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特開2022-188857人工衛星監視装置、人工衛星監視方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188857
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】人工衛星監視装置、人工衛星監視方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B64G 3/00 20060101AFI20221215BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20221215BHJP
【FI】
B64G3/00
G06N20/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097106
(22)【出願日】2021-06-10
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「人工衛星群のための運用支援・健全性監視サービス」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】矢入 健久
(72)【発明者】
【氏名】福島 裕介
(72)【発明者】
【氏名】リュー ジュンフイ
(72)【発明者】
【氏名】酒井 雄基
(72)【発明者】
【氏名】山口 由仁
(57)【要約】
【課題】多数の人工衛星を効率的に監視することを可能とする人工衛星監視装置を提供することを目的とすること。
【解決手段】複数の人工衛星から出力された、前記複数の人工衛星の各々に対応する固有のフォーマットで表現された複数の第1データ群を受信する受信処理部と、受信した前記固有のフォーマットで表現された前記複数の第1データ群を、標準フォーマットで表現された、前記複数の人工衛星の各々に対応する複数の第2データ群に変換する変換処理部と、変換された前記複数の第2データ群を画面に表示させる表示処理部と、前記複数の第2データ群に基づいて、前記複数の人工衛星の各々の状態を判定する判定処理部と、を有する人工衛星監視装置を提供する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の人工衛星から出力された、前記複数の人工衛星の各々に対応する固有のフォーマットで表現された複数の第1データ群を受信する受信処理部と、
受信した前記固有のフォーマットで表現された前記複数の第1データ群を、標準フォーマットで表現された、前記複数の人工衛星の各々に対応する複数の第2データ群に変換する変換処理部と、
変換された前記複数の第2データ群を画面に表示させる表示処理部と、
前記複数の第2データ群に基づいて、前記複数の人工衛星の各々の状態を判定する判定処理部と、
を有する人工衛星監視装置。
【請求項2】
前記変換処理部は、前記複数の第2データ群を分析することで前記複数の第2データ群に含まれる外れ値を検出し、検出した外れ値を削除する、
請求項1に記載の人工衛星監視装置。
【請求項3】
前記複数の第2データ群の各々は、複数の第2データを含んでおり、
前記変換処理部は、所定の演算定義情報に基づいて、前記複数の第2データ群の中から選択された1又は複数の第2データを演算することで新たな第2データを生成する、
請求項1又は2に記載の人工衛星監視装置。
【請求項4】
前記表示処理部は、指定された人工衛星に対応する前記第2データ群を分析することで、前記第2データ群に含まれる複数の第2データを種別ごとに分類し、分類された種別ごとの第2データの中から、種別ごとに少なくとも1つの第2データを選択して前記画面に表示させる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の人工衛星監視装置。
【請求項5】
前記表示処理部は、指定された人工衛星に対応する前記第2データ群に含まれる、指定された第2データを前記画面する場合において、該第2データのグラフの表示形状を維持したまま拡大及び縮小表示を行う、
請求項1~4のいずれか一項に記載の人工衛星監視装置。
【請求項6】
前記表示処理部は、前記複数の第2データ群のうちユーザにより指定された第2データ群に含まれる第2データについて、前記ユーザにより指定された時刻に、前記ユーザにより指定された所定のタグを付与する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の人工衛星監視装置。
【請求項7】
前記判定処理部は、前記複数の第2データ群の各々を、前記人工衛星の状態を判定する能力を有する学習済みモデルに入力することで得られる出力結果に基づいて、前記複数の人工衛星の各々の状態を判定する
