積膜を除去するためのクリーニングと非金属元素を含有する堆積膜を除去するためのクリーニングを交互に複数回繰り返すことにより、金属と非金属との混合堆積物(以下、「複合堆積物」とも称する)を効率良く除去して、処理室内の異物発生を低減するものである。
なお、後述する実施例においては、混合堆積物は、主に、試料のエッチングによって発生した場合を用いて説明する。しかし、本発明のプラズマ処理方法によって除去できる混合堆積物は、エッチングによって発生した堆積物に限定されるものではなく、CVDやスパッタリングなど、様々な処理によって発生した堆積物にも適用することができる。
また、後述する実施例では、
図11に示すマイクロ波Electron Cyclotron Resonance(ECR)プラズマエッチング装置を用いた実施例である。以下、本発明に係るプラズマ処理方法を図を用いて説明する。
また、以下の記述で「処理室の表面」は、主に処理室の内面の表面を意味するものとする。
【0022】
〔実施例1〕
本発明のプラズマ処理方法である第1の実施例を
図1により説明する。
図1(a)は、本発明に係るプラズマ処理方法のフローを示す。まず、ステップS101において、試料である製品ウエハのエッチング処理を1ロット(25枚)行う。製品ウエハの処理は、例えば、特許文献2に示すような、Al
2O
3の薄膜メタルをマスクとして層間膜をフルオロカーボンガスを用いてプラズマエッチングする処理である。
【0023】
このエッチング処理により、処理室内にはプラズマ化された処理ガスの成分である炭素と、ウエハからの反応生成物であるアルミの混合堆積物とが残留する。この製品ウエハのエッチング処理を1ロット分処理した後の処理室への堆積物の堆積状態を
図2(a)に示す。例えば、処理室の側壁には、堆積物である炭素(C)とアルミ混合堆積物とが混ざり合った状態で残留している。
【0024】
次にステップS102において、クリーニングガスとしてBCl
3ガスとCl
2ガスの混合ガスを用い、堆積残留物であるAl等の金属を除去するメタルクリーニング(以下「金属除去工程」とも称する)を30秒行った。引き続きS103において、SF
6ガスとO
2ガスの混合ガスを用いてSi、C等を除去するノンメタルクリーニング(以下、「非金属除去工程」とも称する)を30秒実施した。その後、このメタルクリーニング(S102)とノンメタルクリーニング(S103)とを複数回、例えば、5回繰り返した(以下、このメタルクリーニングとノンメタルクリーニングの繰り返しのクリーニングを「サイクリッククリーニング」と称する)。このときのメタルクリーニング中の処理状態を
図2(b)に示し、ノンメタルクリーニング中の処理状態を
図2(c)に示す。
【0025】
メタルクリーニング(S102)中には、
図2(b)に示すように混合堆積物の表面に露出しているアルミ混合堆積物のAlとプラズマからのClラジカルとが反応して揮発性の高いAlxClyとなり、表面に露出しているアルミ混合堆積物が除去される。また、ノンメタルクリーニング(S103)中には、
図2(c)に示すようにメタルクリーニングでアルミ混合堆積物が除去され、混合堆積物の表面に露出している炭素(C)とプラズマからのFラジカルとが反応して揮発性の高いCxFyとなり、表面に露出したCが除去される。このメタルクリーニング(S102)とノンメタルクリーニング(S103)とが交互に繰り返されることによって、混合堆積物の表面にはAlとCが交互に露出してそれぞれ効果的に除去される。この結果、混合堆積物の厚さは徐々に薄くなって全て除去されることとなる。
【0026】
尚、ノンメタルクリーニング(S103)の処理時間が長いと、Cが除去されて表面に露出したAlがフッ化または酸化されて揮発性の低い物質に変化してしまう。このため、ノンメタルクリーニング(S103)におけるFラジカルやOラジカルの供給時間は、表面のCを除去するだけの時間とするのが良い。言い換えると、ノンメタルクリーニング時間は、露出したAlなどの金属が除去され難い物質へ変化しない範囲で設定される。したがって、本実施例におけるサイクリッククリーニングにおいては、ノンメタルクリーニングにおいて、混合堆積物の表面に現れたCを全部除去できなくても、Alのフッ化や酸化を防ぎながら繰り返し行うことが重要となる。また、Alのフッ化を防ぐため、サイクリッククリーニングとしてメタルクリーニング(S102)をノンメタルクリーニング(S103)より前に行うことが好ましい。
【0027】
メタルクリーニング(S102)におけるクリーニングガスには、上述した酸化物もしくはフッ化物の還元化に有効なホウ素含有ガスと塩素含有ガスの混合ガスであるBCl3ガスとCl2ガスの混合ガス、または、酸化物もしくはフッ化物の還元化に有効なシリコン含有ガスと塩素含有ガスの混合ガスであるSiCl4ガスとCl2ガスの混合ガスであることが望ましい。これらのガス系は、電気的にフローティングされた処理室の表面のメタルでも除去することが可能である。
【0028】
ノンメタルクリーニング(S203)におけるクリーニングガスには、上述したフッ素含有ガス、酸素含有ガス、またはこれらの混合ガス(フッ素含有ガスと酸素含有ガスの混合ガス)を用いる。その一例としては、SF6ガス、NF3ガス、SF6ガスとO2ガスの混合ガス、またはO2ガスである。但し、フッ素含有ガスはC,Siのどちらの除去にも有効であるが、酸素含有ガスは、C堆積物の除去にのみに有効であることに注意が必要である。このため、混合堆積物の種類に応じてノンメタルクリーニングのガス種を使い分ける必要がある。
【0029】
図1(b)は、
図1(a)に示すプラズマ処理を実施した後のFTIRスペクトルである。
図2(b)に示すようにAl系、Si系、C系のピークは観測されず、処理室の表面がクリーンな状態になっていることを確認できた。このため、
図1(a)に示すような本実施例のプラズマ処理を行うことによりCとAlの複雑な混合堆積物に対して十分な除去効果がある。因みに本実施例では、メタルクリーニング(S102)とノンメタルクリーニング(S103)を5回繰り返した例であったが、繰り返す回数は、混合堆積物の厚さ等を考慮して設定される。
【0030】
尚、上述した通り、混合堆積物が積層状態で形成されている場合には、メタルクリーニングとノンメタルクリーニングをシーケンシャルに各々1回ずつ実施しただけでは、C層またはAl層のどちらかでクリーニングがストップする事態が起こる。このことから、混合堆積物に対応するためには、Al除去のメタルクリーニングとC除去のノンメタルクリーニングを2回以上繰り返す必要があるため、本実施例のサイクリッククリーニングとしては、少なくとも2回のサイクルを行うことになる。
