(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188112
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】血漿カリクレイン結合タンパク質
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20221213BHJP
C07K 16/40 20060101ALI20221213BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221213BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221213BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221213BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221213BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221213BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20221213BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221213BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20221213BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221213BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20221213BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20221213BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221213BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/40 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P9/00
A61P29/00
A61P31/04
A61P35/00
A61K38/02
A61K38/16
A61K39/395 D
A61K39/395 N
C12P21/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150541
(22)【出願日】2022-09-21
(62)【分割の表示】P 2020173295の分割
【原出願日】2011-01-06
(31)【優先権主張番号】61/292,614
(32)【優先日】2010-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GORE-TEX
2.TWEEN
3.DACRON
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】セックストン,ダニエル,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】マリーニ,ヴィスワナタン
(57)【要約】
【課題】血漿カリクレイン結合タンパク質およびその使用方法の提供。
【解決手段】血漿カリクレイン結合タンパク質は、タンパク質(例えば、epi-Kal2)及び/又は低分子(例えば、AEBSF)と同じエピトープと結合するかあるいは結合に関してそれと競合し、かつプレ血漿カリクレインと結合しない。血漿カリクレイン結合タンパク質は、完全長(例えば、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgE)であり得るか、又は抗原結合フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2又はscFvフラグメント)のみを含み得る。この結合タンパク質は、2つの重鎖免疫グロブリンと2つの軽鎖免疫グロブリンを含み得るか、又は一本鎖抗体であり得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書または図面に記載されるタンパク質、核酸、ベクター、細胞、組成物、キットまたは方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
血漿カリクレインはセリンプロテアーゼの一種である。プレカリクレインは血漿カリクレインの前駆体である。
【発明の概要】
【0002】
血漿カリクレインは接触系のセリンプロテアーゼ成分であり、様々な炎症性、心血管性、感染性(敗血症)および腫瘍性の疾患の潜在的な薬物標的である(Sainz I.M.ら,Thromb Haemost 98,77-83,2007)。接触系は、異物のもしくは負荷電の表面との接触時に第XIIa因子により、または内皮細胞表面上でプロリルカルボキシペプチダーゼにより活性化される(
図1)(Sainz I.M.ら,Thromb Haemost 98,77-83,2007)。血漿カリクレインの活性化により、その第XII因子のフィードバック活性化を介して内因性凝固が増幅され、炎症性ノナペプチドであるブラジキニンの産生を介して炎症が増強される。血漿カリクレインは循環中の主要なキニノゲナーゼとして、主として血管系におけるブラジキニンの生成に関与する。主要な天然の血漿カリクレイン阻害剤であるC1阻害剤タンパク質(C1-INH)の遺伝的欠損により、遺伝性血管性浮腫(HAE)が引き起こされる。HAEの患者は、未知のトリガーによりしばしば誘発される有痛性浮腫の急性発作に襲われる(Zuraw B.L.ら,N Engl J Med 359,1027-1036,2008)。動物モデルにおける薬物使用または遺伝的研究から、血漿カリクレイン-キニン系(血漿KKS)が各種疾患に関与すると考えられている。
【0003】
血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば抗体、例えば阻害性抗体)は、効力および特異性が高く、また血中滞留時間が長いため、各種の疾患および状態、例えば、血漿カリクレイン活性が関与する疾患および状態の治療剤として有用である。効力が高いということは、有効性が高く薬物用量が低いと言い換えることができ、また特異性が高いということは、関連するオフターゲットセリンプロテアーゼの阻害により副作用を減少させ得るということである。一般に、低分子セリンプロテアーゼの特異性は抗体阻害剤ほど高くはない。血中滞留時間が長ければ低頻度の投薬が可能となる。
【0004】
いくつかの態様では、本開示は、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)と結合し、かつ例えば、プレ血漿カリクレイン(例えば、ヒトプレ血漿カリクレインおよび/またはマウスプレ血漿カリクレイン)と結合しない単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を特徴とする。
【0005】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、本明細書に記載のカリクレイン結合タンパク質と同じエピトープと結合するか、または結合に関してそれと競合する。いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、本明細書に記載のタンパク質(例えば、epi-Kal2)および/または低分子(例えば、AEBSF)と同じエピトープと結合するかあるいは結合に関してそれと競合し、かつプレ血漿カリクレインと結合しない。
【0006】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01(本明細書では、DX-2922とも呼ばれる)、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される。
【0007】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、X81-B01と競合するか、またはそれと同じエピトープと結合し、かつ例えば、プレ血漿カリクレインと結合しない。
【0008】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、X67-D03と競合するか、またはそれと同じエピトープと結合し、かつ例えば、プレ血漿カリクレインと結合しない。
【0009】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、X101-A01と競合するか、またはそれと同じ部位と結合し、かつ例えば、プレ血漿カリクレインと結合しない。
【0010】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、M162-A04と競合するか、またはそれと同じ部位と結合し、かつ例えば、プレ血漿カリクレインと結合しない。
【0011】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、X63-G06と競合するか、またはそれと同じ部位と結合し、かつ例えば、プレ血漿カリクレインと結合しない。
【0012】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0013】
特定の実施形態では、このタンパク質は、血漿カリクレインの触媒ドメインの活性部位もしくはそのフラグメントまたはその付近で結合するか、あるいは血漿カリクレインの活性部位と重複するエピトープと結合し、かつ例えば、プレ血漿カリクレインと結合しない。
【0014】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、血漿カリクレインの触媒三残基を形成するアミノ酸:His434、Asp483および/またはSer578(番号はヒト配列に基づく)の1つ以上と結合し、かつ例えば、プレ血漿カリクレインと結合しない。
【0015】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、アミノ酸:Ser479、Tyr563および/またはAsp585(番号はヒト配列に基づく)の1つ以上と結合し、かつ例えば、プレ血漿カリクレインと結合しない。
【0016】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、アミノ酸:Arg551、Gln553、Tyr555、Thr558および/またはArg560(番号はヒトカリクレインの配列に基づく)の1つ以上と結合する。他の実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、アミノ酸:Arg551、Gln553、Tyr555、Thr558および/またはArg560(番号はヒト配列に基づく)の2つ、3つ、4つまたは5つ(すなわち、全部)と結合し、かつ例えば、プレ血漿カリクレインと結合しない。
【0017】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、アミノ酸:S478、N481、S525およびK526(番号はヒトカリクレインの配列に基づく)の1つ以上と結合する。他の実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、アミノ酸:S478、N481、S525およびK526(番号はヒトカリクレインの配列に基づく)の2つ、3つまたは4つ(すなわち、全部)と結合する。
【0018】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、第XIIa因子および/またはブラジキニン産生を標準、例えば、このタンパク質が存在しない同じ条件下での第XIIa因子および/またはブラジキニン産生と比較して、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%よりも多く減少させる。
【0019】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、見かけの阻害定数(Ki,app)が1000、500、100、10、1、0.5または0.2nM未満である。
【0020】
一実施形態では、HCおよびLC可変ドメイン配列は、同じポリペプチド鎖の構成要素である。
【0021】
別の実施形態では、HCおよびLC可変ドメイン配列は、異なるポリペプチド鎖の構成要素である。例えば、血漿カリクレイン結合タンパク質はIgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。血漿カリクレイン結合タンパク質は、可溶性Fab(sFab)であり得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、in vivoで、例えばヒトにおいて、血中滞留時間が1週間、2週間、3週間、4週間、5週間またはそれ以上である。一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、in vivoで、例えばヒトにおいて、血中滞留時間が1週間、2週間、3週間、4週間、5週間またはそれ以上であるIgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。
【0023】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質を、血中滞留時間を向上させる部分、例えば、本明細書に記載の部分と物理的に結合させる。
【0024】
他の実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、Fab2’、scFv、ミニボディ、scFv::Fc融合体、Fab::HSA融合体、HSA::Fab融合体、Fab::HSA::Fab融合体または本明細書の結合タンパク質の1つの抗原結合部位を含むその他の分子を含む。上記FabのVHおよびVL領域は、IgG、Fab、Fab2、Fab2’、scFv、ペグ化Fab、ペグ化scFv、ペグ化Fab2、VH::CH1::HSA+LC、HSA::VH::CH1+LC、LC::HSA+VH::CH1、HSA::LC+VH::CH1またはその他の適当な構築物として提供され得る。
【0025】
一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、ヒトもしくはヒト化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。例えば、このタンパク質は、1つ以上のヒト抗体フレームワーク領域、例えば、すべてのヒトフレームワーク領域を含む。
【0026】
一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、ヒトFcドメインまたはヒトFcドメインと少なくとも95、96、97、98もしくは99%同一であるFcドメインを含む。
【0027】
一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、霊長類もしくは霊長類化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。例えば、このタンパク質は、1つ以上の霊長類抗体フレームワーク領域、例えば、すべての霊長類フレームワーク領域を含む。
【0028】
一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、霊長類Fcドメインまたは霊長類Fcドメインと少なくとも95、96、97、98もしくは99%同一であるFcドメインを含む。「霊長類」には、ヒト(Homo sapiens)、チンパンジー(Pan troglodytesおよびPan paniscus(ボノボ))、ゴリラ(Gorilla gorilla)、テナガザル、サル、キツネザル、アイアイ(Daubentonia madagascariensis)およびメガネザルが含まれる。
【0029】
一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、ヒトフレームワーク領域またはヒトフレームワーク領域と少なくとも95、96、97、98もしくは99%同一であるフレームワーク領域を含む。
【0030】
特定の実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、マウスまたはウサギ由来の配列を含まない(例えば、マウスまたはウサギ抗体ではない)。
【0031】
特定の実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、例えば血漿カリクレインを発現する、細胞または組織と結合することができる。
【0032】
一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質はナノ粒子と物理的に結合しており、かつ血漿カリクレインを発現している細胞または組織へナノ粒子を導くために使用することができる。
【0033】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載のカリクレイン結合タンパク質と同じエピトープと結合するか、または結合に関してそれと競合する単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を特徴とする。
【0034】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質(例えば、epi-Kal2)および/または低分子(例えば、AEBSF)と同じエピトープと結合するか、あるいは結合に関してそれと競合する。
【0035】
いくつかの実施形態では、この単離タンパク質は、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列および軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列を含み:
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、
このタンパク質は血漿カリクレインと結合する。
【0036】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つまたは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つまたは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含む(それぞれ)。
【0037】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)を阻害する。
【0038】
いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域はX81-B01由来であり、かつ/または軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域はX81-B01由来である。
【0039】
いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域はX67-D03由来であり、かつ/または軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域はX67-D03由来である。
【0040】
いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域はX63-G06由来であり、かつ/または軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域はX63-G06由来である。
【0041】
いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域はM162-A04由来であり、かつ/または軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域はM162-A04由来である。
【0042】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメインを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04の軽鎖可変ドメインを含む(それぞれ)。
【0044】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列はX81-B01の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列はX81-B01の軽鎖可変ドメインを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列はX67-D03の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列はX67-D03の軽鎖可変ドメインを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖および/または本明細書に記載のタンパク質の軽鎖を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04の重鎖
および/またはM162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04の軽鎖を含む(それぞれ)。
【0048】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、X81-B01の重鎖および/またはX81-B01の軽鎖を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、X67-D03の重鎖および/またはX67-D03の軽鎖を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0051】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、第XIIa因子および/またはブラジキニン産生を標準、例えば、このタンパク質が存在しない同じ条件下での第XIIa因子および/またはブラジキニン産生と比較して、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%減少させる。
【0052】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、以下の特徴のうちの1つ以上を含む:(a)ヒトCDRまたはヒトフレームワーク領域;(b)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインのCDRと少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%同一であるCDRを1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)含む;(c)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインのCDRと少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%同一であるCDRを1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)含む;(d)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインと少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%同一である(例えば、全体で、またはフレームワーク領域もしくはCDRにおいて);(e)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインと少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%同一である(例えば、全体で、またはフレームワーク領域もしくはCDRにおいて);(f)このタンパク質が、本明細書に記載のタンパク質が結合するエピトープと結合するか、または結合に関して本明細書に記載のタンパク質と競合する;(g)霊長類CDRまたは霊長類フレームワーク領域;(h)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインのCDR1と少なくとも1個であるが2個または3個以下のアミノ酸だけ異なるCDR1を含む;(i)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインのCDR2と少なくとも1個であるが2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個以下のアミノ酸だけ異なるCDR2を含む;(j)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のCDR3と少なくとも1個であるが2個、3個、4個、5個または6個以下のアミノ酸だけ異なるCDR3を含む;(k)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインのCDR1と少なくとも1個であるが2個、3個、4個または5個以下のアミノ酸だけ異なるCDR1を含む;(l)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインのCDR2と少なくとも1個であるが2個、3個または4個以下のアミノ酸だけ異なるCDR2を含む;(m)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインのCDR3と少なくとも1個であるが2個、3個、4個または5個のアミノ酸だけ異なるCDR3を含む;(n)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインと少なくとも1個であるが2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のアミノ酸だけ異なる(例えば、全体で、またはフレームワーク領域もしくはCDRにおいて);および(o)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインと少なくとも1個であるが2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のアミノ酸だけ異なる(例えば、全体で、またはフレームワーク領域もしくはCDRにおいて)。
【0053】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、見かけの阻害定数(Ki,app)が1000、500、100、10、1、0.5または0.2nM未満である。
【0054】
いくつかの実施形態では、抗体はプレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0055】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の軽鎖および重鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0056】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の重鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0057】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の軽鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0058】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の軽鎖および重鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0059】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の重鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0060】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の軽鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0061】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる重鎖群の対応するCDRから選択される1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の重鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0062】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる軽鎖群の対応するCDRから選択される1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の軽鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0063】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる重鎖群の対応するCDRから選択される1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の重鎖CDR、ならびにM162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる軽鎖群の対応するCDRから選択される1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の軽鎖CDR(それぞれ)を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0064】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01の軽鎖および重鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0065】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01の重鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0066】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01の軽鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0067】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01から選択される抗体の軽鎖および重鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0068】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01の重鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0069】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01の軽鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0070】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01重鎖の対応するCDR由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の重鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0071】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01軽鎖の対応するCDR由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の軽鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0072】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01重鎖由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の重鎖CDRおよびX81-B01軽鎖の対応するCDR由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の軽鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0073】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03の軽鎖および重鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0074】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03の重鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0075】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03の軽鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0076】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03から選択される抗体の軽鎖および重鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0077】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03の重鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0078】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03の軽鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0079】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03重鎖の対応するCDR由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の重鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0080】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03軽鎖の対応するCDR由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の軽鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0081】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03重鎖由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の重鎖CDRおよびX67-D03軽鎖の対応するCDR由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の軽鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0082】
一実施形態では、HCおよびLC可変ドメイン配列は、同じポリペプチド鎖の構成要素である。
【0083】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、in vivoで、例えばヒトにおいて血中滞留時間が1週間、2週間、3週間、4週間、5週間またはそれ以上である。一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、in vivoで、例えばヒトにおいて血中滞留時間が1週間、2週間、3週間、4週間、5週間またはそれ以上であるIgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。
【0084】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質を、血中滞留時間を向上させる部分、例えば、本明細書に記載の部分と物理的に結合させる。
【0085】
別の実施形態では、HCおよびLC可変ドメイン配列は、異なるポリペプチド鎖の構成要素である。例えば、このタンパク質はIgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。このタンパク質は、可溶性Fab(sFab)であり得る。
【0086】
他の実施形態では、このタンパク質は、Fab2’、scFv、ミニボディ、scFv::Fc融合体、Fab::HSA融合体、HSA::Fab融合体、Fab::HSA::Fab融合体または本明細書の結合タンパク質の1つの抗原結合部位を含むその他の分子を含む。上記FabのVHおよびVL領域は、IgG、Fab、Fab2、Fab2’、scFv、ペグ化Fab、ペグ化scFv、ペグ化Fab2、VH::CH1::HSA+LC、HSA::VH::CH1+LC、LC::HSA+VH::CH1、HSA::LC+VH::CH1またはその他の適当な構築物として提供され得る。
【0087】
一実施形態では、このタンパク質は、ヒトもしくはヒト化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。例えば、このタンパク質は、1つ以上のヒト抗体フレームワーク領域、例えば、すべてのヒトフレームワーク領域を含む。
【0088】
一実施形態では、このタンパク質は、ヒトFcドメインまたはヒトFcドメインと少なくとも95、96、97、98もしくは99%同一であるFcドメインを含む。
【0089】
一実施形態では、このタンパク質は、霊長類もしくは霊長類化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。例えば、このタンパク質は、1つ以上の霊長類抗体フレームワーク領域、例えば、すべての霊長類フレームワーク領域を含む。
【0090】
一実施形態では、このタンパク質は、霊長類Fcドメインまたは霊長類Fcドメインと少なくとも95、96、97、98もしくは99%同一であるFcドメインを含む。「霊長類」には、ヒト(Homo sapiens)、チンパンジー(Pan troglodytesおよびPan paniscus(ボノボ))、ゴリラ(Gorilla gorilla)、テナガザル、サル、キツネザル、アイアイ(Daubentonia madagascariensis)およびメガネザルが含まれる。
【0091】
一実施形態では、このタンパク質は、ヒトフレームワーク領域またはヒトフレームワーク領域と少なくとも95、96、97、98もしくは99%同一であるフレームワーク領域を含む。
【0092】
特定の実施形態では、このタンパク質は、マウスまたはウサギ由来の配列を含まない(例えば、マウスまたはウサギ抗体ではない)。
【0093】
特定の実施形態では、このタンパク質は、例えば血漿カリクレインを発現する、細胞または組織と結合することができる。
【0094】
一実施形態では、タンパク質はナノ粒子と物理的に結合しており、かつ血漿カリクレインを発現している細胞または組織へナノ粒子を導くために使用することができる。
【0095】
いくつかの態様では、本開示は、例えば薬学的に許容される担体を含む、本明細書に記載のカリクレイン結合タンパク質を含む医薬組成物を特徴とする。いくつかの実施形態では、この組成物は、他のタンパク質種を少なくとも10、20、30、50、75、85、90、95、98、99または99.9%含まないものであり得る。一実施形態では、医薬組成物は、血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレイン)と結合しないか、または5000nM以上のKi,appで血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレイン)と結合する結合タンパク質のフラグメントを少なくとも10、20、30、50、75、85、90、95、98、99または99.9%含まないものであり得る。
【0096】
いくつかの態様では、本開示は、対象の血漿カリクレイン関連疾患を治療または予防する方法を特徴とし、この方法は、血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)と結合し、かつ例えば、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレインとは結合しない単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質(例えば、epi-Kal2)および/または低分子(例えば、AEBSF)と同じエピトープと結合するか、あるいは結合に関してそれと競合する。
【0098】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のカリクレイン結合タンパク質と同じエピトープと結合するか、または結合に関してそれと競合する。
【0099】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン関連疾患は、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄-変性脊椎疾患脊柱管狭窄-変性脊椎疾患、動脈または静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、骨関節炎、血管炎、浮腫、遺伝性血管性浮腫、脳浮腫、肺塞栓症、脳卒中、心室補助装置またはステント上での凝血心室補助装置またはステント上での凝血、頭部外傷または腫瘍周囲脳浮腫頭部外傷または腫瘍周囲脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎および熱傷からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、接触活性化系(すなわち、内因性の活性化系)に関連した異常な凝血を、例えばAPTT凝固アッセイによる測定で、少なくとも10%減少させる。他の実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、接触活性化系に関連した異常な凝血を、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%(すなわち、異常な凝血が検出されない)減少させる。
【0100】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質を疾患の別の治療法と併用して投与する。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される。
【0102】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、X81-B01と競合するか、またはそれと同じエピトープと結合する。
【0103】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、X67-D03と競合するか、またはそれと同じエピトープと結合する。
【0104】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0105】
特定の実施形態では、このタンパク質は、血漿カリクレインの触媒ドメインの活性部位もしくはそのフラグメントまたはその付近で結合するか、あるいは血漿カリクレインの活性部位と重複するエピトープと結合する。
【0106】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、血漿カリクレインの触媒三残基を形成するアミノ酸:His434、Asp483および/またはSer578(番号はヒト配列に基づく)の1つ以上と結合する。
【0107】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、Ser479、Tyr563および/またはAsp585(番号はヒト配列に基づく)の1つ以上のアミノ酸と結合する。
【0108】
他の実施形態では、このタンパク質は、Arg551、Gln553、Tyr555、Thr558および/またはArg560(番号はヒト配列に基づく)の1つ以上のアミノ酸と結合する。いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、S478,N481,S525およびK526(番号はヒトカリクレインの配列に基づく)の1つ以上のアミノ酸と結合する。
【0109】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、第XIIa因子および/またはブラジキニン産生を標準、例えば、このタンパク質が存在しない同じ条件下での第XIIa因子および/またはブラジキニン産生と比較して、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%よりも多く減少させる。
【0110】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、見かけの阻害定数(Ki,app)が1000、500、100、10、5、1、0.5または0.2nM未満である。
【0111】
一実施形態では、HCおよびLC可変ドメイン配列は、同じポリペプチド鎖の構成要素である。
【0112】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、in vivoで、例えばヒトにおいて、血中滞留時間が1週間、2週間、3週間、4週間、5週間またはそれ以上である。一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、in vivoで、例えばヒトにおいて、血中滞留時間が1週間、2週間、3週間、4週間、5週間またはそれ以上であるIgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。
【0113】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質を、血中滞留時間を向上させる部分、例えば、本明細書に記載の部分と物理的に結合させる。
【0114】
別の実施形態では、HCおよびLC可変ドメイン配列は、異なるポリペプチド鎖の構成要素である。例えば、血漿カリクレイン結合タンパク質はIgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。血漿カリクレイン結合タンパク質は、可溶性Fab(sFab)であり得る。
【0115】
他の実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、Fab2’、scFv、ミニボディ、scFv::Fc融合体、Fab::HSA融合体、HSA::Fab融合体、Fab::HSA::Fab融合体または本明細書の結合タンパク質の1つの抗原結合部位を含むその他の分子を含む。上記FabのVHおよびVL領域は、IgG、Fab、Fab2、Fab2’、scFv、ペグ化Fab、ペグ化scFv、ペグ化Fab2、VH::CH1::HSA+LC、HSA::VH::CH1+LC、LC::HSA+VH::CH1、HSA::LC+VH::CH1またはその他の適当な構築物として提供され得る。
【0116】
一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、ヒトもしくはヒト化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。例えば、このタンパク質は、1つ以上のヒト抗体フレームワーク領域、例えば、すべてのヒトフレームワーク領域を含む。
【0117】
一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、ヒトFcドメインまたはヒトFcドメインと少なくとも95、96、97、98もしくは99%同一であるFcドメインを含む。
【0118】
一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、霊長類もしくは霊長類化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。例えば、このタンパク質は、1つ以上の霊長類抗体フレームワーク領域、例えば、すべての霊長類フレームワーク領域を含む。
【0119】
一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、霊長類Fcドメインまたは霊長類Fcドメインと少なくとも95、96、97、98もしくは99%同一であるFcドメインを含む。「霊長類」には、ヒト(Homo sapiens)、チンパンジー(Pan troglodytesおよびPan paniscus(ボノボ))、ゴリラ(Gorilla gorilla)、テナガザル、サル、キツネザル、アイアイ(Daubentonia madagascariensis)およびメガネザルが含まれる。
【0120】
一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、ヒトフレームワーク領域またはヒトフレームワーク領域と少なくとも95、96、97、98もしくは99%同一であるフレームワーク領域を含む。
【0121】
特定の実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、マウスまたはウサギ由来の配列を含まない(例えば、マウスまたはウサギ抗体ではない)。
【0122】
特定の実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、例えば血漿カリクレインを発現する、細胞または組織と結合することができる。
【0123】
一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質はナノ粒子と物理的に結合しており、かつ血漿カリクレインを発現している細胞または組織へナノ粒子を導くために使用することができる。
【0124】
対象の血漿カリクレイン関連疾患を治療または予防する方法が提供され、この方法は、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列とを含む単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含み、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、
このタンパク質が血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)と結合する。
【0125】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン関連疾患は、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄-変性脊椎疾患、動脈または静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、骨関節炎、血管炎、浮腫、遺伝性血管性浮腫、脳浮腫、肺塞栓症、脳卒中、心室補助装置またはステントの凝血心室補助装置またはステントの凝血、頭部外傷または腫瘍周囲脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎および熱傷からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、接触活性化系(すなわち、内因性の活性化系)に関連した異常な凝血を、例えばAPTT凝固アッセイによる測定で、少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%(すなわち、異常な凝血が検出されない))減少させる。
【0126】
いくつかの実施形態では、このタンパク質を、疾患の別の治療法と併用して投与する。
【0127】
いくつかの実施形態では、このタンパク質を、エカランチド、C1エステラーゼ阻害剤、アプロチニン、ブラジキニンB2受容体阻害剤(例えば、イカチバント)からなる群より選択される第二の薬剤と併用して投与する。
【0128】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含む(それぞれ)。
【0129】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は血漿カリクレインを阻害する。
【0130】
いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域はX81-B01由来であり、かつ/または軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域はX81-B01由来である。
【0131】
いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域はX67-D03由来であり、かつ/または軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域はX67-D03由来である。
