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特開2022-189010加工システム及び加工システムの管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189010
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】加工システム及び加工システムの管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 13/00 20060101AFI20221215BHJP
   G05B 19/05 20060101ALI20221215BHJP
   G05B 19/414 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G06F13/00 351M
G05B19/05 L
G05B19/414 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097333
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 崇史
(72)【発明者】
【氏名】花村 奈津子
(72)【発明者】
【氏名】関家 一馬
【テーマコード(参考)】
3C269
5B089
5H220
【Fターム(参考)】
3C269AB01
3C269CC01
3C269CC02
3C269CC15
3C269EF02
3C269JJ09
3C269JJ20
3C269KK08
3C269KK12
3C269MN09
3C269MN26
3C269PP02
3C269PP10
3C269QD02
5B089GA11
5B089GA21
5B089JA35
5B089KA12
5B089KC24
5B089KF06
5B089ME04
5H220AA04
5H220BB09
5H220BB15
5H220CC03
5H220CC09
5H220CX05
5H220JJ02
5H220JJ12
5H220JJ18
5H220KK03
5H220MM08
(57)【要約】
【課題】通信システムによる通信状態が不調の場合に、加工装置の稼働の復帰にかかる時間を低減できる加工システム及び加工システムの管理方法を提供すること。
【解決手段】加工システム1は、加工装置10と加工装置10を操作する端末装置20とを有し、端末装置20から加工装置10を操作する2つ以上の異なる通信システム30(通信システム30-1及び通信システム30-2)によって、端末装置20と加工装置10とが接続しているものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工装置と該加工装置を操作する端末装置とを有し、
該端末装置から該加工装置を操作する2つ以上の異なる通信システムによって、該端末装置と該加工装置が接続している加工システム。
【請求項2】
該2つ以上の異なる該通信システムは、異なる通信プロトコル、又は異なる通信用ハードウェアを備える請求項1記載の加工システム。
【請求項3】
該通信システムの通信状態が不調であると判定し、判定結果を該端末装置に報知する通信状態判定部を備える請求項1又は2に記載の加工システム。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の加工システムの管理方法であって、
該加工装置を操作する1つの該通信システムの通信状態を判定する通信状態判定ステップと、
該通信状態判定ステップで通信状態が不調と判定された場合、他の該通信システムによって該加工装置を該端末装置で操作する通信システム変更ステップと、を備える加工システムの管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置を端末装置で遠隔操作する加工システム及び加工システムの管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程など各種製造工程では、多様な加工装置を使って製造を行っている。加工装置はそれぞれの操作パネルで操作するのが一般的であるが、1つの端末装置から複数の加工装置を操作して、集中管理する製造現場もある。その場合、各加工装置は端末装置と通信システムで接続され遠隔操作される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6695102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通信システムによる通信状態が不調の場合、例えば通信ケーブルが断線したり、接続ジャックが抜けたりしてしまうと、遠隔操作が出来ないだけではなく、何が起きているのかそもそもわからないという状態になる。加工装置に故障が発生しているのか、通信システムに異常があるのか、それぞれ別に原因を究明するため、加工装置の稼働の復帰に時間がかかってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、通信システムによる通信状態が不調の場合に、加工装置の稼働の復帰にかかる時間を低減できる加工システム及び加工システムの管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工システムは、加工装置と該加工装置を操作する端末装置とを有し、該端末装置から該加工装置を操作する2つ以上の異なる通信システムによって、該端末装置と該加工装置が接続しているものである。