【0031】
以上、本実施例によれば、ウエハのエッチング処理後に、メタルクリーニングとノンメタルクリーニングとをサイクリックに複数回繰り返し実施することにより、ウエハのエッチング処理によって発生する金属と非金属とを交互に少しずつ、表面に露出した堆積物を除去することができる。言い換えると、金属と非金属とを交互に実質的に一層ずつ除去するエッチング工程を繰り返すことにより、複雑に堆積した複合堆積物を除去することができる。このことによって、複合堆積物に起因する異物・ディフェクトを低減して長期に渡る量産処理を行うことができる。また、メタルクリーニングをノンメタルクリーニングより先に実施するため、除去され難い物質へのメタルの変化を防止でき、複合堆積物除去後のメタル堆積物の残留を低減することができる。
【0032】
尚、本実施例では、ステップ101における製品エッチングを1ロット(例えば、ウエハ25枚毎)処理した後、サイクリッククリーニングを行うようにしたが、サイクリッククリーニングの実施のタイミングは、製品エッチングステップS101をウエハ1枚毎としても良いし、複数枚毎または複数ロット毎としても良い。
【0033】
また、本実施例では、メタルのフッ化や酸化による除去され難い物質への変化を避けるため、メタルクリーニング後にノンメタルクリーニングを行うようにしたが、本発明としては、必ずしもメタルクリーニング後にノンメタルクリーニングを行う必要はない。なぜならば、本実施例のメタルクリーニングは、酸化物もしくはフッ化物の還元化に有効なホウ素含有ガスまたは酸化物もしくはフッ化物の還元化に有効なシリコン含有ガスを用いることにより、メタルのフッ化物やメタルの酸化物を除去できるためである。このため、本発明に係るサイクリッククリーニングとしては、ノンメタルクリーニングをメタルクリーニングの前に実施しても良い。この場合、例えば、非金属堆積物が多い場合により有効となる。
【0034】
さらにサイクリッククリーニング中に高エネルギーのイオンが存在することは望ましくない。なぜなら、試料台102やアース110の表面に望ましくないエッチング(ダメージ)が発生するためである。これは、試料台102やアース110のエッチング物に起因する異物の発生原因となる。このため、サイクリッククリーニングは化学的なクリーニングであることが望ましく、試料台102に印加するRFバイアスは、できる限り低いことが望ましい(0Wがより好ましい)。
【0035】
また、本実施例において、メタルクリーニング(S102)とノンメタルクリーニング(S103)は、ウエハ(ダミーウエハ)を試料台102に載置せずに実施したが、メタルクリーニングで用いる塩素含有ガスは、Alを含有する試料台102の表面を僅かにエッチングするため、サイクリッククリーニングは、Si等のダミーウエハを試料台102に載置して実施することが望ましい。
【0036】
次に本発明の第2の実施例を
図3により説明する。本実施例は前述の第1の実施例に基づいて、プロセス変動をさらに低減化できるプラズマ処理方法である。
【0037】
〔実施例2〕
図3は、プラズマ処理のフローを示す図である。
図3に示すようにステップS301において製品ウエハのエッチング処理を行い、次にステップS302においてメタルクリーニングを実施する。続いてステップS303において、Cl
2ガスのプラズマを用いてボロン堆積物を除去する。次にステップS304において、ノンメタルクリーニングを実施する。さらにステップS305において、O
2ガスのプラズマにより処理室の表面のフッ素を除去する。この後、ステップS302、S303、S304、S305を順次、混合堆積物が除去されるまで繰り返す。
【0038】
尚、メタルクリーニング(S302)は、
図1(a)に示すメタルクリーニング(S102)と同様であり、説明は省略する。また、ノンメタルクリーニング(S304)は、
図1(a)に示すノンメタルクリーニング(S103)と同様であり、説明は省略する。本実施例においてメタルクリーニング(S302)とノンメタルクリーニング(S304)との間にボロン堆積物除去ステップ(S303)を追加する技術的意義は、以下の通りである。
【0039】
メタルクリーニング(S302)において、BCl3ガスとCl2ガスの混合ガスを用いた場合、処理室内に堆積する酸化メタル・窒化メタルは、処理室内の酸素・窒素がBと結合することによって生成される。このようなボロン化合物としては、BOxClyやBNxClyがある。これらボロン化合物は、その結合エネルギーが高く、低揮発性であるため、処理室の表面に容易に堆積・残留する。このため、ボロン堆積物除去ステップ(S303)により、このようなボロン化合物を除去する必要がある。また、ボロン堆積物除去ステップ(S303)により、ボロン堆積物に覆われていたメタル堆積物は次のメタルクリーニングステップ(S302)で除去し易くなる。
【0040】
次にフッ素を除去するステップ(S305)をノンメタルクリーニング(S304)の後に追加する技術的意義について説明する。ノンメタルクリーニング(S304)においてフッ素含有ガスを用いた場合、処理室内の石英部品等の表面にフッ素が残留する。これは、SiとFの結合エネルギーが高いためである。石英のフッ化が進むとSiF4となり揮発するが、ノンメタルクリーニング(S304)の終盤で完全に反応が進行しなかった石英表面はSiOxFyとなる。この状態で、ステップS302、S303、S304を順次繰り返すサイクリッククリーニングとした場合、次のロットの製品ウエハをエッチング処理したときに、石英部品等の表面に残留したフッ素によってウエハ表面のフッ化が生じ、エッチングがストップする等の予期せぬプロセス変動や異物の問題を生じることがある。このため、このような残留フッ素を除去するため、O2ガスのプラズマを用いた処理室の表面のフッ素を除去する残留フッ素の除去(S305)を実施する。
【0041】
以上、本実施例によれば、処理室内のボロン化合物を除去するステップS303と処理室の表面の残留フッ素を除去するステップS305を追加することによって、クリーニング途中に残留する可能性のあるボロンおよびフッ素を除去することができ、更なるプロセスの変動性の低減と異物低減に効果があり、安定に量産処理ができる。
【0042】
