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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188313
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】基板貼り合わせ装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20221214BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20221214BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/68 F
H01L21/68 N
H01L21/68 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019214158
(22)【出願日】2019-11-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛島 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】大森 薫
(72)【発明者】
【氏名】三ッ石 創
(72)【発明者】
【氏名】塩見 隆
(72)【発明者】
【氏名】角田 真生
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA21
5F131AA22
5F131BA15
5F131BA37
5F131BA43
5F131BA51
5F131DA02
5F131DA32
5F131DA33
5F131DA36
5F131DA42
5F131DA54
5F131DA62
5F131DA67
5F131DB52
5F131DB76
5F131EA04
5F131EA05
5F131EA07
5F131EA22
5F131EA23
5F131EA27
5F131EB52
5F131EB63
5F131EB75
5F131EB78
5F131EC62
5F131EC72
5F131FA32
5F131GA05
5F131GA26
5F131GA32
5F131GA52
5F131GB02
5F131GB04
5F131GB12
5F131KA14
5F131KA16
5F131KA34
5F131KA47
5F131KA72
5F131KB07
5F131KB12
5F131KB32
5F131KB53
(57)【要約】
【課題】基板の貼り合わせの進行状態を検出する。
【解決手段】基板貼り合わせ装置は、基板211,213の少なくとも一方を挟んで配置される一対の電極351a及び一対の電極に含まれる2つの電極間の静電特性を検出する検出部353aを備える。基板の間にそれぞれの一部を接触させて接触領域を形成し、接触領域を面方向に拡大させる際に、検出部により、基板211,213の少なくとも一方を挟んで配置される一対の電極351aに含まれる2つの電極間の静電特性を検出することで、接触領域の状態、すなわち基板の貼り合わせ過程を検出することができる。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板及び第2の基板を貼り合わせる基板貼り合わせ装置であって、
前記第1の基板及び前記第2の基板の少なくとも一方を挟んで配置される一対の電極と、
前記一対の電極間の静電特性を検出する検出部と、
を備える基板貼り合わせ装置。
【請求項2】
前記一対の電極は、前記第1の基板及び前記第2の基板の貼り合せ面の面方向に前記第1の基板及び前記第2の基板を挟んで配置される、請求項1に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項3】
前記一対の電極のうちの少なくとも一方は、前記第1の基板及び前記第2の基板の少なくとも一方の端面に対向する電極面を有し、前記電極面は、前記第1の基板及び前記第2の基板が重なる方向に沿って幅が変化する形状を有する、請求項2に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項4】
前記一対の電極のうちの少なくとも一方は、前記面方向に交差する方向に対して傾いて配置される、請求項2又は3に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項5】
前記一対の電極は、前記面方向について前記第1の基板及び前記第2の基板の間の接触領域を挟んで前記第1の基板及び前記第2の基板の側方に互いに対向して配置される、請求項2から4のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記一対の電極を前記第1の基板及び前記第2の基板の周方向に移動可能とするガイドを有する、請求項5に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項7】
前記一対の電極は、前記第1の基板及び前記第2の基板の間の接触領域から前記面方向に平行な第1方向に離間する前記第1の基板及び前記第2の基板の縁部を前記第1方向に交差する第2方向に挟んで互いに対向して配置される、請求項2から4のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項8】
前記検出部は、前記一対の電極を前記第1方向に移動可能とするガイドを有する、請求項7に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項9】
前記第1の基板及び前記第2の基板の間の接触領域を挟んで前記第1の基板及び前記第2の基板の側方に互いに対向して配置される一対の第1電極と、前記第1の基板及び前記第2の基板の縁部を挟んで前記第1の基板及び前記第2の基板の側方に互いに対向して配置される一対の第2電極と、を備え、
前記一対の第1電極は、前記一対の第2電極より大きい電極面を有する、請求項2から8のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項10】
前記一対の電極を含む複数の電極対を備え、
前記検出部は、前記複数の電極対のそれぞれについて異なる周波数の交流信号を用いて静電特性を検出する、請求項1から9のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項11】
前記一対の電極を複数の電極対のなかから選択して組み替えるセレクタをさらに備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項12】
前記一対の電極を前記第1の基板及び前記第2の基板の側方から退避させる電極駆動装置を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項13】
前記静電特性の検出結果に基づいて前記第1の基板及び前記第2の基板の間の接触領域の状態を判断する判断部をさらに備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項14】
前記静電特性の検出結果に基づいて前記第1の基板および前記第2の基板の少なくとも一方の傾きを制御する制御部をさらに備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項15】
前記一対の電極のうちの少なくとも一方は、前記第1の基板が前記第2の基板に貼り合わせられた後の前記第1の基板の背面側に配置され、又は、前記第1の基板が前記第2の基板に貼り合わせられた後に前記第1の基板に対向し、前記第1の基板が前記第2の基板に貼り合わせられる前は前記第1の基板に対向しない位置に配置される、請求項1から13のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項16】
第1の基板及び第2の基板を貼り合わせる基板貼り合わせ方法であって、
前記第1の基板及び前記第2の基板の間にそれぞれの一部が互いに接触する接触領域を形成する段階と、
前記接触領域を拡大させる段階と、
前記第1の基板及び前記第2の基板の少なくとも一方を挟んで配置された一対の電極間の静電特性を検出する段階と、
を含む基板貼り合わせ方法。
【請求項17】
前記一対の電極を、前記第1の基板及び前記第2の基板の貼り合せ面の面方向に前記第1の基板及び前記第2の基板を挟んで配置する、請求項16に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項18】
前記一対の電極を配置する段階に先立って、前記第1の基板及び前記第2の基板のそれぞれのアライメントマークを検出する段階をさらに備える、請求項16又は17に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項19】
前記静電特性の検出結果に基づいて前記接触領域の状態を判断する段階をさらに含む、請求項16から18のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項20】
前記静電特性の検出結果に基づいて前記第1の基板および前記第2の基板の少なくとも一方の傾きを制御する段階をさらに含む、請求項16から19のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板貼り合わせ装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置などの電子デバイスの製造において、2つの基板の表面を活性化し、活性化したそれぞれの表面の一部を接触させて接触領域を形成し、その接触領域を貼り合わせ面に沿った方向に拡大させることで2つの基板を貼り合わせる技術が採用されている。ここで、基板の状態等によって貼り合わせの進行が変わることがあるため、貼り合わせの進行状態を検出する技術が必要とされる。そこで、特許文献1には、平面視において接触領域の位置から並べて設けられた複数の受光部を用いて、貼り合わせる2つの基板の一方を介して他方からの反射光を受光して貼り合わせの進行状態を検出する装置が開示されている。しかしながら、複数の受光部を、基板を保持するホルダ又はホルダを保持するステージ内に配置する必要があり、不都合である。
