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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189307
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】冷却ファン、電動機組立体
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/28 20060101AFI20221215BHJP
   F04D 29/58 20060101ALI20221215BHJP
   H02K 9/06 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
F04D29/28 J
F04D29/58 P
F04D29/28 H
H02K9/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097825
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】安 炳辰
(72)【発明者】
【氏名】北村 正史
(72)【発明者】
【氏名】大渕 真志
(72)【発明者】
【氏名】生越 広行
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】松田 道昭
(72)【発明者】
【氏名】大垣 冬季
(72)【発明者】
【氏名】落合 章裕
(72)【発明者】
【氏名】大石 洋平
(72)【発明者】
【氏名】永井 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】前田 毅
(72)【発明者】
【氏名】西村 和馬
(72)【発明者】
【氏名】田辺 凱太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸
【テーマコード(参考)】
3H130
5H609
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB47
3H130AB50
3H130AB57
3H130AC01
3H130BA33G
3H130CA07
3H130CB05
3H130CB14
3H130EB01C
3H130EB02C
5H609BB11
5H609BB19
5H609PP01
5H609PP05
5H609PP16
5H609QQ02
5H609RR07
5H609RR10
5H609RR16
5H609RR18
5H609RR24
5H609RR67
5H609RR71
(57)【要約】
【課題】冷却ファンの裏側に熱が籠ることを抑制し、放熱性を向上させることができる冷却ファン、電動機組立体を提供する。
【解決手段】冷却ファン30は、半径方向外側に延びる主板32を有してモータの駆動軸に取り付けられるハブ31と、主板32の表面32aに設けられた複数のファンブレード33と、を有し、主板32には、複数のファンブレード33よりも半径方向内側に、軸方向に貫通するスリット35が設けられている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径方向外側に延びる主板を有して回転機の駆動軸に取り付けられるハブと、
前記主板の表面に設けられた複数のファンブレードと、を有し、
前記主板には、前記複数のファンブレードよりも半径方向内側に、軸方向に貫通するスリットが設けられている、ことを特徴とする冷却ファン。
【請求項2】
前記ファンブレードは、遠心ファンまたは斜流ファンのファンブレード形状を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の冷却ファン。
【請求項3】
前記主板の裏面に設けられた複数の第2のファンブレードを有する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の冷却ファン。
【請求項4】
前記主板は、前記スリットを横断する複数のリブを有する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の冷却ファン。
【請求項5】
前記リブは、軸流ファンのファンブレード形状を有する、ことを特徴とする請求項4に記載の冷却ファン。
【請求項6】
駆動軸と、
前記駆動軸を回転させるモータと、
内部に前記モータが配置されたモータケーシングと、
前記モータの動作を制御するインバータと、
内部に前記インバータが配置され、前記駆動軸が貫通するインバータケースと、