請求項1~6のいずれか一項に記載の人工衛星監視装置。
【請求項8】
人工衛星監視装置が行う人工衛星監視方法であって、
複数の人工衛星から出力された、前記複数の人工衛星の各々に対応する固有のフォーマットで表現された複数の第1データ群を受信するステップと、
受信した前記固有のフォーマットで表現された前記複数の第1データ群を、標準フォーマットで表現された、前記複数の人工衛星の各々に対応する複数の第2データ群に変換するステップと、
変換された前記複数の第2データ群を画面に表示させるステップと、
前記複数の第2データ群に基づいて、前記複数の人工衛星の各々の状態を判定するステップと、
を含む人工衛星監視方法。
【請求項9】
複数の人工衛星から出力された、前記複数の人工衛星の各々に対応する固有のフォーマットで表現された複数の第1データ群を受信するステップと、
受信した前記固有のフォーマットで表現された前記複数の第1データ群を、標準フォーマットで表現された、前記複数の人工衛星の各々に対応する複数の第2データ群に変換するステップと、
変換された前記複数の第2データ群を画面に表示させるステップと、
前記複数の第2データ群に基づいて、前記複数の人工衛星の各々の状態を判定するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工衛星監視装置、人工衛星監視方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、約6000機の人工衛星が地球の軌道を周回しており、今後は更に増加する見込みである。また、これらの多数の人工衛星が正常に動作しているか否かを、専門の多数の運用者が24時間365日監視している。特許文献1には、複数の人工衛星を監視する人工衛星監視制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-116147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地球を周回する多数の人工衛星が搭載するセンサから出力される膨大なデータは、特に規格化されていないことから、人工衛星ごとに得られるデータやデータ形式が異なっており、更に各データが示す意味も異なっている。そのため、人工衛星の監視は、運用者の経験に頼っているのが現状である。今後、人工衛星に搭載されるセンサ数の増加が予測されることに加え、地球を周回する人工衛星の数も更に増加する見込みであることを考慮すると、人工衛星の監視を効率的に行うことが必要になると考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、多数の人工衛星を効率的に監視することを可能とする人工衛星監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る人工衛星監視装置は、複数の人工衛星から出力された、前記複数の人工衛星の各々に対応する固有のフォーマットで表現された複数の第1データ群を受信する受信処理部と、受信した前記固有のフォーマットで表現された前記複数の第1データ群を、標準フォーマットで表現された、前記複数の人工衛星の各々に対応する複数の第2データ群に変換する変換処理部と、変換された前記複数の第2データ群を画面に表示させる表示処理部と、前記複数の第2データ群に基づいて、前記複数の人工衛星の各々の状態を判定する判定処理部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、多数の人工衛星を効率的に監視することを可能とする人工衛星監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る人工衛星監視システムの構成例を示す図である。
図2】欠損パターンの例を示す図である。
図3】人工衛星監視装置のハードウェア構成例を示す図である。
図4】人工衛星監視装置の機能ブロック構成例を示す図である。
図5】人工衛星監視装置が行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6】同種の第2データを集約表示する場合の表示例を示す図である。
図7】同種の第2データを並べて表示する場合の表示例を示す図である。
図8】外れ値除去を行わない場合と行った場合の画面表示例を示す図である。
図9】第2データのグラフ表示を行う際の問題点及び解決策を説明するための図である。
図10】ダウンサンプリング処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0010】
<システム構成>