【0007】
該2つ以上の異なる該通信システムは、異なる通信プロトコル、又は異なる通信用ハードウェアを備えてもよい。
【0008】
該通信システムの通信状態が不調であると判定し、判定結果を該端末装置に報知する通信状態判定部を備えてもよい。
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工システムの管理方法は、上記のいずれかの加工システムの管理方法であって、該加工装置を操作する1つの該通信システムの通信状態を判定する通信状態判定ステップと、該通信状態判定ステップで通信状態が不調と判定された場合、他の該通信システムによって該加工装置を該端末装置で操作する通信システム変更ステップと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、通信システムによる通信状態が不調の場合に、加工装置の稼働の復帰にかかる時間を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る加工システムの構成例を示す概略図である。
図2図2は、図1の加工装置の構成例を示す斜視図である。
図3図3は、図1の加工装置の別の構成例を示す斜視図である。
図4図4は、図1の通信システムの構成例を示す機能ブロック図である。
図5図5は、図4の通信プロトコル及び通信用ハードウェアを説明する図である。
図6図6は、実施形態に係る加工システムの管理方法の処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る加工システム1及び加工システムの管理方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態に係る加工システム1の構成例を示す概略図である。加工システム1は、図1に示すように、加工装置10と、端末装置20と、通信システム30と、を備える。加工システム1では、加工装置10は、本実施形態では複数(図1に示す例では4つ)備えているが、本発明ではこれに限定されず、1つでもよい。また、加工システム1では、加工装置10は、全て異なる種類でもよいし、全て同じ種類でもよいし、異なる種類と同じ種類とが混在していてもよい。また、加工システム1では、端末装置20は、本実施形態では1つ備えているが、本発明はこれに限定されず、複数でもよい。
【0014】
加工システム1では、通信システム30は、複数(2つ以上)備えている。通信システム30は、図1に示す例では2つ備えているが、3つ以上でもよい。各通信システム30は、全ての加工装置10と端末装置20との間を情報通信可能に電気的に接続している。本明細書では、2つの通信システム30を区別する場合には、それぞれ、通信システム30-1、通信システム30-2と称する。
【0015】
加工システム1を構成する加工装置10の具体例を図面に基づいて説明する。図2は、図1の加工装置10の構成例を示す斜視図である。図3は、図1の加工装置10の別の構成例を示す斜視図である。加工装置10(加工装置10-1,10-2)は、図2及び図3に示すように、チャックテーブル110と、加工ユニット120と、移動ユニット130と、カセット載置台150と、洗浄ユニット160と、制御ユニット170と、を備える。加工装置10-1,10-2は、それぞれ被加工物200に異なる加工を施す加工ユニット120-1,120-2を備える点で異なり、その他は概ね同様である。本明細書では、加工装置10-1,10-2を区別しない場合や、加工装置10-1,10-2とは種類が異なる場合には、単に加工装置10と称する。
【0016】
本実施形態において、加工装置10が加工する加工対象である被加工物200は、例えば、シリコン、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムヒ素などを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハなどである。被加工物200は、図2及び図3に示すように、平坦な表面の格子状に形成される複数の分割予定ラインによって区画された領域にデバイスが形成されている。被加工物200は、本実施形態では、表面の裏側の裏面に粘着テープ201が貼着され、粘着テープ201の外周部に環状のフレーム202が装着されているが、本発明ではこれに限定されない。また、本発明では、被加工物200は、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックス板、又はガラス板等でも良い。
【0017】
