(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189496
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
H01L21/304 651B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098106
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】竹口 博史
(72)【発明者】
【氏名】篠原 和義
(72)【発明者】
【氏名】福田 孝佑
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB48
5F157AB62
5F157AC04
5F157CB14
(57)【要約】
【課題】パーティクルの発生を防止しつつ低表面張力液の使用量を削減する。
【解決手段】基板処理方法は、回転する基板表面に第1処理液を供給して基板表面を第1処理液の液膜で覆う第1処理工程と、第1処理工程の後に基板表面に第1処理液よりも表面張力が小さい第2処理液を供給して、基板表面上にある第1処理液を第2処理液で置換する第2処理工程とを備え、第2処理工程は、基板表面に第2処理液に加えて第1処理液を同時に供給する第1段階と、第1段階の後に第1処理液の供給をせずに基板表面の中心部に第2処理液を供給する第2段階とを含み、第1段階の少なくとも第1の期間において、基板表面上における基板回転中心から第1処理液の着液点までの距離である第1半径方向距離が、第2処理液の着液点までの距離である第2半径方向距離よりも大きいという条件を維持しつつ、第1および第2半径方向距離の両方を大きくしてゆく。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する基板の表面に第1処理液を供給して前記基板の表面を前記第1処理液の液膜で覆う第1処理工程と、
前記第1処理工程の後に、回転する前記基板の表面に、前記第1処理液よりも表面張力が小さい第2処理液を供給して、前記基板上にある前記第1処理液を前記第2処理液により置換することにより前記基板の表面を前記第2処理液の液膜で覆う第2処理工程と、
を備え、
前記第2処理工程は、
回転する前記基板の表面に前記第2処理液に加えて前記第1処理液を同時に供給する第1段階と、
前記第1段階の後に、前記第1処理液の供給をせずに、回転する前記基板の表面の中心部に前記第2処理液を供給する第2段階と、
を含み、
前記第1段階の少なくとも第1の期間において、前記基板の表面上における前記基板の回転中心から前記第1処理液の着液点までの距離である第1半径方向距離が、前記基板の回転中心から前記第2処理液の着液点までの距離である第2半径方向距離よりも大きいという条件を維持しつつ、前記第1半径方向距離および前記第2半径方向距離の両方を大きくしてゆく、基板処理方法。
【請求項2】
前記第1の期間において、前記第1半径方向距離と前記第2半径方向距離との差が、40mm~90mmの範囲内に維持される、請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第1の期間において、前記第1半径方向距離と前記第2半径方向距離との差が一定に維持される、請求項1または2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第1の期間の第1の時点における前記第2処理液の着液点の位置である第1位置は、前記基板の回転中心に位置しているか、あるいは前記基板の回転中心が前記第2処理液により覆われる程度に前記基板の回転中心の近傍に位置している、請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1段階の開始時点は、前記第1の時点より前の第2の時点であり、
前記第1の時点は前記第1の期間の開始時点であり、
前記第1段階は、当該第1段階の最初の期間である前記第2の時点から前記第1の時点までの間の第2の期間を有し、
前記第2の時点における前記基板の表面上における前記第1処理液の着液点および前記第2処理液の着液点はともに前記基板の回転中心から離れており、その後、前記第2処理液の着液点は前記第1の時点までに前記第1位置に移動する、
請求項4記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第1処理工程の少なくとも終期において前記基板の表面上における前記第1処理液の着液点の位置である第2位置は、前記基板の回転中心に位置しているか、あるいは前記基板の回転中心が前記第1処理液により覆われる程度に前記基板の回転中心の近傍に位置しており、
前記第1処理工程から前記第2処理工程の前記第1段階に移行するときに、前記基板上への前記第1処理液の着液点が前記第2位置から離れる、
