(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189425
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】搬送トレイ及び搬送トレイの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20221215BHJP
B65D 85/86 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H01L21/68 U
B65D85/86 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097990
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章文
【テーマコード(参考)】
3E096
5F131
【Fターム(参考)】
3E096AA09
3E096BA09
3E096BB03
3E096CA06
3E096CB02
3E096CC02
3E096FA11
5F131AA04
5F131BA52
5F131CA32
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5F131GA72
5F131KB24
5F131KB38
(57)【要約】
【課題】チップを置く位置の目印やどのチップが収容されているか等の搬送トレイを用いる使用者にとって有用な情報を取得できる搬送トレイ及び搬送トレイの製造方法を提供すること。
【解決手段】搬送トレイ1は、デバイスチップ203を仮固定する粘着層3が配置されている。粘着層3は可視光を透過する透明または半透明に形成されている。粘着層3の下面には、搬送トレイ1を用いる使用者に目視可能な情報9を表示する情報表示部4が配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップを仮固定する粘着層が配置された搬送トレイであって、
該粘着層は可視光を透過する透明または半透明に形成され、
該粘着層の下面には、搬送トレイを用いる使用者に目視可能な情報を表示する情報表示部が配置されている搬送トレイ。
【請求項2】
該情報表示部は、仮固定する該チップの固定位置を示す目印情報、チップの製造工程に関連する情報を示す製造情報、該チップの種類情報、又は広告情報が表示されている請求項1に記載の搬送トレイ。
【請求項3】
該情報表示部は、該情報を色、文字、コードで表示する請求項1又は2に記載の搬送トレイ。
【請求項4】
該情報表示部は、外的刺激によって情報を書き換え可能である請求項1,2又は3に記載の搬送トレイ。
【請求項5】
該情報表示部は、携帯端末の画面である請求項1,2,3又は4に記載の搬送トレイ。
【請求項6】
搬送トレイの製造方法であって、
チップを収容するトレイを準備するトレイ準備ステップと、
該トレイの底面に情報を表示する情報表示部を配置する情報表示部配置ステップと、
該情報表示部の上面に、粘着力があり可視光を透過する樹脂層を被覆する樹脂層被覆ステップと、を備える搬送トレイの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップを仮固定して搬送する搬送トレイ及び搬送トレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、ウェーハの表面に格子状に配列された多数の領域にIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスを形成し、各領域を区画する分割予定ラインに沿ってウェーハを分割することにより個々のデバイスを製造している。このようにして分割されたデバイスは、金属フレームや樹脂によってパッケージ基板となり、更に個々のパッケージデバイスチップに分割され、携帯電話やパソコン等の電気機器に広く利用されている。
【0003】
パッケージ基板を分割する際は、切削装置のチャックテーブルに直接固定され、個々のパッケージデバイスチップに分割後、チップを収容、搬送、保管する際に、搬送トレイに収容される。搬送トレイは通常、チップのサイズに合わせた仕切りがあり、それぞれのチップのサイズに合わせた搬送トレイを用意するが、チップを仮固定可能な粘着力やタック力のある粘着層をトレイの底面に敷設し、チップのサイズを問わない搬送トレイが開発された(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5679735号公報
