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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188924
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】蓄熱積層体、建築部材及び局舎
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/14 20060101AFI20221215BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C09K5/14 E
E04B1/76 500F
E04B1/76 100B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097215
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 健一
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DD17
2E001FA03
2E001FA11
2E001FA14
2E001FA26
2E001GA12
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、通信基地局等の機器収容局舎の消費電力量を削減でき、かつ、停電発生時にも制御機器の温度上昇を抑制でき、かつ、太陽光をはじめとする外部環境による局舎内部及び制御機器等の温度上昇を効果的に抑制可能な蓄熱積層体を提供することである。
【解決手段】本発明は、金属面材(A)の少なくとも一方の面側に蓄熱性面材を備えることを特徴とする蓄熱積層体によって上記課題を解決した。
また、本発明は、金属面材(A)の少なくとも一方の面側に断熱材を備え、前記断熱材によって構成される面側に、蓄熱性面材及び金属面材(B)を備えることを特徴とする蓄熱積層体によって上記課題を解決した。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属面材(A)の少なくとも一方の面側に蓄熱性面材を備えることを特徴とする蓄熱積層体。
【請求項2】
金属面材(A)の少なくとも一方の面側に断熱材を備え、前記断熱材によって構成される面側に、蓄熱性面材及び金属面材(B)を備える請求項1に記載の蓄熱積層体。
【請求項3】
前記金属面材(A)及び前記金属面材(B)の少なくとも一方が、アルミニウム板である請求項1または2に記載の蓄熱積層体。
【請求項4】
前記金属面材(A)及び前記金属面材(B)の厚さが0.1~5mmである請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄熱積層体。
【請求項5】
金属面材(A)と断熱材と蓄熱性面材と金属面材(B)とがこの順に設けられた請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄熱積層体。
【請求項6】
前記蓄熱性面材の厚さが0.3~15mmである請求項1~5のいずれかに記載の蓄熱積層体。
【請求項7】
前記蓄熱性面材が、樹脂マトリクス中に蓄熱材が分散した蓄熱シートである請求項1~6のいずれかに記載の蓄熱積層体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項の蓄熱積層体からなる建築部材。
【請求項9】
請求項8に記載の建築部材からなる壁材または天井材または床材を備えた局舎。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば通信局舎をはじめとする建築物の壁材等に好適に使用可能な蓄熱積層材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信機器や制御機器等を収容する機器収容局舎は、例えば携帯電子端末等の通信基地局等に使用されている。
【0003】
