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特開2022-188416酢酸菌を有効成分とするビフィズス菌増殖促進剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188416
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】酢酸菌を有効成分とするビフィズス菌増殖促進剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
C12N1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096423
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】梶山 大地
(72)【発明者】
【氏名】稲見 翔子
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA21X
4B065BB08
4B065BB24
4B065BB28
4B065BB29
4B065BB34
4B065BC05
4B065BC11
4B065CA41
4B065CA44
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ビフィズス菌増殖促進剤を提供する。
【解決手段】酢酸菌を有効成分として含有する、ビフィズス菌増殖促進剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸菌を有効成分として含有する、
ビフィズス菌増殖促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸菌を有効成分として含有するビフィズス菌増殖促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸菌は、醸造酢の生産に用いられる、乳酸菌、ビフィズス菌、麹菌、酵母に並ぶ発酵微生物である。
その有用性から、近年、生理機能研究が進んでおり、例えば、酢酸菌由来のアルデヒドデヒドロゲナーゼを活用して、アルデヒドを除去できること(特許文献1)や、酢酸菌体に含まれる糖脂質が花粉症等のアレルギー疾患を予防する効果があること(特許文献2)が報告されている。
しかしながら、酢酸菌の生理機能については未だ解明されていないものも多く、本発明のビフィズス菌増殖促進作用については全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2011/145518号
【特許文献2】特開2013-180963号公報
【0004】
ところで、ビフィズス菌は、酢酸や酪酸等の短鎖脂肪酸を産生し腸内pHを低下させ、善玉菌として腸内環境を整え、免疫バランスの維持に働くことが知られている。また、ビフィズス菌は加齢に伴い減少することが知られている。
これらのことから、特に昨今の高齢者社会においては、効率的なビフィズス菌増殖促進因子の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、酢酸菌を含有するだけで、ビフィズス菌の増殖を促進させるビフィズス菌増殖促進剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、偏性嫌気性菌のビフィズス菌の培養時に、嫌気性下では生きられない偏性好気性菌の酢酸菌を配合したところ、意外にもビフィズス菌が増殖促進されることを見出し、本発明を完成するに至った。
つまり、本願発明は、
(1)酢酸菌を有効成分として含有する、
ビフィズス菌増殖促進剤、
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、酢酸菌を含有することで、ビフィズス菌の増殖を促進させるビフィズス菌増殖促進剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、「%」は「質量%」を意味する。
【0009】
<本発明の特徴>
本発明のビフィズス菌増殖促進剤は、酢酸菌を含有することで、ビフィズス菌の増殖を促進させることに特徴を有する。
また、同一又は対応する特別な技術的特徴を有した発明として、酢酸菌を添加することを特徴とする、ビフィズス菌増殖促進方法とすることができる。
【0010】
<ビフィズス菌>
本発明に用いるビフィズス菌は、代表的なビフィズス菌の種類として、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファンティス等を挙げることができる。特に、本発明の効果を発揮し易いことから、ビフィドバクテリウム・ビフィダム又はビフィドバクテリウム・ロンガムを用いるとよい。
【0011】
<酢酸菌>
本発明に用いる酢酸菌は、代表的な酢酸菌の種類として、グルコンアセトバクタ-(Gluconacetobacter)属、アセトバクタ-(Acetobacter)属、グルコノバクター(Gluconobacter)属等を挙げることができる。
特に、本発明の効果を発揮し易いことから、グルコンアセトバクター属の酢酸菌を用いるとよい。
グルコンアセトバクター属の菌としては例えば、グルコンアセトバクター・コンブチャ(Gluconacetobacter kombuchae)、グルコンアセトバクター・スウィングシ(Gluconacetobacter swingsii)、グルコンアセトバクター・キシリヌス(Gluconacetobacter xylinus)、グルコンアセトバクター・ユーロペウス(Gluconacetobacter europaeus)、グルコンアセトバクター・マルタセティ(Gluconacetobacter maltaceti)、グルコンアセトバクター・ハンゼニイ(Gluconacetobacter hansenii)、及びグルコンアセトバクター・リックウェフェシエンス(Gluconacetobacter liquefaciens)等をあげることができる。