【0132】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメインを含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04の軽鎖可変ドメインを含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列はX81-B01の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列はX81-B01の軽鎖可変ドメインを含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列はX67-D03の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列はX67-D03の軽鎖可変ドメインを含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖を含み、かつ/または本明細書に記載のタンパク質の軽鎖を含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04の重鎖、ならびに/またはM162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04の軽鎖を含む(それぞれ)。
【0138】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、X81-B01の重鎖および/またはX81-B01の軽鎖を含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、X67-D03の重鎖および/またはX67-D03の軽鎖を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0141】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、第XIIa因子および/またはブラジキニン産生を標準、例えば、このタンパク質が存在しない同じ条件下での第XIIa因子および/またはブラジキニン産生と比較して、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%よりも多く減少させる。
【0142】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、以下の特徴のうちの1つ以上を含む:(a)ヒトCDRまたはヒトフレームワーク領域;(b)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインのCDRと少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%同一であるCDRを1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)含む;(c)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインのCDRと少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%同一であるCDRを1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)含む;(d)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインと少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%同一である(例えば、全体で、またはフレームワーク領域もしくはCDRにおいて);(e)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインと少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%同一である(例えば、全体で、またはフレームワーク領域もしくはCDRにおいて);(f)このタンパク質が、本明細書に記載のタンパク質が結合するエピトープと結合するか、または結合に関して本明細書に記載のタンパク質と競合する;および(g)霊長類CDRまたは霊長類フレームワーク領域。
【0143】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、見かけの阻害定数(Ki,app)が1000、500、100、10、5、1、0.5または0.2nM未満である。
【0144】
いくつかの実施形態では、抗体は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレイン)とは結合する。
【0145】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の軽鎖および重鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0146】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の重鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0147】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の軽鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0148】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の軽鎖および重鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0149】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の重鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0150】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の軽鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0151】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる重鎖群の対応するCDRから選択される1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の重鎖CDRを有する抗体である。
【0152】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる軽鎖群の対応するCDRから選択される1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の軽鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0153】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる重鎖群の対応するCDRから選択される1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の重鎖CDR、ならびにM162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる軽鎖群の対応するCDRから選択される1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の軽鎖CDR(それぞれ)を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0154】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01の軽鎖および重鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0155】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01の重鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0156】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01の軽鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0157】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01から選択される抗体の軽鎖および重鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0158】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01の重鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0159】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01の軽鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0160】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01重鎖の対応するCDR由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の重鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0161】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01軽鎖の対応するCDR由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の軽鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0162】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01重鎖由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の重鎖CDRおよびX81-B01軽鎖の対応するCDR由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の軽鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0163】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03の軽鎖および重鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0164】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03の重鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0165】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03の軽鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0166】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03から選択される抗体の軽鎖および重鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0167】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03の重鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0168】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03の軽鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0169】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03重鎖の対応するCDR由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の重鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0170】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03軽鎖の対応するCDR由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の軽鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0171】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03重鎖由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の重鎖CDRおよびX67-D03軽鎖の対応するCDR由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の軽鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0172】
一実施形態では、HCおよびLC可変ドメイン配列は、同じポリペプチド鎖の構成要素である。
【0173】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、in vivoで、例えばヒトにおいて、血中滞留時間が1週間、2週間、3週間、4週間、5週間またはそれ以上である。一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、in vivoで、例えばヒトにおいて、血中滞留時間が1週間、2週間、3週間、4週間、5週間またはそれ以上であるIgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。
【0174】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質を、血中滞留時間を向上させる部分、例えば、本明細書に記載の部分と物理的に結合させる。
【0175】
別の実施形態では、HCおよびLC可変ドメイン配列は、異なるポリペプチド鎖の構成要素である。例えば、このタンパク質はIgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。このタンパク質は可溶性Fab(sFab)であり得る。
【0176】
他の実施形態では、このタンパク質は、Fab2’、scFv、ミニボディ、scFv::Fc融合体、Fab::HSA融合体、HSA::Fab融合体、Fab::HSA::Fab融合体または本明細書の結合タンパク質の1つの抗原結合部位を含むその他の分子を含む。上記FabのVHおよびVL領域は、IgG、Fab、Fab2、Fab2’、scFv、ペグ化Fab、ペグ化scFv、ペグ化Fab2、VH::CH1::HSA+LC、HSA::VH::CH1+LC、LC::HSA+VH::CH1、HSA::LC+VH::CH1またはその他の適当な構築物として提供され得る。
【0177】
一実施形態では、このタンパク質は、ヒトもしくはヒト化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。例えば、このタンパク質は、1つ以上のヒト抗体フレームワーク領域、例えば、すべてのヒトフレームワーク領域を含む。
【0178】
一実施形態では、このタンパク質は、ヒトFcドメインまたはヒトFcドメインと少なくとも95、96、97、98もしくは99%同一であるFcドメインを含む。
【0179】
一実施形態では、このタンパク質は、霊長類もしくは霊長類化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。例えば、このタンパク質は、1つ以上の霊長類抗体フレームワーク領域、例えば、すべての霊長類フレームワーク領域を含む。
【0180】
一実施形態では、このタンパク質は、霊長類Fcドメインまたは霊長類Fcドメインと少なくとも95、96、97、98もしくは99%同一であるFcドメインを含む。「霊長類」には、ヒト(Homo sapiens)、チンパンジー(Pan troglodytesおよびPan paniscus(ボノボ))、ゴリラ(Gorilla gorilla)、テナガザル、サル、キツネザル、アイアイ(Daubentonia madagascariensis)およびメガネザルが含まれる。
【0181】
一実施形態では、このタンパク質は、ヒトフレームワーク領域またはヒトフレームワーク領域と少なくとも95、96、97、98もしくは99%同一であるフレームワーク領域を含む。
【0182】
特定の実施形態では、このタンパク質は、マウスまたはウサギ由来の配列を含まない(例えば、マウスまたはウサギ抗体ではない)。
【0183】
特定の実施形態では、このタンパク質は、例えば血漿カリクレインを発現する、細胞または組織と結合することができる。
【0184】
一実施形態では、タンパク質はナノ粒子と物理的に結合しており、かつ血漿カリクレインを発現している細胞または組織へナノ粒子を導くために使用することができる。
【0185】
いくつかの態様では、本開示は、対象の創傷治癒を促進する方法を特徴とし、この方法は、血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)と結合し、かつ例えば、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレインと結合しない単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含む。
【0186】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のカリクレイン結合タンパク質と同じエピトープと結合するか、または結合に関してそれと競合する。いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質(例えば、epi-Kal2)および/または低分子(例えば、AEBSF)と同じエピトープと結合するか、あるいは結合に関してそれと競合する。
【0187】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質を、創傷治癒の別の治療法と併用して投与する。
【0188】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される。
【0189】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、X81-B01と競合するか、またはそれと同じエピトープと結合する。
【0190】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、X67-D03と競合するか、またはそれと同じエピトープと結合する。
【0191】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレイン)とは結合する。
【0192】
特定の実施形態では、このタンパク質は、血漿カリクレインの触媒ドメインの活性部位もしくはそのフラグメントまたはその付近で結合するか、あるいは血漿カリクレインの活性部位と重複するエピトープと結合する。
【0193】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、血漿カリクレインの触媒三残基を形成するアミノ酸:His434、Asp483および/またはSer578(番号はヒト配列に基づく)の1つ以上と結合する。他の実施形態では、このタンパク質は、基質認識のための領域を形成するアミノ酸:Arg551、Gln553、Tyr555、Thr558および/またはArg560(番号はヒト配列に基づく)の1つ以上と結合する。いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、アミノ酸:S478、N481、S525およびK526(番号はヒトカリクレインの配列に基づく)の1つ以上と結合する。
【0194】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、アミノ酸:Ser479、Tyr563および/またはAsp585(番号はヒト配列に基づく)の1つ以上と結合する。
【0195】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、第XIIa因子および/またはブラジキニン産生を標準、例えば、このタンパク質が存在しない同じ条件下での第XIIa因子および/またはブラジキニン産生と比較して、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%よりも多く減少させる。
【0196】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、見かけの阻害定数(Ki,app)が1000、500、100、10、5、1、0.5または0.2nM未満である。
【0197】
一実施形態では、HCおよびLC可変ドメイン配列は、同じポリペプチド鎖の構成要素である。
【0198】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、in vivoで、例えばヒトにおいて、血中滞留時間が1週間、2週間、3週間、4週間、5週間またはそれ以上である。一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、in vivoで、例えばヒトにおいて、血中滞留時間が1週間、2週間、3週間、4週間、5週間またはそれ以上であるIgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。
【0199】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質を、血中滞留時間を向上させる部分、例えば、本明細書に記載の部分と物理的に結合させる。
【0200】
別の実施形態では、HCおよびLC可変ドメイン配列は、異なるポリペプチド鎖の構成要素である。例えば、血漿カリクレイン結合タンパク質はIgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。血漿カリクレイン結合タンパク質は、可溶性Fab(sFab)であり得る。
【0201】
他の実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、Fab2’、scFv、ミニボディ、scFv::Fc融合体、Fab::HSA融合体、HSA::Fab融合体、Fab::HSA::Fab融合体または本明細書の結合タンパク質の1つの抗原結合部位を含むその他の分子を含む。上記FabのVHおよびVL領域は、IgG、Fab、Fab2、Fab2’、scFv、ペグ化Fab、ペグ化scFv、ペグ化Fab2、VH::CH1::HSA+LC、HSA::VH::CH1+LC、LC::HSA+VH::CH1、HSA::LC+VH::CH1またはその他の適当な構築物として提供され得る。
【0202】
一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、ヒトもしくはヒト化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。例えば、このタンパク質は、1つ以上のヒト抗体フレームワーク領域、例えば、すべてのヒトフレームワーク領域を含む。
【0203】
一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、ヒトFcドメインまたはヒトFcドメインと少なくとも95、96、97、98もしくは99%同一であるFcドメインを含む。
【0204】
一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、霊長類もしくは霊長類化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。例えば、このタンパク質は、1つ以上の霊長類抗体フレームワーク領域、例えば、すべての霊長類フレームワーク領域を含む。
【0205】
一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、霊長類Fcドメインまたは霊長類Fcドメインと少なくとも95、96、97、98もしくは99%同一であるFcドメインを含む。「霊長類」には、ヒト(Homo sapiens)、チンパンジー(Pan troglodytesおよびPan paniscus(ボノボ))、ゴリラ(Gorilla gorilla)、テナガザル、サル、キツネザル、アイアイ(Daubentonia madagascariensis)およびメガネザルが含まれる。
【0206】
一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、ヒトフレームワーク領域またはヒトフレームワーク領域と少なくとも95、96、97、98もしくは99%同一であるフレームワーク領域を含む。
【0207】
特定の実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、マウスまたはウサギ由来の配列を含まない(例えば、マウスまたはウサギ抗体ではない)。
【0208】
特定の実施形態では、このタンパク質は、例えば血漿カリクレインを発現する、細胞または組織と結合することができる。
【0209】
一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質はナノ粒子と物理的に結合しており、かつ血漿カリクレインを発現している細胞または組織へナノ粒子を導くために使用することができる。
【0210】
いくつかの態様では、本開示は、対象の創傷治癒を促進する方法を特徴とし、この方法は、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列とを含む単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含み、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、
このタンパク質が血漿カリクレインと結合する。
【0211】
いくつかの実施形態では、このタンパク質を、創傷治癒の別の治療法と併用して投与する。
【0212】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含む(それぞれ)。
【0213】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は血漿カリクレインを阻害する。
【0214】
いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域はX81-B01由来であり、かつ/または軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域はX81-B01由来である。
【0215】
いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域はX67-D03由来であり、かつ/または軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域はX67-D03由来である。
【0216】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメインを含む。
【0217】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04の軽鎖可変ドメインを含む(それぞれ)。
【0218】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列はX81-B01の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列はX81-B01の軽鎖可変ドメインを含む。
【0219】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列はX67-D03の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列はX67-D03の軽鎖可変ドメインを含む。
【0220】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖および/または本明細書に記載のタンパク質の軽鎖を含む。
【0221】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04の重鎖、ならびに/またはM162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04の軽鎖(それぞれ)を含む。
【0222】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、X81-B01の重鎖および/またはX81-B01の軽鎖を含む。
【0223】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、X67-D03の重鎖および/またはX67-D03の軽鎖を含む。
【0224】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレインとは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0225】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、第XIIa因子および/またはブラジキニン産生を標準、例えば、このタンパク質が存在しない同じ条件下での第XIIa因子および/またはブラジキニン産生と比較して、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%よりも多く減少させる。
【0226】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、以下の特徴のうちの1つ以上を含む:(a)ヒトCDRまたはヒトフレームワーク領域;(b)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインのCDRと少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%同一であるCDRを1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)含む;(c)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインのCDRと少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%同一であるCDRを1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)含む;(d)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインと少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%同一である(例えば、全体で、またはフレームワーク領域もしくはCDRにおいて);(e)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインと少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%同一である(例えば、全体で、またはフレームワーク領域もしくはCDRにおいて);(f)このタンパク質が、本明細書に記載のタンパク質が結合するエピトープと結合するか、または結合に関して本明細書に記載のタンパク質と競合する;(g)霊長類CDRまたは霊長類フレームワーク領域。
【0227】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、見かけの阻害定数(Ki,app)が1000、500、100、5、1、0.5または0.2nM未満である。
【0228】
いくつかの実施形態では、抗体はプレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0229】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の軽鎖および重鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0230】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の重鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0231】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の軽鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0232】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の軽鎖および重鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0233】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の重鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0234】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の軽鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0235】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる重鎖群の対応するCDRから選択される1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の重鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0236】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる軽鎖群の対応するCDRから選択される1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の軽鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0237】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる重鎖群の対応するCDRから選択される1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の重鎖CDR、ならびにM162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる軽鎖群の対応するCDRから選択される1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の軽鎖CDR(それぞれ)を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0238】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01の軽鎖および重鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0239】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01の重鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0240】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01の軽鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0241】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01から選択される抗体の軽鎖および重鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0242】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01の重鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0243】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01の軽鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0244】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01重鎖の対応するCDR由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の重鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0245】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01軽鎖の対応するCDR由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の軽鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0246】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X81-B01重鎖由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の重鎖CDRおよびX81-B01軽鎖の対応するCDR由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の軽鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0247】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03の軽鎖および重鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0248】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03の重鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0249】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03の軽鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0250】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03から選択される抗体の軽鎖および重鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0251】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03の重鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0252】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03の軽鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0253】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03重鎖の対応するCDR由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の重鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0254】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03軽鎖の対応するCDR由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の軽鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0255】
好適な実施形態では、このタンパク質は、X67-D03重鎖由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の重鎖CDRおよびX67-D03軽鎖の対応するCDR由来の1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の軽鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0256】
一実施形態では、HCおよびLC可変ドメイン配列は、同じポリペプチド鎖の構成要素である。
【0257】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、in vivoで、例えばヒトにおいて、血中滞留時間が1週間、2週間、3週間、4週間、5週間またはそれ以上である。一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、in vivoで、例えばヒトにおいて、血中滞留時間が1週間、2週間、3週間、4週間、5週間またはそれ以上であるIgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。
【0258】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質を、血中滞留時間を向上させる部分、例えば、本明細書に記載の部分と物理的に結合させる。
【0259】
別の実施形態では、HCおよびLC可変ドメイン配列は、異なるポリペプチド鎖の構成要素である。例えば、このタンパク質はIgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。このタンパク質は、可溶性Fab(sFab)であり得る。
【0260】
他の実施形態では、このタンパク質は、Fab2’、scFv、ミニボディ、scFv::Fc融合体、Fab::HSA融合体、HSA::Fab融合体、Fab::HSA::Fab融合体または本明細書の結合タンパク質の1つの抗原結合部位を含むその他の分子を含む。上記FabのVHおよびVL領域は、IgG、Fab、Fab2、Fab2’、scFv、ペグ化Fab、ペグ化scFv、ペグ化Fab2、VH::CH1::HSA+LC、HSA::VH::CH1+LC、LC::HSA+VH::CH1、HSA::LC+VH::CH1またはその他の適当な構築物として提供され得る。
【0261】
一実施形態では、このタンパク質は、ヒトもしくはヒト化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。例えば、このタンパク質は、1つ以上のヒト抗体フレームワーク領域、例えば、すべてのヒトフレームワーク領域を含む。
【0262】
一実施形態では、このタンパク質は、ヒトFcドメインまたはヒトFcドメインと少なくとも95、96、97、98もしくは99%同一であるFcドメインを含む。
【0263】
一実施形態では、このタンパク質は、霊長類もしくは霊長類化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。例えば、このタンパク質は、1つ以上の霊長類抗体フレームワーク領域、例えば、すべての霊長類フレームワーク領域を含む。
【0264】
一実施形態では、このタンパク質は、霊長類Fcドメインまたは霊長類Fcドメインと少なくとも95、96、97、98もしくは99%同一であるFcドメインを含む。「霊長類」には、ヒト(Homo sapiens)、チンパンジー(Pan troglodytesおよびPan paniscus(ボノボ))、ゴリラ(Gorilla gorilla)、テナガザル、サル、キツネザル、アイアイ(Daubentonia madagascariensis)およびメガネザルが含まれる。
【0265】
一実施形態では、このタンパク質は、ヒトフレームワーク領域またはヒトフレームワーク領域と少なくとも95、96、97、98もしくは99%同一であるフレームワーク領域を含む。
【0266】
特定の実施形態では、このタンパク質は、マウスまたはウサギ由来の配列を含まない(例えば、マウスまたはウサギ抗体ではない)。
【0267】
特定の実施形態では、このタンパク質は、例えば血漿カリクレインを発現する、細胞または組織と結合することができる。
【0268】
一実施形態では、タンパク質はナノ粒子と物理的に結合しており、かつ血漿カリクレインを発現している細胞または組織へナノ粒子を導くために使用することができる。
【0269】
いくつかの態様では、本開示は、対象の関節リウマチを治療または予防する方法を特徴とし、この方法は、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列とを含む単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含み、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、
このタンパク質が血漿カリクレインと結合する。
【0270】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0271】
いくつかの実施形態では、このタンパク質を、関節リウマチの別の治療法と併用して投与する。
【0272】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)を阻害する。
【0273】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメインを含む。
【0274】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖および/または本明細書に記載のタンパク質の軽鎖を含む。
【0275】
いくつかの態様では、本開示は、対象の痛風を治療または予防する方法を特徴とし、この方法は、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列とを含む単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含み、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、
このタンパク質が血漿カリクレインと結合する。
【0276】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0277】
いくつかの実施形態では、このタンパク質を、痛風の別の治療法と併用して投与する。
【0278】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)を阻害する。
【0279】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメインを含む。
【0280】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖および/または本明細書に記載のタンパク質の軽鎖を含む。
【0281】
いくつかの態様では、本開示は、対象の腸疾患を治療または予防する方法を特徴とし、この方法は、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列とを含む単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含み、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、
このタンパク質が血漿カリクレインと結合する。
【0282】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0283】
いくつかの実施形態では、このタンパク質を、腸疾患の別の治療法と併用して投与する。
【0284】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)を阻害する。
【0285】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメインを含む。
【0286】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖および/または本明細書に記載のタンパク質の軽鎖を含む。
【0287】
いくつかの態様では、本開示は、対象の口腔粘膜炎を治療または予防する方法を特徴とし、この方法は、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列とを含む単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含み、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、
このタンパク質が血漿カリクレインと結合する。
【0288】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0289】
いくつかの実施形態では、このタンパク質を、の別の治療法と併用して投与する。
【0290】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)を阻害する。
【0291】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメインを含む。
【0292】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖および/または本明細書に記載のタンパク質の軽鎖を含む。
【0293】
いくつかの態様では、本開示は、対象の神経障害性疼痛を治療または予防する方法を特徴とし、この方法は、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列とを含む単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含み、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、
このタンパク質が血漿カリクレインと結合する。
【0294】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0295】
いくつかの実施形態では、このタンパク質を、神経障害性疼痛の別の治療法と併用して投与する。
【0296】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)を阻害する。
【0297】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメインを含む。
【0298】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖および/または本明細書に記載のタンパク質の軽鎖を含む。
【0299】
いくつかの態様では、本開示は、対象の炎症性疼痛を治療または予防する方法を特徴とし、この方法は、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列とを含む単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含み、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、
このタンパク質が血漿カリクレインと結合する。
【0300】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0301】
いくつかの実施形態では、このタンパク質を、炎症性疼痛の別の治療法と併用して投与する。
【0302】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)を阻害する。
【0303】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメインを含む。
【0304】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖および/または本明細書に記載のタンパク質の軽鎖を含む。
【0305】
いくつかの態様では、本開示は、対象の脊柱管狭窄-変性脊椎疾患を治療または予防する方法を特徴とし、この方法は、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列とを含む単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含み、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、