前記制御機器等は、電力消費量が大きく発熱しやすいため、例えば送風ファンを設けたり、いわゆるエアコンを設置等することで、前記発熱による機器の温度上昇を制御する場合がある(例えば特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016―66734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記送風ファンやエアコン等を稼働させるためには、電力が必要であるため、通信基地局の消費電力量を増大させる場合があった。また、停電が発生した際に、前記送風ファン等が停止し、通信機器等の温度上昇を制御が困難となる場合があった。
【0006】
また、前記通信基地局等は、通常、屋外に設置され、太陽光等を直接受けることになる場合が多い。そのため、夏場には、外部環境の影響によって基地局内の温度も上昇し、前記制御機器に悪影響を与える場合があった。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、通信基地局等の機器収容局舎の消費電力量を削減でき、かつ、停電発生時にも制御機器の温度上昇を抑制でき、かつ、太陽光をはじめとする外部環境による局舎内部及び制御機器等の温度上昇を効果的に抑制可能な蓄熱積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、金属面材(A)の少なくとも一方の面側に蓄熱性面材を備えることを特徴とする蓄熱積層体によって上記課題を解決した。
【0009】
また、本発明は、金属面材(A)の少なくとも一方の面側に断熱材を備え、前記断熱材によって構成される面側に、蓄熱性面材及び金属面材(B)を備えることを特徴とする蓄熱積層体によって上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
本発明の蓄熱積層体であれば、通信基地局等の機器収容局舎の消費電力量を削減でき、かつ、停電発生時にも制御機器の温度上昇を抑制でき、かつ、太陽光をはじめとする外部環境による局舎内部及び制御機器等の温度上昇を効果的に抑制可能であることから、機器収容局舎の壁材や天井材などに使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の蓄熱積層体は、金属面材(A)の少なくとも一方の面側に蓄熱性面材を備えることを特徴とするものである。具体的な実施形態としては、例えば金属面材(A)の一方の面側に蓄熱性面材を備えた蓄熱積層体が挙げられ、かかる蓄熱積層体は、屋内空間の屋内面(例えば壁や床や天井等)に貼付して使用する後付けの建築部材として好適に使用することができる。前記後付けの建築部材を屋内空間の壁面等に設けることによって、屋内空間の温度上昇の抑制や、屋内空間を一定の温度に維持するために使用するエアコン等の消費電力量の削減に効果を奏する。
【0012】
また、本発明の蓄熱積層体は、金属面材(A)の少なくとも一方の面側に断熱材を備え、前記断熱材によって構成される面側に、蓄熱性面材及び金属面材(B)を備えることを特徴とする。本発明の蓄熱積層体は、もっぱら建築部材として使用することができる。とりわけ前記蓄熱積層体は、通信機器や制御機器等を収容する機器収容局舎(シェルターともいわれる)の壁材や天井材や床材に使用することができる。
【0013】
本発明の蓄熱積層体としては、例えば金属面材(A)と断熱材と蓄熱性面材と金属面材(B)とが下記に示す順に積層された構成(1)または(2)を有するものを使用することができる。
(構成1) 金属面材(A)/断熱材/蓄熱性面材/金属面材(B)
(構成2) 金属面材(A)/断熱材/金属面材(B)/蓄熱性面材
本発明の蓄熱積層体としては、機器収容局舎の消費電力量を削減でき、かつ、停電発生時にも制御機器の放熱による温度上昇を抑制でき、かつ、太陽光をはじめとする外部環境による局舎内部及び制御機器等の温度上昇を効果的に抑制するうえで、上記構成(1)を有するものを使用することが好ましい。
【0014】
また、前記構成1及び2の蓄熱積層体は、上記以外の層を有していてもよい。例えば、構成2を有する蓄熱積層体であれば、金属面材(A)/断熱材/金属面材(B)/蓄熱性面材/金属面材(C)の構成を有するものを使用することができる。
【0015】
また、本発明の蓄熱積層体は、各面材を接着するための接着剤層が存在してもよい。
【0016】