図1は、本実施形態に係る人工衛星監視システム1の構成例を示す図である。人工衛星監視システム1は、人工衛星監視装置10と、人工衛星監視装置10に接続される端末20と、監視対象である1又は複数の人工衛星30と、人工衛星30から送信される信号を受信する1又は複数のアンテナ40と、アンテナ40を介して人工衛星30から送信される信号を収集する1又は複数の顧客装置50とを含む。
【0011】
人工衛星30は、多数のセンサを備えており、各センサで測定されたデータを送信する。人工衛星30から送信されるデータは地上に設置されたアンテナ40で受信され、顧客装置50に送信される。人工衛星30は、光学センサやレーダーセンサーなど、人工衛星30に課されたミッションを遂行するために必要なセンサ等の機器(「ミッション機器」や「ミッション部」と呼ばれる)と、人工衛星が動作し続けるために必要な基本機能(「バス機器」や「バス部」と呼ばれる)とを含む。バス部には、例えば、地上との間でデータ送受信を行うためのアンテナ、無線装置、データレコーダー、人工衛星30の姿勢制御を行う恒星センサ、慣性基準装置、リアクションホイール、太陽電池、バッテリー、姿勢制御や軌道修正に用いられるロケットスラスタ及び推進薬タンク等が含まれる。
【0012】
顧客装置50は、人工衛星30を運用する組織により管理され、当該組織が有する人工衛星30の監視及び制御を行う。顧客装置50は、人工衛星30のミッション部やバス部から送信される各種データを受信し、受信した各種データの分析等を行う。本実施形態では、人工衛星30を運用している組織は複数存在しており、人工衛星監視装置10は、複数の組織が運用している各人工衛星30をまとめて監視することを想定している。
【0013】
人工衛星監視装置10は、各顧客装置50と接続され、顧客装置50を介して、人工衛星30から送信される各種データを取得する。また、人工衛星監視装置10は、収集した多数のデータをまとめて一覧表示すると共に、各種データを分析することで、各人工衛星30が正常に動作しているか否かを監視する「健全性監視」を実現する。人工衛星監視装置10に接続される端末20は、顧客装置50を管理する組織に配置されていてもよい。つまり、人工衛星30を運用する組織の運用者(ユーザとも称する)は、各組織に居ながら、人工衛星監視装置10の画面を参照可能であってもよい。
【0014】
人工衛星30の健全性監視は、現状、各組織に存在する運用者が、顧客装置50を用いて人手で行っている。健全性監視は、主に、バス部から出力される各種データを運用者が監視・分析することで行われる。しかしながら、人工衛星30は、宇宙空間という過酷な環境に存在することから、人工衛星30から受信したデータには欠損やエラーが多い。また、ミッション部が出力するデータは、ミッション遂行のための重要なデータであることから、可能な限り欠損を避けるために地球上のあらゆるアンテナ40で受信する一方、バス部のデータは、ミッション部のデータよりは重要度が低いものとして扱われることが多く、日本国内のアンテナ40で受信できる期間(可視状態である期間)だけ取得するといった運用も行われている。この場合、図2のAに示すように、人工衛星30からの電波をアンテナ40で受信することができない期間(不可視状態である期間)において全データが欠損することになる。また、人工衛星30からのデータをアンテナ40で受信可能な状態であっても、通信帯域内にミッション部のデータを収めるために、バス部のデータに受信周期を設定し、受信周期以外についてはデータを削除する(つまり、意図的に欠損させる)という運用も行われている。この場合、図2のBに示すように、一部のデータのみが欠損することになる。そのため、健全性監視に用いられるバス部から出力される各種データは、ミッション部が出力するデータと比較して欠損が多く綺麗なデータであるとは言い難い。
【0015】
このように、人工衛星30の監視は、欠損やエラーが多い膨大なデータに基づいて行われており、運用者の経験と勘に頼っているのが現状である。また、顧客装置50には、データの変化を検出して警報を出力する機能も存在するが、異常の検知漏れを避けるためにデータのあらゆる変化を検出してしまい、誤検知が多発しているという問題も生じている。また、予め決められたロジックに沿って異常検知を行うことから、人工衛星30に搭載された機器の劣化や環境変動に対応することは困難であり、未知の異常に対する対応も困難である。
【0016】
そこで、本実施形態に係る人工衛星監視装置10は、各顧客装置50から取得した各人工衛星30のデータを一元的に扱えるようにすると共に、機械学習等を利用することで運用者の監視ノウハウをシステム化することで、人工衛星30の監視をより効率的に行うことを可能にする。なお、人工衛星監視装置10は、顧客装置50を介して人工衛星30のデータを取得することとしているが、本実施形態はこれに限定されない。顧客装置50を介さずに、アンテナ40から直接データを取得するシステム構成とすることも可能である。