【特許文献2】特開2012-144261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この搬送トレイは仕切りが無いため、チップを置く位置の目印が無く使用に戸惑ったりする恐れがあった。また、チップのサイズを限定しない事で、搬送トレイにどのチップが収容されているかわからないという新たな課題もあった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、チップを置く位置の目印やどのチップが収容されているか等の搬送トレイを用いる使用者にとって有用な情報を取得できる搬送トレイ及び搬送トレイの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の搬送トレイは、チップを仮固定する粘着層が配置された搬送トレイであって、該粘着層は可視光を透過する透明または半透明に形成され、該粘着層の下面には、搬送トレイを用いる使用者に目視可能な情報を表示する情報表示部が配置されている。
【0008】
該情報表示部は、仮固定する該チップの固定位置を示す目印情報、チップの製造工程に関連する情報を示す製造情報、該チップの種類情報、又は広告情報が表示されてもよい。
【0009】
該情報表示部は、該情報を色、文字、コードで表示してもよい。
【0010】
該情報表示部は、外的刺激によって情報を書き換え可能であってもよい。
【0011】
該情報表示部は、携帯端末の画面であってもよい。
【0012】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の搬送トレイの製造方法は、搬送トレイの製造方法であって、チップを収容するトレイを準備するトレイ準備ステップと、該トレイの底面に情報を表示する情報表示部を配置する情報表示部配置ステップと、該情報表示部の上面に、粘着力があり可視光を透過する樹脂層を被覆する樹脂層被覆ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、搬送トレイを用いる使用者にとって有用な情報を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る搬送トレイの構成例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の搬送トレイに収容されるデバイスチップを製造する加工装置を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る搬送トレイの製造方法の処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態2に係る搬送トレイの構成例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態3に係る搬送トレイの構成例を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態4に係る搬送トレイの構成例を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、実施形態5に係る搬送トレイの構成例を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、実施形態6に係る搬送トレイの構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0016】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る搬送トレイ1及び搬送トレイの製造方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る搬送トレイ1の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1の搬送トレイ1を示す断面図である。搬送トレイ1は、
図1及び
図2に示すように、デバイスチップ(パッケージデバイスチップ、特許請求の範囲に記載されたチップに相当)203を収容して搬送するものであり、トレイ本体2(特許請求の範囲に記載されたトレイに相当)と、粘着層3と、情報表示部4とを備える。
【0017】
トレイ本体2は、
図1に示すように、平面形状が矩形の平板状に形成され、被加工物200(
図3参照)を収容可能な大きさの凹部からなるデバイス支持部6と、デバイス支持部6の外周を囲繞して形成された枠体7とを備える。
【0018】
デバイス支持部6は、搬送トレイ1の上面から凹の凹部からなり、実施形態1では、被加工物200の平面形状よりも大きな矩形状に形成されている。デバイス支持部6は、粘着層3及び情報表示部4を介して複数のデバイスチップ203を支持する底面6-1を底に有する。底面6-1は、平坦に形成されている。デバイス支持部6の底面6-1は、被加工物200から個片化された複数のデバイスチップ203を一度に収容できるように設定されている。枠体7は、デバイス支持部6の底面6-1の外周を囲繞して、底面6-1から上方に凸に形成されている。
【0019】
情報表示部4は、