請求項5記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記第2処理工程の前記第1段階における前記第1処理液の供給流量は、前記第1処理工程における前記第1処理液の供給流量より小さい、請求項6記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記第2処理工程の前記第2段階において、前記第2処理液は、前記基板の表面の中心部に継続的に供給される、請求項1から7のうちのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記第2処理工程の前記第1段階における前記第2処理液の供給流量は、前記第2処理工程の前記第2段階における前記第2処理液の供給流量よりも少ない、請求項1から8のうちのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記第2処理工程の前記第1段階から前記第2段階に移行するときに、前記第2処理液の着液点を、前記基板の回転中心に、あるいは前記基板の回転中心が前記第2処理液により覆われる程度に前記基板の回転中心の近傍の位置に移動させる、請求項1から9のうちのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記第2処理工程の前記第1段階から前記第2段階に移行するときにおける前記第2処理液の着液点の移動は、前記基板の回転中心付近に液膜により覆われていない乾燥領域が生じる前に行われる、請求項10記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記第2処理工程の前記第1段階において、前記第1処理液は、第1ノズルアームに担持された第1ノズルから供給され、前記第2処理液は、第2ノズルアームに担持された第2ノズルから供給される、請求項1から11のうちのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記第1処理液はリンス液であり、前記第2処理液は前記リンス液よりも表面張力が低い有機溶剤である、請求項1から12のうちのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記リンス液は、純水、または純水に微量の電解質成分を溶解させた機能水からなる、請求項13記載の基板処理方法。
【請求項15】
回転する前記基板の表面に薬液を供給する薬液処理工程をさらに備え、前記第1処理工程は、前記薬液処理工程が施された前記基板に前記第1処理液としてのリンス液を供給することにより前記薬液を洗い流すリンス工程である、請求項1から14のうちのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項16】
基板処理装置であって、
基板を水平姿勢で保持する基板保持部と、
前記基板を保持した前記基板保持部を鉛直軸線周りに回転させる回転駆動部と、
前記基板保持部により保持された前記基板に処理液を供給すること、前記基板保持部により保持された前記基板にリンス液を供給すること、前記基板保持部により保持された前記基板に低表面張力液を供給すること、前記基板保持部により保持された前記基板にリンス液および低表面張力液を同時に供給すること、ができるように設けられた少なくとも2つのノズルと、
前記少なくとも2つのノズルを移動させる少なくとも1つのノズルアームと、
前記基板処理装置の動作を制御して、前記基板処理装置に請求項1から15のうちのいずれか一項に記載の基板処理方法を実行させる制御部と、
を備えた基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造においては、基板をスピンチャックにより水平姿勢で保持して鉛直軸線周りに回転させた状態で、基板に各種処理液を供給することにより所定の液処理が施される。特許文献1には、リンス処理から置換処理への移行に関して以下のことが記載されている。リンス処理の後半において、リンス液を基板の中心部に供給することに加えてリンス液を基板の外周部にも供給する。その後、基板の外周部へのリンス液の供給を継続しつつ基板の中心部へのリンス液の供給を停止し、これと同時に、IPA(イソプロピルアルコール)を基板の中心部に供給する。その後、IPAを基板の中心部に供給し続けたまま基板の外周部へのリンス液の供給を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、パーティクル等の欠陥の発生を防止しつつ低表面張力液の使用量を削減し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態において、回転する基板の表面に第1処理液を供給して前記基板の表面を前記第1処理液の液膜で覆う第1処理工程と、前記第1処理工程の後に、回転する前記基板の表面に、前記第1処理液よりも表面張力が小さい第2処理液を供給して、前記基板上にある前記第1処理液を前記第2処理液により置換することにより前記基板の表面を前記第2処理液の液膜で覆う第2処理工程と、を備え、前記第2処理工程は、 回転する前記基板の表面に前記第2処理液に加えて前記第1処理液を同時に供給する第1段階と、前記第1段階の後に、前記第1処理液の供給をせずに、回転する前記基板の表面の中心部に前記第2処理液を供給する第2段階と、を含み、前記第1段階の少なくとも第1の期間において、前記基板の表面上における前記基板の回転中心から前記第1処理液の着液点までの距離である第1半径方向距離が、前記基板の回転中心から前記第2処理液の着液点までの距離である第2半径方向距離よりも大きいという条件を維持しつつ、前記第1半径方向距離および前記第2半径方向距離の両方を大きくしてゆく、基板処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、パーティクル等の欠陥の発生を防止しつつ低表面張力液の使用量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る基板処理装置の横断面図である。
