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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189469
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】マクロファージ老化抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/706 20060101AFI20221215BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20221215BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20221215BHJP
【FI】
A61K31/706
A61P43/00 107
A61P35/00
A61K9/127
C12N15/12 ZNA
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098060
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100140888
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 欣乃
(72)【発明者】
【氏名】和田 はるか
(72)【発明者】
【氏名】清野 研一郎
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA95
4C076CC27
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB22
4C086ZB26
(57)【要約】
【課題】良好に機能する免疫系を備える個体における腫瘍発生のメカニズムを研究し、それに基づき、癌発生及びそれに関連する症状を治療及び/又は予防するための医薬組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の組成物は、有効成分としてニコチンアミドモノヌクレオチドを含む、マクロファージの老化を抑制するための組成物であり、また、癌を治療若しくは予防する又は癌の進行を抑制する組成物である。
【選択図】図23
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてニコチンアミドモノヌクレオチドを含む、マクロファージの老化を抑制するための組成物。
【請求項2】
癌を治療若しくは予防する又は癌の進行を抑制する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記癌が、脳腫瘍、腎臓癌、すい臓癌、肺癌、乳癌、精巣癌、卵巣癌及び大腸癌からなる群より選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
マクロファージ又は癌組織を標的とする薬物送達システムを有する製剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マクロファージの老化を抑制するための組成物、及び、癌を治療又は予防するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
癌組織における癌細胞は不均一である。腫瘍開始細胞(又は癌幹細胞)の理論は、いくつかの腫瘍における癌細胞間の表現型及び機能の不均一性を説明し得る(非特許文献1)。この理論によれば、特定の腫瘍細胞(腫瘍開始細胞又は癌幹細胞)のみが腫瘍形成を開始することができる。これらの腫瘍開始細胞は多くの薬剤に対して感受性が低く、また、抵抗性が高いため、多くの患者で癌の再発の原因と考えられている。したがって、これらの腫瘍開始細胞を標的とする治療は、癌に対する重要な治療戦略である(非特許文献2)。
【0003】
腫瘍開始細胞の同定は、免疫不全動物で最も多く行われているが、実は免疫細胞は最も重要な腫瘍組織成分の一つであり、腫瘍治療の結果に影響を及ぼすことが示唆されている(非特許文献3)。したがって、宿主の免疫系が腫瘍の発生に影響を及ぼすと仮定できる。腫瘍細胞が、宿主の免疫不全レベルの増加に依存して効率的に発生することが報告されている(非特許文献4)。したがって、腫瘍は既存の宿主免疫細胞の攻撃を生き延びた腫瘍細胞のみによって形成され、これらの生き延びた腫瘍細胞は腫瘍開始細胞として認識される。すなわち、腫瘍発生及び腫瘍開始細胞の性質は、宿主の免疫系の影響を受ける。
【0004】
腫瘍発生研究で頻繁に使用される免疫不全マウスとは対照的に、健常な個体は良好に機能する免疫系を有する。免疫不全マウスで同定された腫瘍開始細胞とそのメカニズムは、免疫能が正常な個体には適用できないことがあり得る。したがって、健常な個体における腫瘍開始細胞及び腫瘍発生のメカニズムを同定することは、腫瘍生物学及び最終的には腫瘍治療法の開発において極めて重要である。
【0005】
一方で、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド、NADの前駆体)は、細胞のエネルギー代謝に必要な補酵素「NAD」の生合成中間代謝産物であるが、加齢に伴い減少することが知られている。最近の研究では、NAD前駆体NMNのin vivo分解に関与する主要な酵素はCD38であることが明らかになった(非特許文献5、6)。NADレベルは加齢とともに低下し、加齢に関連した代謝低下に関与するため、NADを外部から供給することは老化を防止する可能性がある(非特許文献5)。
【0006】
しかしながら、NMNは細胞の代謝改善効果を有するため、癌細胞の増殖も活性化させる可能性がある。したがって、癌治療において、NAD発生に関与する酵素の阻害剤に関する治験が多数行われている。同様のことから、NMNを癌の発生阻害及び治療に使おうという発想はあまりない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Meacham CE, Morrison SJ. Tumourheterogeneity and cancer cell plasticity. Nature 501, 328-337 (2013).
【非特許文献2】Frank NY, Schatton T, Frank MH.The therapeutic promise of the cancer stem cell concept. J Clin Invest 120,41-50 (2010).
【非特許文献3】Dunn GP, Bruce AT, Ikeda H, OldLJ, Schreiber RD. Cancer immunoediting: from immunosurveillance to tumorescape. Nat Immunol 3, 991-998 (2002).
【非特許文献4】Quintana E, Shackleton M, SabelMS, Fullen DR, Johnson TM, Morrison SJ. Efficient tumour formation by singlehuman melanoma cells. Nature 456, 593-U533 (2008).
【非特許文献5】Camacho-Pereira J, et al. CD38Dictates Age-Related NAD Decline and Mitochondrial Dysfunction through anSIRT3-Dependent Mechanism. Cell Metab 23, 1127-1139 (2016).