このタンパク質が血漿カリクレインと結合する。
【0306】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0307】
いくつかの実施形態では、このタンパク質を、脊柱管狭窄-変性脊椎疾患の別の治療法と併用して投与する。
【0308】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)を阻害する。
【0309】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメインを含む。
【0310】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖および/または本明細書に記載のタンパク質の軽鎖を含む。
【0311】
いくつかの態様では、本開示は、対象の動脈または静脈血栓症を治療または予防する方法を特徴とし、この方法は、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列とを含む単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含み、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、
このタンパク質が血漿カリクレインと結合する。
【0312】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0313】
いくつかの実施形態では、このタンパク質を、動脈または静脈血栓症の別の治療法と併用して投与する。
【0314】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)を阻害する。
【0315】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメインを含む。
【0316】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖および/または本明細書に記載のタンパク質の軽鎖を含む。
【0317】
いくつかの態様では、本開示は、対象の術後イレウスを治療または予防する方法を特徴とし、この方法は、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列とを含む単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含み、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、
このタンパク質が血漿カリクレインと結合する。
【0318】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0319】
いくつかの実施形態では、このタンパク質を、術後イレウスの別の治療法と併用して投与する。
【0320】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)を阻害する。
【0321】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメインを含む。
【0322】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖および/または本明細書に記載のタンパク質の軽鎖を含む。
【0323】
いくつかの態様では、本開示は、対象の大動脈瘤を治療または予防する方法を特徴とし、この方法は、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列とを含む単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含み、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、
このタンパク質が血漿カリクレインと結合する。
【0324】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0325】
いくつかの実施形態では、このタンパク質を、大動脈瘤の別の治療法と併用して投与する。
【0326】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)を阻害する。
【0327】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメインを含む。
【0328】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖および/または本明細書に記載のタンパク質の軽鎖を含む。
【0329】
いくつかの態様では、本開示は、対象の骨関節炎を治療または予防する方法を特徴とし、この方法は、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列とを含む単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含み、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、
このタンパク質が血漿カリクレインと結合する。
【0330】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0331】
いくつかの実施形態では、このタンパク質を、骨関節炎の別の治療法と併用して投与する。
【0332】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)を阻害する。
【0333】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメインを含む。
【0334】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖および/または本明細書に記載のタンパク質の軽鎖を含む。
【0335】
いくつかの態様では、本開示は、対象の血管炎を治療または予防する方法を特徴とし、この方法は、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列とを含む単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含み、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、
このタンパク質が血漿カリクレインと結合する。
【0336】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0337】
いくつかの実施形態では、このタンパク質を、血管炎の別の治療法と併用して投与する。
【0338】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)を阻害する。
【0339】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメインを含む。
【0340】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖および/または本明細書に記載のタンパク質の軽鎖を含む。
【0341】
いくつかの態様では、本開示は、対象の頭部外傷または腫瘍周囲脳浮腫を治療または予防する方法を特徴とし、この方法は、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列とを含む単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含み、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、
このタンパク質が血漿カリクレインと結合する。
【0342】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0343】
いくつかの実施形態では、このタンパク質を、頭部外傷または腫瘍周囲脳浮腫の別の治療法と併用して投与する。
【0344】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)を阻害する。
【0345】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメインを含む。
【0346】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖および/または本明細書に記載のタンパク質の軽鎖を含む。
【0347】
いくつかの態様では、本開示は、対象の敗血症を治療または予防する方法を特徴とし、この方法は、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列とを含む単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含み、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、
このタンパク質が血漿カリクレインと結合する。
【0348】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0349】
いくつかの実施形態では、このタンパク質を、敗血症の別の治療法と併用して投与する。
【0350】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)を阻害する。
【0351】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメインを含む。
【0352】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖および/または本明細書に記載のタンパク質の軽鎖を含む。
【0353】
いくつかの態様では、本開示は、対象の急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)を治療または予防する方法を特徴とし、この方法は、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列とを含む単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含み、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、
このタンパク質が血漿カリクレインと結合する。
【0354】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0355】
いくつかの実施形態では、このタンパク質を、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)の別の治療法と併用して投与する。
【0356】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)を阻害する。
【0357】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメインを含む。
【0358】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖および/または本明細書に記載のタンパク質の軽鎖を含む。
【0359】
いくつかの態様では、本開示は、対象の再狭窄(例えば、血管形成術後)を治療または予防する方法を特徴とし、この方法は、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列とを含む単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含み、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、
このタンパク質が血漿カリクレインと結合する。
【0360】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0361】
いくつかの実施形態では、このタンパク質を、再狭窄(例えば、血管形成術後)の別の治療法と併用して投与する。
【0362】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)を阻害する。
【0363】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメインを含む。
【0364】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖および/または本明細書に記載のタンパク質の軽鎖を含む。
【0365】
いくつかの態様では、本開示は、対象の全身性エリテマトーデス腎炎を治療または予防する方法を特徴とし、この方法は、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列とを含む単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含み、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、
このタンパク質が血漿カリクレインと結合する。
【0366】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0367】
いくつかの実施形態では、このタンパク質を、全身性エリテマトーデス腎炎の別の治療法と併用して投与する。
【0368】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)を阻害する。
【0369】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメインを含む。
【0370】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖および/または本明細書に記載のタンパク質の軽鎖を含む。
【0371】
いくつかの態様では、本開示は、対象の熱傷を治療または予防する方法を特徴とし、この方法は、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列とを含む単離タンパク質(例えば抗体、例えばヒト抗体)を対象に投与することを含み、
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、かつ/または
軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメイン由来の1つ、2つもしくは3つ(例えば、3つ)のCDR領域を含み、
このタンパク質が血漿カリクレインと結合する。
【0372】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0373】
いくつかの実施形態では、このタンパク質を、熱傷の別の治療法と併用して投与する。
【0374】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)を阻害する。
【0375】
いくつかの実施形態では、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の重鎖可変ドメインを含み、かつ/または軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列は本明細書に記載のタンパク質の軽鎖可変ドメインを含む。
【0376】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質の重鎖および/または本明細書に記載のタンパク質の軽鎖を含む。
【0377】
いくつかの態様では、本開示は、試料中の血漿カリクレインの検出方法を特徴とし、この方法は、試料を血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、本明細書に記載の血漿カリクレイン結合タンパク質)と接触させることと、このタンパク質と血漿カリクレインとの間の相互作用が存在すれば、これを検出することとを含む。
【0378】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は検出可能な標識を含む。
【0379】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレインおよび活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)と結合する。
【0380】
いくつかの態様では、本開示は、対象中の血漿カリクレインの検出方法を特徴とし、この方法は、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、本明細書に記載の血漿カリクレイン結合タンパク質)と対象に投与することと、対象中にこのタンパク質と血漿カリクレインとの間の相互作用が存在すれば、これを検出することとを含む。例えば、検出は対象のイメージングを含む。
【0381】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、検出可能な標識をさらに含む。
【0382】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレインおよび活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)と結合する。
【0383】
いくつかの態様では、本開示は、例えば血漿カリクレイン関連疾患を治療または予防する方法における、血漿カリクレイン活性を調節する方法を特徴とする。この方法は、血漿カリクレインを血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、本明細書に記載の血漿カリクレイン結合タンパク質)と接触させる(例えば、ヒト対象中で)ことにより、血漿カリクレイン活性を調節することを含む。
【0384】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0385】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン関連疾患は、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄-変性脊椎疾患、動脈または静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、骨関節炎、血管炎、浮腫、遺伝性血管性浮腫、脳浮腫、肺塞栓症、脳卒中、心室補助装置またはステントにより誘発される凝血、頭部外傷または腫瘍周囲脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎/血管炎および熱傷からなる群より選択される。
【0386】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、接触活性化系(すなわち、内因性の活性化系)に関連した異常な凝血を、例えばAPTT凝固アッセイによる測定で、少なくとも10%減少させる。他の実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、接触活性化系に関連した異常な凝血を、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%(すなわち、異常な凝血が検出されない)減少させる。
【0387】
いくつかの態様では、本開示は、血漿カリクレイン関連疾患の治療法を特徴とし、この方法は、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、本明細書に記載の血漿カリクレイン結合タンパク質)を、対象の血漿カリクレイン関連疾患を治療するのに十分な量で対象に投与することを含む。この方法は、例えば本明細書に記載の血漿カリクレイン関連疾患の治療法である第二の治療法を対象に提供することをさらに含み得る。
【0388】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン関連疾患は、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄-変性脊椎疾患、動脈または静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、骨関節炎、血管炎、浮腫、遺伝性血管性浮腫、脳浮腫、肺塞栓症、脳卒中、心室補助装置またはステントにより誘発される凝血、頭部外傷または腫瘍周囲脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎/血管炎および熱傷からなる群より選択される。
【0389】
いくつかの態様では、対象のイメージング法を特徴とする。この方法は、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、本明細書に記載の血漿カリクレイン結合タンパク質)を対象に投与することと、例えば、対象中にこのタンパク質と血漿カリクレインとの間の相互作用が存在すれば、これを検出することとを含む。
【0390】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレインおよび活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)と結合する。
【0391】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は血漿カリクレイン活性を阻害しない。
【0392】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、血漿カリクレイン活性(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)を阻害する。
【0393】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、検出可能な標識(例えば、放射性核種またはMRIで検出可能な標識)を含み得る。
【0394】
いくつかの実施形態では、対象は血漿カリクレイン関連疾患を有するか、または有することが疑われる。この方法は、例えば血漿カリクレイン関連疾患の診断に有用である。
【0395】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン関連疾患は、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄-変性脊椎疾患、動脈または静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、骨関節炎、血管炎、浮腫、遺伝性血管性浮腫、脳浮腫、肺塞栓症、脳卒中、心室補助装置またはステントにより誘発される凝血、頭部外傷または腫瘍周囲脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎および熱傷からなる群より選択される。
【0396】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、接触活性化系(すなわち、内因性の活性化系)に関連した異常な凝血を、例えばAPTT凝固アッセイによる測定で、少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%(すなわち、異常な凝血が検出されない))減少させる。
【0397】
いくつかの態様では、本開示は、例えば対象または試料(例えば、生検試料)中の血漿カリクレインのイメージング法を特徴とする。この方法は、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、本明細書に記載の血漿カリクレイン結合タンパク質)を、例えば対象または試料に投与することと、このタンパク質と血漿カリクレインとの間の相互作用が存在すれば、これを検出することを含む。
【0398】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレインおよび活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)と結合する。
【0399】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、血漿カリクレイン活性を阻害しない。
【0400】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、血漿カリクレイン活性(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)を阻害する。
【0401】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、検出可能な標識(例えば、放射性核種またはMRIで検出可能な標識)を含み得る。
【0402】
いくつかの実施形態では、対象は血漿カリクレイン関連疾患を有するか、または有することが疑われる。この方法は、例えば血漿カリクレイン関連疾患の診断に有用である。
【0403】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン関連疾患は、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄-変性脊椎疾患、動脈または静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、骨関節炎、血管炎、浮腫、遺伝性血管性浮腫、脳浮腫、肺塞栓症、脳卒中、心室補助装置またはステントにより誘発される凝血、頭部外傷または腫瘍周囲脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎および熱傷からなる群より選択される。
【0404】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、接触活性化系(すなわち、内因性の活性化系)に関連した異常な凝血を、例えばAPTT凝固アッセイによる測定で、少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%(すなわち、異常な凝血が検出されない))減少させる。
【0405】
一態様では、本開示は、本明細書に記載の疾患、例えば、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄-変性脊椎疾患、動脈もしくは静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、骨関節炎、血管炎、浮腫、遺伝性血管性浮腫、脳浮腫、肺塞栓症、脳卒中、心室補助装置もしくはステントにより誘発される凝血、頭部外傷または腫瘍周囲脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎もしくは熱傷の治療;または創傷治癒の促進のために、本明細書に記載の血漿カリクレイン結合タンパク質を使用することを特徴とする。
【0406】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレインおよび活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)と結合する。
【0407】
一態様では、本開示は、本明細書に記載の疾患、例えば、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄-変性脊椎疾患、動脈もしくは静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、骨関節炎、血管炎、浮腫、遺伝性血管性浮腫、脳浮腫、肺塞栓症、脳卒中、心室補助装置もしくはステントにより誘発される凝血、頭部外傷または腫瘍周囲脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎もしくは熱傷の治療のための薬物の製造;または創傷治癒のための薬物の製造に、本明細書に記載の血漿カリクレイン結合タンパク質を使用することを特徴とする。
【0408】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、接触活性化系(すなわち、内因性の活性化系)に関連した異常な凝血を、例えばAPTT凝固アッセイによる測定で、少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%(すなわち、異常な凝血が検出されない))減少させる。
【0409】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)とは結合する。
【0410】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を以下の添付図面および説明において述べる。本発明のその他の特徴、目的および利点は、説明および図面ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0411】
本願で引用される参考文献、発行済み特許、公開または非公開特許出願および下に列挙されるものを含めたすべての引用参照物の内容は、その全体が明示的に参照により本明細書に組み込まれる。矛盾が生じた場合には、定義を含めた本願が統制する。
【図面の簡単な説明】
【0412】
【
図1】内因性の凝固経路および炎症における血漿カリクレイン(pKal)の役割を表す略図である。
【
図2】カラゲナン誘導性ラット足浮腫に対するM162-A04の効果を表す図である。足の腫れは水置換法により測定した。
【
図3】カラゲナン誘導性温度痛覚過敏に対するM162-A04の効果を表す図である。カラゲナン注射後に疼痛潜時をHargreaves法により測定した。
【
図4】ROLIC親和性成熟を用いて見出された同じ抗体の非生殖系列化(X63-G06)型と生殖系列化されたコドン最適化型(X81-B01)の軽鎖DNA配列のアライメントを表す図である。アスタリスク(
*)で示される位置は保存されている部分であり、空白部分はX81-B01においてコドン最適化または生殖系列化により変化した塩基に対応する。
【
図5】ROLIC親和性成熟を用いて見出された同じ抗体の非生殖系列化型(X63-G06)と生殖系列化されたコドン最適化型(X81-B01)の軽鎖アミノ酸配列のアライメントを表す図である。アスタリスク(
*)で示される位置は保存されている部分であり、空白部分はX81-B01において生殖系列化により変化したアミノ酸に対応する。非生殖系列化抗体(X63-G06)と生殖系列化されたコドン最適化抗体(X81-B01)の間では合計11個のアミノ酸が異なる。
【
図6】ROLIC親和性成熟を用いて見出された同じ抗体の非生殖系列化(X63-G06)型と生殖系列化されたコドン最適化型(X81-B01)の重鎖DNA配列のアライメントを表す図である。アスタリスク(
*)で示される位置は保存されている部分であり、空白部分はX81-B01においてコドン最適化により変化した塩基に対応する。
【
図7】ROLIC親和性成熟を用いて見出された同じ抗体の非生殖系列化(X63-G06)型と生殖系列化されたコドン最適化型(X81-B01)の重鎖アミノ酸配列のアライメントを表す図である。アスタリスク(
*)で示される位置は保存されている部分である。この2つの抗体は重鎖のアミノ酸配列が同じである。
【
図8A】X81-B01とpKalとの結合に対するEPI-KAL2競合を表す図である。X81-B01(IgG)をCM5 BIACORE(登録商標)チップの抗ヒトFcフラグメント特異的表面で捕捉した。pKal(100nM)を1μMのEPI-KAL2の存在下(図中、下のセンサグラム)または非存在下(図中、上のセンサグラム)で表面に流した。
【
図8B】X67-D03とpKalとの結合に対するEPI-KAL2競合を表す図である。X67-D03(IgG)をCM5 Biacoreチップの抗ヒトFcフラグメント特異的表面で捕捉した。pKal(100nM)を1μMのEPI-KAL2の存在下(図中、下のセンサグラム)または非存在下(図中、上のセンサグラム)で表面に流した。
【
図9】表12に記載されている抗体に対するCLIPSエピトープマッピングの結果を表す図である。
【
図10A】様々な種由来のpKal配列のClustalWアライメントを表す図である。「
*」で示される位置は種間で保存されている位置であり、「:」で示される位置は種間での保存的置換を表す。「.」で示される位置は一部の種において非保存的置換を有する。「@」の記号により示される一続きのアミノ酸は、溶媒接触可能表面積の計算から溶媒曝露が著しいことが示された。「+」により示される一続きのアミノ酸は、表12に記載されている抗体の潜在的エピトープとして同定された。灰色で強調されているアミノ酸は、溶媒接触可能表面積の計算により、Kunitzドメイン活性部位阻害剤と複合体を形成したときに埋没することが判明したものである。下線が施されている位置は触媒三残基を形成するアミノ酸(His434、Asp483およびSer578、番号はヒト配列に基づく)である。
【
図10B】様々な種由来のpKal配列のClustalWアライメントを表す図である。「
*」で示される位置は種間で保存されている位置であり、「:」で示される位置は種間での保存的置換を表す。「.」で示される位置は一部の種において非保存的置換を有する。「@」の記号により示される一続きのアミノ酸は、溶媒接触可能表面積の計算から溶媒曝露が著しいことが示された。「+」により示される一続きのアミノ酸は、表12に記載されている抗体の潜在的エピトープとして同定された。灰色で強調されているアミノ酸は、溶媒接触可能表面積の計算により、Kunitzドメイン活性部位阻害剤と複合体を形成したときに埋没することが判明したものである。下線が施されている位置は触媒三残基を形成するアミノ酸(His434、Asp483およびSer578、番号はヒト配列に基づく)である。
【
図10C】様々な種由来のpKal配列のClustalWアライメントを表す図である。「
*」で示される位置は種間で保存されている位置であり、「:」で示される位置は種間での保存的置換を表す。「.」で示される位置は一部の種において非保存的置換を有する。「@」の記号により示される一続きのアミノ酸は、溶媒接触可能表面積の計算から溶媒曝露が著しいことが示された。「+」により示される一続きのアミノ酸は、表12に記載されている抗体の潜在的エピトープとして同定された。灰色で強調されているアミノ酸は、溶媒接触可能表面積の計算により、Kunitzドメイン活性部位阻害剤と複合体を形成したときに埋没することが判明したものである。下線が施されている位置は触媒三残基を形成するアミノ酸(His434、Asp483およびSer578、番号はヒト配列に基づく)である。
【
図11A】本明細書の実施例12に記載されている(i)DX-2922抗体および(ii)M6-D09抗体に対するepi-kal2のBiacore競合解析を表す図である。
【
図11B】本明細書の実施例12に記載されている(i)DX-2922抗体および(ii)M6-D09抗体に対するepi-kal2のBiacore競合解析を表す図である。
【
図12】本明細書の実施例12に記載されている(i)DX-2911抗体および(ii)M6-D09抗体に対するAEBSFのBiacore競合解析を表す図である。
【
図13】Biocore解析を表す図であり、DX-2922が、高分子量キニノーゲン(HMWK)と結合した血漿カリクレインと結合することを示している。
【
図14】ラットのカラゲナン誘導性足浮腫(CPE)におけるX101-A01による浮腫の用量依存的阻害を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0413】
定義
便宜上、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語を、本発明をさらに記載する前にここで定義する。他の用語は本明細書で使用されるときに定義する。
【0414】
単数形「a」、「an」および「the」は、文脈により明らかにそうでないことが述べられない限り、複数形の指示対象を包含する。
【0415】
本明細書で使用される「アゴニスト」という用語は、タンパク質の生物活性を模倣または上方制御する(例えば、増強または補助する)作用物質を指すことが意図される。アゴニストは、野生型タンパク質の生物活性を少なくとも1つ有する野生型タンパク質またはその誘導体であり得る。またアゴニストは、タンパク質の少なくとも1つの生物活性を増加させる化合物でもあり得る。またアゴニストは、ポリペプチドと別の分子、例えば標的ペプチドまたは標的核酸との相互作用を増加させる化合物でもあり得る。
【0416】
本明細書で使用される「アンタゴニスト」は、タンパク質の少なくとも1つの生物活性を下方制御する(例えば、抑制または阻害する)作用物質を指すことが意図される。アンタゴニストは、タンパク質と別の分子、例えば標的ペプチドまたは酵素基質との間の相互作用を阻害または低減する化合物であり得る。またアンタゴニストは、存在する発現タンパク質の量を低減する化合物でもあり得る。
【0417】
「抗体」という用語は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメイン(可変領域)または免疫グロブリン可変ドメイン(可変領域)配列を含むタンパク質を指す。例えば、抗体は重(H)鎖可変領域(本明細書ではVHまたはHVと略記)および軽(L)鎖可変領域(本明細書ではVLまたはLVと略記)含み得る。別の例では、抗体は2つの重(H)鎖可変領域および2つの軽(L)鎖可変領域含み得る。「抗体」という用語は完全抗体だけでなく、抗体の抗原結合フラグメント(例えば、一本鎖抗体、FabおよびsFabフラグメント、F(ab’)2、Fdフラグメント、Fvフラグメント、scFvおよびドメイン抗体(dAb)フラグメント(de Wildtら,Eur J Immunol.1996;26(3):629-39))も包含する。抗体は、IgA、IgG、IgE、IgD、IgM(およびこれらのサブタイプ)の構造的特徴を有し得る。抗体は任意の起源由来であってよいが、霊長類(ヒトおよび非ヒト霊長類)抗体および霊長類化抗体が好ましい。
【0418】
さらにVHおよびVL領域を、「フレームワーク領域」(「FR」)と呼ばれる保存性の高い領域が散在する、「相補性決定領域」(「CDR」)と呼ばれる超可変領域に細分することができる。フレームワーク領域およびCDRの範囲が定義されている(Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242およびChothia,C.ら(1987)J.Mol.Biol.196:901-917を参照されたい)。本明細書ではKabatの定義を用いる。通常、各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端までFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配列された3つのCDRと4つのFRで構成される。
【0419】
本明細書で使用される「免疫グロブリン可変ドメイン配列」は、1つ以上のCDR領域が抗原結合部位に適した立体配座で配置されるように免疫グロブリン可変ドメインの構造を形成することができるアミノ酸配列を指す。例えば、この配列は天然可変ドメインのアミノ酸配列のすべてまたは一部を含み得る。例えば、この配列は、1個、2個もしくはそれ以上のN末端もしくはC末端アミノ酸、内部アミノ酸が抜けていてもよく、1つ以上の挿入もしくは追加の末端アミノ酸を含んでもよく、またその他の改変を含んでもよい。一実施形態では、免疫グロブリン可変ドメイン配列を含むポリペプチドを別の免疫グロブリン可変ドメイン配列と会合させて、抗原結合部位、例えば、血漿カリクレインと優先的に相互作用する構造を形成させ得る。
【0420】
抗体のVHまたはVL鎖は、重鎖または軽鎖定常領域のすべてまたは一部をさらに含むことにより、それぞれ重鎖または軽鎖免疫グロブリン鎖を形成し得る。一実施形態では、抗体は、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖が例えばジスルフィド結合により互いに連結した、2本の免疫グロブリン重鎖と2本の免疫グロブリン軽鎖からなる四量体である。IgGでは、重鎖定常領域は、CH1、CH2およびCH3という3つの免疫グロブリンドメインを含む。軽鎖定常領域は1つのCLドメインを含む。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は通常、各種免疫系細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(C1q)を含めた宿主の組織または因子と抗体との結合を仲介する。免疫グロブリンの軽鎖はカッパ型またはラムダ型であり得る。一実施形態では、抗体をグリコシル化する。抗体は抗体依存性細胞傷害および/または補体仲介性細胞傷害において機能し得る。
【0421】
抗体の1つ以上の領域がヒトまたは実質的にヒトであり得る。例えば、1つ以上の可変領域がヒトまたは実質的にヒトであり得る。例えば、1つ以上のCDR、例えばHC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2および/またはLC CDR3がヒトであり得る。軽鎖(LC)および/または重鎖(HC)CDRがそれぞれヒトであり得る。HC CDR3がヒトであり得る。1つ以上のフレームワーク領域、例えばHCおよび/またはLCのFR1、FR2、FR3および/またはFR4がヒトであり得る。例えば、Fc領域がヒトであり得る。一実施形態では、すべてのフレームワーク領域がヒト、例えば、ヒト体細胞(例えば、免疫グロブリンを産生する造血細胞または非造血細胞)由来である。一実施形態では、ヒト配列は、生殖系列配列である、例えば、生殖系列核酸によりコードされている。一実施形態では、選択したFabのフレームワーク(FR)残基を、類似したほとんどの霊長類の生殖系列遺伝子、特にヒト生殖系列遺伝子中の対応する残基のアミノ酸タイプに変換し得る。1つ以上の定常領域がヒトまたは実質的にヒトであり得る。例えば、免疫グロブリン可変ドメイン、定常領域、定常ドメイン(CH1、CH2、CH3および/またはCL1)または完全抗体の少なくとも70、75、80、85、90、92、95、98または100%が、ヒトまたは実質的にヒトであり得る。
【0422】
抗体の全体または一部が免疫グロブリン遺伝子またはそのセグメントによりコードされ得る。ヒト免疫グロブリン遺伝子の例としては、カッパ、ラムダ、アルファ(IgA1およびIgA2)、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子、ならびに多数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。完全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25KDaまたは約214アミノ酸)は、NH2末端(約110アミノ酸)が可変領域遺伝子により、またCOOH末端がカッパまたはラムダ定常領域遺伝子によりコードされる。完全長免疫グロブリン「重鎖」(約50KDaまたは約446アミノ酸)は、可変領域遺伝子(約116アミノ酸)および上記定常領域遺伝子の他方、例えばガンマ(約330アミノ酸をコードする)により同様にコードされる。HC CDR3が約3アミノ酸残基から35を超えるアミノ酸残基まで様々であるため、ヒトHCの長さはきわめて変化に富む。
【0423】
完全長抗体の「抗原結合フラグメント」という用語は、対象となる標的と特異的に結合する能力を保持する、完全長抗体の1つ以上のフラグメントを指す。完全長抗体の「抗原結合フラグメント」に包含され機能性を保持する結合フラグメントの例としては、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメントであるFabフラグメント;(ii)ジスルフィド架橋によりヒンジ領域で連結した2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)2フラグメント;(iii)VHとCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iV)抗体の単一腕のVLとVHドメインからなるFvフラグメント;(V)VHドメインからなるdAbフラグメント(Wardら,(1989)Nature 341:544-546);ならびに(Vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインであるVLおよびVHは別々の遺伝子によりコードされているが、組換え法を用いて、VL領域とVH領域が対になって一本鎖Fv(scFv)として知られる一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖として作製することができる合成リンカーにより、それらを連結することができる。例えば、米国特許第5,260,203号、同第4,946,778号および同第4,881,175号;Birdsら(1988)Science 242:423-426;ならびにHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照されたい。
【0424】
抗体フラグメントは、当業者に公知の従来技術を含めた任意の適当な技術を用いて入手することができる。「単一特異性抗体」という用語は、特定の標的、例えばエピトープに対して単一の特異性および親和性を示す抗体を指す。この用語は「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」を包含し、本明細書で使用される場合、抗体の作製方法に関係なく、単一分子組成物の抗体またはそのフラグメントの調製物を指す。
【0425】
抗体は、結合特性が実質的に保持される限り、フレームワーク領域内の1つ以上の非生殖系列アミノ酸を抗体の対応する生殖系列アミノ酸に復帰させることにより「生殖系列化」される。
【0426】
阻害定数(Ki)は阻害剤の効力の尺度となる。阻害定数は、酵素活性を半分だけ低下させるのに必要な阻害剤の濃度のことであり、酵素または基質の濃度に依存しない。反応(例えば、酵素活性)の大きさに対する様々な濃度の阻害剤(例えば、阻害性結合タンパク質)の阻害効果を測定することにより、様々な基質濃度における見かけのKi(K
i,app)が得られる。すなわち、擬一次速度定数の変化を阻害剤濃度の関数としてMorrison方程式(方程式1)に当てはめることにより、見かけのKi値が推定される。基質濃度に対するK
i,appのプロットの直線回帰分析から求めたy切片からKiが得られる。
【数1】
式中、v=測定速度;v
0=阻害剤の非存在下での速度;K
i,app=見かけの阻害定数;I=全阻害剤濃度;およびE=全素濃度である。
【0427】
本明細書で使用される「結合親和性」は、見かけの結合定数すなわちKAを指す。KAは解離定数(KD)の逆数である。結合タンパク質は、例えば、特定の標的分子、例えば血漿カリクレインに対する結合親和性が少なくとも105、106、107、108、109、1010および1011M-1であり得る。結合タンパク質が第一標的と、第二標的よりも高い親和性で結合するということは、第一標的との結合のKA(またはKDの数値)が第二標的との結合のKAよりも大きい(またはKDの数値が小さい)ことにより示され得る。このような場合、その結合タンパク質は第二標的(例えば、第二の立体配座である同じタンパク質またはその模倣体;または第二のタンパク質)よりも第一標的(例えば、第一の立体配座であるタンパク質またはその模倣体)に対して特異的である。結合親和性の差(例えば、特異性またはその他の比較に関する)は、少なくとも1.5、2、3、4、5、10、15、20、37.5、50、70、80、91、100、500、1000、10,000または105倍であり得る。
【0428】
結合親和性は、平衡透析、平衡結合、ゲルろ過、ELISA、表面プラズモン共鳴または分光測定法(例えば、蛍光アッセイを用いた)を含めた各種方法により決定することができる。結合親和性を評価するための条件の例は、HBS-P緩衝液(10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、0.005%(v/v)界面活性剤P20)中という条件である。上記技術を用いて、結合したおよび遊離の結合タンパク質の濃度を結合タンパク質(または標的)濃度の関数として測定することができる。結合した結合タンパク質の濃度([結合])と、遊離の結合タンパク質の濃度([遊離])および標的上の結合タンパク質に対する結合部位の濃度との間には、以下の方程式による関係があり、式中、(N)は標的分子当たりの結合部位の数である:
【数2】
【0429】
しかし、常にKAを正確に決定することが必要というわけではなく、それは例えば、ELISAまたはFACS解析のような方法を用いて決定される親和性の定量測定結果を得れば十分な場合もあるからである。このような方法はKAに比例するため、例えば、機能アッセイ(例えば、in vitroまたはin vivoアッセイ)における活性による比較、例えば、高い親和性が例えば2倍高いか否かの決定などに用いて、親和性の定性測定結果を得るまたは親和性を推定することができる。
【0430】
「結合タンパク質」という用語は、標的分子と相互作用することができるタンパク質を指す。この用語は「リガンド」と互換的に使用される。「血漿カリクレイン結合タンパク質」は、血漿カリクレインと相互作用する(例えば、結合する)ことができるタンパク質を指し、具体的には、優先的または特異的に血漿カリクレインと相互作用するおよび/またはこれを阻害するタンパク質を包含する。あるタンパク質が、そのタンパク質が存在しない同じ条件下での血漿カリクレインの活性に比べて血漿カリクレインの活性を減少させる場合、そのタンパク質は血漿カリクレインを阻害することになる。いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は抗体である。
【0431】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換わる置換のことである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該技術分野において定義されている。このようなファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。
【0432】
結合タンパク質の1つ以上のフレームワークおよび/またはCDRアミノ酸残基が、本明細書に記載のタンパク質と比べて1つ以上の変異(例えば、置換(例えば、保存的置換または非必須アミノ酸の置換)、挿入または欠失)を含むことがあり得る。血漿カリクレイン結合タンパク質は、本明細書に記載のタンパク質と比べて、変異(例えば、置換(例えば、保存的置換または非必須アミノ酸の置換)、挿入または欠失)(例えば、少なくとも1個、2個、3個もしくは4個の変異および/または15個、12個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個または2個未満の変異)、例えば、タンパク質機能に実質的に影響しない変異を有し得る。変異はフレームワーク領域、CDRおよび/または定常領域に存在し得る。いくつかの実施形態では、変異はフレームワーク領域に存在する。いくつかの実施形態では、変異はCDRに存在する。いくつかの実施形態では、変異は定常領域に存在する。特定の置換が許容されるか否か、すなわち結合活性のような生物学的特性に悪影響を及ぼさないか否かは、例えば、その変異が保存的である否かを評価することにより、またはBowieら(1990)Science 247:1306-1310の方法により予測することができる。
【0433】
生体高分子のモチーフ配列は、様々なアミノ酸であることが可能な位置を含み得る。例えば、そのような文脈における記号「X」は一般に、そうでない(例えば、任意の非システインアミノ酸を表す)ことが明記されない限り、任意のアミノ酸(例えば、20種の天然アミノ酸のいずれか)を表す。他の許容されるアミノ酸も、例えば丸括弧とスラッシュを用いて表すことができる。例えば、「(A/W/F/N/Q)」は、アラニン、トリプトファン、フェニルアラニン、アスパラギンおよびグルタミンがその特定の位置において許容されることを意味する。
【0434】
「実質的にヒトである」免疫グロブリン可変領域とは、十分な数のヒトフレームワークアミノ酸位置を含み、正常なヒトにおいて免疫原性応答を誘発しない免疫グロブリン可変領域のことである。「実質的にヒトである」抗体とは、十分な数のヒトアミノ酸位置を含み、正常なヒトにおいて免疫原性応答を誘発しない抗体のことである。
【0435】
「エピトープ」は、結合タンパク質(例えば、Fabまたは完全長抗体のような抗体)が結合する標的化合物上の部位を指す。標的化合物がタンパク質の場合、この部位は完全にアミノ酸成分で構成されるか、完全にタンパク質のアミノ酸の化学修飾(例えば、グリコシル)で構成されるか、またはこれらの組合せで構成され得る。重複するエピトープは、少なくとも1つの共通するアミノ酸残基、グリコシル基、リン酸基、硫酸基またはその他の分子構造を含む。
【0436】
第一の結合タンパク質(例えば、抗体)が、第二の結合タンパク質(例えば、抗体)が結合する標的化合物上の部位と同じ部位と結合するか、または第二の結合タンパク質が結合する部位と重複する(例えばアミノ酸配列またはその他の分子構造(例えば、グリコシル基、リン酸基または硫酸基)に関して、例えば50%、60%、70%、80%、90%または100%の重複)部位と結合する場合、その第一の結合タンパク質は第二の結合タンパク質と「同じエピトープと結合する」ということになる。
【0437】