【
図2】
図1の基板処理装置に含まれる処理ユニットの一例を示す縦断面図である。
【
図3】
図2の処理ユニットから液受けカップ、ノズル、ノズルアーム等の一部の部品を取り出して示した概略平面図である。
【
図4】IPA置換工程における乾燥液ノズルおよびリンスノズルの動作の一例を説明するための概略側面図である。
【
図5】IPA置換工程における処理ユニットの動作の一例を説明するためのグラフである。
【
図6】IPA置換工程における乾燥液ノズルおよびリンスノズルの動作の他の例を説明するための概略側面図である。
【
図7】
図2および
図3の処理ユニットに補助ノズルを追加した実施形態の一部の部品を取り出して示した概略縦断面図である。
【
図8】
図7の処理ユニットの一部の部品を取り出して示した概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
基板処理装置の一実施形態を、添付図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0010】
図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0011】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚の基板W、本実施形態では半導体ウエハを水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0012】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、基板Wを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間で基板Wの搬送を行う。
【0013】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられる。
【0014】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、基板Wを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間で基板Wの搬送を行う。
【0015】
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送される基板Wに対して所定の基板処理を行う。
【0016】
また、基板処理システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部18と記憶部19とを備える。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。
【0017】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0018】
上記のように構成された基板処理システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCから基板Wを取り出し、取り出した基板Wを受渡部14に載置する。受渡部14に載置された基板Wは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
【0019】
処理ユニット16へ搬入された基板Wは、処理ユニット16によって処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済の基板Wは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0020】
次に処理ユニット16の構成について
図2を参照して説明する。
【0021】
図2に示すように、処理ユニット16は、チャンバ20と、基板保持回転機構30と、処理流体供給部40と、液受けカップ60とを備える。
【0022】
チャンバ20は、基板保持回転機構30と処理流体供給部40と液受けカップ60とを収容する。チャンバ20の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)21が設けられる。FFU21は、チャンバ20内にダウンフローを形成する。
【0023】
基板保持回転機構30は、基板Wを水平姿勢で保持する基板保持部(チャック部)31と、基板Wを保持した基板保持部31を鉛直軸線周りに回転させる回転駆動部32とを有している。基板保持部31は、基板Wの周縁部を把持爪により保持するメカニカルチャックと呼ばれる形式のものであってもよく、基板Wの裏面を真空吸着するバキュームチャックと呼ばれる形式のものであってもよい。回転駆動部32は駆動力発生源としての電気モータを備え、基板保持部31を任意の速度で回転させることができる。
【0024】