チャックテーブル110は、凹部が形成された円板状の枠体と、凹部内に嵌め込まれた円板状の吸着部と、を有する。チャックテーブル110の吸着部は、ポーラス状のポーラスセラミック等から形成され、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。チャックテーブル110の吸着部の上面は、被加工物200が載置されて、載置された被加工物200を吸引保持する保持面である。保持面とチャックテーブル110の枠体の上面とは、同一平面上に配置されており、水平面であるXY平面に平行に形成される。チャックテーブル110は、不図示の回転駆動源により鉛直方向であり保持面に対して垂直なZ軸方向と平行な軸心周りに回転自在に設けられている。
【0018】
図2に示す加工装置10-1の例では、加工ユニット120-1は、切削加工ユニットであり、切削ブレードを有する。切削ブレードは、水平方向の別の一方向でありX軸方向に直交するY軸方向と平行な軸心周りの回転動作が加えられて、チャックテーブル110に保持された被加工物200を切削する。加工装置10-1は、図2に示すように、加工ユニット120-2を2つ備えた、即ち、2スピンドルのダイサ、いわゆるフェイシングデュアルタイプの切削装置である。
【0019】
図3に示す加工装置10-2の例では、加工ユニット120-2は、レーザー加工ユニットであり、レーザー照射器を有する。レーザー照射器は、チャックテーブル110に保持された被加工物200にレーザービームを照射して、被加工物200をレーザー加工する。レーザー照射器は、被加工物200に対して吸収性を有する波長のレーザービームを照射することにより被加工物200をアブレーション加工してレーザー加工溝を形成したり、被加工物200に対して透過性を有する波長のレーザービームを照射することにより被加工物200の内部に破断起点である改質層を形成したりする。図3に示す加工装置10-2は、加工ユニット120-2を備えたレーザー加工装置である。
【0020】
移動ユニット130は、X軸移動ユニット131と、Y軸移動ユニット132と、を備える。X軸移動ユニット131は、チャックテーブル110を加工ユニット120-1,120-2に対して相対的にX軸方向に沿って移動させる。Y軸移動ユニット132は、加工装置10-1では、加工ユニット120-1をチャックテーブル110に対して相対的にY軸方向に沿って移動させ、加工装置10-2では、チャックテーブル110を加工ユニット120-2に対して相対的にY軸方向に沿って移動させる。移動ユニット130は、加工装置10-1では、さらにZ軸移動ユニット133を備える。Z軸移動ユニット133は、加工ユニット120-1をチャックテーブル110に対して相対的にZ軸方向に沿って移動させる。
【0021】
加工装置10-1は、切削ブレードを回転させながら、移動ユニット130により切削ブレードをチャックテーブル110に保持された被加工物200に対して分割予定ラインに沿って相対的に移動させることにより、被加工物200を切削加工して分割予定ラインに沿った切削溝を形成する。
【0022】
加工装置10-2は、レーザー照射器によりレーザービームを照射しながら、移動ユニット130によりレーザー照射器をチャックテーブル110に保持された被加工物200に対して分割予定ラインに沿って相対的に移動させることにより、被加工物200を分割予定ラインに沿ってレーザー加工を施す。
【0023】
加工装置10-1は、さらに撮像ユニット140を備える。撮像ユニット140は、実施形態1では、一方の加工ユニット120-1に取り付けられて、一方の加工ユニット120-1と一体に移動する。撮像ユニット140は、チャックテーブル110に保持された加工前及び加工後の被加工物200を撮像する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニット140は、チャックテーブル110に保持された被加工物200を撮像して、被加工物200と切削ブレードとの位置合わせを行なうアライメントを遂行するための画像を得、得た画像を制御ユニット170に出力する。撮像ユニット140は、チャックテーブル110に保持された被加工物200を撮像して、被加工物200に形成された切削溝等の加工痕の品質を確認するカーフチェックを遂行するための画像を得、得た画像を制御ユニット170に出力する。加工装置10-2は、不図示であるが、撮像ユニット140と同様の撮像ユニットを備えている。
【0024】
カセット載置台150は、複数の被加工物200を収容するための収容器であるカセット155を載置する載置台であり、載置されたカセット155をZ軸方向に昇降させる。洗浄ユニット160は、加工ユニット120による加工後の被加工物200を洗浄し、被加工物200に付着した加工屑等の異物を除去する。
【0025】
加工装置10は、さらに不図示の搬送ユニットを備える。不図示の搬送ユニットは、加工前の被加工物200をカセット155内からチャックテーブル110上に搬送し、加工後の被加工物200をチャックテーブル110上から洗浄ユニット160に搬送し、洗浄後の被加工物200を洗浄ユニット160からカセット155内に搬送する。
【0026】