また、本実施例では、メタルのフッ化や酸化によって除去され難い物質への変化を避けることができるため、メタルクリーニング後にノンメタルクリーニングを行うようにしたが、本発明としては、必ずしもメタルクリーニング後にノンメタルクリーニングを行う必要はない。なぜならば、本実施例のメタルクリーニングは、酸化物もしくはフッ化物の還元化に有効なホウ素含有ガス、または、酸化物もしくはフッ化物の還元化に有効なシリコン含有ガスを用いることにより、メタルのフッ化物やメタルの酸化物を除去できるためである。このため、本発明に係るサイクリッククリーニングとしては、ノンメタルクリーニングをメタルクリーニングの前に実施しても良い。また、本実施例で説明したサイクリッククリーニングの実施のタイミングは、ウエハの製品エッチング処理ステップS301において、1枚毎でも製品エッチング1ロット毎(例えばウエハ25枚毎)でも良い。
【0043】
次に、アース110としてステンレス製のアースを使っている場合、可能な限りステンレスを削らないことが量産安定性にとって非常に重要である。なぜなら、ステンレスの削れ量は、ステンレス系の異物発生量と相関するためである。しかし、実施例1及び2で説明したメタルクリーニングが塩素含有ガスを用いる場合は、ステンレスを塩化して腐食・エッチングする可能性がある。また、ステンレスの錆びの原因は、主に塩化による不動態膜の腐食と酸化反応である。
【0044】
このようなことから、処理室内の表面材料にステンレスを使っている場合、ステンレスの削れ等を抑制できるプラズマ処理方法について以下、説明する。
【0045】
〔実施例3〕
図4は、本実施例のプラズマ処理のフロー図である。
図4に示すようにステップS401において製品エッチングを行い、次にステップS402において、H
2ガスまたはSF
6ガスを用いたプラズマ処理を実施する。続いてステップS403においてメタルクリーニングを実施し、ステップS404において、Cl
2ガスのプラズマを用いてボロン堆積物を除去する。次にステップS405において、ノンメタルクリーニングを実施する。さらにステップS406において、O
2ガスのプラズマにより処理室の表面のフッ素を除去する。この後、S402、S403、S404、S405、S406を順次、混合堆積物が除去されるまで繰り返す。
【0046】
尚、メタルクリーニング(S403)とボロン除去(S404)とノンメタルクリーニング(S405)とフッ素除去(S406)は、それぞれ、
図3に示すメタルクリーニング(S302)とボロン除去(S303)とノンメタルクリーニング(S304)とフッ素除去(S305)と同様であるため、メタルクリーニング(S403)とボロン除去(S404)とノンメタルクリーニング(S405)とフッ素除去(S406)の各々の説明は省略する。
【0047】
以上のようなプラズマ処理を行うことにより、メタルクリーニング(S403)中のステンレスの削れ量を低減することが可能であり、異物量を低減して安定に量産処理を行うことができる。次にS402において用いるガスをH2ガスまたはSF6ガスとした理由を説明する。
【0048】
図5は、ステンレスの削れ量を評価するフローである。
図5に示すようにステップS501において、ステンレストリートメントを実施する。続いてステップS502において、メタルクリーニングを実施する。メタルクリーニング(S502)後にステンレス部品の削れ量を走査型電子顕微鏡により計測した。尚、ステンレストリートメントに用いるプラズマを生成するガスとして、O
2ガス、SF
6ガス、CF
4ガス、NF
3ガス、BCl
3ガスとCl
2ガスの混合ガス、CF
4ガスとO
2ガスの混合ガス、SF
6ガスとO
2ガスの混合ガス、N
2ガス、H
2ガス、SF
6ガスとH
2ガスの混合ガス、HBrガス、Arガスを順次、一つずつ評価した。また、メタルクリーニング(S502)は、
図1(a)に示すメタルクリーニング(S102)と同様であるため、説明は省略する。
【0049】
図6は、トリートメントプラズマの種類とステンレスのエッチング量の関係を示すグラフである。
図6に示すようにトリートメントを実施しない場合は、約7nmの削れ量であるのに対してSF
6ガスまたはH
2ガス以外のガスでは概ねステンレスの削れ量が増加(悪化)している。一方、SF
6ガスまたはH
2ガスによるステンレストリートメントでは僅か2nmまで削れ量が低減する結果であった。
【0050】
ステンレスの削れのメカニズムは、ステンレス表面に形成されるクロム酸化物である不動態膜が酸素を伴う塩化クロミルとして揮発することが知られている。このため、ステンレスの削れを抑制するためには、ステンレスの不動態膜の塩化クロミル化を抑制することが有効であると考えられ、SF6ガスまたはH2ガスのプラズマにより、ステンレスから酸素を奪う水素の還元効果が発揮されたものと推定される。このような結果からステンレストリートメント(S602)にH2ガスによるプラズマまたはSF6ガスによるプラズマを用いるのが適している。
【0051】
また、本実施例は、
図4に示すようなプラズマ処理方法で説明したが、ボロン除去ステップ(S404)及びフッ素除去ステップ(S406)は必ずしも必要ではない(例えばボロンやフッ素が残留しても製品プロセスへの感度が小さい等)。このため、ステンレストリートメントを
図1(a)に示すプラズマ処理方法にも適用しても本実施例と同様の効果を得ることができる。具体的なフローは、メタルクリーニング(S102)の前にステンレストリートメントを実施し、ステンレストリートメントとメタルクリーニング(S102)とノンメタルクリーニング(S103)を順次繰り返すフローであってもよい。
【0052】
さらに本実施例では、メタルがフッ化や酸化によって、除去され難い物質への変化することを避けるため、メタルクリーニング後にノンメタルクリーニングを行うようにしたが、必ずしもメタルクリーニング後にノンメタルクリーニングを行う必要はない。なぜならば、本実施例のメタルクリーニングは、酸化物もしくフッ化物の還元化に有効なホウ素含有ガスまたは酸化物もしくフッ化物の還元化に有効なシリコン含有ガスを用いることにより、メタルのフッ化物やメタルの酸化物を除去できるためである。このため、本発明に係るサイクリッククリーニングとしては、ノンメタルクリーニングをメタルクリーニングの前に実施しても良い。
【0053】
また、ステンレストリートメントは、
図5に示すようにメタルクリーニングの前に実施すれば、本実施例と同様の効果を得ることができる。このため、本実施例に係る発明としては、メタルクリーニングの前にステンレストリートメントを実施すればよく、他の工程との順序には何ら限定されることはない。つまり、本実施例に係る発明は、材質がステンレスである部材が表面に配置された処理室内にて試料をプラズマエッチングするプラズマ処理方法において、H