【非特許文献6】JohnathanR. Yarbro et al. MacrophageImmunometabolism and Inflammaging: Roles of Mitochondrial Dysfunction, CellularSenescence, CD38, and NAD. Immunometabolism. 2020; 2(3)
【非特許文献7】Takuichiro Hide et al. Sox11Prevents Tumorigenesis of Glioma-Initiating Cells by Inducing NeuronalDifferentiation. Cancer Res 2009; 69(20): 7953-7959
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、良好に機能する免疫系を備える個体における腫瘍発生のメカニズムを研究し、それに基づき、癌発生及びそれに関連する症状を治療及び/又は予防するための組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究の結果、腫瘍微小環境中のマクロファージが細胞老化を起こし、結果的に免疫健常個体で腫瘍発生を許容してしまうことを見出した。さらに、マクロファージの老化を抑制するために、意外にもニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)が有効であることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
有効成分としてニコチンアミドモノヌクレオチドを含む、マクロファージの老化を抑制するための組成物。
[2]
癌を治療若しくは予防する又は癌の進行を抑制する、[1]に記載の組成物。
[3]
前記癌が、脳腫瘍、腎臓癌、すい臓癌、肺癌、乳癌、精巣癌、卵巣癌及び大腸癌からなる群より選択される、[2]に記載の組成物。
[4]
マクロファージ又は癌組織を標的とする薬物送達システムを有する製剤である、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の組成物によれば、マクロファージの細胞老化を抑制し、それによって個体の免疫を活性化し、さらに、マクロファージの浸潤を有する癌を治療又は予防、或いは、癌の進行を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】予備実験例1における、8B細胞及び9G細胞のin vitroでの増殖曲線(a)、8B細胞又は9G細胞移植後のC57BL/6マウスの生存率を示すグラフ(b)、並びに、8B細胞又は9G細胞移植後のNOD/SCIDマウスの生存率を示すグラフ(c)である。
図2】予備実験例2における8B細胞移植後のマウス脳の蛍光顕微鏡画像である。
図3】予備実験例2における9G細胞移植後のマウス脳の蛍光顕微鏡画像である。
図4】実験例1における、C57BL/6マウス由来の全脾細胞と8B細胞又は9G細胞とを共培養した後の、免疫細胞マーカーの解析結果を示すフローサイトメトリーヒストグラムである。
図5】実験例1における、F4/80細胞を8B細胞又は9G細胞の培養上清と共培養して得られたマクロファージの形態を示す位相差顕微鏡画像である。
図6】実験例1における、8B-Mφ又は9G-MφをSA-β-Galで染色し顕微鏡画像((a)左側の画像)、SA-β-Gal陽性細胞の割合((a)右側のグラフ)、並びに、8B細胞及び9G細胞の移植後に形成された脳腫瘍をSA-β-Gal染色染色し顕微鏡画像(b)である。
図7】実験例1における、8B上清-Mφ、9G上清-Mφ、M0-Mφ、M1-Mφ及びM2-Mφにおける各種細胞老化に関連する遺伝子の発現を解析したグラフである。
図8】実験例1における、8B上清又は9G上清で共培養した細胞における各種遺伝子の発現を解析したフローサイトメトリーブロット(a)、及び、各細胞集団をDiff-quick染色した結果を示す顕微鏡画像(b)である。
図9】実験例1における、8B細胞又は9G細胞をC57BL/6マウスの脳に移植した後の蛍光顕微鏡画像(a)、CD3ε細胞におけるCD3ζ細胞の割合を示すグラフ((b)の左側)、並びに、CD3ε集団におけるCD3ζ又はCD3ζ-細胞中のIFNγ細胞の割合を示すグラフ((b)の右側)である。
図10】実験例2における、8B細胞及び9G細胞によって分泌されるサイトカインをサイトカイン/ケモカインアレイアレイにより解析した結果を示すグラフである。
図11】実験例2における、混合サイトカイン及び5つのサイトカインのそれぞれを除いた混合サイトカインによって誘導したSA-β-Gal陽性細胞の割合を示すグラフである。
図12】実験例2における、5つの細胞シグナル経路阻害剤によるIL-6分泌への影響を示すグラフである。
図13】実験例2における、8B細胞及び9G細胞におけるROS産生を示すグラフである。
図14】実験例3における、8B-IL-6-KO及び8B-mockによるIL-6分泌量を示すグラフ(a)、及び、8B-IL-6-KO及び8B-mockのin vitroでの増殖能を示すグラフ(b)である。
図15】実験例3における、F4/80細胞を8B-mock培養上清又は8B-IL-6-KO細胞培養上清で培養した後の細胞形態を示す位相差顕微鏡画像である。
図16】実験例3における、F4/80細胞を8B-mock培養上清又は8B-IL-6-KO細胞培養上清で培養した後の細胞の遺伝子発現を解析したグラフである。
図17】実験例3における、8B-mock細胞又は8B-IL-6-KO細胞を、免疫不全マウスNOD/SCID又は免疫応答性C57BL/6マウスの脳に移植し田後のマウスの生存率を記録したグラフである。
図18】実施例1における、8B上清又は9G上清培養MφのCD38m発現を示すフローサイトメトリーヒストグラムである。
図19】実施例1における、NMN添加/非添加の8B上清中培養したF4/80細胞を観察した顕微鏡画像である。
図20】実施例1における、NMN添加/非添加の8B上清中培養したF4/80細胞におけるSA-β-Gal陽性細胞の割合を示すグラフである。
図21】実施例1における、NMN添加/非添加の8B上清中培養したF4/80細胞におけるアルギナーゼ-1陽性細胞を示すフローサイトメトリーブロット、並びに、アルギナーゼ-1陽性細胞の割合を示すグラフである。
図22】実施例1における、8B-Mφ又はM-CSF-MφにおけるCD8T細胞又はCD4T細胞の増殖を示すグラフである。
図23】実施例1における、8B細胞を免疫応答性C57BL/6マウスの脳に移植したのち、NMN又は生理食塩水を投与した際の生存率を示すグラフである。
図24】実施例1における、BALB/c免疫応答性マウスにCT26細胞を皮下注射したのち、NMN又は生理食塩水を投与した際の生存率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の組成物は、マクロファージの老化を抑制するための組成物であり、有効成分としてニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を含む。
