(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189512
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】室内環境最適化システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/63 20180101AFI20221215BHJP
F24F 7/00 20210101ALI20221215BHJP
F24F 11/52 20180101ALI20221215BHJP
F24F 110/12 20180101ALN20221215BHJP
F24F 110/22 20180101ALN20221215BHJP
F24F 110/32 20180101ALN20221215BHJP
F24F 110/70 20180101ALN20221215BHJP
F24F 120/10 20180101ALN20221215BHJP
【FI】
F24F11/63
F24F7/00 Z
F24F11/52
F24F110:12
F24F110:22
F24F110:32
F24F110:70
F24F120:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098129
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】野城 智也
(72)【発明者】
【氏名】馬郡 文平
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツォ バルディーニ
【テーマコード(参考)】
3L056
3L260
【Fターム(参考)】
3L056BA04
3L260BA12
3L260CA03
3L260CA12
3L260CA13
3L260CA17
3L260CA28
3L260CA32
3L260CA33
3L260CA36
3L260EA02
3L260EA22
3L260EA28
3L260FC08
3L260GA17
(57)【要約】
【課題】自然換気を行った後の室内の温熱及び空気質を含む室内環境の快適性をフィードバックすることができる室内環境最適化システムを提供する。
【解決手段】建物の室内を自然換気させる室内環境最適化システムであって、室内の温熱及び空気質を含む室内環境に関するデータを計測する複数のセンサを有する検出部と、検出部から取得した検出値を室内環境における快適性の指標を算出する環境モデルに適用し、算出された指標に基づいて室内環境が快適でないと判定された場合、室内の換気量を算出し、換気量に基づいて室内に設けられた開閉自在な建具の開口量を算出する制御部と、建具を開口量に応じて開放させるための所定の報知を行う報知部と、報知に基づいて建具の開口動作が行われた場合、検出値に基づいて開口量を再計算すると共に、再計算の結果に基づいて、環境モデルのパラメータを調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の室内を自然換気させる室内環境最適化システムであって、
前記室内の温熱及び空気質を含む室内環境に関するデータを計測する複数のセンサを有する検出部と、
前記検出部から取得した検出値を前記室内環境における快適性の指標を算出する環境モデルに適用し、算出された前記指標に基づいて前記室内環境が快適でないと判定された場合、前記室内の換気量を算出し、前記換気量に基づいて前記室内に設けられた開閉自在な建具の開口量を算出する制御部と、
前記建具を前記開口量に応じて開放させるための所定の報知を行う報知部と、
前記報知に基づいて前記建具の開口動作が行われた場合、前記検出値に基づいて前記開口量を再計算すると共に、再計算の結果に基づいて、前記環境モデルのパラメータを調整する、
室内環境最適化システム。
【請求項2】
前記建具が開放された後の前記室内環境の快適性を評価する入力操作を受け付ける操作部を備え、
前記制御部は、前記入力操作において入力された入力値に基づいて前記開口量を再計算すると共に、所定期間経過後における前記入力操作に基づく再計算の集計結果に基づいて、前記環境モデルのパラメータを調整する、
請求項1に記載の室内環境最適化システム。
【請求項3】
前記建具を開閉させる駆動部を備え、
前記制御部は、前記開口量の算出結果に基づいて駆動部を制御し前記開口量を自動調整する、
請求項1又は2に記載の室内環境最適化システム。
【請求項4】
前記建具は、回転軸回りに開閉動作を行う回転窓であり、
前記制御部は、前記駆動部を制御して前記回転窓の前記開口量に対応する回転角を調整する、
請求項3に記載の室内環境最適化システム。
【請求項5】
前記検出部は、室外において風向、風速、温度、湿度を検出し、室内において温度、湿度、CO2濃度を検出する複数の前記センサを備える、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の室内環境最適化システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記建具の形状、開閉方式、サイズ、個数、設置位置に応じて最適な前記開口量を算出する、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の室内環境最適化システム。
【請求項7】
前記制御部は、複数の前記建具が設けられている場合、前記室内において所定方向に気流が発生するように各前記建具の前記開口量を個別に算出する、
請求項1から6のうちいずれか1項に記載の室内環境最適化システム。
【請求項8】
前記検出部は、前記室内環境の快適性を低下させる不快物質を検出するセンサを備え、
前記制御部は、前記不快物質の検出値が所定の基準以上である場合、前記基準未満である場合に比して前記開口量を低下させるよう再計算する、
請求項1から7のうちいずれか1項に記載の室内環境最適化システム。
【請求項9】
前記室内を利用するユーザを検出するセンサを備え、
前記制御部は、前記ユーザの前記室内の使用状態の検出値に基づいて前記使用状態の属性を学習し、前記属性に応じて前記パラメータを調整する、
請求項1から8のうちいずれか1項に記載の室内環境最適化システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記属性が前記ユーザの集団による使用状態である場合、前記集団が発生する熱量を算出し、前記熱量に基づいて前記開口量を算出する、
請求項9に記載の室内環境最適化システム。
【請求項11】
前記建物は、複数の部屋を有し、
前記制御部は、前記部屋毎に設定された前記環境モデルの前記パラメータを調整する、
請求項1から10のうちいずれか1項に記載の室内環境最適化システム。
【請求項12】
前記制御部は、複数の前記建物から検出値を取得し、結果に基づいて各前記建物が有する前記部屋毎に設定された前記環境モデルの前記パラメータを調整する、
請求項11に記載の室内環境最適化システム。
【請求項13】
前記制御部は、過去に取得された前記検出値、前記開口量の算出値、及び前記再計算の結果に基づいて学習を行い、前記検出部から取得した現在の検出値に基づいて、前記室内の環境変化の予測値を算出すると共に、前記開口量を算出する、
請求項1から12のうちいずれか1項に記載の室内環境最適化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の室内を自然換気させる室内環境最適化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、部屋が設けられた建物の室内の温度、湿度、空気質を含む室内環境の快適化と省エネルギー化とに向けた取り組みとして、空調装置を極力使用せずに自然換気を用いることが研究されている。室外環境が室内環境に比して快適である場合、自然換気を用いることが望ましい。
【0003】
特許文献1には、例えば、屋外の風向及び風速の測定に基づいて、予め設定された窓等の開閉パターン毎に設定された室内の快適性に相関する指標値を予測し、窓等の開閉パターンを制御し自然換気するシステムが記載されている。また、特許文献2には、室内外の温度、湿度の検出値に基づいて、室外の温度、湿度が快適であると判定された場合、自然換気を促す表示を表示部に表示するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-122563号公報
【特許文献2】特開2014-219124号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Larsen TS. Natural Ventilation Driven by Wind and Temperature Difference. 2006;(2):158. Available from: http://vbn.aau.dk/da/publications/natural-ventilation-driven-by-wind-and-temperature-difference(63925380-8137-11db-8b97-000ea68e967b).html
【非特許文献2】Erhart T, Guerlich D, Schulze T, Eicker U. Experimental validation of basic natural ventilation air flow calculations for different flow path and window configurations. Energy Procedia. 2015;78:2838-43. Available from: http://dx.doi.org/10.1016/j.egypro.2015.11.644
【非特許文献3】Nicol F, Humphreys MA, Roaf S. Adaptive Thermal Comfort: Principles and Practice. Oxon (UK): Routledge; 2012.