特許文献1 特開2012-191037号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、第1の基板及び第2の基板を貼り合わせる基板貼り合わせ装置であって、第1の基板及び第2の基板の少なくとも一方を挟んで配置される一対の電極と、一対の電極間の静電特性を検出する検出部と、を備える基板貼り合わせ装置が提供される。
【0004】
本発明の第2の態様においては、第1の基板及び第2の基板を貼り合わせる基板貼り合わせ方法であって、第1の基板及び第2の基板の間にそれぞれの一部が互いに接触する接触領域を形成する段階と、接触領域を拡大させる段階と、第1の基板及び第2の基板の少なくとも一方を挟んで配置された一対の電極間の静電特性を検出する段階と、を含む基板貼り合わせ方法が提供される。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】基板貼り合わせシステムの構成を概略的に示す。
図2】基板貼り合わせシステムにより貼り合わせられる基板の表面構成を示す。
図3】貼り合わせ装置の構成を概略的に示す。
図4A】貼り合わせ検出装置の構成を概略的に示す。
図4B】貼り合わせ検出装置の別の構成を概略的に示す。
図5A】電極対の配置の一例を示す。
図5B図5Aの電極対の配置に対する変形例を示す。
図6A】電極対の配置の別の例を示す。
図6B図6Aの電極対の配置に対する変形例を示す。
図7A】基板を保持したホルダの断面構成を概略的に示す。
図7B】基板を保持した別のホルダの断面構成を概略的に示す。
図8A】基板貼り合わせ工程における基板の状態(2つの基板が位置合わせされた状態)を示す。
図8B】基板貼り合わせ工程における基板の状態(接触領域が形成された状態)を示す。
図8C】基板貼り合わせ工程における基板の状態(ボンディングウェイブが進行中の状態)を示す。
図8D】基板貼り合わせ工程における基板の状態(貼り合わせが終了した状態)を示す。
図9A】電極形状と基板の変位検出の原理を示す。
図9B】電極形状と基板の変位検出の原理を示す。
図9C】基板貼り合わせ工程中における基板の変位検出の結果の一例を示す。
図9D】基板貼り合わせ工程中における基板の変位検出の結果の別の例を示す。
図10A】電極形状と基板の変位検出の別の原理を示す。
図10B】電極形状と基板の変位検出の別の原理を示す。
図10C】基板貼り合わせ工程中における基板の変位検出の結果の一例を示す。
図11A】変形例に係る電極形状と基板の変位検出の原理を示す。
図11B】変形例に係る電極形状と基板の変位検出の原理を示す。
図12】基板貼り合わせ手順のフローを示す。
図13A】貼り合わせ装置における基板貼り合わせ手順の一工程(基板の搬入)を示す。
図13B】貼り合わせ装置における基板貼り合わせ手順の一工程(アライメントマークの検出)を示す。
図13C】貼り合わせ装置における基板貼り合わせ手順の一工程(基板の表面の活性化)を示す。
図13D】貼り合わせ装置における基板貼り合わせ手順の一工程(基板の位置合わせ)を示す。
図13E】貼り合わせ装置における基板貼り合わせ手順の一工程(電極対の配置)を示す。
図13F】貼り合わせ装置における基板貼り合わせ手順の一工程(貼り合わせの起点の形成)を示す。
図13G】貼り合わせ装置における基板貼り合わせ手順の一工程(貼り合わせ基板の搬出)を示す。
図14A】電極配置の変形例と基板の変位検出の原理を示す。
図14B】電極配置の変形例と基板の変位検出の原理を示す。
図15A】第1の変形例に係る貼り合わせ検出装置の構成を概略的に示す。
図15B】第1の変形例に係る貼り合わせ検出装置の構成を概略的に示す。
図16A】第2の変形例に係る貼り合わせ検出装置の構成を概略的に示す。
図16B】第2の変形例に係る貼り合わせ検出装置の構成を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1に、基板貼り合わせシステム100の構成を概略的に示す。基板貼り合わせシステム100は、2つの基板を貼り合わせて積層デバイスを形成するための装置群であり、筐体110、搬送装置140、制御装置150、貼り合わせ装置300、ホルダストッカ400、及びプリアライナ500を備える。なお、貼り合わされる基板210は基板カセット120に収容され、貼り合わされた基板(貼り合わせ基板とも呼ぶ)230は基板カセット130に収容されている。
【0009】
筐体110は、搬送装置140、貼り合わせ装置300、ホルダストッカ400、及びプリアライナ500を内部に収容する。筐体110の内部は温度管理され、例えば室温に保たれている。筐体110の外側から基板カセット120,130をそれぞれ個別に着脱可能に固定することができる。基板カセット120により複数の基板210を一括して基板貼り合わせシステム100に搬入し、基板カセット130により貼り合わされた複数の貼り合わせ基板230を一括して基板貼り合わせシステム100から搬出することができる。
【0010】
搬送装置140は、伸縮回動可能なアームにより基板210,230を保持して、基板カセット120,130及び筐体110内の各装置の間で搬送する装置である。搬送装置140は、単独の基板210、ホルダ220、基板210を保持したホルダ220、基板210を貼り合わせて積層された基板230等を搬送する。
【0011】
制御装置150は、基板貼り合わせシステム100の各装置を相互に連携させて統括的に制御する装置である。制御装置150は、外部からのユーザの指示を受け付けて、貼り合わせ基板230を製造する場合の製造条件を設定する。さらに、制御装置150は、基板貼り合わせシステム100の動作状態を外部に向かって表示するユーザインターフェイスを有する。
【0012】
貼り合わせ装置300は、2つの基板210の間にそれぞれの一部が互いに接触する接触領域を形成し、その接触領域を貼り合わせ面に沿った方向(面方向とも呼ぶ)に拡大させることで2つの基板を直接貼り合わせて、貼り合わせ基板230を形成する装置である。なお、基板211,213の接触領域が拡大してその境界が面方向に進むことをボンディングウェイブが進行すると表現することがある。ここで、貼り合わせとは、2つの基板210にそれぞれ設けられた端子同士が基板210間で電気的に接続されている状態及び2つの基板210の表面に形成された絶縁膜同士が接合して基板210間が電気的に接続されていない状態を含み、いずれの状態においても、2つの基板210の分離が可能な状態及び不可能な状態の両方を含む。2つの基板210の接合強度を向上させるために、2つの基板210を貼り合わせた後に、基板210をアニール炉のような加熱装置に搬入して加熱することが好ましい。貼り合わせ装置300の構成及び動作については後述する。
【0013】
ホルダストッカ400は、複数のホルダ220を収容する。ホルダ220は、アルミナセラミックス等の硬質材料により形成され、基板210を吸着する保持部と、保持部の外側に配された縁部とを有する。基板貼り合わせシステム100の内部において、ホルダ220は保持部により基板210を吸着保持し、基板210と一体的に取り扱われる。これにより、保持部の吸着面が平坦な場合は、反ったり撓んだりした基板210に平坦性を確保することができる。基板210の貼り合わせ後、貼り合わせ基板230を基板貼り合わせシステム100から搬出する際、ホルダ220は、貼り合わせ基板230から分離されて、再びホルダストッカ400に収容される。これにより、少数のホルダ220を繰り返し使用することができる。
【0014】
プリアライナ500は、搬送装置140と協働して、基板貼り合わせシステム100に搬入された基板210をホルダ220に保持させる。また、プリアライナ500は、貼り合わせ装置300から搬出された貼り合わせ基板230をホルダ220から分離する場合に使用してもよい。
【0015】
基板貼り合わせシステム100は、素子、回路、端子等が形成された基板210の他に、未加工のシリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、ガラス基板等を貼り合わせることもできる。また、回路が形成された回路基板と未加工の基板とを貼り合わせることも、回路基板同士、未加工基板同士等、同種の基板を貼り合わせることもできる。さらに、接合される基板210は、それ自体が、既に複数の基板を積層して形成された貼り合わせ基板230であってもよい。
【0016】
図2に、基板貼り合わせシステム100により貼り合わせられる基板210の表面構造を示す。基板210は、ノッチ214、複数の回路領域216、及び複数のアライメントマーク218を有する。
【0017】
ノッチ214は、全体として略円形の基板210の周縁に形成されて、基板210における結晶方位を示す指標となる。また、基板210を取り扱う場合は、ノッチ214の位置を検出することにより、基板210における回路領域216の配列方向等も知ることができる。さらに、1枚の基板210に、互いに異なる回路を含む回路領域216が形成されている場合は、ノッチ214を基準にして、回路領域216を区別することができる。
【0018】
回路領域216は、基板210の表面に、基板210の面方向に周期的に配される。回路領域216の各々には、フォトリソグラフィ技術等より形成された半導体装置、配線、保護膜等が設けられる。回路領域216には、基板210を他の基板210、リードフレーム等に電気的に接続する場合に接続端子となるパッド、バンプ等も配される。