【0014】
マクロファージの老化とは、いわゆる細胞老化を意味し、細胞の扁平化、肥大化、細胞分裂抵抗性及びβ-ガラクトシダーゼ活性陽性等を特徴とする。マクロファージの老化は、その形態によって、例えば、細胞の平坦化若しくは肥大化によって判別することができる。また、老化したマクロファージに選択的に発現するマーカー、例えば、強力な免疫抑制分子であるアルギナーゼ-1(Arginase-1)、及び細胞周期進行の調節因子であるp21等の発現量の増加によっても決定することができる。特に、アルギナーゼ-1の発現が陽性であり、抑制性マクロファージであるM2マクロファージのマーカーであるRetnlα(Resistin-like alpha)の発現が陰性であることを確認することで、老化マクロファージと同様にアルギナーゼ1を発現するM2マクロファージとの差別化が可能であるため、マクロファージの老化の判定に有効である。
【0015】
本発明者らは、後述の実験によって、腫瘍細胞由来のIL-6によってマクロファージ老化を引き起こし、老化マクロファージは免疫抑制分子を高発現し、T細胞のCD3ζ発現を低下させ、不活性化させることを証明した。このことにより、局所に免疫特権部位が形成され、免疫健常個体においても腫瘍の発生及び増殖を許容させていると考えられる。一方で、腫瘍随伴老化マクロファージはCD38を高発現することを発見し、CD38は老化に伴い発現が増加するNADaseであり、NADを減少させ、各種の老化関連現象を誘導すると考えられる。ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)はNADの前駆体であり、細胞や生体に投与することでNADを増加させる。NMN添加で、マクロファージの老化を抑制し、老化回避したマクロファージではArginase-1の発現が低下し、CD4T細胞の活性化能が回復する。その結果、NMNの投与は、マクロファージの老化を抑制し、免疫特権部位の発生を阻止することで腫瘍発生に対する免疫監視を有効化させる働きがあると考えられる。また、上記推測されるメカニズムに鑑みて、NADを増加させることができる他の物質も、NMNと同様にマクロファージの老化を抑制し、腫瘍発生を抑制できる可能性がある。
【0016】
すなわち、本発明の組成物は、癌を治療若しくは予防する又は癌の進行を抑制するための組成物であり、有効成分としてNMNを含む。癌の治療効果又は再発予防効果又は癌の進行の抑制効果は、画像診断等で腫瘍サイズの縮小又は再発の無いこと又は転移の無いことを確認すること、腫瘍マーカーが正常化することなどの補助手段を用い、医師が判断する。
【0017】
本発明における癌は特に限定されないが、マクロファージを含めた免疫細胞の浸潤を有する癌であることが好ましい。このような癌(腫瘍)としては、脳腫瘍、腎臓癌、すい臓癌、肺癌、乳癌、精巣癌、卵巣癌及び大腸癌からなる群より選択されることが好ましく、特に脳腫瘍又は大腸癌であることが好ましい。
【0018】
組成物におけるNMNは、対象動物によって異なり得るが、例えばヒトの場合、100mg/Kg/日~1000mg/日、好ましくは250mg/日~500mg/日の配合量となるように、配合されていることが好ましい。
【0019】
本発明の組成物は、医薬組成物であってもよく、医薬組成物としては、有効成分のニコチンアミドモノヌクレオチドの他に、製薬上許容されうる担体を含んでいてもよい。上記担体としては、医薬組成物の製造に通常用いられる担体を制限なく使用することができ、例えば、賦形剤、結合材、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤等を用いることができる。また、本発明の医薬組成物は、他のマクロファージ老化防止成分、他の抗がん剤を含んでいてもよい。
【0020】
本発明の医薬組成物の投与経路は特に限定されず、例えば、経皮投与、舌下投与、点眼投与、皮内投与、筋肉内投与、経口投与、経腸投与、経鼻投与、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、口から肺への吸入投与であってもよい。剤形も特に限定されず、ドリンク剤、シロップ、ゼリー、凍結乾燥粉末、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、細粒剤、顆粒剤等の剤形であってもよい。
【0021】
本発明の医薬組成物は、有効性及び安全性を高めるため、マクロファージ又は癌組織を標的とする薬物送達システム(ドラッグデリバリーシステム、DDS)を有する製剤であることが好ましい。このような薬物送達システムを有する製剤は、特に限定されず、既知のDDS手法に基づく、マクロファージ又は癌組織を特異的又は選択的に送達される製剤であればよい。例えば、リポソーム化製剤等を挙げることができる。リポソーム製剤とは、リポソームに封入した有効成分(すなわち、NMN)を含有する医薬組成物である。一般的に、癌組織は正常組織よりも、血管壁の間隙が大きい(数十ナノメートル)ため、10~100nmの粒子径を有するリポソーム製剤であれば、血管から漏れ出し、癌組織に留まりやすくなると思われる。一方、マクロファージへのDDSは、マクロファージの貪食能を利用して、マクロファージに貪食されやすい径及び脂質組成を有するリポソーム製剤であれば、マクロファージに効率よく取り込まれる。腫瘍随伴マクロファージを標的とした場合、リポソーム製剤の粒子径が100nm程度であることが好ましい。
【0022】
NMNのリポソーム製剤の製造方法としては、特に限定されず、一般的なリポソーム製剤の製造方法であればよい。例えば、送達目的に応じて、適宜な各脂質の比(モル比又は重量比)を決め、所定の平均粒子径を有するリポソームの形成と同時に、又は当該リポソームを形成した後に、NMNをリポソームに封入することによって製造することができる。リポソーム製剤は、有効成分のNMN及びリポソームを構成する脂質の他に、必要に応じてpH調整剤、安定化剤などの添加剤を含んでもよい。
【0023】
本発明の組成物が食品組成物であってもよく、特に、保健、健康維持、健康増進等を目的とする食品、例えば、健康食品、機能性表示食品、栄養補助食品、サプリメント、特定保健用食品又は栄養機能食品等であってよい。本発明の食品組成物は、サプリメントである場合、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤、散剤、ドリンク剤、ゼリー等の形態であってもよい。
【0024】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【実施例0025】
予備実験例1 マウス誘導性膠芽腫細胞株8B及び9G
免疫応答性個体における腫瘍開始の必要性を分析するために、本発明者らが以前樹立した膠芽腫細胞株8B及び9G(非特許文献7)を使用した。該細胞株は、p53をノックアウトしたC57BL/6マウス胎仔の神経幹細胞にH-RasL61遺伝子を強制発現させて得られたものである。なお、すべての動物実験は北海道大学動物実験委員会の承認を受けた。
【0026】