制御ユニット170は、加工装置10の各構成要素の動作を制御して、加工処理に関する各種動作を加工装置10に実施させる。制御ユニット170は、本実施形態では、コンピュータシステムを含む。制御ユニット170が含むコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニット170の演算処理装置は、制御ユニット170の記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、加工装置10を制御するための制御信号を、制御ユニット170の入出力インターフェース装置を介して加工装置10の各構成要素に出力する。
【0027】
なお、加工システム1を構成する加工装置10は、切削加工装置である加工装置10-1やレーザー加工装置である加工装置10-2の例に限定されず、被加工物200を加工する加工ユニットを備える加工装置であればよく、例えば、被加工物200を研磨加工する研磨加工ユニットを備える加工装置や、被加工物200に貼着された粘着テープ201を拡張するテープ拡張ユニットを備える加工装置、被加工物200に貼着された粘着テープ201に紫外線を照射する紫外線照射ユニットを備える加工装置等でもよい。また、加工システム1を構成する加工装置10は、加工装置10を構成する各構成要素に適宜変更が加えられたり配置が変更されたりしてもよい。
【0028】
端末装置20は、入力部と、表示部と、制御部とを備える。端末装置20の入力部は、各加工装置10の加工条件や各構成要素の動作条件の登録及び変更の入力、各加工装置10の動作指令の入力等を、オペレータから受け付け、オペレータから受け付けた入力等を端末装置20の制御部に送信する。端末装置20の表示部は、各加工装置10の加工条件や各構成要素の動作条件の入力画面や確認画面、各加工装置10の加工処理の結果の画面等、加工装置10に関する各種情報の画面を表示する。端末装置20の制御部は、端末装置20の各部の動作を制御して、本実施形態に係る加工システム1の管理方法に関する各種動作を端末装置20に実施させる。
【0029】
加工システム1は、オペレータによって、端末装置20から通信システム30を介して、各加工装置10が遠隔で操作される。加工システム1の端末装置20の制御部は、端末装置20の入力部がオペレータからの受け付け入力を受信し、この受信した入力に基づいて各加工装置10の各構成要素の動作に関する指令情報を生成し、この生成した指令情報を通信システム30を介して各加工装置10に送信する。加工システム1の各加工装置10の各制御ユニット170は、通信システム30を介して端末装置20から指令情報を受信し、受信した指令情報に基づいて各加工装置10の各構成要素の動作に関する制御信号を生成し、この生成した制御信号を各加工装置10の各制御ユニット170から各加工装置10の各構成要素に送信する。この際、生成した制御信号を各加工装置10の各構成要素に送信した事を、通信システム30を介して端末装置20に送信しても良い。各加工装置10の各制御ユニット170によって生成及び送信される制御信号は、所定の通信規格で設定されたコマンドにより、各加工装置10の各構成要素に送信され、必要に応じて、通信システム30を介して端末装置20に送信される。加工システム1の端末装置20の制御部は、各加工装置10の各制御ユニット170から各加工装置10の各構成要素に送信した制御信号を受信すると、この受信した制御信号に基づく内容を端末装置20の表示部に表示する画面に反映させることで、オペレータに端末装置20が受信した制御信号に基づく内容を報知したり、端末装置20の記憶装置に記録しておく。
【0030】
端末装置20の制御部は、本実施形態では、コンピュータシステムを含む。端末装置20の制御部が含むコンピュータシステムは、CPUのようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM又はRAMのようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。端末装置20の制御部の演算処理装置は、端末装置20の制御部の記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、端末装置20を制御するための制御信号を、端末装置20の制御部の入出力インターフェース装置を介して端末装置20の各部に出力する。
【0031】
ここで、各加工装置10の加工条件や各構成要素の動作条件は、各加工装置10が被加工物200を加工する際の被加工物200に関する条件と、各加工装置10の各構成要素に関する条件と、を含む。被加工物200に関する条件は、例えば、被加工物200の材質、形状、大きさ(外径や厚み)、被加工物200の分割予定ラインの各方向の間隔や本数、被加工物200のデバイスの形成領域の形状、大きさ、形成されたデバイスの個数、粘着テープ201の材質や厚み、フレーム202の材質、形状、大きさ(内径、外径や厚み)等である。
【0032】
