(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189250
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】容器入り液状又はペースト状食品組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 23/10 20160101AFI20221215BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20221215BHJP
【FI】
A23L23/10
A23L29/269
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097737
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】濱洲 紘介
【テーマコード(参考)】
4B036
4B041
【Fターム(参考)】
4B036LC05
4B036LE05
4B036LF01
4B036LF03
4B036LF04
4B036LF05
4B036LH09
4B036LH11
4B036LH12
4B036LK02
4B041LC10
4B041LD01
4B041LH16
4B041LK09
4B041LK22
(57)【要約】
【課題】水による希釈液中での澱粉の沈殿が抑制された、α化していない澱粉、糖類及び水を含む容器入り液状又はペースト状食品組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本明細書に開示する発明の一以上の実施形態は、α化していない澱粉、糖類及び水を含有し、水分含量が40質量%未満である液状又はペースト状食品組成物、並びに、前記組成物を収容した容器を備える、容器入り液状又はペースト状食品組成物であって、ジェランガムを含有すること、並びに、前記組成物1質量部あたり水3質量部を混合して希釈液を調製した場合に、前記希釈液の30℃でのせん断速度0.1s-1における粘度が900mPa・s以上であることを特徴とする、容器入り液状又はペースト状食品組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α化していない澱粉、糖類及び水を含有し、水分含量が40質量%未満である液状又はペースト状食品組成物、並びに、前記組成物を収容した容器を備える、容器入り液状又はペースト状食品組成物であって、
ジェランガムを含有すること、並びに、
前記組成物1質量部あたり水3質量部を混合して希釈液を調製した場合に、前記希釈液の30℃でのせん断速度0.1s-1における粘度が900mPa・s以上であること
を特徴とする、容器入り液状又はペースト状食品組成物。
【請求項2】
前記α化していない澱粉を1~30質量%含有する、請求項1に記載の容器入り液状又はペースト状食品組成物。
【請求項3】
前記希釈液の30℃でのせん断速度10s-1における粘度が350mPa・s以下である、請求項1又は2に記載の容器入り液状又はペースト状食品組成物。
【請求項4】
前記ジェランガム以外の増粘剤を更に含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の容器入り液状又はペースト状食品組成物。
【請求項5】
前記増粘剤がキサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム、ペクチンから選ばれる1以上である、請求項4に記載の容器入り液状又はペースト状食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、容器入り液状又はペースト状食品組成物を開示する。
【背景技術】
【0002】
スープ、ソース等の液状食品の基材として用いられる、α化していない澱粉、糖類及び水を含む液状又はペースト状食品組成物が従来から知られている。当該組成物を水に添加して希釈し、希釈液を加熱することで、適度な粘性を有する液状食品が得られる。
【0003】
特許文献1では、澱粉、水及び糖質を含有し、更に塩を含んでもよい容器入りペースト状ルウの製造方法が記載されている。特許文献1では、前記澱粉が、α化澱粉と未α化澱粉との混合物である場合に、未α化澱粉のみからなる場合よりもペースト状ルウ中における澱粉の沈降分離が生じにくいことが記載されている。
【0004】
特許文献2では、とろみスープ用ベースの製造方法として、調味組成物を含む調味液を加熱し、冷却し、冷却後にとろみ付け用の糊化していない澱粉を添加し、更に澱粉分散安定化用の増粘剤とオイルを加えて、一包に充填し包装する方法が記載されている。特許文献2では、増粘剤によって粘度を発現させることにより、糊化していない澱粉の分散を安定化させ沈殿を生じさせないことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-233339号公報