前記インバータケースに隣接して配置され、前記駆動軸の端部に固定された冷却ファンと、を有する電動機組立体であって、
前記冷却ファンとして、請求項1~5のいずれか一項に記載の冷却ファンを有する、ことを特徴とする電動機組立体。
【請求項7】
前記インバータケースの端面には、少なくとも一部が前記冷却ファンの裏側に対向する複数の放熱フィンを有する、ことを特徴とする請求項6に記載の電動機組立体。
【請求項8】
前記複数の放熱フィンは、前記駆動軸を中心に螺旋状に設けられている、ことを特徴とする請求項7に記載の電動機組立体。
【請求項9】
前記インバータケースの周面には、軸方向に延びる複数の第2の放熱フィンが設けられており、
前記インバータケースの端面に設けられた前記複数の放熱フィンの半径方向外側の端部には、前記複数の放熱フィンの隙間を流動する空気を、前記複数の第2の放熱フィンの隙間に導くガイドベーンが設けられている、ことを特徴とする請求項7または8に記載の電動機組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却ファン、電動機組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、インバータ部とモータ部とを備えた電動機組立体が知られている。このような電動機組立体において、インバータ部は、インバータと、インバータを収容するインバータケースと、を備えている。モータ部は、駆動軸を回転させる回転子および固定子を備えるモータと、モータを収容するモータケーシングとを備えている。
【0003】
インバータおよびモータは発熱源であるため、電動機組立体が運転されると、インバータの熱はインバータケースに伝達され、インバータケースは高温になる。同様に、モータの熱はモータケーシングに伝達され、モータケーシングは高温になる。結果として、電動機組立体は、その全体として非常に高温になる。
【0004】
したがって、電動機組立体は、駆動軸に固定された冷却ファンを備えている。冷却ファンは、駆動軸の回転とともに回転し、インバータケースの外面およびモータケーシングの外面を冷却する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-162017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、冷却ファンには、ファンブレードの剛性を高めるためや、冷却風をインバータケースの外周側に効率的に送るために、半径方向外側に延びる円板状若しくは円錐板状の主板を設ける場合がある。このような場合、冷却ファンの裏側に熱が籠り易くなり、インバータの放熱性が低下する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、冷却ファンの裏側に熱が籠ることを抑制し、放熱性を向上させることができる冷却ファン、電動機組立体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る冷却ファンは、半径方向外側に延びる主板を有して回転機の駆動軸に取り付けられるハブと、前記主板の表面に設けられた複数のファンブレードと、を有し、前記主板には、前記複数のファンブレードよりも半径方向内側に、軸方向に貫通するスリットが設けられている。
【0009】
上記冷却ファンにおいては、前記ファンブレードは、遠心ファンまたは斜流ファンのファンブレード形状を有してもよい。
【0010】
上記冷却ファンにおいては、前記主板の裏面に設けられた複数の第2のファンブレードを有してもよい。
【0011】
上記冷却ファンにおいては、前記主板は、前記スリットを横断する複数のリブを有してもよい。
【0012】
上記冷却ファンにおいては、前記リブは、軸流ファンのファンブレード形状を有してもよい。
【0013】
本発明の一態様に係る電動機組立体は、駆動軸と、前記駆動軸を回転させるモータと、内部に前記モータが配置されたモータケーシングと、前記モータの動作を制御するインバータと、内部に前記インバータが配置され、前記駆動軸が貫通するインバータケースと、前記インバータケースに隣接して配置され、前記駆動軸の端部に固定された冷却ファンと、を有する電動機組立体であって、前記冷却ファンとして、先に記載の冷却ファンを有する。
【0014】
上記電動機組立体においては、前記インバータケースの端面には、少なくとも一部が前記冷却ファンの裏側に対向する複数の放熱フィンを有してもよい。
【0015】
上記電動機組立体においては、前記複数の放熱フィンは、前記駆動軸を中心に螺旋状に形成されていてもよい。
【0016】
