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特開2022-188922無機微粒子分散体、活性エネルギー線硬化性組成物、硬化物、積層体及び物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188922
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】無機微粒子分散体、活性エネルギー線硬化性組成物、硬化物、積層体及び物品
(51)【国際特許分類】
   C08F 292/00 20060101AFI20221215BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20221215BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20221215BHJP
   C08L 51/10 20060101ALI20221215BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20221215BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20221215BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C08F292/00
C08F2/44 A
C08F20/00 510
C08F2/44 C
C08L51/10
C08K3/013
C08L101/02
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097213
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 直人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正広
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J011
4J026
【Fターム(参考)】
4F100AA01A
4F100AA20A
4F100AK02B
4F100AK03B
4F100AK25A
4F100AK41A
4F100AK46A
4F100AK51A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA03
4F100EH46A
4F100EJ42A
4F100EJ54A
4F100EJ86A
4F100JB14A
4F100JK09
4F100JL11
4F100YY00A
4F100YY00B
4J002AA032
4J002BG021
4J002BG072
4J002BN191
4J002CF112
4J002CK022
4J002CL072
4J002DE046
4J002DE106
4J002DE136
4J002DE146
4J002DJ016
4J002FD016
4J002GF00
4J002GH01
4J011AA05
4J011AC04
4J011BA04
4J011PA07
4J011PA13
4J011PB22
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA22
4J011QA23
4J011QA24
4J011SA84
4J011TA06
4J011TA07
4J011TA09
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA02
4J026AC00
4J026BA28
4J026BB01
4J026BB02
4J026BB10
4J026DB06
4J026DB36
4J026FA05
4J026FA07
4J026GA07
4J026GA09
(57)【要約】
【課題】優れた密着性を有し、かつ、硬化物における優れた耐擦傷性を有する無機微粒子分散体。活性エネルギー線硬化性組成物、硬化物、積層体、及び物品を提供する。
【解決手段】無機微粒子(A)と、一分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)と、湿潤分散剤(C)とを含有する無機微粒子分散体であり、前記無機微粒子(A)の平均一次粒子径が1~50nmの範囲であり、前記無機微粒子(A)の含有量が、前記無機微粒子(A)、前記化合物(B)、及び前記湿潤分散剤(C)の合計質量中に40~90質量%の範囲であり、前記湿潤分散剤(C)が、酸価及び/又はアミン価を有するものであることを特徴とする無機微粒子分散体を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機微粒子(A)と、
一分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)と、
湿潤分散剤(C)とを含有する無機微粒子分散体であり、
前記無機微粒子(A)の平均一次粒子径が、1~50nmの範囲であり、
前記無機微粒子(A)の含有量が、前記無機微粒子(A)、前記化合物(B)、及び前記湿潤分散剤(C)の合計質量中に40~90質量%の範囲であり、
前記湿潤分散剤(C)が、酸価及び/又はアミン価を有するものであることを特徴とする無機微粒子分散体。
【請求項2】
前記化合物(B)が、一分子中に(メタ)アクリロイル基を2~4個有するものである請求項1記載の無機微粒子分散体。
【請求項3】
前記湿潤分散剤(C)が、カルボキシル基、リン酸基及び/又はアミノ基を有する樹脂であり、前記樹脂がウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びアミド樹脂からなる群より選ばれる1種以上である請求項1又は2記載の無機微粒子分散体。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項記載の無機微粒子分散体と、光重合開始剤とを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
請求項4記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物。
【請求項6】
基材の片面又は両面に請求項4記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を有することを特徴とする積層体。
【請求項7】
前記基材が、環状オレフィン系基材又は線状オレフィン系基材である請求項6記載の積層体。
【請求項8】
前記基材が、フィルム状である請求項6又は7記載の積層体。
【請求項9】
請求項6~8の何れか1項記載の積層体を表面に有することを特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機微粒子分散体、活性エネルギー線硬化性組成物、硬化物、積層体及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリロイル基を有する樹脂材料は、紫外線照射等により容易かつ瞬時に硬化させることができ、かつ、硬化物の透明性や硬度等に優れることから、塗料やコーティング剤等の分野で広く用いられている。その塗工対象物は光学フィルムやプラスチック成型品、木工品等多岐に渡っており、塗工対象物の種類や用途等に応じて要求性能も様々であることから、目的に応じて設計された樹脂が数多く提案されている。
【0003】
(メタ)アクリロイル基を有する樹脂材料としては、(メタ)アクリロイル基含有アクリル樹脂、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びペンタエリスリトールトリアクリレートを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。前記特許文献1に記載された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は硬化物における表面硬度と低硬化収縮性とのバランスに優れることから、比較的薄いプラスチックフィルムを塗工対象とするコート剤として有用である。しかしながら、フィルム基材への密着性、特に高温湿潤条件下での長期保存後の密着性が低く、剥がれが生じやすい課題があった。