図2に示すように、トレイ本体2のデバイス支持部6の底面6-1に配置されている。粘着層3は、デバイス支持部6の底面6-1と情報表示部4との上方を覆うように、デバイス支持部6の底面6-1と情報表示部4との全体上に配置されている。粘着層3は、デバイス支持部6上に露出しており、デバイス支持部6上の露出面が平坦に形成されている。すなわち、情報表示部4は、デバイス支持部6の底面6-1と粘着層3の下面との間に配置されている。
【0020】
粘着層3は、複数のデバイスチップ203を貼着して仮固定する粘着力を有する。ここで、デバイスチップ203を仮固定するとは、一定の衝撃が加えられたり、所定以下の角度に搬送トレイ1が傾けられてもデバイスチップ203が移動しない状態、なおかつ、搬送トレイ1を用いる使用者によりデバイスチップ203を容易に取り外して移動させることが可能な状態にすることをいう。粘着層3は、可視光を透過する材料、すなわち可視光に対して透明または半透明である材料で構成されている。このため、粘着層3は、搬送トレイ1を用いる使用者により粘着層3越しに情報表示部4に表示された情報9を目視可能にしている。粘着層3は、実施形態1では、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、アイオノマー、エチレン-酢酸ビニル-無水マレイン酸三元共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化樹脂、並びに、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂等から選択される一種または二種以上の樹脂を含む樹脂層により構成することができる。
【0021】
情報表示部4は、情報9を表示する側が搬送トレイ1の上面側に向けられて配置されており、搬送トレイ1の上面側から搬送トレイ1を用いる使用者に目視可能な情報9を表示する。情報表示部4は、実施形態1では、水平方向に延びる薄い媒体、例えば、搬送トレイ1の上面側に向けて情報9を表示する紙、カード、シート、薄板等により構成することができる。なお、情報9を表示する情報表示部4は、本発明ではこれに限定されず、情報9を直接表示するデバイス支持部6の底面6-1であってもよい。
【0022】
情報表示部4に表示されている情報9は、例えば搬送トレイ1を用いる使用者にとって有用な情報であり、実施形態1では、
図1に示すように、仮固定するデバイスチップ203の固定位置を示す目印情報9-1である。目印情報9-1は、
図1に示す例では、隣接するデバイスチップ203の固定位置の間に破線で示された境界線であるが、本発明ではこれに限定されず、使用者がデバイスチップ203を固定する際に目印になるものであればどのような形態でもよく、例えば、デバイスチップ203の外周に対応した四角形の枠線でも、デバイスチップ203の固定位置の中心に形成されたスポットでもよい。
【0023】
情報9は、本発明では目印情報9-1に限定されず、例えば、デバイスチップ203の製造に関する情報を示す製造情報、デバイスチップ203の種類情報、デバイスチップ203や使用者に関する広告情報等でもよい。デバイスチップ203の製造情報は、デバイスチップ203の製造工程の情報を示す工程情報、デバイスチップ203を製造する工場の情報を示す工場情報、デバイスチップ203の限度見本等の品質管理に関する情報を示す品質情報、デバイスチップ203の製造において所定の装置に入力が必要な情報を示す入力情報、等を含む。また、デバイスチップ203の製造情報は、搬送トレイ1を用いる使用者への作業に関する指示情報も含む。指示情報は、例えば、搬送トレイ1がデバイスチップ203の製造工程において所定の2台の加工装置の間の運搬で使用する旨の指示や、デバイスチップ203の出荷先を明示した指示等である。デバイスチップ203や使用者に関する広告情報は、例えば、デバイスチップ203の製造に必要な装置や機器や交換部材等の新規開発品、加工装置100のメーカーの商品、または、搬送トレイ1の新製品等を宣伝する広告情報である。
【0024】
情報表示部4は、実施形態1では、情報9を破線で表示しているが、本発明ではこれに限定されず、情報9を、例えば、破線も含む図形、色彩、写真、文字、コードから選択される一種または二種以上を用いて表示してもよい。ここで、情報9を表示する図形は、例えば、目印情報9-1のように、搬送トレイ1を用いる使用者が一目見て感覚的に情報9を理解可能な図形が使用される。また、情報9を表示する色彩は、例えば、搬送トレイ1を用いる使用者にとって有用性の高いものほど目立つ色彩が使用される。搬送トレイ1を用いる使用者にとっての有用性は、例えば、使用者が搬送トレイ1に収容するデバイスチップ203について実施する作業に対する関連性である。また、情報9を表示する写真は、例えば、搬送トレイ1を用いる使用者にとって理解すべき情報9の見本等をわかりやすく表現する写真が使用される。情報9を表示する写真は、撮像したままの生写真でもよいし、情報9をわかりやすく表現するために適宜加工した写真(画像)でもよい。また、情報9を表示する文字は、例えば、搬送トレイ1を用いる使用者にとって理解すべき情報9の要点を端的に表現する文字が使用される。また、コードは、記号でもよく、所定の読み取り機で読み取ることで情報9を読み取るバーコードやQRコード(登録商標)に例示される2次元コード等も含む。コードに含まれる記号は、上記の図形と同様に、搬送トレイ1を用いる使用者が一目見て感覚的に情報9を理解可能な記号が使用されてもよいし、上記の文字と同様に、搬送トレイ1を用いる使用者にとって理解すべき情報9の要点を端的に表現する記号が使用されてもよい。