上記電動機組立体においては、前記インバータケースの周面には、軸方向に延びる複数の第2の放熱フィンが設けられており、前記インバータケースの端面に設けられた前記複数の放熱フィンの半径方向外側の端部には、前記複数の放熱フィンの隙間を流動する空気を、前記複数の第2の放熱フィンの隙間に導くガイドベーンが設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明の一態様によれば、冷却ファンの裏側に熱が籠ることを抑制し、放熱性を向上させることができる冷却ファン、電動機組立体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る電動機組立体の断面図である。
図2】第1実施形態に係る電動機組立体の斜視図である。
図3】第1実施形態に係る電動機組立体からファンカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
図4】第1実施形態に係る電動機組立体からファンカバーを取り外した状態を示す正面図である。
図5】第1実施形態に係る冷却ファンの表側の斜視図である。
図6】第1実施形態に係る冷却ファンの裏側の斜視図である。
図7】第1実施形態に係る冷却ファンが回転したときの空気の流れを示す電動機組立体の模式図である。
図8】第1実施形態の変形例に係る冷却ファンが回転したときの空気の流れを示す電動機組立体の模式図である。
図9】第2実施形態に係る電動機組立体らファンカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
図10】第2実施形態に係る電動機組立体からファンカバーを取り外した状態を示す正面図である。
図11】第3実施形態に係る電動機組立体の断面図である。
図12】第3実施形態に係る電動機組立体からファンカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
図13】第3実施形態に係る電動機組立体からファンカバーを取り外した状態を示す正面図である。
図14】第3実施形態に係る電動機組立体からファンカバーを取り外した状態を示す側面図である。
図15】第4実施形態に係る電動機組立体の断面図である。
図16】第4実施形態に係る電動機組立体からファンカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
図17】第4実施形態に係る電動機組立体からファンカバーを取り外した状態を示す側面図である。
図18】第5実施形態に係る冷却ファンが回転したときの空気の流れを示す電動機組立体の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る電動機組立体1の断面図である。図2は、第1実施形態に係る電動機組立体1の斜視図である。図3は、第1実施形態に係る電動機組立体1からファンカバー26を取り外した状態を示す斜視図である。図4は、第1実施形態に係る電動機組立体1からファンカバー26を取り外した状態を示す正面図である。
図1に示すように、電動機組立体1は、インバータ20が内蔵された一体型構造を有する電動機である。電動機組立体1は、モータ部2と、インバータ部3と、を備えている。
【0021】
電動機組立体1は、モータ部2によって回転する駆動軸5を備えている。駆動軸5は、インバータ部3を貫通して配置されている。以下の説明では、駆動軸5の中心軸Oが延びる方向を軸方向といい、中心軸Oに直交する方向を半径方向といい、中心軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0022】
モータ部2は、駆動軸5を回転させる回転子6(ロータ)および固定子7(ステータ)を備えるモータ8と、回転子6および固定子7を収容するモータケーシング10と、を備えている。また、インバータ部3は、モータ8の動作(回転速度)を制御するインバータ20と、インバータ20を収容し、軸方向においてモータケーシング10に直列的に接続されたインバータケース21と、を備えている。
【0023】
駆動軸5は、モータケーシング10およびインバータケース21を貫通して延びている。モータケーシング10およびインバータケース21は、駆動軸5の中心軸Oと同軸の円筒状に形成されている。モータケーシング10およびインバータケース21は、駆動軸5の軸方向に直列的に配置されている。このため、電動機組立体1は、コンパクトな構造を有している。駆動軸5の端部(すなわち、駆動軸5の反負荷側)には、冷却ファン30が固定されている。冷却ファン30は、インバータケース21の外側に配置されており、インバータケース21に隣接している。
【0024】