前記蓄熱積層体を建築部材として使用する場合、前記構成1の金属面材(B)側が屋内側となるように使用することが好ましく、前記構成2の蓄熱性面材側が屋内側となるように使用することが、機器収容局舎の消費電力量を削減でき、かつ、停電発生時にも制御機器の温度上昇を抑制でき、かつ、太陽光をはじめとする外部環境による局舎内部及び制御機器等の温度上昇を効果的に抑制するうえで好ましい。
【0017】
前記蓄熱積層体としては、総厚さが3~300mmの範囲であるものを使用することが好ましく、30~100mmの範囲のものを使用することが、建築部材として使用する場合に、機器収容局舎の消費電力量を削減でき、かつ、停電発生時にも制御機器の温度上昇を抑制でき、かつ、太陽光をはじめとする外部環境による局舎内部及び制御機器等の温度上昇を効果的に抑制するうえでより好ましい。
【0018】
前記金属面材(A)及び(B)としては、例えば鋼板、アルミニウム板、ステンレス板等を使用することができる。なかでも、前記金属面材(A)及び(B)としては、アルミニウム板を使用することが、蓄熱性面材への熱伝導性が高まり、その結果、機器収容局舎の消費電力量を削減でき、かつ、停電発生時にも制御機器の温度上昇を抑制でき、かつ、太陽光をはじめとする外部環境による局舎内部及び制御機器等の温度上昇を効果的に抑制するうえで好ましい。
【0019】
前記蓄熱積層体を構成する金属面材(A)及び金属面材(B)としては、厚さが0.1~5mmの範囲であるものを使用することが好ましく、0.6~1.5mmの範囲のものを使用することが、機器収容局舎等の建築物の建設に使用する壁材や床材や天井材に使用する場合に、機器収容局舎等の建築物の屋内空間の冷却等に使用するエアコン等の消費電力量を削減でき、かつ、停電発生時にも制御機器の温度上昇を抑制でき、かつ、太陽光をはじめとする外部環境による局舎内部及び制御機器等の温度上昇を効果的に抑制するうえでより好ましい。
【0020】
前記金属面材(A)及び(B)としては、同一の材質や厚さのものを使用してもよく、異なる材質や厚さのものをそれぞれ使用してもよい。また、任意で使用可能な前記金属面材(C)を使用する場合には、前記金属面材(C)として前記金属面材(A)や(B)と同一の材質や厚さのものを使用してもよい。
【0021】
本発明で使用する断熱材としては、一般に外壁と屋内側壁面や天井面や床面との間に設けられる断熱材を使用することができる。前記断熱材としては、例えば、グラスウール、ロックウール、セルロースファイバー等の繊維系断熱材や、押出し法ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム、フェノールフォーム等の断熱ボード等を適宜使用できる。なかでも、断熱ボードは施工性を確保しやすく、熱抵抗が高いため好ましい。
【0022】
断熱材の比熱は適宜調整すればよいが、5~100kJ/m・Kであることが好ましく、10~50kJ/m・Kであることがより好ましい。当該範囲とすることで、各種の屋内面に対して、好適な断熱性を実現しやすいためより好ましい。
【0023】
また、断熱材の熱抵抗は適宜調整すればよいが、0.3~10m・K/Wであることが好ましく、1~8m・K/Wであることがより好ましく、2~6m・K/Wであることが更に好ましい。熱抵抗が高くなるほど好適な断熱性が実現できるが、断熱材や断熱空間の厚みを厚くする必要があり、屋内空間の容積の減少が生じることから、薄い厚みで高い断熱性能を実現できる当該範囲とすることが好ましい。
【0024】
前記蓄熱積層体を構成する断熱材としては、厚さが3~300mmの範囲であるものを使用することが好ましく、_30~100mmの範囲のものを使用することが、建築部材として使用する場合に機器収容局舎の消費電力量を削減でき、かつ、停電発生時にも制御機器の温度上昇を抑制でき、かつ、太陽光をはじめとする外部環境による局舎内部及び制御機器等の温度上昇を効果的に抑制するうえでより好ましい。
【0025】
本発明に使用する蓄熱性面材としては、その15~35℃の熱容量が30~3000kJ/mであることが好ましく、50~1500kJ/mであることがより好ましく、70~800kJ/mであることがさらに好ましく、100~500kJ/mであることが特に好ましい。当該熱容量とすることで、内壁面材との組み合わせにて好適な断熱性を得やすくなる。
【0026】