【0025】
情報表示部4は、加熱又は冷却、磁気の印加、紫外線の照射、接触等の物理的な外的刺激によって、情報9を書き換え可能な所謂リライト機能を有するものでもよい。このような場合、情報表示部4は、所定の情報書き換え器によってデバイス支持部6越しまたは粘着層3越しに消去及び印刷する情報9に応じた外的刺激が加えられることにより、先に表示されていた情報9が消去され、新たな情報9が印刷されることにより、情報9が書き換えられる。
【0026】
次に、本明細書は、実施形態1に係る搬送トレイ1に収容されるデバイスチップ203について説明する。
図3は、
図1の搬送トレイ1に収容されるデバイスチップ203を製造する加工装置100を示す斜視図である。加工装置100は、
図3に示すように、被加工物200を加工してデバイスチップ203を製造する装置であり、保持テーブル110と、加工ユニット120と、撮像ユニット130と、X軸方向移動ユニット141と、Y軸方向移動ユニット142と、Z軸方向移動ユニット143と、制御ユニット150と、を備える。
【0027】
加工装置100によって、実施形態1に係る搬送トレイ1に収容されるデバイスチップ203に加工される被加工物200は、
図3に示すように、平面形状が矩形の平板状に形成されている。被加工物200は、実施形態1では、
図3に示すように、CSP(Chip Size Package)やQFN(Quad Flat Non-leaded Package)等のように、複数の半導体チップを樹脂で封止して構成された所謂パッケージ基板である。被加工物200の表面201には、格子状に複数の分割予定ライン202が形成されており、分割予定ライン202によって区画された各領域に半導体チップが搭載されている。被加工物200は、
図3に示す加工装置100によって分割予定ライン202が切削されて、個々のデバイスチップ203に分割される。
【0028】
保持テーブル110は、矩形状に形成され、かつ被加工物200を保持する保持面111を備える。保持面111は、被加工物200及びデバイスチップ203を吸引するための吸引口112と、切削ブレード21を逃がすための逃がし溝113とを設けている。吸引口112は、デバイスチップ203と重なる位置に設けられかつ保持面111に開口している。逃がし溝113は、分割予定ライン202に対応する位置に設けられかつ保持面111から凹に形成されている。
【0029】
保持テーブル110は、吸引口112が図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源により吸引口112が吸引されることで、被加工物200を保持面111に吸引、保持する。また、保持テーブル110は、X軸方向移動ユニット141により加工送り方向であるX軸方向に移動自在で、図示しない回転駆動源によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられている。
【0030】
加工ユニット120は、被加工物200を切削加工するものであり、保持テーブル110に保持された被加工物200を切削する切削ブレード121を装着するスピンドル122を備える。切削ブレード121は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。スピンドル122は、切削ブレード121を回転させることで被加工物200を切削する。加工ユニット120のスピンドル122及び切削ブレード121の軸心は、Y軸方向と平行に設定されている。加工装置100は、
図3に示すように、加工ユニット120を2つ備えた、即ち、2スピンドルのダイサ、いわゆるフェイシングデュアルタイプの切削装置である。
【0031】
加工ユニット120は、保持テーブル110に保持された被加工物200に対して、Y軸方向移動ユニット142により割り出し送り方向であるY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸方向移動ユニット143により切り込み送り方向であるZ軸方向に移動自在に設けられている。加工ユニット120は、Y軸方向移動ユニット142及びZ軸方向移動ユニット143により、保持テーブル110の保持面111の任意の位置に切削ブレード121を位置付け可能となっている。加工ユニット120は、Y軸方向移動ユニット142及びZ軸方向移動ユニット143によりY軸方向及びZ軸方向に移動されることによって、X軸方向移動ユニット141によりX軸方向に移動される保持テーブル110に保持された被加工物200を分割予定ライン202に沿って切削して、被加工物200を複数のデバイスチップ203に分割する。