【0019】
アライメントマーク218は、例えば、回路領域216相互の間に配されたスクライブライン212に重ねて配され、基板210を積層対象である他の基板210と位置合わせする場合に指標として利用される。
【0020】
図3に、貼り合わせ装置300の構造を概略的に示す。貼り合わせ装置300には、基板211,213がそれぞれホルダ221,223に保持されて搬入されている。貼り合わせ装置300は、枠体310、上ステージ322、下ステージ332、干渉計341、顕微鏡324,334、活性化装置326,336、及び貼り合わせ検出装置350を備える。
【0021】
枠体310は、貼り合わせ装置300の構成各部を支持する部材であり、水平な床面(不図示)上に防振装置(不図示)を介して設置される底板312、底板312上に立設される複数の支柱314、複数の支柱314により支持される天板316を有する。
【0022】
上ステージ322は、基板211を支持するステージであり、枠体310の天板316に基板211を保持する保持面を下方に向けて固定されている。ここで、基板211は、ホルダ221に保持され、これを介して保持面に真空チャック又は静電チャックにより保持される。
【0023】
下ステージ332は、上ステージ322に保持された基板211に対向して、基板213を支持するステージである。下ステージ332は、枠体310の底板312上に配されたX方向駆動部331、X方向駆動部331上に配されるY方向駆動部333、及びY方向駆動部333内に昇降可能に配される昇降駆動部338を有し、これにより基板213を支持する下ステージ332をXY方向、すなわち水平方向及びZ軸方向、すなわち垂直方向に駆動する。ここで、基板213は、ホルダ223に保持され、これを介してステージ上の保持面に真空チャック又は静電チャックにより保持される。
【0024】
ここで、X方向駆動部331は、底板312上をX軸方向に移動する。Y方向駆動部333は、X方向駆動部331上をY軸方向に移動する。これらの駆動部の動作を組み合わせることで、下ステージ332は底板312上をXY方向に移動する。これにより、下ステージ332上に支持した基板213を、上ステージ322に支持した基板211に対して位置合わせすることができる。
【0025】
また、昇降駆動部338は、Y方向駆動部333に対してZ軸方向に昇降する。下ステージ332は、昇降駆動部338上に支持される。これにより、下ステージ332に支持した基板213を、上ステージ322に支持した基板211に押し付けることができる。
【0026】
なお、X方向駆動部331及びY方向駆動部333を粗動部及び微動部として構成してもよい。それにより、粗動部による高いスループットと微動部による高精度な位置合わせとを組み合わせて、下ステージ332に支持された基板213を高精度且つ高速に位置合わせすることが可能となる。
【0027】
なお、下ステージ332をZ軸回りに回転させる回転駆動部及び下ステージ332を揺動させる揺動駆動部をさらに設けてもよい。回転駆動部により下ステージ332に保持された基板213を回転させ、揺動駆動部により下ステージ332を上ステージ322に対して平行にすることで、基板211,213の位置合わせ精度を向上することができる。
【0028】
干渉計341は、下ステージ332の位置を測定する測定器であり、一例として枠体310の左側の支柱314に固定されている。干渉計341は、下ステージ332(ここでは、Y方向駆動部333)の側面に設けられた鏡面に測定光を投射し、反射光を参照光(不図示)と重ねて検出することで、下ステージ332の水平方向の位置を測定する。その測定結果は、制御装置150に供給される。
【0029】
顕微鏡324は、下ステージ332上に支持された基板213のアライメントマークを検出する検出系であり、枠体310の天板316に下方に向けて固定されている。顕微鏡324の検出結果は、制御装置150に供給される。
【0030】
顕微鏡334は、上ステージ322上に支持された基板211のアライメントマークを検出する検出系であり、下ステージ332(ここでは、Y方向駆動部333)の上面左に上方に向けて固定されている。顕微鏡334の検出結果は、制御装置150に供給される。
【0031】
活性化装置326は、下ステージ332上に保持された基板213の上面を清浄化するプラズマを発生する装置であり、枠体310の天板316に下方に向けて固定されている。
【0032】
活性化装置336は、上ステージ322上に支持された基板211の表面を清浄化するプラズマを発生する装置であり、下ステージ332(ここでは、Y方向駆動部333)の上面左に上方に向けて固定されている。
【0033】
なお、下ステージ332の位置、或いは顕微鏡324,334の相対位置は、下ステージ332を駆動して顕微鏡334を顕微鏡324の直下に位置決めし、顕微鏡324,334を相互に又は共通の指標に対して合焦して、干渉計341の測定光の光軸により定まる測定座標をリセットすることで較正することができる(図13A参照)。顕微鏡324,334の相対位置はベースラインとも呼び、斯かる相対位置の較正をベースライン計測とも呼ぶ。
【0034】
貼り合わせ検出装置350は、基板211,213の貼り合わせ状態を検出する装置であり、複数の電極351、電極駆動装置352、及び検出部353を含む。
【0035】
複数の電極351は、基板211のZ軸方向の位置を検出するための電極であり、基板211,213の面方向について基板211,213を非接触で挟んで配置された少なくとも一対の電極を含む。ここで、一対の電極の互いに対向する電極面のうちの少なくとも一方は、面方向であるXY方向に交差する方向、すなわちZ軸方向に沿って幅が変化する形状を有する。本実施形態では、円形とするが、これに限らず、楕円、三角形、菱形、台形等でもよい。それにより、基板211がZ軸方向に動くことにより、基板211と対向する電極の部分の幅或いは面積Sが変わり、これにより一対の電極間の静電容量、又は、静電容量と正又は負の相関がある測定量(これらを静電特性と総称する)が変化する。ここで、電極間の静電容量Cは、基板211により支配的に定まると仮定すると、誘電率ε及び一対の電極の離間距離Dを用いてC=εS/Dと与えられる。複数の電極351の配置についてはさらに後述する。
【0036】
なお、三角形、菱形、台形等の多角形状の電極面を有する電極の場合、基板211のZ軸方向の位置Zに対する基板211と対向する電極の部分の面積S(Z)の関係が線形になるため、電極間の静電特性Cの基板211のZ位置に対する線形性が得られる。これに対して、円形等の電極の場合、基板211のZ位置に対する基板211と対向する電極の部分の面積S(Z)の関係は非線形であるため、Z位置と面積S(Z)の関係を用いてZ位置に対する電極間の静電特性Cの関係を線形化してもよい。
【0037】
電極駆動装置352は、図示の例では、複数の電極351を基板211,213の側方に移動するとともに基板211,213の側方から退避する装置である。電極駆動装置352は、枠体310の天板316で上ステージ322の側方に固定され、例えば電磁モータにより複数の電極351をZ軸方向に駆動する。電極駆動装置352は、上ステージ322に基板211を搬入する際には、複数の電極351を、基板211に接触しない位置に退避し、アライメントマークの検出時など下ステージ332が移動する際には、複数の電極351を、基板213に接触しない位置に退避する。
【0038】
なお、電極駆動装置352は、複数の電極351に含まれる電極対を構成する2つの電極を互いに近づく方向、互いに離れる方向、または、互いに異なる方向に移動させることで、複数の電極351を基板211,213の側方に移動する又は基板211,213の周囲から退避することとしてもよい。また、電極駆動装置352は、複数の電極351を基板211,213の側方に移動せず、側方から退避するのみでもよい。
【0039】
なお、上ステージ322が十分なストロークで昇降するとともに顕微鏡324が十分大きな範囲の焦点深度を有する場合には、複数の電極351を昇降するに代えて上ステージ332及び下ステージ332を昇降することで複数の電極351を基板211,213の側方に移動するとともに側方から退避することとしてもよい。斯かる場合、電極駆動装置352を設けなくてよい。また、複数の電極351の全てを移動させる必要はなく、複数の電極351の一部の電極351を移動させてもよい。
【0040】
検出部353は、複数の電極351に含まれる少なくとも一対の電極間の静電特性を検出する。静電特性は、例えば、交流電圧を一対の電極間に入力してこれから出力される交流電流を検出し、交流電圧及び電流の比よりインピーダンスを算出することにより検出することができる。検出結果は制御装置150に送信される。それにより、基板211のZ軸方向に関する位置及び動きを検出することができ、ひいては基板211,213の貼り合わせにおける接触領域の拡大過程等の状態を検出することができる。検出部353は、電極対毎に設けられても、全ての電極対について共通に設けられてもよい。
【0041】