さらに、グルコンアセトバクター属の酢酸菌の中でも、グルコンアセトバクター・コンブチャ、グルコンアセトバクター・スウィングシ、グルコンアセトバクター・キシリヌス、グルコンアセトバクター・ユーロペウス、グルコンアセトバクター・ハンゼニイ及びグルコンアセトバクター・マルタセティ等の1種又は2種以上を用いるとよく、特にグルコンアセトバクター・ハンゼニイを用いるとよい。
なお、酢酸菌の生死は問わないが、菌体の扱いやすさの点で、死菌を用いるとよい。
【0012】
<酢酸菌の調製方法>
酢酸菌の調製方法は、特に限定されないが、醸造酢製造の常法に基づき発酵により調製すればよい。
常法に基づけば、酢酸菌体が0.001~0.01%に増殖して、酢酸を4~20%と高濃度に生成し、この他に、アミノ酸や多糖類等を生成する。
【0013】
<酢酸菌とビフィズス菌の菌体数割合>
本発明において、ビフィズス菌増殖促進効果が得られ易いことから、酢酸菌添加時の酢酸菌とビフィズス菌の菌体数割合は、10:1~10-2:1とするとよく、さらに10:1~1:1とするとよく、さらに10:1~500:1とするとよい。
また、本発明において、費用対ビフィズス菌増殖促進効果が得られ易いことから、酢酸菌添加時の酢酸菌数については、10cfu/mL以上1015cfu/mL以下とするよく、さらに10cfu/mL以上1013cfu/mL以下とするとよく、さらに10cfu/mL以上1012cfu/mL以下とするとよい。
また、本発明において、費用対ビフィズス菌増殖促進効果が得られ易いことから、酢酸菌添加時のビフィズス数については、10cfu/mL以上1012cfu/mL以下とするよく、さらに10cfu/mL以上1011cfu/mL以下とするとよく、さらに10cfu/mL以上1010cfu/mL以下とするとよい。
【0014】
次に、本発明を実施例、比較例及び試験例に基づき、さらに説明する。なお、本発明はこれに限定するものではない。
【0015】
[調製例1](酢酸菌の調製方法)
エタノール4%、酵母エキス0.2%、及び清水95.7%に酢酸菌グルコンアセトバクター・ハンゼニイ(NBRC14817)0.1%を添加し、品温30℃、通気量0.4L/minの条件で、48時間培養を行った。
得られた酢酸菌溶液に遠心濃縮処理を施した後、培地を清水洗浄で除去し、10%酢酸菌溶液を調製した。
次に、得られた10%酢酸菌溶液を、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製)を用いて、真空度40Pa、棚温度65℃で凍結乾燥し、粒径0.5~5μmの酢酸菌粉末を調製した。最後に、得られた酢酸菌粉末を50℃で加熱殺菌した。
なお、前述の酢酸菌粉末について、加熱処理前に菌体数を測定したところ、1.0×10cfu/mLであった。
【0016】
<酢酸菌の菌体数測定方法>
なお、DAPI染色して蛍光顕微鏡により計測するDAPI染色法にて酢酸菌体数を測定した。以下、調整例、実施例、比較例及び試験例についても同様の方法で酢酸菌体数を測定した。
【0017】
[調製例2](酢酸菌の調製方法)
酢酸菌グルコンアセトバクター・コンブチャ(NRBC14816)に変更した以外は、調製例1と同様の方法により、加熱殺菌した酢酸菌粉末を調製した。なお、前述の酢酸菌粉末について、加熱処理前に菌体数を測定したところ、1.0×10cfu/mLであった。
【0018】
[実施例1]
ビフィズス菌は、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NBRC100015)を用いた。まず、10%スキムミルクおよび0.5%酵母エキス培地(100mL)に、調製例1の酢酸菌粉末を0.1%(菌体数:1.0×10cfu/mL)、ビフィズス菌を1%(菌数:7.4×10cfu/mL)になるように加え、嫌気条件で37℃、24時間培養した。
得られた培養液を適宜希釈し、ビフィズス菌の菌体数を測定したところ、菌数1.0×10cfu/mLであった。
【0019】
[試験例1]
酢酸菌によるビフィズス菌増殖促進効果を調べるため、実施例1の方法に準じて、表1に従って酢酸菌の配合条件を変更した以外は、実施例1の方法と同様にして、ビフィズス菌(ビフィドバクテリウム・ビフィダム)の培養後菌体数を測定した。
【0020】
<ビフィズス菌の菌体数測定方法>
段落番号[0018]に記載の24時間培養液から1mL取り、適宜希釈してBL培地に混釈し、嫌気的条件下で37℃、72時間以上培養し、菌体数を測定した。
【0021】
[試験例1]
酢酸菌添加の有無による、ビフィズス菌増殖促進効果について調べるため、表1に従い、実施例1の方法に準じて、表1に従って酢酸菌の配合条件を変更し(比較例1、実施例2~3)、ビフィズス菌の培養後菌体数を測定した。
また、下記評価基準に従って、ビフィズス菌の増殖促進効果について評価した。
【0022】
[表1]
【0023】
なお、表1において、「ビフィズス菌の増殖促進効果」の評価基準は以下の通りである。
◎:比較例1の増殖試験後のビフィズス菌生菌数を1とした時の、実施例の増殖試験後のビフィズス菌増殖促進率が100以上であり、ビフィズス菌の増殖促進効果に大変優れている。
〇:比較例1の増殖試験後のビフィズス菌生菌数を1とした時の、実施例の増殖試験後のビフィズス菌増殖促進率が1.5以上であり、ビフィズス菌の増殖促進効果に優れている。
×:比較例1の増殖試験後のビフィズス菌生菌数を1とした時の、実施例の増殖試験後のビフィズス菌増殖促進率が1.5未満であり、ビフィズス菌の増殖促進効果がほとんどない、または、ない。
【0024】
表1より、酢酸菌を含有すると、ビフィズス菌の増殖が促進されることが理解できる(実施例1、2)。
【0025】
[試験例2]
酢酸菌によるビフィズス菌増殖促進効果を調べるため、実施例1の方法に準じて、表2に従って酢酸菌の配合条件と培養時間を24時間から12時間に変更した以外は、実施例1の方法と同様にして、ビフィズス菌(ビフィドバクテリウム・ビフィダム)の培養後菌体数を測定した。
また、前述の評価基準に従って、ビフィズス菌の増殖促進効果について評価した。
【0026】
[表2]
【0027】
表より、酢酸菌を含有すると、ビフィズス菌の増殖が促進されることが理解できる(実施例3、4)。