【非特許文献4】ANSI/ASHRAE. Standard 55-2017: Thermal Environmental Conditions for Human Occupancy. 2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の自然換気に関する技術によれば、システムが設定した条件に応じて自然換気が行われ、或いは自然換気が促されていた。特許文献1及び特許文献2に記載された技術によれば、自然換気がシステム上において予め設定された制御パターンに依存する。建物内に複数の部屋が存在する場合、各部屋の位置に応じて室内環境が異なり、換気されるべき換気量が異なる。
【0007】
特許文献1及び特許文献2に記載された技術によれば、建物内に複数の部屋が存在する場合、各部屋の位置に応じて個別に制御パターンを設定しなければならず、設定が煩雑化する。また、特許文献1及び特許文献2に記載された技術によれば、制御パターンについて行われた換気後の室内の快適性がフィードバックされるものでは無かった。また、従来の技術によれば、空気質に関する快適性については、対象となっていなかった。
【0008】
本発明は、自然換気を行った後の室内の温熱及び空気質を含む室内環境の快適性をフィードバックすると共に、計測データに基づいて予測を行いフィードフォワードすることができる室内環境最適化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、建物の室内を自然換気させる室内環境最適化システムであって、前記室内の温熱及び空気質を含む室内環境に関するデータを計測する複数のセンサを有する検出部と、前記検出部から取得した検出値を前記室内環境における快適性の指標を算出する環境モデルに適用し、算出された前記指標に基づいて前記室内環境が快適でないと判定された場合、前記室内の換気量を算出し、前記換気量に基づいて前記室内に設けられた開閉自在な建具の開口量を算出する制御部と、前記建具を前記開口量に応じて開放させるための所定の報知を行う報知部と、前記報知に基づいて前記建具の開口動作が行われた場合、前記検出値に基づいて前記開口量を再計算すると共に、再計算の結果に基づいて、前記環境モデルのパラメータを調整する。
【0010】
本発明によれば、検出部の検出値に基づいて制御部が建物の外部環境が内部環境に比して快適であると判定した場合に、室内の建具の開口量を算出し、建具の開放を促す報知を室内に報知することにより、空調装置によらずに室内を自然換気させることができる。本発明によれば、検出値に基づくフィードバック制御により開口量を再計算することができ、更に、開口量の再計算結果を用いて機械学習を行い、開口量の計算を行うための環境モデルに含まれるパラメータを調整することにより、より正確に開口量を算出することができる。
【0011】
また、本発明の一態様は、前記建具が開放された後の前記室内環境の快適性を評価する入力操作を受け付ける操作部を備え、前記制御部は、前記入力操作において入力された入力値に基づいて前記開口量を再計算すると共に、所定期間経過後における前記入力操作に基づく再計算の集計結果に基づいて、前記環境モデルのパラメータを調整する。
【0012】
本発明によれば、自然換気を行った状態における室内のユーザの室内の快適性に対する評価をフィードバック制御により開口量を再計算することができる。本発明によれば、開口量の再計算結果を用いて機械学習を行い、開口量の計算を行うための環境モデルに含まれるパラメータを調整することにより、より正確に開口量を算出することができる。
【0013】
また、本発明の一態様は、前記建具を開閉させる駆動部を備え、前記制御部は、前記開口量の算出結果に基づいて駆動部を制御し前記開口量を自動調整する。
【0014】
本発明によれば、開口量を算出した建具の開口量を駆動部により自動的に制御することができ、自然換気の利便性を向上することができる。
【0015】
また、本発明の一態様は、前記建具は、回転軸回りに開閉動作を行う回転窓であり、前記制御部は、前記駆動部を制御して前記回転窓の前記開口量に対応する回転角を調整する。
【0016】
本発明によれば、建具が回転窓である場合、制御部により駆動部が制御されることにより建具の回転角を自動的に調整することができる。
【0017】
また、本発明の一態様は、検出部は、室外において風向、風速、温度、湿度を検出し、室内において温度、湿度、CO2濃度を検出する複数の前記センサを備える。
【0018】
本発明によれば、複数のセンサによる検出値に基づいて、室内の温熱及び空気質に関する快適性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の一態様は、前記制御部は、前記建具の形状、開閉方式、サイズ、個数、設置位置に応じて最適な前記開口量を算出する。
【0020】
本発明によれば、建具に形状、開閉方式、サイズ等の個体差があっても個体差に応じて室内を快適に自然換気させる建具の開口量を算出することができる。
【0021】
また、本発明の一態様は、前記制御部は、複数の前記建具が設けられている場合、前記室内において所定方向に気流が発生するように各前記建具の前記開口量を個別に算出する。
【0022】
本発明によれば、建具が複数個設けられている場合、各建具の設置位置に応じて開口量を算出し、室内が快適となるように室内に所定方向に気流を発生させることができる。
【0023】
また、本発明の一態様は、前記検出部は、前記室内環境の快適性を低下させる不快物質を検出するセンサを備え、前記制御部は、前記不快物質の検出値が所定の基準以上である場合、前記基準未満である場合に比して前記開口量を低下させるよう再計算する。
【0024】
本発明によれば、室外環境において花粉や粒子状物質等の不快物質が検出された場合、開口量を再計算し、室内の快適性を保持することができる。
【0025】
また、本発明の一態様は、前記室内を利用するユーザを検出するセンサを備え、前記制御部は、前記ユーザの前記室内の使用状態の検出値に基づいて前記使用状態の属性を学習し、前記属性に応じて前記パラメータを調整する。
【0026】
本発明によれば、ユーザの部屋の使用状態を学習することにより部屋の使用方法に応じて開口量の算出結果を調整することができる。