図4Aに示す例では、複数の電極351は対となる2つの電極の組みを複数含んでおり、2つの電極351aを有する電極対351A、2つの電極351bを有する電極対351B、2つの電極351cを有する電極対351C、2つの電極351dを有する電極対351D、および、2つの電極351eを有する電極対351Eを含む。なお、図4Aに示すように、電極対351A~351E毎に検出部353a~353eを設けてもよい。斯かる場合、検出部353a~353eはそれぞれ独立に、電極対351A~351Eのうちの対応する電極対を構成する2つの電極351a~351e間(例えば、検出部353aは電極対351Aを構成する2つの電極351a間)の静電特性を検出し、その検出結果を制御装置150に送信する。また、複数の電極対351A~351Eのそれぞれに対して1つの検出部353を設けてもよい。斯かる場合、検出部353は、複数の電極対351A~351Eのそれぞれについて異なる周波数の交流信号を用いて静電特性を検出してもよい。それにより、混線することなく、それぞれの検出信号を重畳して一度に静電特性を検出することができる。或いは、図4Bに示すように、複数の電極351a~351eの中から任意の2つを選択して複数の電極対351A~351Eのいずれかに組み替えるセレクタ354をさらに設け、このセレクタ354により複数の電極対351A~351Eを順次、検出部353に接続することとしてもよい。検出部353は、セレクタ354により接続される電極対351A~351Eのそれぞれの2つの電極351a~351e間の静電特性を順次検出し、その検出結果を制御装置150に送信する。
【0042】
なお、制御装置150は、電極対351A~351Eのそれぞれの2つの電極351a~351e間の静電特性の検出結果に基づいて接触領域の状態を判断する判断部150a及び判断部150aの判断結果に基づいて基板211,213の間の傾きを制御する制御部150bを含む。判断部150aにより接触領域215の拡大が一様でないと判断された場合、制御部150bにより、下ステージ332を制御して接触領域215の拡大の速い又は遅い方向への基板211に対する基板213の傾きを大きく又は小さくすることで接触領域215を一様に拡大することができる。
【0043】
図4A及び図4Bに、貼り合わせ検出装置350の複数の電極351の配置の一例を平面視において示す。基板211,213は、一例として、それぞれの中央の一部を接触させて接触領域215を形成しているものとする。なお、図面上下方向を縦方向、図面左右方向を横方向とする。
【0044】
4つの電極対351A~351Dにそれぞれ含まれる2つの電極351a~351dは、上ステージ322及び下ステージ332にそれぞれ支持された基板211,213の縁部を挟んで互いに対向して配置される。一対の電極351aは、平面視において、接触領域215から左方向に離間する基板211,213の左縁部を縦方向に挟んで配置される。一対の電極351bは、平面視において、接触領域215から右方向に離間する基板211,213の右縁部を縦方向に挟んで配置される。一対の電極351cは、平面視において、接触領域215から上方向に離間する基板211,213の上縁部を横方向に挟んで配置される。一対の電極351dは、平面視において、接触領域215から下方向に離間する基板211,213の下縁部を横方向に挟んで配置される。電極対351A~351Dのそれぞれの2つの電極351a~351d間の静電特性を検出することで、各縁部において接触領域の拡大の終了を検知することができる。
【0045】
電極対351Eに含まれる2つの電極351eは、面方向について接触領域215の中心を通る直線上で上ステージ322及び下ステージ332にそれぞれ支持された基板211,213の側方に、すなわち平面視においてそれぞれ右上及び左下に互いに対向して配置されている。一対の電極351eの静電特性を検出することで、基板の貼り合わせ時における接触領域の拡大過程を検出することができる。
【0046】
なお、電極351eは、電極351a~351dより大きい電極面を有する。図4A及び図4Bに示したように、平面視において、電極351a~351dと干渉しないように電極351eを電極351a~351dの外側に配置した場合に、電極対351Eより得られる信号強度が他の電極対351A~351Dより得られる信号強度に対して小さくならないよう維持することができる。
【0047】
図5A図6Bに、さらに、複数の電極351の配置の別の例を示す。
【0048】
図5Aに示す例では、複数の電極351は対となる2つの電極の組みを複数含み、2つの電極351aを有する電極対351A、2つの電極351bを有する電極対351B、2つの電極351cを有する電極対351C、及び2つの電極351dを有する電極対351Dを含む。4つの電極対351A~351Dにそれぞれ含まれる2つの電極351a~351dが、それぞれ、面方向について接触領域215を挟んで、45度の角度間隔を介して、基板211,213の側方に互いに対向して配置されている。電極対351A~351Dのそれぞれの静電特性を検出することで、基板の貼り合わせ時における各方向の接触領域215の拡大過程を検出することができる。なお、電極対の数は4つに限らず2以上の複数であってよい。
【0049】
図5Bに示す例は、図5Aに示した例に対する変形例であり、電極対351Aに含まれる2つの電極351aを基板211,213の周方向に回動可能に支持するガイド355が設けられている。2つの電極351aは、面方向について接触領域215を挟んで基板211,213の側方に互いに対向して配置され、ガイド355に沿って周方向の位置を任意に変えることができる。2つの電極351aの周方向の位置を変えつつ、それらの間の静電特性を検出することで、基板の貼り合わせ時における任意の方向への接触領域215の拡大過程を検出することができる。なお、電極対の数は1つに限らず複数であってよい。
【0050】
図6Aに示す例では、複数の電極351は対となる2つの電極の組みを複数含み、2つの電極351aを有する電極対351A、2つの電極351bを有する電極対351B、2つの電極351cを有する電極対351C、2つの電極351dを有する電極対351D、2つの電極351eを有する電極対351E、2つの電極351fを有する電極対351F、2つの電極351gを有する電極対351G、及び2つの電極351hを有する電極対351Hを含む。8つの電極対351A~351Hのそれぞれに含まれる2つの電極351a~351hが基板211,213の側方に互いに基板211,213を挟んで対向して配置されている。
【0051】
3つの電極対351A~351Cは、平面視において、それぞれの対に含まれる2つの電極351a~351cで基板211,213の左縁部、中央の接触領域215、及び右縁部を縦方向に挟んで、横方向に互いに離間して配置される。ここで、各対の一方の電極351a~351cが基板211,213の上に、横方向に直線上に並んで配置され、他方の電極351a~351cが基板211,213の下に、横方向に直線上に並んで配置される。
【0052】
3つの電極対351D~351Fは、平面視において、それぞれの対に含まれる2つの電極351d~351fで基板211,213の上縁部、中央の接触領域215、及び下縁部を横方向に挟んで、縦方向に互いに離間して配置される。ここで、各対の一方の電極351d~351fが基板211,213の左に、縦方向に直線上に並んで配置され、他方の電極351d~351fが基板211,213の右に、縦方向に直線上に並んで配置される。
【0053】
電極対351Gに含まれる2つの電極351gは、平面視において、接触領域215を挟んで基板211,213の右上及び左下に配置される。
【0054】
電極対351Hに含まれる2つの電極351hは、平面視において、接触領域215を挟んで基板211,213の左上及び右下に配置される。
【0055】
電極対351A~351Hのそれぞれの静電特性を検出することで、電極対351Bの静電特性より接触領域215の縦方向の拡大過程を検出するとともにその終了を電極対351D,351Fの静電特性より検知することができ、電極対351Eの静電特性より接触領域215の横方向の拡大過程を検出するとともにその終了を電極対351A,351Cの静電特性より検知することができ、電極対351G,351Hの静電特性より接触領域215の各斜め方向の拡大過程を検出することができる。
【0056】
図6Bに示す例は、図6Aに示した例に対する変形例であり、電極対351Aに含まれる2つの電極351aを横方向に移動可能に支持する一対のガイド356及び電極対351Dに含まれる2つの電極351dを縦方向に移動可能に支持する一対のガイド357が設けられている。
【0057】
2つの電極351aのうちの一方は、基板211,213の縦方向の一側に配置され、他方は他側に配置され、基板211,213を挟んで互いに対向している。2つの電極351aをガイド356に沿って移動することにより、電極対351Aの横方向の位置を任意に変えることができる。電極対351Aの横方向の位置を変えつつ、電極対351Aに含まれる2つの電極351a間の静電特性を検出することで、基板の貼り合わせ時における横方向の各位置での接触領域215の拡大過程又はその終了を検出することができる。なお、電極対351Aの数は1つに限らず複数であってよい。
【0058】
2つの電極351dのうちの一方は、基板211,213の横方向の一側に配置され、他方は他側に配置され、基板211,213を挟んで互いに対向している。2つの電極351dをガイド357に沿って移動することにより、電極対351Dの縦方向の位置を任意に変えることができる。電極対351Dの縦方向の位置を変えつつ、電極対351Dに含まれる2つの電極351d間の静電特性を検出することで、基板の貼り合わせ時における縦方向の各位置での接触領域215の拡大過程又はその終了を検出することができる。なお、電極対351Dの数は1つに限らず複数であってよい。
【0059】
基板211,213の貼り合わせ原理について説明する。
【0060】
図7Aに、貼り合わせ装置300に搬入された基板211を保持したホルダ221の断面構成を概略的に示す。ホルダ221は、静電チャック、真空チャック等により基板211を保持面222に吸着保持する。ここで、保持面222は、中央側が高く、周縁が低い湾曲した形状を有する。これにより、保持面222に吸着保持された基板211は保持面222に密着して中央側が突出した凸状に湾曲し、その形状が維持される。なお、ホルダ221の保持面222の形状は、球面、放物面、円筒面等であってもよい。貼り合わせ装置300において、凸状に湾曲した基板211がホルダ221を介して上ステージ322に支持される。