【特許文献2】特開2020-124130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スープ、ソース等の液状食品の基材としての、α化していない澱粉、糖類及び水を含む液状又はペースト状食品組成物は、水により希釈して希釈液を調製し、調製された希釈液中に必要に応じて具材を加え、その後に加熱することで、喫食される液状食品を調製するために利用されることが通常である。前記希釈液中では、α化していない澱粉の沈殿が抑制される必要がある。特に、具材を加えた後の前記希釈液は撹拌が困難であるため、撹拌しなくとも沈殿が抑制されていることが望ましい。また、喫食される液状食品の粘度が高すぎる場合には好ましくない食感を呈する場合がある。
【0007】
特許文献1及び2に記載されているように、α化(糊化)していない澱粉を含む液状又はペースト状食品組成物中での澱粉の沈殿を抑制するために、α化した澱粉や増粘剤を配合して粘性を高める技術が知られている。しかしながら、水による希釈液中での澱粉の沈殿が抑制された、液状又はペースト状食品組成物は従来提供されていない。
【0008】
そこで本明細書に開示する実施形態は、水による希釈液中での澱粉の沈殿が抑制された、α化していない澱粉、糖類及び水を含む容器入り液状又はペースト状食品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、驚くべきことに、α化していない澱粉、糖類及び水を含む液状又はペースト状食品組成物の水による希釈液中での澱粉の沈殿を抑制するためには、前記希釈液の低せん断速度でのせん断粘度が一定値以上であることが好ましいこと、並びに、前記希釈液を加熱して得た液状食品が好ましい食感を呈するためには、前記希釈液の高せん断速度でのせん断粘度が一定値以下であることが更に好ましいことを見出し、以下の各実施形態を完成するに至った。
【0010】
(1)α化していない澱粉、糖類及び水を含有し、水分含量が40質量%未満である液状又はペースト状食品組成物、並びに、前記組成物を収容した容器を備える、容器入り液状又はペースト状食品組成物であって、
ジェランガムを含有すること、並びに、
前記組成物1質量部あたり水3質量部を混合して希釈液を調製した場合に、前記希釈液の30℃でのせん断速度0.1s-1における粘度が900mPa・s以上であること
を特徴とする、容器入り液状又はペースト状食品組成物。
(2)前記α化していない澱粉を1~30質量%含有する、(1)に記載の容器入り液状又はペースト状食品組成物。
(3)前記希釈液の30℃でのせん断速度10s-1における粘度が350mPa・s以下である、(1)又は(2)に記載の容器入り液状又はペースト状食品組成物。
(4)前記ジェランガム以外の増粘剤を更に含有する、(1)~(3)のいずれかに記載の容器入り液状又はペースト状食品組成物。
(5)前記増粘剤がキサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム、ペクチンから選ばれる1以上である、(4)に記載の容器入り液状又はペースト状食品組成物。
【発明の効果】
【0011】
本明細書に開示する一以上の実施形態に係る容器入り液状又はペースト状食品組成物を、水により希釈して得た希釈液では、澱粉の沈殿が抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.成分
本明細書に開示する一以上の実施形態に係る容器入り液状又はペースト状食品組成物は、液状又はペースト状食品組成物と、前記組成物を収容する容器とを備える。
【0013】
前記容器に収容される内容物である前記液状又はペースト状食品組成物(以下「本開示に係る食品組成物」と称する場合がある)を構成する成分の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0014】
1.1.α化していない澱粉
【0015】
本開示に係る食品組成物は、α化(糊化)していない澱粉を含有する。α化していない澱粉としては、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等の澱粉が挙げられる。澱粉は、小麦粉、米粉、もち米粉等の、α化していない澱粉を含有する穀物粉の形態であってもよい。穀物粉を単独で又は油脂を混合して加熱し、風味付けや分散性を向上させたものを使用してもよい。α化していない澱粉は、湿熱処理を行った湿熱処理澱粉や、架橋や官能基付与等の化学修飾した加工澱粉であってもよい。α化していない澱粉は単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本開示に係る食品組成物中のα化していない澱粉の含量は特に限定されないが、該組成物の全質量を基準として、1~50質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましく、10~20質量%が特に好ましい。