8B細胞又は9G細胞を96ウェルプレートに10個/100μL/ウェルで播種し、グリオーマ培地(5mlのDMEM/F12及び5mlのDMEM培地中に0.5%のN2サプリメント(WAKO)、31.5μg/mlのN―アセチルシステイン(ナカライテスク)、2.5μMのホルスコリン(WAKO)、5ng/mlのビオチン(WAKO)、100μg/mLのストレプトマイシン(ナカライテスク)、1%のグルタミン(Gibco)、2.5μg/mlのヘパリン、5%のウシ胎仔血清(SIGMA、米国)、10ng/mlのマウスEGF(BioLegend(米国)、10ng/mlのマウスbFGF(BioLegend(米国))を含む)にて、37℃、5%COで1週間培養した。細胞数を毎日カウントし、その結果を図1の(a)に示す。図中のエラーバーは、単一の実験における3つのウェルの計数からの標準偏差を示す。図1の(a)から、細胞株8B及び9Gはin vitroでほぼ同様の増殖プロフィールを示したことが分かった。
【0027】
8B細胞又は9G細胞を免疫応答性マウスであるC57BL/6マウス(日本エスエルシー株式会社)の脳に移植した。具体的には、10個の8B細胞又は9G細胞を3μLの生理食塩水に懸濁し、ハミルトンシリンジを用いて、穿孔(Idealマイクロドリル、穿孔径0.6mm)により形成された頭蓋骨孔を通して、ドミトール/ミダゾラム/ベトルファールの三剤混合麻酔(投与量各:0.3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg)で麻酔したC57BL/6マウスの脳(n=27)に移植した。8B細胞又は9G細胞をマウス脳に30秒間を掛けて注入し、シリンジをさらにその場に30秒間留置した。移植後のマウスの生存を記録し、その結果を図1の(b)に示す(**p<0.01、一般化Wilcoxon検定)。図1の(b)から、C57BL/6マウスにおいて、8B細胞を移植したマウスの生存率が9G細胞を移植したマウスの半分以下であった。すなわち、免疫応答性マウスにおいて、8Bは腫瘍形成性であったのに対して、9Gは腫瘍形成性ではなかった若しくは腫瘍形成が弱かったことが分かった。
【0028】
同様に、10個の8B細胞又は9G細胞を、麻酔した免疫不全マウスであるNOD/SCID(日本クレア)の脳(n=5)に移植し、移植後の生存率を記録し、その結果を図1の(c)に示す(ns:有意差なし、一般化Wilcoxon検定)。図1の(c)から、免疫不全NOD/SCIDマウスにおいて、8B細胞又は9G細胞のどちらも腫瘍を形成し、最終的にすべてのマウスが死亡したことが分かった。すなわち、免疫応答性マウスであるC57BL/6マウスでの結果とは対照的に、免疫不全マウスであるNOD/SCIDマウスでは8B細胞も9G細胞も腫瘍形成性であった。これらの結果は、宿主の免疫不全のレベルが腫瘍細胞株の腫瘍形成能力に影響を及ぼしていることを示唆した。
【0029】
さらに、8B細胞又は9G細胞における、周知の膠芽腫開始細胞のマーカーであるCD133の発現を抗体染色によって検出した。しかしながら、どちらの細胞においてもCD133の発現が検出されなかった(データを示さず)。
【0030】
予備実験例2 8B細胞及び9G細胞が形成した腫瘍微小環境への免疫細胞の浸潤
予備実験例1と同様に、10個の8B細胞又は9G細胞をC57BL/6マウスの脳に移植した。移植28日後、移植した全脳組織を摘出し、浸潤免疫細胞を種々の免疫細胞マーカーにて免疫蛍光染色した。
【0031】
摘出した全脳組織試料をTissue-Tek(登録商標) OCT(サクラファインテックジャンパン株式会社)に埋め込んだ。次に、5μm厚の切片をヘマトキシリン/エオジンで染色した。免疫組織化学分析のために、切片を一次抗体で染色し、次いで蛍光色素Alexa Flour(登録商標) 555と結合した適切な二次抗体で処理した。使用した一次抗体は、抗マウスCD3抗体(17A2)、抗マウスCD19抗体(6D5)、抗マウスLy6G抗体(1A8)、抗マウスLy6C抗体(HK1.4)、抗マウスF4/80抗体(BM8)、抗マウスCD11b抗体(M1/70)、抗マウスCD169抗体(3D6.112)、抗マウスCD11C抗体(N418)であった。これらの一次抗体は、BioLegend(米国)から購入した。二次抗体として、抗マウスCD11c抗体に対してはAlexa Flour(登録商標) 555標識抗ハムスターIgG抗体を、それ以外の抗体に対してはAlexa Flour(登録商標) 555標識抗ラットIgG抗体を使用した。これらの二次抗体はサーモフィッシャー社(米国)から購入した。細胞核は4´,6-ジアミジノ-2-フェニルイドル二塩酸塩(DAPI;Sigma Aldrich、米国)で染色した。
【0032】
蛍光染色した細胞は、蛍光顕微鏡(カールツアイス社(ドイツ)、Axio Observer Z1)にて観察した。その代表的な蛍光画像を図2(8B)及び図3(9G)に示す。図2及び図3の結果から、8B細胞又は9G細胞が形成した脳腫瘍組織のどちらにおいても、CD11b陽性(CD11b)細胞、F4/80陽性(F4/80)細胞の顕著な浸潤が認められ、また、CD11c陽性(CD11c)細胞の少数の集団が確認された。さらに、少数のCD3陽性(CD3)T細胞及びいくつかのCD19陽性(CD19)細胞又はLy6G陽性(Ly6G)細胞も観察された。CD11b及びF4/80は主にマクロファージ、CD11cは樹状細胞、CD3は主にT細胞、CD19はB細胞、Ly6Gは主に顆粒球のマーカーとして知られている。したがって、予備実験例2の結果は、膠芽腫モデルにおいて腫瘍へのマクロファージ等の免疫細胞の浸潤が存在し、腫瘍細胞と免疫細胞との相互作用がある可能性が高いことを示唆した。
【0033】
実験例1 8B細胞及び9G細胞によるマクロファージに対する影響
腫瘍細胞と免疫細胞との相互作用を確認するために、腫瘍細胞と脾臓免疫細胞との共培養実験を行った。
【0034】
C57BL/6マウスから脾臓を採取した。脾臓は単一細胞となるようにすりガラスで圧迫してすりつぶし、全細胞を採集した。採集した全脾細胞をカルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE;同人化学)で蛍光標識した。次いで、10mLのRPMI1640培地(10%のウシ胎仔血清(SIGMA)、100U/mLのペニシリン(ナカライテスク)、100μg/mLのストレプトマイシン(ナカライテスク)、1%の非必須アミノ酸(ナカライテスク)、50μMの2-メルカプトエタノール(WAKO)1%のL-グルタミンを含む)中、37℃、5%COで、4×10個のマウス全脾細胞と、0.8×10個の8B細胞又は9G細胞と4日間共培養した。
【0035】
