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▶ ハウス食品株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189446
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】ルウ及び冷凍ソース
(51)【国際特許分類】
   A23L 23/10 20160101AFI20221215BHJP
【FI】
A23L23/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098021
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100196405
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 邦光
(72)【発明者】
【氏名】生貝 達也
(72)【発明者】
【氏名】川波 克明
(72)【発明者】
【氏名】高澤 夢
【テーマコード(参考)】
4B036
【Fターム(参考)】
4B036LE03
4B036LF03
4B036LF05
4B036LG02
4B036LH11
4B036LH12
4B036LH13
4B036LH22
4B036LH29
4B036LH38
4B036LK01
4B036LK03
4B036LP01
4B036LP14
4B036LP17
4B036LP24
(57)【要約】
【課題】本発明は、割りやすさが改善された冷凍ソースを調製するためのルウを提供することを目的としている。
【解決手段】本発明のルウは、常温で固体の油脂(第1の油脂)と、常温で液体又は半固体の油脂(第2の油脂)と、澱粉質原料とを含んでいる。前記第1の油脂及び前記第2の油脂を組み合わせてルウに配合することにより、当該ルウから調製した冷凍ソースの割りやすさを改善することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で固体の油脂(第1の油脂)と、常温で液体又は半固体の油脂(第2の油脂)と、澱粉質原料とを含むルウ。
【請求項2】
前記第1の油脂及び前記第2の油脂の配合量が、質量比で80:20~99.5:0.5である、請求項1に記載のルウ。
【請求項3】
固形ルウの形態である、請求項1又は2に記載のルウ。
【請求項4】
前記第2の油脂の融点が、45℃未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載のルウ。
【請求項5】
増粘多糖類、加工澱粉、及び/又は繊維質原料をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のルウ。
【請求項6】
厚さ1cmで冷凍したときに素手で割ることが可能なソースを調製するための、請求項1~5のいずれか1項に記載のルウ。
【請求項7】
前記ソースが、具材及び液部を含み、
前記液部が、前記ソースの全質量に対して40質量%未満である、請求項6に記載のルウ。
【請求項8】
常温で固体の油脂(第1の油脂)と、常温で液体又は半固体の油脂(第2の油脂)と、澱粉質原料とを含み、具材及び液部を含む冷凍ソースであって、
前記液部が、前記冷凍ソースの全質量に対して40質量%未満であり、
素手で割ることが可能なものである、冷凍ソース。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載のルウを使用して調製されたものである、請求項8に記載の冷凍ソース。
【請求項10】
冷凍ソースを製造する方法であって、
請求項1~7のいずれか1項に記載のルウを使用して、具材及び液部を含むソースを調製する工程と、
前記ソースを冷凍する工程と
を含み、前記液部が、前記ソースの全質量に対して40質量%未満である、方法。
【請求項11】
前記冷凍ソースが、素手で割ることが可能なものである、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルウ及び冷凍ソースに関しており、特に素手で割ることが可能な冷凍ソースを調製するためのルウに関している。
【背景技術】
【0002】