【0017】
本開示に係る食品組成物中のα化していない澱粉の量は、α化していない澱粉が水に不溶であることを利用して水溶性画分と分離し、水不溶性画分に含まれるα化していない澱粉を、加熱糊化させたのち、グルコアミラーゼで分解し、グルコース量を定量することにより測定することができる。本開示に係る食品組成物が油脂を含有するものである場合には、あらかじめ脱脂処理を行うことが好ましい。
【0018】
1.2.糖類
本開示に係る食品組成物は、糖類を含有する。糖類としては、ブドウ糖等の単糖、ショ糖、麦芽糖、トレハロース等の二糖、オリゴ糖、マルトシルトレハロース、水あめ、デキストリン、糖アルコール(キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、オリゴ糖アルコール等)等が挙げられる。糖類は単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。糖類は水溶性の糖類であることが好ましい。糖類にはα化していない澱粉は含まれない。
【0019】
本開示に係る食品組成物に含まれる糖類としては、特に、糖アルコール、トレハロース、マルトシルトレハロース、及びデキストロース当量(DE)が15よりも高い糖類(特にデキストリン)のうちから選ばれる1以上で且つ低甘味のものを用いることが好ましい。なお、DEが15よりも高い糖類を用いる場合、液状又はペースト状食品組成物の流動性が向上し、該組成物を水又は湯とともに加熱調理した際に粘性が付与されやすいため好ましい。DEの測定方法は還元糖をグルコースとして測定し、その還元糖の全固形分に対する割合を求めることにより測定することができる。
【0020】
本開示に係る食品組成物中の糖類の含量は特に限定されないが、前記組成物の全質量を基準として、15~60質量%が好ましく、17~50質量%がより好ましい。
【0021】
本開示に係る食品組成物中の糖類の測定方法は、該組成物の総量から、水分、たんぱく質、脂質、食物繊維、灰分、澱粉の量を差し引いた数値として算出される。水分、たんぱく質、脂質、食物繊維、灰分は、栄養表示基準の測定方法に準じて測定することができる。澱粉は前記方法に従い測定することができる。
【0022】
本開示に係る食品組成物では、より好ましくは、水分に対する糖類の割合が80質量%以上である。この範囲とすることで、本開示に係る食品組成物の流動性を高めるとともに、加熱殺菌時の澱粉のα化を抑制し、加熱殺菌後も前記組成物の流動性を維持することができるため好ましい。水分に対する糖類の割合に上限値は特にないが、典型的には水分に対して糖類が300質量%以下である。
【0023】
1.3.水
本開示に係る食品組成物は、水分含量が40質量%未満となる量の水を含有する。本開示に係る食品組成物の水分含量は好ましくは30質量%未満、より好ましくは29.5質量%以下である。水分含量がこの範囲にある場合には、微生物の増殖リスクが低減される。本開示に係る食品組成物は、水分活性(Aw)が0.87以下であることが好ましい。水分活性の測定はノバシーナ社製の水分活性測定装置を用いて測定することができる。
【0024】
本開示に係る食品組成物の水分含量の下限値は特に限定されないが、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。
【0025】
1.4.増粘剤
本開示に係る食品組成物は、ジェランガムを含有することを特徴とする。適量のジェランガムを含有する本開示に係る食品組成物は、その4倍希釈液の後述する低せん断速度でのせん断粘度が高いため、前記希釈液中での澱粉の沈殿が抑制され易い。また、適量のジェランガムを含有する本開示に係る食品組成物の一以上の実施形態では、前記希釈液の後述する高せん断速度でのせん断粘度が低いため、前記希釈液を加熱して得た液状食品は好ましい食感を呈することができる。
【0026】
本開示に係る食品組成物中のジェランガムの含量は特に限定されないが、前記組成物の全質量を基準として、0.05~1.00質量%が好ましく、0.05~0.50質量%がより好ましく、0.05~0.25質量%が特に好ましい。ただし、ジェランガム以外の増粘剤を更に配合しない場合は、ジェランガムの含量は0.09~1.00質量%が好ましく、0.09~0.50質量%がより好ましく、0.09~0.25質量%が特に好ましい。
【0027】