【0017】
<ハードウェア構成>
図3は、人工衛星監視装置10のハードウェア構成例を示す図である。人工衛星監視装置10は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)等のプロセッサ11、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置12、有線又は無線通信を行う通信IF(Interface)13、入力操作を受け付ける入力デバイス14、及び情報の出力を行う出力デバイス15を有する。入力デバイス14は、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス及び/又はマイク等である。出力デバイス15は、例えば、ディスプレイ、タッチパネル及び/又はスピーカ等である。
【0018】
人工衛星監視装置10は、1又は複数の物理的なサーバ等から構成されていてもよいし、ハイパーバイザー(hypervisor)上で動作する仮想的なサーバを用いて構成されていてもよいし、クラウドサーバを用いて構成されていてもよい。複数のサーバ等で構成される場合、人工衛星監視装置10は、人工衛星監視システムと呼ばれてもよい。
【0019】
<機能ブロック構成>
図4は、人工衛星監視装置10の機能ブロック構成例を示す図である。人工衛星監視装置10は、受信処理部101と、変換処理部102と、表示処理部103と、判定処理部104と、記憶部105とを含む。受信処理部101と、変換処理部102と、表示処理部103と、判定処理部104とは、人工衛星監視装置10のプロセッサ11が、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。また、記憶部105は、人工衛星監視装置10が備える記憶装置12を用いて実現することができる。また、当該プログラムは、記憶媒体に格納することができる。当該プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)であってもよい。非一時的な記憶媒体は特に限定されないが、例えば、USBメモリ又はCD-ROM等の記憶媒体であってもよい。
【0020】
受信処理部101は、複数の人工衛星30に搭載されたセンサから出力された、複数の人工衛星30の各々に対応する固有のフォーマットで表現された複数の第1データ群を受信する。
【0021】
本実施形態において、「第1データ群」は、1つの人工衛星30から出力される、固有のフォーマットで表現される複数の時系列データを意味する。また、「第1データ」は、1つの人工衛星30から出力される、固有のフォーマットで表現される1つの時系列データを意味する。すなわち、第1データは、第1データ群に含まれる複数の時系列データのうちの1つである。なお、本実施形態において、「時系列データ」を単に「データ」ということもある。
【0022】
また、受信処理部101は、複数の顧客装置50から、複数の第1データ群を受信する。また、受信処理部101は、受信した複数の第1データ群を、第1データDB105aに格納する。
【0023】
変換処理部102は、受信処理部101で受信した、人工衛星30の固有のフォーマットで表現された複数の第1データ群を第1データDB105aから取出し、標準フォーマットで表現された、複数の人工衛星の各々に対応する複数の第2データ群に変換する。また、受信処理部101は、標準フォーマットに変換された第2データ群を、第2データDB105bに格納する。
【0024】
本実施形態において、「第2データ群」は、第1データ群に基づいて標準フォーマットに変換された後のデータ群を意味する。また、「第2データ」は、第1データに基づいて標準フォーマットに変換された後のデータを意味する。なお。「第2データ」は変数と呼ばれてもよい。
【0025】
表示処理部103は、変換処理部102で変換された複数の第2データ群を画面に表示させる。複数の第2データ群には、第2データが膨大に含まれており、かつ、記録されている期間も長期間に及ぶ。そのため、第2データ群を1つの画面に表示させても、各第2データが潰れて表示されてしまい、運用者はデータの認識が困難である。そこで、表示処理部103は、同種の第2データを間引いて表示させる機能や、第2データの輪郭を維持したまま拡大縮小表示する機能等を有する。
【0026】
判定処理部104は、第2データDB105bに格納された複数の第2データ群に基づいて、複数の人工衛星の各々の状態を判定する。判定処理部104は、例えば、異常のある第2データを検出する能力を備えた学習済みモデルを用いて、第2データ群の中から異常のあるデータを検出することで、人工衛星30に何らかの障害が生じているか否かを判定するようにしてもよい。また、判定処理部104は、第2データを参照した運用者が第2データに付与したタグ等に基づいて学習済みモデルを再学習させるようにしてもよい。