【0061】
図7Bに、基板213を保持したホルダ223の断面構成を概略的に示す。ホルダ223は、静電チャック、真空チャック等により基板213を保持面224に吸着保持する。ここで、保持面224は、平坦な形状を有する。これにより、保持面224に吸着保持された基板213は保持面224に密着して平坦になり、その形状が維持される。貼り合わせ装置300において、基板213がホルダ223を介して下ステージ332に支持される。
【0062】
図8Aに、基板貼り合わせ工程における2つの基板211,213が位置合わせされた状態を示す。基板211は、ホルダ221に保持されて中央が凸状に湾曲し、ホルダ221を介して上ステージ322に下向きに支持され、基板213は、ホルダ223に平坦に保持され、ホルダ223を介して下ステージ332に上向きに支持され、下ステージ332を面方向に駆動して基板211の直下に基板213が位置決めされている。なお、基板211,213の少なくとも一方の表面は、活性化装置326,336を用いたプラズマ暴露により活性化されている。このとき、貼り合わせ検出装置350の複数の電極351は、電極駆動装置352により基板211,213の側方に配置されている。
【0063】
図8Bに、基板貼り合わせ工程における2つの基板211,213の間に接触領域215が形成された状態を示す。上ステージ322にホルダ221を介して支持された基板211の中央が凸状に湾曲していることで、昇降駆動部338により下ステージ332を上ステージ322に向けて近接して、基板211に、下ステージ332にホルダ223を介して平坦に支持された基板213を押し付けることで、基板211,213の中央が強く接触する。これにより、基板211,213の中央に貼り合わせの起点となる接触領域215が形成される。このとき、基板211の周縁は、基板213から離間している。
【0064】
図8Cに、基板貼り合わせ工程においてボンディングウェイブが進行中の状態を示す。上ステージ322に保持されたホルダ221による保持を解除して、基板211を上ステージ322から解放する。このとき、基板211,213の少なくとも一方の表面が活性化されていることで、基板211,213間の分子間力により、それぞれの基板表面のうちの近接する領域が自律的に相互に吸着することで、接触領域215が周囲に拡大する。これにより、基板211,213が接触する接触領域と未だ接触していない非接触領域との境界であるボンディングウェイブ232が、基板211,213の中央から周囲に向かって移動することで、接触領域215が拡大して基板211,213の貼り合わせが進行する。
【0065】
図8Dに、基板貼り合わせ工程における基板の貼り合わせが終了した状態を示す。ボンディングウェイブ232が基板211,213の周縁まで移動し、接触領域215が基板211,213全体まで拡大すると、基板211,213は互いに貼り合わされて貼り合わせ基板230を形成する。
【0066】
斯かる基板211,213の貼り合わせ原理において、基板211,213の接触領域215は、基板211,213の中央から周縁に向かって拡大する。これより、貼り合わせる前に基板211,213間に挟まれていた雰囲気、例えば大気は、基板211,213の接触領域が拡がる過程で外側に向かって押し出されることで、貼り合わされた基板211,213の間に気泡が残ることが防止される。
【0067】
なお、本実施形態では、凸状に変形させた基板211と平坦な基板213とを貼り合わせる場合を例にあげたが、例えば、基板211,213を両方とも凸状に変形させた場合、基板211,213を互いに曲率が異なる凸状と凹状に変形させた場合、基板211,213を、中心軸が平行ではない円筒状に変形させた場合も、同様に、基板211,213の間に接触領域215を形成し、それを拡大することで貼り合わせることができる。
【0068】
図9A及び図9Bに、電極351の電極形状と基板211の変位検出の原理を示す。図8Aから図8Dを用いて説明したように基板貼り合わせ工程においてボンディングウェイブ232が基板211,213の中央から周囲に向かって移動し、基板211,213の間の接触領域215が拡大することで基板211,213の貼り合わせが進行する。ここで、電極351の電極面は円形状であり、基板211の端面が円形状の電極面の上半部に対向するように電極351が配置されているものとする。それにより、基板211の端面がZ軸方向の位置Zからより低い位置Zに移動し、これに伴って基板211の端面に対向する電極の部分の面積がSからSへと増大し、電極351とこれに対向する別の電極351との間の静電容量がC=εS/DからC=εS/Dへと増大する。ここで、εは基板211の誘電率、Dは電極の離間距離であり、電極間の静電容量は基板211により支配的に定まると仮定した。従って、2つの電極351の間の静電容量の変化を検出することで基板211のZ軸方向の位置を検出すること、これにより基板211,213の間に形成された接触領域215の拡大過程を検出することができる。
【0069】
図9Cに、基板211,213の貼り合わせ工程中における基板211の変位検出の結果の一例を示す。この例では、図4Aにおける一対の電極351eの静電容量の検出結果の時間変化が示されている。この時間変化は、2つの電極351eの間の電界中の基板211の動きを反映している。基板211,213の貼り合わせは、上ステージ322による基板211の保持を解除することで時刻10秒にて開始する。それに伴い、静電容量は、値Cから増大し、貼り合わせが進行している時刻12~18秒の期間Tの間、おおよそ一定し、その後、再度増大してCに飽和する。これにより、時刻24秒にて貼り合わせが終了する。この静電容量の時間変化より、ボンディングウェイブ232の広がり、すなわち接触領域215の拡大過程を読み取ることができる。
【0070】
図9Dに、基板211,213の基板貼り合わせ工程中における基板211の変位検出の結果の別の例を示す。この例では、図4Aにおける一対の電極351aの静電容量の検出結果の時間変化が示されている。基板211,213の貼り合わせは、上ステージ322による基板211の保持を解除することで時刻16秒にて開始する。それに伴い、静電容量は、値Cから増大し、貼り合わせが進行している時刻18~26秒の期間Tの間、おおよそ一定し、その後、再度増大してCに飽和する。これにより、時刻35秒にてボンディングウェイブ232の広がり、すなわち接触領域215の拡大が基板211,213の左縁部に達して貼り合わせが終了したことを読み取ることができる。
【0071】
図10A及び図10Bに、電極351の電極形状と基板211の変位検出の別の原理を示す。この例では、電極351の電極面は円形状であり、基板211の端面が円形状の電極面の下半部に対向するよう電極351が配置されているものとする。それにより、基板211の端面がZ軸方向の位置Zからより低い位置Zに移動し、これに伴って基板211の端面に対向する電極の部分の面積がSからSへと減少し、電極351とこれに対向する別の電極351との間の静電容量がC=εS/DからC=εS/Dへと減少する。ここで、εは基板211の誘電率、Dは電極の離間距離であり、電極間の静電容量は基板211により支配的に定まると仮定した。斯かる電極の配置によっても、2つの電極351の間の静電容量の変化を検出することで基板211のZ軸方向の位置を検出すること、これにより基板211,213の間に形成された接触領域215の拡大過程を検出することができることがわかる。
【0072】
図10Cに、基板211,213の貼り合わせ工程中における基板211の変位検出の結果の一例を示す。この例では、図4Aにおける一対の電極351eの静電容量の検出結果の時間変化が示されている。基板211,213の貼り合わせは、上ステージ322による基板211の保持を解除することで時刻12秒にて開始する。それに伴い、静電容量は、値Cから減少し、貼り合わせが進行している時刻17~23秒の期間Tの間、おおよそ一定し、その後、再度減少してCに飽和する。これにより、時刻37秒にて貼り合わせが終了する。この静電容量の時間変化より、ボンディングウェイブ232の広がり、すなわち接触領域215の拡大過程を読み取ることができる。
【0073】
なお、図9C図9D、及び図10Cのいずれの例においても、貼り合わせが進行しているにも関わらず静電容量の変化が極小さくなる期間がある。そこで、判断部150aは、静電容量の変化の開始より貼り合わせが開始したと判断し、これから静電容量の変化が極小さくなる期間を含む所定期間、例えば約10秒間をマスク期間とし、マスク期間の終了後における静電容量の飽和より貼り合わせが終了したと判断する。
【0074】
なお、図9C及び図10Cに示した例のとおり一対の電極351e間の静電容量の変化を検出することで、電極351eが配置された方向に関するボンディングウェイブ232の広がり、すなわち接触領域215の拡大の進行を知ることができる。そこで、貼り合わせ検出装置350(接触領域215の拡大の進行ムラ検知手段の一例でもある)により、例えば図5Aに示した配置の電極対351A~351Dについて、試験用の基板の貼り合わせ工程中における電極対351A~351Dの静電容量の検出結果の時間変化を蓄積し、接触領域215の拡大の進行との関係を把握しておくことで、基板211,213の貼り合わせ工程中における電極対351A~351Dの静電容量の検出結果より、それぞれの電極対の配置方向についての接触領域215の拡大の進行速度、特に拡大の進行ムラを検知することができる。
【0075】