【0032】
撮像ユニット130は、実施形態1では、一方の加工ユニット120に取り付けられて、一方の加工ユニット120と一体に移動する。撮像ユニット130は、保持テーブル110に保持された加工前及び加工後の被加工物200を撮像する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニット130は、保持テーブル110に保持された被加工物200を撮像して、被加工物200と切削ブレード121との位置合わせを行なうアライメントを遂行するための画像を得、得た画像を制御ユニット150に出力する。撮像ユニット130は、保持テーブル110に保持された被加工物200を撮像して、被加工物200に形成された切削溝等の加工痕の品質を確認するカーフチェックを遂行するための画像を得、得た画像を制御ユニット150に出力する。
【0033】
制御ユニット150は、加工装置100の各構成要素の動作を制御して、被加工物200を切削加工して複数のデバイスチップ203を製造するための各種処理を加工装置100に実施させる。制御ユニット150は、実施形態1では、コンピュータシステムを含む。制御ユニット150が含むコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニット150の演算処理装置は、制御ユニット150の記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、加工装置100を制御するための制御信号を、制御ユニット150の入出力インターフェース装置を介して加工装置100の各構成要素に出力する。
【0034】
搬送トレイ1を用いる使用者は、加工装置100により被加工物200を切削加工して製造したデバイスチップ203を加工装置100から取り出し、搬送トレイ1のデバイス支持部6上の粘着層3に貼着することで、デバイスチップ203を搬送トレイ1の粘着層3上に仮固定する。なお、搬送トレイ1を用いる使用者は、デバイスチップ203の表面201側を粘着層3に貼着してもよいし、デバイスチップ203の表面201とは反対側の裏面204側を粘着層3に貼着してもよい。搬送トレイ1を用いる使用者は、このようにデバイスチップ203を搬送トレイ1の粘着層3上に仮固定する際に、搬送トレイ1の情報表示部4に表示された情報9を粘着層3越しに目視して取得する。実施形態1では、搬送トレイ1は、情報表示部4に、搬送トレイ1に仮固定するデバイスチップ203の固定位置を示す目印情報9-1が表示されているので、搬送トレイ1を用いる使用者は、目印情報9-1を目視で確認しながら、デバイスチップ203を搬送トレイ1の粘着層3上の正確な位置に仮固定することができる。
【0035】
次に、本明細書は、実施形態1に係る搬送トレイの製造方法の処理の一例を図面に基づいて説明する。
図4は、実施形態1に係る搬送トレイの製造方法の処理の手順の一例を示すフローチャートである。実施形態1に係る搬送トレイの製造方法は、実施形態1に係る搬送トレイ1を製造する方法であり、
図4に示すように、トレイ準備ステップ1001と、情報表示部配置ステップ1002と、樹脂層被覆ステップ1003と、を備える。
【0036】
トレイ準備ステップ1001は、デバイスチップ203を収容するトレイ本体2を準備するステップである。情報表示部配置ステップ1002は、トレイ準備ステップ1001で準備したトレイ本体2のデバイス支持部6の底面6-1に、情報9を表示する情報表示部4を、情報9を表示している側を底面6-1とは反対側の上方に向けて配置するステップである。
【0037】
樹脂層被覆ステップ1003は、情報表示部配置ステップ1002で配置した情報表示部4の情報9を表示している側の上面に、複数のデバイスチップ203を貼着して仮固定する粘着力があり、なおかつ、可視光を透過する樹脂層を被覆することにより、樹脂層で構成される粘着層3を形成するステップである。樹脂層被覆ステップ1003では、デバイス支持部6の底面6-1と情報表示部4との上方を覆うように、かつ、露出面が平坦になるように、粘着層3を形成する。
【0038】
以上のような構成を有する実施形態1に係る搬送トレイ1及び搬送トレイの製造方法は、搬送トレイ1のデバイスチップ203を仮固定する粘着層3越しに、搬送トレイ1を用いる使用者にとって有用な情報9が搬送トレイ1を用いる使用者に視認可能に情報表示部4に表示されている。このため、実施形態1に係る搬送トレイ1及び搬送トレイの製造方法は、搬送トレイ1を用いる使用者が、搬送トレイ1を使用する際に、使用者にとって有用な情報9を取得することができるという作用効果を奏する。また、搬送トレイ1及び搬送トレイの製造方法は、搬送トレイ1の粘着層3がデバイス支持部6上に露出しており、デバイス支持部6上の露出面が平坦に形成されているので、搬送トレイ1へデバイスチップ203を固定する作業が情報表示部4によって妨げられないという作用効果を奏する。