得られた細胞を、種々の免疫細胞マーカーで染色し、各免疫細胞におけるCFSE蛍光の減少をフローサイトメトリーで解析した。フローサイトメトリーは、フローサイトメトリーCytomics FC 500(Beckman Coulter、米国)又はBD FACSCelesta(商標)(BD Biosciences、米国)を用いて実施し、データはFlowJo(Tree Star、米国)を用いて分析した。使用した一次抗体は、BioLegendから購入した、抗マウスCD3抗体(17A2)、抗マウスCD4抗体(RM4-5)、抗マウスCD8抗体(53-6.7)、抗マウスCD45R抗体(B220)、抗マウスCD11b抗体(M1/70)、抗マウスCD11C抗体(N418)、抗マウスF4/80抗体(BM8)、及び抗マウスLy6G抗体(1A8)であった。対応するアイソタイプコントロール抗体もBioLegendから購入した。生細胞を、前方及び側方散乱、並びにDAPI又はヨウ化プロピジウム取り込みの欠如に基づいてゲートした。全ての抗体を1:100希釈で使用した。
【0036】
フローサイトメトリーの結果を図4に示す。図4では、8B細胞と共培養して得られた細胞(8B共培養細胞)における免疫細胞の増殖を破線のヒストグラムで示し、9G細胞と共培養して得られた細胞(9G共培養細胞)を実線のヒストグラムで示す。F4/80細胞又はCD11b細胞はマクロファージ(Mφ)であり、9G共培養ではMφは効率的に増殖したものの、8B共培養では増殖が抑制された(図4)。さらに、全脾細胞を後述の8B細胞又は9G細胞の培養上清を含む培地で11日間培養し、得られた細胞を同様に免疫染色し、フローサイトメトリーにより解析した結果、生成したCD11b細胞の前方散乱及び側方散乱を示したことが確認された(データを示さず)。すなわち、8B細胞の代わりに8B細胞の培養上清を用いた場合においても、マクロファージの増殖の抑制が認められた。これらの結果から、腫瘍細胞により分泌される何等かの可溶性因子がマクロファージの挙動に影響することを示唆した。
【0037】
F4/80細胞を、キャップ式磁性アタッチメント(MACS)システム(Miltenyi Biotec GmbH(登録商標)、ドイツ)を用いて磁気的に選別した。得られたF4/80細胞(マウスマクロファージ)を8B細胞又は9G細胞の培養上清を含む培地と共に14日間培養した。培養上清を含む培地としては、8×10個の8B細胞又は9G細胞を、10mLのグリオーマ培地中で4日間培養した後、上清を回収し、0.45μmフィルターでろ過し、得られた培養上清に対し20%(v/v)のRPMI1640培地を含有する培地を混合したものを使用した。
【0038】
培養後得られたF4/80細胞(マクロファージ)の形態を光学顕微鏡(CKX53、オリンパス株式会社)で観察し、結果を図5に示す。細胞塗抹標本には、サイトスピン(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて、細胞染色にはDiff-Quik stain(商標、シスメックス株式会社)を用いた。図5から、8B細胞培養上清で培養したマクロファージ(8B-Mφ)と9G細胞培養上清で培養したマクロファージ(9G-Mφ)とは明らかに形態が異なっていたことが分かった。8B-Mφの大部分は、9G-Mφと比較して平坦で肥大した外観を示し、この結果はフローサイトメトリーの結果(データを示さず)とも一致した。
【0039】
8B-Mφの形態は、老化様状態の細胞の形態と似ていたため、老化関連β-ガラクトシダーゼ(SA-β-Gal)アッセイを用いて、Mφが老化状態であるかどうか調べた。F4/80細胞を8B細胞又は9G細胞の培養上清と共に14日間培養して得られた8B-Mφ又は9G-Mφを回収し、下記のようにSA-β-Galで染色した。細胞を4%パラホルムアルデヒドで10分間固定し、次いで、5mM フェリシアン化カリウム、5mM フェロシアン化カリウム、2mM MgCl及び0.5mg/mLのX-Galを含む水溶液に添加し、細胞を37℃で16時間インキュベートした後、PBSで洗浄し、顕微鏡(CKX53、オリンパス株式会社)下で観察した。顕微鏡画像を図6 (a)(左側の画像)に示す。
【0040】
また、顕微鏡下で少なくとも550個の細胞を6つの異なる視野で計数し、SA-β-Gal陽性細胞の割合を算出した。算出結果を図6 (a)(右側のグラフ)に示す。白丸は、各視野からのSA-β-Gal陽性細胞の割合(%)を示し、黒棒は割合の平均値を示す(**p<0.01、スチューデントのt検定)。
【0041】
図6 (a)から、平坦化及び肥大化したMφはβ-ガラクトシダーゼ活性を示し、β-ガラクトシダーゼ陽性Mφの割合は、9B-Mφより8G-Mφのほうが高かったことが分かった。
【0042】
さらに、8B細胞及び9G細胞をマウス脳へ移植後に形成された脳腫瘍に対しても同様にSA-β-Gal染色を行い、顕微鏡にて観察した(図6 (b))。図6 (b)から、は、8B移植脳の腫瘍周辺においてβ-gal陽性(染色)細胞が認められたものの、9G移植脳では有意なβ-gal陽性(染色)細胞は認められなかった。
【0043】
また、上記マウス全脾細胞由来のF4/80細胞を8B細胞又は9G細胞の培養上清を含む培地と共に培養した。さらに、Riquelmeら(Riquelme P et al, Molecular Therapy 2013, 21:409-422.)の方法に従って、F4/80Mφにそれぞれ(1)0.1%生理食塩水、(2)25ng/mlのインターフェロンγ及び100μg/mlのリポポリサッカライド、又は、(3)25ng/mlのインターロイキン-4を添加し、24時間培養して、(1)M0-Mφ、(2)M1-Mφ、(3)M2-Mφを誘導した。
【0044】
Mφにおける細胞老化に関連する遺伝子の発現をRT-qPCRにより解析した。Tripure Isolation Reagent(Roche)を用いて、細胞からRNAを抽出、単離した。ReverTra Ace(登録商標)qPCR RT Master Mix(東洋紡)を用いて逆転写を行った。PCR分析は、KAPA SYBR(登録商標)Fast qPCR Kit(KAPA Biosystems)及びStep One(商標)リアルタイムPCシステム(Applied Biosystems)を用いて行った。使用したプライマーは、以下のとおりであった。
p21フォーワードプライマー:5’-CTGAGCGGCCTGAAGATTCC-3’(配列番号1)
p21リバースプライマー:5’-CCAATCTGCGCTTGGAGTGA-3’(配列番号2)
p16Ink4aフォーワードプライマー:5’-GGGTTTCGCCCAACGCCCCGA-3’(配列番号3)
p16Ink4aリバースプライマー:5’-TGCAGCACCACCAGCGTGTCC-3’(配列番号4)
p19Arfフォーワードプライマー:5’-GATCTTGAGAAGAGGGCCGC-3’(配列番号5)
p19Arfリバースプライマー:5’-TCTGCACCGTAGTTGAGCAG-3’(配列番号6)
Cdkn1cフォーワードプライマー:5’-TGAAGGACCAGCCTCTCTCG-3’(配列番号7)
Cdkn1cリバースプライマー:5’-TTCGACGCCTTGTTCTCCTG-3’(配列番号8)
Glb1フォーワードプライマー: 5’-ACATGTTTATAGGTGGGACCAA-3’(配列番号9)
Glb1リバースプライマー:5’-ACTTTCTCAGAGCAACTTTTCCA-3’(配列番号10)
Cebpβフォーワードプライマー:5’-CGCCTTATAAACCTCCCGCT-3’(配列番号11)