第一の結合タンパク質(例えば、抗体)がそのエピトープと結合することにより、そのエピトープと結合する第二の結合タンパク質の量が減少する(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上)場合、その第一の結合タンパク質は、第二の結合タンパク質(例えば、抗体)と「結合に関して競合する」ということになる。競合は直接的なもの(例えば、第一の結合タンパク質が、第二の結合タンパク質が結合するエピトープと同じまたは重複するエピトープと結合する)または間接的なもの(例えば、第一の結合タンパク質がそのエピトープと結合して標的化合物の立体的変化が生じ、その立体的変化により第二の結合タンパク質がそのエピトープと結合する能力が低下する)であり得る。
【0438】
2配列間の「相同性」または「配列同一性」(これらの用語は本明細書において互換的に使用される)の計算は以下のように行う。配列を最適な比較目的で整列させる(例えば、最適アライメントのために第一および第二のアミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができ、また比較目的で非相同配列を無視することができる)。GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを用いて、Blossum 62スコア行列によりギャップペナルティを12、ギャップ伸長ペナルティを4、フレームシフトギャップペナルティを5として最適アライメントを最大スコアとして決定する。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第一の配列内の位置が第二の配列内の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドで占められている場合、その分子はその位置において同一であることになる(本明細書で使用されるアミノ酸または核酸の「同一性」は、アミノ酸または核酸の「相同性」と同じことである)。2配列間のパーセント同一性は、2つの配列に共通する同一位置の数の関数である。
【0439】
好適な実施形態では、比較目的で整列させる参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、92%、95%、97%、98%または100%である。例えば、参照配列は免疫グロブリン可変ドメイン配列の長さであり得る。
【0440】
「ヒト化」免疫グロブリン可変領域とは、十分な数のヒトフレームワークアミノ酸位置を含み、正常なヒトにおいて免疫原性応答を誘発しないように改変された免疫グロブリン可変領域のことである。「ヒト化」免疫グロブリンに関する記述があるものとしては、例えば、米国特許第6,407,213号および同第5,693,762号が挙げられる。
【0441】
本明細書で使用される「低ストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、高ストリンジェンシーまたは非常に高いストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする」という用語は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を述べるものである。ハイブリダイゼーション反応を行うための手引きは、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1-6.3.6に見ることができる。この参考文献には水性および非水性の方法が記載されており、その両方を使用し得る。本明細書で言及される具体的なハイブリダイゼーション条件は以下のとおりである:(1)約45℃、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)での低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件、次いで、少なくとも50℃で、0.2×SSC、0.1%SDS中での2回の洗浄(低ストリンジェンシー条件では、洗浄温度を55℃まで上げてもよい);(2)約45℃、6×SSCでの中程度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件、次いで、60℃で、0.2×SSC、0.1%SDS中での1回以上の洗浄;(3)約45℃、6×SSCでの高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件、次いで、65℃で、0.2×SSC、0.1%SDS中での1回以上の洗浄;および(4)65℃での0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDSで非常に高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件、次いで、65℃で、0.2×SSC、1%SDSでの1回以上の洗浄。別途明記されない限り、非常に高いストリンジェンシー条件(4)が好適な条件であり、また使用するべき条件である。本開示は、本明細書に記載の核酸またはその相補体、例えば、本明細書に記載の結合タンパク質をコードする核酸と低い、中程度の、高いまたは非常に高いストリンジェンシーでハイブリダイズする核酸を含む。核酸は、参照核酸と同じ長さまたはその30、20もしくは10%以内の長さであり得る。核酸は、本明細書に記載の免疫グロブリン可変ドメイン配列をコードする領域に対応し得る。
【0442】
「単離組成物」は、単離組成物を得ることができる天然試料の少なくとも1成分の少なくとも90%から取り出される組成物を指す。人為的に作製または天然に産生される組成物は、対象とする種または種集団が重量-重量基準で少なくとも5、10、25、50、75、80、90、92、95、98または99%の純度であれば、「少なくとも」ある程度の純度の「組成物」であり得る。
【0443】
「単離」タンパク質は、単離タンパク質を得ることができる天然試料の少なくとも1成分の少なくとも90%から取り出されるタンパク質を指す。タンパク質は、対象とする種または種集団が重量-重量基準で少なくとも5、10、25、50、75、80、90、92、95、98または99%の純度であれば、「少なくとも」ある程度の純度であり得る。
【0444】
「モジュレーター」という用語は、調節を引き起こすことが可能であり得るポリペプチド、核酸、高分子、複合体、分子、低分子、化合物、種など(天然または非天然)、あるいは生物学的材料、例えば細菌、植物、真菌または動物細胞もしくは動物組織などから作製される抽出物を指す。モジュレーターをアッセイすることにより、機能特性、生物学的活性もしくは過程またはそれらの組合せを有する阻害剤または活性化因子(例えば、アゴニスト、部分的アンタゴニスト、部分的アゴニスト、逆アゴニスト、アンタゴニスト、抗菌剤、微生物の感染または増殖の阻害剤など)としてのその潜在的活性を(直接的または間接的に)評価し得る。このようなアッセイでは、多数のモジュレーターを同時にスクリーニングし得る。モジュレーターの活性は既知、未知または一部既知であり得る。
【0445】
「非必須」アミノ酸残基とは、生物学的活性を消失させることなく、またはより好ましくは実質的に変化させることなく結合物質、例えば抗体の野生型配列から変化させることができる残基のことである。これに対して「必須」アミノ酸残基を変化させると、実質的に結合物質の活性が失われる。
【0446】
本発明の方法により治療される「患者」、「対象」または「宿主」(これらの用語は互換的に使用される)は、ヒトまたは非ヒト動物を意味し得る。
【0447】
「プレカリクレイン」および「プレ血漿カリクレイン」という用語は、本明細書において互換的に使用され、プレカリクレインとしても知られる活性血漿カリクレインのチモーゲン形態を指す。
【0448】
対象の疾患を「予防すること」または「予防する」という用語は、疾患の少なくとも1つの症状が予防されるように薬品治療、例えば薬物投与を対象に施すことを指し、それが宿主の望ましくない状態の発症を防ぐように、望ましくない状態(例えば、宿主動物の疾患またはその他の望ましくない状態)の臨床発症の前に行われる。疾患の「予防」は「予防法」または「予防的治療」とも呼ばれる。
【0449】
本明細書で使用される「実質的に同一である」(または「実質的に相同である」)という用語は、本明細書においては、第一と第二のアミノ酸または核酸配列が同様の活性、例えば、結合活性、優先的結合または生物学的活性を有する(またはそれを有するタンパク質をコードする)ように、第二のアミノ酸または核酸配列と同一または同等の(例えば、類似の側鎖を有する、例えば保存的アミノ酸置換)アミノ酸残基またはヌクレオチドを十分な数だけ含む第一のアミノ酸または核酸配列を指すために使用される。抗体の場合、第二の抗体が同じ特異性を有し、かつ同じ抗原に比べて少なくとも50%、少なくとも25%または少なくとも10%の親和性を有する。
【0450】
本明細書に開示される配列と類似したまたは相同な(例えば、少なくとも約85%の配列同一性)配列も本願の一部である。いくつかの実施形態では、配列同一性は、約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上であり得る。いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、本明細書に記載の結合タンパク質と約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有し得る。いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、HCおよび/またはLCフレームワーク領域(例えば、HCおよび/またはLC FR1、2、3および/または4)において、本明細書に記載の結合タンパク質と約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有し得る。いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、HCおよび/またはLC CDR(例えば、HCおよび/またはLC CDR1、2および/または3)において、本明細書に記載の結合タンパク質と約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有し得る。いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、定常領域(例えば、CH1、CH2、CH3および/またはCL1)において、本明細書に記載の結合タンパク質と約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0451】
また実質的な同一性は、核酸セグメントが、選択されたハイブリダイゼーション条件(例えば、非常にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件)下で鎖の相補体とハイブリダイズする場合に存在する。核酸は、全細胞中に、細胞溶解物中に、または一部精製されたもしくは実質的に純粋な形態で存在する。
【0452】
統計的有意性は、任意の公知の方法により判定され得る。統計的検定の例としては、StudentのT検定、Mann WhitneyのノンパラメトリックU検定およびWilcoxonのノンパラメトリックな統計的検定が挙げられる。一部の統計的に有意な関係では、P値が0.05または0.02未満である。特定の結合タンパク質は、例えば特異性または結合において統計的に有意な差を示し得る(例えば、P値が0.05または0.02未満)。例えば区別できる質的または量的差を表す「誘発する」、「阻害する」、「増強する」、「上昇させる」、「増加させる」、「減少させる」などの用語は、2つの状態間の差、例えば、2つの状態間の統計的に有意な差を指す場合がある。
【0453】
「治療有効量」は好ましくは、測定可能なパラメーター、例えば血漿カリクレイン活性を、未処置対象に比べて統計的に有意な程度または少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、さらにより好ましくは少なくとも約80%だけ調節する。化合物が、測定可能なパラメーター、例えば疾患関連のパラメーターを調節する能力は、ヒト疾患および状態、例えば関節リウマチまたは口腔粘膜炎における有効性が予測される動物モデル系で評価することができる。あるいは、組成物のこの特性を、化合物がin vitroでパラメーターを調節する能力を調べることにより評価することができる。
【0454】
対象の疾患(または状態)を「治療すること」または疾患を有する対象を「治療すること」は、疾患の少なくとも1つの症状が治癒される、軽減されるまたは減少するように薬品治療、例えば薬物投与を対象に施すことを指す。
【0455】
対象の疾患を「予防すること」という用語は、疾患の少なくとも1つの症状が予防されるように薬品治療、例えば薬物投与を対象に施すことを指し、それが宿主の望ましくない状態の発症を防ぐように、望ましくない状態(例えば、宿主動物の疾患またはその他の望ましくない状態)の臨床発症の前に行われる。疾患の「予防」は「予防法」または「予防的治療」とも呼ばれる。
【0456】
「予防有効量」は、所望の予防結果を得るのに必要な用量および期間での有効量を指す。通常、予防量は疾患の前または疾患の初期段階で対象に使用するため、予防有効量は治療有効量よりも少なくなる。
【0457】
本明細書で使用される「DX-2922」という用語は、「X101-A01」という用語と互換的に使用される。この抗体の他のバリアントを以下に記載する。
【表1】
【0458】
血漿カリクレイン結合タンパク質
血漿カリクレイン結合タンパク質は、完全長(例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgA(例えば、IgA1、IgA2)、IgDおよびIgE)であり得るか、または抗原結合フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2またはscFvフラグメント)のみを含み得る。この結合タンパク質は、2つの重鎖免疫グロブリンと2つの軽鎖免疫グロブリンを含み得るか、または一本鎖抗体であり得る。血漿カリクレイン結合タンパク質は、組換えタンパク質、例えばヒト化、CDR移植、キメラ、脱免疫化もしくはin vitro作製抗体などであり得、また任意にヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の定常領域を含み得る。一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質はモノクローナル抗体である。
【0459】
一態様では、本開示は、血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウスカリクレイン)と結合し、かつ少なくとも1つの免疫グロブリン可変領域を含むタンパク質(例えば、単離タンパク質)を特徴とする。例えば、このタンパク質は、重鎖(HC)免疫グロブリン可変ドメイン配列および/または軽鎖(LC)免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む。一実施形態では、このタンパク質は、血漿カリクレイン、例えばヒト血漿カリクレインおよび/またはマウスカリクレインと結合してこれを阻害する。
【0460】
このタンパク質は、このタンパク質は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る:(a)ヒトCDRまたはヒトフレームワーク領域;(b)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインのCDRと少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%同一であるCDRを1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)含む;(c)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインのCDRと少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%同一であるCDRを1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)含む;(d)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインと少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%同一である(例えば、全体で、またはフレームワーク領域もしくはCDRにおいて);(e)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインと少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%同一である(例えば、全体で、またはフレームワーク領域もしくはCDRにおいて);(f)このタンパク質が、本明細書に記載のタンパク質が結合するエピトープと結合するか、または結合に関して本明細書に記載のタンパク質と競合する;(g)霊長類CDRまたは霊長類フレームワーク領域;(h)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインのCDR1と少なくとも1個であるが2個または3個以下のアミノ酸だけ異なるCDR1を含む;(i)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインのCDR2と少なくとも1個であるが2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個以下のアミノ酸だけ異なるCDR2を含む;(j)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のCDR3と少なくとも1個であるが2個、3個、4個、5個または6個以下のアミノ酸だけ異なるCDR3を含む;(k)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインのCDR1と少なくとも1個であるが2個、3個、4個または5個以下のアミノ酸だけ異なるCDR1を含む;(l)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインのCDR2と少なくとも1個であるが2個、3個または4個以下のアミノ酸だけ異なるCDR2を含む;(m)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインのCDR3と少なくとも1個であるが2個、3個、4個または5個のアミノ酸だけ異なるCDR3を含む;(n)LC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のLC可変ドメインと少なくとも1個であるが2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のアミノ酸だけ異なる(例えば、全体で、またはフレームワーク領域もしくはCDRにおいて);および(o)HC免疫グロブリン可変ドメイン配列が、本明細書に記載のHC可変ドメインと少なくとも1個であるが2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のアミノ酸だけ異なる(例えば、全体で、またはフレームワーク領域もしくはCDRにおいて)。
【0461】
血漿カリクレイン結合タンパク質は単離タンパク質(例えば、他のタンパク質を少なくとも70、80、90、95または99%含まない)であり得る。いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質またはその組成物は、血漿カリクレイン結合タンパク質と比較して不活性または部分的に活性である(例えば、5000nM以上のKi,appで血漿カリクレインと結合する)抗体切断フラグメント(例えば、切断されたDX-2922)から単離される。例えば、血漿カリクレイン結合タンパク質は、そのような抗体切断フラグメントを少なくとも70%含まず;他の実施形態では、結合タンパク質は、不活性または部分的に活性な抗体切断フラグメントを少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%含まない。
【0462】
血漿カリクレイン結合タンパク質はさらに、血漿カリクレイン、例えばヒト血漿カリクレインを阻害し得る。
【0463】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、プレカリクレイン(例えば、ヒトプレカリクレインおよび/またはマウスプレカリクレイン)とは結合しないが、活性型の血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウスカリクレイン)とは結合する。
【0464】
特定の実施形態では、このタンパク質は、血漿カリクレインの触媒ドメインの活性部位もしくはそのフラグメントまたはその付近で結合するか、あるいは血漿カリクレインの活性部位と重複するエピトープと結合する。
【0465】
いくつかの態様では、このタンパク質は、本明細書に記載のタンパク質と同じエピトープと結合するか、または結合に関してそれと競合する。
【0466】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04と競合するか、またはそれと同じエピトープと結合する。
【0467】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、CLIPSペプチドC1,C2,C3,C4,C5,C6もしくはC7または2つ以上のこれらのペプチド(例えば、これらに対応する血漿カリクレイン上の位置)と結合し、例えば、このタンパク質はC5およびC6と結合する。CLIPペプチドC1~C7とは、CLIPSエピトープマッピングにより同定される血漿カリクレイン中のペプチドのことである(
図9および
図10A~10Cを参照されたい)。C1は血漿カリクレイン触媒ドメインの55~67位に対応し、C2は血漿カリクレインの81~94位、C3は101~108位、C4は137~151位、C5は162~178位、C6は186~197位およびC7は214~217位に対応する。
【0468】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は
図9に示されるエピトープと結合する。
【0469】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、血漿カリクレインの触媒三残基を形成するアミノ酸:His434、Asp483および/またはSer578(番号はヒト配列に基づく)の1つ以上と結合する。
【0470】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、アミノ酸:Arg551、Gln553、Tyr555、Thr558および/またはArg560(番号はヒト配列に基づく)の1つ以上と結合する。いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、アミノ酸:S478、N481、S525およびK526(番号はヒトカリクレインの配列に基づく)の1つ以上と結合する。
【0471】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、アミノ酸:Ser479、Tyr563および/またはAsp585(番号はヒト配列に基づく)の1つ以上と結合する。
【0472】
血漿カリクレインの活性部位の裂溝は、触媒三残基を形成し、結合した基質の酵素的加水分解を生じる3つのアミノ酸を(His434、Asp483およびSer578)含む(
図10において、触媒三残基に下線が施されている)。CLIPSエピトープマッピング解析のために選択されたペプチドは、表面が接触可能であり、かつ活性部位を形成しているかまたは活性部位付近を取り囲んでいるかのいずれかであると判定された。ペプチドC1は活性部位ヒスチジン434を含む。ペプチドC3は活性部位アスパラギン酸483を含む。ペプチドC6は活性部位セリン578を含む。抗体は、アミノ酸配列において不連続な表面に露出した複数のアミノ酸と結合することが可能である。例えば、CLIP解析から、X81-B01はC2、C3、C5およびC6ペプチドと結合すると思われる。
【0473】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、CLIPSペプチドC1、ペプチドC2、ペプチドC3、ペプチドC4、ペプチドC5、ペプチドC6またはペプチドC7由来の1つ以上のアミノ酸を含むエピトープと結合する。
【0474】
いくつかの実施形態では、このタンパク質は、少なくとも2つの異なるCLIPSペプチドに由来する、例えば、ペプチドC1、ペプチドC2、ペプチドC3、ペプチドC4、ペプチドC5、ペプチドC6またはペプチドC7のうちの少なくとも2つに由来するアミノ酸を含むエピトープと結合する。
【0475】
このタンパク質は、少なくとも105、106、107、108、109、1010および1011M-1の結合親和性で血漿カリクレイン、例えばヒト血漿カリクレインと結合し得る。一実施形態では、このタンパク質は、1×10-3、5×10-4s-1または1×10-4s-1よりも遅いKoffでヒト血漿カリクレインと結合する。一実施形態では、このタンパク質は、1×102、1×103または5×103M-1s-1よりも速いKonでヒト血漿カリクレイン結合する。一実施形態では、このタンパク質は、血漿カリクレインとは結合するが、組織カリクレインおよび/または血漿プレカリクレインとは血漿カリクレインと比べて結合しない(例えば、このタンパク質は、組織カリクレインおよび/または血漿プレカリクレインと低い効率で結合する(例えばネガティブ対照と比べて、例えば5、10、50、100または1000倍低い効率で結合するか、または全く結合しない)。
【0476】
一実施形態では、このタンパク質は、10-5、10-6、10-7、10-8、10-9および10-10M未満のKiでヒト血漿カリクレイン活性を阻害する。このタンパク質は、例えば、IC50が100nM、10nM、1、0.5または0.2nM未満であり得る。例えば、このタンパク質は血漿カリクレイン活性だけでなく、第XIIa因子(例えば、第因子XIIから)および/またはブラジキニン(例えば、高分子量キニノーゲン(HMWK)から)の産生も調節し得る。このタンパク質は、血漿カリクレイン活性ならびに/あるいは第XIIa因子(例えば、第XII因子からの)および/またはブラジキニン(例えば、高分子量キニノーゲン(HMWK)からの)の産生を阻害し得る。ヒト血漿カリクレインに対するこのタンパク質の親和性は、100nm未満、10nM未満、5nM未満、1nM未満、0.5nM未満のKDを特徴とし得る。一実施形態では、このタンパク質は、血漿カリクレインは阻害するが、血漿カリクレインと比べて組織カリクレインは阻害しない(例えば、このタンパク質は組織カリクレインを低い効率で阻害する(例えばネガティブ対照と比べて、例えば5、10、50、100または1000倍低い効率で阻害するか、または全く阻害しない))。
【0477】
いくつかの実施形態では、このタンパク質の見かけの阻害定数(Ki,app)は1000、500、100、5、1、0.5または0.2nM未満である。
【0478】
血漿カリクレイン結合タンパク質は抗体であり得る。血漿カリクレイン結合抗体は、そのHCおよびLC可変ドメイン配列を単一ポリペプチド(例えば、scFv)または異なるポリペプチド(例えば、IgGまたはFab)内に含み得る。
【0479】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、DX-2922、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の軽鎖および重鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0480】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の重鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0481】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の軽鎖を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0482】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の軽鎖および重鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0483】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の重鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0484】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる群より選択される抗体の軽鎖抗体可変領域を有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0485】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる重鎖群の対応するCDRから選択される1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の重鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0486】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる軽鎖群の対応するCDRから選択される1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の軽鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0487】
好適な実施形態では、このタンパク質は、M162-A04、M160-G12、M142-H08、X63-G06、X101-A01、X81-B01、X67-D03、X67-G04、X115-B07、X115-D05、X115-E09、X115-H06、X115-A03、X115-D01、X115-F02、X115-G04、M29-D09、M145-D11、M06-D09およびM35-G04からなる軽鎖群の対応するCDRから選択される1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の重鎖CDRおよび1つ以上(例えば、1つ、2つまたは3つ)の軽鎖CDRを有する抗体(例えば、ヒト抗体)である。
【0488】
一実施形態では、HCおよびLC可変ドメイン配列は、同じポリペプチド鎖の構成要素である。別に実施形態では、HCおよびLC可変ドメイン配列は、異なるポリペプチド鎖の構成要素である。例えば、このタンパク質はIgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。このタンパク質は可溶性Fabであり得る。他の実施形態では、このタンパク質は、Fab2’、scFv、ミニボディ、scFv::Fc融合体、Fab::HSA融合体、HSA::Fab融合体、Fab::HSA::Fab融合体または本明細書の結合タンパク質の1つの抗原結合部位を含むその他の分子を含む。上記FabのVHおよびVL領域は、IgG、Fab、Fab2、Fab2’、scFv、ペグ化Fab、ペグ化scFv、ペグ化Fab2、VH::CH1::HSA+LC、HSA::VH::CH1+LC、LC::HSA+VH::CH1、HSA::LC+VH::CH1またはその他の適当な構築物として提供され得る。
【0489】
一実施形態では、このタンパク質は、ヒトもしくはヒト化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。例えば、このタンパク質は、1つ以上のヒト抗体フレームワーク領域、例えば、すべてのヒトフレームワーク領域またヒトフレームワーク領域と少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%同一であるフレームワーク領域を含む。一実施形態では、このタンパク質は、ヒトFcドメインまたはヒトFcドメインと少なくとも95、96、97、98もしくは99%同一であるFcドメインを含む。
【0490】
一実施形態では、このタンパク質は、霊長類もしくは霊長類化抗体であるか、またはヒトにおいて非免疫原性である。例えば、このタンパク質は、1つ以上の霊長類抗体フレームワーク領域、例えば、すべての霊長類フレームワーク領域または霊長類フレームワーク領域と85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%同一であるフレームワーク領域を含む。一実施形態では、このタンパク質は、霊長類Fcドメインまたは霊長類Fcドメインと少なくとも95、96、97、98もしくは99%同一であるFcドメインを含む。「霊長類」には、ヒト(Homo sapiens)、チンパンジー(Pan troglodytesおよびPan paniscus(ボノボ))、ゴリラ(Gorilla gorilla)、テナガザル、サル、キツネザル、アイアイ(Daubentonia madagascariensis)およびメガネザルが含まれる。
【0491】
いくつかの実施形態では、霊長類抗体のヒト血漿カリクレインに対する親和性は、1000、500、100、10、5、1、0.5nM未満、例えば、10nM未満、1nM未満または0.5nM未満のKDを特徴とし得る。
【0492】
特定の実施形態では、このタンパク質はマウスまたはウサギ由来の配列を含まない(例えば、マウスまたはウサギ抗体ではない)。
【0493】
いくつかの態様では、本開示は、血漿カリクレイン関連疾患または状態の治療(または予防)のための方法における、血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレイン)と結合し、かつ少なくとも1つの免疫グロビン(immunoglobin)可変領域を含むタンパク質(例えば、結合タンパク質、例えば抗体)(例えば、本明細書に記載のタンパク質)の使用を提供する。例えば、血漿カリクレイン結合タンパク質は、重鎖(HC)免疫グロブリン可変ドメイン配列および軽鎖(LC)免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む。血漿カリクレイン結合タンパク質の数多くの例が本明細書に記載されている。
【0494】
血漿カリクレイン結合タンパク質は単離タンパク質(例えば、他のタンパク質を少なくとも70、80、90、95または99%含まない)であり得る。
【0495】
血漿カリクレイン結合タンパク質は、血漿カリクレイン、例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレインをさらに阻害し得る。いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質がヒトおよびマウス血漿カリクレインの両方と結合することが好ましく、それはこのような抗体の有効性をマウスモデルで試験し得るからである。
【0496】
血漿カリクレイン
血漿カリクレイン結合タンパク質が生じ得る血漿カリクレイン配列の例としては、ヒト、マウスもしくはラットの血漿カリクレインアミノ酸配列、上記配列のうちの1つと80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一である配列、またはそのフラグメント、例えば以下に記載されている配列のフラグメントを挙げ得る。
【0497】
選択およびそれに続くスクリーニングで使用したヒト血漿カリクレインの配列を以下に示す(アクセッション番号NP_000883.2)。使用したヒト血漿カリクレイン(86kDa)は、ヒト血漿から精製し、販売業者の第XIIa因子により活性化したものである。第XIIa因子は、単一部位(Arg371-Ile372の間、以下の配列では切断部位を「/」で示す)でポリペプチド配列を切断することによりプレカリクレインを活性化し、ジスルフィド結合した2つのポリペプチド、すなわち約52kDaの重鎖と約34kDaの触媒ドメインとで構成される活性血漿カリクレインを生成する[ColmanおよびSchmaier,(1997)“Contact System:A Vascular Biology Modulator With Anticoagulant,Profibrinolytic,Antiadhesive,and Proinflammatory Attributes” Blood,90,3819-3843]。
【0498】
GCLTQLYENAFFRGGDVASMYTPNAQYCQMRCTFHPRCLLFSFLPASSINDMEKRFGCFLKDSVTGTLPKVHRTGAVSGHSLKQCGHQISACHRDIYKGVDMRGVNFNVSKVSSVEECQKRCTSNIRCQFFSYATQTFHKAEYRNNCLLKYSPGGTPTAIKVLSNVESGFSLKPCALSEIGCHMNIFQHLAFSDVDVARVLTPDAFVCRTICTYHPNCLFFTFYTNVWKIESQRNVCLLKTSESGTPSSSTPQENTISGYSLLTCKRTLPEPCHSKIYPGVDFGGEELNVTFVKGVNVCQETCTKMIRCQFFTYSLLPEDCKEEKCKCFLRLSMDGSPTRIAYGTQGSSGYSLRLCNTGDNSVCTTKTSTR/IVGGTNSSWGEWPWQVSLQVKLTAQRHLCGGSLIGHQWVLTAAHCFDGLPLQDVWRIYSGILNLSDITKDTPFSQIKEIIIHQNYKVSEGNHDIALIKLQAPLNYTEFQKPICLPSKGDTSTIYTNCWVTGWGFSKEKGEIQNILQKVNIPLVTNEECQKRYQDYKITQRMVCAGYKEGGKDACKGDSGGPLVCKHNGMWRLVGITSWGEGCARREQPGVYTKVAEYMDWILEKTQSSDGKAQMQSPA
【0499】
ヒト、マウスおよびラットのプレカリクレインアミノ酸配列ならびにそれをコードするmRNA配列を以下に示す。プレカリクレインの配列は、活性血漿カリクレイン(pkal)が、単一の位置で切断されて(「/」で示す)2本の鎖を生じる単一のポリペプチド鎖を有するということを除けば、血漿カリクレインと同じである。以下に記載されている配列は、シグナル配列を含む完全配列である。シグナル配列は、発現細胞から分泌されるときに除去されることが予想される。
【0500】
ヒト血漿カリクレイン(アクセッション番号:NP_000883.2)
>gi|78191798|ref|NP_000883.2|血漿カリクレインB1前駆体[Homo sapiens]
MILFKQATYFISLFATVSCGCLTQLYENAFFRGGDVASMYTPNAQYCQMRCTFHPRCLLFSFLPASSIND
MEKRFGCFLKDSVTGTLPKVHRTGAVSGHSLKQCGHQISACHRDIYKGVDMRGVNFNVSKVSSVEECQKR
CTSNIRCQFFSYATQTFHKAEYRNNCLLKYSPGGTPTAIKVLSNVESGFSLKPCALSEIGCHMNIFQHLA
FSDVDVARVLTPDAFVCRTICTYHPNCLFFTFYTNVWKIESQRNVCLLKTSESGTPSSSTPQENTISGYS
LLTCKRTLPEPCHSKIYPGVDFGGEELNVTFVKGVNVCQETCTKMIRCQFFTYSLLPEDCKEEKCKCFLR
LSMDGSPTRIAYGTQGSSGYSLRLCNTGDNSVCTTKTSTRIVGGTNSSWGEWPWQVSLQVKLTAQRHLCG
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APLNYTEFQKPICLPSKGDTSTIYTNCWVTGWGFSKEKGEIQNILQKVNIPLVTNEECQKRYQDYKITQR
MVCAGYKEGGKDACKGDSGGPLVCKHNGMWRLVGITSWGEGCARREQPGVYTKVAEYMDWILEKTQSSDG
KAQMQSPA
【0501】
ヒト血漿カリクレインmRNA(アクセッション番号:NM_000892)
>gi|78191797|ref|NM_000892.3|Homo sapiensカリクレインB、血漿(Fletcher因子)1(KLKB1)、mRNA
AGAACAGCTTGAAGACCGTTCATTTTTAAGTGACAAGAGACTCACCTCCAAGAAGCAATTGTGTTTTCAG
AATGATTTTATTCAAGCAAGCAACTTATTTCATTTCCTTGTTTGCTACAGTTTCCTGTGGATGTCTGACT
CAACTCTATGAAAACGCCTTCTTCAGAGGTGGGGATGTAGCTTCCATGTACACCCCAAATGCCCAATACT
GCCAGATGAGGTGCACATTCCACCCAAGGTGTTTGCTATTCAGTTTTCTTCCAGCAAGTTCAATCAATGA
CATGGAGAAAAGGTTTGGTTGCTTCTTGAAAGATAGTGTTACAGGAACCCTGCCAAAAGTACATCGAACA
GGTGCAGTTTCTGGACATTCCTTGAAGCAATGTGGTCATCAAATAAGTGCTTGCCATCGAGACATTTATA
AAGGAGTTGATATGAGAGGAGTCAATTTTAATGTGTCTAAGGTTAGCAGTGTTGAAGAATGCCAAAAAAG
GTGCACCAGTAACATTCGCTGCCAGTTTTTTTCATATGCCACGCAAACATTTCACAAGGCAGAGTACCGG
AACAATTGCCTATTAAAGTACAGTCCCGGAGGAACACCTACCGCTATAAAGGTGCTGAGTAACGTGGAAT
CTGGATTCTCACTGAAGCCCTGTGCCCTTTCAGAAATTGGTTGCCACATGAACATCTTCCAGCATCTTGC
GTTCTCAGATGTGGATGTTGCCAGGGTTCTCACTCCAGATGCTTTTGTGTGTCGGACCATCTGCACCTAT
CACCCCAACTGCCTCTTCTTTACATTCTATACAAATGTATGGAAAATCGAGTCACAAAGAAATGTTTGTC
TTCTTAAAACATCTGAAAGTGGCACACCAAGTTCCTCTACTCCTCAAGAAAACACCATATCTGGATATAG
CCTTTTAACCTGCAAAAGAACTTTACCTGAACCCTGCCATTCTAAAATTTACCCGGGAGTTGACTTTGGA
GGAGAAGAATTGAATGTGACTTTTGTTAAAGGAGTGAATGTTTGCCAAGAGACTTGCACAAAGATGATTC
GCTGTCAGTTTTTCACTTATTCTTTACTCCCAGAAGACTGTAAGGAAGAGAAGTGTAAGTGTTTCTTAAG
ATTATCTATGGATGGTTCTCCAACTAGGATTGCGTATGGGACACAAGGGAGCTCTGGTTACTCTTTGAGA
TTGTGTAACACTGGGGACAACTCTGTCTGCACAACAAAAACAAGCACACGCATTGTTGGAGGAACAAACT
CTTCTTGGGGAGAGTGGCCCTGGCAGGTGAGCCTGCAGGTGAAGCTGACAGCTCAGAGGCACCTGTGTGG
AGGGTCACTCATAGGACACCAGTGGGTCCTCACTGCTGCCCACTGCTTTGATGGGCTTCCCCTGCAGGAT
GTTTGGCGCATCTATAGTGGCATTTTAAATCTGTCAGACATTACAAAAGATACACCTTTCTCACAAATAA
AAGAGATTATTATTCACCAAAACTATAAAGTCTCAGAAGGGAATCATGATATCGCCTTGATAAAACTCCA
GGCTCCTTTGAATTACACTGAATTCCAAAAACCAATATGCCTACCTTCCAAAGGTGACACAAGCACAATT
TATACCAACTGTTGGGTAACCGGATGGGGCTTCTCGAAGGAGAAAGGTGAAATCCAAAATATTCTACAAA
AGGTAAATATTCCTTTGGTAACAAATGAAGAATGCCAGAAAAGATATCAAGATTATAAAATAACCCAACG
GATGGTCTGTGCTGGCTATAAAGAAGGGGGAAAAGATGCTTGTAAGGGAGATTCAGGTGGTCCCTTAGTT
TGCAAACACAATGGAATGTGGCGTTTGGTGGGCATCACCAGCTGGGGTGAAGGCTGTGCCCGCAGGGAGC
AACCTGGTGTCTACACCAAAGTCGCTGAGTACATGGACTGGATTTTAGAGAAAACACAGAGCAGTGATGG
AAAAGCTCAGATGCAGTCACCAGCATGAGAAGCAGTCCAGAGTCTAGGCAATTTTTACAACCTGAGTTCA
AGTCAAATTCTGAGCCTGGGGGGTCCTCATCTGCAAAGCATGGAGAGTGGCATCTTCTTTGCATCCTAAG
GACGAAAAACACAGTGCACTCAGAGCTGCTGAGGACAATGTCTGGCTGAAGCCCGCTTTCAGCACGCCGT
AACCAGGGGCTGACAATGCGAGGTCGCAACTGAGATCTCCATGACTGTGTGTTGTGAAATAAAATGGTGA
AAGATCAAAAAA
【0502】
マウス血漿カリクレイン(アクセッション番号:NP_032481.1)
>gi|6680584|ref|NP_032481.1|カリクレインB、血漿1[Mus musculus]
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LLTCRKTRPEPCHSKIYSGVDFEGEELNVTFVQGADVCQETCTKTIRCQFFIYSLLPQDCKEEGCKCSLR
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TPLNYTEFQKPICLPSKADTNTIYTNCWVTGWGYTKEQGETQNILQKATIPLVPNEECQKKYRDYVINKQ
MICAGYKEGGTDACKGDSGGPLVCKHSGRWQLVGITSWGEGCGRKDQPGVYTKVSEYMDWILEKTQSSDV
RALETSSA
【0503】
マウス血漿カリクレインmRNA(アクセッション番号:NM_008455.2)
>gi|236465804|ref|NM_008455.2|Mus musculusカリクレインB、血漿1(Klkb1)、mRNA
AGACCGCCCTCGGTGCCATATTCAGAGGGCTTGAAGACCATCTTCATGTGAAGACTCCCTCTCCTCCAGA
ACCACAACGTGACCATCCTTCCAGGATGATTTTATTCAACCGAGTGGGTTATTTTGTTTCCTTGTTTGCT
ACCGTCTCCTGTGGGTGTATGACTCAACTGTATAAAAATACCTTCTTCAGAGGTGGGGATCTAGCTGCCA
TCTACACCCCAGATGCCCAGTACTGTCAGAAGATGTGCACTTTTCACCCCAGGTGCCTGCTGTTCAGCTT
TCTCGCCGTGACTCCACCCAAAGAGACAAATAAACGGTTTGGTTGCTTCATGAAAGAGAGCATTACAGGG
ACTTTGCCAAGAATACACCGGACAGGGGCCATTTCTGGTCATTCTTTAAAGCAGTGTGGCCATCAAATAA
GTGCTTGCCACCGAGACATATACAAAGGACTTGATATGAGAGGGTCCAACTTTAATATCTCTAAGACCGA
CAATATTGAAGAATGCCAGAAACTGTGCACAAATAATTTTCACTGCCAATTTTTCACATATGCTACAAGT
GCATTTTACAGACCAGAGTACCGGAAGAAGTGCCTGCTGAAGCACAGTGCAAGCGGAACACCCACCAGCA
TAAAGTCAGCGGACAACCTGGTGTCTGGATTCTCACTGAAGTCCTGTGCGCTTTCGGAGATAGGTTGCCC
CATGGATATTTTCCAGCACTCTGCCTTTGCAGACCTGAATGTAAGCCAGGTCATCACCCCCGATGCCTTT
GTGTGTCGCACCATCTGCACCTTCCATCCCAACTGCCTTTTCTTCACGTTCTACACGAATGAATGGGAGA
CAGAATCACAGAGAAATGTTTGTTTTCTTAAGACGTCTAAAAGTGGAAGACCAAGTCCCCCTATTCCTCA
AGAAAACGCTATATCTGGATATAGTCTCCTCACCTGCAGAAAAACTCGCCCTGAACCCTGCCATTCCAAA
ATTTACTCTGGAGTTGACTTTGAAGGGGAAGAACTGAATGTGACCTTCGTGCAAGGAGCAGATGTCTGCC
AAGAGACTTGTACAAAGACAATCCGCTGCCAGTTTTTTATTTACTCCTTACTCCCCCAAGACTGCAAGGA
GGAGGGGTGTAAATGTTCCTTAAGGTTATCCACAGATGGCTCCCCAACTAGGATCACCTATGGCATGCAG
GGGAGCTCCGGTTATTCTCTGAGATTGTGTAAACTTGTGGACAGCCCTGACTGTACAACAAAAATAAATG
CACGTATTGTGGGAGGAACAAACGCTTCTTTAGGGGAGTGGCCATGGCAGGTCAGCCTGCAAGTGAAGCT
GGTATCTCAGACCCATTTGTGTGGAGGGTCCATCATTGGTCGCCAATGGGTACTGACAGCTGCCCATTGC
TTTGATGGAATTCCCTATCCAGATGTGTGGCGTATATATGGCGGAATTCTTAGTCTGTCCGAGATTACGA
AAGAAACGCCTTCCTCGAGAATAAAGGAGCTTATTATTCATCAGGAATACAAAGTCTCAGAAGGCAATTA
TGATATTGCCTTAATAAAGCTTCAGACGCCCCTGAATTATACTGAATTCCAAAAACCAATATGCCTGCCT
TCCAAAGCTGACACAAATACAATTTATACCAACTGTTGGGTGACTGGATGGGGCTACACGAAGGAACAAG
GTGAAACGCAAAATATTCTACAAAAGGCTACTATTCCTTTGGTACCAAATGAAGAATGCCAGAAAAAATA
CAGAGATTATGTTATAAACAAGCAGATGATCTGTGCTGGCTACAAAGAAGGCGGAACAGACGCTTGTAAG
GGAGATTCCGGTGGCCCCTTAGTCTGTAAACACAGTGGACGGTGGCAGTTGGTGGGTATCACCAGCTGGG
GTGAAGGCTGCGCCCGCAAGGACCAACCAGGAGTCTACACCAAAGTTTCTGAGTACATGGACTGGATATT
GGAGAAGACACAGAGCAGTGATGTAAGAGCTCTGGAGACATCTTCAGCCTGAGGAGGCTGGGTACCAAGG
AGGAAGAACCCAGCTGGCTTTACCACCTGCCCTCAAGGCAAACTAGAGCTCCAGGATTCTCGGCTGTAAA
ATGTTGATAATGGTGTCTACCTCACATCCGTATCATTGGATTGAAAATTCAAGTGTAGATATAGTTGCTG
AAGACAGCGTTTTGCTCAAGTGTGTTTCCTGCCTTGAGTCACAGGAGCTCCAATGGGAGCATTACAAAGA
TCACCAAGCTTGTTAGGAAAGAGAATGATCAAAGGGTTTTATTAGGTAATGAAATGTCTAGATGTGATGC
AATTGAAAAAAAGACCCCAGATTCTAGCACAGTCCTTGGGACCATTCTCATGTAACTGTTGACTCTGGAC
CTCAGCAGATCTCAGAGTTACCTGTCCACTTCTGACATTTGTTTATTAGAGCCTGATGCTATTCTTTCAA
GTGGAGCAAAAAAAAAAAAAAA
【0504】
ラット血漿カリクレイン(アクセッション番号:NP_036857.2)
>gi|162138905|ref|NP_036857.2|カリクレインB、血漿1[Rattus norvegicus]
MILFKQVGYFVSLFATVSCGCLSQLYANTFFRGGDLAAIYTPDAQHCQKMCTFHPRCLLFSFLAVSPTKE
TDKRFGCFMKESITGTLPRIHRTGAISGHSLKQCGHQLSACHQDIYEGLDMRGSNFNISKTDSIEECQKL
CTNNIHCQFFTYATKAFHRPEYRKSCLLKRSSSGTPTSIKPVDNLVSGFSLKSCALSEIGCPMDIFQHFA
FADLNVSHVVTPDAFVCRTVCTFHPNCLFFTFYTNEWETESQRNVCFLKTSKSGRPSPPIIQENAVSGYS
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TPLNYTEFQKPICLPSKADTNTIYTNCWVTGWGYTKERGETQNILQKATIPLVPNEECQKKYRDYVITKQ
MICAGYKEGGIDACKGDSGGPLVCKHSGRWQLVGITSWGEGCARKEQPGVYTKVAEYIDWILEKIQSSKE
RALETSPA
【0505】
ラット血漿カリクレインmRNA(アクセッション番号:NM_012725)
>gi|162138904|ref|NM_012725.2|Rattus norvegicusカリクレインB、血漿1(Klkb1)、mRNA
TGAAGACTAGCTTCATGTGAAGACTCCTTCTCCTCCAGCAGCACAAAGCAACCATCCTTCCAGGATGATT