【0027】
また、本発明の一態様は、前記制御部は、前記属性が前記ユーザの集団による使用状態である場合、前記集団が発生する熱量を算出し、前記熱量に基づいて前記開口量を算出する。
【0028】
本発明によれば、ユーザの集団を熱源として取り扱い、開口量を算出することにより、ユーザの集団が部屋を利用している場合の建具の開口量を自動的に調整することができる。
【0029】
また、本発明の一態様は、前記建物は、複数の部屋を有し、前記制御部は、前記部屋毎に設定された前記環境モデルの前記パラメータを調整する。
【0030】
本発明によれば、建物において複数の部屋が設けられていても部屋毎に建具の開口量を算出することで各部屋に応じた自然換気を行わせることができる。
【0031】
また、本発明の一態様は、前記制御部は、複数の前記建物から検出値を取得し、結果に基づいて各前記建物が有する前記部屋毎に設定された前記環境モデルの前記パラメータを調整する。
【0032】
本発明によれば、更に複数の建物が有する部屋毎に自然換気を管理することができる。
【0033】
また、本発明の一態様は、前記制御部は、過去に取得された前記検出値、前記開口量の算出値、及び前記再計算の結果に基づいて学習を行い、前記検出部から取得した現在の検出値に基づいて、前記室内の環境変化の予測値を算出すると共に、前記開口量を算出する。
【0034】
本発明によれば、室内環境及び室外環境の状態に応じて室内環境の変化を生じさせる前に、フィードフォワード制御を行うことにより即時に室内の環境変化の予測値や開口量を算出することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、自然換気を行った後の室内の温熱及び空気質を含む室内環境の快適性をフィードバックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の実施形態に係る室内環境最適化システムの構成を示すブロック図である。
【
図5】報知部に表示される表示画面の一例を示す図である。
【
図6】報知部に表示される表示画面の一例を示す図である。
【
図7】室内環境における指標を計算するための計算式の一例を示す図である。
【
図8】室内環境における快適性を計算するための計算式の一例を示す図である。
【
図9】外気温の平均値と室内の快適な温度範囲との関連性を示す図である。
【
図10】外気温が快適な温度範囲を月毎に示した図である。
【
図11】室内環境最適化システムの処理を概略的に示す図である。
【
図12】管理装置において実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】建物内の複数の部屋を管理する変形例を示す図である。
【
図14】複数の建物を管理する変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る室内環境最適化システムの実施形態について説明する。室内環境最適化システムは、建物に設けられた部屋の内部を自然換気させるものである。
【0038】
図1に示されるように、室内環境最適化システム1は、例えば、建物Bが有する部屋Rの内部(以下、室内ともいう)に設けられた第1検出部2(検出部)と、建物Bの外部(以下、屋外ともいう)に設けられた第2検出部3(検出部)と、部屋Rに設けられた少なくとも1つの開閉自在な建具4と、室内に設けられた報知部6と、室内に設けられた操作部7と、部屋RとネットワークWを介して接続された管理装置10と、を備える。
【0039】
第1検出部2は、室内の温熱及び空気質を含む室内環境に関するデータを計測する複数のセンサ2-1~2-n(nは自然数)を有する。第1検出部2は、例えば、室内環境に関するデータを計測する。センサ2-nは、例えば、温度、湿度、CO2濃度、気圧、風量、風向等を計測する。センサ2-nは、室内において同一の計測対象に対して異なる位置に複数個設けられていてもよい。センサ2-nは、所望の室内環境に関する指標を計測するものが適宜用いられる。
【0040】
第2検出部3は、屋外の温熱及び空気質を含む屋外環境に関するデータを計測する複数のセンサ3-1~3-m(mは自然数)を有する。第2検出部3は、例えば、屋外環境に関するデータを計測する。センサ3-mは、例えば、温度、湿度、CO2濃度、気圧、風量、風向、降雨量、等を計測する。第2検出部3は、花粉や粒子状物質等の室内環境の快適性を低下させる不快物質を検出してもよい。
【0041】
センサ3-mは、屋外において同一の計測対象に対して異なる位置に複数個設けられていてもよい。センサ3-mは、所望の室内環境に関する指標を計測するものが適宜用いられる。上述したセンサ2-n,3-mは、温度を計測する場合、温度センサの他、カメラの画像に基づいて温度分布を計測するものであってもよい。第1検出部2及び第2検出部3の計測値は、管理装置10にネットワークWを介して出力される。
【0042】
管理装置10は、建物Bに設けられた部屋Rの内部の環境を管理する。管理装置10は、建物Bに設けられていてもよいし、ネットワークWを介して接続される外部サーバであってもよい。管理装置10は、パーソナルコンピュータ等により実現される情報処理装置である。管理装置10は、建具4の開口量を算出する制御部12と、制御部12の制御を実行する際に必要なデータを記憶する記憶部14とを備える。
【0043】
記憶部14は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)、フラッシュメモリ等の記憶媒体である。記憶部14は、管理装置10に内蔵されていてもよいし、外部記憶装置でもよい。また、記憶部14は、ネットワークWを介して接続される記憶サーバであってもよい。記憶部14には、建具4(窓)の数、開閉方式、建具4の位置、建具4の大きさ、建具4の開口方向、開口角度、駆動部5の有無、部屋Rの用途、等の各データと部屋RのIDとが対応付けられて記憶されている。記憶部14には、室内の換気の必要性を判定し、建具4の開口量を演算するために実行されるプログラムと、プログラムに適用される複数のパラメータが記憶されている。記憶部14には、建具4の開口量を演算するために実行されるプログラムが記憶されている。プログラムは、例えば、後述する室内環境における快適性の指標を算出する環境モデルEを用いて演算処理を行う。