当該蓄熱性面材としては、加工性や曲げ耐性等が得やすいことから、シート状、板状の蓄熱性面材を好ましく使用できる。なかでも、施工や積層がしやすいことから、蓄熱シートを使用することが好ましく、壁面施工後にも釘打ちや穴あけ等が容易であることから、樹脂マトリクス中に蓄熱材が分散した蓄熱シートを使用することがより好ましい。
【0027】
蓄熱シートの厚さは、使用態様に応じて適宜調整すればよいが、屋内空間の容積率の減少を抑制しつつ好適な断熱性を得やすいこと、加工時や搬送時に割れや欠けが生じにくく、優れた加工性や取扱い性を実現しやすいことから、0.3~15mmであることが好ましく、0.5~10mmであることがより好ましく、0.7~8mmであることがさらに好ましく、1~5mmであることが特に好ましい。
【0028】
当該蓄熱シートとしては、その引張強さを0.1MPa以上とすることで、柔軟性を有しながらも強靭な層とすることができ、加工時や搬送時等にも割れが生じにく、好適な加工性や取扱い性、搬送適正、曲げ適性等を得やすくなるため好ましい。引張強さは0.3MPa以上であることがより好ましく、0.6MPa以上であることが更に好ましく、1MPa以上であることが特に好ましい。引張強さの上限は特に制限されるものではないが、15MPa以下程度であることが好ましく、10MPa以下であることがより好ましく、5MPa以下であることが特に好ましい。
【0029】
また、蓄熱層単体の引張破断時の伸び率を10%以上とすることで、シートの脆化を抑制でき、加工時や搬送時等に曲げや歪みが生じた場合にも、割れや欠けが生じにくいため好ましい。引張破断時の伸び率は15%以上であることがより好ましく、20%以上であることが更に好ましく、25%以上であることが特に好ましい。伸び率の上限は1000%以下であることが好ましく、500%以下であることがより好ましく、300%以下であることが更に好ましい。伸び率を当該範囲とすることで、強靭でありながら好適な柔軟性を実現でき、良好な加工性や取扱い性、搬送適正、曲げ適性等を得やすくなる。引張強さ、引張破断時の伸び率は、JIS K6251に準じて測定される。
【0030】
蓄熱層の樹脂マトリクスに使用する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等の各種樹脂を使用できる。なかでも、塗膜形成が容易であることから熱可塑性樹脂を好ましく使用できる。塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合、スチレン・ブタジエン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、1,2-ポリブタジエン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂等を例示できる。なかでも、低温下での成形性や蓄熱材の分散性を得やすいことから塩化ビニル系樹脂を使用することが好ましい。
【0031】
塩化ビニル系樹脂を使用する場合には、塩化ビニル樹脂粒子を使用したビニルゾル塗工液を用いて、ゾルキャスト膜を形成することで、低温下での蓄熱シートの形成が可能となるため好ましい。ビニルゾル塗工液は、塩化ビニル樹脂粒子及び可塑剤を含有する樹脂組成物中に蓄熱材が分散、懸濁されたペースト状の塗工液である。
【0032】
蓄熱材としては、蓄熱性を有するものであれば特に制限されず、潜熱型の蓄熱性材料、顕熱型の蓄熱性材料、化学反応にともなう吸熱や発熱を利用した化学反応型の蓄熱性材料を使用できる。なかでも、潜熱型の蓄熱性材料は、小さい体積で多くのエネルギーを確保しやすく、吸放熱温度を調整しやすいため好ましい。
【0033】
潜熱型の蓄熱性材料(潜熱蓄熱材)としては、相変化による溶融時の染み出し等の問題や、混入時の分散性を考慮して、有機材料等からなる外殻中にパラフィンなどの潜熱蓄熱材料を内包した、カプセル化された蓄熱粒子が好ましい。本発明においてこのような外殻を有する蓄熱粒子を使用する場合には、当該蓄熱粒子の外殻に使用する材料のHSPに基づき、上記HSP距離を算出する。本発明に使用する蓄熱層は、有機材料からなる外殻中にパラフィン等の潜熱蓄熱材料を含有する蓄熱材を使用した場合にも可塑剤による外殻の脆化が生じにくく、蓄熱材の破損が生じにくい。
【0034】