TTATTCAAACAAGTGGGTTATTTTGTTTCCTTGTTCGCTACAGTTTCCTGTGGGTGTCTGTCACAACTGT
ATGCAAATACCTTCTTCAGAGGTGGGGATCTGGCTGCCATCTACACCCCGGATGCCCAGCACTGTCAGAA
GATGTGCACGTTTCACCCCAGGTGCCTGCTCTTCAGCTTCCTTGCCGTGAGTCCAACCAAGGAGACAGAT
AAAAGGTTTGGGTGCTTCATGAAAGAGAGCATTACAGGGACTTTGCCAAGAATACACCGGACAGGGGCCA
TTTCTGGTCATTCTTTAAAACAGTGTGGCCATCAATTAAGTGCTTGCCACCAAGACATATACGAAGGACT
GGATATGAGAGGGTCCAACTTTAATATATCTAAGACCGACAGTATTGAAGAATGCCAGAAACTGTGCACA
AATAATATTCACTGCCAATTTTTCACATATGCTACAAAAGCATTTCACAGACCAGAGTACAGGAAGAGTT
GCCTGCTGAAGCGCAGTTCAAGTGGAACGCCCACCAGTATAAAGCCAGTGGACAACCTGGTGTCTGGATT
CTCACTGAAGTCCTGTGCTCTCTCAGAGATCGGTTGCCCCATGGATATTTTCCAGCACTTTGCCTTTGCA
GACCTGAATGTAAGCCATGTCGTCACCCCCGATGCCTTCGTGTGTCGCACCGTTTGCACCTTCCATCCCA
ACTGCCTCTTCTTCACATTCTACACGAATGAGTGGGAGACGGAATCACAGAGGAATGTTTGTTTTCTTAA
GACATCTAAAAGTGGAAGACCAAGTCCCCCTATTATTCAAGAAAATGCTGTATCTGGATACAGTCTCTTC
ACCTGCAGAAAAGCTCGCCCTGAACCCTGCCATTTCAAGATTTACTCTGGAGTTGCCTTCGAAGGGGAAG
AACTGAACGCGACCTTCGTGCAGGGAGCAGATGCGTGCCAAGAGACTTGTACAAAGACCATCCGCTGTCA
GTTTTTTACTTACTCATTGCTTCCCCAAGACTGCAAGGCAGAGGGGTGTAAATGTTCCTTAAGGTTATCC
ACGGATGGCTCTCCAACTAGGATCACCTATGAGGCACAGGGGAGCTCTGGTTATTCTCTGAGACTGTGTA
AAGTTGTGGAGAGCTCTGACTGTACGACAAAAATAAATGCACGTATTGTGGGAGGAACAAACTCTTCTTT
AGGAGAGTGGCCATGGCAGGTCAGCCTGCAAGTAAAGTTGGTTTCTCAGAATCATATGTGTGGAGGGTCC
ATCATTGGACGCCAATGGATACTGACGGCTGCCCATTGCTTTGATGGGATTCCCTATCCAGACGTGTGGC
GTATATATGGCGGGATTCTTAATCTGTCAGAGATTACAAACAAAACGCCTTTCTCAAGTATAAAGGAGCT
TATTATTCATCAGAAATACAAAATGTCAGAAGGCAGTTACGATATTGCCTTAATAAAGCTTCAGACACCG
TTGAATTATACTGAATTCCAAAAACCAATATGCCTGCCTTCCAAAGCTGACACAAATACAATTTATACCA
ACTGCTGGGTGACTGGATGGGGCTACACAAAGGAACGAGGTGAGACCCAAAATATTCTACAAAAGGCAAC
TATTCCCTTGGTACCAAATGAAGAATGCCAGAAAAAATATAGAGATTATGTTATAACCAAGCAGATGATC
TGTGCTGGCTACAAAGAAGGTGGAATAGATGCTTGTAAGGGAGATTCCGGTGGCCCCTTAGTTTGCAAAC
ATAGTGGAAGGTGGCAGTTGGTGGGTATCACCAGCTGGGGCGAAGGCTGTGCCCGCAAGGAGCAACCAGG
AGTCTACACCAAAGTTGCTGAGTACATTGACTGGATATTGGAGAAGATACAGAGCAGCAAGGAAAGAGCT
CTGGAGACATCTCCAGCATGAGGAGGCTGGGTACTGATGGGGAAGAGCCCAGCTGGCACCAGCTTTACCA
CCTGCCCTCAAGTCCTACTAGAGCTCCAGAGTTCTCTTCTGCAAAATGTCGATAGTGGTGTCTACCTCGC
ATCCTTACCATAGGATTAAAAGTCCAAATGTAGACACAGTTGCTAAAGACAGCGCCATGCTCAAGCGTGC
TTCCTGCCTTGAGCAACAGGAACGCCAATGAGAACTATCCAAAGATTACCAAGCCTGTTTGGAAATAAAA
TGGTCAAAGGATTTTTATTAGGTAGTGAAATTAGGTAGTTGTCCTTGGAACCATTCTCATGTAACTGTTG
ACTCTGGACCTCAGCAGATCACAGTTACCTTCTGTCCACTTCTGACATTTGTGTACTGGAACCTGATGCT
GTTCTTCCACTTGGAGCAAAGAACTGAGAAACCTGGTTCTATCCATTGGGAAAAAGAGATCTTTGTAACA
TTTCCTTTACAATAAAAAGATGTTCTACTTGGACTTGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
【0506】
ディスプレイライブラリー
ディスプレイライブラリーとは存在物の集まりのことであり、各存在物は、利用可能なポリペプチド成分およびそのポリペプチド成分をコードまたは特定する回収可能な成分を含んでいる。ポリペプチド成分は多様であるため、様々なアミノ酸配列が示される。ポリペプチド成分は任意の長さ、例えば、3個のアミノ酸~300個を上回るアミノ酸であり得る。ディスプレイライブラリーの存在物は、2つ以上のポリペプチド成分、例えば、sFabの2本のポリペプチド鎖を含み得る。実施形態の一例では、ディスプレイライブラリーを用いて、血漿カリクレインと結合するタンパク質を同定することができる。選択時に、ライブラリーの各メンバーのポリペプチド成分を血漿カリクレイン(またはそのフラグメント)を用いてプローブし、ポリペプチド成分が血漿カリクレインと結合すれば、通常は支持体上に保持されることにより、そのディスプレイライブラリーのメンバーが特定される。
【0507】
保持されたディスプレイライブラリーのメンバーを支持体から回収し、解析する。解析は、同様のまたは異なる条件下での増幅およびそれに続く選択を含み得る。例えば、陽性選択と陰性選択を交互に行い得る。また解析は、詳細な特徴付けのためのポリペプチド成分のアミノ酸配列の決定およびポリペプチド成分の精製も含み得る。
【0508】
各種形式のディスプレイライブラリーを使用することができる。例として以下のものが挙げられる。
【0509】
ファージディスプレイ:
タンパク質成分は通常、バクテリオファージコートタンパク質と共有結合により結合している。この結合は、コートタンパク質と融合したタンパク質成分をコードする核酸の翻訳の結果生じる。結合としては、柔軟なペプチドリンカー、プロテアーゼ部位、または停止コドンの抑制の結果組み込まれるアミノ酸を挙げることができる。ファージディスプレイは、例えば、米国特許第5,223,409号;Smith(1985)Science 228:1315-1317;国際公開第92/18619号;同第91/17271号;同第92/20791号;同第92/15679号;同第93/01288号;同第92/01047号;同第92/09690号;同第90/02809号;de Haardら(1999)J.Biol.Chem 274:18218-30;Hoogenboomら(1998)Immunotechnology 4:1-20;Hoogenboomら(2000)Immunol Today 2:371-8およびHoetら(2005)Nat Biotechnol.23(3)344-8に記載されている。タンパク質成分をディスプレイしているバクテリオファージを増殖させて、標準的なファージ調製法、例えば、増殖培地からのPEG沈殿を用いて回収することができる。個々のディスプレイファージの選択後に、選択されたタンパク質成分をコードする核酸を、選択されたファージを感染させた細胞またはファージ自体から増幅後に単離することができる。個々のコロニーまたはプラークを採取して、核酸を単離し、配列を決定する。
【0510】
その他のディスプレイの形式
その他のディスプレイの形式としては、細胞ディスプレイ(例えば、国際公開第03/029456号を参照)、タンパク質-核酸融合(例えば、米国特許第6,207,446号を参照)、リボソームディスプレイ(例えば、Mattheakisら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:9022およびHanesら(2000)Nat Biotechnol.18:1287-92;Hanesら(2000)Methods Enzymol.328:404-30;およびSchaffitzelら(1999)J Immunol Methods.231(1-2):119-35を参照)、および大腸菌(E.coli)周辺質ディスプレイ(J Immunol Methods.2005 Nov 22;PMID:16337958)が挙げられる。
【0511】
足場
ディスプレイに有用な足場としては:抗体(例えば、Fabフラグメント、一本鎖Fv分子(scFv)、単一ドメイン抗体、ラクダ抗体およびラクダ化抗体);T細胞受容体;MHCタンパク質;細胞外ドメイン(例えば、III型フィブロネクチンリピート、EGFリピート);プロテアーゼ阻害剤(例えば、Kunitzドメイン、エコチン、BPTIなど);TPRリピート;トレフォイル構造;ジンクフィンガードメイン;DNA結合タンパク質;特に単量体DNA結合タンパク質;RNA結合タンパク質;酵素、例えば、プロテアーゼ(特に不活性化プロテアーゼ),RNアーゼ;シャペロン、例えば、チオレドキシンおよび熱ショックタンパク質;細胞内シグナル伝達ドメイン(SH2およびSH3ドメインなど);直鎖状ペプチドおよびコンストレインドペプチド(constrained peptide);ならびに直鎖状ペプチド基質が挙げられる。ディスプレイライブラリーは、合成および/または天然の多様性を含み得る。例えば、米国特許出願公開第2004-0005709号を参照されたい。
【0512】
またディスプレイ技術を用いて、標的の特定のエピトープと結合する結合タンパク質(例えば、抗体)を得ることもできる。これは例えば、特定のエピトープを欠くか、またはエピトープ内で例えばアラニンにより変異した、競合する非標的分子を用いることにより行い得る。このような非標的分子は、ディスプレイライブラリーと標的を結合させる場合は競合分子として、また例えば、標的に対して特異的ではない解離したディスプレイライブラリーのメンバーを洗浄溶液中で捕捉するための予備溶出剤として、以下に記載されている陰性選択法で用い得る。
【0513】
反復選択
好適な一実施形態では、ディスプレイライブラリー技術を反復方式で用いる。第一のディスプレイライブラリーを用いて、標的に対する1つ以上の結合タンパク質を同定する。次いで、これらの同定されたタンパク質を、突然変異誘発法を用いて変異させて、第二のディスプレイライブラリーを形成する。次いで、例えば、高ストリンジェンシーまた高競合性の結合および洗浄条件を用いることにより、高親和性の結合タンパク質を第二のライブラリーから選択する。
【0514】
いくつかの実施形態では、突然変異誘発は結合面の領域を標的とする。例えば、同定された結合タンパク質が抗体である場合、突然変異誘発を本明細書に記載の重鎖または軽鎖のCDR領域に向けることができる。さらに突然変異誘発を、CDRに近接または隣接するフレームワーク領域に向けることができる。抗体の場合、例えば、精密に段階的に向上させるために、突然変異誘発を1個または数個のCDRに限定し得る。突然変異誘発技術の例としては、エラープローンPCR、組換え、DNAシャフリング、部位特異的変異誘発およびカセット突然変異誘発が挙げられる。
【0515】
反復選択の一例では、最初に本明細書に記載の方法を用いて、少なくとも標的に対する最小限の結合特異性で、または最小限の活性、例えば、0.5nM、1nM、10nMまたは100nM未満の結合に対する平衡解離定数で血漿カリクレインと結合するタンパク質をディスプレイライブラリーから同定する。最初に同定されたタンパク質をコードする核酸配列を変異の導入のための鋳型核酸として用いて、例えば、最初のタンパク質に比べて増強された特性(例えば、結合親和性、動態または安定性)を有する第二のタンパク質を同定する。
【0516】
オフ速度選択
特にポリペプチドとその標的の間の相互作用に関して、遅い解離速度により高親和性を予測することができるため、本明細書に記載の方法を用いて、標的に対する結合相互作用の所望の(例えば、遅い)動力学的解離速度を有する結合タンパク質を単離することができる。
【0517】
解離の遅い結合タンパク質をディスプレイライブラリーから選択するために、ライブラリーを固定化標的と接触させる。次いで固定化標的を、非特異的にまたは弱く結合した生体分子を除去する第一の溶液で洗浄する。次いで、結合している結合タンパク質を、飽和量の遊離標的または標的に特異的な高親和性競合モノクローナル抗体、すなわち粒子と結合していない標的の複製物を含有する第二の溶液で溶出する。遊離標的は、標的から解離する生体分子と結合する。飽和量の遊離標的により、はるかに低い濃度の固定化標的に比べて、再結合が効率的に阻害される。
【0518】
第二の溶液は、実質的に生理的である、またはストリンジェントである溶液条件を有し得る。通常、第二の溶液の溶液条件は、第一の溶液の溶液条件と同一である。第二の溶液の画分を時間的順序で収集して、始めの方の画分と後の方の画分を区別する。後の方の画分には、始めの方の画分の生体分子よりも遅い速度で標的から解離する生体分子が含まれている。
【0519】
さらに、インキュベーションの延長後にも標的と結合したままのディスプレイライブラリーのメンバーを回収することも可能である。これらは、カオトロピック条件を用いて解離させるか、または標的と結合したまま増幅することができる。例えば、標的と結合したファージを細菌細胞と接触させることができる。
【0520】
特異性の選択またはスクリーニング
本明細書に記載のディスプレイライブラリーのスクリーニング法は、非標的分子と結合するディスプレイライブラリーのメンバーを切る捨てるための選択またはスクリーニングの工程を含み得る。非標的分子の例としては、磁気ビーズ上のストレプトアビジン、ブロッキング剤(例えばウシ血清アルブミン、無脂肪ウシ乳、ダイズタンパク質など)、任意の捕捉もしくは標的免疫化モノクローナル抗体、または標的を発現しない非トランスフェクト細胞が挙げられる。
【0521】
一実施形態では、いわゆる「陰性選択」段階を用いて、標的、関連する非標的分子および関連するが異なる非標的分子を識別する。ディスプレイライブラリーまたはそのプールを非標的分子と接触させる。非標的と結合しない試料のメンバーを収集し、標的分子との結合に関する次の選択またはさらに次の陰性選択に使用する。陰性選択段階は、標的分子と結合するライブラリーメンバーの選択の前または後に行い得る。
【0522】
別の実施形態では、スクリーニング段階を用いる。ディスプレイライブラリーのメンバーを標的分子との結合に関して単離した後、単離された各ライブラリーメンバーを、それが非標的分子(例えば、上に挙げた非標的)と結合する能力に関して試験する。例えば、ハイスループットなELISAスクリーニングを用いてこのデータを得ることができる。またELISAスクリーニングを用いて、各ライブラリーメンバーの標的との結合および関連する標的または標的のサブユニット(例えば、血漿カリクレイン)との種間反応性に関して、またpH6またはpH7.5のような異なる条件下においても定量データを得ることができる。非標的および標的との結合データの比較(例えば、コンピュータとソフトウェアを用いて)を行い、標的と特異的に結合するライブラリーメンバーを同定する。
【0523】
その他の発現ライブラリーの例
例えば、抗体のタンパク質アレイ(例えば、De Wildtら(2000)Nat.Biotechnol.18:989-994を参照されたい)、ラムダgt11ライブラリー、2ハイブリッドライブラリーなどを含めた、その他の種類のタンパク質収集物(例えば、発現ライブラリー)を用いて、特定の特性(例えば、血漿カリクレインとの結合能)を有するタンパク質を同定することができる。
【0524】
ライブラリーの例
非ヒト霊長類を免疫化して、ファージ上でディスプレイされ得る霊長類抗体遺伝子を回収することが可能である(下記を参照されたい)。このようなライブラリーから、免疫化に使用された抗原と結合する抗体を選択することができる。例えば、Vaccine.(2003)22(2):257-67またはImmunogenetics.(2005)57(10):730-8を参照されたい。このようにしてチンパンジーまたはマカクを免疫化し、血漿カリクレインと結合してこれを阻害する霊長類抗体を選択またはスクリーニングするための各種手段を用いることにより、血漿カリクレインと結合してこれを阻害する霊長類抗体を得ることができる。またヒト定常領域を有する霊長類化Fabのキメラを作製することもでき、Curr Opin Mol Ther.(2004)6(6):675-83を参照されたい。「霊長類化抗体はカニクイザル(マカク)およびヒトの成分から遺伝子操作により作製され、ヒト抗体と構造的に区別することは不可能である。したがって、これらはヒトにおいて有害反応を引き起こす可能性が低いため、長期間の慢性治療に適している可能性がある」(Curr Opin Investig Drugs.(2001)2(5):635-8)。
【0525】
1つの例示的な種類のライブラリーでは、それぞれが免疫グロブリンドメイン、例えば免疫グロブリン可変ドメインを含むポリペプチドの多様なプールが提示される。対象となるのは、ライブラリーのメンバーが霊長類または「霊長類化」(例えば、ヒト、非ヒト霊長類または「ヒト化」など)免疫グロビン(immunoglobin)ドメイン(例えば、免疫グロビン(immunoglobin)可変ドメイン)またはヒト定常領域を有するキメラ霊長類化Fabを含むディスプレイライブラリーである。ヒトまたはヒト化免疫グロビン(immunoglobin)ドメインライブラリーを用いて、例えばヒト抗原を認識するヒトまたは「ヒト化」抗体を同定し得る。これらの抗体は、抗体の定常領域とフレームワーク領域がヒトであるため、ヒトへ投与されたときに、自身が抗原として認識および標的化されることを回避し得る。また定常領域は、ヒト免疫系のエフェクター機能を動員するように最適化され得る。in vitroディスプレイによる選択工程により、正常なヒト免疫系が自己抗原に対して抗体を産生できないことが克服される。
【0526】
典型的な抗体ディスプレイライブラリーでは、VHドメインVLドメインを含むポリペプチドが提示される。「免疫グロブリンドメイン」は、免疫グロブリン分子の可変または定常ドメイン由来のドメインを指す。免疫グロブリンドメインは通常、約7本のベータ鎖および保存されたジスルフィド結合で形成される2つのβシートを含む(例えば、A.F.WilliamsおよびA.N.Barclay,1988,Ann.Rev.Immunol.6:381-405を参照されたい)。ディスプレイライブラリーでは、抗体がFabフラグメント(例えば、2本のポリペプチド鎖を用いた)または一本鎖Fv(例えば、1本のポリペプチド鎖を用いた)として示され得る。その他のフォーマットも使用し得る。
【0527】
Fabおよびその他のフォーマットの場合と同様に、提示された抗体は軽鎖および/または重鎖の一部として1つ以上の定常領域を含み得る。一実施形態では、各鎖は、例えばFabの場合と同様に、1つの定常領域を含む。他の実施形態では、さらなる定常領域が提示される。
【0528】
抗体ライブラリーは数多くの工程により構築することができる(例えば、de Haardら,1999,J.Biol.Chem.274:18218-30;Hoogenboomら,1998,Immunotechnology 4:1-20;Hoogenboomら,2000,Immunol.Today 21:371-378およびHoetら(2005)Nat Biotechnol.23(3):344-8を参照されたい)。さらに、各工程の要素を他の工程の要素と組み合わせ得る。これらの工程を用いて、単一の免疫グロブリンドメイン(例えば、VHまたはVL)内または複数の免疫グロブリンドメイン(例えば、VHとVL)内に変異を導入し得る。変異を導入し得る免疫グロブリン可変ドメインの、例えば、重鎖および軽鎖可変ドメインのいずれかまたは両方の領域であるCDR1、CDR2、CDR3、FR1、FR2、FR3および/またはFR4の1つ以上の領域内に変異を導入し得る。例えば、変異(単数または複数)を、所与の可変ドメインの3つのすべてのCDR内、または例えば重鎖可変ドメインのCDR1とCDR2内に導入し得る。任意の組合せが可能である。一工程では、CDRをコードする多様なオリゴヌクレオチドを核酸の対応する領域内に挿入することにより、抗体ライブラリーを構築する。オリゴヌクレオチドは単量体ヌクレオチドまたはトリヌクレオチドを用いて合成することができる。例えば、Knappikら,2000,J.Mol.Biol.296:57-86には、トリヌクレオチド合成およびオリゴヌクレオチド受容のための設計された制限部位を有する鋳型を用いてCDRをコードするオリゴヌクレオチドを構築するための方法が記載されている。
【0529】
別の工程では、動物(例えば、げっ歯類)を血漿カリクレインで免疫化する。任意にこの動物を抗原で追加免疫して応答をさらに刺激する。次いで、動物から脾臓細胞を分離し、VHおよび/またはVLドメインをコードする核酸をディスプレイライブラリーでの発現用に増幅しクローニングする。
【0530】
さらに別の工程では、天然の生殖系列免疫グロブリン遺伝子から増幅した核酸から抗体ライブラリーを構築する。増幅した核酸は、VHおよび/またはVLドメインをコードする核酸を含む。免疫グロブリンをコードする核酸の源は下に記載されている。増幅は、例えば、保存された定常領域とアニールするプライマーを用いたPCRまたは別の増幅法を含み得る。
【0531】
免疫グロブリンドメインをコードする核酸は、例えば、霊長類(例えば、ヒト)、マウス、ウサギ、ラクダまたはげっ歯類の免疫細胞から入手し得る。1つの例では、特定の特性に関して細胞を選択する。様々な成熟段階のB細胞を選択し得る。別の例では、B細胞はナイーブである。
【0532】
一実施形態では、蛍光励起細胞分取法(FACS)を用いて、表面結合IgM、IgDまたはIgG分子を発現するB細胞を分取する。さらに、IgGの異なるアイソタイプを発現するB細胞を分離し得る。別の好適な実施形態では、BまたはT細胞をin vitroで培養する。細胞を、例えば、フィーダー細胞とともに培養することにより、あるいはマイトジェンまたはその他の調節試薬、例えばCD40、CD40リガンドもしくはCD20に対する抗体、酢酸ミリスチン酸ホルボール、細菌リポ多糖、コンカナバリンA、フィトヘマグルチニンまたはポークウィードマイトジェンなどを加えることにより、in vitroで刺激し得る。
【0533】
別の実施形態では、本明細書に記載の状態の疾患、例えば、血漿カリクレイン関連の疾患または状態を有する対象から細胞を分離する。
【0534】
好適な一実施形態では、細胞は体細胞超突然変異のプログラムが活性化されている。例えば、抗免疫グロブリン、抗CD40および抗CD38抗体での処置により細胞を刺激して、免疫グロブリン遺伝子の多細胞突然変異を起こさせることができる(例えば、Bergthorsdottirら,2001,J.Immunol.166:2228を参照されたい)。別の実施形態では、細胞はナイーブである。
【0535】
免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を、以下の例示的方法により天然のレパートリーから単離することができる。まず免疫細胞からRNAを単離する。完全長(例えば、キャップ化された)mRNAを分離する(例えば、仔ウシ腸ホスファターゼで未キャップ化RNAを分解することにより)。次いで、タバコ酸性ピロホスファターゼでキャップを除去し、逆転写を用いてcDNAを作製する。
【0536】
第一(アンチセンス)鎖の逆転写は、任意の適当なプライマーを用いて、任意の方法で行い得る。例えば、de Haardら,1999,J.Biol.Chem.274:18218-30を参照されたい。プライマー結合領域は、例えば、免疫グロブリンの異なるアイソタイプを逆転写するために、異なる免疫グロブリン間で一定であり得る。またプライマー結合領域は、免疫グロブリンの特定のアイソタイプに対して特異的であり得る。通常プライマーは、少なくとも1つのCDRをコードする配列の3’側の領域に特異的である。別の実施形態では、ポリ-dTプライマーを使用し得る(また、重鎖遺伝子に好適であり得る)。
【0537】
逆転写された鎖の3’末端に合成配列を連結し得る。この合成配列を、逆転写後のPCR増幅の際に順方向プライマーが結合するためのプライマー結合部位として使用し得る。合成配列の使用により、入手可能な多様性を完全に捕捉するために異なる順方向プライマーのプールを用いる必要がなくなる。
【0538】
次いで、例えば1つ以上のラウンドを用いて、可変ドメインをコードする遺伝子を増幅する。複数のラウンドを用いる場合、忠実度を上げるためにネステッドプライマーを用いることができる。次いで、増幅された核酸をディスプレイライブラリーベクター中にクローニングする。
【0539】
二次スクリーニングの方法
標的と結合する候補ライブラリーメンバーを選択した後、各候補ライブラリーメンバーをさらに解析して、例えば、標的、例えば血漿カリクレインに対するその結合特性をさらに特徴付け得る。各候補ライブラリーメンバーに1つ以上の二次スクリーニングアッセイを行い得る。アッセイは、結合特性、触媒特性、阻害特性、生理的特性(例えば、細胞毒性、腎クリアランス、免疫原性)および構造特性(例えば、安定性、立体配座、オリゴマー化状態)または別の機能的特性に関するものであり得る。同じアッセイを繰り返し条件を変えて用いて、例えば、pH、イオンまたは温度に対する感受性を判定し得る。
【0540】
必要に応じて、ディスプレイライブラリーのメンバーを直接、または選択されたポリペプチドをコードする核酸から作製した組換えポリペプチドを、または選択されたポリペプチドの配列に基づいて合成した合成ペプチドをアッセイで用い得る。選択されたFabの場合、Fabを評価するか、または改変してインタクトのIgGタンパク質として作製し得る。結合特性に関するアッセイの例を以下に挙げる。
【0541】
ELISA
ELISAアッセイを用いて結合タンパク質を評価し得る。例えば、底の表面を標的、例えば限界量の標的でコーティングしたマイクロタイタープレートに各タンパク質を接触させる。プレートを緩衝液で洗浄して、非特異的に結合したポリペプチドを除去する。次いで、プレートを結合タンパク質、例えば、結合タンパク質のタグまたは定常部分を認識することができる抗体でプローブすることにより、プレート上の標的と結合している結合タンパク質の量を決定する。抗体を検出系(例えば、適当な基質を加えると発色産物を生じる、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)のような酵素)と連結させる。
【0542】
均一結合アッセイ
本明細書に記載の結合タンパク質が標的と結合する能力は、均一アッセイを用いて解析され得る(すなわち、アッセイの全成分を加えた後に追加の液体操作を必要としない。例えば、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を均一アッセイとして使用し得る(例えば、Lakowiczら,米国特許第5,631,169号;Stavrianopoulosら,米国特許第4,868,103号を参照されたい)。第二の分子(例えば、標的)が第一の分子(例えば、画分中で同定された分子)に近接していれば、放出された蛍光エネルギーが第二の分子上の蛍光標識により吸収され得るように、第一の分子上のフルオロフォア標識を選択する。第二の分子上の蛍光標識は、転移したエネルギーを吸収すると蛍光を発する。標識間でのエネルギー転移の効率は、離れている分子の距離と関係するため、分子間の空間的関係を評価することができる。分子間に結合が生じている場合、アッセイでの「アクセプター」分子標識の蛍光の発光は最大となるはずである。FRETによるモニター用に設定された結合事象は、標準的な蛍光定量的検出手段により、例えば蛍光光度計を用いて好都合に測定することができる。第一または第二の結合分子の量を漸増させることにより結合曲線を作成し、平衡結合定数を評価することができる。
【0543】
均一アッセイの別の例はALPHASCREEN(商標)(Packard Bioscience、Meriden CT)である。ALPHASCREEN(商標)では2つの標識されたビーズを用いる。一方のビーズは、レーザーにより励起されると一重項酸素を発生する。他方のビーズは、第一のビーズから拡散した一重項酸素がこれに衝突すると、光シグナルを発生する。このシグナルは2つのビーズが近接している場合にしか発生しない。一方のビーズをディスプレイライブラリーのメンバーに、他方のビーズを標的に結合させることができる。シグナルを測定して結合の程度を判定する。
【0544】
表面プラズモン共鳴(SPR)
SPRを用いて結合タンパク質と標的との相互作用を解析し得る。SPRまたは生体分子相互作用解析(BIA)では、どの反応体も標識せずに生体分子特異的な相互作用をリアルタイムで検出する。BIAチップの結合表面での質量の変化(結合事象を示すもの)により表面付近の光の屈折率が変化する(表面プラズモン共鳴(SPR)という光学現象)。この屈折率の変化により検出可能なシグナルが発生し、これが生体分子間のリアルタイムの反応を示すものとして測定される。SPRの利用法は、例えば、米国特許第5,641,640号;Raether,1988,Surface Plasmons Springer Verlag;SjolanderおよびUrbaniczky,1991,Anal.Chem.63:2338-2345;Szaboら,1995,Curr.Opin.Struct.Biol.5:699-705ならびにBIAcore International AB(Uppsala、Sweden)により提供されるオンライン資料に記載されている。
【0545】
SPRから得られた情報を用いて、結合タンパク質と標的との結合に関する平衡解離定数(KD)ならびにKonおよびKoffを含めた動力学的パラメーターの正確な定性測定が得られる。このようなデータを用いて異なる生体分子を比較することができる。例えば、発現ライブラリーから選択されたタンパク質を比較して、標的に対して高親和性を有するまたは遅いKoffを有するタンパク質を同定し得る。またこの情報を用いて構造活性相関(SAR)を明らかにすることもできる。例えば、成熟型の親タンパク質の動力学的パラメーターおよび平衡結合パラメーターを親タンパク質のパラメーターと比較し得る。特定の結合パラメーター、例えば高親和性および遅いKoffと関連する所与の位置の変異アミノ酸を同定し得る。この情報を構造モデリングと組み合わせることができる(例えば、ホモロジーモデリング、エネルギー最小化原理またはX線結晶構造解析もしくはNMRによる構造決定を用いて)。その結果、タンパク質とその標的との間の物理的相互作用に関してわかったことを定式化し、他の設計工程の指針として利用することができる。
【0546】
細胞アッセイ
結合タンパク質を、対象となる標的を一過性にまたは安定に発現して細胞表面上に示す細胞との結合能に関してスクリーニングし得る。例えば、血漿カリクレイン結合タンパク質を蛍光標識し、アンタゴニスト抗体の非存在の存在下での血漿カリクレインとの結合をフローサイトメトリー、例えばFACS機器を用いた蛍光強度の変化により測定し得る。
【0547】
血漿カリクレイン結合タンパク質を得るその他の方法の例
ディスプレイライブラリーの使用に加え、他の方法を用いて血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、抗体)を得ることができる。例えば、血漿カリクレインタンパク質またはそのフラグメントを、非ヒト動物、例えばげっ歯類において抗原として用いることができる。
【0548】
一実施形態では、非ヒト動物はヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部を含む。例えば、ヒトIg遺伝子座の大フラグメントを有しマウス抗体産生を欠くマウス系統を設計することが可能である。ハイブリドーマ技術を用いて、所望の特異性を有する遺伝子由来の抗原特異的モノクローナル抗体(Mab)を作製して選択し得る。例えば、XENOMOUSE(商標),Greenら,1994,Nat.Gen.7:13-21;米国特許出願公開第2003-0070185号、1996年10月31日に公開された国際公開第96/34096号および1996年4月29日に出願された国際出願PCT/US96/05928号を参照されたい。
【0549】
別の実施形態では、非ヒト動物からモノクローナル抗体を入手し、次いで改変、例えばヒト化または脱免疫化する。Winterは、ヒト化抗体を調製するために使用し得るCDR移植法について記載している(1987年3月26日に出願された英国特許出願公開第2188638A号;米国特許第5,225,539)。特定のヒト抗体のすべてのCDRを非ヒトCDRの少なくとも一部分で置き換えるか、またはCDRの一部のみを非ヒトCDRで置き換え得る。ヒト化抗体と所定の抗原との結合に必要な数のCDRを置き換えるだけでよい。
【0550】
ヒト化抗体は、抗原結合に直接関与しないFv可変領域の配列をヒトFv可変領域由来の相当する配列で置き換えることにより作製することができる。ヒト化抗体作製のための一般的方法は、Morrison,S.L.,1985,Science 229:1202-1207、Oiら,1986,BioTechniques 4:214およびQueenら,米国特許第5,585,089号、同第5,693,761号および同第5,693,762号により記載されている。上記方法は、重鎖または軽鎖の少なくとも一方に由来する免疫グロブリンFv可変領域のすべてまたは一部をコードする核酸配列の単離、操作、および発現を含む。このような核酸の数多くの源が入手可能である。例えば、上記のように、所定の標的に対する抗体を産生するハイブリドーマから核酸を入手し得る。次いで、ヒト化抗体またはそのフラグメントをコードする組換えDNAを適当な発現ベクター中にクローニングし得る。
【0551】
血漿カリクレイン結合タンパク質の免疫原性の低減
免疫グロビン(Immunoglobin)血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、IgGまたはFab血漿カリクレイン結合タンパク質)を改変して免疫原性を低減し得る。免疫原性の低減は、それにより対象が治療用分子に対する免疫応答を発現する確率が減るため、治療剤としての使用が意図される血漿カリクレイン結合タンパク質においては望ましい。血漿カリクレイン結合タンパク質の免疫原性を低減するのに有用な技術としては、潜在的なヒトT細胞エピトープの除去/改変およびCDR以外(例えば、フレームワークおよびFc)の配列の「生殖系列化」が挙げられる。
【0552】
血漿カリクレイン結合抗体を、例えば、国際公開第98/52976号および同第00/34317号に開示されている方法によるヒトT細胞エピトープの特異的除去、つまり「脱免疫化」により改変し得る。簡潔には、抗体の重鎖および軽鎖可変領域をクラスIIMHCと結合するペプチドに関して解析する;これらのペプチドは潜在的なT細胞エピトープを表す(国際公開第98/52976号および同第00/34317号で定義されている)。潜在的なT細胞エピトープの検出には、国際公開第98/52976号および同第00/34317号に記載されているように、「ペプチドスレディング(peptide threading)」と呼ばれるコンピュータモデリング法を利用することができ、また加えて、VHおよびVL配列中に存在するモチーフをクラスIIヒトMHC結合ペプチドのデータベースで検索することができる。これらのモチーフは18の主要なクラスIIMHC DRアロタイプのいずれかと結合し、したがって潜在的なT細胞エピトープを構成する。検出された潜在的なT細胞エピトープは、可変領域の少数のアミノ酸残基を置換することにより、また好ましくは単一アミノ酸置換により除去することができる。可能な保存的置換が行われる限り、限定されるわけではないが多くの場合、ヒト生殖系列の抗体配列のこの位置で共通するアミノ酸を使用し得る。ヒト生殖系列配列はTomlinson,I.A.ら,1992,J.Mol.Biol.227:776-798;Cook,G.P.ら,1995,Immunol.Today Vol.16(5):237-242;Chothia,D.ら,1992,J.Mol.Bio.227:799-817に開示されている。V Base登録簿からヒト免疫グロブリン可変領域配列の広範な登録簿が得られる(Tomlinson,I.A.らによる編纂,MRC Centre for Protein,Cambridge,UK)。脱免疫化を生じさせる変化を特定した後、突然変異誘発またはその他の合成法(例えば、de novo合成、カセット置換など)によりVHおよびVLをコードする核酸を構築することができる。突然変異を誘発した可変配列を、任意にヒト定常領域、例えばヒトIgG1またはκ定常領域と融合し得る。
【0553】
潜在的なT細胞エピトープが、抗体機能に重要であることが既知であるか、またはそうであると予測される残基を含む場合もある。例えば、潜在的なT細胞エピトープは通常、CDRに偏っている。さらに潜在的なT細胞エピトープは、抗体の構造および結合に重要なフレームワーク残基内で生じ得る。こうした潜在的エピトープを除去する変化は、例えば、変化した鎖および変化していない鎖を作製して試験することにより、さらに精査する必要がある場合もある。可能であれば、CDRと重複する潜在的なT細胞エピトープを、CDRの外側での置換によって除去する。CDR内での改変が唯一の選択肢であるため、この置換を有するバリアントおよび有さないバリアントを試験しなければならない場合もある。潜在的なT細胞エピトープを除去するのに必要な置換が、抗体結合に重要であり得るフレームワーク内の残基位置にある場合もある。このような場合、この置換を有するバリアントおよび有さないバリアントを試験するべきである。したがって、最適な脱免疫化抗体を同定するために、複数のバリアントを脱免疫化した重鎖および軽鎖可変領域を設計し、重鎖/軽鎖の各種組合せを試験する場合もある。次いで、様々なバリアントの結合親和性を脱免疫化の程度、すなわち可変領域に残っている潜在的なT細胞エピトープの数とともに考慮することにより、最終的な脱免疫化抗体の選択を行うことができる。脱免疫化を用いて、任意の抗体、例えば非ヒト配列を含む抗体、例えば合成抗体、マウス抗体、その他の非ヒトモノクローナル抗体またはディスプレイライブラリーから単離された抗体を改変し得る。
【0554】
結合特性が実質的に保持される限り、フレームワーク領域内の1つ以上の非生殖系列アミノ酸を抗体の対応する生殖系列アミノ酸に戻すことにより血漿カリクレイン結合抗体が「生殖系列化」される。また同様の方法を定常領域、例えば定常免疫グロブリンドメインに用いることもできる。
【0555】
抗体の可変領域を1つ以上の生殖系列配列とさらに類似させるために、血漿カリクレインと結合する抗体、例えば本明細書に記載の抗体を改変し得る。例えば、抗体に1個、2個、3個またはそれを上回るアミノ酸置換を、例えばフレームワーク、CDRまたは定常領域内に含ませて、参照生殖系列配列とさらに類似させ得る。生殖系列化の方法の一例は、単離抗体の配列と類似している(例えば、特定のデータベースにおいて最も類似している)1つ以上の生殖系列配列を同定すること含み得る。次いで、単離抗体を徐々にまたは他の変異と組み合わせて(アミノ酸レベルで)変異させる。例えば、可能な生殖系列変異の一部またはすべてをコードする配列を含む核酸ライブラリーを作製する。次いで、変異した抗体を評価して、例えば、単離抗体と比べて1つ以上の追加の生殖系列残基を有し、かつ依然として有用である(例えば、機能的活性を有する)抗体を同定する。一実施形態では、可能な限り多くの生殖系列残基を単離抗体に導入する。
【0556】
一実施形態では、突然変異誘発を利用して、1つ以上の生殖系列残基をフレームワークおよび/または定常領域内に置換または挿入する。例えば、生殖系列フレームワークおよび/または定常領域残基は、改変する非可変領域と類似した(例えば、最も類似した)生殖系列配列由来であり得る。突然変異誘発後に、抗体の活性(例えば、結合またはその他の機能的活性)を評価して、1つまたは複数の生殖系列残基が許容される(すなわち、活性を無効にしない)か否かを判定することができる。同様の突然変異誘発をフレームワーク領域において行い得る。
【0557】
生殖系列配列の選択は様々な方法で行うことができる。例えば、ある生殖系列配列が、選択性または類似性の所定の基準、例えば少なくとも特定のパーセンテージの同一性、例えば、少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または99.5%の同一性を満たせば、それを選択することができる。少なくとも2、3、5または10個の生殖系列配列を用いて選択を行うことができる。CDR1およびCDR2の場合、類似した生殖系列配列の同定は、このような配列を1つ選択することを含み得る。CDR3の場合、類似した生殖系列配列の同定は、このような配列を1つ選択することを含み得るが、配列のアミノ末端部分およびカルボキシ末端部分に別々に関与する2つの生殖系列配列の使用を含み得る。他の実施形態では、2つまたは3つ以上の生殖系列配列を用いて、例えばコンセンサス配列を形成する。
【0558】
一実施形態では、特定の参照可変ドメイン配列、例えば本明細書に記載の配列に関して、関連する可変ドメイン配列は、参照CDR配列中の残基、すなわちヒト生殖系列配列(すなわち、ヒト生殖系列核酸によりコードされるアミノ酸配列)中の対応する位置の残基と同一である残基とは同一でないCDRアミノ酸位置の少なくとも30、40、50、60、70、80、90、95または100%を有する。
【0559】
一実施形態では、特定の参照可変ドメイン配列、例えば本明細書に記載の配列に関して、関連する可変ドメイン配列は、ヒト生殖系列配列、例えば参照可変ドメイン配列に関連する生殖系列配列に由来するFR配列と同一であるFR領域の少なくとも30、50、60、70、80、90または100%を有する。
【0560】
したがって、所与の対象となる抗体と同様の活性を有するが、1つ以上の生殖系列配列、具体的には1つ以上のヒト生殖系列配列とより類似した抗体を単離することが可能である。例えば、抗体は、CDR以外の領域(例えば、フレームワーク領域)内の生殖系列配列と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または99.5%同一であり得る。さらに抗体は、改変される可変領域に類似した(例えば、最も類似した)生殖系列配列由来の生殖系列残基をCDR領域内に少なくとも1、2、3、4または5個含み得る。主な対象となる生殖系列配列はヒト生殖系列配列である。抗体の活性(例えば、KAにより測定される結合活性)は、元の抗体の1または100、10、5、2、0.5、0.1および0.001倍以内であり得る。
【0561】
ヒト免疫グロビン(immunoglobin)遺伝子の生殖系列配列は決定されており、INTERNATIONAL IMMUNOGENETICS INFORMATION SYSTEM(登録商標)(IMGT)およびV Base登録簿(Tomlinson,I.A.らによる編纂、MRC Centre for Protein Engineering,Cambridge,UK)を含めた数多くの情報源から入手可能である。
【0562】
Vkappaの生殖系列参照配列の例としては、O12/O2、O18/O8、A20、A30、L14、L1、L15、L4/18a、L5/L19、L8、L23、L9,L24、L11、L12、O11/O1、A17、A1、A18、A2、A19/A3、A23、A27、A11、L2/L16、L6、L20、L25、B3、B2、A26/A10およびA14が挙げられる。例えば、Tomlinsonら,1995,EMBO J.14(18):4628-3を参照されたい。
【0563】
HC可変ドメインの生殖系列参照配列は、特定のカノニカル構造、例えばH1およびH2超可変ループ内の1-3構造を有する配列に基づき得る。免疫グロブリン可変ドメインの超可変ループのカノニカル構造は、Chothiaら,1992,J.Mol.Biol.227:799-817;Tomlinsonら,1992,J.Mol.Biol.227:776-798;およびTomlinsonら,1995,EMBO J.14(18):4628-38に記載されているとおりに、その配列から推定することができる。1-3構造を有する配列の例としては、DP-1、DP-8、DP-12、DP-2、DP-25、DP-15、DP-7、DP-4、DP-31、DP-32、DP-33、DP-35、DP-40、7-2、hv3005、hv3005f3、DP-46、DP-47、DP-58、DP-49、DP-50、DP-51、DP-53およびDP-54が挙げられる。
【0564】
タンパク質産生
標準的な組換え核酸法を用いて、血漿カリクレインと結合するタンパク質を発現させ得る。一般的には、タンパク質をコードする核酸配列を核酸発現ベクター中にクローニングする。当然のことながら、タンパク質が複数のポリペプチド鎖を含む場合は、各鎖を発現ベクター中、例えば同じまたは異なるベクター中にクローニングし、同じまたは異なる細胞中で発現させる。
【0565】
抗体産生
一部の抗体、例えばFabを細菌細胞内、例えば大腸菌(E.coli)細胞内で産生させることができる(例えば、Nadkarni,A.ら,2007 Protein Expr Purif 52(1):219-29を参照されたい)。例えば、Fabがファージディスプレイベクター中の配列によりコードされ、このベクターが提示物とバクテリオファージタンパク質(またはそのフラグメント)の間に抑制可能な停止コドンを含んでいる場合、停止コドンを抑制することができない細菌細胞内にベクター核酸を転移させることができる。この場合、Fabは遺伝子IIIタンパク質と融合せず、ペリプラズムおよび/または培地中に分泌される。
【0566】
また真核細胞中で抗体を産生させることもできる。一実施形態では、抗体(例えば、scFv)をピキア(Pichia)(例えば、Powersら,2001,J.Immunol.Methods.251:123-35;Schoonooghe S.ら,2009 BMC Biotechnol.9:70;Abdel-Salam,HA.ら,2001 Appl Microbiol Biotechnol 56(1-2):157-64;Takahashi K.ら,2000 Biosci Biotechnol Biochem 64(10):2138-44;Edqvist,J.ら,1991 J Biotechnol 20(3):291-300を参照されたい)、ハンゼウラ(Hanseula)またはサッカロミセス(Saccharomyces)のような酵母細胞中で発現させる。当業者は、例えば、酸素条件(例えば、Baumann K.ら,2010 BMC Syst.Biol.4:141を参照されたい)、モル浸透圧濃度(例えば、Dragosits,M.ら,2010 BMC Genomics 11:207を参照されたい)、温度(例えば、Dragosits,M.ら,2009 J Proteome Res.8(3):1380-92を参照されたい)、発酵条件(例えば、Ning,D.ら,2005 J.Biochem.and Mol.Biol.38(3):294-299を参照されたい)、酵母の菌株(例えば、Kozyr,AVら,2004 Mol Biol(Mosk)38(6):1067-75;Horwitz,AH.ら,1988 Proc Natl Acad Sci USA 85(22):8678-82;Bowdish,K.ら 1991 J Biol Chem 266(18):11901-8を参照されたい)、抗体産生を増強するタンパク質過剰発現(例えば、Gasser,B.ら,2006 Biotechol.Bioeng.94(2):353-61を参照されたい)、培養物の酸性度のレベル(例えば、Kobayashi H.ら,1997 FEMS Microbiol Lett 152(2):235-42を参照されたい)、基質および/またはイオンの濃度(例えば、Ko JH.ら,2996 Appl Biochem Biotechnol 60(1):41-8を参照されたい)を最適化することにより、酵母での抗体産生を最大限にすることができる。さらに、酵母系を用いて、半減期の長い抗体を産生させることができる(例えば、Smith,BJ.ら,2001 Bioconjug Chem 12(5):750-756を参照されたい)。
【0567】
好適な一実施形態では、哺乳動物細胞中で抗体を産生させる。クローン抗体またはその抗原結合フラグメントの発現に好適な哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(UrlaubおよびChasin,1980,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216-4220に記載されているdhfr-CHO細胞(例えば、KaufmanおよびSharp,1982,Mol.Biol.159:601 621に記載されているように、DHFR選択マーカーとともに使用する)を含む)、リンパ球細胞系(例えば、NS0ミエローマ細胞およびSP2細胞)、COS細胞、HEK293T細胞(J.Immunol.Methods(2004)289(1-2):65-80)およびトランスジェニック動物、例えばトランスジェニック哺乳動物に由来する細胞が挙げられる。例えば、細胞は乳腺上皮細胞である。
【0568】
いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質を植物細胞中または無細胞系で産生させる(例えば、Galeffi,P.ら,2006 J Transl Med 4:39を参照されたい)。
【0569】
組換え発現ベクターは、多様化させた免疫グロブリンドメインをコードする核酸配列に加えて、追加の配列、例えば、宿主細胞内でのベクターの複製を制御する配列(例えば、複製起点)および選択マーカー遺伝子配列などを運搬し得る。選択マーカー遺伝子により、ベクターが導入された宿主細胞の選択が容易になる(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号および同第5,179,017号を参照されたい)。例えば、選択マーカー遺伝子は通常、ベクターが導入された宿主細胞にG418、ヒグロマイシンまたはメトトレキサートのような薬物に対する耐性を付与する。好適な選択マーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅でdhfr-宿主細胞に使用)およびneo遺伝子(G418選択用)が挙げられる。
【0570】
抗体またはその抗原結合部分の組換え発現のための系の一例では、抗体重鎖と抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターを、リン酸カルシウムによるトランスフェクションでdhfr-CHO細胞に導入する。組換え発現ベクター内では、抗体の重鎖遺伝子と軽鎖遺伝子がそれぞれエンハンサー/プロモーター調節エレメント(例えば、SV40、CMV、アデノウイルスなどに由来する、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントまたはSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントなど)と作動可能に連結されており、高レベルの遺伝子転写を駆動する。また組換え発現ベクターはDHFR遺伝子も運搬し、これにより、ベクターがトランスフェクトされたCHO細胞をメトトレキサート選択/増幅を用いて選択することが可能となる。選択された形質転換宿主細胞を培養して抗体重鎖および軽鎖を発現させ、培地からインタクト抗体を回収する。標準的な分子生物学技術を用いて、組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞をトランスフェクトし、形質転換細胞を選択し、宿主細胞を培養して、培地から抗体を回収する。例えば、一部の抗体は、プロテインAまたはプロテインGが結合したマトリックスを用いたアフィニティクロマトグラフィーにより単離し得る。
【0571】
Fcドメインを含む抗体では、抗体産生系は、Fc領域がグリコシル化されている抗体を産生し得る。例えば、IgG分子のFcドメインは、CH2ドメインのアスパラギン297においてグリコシル化されている。このアスパラギンは、二分岐型のオリゴ糖による修飾のための部位である。このグリコシル化は、Fcg受容体および補体C1qにより仲介されるエフェクター機能に必要であるということが示されている(BurtonおよびWoof,1992,Adv.Immunol.51:1-84;Jefferisら,1998,Immunol.Rev.163:59-76)。一実施形態では、アスパラギン297に対応する残基を適切にグリコシル化する哺乳動物発現系においてFcドメインを産生させる。Fcドメインは他の真核翻訳後修飾も含み得る。
【0572】
抗体をトランスジェニック動物に産生させることもできる。例えば、米国特許第5,849,992号には、トランスジェニック哺乳動物の乳腺中で抗体を発現させる方法が記載されている。乳汁特異的プロモーター、対象となる抗体をコードする核酸および分泌のためのシグナル配列を含む導入遺伝子を構築する。雌の上記トランスジェニック哺乳動物により産生される乳汁には、そこに分泌された対象となる抗体が含まれている。抗体は、乳汁から精製するか、または用途によっては直接使用することができる。