モータケーシング10の内部には、発熱源であるモータ8が配置されている。モータ8は、駆動軸5に固定された回転子6と、回転子6を囲んで回転磁界を形成する固定子7と、を備えている。固定子7は、ステータコアと、ステータコアに巻かれたコイルと、を備えている。駆動軸5は、固定子7による回転磁界によって回転子6とともに回転する。
【0025】
図1において、モータ8は模式的に描かれている。モータ8は、例えば、ロータに永久磁石を用いた永久磁石型モータである。しかしながら、モータ8は、永久磁石型モータに限定されず、誘導モータやSRモータなど、様々な種類のモータであってもよい。
【0026】
モータケーシング10は、固定子7が固定されたモータフレーム11と、モータフレーム11の一方の開口端を閉じ、かつ駆動軸5が貫通する貫通孔12aが形成されたエンドカバー12と、モータフレーム11の他方の開口端を閉じ、かつ駆動軸5が貫通する貫通孔13aが形成されたモータ側板13(インバータケース側ブラケット)と、を備えている。
【0027】
エンドカバー12およびモータ側板13は、モータ8を軸方向で挟んで互いに対向している。駆動軸5は、エンドカバー12の軸受支持部12bに支持された軸受14によって回転自在に支持されている。また、駆動軸5は、モータ側板13の軸受支持部13bに支持された軸受15によって回転自在に支持されている。
【0028】
インバータケース21は、インバータ20を取り囲んでいる。インバータケース21は、インバータ20の周囲に配置されたインバータフレーム22と、インバータフレーム22の一方の開口端を閉じる冷却ファン側カバー部材23(冷却ファン側ブラケット)と、インバータフレーム22の他方の開口端を閉じるモータケーシング側カバー部材24(モータケーシング側ブラケット)と、を備えている。
【0029】
冷却ファン側カバー部材23は、冷却ファン30に隣接しており、駆動軸5が貫通する貫通孔23aを有している。モータケーシング側カバー部材24は、モータケーシング10のモータ側板13に隣接しており、駆動軸5が貫通する貫通孔24aを有している。貫通孔23aと貫通孔24aは、筒状部材25を介して軸方向に接続されている。筒状部材25は、駆動軸5の周囲を囲っている。
【0030】
インバータフレーム22は、冷却ファン側カバー部材23およびモータケーシング側カバー部材24に軸方向で挟まれて接続されている。なお、インバータフレーム22と冷却ファン側カバー部材23との接続構造、およびインバータフレーム22とモータケーシング側カバー部材24との接続構造は、嵌め合い構造であるが、その接続構造は特に限定されない。
【0031】
インバータケース21の内部には、インバータ20が配置されている。インバータ20は、スイッチング素子やコンデンサなどの要素を含む複数の発熱素子41と、これら発熱素子41が実装された基板42と、を備えている。基板42は、冷却ファン側カバー部材23の内面に固定されている。冷却ファン側カバー部材23の内面は、基板42が載置される受け皿形状を有している。このような構造により、冷却ファン側カバー部材23には、基板42の放熱用および表面保護用の図示しない樹脂を充填することができる。
【0032】
モータ8およびインバータ20のそれぞれは発熱源である。したがって、これらモータ8およびインバータ20の放熱性を考慮した場合、モータケーシング10の材質およびインバータケース21の材質としては、熱伝導率の高いアルミニウムや鉄材を適用することが好ましい。
【0033】
電動機組立体1は、冷却ファン30を覆うファンカバー26を備えている。ファンカバー26は、冷却ファン側カバー部材23を覆うように配置されており、冷却ファン側カバー部材23に固定されている。ファンカバー26は、冷却ファン30と軸方向で対向する吸込口26aを有している。また、ファンカバー26は、インバータケース21の周面に沿って空気を吐き出す吐出口26bを有している。
【0034】
インバータケース21の周面には、複数の放熱フィン22aが設けられている。複数の放熱フィン22aは、インバータフレーム22と一体で形成され、軸方向に直線状に延びている。また、インバータケース21の軸方向の端面にも、複数の放熱フィン23bが設けられている。複数の放熱フィン23bは、冷却ファン側カバー部材23と一体で形成され、冷却ファン30の背面側から半径方向外側に延びている。
【0035】
モータケーシング10の周面には、複数の放熱フィン11aが設けられている。複数の放熱フィン11aは、モータフレーム11と一体で形成され、軸方向に沿って直線状に延びている。モータケーシング10の放熱フィン11aとインバータケース21の放熱フィン22aは、図2及び図3に示すように、互いに軸方向に連続するように配置されている。これにより、冷却ファン30の回転によって、ファンカバー26の吐出口26bからインバータケース21の周面に沿って送られる空気は、放熱フィン22a及び放熱フィン11aに沿って流れ、インバータ部3及びモータ部2を冷却することができる。