加工装置10のチャックテーブル110に関する条件は、例えば、チャックテーブル110の材質、形状、大きさ(外径や厚み)等である。加工装置10-1の加工ユニット120-1に関する条件は、例えば、加工ユニット120-1の切削ブレードが使用される軸の材質、形状(テーパの有無等)、大きさ(外径や長さ)、切削ブレードの材質、形状(ハブの有無やスリットの有無等)、大きさ(内径、外径や厚み)、スピンドルの回転数、等である。加工装置10-2の加工ユニット120-2に関する条件は、例えば、レーザー照射器に使用されるレーザー発振材料、レーザー照射器によるレーザービームの波長域(被加工物200の吸収波長域、透過波長域)、レーザービームの照射深さ(焦点の深さ、集光位置)、レーザービームの波長、位相、偏波面、振幅、パワー、伝搬方向、等の光学的特性、レーザービームのパルスの有無やパルスの間隔、レーザービームを集光する光学系の種類や位置や材質、等である。加工システム1を構成する加工装置10の加工ユニット120に関する条件は、被加工物200を加工する加工形態により、適宜変更される。
【0033】
加工装置10-1の移動ユニット130に関する条件は、例えば、X軸方向への加工送り速度、切削ブレードのYインデックス(Y軸方向の基準位置)、Y軸方向への割り出し送り条件、切削加工の際の切削ブレードの高さ(被加工物200への切り込み深さ)、Z軸方向への切り込み送り条件、等である。加工装置10-2の移動ユニット130に関する条件は、例えば、X軸方向への加工送り速度、レーザー照射器のYインデックス(Y軸方向の基準位置)、Y軸方向への割り出し送り条件、等である。加工装置10-1の撮像ユニット140に関する条件は、例えば、撮像の倍率、撮像する際の照明の種類や性質、撮像する際の照明の照度、アライメントの際の撮像条件、カーフチェックの際の撮像条件、等である。加工装置10-2の不図示の撮像ユニットに関する条件は、加工装置10-1の撮像ユニット140に関する条件と同様である。
【0034】
加工装置10のカセット載置台150及びカセット155に関する条件は、例えば、カセット載置台150の昇降速度、カセット155のスロット数、基準スロット高さ、スロット間隔、レール間隔、等である。加工装置10の洗浄ユニット160に関する条件は、例えば、洗浄時間、洗浄水量、スピンナテーブル回転数、洗浄モード(高圧洗浄モードか二流体洗浄モード)等である。加工装置10の不図示の搬送ユニットに関する条件は、例えば、被加工物200またはフレーム202の把持強さ、吸引圧、搬送経路、搬送経路中の搬送速度、等である。
【0035】
加工装置10の制御ユニット170に関する条件は、例えば、アライメントの処理条件、カーフチェックの処理条件、等である。アライメントの処理条件は、チャックテーブル110と加工ユニット120(切削ブレードやレーザー照射器)との位置関係の調整処理の条件である。カーフチェックの処理条件は、切削溝やレーザー加工溝等の加工痕に対してチェックする各項目(カーフチェックの各項目)及び当該各項目の許容値と、許容値を超えた時の処理の条件である。カーフチェックの各項目は、例えば、オフセンター、カーフ幅、カーフセンターからのチッピング幅、カーフ端からのMaxチッピング幅等である。オフセンターは、加工痕の幅方向の中央の位置を表す中央線であるカーフセンターの、分割予定ラインの中央線に対する幅方向のずれの値である。カーフ幅は、それぞれ、カーフチェックで確認する領域内における加工痕の両端の間の距離(間隔)である。カーフセンターからのチッピング幅は、カーフチェックで確認する領域内において幅方向で最大のチッピングの端部と加工痕の幅方向中央との間の距離である。カーフ端からのMaxチッピング幅は、カーフチェックで確認する領域内において幅方向で最大のチッピングの端部と加工痕の端部との間の距離である。許容値を超えた時の処理は、加工装置10に備え付けられた警報器による警報の報知方法や、通信システム30を介した端末装置20への警報の報知方法、等である。
【0036】
端末装置20の制御部は、図1に示すように、通信状態判定部21を備える。通信状態判定部21は、各通信システム30を介して各加工装置10に送信した指令情報と、各通信システム30を介して各加工装置10の各制御ユニット170から受信した制御信号とに基づいて、各通信システム30の通信状態が不調であるか否かを判定し、その判定結果を端末装置20の表示部等に報知する。
【0037】
加工システム1を構成する通信システム30の詳細を図面に基づいて説明する。図4は、図1の通信システム30の構成例を示す機能ブロック図である。各通信システム30(通信システム30-1,30-2)は、図4に示すように、それぞれ、通信プロトコル31(通信プロトコル31-1,31-2)と、通信用ハードウェア32(通信用ハードウェア32-1,32-2)とを備える。
【0038】
2つ以上の異なる通信システム30-1,30-2は、互いに異なる通信プロトコル31-1,31-2、又は、互いに異なる通信用ハードウェア32-1,32-2を備える。すなわち、通信システム30-1の通信プロトコル31-1と通信システム30-2の通信プロトコル31-2と、通信システム30-1の通信用ハードウェア32-1と通信システム30-2の通信用ハードウェア32-2と、少なくともいずれか一方は異なっている。通信システム30-1の通信プロトコル31-1と通信システム30-2の通信プロトコル31-2と、通信システム30-1の通信用ハードウェア32-1と通信システム30-2の通信用ハードウェア32-2と、のうち両方が異なっていてもよく、いずれか一方が同じであってもよい。