【0573】
血漿カリクレイン結合タンパク質の特徴付け
IC50(50%阻害濃度)およびEC50(50%有効濃度)
一系列または一群の結合タンパク質のうち、IC50またはEC50の値が低い結合タンパク質は、IC50またはEC50の値が高いものよりも強力な血漿カリクレイン阻害剤であると考えられる。例示の結合タンパク質では、例えば、血漿カリクレイン活性の阻害に関するin vitroアッセイでの測定で、血漿カリクレインが2pMのときのIC50値が800nM、400nM、100nM、25nM、5nMまたは1nM未満である。
【0574】
また血漿カリクレイン結合タンパク質を、第XII因子の活性およびHMWK(高分子量キニノーゲン)シグナル伝達事象、例えば、第XIIa因子および/またはブラジキニンの産生に関しても特徴付け得る。
【0575】
また、結合タンパク質を血漿カリクレインに対する選択性に関して評価することもできる。例えば、血漿カリクレイン結合タンパク質を血漿カリクレインおよびカリクレインパネルに対するその効力に関してアッセイし、各カリクレインに対するIC50値またはEC50値を決定することができる。一実施形態では、血漿カリクレインに対して低いIC50値またはEC50値を示し、かつ試験パネル内の別のカリクレインに対して高いIC50値またはEC50値、例えば少なくとも2倍、5倍または10倍高い値を示す化合物は、血漿カリクレインに対して選択的であると考えられる。
【0576】
血漿カリクレインの血中半減期を決定するために、血漿カリクレイン結合タンパク質による薬物動態実験をラット、マウスまたはサルで行うことができる。同様に、結合タンパク質の効果を、例えば本明細書に記載の疾患または状態(例えば、血漿カリクレイン関連疾患)を治療するための治療剤としての使用に関してin vivoで、例えば疾患の動物モデル(例えば、ラット後肢のカラゲニン誘導性浮腫(Winterら,Proc Soc Exp Biol Med.1962;111:544-7))で評価し得る。
【0577】
医薬組成物
血漿カリクレイン(例えば、ヒト血漿カリクレインおよび/またはマウス血漿カリクレイン)と結合し、かつ例えば、少なくとも1つの免疫グロビン(immunoglobin)可変領域を含むタンパク質(例えば、結合タンパク質)を、血漿カリクレイン関連の疾患または状態を治療(または予防)する方法において使用し得る。結合タンパク質は、本明細書に記載のように血漿カリクレインと結合することが確認された血漿カリクレイン結合タンパク質、抗体分子またはその他のポリペプチドもしくはペプチドを含む組成物、例えば、薬学的に許容される組成物または医薬組成物として存在し得る。血漿カリクレイン結合タンパク質を薬学的に許容される担体とともに製剤化し得る。医薬組成物しては、治療用組成物および診断用組成物、例えば、in vivoイメージングのために標識血漿カリクレイン結合タンパク質を含む組成物および血漿カリクレイン関連疾患の治療(または予防)のために標識血漿カリクレイン結合タンパク質を含む組成物が挙げられる。
【0578】
薬学的に許容される担体としては、生理的に適合するあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などが挙げられる。担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または上皮投与(例えば、注射または注入による)に適したものが好ましいが、吸入および鼻腔内投与に適した担体も考慮される。投与経路によっては、化合物を不活性化し得る酸の作用およびその他の天然の条件から化合物を保護するために、血漿カリクレイン結合タンパク質をある材料でコーティングし得る。
【0579】
薬学的に許容される塩とは、化合物の所望の生物学的活性を保持し、かつ望ましくない毒性作用を一切付与しない塩のことである(例えば、Berge,S.M.ら,1977,J.Pharm.Sci.66:1-19を参照されたい)。このような塩の例としては、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、無毒な無機酸、例えば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などに由来するもの、および無毒な有機酸、例えば脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などに由来するものが挙げられる。塩基付加塩としては、アルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどに由来するもの、および無毒な有機アミン、例えばN,N’-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなど由来するものが挙げられる。
【0580】
組成物は各種の形態であり得る。このような形態としては、例えば、液体、半固体および固形剤形、例えば液剤(例えば、注射用および注入用液剤)、分散液剤または懸濁剤、錠剤、丸剤、粉末剤、リポソームおよび坐剤などが挙げられる。形態は、意図される投与様式および治療用途によって決まり得る。多くの組成物が注射用または注入用液剤、例えばヒトへの抗体投与に使用されるものと同様な組成物などの形態である。投与様式の例は非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質を静脈内への注入または注射により投与する。別の好適な実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質を筋肉内または皮下への注射により投与する。
【0581】
本明細書で使用される「非経口投与」および「非経口的に投与する」という用語は、経腸および局所投与以外の、通常は注射による投与様式を意味し、かつ静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、真皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内の注射および注入を非限定的に包含する。
【0582】
組成物は、溶液、微細乳濁液、分散液、リポソーム、または高薬物濃度に適した他の規則構造として製剤化し得る。無菌注射用液剤は、必要量の結合タンパク質を、必要に応じて上に挙げた成分の1つまたは組合せとともに適当な溶媒に組み込み、次いでろ過滅菌することにより調製し得る。一般に分散液剤は、基礎になる分散媒と上に挙げた成分のうち必要とされるその他の成分とを含有する無菌溶媒に活性化合物を組み込むことにより調製する。無菌注射用液剤を調製するための無菌粉末剤の場合、好適な調製法は真空乾燥および凍結乾燥であり、この方法では、有効成分および任意の追加の所望成分の粉末を予め滅菌ろ過したその溶液から得る。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用により、分散剤の場合は必要な粒子サイズを維持することにより、また界面活性剤の使用により維持することができる。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含むことによりもたらすことができる。
【0583】
血漿カリクレイン結合タンパク質は各種の方法で投与し得るが、多くの用途に好適な投与の経路/様式は静脈内への注射または注入である。例えば、治療用途では、血漿カリクレイン結合タンパク質を、静脈内注入により30、20、10、5または1mg/分未満の速度で、約1~100mg/m2または7~25mg/m2の用量に達するまで投与し得る。投与の経路および/または様式は、所望の結果によって異なり得る。特定の実施形態では、化合物を迅速な放出から保護するインプラントおよびマイクロカプセル送達システムを含めた徐放製剤のような担体とともに活性化合物を調製し得る。生分解性の生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などを用い得る。このような製剤調製のための数多くの方法が利用可能である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson編,1978,Marcel Dekker,Inc.,New Yorkを参照されたい。
【0584】
医療装置を用いて医薬組成物を投与し得る。例えば一実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物を装置、例えば、無針皮下注射装置、ポンプまたはインプラントを用いて投与し得る。
【0585】
特定の実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質を適切なin vivo分布が得られるように製剤化する。例えば、血液脳関門(BBB)は多くの高親水性化合物を排除する。本明細書に開示される治療用化合物がBBBを確実に横断する(必要であれば)ように、それを例えばリポソーム中に製剤化し得る。リポソームの製造方法は、例えば、米国特許第4,522,811号;同第5,374,548号;および同第5,399,331号を参照されたい。リポソームは、特定の細胞または器官内に選択的に輸送されて、標的化された薬物送達を強化する、1つ以上の部分を含み得る(例えば、V.V.Ranade,1989,J.Clin.Pharmacol.29:685を参照されたい)。
【0586】
最適な所望の反応(例えば、治療反応)を得るために投与レジメンを調整する。例えば、単回のボーラス投与を行うか、複数回分に分割した用量を徐々に投与するか、または緊急の治療状況による適応があれば用量を比例的に減少もしくは増加させ得る。非経口組成物を、投与および用量の一律化を容易にするために投与単位形態で製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される投与単位形態は、治療する対象への単位投与として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、所望の治療効果が得られるように計算した所定量の活性化合物を必要な医薬担体とともに含有する。投与単位形態の仕様は、(a)活性化合物に固有の特性および達成するべき特定の治療効果、ならびに(b)個人における感受性に対処するためにこのような活性化合物を調合する技術本来の限界によって規定されるかまたは直接決まり得る。
【0587】
本明細書に開示される結合タンパク質(例えば、抗体)の治療または予防有効量の非限定的な範囲の例は、0.1~20mg/kg、より好ましくは1~10mg/kgである。抗血漿カリクレイン抗体は、例えば静脈内注入により、例えば30、20、10、5または1mg/分未満の速度で、約1~100mg/m2または約5~30mg/m2の用量に達するまで投与し得る。抗体よりも分子量が小さい結合タンパク質では、それに比例して適当な量が少なくなり得る。用量の数値は、軽減するべき状態の種類および重症度によって異なり得る。特定の対象では、個人の必要性、および組成物を投与するまたは組成物の投与を監督する者の専門的な判断に従って、特定の投与レジメンを徐々に調整し得る。
【0588】
本明細書に開示される医薬組成物は、「治療有効量」または「予防有効量」の本明細書に開示される血漿カリクレイン結合タンパク質を含み得る。「治療有効量」は、所望の予防結果を得るのに必要な用量および期間での有効量を指す。組成物の治療有効量は、諸因子、例えば個人の病的状態、年齢、性別および体重、ならびにタンパク質が個人において所望の反応を誘発する能力などによって異なり得る。また治療有効量は、治療上有益な効果が組成物のいかなる有毒または有害な効果も上回る量でもある。
【0589】
「治療有効量」は、好ましくは測定可能なパラメーター、例えば循環IgG抗体レベルを、未処置対象に比べて統計的に有意な程度、または少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、さらにより好ましくは少なくとも約80%だけ調節する。化合物が測定可能なパラメーター、例えば疾患関連のパラメーターを調節する能力は、ヒト疾患および状態、例えば血漿カリクレイン関連疾患における有効性が予測される動物モデル系で評価することができる。あるいは、組成物のこの特性を、化合物がin vitroでパラメーターを調節する能力を調べることにより評価することができる。
【0590】
「予防有効量」は、所望の予防結果を得るのに必要な用量および期間での有効量を指す。通常、予防量は疾患の前にまたは初期段階で対象において使用するため、予防有効量は治療有効量よりも少なくなる。
【0591】
安定化および保持
一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質を、循環中、例えば血液、血清、リンパまたはその他の組織中でのその安定化および/または保持を、例えば少なくとも1.5、2、5、10または50倍向上させる部分と物理的に結合させる。例えば、血漿カリクレイン結合タンパク質をポリマー、例えば、ポリアルキレンオキシドまたはポリエチレンオキシドのような実質的に非免疫原性であるポリマーと結合させ得る。適切なポリマーは、その重量が大きく異なる。約200~約35,000(または約1,000~約15,000および2,000~約12,500)の範囲の数平均分子量を有するポリマーを使用し得る。例えば、血漿カリクレイン結合タンパク質を、水溶性ポリマー、例えば親水性ポリビニルポリマー、例えばポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンとコンジュゲートし得る。このようなポリマーの非限定的なリストには、ポリアルキレンオキシドホモポリマー(ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコールなど)、ポリオキシエチレン化ポリオール、これらのコポリマーおよびこれらのブロックコポリマー(ただし、ブロックコポリマーの水溶解性は維持される)が含まれる。
【0592】
また血漿カリクレイン結合タンパク質を担体タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミンのような血清アルブミンと結合させることもできる(例えば、Smith,BJ.ら,2001 Bioconjug Chem 12(5):750-756を参照されたい)。例えば、翻訳融合を用いて担体タンパク質を血漿カリクレイン結合タンパク質と結合させる。
【0593】
また血漿カリクレイン結合タンパク質をHES化誘導体として修飾することもできる。血漿カリクレイン結合タンパク質のHES化の工程では、ヒドロキシエチルデンプンを用いてタンパク質を修飾する。タンパク質のHES化により、タンパク質の循環血中半減期が延長され、また腎クリアランスも減少し得る。
【0594】
キット
本明細書に記載の血漿カリクレイン結合タンパク質をキットで、例えばキットの構成要素として提供し得る。例えば、キットは(a)血漿カリクレイン結合タンパク質、例えば血漿カリクレイン結合タンパク質を含む組成物(例えば、医薬組成物)および任意に(b)情報資料を含む。情報資料は、本明細書に記載の方法および/または血漿カリクレイン結合タンパク質の使用(例えば、本明細書に記載の方法での)に関連する記述資料、説明資料、販売資料またはその他の資料であり得る。
【0595】
キットの情報資料はその形態が限定されない。一実施形態では、情報資料は、化合物の製造に関する情報、化合物の分子量、濃度、使用期限、バッチまたは製造地情報などを含み得る。一実施形態では、情報資料は、結合タンパク質を用いた疾患および状態、例えば血漿カリクレイン関連の疾患および状態の治療、予防または診断に関するものである。
【0596】
一実施形態では、情報資料は、本明細書に記載の方法を実施するのに適切な方法で、例えば適切な用量、剤形または投与様式(例えば、本明細書に記載の用量、剤形または投与様式)で血漿カリクレイン結合タンパク質を投与するための説明を含み得る。別の実施形態では、情報資料は、適切な対象、例えばヒト、例えば本明細書に記載の疾患または状態(例えば、血漿カリクレイン関連の疾患または状態)を有するかまたはその危険性のあるヒトに血漿カリクレイン結合タンパク質を投与するための説明を含み得る。例えば、資料は、本明細書に記載の疾患または状態、例えば血漿カリクレイン関連疾患を有する患者に血漿カリクレイン結合タンパク質を投与するための説明を含み得る。キットの情報資料はその形態が限定されない。多くの場合、情報資料、例えば説明書を印刷物として提供するが、コンピュータで読取り可能な資料のような他の形式であってもよい。
【0597】
血漿カリクレイン結合タンパク質は、任意の形態、例えば液体、乾燥または凍結乾燥形態で提供し得る。血漿カリクレイン結合タンパク質は、実質的に純粋および/または無菌であることが好ましい。血漿カリクレイン結合タンパク質を液体溶液で提供する場合、液体溶液は好ましくは水溶液であり、水溶液は無菌水溶液が好ましい。血漿カリクレイン結合タンパク質を乾燥形態で提供する場合、一般には適当な溶媒の添加により復元を行う。任意に溶媒、例えば滅菌水または緩衝液をキットに提供し得る。
【0598】
キットは、血漿カリクレイン結合タンパク質を含有する組成物のための容器を1つ以上含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、組成物および情報資料のための別々の容器、仕切り板または区画含む。例えば、組成物をボトル、バイアルまたはシリンジに収容し、情報資料を容器に付属させて収容し得る。他の実施形態では、キットの別々の要素を仕切られていない単一の容器内に収容する。例えば、組成物を、ラベル形態の情報資料を貼付したボトル、バイアルまたはシリンジに収容する。いくつかの実施形態では、キットは、それぞれが血漿カリクレイン結合タンパク質の1つ以上の単位投与剤形(例えば、本明細書に記載の剤形)を収容している個別の容器を複数(例えば、1パック)含む。例えば、キットは、それぞれが単回用量の血漿カリクレイン結合タンパク質を収容している複数のシリンジ、アンプル、ホイルパケットまたはブリスターパックを含む。キットの容器は、気密性、耐水性(例えば、水分の変化または蒸発に対して不透性)および/または遮光性であり得る。
【0599】
キットは、組成物の投与に適した装置、例えば、シリンジ、吸入器、ドロッパ(例えば、点眼器)、スワブ(例えば、綿スワブまたは木製スワブ)またはこれらのような任意の送達装置を任意に含む。一実施形態では、装置は定量された結合タンパク質を投与する埋込装置である。また本開示は、例えば本明細書に記載の構成要素を組み合わせてキットを提供する方法も特徴とする。
【0600】
治療
血漿カリクレインと結合するタンパク質、例えば本明細書に記載のタンパク質は、特にヒト対象における治療および予防に有用である。これらの結合タンパク質を、例えば血漿カリクレイン関連疾患を含めた各種疾患および状態を治療、予防および/または診断するべき対象に、あるいは例えばin vitroまたはex vivoで培養細胞に投与する。例えば、培養細胞から放出される血漿カリクレインの作用を、これらの結合タンパク質を用いて変化させる(Lillaら,J Biol Chem.284(20):13792-13803(2009))。治療には、疾患、疾患の症状または疾患の素因を軽減する、緩和する、変化させる、矯正する、改善する、向上させるまたはそれらに影響を与えるのに有効な量を投与することを含む。また治療により、疾患または障害の発症を遅延させ得る、例えば、発症を予防し得る、または悪化を予防し得る。
【0601】
本明細書で使用される、疾患の予防に有効な標的結合物質の量または結合物質の予防有効量は、対象への単回または複数回用量の投与で疾患、例えば本明細書に記載の疾患、例えば血漿カリクレイン関連疾患の発症または再発の予防または遅延に有効な標的結合物質、例えば血漿カリクレイン結合タンパク質、例えば本明細書に記載の抗血漿カリクレイン抗体の量を指す。
【0602】
血漿カリクレイン結合タンパク質およびその他の薬剤の投与方法は「医薬組成物」の箇所にも記載されている。使用する分子の適切な用量は、対象の年齢および体重、ならびに特定の使用薬物によって決まり得る。結合タンパク質を競合薬として使用し、例えば血漿カリクレインとその基質(例えば、第XII因子またはHMWK)間の望ましくない相互作用を阻害し低減し得る。血漿カリクレイン結合タンパク質の用量は、患者において、特に疾患部位での血漿カリクレインの活性を90%、95%、99%または99.9%阻止するのに十分な量であり得る。疾患に応じて、0.1、1.0、3.0、6.0または10.0mg/kgが必要とされ得る。150,000g/モル(2つの結合部位)の分子質量を有するIgGでは、上記用量は、血液体積5Lに対して約18nM、180nM、540nM、1.08μMおよび1.8μMの結合部位に相当する。
【0603】
一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質を用いて、例えばin vivoでの血漿カリクレインの活性を阻害する(例えば、血漿カリクレインの少なくとも1つの活性を阻害する、例えば、第XIIa因子および/またはブラジキニン産生を低減する)。結合タンパク質は単独で、または薬剤、例えば細胞毒性薬、細胞毒酵素もしくは放射性同位元素とコンジュゲートして使用し得る。この方法は、このような治療を必要とする対象に、結合タンパク質を単独で、または薬剤(例えば、細胞毒性薬)と結合させて投与することを含む。例えば、実質的に血漿カリクレインを阻害しない血漿カリクレイン結合タンパク質を使用して、毒素のような薬剤を含有するナノ粒子を血漿カリクレインに関連する細胞または組織に送達し、例えば、血漿カリクレイン関連疾患を治療する。
【0604】
血漿カリクレイン結合タンパク質は、血漿カリクレイン発現細胞を認識し、また血漿カリクレイン関連の疾患または状態と関連する(例えば、近接するまたは混ざり合っている)細胞と結合することができるため、血漿カリクレイン結合タンパク質を用いて、任意のそのような細胞の活性を阻害し(例えば、血漿カリクレインの少なくとも1つの活性を阻害する、例えば、第XIIa因子および/またはブラジキニン産生を低減する)、血漿カリクレイン関連疾患を抑制することができる。血漿カリクレイン活性の低減は、血漿カリクレイン関連疾患の発症および/または進行が血漿カリクレイン活性に依存し得る細胞を間接的に阻害し得る。
【0605】
結合タンパク質を用いて、血漿カリクレインが存在する細胞および組織に薬剤(例えば、各種細胞毒性薬および治療薬のいずれか)を送達し得る。薬剤の例としては、放射線を放出する化合物、植物、真菌または細菌起源の分子、生体タンパク質およびこれらの混合物が挙げられる。細胞毒性薬は、短距離放射線放射体毒素、例えば短距離高エネルギーα放射体のような、細胞内で作用する細胞毒性薬であり得る。
【0606】
血漿カリクレイン発現細胞を標的とするために、プロドラッグシステムを使用し得る。例えば、第一の結合タンパク質を、プロドラッグ活性化因子と近接したときだけ活性化されるプロドラッグとコンジュゲートする。プロドラッグ活性化因子を第二の結合タンパク質、好ましくは標的分子上の競合しない部位と結合する結合タンパク質とコンジュゲートする。2つの結合タンパク質が競合する結合部位または競合しない結合部位のどちらに結合するかは、従来の競合結合アッセイにより判定し得る。薬物とプロドラッグのペアの例は、Blakelyら,(1996)Cancer Research,56:3287 3292に記載されている。
【0607】
血漿カリクレイン結合タンパク質を直接in vivoで使用して、抗原発現細胞を天然の補体依存性細胞傷害(CDC)または抗体依存性細胞傷害(ADCC)を介して除去し得る。本明細書に記載の結合タンパク質は、補体結合エフェクタードメイン、例えばIgG1、IgG2もしくはIgG3由来のFc部分、または補体と結合するIgMの対応する部分などを含み得る。一実施形態では、標的細胞集団を本明細書に記載の結合物質および適当なエフェクター細胞でex vivo処置する。補体または補体を含有する血清を加えることにより、この処置を補完し得る。さらに、本明細書に記載の結合タンパク質で覆われた標的細胞の食作用を、補体タンパク質の結合により向上させ得る。別の実施形態では、補体結合エフェクタードメインを含む結合タンパク質で覆われた標的細胞を補体により溶解させる。
【0608】
血漿カリクレイン結合タンパク質の投与方法は「医薬組成物」の箇所に記載されている。使用する分子の適切な用量は、対象の年齢および体重、ならびに特定の使用薬物によって決まり得る。結合タンパク質を競合薬として使用し、例えば天然のまたは病的な作用物質と血漿カリクレインとの間の望ましくない相互作用を阻害または低減し得る。
【0609】
血漿カリクレイン結合タンパク質を用いて、高分子および微細分子、例えば遺伝子を遺伝子治療の目的で内皮または上皮の細胞内に送達して、血漿カリクレインを発現する組織だけを標的とすることができる。結合タンパク質を用いて、放射線を放出する化合物、植物、真菌または細菌起源の分子、生体タンパク質およびこれらの混合物を含めた各種細胞毒性薬を送達し得る。細胞毒性薬は、例えば本明細書に記載の短距離高エネルギーα放射体を含めた短距離放射線放射体毒素のような、細胞内で作用する細胞毒性薬であり得る。
【0610】
ポリペプチド毒素の場合、組換え核酸技術を用いて、翻訳融合物として結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)と細胞毒素(またはそのポリペプチド成分)とをコードする核酸を構築し得る。次いで組換え核酸を、例えば細胞内で発現させ、コードされている融合ポリペプチドを単離する。
【0611】
あるいは、血漿カリクレイン結合タンパク質を高エネルギー放射線放射体、例えば、ある部位に局在すると細胞径をいくらか消滅させる、γ放射体である131Iのような放射性同位元素と結合させ得る。例えば、Order,「Analysis,Results,and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy」,Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy,R.W.Baldwinら(編),pp303-316(Academic Press 1985)を参照されたい。その他の適当な放射性同位元素としては、212Bi、213Biおよび211Atのようなα放射体ならびに186Reおよび90Yのようなβ放射体が挙げられる。さらに、177Luもイメージング剤および細胞毒性薬の両方として使用し得る。
【0612】
131I、90Yおよび177Luで標識された抗体を使用する放射免疫療法(RIT)の臨床研究が盛んに行われている。これら3つの核種の物理的特性には大きな相違点があり、その結果、対象となる組織に最大放射線量を送達するためには、放射性核種の選択が非常に重要である。大型の腫瘍には、より高いベータエネルギー粒子の90Yが好ましいであろう。比較的低エネルギーのベータ粒子である131Iが望ましいが、放射ヨウ素標識分子のin vivoでの脱ハロゲン化が抗体の内部取り込みに非常に不利である。これに対して177Luは、わずか0.2~0.3mmの範囲の低エネルギーベータ粒子を有し、90Yに比べてかなり低い放射線量を骨髄に送達する。さらに、物理的半減期が長い(90Yに比べて)ため滞留時間が長い。その結果、より高活性の(mCi量の多い)177Luで標識された薬剤を比較的少ない放射線量で骨髄に投与することができる。各種癌の治療における177Lu標識抗体の使用について調べた臨床研究がいくつかある(Mulligan Tら,1995,Clin.Canc.Res.1:1447-1454;Meredith RFら,1996,J.Nucl.Med.37:1491-1496;Alvarez RDら,1997,Gynecol.Oncol.65:94-101)。
【0613】
疾患および状態の例
本明細書に記載の血漿カリクレイン結合タンパク質は、血漿カリクレイン活性が関与する疾患もしくは状態、例えば本明細書に記載の疾患もしくは状態の治療(もしくは予防)、またはこれらの疾患もしくは状態に関連した1つ以上の症状の治療(もしくは予防)に有用である。いくつかの実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、血漿カリクレイン結合IgGまたはFab)は血漿カリクレイン活性を阻害する。
【0614】
本明細書に記載の血漿カリクレイン結合タンパク質により治療(または予防)し得る上記疾患および状態の例としては、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄-変性脊椎疾患、動脈または静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、骨関節炎、血管炎、浮腫、遺伝性血管性浮腫、脳浮腫、肺塞栓症、脳卒中、心室補助装置またはステントにより誘発される凝血、頭部外傷または腫瘍周囲脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎および熱傷が挙げられる。また本明細書に記載の血漿カリクレイン結合タンパク質を用いて、創傷治癒を促進することもできる。また本明細書に記載の血漿カリクレイン結合タンパク質を、特に限定されないが血管新生促進性のブラジキニン産生のブロックを含む機序による、腫瘍学的治療として使用することもできる。
【0615】
治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質を、血漿カリクレイン活性が関与する疾患を有するかまたは有することが疑われる対象に投与することにより、疾患を治療する(例えば、疾患の症状または特徴を改善する、疾患進行を緩徐化、安定化および/または停止する)ことができる。
【0616】
血漿カリクレイン結合タンパク質を治療有効量で投与し得る。血漿カリクレイン結合タンパク質の治療有効量とは、対象を治療するのに、例えば、対象における疾患の少なくとも1つの症状を、そのような治療なしで予測されるよりも治癒、緩和、軽減または改善するのに、対象への単回または複数回用量の投与で有効な量のことである。組成物の治療有効量は、諸因子、例えば個人の病的状態、年齢、性別および体重、ならびに化合物が個人において所望の反応を誘発する能力などによって異なり得る。また治療有効量は、治療上有益な効果が組成物のいかなる有毒または有害な効果も上回る量でもある。治療有効量は、好ましくは、測定可能なパラメーターを未処置対象と比べて良好に調節する。化合物が測定可能なパラメーターに影響を与える(例えば、阻害する)能力は、ヒト疾患における有効性が予測される動物モデル系で評価することができる。
【0617】
最適な所望の反応(例えば、治療反応)を得るために投与レジメンを調整し得る。例えば、単回のボーラス投与を行うか、複数回分に分割した用量を徐々に投与するか、または緊急の治療状況による適応があれば用量を比例的に減少もしくは増加させ得る。非経口組成物は、投与および用量の一律化を容易にするために投与単位形態で製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される投与単位形態は、治療する対象への単位投与として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、所望の治療効果が得られるように計算した所定量の活性化合物を必要な医薬担体とともに含有する。
【0618】
関節リウマチ
関節リウマチ(RA)は自己免疫性の慢性炎症性疾患であり、関節の腫脹および疼痛を引き起こし、通常は関節破壊をもたらす。一般にRAは、疾患活動の「再燃」の間に疾患症状の寛解を挟む再発/寛解の経過をたどる。RAは、シェーグレン症候群(涙腺および唾液腺の炎症により引き起こされるドライアイおよび口内乾燥)、胸膜炎(深呼吸および咳の際に疼痛を引き起こす胸膜の炎症)、リウマチ小結節(肺内で発症する小結節部位の炎症)、心外膜炎(臥位または前傾姿勢の際に疼痛を引き起こす心膜の炎症)、フェルティ症候群(RAに伴って見られる脾腫および白血球減少症であり、対象は易感染性となる)および血管炎(血流を阻止することがある血管の炎症)を含めた数多くのさらなる炎症性疾患を伴う。血漿カリクレインが関節リウマチに関与すると考えられている。
【0619】
活動性RAの症状としては、疲労、食欲不振、低悪性度の発熱、筋肉および関節の痛みおよび硬直が挙げられる。筋肉および関節の硬直は通常、午前中および非活動期の後が最も顕著である。再燃時には、一般的には滑膜炎の結果として、関節が発赤したり、腫脹したり、疼痛を伴ったり、敏感になったりすることが多い。
【0620】
関節リウマチ治療には、薬剤の併用、安静、関節強化訓練および関節保護が含まれる。関節リウマチの治療では2つのクラスの薬剤、すなわち抗炎症性の「一次治療薬」および「疾患修飾性抗リウマチ薬」(DMARD)が用いられる。一次治療薬としては、NSAIDS(例えば、アスピリン、ナプロキセン、イブプロフェンおよびエトドラク)およびコルチゾン(副腎皮質ステロイド剤)が挙げられる。DMARD、例えば金(例えば、金塩、金チオグルコース、金チオリンゴ酸、経口金剤)、メトトレキサート、スルファサラジン、D-ペニシラミン、アザチオプリン、シクロホスファミド、クロラムブシル、およびシクロスポリン、レフルノミド、エタネルセプト、インフリキシマブ、アナキンラ、およびアダリムマブ、およびヒドロキシクロロキンなどは、疾患寛解を促進し進行性関節破壊を予防するが、DMARDは抗炎症剤ではない。
【0621】
本開示は、RAを有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより関節リウマチを治療する(例えば、1つ以上の症状を改善する、安定させるもしくは除去する、またはRA尺度の対象のスコアを改善するもしくは安定させる)方法を提供する。さらに、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を第二の治療法、例えば少なくとも1つの抗炎症性の「一次治療薬」(例えば、NSAIDおよび/またはコルチゾン)および/またはDMARDと併用して投与することによりRAを治療する方法を提供する。また本開示は、RA発症の危険性がある対象(例えば、RAまたはその遺伝的素因を有する家族がいる対象)に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、予防有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより関節リウマチまたはその症状を予防する方法も提供する。
【0622】
さらに、RAを有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより関節リウマチ関連の疾患(シェーグレン症候群、胸膜炎、肺リウマチ小結節、心外膜炎、フェルティ症候群および血管炎)を治療する(例えば、1つ以上の症状を改善する、安定させるまたは除去する)方法を提供する。
【0623】
RAおよびRAの症状の評価に有用な尺度としては、例えば、関節リウマチ重症度尺度(Rheumatoid Arthritis Severity Scale)(RASS;Bardwellら,(2002)Rheumatology 41(1):38-45)、SF-36関節炎に固有の健康指標(Arthritis Specific Health Index)(ASHI;Wareら,(1999)Med.Care.37(5 Suppl):MS40-50)、関節の炎影響測定尺度(Arthritis Impact Measurement Scales)または関節炎の影響測定尺度2(Arthritis Impact Measurement Scales2)(AIMSまたはAIMS2;Meenanら(1992)Arthritis Rheum.35(1):1-10);スタンフォード健康状態質問票(Stanford Health Assessment Questionnaire)(HAQ)、HAQIIまたは改訂HAQ(例えば、Pincusら(1983)Arthritis Rheum.26(11):1346-53を参照されたい)。
【0624】
治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質を送達する用量を決定するための指針は、通常はげっ歯類においてアジュバント中の自己または異種II型コラーゲンによる免疫化により誘導されるコラーゲン誘導性関節炎(CIA)のような関節リウマチの動物モデルから入手し得る(Williamsら,Methods Mol Med.98:207-16(2004))。
【0625】
痛風
痛風とは、体組織中に沈着した尿酸の結晶により生じる状態のことである。痛風は、体内での尿酸の過負荷および関節炎症(関節炎)発作の再発を特徴とする。慢性痛風により、尿酸の硬い塊が関節の内部および周辺に沈着したり、腎機能低下や腎臓結石が生じたりすることがある。痛風は、体の尿酸処理能力の遺伝的な異常に関係する場合が多い。尿酸は多くの食べ物の一部であるプリンの分解産物である。尿酸処理に異常があると、疼痛を伴う関節炎発作(痛風発作)、腎臓結石および尿酸結晶による腎臓のろ過細管の閉塞を引き起こし、腎臓不全に陥る可能性がある。患者によっては、関節炎や腎臓障害が起こらずに、血中尿酸レベルの上昇(高尿酸血症)だけが生じる場合もある。
【0626】
痛風の症状としては、例えば、罹患した足またはその他の身体部分の突然の激しい疼痛、腫脹、発赤、熱感および硬直ならびに低悪性度の発熱が挙げられる。
【0627】
痛風の治療法としては、例えば、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、コルヒチンおよび経口糖質コルチコイド、関節注射により投与する関節内糖質コルチコイド、キサンチンオキシダーゼ阻害剤(例えば、アロプリノール、フェブキソスタット)、尿酸排泄促進剤(例えば、プロベネシド、EDTA)、尿酸オキシダーゼ(例えば、ペグロチカーゼ)、炭酸水素ナトリウムならびに低プリン食が挙げられる。
【0628】
本開示は、痛風を有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより痛風を治療する(例えば、1つ以上の症状または悪化を改善する、安定させるまたは除去する)方法を提供する。さらに、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を、第二の治療法、例えば、NSAID、コルヒチン、経口糖質コルチコイド、関節注射により投与する関節内糖質コルチコイド、キサンチンオキシダーゼ阻害剤(例えば、アロプリノール、フェブキソスタット)、尿酸排泄促進剤(例えば、プロベネシド、EDTA)、尿酸オキシダーゼ(例えば、ペグロチカーゼ)、炭酸水素ナトリウムおよび/または低プリン食と併用して投与することにより痛風を治療する方法を提供する。また本開示は、痛風を発症する危険性のある対象(例えば、痛風またはその遺伝的素因を有する家族がいる対象)に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、予防有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより痛風またはその症状を予防する方法も提供する。
【0629】
治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質を送達する用量を決定するための指針は、痛風の動物モデルから入手してもよく、例えば、ReginatoおよびOlsen,Curr Opin Rheumatol.19(2):134-45(2007)ならびにそこで引用されている参考文献を参照されたい。
【0630】
腸疾患(IBD)
炎症性腸疾患(IBD)とは、大腸および場合によっては小腸の一群の炎症状態のことである。IBDの主要な形態はクローン病および潰瘍性大腸炎(UC)である。はるかに少ない例はIBDの他の形態:コラーゲン大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、空置大腸炎、ベーチェット症候群、感染性大腸炎および不確定大腸炎が占める。クローン病とUCの主な違いは炎症性変化の位置と性質である。クローン病は口から肛門まで消化管の任意の部分を冒し得る(飛び石病変)が、大部分の症例は回腸末端部から始まる。これに対し、潰瘍性大腸炎は結腸および直腸に限定さる。顕微鏡的には、潰瘍性大腸炎が粘膜(消化管の上皮層)に限定されるのに対し、クローン病は腸壁全体を冒す。最後に、クローン病および潰瘍性大腸炎では、異なる割合で腸以外の症状(例えば肝臓障害、関節炎、皮膚症状および眼障害など)が現れる。
【0631】
IBDの症状としては、腹痛、嘔吐、下痢、血便、体重減少、体重増加および各種愁訴または疾患(関節炎、壊疽性膿皮症、原発性硬化性胆管炎)が挙げられる。診断は、一般に病変部の生検を伴う大腸内視鏡検査により行う。稀に、特異な症状によりクローン病とも潰瘍性大腸炎とも診断が明確に下されない場合がある。このような場合、不確定大腸炎と診断され得る。
【0632】
IBDの治療では、重症度のレベルによって、症状をコントロールするために免疫抑制を必要とする場合がある。アザチオプリン、メトトレキサートまたは6-メルカプトプリンのような免疫抑制剤を使用し得る。より一般的には、IBDの治療にメサラミンの一種を必要とする。多くの場合、疾患再燃をコントロールするためにステロイド剤を使用するが、ステロイド剤はかつて維持薬として許容されていた。インフリキシマブのような生物学的製剤を用いて、クローン病または潰瘍性大腸炎の患者の治療が行われてきた。重症例では、外科手術、例えば腸切除術、狭窄形成術、または一時的もしくは恒久的な結腸フィステル形成術もしくは回腸フィステル形成術などが必要な場合もある。IBDの別の医学的治療法が様々な形態で存在するが、こうした方法は、長期間のステロイド曝露または外科的切除を避けるために、基礎となる病態のコントロールに焦点を当てる。通常、プレドニゾンのような抗炎症作用のある薬物を投与することにより治療を開始する。炎症が良好にコントロールされれば、患者は通常、疾患を寛解状態に維持するためにAsacol(メサラミン剤の1つ)のような軽い薬物に切り替えられる。良好にコントロールされなければ、上記免疫抑制剤とメサラミン(同様に抗炎症作用を有し得る)の組合せを患者に応じて投与したり、投与しなかったりする。
【0633】
本開示は、IBDを有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することによりIBDを治療する(例えば、1つ以上の症状を改善する、安定させるまたは除去する)方法を提供する。さらに、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を、第二の治療法、例えば、免疫抑制(例えば、アザチオプリン、メトトレキサート、6-メルカプトプリン)、メサラミン、ステロイドおよび/またはインフリキシマブと併用して投与することによりIBDを治療する方法を提供する。また本開示は、IBDを発症する危険性のある対象(例えば、IBDまたはその遺伝的素因を有する家族がいる対象)に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、予防有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することによりIBDまたはその症状を予防する方法も提供する。
【0634】
治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質を送達する用量を決定するための指針は、IBDの動物モデルから入手してもよく、例えば、米国特許第6,114,382号、国際公開第2004/071186号およびそこで引用されている参考文献に記載されているものを参照されたい。
【0635】
口腔粘膜炎
口腔粘膜炎は、通常は癌の化学療法および放射線療法の副作用として生じる口腔内粘膜の疼痛性炎症および潰瘍である。
【0636】
口腔粘膜炎の症状としては、例えば、潰瘍、辺縁部の紅斑症、発赤を伴う灼熱感、発話、摂食または開口時の困難、および味覚異常(味覚の変化)が挙げられる。
【0637】
口腔粘膜炎の治療法としては、口腔衛生(塩類口腔洗浄剤、GELCLAIR(登録商標)、CAPHOSOL(登録商標)、MUGARD(登録商標))、パリフェルミン(ヒトケラチノサイト増殖因子の一種)、サイトカインおよびその他の炎症調節剤(例えば、IL-1、IL-11、TGF-ベータ3)、アミノ酸補給(例えば、グルタミン)、ビタミン、コロニー刺激因子、凍結療法およびレーザー療法が挙げられる。
【0638】
本開示は、口腔粘膜炎を有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより口腔粘膜炎を治療する(例えば、1つ以上の症状を改善、低減もしくは除去する、または対象の粘膜炎尺度のスコアを安定させる)方法を提供する。さらに、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を、第二の治療法、例えば、口腔衛生(塩類口腔洗浄剤、GELCLAIR(登録商標)、CAPHOSOL(登録商標)、MUGARD(登録商標))、パリフェルミン(ヒトケラチノサイト増殖因子の一種)、サイトカインおよび/または炎症調節剤(例えば、IL-1、IL-11、TGF-ベータ3)、アミノ酸補給(例えば、グルタミン)、ビタミン、コロニー刺激因子、凍結療法および/またはレーザー療法と併用して投与することにより口腔粘膜炎を治療する方法を提供する。また本開示は、口腔粘膜炎を発症する危険性のある対象(例えば、化学療法もしくは放射線療法を受けたことがあるか、または現在受けている対象)に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、予防有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより口腔粘膜炎またはその症状を予防する方法も提供する。
【0639】
口腔粘膜炎の評価に有用な尺度としては、世界保健機関(WHO)経口毒性スコア(Handbook for reporting results of cancer treatment.Geneva,Switzerland:World Health Organization;1979:15-22)、口腔粘膜炎の米国国立癌研究所共通有害事象基準(NCI-CTC)(National Cancer Institute Common Toxicity Criteria.Version 2.0,June 1,1999,Sonisら,Cancer.85:2103-2113(1999))および口腔粘膜炎評価尺度(Oral Mucositis Assessment Scale)(OMAS)が挙げられる。
【0640】
治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質を送達する用量を決定するための指針は、造血幹細胞移植の前処置レジメンにより誘導される口腔粘膜炎の動物モデル(Chenら,Zhonghua Kou Qiang Yi Xue Za Zhi.42(11):672-6(2007))のような口腔粘膜炎の動物モデルから入手し得る。
【0641】
神経障害性疼痛
神経障害性疼痛は、通常は組織損傷を伴う複雑な慢性の疼痛状態である。神経障害性疼痛では、神経線維自体が損傷、機能障害または傷害を有し得る。これらの損傷した神経線維は他の疼痛中枢へ誤ったシグナルを送る。神経線維傷害による影響としては、傷害部位および傷害周辺部の両方における神経機能の変化が挙げられる。
【0642】
神経障害性疼痛の症状としては、例えば、電撃痛、灼熱痛、刺痛および痺れが挙げられる。
【0643】
神経障害性疼痛の治療法としては、例えば、薬物療法(例えば、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)(例えば、ALEVE(登録商標)、MOTRIN(登録商標)またはモルヒネ)、抗痙攣剤および抗うつ薬)および侵襲製または埋込装置(例えば、電気刺激)が挙げられる。
【0644】
本開示は、神経障害性疼痛を有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより神経障害性疼痛を治療する(例えば、1つ以上の症状を改善、低減もしくは除去するか、または対象の疼痛スコアを安定させる)方法を提供する。さらに、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を、第二の治療法、例えば、例えば、非外科的治療((例えば、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)(例えば、ALEVE(登録商標)、MOTRIN(登録商標)またはモルヒネ)、抗痙攣薬剤および/または抗うつ薬)および/または侵襲性または埋込装置(例えば、電気刺激)と併用して投与することにより神経障害性疼痛を治療する方法を提供する。また本開示は、神経障害性疼痛を発症する危険性のある対象(例えば、組織傷害を経験したことのある対象)に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、予防有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより神経障害性疼痛またはその症状を予防する方法も提供する。
【0645】
神経障害性疼痛の評価に有用な尺度としては、例えば、Wong-Baker FACES疼痛評価尺度(Wong-Baker FACES Pain Rating Scale)(Wong-Baker FACES Pain Rating Scale Foundation)、視覚的アナログ尺度(Visual analog scale)(VAS)(Huskisson,J.Rheumatol.9(5):768-9(1982))、McGill疼痛質問表(McGill Pain Questionnaire)(MPQ)(Melzack,Pain 1(3):277-99(1975))、記述子差異尺度(Descriptor differential scale)(DDS)(GracelyおよびKwilosz,Pain 35(3):279-88(1988))、Faces疼痛尺度(Faces Pain Scale)-改訂版(FPS-R)(Hicksら,Pain 93(2):173-83(2001))、数的11ポイントボックス(Numerical 11 point box)(BS-11)(Jensenら,Clin J Pain 5(2):153-9(1989))、数的評価尺度(Numeric Rating Scale)(NRS-11)(Hartrickら,Pain Pract 3(4):310-6(2003))、痛覚計疼痛指標(Dolorimeter Pain Index)(DPI)(Hardyら,(1952).Pain Sensations and Reactions.Baltimore:The Williams & Wilkins Co.)および簡易疼痛調査票(Brief Pain Inventory)(BPI)(CleelandおよびRyan Ann.Acad.Med.Singap.23(2):129-38(1994))が挙げられる。
【0646】
治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質を送達する用量を決定するための指針は、神経障害性疼痛の動物モデルから入手してもよく、例えば、Martinら,Methods Mol Med.84:233-42(2003)およびそこで引用されている参考文献を参照されたい。
【0647】
炎症性疼痛
炎症性疼痛は、細胞レベルでの組織の統合性に対する傷害、例えば貫通創傷、熱傷、超低温、骨折、関節炎、自己免疫状態、過度の伸展、感染症および血管狭窄などにより引き起こされる。炎症では、プロスタグランジンおよびブラジキニンを含めた広範な炎症性分子が侵害受容器の感度の変化を誘発し維持する複雑な神経免疫相互作用の結果として、一次痛覚過敏が生じる。
【0648】
炎症性疼痛の治療法としては、例えば、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)および副腎皮質ステロイド剤が挙げられる。
【0649】
本開示は、炎症性疼痛を有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより炎症性疼痛を治療する(例えば、1つ以上の症状を改善、低減または除去する)方法を提供する。さらに、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を、第二の治療法、例えば、例えば、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)および/または副腎皮質ステロイド剤と併用して投与することにより炎症性疼痛を治療する方法を提供する。また本開示は、炎症性疼痛を発症する危険性のある対象(例えば、傷害、例えば、貫通創傷、熱傷、超低温、骨折、関節炎、自己免疫状態、過度の伸展または感染症などを経験したことがある対象)に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、予防有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより炎症性疼痛またはその症状を予防する方法も提供する。
【0650】
炎症性疼痛の評価に有用な尺度としては、例えば、Wong-Baker FACES疼痛評価尺度(Wong-Baker FACES Pain Rating Scale)(Wong-Baker FACES Pain Rating Scale Foundation)、視覚的アナログ尺度(Visual analog scale)(VAS)(Huskisson,J.Rheumatol.9(5):768-9(1982))、McGill疼痛質問表(McGill Pain Questionnaire)(MPQ)(Melzack,Pain 1(3):277-99(1975))、記述子差異尺度(Descriptor differential scale)(DDS)(GracelyおよびKwilosz,Pain 35(3):279-88(1988))、Faces疼痛尺度(Faces Pain Scale)-改訂版(FPS-R)(Hicksら,Pain 93(2):173-83(2001))、数的11ポイントボックス(Numerical 11 point box)(Jensenら,Clin J Pain 5(2):153-9(1989))、数的評価尺度(Numeric Rating Scale)(Hartrickら,Pain Pract 3(4):310-6(2003))、痛覚計疼痛指標(Dolorimeter Pain Index)(Hardyら,(1952).Pain Sensations and Reactions.Baltimore:The Williams & Wilkins Co.)および簡易疼痛調査票(Brief Pain Inventory)(BPI)(CleelandおよびRyan Ann.Acad.Med.Singap.23(2):129-38(1994))が挙げられる。