【0036】
図5は、第1実施形態に係る冷却ファン30の表側の斜視図である。図6は、第1実施形態に係る冷却ファン30の裏側の斜視図である。
これらの図に示すように、冷却ファン30の中心部には、上述した駆動軸5の端部に取り付けられるハブ31が設けられている。ハブ31は、駆動軸5の中心軸Oと同心の円柱状に形成されている。
【0037】
ハブ31の周面には、半径方向外側に延びる主板32が設けられている。主板32は、略円板状ないし略円錐板状に形成されている。本実施形態の主板32は、図1に示す中心軸Oに沿う断面視で、半径方向外側に向かうに従って、冷却ファン側カバー部材23に対し軸方向で徐々に近づくように傾斜している。
【0038】
図5に示すように、主板32の表面32aには、ファンブレード33が設けられている。なお、主板32の表面32aとは、軸方向において上述したインバータケース21と反対側を向く面を言う。ファンブレード33は、遠心ファンのファンブレード形状を有する。なお、遠心ファンのファンブレード形状とは、半径方向に設置される平板もしくは半径方向外側ほど回転方向から後退する曲線を描くブレード形状をいう。例えば、図4に示す冷却ファン30は、時計回りに右回転するため、ファンブレード33は半径方向外側ほど回転方向後方(反時計回り)に後退している。
【0039】
具体的に、ファンブレード33は、主板32の表面32aにおいて、周方向に間隔をあけて複数設けられている。これら複数のファンブレード33は、ハブ31の周面から半径方向に離間して配置されると共に、図4に示すように、主板32の表面32aの内周側から外周側に向けて湾曲状に延びつつ、主板32の表面32aに対して略垂直な方向に立設している。
【0040】
図6に示すように、主板32の裏面32bには、第2のファンブレード34(裏羽根)が設けられている。なお、主板32の裏面32bとは、上述したインバータケース21と軸方向において対向する面を言う。第2のファンブレード34は、遠心ファンのファンブレード形状を有する。
【0041】
具体的に、第2のファンブレード34は、主板32の裏面32bにおいて、周方向に間隔をあけて複数設けられている。これら複数の第2のファンブレード34は、ハブ31の周面から半径方向に離間して配置されると共に、中心軸Oを中心に放射状に延びている。なお、第2のファンブレード34の周方向の位相は、上述した表面32a側のファンブレード33とずれているが、同じであっても構わない。また、第2のファンブレード34の枚数も、上述した表面32a側のファンブレード33と同じでなくても構わない。
【0042】
第2のファンブレード34は、図1に示すように、主板32の裏側の空間から軸方向に突出している。主板32の裏側の空間とは、主板32の裏面32bによって囲まれた円錐状の空間を言う。つまり、第2のファンブレード34は、主板32の裏面32bから軸方向に延び、主板32の裏側の空間よりもインバータケース21側に突出している。このような第2のファンブレード34は、インバータ20の発熱素子41の少なくとも一部と軸方向で重なる位置で回転するようになっている。
【0043】
図5に戻り、主板32には、複数のファンブレード33よりも半径方向内側に、軸方向に貫通するスリット35が設けられている。スリット35は、中心軸Oを中心とする円環状に形成されている。なお、スリット35は、主板32の裏面32bに設けられた複数の第2のファンブレード34に対しても半径方向内側に設けられている(図6参照)。
【0044】
主板32には、図5に示すように、スリット35を横断するリブ36が設けられている。リブ36は、周方向に間隔をあけて複数設けられている。これら複数のリブ36は、中心軸Oを中心に放射状に延びている。スリット35は、複数のリブ36によって円弧状の複数の孔部に分割され、当該円弧状の複数の孔部が周方向に断続的に並んだ形状を有している。なお、スリット35の孔の数や形状は、特に限定されず、単数でも複数でも、軸方向から見て円形、楕円形、多角形、その他の異形であっても構わない。
【0045】
図1に示すように、冷却ファン30に対向するインバータケース21の端面には、放熱フィン23bが設けられている。放熱フィン23bは、周方向に間隔をあけて複数設けられている。放熱フィン23bは、冷却ファン30の裏側に対向する第1部分23b1と、冷却ファン30よりも半径方向外側に配置された第2部分23b2と、を有している。