【0044】
制御部12は、複数のセンサ2-n,3-mから検出値を取得し、検出値を環境モデルEに適用して室内環境が快適であると感じる指標を算出する。ここで、環境モデルとは、例えば、過去の検出値に基づいてディープラーニングを用いた教師あり学習を実行し、検出値を入力値として快適な室内環境の現在の指標、換気量、建具4の開口量、制御量等の室内環境の快適性に関する指標を算出する機械学習モデルである。制御部12は、例えば、室内環境の快適性の指標として室内の気温の温度範囲を算出する。
【0045】
室内環境が快適となる気温の温度範囲は、検出部2,3の検出値に基づいて算出される。快適な気温の範囲は、過去の気温のデータベースを教師データとして算出される。データベースは、例えば、気象台から取得される過去10年分の気温データの平均値である。制御部12は、日付、外部環境における風向、風速を含む風の状態に応じた快適な温度範囲を算出する。
【0046】
制御部12は、算出した指標に基づいて室内環境が快適であるか否かを判定する。制御部12は、検出値に基づいて、算出した快適性を示す指標と現在の室内環境の指標とを比較し現在の室内環境の快適性を判定する。室内環境の快適性の判定は、室内の温度、湿度、空気質等の1つ以上を含む指標に基づいて総合的に判定される。
【0047】
制御部12は、検出された現在の検出値と算出された快適性を示す指標とを比較し、現在の室内環境が快適か否かを判定する。制御部12は、判定結果に基づいて、現在の室内環境の快適性に関する情報を報知部6に報知させる。制御部12は、現在の室内環境の状態が快適である指標の範囲外であり、不快であると判定した場合、目標範囲と現在の室内環境の状態とに基づいて室内の換気量を算出する。制御部12は、算出した換気量に基づいて、建具4の開口量及び開放時間を算出する。
【0048】
制御部12は、第2検出部3により花粉や粒子状物質等の不快物質検出され、不快物質の検出値が所定の基準以上となった場合、基準未満である場合に比して開口量を低下させるよう建具4の開口量を計算してもよい。
【0049】
建具4は、例えば、回転軸回りに開閉動作を行う回転窓である。建具4は、スライド窓、引違窓、ルーバー窓等の他の開閉方式を有する窓であってもよい。建具4には、建具4を開閉させる駆動部5が設けられている。駆動部5は、制御部12により制御され、建具4の開口量を調整する駆動部5は、モータ、ギヤ等の駆動装置を有し、制御部12に制御されて建具4の種類に応じた開口量の調整を行う。駆動部5は、例えば、建具4が回転窓である場合、回転窓の開放角度を調整する。
【0050】
制御部12は、算出した開口量に基づいて駆動部5を制御し開口量を自動調整する。制御部12は、建具4が回転窓である場合、駆動部を制御して回転窓の開口量に対応する回転角を調整し室内を自然換気する。駆動部5は、設けられていなくてもよい。駆動部5が設けられていない場合、制御部12は、開口量の算出結果に基づいて、室内のユーザに建具4の開口量に応じて建具4を開放時間において開放させるための所定の報知を報知部6に行わせてもよい。
【0051】
報知部6は、室内の快適性と、建具4の開口量等に関する情報を報知するユーザインタフェースである。報知部6は、例えば、室内環境の快適性、建具4の開口量に関する所定の情報を表示するディスプレイ装置である。報知部6は、ディスプレイ装置の他、室内環境の快適性、建具4の開口量に関する所定の情報を音声により伝達するスピーカであってもよいし、制御部12の判定結果に応じて所定の発光パターンを表示する発光体であってもよい。
【0052】
報知部6は、例えば、室内に設けられているディスプレイ装置である。報知部6は、ユーザが有しているスマートフォン等の携帯端末の表示部を利用して実現されてもよい。報知部6は、スマートフォンにより建具4とBluetooth(登録商標)を用いて直接的に通信して表示内容を表示してもよいし、ネットワークWを介して管理装置10と通信し、表示内容を表示してもよい。
【0053】
報知部6には、例えば、外部環境における気温、湿度、風速、CO2濃度等の温熱と空気質に関する情報、及び、室内環境における気温、湿度、CO2濃度、快適性等の室内の温熱と空気質に関する情報が表示される。報知部6には、制御部12において判定された室内環境の快適性の判定結果が出力される。判定結果が不快である場合、報知部6には、開放すべき建具4の開口量が出力される。ユーザは、報知部6に出力された開口量に従って、建具4の開口量を調整する。上記構成により、建具4に駆動部5が設けられていない既存の建物Bに室内環境最適化システム1を簡易な構成により導入することができる。
【0054】
建具4が駆動部5或いはユーザの開放動作により開放された場合、室内の自然換気が開始される。自然換気を開始してから所定時間が経過すると、室内環境は、自然換気が安定的に行われる定常状態に遷移する。制御部12により算出された開口量に従って、自然換気を行った結果、室内環境が環境モデルにより算出された指標の通りに快適とならない場合も生じ得る。実際の自然換気量は、室内の換気量は、建具4の形状、サイズ、個数、設置位置等の条件やその他の不確定要素によって異なると共に、外部環境や内部環境の状態も時々刻々と変動するからである。
【0055】
室内環境最適化システム1においては、自然換気が行われた後も、検出値に基づいてフィードバック制御を行うことにより、快適性を実現する精度を向上させる。
【0056】
制御部12は、報知後において駆動部5により建具4の開口動作が行われ後、或いはユーザにより建具4の開口動作が行われた後、自然換気開始から所定時間が経過した場合、検出値に基づいて開口量を再計算するフィードバック制御を行う。制御部12は、例えば、フィードバック制御において、室温の検出値が快適な室温の温度範囲に比して高い場合、開口量を広げるように再計算値を算出し、室温の検出値が快適な室温の温度範囲に比して低い場合、開口量を狭めるように再計算値を算出する。制御部12は、室温だけでなく、湿度、空気質に基づいて、フィードバック制御を行ってもよい。