カレー、シチュー、及びハヤシライスソースなどの具材入りのソースを調理するための調理材料としてルウが用いられている。一般に、ルウの特性は、使用する原料の種類及び量だけでなく、配合順序や熱処理方法などの様々な条件によって変化するので、例えば特許文献1~4に記載されているように、ルウの風味を向上させるために、その製造方法に関して多くの研究が行われてきた。また、特許文献5には、常温で固体の特定の油脂を2種類配合することでひび割れの少ない固形ルウが得られる旨が記載されている。一方、常温で固体の油脂と常温で液体又は半固体の油脂とを含むルウや、冷凍ソースを調理するのに適したルウは、特許文献1~5のいずれにも記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3229838号公報
【特許文献2】特許第3229839号公報
【特許文献3】特許第3276884号公報
【特許文献4】特許第3670986号公報
【特許文献5】特開2009-81999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
平日の食事の用意を効率化するために、休日に作り置き用のおかずをまとめて調理して冷凍保存することがあるが、調理したソースを凍らせると、素手で割るには硬くなりすぎてしまうため、冷凍しておいたソースを必要な分だけ割って解凍することは難しかった。そこで、本発明は、割りやすさが改善された冷凍ソースを調製するためのルウを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、常温で固体の油脂と、常温で液体又は半固体の油脂とを組み合わせてルウに配合すると、当該ルウから調製した冷凍ソースが、常温で液体の油脂も半固体の油脂も含まないルウから調製した冷凍ソースと比較して割りやすいものとなることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下に示すルウ、並びに、冷凍ソース及びその製造方法を提供するものである。
〔1〕常温で固体の油脂(第1の油脂)と、常温で液体又は半固体の油脂(第2の油脂)と、澱粉質原料とを含むルウ。
〔2〕前記第1の油脂及び前記第2の油脂の配合量が、質量比で80:20~99.5:0.5である、前記〔1〕に記載のルウ。
〔3〕固形ルウの形態である、前記〔1〕又は〔2〕に記載のルウ。
〔4〕前記第2の油脂の融点が、45℃未満である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のルウ。
〔5〕増粘多糖類、加工澱粉、及び/又は繊維質原料をさらに含む、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載のルウ。
〔6〕厚さ1cmで冷凍したときに素手で割ることが可能なソースを調製するための、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載のルウ。
〔7〕前記ソースが、具材及び液部を含み、
前記液部が、前記ソースの全質量に対して40質量%未満である、前記〔6〕に記載のルウ。
〔8〕常温で固体の油脂(第1の油脂)と、常温で液体又は半固体の油脂(第2の油脂)と、澱粉質原料とを含み、具材及び液部を含む冷凍ソースであって、
前記液部が、前記冷凍ソースの全質量に対して40質量%未満であり、
素手で割ることが可能なものである、冷凍ソース。
〔9〕前記〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載のルウを使用して調製されたものである、前記〔8〕に記載の冷凍ソース。
〔10〕冷凍ソースを製造する方法であって、
前記〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載のルウを使用して、具材及び液部を含むソースを調製する工程と、
前記ソースを冷凍する工程と
を含み、前記液部が、前記ソースの全質量に対して40質量%未満である、方法。
〔11〕前記冷凍ソースが、素手で割ることが可能なものである、前記〔10〕に記載の方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明に従えば、常温で固体の油脂と、常温で液体又は半固体の油脂とを組み合わせてルウに配合することにより、当該ルウから調製した冷凍ソースの割りやすさを改善することができる。したがって、各種ソースを作り置き用のおかずとして冷凍したときに、必要な分量だけ素手で割って解凍することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のルウは、常温で固体の油脂(第1の油脂)と、常温で液体又は半固体の油脂(第2の油脂)と、澱粉質原料とを含んでいる。本明細書に記載の「ルウ」とは、カレー、シチュー、ハヤシライスソース、ハッシュドビーフ、スープ、及びその他各種ソースを調理する際に使用する調理材料のことをいう。前記ルウを、肉や野菜などの食材を水と一緒に煮込んだところに投入することで、各料理を手軽に作ることができる。前記ルウの形態は、当技術分野で通常採用されるものであれば特に限定されないが、例えば、ブロック状(固形ルウ)、フレーク状、顆粒状、粉状、又はペースト状のいずれであってもよい。