【0039】
通信プロトコル31及び通信用ハードウェア32を図面に基づいて説明する。図5は、図4の通信プロトコル31及び通信用ハードウェア32を説明する図である。図5は、コンピュータネットワーク標準であるOSI(Open Systems Interconnection)参照モデルの一例を示している。通信プロトコル31は、本発明では、図5に示すOSI参照モデルのアプリケーション層(第5層、第6層及び第7層)の通信規格(プロトコル)を指し、具体的には、webで使用されるHTTP(HyperText Transfer Protocol)やファイル転送用で使用されるFTP(File Transfer Protocol)、SECS(SEMI Equipment Communications Standard)等のSEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)規格、等である。通信用ハードウェア32は、本発明では、図5に示すOSI参照モデルのネットワークインターフェイス層(第1層及び第2層)の通信規格(プロトコル)を指し、具体的には、有線のLAN(Local Area Network)ケーブル、無線の赤外線通信やBluetooth(商標登録)、WiFi(商標登録)(Wireless Fidelity)、等である。通信プロトコル31と通信用ハードウェア32とは、互いに組み合わせで使用できる。
【0040】
通信システム30は、通信プロトコル31-1と通信プロトコル31-2とが異なり、通信用ハードウェア32-1と通信用ハードウェア32-1とが同じ場合、例えば、通信プロトコル31-1がSEMI規格のSECSで、通信プロトコル31-2がHTTPで、通信用ハードウェア32-1と通信用ハードウェア32-1とがいずれもLANケーブルである場合、各加工装置10と端末装置20との間の情報通信のアプリケーション層が二重化しているので、一方のアプリケーションを担うプログラムが落ちてしまった際に他方のアプリケーションプログラムに切り替えることができる。
【0041】
本実施形態では、上記したように、各加工装置10の加工条件や各構成要素の動作条件の種類が多いため、各加工装置10の各制御ユニット170による制御信号のコマンドの種類が多い。このため、一部の通信規格(例えばSECS)で設定されたコマンドは、各加工装置10の各制御ユニット170による制御信号のコマンドに対し種類数が少なく、足りなくなってしまう場合がある。そこで、通信システム30は、通信プロトコル31-1と通信プロトコル31-2との少なくとも一方に、コマンドが各加工装置10の各制御ユニット170による制御信号のコマンドに対し種類数が多い通信規格を使用することで、他方のアプリケーション層の通信規格で不足したデータを当該一方のアプリケーション層の通信規格で送受信することができる。
【0042】
通信システム30は、通信プロトコル31-1と通信プロトコル31-2とが同じで、通信用ハードウェア32-1と通信用ハードウェア32-1とが異なる場合、例えば、通信プロトコル31-1と通信プロトコル31-2とがいずれもHTTPで、通信用ハードウェア32-1がLANケーブルで、通信用ハードウェア32-1がWifiである場合、各加工装置10と端末装置20との間の情報通信のネットワークインターフェイス層が二重化しているので、一方のネットワークインターフェイスが断線してしまった際に他方のネットワークインターフェイスに切り替えて通信することができる。
【0043】
次に、本明細書は、実施形態に係る加工システムの管理方法の処理の一例を図面に基づいて説明する。図6は、実施形態に係る加工システムの管理方法の処理の手順の一例を示すフローチャートである。加工システムの管理方法は、図6に示すように、通信状態判定ステップ1001と、通信システム変更ステップ1003と、を備える。加工システムの管理方法の一連の処理は、加工システム1を構成する加工装置10のうち少なくとも1台以上の加工装置と、端末装置20と、少なくとも2つ以上の異なる通信システム30とが電源がONに切り替えられて稼働状態になっている際に、2つ以上の異なる通信システム30を介して加工装置10と端末装置20との間で情報通信をするごとに実施される。
【0044】
通信状態判定ステップ1001は、各加工装置10を操作する1つの通信システム30の通信状態を判定するステップである。通信状態判定ステップ1001では、通信状態判定部21は、通信システム30毎に、当該通信システム30を介して各加工装置10に送信した指令情報に対応した制御信号を各加工装置10の各制御ユニット170から受信した場合、当該通信システム30の通信状態が良好であると判定し、当該通信システム30を介して各加工装置10に送信した指令情報に対応した制御信号を各加工装置10の各制御ユニット170から受信しなかった場合、当該通信システム30の通信状態が不調であると判定する。