【0057】
制御部12は、開口量の再計算結果に基づいて駆動部5を制御して建具4の開口量を再調整する。駆動部5が無い場合、制御部12は、報知部6に開口量の再計算結果を報知させ、ユーザに建具4の開口量の再調整を促す。
【0058】
制御部12は、報知後において第2検出部3により花粉や粒子状物質等の不快物質検出され、不快物質の検出値が所定の基準以上となった場合、基準未満である場合に比して開口量を低下させるよう建具4の開口量を再計算してもよい。制御部12は、再計算を行った場合、検出値、再計算結果、再計算に基づく自然換気後の検出値のデータを日時データと関連付けて記憶部14に記憶する。
【0059】
また、自然換気後の室内環境において、ユーザが実際に感じる快適性と計算結果とが必ずしも一致しない場合がある。そこで、室内環境最適化システム1においては、建具4が開放された後の室内環境の快適性を評価する入力操作を受け付ける操作部7を備えていてもよく、制御部12は、入力操作に基づいてフィードバック制御を行ってもよい。
【0060】
操作部7は、例えば、タッチパネル、キーボード、ボタン等の入力装置を有するユーザインタフェースである。操作部7は、タッチパネルである場合、報知部6と一体であってもよい。報知部6には、例えば、自然換気を行った後の快適性について評価する表示画像が出力される。表示画像には、例えば、快適性に関する複数の入力項目が表示される。各項目には現在の室内環境の快適性に対するプラス、マイナスのレベルを操作部7の入力操作により入力することができる。入力操作は、レベルの入力の他、暑い、寒い、蒸し暑い、乾燥等の感覚的な指標に基づく入力により行われてもよい。
【0061】
制御部12は、入力操作の内容に基づいてフィードバック制御を行い、建具4の開口量を再計算する。制御部12は、開口量の再計算結果に基づいて駆動部5を制御して建具4の開口量を再調整する。制御部12は、例えば、室内の温度に関する評価項目が暑い(温度を下げる)という操作を受け付けた場合、開口量を増大させるように再計算し、寒い(温度を上げる)という操作を受け付けた場合、開口量を減少させるように再計算する。制御部12は、再計算を行った場合、検出値、再計算結果、再計算に基づく自然換気後の検出値のデータを記憶部14に記憶する。
【0062】
制御部12は、所定期間経過後、検出値に基づく再計算の集計結果、及び入力操作に基づく再計算の集計結果を教師データとして機械学習を行い、環境モデルEのパラメータを調整し、開口量の計算結果の精度を更に向上させてもよい。上述したように室内環境最適化システム1においては、フィードバック制御により開口量の再計算を短時間に反映させると共に、所定期間経過後に再計算結果を教師データとして機械学習を行って環境モデルEのパラメータを調整することにより、開口量の計算精度を更に向上させることができる。
【0063】
制御部12は、検出値に基づいてフィードフォワード制御を行ってもよい。制御部12は、過去に行った第1検出部2及び第2検出部3から取得した検出値と、入力操作の入力値と、フィードバック制御に基づく開口量の計算値及び環境モデルのパラメータの再計算の結果を含む過去データを教師データとして学習し、第1検出部2及び第2検出部3により検出された現在の検出値に基づいて、フィードフォワードにより室内の温度、湿度、空気質を含む環境変化の予測値を算出すると共に、開口量を算出してもよい。
【0064】
制御部12は、フィードバック制御において、室内環境及び室外環境の変化に対して行われた窓に対する制御結果に基づいて、室内環境に変化が生じた際に再計算を行っていた。これに対して、フィードフォワード制御においては、制御部12は、室内環境及び室外環境の状態に応じて室内環境の変化を生じさせる前に、即時に室内の環境変化の予測値や開口量を算出することができる。
【0065】
以下、部屋R、建具4の具体的な構成や、管理装置10において実行される具体的な処理方法ついて説明する。
【0066】
図2に示されるように、部屋Rには、複数の室内用のセンサ2-nと、扉Dと、建具4が設けられている。複数の室内用のセンサ2-nは、壁Lの室内側の複数の壁面の所定位置に取り付けられている。室内用のセンサ2-nは、例えば、温度、湿度、CO2濃度、気圧、室内を利用するユーザUの存在等を検出する。
【0067】
扉Dは、開閉自在に壁Lに設けられている。扉Dは、例えば、一般的な片開き型に形成されている。扉Dは、スライド型に形成されていてもよい。扉Dが設けられた壁面に対向する壁面には、建具4が設けられている。
【0068】
図3に示されるように、建具4は、例えば、室内から室外側に開く片開きの回転窓である。建具4は、例えば、壁側に設けられた枠部4Aと、枠部4Aに対して回転自在に取り付けられた窓枠4Bとを備えている。窓枠4Bは、例えば、ガラス窓4Fを備え、上下方向に沿った回転軸4Lにより回転自在に枠部4Aに取り付けられている。回転軸4Lは、室内側から室外側に見て左右のいずれかの側に設けられている。事例においては、右側に回転軸4Lが設けられている。
【0069】
図4に示されるように、枠部4Aには、例えば、複数の窓用のセンサ2-n、駆動部5、報知部6が設けられている。窓用のセンサ2-nは、例えば、温度、湿度、静圧、動圧、窓枠4Bの開放角度、室内を利用するユーザの存在の有無を検出するセンサである。静圧センサと動圧センサの検出値は、例えば、ベルヌーイ式に基づいて開放された窓枠4Bを流通する空気の流速を算出するために用いられる。駆動部5は、ギヤ、モータ等を備える。駆動部5は、設けられていなくてもよい。
【0070】
報知部6は、例えば、ガラス窓4Fに表示画像6Mを表示するディスプレイ装置である。報知部6は、ガラス窓4F(表示画像6M)をタッチパネルとする操作部7であってもよい。報知部6は、ユーザの存在の有無を検出するセンサ2-nの検出値に基づいて表示画像6Mを表示する。ユーザの存在は、例えば、人感センサ、モーションセンサ、カメラ等のセンサが用いられる。
【0071】
報知部6が設けられていない場合、建具4等に2次元バーコード等の情報提供サイトへの誘導表示を記載し、管理装置10とネットワークWを介して通信させ、ユーザが所有するスマートフォン等の表示部に表示画像6Mを表示するようにしてもよい。また、ユーザが所有するスマートフォン等と建具4とをBluetooth等の無線通信手段を用いて通信させ、スマートフォン等の表示部に表示画像6Mを表示するようにしてもよい。