【0004】
そこで、優れた密着性を有し、かつ、コーティング剤として使用可能な耐擦傷性に優れた材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-207947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、優れた密着性を有し、かつ、硬化物における優れた耐擦傷性を有する無機微粒子分散体、活性エネルギー線硬化性組成物、前記活性エネルギー線硬化性組成物からなる硬化物、積層体、及び物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定の無機微粒子と、一分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物と、特定の湿潤分散剤とを含有する無機微粒子分散体を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、無機微粒子(A)と、一分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)と、湿潤分散剤(C)とを含有する無機微粒子分散体であり、前記無機微粒子(A)の平均一次粒子径が、1~50nmの範囲であり、前記無機微粒子(A)の含有量が、前記無機微粒子(A)、前記化合物(B)、及び前記湿潤分散剤(C)の合計質量中に40~90質量%の範囲であり、前記湿潤分散剤(C)が、酸価及び/又はアミン価を有するものであることを特徴とする無機微粒子分散体、活性エネルギー線硬化性組成物、硬化物、積層体、及び物品に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の無機微粒子分散体は、基材密着性及び耐擦傷性に優れた硬化物を形成可能なことから、コーティング剤や接着剤として用いることができ、特にコーティング剤として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の無機微粒子分散体は、無機微粒子(A)と、一分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)と、湿潤分散剤(C)とを含有するものであることを特徴とする。
【0011】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/またはメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及び/またはメタクリロイルを意味する。さらに、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/またはメタクリルを意味する。
【0012】
前記無機微粒子(A)としては、平均一次粒子径が1~50nmの範囲のものを用いる。なお、平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡により複数個の無機微粒子について径を測定し、その平均値を算出することにより得られるものである。
【0013】
前記無機微粒子(A)としては、例えば、酸化ジルコニウム、シリカ、硫酸バリウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、酸化セリウム、アルミナ、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステン、アンチモン等が挙げられる。これらの無機微粒子は、単独で用いることも2種以上を併用することできる。また、これらの中でも、基材密着性及び耐擦傷性に優れた硬化物を形成可能な無機微粒子分散体が得られることから、シリカが好ましく、粒子表面に疎水化処理を施したシリカ微粒子がより好ましい。
【0014】
前記無機微粒子(A)の含有量は、前記無機微粒子(A)、前記(メタ)アクリレート化合物(B)、及び前記湿潤分散剤(C)の合計質量中に40~90質量%の範囲であり、基材密着性及び耐擦傷性に優れた硬化物を形成可能な無機微粒子分散体が得られることから、45~70質量%の範囲がより好ましい。
【0015】
前記(メタ)アクリレート化合物(B)としては、一分子中に(メタ)アクリロイル基を2つ以上有するものを用いる。
【0016】
前記化合物(B)としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンのプロピレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンのエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート3-メチル-1,5ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,3-[(メタ)アクリロイルオキシメチル]ノルボルナン、2,5-[(メタ)アクリロイルオキシメチル]ノルボルナン、2,6-[(メタ)アクリロイルオキシメチル]ノルボルナン、1,3-アダマンチルジ(メタ)アクリレート、1,3-ビス[(メタ)アクリロイルオキシメチル]アダマンタン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]-2,4,8,10-テトラオキソスピロ[5.5]ウンデカン、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート;
【0017】
EO変性グリセロール(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(EO)或いは(PO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能(メタ)アクリレート;
【0018】
ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレート;
【0019】
ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能(メタ)アクリレート;
【0020】
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0021】
これらの一分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。なかでも、基材密着性及び耐擦傷性に優れた硬化物を形成可能な無機微粒子分散体が得られることから、一分子中に2~4個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0022】
前記湿潤分散剤(C)としては、酸価及び/又はアミン価を有するものである。
【0023】
前記湿潤分散剤(C)としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基及び/又はアミノ基を有するウレタン樹脂、カルボキシル基、リン酸基及び/又はアミノ基を有するアクリル樹脂、カルボキシル基、リン酸基及び/又はアミノ基を有するポリエステル樹脂、カルボキシル基、リン酸基及び/又はアミノ基を有するアミド樹脂等が挙げられる。これらの湿潤分散剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、無機粒子に対し優れた分散性を有し、かつ優れた安定性を保持することから、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂、アミノ基を有するアミド樹脂が好ましい。
【0024】