図11A及び図11Bに、電極351の別の電極形状と基板211の変位検出の原理を示す。この例では、電極351の電極面は矩形状であり、Z軸方向に対して傾いて配置されている。それにより、基板211の端面がZ軸方向の位置Zからより低い位置Zに移動し、これに伴って基板211の端面に対向する電極の部分の面積はSのまま変化しない代わりに、電極と基板211の端面との離間距離がDからDへと減少し、電極351とこれに対向する別の電極351との間の静電容量がC=εS/DからC=εS/Dへと増大する。ここで、εは大気の誘電率であり、電極間の静電容量の変化は大気部分の距離の変化により支配的に定まると仮定した。斯かる電極の配置によっても、2つの電極351の間の静電容量の変化を検出することで基板211のZ軸方向の位置を検出すること、これにより基板211,213の間に形成された接触領域215の拡大過程を検出することができることがわかる。
【0076】
なお、図11Aに示した矩形状の電極の場合に限らず、図9Aに示した円形状等の電極を採用した場合においても、Z軸に対して傾けて基板の側方に配置してもよい。それにより、2つの電極351の間の静電特性の検出感度を向上することができる。
【0077】
図12に、貼り合わせ装置300による基板貼り合わせ手順のフローを示す。なお、基板貼り合わせシステム100は、制御装置150の制御部150bの制御の下で構成各部が動作する。基板貼り合わせに先立って、貼り合わされる基板210が収容された基板カセット120及び貼り合わされた基板230が収容される基板カセット130が、筐体110に固定されている。なお、複数の電極351は、電極駆動装置352により上昇して上ステージ322の側方に退避しているものとする。
【0078】
ステップS101では、基板210を貼り合わせ装置300に搬入する。図13Aに示すように、搬送装置140により、ホルダストッカ400からホルダ221を取り出してプリアライナ500に搬送し、基板カセット120から基板211を取り出してプリアライナ500に搬送し、ホルダ221に基板211を保持させる。基板211を保持したホルダ221は、貼り合わせ装置300に搬入され、上ステージ322に基板211を下方に向けて固定される。また、搬送装置140により、ホルダストッカ400からホルダ223を取り出してプリアライナ500に搬送し、基板カセット120から基板213を取り出してプリアライナ500に搬送し、ホルダ223に基板213を保持させる。基板213を保持したホルダ223は、貼り合わせ装置300に搬入され、下ステージ332に基板213を上方に向けて固定される。
【0079】
次いで、下ステージ332の位置、すなわち、顕微鏡324,334の相対位置を較正する。その詳細手順は先述のとおりである。
【0080】
ステップS102では、顕微鏡324,334を用いて、基板211,213のそれぞれのアライメントマークを検出する。図13Bに示すように、制御装置150の制御により、干渉計341が下ステージ332の位置を測定し、その測定結果に基づいてX方向駆動部331及びY方向駆動部333により下ステージ332を水平方向に駆動することにより、基板213のアライメントマークが顕微鏡324の視野内に逐次位置決めされ、顕微鏡324に検出される。また、制御装置150の制御により、干渉計341が下ステージ332の位置を測定し、その測定結果に基づいてX方向駆動部331及びY方向駆動部333により下ステージ332を水平方向に駆動することにより、顕微鏡334の視野内に基板211のアライメントマークが逐次位置決めされ、顕微鏡334に検出される。干渉計341の測定結果と顕微鏡324,334の検出結果とから、基板211,213のアライメントマークの相互の位置関係、すなわち基板211,213の位置関係が決定される。
【0081】
ステップS103では、活性化装置326,336により基板211,213の表面を活性化する。図13Cに示すように、活性化装置326により基板213の表面をプラズマに暴露し、活性化装置336により基板211の表面をプラズマに暴露し、X方向駆動部331及びY方向駆動部333により下ステージ332を矢印Sの方向に駆動することで、基板211,213の全面を清浄化することにより活性化する。これにより、基板211,213に接触させた場合に、基板211,213同士が相互に接着されて一体化する。
【0082】
なお、基板211,213は、研磨等の機械的な処理、洗浄による化学的な処理によっても活性化できる。また、基板211,213は、不活性ガスを用いたスパッタエッチング、イオンビーム、又は高速原子ビーム等によりを活性化することもできる。イオンビームや高速原子ビームを用いる場合は、貼り合わせ装置300を減圧下において生成することが可能である。また、紫外線照射、オゾンアッシャー等により基板211,213を活性化することもできる。また、例えば、液体または気体のエッチャントを用いて、基板211,213の表面を化学的に清浄化することにより活性化してもよい。また、複数種類の活性化方法を併用してもよい。
【0083】
また、活性化装置326,336を貼り合わせ装置300の内部ではなく外部に設けてもよい。この場合、基板211,213を貼り合わせ装置300に搬入する前に基板211,213の表面を活性化し、活性化した基板211、213を貼り合わせ装置300に搬入してもよい。
【0084】
ステップS104では、基板211,213の少なくとも一方を温度調節して設計仕様に対する倍率差を補償することで基板を補正する。基板211,213の反り等の変形を、温度調節以外の方法、例えば上ステージ322又は下ステージ332に設けられたアクチュエータを用いて基板211,213の少なくとも一方を変形させる補正手法を採用してもよい。これにより、個々の基板211,213に固有の歪みがある場合においても、基板211,213を精度よく位置合わせすることができる。
【0085】
なお、基板211,213を活性化するステップS103と、基板211,213を温度調節するステップS104と、の順番を入れ換えてもよい。また、基板211,213の少なくとも一方を温度調節して補正するステップS104を、基板211,213のそれぞれのアライメントマークを検出するステップS102の前に行ってもよい。
【0086】
ステップS105では、貼り合わせる基板211,213を相互に位置合わせする。図13Dに示すように、先に決定した基板211,213の位置関係に基づいてアライメントマーク間の位置ずれが統計的に最小又は閾値以下になるように、X方向駆動部331及びY方向駆動部333により下ステージ332を駆動することにより基板211を水平方向に位置決めする。ここで、統計的な位置合わせ法として、エンハンスト・グローバル・アライメントを採用してよい。
【0087】
ステップS106では、貼り合わせ検出装置350の複数の電極351を基板211,213の側方に配置する。図13Eに示すように、昇降駆動部338を上昇させることで、下ステージ332を上方に駆動する。これにより、下ステージ332に支持された基板213が、上ステージ322に支持された基板211に近接する。この状態において、図8Aを用いて説明したように、電極駆動装置352により貼り合わせ検出装置350の複数の電極351を降下して、面方向について基板211,213を間に挟んでそれらの側方に配置する。
【0088】
ステップS107では、基板211,213の一部を相互に接触させて、貼り合わせの起点を形成する。図13Fに示すように、昇降駆動部338を上昇させることで、基板213を支持する下ステージ332を上方に駆動する。これにより、図8Bを用いて説明したように、基板213の中央が基板211に押し付けられ、基板211,213の間に挟まれた雰囲気等が押し出され、基板211,213のそれぞれの一部が互いに接触して接触領域215が形成されて貼り合わせの起点が形成される。起点は、面積を有する領域であってもよい。
【0089】
この接触により、活性化された基板211,213の接触領域が、水素結合のような化学結合により結合する。基板211,213を一部で接触させた後、基板211,213が互いに接触した状態を維持する。このとき、基板211,213同士を押し付けることにより、接触した一部の面積を大きくすることにより接触領域を広げてもよい。接触状態を維持した状態で所定の時間が経過すると、基板211,213の貼り合わせの過程で基板211,213間に位置ずれが生じない大きさの結合力が基板211,213の間に確保される。これにより、基板211,213の互いに接触した一部に貼り合わせの起点が形成される。
【0090】
ステップS108では、基板211,213の間に接触領域が形成されて、上記した所定の大きさの結合力が2つの基板210の間に確保されたか否かを調べる。この段階で基板211,213が貼り合わされたことを検出する場合は、基板211,213の貼り合わせが開始されるきっかけとなる貼り合わせの起点が形成されたか否かを調べることになる。そこで、ステップS107において基板211,213の一部を押し付けた領域か、当該領域に近い位置において貼り合わせの起点となる領域が形成されたか否かを調べる。
【0091】
基板210に貼り合わせの起点が形成されたと判断された場合、すなわち、2つの基板211,213の接触した一部の間に上記した所定の大きさの結合力が確保されたと判断した場合、次のステップS109に進む。基板211,213に起点が形成されていることが確認されない場合、両方の基板211,213の保持を継続しつつ、貼り合わせの起点を形成すべく、基板211,213の一部を押し付け続ける。
【0092】
ステップS109では、ホルダ221による基板211の保持を解除する。それにより、基板211が解放され、図8Cを用いて説明したように、基板211,213間の分子間力により、接触領域に隣接する領域が自律的に吸着して接触領域が面方向に順次拡大するボンディングウェイブが発生し、これにより基板211に歪みを生じさせながら基板211,213が接合される。
【0093】