2ガスまたSF
6ガスを用いてプラズマ処理するトリートメント工程と、前記トリートメント工程後、プラズマを用いて金属元素を含有する堆積膜を除去する金属除去工程とを有することを特徴とする発明である。
【0054】
次に前述の実施例1~3のようにメタルクリーニングとノンメタルクリーニングとを複数回繰り返して行うサイクリッククリーニングにおいて、クリーニングの繰り返し回数をプラズマの発光を用いて決める方法について、
図7~9により以下説明する。
【0055】
〔実施例4〕
図7は、サイクリッククリーニングの回数をプラズマの発光を用いて決定するプラズマ処理方法のフロー図である。
【0056】
図7に示すようにステップS701において製品ウエハのエッチングを行い、次にステップS702においてメタルクリーニングを実施する。続いてステップS703において、Cl
2ガスのプラズマを用いてボロン堆積物を除去する。次にステップS704において、ノンメタルクリーニングを実施する。さらにステップS705において、O
2ガスのプラズマにより処理室の表面のフッ素を除去する。この後、ステップS702、S703、S704、S705を順次、混合堆積物が除去されるまで繰り返す。
【0057】
尚、メタルクリーニング(S702)は、
図1(a)に示すメタルクリーニング(S102)と同様であり、説明は省略する。また、ノンメタルクリーニング(S704)は、
図1(a)に示すノンメタルクリーニング(S103)と同様であり、説明は省略する。さらにボロン堆積物除去ステップ(S703)は、
図3に示すボロン堆積物除去ステップ(S303)と同様であり、説明は省略する。また、フッ素を除去するステップ(S705)は、
図3に示すフッ素を除去するステップ(S305)と同様であり、説明は省略する。
【0058】
次にステップS706において、メタルクリーニング(S702)で除去する金属含有堆積物に対応するプラズマ発光強度とノンメタルクリーニング(S704)で除去する非金属含有堆積物に対応するプラズマ発光強度のどちらも概ね0であるかを判定する。金属含有堆積物に対応するプラズマ発光強度及び非金属含有堆積物に対応するプラズマ発光強度が概ね0であれば、次の処理(S707)を行い、金属含有堆積物に対応するプラズマ発光強度または非金属含有堆積物に対応するプラズマ発光強度が0でない場合は、メタルクリーニング(S702)、ボロン除去(S703)、ノンメタルクリーニング(S704)、フッ素除去(S705)を順次、実施してステップS706において判定を行う。但し、ステップS706の判定は、ステップS702、ステップS703、ステップS704、ステップS705を順次2回繰り返した以降に行う。
【0059】
図7に示すプラズマ処理は、例えば、反応生成物がAl系とC系の場合、Al発光強度とC発光強度のどちらも概ね0になるまでメタルクリーニング(S702)、ボロン除去(S703)、ノンメタルクリーニング(S704)、フッ素除去(S705)を順次繰り返すことになる。
なお、金属含有堆積物及び非金属含有堆積物に対応するプラズマ発光強度の測定は、リアルタイムにメタルクリーニング(S702)及びノンメタルクリーニング(S704)の後に行ってもよいし、あるいは、リアルタイムにメタルクリーニング(S702)及びノンメタルクリーニング(S704)を行っている最中に、それぞれリアルタイムで測定を実施してもよい。リアルタイムにメタルクリーニング(S702)及びノンメタルクリーニング(S704)の発光強度の終点を検出するためには,現時点の発光強度と一つ前のサイクルの発光強度との差分をモニタする方法がある。そして、この差分値が概ね0になったところで、その段階での発光強度が飽点(終点)したとすれば良い。
そして、いずれのタイミングで発光強度の測定を行ったとしても、S706の工程でメタルクリーニング(S702)などを再度実施するか、次の処理(S707)を判定することとなる。
【0060】
さらにメタルクリーニング(S702)中のAl、Ti、Ta原子または分子の各発光強度の差分値の全てが概ね0を満たし、かつノンメタルクリーニング(S704)のSi、C原子または分子の発光強度の差分値の全てが概ね0を満たすまでメタルクリーニング(S702)、ボロン除去(S703)、ノンメタルクリーニング(S704)、フッ素除去(S705)を順次、繰り返すサイクルを継続しても良い。このような方法を採用するにより、ウエハや導入ガスから生成される複雑な各種反応生成物を取り残すことなく除去することが可能となる。尚、ここで用いた「差分値が概ね0を満たし」は、厳密には「差分値の絶対値」が分光器のCCDノイズの最大量とプラズマゆらぎの最大量で合成される値を閾値としてこの閾値と同程度以下の値になったことを意味する。
【0061】
つまり、Nを自然数とし、N回目の前記金属除去工程にてモニタされた発光強度と(N-1)回目の前記金属除去工程にてモニタされた発光強度との差の絶対値が所定値以下となった場合、前記金属除去工程を終了する。
そして、Mを自然数とし、M回目の前記非金属除去工程にてモニタされた発光強度と(M-1)回目の前記非金属除去工程にてモニタされた発光強度との差の絶対値が所定値以下となった場合、前記非金属除去工程を終了することによって、サイクリッククリーニングの終了を判定することができる。
【0062】
次に、
図8を用いて、メタルクリーニング(S702)、ボロン除去(S703)、ノンメタルクリーニング(S704)、フッ素除去(S705)を順次、繰り返すサイクリッククリーニングの終了を判定する具体例を説明する。
図8は、サイクリッククリーニング中の発光強度とサイクリッククリーニングのサイクル数の関係を示している。縦軸は,メタルクリーニング(S702)中のAl原子の発光強度(波長394nm)とノンメタルクリーニング(S704)中のSiF分子の発光強度(波長440nm)を任意単位で示す。Al原子の発光強度の変化は、製品エッチング(S701)にて生成された反応生成物の処理室内における堆積の変化に関連している。また、SiF分子の発光強度の変化は、処理室内の表面部材の石英面積の変化(石英表面上の金属含有堆積物が増加すると、SiF発光強度は減少する)とSi堆積物の変化に関連する。
【0063】
図8に示すようにAl原子の発光強度はサイクル数の増加に従って減少し、サイクル数4で飽和した。一方、SiF分子の発光強度はサイクル数の増加に従って増加し、サイクル数4で飽和した。これらのAl原子の発光強度の飽和及びSiF分子の発光強度の飽和は、処理室内の堆積物が除去されたことを意味する。このため、サイクル数4以降でサイクリッククリーニングを終了して良いことになる。