【0046】
第1部分23b1は、冷却ファン30の裏面32bの第2のファンブレード34に接触しないような高さで形成されている。第2部分23b2は、軸方向において主板32の外周縁と連続するような高さで形成されている。つまり、第2部分23b2は、軸方向において第1部分23b1よりも高く形成されている。このような放熱フィン23bは、図4に示すように、中心軸Oを中心に螺旋状に設けられている。
【0047】
続いて、上記構成の冷却ファン30の作用について、図7を参照して説明する。
【0048】
図7は、第1実施形態に係る冷却ファン30が回転したときの空気の流れを示す電動機組立体1の模式図である。
上記構成の冷却ファン30によれば、駆動軸5が回転すると、ファンカバー26の吸込口26aから空気が軸方向に吸い込まれる。空気の一部は、ファンブレード33から受ける遠心力によって、符号F1に示すように主板32の表面32aに沿って半径方向外側に吐出される。
【0049】
また、空気の一部は、第2のファンブレード34から受ける遠心力によって、符号F2に示すようにスリット35を通過し、主板32の裏面32bに沿って半径方向外側に吐出される。このように、冷却ファン30にスリット35を設け、冷却ファン30の裏側に空気の流れを形成することで、主板32とインバータケース21との間に熱が籠らないようになる。したがって、インバータ20の放熱性が低下してしまうことを抑制できる。
【0050】
主板32の表面32a及び裏面32bのそれぞれから半径方向外側に吐出された空気は、合流し、ファンカバー26の内面に沿ってインバータケース21の周面まで導かれる。そして、ファンカバー26の吐出口26bから吐出された空気は、インバータケース21の放熱フィン22a及びモータケーシング10の放熱フィン11aに沿って流れ、インバータ部3及びモータ部2を冷却する。なお、ファンカバー26の吐出口26bの近傍に、ガイドベーン27を設けることで、ファンカバー26の内側の空気を、インバータケース21の周面まで導きやすくなる。
【0051】
このように、上述した第1実施形態の冷却ファン30は、半径方向外側に延びる主板32を有してモータ8の駆動軸5に取り付けられるハブ31と、主板32の表面32aに設けられた複数のファンブレード33と、を有し、主板32には、複数のファンブレード33よりも半径方向内側に、軸方向に貫通するスリット35が設けられている。この構成によれば、スリット35を介して主板32の裏側に空気を導き、冷却ファン30の裏側に熱が籠ることを抑制し、放熱性を向上させることができる。また、スリット35は、複数のファンブレード33よりも半径方向内側に設けられているため、主板32の整流及びガイド機能が低下することを防止できる。
【0052】
また、第1実施形態では、主板32の裏面32bに設けられた複数の第2のファンブレード34を有する。この構成によれば、主板32の裏側に積極的に空気の流れを形成し、放熱性を向上させることができる。
【0053】
また、第1実施形態では、主板32は、スリット35を横断する複数のリブ36を有する。この構成によれば、複数のリブ36によって、スリット35が形成された主板32の剛性を高めることができる。
【0054】
また、第1実施形態に係る電動機組立体1は、駆動軸5と、駆動軸5を回転させるモータ8と、内部にモータ8が配置されたモータケーシング10と、モータ8の動作を制御するインバータ20と、内部にインバータ20が配置され、駆動軸5が貫通するインバータケース21と、インバータケース21に隣接して配置され、駆動軸5の端部に固定された冷却ファン30と、を有するため、冷却ファン30の裏側に熱が籠ることを抑制し、放熱性を向上させることができる。
【0055】
また、第1実施形態では、インバータケース21の端面には、少なくとも一部が冷却ファン30の裏側に対向する複数の放熱フィン23b(第1の放熱フィン)を有する。この構成によれば、スリット35を介して主板32の裏側に導かれた空気が、放熱フィン23bに沿って流れることで、インバータケース21の端面からインバータ20を冷却することができる。
【0056】
また、第1実施形態では、複数の放熱フィン23bは、駆動軸5を中心に螺旋状に設けられている。この構成によれば、冷却ファン30の回転よって旋回成分を与えられた空気を滑らかにインバータケース21の周面まで導くことができるため、冷却ファン30から半径方向外側に吐出された空気の圧力損失を小さくすることができる。
【0057】
なお、上述した第1実施形態では、以下のような変形例を採用し得る。
【0058】
図8は、第1実施形態の変形例に係る冷却ファン30が回転したときの空気の流れを示す電動機組立体1の模式図である。