なお、基板211,213の接合とは、基板211,213の主面を互いに平行にして重ね、互いの相対位置を水素結合、ファンデルワールス結合、共有結合等により固定することをいう。一方、基板211,213を重ねるとは、基板211,213の主面を互いに接する状態にすることをいうが、互いの相対位置が固定された状態を指すとは限らない。また、「積層」を「重ねる」と同義で用いることがある。なお、基板211,213は、積層された場所で接合を開始する場合もあるが、接合が進行している間に接合領域(本実施形態では上ステージ322の直下の領域)から搬出され、位置合わせされた場所と異なる場所で接合が完了する場合もある。また、位置合わせされた場所とは別の場所で、加熱、加圧等により基板211,213を接合する場合もある。
【0094】
ステップS110では、貼り合わせ検出装置350を用いて接触領域の状態を判断する。例えば図4Aに示した配置の複数の電極対351A~351Eのそれぞれの静電特性を検出し、判断部150aにより、図9Aから図10Cを用いて説明したようにそれぞれの静電特性の検出結果の時間変化より接触領域の状態を判断することができる。
【0095】
ステップS111では、基板211,213に形成された貼り合わせの起点から、基板211,213の接触領域が拡がっているか否かを調べる。基板211,213の接触領域が拡大していることが確認できた場合、判断部150aは基板211,213の貼り合わせが進行しているものと判断して、次のステップS112に進み、確認できなかった場合、判断部150aは基板211,213の貼り合わせが何らかの理由で阻害されていると判断して、ステップS114に進む。
【0096】
ここで、複数の電極対351A~351Eの静電特性の検出結果に基づいて、基板211,213の間の傾きを制御してもよい。例えば図4Aに示した配置の複数の電極対351A~351Eのそれぞれの静電特性の検出結果より、電極対351Aの静電特性の時間変化が他の電極対351B~351Eの静電特性の時間変化に対して進んでいる又は遅れている場合、判断部150aは、接触領域の拡大の進行ムラが発生し、その方向への接触領域の拡大が他の方向への拡大に対して進んでいる又は遅れていると判断する。制御部150bは、判断部150aによる判断に基づいて、下ステージ332を制御して基板211に対する基板213の左方の傾きをより大きく又は小さくする。それにより、接触領域215を一様に拡大することができる。
【0097】
なお、上ステージ322及び下ステージ322の少なくとも一方に基板211,213を機械的に変形させるアクチュエータを設けている場合、制御部150bは、判断部150aによる判断に基づいて、アクチュエータの駆動量を制御して基板211,213の変形量を調整してもよい。また、上ステージ322及び下ステージ322の少なくとも一方に基板211,213を温度調節するヒータ等を設けている場合、制御部150bは、判断部150aによる判断に基づいて、ヒータによる温度調整量を制御して基板211,213の変形量を調整してもよい。また、上ステージ322に厚さ方向に貫通する通気孔が設けられ、基板211を保持するホルダ221にも連通する通気孔が設けられ、貼り合わせ装置300外のタンクから乾燥空気、不活性ガス等の流体を上ステージ322及びホルダ322の通気孔を介して基板211に噴射するよう構成されている場合、制御部150bは、判断部150aによる判断に基づいて、接触領域の拡大が遅い領域又は速い領域に対応する通気孔からの流量及び流体圧を調整してもよい。また、ホルダ221の保持面を径方向および周方向の少なくとも一方の方向に沿って複数のエリアに分割し、エリアごとに真空吸着又は静電吸着の吸着力を制御可能としてもよい。この場合、拡大領域の拡大の速度に応じて、ホルダ221からの基板211のリリースタイミングをエリアごとに制御してもよい。このように、ホルダ221による基板211の保持を非一様に解除できる場合、制御部150bは、判断部150aによる判断に基づいて、接触領域の拡大が遅い領域に対応するエリアによる吸着の解除を、拡大が速い領域に対応するエリアによる吸着の解除よりも先のタイミングで行う制御を行ってもよい。また、ホルダ223の保持面を径方向および周方向の少なくとも一方の方向に沿って複数のエリアに分割し、エリアごとに真空吸着又は静電吸着の吸着力を制御可能とし、接触領域の拡大の速度に応じて、接触領域の拡大の進行をエリアごとに制御してもよい。このように、ホルダ223による基板213の保持を非一様に解除できる場合、制御部150bは、判断部150aによる判断に基づいて、接触領域の拡大が遅い領域に対応するエリアによる吸着力を、拡大が速い領域に対応するエリアによる吸着力よりも弱める制御を行ってもよい。また、昇降駆動部338により基板213を支持する下ステージ332を上方又は下方に駆動して、基板211,213間のギャップを調整してもよい。
【0098】
なお、接触領域の拡大速度が予め定められた速度よりも速い場合、制御部150bは、基板211,213の貼り合わせ工程中においても、基板211,213の接触領域の拡大速度の制御、倍率非線形補正の制御を修正してもよい。例えば、基板の個体差、環境等の変化により、貼り合わせ工程中に生じる倍率が予定と異なることを検知し、これを補正してよい。予め定められた速度は、それまでの基板の貼り合わせにおいて得られた接触領域の拡大速度の検出結果に基づいて設定することができる。基板の貼り合わせ工程中に発生する倍率(非線形)と接触領域の拡大速度との関係を、同種の基板等のデータに基づいて予め把握しておく。基板の貼り合わせ工程中に発生するであろう倍率(非線形)は先に貼り合わせた基板と同じとすることで、拡大速度が設定される。なお、環境要素等での倍率変動や接触領域の拡大速度の変化が予測される場合、それらも予測して予定速度を設定する。
【0099】
制御部150bによる斯かる下ステージ332の制御をリアルタイムで実施してもよく、次の基板の貼り合わせ時に行ってもよい。また、基板のロット毎、貼り合わせプロセスのレシピが変更される毎等に実施してもよい。
【0100】
なお、ステップS111において、判断部150aは、さらに、基板211,213の接触領域215が拡大する速さ或いは拡大の程度を検出することにより、基板211,213の貼り合わせが完了する時間を予測してもよい。接触領域215が拡大する速さ又は拡大の程度は、例えば、図9C図9D、及び図10Cに示した2つの電極351間の静電特性の時間変化のプロファイルから算出することができる。
【0101】
また、図5A又は図6Aに示した配置の複数の電極対351A~351Dのそれぞれの静電特性の検出結果より、各方向について接触領域が拡大する速さ或いは拡大の程度を検出して、接触領域215の形状を検出してもよい。接触領域215の形状は、その拡大とともに変わり得る。そこで、接触領域215が円形を維持している場合、判断部150aは基板211,213の貼り合わせは正常に進行しているものと判断して、次のステップS112に進み、円形を維持せず円形からのずれが大きくなった場合、判断部150aは基板211,213の貼り合わせは正常に進行していないと判断して、ステップS114に進む。
【0102】
ステップS112では、基板211,213の貼り合わせが完了したか否かを調べる。判断部150aは、複数の電極対351A~351Eのそれぞれの静電特性の時間変化がなくなり一定値に飽和することで、貼り合わせの完了を確認することができる。ここで、図9C図9D、及び図10Cを用いて説明したように、電極対351A~351Eのそれぞれに含まれる2つの電極351a~351e間の静電容量の検出結果がCから増大し、変化が極小さくなる一定期間を経てCに飽和する。そこで、判断部150aは、静電容量の検出結果が変化し始め、一定期間より長いマスク期間の経過後、静電容量の検出結果が|C|又は|C-C|の一定割合の範囲内に収束してCとの差分が閾値以下になった場合に、貼り合わせの完了を確認するとしてもよい。これにより、基板211,213毎に貼り合わせに要する時間が異なる場合においても確実に貼り合わせの完了を確認することができる。なお、判断部150aは、予め定めた閾値時間を過ぎても基板211,213の貼り合わせの完了が確認できない場合に、基板の貼り合わせの完了を確認できなかったと判断してよい。基板の貼り合わせの完了を確認した場合、次のステップS113に進み、確認できなかった場合、ステップS114に進む。
【0103】
ステップS113では、基板211,213を貼り合わせてなる貼り合わせ基板230を搬出する。図13Gに示すように、電極駆動装置352により複数の電極351を上昇して上ステージ322の側方に退避し、基板211,213に対する温度制御等を終了し、昇降駆動部338により下ステージ332を降下し、搬送装置140により貼り合わせ基板230を貼り合わせ装置300から搬出する。貼り合わせ基板230はホルダ221,223から分離されて、基板カセット130に収容される。
【0104】
ステップS114では、貼り合わせ装置300の動作を停止する、外部に警報を伝える、貼り合わせ装置300から貼り合わせ中の基板211,213を搬出する、等の対応を実行する。
【0105】
これにより、基板211,213の基板貼り合わせ手順が完了する。
【0106】
本実施形態に係る基板貼り合わせ装置300によれば、基板211,213の間にそれぞれの一部が互いに接触する接触領域215を形成し、接触領域215を貼り合わせ面に沿った面方向に拡大させることで基板211,213を直接貼り合わせる装置であり、面方向について基板211,213を間に挟んで配置される少なくとも一対の電極351、および、少なくとも一対の電極351に含まれる2つの電極間の静電特性を検出する検出部353を備える。基板211,213の間にそれぞれの一部を接触させて接触領域215を形成し、接触領域215を面方向に拡大させる際に、検出部353により、面方向について基板211,213を間に挟んで配置される少なくとも一対の電極351の静電特性を検出することで、接触領域215の状態、すなわち基板211,213の貼り合わせ過程を検出することができる。