【0008】
本明細書に記載の「澱粉質原料」とは、澱粉を主成分とする食品原料のことをいう。前記澱粉質原料は、前記ルウを製造することができる限り特に限定されないが、例えば、小麦澱粉、コーンスターチ、米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、くず澱粉、及び加工澱粉などの澱粉、並びに、小麦粉、コーンフラワー、米粉、ライ麦粉、蕎麦粉、あわ粉、きび粉、はと麦粉、及びひえ粉などの穀粉などからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。前記澱粉質原料は、前記油脂の一部と一緒に予め加熱して、いわゆる小麦粉ルウなどの事前加熱混合物の形態としてから、他の原料と混合してもよい。前記澱粉質原料の配合量は、特に限定されないが、例えば、前記ルウの全質量に対して、約5~約40質量%であってもよく、好ましくは約10~約35質量%であり、さらに好ましくは約15~約30質量%である。
【0009】
本明細書に記載の「油脂」とは、食用に供される天然油脂又は加工油脂などの油脂のことをいい、前記第1の油脂は、常温で固体のものである。前記第1の油脂としては、当技術分野で通常使用されるものを特に制限されることなく採用することができるが、例えば、前記第1の油脂は、バター、牛脂、及び豚脂などの動物油脂、マーガリン、パーム油、ココナッツ油、及びココアバター油などの植物油脂、これら動物油脂若しくは植物油脂、あるいは菜種油、綿実油、若しくはコーン油などの硬化油脂、又はこれらの混合油脂などを含んでもよい。前記第1の油脂の配合量は、特に限定されないが、例えば、前記ルウの全質量に対して、約10質量%以上であってもよく、好ましくは約15~約45質量%であり、さらに好ましくは約20~約40質量%である。
【0010】
前記第2の油脂は、常温で液体又は半固体のものであり、すなわち常温で流動性を有するものである。前記第2の油脂の融点は、常温で液体又は半固体である限り特に限定されないが、例えば、約45℃未満である。前記第2の油脂としては、当技術分野で通常使用されるものを特に制限されることなく採用することができるが、例えば、前記第2の油脂は、菜種白絞油、調製ラード(流動状)、グレープシードオイル、椿油、こめ油、サラダ油、紅花油、オリーブ油、又はごま油などを含んでもよい。前記第2の油脂の配合量は、特に限定されないが、例えば、前記第1の油脂及び前記第2の油脂の配合量が、質量比で約80:20~約99.5:0.5、好ましくは約90:10~約99:1、さらに好ましくは約94:6~約98:2となるような量である。
【0011】
前記第1の油脂及び前記第2の油脂を組み合わせて含むルウを使用することにより、冷凍した場合に素手で割ることが可能なソースを調製することができる。すなわち、本発明のルウは、素手で割ることが可能な冷凍ソースを調製するのに適したものである。ここで、「素手で割ることが可能」とは、20代から40代の標準的な握力及び腕力を有する女性が、冷凍したソースを素手で折り曲げることによって割ることができることをいい、冷凍ソースの強度又は脆さを表している。本明細書に記載の「ソース」とは、具材及び液部を含むペースト状又は液体状の流動物のことをいう。前記具材は、牛肉、豚肉、鶏肉、ニンジン、タマネギ、ジャガイモ、トマト、トマト、ピーマン、長ネギ、パプリカ、ナス、オクラ、しめじ、まいたけ、インゲン、ひよこ豆、及び青エンドウなどからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。前記具材の形状は、特に制限されないが、粒状である方がソースを冷凍した際に割りやすくなるため好ましい。粒状具材としては、牛肉、豚肉、又は鶏肉などのひき肉、並びに、ニンジン、タマネギ、ジャガイモ、トマト、ピーマン、長ネギ、パプリカ、ナス、オクラ、しめじ、まいたけ、インゲン、ひよこ豆、又は青エンドウなどをみじん切りしたものが挙げられる。粒状具材の粒径は、特に限定されないが、例えば、約1cm未満であってもよく、好ましくは約7mm未満である。ある態様では、前記ルウは、厚さ1cmで冷凍したときに素手で割ることが可能なソースを調製するためのものである。なお、前記第1の油脂及び澱粉質原料を含み、前記第2の油脂を含まないルウから調製したソースに前記第2の油脂を添加しても、当該ソースを冷凍したときの割りやすさは向上しない。