【0027】
記憶部105は、第1データDB105a、第2データDB105b及び人工衛星30の第2データを参照した運用者が第2データに付与したタグを格納するアノテーションDB105cを記憶する。
【0028】
<処理手順>
図5は、人工衛星監視装置10が行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0029】
受信処理部101は、各顧客装置50から、複数の人工衛星30の各々に対応する固有のフォーマットで表現された複数の第1データ群を受信する。第1データは、人工衛星30に搭載されたセンサで計測された計測値、及び/又は、予め定義された状態値(例えば「0」はOFF、「1」はONなど)等を含む。
【0030】
また、受信処理部101は、受信した第1データ群を、第1データDB105aに格納する。受信処理部101は、受信した第1データ群を第1データDB105aに格納する際、第1データ群を一意に識別可能な識別子(以下、「第1識別子」と言う。)を、第1データ群に対応づけて、第1データDB105aに格納することとしてもよい。例えば、受信処理部101が、100個の第1データ群を受信(つまり100台の人工衛星30からデータを受信)する場合、各第1データ群に対して、異なる第1識別子を付与して第1データDB105aに格納する。当該第1識別子は、例えば、人工衛星30を一意に識別可能な識別子であってもよい。各第1データ群に含まれる時系列データの数は異なるものであってよい。
【0031】
また、受信処理部101は、各顧客装置50から、人工衛星監視装置10がデータ変換処理、データ表示処理及びデータ判定処理を行う際に利用可能な、複数の第1データ群以外の情報(以下、「第1付加情報」という。)を受信するようにしてもよい。第1付加情報には、例えば、ミッション部のデータ及び/又はバス部のデータに関するデータ定義情報、人工衛星30を監視する運用者が作成した人工衛星30の運用記録並びに宇宙環境に関するデータ等が含まれていてもよい。
【0032】
ステップS20で、変換処理部102は、複数の第1データ群を第1データDB105aから取出し、取り出した複数の第1データ群を標準フォーマットに変換する。また、変換処理部102は、標準フォーマットに変換することで生成された複数の第2データ群を、第2データDB105bに格納する。
【0033】
ここで、人工衛星監視装置10は、第1データ群ごとに、第1データ群に含まれる各第1データを標準フォーマットに変換する手法が定義された「変換定義情報」を記憶部105に格納しておくこととしてもよい。当該定義ファイルは、第1データ群を一意に識別可能な第1識別子と対応づけて記憶部105に格納されていてもよい。例えば、変換処理部102は、第1データDB105aから、標準フォーマットに変換する第1データ群と第1識別子とを取得し、取得した第1識別子に対応づけられる変換定義情報を、記憶部105から取得してもよい。また、変換処理部102は、取得した変換定義情報に基づいて、第1データ群を標準フォーマットに変換し、第2データ群を生成するようにしてもよい。第2データも、第1データと同様に、人工衛星30に搭載されたセンサで計測された計測値、及び/又は、予め定義された状態を示す値等を含む。ただし、第2データに含まれる計測値等は、第1データと必ずしも同一値とは限られず、標準フォーマットの定義に従って他の値に置き換えられることもある。
【0034】
変換定義情報には、第1データを標準フォーマットに変換するために必要なあらゆる情報が含まれる。例えば、変換定義情報には、第1データがテキストデータである場合には、テキストデータ内における各データの区切り文字、各データの意味、使用されている文字コードなどが定義されていてもよい。また、第1データがバイナリデータである場合には、バイナリデータのフォーマット定義、各データの意味などが定義されていてもよい。
【0035】
変換処理部102が行う変換処理には制約はないが、例えば、バイナリデータをテキストデータに変換する処理(もしくはその逆)、データのスケールを変更する処理、データ値を標準フォーマットで定義された値に置き換える処理、1又は複数の第1データから1又は複数の新たな第2データを生成又は補間する処理(例えば、サマリデータの生成や、第1データで欠損している部分を補間した新たな第2データの生成など)などが含まれていてもよい。例えば、変換処理部102は、所定の演算定義情報に基づいて、複数の第2データ群の中から選択された1又は複数の第2データを演算することで新たな第2データを生成するようにしてもよい。所定の演算定義情報は、変換定義情報の一部であってもよいし、変換定義情報とは別個に定義されていてもよい。第1データには含まれない新たな第2データを生成することで、運用者は、第1データをそのまま参照することと比較して、人工衛星30の監視をより効率的に行うことが可能になる。