このような蓄熱粒子としては、例えば、メラミン樹脂からなる外殻を用いたものとして、三菱製紙社製サーモメモリーFP-16,FP-25,FP-27,FP-31,FP-39、三木理研工業社製リケンレジンPMCD-15SP,25SP,32SP等が例示できる。また、シリカからなる外殻を用いたものとして、三木理研工業社製リケンレジンLA-15,LA-25,LA-32等、ポリメチルメタクリレート樹脂からなる外殻を用いたものとして、BASF社製MicronalDS5001X,5040X等が例示できる。
【0035】
蓄熱粒子の粒径は、特に限定されないが、10~1000μm程度であることが好ましく、50~500μmであることがより好ましい。蓄熱粒子の粒子径は、その一次粒子の粒子径が上記範囲であることも好ましいが、一次粒子径が1~50μm、好ましくは2~10μmの粒子が凝集して二次粒子を形成し、当該二次粒子の粒径が上記範囲となった蓄熱粒子であることも好ましい。このような蓄熱粒子は、圧力やシェアにより破損しやすいが、本発明の構成によれば、当該蓄熱粒子の破損を好適に抑制でき、蓄熱材料の染み出しや漏れが生じにくくなる。特に、外殻が有機材料から形成される場合には温度による破損のおそれも生じるが、本発明の蓄熱シートは、このような潜熱蓄熱材を使用した場合にも蓄熱材料の染み出しや漏れを好適に抑制しやすい。なお、蓄熱シート中に使用する全蓄熱粒子の粒子径が上記範囲でなくともよく、蓄熱シート中の蓄熱粒子の80質量%以上が上記範囲の蓄熱粒子であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
【0036】
潜熱蓄熱材は、特定の温度の融点において相変化する。すなわち、室温が融点を超えた場合は、固体から液体へ相変化し、室温が融点より下がった場合は、液体から固体へ相変化する。潜熱蓄熱材の融点は、その使用態様に応じて調整すればよく、-30℃~120℃程度の温度範囲にて固/液相転移を示すものを適宜使用できる。
【0037】
潜熱蓄熱材の種類としては、例えば、n-テトラデカン、n-ペンタデカン、n-ヘキサデカン、n-ヘプタデカン、n-オクタデカン、n-エイコサン、n-ノナデカン、n-イコサン、n-ヘンイコサン、n-ドコサン、n-トリコサン、n-テトラコサン、n-ペンタコサン、n-ヘキサコサン、n-ヘプタコサン、n-オクタコサン、n-ノナコサン、n-トリアコンタン、n-ヘントリアコンタン、n-ドトリアコンタン、n-トリトリアコンタン、オクタトリアコンタン、パラフィンワックス等のパラフィン系化合物;カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、セバシン酸、クロトン酸、エルカ酸、ネルボン酸等の脂肪酸又はこれらの脂肪酸のメチルエステル化合物又はエチルエステル化合物;ステアリルアルコール、テトラデカノール、ドデカノール、キシリトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール等のアルコール類;塩化カルシウム水和物、酢酸ナトリウム水和物、酢酸カリウム水和物、水酸化ナトリウム水和物、水酸化カリウム水和物、水酸化ストロンチウム水和物、水酸化バリウム水和物、塩化ナトリウム水和物、塩化マグネシウム水和物、塩化亜鉛水和物、硝酸リチウム水和物、硝酸マグネシウム水和物、硝酸カルシウム水和物、硝酸アルミニウム水和物、硝酸カドミウム、硝酸鉄水和物、硝酸亜鉛水和物、硝酸マンガン水和物、硫酸リチウム水和物、硫酸ナトリウム水和物、チオ硫酸ナトリウム水和物、硫酸マグネシウム水和物、硫酸カルシウム水和物、硫酸カリウムアルミニウム水和物、硫酸アルミニウムアンモニウム水和物、チオ硫酸ナトリウム水和物、リン酸カリウム水和物、リン酸ナトリウム水和物、リン酸水素カリウム水和物、リン酸水素ナトリウム水和物、ホウ酸ナトリウム水和物、臭化カルシウム水和物、フッ化カリウム水和物、炭酸ナトリウム水和物、塩化カルシウム六水塩、硫酸ナトリウム十水塩等の無機水和物等が挙げられる。
【0038】
蓄熱シート中の蓄熱材の含有量は10~80質量%であることが好ましく、20~70質量%であることがより好ましく、30~60質量%であることがさらに好ましい。当該範囲とすることで、引張強さや引張破断時の伸び率を本発明の範囲に調整しやすくなると共に、良好な蓄熱効果や成形性が得られやすくなる。
【0039】