【0651】
治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質を送達する用量を決定するための指針は、慢性炎症性疼痛の動物モデル(Wilsonら,Eur J Pain.10(6):537-49(2006))ならびに疼痛および痛覚過敏の炎症性モデル(RenおよびDubner,ILAR J.40(3):111-118(1999))のような炎症性疼痛の動物モデルから入手し得る。
【0652】
脊柱管狭窄症
脊柱管狭窄症は、脊柱管が狭窄して脊髄と神経を圧迫する医学的状態である。これは通常、加齢に伴って生じる一般的な脊髄変性によるものである。また脊柱管狭窄症は、脊椎椎間板ヘルニア、骨粗鬆症または腫瘍が原因で起こることもある。脊柱管狭窄症は、頸椎、胸椎または腰椎を冒し得る。同一患者で3か所すべてに脊柱管狭窄症が存在する場合もある。
【0653】
脊柱管狭窄症の症状としては、例えば、下肢の疼痛または痙攣、背部および臀部の放散痛、頸部および肩部の疼痛、バランス喪失、ならびに腸または膀胱機能の喪失(馬尾症候群)が挙げられる。
【0654】
脊柱管狭窄症の治療法としては、例えば、非外科的治療(例えば、理学療法、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)(例えば、アスピリン、イブプロフェンおよびインドメタシン)、鎮痛剤(例えば、アセトアミノフェン)、コンドロイチン硫酸、グルコサミン、安静または活動制限、バックブレースまたはコルセット、硬膜外ステロイド注射(例えば、副腎皮質ステロイド剤))および外科手術(例えば、除圧椎弓切除術、椎弓切開術および癒合術)が挙げられる。
【0655】
本開示は、脊柱管狭窄症を有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより脊柱管狭窄症を治療する(例えば、1つ以上の症状を改善、低減または除去する)方法を提供する。さらに、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を、第二の治療法、例えば、例えば、非外科的治療(例えば、理学療法および/または非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)(例えば、アスピリン、イブプロフェンまたはインドメタシン)、鎮痛剤(例えば、アセトアミノフェン)、コンドロイチン硫酸、グルコサミン、安静または活動制限、バックブレースまたはコルセット、硬膜外ステロイド注射(例えば、副腎皮質ステロイド剤)および/または外科手術(例えば、除圧椎弓切除術、椎弓切開術および/または癒合術)と併用して投与することにより脊柱管狭窄症を治療する方法を提供する。また本開示は、脊柱管狭窄症を発症する危険性のある対象(例えば、脊髄変性を有する対象)に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、予防有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより脊柱管狭窄症またはその症状を予防する方法も提供する。
【0656】
治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質を送達する用量を決定するための指針は、腰部脊柱管狭窄症のモデル(Sekiguchiら,Spine 29,1105-1111(2004))のような脊柱管狭窄症の動物モデルから入手し得る。
【0657】
動脈および静脈血栓症
動脈血栓症とは、動脈内で血栓が形成されることである。ほとんどの場合、動脈血栓症はアテロームの破裂の後に生じ、このためアテローム血栓症と呼ばれる。
【0658】
動脈血栓症は、脳卒中および心筋梗塞を含めた数多くの疾患と関連する。血栓性脳卒中では、血栓(血餅)は通常、アテローム性動脈硬化プラークの周囲に形成される。動脈の閉塞が緩やかなため、症候性血栓性脳卒中の発症は遅くなる。血栓性脳卒中は2つのカテゴリー、すなわち大血管疾患および小血管疾患に分けることができる。前者は、内頸動脈、椎骨動脈およびウィリス輪のような血管に影響を与える。後者は、Willis輪の分岐のような小血管に影響を与え得る。心筋梗塞(MI)は、多くの場合は血栓による冠動脈の閉塞を原因とする、梗塞(虚血に起因する組織の死)によって引き起こされる。救急医療を直ちに受けなければ、MIはすぐに致命的となり得る。
【0659】
静脈血栓とは、静脈内で形成される血餅のことである。静脈内で形成された血餅がちぎれると、右心に運ばれてから肺の中へ運ばれることがある。このようにして血栓の破片が運ばれることが塞栓症であり、塞栓性となる血栓を形成するプロセスが血栓塞栓症と呼ばれる。肺に留まる塞栓症が肺塞栓症(PE)である。肺塞栓は非常に重篤な状態であり、速やかに認識し治療しなければ致命的となり得る。
【0660】
表在性静脈血栓症は不快感を引き起こすことはあるが、一般的には重篤な結果をもたらすことはなく、下肢の深部静脈または骨盤静脈で形成される深部静脈血栓症(DVT)とは異なる。心房または心室中隔欠損症の患者では、塞栓が動脈系に入って静脈起源の全身性塞栓症が生じ得る。このような事象は奇異性塞栓症と呼ばれる。
【0661】
動脈および/または静脈血栓症の予防法としては、薬物療法(例えば、抗凝固剤(例えば、ヘパリン)、アスピリンおよびビタミンE)および機械的方法(例えば、機械的下肢ポンプ(空気圧ストッキング))が挙げられる。
【0662】
本開示は、動脈および/または静脈血栓症を有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより動脈および/または静脈血栓症を治療する(例えば、1つ以上の症状を改善、低減または除去する)方法を提供する。さらに、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を、第二の治療法、例えば、抗凝固剤(例えば、ヘパリン)、アスピリンおよび/またはビタミンE、ならびに/あるいは機械的方法(例えば、機械的下肢ポンプ(空気圧ストッキング)と併用して投与することにより動脈および/または静脈血栓症を治療する方法を提供する。また本開示は、動脈および/または静脈血栓症を発症する危険性のある対象(例えば、脳卒中または心筋梗塞を経験したことがある対象)に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、予防有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより動脈および/または静脈血栓症あるいはその症状を予防する方法も提供する。
【0663】
治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質を送達する用量を決定するための指針は、動脈または静脈血栓症の動物モデル、例えばdouble-tuck動脈血栓症モデル(Gomez-Jorgeら,J.Vasc.Inter.Rad.9(4):633-638(1998)、静脈血流が低流量状態であるラット静脈血栓症モデル(Fredrichら,Blood Coagul Fibrinolysis.5(2):243-8(1994))ならびに静脈血栓症および自然発症肺塞栓症のイヌモデル(Frisbiel,Spinal Cord 43,635-639(2005))などから入手し得る。
【0664】
術後イレウス
術後イレウスとは、通常は腹部外科手術後に、腸の一部分が一時的に麻痺することである。術後イレウスは一般に腹部外科手術の24~72時間後に起こる。
【0665】
術後イレウスの症状としては、例えば、中等度の広汎性の腹部不快感、便秘症、腹部膨満、嘔気もしくは嘔吐、腸運動欠如および/または鼓腸、ならびに過剰なおくびが挙げられる。
【0666】
術後イレウスの治療法としては、例えば、手術部分がある部位の聴診により蠕動音が聴取されるまでの絶食(nil per os)(NPO、すなわち「口から何も摂取しない」)、経鼻胃吸引、非経口摂取および薬物療法(例えば、ラクツロースおよびエリスロマイシン)が挙げられる。
【0667】
本開示は、術後イレウスを有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより術後イレウスを治療する(例えば、1つ以上の症状を改善、低減または除去する)方法を提供する。さらに、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を、第二の治療法、例えば、絶食、経鼻胃吸引、非経口摂取および/または薬物療法(例えば、ラクツロースおよび/またはエリスロマイシン)と併用して投与することにより術後イレウスを治療する方法を提供する。また本開示は、術後イレウスを発症する危険性のある対象(例えば、腹部外科手術を受けた対象)に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、予防有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより術後イレウスまたはその症状を予防する方法も提供する。
【0668】
治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質を送達する用量を決定するための指針は、術後イレウスの動物モデル、例えば歪みゲージ変換器を用いて覚醒ラットの術後イレウスを研究するためのモデル(Hugeら,J Surg Res.74(2):112-8(1998))などから入手し得る。
【0669】
大動脈瘤
大動脈瘤は、通常その位置での大動脈壁の根本的な脆弱性を示す任意の大動脈腫脹(拡張または動脈瘤)を表す一般用語である。大動脈瘤のタイプには、大動脈根動脈瘤、胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤および胸腹部大動脈瘤がある。
【0670】
無傷である大動脈瘤のほとんどは症状を引き起こさない。これらが拡張すると、例えば、不安またはストレス感、嘔気または嘔吐、冷や汗、速い心拍数、腹部疼痛、背部痛、下肢疼痛または麻痺、結節性紅斑(通常、足首近辺で見られる下肢病変)、および大動脈弓を回る左側の反回喉頭神経が伸展することによる嗄声を含めた、大動脈瘤の症状が生じ得る。動脈瘤が破裂すると、激痛および大量の内出血が生じる場合があり、直ちに治療を行わなければ致命的となる。
【0671】
大動脈瘤の治療法としては、例えば、薬物療法、外科的治療および血管内治療が挙げられる。破裂の危険性があまり高くない小型の動脈瘤は、ベータ遮断剤のような高血圧治療薬またはマトリックスメタロプロテイナーゼ-9阻害のためのドキシサイクリンで治療し得る。外科的治療は通常、大動脈の拡張部分の切開および人工(DacronまたはGore-tex)パッチチューブの挿入を含む。観血手術による修復に代わる低侵襲性の血管内治療は、経皮法による(通常、大腿動脈から)大動脈の疾患部位への血管内ステントの留置を含む。
【0672】
本開示は、大動脈瘤を有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより大動脈瘤を治療する(例えば、1つ以上の症状を安定させる、低減するまたは除去する)方法を提供する。さらに、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を、第二の治療法、例えば、薬物療法(例えば、高血圧治療薬(例えば、ベータ遮断剤)またはドキシサイクリン)、外科手術および/または血管内治療と併用して投与することにより大動脈瘤を治療する方法を提供する。また本開示は、大動脈瘤を発症する危険性のある対象(例えば、高血圧を有する対象)に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、予防有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより大動脈瘤またはその症状を予防する方法も提供する。
【0673】
治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質を送達する用量を決定するための指針は、大動脈瘤の動物モデル、例えば、腔内エラスターゼ注入と管腔外塩化カルシウム曝露を組み合わせて用いたラット腹部大動脈瘤モデル(Tanakaら,J Vasc Surg.50(6):1423-32(2009))から入手し得る。
【0674】
骨関節炎
骨関節炎は変形性関節症としても知られ、1つ以上の関節の破壊およびその結果としての軟骨喪失を特徴とする。骨関節炎は、関節内の骨端を保護する軟骨が徐々に劣化して生じる。軟骨の滑らかな表面が粗くなり刺激が生じる。軟骨が完全に摩滅すると骨端が損傷する。通常、手、足、脊椎および大きな体重がかかる関節(臀部および膝など)が骨関節炎に罹患する。
【0675】
骨関節炎の症状としては、例えば、疼痛、圧痛、硬直、柔軟性の喪失、きしむような感覚および骨棘が挙げられる。
【0676】
骨関節炎の治療法としては、保存的手段(例えば、安静、減量、理学療法および作業療法)および薬物療法(例えば、アセトアミノフェン、関節上の皮膚への鎮痛クリーム剤(例えば、カプサイシン、サリシン、サリチル酸メチルおよびメントール)の塗布、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナブメトンおよびナプロキセン)およびCox‐2阻害剤が挙げられる。
【0677】
本開示は、骨関節炎を有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより骨関節炎を治療する(例えば、1つ以上の症状を安定させる、低減するもしくは除去する、または対象の骨関節炎尺度を安定させる)方法を提供する。さらに、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を、第二の治療法、例えば、保存的手段(例えば、安静、減量、理学療法および作業療法)および/または薬物療法(例えば、アセトアミノフェン、局所鎮痛クリーム剤、NSAID(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナブメトンまたはナプロキセン)および/またはCox‐2阻害剤と併用して投与することにより骨関節炎を治療する方法を提供する。また本開示は、骨関節炎を発症する危険性のある対象(例えば、関節損傷を有したことのある対象)に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、予防有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより骨関節炎またはその症状を予防する方法も提供する。
【0678】
骨関節炎の評価に有用は尺度としては、例えば、膝損傷および骨関節炎の結果スコア(Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score)(KOOS;Roosら(1998)J.Orthop.Sports Phys.Ther.28(2):88-96)、西オンタリオ・マクマスター大学骨関節炎指標(Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthrtis Index)(WOMAC;Roosら(2003)Health Qual.Life Outcomes 1(1):17)および36項目簡易式全般的健康状態尺度(36-item Short Form General Health Scale)(SF-36 GHS)、ならびに当該技術分野で公知のその他の評価ツールが挙げられる。
【0679】
治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質を送達する用量を決定するための指針は、骨関節炎の動物モデル、例えば、大腿脛骨関節内へのモノヨード酢酸(MIA)注射によりヒト骨関節炎で見られるものと同様の関節軟骨の喪失を促進したげっ歯類(Guzmanら Toxicol Pathol.31(6):619-24(2003))および前十字靭帯(ACL)切断により骨関節炎の誘発したイヌ(FifeおよびBrandt,J Clin Invest.84(5):1432-1439(1989))から入手し得る。
【0680】
血管炎
血管炎は、炎症性の血管破壊を特徴とする異種の疾患からなる群を指す。動脈も静脈もともに罹患し得る。リンパ管炎が血管炎の一種と見なされる場合もある。血管炎は、主に白血球の移動とその結果による損傷に起因する。血管炎は、根本原因、罹患している血管の位置、または血管の種類もしくは大きさによって分類することができる。血管炎は数多くのさらなる疾患および状態、例えば、川崎病、ベーチェット病、結節性多発動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、クリオグロブリン血症、高安動脈炎、チャーグ・ストラウス症候群、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、ヘノッホ‐シェーンライン紫斑病、リウマチ性疾患(例えば、関節リウマチおよび全身性エリテマトーデス)、癌(例えば、リンパ腫)、感染症(例えば、C型肝炎)、化学物質および薬物(例えば、アンフェタミン、コカインおよび主成分として炭疽防御抗原を含有する炭疽ワクチン)への曝露に関連する。
【0681】
血管炎の症状としては、例えば、発熱、体重減少、触知可能な紫斑、網状皮斑、筋肉痛または筋炎、関節痛または関節炎、多発性単神経炎、頭痛、脳卒中、耳鳴、視力低下、急性視力障害、心筋梗塞、高血圧症、壊疽、鼻出血、血の混じった咳、肺浸潤、腹部疼痛、血便、穿孔および糸球体腎炎が挙げられる。
【0682】
血管炎の治療法としては、例えば、コルチゾン関連薬物療法(例えば、プレドニゾン)および免疫抑制薬(例えば、シクロホスファミド)が挙げられる。
【0683】
本開示は、血管炎を有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより血管炎を治療する(例えば、1つ以上の症状を安定させる、改善するもしくは除去する、または対象の血管炎尺度のスコアを安定させる)方法を提供する。さらに、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を、第二の治療法(例えば、コルチゾン関連薬物療法(例えば、プレドニゾン)および/または免疫抑制薬(例えば、シクロホスファミド)と併用して投与することにより血管炎を治療する方法を提供する。また本開示は、血管炎を発症する危険性のある対象(例えば、川崎病、ベーチェット病、結節性多発動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、クリオグロブリン血症または高安動脈炎などに罹患したことがある対象)に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、予防有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより血管炎またはその症状を予防する方法も提供する。
【0684】
本開示はまた、全身性エリテマトーデス関連の血管炎を有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより全身性エリテマトーデス関連の血管炎を治療する(例えば、1つ以上の症状を安定させる、低減するもしくは除去する、または患者の血管炎尺度のスコアを安定させる)方法も提供する。さらに、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を、第二の治療法、例えば、コルチゾン関連薬物療法(例えば、プレドニゾン)および/または免疫抑制薬(例えば、シクロホスファミド)と併用して投与することにより全身性エリテマトーデス関連の血管炎を治療する方法を提供する。
【0685】
さらに、血管炎関連の疾患(川崎病、ベーチェット病、結節性多発動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、クリオグロブリン血症、高安動脈炎、チャーグ・ストラウス症候群、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、ヘノッホ‐シェーンライン紫斑病、リウマチ性疾患(例えば、関節リウマチおよび全身性エリテマトーデス)、癌(例えば、リンパ腫)、感染症(例えば、C型肝炎)、化学物質および薬物(例えば、アンフェタミン、コカインおよび主成分として炭疽防御抗原を含有する炭疽ワクチンへの曝露))を有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより血管炎関連の疾患を治療する(例えば、1つ以上の症状を改善、低減または除去する)方法を提供する。また本開示は、血管炎関連の疾患を発症する危険性のある対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、予防有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより血管炎関連の疾患またはその症状を予防する方法も提供する。
【0686】
骨関節炎の評価に有用な尺度としては、例えば、Birmingham血管炎活動性スコア(Birmingham Vasculitis Activity score)(BVAS)第3版(Mukhtyarら Ann Rheum Dis.68(12):1827-32(2009))および当該技術分野で公知のその他の評価ツールが挙げられる。
【0687】
治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質を送達する用量を決定するための指針は、血管炎の動物モデルから入手してもよく、例えば、Katzら,Clin Rev Allergy Immunol.35(1-2):11-8(2008)およびそこで引用されている参考文献に記載されているものを参照されたい。
【0688】
頭部外傷
頭部外傷は、脳への傷害を含み得るかまたは含み得ない頭部への外傷を指す。頭部外傷のタイプには、脳振盪、硬膜外血腫、硬膜下血腫、脳挫傷およびびまん性軸索損傷がある。
【0689】
頭部外傷の症状としては、例えば、昏睡、錯乱、傾眠、人格変化、発作、嘔気および嘔吐、頭痛、および患者に意識はあるが後に悪化する意識清明期、脳脊髄液漏出、目に見える頭部または顔面の変形または陥没(眼を動かすことができないまたは眼が片側に逸れていれば、折れた顔面骨が眼筋を神経支配する神経を圧迫していることを示す場合がある)、頭皮または顔面の創傷または打撲、頭蓋底骨折、乳様突起の皮下出血、鼓室内出血、脳脊髄液鼻漏および耳漏が挙げられる。
【0690】
頭部外傷の治療法としては、例えば、頭蓋内圧上昇のコントロール(例えば、鎮静、麻痺剤、脳脊髄液分流)、減圧開頭術、バルビツール酸昏睡、高張食塩水および低体温法が挙げられる。
【0691】
本開示は、頭部外傷を有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより頭部外傷を治療する(例えば、1つ以上の症状を安定させる、低減するもしくは除去する、または対象の頭部外傷尺度のスコアを安定させる)方法を提供する。さらに、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を、第二の治療法、例えば、頭蓋内圧上昇のコントロール(例えば、鎮静、麻痺剤および/または脳脊髄液分流)、減圧開頭術、バルビツール酸昏睡、高張食塩水および/または低体温法と併用して投与することにより頭部外傷を治療する方法を提供する。また本開示は、頭部外傷を発症する危険性のある対象(例えば、危険な活動またはコンタクトスポーツに参加する対象)に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、予防有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより痛風またはその症状を予防する方法も提供する。
【0692】
頭部外傷および頭部外傷の症状の評価に有用な尺度としては、例えば、Glasgow昏睡尺度(Glasgow Coma Scale)(Teasdale and Jennett,Lancet 13;2(7872):81-4(1974)),および当該技術分野で公知のその他の評価ツールが挙げられる。
【0693】
治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質を送達する用量を決定するための指針は、頭部外傷の動物モデルから入手してもよく、例えば、Cernak,NeuroRx.2(3):410-422(2005)に記載されているものおよびそこで引用されている参考文献を参照されたい。
【0694】
脳浮腫
脳浮腫とは、脳の細胞内および/または細胞外間隙に水分が過剰に蓄積されることである。脳浮腫のタイプには、例えば、血管原性脳浮腫、細胞傷害性脳浮腫、浸透圧性脳浮腫および間質性脳浮腫がある。
【0695】
血管原性脳浮腫は、血液脳関門(BBB)を構成する内皮のタイトジャンクションの破壊が原因である。これにより、通常は遮断される血管内のタンパク質および液体が脳実質の細胞外間隙内に侵入することが可能となる。血漿成分が一度BBBを横断すると、浮腫が広がり、その広がりは極めて急速かつ広範なものとなり得る。白質内に侵入した水分は線維路に沿って細胞外へ移動し、灰白質にも影響を与え得る。このタイプの浮腫は、外傷、腫瘍、局所的炎症、脳虚血後期および高血圧性脳症に対する反応として見られる。BBB機能障害に関与する機序の一部には、動脈高血圧または外傷による物理的破壊、腫瘍により促進される血管作動性および内皮破壊性の化合物(例えば、アラキドン酸、興奮性神経伝達物質、エイコサノイド、ブラジキニン、ヒスタミンおよびフリーラジカル)の放出がある。血管原性のいくつかの特殊な下位カテゴリーとして、静水学的脳浮腫、脳癌による脳浮腫、高地脳浮腫が挙げられる。
【0696】
細胞傷害性脳浮腫は、細胞代謝が乱れることでグリア細胞膜のナトリウムおよびカリウムポンプが不適切に機能することが原因である。その結果、細胞内にナトリウムおよび水分が保持される。細胞傷害性浮腫は、各種中毒(ジニトロフェノール、トリエチルスズ、ヘキサクロロフェン、イソニアジド)、ライ症候群、重度の低体温症、早期虚血、脳症、早期脳卒中または低酸素症、心停止、偽性脳腫瘍および脳毒素において見られる。
【0697】
浸透圧性脳浮腫は、過剰な水分摂取(または低ナトリウム血症)、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)、血液透析、または高浸透圧性高血糖状態(HHS)(以前は高浸透圧性非ケトン性アシドーシス(HONK))における血糖の急激な低下により、血漿が希釈され、脳浸透圧が血清浸透圧を上回って異常な圧力が生じたときに起こる。
【0698】
間質性脳浮腫は閉塞性水頭症で生じる。この形態の浮腫は、脳脊髄液(CSF)脳関門が破裂してCSFが脳室上皮を横断することにより、CSFが脳へ侵入して白質の細胞外間隙内に広がることが原因である。
【0699】
脳浮腫(例えば、腫瘍周囲脳浮腫)の症状としては、例えば、頭痛、協調運動障害(運動失調)、脱力、ならびに見当識障害、記憶喪失、幻覚、精神病的行動および昏睡を含めた意識レベルの低下が挙げられる。
【0700】
脳浮腫(例えば、腫瘍周囲脳浮腫)の治療法としては、例えば、薬物療法(例えば、デキサメタゾン、マンニトール、利尿剤)および外科的減圧術が挙げられる。
【0701】
本開示は、脳浮腫(例えば、腫瘍周囲脳浮腫)を有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより脳浮腫(例えば、腫瘍周囲脳浮腫)を治療する(例えば、1つ以上の症状を安定させる、低減するまたは除去する)方法を提供する。さらに、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を、第二の治療法、例えば、薬物療法(例えば、デキサメタゾン,マンニトールおよび/または利尿剤)および/または外科的減圧術と併用して投与することにより脳浮腫(例えば、腫瘍周囲脳浮腫)を治療する方法を提供する。また本開示は、脳浮腫を発症する危険性のある対象(例えば、脳浮腫であると診断された対象)に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、予防有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより脳浮腫またはその症状を予防する方法も提供する。
【0702】
治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質を送達する用量を決定するための指針は、脳浮腫の動物モデル、例えば、虚血部位に再循環を引き起こし得るラット脳塞栓症モデル(Koizumiら,Jpn J Stroke 8:1-8(1986))から入手し得る。
【0703】
敗血症
敗血症とは、全身の炎症状態、および既知のまたは疑わしい感染症の存在を特徴とする重篤な医学的状態のことである。この免疫応答は、血液、尿、肺、皮膚またはその他の組織中の微生物によって引き起こされ、急性期タンパク質の広範囲な活性化を生じて補体系および凝固経路に影響を与え、続いて血管系および諸器官の損傷を引き起こし得る。様々なレベルの敗血症としては、全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症(確認されている感染過程に応答したSIRS)、重度敗血症(器官の機能不全、低灌流または低血圧症を伴う敗血症)および敗血症性ショック(適切な輸液蘇生に対して難治性である動脈性低血圧症または低灌流異常を伴う敗血症)が挙げられる。
【0704】
敗血症の症状としては、例えば、感染症に関連した一般的症状、全身に現れる急性炎症、低体温または発熱、頻拍、頻呼吸または過換気による低炭酸症、白血球減少症、白血球増加症、桿状核球血症および器官(例えば、肺脳、肝臓、腎臓および/または心臓)機能不全が挙げられる。
【0705】
敗血症の治療法としては、例えば、抗生物質、昇圧薬、インスリン、副腎皮質ステロイド剤、ドロトレコギンアルファ、感染した体液収集物の外科的排膿、補液および器官機能不全の適当な補助(例えば、腎不全における血液透析、肺機能不全における機械的換気、血液製剤の輸注、ならびに循環不全の薬物および輸液療法)が挙げられる。蘇生への全身的アプローチである早期目標指向療法を用いて、重度の敗血症および敗血症性ショックを治療し得る。
【0706】
本開示は、敗血症を有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより敗血症を治療する(例えば、1つ以上の症状を安定させる、低減するもしくは除去する、または対象の敗血症尺度のスコアを安定させる)方法を提供する。さらに、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を、第二の治療法、例えば、抗生物質、昇圧薬、インスリン、副腎皮質ステロイド剤、ドロトレコギンアルファ、感染した体液収集物の外科的排膿、補液および器官機能不全の適当な補助(例えば、腎不全における血液透析、肺機能不全における機械的換気、血液製剤の輸注ならびに/あるいは循環不全の薬物および/または輸液療法)ならびに/あるいは早期目標指向療法(EGDT)と併用して投与することにより痛風を治療する方法を提供する。また本開示は、敗血症を発症する危険性のある対象(例えば、感染症であると診断された対象)に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、予防有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより敗血症またはその症状を予防する方法も提供する。
【0707】
敗血症および敗血症の症状の評価に有用な尺度としては、例えば、Baltimore敗血症尺度(Baltimore Sepsis Scale)(Meekら J Burn Care Rehabil.12(6):564-8(1991))および当該技術分野で公知のその他の評価ツールが挙げられる。
【0708】
治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質を送達する用量を決定するための指針は、敗血症の動物モデルから入手してもよく、例えば、米国特許第6,964,856号およびBurasら,Nat Rev Drug Discov.4(10):854-65(2005)ならびにそこで引用されている参考文献に記載されているものを参照されたい。
【0709】
急性中大脳動脈(MCA)虚血性事象(脳卒中)
急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)とは、血栓症(例えば、静脈血栓症)、塞栓症または全身性低灌流により引き起こされる虚血(グルコースおよび酸素の供給不足)に起因する脳への血液供給障害により、脳機能(1つまたは複数)の喪失が急速に進むことである。その結果、脳の罹患部が機能できなくなり、体の片側の1つ以上の四肢が動かせなくなったり、会話の理解または発話ができなくなったり、片側の視野が見えなくなったりする。脳卒中は医学的な緊急事態であり、恒久的な神経損傷、合併症および/または死をもたらし得る。
【0710】
急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)の症状としては、例えば、片麻痺、顔面の感覚低下および筋力低下、痺れ感、知覚または振動感覚の低下、嗅覚、味覚、聴覚または視覚の変化(全体的または部分的)、眼瞼下垂および眼筋衰弱、反射減退、バランス障害および眼振、呼吸数および心拍数の変化、頭を片側に回旋できない胸鎖乳突筋の衰弱、舌の衰弱(舌の突出しおよび/または左右への移動ができない)、失語症、失行症、視野欠損、記憶欠損、半側無視、支離滅裂な思考、錯乱、性欲過剰な身振り、病態失認、歩行困難、運動協調性の変化および眩暈、ならびに/あるいは平衡失調が挙げられる。
【0711】
急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)の治療法としては、例えば、血栓溶解(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA))、血栓除去術、血管形成術およびステント術、低体温療法ならびに薬物療法(例えば、アスピリン、クロピドグレルおよびジピリダモール)が挙げられる。
【0712】
本開示は、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)を有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)を治療する(例えば、1つ以上の症状を安定させる、低減もしくは除去する、または対象の脳卒中尺度のスコアを安定させる)方法を提供する。さらに、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を、第二の治療法、例えば、血栓溶解(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA))、血栓除去術、血管形成術およびステント術、低体温療法ならび/または薬物療法(例えば、アスピリン、クロピドグレルおよびジピリダモール)と併用して投与することにより急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)を治療する方法を提供する。また本開示は、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)を発症する危険性のある対象(例えば、全身性低灌流を経験したことのある対象)に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、予防有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)またはその症状を予防する方法も提供する。
【0713】
急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)の評価に有用な尺度としては、例えば、オックスフォードコミュニティストロークプロジェクト(Oxford Community Stroke Project)の分類(OCSP、BamfordまたはOxford分類としても知られる)(Bamfordら,Lancet 337(8756):1521-6(1991))およびTOAST(Trial of Org 10172 in Acute Stroke Treatment)(Adamsら,Stroke 24(1):35-41(1993))が挙げられる。
【0714】
治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質を送達する用量を決定するための指針は、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)の動物モデルから入手してもよく、例えば、Beechら,Brain Res 895:18-24(2001),Buchanら,Stroke 23(2):273-9(1992),Carmichael,NeuroRx 2:396-409(2005),Chenら,Stroke 17(4):738-43(1986),Dittmarら,Stroke 34:2252-7(2003),Dittmarら,J Neurosci Methods 156:50(2006),Gerrietsら,J Neurosci Methods 122:201-11(2003),Gerrietsら,Stroke 35:2372-2377(2004),Grahamら,Comp Med 54:486-496(2004),Koizumiら,Jpn J Stroke 8:1-8(2004),Longaら,Stroke 20(1):84-91(1989),Mayzel-Oreg,Magn Reson Med 51:1232-8(2004),Schmid-Elsaesserら,Stroke 29(10):2162-70(1989),Tamuraら,J Cereb Blood Flow Metab 1:53-60(1981),Watsonら,Ann Neurol 17:497-504(1985)およびZhangら,J Cereb Blood Flow Metab 17:123-35(1997)ならびにそこで引用されている参考文献に記載されているものを参照されたい。
【0715】
再狭窄
再狭窄とは、血管が狭窄して血流量が制限される狭窄症の再発のことである。再狭窄は通常、狭窄を起こしてから、血管形成術のような治療を受けて閉塞を取り除いた後、再び狭窄する動脈またはその他の大血管に関係する。再狭窄は管腔の周径の50%以上の減少と定義することができ、バルーン血管形成術を受けた患者で発生率が高く(25~50%)、患者の大部分が6ヶ月以内にさらなる血管形成術を必要とした。
【0716】
再狭窄の治療法としては、例えば、ステントなしでまたはステントの両端で再狭窄が起こった場合の追加の血管形成術、ステント内で再狭窄が起こった場合の血管形成術の反復および元の部分への別のステントの挿入、薬物溶出ステント、近接照射療法ならびに冠動脈内照射が挙げられる。
【0717】
本開示は、再狭窄(例えば、血管形成術後)を有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより再狭窄(例えば、血管形成術後)を治療する(例えば、1つ以上の症状を安定させる、低減するまたは除去する)方法を提供する。さらに、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を、第二の治療法、例えば、ステントなしでまたはステントの両端で再狭窄が起こった場合の追加の血管形成術、ステント内で再狭窄が起こった場合の血管形成術の繰り返しおよび元の部分への別のステントの挿入、薬物溶出ステント、近接照射療法ならびに/あるいは冠動脈内照射と併用して投与することにより再狭窄(例えば、血管形成術後)を治療する方法を提供する。また本開示は、再狭窄を発症する危険性のある対象(例えば、狭窄症に罹患したことのある対象)に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、予防有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより再狭窄またはその症状を予防する方法も提供する。
【0718】
治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質を送達する用量を決定するための指針は、再狭窄の動物モデルから入手してもよく、例えば、米国特許第5,304,122号および同第6,034,053号、およびKantorら,Cardiovasc Radiat Med.1(1):48-54(1999)、ならびにそこで引用されている参考文献に記載されているものを参照されたい。
【0719】
全身性エリテマトーデス腎炎
全身性エリテマトーデス腎炎は、慢性自己免疫性結合組織疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)により引き起こされる腎臓の炎症である。SLEは、血管の炎症性の破壊を特徴とする疾患である血管炎を伴い得る。
【0720】
全身性エリテマトーデス腎炎の症状としては、例えば、腎疾患の一般的症状、体重増加、高血圧、濃い泡沫尿、および眼、下肢、足首または指の周りの腫脹が挙げられる。
【0721】
全身性エリテマトーデス腎炎の治療法としては、例えば、ステロイド療法(例えば、副腎皮質ステロイド剤)、化学療法(例えば、シクロホスファミド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチルまたはシクロスポリン)および免疫抑制剤(例えば、ミコフェノール酸モフェチルおよび静脈内シクロホスファミド)が挙げられる。
【0722】
本開示は、全身性エリテマトーデス腎炎を有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより全身性エリテマトーデス腎炎を治療する(例えば、1つ以上の症状を安定させる、低減するもしくは除去する、または対象の狼瘡尺度のスコアを安定させる)方法を提供する。さらに、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を、第二の治療法、例えば、ステロイド療法(例えば、副腎皮質ステロイド剤)、化学療法(例えば、シクロホスファミド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチルおよび/またはシクロスポリン)および/または免疫抑制剤(例えば、ミコフェノール酸モフェチルおよび/または静脈内シクロホスファミド)と併用して投与することにより全身性エリテマトーデス腎炎を治療する方法を提供する。また本開示は、全身性エリテマトーデス腎炎を発症する危険性のある対象(例えば、狼瘡であると診断された対象または狼瘡もしくはその遺伝的素因を有する家族がいる対象)に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、予防有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより全身性エリテマトーデス腎炎またはその症状を予防する方法も提供する。
【0723】
全身性エリテマトーデス腎炎および全身性エリテマトーデス腎炎の症状の評価に有用な尺度としては、例えば、生検に基づく世界保健機関(WHO)の分類(Weeningら,J.Am.Soc.Nephrol.15(2):241-50(2004))および当該技術分野で公知のその他の評価ツールが挙げられる。
【0724】
治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質を送達する用量を決定するための指針は、全身性エリテマトーデス腎炎の動物モデルから入手してもよく、例えば、米国特許第7,26,5261号、Peng,Methods Mol Med.102:227-72(2004)およびそこで引用されている参考文献に記載されているものを参照されたい。
【0725】
熱傷および創傷治癒
熱傷は、熱、電気、化学物質、光、放射線または摩擦により起こり得る傷害の一種である。神経まで達する重度の傷害により、筋肉、骨、血管、真皮および上皮のどの組織も損傷を受けた後に疼痛を伴い得る。罹患部位および重症度に応じて、熱傷の被害者は、ショック、感染症、電解質不均衡および呼吸困難を含めた様々な潜在的に致命的な合併症を経験し得る。熱傷では、表皮および真皮要素への損傷を生じる鍵となる傷害がいくつかあり、これを初期傷害(例えば、熱傷害、炎症性メディエーター傷害、虚血による傷害)と後発傷害に分けることができる。過度の熱により、急激なタンパク質変性および細胞損傷が引き起こされる。例えば、灌流の起こった表面下の熱傷における組織損傷の多くは、熱傷により活性化された炎症の毒性メディエーター(例えば、オキシダントおよび/またはプロテアーゼ)により引き起こされ得る。好中球による創傷酸素の消費が組織低酸素症をもたらし得る。熱傷による細胞死とともに瞬時に表面血管血栓症が生じ、虚血およびさらなる組織損傷が引き起こされる。初期熱傷後の後発傷害およびメディエーター損傷としては、例えば、神経組織、表面上の細菌、局所的な腐食性物質および表面上の滲出液により引き起こされる炎症;ならびに過剰な創傷タンパク質分解活性およびオキシダント放出による生存細胞と新たな組織増殖への継続的な損傷が挙げられる。
【0726】
熱傷の治療法としては、例えば、静脈内輸液、包帯、疼痛管理(例えば、鎮痛剤(例えば、イブプロフェンおよびアセトアミノフェン)、麻薬および局所麻酔薬)、炎症性メディエーター阻害剤および抗生物質が挙げられる。
【0727】
本開示は、熱傷を有するかまたは有することが疑われる対象に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより熱傷を治療する(例えば、1つ以上の症状を安定させる、低減するもしくは除去する、または対象の熱傷尺度のスコアを安定させる)および/または創傷治癒を促進する方法を提供する。さらに、血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を、第二の治療法、例えば、静脈内輸液、包帯、疼痛管理(例えば、鎮痛剤(例えば、イブプロフェンおよびアセトアミノフェン)、麻薬および局所麻酔薬)、炎症性メディエーター阻害剤および抗生物質と併用して投与することにより熱傷を治療する方法を提供する。また本開示は、熱傷を発症する危険性のある対象(例えば、例えば、職業により熱傷の危険性が生じる対象、例えば、消防士や調理師)に血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、予防有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質)を投与することにより熱傷またはその症状を予防する方法も提供する。
【0728】
熱傷および熱傷の症状の評価に有用な尺度としては、例えば、程度、深度および総体表面積(TBSA)による熱傷尺度(Meekら,J Burn Care Rehabil.12(6):564-8(1991))ならびに当該技術分野で公知のその他の評価ツールが挙げられる。
【0729】
治療有効量の血漿カリクレイン結合タンパク質を送達する用量を決定するための指針は、熱傷の動物モデル、例えばブタ熱傷モデル(SingerおよびMcClain,Methods Mol Med.78:107-19(2003)、ヒツジ熱傷モデル(Jonkamら,Shock,28:704-709(2007))、ウサギ熱傷モデル(Nwariakuら,Burns,22:324-327(1996))およびマウス熱創傷モデル(Stevensonら,Methods Mol Med.78:95-105(2003))などから入手し得る。
【0730】
併用療法
本明細書に記載の血漿カリクレイン結合タンパク質、例えば抗血漿カリクレイン抗体、例えば抗血漿カリクレインFabまたはIgGを、血漿カリクレイン活性関連の疾患または状態、例えば本明細書に記載の疾患または状態の1つ以上の他の治療法と併用して投与し得る。例えば、血漿カリクレイン結合タンパク質を、外科手術、別の抗血漿カリクレインFabもしくはIgG(例えば、本明細書に記載の別のFabもしくはIgG)、別の血漿カリクレイン阻害剤、ペプチド阻害剤、または低分子阻害剤とともに治療または予防に使用し得る。本明細書に記載の血漿カリクレイン結合タンパク質との併用療法で使用し得る血漿カリクレイン阻害剤の例としては、例えば、国際公開第95/21601号または同第2003/103475号に記載されている血漿カリクレイン阻害剤が挙げられる。
【0731】
1つ以上の血漿カリクレイン阻害剤を、本明細書に記載の1つ以上の血漿カリクレイン結合タンパク質と併用し得る。例えば、この併用により、必要とされる阻害剤の用量が減り、副作用が低減され得る。
【0732】
本明細書に記載の血漿カリクレイン結合タンパク質を、特に限定されないが、疾患の最新の治療法、例えば、関節リウマチ、痛風、腸疾患、口腔粘膜炎、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、脊柱管狭窄-変性脊椎疾患、動脈もしくは静脈血栓症、術後イレウス、大動脈瘤、骨関節炎、血管炎、頭部外傷もしくは腫瘍周囲脳浮腫、敗血症、急性中大脳動脈(MCA)虚血事象(脳卒中)、再狭窄(例えば、血管形成術後)、全身性エリテマトーデス腎炎、熱傷または創傷治癒の最新の治療法を含めた、血漿カリクレイン関連の疾患または状態の1つ以上の最新の治療法と併用して投与し得る。例えば、pKal阻害は疾患治療の新規な機序であり、したがって、他の治療法と相乗的または相加的な効果をもたらし得る。例えば、血漿カリクレインを阻害するまたは血漿カリクレイン活性の下流事象を阻害する本明細書に記載のタンパク質を、血漿カリクレイン関連疾患の別の治療法、例えば外科手術または例えば本明細書に記載の第二の薬剤の投与などと組み合わせて使用し得る。例えば、第二の薬剤としては、エカランチド、C1エステラーゼ阻害剤(例えば、CINRYZE(商標))、アプロチニン(TRASYLOL(登録商標))、ブラジキニンB2受容体阻害剤(例えば、イカチバント(FIRAZYR(登録商標))を挙げ得る。
【0733】
「併用」という用語は、同一の患者を治療するために2つ以上の薬剤または治療法を使用することを指し、この場合、薬剤または治療法の使用または作用の時間が重複する。薬剤投与または治療法を同時に(例えば、患者に投与する単一の製剤として、または同時に投与する2つの別々の製剤として)、あるいは任意の順序で逐次的に行い得る。逐次投与とは、異なる時間に行われる投与のことである。1つの薬剤と別の薬剤の投与の間の時間は、分、時間、日または週単位であり得る。また本明細書に記載の血漿カリクレイン結合タンパク質を使用して、別の治療の用量を減らす、例えば、投与する別の薬剤に伴う副作用を低減することもできる。したがって、併用は、血漿カリクレイン結合タンパク質の非存在下で使用するよりも少なくとも10、20、30または50%低い用量での第二の薬剤の投与を含み得る。
【0734】
また第二の薬剤または治療法は、血漿カリクレイン関連の治療のための別の薬剤であってもよい。血漿カリクレイン関連疾患または状態の別の治療法の非限定的な例としては、例えば、エカランチド、C1エステラーゼ阻害剤(例えば、CINRYZE(商標))、アプロチニン(TRASYLOL(登録商標))、ブラジキニンB2受容体阻害剤(例えば、イカチバント(FIRAZYR(登録商標))または本明細書に記載の第二の結合タンパク質が挙げられる。
【0735】
併用療法は、他の治療法の副作用を低減する薬剤の投与を含み得る。薬剤は、血漿カリクレイン関連疾患の治療の副作用を低減する薬剤であり得る。例えば、炎症性疾患では、pKal阻害剤はステロイドを節約し得る。炎症の治療ではTNF-アルファ阻害剤との、また癌および/または血管新生の治療では.VEGFブロッカーとの協力作用も生じ得る。
【0736】
診断用途
血漿カリクレインと結合する本明細書に記載のタンパク質は、in vitroおよびin vivoでの診断において有用である。本明細書に記載の血漿カリクレイン結合タンパク質(例えば、血漿カリクレインと結合するまたは結合して阻害するタンパク質)を、例えば、血漿カリクレインが活性である疾患もしくは状態、例えば本明細書に記載の疾患もしくは状態の治療過程において、または本明細書に記載の疾患もしくは状態の診断において、例えばin vivoイメージングに使用し得る。
【0737】
一態様では、本開示は、in vitroまたはin vivo(例えば、対象におけるin vivoイメージング)で血漿カリクレインの存在を検出するための診断法を提供する。この方法は、対象内または対象由来の試料中での血漿カリクレインの所在の特定を含み得る。試料の評価に関して、この方法は、例えば:(i)試料を血漿カリクレイン結合タンパク質と接触させること;および(ii)試料中の血漿カリクレイン結合タンパク質の所在を検出することを含み得る。
【0738】