【0072】
図5に示されるように、表示画像6Mには、例えば、室内の快適性等の情報を表示する第1表示部6M1、窓4Fの開放角度を表示する第2表示部6M2、部屋Rの外部環境及び内部環境の状態に関する情報を表示する第3表示部6M3が表示される。第1表示部6M1には、例えば、室内温度と外部温度との気温差に基づく温度に関する快適性や、CO2濃度が所定の基準を超えた場合の不快性等の情報が表示される。第3表示部6M3には、例えば、外部環境における気温、湿度、風速に関する情報、内部環境における気温、湿度、CO2濃度等の空気質に関する情報が表示される。
【0073】
図6に示されるように、ユーザが建具4に近づいた場合、ユーザの存在の有無を検出するセンサ2-nの検出値に基づいて表示画像6Mが表示される。室内の内部環境に自然換気が必要である場合、表示画像6Mにおいて、第1表示部6M1に所定の表示画像6M(報知画像)が表示される。この時、第2表示部6M2には、制御部12により算出された窓枠4Bの開放角度(
図6の例では35°)が表示される。第3表示部6M3には、例えば、部屋Rの外部環境及び内部環境の温度が表示される。
図6の例では、外部環境における風及び気温の状態、及び内部環境の気温の状態が表示されている。
【0074】
図7には、制御部12が計算に用いる環境モデルEのうち、換気に関する要素を算出するための複数の計算式の一例が示されている。各式のうち、太字で示されているものは、第1検出部2及び第2検出部3におけるいずれかのセンサにより検出される検出値である。数式(1)によれば、窓枠4Bの開放面積:Aeffに基づく建具4からの空気の換気量:Q(流量)が算出される(例えば、非特許文献1参照)。式(1)における流速は、枠部4Aに設けられた動圧センサ、静圧センサの検出値の差(Δp)に基づいて算出される。
【0075】
数式(2)によれば、窓枠4Bの開放面積:Aeffが算出される(例えば、非特許文献2参照)。数式(3)によれば、窓枠4Bにおける横枠のセンサ取り付け位置までの長さ:dxとセンサ取り付け位置における窓枠4Bの開放距離:dyに基づく窓枠4Bの開放角度:γが算出される(例えば、非特許文献3参照)。数式(4)によれば、換気量:Qと流速Vnに基づいて室内の換気率:ACRが算出される。数式(5)によれば、室内の換気に必要な残り時間が算出される。
【0076】
図8には、制御部12が計算に用いる環境モデルEのうち、快適性に関する要素を算出するための複数の計算式の一例が示されている。各式のうち、太字で示されているものは、第1検出部2及び第2検出部3におけるいずれかのセンサより検出される検出値である。
【0077】
数式(6)によれば、第2検出部3の検出値に基づいて室外の快適な温度:Tcomfが算出される(例えば、非特許文献3参照)。数式(7)によれば、室内の気温:Tindに基づいて室内の換気後の温度:Topが算出される(例えば、非特許文献4参照)。但し、Cav、は風速に依存する係数である。数式(8)によれば、室内の快適な温度範囲の上限温度:Top,l1と、下限温度:Top,l2とが算出される。但し、Uc、は風速に依存する係数である(例えば、非特許文献4参照)。現在の室内の気温が、算出された室内の快適な温度範囲内である場合、快適と判定され、それ以外の場合、不快と判定される。
【0078】
数式(9)によれば、室内の平均放射温度:Trが算出される。平均放射温度は、ユーザの周囲(室内気温:Tind、壁温度:Ts,wall、窓温度:Ts,glass)から受ける熱放射を平均化した温度表示である。ユーザは、平均放射温度の値が気温に比して高いと、周囲から受ける放射熱による暑さを感じる。逆にユーザは、平均放射温度の値が気温よりも低いと周囲から受ける放射熱により涼しさを感じる。
【0079】
図9に示されるように、外気温の平均値と室内の快適な温度範囲との関連性が算出される。室内の快適な温度範囲は、80%のユーザが許容可能な範囲に拡張されてもよい。更に、室内の快適な温度範囲は、室内に気流(風)が生じている場合において拡張されてもよい。風が生じている場合、体感温度が下がるからである。
【0080】
図10に示されるように、室外の快適な温度範囲は、月に応じて算出される。制御部12は、例えば、第1検出部2及び第2検出部3の検出値に基づいて、室外の気温の検出値が快適な温度範囲であり、且つ、室内の気温の検出値が室内の快適な温度範囲外である場合、報知部6に窓枠4Bの開放角度を表示した表示画像6Mを表示させ、窓枠4Bの開放を促す。
【0081】
環境モデルEは、上記の数式以外にセンサの検出対象に応じた指標の数式を備えていてもよい。環境モデルEは、各数式に重み係数が乗算されている。重み係数は、例えば、初期値が1に設定されている。制御部12は各数式に基づいて計算結果を算出する。
【0082】
実際の室内の換気量は、建具4の形状、サイズ、個数、設置位置等の条件によって異なる。各部屋Rには、各条件に応じて環境モデルEの初期値が設定されている。制御部12は、環境モデルEに基づいて、建具4の種類、形状、サイズ、個数、設置位置等の各部屋Rにおいて異なる条件に応じて最適な建具4の開口量を算出する。これにより、建具4が部屋Rにおいて複数個設けられている場合は、室内の換気が効率的に行われるように、各建具4の開口量が個別に算出される。各建具4の開口量は、均等でもよいし、個別に異なっていてもよい。また、各建具4のサイズが異なる場合においても室内の換気が効率的に行われるように、開口量が個別に算出される。
【0083】
環境モデルEは、ユーザが感じる種々の感覚に基づいて快適性を算出するように設定されていてもよい。
【0084】
制御部12は、複数の建具4が設けられている場合、室内において所定方向に気流が発生するように各建具4の開口量を個別に算出してもよい。建具4は、上下方向に設置されている場合や、部屋Rにおいて廊下側と室外側に設置されている場合等様々な配置関係により設置されている。そのため、制御部12は、換気が行われた後の室内の平衡状態において、快適と感じられる所定量の気流を室内に発生させる各建具4の開口量を個別に算出してもよい。例えば、建具4が廊下側と外部環境側とに設けられている場合で且つ、廊下側から室外側へ気流を発生させる場合、制御部12は、廊下側の建具4の開口量と、外部環境側の建具4の開口量とを個別に調整する。