【0039】
また、実施形態1に係る搬送トレイ1及び搬送トレイの製造方法は、情報表示部4が、仮固定するデバイスチップ203の固定位置を示す目印情報9-1を表示している。このため、実施形態1に係る搬送トレイ1及び搬送トレイの製造方法は、搬送トレイ1を用いる使用者が、目印情報9-1を目視で確認しながら、デバイスチップ203を搬送トレイ1の粘着層3上の正確な位置に仮固定することができるという作用効果を奏する。
【0040】
また、実施形態1に係る搬送トレイ1及び搬送トレイの製造方法は、情報表示部4が、情報9を図形、色彩、写真、文字、コード等で表示してもよい。このため、実施形態1に係る搬送トレイ1及び搬送トレイの製造方法は、搬送トレイ1を用いる使用者が、情報9を一目見るだけで感覚的に容易に理解したり、使用者にとってより有用な情報9をより確実に取得したり、所定の読み取り機で容易により詳細な情報9を読み取ったりすることができるという作用効果を奏する。
【0041】
また、実施形態1に係る搬送トレイ1及び搬送トレイの製造方法は、情報表示部4が、外的刺激によって情報9を書き換え可能であってもよい。このため、実施形態1に係る搬送トレイ1及び搬送トレイの製造方法は、搬送トレイ1を収容するデバイスチップ203の種類やデバイスチップ203に関する工程等に応じて情報9を変更することにより、様々な種類のデバイスチップ203を収容可能なデバイス支持部6上に仕切りのない搬送トレイ1の使用の自由度を高めることができるという作用効果を奏する。
【0042】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る搬送トレイ1-2を説明する。
図5は、実施形態2に係る搬送トレイ1-2の構成例を示す斜視図である。
図5は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
実施形態2に係る搬送トレイ1-2は、実施形態1に係る搬送トレイ1において、情報表示部4に表示されている情報9を目印情報9-1からデバイスチップ203の製造情報9-2に変更したものであり、その他の構成は実施形態1に係る搬送トレイ1と同様である。製造情報9-2は、
図5に示す例では、搬送トレイ1-2に収容するデバイスチップ203の現在の製造工程と、次の製造工程と、両工程間で使用者が実行する作業を実施する旨の指示情報と、の要点を文字列で端的に示した工程情報である。
【0044】
以上のような構成を有する実施形態2に係る搬送トレイ1-2及び搬送トレイ1-2を製造する搬送トレイの製造方法は、情報9が目印情報9-1であることによるものを除き、実施形態1と同様の作用効果を奏するものとなる。さらに、実施形態2に係る搬送トレイ1-2及び搬送トレイ1-2を製造する搬送トレイの製造方法は、情報表示部4がデバイスチップ203の製造情報9-2の工程情報を表示しているので、搬送トレイ1-2を用いる使用者が、製造情報9-2を目視で確認することで使用者が搬送トレイ1-2に収容して取り扱っているデバイスチップ203の製造工程上の位置と現在の工程後に使用者が実行する作業内容とを正確に理解できるという作用効果を奏する。これにより、実施形態2に係る搬送トレイ1-2及び搬送トレイ1-2を製造する搬送トレイの製造方法は、搬送トレイ1-2を用いる使用者の工程上の作業ミスを低減したり、作業効率を向上したりできるという作用効果を奏する。
【0045】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係る搬送トレイ1-3を説明する。
図6は、実施形態3に係る搬送トレイ1-3の構成例を示す斜視図である。
図6は、実施形態1、2と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
実施形態3に係る搬送トレイ1-3は、実施形態1に係る搬送トレイ1において、情報表示部4に表示されている情報9を目印情報9-1からデバイスチップ203の製造情報9-3に変更したものであり、その他の構成は実施形態1に係る搬送トレイ1と同様である。製造情報9-3は、
図6に示す例では、搬送トレイ1-3に収容するデバイスチップ203を製造する工場の上面から見た地図を図形や文字を組み合わせて示した工場情報である。
【0047】