また血漿カリクレイン結合タンパク質を用いて、試料中の血漿カリクレイン発現の定性的または定量的レベルを決定することもできる。またこの方法は、参照試料(例えば、対照試料、例えばネガティブ対照)を結合タンパク質と接触させること、および参照試料の対応する評価を決定することも含み得る。試料または対象中での複合体の形成における、対照の試料または対象と比較した差(例えば、増加)、例えば統計的に有意な差は、試料中の血漿カリクレインの存在を示し得る。一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、組織カリクレインのような別のカリクレインタンパク質および/または血漿プレカリクレインと交差反応しない。例えば、結合タンパク質は別のカリクレインタンパク質またはプレカリクレインと、血漿カリクレインとの結合よりも5~10倍低い割合で(またはそれよりさらに少なく)と結合する。例えば、結合タンパク質は、血漿カリクレインとは約10~50pMのKDで結合し得るのに対し、組織カリクレインおよび/またはプレカリクレインとは約10nMで結合する。
【0739】
血漿カリクレイン結合タンパク質を検出可能な物質で直接的または間接的に標識して、結合抗体または未結合抗体の検出を容易にすることができる。適当な検出可能な物質としては、各種酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質および放射性物質が挙げられる。
【0740】
血漿カリクレイン結合タンパク質と血漿カリクレインとの間の複合体形成は、血漿カリクレインと結合した結合タンパク質または未結合の結合タンパク質を評価することにより検出することができる。従来の検出アッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)または免疫組織化学を使用し得る。血漿カリクレイン結合タンパク質の標識に加え、検出可能な物質で標識した標準物質および未標識の血漿カリクレイン結合タンパク質を用いた競合イムノアッセイにより、試料中の血漿カリクレインの存在をアッセイすることができる。このアッセイの一例では、生物試料、標識した標準物質および血漿カリクレイン結合タンパク質を混ぜ、未標識の結合タンパク質と結合する標識した標準物質の量を決定する。試料中の血漿カリクレインの量は、血漿カリクレイン結合タンパク質と結合する標識した標準物質の量に反比例する。
【0741】
フルオロフォアおよび発色団で標識したタンパク質を調製し得る。抗体およびその他のタンパク質は約310nm以下の波長の光を吸収するため、310nmより大きい、好ましくは400nmより大きい波長において実質的な吸収を有するように蛍光部分を選択するべきである。適当な各種蛍光物質および発色団がStryer,1968,Science 162:526およびBrand,L.ら,1972,Annu.Rev.Biochem.41:843-868により記載されている。米国特許第3,940,475号、同第4,289,747号および同第4,376,110号に開示されているような従来の方法により、タンパク質を蛍光発色団で標識し得る。上記の望ましい特性を多数有する蛍光物質の一群はキサンテン色素であり、フルオレセインおよびローダミンがこれに含まれる。蛍光化合物の別のグループはナフチルアミンである。フルオロフォアまたは発色団で標識した後、そのタンパク質を用いて、例えば蛍光顕微鏡法(共焦点顕微鏡法またはデコンボリューション顕微鏡法など)により、試料中の血漿カリクレインの存在または局在を検出することができる。
【0742】
組織学的解析
本明細書に記載のタンパク質を用いて免疫組織化学を行うことができる。例えば抗体の場合、抗体を標識(精製タグまたはエピトープタグなど)とともに合成するか、または例えば、標識もしくは標識結合基とコンジュゲートして検出できるように標識する。例えば、抗体にキレート剤を結合させ得る。次いで、抗体を組織標本、例えば顕微鏡スライド上の固定組織切片と接触させる。インキュベーションで結合させた後、標本を洗浄して未結合抗体を除去する。次いで、例えば顕微鏡を用いて標本を解析し、抗体が標本と結合したか否かを確認する。
【0743】
当然のことながら、抗体(またはその他のポリペプチドもしくはペプチド)は結合時に未標識であってよい。結合および洗浄後に、検出可能にするために抗体を標識する。
【0744】
タンパク質アレイ
また血漿カリクレイン結合タンパク質をタンパク質アレイ上に固定化することもできる。タンパク質アレイを、例えば、医学的試料(例えば単離細胞、血液、血清、生検など)をスクリーニングするための診断ツールとして使用し得る。当然のことながら、タンパク質アレイは、例えば血漿カリクレインまたはその他の標的分子と結合する、他の結合タンパク質も含み得る。
【0745】
ポリペプチドアレイを作製する方法は、例えば、De Wildtら,2000,Nat.Biotechnol.18:989-994;Luekingら,1999,Anal.Biochem.270:103-111;Ge,2000,Nucleic Acids Res.28,e3,I-VII;MacBeathおよびSchreiber,2000,Science 289:1760-1763;国際公開第01/40803号および同第99/51773A1号に記載されている。アレイ用のポリペプチドを、例えば市販のロボット装置(例えば、Genetic MicroSystems社またはBioRobotics社製)を用いて高速でスポットすることができる。アレイ基板は、例えば、ニトロセルロース、プラスチック、ガラス(例えば、表面修飾ガラス)であり得る。またアレイは、多孔性マトリックス、例えば、アクリルアミド、アガロースまたは別のポリマーも含み得る。
【0746】
例えば、アレイは抗体アレイ、例えば、上記De Wildtに記載されているアレイであり得る。タンパク質を産生する細胞を、フィルター上で配列されたフォーマットで増殖させ得る。ポリペプチド産生を誘導し、発現されたポリペプチドを細胞のある位置でフィルターに固定化する。タンパク質アレイを標識された標的と接触させて、標的と各固定化ポリペプチドとの結合の程度を決定し得る。アレイの各アドレスにおける結合の程度に関する情報をプロファイルとして、例えばコンピュータデータベースに保管し得る。タンパク質アレイを繰り返し作製し、例えば標的と非標的の結合プロファイルの比較に使用し得る。
【0747】
FACS(蛍光標示式細胞分取)
血漿カリクレイン結合タンパク質を用いて細胞、例えば試料中の細胞(例えば、患者の試料)を標識し得る。また結合タンパク質を蛍光化合物と結合させる(結合可能である)。次いで、蛍光励起セルソーターを用いて細胞を分取し得る(例えば、Becton Dickinson Immunocytometry Systems、San Jose CAから入手可能なソーターを用いて;また米国特許第5,627,037号、同第5,030,002号および同第5,137,809号も参照されたい)。細胞がソーター内を通過するときにレーザー光が蛍光化合物を励起させ、検出器が蛍光を検出することにより、通過した細胞をカウントして、蛍光化合物が細胞と結合しているか否かを判定する。各細胞と結合した標識の量を定量化して解析し、試料を特徴付けることができる。
【0748】
またソーターにより、細胞の進路を逸らして、結合タンパク質が結合していない細胞と結合タンパク質が結合している細胞を分離することもできる。分離した細胞を培養および/または特徴付けすることができる。
【0749】
in vivoイメージング
また、血漿カリクレイン発現組織の存在をin vivoで検出する方法も特徴とする。この方法は、(i)検出可能なマーカーとコンジュゲートした抗血漿カリクレイン抗体を対象(例えば、血漿カリクレイン関連の疾患または状態を有する患者)に投与すること、および(ii)血漿カリクレイン発現組織または細胞に対する前記検出可能なマーカーを検出する手段を対象に施すことを含む。例えば、対象を例えば、NMRまたはその他の断層撮影手段によりイメージングする。
【0750】
イメージング診断に有用な標識の例としては、放射標識(例えば131I、111In、123I、99mTc、32P、125I、3H、14Cおよび188Rhなど)、蛍光標識(例えばフルオレセインおよびローダミンなど)、核磁気共鳴活性標識、陽電子放射断層撮影(「PET」)スキャナにより検出可能な陽電子放出アイソトープ、化学発光物質(例えばルシフェリンなど)および酵素マーカー(例えばペルオキシダーゼまたはホスファターゼなど)が挙げられる。短距離検出プローブにより検出可能なアイソトープのような、短距離放射線放射体も使用し得る。タンパク質を上記試薬により標識し得る。例えば、WenselおよびMeares,1983,Radioimmunoimaging and Radioimmunotherapy,Elsevier,New York for techniques relating to the radiolabeling of antibodiesならびにD.Colcherら,1986,Meth.Enzymol.121:802-816を参照されたい。
【0751】
結合タンパク質を放射性同位体(例えば14C、3H、35S、125I、32P、131Iなど)で標識し得る。放射性標識した結合タンパク質を診断検査、例えばin vitroアッセイに使用し得る。同位体で標識された結合タンパク質の比活性は、半減期、放射性標識の同位体純度および標識を抗体に組み込む方法によって決まる。
【0752】
放射性標識した結合タンパク質の場合、患者に投与された結合タンパク質が、それと反応する抗原を有する細胞に局在し、例えばガンマ線カメラまたは放射断層撮影を用いた放射性核スキャンのような既知の技術を用いて、in vivoで検出または「イメージング」される。例えば、A.R.Bradwellら,“Developments in Antibody Imaging”,Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy,R.W.Baldwinら編,pp65-85(Academic Press 1985)を参照されたい。あるいは、放射標識が陽電子を放出する場合(例えば、11C、18F、15Oおよび13N)には、Brookhaven National LaboratoryにあるPet VIと呼ばれる陽電子放射横断断層撮影スキャナを用いることができる。
【0753】
MRI造影剤
磁気共鳴画像法(MRI)は、NMRを用いて生存対象の体の内側の特徴を視覚化するものであり、予後、診断、治療および外科手術に有用である。MRIは、明らかな効果を得るために放射性トレーサー化合物を使用せずに用いることができる。欧州特許出願公開第A-0 502 814号にはMRI技術がいくつかまとめられている。一般的に、異なる環境における水プロトンの緩和時定数T1およびT2に関する差を用いて画像が形成される。しかし、これらの差は鮮明な高解像度の画像を得るには不十分な場合がある。
【0754】
これらの緩和時定数の差を造影剤により増強することができる。このような造影剤の例には、数多くの磁性物質、常磁性物質(主にT1を変化させる)および強磁性または超常磁性物質(主にT2応答を変化させる)がある。キレート剤(例えば、EDTA、DTPAおよびNTAキレート剤)を用いて、一部の常磁性物質(例えば、Fe+3、Mn+2、Gd+3)を結合させる(およびその毒性を低減する)ことができる。その他の物質は、粒子(例えば、直径が10mm~約10nM未満)の形態であり得る。粒子は強磁性、反強磁性または超常磁性を有し得る。粒子は、例えば磁鉄鉱(Fe3O4)、γ-Fe2O3、フェライトおよびその他の遷移元素の磁性鉱物化合物を含み得る。磁性粒子は、非磁性物質を含むかまたは含まない1つ以上の磁性結晶を含み得る。非磁性物質は、合成または天然ポリマー(例えばセファロース、デキストラン、デキストリン、デンプンなど)を含み得る。
【0755】
また血漿カリクレイン結合タンパク質をNMR活性19F原子または複数のこのような原子を含む指示基で標識してもよく、その理由は、(i)実質的に天然に豊富に存在するフッ素原子はすべて19Fアイソトープであり、したがって、実質的にすべてのフッ素含有化合物はNMR活性である;(ii)トリフルオロ酢酸無水物のような多くの化学的に活性なポリフッ素化化合物が比較的廉価で購入できる;また(iii)多くのフッ素化化合物は、ヘモグロビン代替物として酸素を運搬するために使用される過フッ素化ポリエーテルのようにヒトでの使用が医学的に許容されることがわかっているからである。十分な時間の間インキュベートした後、Pykett,1982,Sci.Am.246:78 88により記載されているような装置の1つを用いて全身MRIを行い、血漿カリクレインを発現している組織の位置特定とイメージングを行う。
【0756】
以下の実施例は、さらなる説明を提供するものであって、限定するものではない。
【実施例0757】
実施例1:
本発明者らは、血漿カリクレイン(pKal)の抗体阻害剤および結合剤をいくつか見出した。その中で最も強力なものをさらに特徴付けし、それらが見かけの阻害定数(Ki,app)が10nM未満であること、試験した他のセリンプロテアーゼに関して特異的pKal阻害剤であること、およびプレカリクレインとは結合しないことを示した。阻害剤および結合剤のCDRのアミノ酸配列を、それぞれ表1および2に示す。
【0758】
【0759】
pKal抗体阻害剤の軽鎖(LC)および重鎖(HC)可変ドメインのアミノ酸配列を以下に示す。
【表3】
【0760】
注:X81-B01は、表7に示されるX63-G06に由来する生殖系列化したIgGである。
【0761】
【0762】
pKal抗体結合剤の軽鎖(LC)および重鎖(HC)可変ドメインのアミノ酸配列を以下に示す。
【表5】
【0763】
実施例2:リード抗体阻害剤
見かけの阻害定数(Ki,app)、他のセリンプロテアーゼを阻害しない特異性、ブラジキニン生成の阻害、および血漿プレカリクレインと結合しないことに基づいて、リード血漿カリクレイン阻害剤として抗体を選択した(表33)。血漿カリクレインは、不活性チモーゲン(プレカリクレイン)として約500nMの濃度で血漿中を循環する。プレカリクレインと結合する抗体は、活性血漿カリクレインの阻害を行いにくい状態になり得、有効であるために必要なin vivoでの用量を実質的に増加させ得る。したがって、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイを用いて、プレカリクレインと結合しない抗体を同定した(データ不掲載)。具体的には、抗ヒトFc表面、および100nMの血漿カリクレインまたは100nMもしくは500nMのプレカリクレインを用いて、ヒトIgGs(X81-B01、M162-A04(R84-H05);M160-G12(R84-D02);およびM142-H08)がCM5チップ上で捕捉された。プレカリクレインをアプロチニン-セファロースで処理して活性血漿カリクレインを除去した。X81-B01に用いたプレカリクレインでは、試験した他の3つの抗体(M162-A04(R84-H05)、M160-G12(R84-D02)およびM142-H08)で観察された屈折率の変化を避けるために、正確に調製したSPRランニング緩衝液(HEPES緩衝生理食塩水)へ緩衝液を交換した。
【0764】
表3に記載されている抗体のうちM142-H08のみがナノモル濃度未満のKi,appでヒト血漿カリクレインを阻害する。しかし、M142-H08がIgGとして産生されたときに、切断されて重鎖CDR3になることがわかった。したがって、本発明者らは、親和性を向上させるために以下の2つのアプローチを行うことにした:1)ROLIC(Rapid Optimization of Light Chains)と呼ばれる新規な方式の軽鎖シャフリング(例えば、国際公開第2009/102927号および米国特許出願公開第2009-0215119号を参照されたい)を用いたM162-A04およびM160-G12の親和性成熟;ならびに2)M142-H08の結合特性と阻害特性を保持しながら生じるIgGの切断を防ぐためのM142-H08の配列最適化。
【0765】
【0766】
実施例3:M142-H08の配列最適化
表3に記載されている抗体のうち、M142-H08のみがナノモル濃度未満のKi,appでヒトpKalを阻害する。しかし、M142-H08がIgGとして産生されたときに、切断されて重鎖CDR3になることがわかった。M142-H08は、HC-CDR3配列(GGLLLWFRELKSNYFDY)の「WFR」配列のアルギニンの後ろで切断されることが質量分析法によりわかった。この切断は、抗体を発現させるために使用した細胞(CHO細胞および293Tヒト腎細胞の両方)由来のプロテアーゼが、抗体を単一の特定部位で酵素的に切断していることを示唆するものである。本発明者らは、M142-H08の結合特性および阻害特性を保持しつつIgGの切断の発生を防ぐアミノ酸置換を特定するために、M142-H08のHC-CDR3配列を変異させた。同様に「短縮された」抗体でのこれまでの経験では、宿主細胞プロテアーゼにより短縮されずに標的酵素の強力な阻害を保持する抗体を同定するためには、推定P1位置(プロテアーゼサブサイト1、表4を参照されたい)のみに焦点を当てても十分ではない場合があることが示唆された。したがって、本発明者らは、短縮されていないが依然として強力なpKal阻害剤であるM142-H08のバリエーションを同定するために、切断部位付近の領域における単一点突然変異の小型のライブラリーを作出した。このライブラリーを「設計されたCDR3」のライブラリーと呼ぶ。この小型のライブラリーは、P3、P2、P1またはP1’部位のいずれかに無作為化コドンNNKを含むPCRプライマーを用いて構築したものである。これにより、4つのそれぞれの位置が20個のアミノ酸(20+20+20+20=80個のメンバー)のいずれかを含み得る小型のライブラリーが得られる。PCRを用いて、このライブラリーを標準的なファージミドベクターであるpMid21ベクターのM142-H08 Fab配列中にクローニングする。
【0767】
【0768】
DNA配列決定により、本発明者らは、可能性のある80の抗体のうち61の抗体を回収した(表5)。これらの抗体をFabフラグメントとして小規模(約20μg)で作製し、Pro-Phe-Arg-アミノメチルクマリンを合成ペプチド基質として用いたin vitroプロテアーゼ切断アッセイでヒトpKalに対する阻害を試験した。ヒトpKalの阻害剤であることが判明したFabを完全長ヒトIgG1抗体へ変換するために、本発明者らのpBRH1fベクター(293T細胞でのIgGの一過性発現のためのベクター)中にサブクローニングした。次いで、293T細胞で5つの抗体が発現され、これをプロテインAセファロースクロマトグラフィーにより精製した。抗体をSDS-PAGEにより解析して、宿主細胞プロテアーゼ(1つまたは複数)により切断されない阻害性変異体を判定した(データ不掲載)。切断された抗体(559A-X67-G05、559A-X67-H01、559A-X67-G09)では、38kDa分子量マーカーと49kDa分子量マーカーの間に移動する余分なバンドが見られた。このバンドは559A-X67-H04抗体と559A-X67-D03抗体では見られず、このことはこれらの抗体がインタクトであることを示している。
【0769】
切断されないことがSDS-PAGEで示された抗体のKi,app値を、定常状態の酵素動力学により決定した(表5)。興味深いことに、P2位置が、アミノ酸置換によりpKalのインタクト抗体阻害剤が得られた唯一の位置であった。P3位置において回収した14の異なる変異体(表5)のうち、1つの変異体(WからL)だけがFabとしてpKal阻害剤であることがわかったが、後にそれはIgGとしては短縮されていることが示された。P1位置における16の異なる変異体(表5)は、いずれもpKal阻害剤でないことがわかった。P1’位置における15の異なる変異体のうち、8つの変異体がFabとしてpKal阻害剤であることがわかったが、いずれもIgGとしては短縮されていた。結果として、発現時に短縮されない抗体阻害剤は、P2位置における変異体のみから得られた。P2位置において回収した16の異なる変異体(表5)のうち、8つの変異体がFabとしてpKal阻害剤であることがわかったが、後にそれはIgGとしては短縮されていることが示された。P2位置における4つの変異体:X67-G04(FからA)、X67-C03(F~M)、X67-F01(F~Q)およびX67-D03(F~N)は、Ki,app値がナノモル濃度未満であることがわかった。効力が最も高い抗体はX67-D03である(Ki,app=0.1nM)。表6に示される2つの抗体は、IgGとして発現されても切断されず、かつナノモル濃度未満のKi,appでpKalを阻害するということがわかった。
【0770】
ROLIC親和性成熟を用いて見出された同じ抗体の非生殖系列化型(X63-G06)および生殖系列化されコドン最適化された型(X81-B01)の軽鎖のDNAおよびアミノ酸の配列アライメントを、それぞれ
図4および5に示す。ROLIC親和性成熟を用いて見出された同じ抗体の非生殖系列化型(X63-G06)および生殖系列化されコドン最適化された型(X81-B01)の重鎖のDNAおよびアミノ酸の配列アライメントを、それぞれ
図6および7に示す。
【0771】
【0772】
設計されたHC CDR3を有するpKal抗体の軽鎖(LC)および重鎖(HC)可変ドメインのアミノ酸配列を以下に示す。
【表9】
【0773】
【0774】
【0775】
ROLICを用いて見出されたpKal親和性成熟抗体阻害剤の軽鎖(LC)および重鎖(HC)可変ドメインのアミノ酸配列を以下に示す。
【表12】
【0776】
X81-B01は上述のとおり、HEK293T細胞で産生される生殖系列化IgG型のX63-G06Fabである。
X101-A01(別名DX-2922)は、CHO細胞で産生される生殖系列化IgG型のX63-G06Fabである。
【0777】
実施例4:親和性成熟
短縮された抗体(M142-H08)の配列の最適化に加え、本発明者らは、ファージディスプレイにより同定された2つの抗体(M162-A04およびM160-G12)に対する親和性成熟も行った。2つの抗体はともに、一桁台のナノモル濃度の効力でヒトpKalを阻害し、pKalに対して特異的であると思われ、かつプレカリクレインと結合しない(表3)。本発明者らは最初に、ROLIC(Rapid Optimization of Light Chains)と呼ばれる新規な形式の軽鎖シャフリング(例えば、国際公開第2009/102927号および米国特許出願公開第2009-0215119号を参照されたい)をM162-A04およびM160-G12に対して行った。ROLICにより見出された抗体のスクリーニングから、本発明者らは、M160-G12と同じ重鎖を共有するナノモル濃度未満の効力の抗体(X63-G06)を1つ同定した。次いで本発明者らは、M162-A04およびX63-G06のCDR3配列に基づいてHV-CDR3スパイク親和性成熟ライブラリーを構築した(後述)。
【0778】
ROLICによる親和性成熟
本発明者らは、ROLICを用いて、表3のうちの切断されない2つのリード(M162-A04およびM160-G12)を親和性成熟させた。この工程では、pKalをナノモル濃度未満のKi,appで阻害する抗体が1つ同定された(表7)。X63-G06は、FabフラグメントとしてpKalを約0.4nMのKi,appで阻害する。この抗体は、生殖系列化しCHO細胞での発現に最適化し配列させたIgG(X81-B01)に変換すると、pKalを約0.2nMのKi,appで阻害することがわかった。
【0779】
実施例5:重鎖CDR1/2およびCDR3の親和性成熟
本発明者らは、さらに2つの親和性成熟ストラテジーを用いて、異なる2つの親抗体阻害剤リード(M162-A04およびX63-G06)に基づく非常に強力な抗体を同定した。1つのアプローチは、異なる2つの親抗体阻害剤リード(M162-A04およびX63-G06)のHCのCDR1/2をさらなるCDR1/2多様性に対してシャフルするライブラリーを作製することであった。もう1つのアプローチは、これらのリードに基づき重鎖CDR3スパイクライブラリーを作出することであった。
【0780】
CDR1/2およびCDR3領域での改変によるM162-A04の改良に基づき見出された82個の抗体を表8に示す。10nMの抗体(Fabフラグメントとして)を用いた阻害スクリーニングにより、pKal活性を90%を上回って阻害する抗体が33個あることが明らかとなった。いくつかの抗体は、ヒトpKalのナノモル濃度未満の阻害剤であることが示された。
【0781】
CDR1/2およびCDR3領域での改変によるX63-G06の改良に基づき見出された62個の抗体を表9に示す。10nMの抗体(Fabフラグメントとして)を用いた阻害スクリーニングにより、pKal活性を90%を上回って阻害する抗体が24個あることが明らかとなった。いくつかの抗体は、ヒトpKalのナノモル濃度未満の阻害剤であることが示された。
【0782】
【0783】
M162-A04に基づくCDR1/2およびCDR3スパイク親和性成熟ライブラリーから得られたpKal抗体の軽鎖(LC)および重鎖(HC)可変ドメインのアミノ酸配列。
【表14】
【0784】
【0785】
X63-G06に基づくCDR1/2およびCDR3スパイク親和性成熟ライブラリーから得られたpKal抗体の軽鎖(LC)および重鎖(HC)可変ドメインのアミノ酸配列。
【表16】
【0786】
実施例6:M162-A04(IgG)およびX101-A01のin vivo試験
ブラジキニンおよびその他の生物活性キニンは、カラゲナン誘導性の浮腫および炎症性疼痛に関与するとこれまで考えられてきた(Sharma J.N.ら(1998)Inflammopharmacology 6,9-17;Asano M.ら(1997)Br J Pharmacol 122,1436-1440;De Campos R.O.ら(1996)Eur J Pharmacol 316,277-286)。血漿カリクレインおよび組織カリクレイン1は哺乳動物の2つの主要なキニノゲナーゼである(Schmaier A.H.(2008)Int Immunopharmacol 8,161-165)。特異的血漿カリクレイン阻害剤であるM162-A04(M162-A4)(IgG)を試験して、それがカラゲナン誘導性浮腫に有効であるか否かを判定した。実験計画の概要を表10に示す。溶媒(PBS)、抗体および陽性対照(インドメタシン)の投与経路(ROA)は腹膜内(IP)であり、これらをカラゲナン注射(2%カラゲナン溶液0.1mL)の30分前に投与した。
図2より、10mg/kg以上の抗体の投与がカラゲナン誘導性浮腫の低減に陽性対照(インドメタシン)と同等に有効であることが明らかである。しかし、抗体はカラゲナン誘導性温度痛覚過敏の低減には有効ではなかった(
図3)。浮腫と痛覚過敏における有効性の分離の理由は明らかではないが、異なるキニン代謝産物の生物活性の違いによるものと思われる。Lys-desArg9-ブラジキニンは最も強力なB1受容体のアゴニストであり、主に疼痛過敏性に関与すると考えられている(Leeb-Lundberg L.Mら(2005)Pharmacol Rev 57,27-77)。このキニン代謝産物は、血漿カリクレインではなく組織カリクレイン1により生成される(Schmaier A.H.(2008)Int Immunopharmacol 8,161-165)。このキニン生成およびその結果生じるブラジキニン受容体活性化の違いにより、このモデルにおける浮腫と痛覚過敏の予想外の非共役性説明され得る。
【0787】
表10Bに示される実験計画を用いて、もう1つのpKal抗体阻害剤X101-A01もCPEモデルで試験した。
図14のデータは、X101-A01が、浮腫を陽性対照(インドメタシン)に匹敵する程度まで用量依存的に阻害したことを示している。
【0788】
【0789】
【0790】
実施例7:選択された血漿カリクレイン抗体阻害剤の評価
選択された最適化抗体(X81-B01およびX67-D03)の評価を表11に示す。いずれの抗体も推定される脱アミド化、異性化または酸化部位を有さない。
【0791】
【0792】
実施例8:エピトープマッピング
選択された抗pKal抗体が結合するpKalの領域を、いくつかの方法を用いて調べた。最初に、抗体がpKalとの結合に関して活性部位に対する既知の阻害剤と競合するか否かを競合アッセイを用いて判定した。2番目に、抗体をpKalの阻害剤であるか単なる結合剤であるかによってグループ分けした。3番目に、pKalの配列および三次元構造を基にした合成ペプチドおよびペプチド構造体を用いてエピトープを調べた。このようなペプチド構造体は「CLIPS」(Chemically Linked Peptides on Scaffolds(足場上の化学的に結合したペプチド))と呼ばれ、Pepscanというサービス会社に料金を支払って試験を行った。
【0793】
最後に、阻害の違いの原因となり得るアミノ酸を同定するために、pKalのアミノ酸配列が決定されているヒト以外の種由来のpKalを阻害するその能力に関して抗体を試験した。
【0794】
競合アッセイ
BIACORE(登録商標)SPRアッセイを用いて、対象となる抗体を既知のpKal活性部位阻害剤との競合に関して試験した。EPI-KAL2は、組織因子経路阻害剤の第一ドメインに基づく強力な(Ki,app=0.1nM)pKal活性部位阻害剤およびKunitzドメイン阻害剤である(Markland(1996)Iterative optimization of high-affinity protease inhibitors using phage display.2.Plasma kallikrein and thrombin.Biochemistry.35(24):8058-67)。Kunitzドメインは、pKalのようなセリンプロテアーゼの既知の活性部位阻害剤である。
【0795】
EPI-KAL2の配列は:
EAMHSFCAFKADDGPCRAAHPRWFFNIFTRQCEEFSYGGCGGNQNRFESLEECKKMCTRD
(イタリック体のアミノ酸はTFPIとは異なるアミノ酸である)
である。
【0796】
図8Aおよび8Bに示されるように、抗体X81-B01およびX67-D03は、EPI-KAL2の存在下でpKalとの結合に関して競合した。この結果は、上記抗体が活性部位付近で結合するか、またはpKal-EPI-KAL2複合体のコンホメーションのアロステリック変化が抗体結合を妨げるかのどちらかであることを示している。
【0797】
抗体結合剤か抗体阻害剤か
表1および2に示されるように、ファージディスプレイにより見出されたすべての固有の抗体を、pKal阻害剤である、または結合剤であるが阻害剤ではないという特徴付けを行った。pKalの活性を阻害する抗体は、活性部位付近で結合して基質相互作用を妨げる(競合阻害剤)か、活性部位から離れたところで結合して活性部位の構造のアロステリック変化を引き起こす(非競合的阻害剤)かのどちらかである。pKalと結合するがそれを阻害しない抗体は、活性部位付近で結合する可能性は低く、非触媒ドメイン(すなわち、アップルドメイン)と結合すると思われる。表12は、選択された抗体をpKalの阻害剤または結合剤で分類したものである。また表12には、記載されている抗体に関して、抗体が阻害剤としてマウスpKalと交差反応するか否か、および抗体がプレカリクレインと結合するか否かを実証するものも示してある。
【0798】
【0799】
CLIPSを用いたエピトープマッピング
表12に記載されている11個の抗pKal抗体とネガティブ対照(A2)1つを、CLIP法の節で後述するように、Pepscan社による5000の異なる合成CLIPS(Chemically Linked Peptides on Scaffolds(足場上の化学的に結合したペプチド))との結合に関して試験した。この解析により、試験した各抗体の抗体エピトープの一部であると思われるpKal中のペプチド領域が同定された(
図9)。
【0800】
CLIPS法
標準的なFmoc化学を用いて、標的タンパク質のアミノ酸配列に基づき直鎖状およびCLIPSペプチドを合成し、三フッ素酸をスカベンジャーとともに用いて脱保護した。立体構造エピトープを構築するために、Chemically Linked Peptides on Scaffolds(足場上の化学的に結合したペプチド)(CLIPS)技術(Timmermanら(2007)を用いて、コンストレインドペプチド(constrained peptide)を化学的足場上で合成した。例えば、α,α’-ジブロモキシレンで処理して環化し、システイン残基を様々な間隔で導入してループの大きさに変化をもたせたシスチンを含む単一ループペプチドを合成した。新たに導入されたシステインの他にシステインが存在すれば、それをアラニンで置き換えた。ペプチド中の複数のシステインからなる側鎖を、クレジットカードフォーマットのポリプロピレンPEPSCANカード(1カード当たり455のペプチドフォーマット)上でCLIPS鋳型の0.5mM溶液(1,3-ビス(ブロモメチル)ベンゼンを含む炭酸水素アンモニウム(20mM、pH 7.9)/アセトニトリル(1:1(v/v))など)と反応させることにより、CLIPS鋳型と結合させた。このカードを溶液中に完全に浸した状態で30~60分間、穏やかに振盪した。最後に、カードを過剰のH2Oで十分に洗浄し、PBS(pH7.2)中に1%SDS/0.1%ベータ-メルカプトエタノールを含有する停止緩衝液中、70℃で30分間超音波処理し、次いで、H2O中でさらに45分間超音波処理を行った。抗体と各ペプチドとの結合をPEPSCANによるELISAで試験した。共有結合したペプチドを含む455ウェルのクレジットカードフォーマットのポリプロピレンカードを、例えばSQ(4%ウマ血清、PBS/1%Tween中またはPBSで希釈した5%のオボアルブミン(w/v)、例えば、20%SQ)と呼ばれるブロッキング溶液で希釈した1マイクログラム/mLからなる一次抗体溶液とともに一晩インキュベートした。洗浄後、ペプチドを、1/1000希釈のウサギ抗ヒト抗体ペルオキシダーゼまたはヤギ抗ヒトFABペルオキシダーゼとともに、25℃で1時間インキュベートした。洗浄後、ペルオキシダーゼ基質2,2’-アジノ-ジ-3-エチルベンゾチアゾリンスルホナート(ABTS)および2μLの3%H2O2を加えた。1時間後に発色を測定した。発色を電荷結合素子(CCD)カメラおよび画像処理システムで定量化した(Slootstraら,1996に最初に記載されているとおり)。
【0801】
データの計算
生データ:吸光度(任意のOD単位)
生データはCCDカメラにより得られた光学的値である。これらの値の大部分が、標準的な96ウェルプレートELISAリーダーの1~3に相当する対数尺度0~3000の範囲にある。まず、CCDカメラによりカードをペルオキシダーゼ発色前に画像化し、次いで、ペルオキシダーゼ発色後に再び画像化する。この2つの画像を互いに減算して、生データと呼ばれるデータが得られる。これをPeplab(商標)データベースにコピーする。次いでこの値をエクセルにコピーして、そのファイルを生データファイルとしてラベルを付ける。1度のフォローアップ操作が許される。ウェルが気泡を含み偽陽性値が出る場合があるため、カードを手作業で調べ、気泡により生じた値はすべてスコアを0とする。
【0802】
アッセイは通常、反復して行わない(クライアントに依頼されたときだけ行う)。反復試験は非常に類似しているのが普通である。さらに、何千ものペプチドのデータセットは類似したペプチドを多数含むため、結果は1つのペプチドの認識に基づくことはまずなく、類似したペプチドのファミリーに基づくものとなる。反復実験において1個または数個のペプチドが結合しない、または低い結合を示す場合は、異なるエピトープマッピングが原因とは通常考えられない。
【0803】
Timmermanら(2007).Functional reconstruction and synthetic mimicry of a conformational epitope using CLIPSTMtechnology.J.Mol.Recognit.20:283-99
Slootstraら(1996).Structural aspects of antibody-antigen interaction revealed through small random peptide libraries,Molecular Diversity,1,87-96.
【0804】
実施例9:様々な種由来のpKal配列の解析
利用可能なpKalの配列はすべて公的データベースから入手し、ClustalWを用いて整列させ、溶媒露出度、活性部位Kunitz阻害剤との接触およびCLIPS解析により同定されたペプチドに基づき領域を強調した(
図10A~10C)。これらの種それぞれに由来するクエン酸化血漿を得、市販のプレカリクレイン活性化因子(Enzyme Research Laboratories社製)を製造者の使用説明書のとおりに用いて活性化した。次いで、X81-B01の存在または非存在下において各試料のカリクレイン活性を測定した。
【0805】
X81-B01がブタpKalを除きすべての種由来のpKalを阻害するということがわかった。CLIPS解析では、X81-B01が結合するpKalの4つのペプチド、すなわち、C2(81~94位)、C3(101~108位)、C5(162~178位)およびC6(186~197位)が同定されたため、これらのペプチドに対応するブタpKal配列における違いを調べ、ブタpKalがX81-B01により阻害されなかったことを説明する可能性のあるアミノ酸変化を特定した。ペプチドC2とC3は配列中では接近しており、ともに異なる種間の配列において非常に類似している。しかし、479位に違いが見られる。ブタ、カエルおよびイヌ以外のすべての種では479位がセリンである。カエルおよびイヌのpKal配列では、479位がそれぞれアラニンおよびスレオニンであり、ともにセリンに対する保存的置換であると考えられる。これに対し、ブタpKal配列では479位がロイシンであり、これはセリンに対して非常に保存性の低い置換である。ブタpKalのペプチドC5は、他の種由来の配列と非常に類似している。しかし、563位ではブタpKalだけがヒスチジンである(
図10C中の太字)。カエル以外の他のすべての種では、この位置はチロシンである。X81-B01により阻害されるカエルpKalでは、この位置はスレオニンである。ブタpKalのペプチドC6も同様に他の配列と非常に類似している。しかし、ブタpKal配列だけ585位がグルタミン酸である(10C中の太字)。他のすべての種では、この位置はアスパラギン酸である。この解析は、X81-B01と相互作用するpKal中の潜在的に重要な残基を示している可能性がある。
【0806】
実施例10:血漿カリクレイン結合タンパク質の有効性を評価するためのin vitroおよびin vivoアッセイ
プレカリクレインと結合するか、カリクレインと結合するか:
プレカリクレインと結合しないpKal抗体阻害剤が、プレカリクレインと結合する抗体よりも優れていことを、実験的に示すことができる。例えば、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)血漿凝固時間アッセイを用いて、プレカリクレインと結合しないpKal抗体阻害剤(例えば、DX-2922)の効力と、プレカリクレインと結合する阻害剤(例えば、M6-D09)とを比較するin vitro実験を計画することができる。APTTアッセイでは、pKalの活性が関与する内因性凝固経路の接触系成分を特異的に活性化する試薬を添加して、血漿中での凝血を誘発する。pKalの阻害またはpKalの遺伝的欠陥によりaPPTが長くなるということが文献において公知である(例えば、Morishita,H.ら,Thromb Res,1994.73(3-4):p.193-204;Wynne Jones,D.ら,Br J Haematol,2004.127(2):p.220-3を参照されたい)。市販のAPTT試薬および凝固分析装置を用いて、誘発された凝固が観察される時間に様々な濃度のM6-D09またはDX-2922をクエン酸化ヒト血漿にスパイクすることの効果を測定するin vitro実験を行うことができる(表13)。正常な血漿試料中においてM6-D09が高濃度のプレカリクレイン(約500nM)と結合することから、M6-D09によるAPTT延長に対して観察されるEC50がDX-2922のものよりも有意に高いことが予想される。APTTの延長により示されるpKal抗体阻害剤の有効性は、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、血管炎、動脈瘤および心室補助装置を埋め込まれた患者において観察されるような異常な血餅形成を伴う心血管疾患の治療または予防における抗体の治療的使用の可能性を支持するものである。
【0807】
【0808】
ラット浮腫モデルにおける有効性:
また、プレカリクレインと結合しないpKa抗体阻害剤の増大した効力を証明するin vivo実験を行うこともできる。ラット浮腫のカラゲナン誘導性足浮腫(CPE)モデルは一般的な薬理モデルである。1グループのラットにM6-D09およびDX-2922を用量漸増的に腹腔内(IP)注射により処置した後、カラゲナン(例えば、0.1mLの10%(w/v)溶液)をラットの足に注射する(表14)。観察される足腫脹の低減においてDX-2922の方がM6-D09よりも有効であることが予想される。抗体の有効性は、腫脹(例えば、遺伝性血管性浮腫、脳卒中による浮腫、脳浮腫)またはブラジキニン仲介性の炎症および疼痛(例えば、関節リウマチ、炎症性腸疾患)を伴う各種炎症性疾患における抗体の治療的使用を支持するものである。
【0809】
【0810】
半減期の測定:
表15に概要を示した実験計画で、ラットおよびカニクイザルにおけるDX-2922の薬物動態特性を決定する。DX-2922のIV注射後の示された時間に血清を採取する。ELISAによりDX-2922の濃度を決定し、薬物動態パラメーター(クリアランス、半減期、分布容積など)を得るためにそれを時間に対してプロットする。カニクイザルにおけるDX-2922の半減期は5日を超えることが予想され、この値をヒトに合わせると7日を超える半減期になる。
【0811】
【0812】
実施例11:pKalのアミノ酸変異を用いたエピトープマッピング
本明細書の実施例8に記載されているエピトープマッピングの実験に基づき、本発明者らは、RCSB Protein Data Bank(ワールドワイドウェブ上のrcsb.org;pdbコード2ANYで利用できる)で公開されている三次元モデルを調べ、抗体結合と相互作用して酵素阻害を生じ得ると本発明者らが推論した、酵素活性部位付近にある表面の接触可能なループのアミノ酸のセットの集まりを同定した。これらのアミノ酸をアラニンに置換し、各変異体の触媒ドメインをピキア・パストリス(Pichia pastoris)においてHisタグ融合して発現させ、IMACにより精製した。4つの異なる変異のpKal変異体を合成し試験した:
変異体1:ヒトカリクレイン配列(アクセション番号NP_00883.2)のアミノ酸残基S478、N481、S525およびK526をアラニンに変異させた。これらのアミノ酸は基質認識に関与することが明らかとなった(S3サブサイト)。
変異体2:ヒトカリクレイン配列(アクセション番号NP_00883.2)のアミノ酸残基R551、Q553、Y555、T558およびR560をアラニンに変異させた。これらの残基は活性部位基質認識に関与することが明らかとなった(S1’サブサイト)。
変異体3:ヒトカリクレイン配列(アクセション番号NP_00883.2)のアミノ酸D572、K575およびD577をアラニンに変異させた。これらのアミノ酸残基は基質認識に関与する(S1’サブサイト)。
変異体4:ヒトカリクレイン配列(アクセション番号NP_00883.2)のアミノ酸N395、S397およびS398をアラニンに変異させた。これらの残基は血漿カリクレインの活性部位から遠位にある。
【0813】
4つの変異体のうちの3つ(変異体1、2および4)がpKalの野生型触媒ドメインと類似の活性を有する。変異体3におけるアミノ酸置換により、結合アッセイにおいて、試験したどの抗pKal抗体によっても認識されない不活性タンパク質が生じた。
【0814】
変異体1、2および4の阻害に関して試験した抗体を本明細書の表16に示す。グループ1の抗体(すなわち、ヒトおよびマウスpKalを阻害するが、プレカリクレインとは結合しない抗体)で測定したK
i,app値によれば、この抗体のグループは、変異体2で変異させなかったが、変異体1または4で変異させた残基に依存していなかったアミノ酸を含むpKal上のエピトープと結合することが明らかである。さらに、血漿カリクレイン結合タンパク質X81-B01/X101-A01/DX-2922および親和性成熟誘導体X115-B07とカリクレインとの相互作用は、変異体1における置換により悪影響を受ける。抗体がプレカリクレインと結合する能力の違いの例に関しては、例えば、DX-2922(グループ1)のプレカリクレインとの結合をM6-D09(グループ3)のものと比較した
図11Aおよび11Bを参照されたい。
【0815】
グループ2の抗体(すなわち、ヒトpKalを阻害するがマウスpkalは阻害せず、かつプレカリクレインと結合しない抗体)は、アミノ酸の変異にあまり影響されなかったが、このことは、これらの抗体が代わりのアミノ酸と接触することを示している。グループ2の抗体は、セリンプロテアーゼの活性部位に結合することが知られているKunitzドメインと複合体を形成したpKal(EPI-KAL2)と結合することができなかったことから、活性部位の付近で結合すると思われる。さらに、グループ2の抗体の1つ(M145-D11)は、Biacoreアッセイにおいて、トリプシン様セリンプロテアーゼの低分子共有結合性阻害剤である自殺阻害剤AEBSF(4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホン酸フルオリド・塩酸塩)により不活性化されたpKalと結合することができないという点で、グループ1の抗体と類似していた(
図12)。しかし、グループ2に割り当てられた他の抗体(M29-D09)は、AEBSFで不活性化されたpKalと結合することができた。このことは、類似した結合特性を共有しているにもかかわらず、この抗体がM145-D11とは違うエピトープと結合し得ることを示している。
【0816】
グループ3の抗体はヒトおよびマウスpKalを阻害したが、プレカリクレインとは結合しなかった。このグループの抗体の1つであるM6-D09は、EPI-KAL2またはAEBSFのいずれかにより不活性化されたpKalと結合することができなかった。このことは、このpKal阻害剤のグループが活性部位付近の別のアミノ酸と相互作用することを示している。変異体2に対するM6-D09のKi,appが約5倍増加した(すなわち、M6-D09の効力が減少した)。
【0817】
実施例12:親和性成熟
軽鎖の最適化を含む本明細書の実施例4および5に記載されている親和性成熟に加え、本発明者らは、2つの異なる親抗pKal抗体の可変重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のアミノ酸が異なるライブラリーにより親和性をさらに最適化することを試みた。さらなる最適化のために選択した抗体(X63-G06およびM162-A04)はともに、治療用血漿カリクレイン抗体阻害剤としてさらに開発するのに望ましい特性を示し、その特性には、a)ヒトおよびげっ歯類血漿カリクレインを完全に阻害する、ならびにb)プレカリクレインとは結合しないことが含まれる。いくつかの実施形態では、ヒトpKalの完全な阻害は、疾患用途において血漿カリクレインの活性をブロックするために重要である。げっ歯類pKalの阻害は、毒性評価を含めた前臨床開発を容易にする。pKal抗体阻害剤がプレカリクレインと結合しないことは、活性pKal標的に対する抗体治療剤のバイオアベイラビリティーを最大化するために、および有効性を得るのに必要な用量を潜在的に低減するためには非常に望ましい特性である。
【0818】
4つの異なるファージディスプレイライブラリーを用いて親和性成熟を行った。各親抗体(例えば、I62-A04)に関して、重鎖のCDR1とCDR2の両方に異なるアミノ酸位置を含むライブラリーを構築した。2つの親抗体それぞれに関して、重鎖CDR3における位置が異なる追加のライブラリーを構築した。高親和性の抗体を得るために、後続のラウンドごとに活性pKalの量を減少させながら上記4つの各ファージディスプレイライブラリーのそれぞれを選択した(パニングを行った)。選択された抗体におけるプレカリクレインとの結合の出現を最小限にするために、最初に出力ライブラリーを固定化されたプレカリクレインに対して枯渇させた。Fabフラグメントとしてのスクリーニング後に、本発明者らは、表16に示される親和性成熟抗体(すなわち、「X115」で始まる識別番号の抗体)を見出した。
【0819】
見出された4つの抗体(X115-B07、X115-D05、X115-E09およびX115-H06)は、DX-2922親抗体(FabフラグメントとしてX63-G06、293T細胞で産生されるIgGとしてX81-B01またはCHO細胞で産生されるIgGとしてX101-A01としても知られる)に由来するものであり、強力なpKal阻害剤であることがわかった。比較用にDX-2922のアミノ酸配列が示してある。3つ親和性成熟抗体(X115-B07、X115-E09およびX115-H06)がHv-CDR3中に変異を含むのに対し、X115-D05は異なるHv-CDR1/CDR2を有するということが明らかである。他の4つの見出された抗体(X115-F02、X115-A03、X115-D01およびX115-G04)はM162-A04親抗体に由来するものである。8つの親和性成熟抗体は、すべてプレカリクレインと結合しない。
【0820】
【0821】
【0822】
平衡K
i,app測定
酵素と阻害剤溶液をプレインキュベートした後、基質との反応を開始させて見かけの阻害定数(K
i,app値)を測定した。96ウェルプレート中、10μLの10×酵素溶液と10μLの10×阻害剤溶液を70μLの反応緩衝液に加えて、酵素と阻害剤を30℃で2時間プレインキュベートした。10μLの10×基質濃縮ストックを加えて反応を開始させ、励起波長/発光波長をそれぞれ360nm/460nmに設定した蛍光プレートリーダーにより30℃でモニターした。蛍光の増加により動力学データを得、各条件での初速度を合計阻害剤濃度に対してプロットした。強く結合する阻害剤ではデータを下の等式に当てはめた:
【数3】
式中、A=各阻害剤濃度で観察された初速度;A
o=阻害剤の非存在下で観察された初速度;A
inh=酵素阻害剤複合体で観察された初速度;Inh=阻害剤の濃度;E=合計酵素濃度(浮動パラメーターとして処理);およびK
i,app=見かけの平衡阻害定数。
【0823】
抗体阻害剤のグループ
グループ1の抗体は、ヒトおよびマウスpKalを阻害するが、プレカリクレインと結合しない。グループ2の抗体はヒトpKalを阻害するが、マウスpKalは阻害せず、またプレカリクレインと結合しない。グループ3の抗体は、ヒトおよびマウスpKalを阻害するが、プレカリクレインと結合する。
【0824】
例示的カリクレイン抗体epi-Kal2とのBiacore競合解析
Epi-Kal2は、カリクレインの活性部位と結合することにより作用するカリクレイン抗体阻害剤である(配列は実施例8を参照されたい)。本明細書ではBiacore競合解析を、試験カリクレイン抗体がepi-Kal2と同じ部位と結合するか否かを判定するためのアッセイとして用い、活性部位との結合に関するepi-Kal2と試験抗体との間の競合(例えば、置換)を測定することにより評価する。
【0825】
CM5センサーチップ上にヤギ抗ヒトFcフラグメント特異的IgGまたは抗ヒトFab IgGを、アミンカップリングにより約5000RUの固定化密度で固定化した。IgG/sFabの50nM溶液を5μl/分で1~2分間注入することにより、抗pKal抗体またはsFabをそれぞれの表面で捕捉した。捕捉されたIgGまたはsFab上にヒトpKal(100nM)またはヒトpKal-ep-kal2複合体(1μMのepi-kal2とともに室温で1時間プレインキュベートした100nMのhpKal)を20~50μl/分で5分間注入し、次いで5~10分間の分離段階を行った。分離段階終了時に結合反応を記録した。pKal-epi-kal2複合体と抗pKal抗体との結合がhpKalのみの注入と比べて有意に減少(>70%)した場合、抗pKal IgGまたはsFabは、ヒトpKalとの結合に関してepi-kal2と競合するものと見なした。10mMグリシン(pH1.5)の流速100μl/分でのパルスによりセンサーチップ表面を再生した。ランニング緩衝液としてHBS-P(10mMのHEPES(pH7.4)、150mMのNaClおよび0.005%の界面活性剤P20)を用いて、25℃で測定を行った。epi-Kal2に関するBiacore競合解析の結果を本明細書の
図11Aおよび11Bに示す。
【0826】
低分子カリクレイン阻害剤AEBSFとのBiacore競合解析
AEBSF(すなわち、4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホン酸フルオリド・塩酸塩)はカリクレインの低分子阻害剤である。本明細書では、カリクレイン阻害でAEBSFにより利用される部位と同じ部位(または重複する部位)で試験抗体が結合するか否かをBiacore競合解析を用いて判定する。
【0827】
CM5センサーチップ上にヤギ抗ヒトFcフラグメント特異的IgGまたは抗ヒトFab IgGを、アミンカップリングにより約5000RUの固定化密度で固定化した。IgG/sFabの50nM溶液を5μl/分で1~2分間注入することにより、抗pKal IgGまたはsFabをそれぞれの表面で捕捉した。捕捉されたIgGまたはsFab上にヒトpKal(100nM)またはヒトpKal-AEBSF複合体(1μMのAEBSFとともに室温で1時間プレインキュベートした100nMのhpKal)を20~50μl/分で5分間注入し、次いで5~10分間の分離段階を行った。分離段階終了時に結合反応を記録した。pKal-AEBSF複合体と抗pKal抗体との結合がhpKalのみの注入と比べて有意に減少(>70%)した場合、抗pKal IgGまたはsFabは、ヒトpKalとの結合に関してAEBSFと競合するものと見なした10mMグリシン(pH1.5)の流速100μl/分でのパルスによりセンサーチップ表面を再生した。ランニング緩衝液としてHBS-P(10mMのHEPES(pH7.4)、150mMのNaClおよび0.005%の界面活性剤P20)を用いて、25℃で測定を行った。AEBSFに関するBiacore競合解析の結果を本明細書の
図12に示す。
【0828】
8つの例示の親和性成熟抗pKal抗体の軽鎖可変領域(LV)および重鎖可変領域(HV)領域を以下に示す:
【表26】