【0085】
同様に、制御部12は、例えば、下方に設けられた建具4から外気を導入すると共に、上方に設けられた建具4から内気を排出させる各建具4の開口量を個別に算出してもよい。制御部12は、例えば、廊下側に設けられた建具4から廊下側の空気を導入すると共に、外部側に設けられた建具4から内気を排出させるように各建具4の開口量を個別に算出してもよい。
【0086】
室内の自然換気において、室内の温度と室外の温度との温度差が所定基準に比して大きい場合、自然換気を行うと室内に急激な温度変化が生じる虞がある。そこで、自然換気により室内に急激な環境変化が生じるのを防止するため、制御部12は、室内環境が目標範囲に移行する遷移過程においても、快適と感じられる所定量の気流を発生させるように開口量を算出してもよい。
【0087】
環境モデルEは、上述したように、使用期間の経過に伴って制御部12が機械学習を行うことにより、パラメータが調整される。制御部12は、所定期間経過後、計算結果と検出値との差に基づく再計算の結果を集計する。制御部12は、再計算の集計結果及びユーザの入力操作に基づく再計算の集計結果を教師データとして各数式の相関関係をディープラーニングによる機械学習により算出する。制御部12は、機械学習により、環境モデルEを構成する各式に含まれる計数や、各式に乗算された重み係数等の各パラメータを調整する。各パラメータの初期値は、事前に設定され記憶部14に記憶される。初期値は、制御部12が機械学習を行うため、ダミー値が入力されていてもよい。
【0088】
上述した環境モデルEに含まれる各パラメータを調整することにより、初期設定がされた環境モデルEに基づく計算結果と、実際の室内の環境状態との乖離が適宜自動修正され、部屋Rの快適性を実現する開口量の計算結果の精度を向上させることができる。
【0089】
次に、室内環境最適化システム1における各処理について説明する。
【0090】
図11には、室内環境最適化システム1において実行される処理の流れが示されている。第1検出部2及び第2検出部3において複数のセンサの出力値を検出する(ステップS100)。第1検出部2及び第2検出部3においてセンサの検出値は、管理装置10に出力される(ステップS102)。管理装置10は、検出値を取得する(ステップS104)。制御部12は、建具4において窓枠4Bが開放されているか否かを判定する(ステップS108)。窓枠4Bが閉状態である場合、制御部12は、室内のCO2濃度が基準以上であるか否かを判定する(ステップS110)。
【0091】
窓枠4Bが開状態である場合、制御部12は、検出値に基づいて外部環境が快適であるか否かを判定する(ステップS120)。外部環境が快適でない場合、処理はステップS104に戻される。室内のCO2濃度が基準以上である場合、制御部12は、窓枠4Bの開口量及び時間を算出し、報知部6に窓枠4Bの開放を促す表示画像6Mを表示させる(ステップS112)。
【0092】
制御部12は、窓枠4Bが開状態であるか否かを判定する(ステップS114)。窓枠4Bが開状態である場合、自然換気が行われる所定時間の経過をカウントする(ステップS116)。所定時間経過後、制御部12は、報知部6に自然換気が終了した旨の報知を行わせる(ステップS118)。その後、処理はステップS104に戻される、自然換気終了時の音声信号をセットする(ステップS119)。ステップS120において外部環境が快適である場合、制御部12は、窓枠4Bの開口量を算出し、報知部6に窓枠4Bの開放を促す表示画像6Mを表示させる(ステップS122)。
【0093】
制御部12は、窓枠4Bが開状態であるか否かを判定する(ステップS124)。窓枠4Bが開状態である場合、自然換気が行われる所定時間の経過をカウントする(ステップS126)。所定時間経過後、制御部12は、検出値に基づいて外部環境が快適であるか否かを判定する(ステップS128)外部環境が快適である場合、処理はステップS126に戻される。外部環境が快適でない場合、処理はステップS118に進められる。
【0094】
制御部12は、ステップS104において取得した検出値に基づいて建具4の近くにユーザが存在するか否かを判定する(ステップS130)。ユーザが近くに存在する場合、制御部12は、報知部6をオン状態にする(ステップS132)。ユーザが近くに存在しない場合、処理はステップS104に戻される。制御部12は、報知部6にステップS112、ステップS122、ステップS118において生成された、所定の情報を表示した表示画像6Mを表示させる(ステップS134)。
【0095】
ユーザは、表示画像6Mの表示内容を確認する(ステップS136)。ユーザは、表示画像6Mの表示内容に基づいて、窓枠4Bを開放すべきか否かを決定する(ステップS138)。ユーザは、窓枠4Bを開放すべきと決定した場合、窓枠4Bを開放する(ステップS140)。ユーザは、窓枠4Bを開放すべきでないと決定した場合、窓枠4Bは閉状態が保持され、処理がステップS100に戻される。ステップS140が実行された後、所定のタイミングにおいて処理はステップ104に戻され、制御部12は、上記各ステップを実行するフィードバック制御を行う。上記各ステップは、入れ替えられてもよく、適宜他のステップを追加してもよい。
【0096】
次に、室内環境最適化システム1において実行される機械学習に基づく環境モデルEのパラメータを調整する処理について説明する。
【0097】
図12には、室内環境最適化システム1における機械学習に基づく環境モデルEのパラメータを調整する処理の流れが示されている。制御部12は、室内環境最適化システム1の使用開始から所定のタイミングにおいて、或いは、前回のパラメータ調整から所定期間が経過した場合、建具4の開口量の算出値及び再計算値が存在するか否かを判定する(ステップS200)。再計算値が存在しない場合、ステップS200の処理が繰り返される。再計算値が存在する場合、制御部12は、再計算値を教師データとして機械学習を行い、環境モデルEに含まれるパラメータを調整する(ステップS202)。