【0064】
次に
図9を用いて、発光強度の終点検出を更に高精度に行う方法について説明する。
図9は、メタルクリーニング(S702)中の発光スペクトルを示したものである。
図9の「初期」は、サイクリッククリーニングの1サイクル目のスペクトルであり、
図9の「最後」は、サイクリッククリーニングの5サイクル目のスペクトルである。Al原子の発光強度が波長394nmと396nmに観測されている。一方、391nmより短波長領域でも発光強度が変化している。これは、Alの発光とは関係ないプラズマの変化成分であり、いわばノイズ成分である。このノイズ成分は、波長394nmと396nmのAlにも重畳されて影響を及ぼしていると考えられる。このため、モニタする発光としては、Al原子の発光強度I
394nmだけを用いるよりも差分値(I
394nm-I
391nm)や除算値(I
394nm/I
391nm)を用いるのがより望ましい。
【0065】
これは、Al発光強度だけではなく、TiやTaに対しても同様のことが言える。例えば、Tiの波長:399nmに対しては近傍の402nmのバックグランド強度の差分値又は除算値を用いるのがよい。対象とする波長の近傍の波長で減算又は除算した値を用いることにより、対象とする原子以外の発光変化を除外することが可能となる。その結果、サイクリッククリーニングの回数の自動終了の誤判定を防ぐことが可能となる。ここで、近傍とは、対象とする波長を中心として±10nmの範囲とする。
【0066】
つまり、金属除去工程にてモニタされた発光強度として原子もしくは分子のピーク波長の発光強度と前記ピーク波長の所定範囲内におけるバックグランドの発光強度との差分値または前記ピーク波長の発光強度を前記ピーク波長の所定範囲内におけるバックグランドの発光強度により除した値を用いる。また、非金属除去工程にてモニタされた発光強度として原子もしくは分子のピーク波長の発光強度と前記ピーク波長の所定範囲内におけるバックグランドの発光強度との差分値または前記ピーク波長の発光強度を前記ピーク波長の所定範囲内におけるバックグランドの発光強度により除した値を用いることによって、発光強度の終点検出を更に高精度に行うことが可能となる。
【0067】
また、残留メタルの検出方法としてAlの場合には、Al原子の発光強度だけでなく、AlCl分子の発光強度も使用することができる。また、Tiの検出方法についても同様にTi原子の発光強度以外にTiCl分子の発光強度も使用できる。さらにTaについては、Ta原子の発光強度以外にTaCl分子の発光強度も利用できる。また、これらのエッチングラジカルであるCl、BCl発光強度を用いても良い。また、残留非金属の検出方法としては、Si、SiF、C2、CFx、CO、CN、CS、CH、エッチングラジカルであるF、Oの発光強度を用いてもよい。
【0068】
また、本実施例は、
図7に示すようなプラズマ処理方法で説明したが、ボロン除去ステップ(S703)及びフッ素除去ステップ(S705)は必ずしも必要ではない(その理由は、例えばボロンやフッ素が残留しても製品プロセスへの感度が小さいことなどによる)。このため、ステップS706を
図1(a)に示すプラズマ処理方法にも適用しても本実施例と同様の効果を得ることができる。
具体的なフローは、ノンメタルクリーニング(S103)の後にステップS706を実施し、金属含有堆積物に対応するプラズマ発光強度及び非金属含有堆積物に対応するプラズマ発光強度が概ね0であれば、次の処理(S707)を行い、金属含有堆積物に対応するプラズマ発光強度または非金属含有堆積物に対応するプラズマ発光強度が0でない場合は、メタルクリーニング(S102)、ノンメタルクリーニング(S103)を順次繰り返すフローである。
【0069】
さらに本実施例では、メタルのフッ化や酸化による除去され難い物質への変化を避けるため、メタルクリーニング後にノンメタルクリーニングを行うようにした。しかし、本発明としては、必ずしもメタルクリーニング後にノンメタルクリーニングを行う必要はない。なぜならば、本実施例のメタルクリーニングは、酸化物もしくフッ化物の還元化に有効なホウ素含有ガスまたは酸化物もしくフッ化物の還元化に有効なシリコン含有ガスを用いることにより、メタルのフッ化物やメタルの酸化物を除去できるためである。このため、本発明に係るサイクリッククリーニングとしては、ノンメタルクリーニングをメタルクリーニングの前に実施しても良い。
【0070】
また、本実施例では、ステップS706において、金属含有堆積物に対応するプラズマ発光強度と非金属含有堆積物に対応するプラズマ発光強度のどちらも概ね0であるかを判定した。しかし、本発明に係るプラズマ処理方法としては、必ずしもステップS706において判定する必要はない。例えば、メタルクリーニング(S702)において、金属含有堆積物に対応するプラズマ発光強度が概ね0であるか判定し、ノンメタルクリーニング(S704)において、非金属含有堆積物に対応するプラズマ発光強度が概ね0であるかを判定し、金属含有堆積物に対応するプラズマ発光強度及び非金属含有堆積物に対応するプラズマ発光強度が概ね0の場合にサイクリッククリーニングを終了しても良い。
【0071】
以上より、本発明に係るサイクリッククリーニングのサイクル数は、メタルクリーニング及びノンメタルクリーニング中の発光強度変化を用いて自動的に決定することが可能であり、金属や非金属に起因する異物やプロセス変動を低減して安定に量産処理を行うことができる。
【0072】
次に実施例1~4にて説明したサイクリッククリーニングの運用システムに関するFault Detection and Classification:FDC技術について説明する。
【0073】
〔実施例5〕
実施例4で説明したようにサイクリッククリーニングのサイクル数は、発光強度の変化等を用いて自動的に決められるのが理想的である。しかし、サイクル数をあらかじめ装置管理者が設定し、結果としてクリーニングが十分であるか不十分であるかを判定させる運用方法が望まれる場合がある。具体的には、装置管理者がサイクル数を設定し、サイクル数が不適合であった場合、コンピューターのスクリーン上に警告を出したり、それ以降の処理をストップさせたりしたい場合がある。つまり、サイクル数の不足に対して補助的な機能を追加する。
【0074】
図10は、サイクリッククリーニングのサイクル数の不足に対して警告表示やプラズマ処理の中断を行うための判定フローである。