【0036】
また、変換処理部102は、標準フォーマットへの変換処理に加えて、欠損データの修復や、外れ値を除去する処理を行うようにしてもよい。例えば、変換処理部102は、複数の第2データ群を分析することで複数の第2データ群に含まれる外れ値を検出し、検出した外れ値を削除するようにしてもよい。外れ値の除去にはどのようなアルゴリズムが用いられてもよいが、例えば、k近傍法、局所外れ値因子法(Lof法)、One Class SVM(Support Vector Machine)及びFFT(Fast Fourier Transform)フィルタなどを利用することとしてもよい。また、パーセンタイル法を利用し、各第2データにおいて所定のパーセンタイル(例えば99パーセンタイル等)に当てはまらない値を外れ値とみなすこととしてもよい。これにより、後述する第2データの表示処理及び判定処理において、外れ値が及ぼす悪影響を排除することが可能になる。
【0037】
また、変換処理部102は、受信処理部101で受信された第1付加情報を、人工衛星監視装置10が認識可能な標準フォーマット形式の情報(以下、「第2付加情報」と言う。)に変換するようにしてもよい。この場合、変換定義情報には、第1付加情報を第2付加情報に変換するために必要なあらゆる情報が含まれていてもよい。
【0038】
ステップS30で、表示処理部103は、変換処理部102で変換された複数の第2データ群を画面に表示させる。このとき、表示処理部103は、第2付加情報のうち少なくとも一部の情報を利用して、第2データ群を画面に表示させるようにしてもよい。また、表示処理部103は、指定された人工衛星30に対応する第2データ群を分析することで、第2データ群に含まれる複数の第2データを任意個数の種別ごとに分類し、種別ごとに分類された第2データを、種別ごとに並べて端末20の画面に表示させるようにしてもよい。また、表示処理部103は、分類された種別ごとの第2データの中から、種別ごとに少なくとも1つの第2データを選択して端末20の画面に表示させるようにしてもよい。データの種別は、第2データを構成する時系列データの大域的及び/又は局所的な類似度に基づいて分類してもよい。第2データを種別ごとに分類する方法は任意であるが、例えば、第2データ群を、時系列データのクラスタリングを行う既存のアルゴリズム(例えば、「K-shape法」、「Dynamic time warpingとk-medoids法を組み合わせた方法」及び「スペクトラルクラスタリング (spectral clustering)」 等)を利用して分類することとしてもよい。
【0039】
図6は、同種の第2データを集約表示する場合の表示例を示す図である。図6のAは、例えば、指定された人工衛星30から出力される381個の第2データを、種別順に並べて全て1画面にグラフ表示させた場合の表示例を示している。このように、数百の第2データを類似度順に整列し、縦方向に並べて表示させることで、運用者は、数百もの第2データの動きを1つのパターンとして捉えることができ、普段とは異なる状態が存在することを容易に認識することが可能になる。
【0040】
図6のBは、381個の第2データについて、グラフ表示させた場合の形状が類似する(つまり、データの挙動が類似する)第2データを、同一種類の第2データとして分類し、更に、同一種類の複数の第2データの中から表示させる第2データを1つ選択することで、381個の第2データを32個に集約して表示させた場合の例を示している。同様に図6のCは、32個の第2データについて上記と同様の処理を行い、32個の第2データを8個に集約して表示させた場合の例を示している。図6のBは、図6のAと比較して、第2データの形状がある程度把握可能である。更に、図6のCは、図6のBと比較して、第2データの形状を一目で把握することができる。このように、挙動が類似する第2データを集約して表示することで、運用者は、人工衛星30の動作状態を容易に理解することが可能になる。
【0041】
また、表示処理部103は、分類された種別ごとの複数の第2データの中から、指定された種別に属する複数の第2データを抽出して端末20の画面に表示させるようにしてもよい。
【0042】
図7のAは、同一種別に属する9つの第2データを並べて表示させた場合の例を示しており、図7のBは、他の同一種別に属する5つの第2データを並べて表示させた場合の例を示している。このように、挙動が類似する複数の第2データを並べて表示することで、運用者は、同一種別に属する複数のセンサの各々の出力をより詳細に比較することが可能になる。また、運用者は、複数のセンサの各々の出力をより詳細に比較することで、第2データ間の微細な相違点を把握することが可能になる。