前記湿潤分散剤(C)の市販品としては、例えば、BYK社製「DISPERBYK-102」、「DISPERBYK-106」、「DISPERBYK-108」、「DISPERBYK-109」、「DISPERBYK-110/111」、「DISPERBYK-118」、「DISPERBYK-140」、「DISPERBYK-142」、「DISPERBYK-145」、「DISPERBYK-」、「DISPERBYK-161」、「DISPERBYK-162/163」、「DISPERBYK-164」、「DISPERBYK-167」、「DISPERBYK-168」、「DISPERBYK-170」、「DISPERBYK-174」、「DISPERBYK-180」、「DISPERBYK-182」、「DISPERBYK-184」、「DISPERBYK-185」、「DISPERBYK-2000」、「DISPERBYK-2001」、「DISPERBYK-2008」、「DISPERBYK-2009」、「DISPERBYK-2013」、「DISPERBYK-2022」、「DISPERBYK-2023」、「DISPERBYK-2025v2026」、「DISPERBYK-2050」、「DISPERBYK-2055」、「DISPERBYK-2096」、「DISPERBYK-2150」、「DISPERBYK-2155」、「DISPERBYK-2157」、「DISPERBYK-2158」、「DISPERBYK-2159」、「DISPERBYK-2163」、「DISPERBYK-2164」、「BYK-9076」、「BYK-9077」、「BYK-220 S」、「ANTI-TERRA-U/U100」、「ANTI-TERRA-U/U204」、楠本化成株式会社製「ディスパロン1831」、「ディスパロン1850」、「ディスパロン1860」、「ディスパロンDA-1401」、「ディスパロンDA-1200」、「ディスパロンPW36ディスパロンDA-703-50」「ディスパロンDA7301」、「ディスパロンDA-325」、「ディスパロンDA-375」、「ディスパロンDA234」が挙げられる。
【0025】
前記湿潤分散剤(C)の酸価は、無機微粒子に対し優れた分散性を有し、かつ優れた安定性を保持することから、0.5~180mgKOH/gの範囲が好ましく、10~80mgKOH/gの範囲がより好ましい。また、前記湿潤分散剤(C)のアミン価は、無機粒子に対し優れた分散性を有し、かつ優れた安定性を保持することから、0~150mgKOH/gの範囲が好ましく、20~50mgKOH/gの範囲がより好ましい。なお、本発明において、酸価はJIS K 0070(1992)の中和滴定法に基づいて測定される値である。また、アミン価は、JIS K 2501(2003)に基づいて算出される値である。
【0026】
本発明の無機微粒子分散体は、前記化合物(B)以外のその他の活性エネルギー線硬化性を有する樹脂成分を本発明の効果を損なわない範囲で併用してもよい。
【0027】
前記その他の活性エネルギー線硬化性を有する樹脂成分としては、前記化合物(B)以外のその他の(メタ)アクリレート樹脂(D)が挙げられる。前記その他の(メタ)アクリレート樹脂(D)としては、例えば、デンドリマー型(メタ)アクリレート樹脂(D1)、アクリル(メタ)アクリレート樹脂(D2)、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D3)等が挙げられる。これらのその他の(メタ)アクリレート樹脂(D)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0028】
前記デンドリマー型(メタ)アクリレート樹脂(D1)とは、規則性のある多分岐構造を有し、各分岐鎖の末端に(メタ)アクリロイル基を有する樹脂のことをいい、デンドリマー型の他、ハイパーブランチ型或いはスターポリマーなどと呼ばれている。このような化合物は、例えば、下記構造式(1-1)~(1-8)で表されるものなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、規則性のある多分岐構造を有し、各分岐鎖の末端に(メタ)アクリロイル基を有する樹脂であればいずれのものも用いることができる。
【0029】
【化1】
【0030】
【化2】
[式(1-1)~(1-8)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素原子数1~4の炭化水素基である。]
【0031】
前記デンドリマー型(メタ)アクリレート樹脂(D1)の市販品としては、例えば、大阪有機化学株式会社製「ビスコート#1000」[重量平均分子量(Mw)1,500~2,000、一分子あたりの平均(メタ)アクリロイル基数14]、「ビスコート1020」[重量平均分子量(Mw)1,000~3,000]、「SIRIUS501」[重量平均分子量(Mw)15,000~23,000]、MIWON社製「SP-1106」[重量平均分子量(Mw)1,630、一分子あたりの平均(メタ)アクリロイル基数18]、SARTOMER社製「CN2301」、「CN2302」[一分子あたりの平均(メタ)アクリロイル基数16]、「CN2303」[一分子あたりの平均(メタ)アクリロイル基数6]、「CN2304」[一分子あたりの平均(メタ)アクリロイル基数18]、新日鉄住金化学株式会社製「エスドリマーHU-22」、新中村化学株式会社製「A-HBR-5」、第一工業製薬株式会社製「ニューフロンティアR-1150」、日産化学株式会社製「ハイパーテックUR-101」等が挙げられる。
【0032】
前記デンドリマー型(メタ)アクリレート樹脂(D1)の重量平均分子量(Mw)は、1,000~30,000の範囲であることが好ましい。また、一分子あたりの平均(メタ)アクリロイル基数は、5~30の範囲が好ましい。
【0033】
前記アクリル(メタ)アクリレート樹脂(D2)としては、例えば、水酸基やカルボキシル基、イソシアネート基、グリシジル基等の反応性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(α)を必須の成分として重合させて得られるアクリル樹脂中間体に、これらの官能基と反応し得る反応性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(β)を更に反応させることにより(メタ)アクリロイル基を導入して得られるものが挙げられる。
【0034】
前記反応性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(α)は、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレートモノマー;2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等のイソシアネート基含有(メタ)アクリレートモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等のグリシジル基含有(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。これらは単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0035】
前記アクリル樹脂中間体は、前記(メタ)アクリレート化合物(α)の他、必要に応じてその他の重合性不飽和基含有化合物を共重合させたものであってもよい。前記その他の重合性不飽和基含有化合物は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシリル基含有(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン誘導体等が挙げられる。これらは単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0036】