図10に示すようにステップS1001において製品エッチングを行い、次にステップS1002においてメタルクリーニングを実施する。続いてステップS1003において、Cl
2ガスのプラズマを用いてボロン堆積物を除去する。次にステップS1004において、ノンメタルクリーニングを実施する。さらにステップS1005において、O
2ガスのプラズマにより処理室の表面のフッ素を除去する。この後、ステップS1002、S1003、S1004、S1005を順次、混合堆積物が除去されるまで繰り返す。
【0075】
尚、メタルクリーニング(S1002)は、
図1(a)に示すメタルクリーニング(S102)と同様であり、説明は省略する。また、ノンメタルクリーニング(S1004)は、
図1(a)に示すノンメタルクリーニング(S103)と同様であり、説明は省略する。さらにボロン堆積物除去ステップ(S1003)は、
図3に示すボロン堆積物除去ステップ(S303)と同様であり、説明は省略する。また、フッ素を除去するステップ(S1005)は、
図3に示すフッ素を除去するステップ(S305)と同様であり、説明は省略する。
【0076】
次にステップS1006において、装置管理者が設定する設定サイクル数に達しているかどうかを判定し、設定サイクル数に達していない場合は、メタルクリーニング(S1002)、ボロン除去(S1003)、ノンメタルクリーニング(S1004)、フッ素除去(S1005)を順次、実施する。
【0077】
ステップS1006において、装置管理者が設定する設定サイクル数に達しているかどうかを判定し、設定サイクル数に達している場合は、S1007において、金属(Al)の発光強度の差分値と非金属(SiF)の発光強度の差分値のどちらも概ね0であるかを判定する。メタルクリーニング(S1002)の金属(Al)の発光強度の差分値及びノンメタルクリーニング(S1004)の非金属(SiF)の発光強度の差分値が概ね0であれば、次の処理(S1008)を行う。そして、メタルクリーニング(S1002)の金属(Al)の発光強度の差分値またはノンメタルクリーニング(S1004)の非金属(SiF)の発光強度の差分値が0でない場合は、S1009において、コンピューターの画面上に警告表示または警告表示及び処理の中断を行う。
【0078】
さらに処理の中断と同時に例えば、コンピューターの画面上に処理の継続を行うかどうかを装置管理者に選択させる画面を表示し、装置管理者の指示により例えば、次のロット処理等の次の処理(S1008)を行うかまたは、そのまま処理を中断することを選択できるようにしても良い。また、本実施例ではAlの発光強度の差分値とSiFの発光強度の差分値を用いた例で警告表示や処理の中断を行うフローを説明したが、本実施例は、実施例4で説明したようにAlやSiの反応生成物に限定されるものではない。実施例4を適用すれば、Al、Ti、Ta等の金属やSi、C、B等の非金属の複雑な混合堆積物に対しても警告表示または警告表示及び処理の中断を行うことができる。
【0079】
また、本実施例は、
図10に示すようなプラズマ処理方法で説明したが、ボロン除去ステップ(S1003)及びフッ素除去ステップ(S1005)は必ずしも必要ではない(その理由は、例えばボロンやフッ素が残留しても製品プロセスへの感度が小さいことなどによる)。このため、本実施例のサイクリッククリーニングを
図1(a)に示すサイクリッククリーニングに置き換えても本実施例と同様の効果を得ることができる。
【0080】
さらに本実施例では、メタルのフッ化や酸化による除去され難い物質への変化を避けるため、メタルクリーニング後にノンメタルクリーニングを行うようにしたが、本発明としては、必ずしもメタルクリーニング後にノンメタルクリーニングを行う必要はない。なぜならば、本実施例のメタルクリーニングは、酸化物もしくフッ化物の還元化に有効なホウ素含有ガスまたは酸化物もしくフッ化物の還元化に有効なシリコン含有ガスを用いることにより、メタルのフッ化物やメタルの酸化物を除去できるためである。このため、本発明に係るサイクリッククリーニングとしては、ノンメタルクリーニングをメタルクリーニングの前に実施しても良い。
【0081】
〔実施例6〕
実施例4で説明したようにサイクリッククリーニングのサイクル数は、現時点のサイクルの発光強度と一つ前のサイクルの発光強度との差分をモニタする方法等で決めることができる。しかし、実施例4の方法だけでは適切な終点を検出できない場合がある。本実施例では、その例とその適切な終点判定方法について説明する。
図15は、サイクリッククリーニングの終点判定方法を改良したフロー図である。実施例4で説明した
図7とは、終点判定方法S1506のみが異なる。本終点判定方法が必要となる場面は、メタルやノンメタルの積層堆積物の量が多い場面である。以下に、
図16~
図18を用い、製品エッチング(S701)にてメタルの堆積物量が多い場面でのサイクリッククリーニングの一例について、発光と処理室の表面状態の関係を示しながら説明する。
【0082】
図16は、AlとCが積層する混合堆積物に対してサイクリッククリーニングを実施した場合のAl発光強度・CS発光強度とサイクル数の関係を示しており、
図17は、Al差分強度・CS差分強度とサイクル数の関係を示している。ここで、差分強度とは、現時点のサイクルの発光強度と一つ前のサイクルの発光強度との差分である。Al発光強度は除算値I
394nm/I
391nm、CS発光強度は除算値I
258nm/I
250nmを用いた。Al発光強度はメタルクリーニング(S702)中のAl堆積物の除去量に関係し、CS発光強度はノンメタルクリーニング(S704)中のC堆積物の除去量に関係(SF
6プラズマとC堆積物の反応によりCSが生成される)する。AlとCS発光の両差分強度が概ね0となるサイクルが終点の候補となる。しかし、
図17から明らかなように、差分強度が概ね0となるタイミングは、サイクルnの時点とn+3の時点の二つ存在する。
【0083】
一方、
図18はサイクリッククリーニングの各サイクルにおける処理室の表面状態の推定図である。サイクルn-4において、プラズマから見た最表面層はC堆積物であり、その奥にAl堆積物と処理室の壁面がある。
図16において、先ず、サイクルn-4では最表面のC堆積物が除去されるため、CS発光強度が増加した。次にサイクルn-1においてはC堆積物の除去は完了しているが、Al層の除去がピークを迎えている。
次のサイクルnにてAl堆積物の厚みは減少するが、プラズマの発行強度からみたAlの表面積は、サイクルn-1と変わらない状態を示している。このため、メタルクリーニング中のサイクルn-1とnのAl発光強度は概ね同じとなり、