以上のような構成を有する実施形態3に係る搬送トレイ1-3及び搬送トレイ1-3を製造する搬送トレイの製造方法は、情報9が目印情報9-1であることによるものを除き実施形態1と同様の作用効果を奏するものとなる。さらに、実施形態3に係る搬送トレイ1-3及び搬送トレイ1-3を製造する搬送トレイの製造方法は、情報表示部4がデバイスチップ203の製造情報9-3の工場情報を表示しているので、搬送トレイ1-3を用いる使用者が、製造情報9-3を目視で確認することで使用者が搬送トレイ1-3に収容して取り扱っているデバイスチップ203を製造する工場内の各工程を実施する装置や、仕掛品や製品を収納する棚のレイアウト情報を正確に理解できるという作用効果を奏する。これにより、実施形態3に係る搬送トレイ1-3及び搬送トレイ1-3を製造する搬送トレイの製造方法は、搬送トレイ1-3を用いる使用者の工場内の移動ミスを低減したり、移動効率を向上したりできるという作用効果を奏する。
【0048】
〔実施形態4〕
本発明の実施形態4に係る搬送トレイ1-4を説明する。
図7は、実施形態4に係る搬送トレイ1-4の構成例を示す斜視図である。
図7は、実施形態1~3と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
実施形態4に係る搬送トレイ1-4は、実施形態1に係る搬送トレイ1において、情報表示部4に表示されている情報9を目印情報9-1からデバイスチップ203の製造情報9-4に変更したものであり、その他の構成は実施形態1に係る搬送トレイ1と同様である。製造情報9-4は、
図7に示す例では、搬送トレイ1-4に収容するデバイスチップ203の限度見本を写真(画像)や文字を組み合わせて示した品質情報である。製造情報9-4は、
図7に示す例では、デバイスチップ203を切削加工する際に生じたチッピングの限度見本を示している。
【0050】
以上のような構成を有する実施形態4に係る搬送トレイ1-4及び搬送トレイ1-4を製造する搬送トレイの製造方法は、情報9が目印情報9-1であることによるものを除き実施形態1と同様の作用効果を奏するものとなる。さらに、実施形態4に係る搬送トレイ1-4及び搬送トレイ1-4を製造する搬送トレイの製造方法は、情報表示部4がデバイスチップ203の製造情報9-4の品質情報を表示しているので、搬送トレイ1-4を用いる使用者が、製造情報9-4を目視で確認することで使用者が搬送トレイ1-4に収容して取り扱っているデバイスチップ203が限度見本に基づいて品質が合格しているか否かを判断できるという作用効果を奏する。これにより、実施形態4に係る搬送トレイ1-4及び搬送トレイ1-4を製造する搬送トレイの製造方法は、搬送トレイ1-4を用いる使用者が効率よくデバイスチップ203の品質の合否が判別でき、例えばデバイスチップ203の不合格品を搬送トレイ1-4の特定の領域に分けて収容する場合には適切に分けて収容することができ、後工程を実施する前に取り除く必要がある場合には適切に取り除くことができるという作用効果を奏する。
【0051】
〔実施形態5〕
本発明の実施形態5に係る搬送トレイ1-5を説明する。
図8は、実施形態5に係る搬送トレイ1-5の構成例を示す斜視図である。
図8は、実施形態1~4と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
実施形態5に係る搬送トレイ1-5は、実施形態1に係る搬送トレイ1において、情報表示部4に表示されている情報9を目印情報9-1からデバイスチップ203の製造情報9-5に変更したものであり、その他の構成は実施形態1に係る搬送トレイ1と同様である。製造情報9-5は、
図8に示す例では、搬送トレイ1-5に収容するデバイスチップ203の製造において所定の装置に入力が必要な情報を2次元コードで示した入力情報である。
【0053】
以上のような構成を有する実施形態5に係る搬送トレイ1-5及び搬送トレイ1-5を製造する搬送トレイの製造方法は、情報9が目印情報9-1であることによるものを除き実施形態1と同様の作用効果を奏するものとなる。さらに、実施形態5に係る搬送トレイ1-5及び搬送トレイ1-5を製造する搬送トレイの製造方法は、情報表示部4がデバイスチップ203の製造情報9-5の入力情報を表示しているので、搬送トレイ1-5を用いる使用者が、所定の読み取り機で製造情報9-5を読み取る作業を実施することで、使用者が搬送トレイ1-5に収容して取り扱っているデバイスチップ203の製造において所定の装置に入力が必要な製造情報9-5を容易に効率よく入力できるという作用効果を奏する。
【0054】
また、実施形態1から実施形態5では、搬送トレイ1~1-5の情報表示部4に表示されている情報9が目印情報9-1、製造情報9-2~9-5である例を説明したが、本発明ではこれに限定されない。例えば、搬送トレイ1の情報表示部4に表示されている情報9がデバイスチップ203の仕様やサイズを示す型番や、製造のロット番号、または品質の合否などの種類情報である場合、この搬送トレイ1及びこの搬送トレイ1を製造する搬送トレイの製造方法は、この搬送トレイ1を用いる使用者が、種類情報を目視で確認することで、使用者がこの搬送トレイ1に収容して取り扱っているデバイスチップ203の仕様を容易に確認でき、例えばデバイスチップ203の仕様に応じた工程を実施しているか否か等を容易に確認できるという作用効果を奏する。また、搬送トレイ1の情報表示部4に表示されている情報9がデバイスチップ203や使用者に関する広告情報である場合、この搬送トレイ1及びこの搬送トレイ1を製造する搬送トレイの製造方法は、この搬送トレイ1を用いる使用者が、広告情報を目視で容易に確認できるという作用効果を奏する。