【0045】
なお、通信状態判定ステップ1001では、通信状態判定部21は、各加工装置10に送信した指令情報に対応した制御信号が、通信システム30の通信プロトコル31の通信規格で設定されたコマンドの種類数が少ないために、当該通信システム30を介して受信できない場合、当該通信システム30の通信状態の判定を見送る。または、コマンドの種類が少ない通信プロトコロル31の通信システム30とは異なる通信システム30を用いて通信状態の判定を実施してもいい。例えば、加工装置10及び通信システム30の通信や稼働のログを端末装置20に受信し、そのログから端末装置20の制御部、またはオペレータが通信状態が不調かどうかを判定してもいい。
【0046】
通信状態判定部21は、通信状態判定ステップ1001で全ての通信システム30の通信状態が良好であると判定した場合(図6のステップ1002でNo)、加工システムの管理方法の一連の処理を終了する。通信状態判定部21は、通信状態判定ステップ1001で1つ以上の通信システム30の通信状態が不調であると判定した場合(図6のステップ1002でYes)、当該通信システム30の通信状態が不調である旨の判定結果を端末装置20の表示部等に画像内に表示することで報知し、処理を通信システム変更ステップ1003に進める。
【0047】
通信状態判定部21は、通信状態判定ステップ1001で全ての通信システム30の通信状態が不調であると判定した場合(図6のステップ1002でYes)、当該通信システム30の通信状態が不調である可能性がある旨と、当該判定をした際に通信を試みた加工装置10が不調である可能性がある旨との判定結果を併せて端末装置20の表示部等に画像内に表示することで報知し、加工システムの管理方法の一連の処理を終了する。
【0048】
通信システム変更ステップ1003は、通信状態判定ステップ1001で1つ以上の通信システム30の通信状態が不調と判定された場合(図6のステップ1002でYes)、不調と判定されなかった他の通信システム30によって各加工装置10を端末装置20で操作するステップである。通信システム変更ステップ1003では、端末装置20の制御部は、通信状態判定ステップ1001で不調と判定されなかった他の通信システム30を介して、指令情報を各加工装置10に送信し、各加工装置10の各制御ユニット170から各加工装置10の各構成要素に送信した制御信号を受信する。
【0049】
以上のような構成を有する実施形態に係る加工システム1及び加工システムの管理方法は、端末装置20から加工装置10を操作する2つ以上の異なる通信システム30によって、端末装置20と加工装置10とが接続しているので、1つの通信システム30が不調に陥っても、他の通信システム30によって加工装置10を操作できるため、加工装置10の稼働の復帰にかかる時間を大幅に低減し、稼働を継続できるという作用効果を奏する。
【0050】
また、実施形態に係る加工システム1及び加工システムの管理方法は、2つ以上の異なる通信システム30が、異なる通信プロトコル31又は異なる通信用ハードウェア32を備える。このため、実施形態に係る加工システム1及び加工システムの管理方法は、異なる通信プロトコル31を備える場合には、加工装置10と端末装置20との間の情報通信のアプリケーション層が二重化しているので、一方のアプリケーションを担うプログラムが落ちてしまった際に他方のアプリケーションプログラムに切り替えることができる。また、実施形態に係る加工システム1及び加工システムの管理方法は、異なる通信用ハードウェア32を備える場合には、各加工装置10と端末装置20との間の情報通信のネットワークインターフェイス層が二重化しているので、一方のネットワークインターフェイスが断線してしまった際に他方のネットワークインターフェイスに切り替えて通信することができる。
【0051】
また、実施形態に係る加工システム1及び加工システムの管理方法は、各通信システム30の通信状態が不調であるか否かを判定し、その判定結果を端末装置20に報知する通信状態判定部21を備える。このため、実施形態に係る加工システム1及び加工システムの管理方法は、どの通信システム30が不調であるか、あるいは加工装置10が不調である可能性があるかをオペレータに報知することにより、従来よりも、加工装置10や通信システム30の復帰に係る時間を低減できる。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、通信状態判定ステップ1001で1つ以上の通信システム30の通信状態が不調と判定された場合、通信システム変更ステップ1003を実施するか否かを、オペレータが判断しても良い。
【符号の説明】
【0053】
1 加工システム
10,10-1,10-2 加工装置
20 端末装置
21 通信状態判定部
30,30-1,30-2 通信システム
31,31-1,31-2 通信プロトコル
32,32-1,32-2 通信用ハードウェア
図1
図2
図3
図4
図5
図6