図17において、nの差分強度が概ね0となる。しかし、模式図に示すように、サイクルnの時点は、真の終点ではない。従って、差分強度が概ね0となる点を終点とする方法だけでは誤判定を招く場合がある。これを回避するためには、サイクルの各時点において、Alの差分強度が概ね0に加えて、Al発光強度がある閾値以下の場合に限り終点とすればよい。
【0084】
つまり、XおよびYを自然数とし、X回目の金属除去工程にてモニタされた発光強度と(X-1)回目の金属除去工程にてモニタされた発光強度との差の絶対値が第一の所定値(概ね0であることを含む)以下となるとともに前記X回目の金属除去工程にてモニタされた発光強度が第二の所定値(閾値として設定する数値)以下となることを第一の要件とし、前記第一の要件をY回満たした場合、金属除去工程が終了したと判定する。
そして、xおよびyを自然数とし、x回目の前記非金属除去工程にてモニタされた発光強度と(x-1)回目の前記非金属除去工程にてモニタされた発光強度との差の絶対値が第三の所定値(概ね0であることを含む)以下となるとともに前記x回目の前記非金属除去工程にてモニタされた発光強度が第四の所定値(閾値として設定する数値)以下となることを第二の要件とし、前記第二の要件をy回満たした場合、前記非金属除去工程が終了したと判定することにより、堆積物の除去の終点検出を高精度に行うことが可能となる。
ただし、X回目、(X-1)回目、及び、x回目、(x-1)回目の表記は、いずれも連続した工程であることを示すものであって、X、xは固定した一つの数値を意味するものではない。
具体的には、Y=2の場合であれば、3回目と4回目の金属除去工程において第一の要件を満たし、7回目と8回目の金属除去工程において再度第一の要件を満たした場合には、金属除去工程が終了したと判定することになる。つまり、この例においては、Xは4又は8となりえる。
【0085】
さらに、別の終点検出方法として、XおよびYを自然数とし、以下の(1)及び(2)の条件を満たした場合に、金属除去工程が終了したと判定する。
(1)X回目の金属除去工程にてモニタされた発光強度と(X-1)回目の金属除去工程にてモニタされた発光強度との差の絶対値が第一の所定値(概ね0であることを含む)以下となることをY回満たす。
(2)上記(1)において前記第一の所定値をY回満たした際のX回目の金属除去工程にてモニタされた発光強度が第二の所定値(閾値として設定する数値)以下となる。
そして、xおよびyを自然数とし、以下の(3)及び(4)の条件を満たした場合に、非金属除去工程が終了したと判定する。
(3)x回目の非金属除去工程にてモニタされた発光強度と(x-1)回目の非金属除去工程にてモニタされた発光強度との差の絶対値が第三の所定値(概ね0であることを含む)以下となることをy回満たす。
(4)前記x回目の非金属除去工程にてモニタされた発光強度が第四の所定値(閾値として設定する数値)以下となる。
ただし、X回目、(X-1)回目、及び、x回目、(x-1)回目の表記は、いずれも連続した工程であることを示すものであって、X、xは固定した一つの数値を意味するものではない。
具体的には、Y=2の場合であれば、3回目と4回目の金属除去工程及び7回目と8回目の金属除去工程において、それぞれ発光強度の差の絶対値が第一の所定値を満たし、かつ、8回目の金属除去工程においてモニタされた発光強度が第二の所定値以下である場合には、金属除去工程が終了したと判定することになる。つまり、この例においては、Xは4又は8となりえる。
【0086】
図16に示す本実施例のAlの例では、例えば閾値を1.9から1.1の間に設定することができる。この値は、発光種の密度や遷移確率、プラズマ電子温度、分光器の検出感度、露光時間等に依存する。また、サイクルn時点のAl発光は、チャンバ内に多くのAlが残存することに起因して強度が強いため、容易に検出が可能である。従って、発光強度の閾値を用いて誤判定を防止する方法に代えて、発光ピークが未検出となった場合に限り終点とする方法を用いても良い。
なお、発光ピークを検出する方法としては、ガウス関数とローレンツ関数を重畳したフォークト関数が適当であり、バックグラウンドスペクトルの推定にはフォークト関数や長周期スペクトルの検出に適当なLong Normal関数等を用いることができる。
図19は、フォークト関数を用いたAlピークの検出例である。バックグラウンドスペクトルもフォークト関数によるフィッティングを行い、発光スペクトルから396nm(Alピークフィット(1))と394nm(Alピークフィット(2))の二つのAl発光ピークを抽出した。フィッティングパラメータには、ピーク波長、半値幅等のパラメータが必要となるが、ピーク波長や半値幅は開発段階でパラメータを予め決めておき、強度のみを任意とすることができる。または、これらの値を発光の文献値や分光器の分解能スペックから決定しても良い。
【0087】
本実施例では、メタル堆積物をAl、ノンメタル堆積物をCとして例を示したが、他にメタル堆積物はTi、Ta等、ノンメタル堆積物はSi、B、NH等であっても、堆積物の除去に対応する適切な発光波長を選ぶことで、同様の終点判定方法を用いて適切な終点判定を行うことができる。また、本実施例では、メタルクリーニング中、ノンメタルクリーニング中の発光強度データの取得方法について言及しなかったが、各処理中の全時間平均を用いる方法や、一部の時間平均を用いる方法でも良い。特にプラズマ着火直後は、プラズマや圧力が安定しないことに起因する発光変動が計測されるため、その時間帯を除外しても良い。除外時間の目安としては、0.5秒~5秒前後が適当である。
【0088】
また、本実施例ではメタル堆積物層が厚い場合における適切な判定方法について説明したが、ノンメタル堆積物が厚い場合についても適切な判定が必要である。このため、同様の判定方法(差分強度が概ね0に加えて、発光強度がある閾値以下の場合に限り終点)をノンメタルに対しても適用する必要がある。すなわち、各サイクルにおいてメタルにおける堆積物の除去に起因する発光強度の差分強度が概ね0に加えて、発光強度がある閾値以下の場合に限りメタルの終点となり、ノンメタルにおける堆積物の除去に起因する発光強度の差分強度が概ね0に加えて、発光強度がある閾値以下の場合に限りノンメタルの終点となり、メタルとノンメタルの終点が共に検出されるサイクルが真の終点となる。更に、サイクリッククリーニング中の堆積物の検出にはプラズマ分光法を用いたが、堆積物を検出可能な代替手段がいくつか考えられる。その例として、質量分析法、吸収分光法、レーザー誘起蛍光分光法、レーザー散乱法等がある。これらでは、本実施例と同様の方法を用いて終点を検出可能と考えられる。