【0043】
前述した通り、変換処理部102は、標準フォーマットへの変換処理を行う際に、外れ値を除去する処理を行うようにしてもよい。図8は、外れ値除去を行わない場合と行った場合の画面表示例を示す図である。図8のAは、外れ値が残った状態で第2データをグラフ表示した場合の例を示し、図8のBは、外れ値が除去された第2データをグラフ表示した場合の例を示す。図8に示すように、外れ値が除去されることで、グラフの縦方向の余白が削減され、グラフの形状がより鮮明になることから、運用者は、人工衛星30の挙動をより正確に把握することが可能になる。表示制御部103は、図6及び図7の表示例についても、外れ値除去を行った後の第2データを表示させるようにしてもよい。
【0044】
また、表示処理部103は、指定された人工衛星に対応する第2データ群に含まれる、指定された第2データを端末20の画面する場合において、第2データのグラフの表示形状を維持したまま拡大及び縮小表示を行うようにしてもよい。
【0045】
図9は、第2データのグラフ表示を行う際の問題点及び解決策を説明するための図である。図9のAに示す第2データのグラフのうち四角枠W10(例えば所定の1ヵ月)を拡大表示する場合を考える。ここで、第2データは、例えば1分周期など短い周期で収集されたデータであり、仮に1ヵ月分のデータを拡大表示する場合であっても、膨大なデータ数であるものとする。また、本実施形態では、表示処理部103は、グラフ描画時の処理負荷を削減するために、第2データをダウンサンプリングすることでデータ数を削減し、ダウンサンプリング後の第2データを描画するものとする。
【0046】
このとき、単純に第2データを単純にダウンサンプリングして表示させると、第7のBに示すように、元の波形とは異なる波形で表示されてしまう場合がある。そこで、表示処理部103は、第2データのグラフの表示形状を維持したまま拡大及び縮小表示を行う。例えば、表示処理部103は、元の波形の見た目を保持しながら第2データ表示するために、所定のサンプリング間隔で第2データの最大値及び最小値を取出し、取り出した値を組み合わせることで第2データを描画するようにしてもよい。より具体的には、表示処理部103は、表示する第2データについて、所定のサンプリング周期(Δt)で第2データの最大値を取得し、更に、Δt/2時間ずらしたサンプリング周期(Δt)で第2データの最小値を取得し、取得した最大値及び最小値を順に結ぶことでグラフを描画するようにしてもよい。
【0047】
図10は、ダウンサンプリング処理を説明するための図である。図10において、時間T1~T10のうち隣り合う2つの時間の間隔はΔt/2であるとする。表示処理部103は、第2データGについて、T1を開始時間として所定のサンプリング周期(Δt)で第2データの最大値を取得する。つまり、表示処理部103は、図10のAに示すように、時間T1~T3、T3~T5、T5~T7及びT7~T9における第2データの最大値を取得する。同様に、表示処理部103は、第2データGについて、時間T1からΔt/2後の時間であるT2を開始時間として所定のサンプリング周期(Δt)で第2データの最小値を取得する。つまり、表示処理部103は、時間T2~T4、T4~T6、T6~T8及びT8~T10における第2データの最小値を取得する。続いて、表示処理部103は、図10のBに示すように、サンプリング周期(Δt)で取得した最大値を、各サンプリング周期の中心時間にプロット(つまり、時間T1~T3の最大値M1は、時間T2にプロット)し、サンプリング周期(Δt)で取得した最小値を、各サンプリング周期の中心時間にプロット(つまり、時間T2~T4の最小値S1は、時間T3にプロット)する。続いて、表示制御部103は、プロットした点を時刻順に線分で結ぶ(図10のBにおける点線H)ことで、ダウンサンプリングした第2データのグラフを描画する。これにより、端末20の画面に第2データを拡大表示した場合であっても、波形の形状が維持されることから、運用者は、より正確に人工衛星30の状態を把握することが可能になる。また、運用者が、端末20の画面にて第2データが表示される範囲を、マウス操作及びタッチ操作等で拡大又は縮小する操作を行った場合に、第2データの波形の形状が変化してしまうことで、どの範囲を拡大又は縮小していたのか分からなくなってしまうという問題を抑制することが可能になる。
【0048】
また、表示処理部103は、複数の第2データ群のうち運用者により指定された第2データ群に含まれる第2データについて、運用者からタグの入力を受け付け、受け付けたタグをアノテーションDB105cに格納するようにしてもよい。より具体的には、表示処理部103は、第2データを表示する画面にて、運用者からタグを付与する第2データの指定、付与するタグの内容及び時刻の指定を受け付けるようにしてもよい。また、表示処理部103は、運用者から入力を受け付けた第2データを示す情報と、時刻を示す情報と、付与されたタグの内容とを対応づけて、アノテーションDB105cに格納するようにしてもよい。