【0098】
制御部12は、調整後のパラメータが適用された環境モデルEに基づいて、報知部6や建具4の駆動部5を制御する(ステップS204)。ステップS200は、所定期間経過後に再計算値を集計して実行されてもよいし、再計算値が得られたタイミングで実行されてもよい。
【0099】
上述したように室内環境最適化システム1によれば、第1検出部2及び第2検出部3の検出値に基づいて、室内が快適となる建具4の開口量を算出して報知することにより、室内の温熱及び空気質を含む室内環境が快適となるように自然換気を促すことができる。室内環境最適化システム1によれば、自然換気が実行された後もフィードバック制御を行うことにより、温熱及び空気質を含む室内環境及び室外環境の状態の変化や、部屋Rの状態に基づく計算値のずれを自動的に調整するように再計算を行い、室内環境を快適に保つことができる。
【0100】
室内環境最適化システム1によれば、フィードバック制御の再計算結果を教師データとして教師データとして機械学習を行い、計算に用いる環境モデルEに含まれる各パラメータを調整することにより、計算結果の精度を更に向上することができる。
【0101】
以下、室内環境最適化システムに係る変形例について説明する。以下の説明において、上記実施形態と同一の構成については、同一の名称及び符号を用い、重複する説明については適宜省略する。
【0102】
[変形例1]
制御部12は、機械学習においてユーザの室内の使用状態の検出値に基づいて使用状態の属性を学習し、属性に応じて環境モデルEに含まれる各パラメータを調整してもよい。室内には、例えば、カメラ等の室内を利用するユーザを検出するセンサが設けられている。制御部12は、カメラから取得した画像に基づいて、部屋Rを利用するユーザUの人数を認識する。制御部12は、認識結果と日時データとの関連性に基づいて、ユーザの室内の使用状態を推定する。制御部12は、例えば、所定の時間帯に所定以上のユーザが認識された頻度が所定以上である場合、部屋Rの属性が会議室等のユーザの集団による使用状態であると推定する。
【0103】
制御部12は、推定した属性に基づいて、部屋Rにおいてユーザが発生する熱量を算出し、熱量を環境モデルEに適用し、開口量を算出してもよい。制御部12は、例えば、部屋Rの属性がユーザの集団による使用状態である場合、集団が発生する熱量に基づいて環境モデルEに含まれる各パラメータを調整し、開口量を算出する。制御部12は、過去の検出値、開口量の算出結果、パラメータの調整値、開口量の再計算の結果との関係を学習し、検出部の現在の検出値に基づいて、現在の室内の環境変化の予測値を算出すると共に、開口量を自動的に算出するフィードフォワード制御を行ってもよい。
【0104】
変形例1に係る室内環境最適化システム1によれば、部屋Rの設定値だけでなく、部屋Rの使用状態の属性を学習することで、より正確に快適性を実現する建具4の開口量を算出することができる。
【0105】
[変形例2]
図13に示されるように、室内環境最適化システム1Aにおいて管理装置10は、建物Bにおける複数の部屋Rを管理するものであってもよい。制御部12は、各部屋Rに設定された環境モデルEのパラメータを調整してもよい。管理装置10は、各部屋Rの報知部6に建具4の開放を促す所定の報知を行い、各部屋Rにおいて自然換気を行わせる。管理装置10は、ユーザが存在しながら報知に従った部屋Rと従わなかった部屋Rとの比較を行い、自然換気に基づくエネルギー削減量の統計を算出してもよい。管理装置10は、統計結果を各部屋Rの報知部6に報知させ、省エネルギー化を促進するようにしてもよい。管理装置10は、上記実施形態と同様にフィードフォワード制御を行ってもよい。
【0106】
変形例2に係る室内環境最適化システム1Aによれば、室内環境最適化システム1Aによれば、複数の部屋Rを個別に管理することができ、部屋Rの配置位置に応じた室外環境及び室内環境の特性を把握することができる。建物B内の複数の部屋R毎に自然換気を促すことができ、エネルギー使用量を削減することができる。
【0107】
[変形例3]
図14に示されるように、室内環境最適化システム1Bにおいて管理装置10は、複数の建物Bにおける複数の部屋Rを管理するものであってもよい。制御部12は、複数の建物Bから検出値を取得し、結果に基づいて各建物Bが有する部屋毎に設定された環境モデルEのパラメータを調整してもよい。管理装置10は、各建物Bの各部屋Rの報知部6に建具4の開放を促す所定の報知を行い、各建物Bの各部屋Rにおいて自然換気を行わせる。管理装置10は、建物B毎に自然換気の実行率の統計を算出し、建物B毎に、自然換気に基づくエネルギー削減量の統計を算出してもよい。管理装置10は、統計結果を各建具4の各部屋Rの報知部6に報知させ、省エネルギー化の意識を向上させるようにしてもよい。
【0108】
変形例3に係る室内環境最適化システム1Bによれば、複数の建物B内の複数の部屋を個別に管理することができ、建物Bの立地条件、部屋の配置位置に応じた室外環境及び室内環境の特性を把握することができる。室内環境最適化システム1Bによれば、1地域の複数の建物Bの自然換気を管理することができる。室内環境最適化システム1Bによれば、複数の建物B内の複数の部屋R毎に自然換気を促すことができ、自然換気の実行率を建物B毎に統計データを取得することで、エネルギー使用量の管理を容易にすることができる。
【0109】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、室内環境最適化システムは、窓の他に扉、ダクト、換気扇等の換気可能な建具、装置、設備に適用してもよい。制御部は、機械学習において教師あり学習を行っているものを例示したが教師なし学習を行ってもよい。
【符号の説明】
【0110】
1、1A、1B 室内環境最適化システム
2 第1検出部
2-n センサ
3 第2検出部
3-m センサ
4 建具
4F 窓
4L 回転軸
5 駆動部
6 報知部
7 操作部
10 管理装置
12 制御部
14 記憶部
B 建物
E 環境モデル
R 部屋
U ユーザ
W ネットワーク