【0012】
本発明のルウを用いて調製されるソースの種類は、特に限定されないが、例えば、キーマカレー、タコライス、ミートソース、ガパオライス、又はチリコンカンなどのソース(具材を煮込んだ調理品)であってもよい。ある態様では、前記ルウは、各種ソース又は当該ソースを含む種々の調理品を作製するためのメニュー用調味料(複数の調味料を予め配合し、目的の惣菜を調理するために使用される合わせ調味料)中に配合してもよい。
【0013】
前記ソースの液部の質量は、特に限定されないが、当該ソースの全質量に対して約40質量%未満であってもよく、好ましくは約35質量%未満である。また、前記ソースに含まれる具材(又は粒状具材)の質量は、特に限定されないが、当該ソースの全質量に対して約60質量%以上であってもよく、好ましくは約65質量%以上である。前記ソースの液部の質量又は具材の質量がこのような範囲にあると、前記液部が凍結しても連続層が形成されにくいため、素手での割りやすさがさらに向上し得る。なお、前記ソースの具材の質量は、調製したソースをザルで濾してお湯で洗浄し、ザルの上に残った固体部の質量を測定することで求めることができ、前記ソースの液部の質量は、当該ソース全体の質量からその中の具材の質量を差し引くことで求めることができる。
【0014】
特定の理論により拘束されるものではないが、ルウの製造時に前記第2の油脂を添加すると、そのルウの中に前記第2の油脂が均一に分散し、当該ルウで調理したソースにおいても前記第2の油脂が良好に分散するので、当該ソースを凍結したときの強度が低下すると考えられる。より具体的に説明すると、一般に澱粉質原料及び具材を含むソースにおいては、調理後の経時変化及び冷凍過程により、当該澱粉質原料及び具材が抱え込んでいた水分がソースの液部に放出されてしまう(離水が起きてしまう)。この状態のソースを冷凍した場合、水分子の結合により強固な連続層が前記液部で形成されるため、凍結物は強く力をいれても素手では割れにくくなる。また、同様に融点の高い油脂分子の結合により形成される連続層が存在することも凍結物の割れにくさの一因となっている。ここで、強固な連続層の間に比較的融点の低い前記第2の油脂が良好に分散していると、前記液部の連続層形成が抑制されて凍結物が脆くなり、当該凍結物は弱い力でも容易に割れるものになると考えられる。なお、調理後のソースはほとんどが水分であるし具材も含んでいるため、そこに前記第2の油脂を添加しても、当該ソース中に容易には分散せず、冷凍時の液部の連続層形成を効果的に抑制することはできないと考えられる。
【0015】
ある態様では、本発明のルウは、増粘多糖類、加工澱粉、及び/又は繊維質原料をさらに含んでもよい。これらがルウに含まれていると、当該ルウから調製した冷凍ソースが、より素手で割りやすいものとなる。本明細書に記載の「増粘多糖類」とは、水に溶解すると粘性を示したりゲル化したりする多糖類のことをいう。前記増粘多糖類としては、前記ルウを製造することができる限り特に限定されず、食品分野において通常用いられるものを適宜採用することができるが、例えば、前記増粘多糖類は、キサンタンガム、ウェランガム、グアガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、カラギーナン、アラビアガム、及びローカストビーンガムなどからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。前記増粘多糖類の配合量は、特に限定されないが、例えば、前記ルウの全質量に対して、約0.02質量%以上であってもよく、好ましくは約0.03~約3質量%である。特定の理論により拘束されるものではないが、前記増粘多糖類がソースの前記液部に溶解していると、前記澱粉質原料及び前記具材からの離水が抑制されて、当該液部の連続層形成が抑制されるため、前記ルウから調製されるソースの割りやすさをさらに向上することができると考えられる。
【0016】