【0049】
タグの内容はどのような内容であってもよいが、例えば、人工衛星30の状態を運用者が判定した結果であってもよい。例えば、「異常がある可能性が高い」といったタグや「正常である可能性が高い」といったタグであってもよい。
【0050】
また、表示処理部103は、第2データ群の中から、運用者によりタグが付与された第2データと類似する挙動を示す第2データを抽出し、抽出した第2データについても、運用者により付与された当該タグと同一のタグを付与するようにしてもよい。類似する挙動を示す第2データは、例えば、タグが付与された第2データとの間の類似度を示す値が所定の値以上である第2データであってもよい。
【0051】
また、表示処理部103は、複数の第2データを、教師無し学習アルゴリズムを利用して分類し、分類された単位で第2データ群を端末20の画面に表示し、当該画面を参照した運用者から、人工衛星30の状態を運用者が判定した結果を示すタグの入力を受け付けるようにしてもよい。また、表示処理部103は、運用者から入力を受け付けたタグを、アノテーションDB105cに格納するようにしてもよい。これにより、人工衛星30の状態を運用者が判定した結果を示すタグを、効率的に収集することが可能になる。
【0052】
ステップS40で、判定処理部104は、複数の第2データ群の各々を、人工衛星30の状態を判定する能力を有する学習済みモデルに入力することで得られる出力結果に基づいて、複数の人工衛星30の各々の状態を判定する。表示処理部103は、判定処理部104で判定された複数の人工衛星30の各々の状態を、端末20の画面に表示させる。判定処理部40は、第2付加情報のうち少なくとも一部の情報を利用して、複数の人工衛星30の各々の状態を判定するようにしてもよい。
【0053】
なお、当該学習済みモデルは、例えば、運用者により「異常がある可能性が高い」又は「正常である可能性が高い」とのタグが付与された第2データを教師データとしてモデルを学習させることで生成可能である。例えば、判定処理部104は、アノテーションDB105cから、運用者により「異常がある可能性が高い」又は「正常である可能性が高い」とのタグが付与された第2データを抽出し、当該タグが付与された時刻を中心とする所定範囲の時刻のデータを抽出することで教師データを複数生成し、生成された当該複数の教師データでモデルを学習させることで、学習済みモデルを生成するようにしてもよい。
【0054】
また、判定処理部104は、学習済みモデルを、人工衛星30毎に生成するようにしてもよいし、各人工衛星30に共通の学習済みモデルを生成するようにしてもよい。
【0055】
また、判定処理部104は、学習済みモデルを学習させるための教師データを生成した後に、アノテーションDB105cに追加された、タグが付与された第2データから追加の教師データを生成し、当該追加の学習用データを用いて、学習済みモデルを追加学習させるようにしてもよい。
【0056】
運用者が付与したタグに基づいてモデルを学習させることで、従来は運用者の経験と勘に頼っていた人工衛星30の監視を、より正確に漏れなく行うことが可能になる。また、各人工衛星30に共通の学習済みモデルを作成した場合、ある人工衛星30に対する監視ノウハウを、他の人工衛星30にも展開することが可能になる。
【0057】
<まとめ>
以上説明した実施形態によれば、人工衛星監視装置10は、各人工衛星30から出力された、固有フォーマットで表現されたデータを標準フォーマットに変換し、標準フォーマットに変換されたデータを画面表示すると共に、当該データを用いて各人工衛星30の状態を判定するようにした。これにより、多数の人工衛星を効率的に監視することが可能になる。
【0058】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態で説明したフローチャート、シーケンス、実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…人工衛星監視システム、10…人工衛星監視装置、11…プロセッサ、12…記憶装置、13…通信IF、14…入力デバイス、15…出力デバイス、20…端末、30…人工衛星、40…アンテナ、50…顧客装置、101…受信処理部、102…変換処理部、103…表示処理部、104…判定処理部、105…記憶部、105a…第1データDB、105b…第2データDB、105c…アノテーションDB
図1
図2
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図10