本開示に係る食品組成物は、ジェランガム以外の増粘剤を更に含んでも良い。ジェランガム以外の増粘剤としては、キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム、ペクチン、カラギーナン、ゼラチン、タマリンドシードガム等が挙げられる。キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム、ペクチンから選ばれる1以上が特に好ましい。本開示に係る食品組成物中のジェランガム以外の増粘剤の含量は特に限定されないが、前記組成物の全質量を基準として、合計で0.05~2.00質量%が例示でき、0.10~1.00質量%が好ましい。ジェランガム以外の増粘剤を更に含むことで粘度の安定化を図ることができる。
【0028】
1.5.他の成分
本開示に係る食品組成物は、所望の風味、味を付与するために任意の他の成分を更に含むことが出来る。他の成分としては、例えば油脂、食塩等の塩類、肉エキス、野菜エキス、味噌、醤油、乳製品、ワイン、酸味料、グルタミン酸ナトリウム等の調味料、香辛料、香料等が挙げられる。
【0029】
油脂としては、牛脂、豚脂、魚油、バター、ギー等の動物油脂、大豆油、コーン油、パーム油、菜種油、オリーブオイル等の植物油脂、ジアシルグリセロール、マーガリン等の加工油脂が例示できる。健康上の観点、風味上の観点、本開示に係る食品組成物の保管時の分離安定性の観点から、油脂含量は20質量%以下であることが好ましい。本開示に係る食品組成物は、本発明の食品組成物は、油脂の分離安定性のために、乳化剤を更に含有してもよい。
【0030】
2.本開示に係る食品組成物
本開示に係る食品組成物は、α化していない澱粉、糖類及び水を含有し、水分含量が40質量%未満であり、ジェランガムを更に含有し、且つ、本開示に係る食品組成物1質量部あたり水3質量部を混合して希釈液(4倍希釈液)を調製した場合に、前記希釈液の30℃でのせん断速度0.1s-1における粘度(以下「30℃での低せん断速度におけるせん断粘度」と称する場合がある)が900mPa・s以上であることを特徴とする。
【0031】
本発明者らは、本開示に係る食品組成物の希釈液の、30℃での低せん断速度におけるせん断粘度と、希釈液中のα化していない澱粉の沈殿の抑制の程度とが正に相関すること、及び、前記条件を満たす本開示に係る食品組成物を、水により希釈して調製した希釈液中では、α化していない澱粉の沈殿が抑制されることを見出した。希釈液に具材を更に添加した状態では撹拌は困難であるが、前記条件を満たす本開示に係る食品組成物の希釈液では、撹拌しなくとも澱粉の沈殿は抑制されるため好ましい。本開示に係る食品組成物の4倍希釈液の30℃での低せん断速度におけるせん断粘度は、より好ましくは1000mPa・s以上である。
【0032】
本開示に係る食品組成物の4倍希釈液の30℃での低せん断速度におけるせん断粘度の上限は特に限定されないが、例えば20000mPa・s以下であることができる。
【0033】
本開示に係る食品組成物の更に好ましい実施形態では、前記4倍希釈液の30℃でのせん断速度10s-1における粘度(以下「30℃での高せん断速度におけるせん断粘度」と称する場合がある)が350mPa・s以下である。
【0034】
本発明者らは、本開示に係る食品組成物の希釈液の、30℃での高せん断速度におけるせん断粘度と、希釈液を加熱して調製される液状食品を人が喫食した特に感じられる粘性とが正に相関すること、及び、前記条件を満たす本開示に係る食品組成物を、水により希釈した希釈液を加熱して調製された液状食品は、好ましい適度なとろみを有することを見出した。本開示に係る食品組成物の4倍希釈液の30℃での高せん断速度におけるせん断粘度は、より好ましくは200mPa・s以下、特に好ましくは50mPa・s以下である。
【0035】
本開示に係る食品組成物の4倍希釈液の30℃での高せん断速度におけるせん断粘度の下限は特に限定されないが、例えば5mPa・s以上、好ましくは10mPa・s以上であることができる。
【0036】
本開示に係る食品組成物を水に希釈し、希釈液を加熱調理して、目的とする液状食品を調製する場合、水による希釈倍率は特に限定されないが、上限は好ましくは10倍以下、より好ましくは7倍以下、特に好ましくは5倍以下であり、下限は好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上である。
【0037】
上記の、30℃での低せん断速度におけるせん断粘度、及び、30℃での高せん断速度におけるせん断粘度は、どちらも、1mm以上の粒子を取り除いたサンプルを回転式粘弾性測定装置(例えば、AntonPaar社製MCR102)を用い、CC27ボブ、30℃にて、ずり速度0.1s-1から300s-1までの間を低ずり速度側から測定することにより測定することができる。
【0038】
本開示に係る食品組成物を、水で希釈し加熱して調製される液状食品としては、粘性のあるスープや、粘性のあるソース(ホワイトソース、デミグラスソース、カレーソース、スープカレー、トマトソース、あんかけ、カスタードソース等)を使用するカレー、シチュー、チャウダー、ハヤシ、グラタン、パスタ、中華あんかけ料理、カスタードクリーム等を例示することができる。