前記アクリル樹脂中間体は、一般的なアクリル樹脂と同様の方法にて製造することができる。製造条件の一例としては、例えば、重合開始剤の存在下、60℃~150℃の温度領域で各種モノマーを重合させることにより製造することができる。重合の方法は、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が挙げられる。また、重合様式は、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等が挙げられる。溶液重合法で行う場合には、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒や、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル溶媒を好ましく用いることができる。
【0037】
前記(メタ)アクリレート化合物(β)は、前記(メタ)アクリレート化合物(α)が有する反応性官能基と反応し得るものであれば特に限定されないが、反応性の観点から以下の組み合わせであることが好ましい。即ち、前記(メタ)アクリレート化合物(α)として水酸基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてカルボキシル基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてグリシジル基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)として水酸基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてグリシジル基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてカルボキシル基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(β)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0038】
前記アクリル樹脂中間体と(メタ)アクリレート化合物(β)との反応は、例えば、該反応がエステル化反応である場合には、60~150℃の温度範囲で、トリフェニルホスフィン等のエステル化触媒を適宜用いるなどの方法が挙げられる。また、該反応がウレタン化反応である場合には、50~120℃の温度範囲で、アクリル樹脂中間体に化合物(β)を滴下しながら反応させる等の方法が挙げられる。両者の反応割合は、前記アクリル樹脂中間体中の官能基数1モルに対し、前記(メタ)アクリレート化合物(β)を1.0~1.1モルの範囲で用いることが好ましい。
【0039】
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D3)としては、例えば、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸又はその無水物を反応させて得られるものが挙げられる。前記エポキシ樹脂は、例えば、ヒドロキノン、カテコール等の2価フェノールのジグリシジルエーテル;3,3’-ビフェニルジオール、4,4’-ビフェニルジオール等のビフェノール化合物のジグリシジルエーテル;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;1,4-ナフタレンジオール、1,5-ナフタレンジオール、1,6-ナフタレンジオール、2,6-ナフタレンジオール、2,7-ナフタレンジオール、ビナフトール、ビス(2,7-ジヒドロキシナフチル)メタン等のナフトール化合物のポリグリジシルエーテル;4,4’,4”-メチリジントリスフェノール等のトリグリシジルエーテル;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;前記各種のエポキシ樹脂の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;前記各種のエポキシ樹脂の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等が挙げられる。
【0040】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、用いる活性エネルギー線の種類によっては、光重合開始剤を用いることが好ましい。前記光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン等の光ラジカル重合開始剤などが挙げられる。
【0041】
前記その他の光重合開始剤の市販品としては、例えば、「Omnirad 1173」、「Omnirad 184」、「Omnirad 127」、「Omnirad 2959」、「Omnirad 369」、「Omnirad 379」、「Omnirad 907」、「Omnirad 4265」、「Omnirad 1000」、「Omnirad 651」、「Omnirad TPO」、「Omnirad 819」、「Omnirad 2022」、「Omnirad 2100」、「Omnirad 754」、「Omnirad 784」、「Omnirad 500」、「Omnirad 81」(IGM Resins社製);「KAYACURE DETX」、「KAYACURE MBP」、「KAYACURE DMBI」、「KAYACURE EPA」、「KAYACURE OA」(日本化薬株式会社製);「Vicure 10」、「Vicure 55」(Stoffa Chemical社製);「Trigonal P1」(Akzo Nobel社製)、「SANDORAY 1000」(SANDOZ社製);「DEAP」(Upjohn Chemical社製)、「Quantacure PDO」、「Quantacure ITX」、「Quantacure EPD」(Ward Blenkinsop社製);「Runtecure 1104」(Runtec社製)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0042】
また、前記光重合開始剤は、アミン化合物、尿素化合物、含硫黄化合物、含燐化合物、含塩素化合物、ニトリル化合物等の光増感剤を併用することもできる。
【0043】
前記光重合開始剤の使用量は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中の有機溶剤を除いた成分100質量部に対して0.05~20質量部の範囲で用いることが好ましく、0.1~10質量部の範囲で用いることがより好ましい。
【0044】
本発明で用いる活性エネルギー線硬化性組成物は、更にその他の成分を含有していてもよい。前記その他の成分としては、例えば、シランカップリング剤、リン酸エステル化合物、溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコン系添加剤、フッ素系添加剤、帯電防止剤、有機ビーズ、量子ドット(QD)、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、防曇剤、着色剤等が挙げられる。
【0045】