【0089】
本実施例や実施例4の一例では、差分強度が概ね0になることが終点判定条件の一つであった。発光強度ではなく差分強度を用いた理由は以下の通りである。量産エッチング装置においては、半導体デバイスの製品処理を1万枚以上に渡り且つ何年にも渡って繰り返すため、光学系経路における光の損失や散乱、分光器の経年変化が無視できない状況がある。しかも、これは波長依存性を持っており、バックグラウンドスペクトルが邪魔をして真に検出したい堆積物に起因する発光強度のみの抽出が難しい状況がある(例えば
図9のAl発光スペクトルとともに計測されるバックグラウンドスペクトル)。この間、再現性良く高精度な終点判定を行うためには、発光強度の絶対値を用いた終点判定よりも、これらの影響が少ない直近の発光変化である差分強度が概ね0となる方法を用いた方が、高い再現性で終点判定できるためである。
【0090】
また、本実施例では、Alの差分強度が概ね0に加えて、Al発光強度がある閾値以下の場合を条件に1度だけ満たすことで終点としたが、この条件を数度満たした時点を終点とすることもできる。この方法を採用することで、予期せぬ不安定なプラズマ変化が生じた場合にも安定して終点判定を行うことができる。
【0091】
〔実施例7〕
本実施例では、量産エッチングの稼働率を向上させるサイクリッククリーニングの高速化、特にメタルクリーニングレートの向上について、その実現方法とその構成について説明する。
【0092】
高速化の実現には、処理室内のクリーニングレートの律速箇所を知る必要がある。そこで、処理室内のメタルデポを模擬するアルミナウエハの試験片(クーポンサンプル)を処理室内に貼り付けて、クリーニングレート分布とメタルクリーニング条件の関係を調べた。メタルクリーニング条件は、BCl3/Cl2ガス、マイクロ波パワー800WでECR共鳴条件であるCOIL電流値により、試料台102からの距離と定義するECR高さがそれぞれ20cm(High)、15cm(Low)となるように設定した。試験片クーポンウエハの貼り付け箇所は、内筒109の上端から2cmの場所である内筒(上)、内筒の長さを二等分した中心の場所である内筒(中)と、試料台102の三点とした。
【0093】
図20は、ECR HighとLowの場合の、それぞれにおける内筒(上)、内筒内筒(中)、試料台102におけるアルミナクリーニングレートの分布である。縦軸のクリーニングレートは、最大レートであるECR Low時の内筒(中)を基準として規格化している。ECR LowとHighを比較すると、Lowにおいて処理室下部の内筒(中)や試料台のレートが高い一方、内筒(上)のレートが0であった。一方、Highにおいては処理室上部の内筒(上)のレートは有限値であった。このことから、片方の条件のみを用いると、処理室の上部や下部において堆積膜の除去速度において律速箇所が生じるため、メタルクリーニングを少なくとも上下2つのECR高さで実施するのが望ましいことがわかる。
【0094】
図21は、上下2つのECR高さを持つメタルクリーニングを用いたサイクリッククリーニングのシーケンスフローの一例である。メタルクリーニング(A)(S2002)とメタルクリーニング(B)(S2004)のECR高さの関係を下記の何れかに設定すれば良い。
メタルクリーニング(A)のECR高さ > メタルクリーニング(B)のECR高さ
メタルクリーニング(A)のECR高さ < メタルクリーニング(B)のECR高さ
また、メタルクリーニング(A)(S2002)とメタルクリーニング(B)(S2004)のそれぞれの後にノンメタルクリーニング(S2003)を実施することで、効率よくメタルとノンメタルの混合堆積物が除去される。
【0095】
〔実施例8〕
本実施例では、実施例1から7までの実施例について補足説明する。これらの実施例では、メタルクリーニング中に生成されるボロン堆積物の除去を目的として、ボロン堆積物除去ステップ(S303、S404、S703、S1003)を導入することがあった。しかし、BF3の融点は大気圧化で約-100℃であり、ボロンのフッ化物は高揮発性である。そのため、F系ガスを用いたノンメタルクリーニングステップ(S304、S405、S704、S1004)で同時に除去できる場合がある。このため、ボロン堆積物除去ステップ(S303、S404、S703、S1003)を除いて、ボロン堆積物の除去機能を持つF系のノンメタルクリーニング(S304、S405、S704、S1004)を実施しても良い。また、ノンメタルクリーニング(S103、S304、S405、S704、S1004)は、Si、C、B、NH系堆積物の除去に効果的な複数のステップを用いて除去しても良い。
【0096】
例えば、Si除去に有効な条件1とC除去に有効な条件2で構成される2ステップ構造があり、例えば条件1はF系ガス、条件2はO系ガスとしてもよい。複数ステップを用いた方が、それぞれの堆積物の高速除去を実現できる場合があるためである。また、このとき、条件1はB堆積物もあわせて除去することが可能である。また、ノンメタルクリーニングステップ(S304、S405、S704、S1004)の実施後において、処理室表面の残留フッ素が十分少ないと認められる条件(例えばOガス系中心とする処理条件で十分な処理時間により残留フッ素が少なくなる場合)においては、フッ素を除去するステップ(S305、S406、S705、S1005)を実施しないことも有り得る。
【0097】
また、実施例1~6と8は、本発明に係るプラズマ処理方法をマイクロ波Electron Cyclotron Resonance(ECR)プラズマエッチング装置に適用した場合として説明したが、容量結合プラズマや誘導結合プラズマといった他のプラズマ源を用いるプラズマエッチング装置においても本発明の実施例1~6と8と同様な効果を得ることができる。
【0098】
以上、本発明により、処理室に堆積するAl、Ti、Ta等の金属とSi、C、B等の非金属との複合堆積物を除去でき、長期に渡る量産処理を実現できる。
【符号の説明】
【0099】
101:ウエハ
102:試料台
103:天板
104:シャワープレート
105:ガス供給装置
106:導波管
107:高周波電源
108:電磁石
109:内筒
110:アース
111:整合器
112:バイアス印加用の高周波電源
113:真空排気バルブ
114:ATR-FTIR装置