【0055】
〔実施形態6〕
本発明の実施形態6に係る搬送トレイ1-6を説明する。
図9は、実施形態6に係る搬送トレイ1-6の構成例を示す断面図である。
図9は、実施形態1~5と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
実施形態6に係る搬送トレイ1-6は、実施形態1に係る搬送トレイ1において、情報表示部4を携帯端末10に変更したものであり、その他の構成は実施形態1に係る搬送トレイ1と同様である。
【0057】
携帯端末10は、
図9に示すように、実施形態1~5の情報表示部4と同様に、デバイス支持部6の底面6-1と粘着層3の下面との間に配置されている。携帯端末10は、
図9に示すように、画面4-6と、制御ユニット15とを備える。携帯端末10は、実施形態1~5の情報表示部4と同様に、情報9を表示する画面4-6が搬送トレイ1-6の上面側に向けられて配置されている。画面4-6は、制御ユニット15からの制御に従い、実施形態1~5と同様の情報9を表示する。このように、携帯端末10の画面4-6は、実施形態1~5の情報表示部4と同様の機能を実現する。
【0058】
携帯端末10は、実施形態1~5の情報表示部4と同様に、紙、カード、シート、薄板等のような水平方向に延びる薄い形状を有している。携帯端末10は、高機能携帯電話(いわゆる、スマートフォン)を含む携帯電話機、及び、タブレット端末が例示される。携帯端末10の制御ユニット15は、加工装置100の制御ユニット150と同様のコンピュータシステムを含み、CPUのようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM又はRAMのようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニット15の演算処理装置は、制御ユニット15の記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、携帯端末10を制御するための制御信号を、制御ユニット15の入出力インターフェース装置を介して携帯端末10の各構成要素に出力する。
【0059】
携帯端末10は、不図示の外部機器と無線で情報通信可能に接続されている。携帯端末10の制御ユニット15は、この外部機器から情報9を受信し、画面4-6に表示させることができる。搬送トレイ1-6は、例えば、加工装置100を含むデバイスチップ203の工場の管理者が外部機器に情報9を入力することにより、携帯端末10の制御ユニット15が情報9を受信して画面4-6に表示させることにより、画面4-6に表示させている情報9を書き換えることができる。搬送トレイ1-6は、また、工場の管理者が外部機器に情報9を入力することにより、画面4-6に情報9を表示させることで、搬送トレイ1-6を通じて搬送トレイ1-6を用いる使用者に遠隔で情報9を伝達することを可能にする。
【0060】
また、携帯端末10は、GPS(Global Positioning System)と無線で情報通信可能に接続されており、GPSを利用して携帯端末10の位置情報を取得し、不図示の外部機器に送信することができる。搬送トレイ1-6は、例えば、加工装置100を含むデバイスチップ203の工場の管理者が外部機器から携帯端末10の位置情報を取得することにより、搬送トレイ1-6の位置情報を取得して、搬送トレイ1-6の位置を管理し、記録できる。このため、工程内での位置を確認できたり、デバイスチップ203を収容して出荷した搬送トレイ1-6の位置を追跡することを可能にする。
【0061】
以上のような構成を有する実施形態6に係る搬送トレイ1-6及び搬送トレイ1-6を製造する搬送トレイの製造方法は、実施形態1に係る搬送トレイ1において、情報表示部4を携帯端末10の画面4-6に変更したものであるので、外部機器を通じて携帯端末10に情報9を入力することで、より容易に、情報9を書き換えたり、遠隔で情報9を伝達したり、搬送トレイ1-6の位置情報を取得したりすることができるという作用効果を奏する。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0063】
1,1-2,1-3,1-4,1-5,1-6 搬送トレイ
3 粘着層
4 情報表示部
4-6 画面
9 情報
9-1 目印情報
9-2,9-3,9-4,9-5 製造情報
10 携帯端末
203 デバイスチップ