本明細書に記載の「加工澱粉」とは、化学的処理、物理的処理、又は酵素的処理などの加工を施された澱粉のことをいい、これは未加工の澱粉と比較して、膨潤性及び/又は粘度付与特性などが向上していて、離水を起こしにくい。前記加工澱粉としては、当技術分野で通常使用されるものを特に制限されることなく採用することができるが、例えば、前記加工澱粉は、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉、α化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、リン酸架橋澱粉、多孔質化澱粉、及びオクテニルコハク酸澱粉ナトリウムなどからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。特定の理論により拘束されるものではないが、前記加工澱粉を前記ルウに配合すると、離水の原因となり得る前記澱粉質原料の使用量を抑えたり、前記ルウから調製されるソース中の水分に加えて油分も吸収して、水分子の結合により形成される連続層だけでなく、油脂分子の結合により形成される連続層の形成も抑えたりすることができるため、前記ルウから調製されるソースの割りやすさをさらに向上することができると考えられる。また、前記加工澱粉は、油分を吸収することにより、前記ルウから調製されるソースにおいて、油浮きを抑制することもできる。前記加工澱粉の配合量は、特に限定されないが、例えば、前記ルウの全質量に対して、約0.05質量%以上であってもよく、好ましくは約0.1~約10質量%である。
【0017】
前記繊維質原料としては、当技術分野で通常使用されるものを特に制限されることなく採用することができるが、例えば、前記繊維質原料は、脱脂大豆、マッシュポテト粉末、ゴマパウダー、おからパウダー、及びリンゴパルプ、並びに、カレーパウダー、ジンジャーパウダー、及びオニオンパウダーなどの香辛料などからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。特定の理論により拘束されるものではないが、前記繊維質原料を前記ルウに配合すると、前記ルウから調製されるソース中の油分を吸収して、油脂分子の結合により形成される連続層の形成を抑えることができるため、前記ルウから調製されるソースの割りやすさをさらに向上することができると考えられる。また、前記繊維質原料は、油分を吸収することにより、前記ルウから調製されるソースにおいて、油浮きを抑制することもできる。前記繊維質原料の配合量は、特に限定されないが、例えば、前記ルウの全質量に対して、約1~約25質量%であってもよく、好ましくは約3~約20質量%である。
【0018】
本発明のルウは、本発明の目的を損なわない限り、当技術分野で通常使用される任意の食品原料及び/又は任意の添加剤をさらに含んでもよい。また、本発明のルウは、当技術分野で通常使用される任意の方法により製造することができる。例えば、前記ルウは、前記第1の油脂と、前記第2の油脂と、前記澱粉質原料とを含む混合物を加熱して加熱処理混合物を調製し、当該加熱処理混合物に他の食品原料及び/又は添加剤を適宜添加してルウ原料混合物を調製し、当該ルウ原料混合物を加熱撹拌して溶融状のルウを調製し、そして当該溶融状のルウを冷却・固化するなどして製造してもよい。
【0019】
前記澱粉質原料が小麦粉である場合には、それから調製される加熱処理混合物は小麦粉ルウと呼ばれることもある。前記加熱処理混合物を調製するときの加熱条件は、製造するルウの種類や前記第1の油脂、前記第2の油脂、及び前記澱粉質原料の種類などに応じて適宜調整され得るものであるが、例えば、前記ルウは、前記第1の油脂と、前記第2の油脂と、前記澱粉質原料とを含む混合物を、到達品温が約70~約150℃になるように約1~約100分間昇温加熱してもよい。また、前記溶融状のルウを調製する工程の加熱条件は、製造するルウの種類や使用する原料の種類などに応じて適宜調整され得るものであるが、例えば、前記ルウ原料混合物を、到達品温が約80℃以上、好ましくは約90~約150℃になるように約1~約100分間、好ましくは約3~約75分間昇温加熱してもよい。
【0020】
別の態様では、本発明は、素手で割ることが可能な冷凍ソースにも関しており、当該ソースは、前記第1の油脂と、前記第2の油脂と、前記澱粉質原料とを含み、具材及び液部を含んでいる。前記冷凍ソースの液部の質量は、当該冷凍ソースの全質量に対して約40質量%未満であり、好ましくは約35質量%未満である。本発明の冷凍ソースは、厚さ1cmで調製したときに、20代から40代の標準的な握力及び腕力を有する女性がそれを素手で折り曲げることによって割ることができるものである。