図8に示す冷却ファン30は、主板32の裏面32bに、上述した第2のファンブレード34を備えていない点で、上記実施形態と異なる。
【0059】
上記構成の冷却ファン30によれば、駆動軸5が回転すると、ファンカバー26の吸込口26aから空気が軸方向に吸い込まれる。空気の一部は、ファンブレード33から受ける遠心力によって、符号F1に示すように主板32の表面32aに沿って半径方向外側に吐出される。
【0060】
また、主板32の表面32aに沿って半径方向外側に吐出された空気の一部は、符号F2に示すように相対的に圧力が低くなっている主板32の裏面32bに流れ、スリット35を通過し、ファンブレード33の上流側に逆流する。
このように、冷却ファン30にスリット35を設けることで、第2のファンブレード34が無くても冷却ファン30の裏側に空気の流れを形成することができる。したがって、主板32とインバータケース21との間に熱が籠らないようになり、インバータ20の放熱性が低下してしまうことを抑制できる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0062】
図9は、第2実施形態に係る電動機組立体1からファンカバー26を取り外した状態を示す斜視図である。図10は、第2実施形態に係る電動機組立体1からファンカバー26を取り外した状態を示す正面図である。
これらの図に示すように、第2実施形態の電動機組立体1は、インバータケース21の端面に設けられた複数の放熱フィン23bに、ガイドベーン23b3が設けられている点で、上記実施形態と異なる。
【0063】
ガイドベーン23b3は、図10に示すように、放熱フィン23bの半径方向外側の端部に設けられている。ガイドベーン23b3は、冷却ファン側カバー部材23よりも半径方向外側に延出している。また、ガイドベーン23b3には、放熱フィン23bの第2部分23b2の螺旋状の曲げに対して、冷却ファン側カバー部材23の外周縁を変曲点とする逆方向の曲げが形成されている。すなわち、放熱フィン23bは、図10に示す正面視で略S字状に形成されている。
【0064】
上記構成の第2実施形態によれば、インバータケース21の周面には、軸方向に延びる複数の放熱フィン22a(第2の放熱フィン)が設けられており、インバータケース21の端面に設けられた複数の放熱フィン23bの半径方向外側の端部には、複数の放熱フィン23bの隙間を流動する空気を、複数の放熱フィン22aの隙間に導くガイドベーン23b3が設けられているため、冷却ファン30の回転よって旋回成分を与えられた空気を滑らかにインバータケース21の周面の放熱フィン22aまで導くことができる。
【0065】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0066】
図11は、第3実施形態に係る電動機組立体1の断面図である。図12は、第3実施形態に係る電動機組立体1からファンカバー26を取り外した状態を示す斜視図である。図13は、第3実施形態に係る電動機組立体1からファンカバー26を取り外した状態を示す正面図である。図14は、第3実施形態に係る電動機組立体1からファンカバー26を取り外した状態を示す側面図である。
これらの図に示すように、第3実施形態の電動機組立体1は、インバータケース21の端面に設けられた複数の放熱フィン23bの第2部分23b2が、冷却ファン30の表面32aのファンブレード33と略同じ高さで形成されている点で、上記実施形態と異なる。
【0067】
また、第3実施形態の放熱フィン23bは、図13に示すように、第1部分23b1、第2部分23b2、及びガイドベーン23b3を含む全体が、円弧状に曲がっている点で、上記実施形態と異なる。第3実施形態の放熱フィン23bは、冷却ファン30の外周縁に沿う接線に対する角度が、半径方向外側に向かうに従って、徐々に大きくなるように円弧状に曲がっている。
【0068】
上記構成の第3実施形態によれば、図11に示すように、放熱フィン23bの第2部分23b2が、冷却ファン30の表面32aのファンブレード33と略同じ高さで形成されているため、主板32の裏面32bに沿って流れる空気だけでなく、主板32の表面32aに沿って流れる空気も、インバータケース21の周面の放熱フィン22aまで滑らかに導くことができる。
【0069】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0070】
図15は、第4実施形態に係る電動機組立体1の断面図である。図16は、第4実施形態に係る電動機組立体1からファンカバー26を取り外した状態を示す斜視図である。図17は、第4実施形態に係る電動機組立体1からファンカバー26を取り外した状態を示す側面図である。