前記シランカップリング剤としては、例えば、[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]トリアルキルシラン、[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]ジアルキルアルコキシシラン、[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]アルキルジアルコキシシラン、[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]トリアルコキシシラン等の(メタ)アクリロイルオキシ系シランカップリング剤;トリアルキルビニルシラン、ジアルキルアルコキシビニルシラン、アルキルジアルコキシビニルシラン、トリアルコキシビニルシラン、トリアルキルアリルシラン、ジアルキルアルコキシアリルシラン、アルキルジアルコキシアリルシラン、トリアルコキシアリルシラン等のビニル系シランカップリング剤;スチリルトリアルキル、スチリルジアルキルアルコキシシラン、スチリルアルキルジアルコキシシラン、スチリルトリアルコキシシラン等のスチレン系シランカップリング剤;(グリシジルオキシアルキル)トリアルキルシラン、(グリシジルオキシアルキル)ジアルキルアルコキシシラン、(グリシジルオキシアルキル)アルキルジアルコキシシラン、(グリシジルオキシアルキル)トリアルコキシシラン、[(3,4-エポキシシクロヘキシル)アルキル]トリメトキシシラン、[(3,4-エポキシシクロヘキシル)アルキル]トリアルキルシラン、[(3,4-エポキシシクロヘキシル)アルキル]ジアルキルアルコキシシラン、[(3,4-エポキシシクロヘキシル)アルキル]アルキルジアルコキシシラン、[(3,4-エポキシシクロヘキシル)アルキル]トリアルコキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;(イソシアネートアルキル)トリアルキルシラン、(イソシアネートアルキル)ジアルキルアルコキシシラン、(イソシアネートアルキル)アルキルジアルコキシシラン、(イソシアネートアルキル)トリアルコキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤などが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0046】
前記リン酸エステル化合物の市販品としては、例えば、分子構造中に(メタ)アクリロイル基を有するリン酸エステル化合物である日本化薬株式会社製「カヤマーPM-2」、「カヤマーPM-21」、共栄社化学株式会社製「ライトエステルP-1M」「ライトエステルP-2M」、「ライトアクリレートP-1A(N)」、SOLVAY社製「SIPOMER PAM 100」、「SIPOMER PAM 200」、「SIPOMER PAM 300」、「SIPOMER PAM 4000」、大阪有機化学工業社製「ビスコート#3PA」、「ビスコート#3PMA」、第一工業製薬社製「ニューフロンティア S-23A」;分子構造中にアリルエーテル基を有するリン酸エステル化合物であるSOLVAY社製「SIPOMER PAM 5000」等が挙げられる。
【0047】
前記溶剤は、活性エネルギー線硬化性組成物の塗工粘度調節等の目的で添加されるものであり、その種類や添加量は、所望の性能に応じて適宜調整される。一般には、活性エネルギー線硬化性組成物の不揮発分が10~90質量%の範囲となるように用いられる。前記溶剤の具体例としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の環状エーテル溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族溶剤;カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0048】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン誘導体、2-(2’-キサンテンカルボキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-o-ニトロベンジロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-キサンテンカルボキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン、2-o-ニトロベンジロキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0049】
前記酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、有機硫黄系酸化防止剤、リン酸エステル系酸化防止剤等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、単独で用いることも2種以上を経鵜用することもできる。
【0050】
前記シリコン系添加剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロゲンポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、フッ素変性ジメチルポリシロキサン共重合体、アミノ変性ジメチルポリシロキサン共重合体など如きアルキル基やフェニル基を有するポリオルガノシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらのシリコン系添加剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0051】
前記フッ素系添加剤の市販品としては、例えば、DIC株式会社製「メガフェース」シリーズ等が挙げられる。これらのフッ素系添加剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0052】
前記帯電防止剤としては、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド又はビス(フルオロスルホニル)イミドのピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、アンモニウム、又はリチウム塩が挙げられる。これらの帯電防止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0053】
前記有機ビーズとしては、例えば、ポリメタクリル酸メチルビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリスチレンビーズ、ポリアクリルスチレンビーズ、シリコーンビ-ズ、ガラスビーズ、アクリルビーズ、ベンゾグアナミン系樹脂ビーズ、メラミン系樹脂ビーズ、ポリオレフィン系樹脂ビーズ、ポリエステル系樹脂ビーズ、ポリアミド樹脂ビーズ、ポリイミド系樹脂ビーズ、ポリフッ化エチレン樹脂ビーズ、ポリエチレン樹脂ビーズ等が挙げられる。これらの有機ビーズは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの有機ビーズの平均粒径は1~10μmの範囲であることが好ましい。
【0054】
前記量子ドット(QD)としては、II-V族半導体化合物、II-VI族半導体化合物、III-IV族半導体化合物、III-V族半導体化合物、III-VI族半導体化合物、IV-VI族半導体化合物、I-III-VI族半導体化合物、II-IV-VI族半導体化合物、II-IV-V族半導体化合物、I-II-IV-VI族半導体化合物、IV族元素又はこれを含む化合物等が挙げられる。前記II-VI族半導体化合物は、例えば、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe等の二元化合物;ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe等の三元化合物;CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、CdHgZnTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe等の四元化合物等が挙げられる。前記III-IV族半導体化合物は、例えば、B、Al、Ga等が挙げられる。前記III-V族半導体化合物は、例えば、BP、BN、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb等の二元化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP等の三元化合物;GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb等の四元化合物等が挙げられる。