処理流体供給部40は、複数の処理流体ノズルと、1つ以上のノズルアームを有する。図示された実施形態において、複数の処理流体ノズルには、薬液/リンスノズル41と、乾燥液ノズル42と、リンスノズル43と、ガスノズル44とが少なくとも含まれる。薬液/リンス液ノズル41は、酸性薬液であるDHF(希フッ酸)とリンス液としてのDIW(純水)とを選択的に吐出する。乾燥液ノズル42は、リンス液よりも表面張力が低く、好ましくはリンス液よりも揮発性が高く、好ましくはリンス液と容易に置換できる特性(例えば相溶性など)を有する液体、例えばIPA(イソプロピルアルコール)を吐出する。リンスノズル43は、リンス液としてのDIWを吐出する。ガスノズル44は、低湿度かつ低酸素濃度のガス、例えば窒素ガス等の乾燥用ガスを吐出する。リンス液としては、DIWの他には、DIWに微量の電解質成分を溶解させた機能水であってもよい。
【0025】
各処理流体ノズルには、処理流体供給機構(
図2において二重丸で概略的に示す)を介して処理流体が供給される。処理流体供給機構は、当該技術分野において広く知られているように、タンク、工場用力等の処理流体供給源と、処理流体供給源から処理流体ノズルに処理流体を供給する供給ラインと、供給ラインに設けられた流量計、開閉弁、流量制御弁等の流量調節機器およびフィルタ、ヒーター等の補器類とから構成することができる。各処理流体供給機構は、対応する処理流体ノズルからの処理流体の吐出のオンオフ、対応する処理流体ノズルからの処理流体の吐出流量を制御することができる。
【0026】
薬液/リンスノズル41には、処理流体供給機構としての薬液供給機構およびリンス液供給機構が接続されており、これにより、薬液/リンスノズル41から薬液(DHF)またはリンス液(DIW)を択一的に吐出することができる。
【0027】
例示された実施形態においては、処理流体供給部40は、上述した1つ以上のノズルアームとして、2つのノズルアーム、すなわち第1ノズルアーム51および第2ノズルアーム52を有している。図示された実施形態においては、第1ノズルアーム51および第2ノズルアーム52は、各々の基端部に設けられたアーム駆動機構53、54により、鉛直方向に延びる旋回軸線を中心として揺動する形式のものである。第1ノズルアーム51の先端部には、薬液/リンスノズル41および乾燥液ノズル42が担持されている。第2アーム52の先端にはリンスノズル43およびガスノズル44が担持されている。
【0028】
例示された実施形態においては、第1ノズルアーム51および第2ノズルアーム52は、それぞれの先端部(すなわちそこに担持された処理流体ノズル(41~44)も)が、平面視で、ほぼ同じ円弧状の軌跡を描いて動くことができるように設置されている。例示された実施形態においては、両ノズルアーム51,52の先端の軌跡は、ともに基板Wの回転中心Wcの真上を通過する。例示された実施形態においては、両ノズルアーム51,52の旋回中心(53,54の位置)の位置がやや異なるため、両ノズルアーム51,52の先端の移動軌跡は完全には一致しないが、ほぼ同じと見なしても構わない。なお、
図2の第1ノズルアーム51および第2ノズルアーム52の配置は、
図3の配置と一致していないが、これは図面の見やすさを重視したためであり、
図3の配置が正しい。
【0029】
処理ユニット16は、さらに別のノズルアームを備えていてよい。ノズルアームは、図示されたような旋回アームタイプものに限らず、ガイドレールに沿って並進運動するリニアモーションタイプのものであってもよい。また、旋回アームタイプのノズルアームが2つ設けられる場合、平面視で、両ノズルアームの先端が基板Wの回転中心Wcに対して点対称な移動軌跡を描くように両ノズルアームを設けてもよい。
【0030】
液受けカップ60は、基板保持部31を包囲するように設けられており、回転する基板Wから飛散する処理液を捕集する。液受けカップ60により捕集された処理液は、液受けカップ60の底部に設けられた排液口61から処理ユニット16の外部に排出される。液受けカップ60の底部には排気口62も設けられており、排気口62を介して液受けカップ60の内部が吸引されている。
【0031】
次に、処理ユニット16により行われる液処理の一連の工程について説明する。以下の工程は、制御装置4の制御の下で実行される。一実施形態において、制御装置4の記憶部19にはプロセスレシピおよび制御プログラムが格納されており、制御装置4が制御プログラムを実行して処理ユニット16の各部品の動作を制御することにより後述する工程が実行される。
【0032】
図示された実施形態では、処理液を吐出するためのノズル(41~43)は、真下に向けて処理液を吐出するようにアーム51,52に取り付けられている。従って、以下の説明において、各ノズル(41~43)それ自体の位置(詳細にはノズル吐出口の位置)と、各ノズル(41~43)から吐出された処理液の基板Wの表面への「着液点」の位置とは同じことを意味している。なお、処理ガスを供給するためのノズルは斜め下方に(基板Wの周縁に向けて)処理ガスを噴射する。
【0033】