【0021】
本発明の冷凍ソースは、本発明の目的を損なわない限り、当技術分野で通常使用される任意の食品原料及び/又は任意の添加剤をさらに含んでもよい。また、本発明の冷凍ソースは、当技術分野で通常使用される任意の方法により製造することができる。
【0022】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例0023】
〔製造例1〕
第1の油脂(常温で固体の動物性油脂)14質量部、後掲の表1に記載の第2の油脂、及び小麦粉14質量部を加熱釜に投入して加熱撹拌し、常法により小麦粉ルウを作製した。この小麦粉ルウを、後掲の表1に記載の残りの原料(第1の油脂の残りを含む)と混合し加熱処理して、溶融状のルウを作製した。この溶融状のルウを冷却して容器に充填し、さらに冷却して固化することによって、実施例1及び2並びに比較例1~3のブロック状の固形ルウを作製した。
【0024】
〔試験例1〕
牛豚合いびき肉300g、みじん切りしたタマネギ300g、サラダ油大さじ1、水100mL、及び、実施例又は比較例の固形ルウ70gを使用し、フライパンで常法により調理してキーマカレーのソースを作製した。このソースをポリエチレン製のフリーザーバッグに入れ、縦19cm、横18cm、厚さ1cmとなるように形を整えて、-18℃の冷凍庫で72時間冷凍した。そして、標準的な握力及び腕力を有する20代~40代の女性パネリスト5名が、作製した冷凍ソースを素手で折り曲げて、その割りやすさを以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
3:あまり力を入れなくても割れる
2:強く力を入れれば割れる
1:強く力を入れても割れにくい
【0025】
【表1】
【0026】
第2の油脂として常温で固体の動物性油脂(融点45℃)及び極度硬化油脂(菜種)(融点59℃)を含む比較例1~3のルウで作製したソースを冷凍庫に入れると、パネリストの女性が素手で割るのは難しいほど硬く凍ってしまっていた。キサンタンガム、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉、及び香辛料(カレーパウダー)を含む比較例2及び3では、それらを含まない比較例1よりも割りやすさが改善していたが、依然として不十分だった。一方、第2の油脂として常温で液体の菜種白絞油(融点12℃)を含む実施例1及び2のルウで作製したソースは、凍らせても素手で割ることができるものであった。特に、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉、及び香辛料(カレーパウダー)を菜種白絞油と組み合わせてルウに配合すると、当該ルウから調製された冷凍ソースは、さらに割りやすいものとなっていた。
【0027】
〔製造例2・試験例2〕
菜種白絞油に代えて、常温で半固体の調製ラード(融点35℃)、又は、常温で液体のグレープシードオイル、椿油、こめ油、又はサラダ油を第2の油脂として使用した以外は実施例2と同様にして、実施例3~7の固形ルウをそれぞれ作製した。そして、試験例1の方法と同様にして、実施例3~7の固形ルウで作製した冷凍ソースの割りやすさを評価した。その結果、いずれの冷凍ソースも素手で割ることができるものであり、各実施例の評点は、それぞれ2.2(実施例3)、3(実施例4)、3(実施例5)、3(実施例6)、及び3(実施例7)となった。
【0028】
固形ルウを用いてソースを作製するときには、大さじ1のサラダ油(比重が約0.9g/mLと仮定すると約13.5g)が使用されているが、70gの固形ルウに含まれている第2の油脂(常温で液体又は半固体の油脂)はたったの0.7gである。このようなわずかな量の油脂をソースの作製時に追加しても冷凍ソースの物性は変化しないが、それを固形ルウの成分として含ませることで冷凍ソースの割りやすさを改善できたことは、本発明の顕著な効果である。
【0029】
以上より、常温で固体の油脂と、常温で液体又は半固体の油脂とを組み合わせてルウに配合することにより、当該ルウから調製した冷凍ソースの割りやすさを改善することができることが分かった。したがって、各種ソースを作り置き用のおかずとして冷凍したときに、必要な分量だけ素手で割って解凍することが可能となる。