前記III-VI族半導体化合物は、例えば、Al、AlSe、AlTe、Ga、GaSe、GaTe、GaTe、In、InSe、InTe、InTe等が挙げられる。前記IV-VI族半導体化合物は、例えば、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe等の二元化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe等の三元化合物;SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe等の四元化合物等が挙げられる。前記I-III-VI族半導体化合物は、例えば、CuInS、CuInSe、CuInTe、CuGaS、CuGaSe、CuGaSe、AgInS、AgInSe、AgInTe、AgGaSe、AgGaS、AgGaTe等が挙げられる。前記IV族元素又はこれを含む化合物は、例えば、C、Si、Ge、SiC、SiGe等が挙げられる。量子ドットは単一の半導体化合物からなっていてもよいし、複数の半導体化合物からなるコアシェル構造を有していてもよい。また、その表面を有機化合物にて修飾したものであってもよい。
【0055】
これら各種の添加剤は、所望の性能等に応じて任意の量添加することができるが、通常、活性エネルギー線硬化性組成物中の溶剤を除いた成分の合計100質量部中、0.01~40質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0056】
本発明で用いる活性エネルギー線硬化性組成物は前記各配合成分を混合して製造される。混合方法は特に限定されず、ペイントシェイカー、ディスパー、ロールミル、ビーズミル、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等を用いてもよい。
【0057】
本発明の硬化物は、前記活性エネルギー線硬化性組成物に、活性エネルギー線を照射することで得ることができる。前記活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。また、前記活性エネルギー線として、紫外線を用いる場合、紫外線による硬化反応を効率よく行う上で、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で照射してもよく、空気雰囲気下で照射してもよい。
【0058】
紫外線発生源としては、実用性、経済性の面から紫外線ランプが一般的に用いられている。具体的には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、太陽光、LED等が挙げられる。
【0059】
前記活性エネルギー線の積算光量は、特に制限されないが、0.1~50kJ/mであることが好ましく、0.5~10kJ/mであることがより好ましい。積算光量が上記範囲であると、未硬化部分の発生の防止または抑制ができることから好ましい。
【0060】
なお、前記活性エネルギー線の照射は、一段階で行ってもよいし、二段階以上に分けて行ってもよい。
【0061】
本発明の積層体は、基材の片面または両面に前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を有するものであり、前記基材上に前記活性エネルギー線硬化性組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより得ることができる。
【0062】
前記基材としては、例えば、環状オレフィン系基材、線状オレフィン系基材等が挙げられる。また、前記基材はフィルム状であってもよい。
【0063】
前記硬化塗膜の形成方法としては、例えば、塗装法、転写法、シート接着法等が挙げられる。
【0064】
前記塗装法とは、前記塗料をスプレーコートするか、もしくはカーテンコーター、ロールコーター、グラビアコーター等の印刷機器を用いて成形品にトップコートとして塗装した後、活性エネルギー線を照射して硬化させる方法である。
【0065】
前記転写法とは、離型性を有する基体シート上に前記した活性エネルギー線硬化性組成物を塗布して得られる転写材を成形品表面に接着させた後、基体シートを剥離して成型品表面にトップコートを転写し、次いで活性エネルギー線を照射し硬化させる方法、又は、該転写材を成形品表面に接着させた後、活性エネルギー線を照射して硬化させ、次いで基体シートを剥離する事により成型品表面にトップコートを転写する方法である。
【0066】
前記シート接着法とは、基体シート上に前記の硬化性組成物からなる塗膜を有する保護シート、又は、基体シート上に硬化性組成物からなる塗膜と加飾層とを有する保護シートをプラスチック成形品に接着することにより、成形品表面に保護層を形成する方法である。
【0067】
前記シート接着法は、具体的には、予め作製しておいた保護層形成用シートの基体シートと成形品とを接着させた後、加熱により熱硬化せしめてB-ステージ化してなる樹脂層の架橋硬化を行う方法(後接着法)や、前記保護層形成用シートを成形金型内に挟み込み、キャビテイ内に樹脂を射出充満させ、樹脂成形品を得るのと同時にその表面と保護層形成用シートを接着させ後、加熱により熱硬化させて樹脂層の架橋硬化を行う方法(成形同時接着法)等が挙げられる。
【0068】
ここで、前記基材として、フィルム状の環状オレフィン系基材又は線状オレフィン系基材を用いる場合、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を前記フィルム状の環状オレフィン系基材又は線状オレフィン系基材上に塗布する際の塗布量は、硬化後の膜厚が1~100μmの範囲となるように調整することが好ましい。また、この際の塗工方法としては、例えば、バーコーター塗工、ダイコート塗工、スプレーコート塗工、カーテンコート塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷法等が挙げられる。本発明の活性エネルギー線硬化性組成物が有機溶剤を含有する場合には、塗布後に80~150℃の条件下で数十秒~数分間加温して有機溶剤を揮発させたのち、活性エネルギー線を照射して前記活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させることが好ましい。
【0069】
本発明の積層体は、前記活性エネルギー線硬化性組成物からなる硬化塗膜以外に、その他の層構成を有していてもよい。これら各種の層構成の形成方法は特に限定されず、例えば、樹脂原料を直接塗布して形成しても良いし、予めシート状になっているものを接着剤にて貼り合せても良い。
【0070】
本発明の物品としては、前記積層体を表面に有するものである。前記物品としては、例えば、携帯電話、家電製品、自動車内外装材、OA機器等のプラスチック成形品などが挙げられる。
【実施例0071】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下に挙げた実施例に限定されるものではない。
【0072】
なお、本実施例において、重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用い、下記の条件により測定した値である。
【0073】
測定装置 ; 東ソー株式会社製「HLC-8220」
カラム ; 東ソー株式会社製「ガードカラムHXL-H」
+東ソー株式会社製「TSKgel G5000HXL」
+東ソー株式会社製「TSKgel G4000HXL」
+東ソー株式会社製「TSKgel G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSKgel G2000HXL」
検出器 ; RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「SC-8010」