以下の説明において、用語「着液点」は、ノズル(41~43)から円柱状に吐出される液体(液柱)の中心(円柱の中心軸)と基板Wの表面との交点を意味する。ノズルが真下に液体を吐出する場合、ノズルの位置(厳密にはノズル吐出口の中心軸の位置)と、着液点の位置とは同じである(高さ方向位置を除く水平方向位置に関して)。また、ノズルから円柱状に吐出された液体は、基板Wの表面に着液した瞬間に衝突の勢いで基板Wの表面上に広がる。従って、ノズルから吐出された液体の着液点が基板Wの回転中心Wcから半径方向外側に僅かに外れた位置にあったとしても、上記のように衝突の勢いで広がることにより、液体は基板Wの回転中心Wcを覆うことになる。つまり、この場合も、ノズルから吐出された液体は、基板の中心部(基板の回転中心Wcを包含する回転中心Wc近傍の領域)に液体が供給されていることになる。
【0034】
説明の便宜上、ノズルそれ自体の位置および着液点の位置を定義するために、基板Wの表面を、2つの領域I,IIに分割することとする。
図3に示すように、平面視においてノズルの移動軌跡(2つの円弧状の矢印で示す)の回転中心Wcにおける法線Nよりも第1ノズルアーム51側の領域を領域Iとし、法線Nよりも第2ノズルアーム52側の領域を領域IIとする。ノズルの位置(着液点の位置)はR値で表記する。ノズルの位置(着液点の位置)が領域I内にある場合には、R値は、ノズルの位置(着液点の位置)の基板Wの回転中心Wcからの半径方向距離×(+1)で表される。ノズルの位置(着液点の位置)が領域II内にある場合には、R値は、ノズルの位置(着液点の位置)の基板Wの回転中心Wcからの半径方向距離×(-1)で表される。
【0035】
以下の一連の工程が開始されてから終了するまでの間、基板Wは停止することなく回転し続けている。基板Wの回転速度は、必要に応じて変化させている。
【0036】
[薬液処理工程]
まず、第1ノズルアーム51に担持された薬液/リンスノズル41から、回転する基板Wの回転中心Wc(R=0mm)に着液するように薬液としてのDHFを所定流量で吐出する。基板Wの中心に着液したDHFは遠心力により基板Wの周縁に向けて広がりながら流れ、基板Wの表面の全体がDHFの液膜により覆われる。この状態を所定時間継続することにより、基板Wの表面に薬液処理が施される。
【0037】
[リンス工程]
次に、薬液/リンスノズル41から吐出する液体をDHFからDIWに切り替える。すなわち、基板Wの中心にDIWが着液するように、薬液/リンスノズル41からリンス液としてのDIWを所定流量で吐出する。
【0038】
次に、薬液/リンスノズル41からのDHFの着液点を回転中心Wc(R=0mm)に維持したまま、第2ノズルアーム52に担持されたリンスノズル43からも、回転中心Wcからやや離れた位置(例えばR=-42mm)に着液するようにDIWを吐出する。
【0039】
薬液/リンスノズル41およびリンスノズル43からのDIWの吐出を継続しつつ、第1ノズルアーム51および第2ノズルアーム52を同時に移動させ、薬液/リンスノズル41からのDIWの着液点を回転中心Wcからやや離れた位置(例えばR=+42mm)に移動させるとともに、リンスノズル43からのDIWの着液点を回転中心Wc(R=0mm)まで移動させる。その後、薬液/リンスノズル41からのDIWの吐出を停止する。
【0040】
なお、薬液/リンスノズル41およびリンスノズル43の両方が同時にDIWを吐出している間におけるノズル1つあたりの吐出流量は、薬液/リンスノズル41およびリンスノズル43の一方のみがDIWを吐出している間におけるノズル1つあたりの吐出流量より小さくすることが好ましい。2つのノズルを近接させて同時に大流量で液体を基板Wの表面に供給すると、液体同士の干渉により液跳ねが生じるおそれがある。
【0041】
上記のリンス工程において、基板Wの中心(または中心付近)に着液したDIWは遠心力により基板Wの周縁に向けて広がりながら流れ、基板Wの表面の全体がDIWの液膜により覆われる。これに伴い、基板Wの表面に残留していたDHFおよび反応生成物が、DIWにより洗い流される。
【0042】
なお、上記実施形態では、リンス工程の途中でリンス液を吐出するノズルを薬液/リンスノズル41からリンスノズル43に変更しているが、そうする理由は薬液/リンスノズル41と乾燥液ノズル42が同じノズルアームに担持されているからである。例えば、乾燥液ノズル42が別のノズルアーム(例えば第3のノズルアーム)に担持されているのなら、上記の変更操作を行う必要は無く、リンス液を吐出するノズルは薬液/リンスノズル41のみで構わない。
【0043】
[IPA置換工程]
次に、基板Wの表面上(パターンの凹部内も含む)にあるDIWをIPAにより置換するIPA置換工程について説明する。IPA置換工程の説明では、
図4および
図5も参照する。
【0044】
図4は、
図3の矢印A方向から見た乾燥液ノズル42(第1ノズルアーム51に担持されている)およびリンスノズル43(第2ノズルアーム52に担持されている)の動きを示している。
図4の左側が領域Iに相当し(R値がプラス)、
図4の右側が領域IIに相当する(R値がマイナス)。
図4では、図面の簡略化のためノズル42,43以外のノズルは表示していない。
【0045】
図5のグラフにおいて、上段が基板Wの回転速度、中段が乾燥液ノズル42からのIPAの吐出流量(細実線)およびリンスノズル43からのDIWの吐出流量(太実線)、そして下段が基板Wの表面における乾燥液ノズル42からのIPAの着液点の回転中心Wcからの距離(細実線)およびリンスノズル43からのDIWの着液点の回転中心Wcからの距離(太実線)、をそれぞれ示している。下段では、前述したR値の絶対値が表示されている(ノズル42,43からの液の着液点が、領域I,IIのいずれにあるかは問題としていない)。