Cebpβリバースプライマー:5’-TGGCCACTTCCATGGGTCTA-3’(配列番号12)
【0045】
RT-qPCRの結果を図7に示す。図7から、8B-Mφ(図中の8B上清)は9G-Mφ(図中の9G上清)に比べて、細胞老化と相関することが知られているp21及びGlb1を高発現していたことが分かった。
【0046】
また、上記と同様に、C57BL/6マウス由来の全脾細胞をCFSEで蛍光標識し、8B細胞又は9G細胞と4日間共培養した。得られた細胞から、休止又は増殖したCD11b細胞を、上記と同様にフローサイトメトリーによってCFSE蛍光減少に基づいて選別した。抗マウスLy6C抗体として、クローンHK1.4(BioLegend(米国)を使用した。結果を図8に示す。増殖したCD11b細胞(図8のゲートI)はさらにLy6C陽性及びLy6C陰性画分(図8のゲートII、ゲートIII)に細分された。さらに、各分画化細胞型をDiff-quick染色を用いて染色し、形態学的分析を行った(図8 (b))。
【0047】
図8 (a)は、種々のマーカーでソーティングした結果を示し、図8 (b)はDiff-quick染色したゲートI、ゲートII及びゲートIIIの細胞集団を顕微鏡(BX53、オリンパス株式会社)で観察した画像を示す。図8から、増殖しなかったMφ(ゲートI)及び増殖してLy6Cを発現したMφ(ゲートII)は、8B上清及び9G上清培養における老化細胞と同様に円形を呈したことが分かった。また、8B上清培養における増殖したLy6C陰性Mφも円形を呈したが、9G上清培養におけるLy6C陰性(ゲートIII)Mφは仮足を有し、明らかに老化状態にないことを示唆した(図8 (b))。以上より、8B-Mφが老化様の特徴を有することを示唆した。
【0048】
歴史的に、Mφの多くの分類方法が提案されており、その主なものはM1/M2である。腫瘍関連Mφは一般にM2Mφに分類されるため、腫瘍開始能力を有する8B細胞は、M2表現型を有するMφを誘導すると予想される。しかしながら、本発明者らの実験によれば、8B-Mφはアルギナーゼ-1(Arg1)を発現したものの、Irf4、RetnlαなどのM2-Mφ関連遺伝子のほとんどを発現せず、また、M1関連遺伝子も発現しなかった(データを示さず)。さらに、9G-Mφも、M1/M2分類に適合する典型的な遺伝子プロフィールを発現しなかった(データを示さず)。したがって、8B-Mφ及び9G-Mφは、それらの遺伝子発現パターンに基づいてM1又はM2として分類することはできない。
【0049】
また、免疫能が正常な個体では、8B細胞が形成した腫瘍(8B腫瘍)において、CD3ε陽性T細胞の浸潤が認められたものの(データを示さず)、腫瘍の増殖は持続し(図1)、腫瘍組織におけるT細胞の抑制が示唆された。アルギナーゼ-1は、T細胞シグナル伝達における重要な分子であるCD3ζの発現をダウンレギュレート(下方制御)し、これらの細胞の低応答性を誘導する強力な免疫抑制分子であることが知られている。全脾細胞を8B細胞又は9G細胞と7日間共培養した。CD3ε陽性T細胞(CD3εT細胞)における細胞内CD3ζ発現をフローサイトメトリーにより解析した。その結果、予想通り、全脾細胞を8Bと共に培養した場合は、CD3ε陽性T細胞はCD3ζ発現を喪失したものの、9G細胞との共培養においてはCD3ζ発現を保持した(データを示さず)。
【0050】
上記と同様に、10個の8B細胞又は9G細胞をC57BL/6マウスの脳に移植した。28日後、マウスの脳を採取した。腫瘍領域のCD3ε細胞におけるCD3ζ発現を蛍光免疫組織化学により解析した。FITC結合抗CD3ζモノクローナル抗体(H146-968)は、Abcam(米国)から購入した。図9 (a)は、蛍光顕微鏡画像であり、図9 (b)の左側のグラフはCD3ε細胞におけるCD3ζ細胞の割合を細胞数に基づいて計算し、平均及び標準偏差は4つの独立した視野の結果に基づいて計算した。(**p<0.01、スチューデントのt検定)。図9によれば、C57BL/6マウスにおける8B-腫瘍組織において、CD3εT細胞の約70%がCD3ζ発現を喪失したことを明らかにした。
【0051】
また、腫瘍特異的T細胞の活性を理解するために、8B腫瘍から採取したT細胞を分析した。X線照射された8B細胞で、C57BL/6マウスを週1回、計2週間免疫した。最後の免疫の1週間後、脾臓を採取した。採集された全脾細胞を8B細胞と共に4日間共培養し、次いで、T細胞をGolgstop(登録商標)試薬の存在下でPMA/イオノマイシンで5時間刺激し、細胞内IFNγ発現をフローサイトメトリーによって測定した(PE標識抗IFNγ抗体はクローン:XMG1.2(BioLegend(米国))を使用)。CD3ε集団におけるCD3ζ又はCD3ζ細胞中のIFNγ細胞の割合を棒グラフで示す(図9 (b)の右側のグラフ、**p<0.01、スチューデントのt検定)。その結果、IFN-γ産生は、CD3ζ陽性T細胞と比較して、CD3ζ陰性T細胞において約10倍低かった。このように、T細胞は8B腫瘍に高度に浸潤したものの、これらのT細胞のほとんどはCD3ζ発現を失い、機能不全になった。
【0052】
実験例1は、8B細胞は、老化様Mφ由来アルギナーゼ-1による浸潤T細胞の機能不全を誘導することによって、免疫応答性マウスにおいて腫瘍を発生させることを示唆した。
【0053】
実験例2 8B細胞及び9G細胞における分泌サイトカインの解析
8B細胞及び9G細胞によって分泌されるサイトカインを、サイトカイン/ケモカインアレイにより解析した。8×10個の8B細胞又は9G細胞を、10mLのグリオーマ培地中で4日間培養した後、上清を回収し、0.45μmのフィルターを通して濾過した。得られた上清を、LEGENDplex(商標;BioLegend)及びフローサイトメトリーCytomics FC500(Beckman Coulter)を用いて分析した。その結果を図10に示す。図10から、8B細胞によって、インターロイキン-6(IL-6)、Ccl5、Cxcl1及びCxcl10が選択的に分泌され、かつ、8B細胞によるCcl2の分泌量が9G細胞の2倍であったことが分かった。これらのサイトカインのうち、IL-6及びCxcl1は老化関連サイトカイン/ケモカインであることが知られている。
【0054】
次に、8B細胞によって分泌されるサイトカインのうち、Mφの老化様状態を誘導するのに重要であろうサイトカインを同定した。マウス全脾細胞を、8B細胞分泌サイトカインにおける5つの主要な因子、Ccl2(20ng/mL)、Cx-1(5ng/mL)、Cx-10(5ng/mL)、Ccl5(5ng/mL)及びIL-6(1ng/mL)の混合サイトカインを含む培地(基本培地)中で培養した。これらのサイトカインはBioLegendより購入した。基本培地は、8B細胞又は9G細胞培養に使用したグリオーマ培地に上記5つのサイトカイン、さらに、Mφが生存するように、M-CSF(5ng/mL)、及びIL-34(5ng/mL)を添加した培地であった。対照として、混合サイトカインを含まない基本培地(サイトカインなし)を使用した。また、基本培地中の混合サイトカインから、上記5つの主要な因子をそれぞれ除いたもの(-Ccl2、-Cx-1、-Cx-10、-Ccl5、及び、-IL-6)も使用した。生成したMφをSA-β-Galアッセイで分析した。SA-β-Gal陽性細胞を6つの視野から計数し、β-ガラクトシダーゼ陽性Mφ細胞(SA-β-Gal陽性Mφ)の割合を算出し、図11に示す。