【0039】
3.容器入り液状又はペースト状食品組成物
本開示に係る容器入り液状又はペースト状食品組成物は、上記の本開示に係る食品組成物と、それを収容する容器とを備える。
【0040】
前記容器は、本開示に係る食品組成物を収容し密封でき、内容物を取り出し可能な物であれば特に限定されないが、例えばパウチ状容器、口栓付きパウチ、チューブ状容器、ボトル状容器、缶、瓶容器などを利用することができる。
【0041】
本開示に係る容器入り液状又はペースト状食品組成物は、加熱殺菌処理が施されたものであることが好ましい。加熱殺菌処理は、例えば蒸気、熱水等により行うことができる。その条件は殺菌を十分なものとし保存性を十分なものとするように設定することが好ましい。例えば、容器内の食品組成物の温度(中心温度)が70℃~90℃となるように加熱殺菌処理を行うことが好ましい。加熱殺菌処理では、例えば加熱殺菌処理が後述する後殺菌の場合には上記温度を5分間~60分間保持するのが好ましく、また、加熱殺菌処理が後述するホットパック殺菌の場合には上記温度を5秒間~5分間保持することが好ましい。
【0042】
本開示に係る食品組成物の容器への充填密閉と加熱殺菌処理との順序は特に限定されず、加熱殺菌処理は食品組成物の容器への充填前に行ってもよいし、容器への充填後に行ってもよいし、あるいは容器への充填の前後に行うこともできる。典型的には、本開示に係る食品組成物を容器に充填密封した後に加熱殺菌処理を施す様式(後殺菌)と、本開示に係る食品組成物を予め加熱殺菌処理(好ましくは70℃~90℃の温度で加熱殺菌処理)し、加熱殺菌処理の温度(好ましくは70℃以上)を保持した状態で容器に充填密封し、容器を殺菌する様式(ホットパック殺菌)とが挙げられる。
【0043】
本開示に係る容器入り液状又はペースト状食品組成物の製造においては、加熱殺菌処理の前に、本開示に係る食品組成物を加熱調理する工程を更に含んでもよい。また、前述のホットパック殺菌の場合には、加熱調理工程を加熱殺菌処理と兼ねて行うこともできる。加熱調理工程において澱粉が糊化する可能性があることから、好ましくは、予め糖類、水、食品材料等の混合物を、澱粉を添加せずに加熱調理し、得られた加熱調理組成物を、α化していない澱粉と混合して液状又はペースト状食品組成物を調製し、該液状又はペースト状食品組成物を加熱殺菌処理する。
【実施例0044】
1.食品組成物
α化していない澱粉としてコーンスターチ、糖としてデキストリン及び砂糖、並びに水を含み、ジェランガム及び/又はキサンタンガムを含む、下記表に示す組成(単位は質量%)の実施例1~3及び比較例1~3のペースト状食品組成物を調製した。実施例1~3及び比較例1~3のペースト状食品組成物は、水により4倍希釈し加熱することで、とろみを有するスープを調製するために用いられる、スープ用基材組成物である。
実施例1~3及び比較例1~3のペースト状食品組成物は、それぞれ、表に示す原材料を均一に混合して調製した。
【0045】
2.評価
2.1.せん断粘度
各ペースト状食品組成物を、30℃の水により4倍希釈(各ペースト状食品組成物1質量部に対し水3質量部)し混合して希釈液を調製した。
前記希釈液の低せん断速度でのせん断粘度(低せん断粘度)及び高せん断速度でのせん断粘度(高せん断粘度)を、次の手順で測定した。1mm以上の粒子を取り除いた前記希釈液のサンプルを、回転式粘弾性測定装置(AntonPaar社製MCR102)を用い、CC27ボブ、30℃にて、ずり速度0.1s-1から300s-1までの間を低ずり速度側から測定し、ずり速度0.1s-1で測定された粘度を低せん断粘度とし、ずり速度10s-1で測定された粘度を高せん断粘度とした。
【0046】
2.2.沈殿
各ペースト状食品組成物を、常温(25℃)の水により4倍希釈(各ペースト状食品組成物1質量部に対し水3質量部)し混合して、希釈液を調製した。
前記希釈液を収容したガラス容器を、混合後10分間、常温で静置し、10分間経過時に容器の外側から沈殿の有無を観察した。
沈殿が無い場合に「〇」、沈殿が有る場合に「×」と評価した。
【0047】
2.3.食感
各ペースト状食品組成物を、常温(25℃)の水により4倍希釈(各ペースト状食品組成物1質量部に対し水3質量部)し混合して、希釈液を調製した。
前記希釈液を加熱してコーンスターチをα化(糊化)し、スープを調製した。加熱中は撹拌を行わなかった。
前記スープを喫食して食感を評価した。スープとして好ましいとろみのある食感を「◎」、スープとして許容できる食感を「〇」、スープとしては許容できない食感を「×」と評価した。
【0048】
3.結果
実施例1~3及び比較例1~3のペースト状食品組成物の組成、並びに、評価結果を下記表に示す。各成分の単位は質量%である。水は合計で100質量%となる残量を加えた。
【0049】