測定条件: カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 ;ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0074】
(実施例1:無機微粒子分散体(1)の製造)
シリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製「アエロジル8200」、一次平均粒子径:12nm)208.8質量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM-309」)25.2質量部と、1,9-ノナンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業製「ビスコート#260」)72質量部と、湿潤分散剤(ビックケミー・ジャパン製「ANTI-TERRA-U100」)18質量部と、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとをモル比40/60で含有する組成物(東亞合成株式会社製「ルミキュアDPA-600」)36質量部と、メチルエチルケトン840質量部とを配合し、不揮発分30質量%のスラリーとしたものを、湿式ボールミル(アシザワ株式会社製「スターミルLMZ015」)を用いて混合分散し、不揮発分30質量%の無機微粒子分散体(1)を得た。得られた分散体の平均粒子径を、粒子径測定装置(大塚電子株式会社製「ELSZ-2」)を用いて測定した。平均粒子径(D50)は105nmであった。なお、本発明において、湿式ボールミルによる分散の各条件は次の通りである。
【0075】
メディア:メジアン径100μmのジルコニアビーズ
ミルの内容積に対する樹脂組成物の充填率:70体積%
攪拌翼の先端部の周速:11m/sec
樹脂組成物の流速:200ml/min
分散時間:50分
【0076】
(実施例2:無機微粒子分散体(2)の製造)
シリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製「アエロジル9200」、一次平均粒子径:12nm)208.8質量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM-309」)25.2質量部と、1,9-ノナンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業製「ビスコート#260」)72質量部と、湿潤分散剤(ビックケミー・ジャパン製「ANTI-TERRA-U100」)18質量部と、ジペンタエリスリト-ルペンタアクリレ-トとジペンタエリスリト-ルヘキサアクリレ-トとをモル比40/60で含有する組成物(東亞合成株式会社製「ルミキュアDPA-600」)36質量部と、メチルエチルケトン840質量部とを配合し、不揮発分30質量%のスラリ-としたものを、湿式ボ-ルミル(アシザワ株式会社製「スタ-ミルLMZ015」)を用いて混合分散し、不揮発分30質量%の無機微粒子分散体(2)を得た。得られた分散体の平均粒子径を、粒子径測定装置(大塚電子株式会社製「ELSZ-2」)を用いて測定した。平均粒子径(D50)は124nmであった。
【0077】
(実施例3:無機微粒子分散体(3)の製造)
シリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製「アエロジル#200」、一次平均粒子径:12nm)208.8質量部と、トリメチロ-ルプロパントリアクリレ-ト(東亞合成株式会社製「アロニックスM-309」)25.2質量部と、1,9-ノナンジオ-ルジアクリレ-ト(大阪有機化学工業製「ビスコ-ト#260」)72質量部と、湿潤分散剤(ビックケミ-・ジャパン製「ANTI-TERRA-U100」)18質量部と、ジペンタエリスリト-ルペンタアクリレ-トとジペンタエリスリト-ルヘキサアクリレ-トとをモル比40/60で含有する組成物(東亞合成株式会社製「ルミキュアDPA-600」)36質量部と、メチルエチルケトン840質量部とを配合し、不揮発分30質量%のスラリ-としたものを、湿式ボ-ルミル(アシザワ株式会社製「スタ-ミルLMZ015」)を用いて混合分散し、不揮発分30質量%の無機微粒子分散体(3)を得た。得られた分散体の平均粒子径を、粒子径測定装置(大塚電子株式会社製「ELSZ-2」)を用いて測定した。平均粒子径(D50)は132nmであった。
【0078】
(実施例4:無機微粒子分散体(4)の製造)
シリカ微粒子(日産化学株式会社製「PGM-ST」;ゾルゲルシリカ、一次平均粒子径:12nm)50質量部と、トリメチロ-ルプロパントリアクリレ-ト(東亞合成株式会社製「アロニックスM-309」)13.5質量部と、湿潤分散剤(ビックケミ-・ジャパン製「ANTI-TERRA-U100」)1.5質量部と、メチルエチルケトン35質量部とを配合し、不揮発分30質量%の無機微粒子分散体(4)を得た。
【0079】
(実施例5:無機微粒子分散体(5)の製造)
シリカ微粒子(日産化学株式会社製「MEK-ST-40」;ゾルゲルシリカ、一次平均粒子径:12nm)37.5質量部と、トリメチロ-ルプロパントリアクリレ-ト(東亞合成株式会社製「アロニックスM-309」)13.5質量部と、湿潤分散剤(ビックケミ-・ジャパン製「ANTI-TERRA-U100」)1.5質量部と、メチルエチルケトン47.5質量部とを配合し、不揮発分30質量%の無機微粒子分散体(5)を得た。
【0080】
(実施例6:無機微粒子分散体(6)の製造)
シリカ微粒子(日産化学株式会社製「TOL-ST」;ゾルゲルシリカ、一次平均粒子径:12nm)37.5質量部と、トリメチロ-ルプロパントリアクリレ-ト(東亞合成株式会社製「アロニックスM-309」)13.5質量部と、湿潤分散剤(ビックケミ-・ジャパン製「ANTI-TERRA-U100」)1.5質量部と、メチルエチルケトン47.5質量部とを配合し、不揮発分30質量%の無機微粒子分散体(6)を得た。
【0081】
(実施例7:無機微粒子分散体(7)の製造)
シリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製「アエロジル9200」、一次平均粒子径:12nm)13.92質量部と、トリメチロ-ルプロパントリアクリレ-ト(東亞合成株式会社製「アロニックスM-309」)4.68質量部と、1,9-ノナンジオ-ルジアクリレ-ト(大阪有機化学工業製「ビスコ-ト#260」)4.8質量部と、湿潤分散剤(ビックケミ-・ジャパン製「ANTI-TERRA-U100」)1.2質量部と、ジペンタエリスリト-ルペンタアクリレ-トとジペンタエリスリト-ルヘキサアクリレ-トとをモル比40/60で含有する組成物(東亞合成株式会社製「ルミキュアDPA-600」)2.4質量部と、メチルエチルケトン63質量部とを配合し、不揮発分30質量%のスラリ-としたものを、湿式ボ-ルミル(アシザワ株式会社製「スタ-ミルLMZ015」)を用いて混合分散し、さらにシリカ微粒子(日産化学株式会社製「MEK-ST-ZL」;ゾルゲルシリカ、一次平均粒子径:12nm)10質量部配合することで、不揮発分30質量%の無機微粒子分散体(7)を得た。
【0082】
(実施例8:無機微粒子分散体(8)の製造)
シリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製「アエロジル8200」、一次平均粒子径:12nm)146.2質量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM-309」)125.6質量部と、1,9-ノナンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業製「ビスコート#260」)50.4質量部と、湿潤分散剤(ビックケミー・ジャパン製「ANTI-TERRA-U100」)12.6質量部と、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとをモル比40/60で含有する組成物(東亞合成株式会社製「ルミキュアDPA-600」)25.2質量部と、メチルエチルケトン840質量部とを配合し、不揮発分30質量%のスラリーとしたものを、湿式ボールミル(アシザワ株式会社製「スターミルLMZ015」)を用いて混合分散し、不揮発分30質量%の無機微粒子分散体(8)を得た。得られた分散体の平均粒子径を、粒子径測定装置(大塚電子株式会社製「ELSZ-2」)を用いて測定した。平均粒子径(D50)は105nmであった。