図5のグラフにおいて、横軸は、IPA置換工程開始時点から起算した経過時間を示しており、単位は「秒」である。
【0046】
リンスノズル43が基板Wの回転中心Wcに向けて所定時間DIWを吐出してリンス工程が終了したら、リンスノズル43の位置およびDIWの吐出状態を維持したまま、乾燥液ノズル42をリンスノズル43に近接させる。このときの乾燥液ノズル42のR値は例えば-42mm、リンスノズル43のR値は0mmである。なお、リンス工程の後期からこの時点に至るまで、リンスノズル43からは比較的大きな吐出流量(例えば1500ml/min)でDIWが継続的に吐出されている(以上、
図4の(A)および
図5の経過時間0秒の時点を参照)。リンス工程の後期にリンスノズル43からDIWが吐出されている間に、乾燥液ノズル42をリンスノズル43に近接させても構わない。
【0047】
次いで、乾燥液ノズル42およびリンスノズル43を同時に(好ましくは同じ移動速度、例えば22mm/sec程度で)負方向に移動させ、乾燥液ノズル42を基板Wの回転中心の真上(R値が0mmの位置)まで移動させるとともに、リンスノズル43を基板Wの回転中心からやや離れた位置(例えばR値が-43mmの位置)に移動させる(以上、
図4の(B),(C)および
図5の経過時間0秒~2秒までの期間を参照)。
【0048】
この移動過程において、乾燥液ノズル42からのIPAの着液点の回転中心Wcからの距離と、リンスノズル43からのDIWの着液点の回転中心Wcからの距離とが概ね等しくなったときに(例えばIPAの着液点のR値が+22mm、DIWの着液点のR値が-20mmとなったときに)、リンスノズル43からのDIW吐出流量を第1DIW吐出流量(例えば1500ml/min)からそれより小さい第2DIW吐出流量(例えば1000ml/min)に低下させるとともに、乾燥液ノズル42から第1IPA吐出流量(例えば30ml/min)でIPAの吐出を開始する(
図4の(B)および
図5の経過時間1秒の時点を参照)。
【0049】
つまり、経過時間1秒の時点において、IPAおよびDIWの両方が基板Wに供給されるIPA置換工程の第1段階が開始される。このとき、乾燥液ノズル42が基板の回転中心Wcの真上に到達する前からIPAの吐出を開始することにより、基板Wの回転中心付近の領域に液が存在しなくなることをより確実に防止することができる。この効果は、リンスノズル43が基板の回転中心Wcの真上の位置を外れてから乾燥液ノズル42が基板の回転中心Wcの真上に到達するまでIPAの吐出を開始しなかった場合と比較しての効果である。
【0050】
乾燥液ノズル42からのIPAの着液点が回転中心Wcに一致し、かつ、リンスノズル43からのDIWの着液点が回転中心Wcからやや離れた位置(例えばR値が-42mmの位置)に到達したら、リンスノズル43を引き続き負方向に移動させる一方で、乾燥液ノズル42の移動方向を逆にして正方向に移動させる(
図4の(C)および
図5の経過時間2秒の時点を参照)。つまりリンスノズル43と乾燥液ノズル42とを反対方向に移動させてゆく。また、乾燥液ノズル42が回転中心Wcから周縁に向けて正方向に移動を開始すると同時またはほぼ同時に、基板Wの回転数を低下させる(1000rpm→700rpm)。基板Wの回転数を低下させることにより、基板Wの表面の回転中心Wc付近に乾燥領域が形成され始めるタイミングを遅らせることができる。
【0051】
このとき、リンスノズル43からのDIWの着液点の回転中心Wcからの距離(R値の絶対値)が乾燥液ノズル42からのIPAの着液点の回転中心Wcからの距離(R値の絶対値)よりも大きいという条件を常時満足するように、リンスノズル43と乾燥液ノズル42とを反対方向に移動させてゆく(
図4の(C)~(E)および
図5の下段の経過時間2秒~5.3秒の期間を参照)。
【0052】
またこのとき、
図4のグラフの下段に示すように、DIWの着液点のR値の絶対値とIPAの着液点のR値の絶対値との差が一定に維持されるように、リンスノズル43の移動速度と乾燥液ノズル42との移動速度を同じに維持してもよい。このときのリンスノズル43および乾燥液ノズル42の移動速度は、例えば20~50mm/secの範囲に設定することができる。また、DIWの着液点のR値の絶対値とIPAの着液点のR値の絶対値との差は、DIWおよびIPAの吐出流量にもよるが、40mm~90mm程度の範囲内にあることが好ましい。上記の差が大きすぎると、後述する液跳ね防止効果が低下する恐れがある。また、上記の差が小さすぎると、着液後のDIWと着液後のIPAとが衝突することにより液跳ねが生じるおそれがある。
【0053】
リンスノズル43が基板Wの周縁部近傍の位置(例えばDIWの着液点のR値が-140mmとなる位置)に到達したら(
図4の(E)を参照)、リンスノズル43の移動を停止し、リンスノズル43からのDIWの吐出も停止する。これと同時またはほぼ同時に、乾燥液ノズル42からのIPAの吐出を継続したまま、乾燥液ノズル42を回転中心Wcの真上の位置(R=0mm)まで移動させる。また、乾燥液ノズル42が回転中心Wcの真上の位置に到達するのと同時またはほぼ同時に、乾燥液ノズル42からのIPAの吐出流量を第2吐出流量(例えば75ml/min)まで増大させる(