これらの図に示すように、第4実施形態の電動機組立体1は、インバータケース21の端面に設けられた複数の放熱フィン23bのガイドベーン23b3に、傾斜部23b4が形成されている点で、上記実施形態と異なる。
【0071】
つまり、第4実施形態の放熱フィン23bは、斜流タイプのガイドベーン23b3を備えている。また、第4実施形態のファンカバー26にも傾斜部26cが形成されている。ファンカバー26の傾斜部26cは、ガイドベーン23b3の傾斜部23b4と平行に形成されている(図15参照)。なお、第4実施形態の放熱フィン23bを正面から視た形状は、上述した図13に示す第3実施形態の放熱フィン23bの形状と同じである。
【0072】
上記構成の第4実施形態によれば、図15に示すように、放熱フィン23bが斜流タイプのガイドベーン23b3を有しているため、冷却ファン30から半径方向外側に吐出される空気を軸方向に導きやすくなる。
【0073】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0074】
図18は、第5実施形態に係る冷却ファン30が回転したときの空気の流れを示す電動機組立体1の模式図である。
第5実施形態の冷却ファン30は、主板32の表面32aに設けられた複数のファンブレード33が、斜流ファンのファンブレード形状を有する点で、上記構成と異なる。また、第5実施形態の冷却ファン30は、スリット35を横断する複数のリブ36が、軸流ファンのファンブレード形状を有する点で、上記実施形態と異なる。
【0075】
上記構成の冷却ファン30によれば、駆動軸5が回転すると、ファンカバー26の吸込口26aから空気が軸方向に吸い込まれる。空気の一部は、ファンブレード33から受ける遠心力によって、符号F1に示すように主板32の表面32aに沿って半径方向外側に吐出される。
【0076】
また、主板32の表面32aに沿って半径方向外側に吐出された空気の一部は、符号F2に示すように相対的に圧力が低くなっている主板32の裏面32bに流れ込み、スリット35を通過し、ファンブレード33の上流側に逆流する。ここで、スリット35には、軸流ファンのファンブレード形状を有するリブ36が設けられているため、当該空気の逆流を促進させ、冷却ファン30の裏側に空気の流れを形成することができる。したがって、主板32とインバータケース21との間に熱が籠らないようになり、インバータ20の放熱性が低下してしまうことを抑制できる。
【0077】
また、第5実施形態のファンブレード33は、斜流ファンのファンブレード形状を有しており、斜流ファンは、遠心ファンに比べて半径方向の寸法が小さくできるので、冷却ファン30の回転による騒音を低減できる。また、第5実施形態のリブ36は、軸流ファンのファンブレード形状を有するが、半径方向の寸法の制限から、軸流ファンの昇圧は斜流ファンの昇圧に勝てないので、符号F2に示すように、スリット35を介しファンブレード33の上流側に逆流する流れを促進させる向きで設置するとよい。なお、リブ36が、軸流ファンのファンブレード形状でなくても、符号F2に示す逆流は生じる。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【0079】
また、例えば、上記実施形態では、冷却ファン30が取り付けられる回転機として、電動機を例示したが、発電機であっても構わない。
【符号の説明】
【0080】
1…電動機組立体、2…モータ部、3…インバータ部、5…駆動軸、6…回転子、7…固定子、8…モータ、10…モータケーシング、11…モータフレーム、11a…放熱フィン、12…エンドカバー、12a…貫通孔、12b…軸受支持部、13…モータ側板、13a…貫通孔、13b…軸受支持部、14…軸受、15…軸受、20…インバータ、21…インバータケース、22…インバータフレーム、22a…放熱フィン(第2の放熱フィン)、23…冷却ファン側カバー部材、23a…貫通孔、23b…放熱フィン(第1の放熱フィン)、23b1…第1部分、23b2…第2部分、23b3…ガイドベーン、23b4…傾斜部、24…モータケーシング側カバー部材、24a…貫通孔、25…筒状部材、26…ファンカバー、26a…吸込口、26b…吐出口、26c…傾斜部、27…ガイドベーン、30…冷却ファン、31…ハブ、32…主板、32a…表面、32b…裏面、33…ファンブレード、34…第2のファンブレード、35…スリット、36…リブ、41…発熱素子、42…基板、O…中心軸
図1
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