蓄熱シートは、樹脂と蓄熱材とを含有する樹脂組成物からなる塗工液を塗布、あるいは任意の形状の型枠へ投入した後、加熱や乾燥させることで得ることができる。好ましい製造例としては、樹脂と蓄熱材とを含有する樹脂組成物からなる塗工液を調整し、支持体上に当該塗工液を塗布して塗工膜を形成した後、塗工膜温度が150℃以下となる温度で加熱して蓄熱シートを形成する方法である。
【0040】
使用する支持体は、蓄熱シートを剥離して流通、使用等する場合には、得られる蓄熱シートを剥離可能で、加熱工程の温度での耐熱性を有するものを適宜使用できる。また、不燃紙などの不燃層や断熱層、導電層など、他の機能層を支持体として、当該支持体上に蓄熱シートを積層してもよい。
【0041】
蓄熱シートを剥離する場合の支持体としては、例えば、各種の工程フィルムとして使用される樹脂フィルムを好ましく使用できる。当該樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリブチレンテレフタレート樹脂フィルム等のポリエステル樹脂フィルムなどが挙げられる。樹脂フィルムの厚みは特に制限されないが、25~100μm程度のものが取扱いや入手が容易である。
【0042】
蓄熱シートを形成する塗工液は、使用する樹脂成分及び蓄熱材に応じて適宜混合して調整すればよい。例えば、熱可塑性樹脂として塩化ビニル樹脂を使用する場合には、塩化ビニル樹脂粒子を使用したビニルゾル塗工液を用いて、ゾルキャストにより蓄熱層を形成する方法が好ましい。当該製造方法とすることで、ミキサー等による混練や押出成形等を経ることなく成形が可能となり、蓄熱材の破壊が生じにくく、得られる蓄熱シートからの蓄熱材の染み出し等が生じにくい。また、当該方法によれば、低温下での成形が容易となることから、熱による蓄熱材の破壊を抑制しやすいため当該方法が特に好ましく使用できる。
【0043】
本発明の蓄熱積層体は、前記金属面材(A)と蓄熱性面材と、必要に応じて他の材料とを、接着剤を用いて貼り合わせることによって製造することができる。
【0044】
本発明の蓄熱積層体は、前記金属面材(A)と蓄熱性面材と断熱材と金属面材(B)と必要に応じて金属面材(C)等とを、接着剤を用いて貼り合わせることによって製造することができる。したがって、本発明の蓄熱積層体は各面材の間に接着剤層が存在してもよい。
【0045】
前記貼り合わせ方法としては、例えばプレス接着方式、ドライラミネート方式、ウエットラミネート方式、熱ラミネート方式が挙げられる。
【0046】
本発明の蓄熱積層体は、予め建設されている局舎等の建築物の屋内空間を構成する屋内面構造に設置し使用することができる。ここで、屋内空間を構成する屋内面構造とは、屋内の壁面構造や天井構造、床構造等の屋内空間を構成する構造であり、屋内面材とは屋内の壁面構造を構成する内壁面材や天井構造を構成する天井面材、床面を構成する床面材等の屋内面に設けられる面材である。
【0047】
前記屋内面構造に対しては、本発明の金属面材(A)の少なくとも一方の面側に蓄熱性面材を備えた蓄熱積層体を貼付する施工を施すことができる。これにより、屋内空間の消費電力量を削減でき、かつ、停電発生時にも、前記屋内空間に存在する制御機器の温度上昇を抑制でき、かつ、太陽光をはじめとする外部環境による屋内空間及び制御機器等の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0048】
内壁面材の厚みは、特に制限されるものではないが、好適な施工性や断熱性能を得やすいことから、3~20mmであることが好ましく、5~15mmであることがより好ましい。
【0049】
また、本発明の蓄熱積層体は、前記した局舎等の建築物の建設に使用する壁材や天井材や床材に使用することができる。この場合、本発明の蓄熱積層体としては、前記構成(1)~(3)に示す構造からなる蓄熱積層体を使用することが、建築物の強度等を担保するうえで好ましい。
【0050】
上記方法で得られた本発明の蓄熱積層体は、上記したような局舎の建設に使用することができる。前記局舎としては、シェルターともいわれるものであり、例えば通信機器用局舎、エネルギー設備用局舎、消防無線や防災無線用局舎、データセンター向け局舎、電源用局舎、警報用局舎、観測用局舎、放送用局舎、鉄道や船舶や航空機等の管制関連局舎、用水関連局舎、高圧受電及び変電設備用局舎等が挙げられる。
【0051】
また、本発明の蓄熱積層体は、上記局舎以外に、各種コンテナの製造に使用することもできる。