【0055】
図11から、混合サイトカインからCcl2又はIL-6のいずれかを除去した後、SA-β-Gal陽性Mφの数は減少した。尚、IL-6の除去でSA-β-Gal陽性Mφは、サイトカインなしと同程度まで低下したことが分かった。さらに、9G細胞分泌サイトカインもCcl2を含むことから、IL-6がMφを老化様状態に誘導する原因因子であると推測される。
【0056】
次に、8B細胞においてIL-6の選択的発現を誘導するシグナル伝達経路の同定を試みた。5つの細胞シグナル経路阻害剤(各20μM):PD0325901(MEK1/2阻害剤;AdooQ)、U0126(MEK1/2阻害剤;Cayman Chemical)、LY294002(PI3K阻害剤;Cayman Chemical)、SB203580(p38阻害剤;Cayman Chemical)又はSP600125(JNK阻害剤;AdooQ)を8B培地に添加した。対照として、溶媒(ジメチルスルホキシド;DMSO)を培地に添加した。24時間後、培地を捨て、各種阻害剤又は溶媒を含む新鮮な培地に培地交換した。さらに24時間後、各培養上清中のIL-6蓄積量を、LEGENDplex(商標;BioLegend)及びフローサイトメトリーCytomics FC 500(Beckman Coulter)を用いて分析した。測定結果を図12 (a)に示す。また、各培養条件における細胞増殖は、細胞増殖キットI(MTT;Merck)を用いて、使用説明書のプロトコールに従ってモニターした。測定結果を図12 (a)に示す。図12 (b)は、種々の阻害剤の存在下での8B細胞によるIL-6分泌は、MTTアッセイに基づく細胞数を反映した単位(unit)で示す。単位は次のように計算された。
単位(unit)=IL-6(ng/mL)/MTTアッセイにおける570nmでの吸収
【0057】
図12によれば、全ての阻害剤は、溶媒よりも相対的に細胞毒性が高かったが、IL-6分泌は、U0126(MEK1/2阻害剤)及びLY294002(PI3K阻害剤)によって維持された。対照的に、SP600125(JNK阻害剤)は、IL-6分泌を著しく上方制御したが、SB203580(p38阻害剤)は、IL-6分泌の完全な喪失をもたらした。p38MAPキナーゼ(MAPK)シグナル伝達は、8B細胞におけるIL-6分泌に必須であることを示唆した。
【0058】
IL-6産生8B細胞及び非産生9G細胞の両方は、同じ細胞株に由来する。異なるIL-6分泌の原因は不明である。Ohsawaら(Ohsawa S, Nature 490, 547-551 (2012).)は、ショウジョウバエ細胞におけるRasの構成的活性化及びミトコンドリア機能障害が、upd(ヒト/マウスIL-6のオーソログ)分泌及びin vivoでの腫瘍形成をもたらしたことを報告した。8B細胞及び9G細胞は両方とも構成的活性Rasを有するため、それぞれのミトコンドリア機能障害の差が異なるIL-6産生をもたらすと推測された。ミトコンドリア機能障害は細胞内に活性酸素種(ROS)の蓄積をもたらすため、CellROX(登録商標)Deep Red染色キット(Thermo Fisher)を用いて、8B細胞及び9G細胞におけるROS産生を測定し、比較した。
【0059】
8B細胞又は9G細胞を、N-アセチルシステイン(NAC)を含まないグリオーマ培地で一晩培養し、次いで、400μM又は4000μMのNACを添加し、2時間培養した。細胞をCellROX(登録商標)Deep Red染色溶液でさらに1時間培養し、次いで、フローサイトメトリーによってROSレベルを分析した。結果を図13に示す。図13から、予想通り8B細胞において、9G細胞よりも高いレベルのROSが蓄積された。上昇したROSレベルがp38活性化を誘導することを考慮すると、ROS-p38軸の活性化は、9Gと比較して8Bにおける選択的IL-6分泌のメカニズムであることが示唆された。
【0060】
実験例3 8BによるIL-6分泌と免疫応答性動物における腫瘍開始との関連性
8Bによって分泌されるIL-6が、Mφにおける老化誘導及びin vivoでの腫瘍形成能に及ぼす影響について検討した。CRISPR/Cas9システム(Origene)によって、IL-6ノックアウト8B細胞(8B-IL-6-KO)を調製し、Il6 Mouse Gene Knockout Kit(CRISPR)(Origene社(米国)、カタログ番号KN308293)を用いて、スクランブルガイドRNAでトランスフェクトした8B細胞を疑似トランスフェクタント(8B-mock)として調製した。
【0061】
両細胞株におけるIL-6分泌量をLEGENDplex(商標;BioLegend)及びフローサイトメトリーCytomics FC 500(Beckman Coulter)を用いて測定し(図14 (a))、in vitroでの増殖能をMTTアッセイによって測定した(図14 (b))。図14(b)から、8B-IL-6-KO及び8B-mockはin vitroで同等に増殖したことが分かった。
【0062】
次に、8×10個の8B-mock又は8B-IL-6-KO細胞を10mLのグリオーマ培地中で4日間培養した後、上清を回収し、0.45μmフィルターでろ過し、得られた培養上清に対し20%(v/v)のRPMI1640培地を含有する培地を、培養上清を含む培地とした。この培養上清を含む培地1mLを用いて、マウス全脾細胞からキャップ式磁性アタッチメント(MACS)システム(Miltenyi Biotec GmbH(登録商標)、ドイツ)を用いて磁気的に選別した0.5×10個のF4/80細胞を14日間培養した。14日後、生成したMφを位相差顕微鏡(CKX53、オリンパス株式会社)で観察した(図15)。図15から、8B-mock培養上清ではMφが平坦で肥大した外観を呈し、8B-IL-6-KO培養上清では仮足を有したことが認められた。8B-IL-6-KO培養上清を用いて培養して得られたMφ老化特徴を失ったことを判明した。したがって、8B細胞によって分泌されたIL-6がMφにおける老化誘導の原因因子であることが示唆された。
【0063】
また、8B-mock培養上清又は8B-IL-6-KO培養上清で培養したMφの遺伝子発現をRT-qPCRで解析した(Arg1:GTATGACGTGAGAGACCACG、CTCGCAAGCCAATGTACACG)。結果を図16に示す。図16から、8B-IL-6-KO-Mφでは、Glb1、p16、p19、p21及びArg1の発現は8B-mock-Mφより低かったことが分かった。
【0064】