図4の(E)~(F)および
図5の経過時間5.3秒以降を参照)。
【0054】
つまり、経過時間5.3秒の時点において、IPAおよびDIWの両方が基板Wに供給されるIPA置換工程の第1段階が終了し、IPAのみが基板Wに供給されるIPA置換工程の第2段階が開始される。その後、基板の回転中心WcへのIPAの供給を所定時間継続することにより、IPA置換工程の第2段階が終了する。
【0055】
なお、IPA置換工程の第1段階では、基板Wの中心側領域にIPAの液膜が形成され、周縁側(外周側)領域にIPAとDIWとの混合液の液膜が形成される。厳密に言うと、
図4の(B)の状態(経過時間1秒の時点)では、基板Wの回転中心Wcは、回転中心Wcからやや半径方向外側に着液した後に着液の勢いで回転中心Wcまで広がったDIWのみにより覆われており、IPAの着液点より半径方向外側の領域がIPAとDIWとの混合液により覆われている。その後、
図4の(C)~(E)に示すように、時間の経過とともに内側のIPAの液膜が存在する領域が広がってゆき、外側の混合液の液膜が存在する領域が狭まってゆく。そしてIPA置換工程の第2段階では、基板Wの表面の全域がIPAの液膜に覆われるようになる。
【0056】
つまり、IPA置換工程においては、基板Wの表面の部位毎に見ると、まず当該部位にあるDIWがIPAとDIWとの混合液により置換され、その後にIPAに置換されていることになる。
【0057】
IPA置換工程においては、乾燥液ノズル42からのIPAの着液点が回転中心Wcを離れて基板Wの周縁部に向けて移動し、再びIPAの着液点が回転中心Wcに戻るまでに、基板Wの表面の回転中心Wc付近に乾燥領域が形成されてはならない。意図しない乾燥領域が生じるとそこにパーティクル等の欠陥が生じるおそれがあるからである。実際の装置の運用において、
図4および
図5に例示された処理条件においては、基板Wの表面が疎水性であったとしても、基板表面の回転中心Wc付近に乾燥領域が生じることなく問題無く処理ができたことが確認されている。なお、回転中心Wc付近に乾燥が生じる場合には、乾燥液ノズル42からのIPAの吐出流量を増加させること、基板Wの回転速度を低下させること、IPAの着液点が回転中心Wcを離れてから再び回転中心Wcに戻るまでの時間を短くすること、等を適宜組み合わせることにより、対処することができる。
【0058】
上述したIPA置換工程では、リンスノズル43からのDIWの着液点の回転中心Wcからの距離が乾燥液ノズル42からのIPAの着液点の回転中心Wcからの距離よりも大きいという条件を常時満足するように、リンスノズル43および乾燥液ノズル42の着液点を半径方向外側に移動させている。このため、IPAの消費量を削減することができ、かつ、基板Wの表面が疎水性であったとしても液跳ねを防止または大幅に抑制することができる。なお、液跳ねが生じると、液受けカップで跳ね返った液滴が基板Wに付着すること、基板Wの周囲を浮遊する微小液滴が基板Wに付着することなどにより、基板Wが汚染されるおそれがある。
【0059】
以下に、上記の効果が得られる理由について説明する。リンスノズルから基板の中心部に向けてDIWを供給している状態から、リンスノズルからのDIWの吐出を停止し、その直後に乾燥液ノズルから基板の中心部に向けてIPAの吐出を開始したとする。この場合、IPAの液膜が基板の周縁部に広がる前に基板Wの周縁部でDIWの液膜が切れて当該周縁部が空気に晒されるおそれある。この事象は、基板Wの表面が疎水性である場合に特に生じ易い。乾燥液ノズルからのIPAの吐出流量を増大させて基板の表面の全域にIPAの液膜を速やかに広げることにより、上記の事象が生じることを抑制することができる。しかしながら、高価なIPAの使用量が増大してしまう。
【0060】
乾燥液ノズルから基板の中心部に向けてIPAを吐出し続ける一方で、リンスノズルから吐出されたDIWの着液点を徐々に基板の周縁に近づけてゆくことにより、基板の外側領域における液膜切れを防止しつつ、IPA液膜により被覆されている領域を基板の周縁に向けて広げてゆくことができる。
【0061】
乾燥液ノズルから吐出されたIPAの着液点を基板の回転中心に維持し続けた状態で、リンスノズルから吐出されたDIWの着液点を徐々に基板Wの周縁に近づけてゆく場合には、IPAの吐出流量を比較的高く維持しておく必要があることが発明者の実験により確認された。具体的には、一つの実験例において、IPAの吐出流量をある閾値(50ml/min)より低下させると、DIWの着液点がある半径方向位置(回転中心からの距離が85mm程度の位置)よりも外側に位置しているときに液跳ねが生じることが確認された。
【0062】
IPAの表面張力はDIWより大幅に低く、かつ、IPAとDIWとの相溶性も高いため、十分な膜厚のIPAの液膜が存在する基板の表面は、高い親水性を有する表面と同等であると見なすことができる。乾燥液ノズルから吐出されて基板の回転中心に着液したIPAにより基板上に形成される液膜の厚さは、半径方向外側にゆくに従って薄くなる。IPAの液膜が薄い場所にリンスノズルから比較的大吐出流量で吐出されたDIWが衝突すると、衝突点付近でIPAの液膜が破壊され、DIWが直接疎水性表面に衝突することにより液跳ねが生じるようになる。乾燥液ノズルからのIPAの吐出流量を増やせば液跳ねを防止することができるが、この場合も、高価なIPAの使用量が増大してしまう。