【0107】
本実施形態に係る基板貼り合わせ方法によれば、基板211,213の間にそれぞれの一部が互いに接触する接触領域215を形成し、接触領域215を貼り合わせ面に沿った面方向に拡大させることで基板211,213を直接貼り合わせる方法であり、面方向について基板211,213を間に挟んで少なくとも一対の電極351を配置する段階、基板211,213の間にそれぞれの一部が互いに接触する接触領域215を形成する段階、接触領域215を貼り合わせ面に沿った面方向に拡大させるとともに少なくとも一対の電極351に含まれる2つの電極間の静電特性を検出する段階を含む。基板211,213の間にそれぞれの一部を接触させて接触領域215を形成し、接触領域215を面方向に拡大させる際に、面方向について基板211,213を間に挟んで配置される少なくとも一対の電極351の静電特性を検出することで、接触領域215の状態、すなわち基板211,213の貼り合わせ過程を検出することができる。
【0108】
なお、本実施形態に係る貼り合わせ装置300では、ホルダ221,223を介して基板211,213を上ステージ322及び下ステージ332に保持する構成を採用したが、これに代えて、ホルダ221,223を用いないで基板211,213を直接、上ステージ322及び下ステージ332に保持する構成を採用してもよい。斯かる場合、上ステージ322の保持面を中央側が高く、周縁が低い湾曲した形状としてよい。基板211は、上ステージ322の保持面に吸着保持され、保持面に密着して中央側が突出した凸状に湾曲し、その形状が維持される。
【0109】
本実施形態に係る基板貼り合わせ装置300では、貼り合わせ検出装置350により基板211,213の接触領域215の拡大の進行状態を検出するよう図9A及び図9B又は図10A及び図10Bに示すように電極351を配置したが、接触領域215の拡大の終了のみを検出するよう電極351を配置してもよい。図14A及び図14Bに、電極配置の変形例と基板の変位検出の原理を示す。
【0110】
図14Aに示す変形例では、一対の電極351のうちの少なくとも一方は、Z軸方向に関して基板213に貼り合わせられた後の基板211の背面側に配置される。これによれば、基板211,213の接触領域の拡大が進行中においては、基板211の端面が電極351に対向するため電極351より基板211の静電容量を検出することができるのに対して、基板211,213の接触領域の拡大が基板211,213の端部まで進んで終了すると、基板211の端面が電極351に対向しないため電極351より基板211の静電容量は検出されず、雰囲気の静電容量が検出される。従って、判断部150aは、電極351間の静電特性の検出結果より雰囲気の静電容量を検出した場合に接触領域215の拡大が終了、すなわち基板の貼り合わせが完了したと判断することができる。
【0111】
図14Bに示す変形例では、一対の電極351のうちの少なくとも一方は、Z軸方向に関して基板213に貼り合わせられた後の基板211の端面に対向する位置に配置される。これによれば、基板211,213の接触領域の拡大が進行中においては、基板211の端面が電極351に対向しないため電極351より基板211及び雰囲気が混成した静電容量を検出するのに対して、基板211,213の接触領域の拡大が基板211,213の端部まで進んで終了すると、基板211の端面が電極351に対向するため電極351より基板211の静電容量が検出される。従って、判断部150aは、電極351間の静電特性の検出結果より基板211の静電容量を検出した場合に接触領域215の拡大が終了、すなわち基板の貼り合わせが完了したと判断することができる。
【0112】
本実施形態では、貼り合わせ検出装置350の複数の電極351を基板211,213の端面に対向してそれらの側方に配置する。複数の電極351を基板211,213の表面に対向してそれらの静電特性を検出する場合、基板211,213の表面に形成された酸化膜により静電特性が基板毎に或いは同じ基板上の場所毎に変わり得るため、複数の電極351を用いて基板211,213の接触領域の拡大をすべての基板について、また単一の基板のすべての場所について統一的に検出することが困難である。それに対して、複数の電極351を基板211,213の端面に対向する場合、基板211,213の表面の酸化膜が静電特性にほとんど影響しないため、複数の電極351を用いて基板211,213の接触領域の拡大をすべての基板について、また単一の基板のすべての場所について統一的に検出することが可能となる。
【0113】
なお、本実施形態では、貼り合わせ検出装置350の複数の電極対351A~351Eのそれぞれに含まれる2つの電極351a~351eのうちの一方の電極を共有してもよい。斯かる場合、貼り合わせ検出装置350は、複数の電極対351A~351Eのそれぞれに含まれる2つの電極351a~351eのうちの他方の電極に対向するよう共有する電極を回動してその向きを変える回動機構と、回動機構により共有する電極を複数の電極対351A~351Eのうちのいずれかに含まれる2つの電極351a~351eの他方の電極に対向させると同時にその対となる電極351a~351eを検出部353に接続するセレクタと、を設けることとする。それにより、複数の電極対351A~351Eを干渉することなく配置することが可能となる。
【0114】
なお、本実施形態に係る貼り合わせ検出装置350では、基板211,213の中央を相互に接触させて貼り合わせの起点となる接触領域215を形成することとしたが、貼り合わせの起点は基板211,213の中央に限らず、任意の位置、例えば基板211,213の縁部であってもよい。
【0115】
本実施形態に係る貼り合わせ検出装置350では、複数の電極351に含まれる2つの電極を、面方向について基板211,213を間に非接触で挟むよう配置したが、これに代えて又はこれと組み合わせて、基板211,213が重なる方向についてそれらを間に挟むよう配置してもよい。
【0116】
図15A及び図15Bに、それぞれ、第1の変形例に係る貼り合わせ検出装置350Aの上面及び側面から見た構成を概略的に示す。ここで、図15Bは、図15Aにおける基準線BBに関する断面図である。なお、図15Aにおいて、ホルダ221及び上ステージ322が省略されている。図15Bにおいて、ホルダ221,223が省略されている。貼り合わせ検出装置350Aは電極対351Aを含み、これに含まれる2つの電極351aがそれぞれ上ステージ322の下面中央及び下ステージ332の上面中央に設けられている。電極対351Aの静電特性を検出することで、上ステージ322及び下ステージ332にそれぞれ保持された基板211,213の中央に貼り合わせの起点となる接触領域215が形成されたか否かを検知することができる。
【0117】
図16A及び図16Bに、それぞれ、第2の変形例に係る貼り合わせ検出装置350Bの上面及び側面から見た構成を概略的に示す。ここで、図16Bは、図16Aにおける基準線BBに関する断面図である。なお、図16Aにおいて、ホルダ221及び上ステージ322が省略されている。図16Bにおいて、ホルダ221,223が省略されている。貼り合わせ検出装置350Bは複数の電極対351B~351Eを含む。電極対351B~351Eのそれぞれに含まれる2つの電極351b~351eの一方が、上ステージ322の下面上の4か所の縁部に設けられ、他方が下ステージ332の上面上の4か所の縁部に設けられている。各電極対351B~351Eの静電特性を検出することで、上ステージ322及び下ステージ332にそれぞれ保持された基板211,213の4か所の縁部において、基板211,213の間に形成された接触領域215の拡大過程、そして貼り合わせの終了を検出することができる。
【0118】
なお、図15Bおよび図16Bに示す例では、上ステージ322および下ステージ332にそれぞれ1つの電極対351A又は複数の電極対351B~351Eが設けられた例を示したが、ホルダ221,223を用いる場合には、ホルダ221,223に1つの電極対351A又は複数の電極対351B~351Eを設けてもよい。
【0119】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0120】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0121】
100…基板貼り合わせシステム、110…筐体、120,130…基板カセット、140…搬送装置、150…制御装置、150a…判断部、150b…制御部、210,211,213…基板、230…貼り合わせ基板(基板)、212…スクライブライン、214…ノッチ、215…接触領域、216…回路領域、218…アライメントマーク、220,221,223…ホルダ、222,224…保持面、232…ボンディングウェイブ、300…貼り合わせ装置、310…枠体、312…底板、314…支柱、316…天板、322…上ステージ、324,334…顕微鏡、326,336…活性化装置、331…X方向駆動部、332…下ステージ、333…Y方向駆動部、336…活性化装置、338…昇降駆動部、341…干渉計、350,350A,350B…貼り合わせ検出装置、351…電極、351A~351H…電極対、351a~351h…電極、352…電極駆動装置、353,353a~353e…検出部、354…セレクタ、355,356,357…ガイド、400…ホルダストッカ、500…プリアライナ。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図13F
図13G
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B