次に、10個の8B-mock細胞又は8B-IL-6-KO細胞を、免疫不全マウスNOD/SCID(n=9(8B-mock)、n=11(8B-IL-6-KO))、又は免疫応答性C57BL/6マウス(n=18(8B-mock)、n=19(8B-IL-6-KO))の脳に移植し、移植後のマウスの生存率を記録した(図17、**p<0.01、log-lank検定)。図17から、8B-IL-6-KO細胞及び8B-mock細胞は、NOD/SCIDマウスにおいて腫瘍形成性を発揮し、全てのマウスは、腫瘍接種後200日までに死亡した。一方、免疫応答性C57BL/6マウスでは、8B-mock細胞のみが依然として腫瘍形成性を発揮し、ほとんどのマウスがNOD/SCIDマウスと同様の時間経過で死亡したのに対して、約60%のマウスが8B-IL-6-KO細胞の接種後400日以上まで生存しており、明らかに低い腫瘍形成性を示した。すなわち、IL-6を分泌しなかった腫瘍細胞は、免疫不全マウスでは腫瘍を形成することができたが、免疫応答性マウスでは腫瘍を形成することができなかった。反対に、腫瘍細胞によるIL-6分泌は、免疫不全マウスのみならず、免疫応答性マウスにおいても腫瘍形成を可能にした。したがって、腫瘍細胞によるIL-6分泌は、免疫応答性マウスにおける腫瘍開始能力を左右する。これらの結果は、IL-6分泌性腫瘍細胞が、老化様免疫抑制性マクロファージを誘導することによって、その周囲を「免疫特権部位」に変化させ、免疫応答性個体においてさえも腫瘍開始の機会を創出できることを示唆した。
【0065】
実施例1 NMNによる作用
8B上清で培養した老化様Mφにおける発現表面蛋白質をスクリーニングした。上記のように、マウス全脾細胞から磁気的に選別F4/80細胞を8B上清又は9G上清で培養し、得られたMφを抗CD38モノクローナル抗体(クローン:90、Biolegend(米国))で染色し、フローサイトメトリー(フローサイトメトリーCytomics FC 500(Beckman Coulter、米国))で検出した。その結果を図18に示す。図18から、老化様8B-Mφが9G-Mφと比較してより高いレベルでCD38を発現することを見出した(図18)。
【0066】
マウス全脾細胞由来F4/80細胞を、8B上清中で14日間培養し、培養期間中に週3回、β-ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)の終濃度が1mMとなるように添加した。対照として、同量の生理食塩水(Saline)を添加した。14日間培養後、上記と同様にSA-β-Galアッセイを実施した。得られた細胞を位相差顕微鏡(CKX53、オリンパス株式会社)で観察し(図19)、さらにSA-β-Gal陽性細胞及び陰性細胞を10の視野から計数し、総数から陽性細胞の割合を算出し、3つの独立した培養からの%SA-β-Gal陽性細胞の平均値(SD)を図20に示す(**p<0.01、スチューデントのt検定)。さらに、得られた細胞のアルギナーゼ-1発現をフローサイトメトリーで測定し、フローサイトメトリーのソート結果、及び、3つの独立したフローサイトメトリー分析からの平均値(SD)を図21に示す(**p<0.01、スチューデントのt検定)。
【0067】
8B-Mφ培養にNMNを添加すると、仮足を有するMφが得られた(図19)。また、SA-β-Gal-陽性老化様Mφの数は、NMNの添加後に減少した(図20)。さrさに、NMNの存在下で培養された8B-Mφにおけるアルギナーゼ-1発現は、対照のSaline培養物と比較して、アルギナーゼ-1発現は約三分の一まで減少した(図21)。アルギナーゼ-1は、CD3ζ発現を減少させることによってT細胞活性化を阻止するため、NMN処理は、老化様Mφ由来アルギナーゼ-1に囲まれたT細胞におけるT細胞応答を改善し得ることを示唆した。実際、8B-Mφ培養物へのNMNの添加は、樹状細胞の樹状突起に似た仮足を有するMφをもたらした(図19)。この結果から、NMN処理は8B-Mφの抗原提示能を改善すると推測した。
【0068】
C57BL/6マウスの脾細胞を8B細胞培養上清中で7日間培養し、培養の0日目、1日目、3日目及び6日目にβ-ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)の終濃度が1mMとなるように添加した。対照として、同量の生理食塩水(Saline)を添加した。また、脾細胞をM-CSF(20ng/mL)の存在下で7日間培養することによってM-CSF-Mφを得た。接着したMφを収集し、抗原提示分析に使用した。対照として、BALB/c由来のT細胞を使用した。T細胞は、BALB/cマウスの脾臓から、抗Thy1.2 MACSビーズ(Miltenyi Biotec)を用いる磁気的に選別によって収集した。収集したBALB/c T細胞をCFSEで標識し、得られたCFSE標識Thy1T細胞と、上記得られた抗原提示細胞(応答体:刺激体=1:2)とを4日間共培養した。次いで、CD4及びCD8細胞増殖を、フローサイトメトリー(BD FACSCelesta(商標)(BD Biosciences、米国)を用いて、CFSE蛍光の減少によって分析した。結果を図22(**p<0.01、NS:有意差なし、TukeyのHSD試験)に示す。
【0069】
図22から、CD8T細胞は、M-CSF誘導Mφ共培養物中で効率的に増殖し、NMN処理培養物及び生理食塩水(Saline)処理8B-Mφ共培養物中では約三分の一まで減少した。CD4T細胞は、M-CSF誘導Mφ共培養物と比較して、生理食塩水処理8B-Mφ共培養物において約二分の一まで増殖低下を示した。特に、NMN処理8B-Mφ共培養におけるCD4T細胞の増殖は、M-CSF誘導Mφ共培養で得られたレベルに回復した。NMN処理は、8B-Mφの抗原提示能力を改善したことを示唆した。
【0070】
10個の8B細胞を免疫応答性マウスであるC57BL/6マウスの脳に移植した。移植したマウスに、10mgのNMN(n=6)又は生理食塩水(n=6)(200μl/マウス)を週3回、腹腔内投与し、マウスの生存を記録し、図23(*p<0.05、log-lank検定)に示す。生理食塩水投与群では、約70%のマウスが腫瘍開始を示し、その結果死亡した。対照的に、NMN治療群では、腫瘍開始はマウスの約20%にしか認められず、生存期間は生理食塩水群と比較して著しく改善された(図23)。
【0071】
CT26マウス結腸直腸癌細胞はIL-6を分泌するため、腫瘍微小環境におけるIL-6を介したMφ老化誘導が期待できる。したがって、同系BALB/c免疫応答性マウスにCT26細胞を皮下注射し、腫瘍開始に対するNMN治療の効果を評価した。5×10個のCT26細胞(ATCC(米国))を同系免疫応答性BALB/cマウスに皮下注射した。死亡するまでNMN(n=4)(10mg/マウス)又は生理食塩水(n=4)(200μl/マウス)を週3回腹腔内投与した。腫瘍開始は、目視及び触診を用いて評価し、結果を図24(**p<0.05、log-lank検定)に示す。このモデルでは腫瘍開始を完全に抑制することは困難であったが、NMN投与は腫瘍開始を有意に遅らせた(図24)。
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【配列表】
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