【0063】
上記の実施形態では、リンスノズル43からのDIWの着液点の回転中心Wcからの距離が乾燥液ノズル42からのIPAの着液点の回転中心Wcからの距離よりも大きいという条件を常時満足するように、両着液点を一緒に半径方向外側に移動させている。このため、DIWの着液点の半径方向位置に関わらず、DIWの着液点におけるIPAの液膜の厚さが十分な厚さに維持されるので、液跳ねの発生を防止することができる。
【0064】
[乾燥工程]
IPA置換工程の第2段階が終了したら(すなわちIPA置換工程が終了したら)、乾燥工程を実行する。まず、
図4の(F)の状態から、乾燥液ノズル42からのIPAの吐出を継続しながら、IPAの着液点の位置を基板Wの回転中心Wcから周縁に向けて正方向に移動させてゆく。乾燥液ノズル42の移動と同時に、第2ノズルアーム52に担持されたガスノズル44から乾燥用ガスとしての窒素ガスを吐出しながら、ガスノズル44も基板の周縁に向けて移動させてゆく。
【0065】
このとき、IPAの着液点の位置がガスノズル44から吐出された窒素ガスの主流の基板Wの表面への衝突点の位置よりも半径方向外側にあるという条件を常時満足するように、乾燥液ノズル42およびガスノズル44を反対方向に移動させてゆく。これにより、基板Wの中心部に形成された円形の乾燥領域が徐々に半径方向に広がってゆき、最終的には基板Wの表面の全体が乾燥する。基板Wの表面のうちの乾燥領域と非乾燥領域(IPA液膜が存在する領域)との間の境界よりもやや半径方向内側の位置にガスの主流が吹き付けられるように。乾燥液ノズル42およびガスノズル44を移動させることが好ましい。
【0066】
以上により1枚の基板Wに対する一連の処理が終了する。
【0067】
上記の実施形態によれば、基板Wの表面全体に液膜が存在し続けている状態を維持しつつ液跳ねの発生を防止することができる。
【0068】
上記の実施形態においては、IPA置換工程において、乾燥液ノズル42からのIPAの着液点が回転中心Wcに一致した後に、乾燥液ノズル42の移動方向を逆にして正方向に移動させていたが(
図4の(C)~(E)を参照)、これには限定されない。
図6の(C)~(E)に示すように、乾燥液ノズル42をリンスノズル43と同様に負方向に(つまり領域IIに)移動させてもよい。
【0069】
IPA置換工程においてIPAとDIWを同時に吐出する際に、DIWを吐出するノズルとして、
図7および
図8に記載した補助ノズル70を用いることもできる。この場合、処理ユニット16には、
図2および
図3に示した構成に加えてさらに補助ノズル70が追加される。従って、通常のリンス処理時には、薬液/リンスノズル41またはリンスノズル43を用いることができる。
【0070】
補助ノズル70は、例えば、液受けカップ60の上部開口近傍の液受けカップ60の上面に設けることができる。補助ノズル70は、
図7に示すように概ね放物線軌道を画くようにDIWを吐出する。補助ノズル70は矢印71で示すように回動(首振り)動作が可能であり、これにより補助ノズル70から吐出されたDIWの基板W上への着液点(着液点の半径方向位置)を変化させることができる。補助ノズル70の回動範囲は、平面視で、補助ノズル70から吐出されたDIWの示すベクトルがDIWの着液点における基板Wの運動方向を示すベクトルに概ね沿うように(少なくとも両ベクトルが逆方向を向かないように)、基板Wの回転方向(矢印ω)を考慮して決定される。
【0071】
なお、IPA置換工程において用いているIPAは、DIWより表面張力が大幅に低いため、その後の乾燥工程において、表面張力によるパターン倒壊を効果的に抑制する。IPAは、DIWより表面張力が低いだけでなく、DIWより揮発性が高く、かつDIWと置換容易であるため、半導体装置の製造において乾燥工程の直前において基板の表面を覆う用途に広く用いられている。IPAと同様の特性(特に低表面張力)を有しているのであれば、IPA以外の液体をIPA置換工程においてIPAの代わりに用いることが可能である。この場合、IPA置換工程は乾燥用液体置換工程と呼ばれる。なお、乾燥工程は、上記実施形態において記載した乾燥方法に限らず、例えば超臨界乾燥方法を用いることもできる。
【0072】
また、上記実施形態においては、DIWをIPAで置換する置換工程(IPA置換工程)について記載したが、IPA置換工程において用いた技術は、基板の表面を覆う第1処理液を、当該第1処理液より表面張力が小さい第2処理液に置換する工程において広く用いることができる。この場合も、第1処理液から第2処理液へと置換を行うにあたり、基板Wの表面全体に液膜が存在し続けている状態を維持しつつ液跳ねの発生を防止することができる。
【0073】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0074】
基板は半導体ウエハに限定されるものではなく、ガラス基板、セラミック基板等の半導体装置の製造において用いられる他の種類の基板であってもよい。