【0083】
(比較製造例1:アクリル樹脂の製造)
撹拌装置、冷却管、滴下ロ-トおよび窒素導入管を備えた反応装置に、メチルイソブチルケトン184質量部を仕込み、撹拌しながら系内温度が110℃になるまで昇温した。次いで、グリシジルメタアクリレ-ト221質量部、メチルメタアクリレ-ト52.5質量部、エチルアクリレ-ト2.8質量部およびt-ブチルパ-オキシ-2-エチルヘキサノエ-ト(日本乳化剤株式会社製「パ-ブチルO」)16.6質量部からなる混合液を3時間かけて滴下ロ-トより滴下し、110℃で15時間保持した。次いで、90℃まで降温した後、メトキノン0.1質量部およびアクリル酸76質量部を仕込み、トリフェニルホスフィン2.0質量部を添加して、100℃で8時間以上反応させた。溶液酸価が4.2mgKOH/g以下になったことを確認した後、メチルイソブチルケトンで希釈を行い、アクリル樹脂のメチルイソブチルケトン溶液910質量部(不揮発分50.0質量%)を得た。このアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は20,000であり、固形分換算の理論アクリロイル基当量は、250g/当量であり、水酸基価224mgKOH/gであった。
【0084】
(比較例1:無機微粒子分散体(R1)の調製)
シリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製「アエロジルR7200」、一次平均粒子径:12nm、粒子表面に(メタ)アクリロイル基を有するシリカ微粒子)53質量部と、比較合成例1で得たアクリル樹脂12質量部(樹脂固形分12質量部)、ジペンタエリスリト-ルペンタアクリレ-トとジペンタエリスリト-ルヘキサアクリレ-トとをモル比40/60で含有する組成物(東亞合成株式会社製「ルミキュアDPA-600」)35質量部、メチルイソブチルケトン188質量部を配合し、不揮発分50質量%のスラリ-としたものを、湿式ボ-ルミル(アシザワ株式会社製「スタ-ミルLMZ015」)を用いて混合分散し、不揮発分50質量%の無機微粒子分散体(R1)を得た。
【0085】
(比較例2:無機微粒子分散体(R2)の調製)
シリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製「MEK-AC 2140Z」、一次平均粒子径:12nm)37.5質量部と、トリメチロ-ルプロパントリアクリレ-ト(東亞合成株式会社製「アロニックスM-309」)13.5質量部と、メチルエチルケトン47.5質量部とを配合し、不揮発分30質量%の無機微粒子分散体(R2)を得た。
【0086】
実施例1~8、比較例1及び比較例2で得た無機微粒子分散体(1)~(8)、(R1)及び(R2)の組成を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
(実施例9:活性エネルギー線硬化性組成物(1)の調製、及び積層体(L1)の作製)
実施例1で得た不揮発分30質量%の無機微粒子分散体(1)100質量部(固形分として30質量部)、光重合開始剤(IGM Resins社製「Omnirad-BP Flakes」0.6質量部を混合し、活性エネルギー線硬化性組成物(1)を得た。
【0089】
次いで、得られた活性エネルギー線硬化性組成物(1)を厚さ23μmのシクロオレフィンフィルム(日本ゼオン株式会社製「ZeonorFilm ZF-14」、23μm)上にバ-コ-タ-で塗布し、90℃で1分間乾燥させた。次いで、窒素雰囲気下、80W高圧水銀ランプで紫外線を5kJ/m照射し、シクロオレフィンフィルム上に膜厚5μmの硬化塗膜を有する積層体(L1)を得た。
【0090】
(実施例10~17:活性エネルギー線硬化性組成物(2)~(9)の調整、及び積層体(L2)~(L9)の作製)
表2に示す配合比率で実施例8と同様の方法にて、活性エネルギー線硬化性組成物(2)~(9)を得た。また、積層体(L1)同様の方法にて積層体(L2)~(L9)を得た。
【0091】
(比較例3及び4:活性エネルギー線硬化性組成物(R1)及び(R2)の調製、並びに積層体(L10)及び(L11)の作製)
表2に示す配合比率で実施例8と同様の方法にて、活性エネルギー線硬化性組成物(R1)及び(R2)を得た。また、積層体(L1)同様の方法にて積層体(L10)及び(L11)を得た。
【0092】
上記の実施例及び比較例で得られた積層体(L1)~(L11)を用いて、下記の評価を行った。
【0093】
[耐擦傷性の評価方法]
スチ-ルウ-ル(日本スチ-ルウ-ル株式会社製「ボンスタ-#0000」)0.5gで直径2.4センチメ-トルの円盤状の圧子を包み、該圧子に500g重の荷重をかけて、実施例及び比較例で得られた積層体の塗装表面を10往復させる磨耗試験を行った。磨耗試験前後の積層フィルムのヘ-ズ値をスガ試験機株式会社製「ヘ-ズコンピュ-タHZ-2」を用いて測定し、それらの差の値(dH)を用いて、以下の基準に従い評価した。なお、差の値(dH)が小さいほど、擦傷に対する耐性が高い。
【0094】
A:dHが、1.0%以下であった
B:dHが、1.0%超~3.0%以下であった。
C:dHが、3.0%超~5.0%以下であった。
D:dHが、5.0%超~10%以下であった。
E:dHが、10%超であった。
【0095】
[基材密着性(初期)の評価方法]
実施例及び比較例で得られた積層体の硬化塗膜表面にカッタ-ナイフで切れ目を入れて、1mm×1mmの碁盤目を100個作製し、その上からセロハン粘着テ-プを貼着した後、急速に剥がす操作を行い、剥離せずに残存した碁盤目の数を数え、以下の基準に従い評価した。
【0096】
A:碁盤目の残存数が80個以上であった。
B:碁盤目の残存数が50個以上80個未満であった。
C:碁盤目の残存数が30個以上50未満であった。
D:碁盤目の残存数が30個未満であった。
【0097】
[基材密着性(耐光性試験後)の評価方法]
実施例及び比較例で得られた積層体を、スガ試験機株式会社製フェ-ドメ-タ-「U48AU」(63℃、湿度50%)で50時間光照射した。その後、上述の基材密着性(初期)と同様の方法にて行い、以下の基準に従い評価した。
【0098】
A:碁盤目の残存数が80個以上であった。
B:碁盤目の残存数が50個以上80個未満であった。
C:碁盤目の残存数が30個以上50未満であった。
D:碁盤目の残存数が30個未満であった。
【0099】
実施例9~17、並びに比較例3及び4で調製した活性エネルギー線硬化性組成物(1)~(8)、(R1)及び(R2)の組成、及び実施例9~17、並びに比較例3及び4で作製した積層体(L1)~(L11)の評価結果を表2に示す。
【0100】
【表2】
【0101】
表2に示した実施例9~17は、本発明の無機微粒子分散体を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を用いた積層体の例である。この積層体は、優れた耐擦傷性及び基材密着性を有することが確認できた。
【0102】
一方、表2に示した比較例3及び4は、湿潤分散体を有しない無機微粒子分散体を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を用いた積層体の例である。この積層体は、耐擦傷性には優れるものの、耐光性試験後の基材密着性に関しては、著しく不十分であることが確認できた。